

Skill
Archicad /2D,3D
Rhinoceros Illustrator Indesign

粕谷しま乃
KASUYA SHIMANOAward
Photoshop
Profile
1999.11.15
2018.03
2018.04
2022.03
2022.04
広島県広島市生まれ
広島県立廿日市高等学校 普通科 卒業
広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科 入学
学部3年 〜 前田圭介研究室所属
広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科 卒業
近畿大学大学院システム工学研究科建築コース 入学
意匠研究室 / 前田圭介・土井一秀 研究室 在籍
2020 2021 2022 2023 2024
2年次設計課題 集合住宅 学内最優秀賞
3年次設計課題 小学校
3年次設計課題 美術館
建築新人戦 2020
学内最優秀賞
学内最優秀賞
100選
第47回 五三会設計競技 12選
Hiroshima Design Days
優秀賞
第48回 五三会設計競技 12選
特別建築デザイン実習1
特別建築デザイン実習2
広島平和祈念卒業設計展
JIA全国卒業設計コンクール
tonica北九州建築展
優秀賞
優秀賞
最優秀賞
選出
クリティーク賞
第9回POLUS 学生建築デザインコンペティション
2022年度 日本建築学会設計競技
広島建築学生チャレンジコンペ2022
2023年度 日本建築学会設計競技
第15回エイブル空間デザインコンペティション
広島建築学生チャレンジコンペ2023
修士設計
佳作
優秀賞
優秀賞 入選
優秀賞
全国支部入選 校友会長賞
PROJECTS
1 2 3
都市の傷口を縫う 都市の中の小さな世界と人間の居場所 卒業設計
大きな机と広がる生活
第48回五三会建築設計競技
流されない時間を
特別建築デザイン実習 The Breakfast Cafe
1
都市の傷口を縫う 都市の中の小さな世界と人間の居場所
広島平和祈念卒業設計展2022 最優秀賞 JIA全国卒業設計コンクール2022選出作品
tonica北九州建築展2022 クリティーク賞
審査員
総作品数 1/150 審査員長 内藤廣 藤村龍至 手塚由比 河口佳介
どこまでも綺麗につくられていく現在の都市の中で、私たちの生活はどこか窮屈になってしまった。
私たち人間が本当の意味で息を抜くことのできる自然と人工の混じり合った都市の余白空間は、今や 存在するのだろうか。
隣接する建物がなくなると消えてしまう隙間と雑草は、都市の残り少ない余白として可能性を秘めた ユートピアである。人々に見捨てられた隙間と雑草に着目し、単管パイプによる仮設建築を挿入する ことで、都市の中から消えかけている人間の居場所を再定義する。
2021/10~2022/01 学部4年生卒業設計
01 忘れられてしまう都市の記憶 -背景-
古いものが次々と新しいものへ取って代わる現在の都市は、どこか整然としすぎていて、煌びやかで平坦な、どこ
にでも存在し、どこででも体験できる、そんな場所になってしまってはいないだろうか。
つい昨日まであったあの店は、一体何の店だったか、思い出そうとしても思い出すことはできないという経験が近
年増えているように感じる。
しかし、街を歩き観察するとふと、建物と建物の隙間は周辺の建物や道路が新しく変わったとしても、唯一
人のデザインが施されず都市に残され続ける小さな余白であると気が付く。
都市の隙間では、人の捨てたゴミが散乱し雑草が鬱蒼としている様子が散見されるが、それはかつて都市の 中に存在していた、誰もが都市の秩序から少し外れることのできる“空き地”の要素ではないだろうか。美
しくなりすぎてしまった都市に対し、人々の見逃してきた“都市の隙間”を再びデザインすることで、
忘れ去られて消えていく都市の価値や人間の居場所と向き合うことはできないだろうか。
忘れられてしまう都市の記憶 -背景-
ほんの数十年でめまぐるしく変化する都市

