Illuminea October 2010 Japanese

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2010年 10月

大学図書館および情報コミュニティにOUPが配信するニュースと特集記事

言語に関する膨大な宝の山

今月の記事:これまでの OXFORD OPEN

インタビュー:アメリカ図書館協会会長 学術出版の将来:図書館ビジネスはこれまで通りで大丈夫か?


| EDITORIAL

CONTENTS

3 これまでの Oxford Open : OUPのオープンアクセスへの イニシアチブを検証する Rhodri Jackson、 OUP、 パブリッシャー

4&5 Oxford English Dictionary: 言語の膨大な宝の山 John Simpson、 OED、 編集長

6 ニュース 7 インタビュー: Roberta Stevens、 アメリカ図書館協会、 会長

「私は、OEDオンラインで言葉を調べる プロセスを、一つの旅の終点ではなく、 旅の始まり、 として欲しいのです」 と述べるのは OXFORD ENGLISH DICTIONARYの編集長、掲載記事: 「OED: 言語の膨大な宝の山」にて

8&9 学術出版の将来: 図書館ビジネスは これまで通りで大丈夫か?

Rick Anderson、 Kent Anderson、 Tony Ferguson

10&11 ディレクトリ 参加学会一覧とOUP連絡先

12 書籍を越えて: 回の Illuminea は、OUPや他の出版社が過去にいくつか成し遂げて きたことや掲げてきたイニシアチブについて見る、だけではなく、そ してその先は?という質問に答えるべく、未来の姿をも見ていきたい と思います。 これまでOUPのオープンアクセス(OA)というイニシアチブ、Oxford Openに5年 間携わってきた、法律関係ジャーナルのパブリッシャー、Rhodri Jackson氏はOUP でのOAの取り組みに加えて業界全体でのOA全般について述べます。そして今回は、 多くの人が待ち望んだオンライン版オックスフォード英語辞書のリニューアルについ て特集しました。すでに多くに利用され、愛されてきたオンラインテキストをいかに 新しい機能を加えながら再編していくか、OEDの編集長、John Simpson氏が語りま す。 アメリカ図書館協会(ALA)の会長、Roberta Stevens氏はこの号のインタビュー で遠い将来を見つめ、図書館がどの方角に向かって進んでいるのか、そしてそれを サポートするALAの努力について話します。ユタ大学、 マリオット図書館代表の Rick Anderson氏は彼のエッセイにて学術出版における図書館のポジションに疑問を抱 き、異なる反応を出版社の Kent Anderson氏と図書館員のTony Ferguson氏より引 き出します。 最後に、OUPの公文書保管人、Martin Maw氏が様々な時代と文化を越えてきた 印刷と出版から、彼の考察するところのデジタル出版を語るなかで、過去と現在を 引き合わせます。

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デジタルの未来と パラレルプロセス

Dr Martin Maw、 公文書保管人、 OUP

編集: Lizzie Shannon-Little 編集チーム: Damian Bird, Alison

Bowker, Claire Dowbekin, Richard Gedye, Amanda Hirko, Patricia Hudson, Margaret Love, Colin Meddings, Cath Mundell, and Aviva Weinstein. デザイン: Sequel Group Ltd (www.sequelgroup.co.uk) Illumineaへの皆さまの貴重なご意見・ご感想を   お待ちしています。 今後の号へのご提案またはご寄稿などについて は、lizzie.shannonlittle@oup.com まで、メールにて ご連絡ください。 表紙イメージ及びエディトリアルイメージは オックスフォード大学出版局のセクレタリーより、 その代表に許可を得たものです。


