Stratus Introduction to Edge Computing - Whitepaper JP

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エッジコンピューティング ~入門編~

はじめに

さまざまな業界、分野で、デジタルトランスフォーメーションの取り組 みが進められ、データやデジタル技術を活用したサービスや製品の品 質向上、ビジネスモデルの変革が行われています。そんな中、「エッジ コンピューティング」が近年注目を集めています。特に製造業において は、いち早く IoT 化が進み、大量に集めたデータを効率よく処理して 分析し、生産効率や製品品質の向上を図るために「エッジコンピュー ティング」が活用されはじめています。

本資料では、「エッジコンピューティング」とは何か、聞いたことはある けどよくわからないという方向けに、なぜ注目されているのか、「エッジ」と は何か、特長やメリット、導入検討の際のポイントについて分かりやすく 解説します。

エッジコンピューティングの定義

「エッジコンピューティング」とは、コンピューターネットワークの末端 (=エッジ) で処理を行う分散型オープン IT アー キテクチャのことを指し、「データの生成元、または、その近くでのデータ処理を容易にするソリューション」と定義されてい ます。調査会社の IDC は、2025 年までに世界中で 175 ゼタバイト (=175 兆ギガバイト) のデータが生成され、 このうちおよそ 50%である 90 ゼタバイト以上のデータがエッジにあるデバイスで生み出されると予測しています。

「エッジ」とはどこなのか、そこでいったい何が起きているのか。詳しく紐解いていきましょう。

出典:LNS research [EDGE COMPUTING IN THE NEW OT ECOSYSTEM]

「エッジ」と「クラウド」

「エッジコンピューティング」とよく対比されるのが「クラウド」と略されることの多い「クラウドコンピューティング」です。クラ ウドとは、英語の「Cloud (=雲) 」を意味しますが、これはネットワーク接続されたコンピューターを雲の形を使って表 していたことに由来します。

クラウドコンピューティングでは、コンピューターはデータセンターなど、サービスを提供する事業者が 持つ施設に存在し、ユーザーはインターネットを経由して、コンピューターの機能を利用します。ユーザ は自社でコンピューターを所有する必要がないため、それらを置くスペースや運用管理者も必要あ りません。端末とインターネット環境があれば良いため、場所を選ばずに利用できるのも大きなメリット です。今日、さまざまなクラウドサービスが提供され、自社のニーズに合わせて選択や拡張がしやすいことも急速に普 及が進んだ要因の一つと言えます。

クラウドに対して「エッジ」とは、端や周縁という意味を持ち、「エッジコンピューティング」とはコン ピュータ ネットワークの周縁でデータ処理を行う技術を指します。さまざまなデータは機械やセン サーなどによって、人々が活動する場所や、モノが生産される工場などから生成されます。このよ うなデータが生み出される現場を「エッジ」と呼び、「現場の最前線」で情報を処理するのが「エッ ジコンピューティング」です。

製造業で言えば工場、流通業で言えば店舗や物流センターなど、ユーザーや端末が存在する現場が「エッジ」であ り、工場や店舗に設置された機械やセンサーから得られたデータを、エッジ環境、つまりユーザーや端末の近くで集めて 処理し、活用していく手法が「エッジコンピューティング」なのです。

エッジコンピューティングが注目される理由

IoT 活用が進み、さまざまな機器が扱うデータの量は爆発的に増えています。また、産業機器やセンサー技術は 日進月歩で進化し、その瞬間の状況を 正確に捉えられるようになっています。そ れとともに、求められる処理のスピードとレ スポンスもより高いレベルになってきていま す。大量のデータを扱うためには、大規模 なデータセンターが必要です。このような 背景から、クラウドコンピューティングが注 目されました。

しかし、インターネットを介してデータを送信し、処理して現場に戻すクラウドでは、その過程でタイムラグが生じたり、 膨大なデータの転送量が高コストとなるなど、あらたな課題が見えてきました。そこで、データが生成された場所でデー タ処理を行うことで、素早く処理が行え、ネットワークやデータセンターに負荷が集中することが防げる、遅延が少なくな るなど、データを処理する上でより効率を高めることができるエッジコンピューティングに注目が集まっています。