2004年 2023年

上の写真は広島市中区の2004年と2023年の航空写真だが、約30年の間に大き く都市が変化していることがわかる。例えば広島市民球場が無くなっていたり、広 島駅付近はまるきり再開発されかつて栄えていた愛友市場が撤去されていたりと、 スクラップアンドが激しい都市の様子が伺える。
都市部の隙間の現状


都市部の隙間は住宅街の隙間よりも幅が狭く、主に 500〜1200mm の幅の 隙間が多く存在する。また、建物同士の隙間は、写真のように見えないよう 塞がれている。毛細血管のように都市に張り巡らされた隙間は、新しくデザ インを施すことで街を大きく変容させることのできる可能性を秘めている。
隙間の空き地性と都市との関係


都市の隙間は、再開発が進む都市の中で唯一取り残され手がつけられていない場所で ある。都市の隙間には雑草が生い茂り、人通りから逃れられる、空き地的要素が残っ ており、美しすぎる都市の中ではできない 少しだけ後ろめたい行動を許容するお おらかさを持っているのではないだろうか。
土地にタネを撒く仮設建築 -提案-
役目を終えると消えゆく仮設建築

安藤忠雄/下町唐座 安藤忠雄さんによって1988年に造られた仮設の芝 居小屋。仮設建築には役目を終えるとなくなってし まう儚さと、短期間で勢いよく出来上がっていく力 強さが感じられ、都市の隙間と似た空間特性を持っ ているのではないだろうか。
土地の記憶を継承する雑草

都市にも雑草は生き生きと生息している。
都市に生息する雑草を観察すると、近隣の 建物によってできる日陰や日向によって生 息する植物が異なっていることから、雑草 は土地の記憶を継承している唯一の存在で あることわかった。
刹那的な空間「隙間」にタネを撒く仮設建築を
1 3 2 隣接建物に寄生する人と土地の記 憶に根差すための建築装置

・隣接する建物を構造とし、壁繋ぎを取 り付け隙間に挿入する仮設建築を固定す る
・都市に生息する雑草の種子が根付く土 壌と共に、人にとってもあると便利な仮 設建築を計画する
隣接する建物の倒壊と共に消え てしまう隙間のユートピア

・隣接する建物を構造としていたため、 建物が壊されると同時に撤去されてしま う
・仮設建築に咲いていた雑草だけが土地 に残る
隙間の建物は無くなっても土地 に根を張る雑草の種子

・次に建つ隣接建物の高さによっては新 たに別の雑草が生息したりと、雑草の種 子は都市の環境バロメーターとなり、人 の使う建築部分が無くなってもタネだけ は土地に残り続ける
ケーススタディとしての隙間の選定 -敷地-
選定敷地は広島県の中心部である広島県広島市中区の一画。広島駅の再開発によって都心部をはじめ各地で再開発が活発に行われ ており、スクラップアンドビルドに対する考え方や、これからの都市のあり方について考えるべき時が来ている。そこで、本通り 商店街付近の興味深い隙間をピックアップし、ケーススタディとして設計を行うこととした。

Site 1
本通り商店街に面する隙間
一般的によく見られる2つの建物同士の隙間。
本通り商店街は、隙間なくピッタリと建物が立っているよ うに見えるが、右図の写真のように隙間を隠しているだけ で裏から見ると、約800~1000mmの隙間が存在している。
裏道から隙間に入ると、隣接する店舗の窓から投げ捨てら れたゴミや放置自転車があり、この隙間は全く利用されて いないことがわかった。
ゴミ置き場として見放され隠されている隙間を、商店街と裏 通りを結ぶ路地として再生する。

商店街から見た隙間

Site 2
マンションとテナントに囲まれた隙間
3つの高層建物と駐車場に囲まれた奥まった場所にある隙 間。巨大なマンションとテナント、駐車場に囲まれた隙間 はその場所を知っている人だけしか入ることのない他の隙 間よりも人の所有の意識がある隙間。ひっそりと木がうわっ ていたり、猫がくつろいでいたり、使っている形跡が存在 する。
隙間に隣接する周辺建物の新たな裏口として、目に留まった 人の休む居場所として、他の隙間とは違う固有の界隈の人間 が集う場所として再生する。