COMMENT |

これまでの OXFORD OPEN: OUPの オープンアクセスへの イニシアチブを検証する Rhodri Jackson、パブリッシャー、法律関連ジャーナル

者がオープンアクセス(OA)で論 文を出版することが出来るOUPの ビジネスモデル、オックスフォー ド・オープンは今年、2010年7月で開始より丸5年 を迎えました。開始時の2005年より、オックスフ ォードオープンは、フルオープンアクセスの6タイ トルを含め、ハイブリットモデル(著者がオープ ンアクセスで出版するかどうかを選択できるモデ ル)は90タイトル以上にまで大きく広がりました。 これらは全て、著者が料金を負担することによっ てユーザーが無料にて論文にアクセスできる  「ゴールドOA」と呼ばれるもので、これに対し、 「グリーンOA」は、広く定義すると、誰もが無料 にてアクセスできるアーカイブに著者が論文をデ ポジットすることを指します。OUPでも、出版時か ら一定の期間を過ぎた論文については著者が論 文をリポジトリにデポジットすることを認めること で「グリーンOA」を間接的にサポートしています。 このグリーンOAについては一部その性質から、 従来の学術出版ビジネスモデルを脅かすことも可 能性としてあり、それゆえ、OUPは様々な出版モ デルを取り入れることに積極的であるものの、我 々のビジネスパートナーである多数の学会や協会 との業務上の責任も考え、グリーンOAには慎重 に対応してきました。この記事では、我々OUPが 主に経験し、実績を得てきたゴールドOAについ て主に述べていきたいと思います。 最近のOUPのプレスリリースで、オックスフォ ード・オープンのハイブリッドモデルでOA出版さ れた論文についてまとめた記事が発表されまし た。OUPのハイブリッドモデルを取り入れたジャ ーナルで出版された論文のうち2009年は5.9%が OAで出版され、2008年の6.7%よりも若干数値が 低くなっています。プレスリリースの見解では、 「著者は選択肢を与えられた場合、その大多数 はまだ自分の論文をオープンアクセスモデルで 出版しようとはしない」でした。この見解はグリー ンOAの支持者達を大いに刺激し、彼らは、OUP が述べているオープンアクセスは暗に、著者が 料金を支払うタイプにのみ触れていると指摘し

オープンアクセ スモデルは、 モデルとして 比較的新しい がために、 出版社に よって異なる モデルが使わ れる、 という 結果を生みま した。

ました。その支持者達の指摘は正しい と言えますが、OUPのオックスフォー ド・オープンのアクセスモデルで出版さ れた論文数を数えるのがたやすいのに 対して、グリーンOAを数値化するのは 非常に難しいことであるのも確かなの です。 OAを採用する論文は、これまで常に ライフサイエンス系ジャーナルが最も 多く、その次に差をつけられて医学系 ジャーナルとなっています。このデータ をそれぞれ分野別レベルで検証し、そ こから何か結論づけることは非常に難 しいのですが、データからひとつ言え ることは、著者が料金を支払うOAモデ ルは、より高額の研究費を受けられる 分野で多く採用されているということ です。オープンアクセス料金は論文の 出版費用をまかなう必要があり、ゆえ にその額は通常、研究費を受けていな い個人の著者が支払える額を超えてい ることが多いのです。この、研究費の少 なさとOAが義務ではないことが、OUP の人文科学系、社会科学系、そして法 律系のジャーナルでのOA出版論文の 少なさの理由の一部と言えます。 オープンアクセスモデルは、モデルと して比較的新しいがために、出版社に よって異なるモデルが使われる、という 結果を生みました。もし補助金の有無 が著者のOA採用のカギだと考えると、 今後OAの補助金制度はよりスタンダー ド化、確立されていくことでしょう。現 在のところ、研究機関や資金援助を行 う組織はそれぞれ著者のために独自に オープンアクセス用の補助金制度を作 りつつあり、その補助金の支払先につ いて、指定をするようになってきていま す。私達は、このような研究機関や資金 援助組織がオープンアクセスモデルに

ついて経験を積み、近いうちに補助金 の使い道や普及の条件なども指示する ようになると予想しています。OA料金 については、業界においてすでに少し ずつ統合されてきていますが、出版モ デルについては、いつ、そして、どのよう な形で統合されていくのでしょうか。 オープンアクセスは、独自にOA出版 のための組織を持ち、OAで出版してい るジャーナルのディレクトリを持ち、ま たOAに関する用語(グリーンOA、ゴー ルドOA、OA エヴァンジェリズム、OA義 務など)も多数あります。ですが、オー プンアクセスで最も驚くべきことは、オ ープンアクセスがいかに出版社や出版 業界に衝撃を与えることに成功した か、 です。特に、出版業界全体からみれ ば、商業的なオープンアクセスのイン パクトは相対的にまだ小さいにも関わ らず、これだけ話題となったのには驚く べきものがあります。私は、このような 意見を述べることでオープンアクセス というモデルを軽んじるつもりは毛頭 ありませんが、もし、このような意見を 述べてもOAを軽んじているなどという 批判を受けないようになれば、それは オープンアクセスが成熟期に入った証 拠なのではないかと思います。今後数 年で、私達はオープンアクセス業界の 発展と金融危機がもたらすオープンア クセスへの補助金の真の影響を知るこ とが出来ると思います。OUPの目的の 一つは学術協会とのパートナーシップ であり、このオープンアクセスの発展に これまで通り積極的に取り組んでいく ことは間違いありません。