エッジコンピューティングが現場にもたらす5つのメリット

エッジコンピューティングによって具体的にどのようなメリットがもたらされるのか、5 つのポイントを解説します。

◼ リアルタイム処理

クラウドにアクセスする場合、データを送信してから処理し、受信するまで、数百ミリ秒から数秒のタイムラグが発 生します。現場で得られたデータを即座に、的確に処理したい場合にはエッジ側、つまり現場でエッジコンピューテ ィングを使った分散処理を行うことで遅延をおさえ、リアルタイムなデータ処理が可能になります。

一方、大規模な連携や高度な計算処理が必要な場合で、処理速度や遅延がある程度許容できる場合はク ラウドで処理を行うなど、使い分けることで、双方のメリットが生まれます。

◼ トラフィックの最適化

IoT の進化と普及は、今後さらにデータ通信量を増加させていくでしょう。これらのデータを全てクラウドに集約さ せると、その通信経路やデータセンターにおいて「データの渋滞」が発生する可能性が予測されます。こういったデ ータの渋滞は、データ送受信の遅延だけでなく、クラウドサービスに何らかの障害を発生させるリスクもはらんでい ます。全てをクラウドに集約せず、処理可能なものはエッジ側でデータを処理することで、負荷分散やトラフィック の混雑解消につながります。こういった、データトラフィックの最適化と安定化もエッジコンピューティングの大きなメ リットの 1 つです。

◼ 通信コストの削減

現場で発生する大量のデータをクラウドにそのまま転送すると、当然、通信量が多くなります。エッジコンピューティ ングを併用し、データから不要な部分を除くクレンジングや、基本的な一次処理をエッジで行うことで、クラウドに 送信するデータ量を削減し、通信コストを最適化することが可能です。

◼ セキュリティーの強化

企業情報や個人情報をインターネット経由でクラウドに蓄積する場合、そこには常にデータ漏洩や外部からの攻 撃といったセキュリティーリスクがつきまといます。工場などの現場ではセキュリティー専門家を置くケースはまれで、 セキュリティーリスクがスマート工場化の足かせになってしまう場合もありますが、エッジコンピューティングでデータ処 理を行えば、クラウドとデータを送受信する必要がないため、データ漏洩リスクや外部からのセキュリティー攻撃の 軽減につながります。エッジでのセキュリティー対策を行う技術も普及しつつあり、エッジ環境でのセキュリティー対 策強化も可能になっています。

◼ BCP 対策

エッジコンピューティングを導入することで、事業継続計画 (BCP) の対策強化につながります。全てのデータをク ラウドで取り扱っている場合、インターネットの通信断やクラウドサービスの障害などの影響により、そのクラウドへの アクセスが遮断されてしまったらどうでしょう。そのデータを必要とする事業の多くが立ち行かなくなってしまうリスクも 考えられます。エッジコンピューティングを併用し、エッジ側で必要なデータを取り扱っていれば、クラウドへのアクセ スが遮断されても稼働を継続できます。つまり、エッジコンピューティングを有効に利用することで、事業の持続可 能性を高めることもできるのです。

集中処理型であるクラウドコンピューティングに対して、エッジコンピューティングは分散処理型で反対の性質を持 ち、相反するもののように思われることもあります。しかし、「クラウドかエッジか」のどちらか片方のみを選択するというもの ではなく、それぞれの適性を活かし、補完的に使われるべきものです。IoT 活用が、さまざまな分野・産業において重 要となり、デジタルトランスフォーメーションに対する期待と注目が高まっています。

そのカギとなるデータ活用を支えるのはエッジコンピューティングなのです。

エッジ環境でのシステム運用の課題

ここで、エッジコンピューティングの導入検討のポイントとなる、現場でよく聞かれるシステム運用課題を挙げてみまし ょう。

・ 工場の現場にデータ活用に必要な PC やサーバーを設置できない。

・ 現場に PC やサーバーを設置すると、熱や埃で故障が多く、保守 対応が大変。

・ 情シス担当者が不在。システムを運用できる人材がいない。

・ 本来の業務に集中したい。

・ 正確なデータを確実に欠損なく収集したい。

・ IoT や AI のデータ活用プラットフォームには高い処理能力と容量が必要。

・ 部門やシステムごとに PC やサーバーが乱立していて、連携や一元管理が できていない。

・古い機器も多く、メンテナンスができなくなっている。セキュリティ も心配。

エッジコンピューティングを運用す るためには、エッジ側に設置する端末やサーバー、さらにその端末を管理す るためのシステムや人員にもコストが必要です。集中処理型と異なり、分 散型であるためにそれぞれのエッジに必要なものをそろえなければならず、 初期コストは大きくなります。エッジコンピューティングが実現するメリットと投 入するコストを比較して、自社としての価値を見出し収益へとつなげるため の基本計画が重要となります。