Site 3
古びた広場を持つ隙間
1区画を横断する隙間を歩くと、中央にひらけた広場のあ る隙間。広場につながる隙間には現在フェンスが設けられ ていて中に入れないが、隣接する窓の高さや大きさを見る と隙間が人の通り道になっても問題がなさそうである。
この隙間の中心には、現在使われていない廃倉庫が佇み、
周辺建物の受水槽が配置された少し開けた古びた広場が広 がっている。
袋町公園と隣接するこの古びた隙間を、少し閉じられた大人 な袋町公園として再生する。


敷地に生息する環境バロメーターとなる雑草 -調査-
雑草の種子はコンクリートで地面が覆われたとしても、いつか芽を出すことのできるタイミングを待ち何年も眠り続ける。ここで提案する隙間に建てる仮設建築は、隣接する建物が無くなると同時に取り壊されるが、ここに生息する雑草の種 子は地に残り、人々の記憶の中に残る仮設建築の姿を想起させる。都市に生息する雑草は様々で、隣接する建物が高層になると陰生植物が生息する、隣接する建物が低層になると陽性植物が生息し花が咲く様子は、都市の環境バロメーターの ように機能しているようにも見える。
そこで、剪定した敷地周辺に生息する雑草の種類を調査した。
確認できる範囲内で調査した敷地周辺に生息する雑草は、約80種類であった。平和大通り、平和公園脇の川辺などを調査範囲対象外とし、敷地周辺の建物が立ち並ぶ範囲だけでも数多くの雑草が生息していることがわかった。また、構想建 築周辺で見られた雑草と、陽の光が当たる空き地で見られる雑草ではかなり種類が異なっていたりと、人間の活動と雑草の生息地は大きく関係していることがわかった。



































スミレ

アメリカセンダングサ

カニクサ

ドクダミ


ゴウシュウアリタソウ


ハハコグサ







ハルジオン


ハコベ





ノゲシ ナズナ ススキ
チチコグサ シロツメクサ ミズヒキ セイタカアワダチソウ



ノボロギク クワクサ オオブタクサ エノコログサ メヒシバ オランダミミノグサ






オオアレチノギク キュウリグサ オニタビラコ ノキシノブ チドメグサ シロヤマシダ ツタバウンラン イノモトソウ




サギナ ハゼラン



オオオナモミ アイビー ワイヤープランツ

スギゴケ

クモノスシダ

ナガミヒナゲシ

タマシダ


アカツメクサ ヤセウツボ
Site1 本通り商店街に面する隙間
ある日、本通り商店街を歩いていると




長い通路の中央にたどり着くと、目の前に緑が広がっていた
よくみると、上からタネが落ちたのか、足元にも植物が生えている 見たことのある雑草だが名前は知らない
いつもは目もくれない雑草 間近でみると、小さな花が咲いていることに気がついた
ふと上を見上げると、真っ青な空が広がっていた

長い隙間を抜けると、そこは商店街の裏側 いつもと変わらない景色が広がっていた

あの隙間と出会ってから、私は時々建物の隙間を覗き込むようになった
しかし、以前あったビルが取り壊され、なくなってしまったのだろうか
もう小さな植物たちが生き生きと蔓延る都市の暗い抜け穴は、私の記憶の中にしか存在していない
街のどの隙間を覗き込んでも、そこにあるのはゴミだけであった

商店街と裏通りを繋ぐ隙間の設計
陽性植物のタネを作るスラブ
元々の隙間周辺に生息していた 陽性植物がタネを飛ばす場所。
隣接する建物が高層になると、 そこに生息できる植物は苔類が 増加する。
隣接するテナントからのみ出 入りできる場所。隙間の敷地 を提供する代わりに小さな休 憩スペースを提供。
隣接建物①
この建物が撤去され、次の 建築が建つときに大きく隙 間環境に影響を及ぼし、高 層建築が建つと植物たちは 育ちにくくなっていく。
裏通りの道から
隣接建物②
仮設建築と壁つなぎによって繋がれてい る構造となる建物。 この建物が撤去され ると仮設建築による道は撤去される。
土壌 50mm
植物ネット
金属製の板により塞がれた隙間