原文は2010年8月20日のUKSG Serials e-Newsに掲載されたRhodri Jackson氏のオリジナ ル記事です。URLはこちら: http://www.ringgold.com/UKSG/si_pd.cfm?AC=0394&

Pid=10&Zid=5591&issueno=227

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| FEATURE

言語の 膨大な宝の山 私は、 OEDオンラインで言葉を調べる プロセスを、 一つの旅の終点ではなく、 旅の始まり、 として欲しいのです。 xford English Dictionary (OED) 、オックス ス フォード英語辞典、を知っている方ならば誰 誰 もが、それが英語という言語の歴史と発展を 記した膨大な情報の宝の山だということをご 存じだと思います。2010年のOEDウェブサイトのリニューア ルのカギとなったのは、その膨大な情報を解き放つことに ありました。 OED Onlineはオックスフォード大学出版局の最も古い オンライン版レファレンステキストです。2000年3月のデビ ューは画期的なことであり、ユーザー(ではなくて、読者) に豊富な情報源への、より新しく直接的なアクセス方法を 提供しました。それ以来ずっと、OED Onlineは素晴らしい 成功を収めてきました。それというのも、読者が(それとも やはり「ユーザー」と呼ぶべきか?)やっと、OEDが1884年 から続く言語の記録簿のようなものではなく、柔軟性に富 んだダイナミックな辞書として変化を遂げたと感じること が出来たからです。 しかし時は流れるもので、OUPは、2000年に画期的で あったものでも2010年の今、包括的な見直しを行うことが 必要だと決断しました。これまで多くの人に使われ、愛さ れてきたテキストのリニューアルをまとめるのは容易なこと ではありません。新しい特徴が、既存のテキストの良さや を見劣りさせる恐れもあります。 このような事態を避けるため、OUPではOEDの編集者や

O

John Simpson、 Oxford English Dictionary 編集長

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左上より時計回りに:1880年代初期のJames Murray氏による単語 affirmを記したもの、OED Onlineでのmetamorphosis の項目、1896年以前 の辞書の、引用を記した紙片、OED Onlineのこれ までの出来事を記した年表

ウェブ構築スペシャリスト、プロジェク トマネージャ他、多数の人を呼び集 め、既存のウェブサイトの検証と2010 年版をどのようにしたらよいか、アイデ ィアを出すように求めました。 広範囲に渡るディスカッションの 後、私達は辞書の新しいモデルを考え 出しました。OEDの最も重要な部分 は、そのコンテンツにあります。意味や 語源、文献で使われたもの(引用)で す。これらは元来極めて重要なコンテ ンツです。ですが、新しいモデルのテ キストは、編集者が随時更新を行うデ ータベースを元としています。よって、 新しいモデルには、ここ10年ほどの間 に見直されて新たに加えられたエント リーが含まれるだけではなく、微細な

文字や編集ルールであるがためにこれ までデータベース上では修正されつつ もオンラインでは出版されることのな かった点も数多く反映されることにな ります。このような修正がされることの ウェブサイトにとっての利点は、スタン ダード化が進むことによって検索の成 功率が高くなることにあります。 従来より、辞書というものは内向き なものとして捉えられてきました。読者 は必要なときに辞書を頼って欲しい情 報を得ると、また辞書から離れた生活 に戻っていました。私達は、そうではな くて、辞書にも外へ向かう部分を持って ほしいと思ったのです。読者を、ある一 つの言葉からより広い言語の世界、そ してそれ以上へと導くものであってほ