エッジコンピューティングの導入にあたって考慮すべき要件

デジタルトランスフォーメーションのカギをにぎる、データ利活用の要となるエッジコンピューティングですが、その導入に あたっては、適切な方法で導入し、設置やサポートに関する基本的な事柄を最初から正しく理解しておくことが不可 欠です。データが生成される現場に近いところで運用するためには、エッジコンピューティング ソリューションの原則である シンプルで、保護されていて、自律型である、という要件を考慮する必要があります。

◼ シンプル

エッジコンピューティング ソリューションはシンプルで、現場の OT スタッフが誰でも扱える、簡単なものでなければな りません。現場のエンジニアには、情報システム担当者と同様の IT 知識やスキルを求めることはできないからで す。エッジを対象にしたソリューションは、セットアップ、メンテナンス、サポートが容易である必要があります。

◼ 保護

大量のデータを欠損なく確実に収集し、分析し、活用するエッジコンピューティング ソリューションには、常に安定 稼働し、大切な業務やデータを保護する高い可用性が求められます。製造現場など、IT 機器には過酷な環 境でも故障に強い堅牢な設計であることも重要です。

◼ 自律型

エッジコンピューティング ソリューションは、現場に IT の専門家を配置しなくても、自律的に動作することが求めら れます。故障や障害の予兆を常に監視し、問題が発生した場合には人手を介することなくシステムが自動的に 対処し、業務を継続できる仕組みが必要です。

データ活用の現場に最適なエッジコンピューティング

ここで、産業分野の現場向けに設計されたストラタステクノロジーのエッジコンピューター 「ztC Edge (ジーティーシー・エッジ) 」の特長をご紹介します。

✓ 設置場所を選ばない堅牢な筐体。幅広い温度や湿度に対応し、故障しにくい。

✓ もし故障が発生してもシステムは止まらない、業務も止まらない「高可用性」を担保。

✓ IT の専門知識がいらず、現場のメンバーで扱えるゼロタッチ運用。今お使いのシステムからの切り替えも 簡単。

✓ データ処理、分析に十分な能力を備え、コンパクトなのに高性能。

✓ あらかじめ組み込まれたセキュリティ 対策や、10 年の長期保守で安心して長く使用できる。

ztC Edge についての詳しい情報は Web サイトをご覧ください。

5 分で分かる「ztC Edge」紹介動画はこちら。

日本ストラタステクノロジー エッジコンピューティング研究会

エッジコンピューティング研究会では、エッジコンピューティングの基礎知識から活用例、課題やメリット、 今後の展望など、各産業界におけるエッジコンピューティングにまつわるさまざまなトピックスをブログ記事で 紹介しています。

☞エッジコンピューティング研究会ブログはこちら

ストラタステクノロジーについて

ストラタステクノロジーは、ミッションクリティカルなシステムにおけるダウンタイムを回避するための高可用性 ソリューションを様々な業界、企業規模のお客様に 40 年以上提供してきました。近年、製造業 DX として、工場現場における IIoT 化の取り組みにより、OT(Operational Technology:制御・運用 技術)現場の IoT センサーや IoT デバイスから膨大なデータが生成され、その収集や分析などの利活用 が進み、システムに対する可用性が不可欠となってきています。「ztC Edge」は、このような現場の高可 用性コンピューターへのニーズに対応したゼロタッチ・エッジコンピューティング プラットフォームとして、多くの 現場にご採用いただいています。

日本ストラタステクノロジー株式会社

〒102-0085 東京都千代田区六番町 6 勝永六番町ビル TEL:03-3234-5562(マーケティング部)

E-mail: marketing.jpn@stratus.com www.stratus.com/jp/

※本資料に掲載されている情報は 2023 年 2 月現在における概要を説明するものであり、通知なく変更される場合があります。

Stratus, Stratus ロゴ, ztC Edge, ztC Edge ロゴは、Stratus Technologies Ireland Ltd.の登録商標または商標です。その他、 本資料の文中に引用された社名、製品名、サービス名については、各々の会社の登録商標ないしは商標であり、各所有者が商標権を保持しています。

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