合板 24mm
化粧材 単管パイプ 25.4φ
陰性植物のタネを作るスラブ
わずかな光で生息できる植物た ちがインターロッキングの隙間 に生息する。 隣接する建物が高 層になると、そこに生息植物が 極端に減少する。

構造 単管パイプ 48.6φ
現在、広島の本通り商店街の建物と建物 の隙間は見えないように塞がれている 塞がれた隙間の裏側にはたくさんのデッ ドスペースが存在する そこで選定敷地の隙間を開放し、仮設建 築によってショートカットの道をつくる

インターロッキング
本通り商店街側入口

商店街から続く仮設建築の道は、都市の中の小さな自然を大きく感じられる仕掛けが組み込まれている。真っ暗な入口からは中央で照らされ る緑がほんのりと見え、近づくと目の高さで普段足元に生息している植物を観察することができる。ショートカットの道として利用する人も いれば、ほんの少しの息抜きとして休む人もいるだろう。

記憶に残らない画一的な都市の風景が隙 間再生によって少しずつ変わっていく
隣接建物②
本通り商店街
敷地境界線
隣接建物①
隣接建物②
有効幅員

隣接建物①

裏通り

しかし、よく見ると昔あの隙間で出会った雑草たちが、 今も生き生きと生息していた。
Site2 マンションとテナントに囲まれた隙間
ある日、駐車場付近を通りがかると、 駐車場ブロック塀奥に人影が見えた


覗き込んでみると、ブロック塀内側とマンショ
ンに寄生するように階段が巻きついていた
単管足場が組まれているが、 どうも工事現場ではないようだ

裏側階段の先が気になり
駐車場裏にまわると、

単管足場から吊された階段が暗い奥まで続き、
ゴミと雑草が散乱する都市の静かな居場所があった

真っ暗な階段通路の先、高層建築に囲まれたこの場所には、 予想以上に光が差し込んでいた
ブロック塀の内側、建築物に寄生した螺旋階段で、人々は人 目やルールを気にすることなく思い思いに過ごしていた

都市の中にひっそりと佇む階段型フォリー 気がつく人だけが気がつく、都市の中の小さな居場所
巨大な仮設建築は、ある人には工事現場に、ある人には 小さな都市の居場所に見えるだろう


07
マンションとテナントの隙間の設計
幅も狭くゴミも落ちている

ブロック塀が建つこの隙間は、入口は細く 狭く入りにくい雰囲気だが

最奥に小さな広がりがあり、猫が暖をとっ ていたりとポテンシャルがある敷地である

そこで単管とワイヤーによる奥行きを強調 させる建築によって人を奥に引き込み、

螺旋階段によって3つのテナント裏側のア クセスとなる建築を提案する。











Site3 古びた広場をもつ隙間

ある日、街を歩いていると、1人のサラリーマンが 隙間に吸い込まれるように入り込んでいった
隙間を覗くと、何か休憩スペースでもあるのだろうか


そこには、壊れた倉庫とランダムに組まれた単管足場があるだけであった さっきいたサラリーマンが吸ったタバコの匂いが微かにし、よくみると足元 にはゴミに紛れて雑草が生き生きと生息していた
都市での生活はとても窮屈になった
街中ではタバコが吸えなくなった、鼻歌を歌いながら歩いているとじろじろ 見られた、雨の日に傘をささなかったら変な人だと指を刺された
ゴミと雑草に囲まれた、廃墟のようなこの場所で、私た
ち人間は本当の意味で都市の中に居場所を見つける


都市の裏側の汚い部分 ほんの少し後ろめたい行動を、受け入れてくれる大きな器が、 都市の中には必要なのではないだろうか

A1サイズの図面6枚,1/50サイズの模型を製作