しいと思ったのです。今回の新しいバ ージョンにおいては、一つ一つの辞書 のエントリーは旅の終点ではなく、始 まりなのです。  機能の向上 向上させたかった機能のリストのう ち、まず私たちがトップにあげたの が、2009年に書籍として出版された Historical Thesaurus of the OED と のオンライン上でのリンクでした。こ のリンクによって、ユーザーたちは、例 えば「pencil」という単語の意味を調 べた後に、画面に表示されるリンクよ り歴代のpencilの関連語義(例とし て、greff、 pointel、 style や gad な

ど他にも100以上の語義) を確認す ることが出来るのです。他にも、ある テーマで検索した場合(例えば 「religion」 (宗教))、ユーザーはす ぐさま、このサブカテゴリに属する OEDのエントリーや単語の意味など 全てにアクセスすることが可能なので す。 また、検索をするときに、複数のル ートの選択肢があります。類義語への リンクをやめて、ユーザーは地理のリ ンクをたどることも可能です。この場 合は、言葉がそれぞれ、使われる地 域別にリストアップされています。 (インド: 695、 オーストラリアとニ ュージーランド: 3,987)または、スラ ングを調べるリンクを選択することも

できますし、スラング&オーストラリア というリンクを見ることも可能です。 これらの検索能力の一部は、辞書 の内部データベースに付随された追 加のタグによって可能となっていま す。この能力が顕著なのが語源を調 べるときです。リニューアル前のオン ライン辞書では、 「イタリア語」を語 源とする英単語を検索した場合、イタ リア語について何かしらの記述を含 む全てのOEDの語源エントリーのリ ストが検索結果として表示されてい ました。しかし新バージョンでは、本 来の語源が直接的にイタリア語であ る英単語のみが検索結果として表示 されるようになりました。 リンクは時々、OEDを越えて外部へ と飛びます。今後はこのような外部へ のリンクも更に増えていくことと思い ます。例えば「dog」についてのOED のエントリーから、今後(購読されて いることが前提ですが)トロント大学 の古英語辞書や、ミシガン大学の中 世英語辞書の同じ「dog」エントリー へもリンクから飛ぶことができ、その 言葉の持つ意味をより深く知ること が出来ます。 その他に加わったリンクとして は、OEDのエントリーで引用文として 用いられているテキストや著者名か ら、Oxford Dictionary of National Biography(オックスフォード・英国人 名事典)に掲載されている、その著者 自身の情報(情報があれば、 ですが −そして大抵の場合、掲載されている ことが多い)に飛ぶことが出来るもの です。 このような機能によって、OUPのも うひとつの中心となる英語辞 書、Oxford Dictionaries Online (ODO)、現代英語の辞書であり、言語 レファレンスサービスにも単語をリン ク出来るチャンスが出来ました。これ によって、OEDユーザーは、もう少し 規模の小さい現代用語辞書が同じ単 語をどう扱っているのか確認するこ とが出来、また逆にODOのユーザー も彼らの辞書の単語から、OEDの歴 史的(そして現代の)世界を垣間見る ことが出来るのです。 もちろん、これらオンライン辞書の 出現で、プリント版の辞書がなくなっ てしまうわけではありません。 我々は、第3版のOEDを印刷すべきか どうか、OEDの更新が終了するまでは 決定する必要はなく、また、OUPは今

のところ、辞書の印刷を辞める計画 はありません。 ここまでの話から、OEDという言 語のネットワークにとてもたくさんの 新しいリンク(研究のチャンス)が張 られているという印象をお持ちにな ったと思います。サイトリニューアルに 際して、もうひとつの大きな改善は、 以前は言葉でしか表すことができな かった、OEDデータのビジュアル化と グラフィック表現が新たに加わったこ とです。OEDに332ものポリネシアン 語源の言葉があることを知るのは良 いことかもしれませんが、それをクリ ックして、年表グラフで見ることが出 来れば、より意味のあるものになるか もしれません。ポリネシアン言語の 言葉は、1750年以前には全くなく、突 然1830年と1840年にピークを迎えて いることが、データを見ればわかりま す。これらの言葉にもう一度戻って検 証することで、なぜこのようなデータ の構造になっているのか、理由がわ かると思います。このようなデータ は、グラフで見るほうが意味が見出し やすいと言えるでしょう。 私は、この新しいOEDのウェブサイ トのデザインも新しくなっていること もお知らせしたほうが良かったのでし ょうが−他にもたくさん、お伝えすべ きことがありましたので割愛させてい ただきました。編集者として、OEDオ ンラインのウェブサイト再構築には非 常に苦しい編集リサーチ、そして分析 の仕事が伴いましたが、それらが新し く、フレキシブルでまたダイナミック なデザインや機能となったことを嬉し く思っています。

読者を、ある一つの 言葉からより広い 言語の世界、そして それ以上へと導く ものであってほしい と思ったのです。

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| NEWS

オックスフォード大学出版局、 を世に出す オックスフォード大学出版は、Social Explorer とパートナー提携を行い、 socialexplorer.com をグローバルに配 信することになりました。 Social Explorer は2003年に発表されたウェ ブサイトで、最も情報量豊かで、かつ 使いやすい人口統計、をミッションとし てかかげ、スタートしました。現在では

インターネットで見ることができる世 界中のどの人口統計のサイトよりも多 く使われており、2010年にはアメリカ 図書館協会及び協会の一部署である レファレンス&ユーザーサービス協会 (RUSA)から2010 Outstanding Reference Source賞に選ばれていま す。 Social Explorerは膨大でかつ成長 しつづけるデータとわかりやすいビジ ュアルインターフェースを融合させ、人 口統計や統計リサーチ、社会トレンド の分析結果を誰にでも使いやすく明瞭 なリソースに作り上げています。ウェブ サイトは、米国コミュニティ調査 (ACS)を含む、歴代の米国センサス (国勢調査)全てからの結果、加えて 米国宗教団体の会員データの数百、数

千を超えるレポートや、それ以上もあ る統計マップの情報を提供していま す。ウェブサイトは常に新しいデータや 機能の更新がなされ、更に、今後米国 以外の国のデータも掲載する計画が 進められています。 Social Explorerは社会学を学ぶ学 生、教員、研究員など幅広い層に有意 義なリソースです。このウェブサイトは OUPより全世界に向けて配信され、年 間契約で各図書館に提供されます。

詳細はこちらのURLから:

www.oup.com/online

オックスフォード大学出版局の図書館諮問委員会(LAG)の国際化 オックスフォード大学出版局が毎年開 催する図書館諮問委員会(Library Advisory Group、LAG)は、例年と異 なり各国から新しい図書館委員メンバ ーを招いて行われ、非常に国際的な会 となりました。13名もの著名な図書館 員がこの5月、オックスフォードまで足 を運んでくださいました。その中には 遠く中国、日本、インドやオーストラリ アから会に参加した図書館もおられ、 また、北アメリカや欧州からの例年の 参加者もいらっしゃいました。 OUPの新CEOである Nigel Portwood氏がまず、会議の初めに挨 拶を行い、自己紹介に始まり、更に学 術図書館や出版社を取り巻く変化や新 しい挑戦の数々について話しました。 このうち、変化のひとつとして取り上げ たのは、OUPのアカデミック及び学術 ジャーナル部門のディレクターであっ た Martin Richardson氏の退職につ いてでした。 その後、すぐにOUPのリサーチディ レクターである Richard Gedye氏とデ ィスカッションに入りました。ディスカ ッション内容は、学術出版が直面する 競争の激しい市場についての問題で す。ディスカッションは金銭的な面か ら、更に、最近の新しい技術、例えば 新しい論文のフォーマットやビジネス モデルについてまで話し合いがされま した。このうち、新しいビジネスモデル

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については、OUPのヘッド・オブ・オン ラインセールス、Chris Bennett氏の e-booksに関するセッションの際にも 議論の中心として取り上げられまし た。インターネット上で出版される電子 レファレンスや学術コンテンツが更に 増え続けることを考えると、市場への ルートは現時点でも将来でも、新しい セールスモデルを念頭におかなければ ならないことは明白です。 今回の集まりでは、遠方より集まっ てくださった各国のゲストの意見を聞 き、新しい知識を得ること、また、国際 マーケットについてのディスカッション の基盤となるアイディアを得ることも目 的の一つでした。特に世界的な経済危 機がもたらした、政府からの教育分野 への資金援助のインパクトの大きさが 問題とされました。全体的な意見とし ては、この資金援助の件は欧州では状 況が悪く見通しが暗い、米国でも寄付 金の収入が下がったことによって多く の機関に影響が出ているとのことでし た。ただし、アジアの一部では状況が 異なるようです。メンバーの一人、 Inflibnet コンソーシア代表の Dr Jagdish Arora氏が現在も続けられて いるインド政府の教育投資について、 その全体像を話してくださいました。 また、これと似たようなケースとして、 中国の北京大学図書館を代表する Qiang Zhu氏が中国政府の高等教育

に対する手厚い投資について話してく ださいました。オープンアクセスに対 する権限についての様々な提案につい ても議論されましたが、米国のエール 大学代表の Ann Okerson氏は、現在 提案されている米国の法律案の可能 性について話してくださいました。 午後の会議は技術的な面について の議論が中心となりました。リバプー ル大学の Terry Bucknell氏とハダース フィールド大学の Graham Stone氏に よる次世代図書館検索システムと発見 ツールのデモンストレーションが行わ れたのです。メンバーのディスカッショ ンは、これらが図書館と出版社両方に 及ぼすインパクトについて議論されま した。特に、出版社が、それら新しい 技術をサポートするために知っていな ければならないことについてなどが話 されました。システムベンダーに対して いかにタイムリーにメタデータを提供 していくか、ということについては今回 の会で学ぶことができた重要な知識 の一つでした。 これまで以上に、このようなざっくば らん、かつ深い図書館員たちとの議論 はOUPの今後の出版戦略に多いに貴 重な財産となることでしょう。

ジャーナルコンテンツ、 新しい プラットフォームへの 移動、成功する オックスフォード大学出版局の120万 ものオンラインジャーナル論文が、 先月、無事、Highwire2.0プラットフ ォームへ移動した。 このプラットフォームの移動によっ て、OUPはよりユーザーフレンドリー でダイナミックなインタフェースで論 文を提供することが出来るようにな り、次々に変化を求められるオンライ ン出版に対応するとともに出版業界 でのOUPのポジションを強化するこ とに成功しました。新しく設計し直さ れたオックスフォード・ジャーナルの ウェブサイトは、これまでに定評のあ るウェブ出版基準に沿ってデザイン されたものであり、更にHighwire Pressのウェブ技術、H2Oによって強 化されています。 大部分の変化はユーザーにとって は見えないところでの技術的な部分 の変化です。新しいプラットフォーム への更新によって、論文の表示の仕 方が変わったり、より読みやすいレイ アウトに変わったり、画像の表示方 法が改善されたり、異なるデバイスで も読みやすいようにフレキシブルな ページレイアウトがされたり、より操 作しやすい工夫がされています。ま た、調べによると60%以上のユーザ ーが検索エンジンから論文そのもの にアクセスするということを考慮し て、論文それぞれのページに背景情 報、文脈を掲載することによって、ど のページも実質的にはホームページ のようにすることが可能となりまし た。 今年1月から2月にかけて20のジャ ーナルサイトがパイロット版として新 しいプラットフォームに移動され、以 降、223ジャーナルが8月から9月の間 に移動されました。今回のプロジェク トでは、OUPの全ジャーナルを無事、 新しいプラットフォームへ移動させる ことが出来ました。今年以降も、更に デザインや機能の追加を行っていく 予定です。


INTERVIEW | ンテンツをデジタル化しています が、これらのデータをどう知らし め、アクセスしてもらうか、について はまだほとんど検討されていませ ん。更に心配なのは、これらのうち いくつかのデジタルコンテンツの 短命さにあります。Internet

Archive、Portico、そして アメリ カ議会図書館のデジタル保存プ ログラム(NDIIPP)も例外ではな く、非常に多くのデジタル情報が 失われていっているのです。どの 組織でも、全てのデジタルコンテ ンツを保存することは不可能で あり、また、わずか一部のデータ しか永久保存されていないのが 実情です。

インタビュー

経済危機の影響を、図書館コミ ュニティはどのように対処してい るのですか。また、ALAはどのよ うな対応策を考えていますか。

アメリカ図書館協会(ALA) 会長

Roberta Stevens氏の過去36年間の図書館員としての経歴 は、アメリカ図書館協会の現会長として適任であることを示し ています。Illumineaは、図書館コミュニティが直面している 様々な変化について、Stevens氏の意見を伺いました。

コンテンツが溢れ、情報過多になっている昨今、図書館 が考え、焦点を合わせなければならないスキルとはどうい うものだと考えますか。 図書館員のプロフェッションの基盤となるものは、これまでと なんら変わらず、人類の記録を保存すること、知識へのアク セスを確保すること、知識の自由、そして我々のデモクラシー の存続のための、知識ある市民を重視することに他なりませ ん。21世紀の図書館員たちは、従来のスキルに加えて新しい 技術も取り入れ、フレキシブルであり、変化を先取りすること ができ、そして新たなニーズに対応するためにこれまでの方 法を捨てる勇気を持つことだと言えます。

図書館員たちは、どのようにして、印刷物からデジタルコ ンテンツへの移行へ対応していっているのでしょうか。特 にデジタル情報の保存についてはどうでしょうか。 研究に要するデジタル化したデータベースを提供することは、 ここ何年もの間、図書館の基本サービスの一つでしたし、図 書館員は早くもe-booksのサービス提供に向けて動き出して います。しかし、電子版コンテンツの読者にとってスタンダー ド化されたフォーマットがないことは、図書館の電子版コンテ ンツのダウンロードをより難しくしています。しかし、これ以 上に大変なのはデジタル情報の保存です。多くの図書館でコ

図書館は、 年々あがる 費用、 逆に減る 一方の資金援 助、 常に求めら るサービスの 向上と増え続 けるユーザー とその使用量 という、 完全に 嵐のような 状況に立ち向 かっています。

図書館は、年々あがる費用、逆に減 る一方の資金援助、常に求めらる サービスの向上と増え続けるユー ザーとその使用量という、完全に 嵐のような状況に立ち向かってい ます。加えて、図書館はこれまでに 投資した設備やスタッフ、購入した 書籍や雑誌などのコレクション、そ れからデータベースに対し、費用対 効果(ROI)を出すように求められ ています。ALAでは、図書館の様々 な問題解決のためのスキルの向上 を何よりも優先させることにしまし た。協会の戦略プランでも、このこ とは大きな目標の一つです。この目 標には次の目的が含まれていま す。 1)図書館がもたらすインパク トの大きさを証明する評価や報告 書へのサポート、2)図書館の資金 調達を助けるための草の根運動の 動員及び存続活動、3)図書館にと って有利な法律を守るためのコラ ボレーション活動。

図書館内部で起こる変化、そして 図書館を取り巻くコミュニティの 意見の変化などについていくた めに、どのようなことをされてい るのでしょうか。 会長として、私はALAでも最も表に 出ることの多い人間です。その私に は、多くの協会会員たち、政府関 係の方々、図書館員や図書館ユー ザ達がついていて、彼らは私に様々

な意見、そして助言をしてください ます。彼らは私にとって、異なる図 書館コミュニティで何が起こってい るのかを知るための 重要な情報

源であるのです。それに加え て、ALA自体が持つ情報も、私は フルに活用しています。ALAが提 供する、ウェブ上で行われるセミ ナー、ウェビナーや eラーニング コースは過去2年間で飛躍的にそ の数を増やしており、このような オンラインシステム上で学ぶこと が快適なことであり、またこのよ うなプロフェッショナルな知識を 得ることが発達し、楽で安価に なってきています。

図書館が、ユーザーである読者 や研究者の新しい要望に対応し ていく中、貴方はALAの会長と して、在職期間中、どのような変 化が起こり、またそれに対しどう 対応していくと思いますか。 私が会長として決意したイニシアチ ブのうちいくつかは、図書館の問題 解決を図るための戦略をサポート していて、また、今後新たな資金源 を開拓していくことの必要性に対 応しています。私の就任時の会で は、私は「Our Authors, Our Advocates(私達の著者は私達の 主唱者)」というプログラムをロー ンチしました。著者というのは、そ もそも図書館の味方なのですが、 それだけではなく、彼らは独立した 個々の著名人であるのです。その時 の会で夜、スピーカーとなった4名 の著者は、著者のコミュニティがい かにALAのパートナーとなり、図書 館のために主唱者となれるか、が 明らかになった良い例でした。二つ 目のイニシアチブは、ソーシャルネ ットワークを使い、子供や青年を 巻き込んだ、 「なぜ私には図書館 が必要なのか」というビデオを作成 することであり、また三つ目のイニ シアチブは図書館が資金源を確保 するための様々なオプションを作り 上げることです。これらのタスク、そ して遂行のためのチームに、私は ALAの新しいメンバーや、これまで あまり意見を出す機会のなかった メンバーを抜擢しました。私 は、ALAで新しいジェネレーション のリーダーを育てることに力を注 ぎたいと考えています。

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| FEATURE

学術出版の将来: 図書館ビジネスは これまで通りで 大丈夫か? 下記は Rick Anderson, 米国ユタ大学、 マリオット図書館の学術リソース&コレクションのアソシエイトディレ クターが、図書館予算が減少している状況の中、図書館が取るべき道にどのような選択肢があるのか、 コメントし たものです。次の右頁には、Anderson氏のコメントに対する、出版社と図書館員の意見を掲載しています。

在の予算の環境では、ほと んどの研究図書館は数年 前よりもかなり限られた範 囲での書籍、学術ジャーナル、そして データベースの購入を余儀なくされて います。この状況が近い将来のうちに 改善すると考えている図書館員は少な いと思われます。同時に、他の図書館 サービスの利用は増え続ける一方な のに対し、貸出部数そのものは大多 数の図書館で減っているのです。この ような状況が重なることで、図書館 は、これまで以上に大規模の思惑買 いを正当化することが難しくなってい ます。というのも、貸出部数が減少し ている今、購入した資料が無駄になっ てしまう恐れが非常に高く、そのため 最近ではこのような図書館のニーズに 合わせた様々な購入モデルが提案さ れてきているからです。これらのモデ ルは図書館が必要なものだけ、または 必要と感じたときにのみ購入できるよ うなものとなっています。

この新しい現実は、従来のような図 書館側の思惑買いに主に頼りビジネス を展開してきた学術出版社にとって脅 威と感じられているでしょう。学術出 版社にとって、ある程度、(a) オーガニ ックな成長を望むこと(社の目標達成 のため、もしくは株主たちを満足させ るため)、(b) 図書館セールスが成長目 標の大きな手段となっているところ、 では、かなりゆゆしい問題となってい ることでしょう。 もし私が学術出版社であり、今後ど のように問題を対処していったらよい のかオプションを考えたとしたら、こ の4つと言えると思います。 1. フラットな成長率で良しとする、ま たは若干利益が下がっていくくらい でも良しとする(おそらく長期的に みると生き延びていけない戦略で しょう) 2. 図書館のマーケットで今後も活発 な成長を期待し、探していく(これ もおそらく長い目で見るとあまりよ ろしくない戦略でしょう)

3. 図書館を経由しない、新たな道を 探る。このアプローチには様々な形 があり、うち、いくつかはこのような ものであると考えます。 a. マーケティングとコンテンツの販 売を、直接、教授団や学生たち、 研究員たちに行う b. マーケティングとセールスを、大 学事務局を通じて直接キャンパ スごとに行う c. 別のセールスモデルに広げてい く d. 学術情報市場そのものから完全 に撤退し、代わりに何か他の出版 ビジネスの可能性にかけてみる 4. 従来の出版業以外に、何か別の情 報サービスを提供していく 上記の4つのオプションのうち、図 書館にとってもっとも注目すべきは3つ のオプションです。図書館のパトロン ともいうべきユーザーたちは、以前の ような形で図書館に頼ってはいませ ん。図書館はこれまで以上に、勉強を

Rick Anderson氏の、EDUCAUSE Review, vol 45, no 5 (July/August 2010)に掲載されたオリジナル記事の要約版です。 オリジナ ル記事はこちらから読むことが可能です。http://www.educause.edu/EDUCAUSE+Review/EDUCAUSEReviewMagazineVolume45/ IfIWereaScholarlyPublisher/209335

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...図書館はこれまで 以上に、勉強をする 場所として人気で はありますが、従来 のサービスである、 レファレンスや図 書の貸出部数自体 は減少しているの です−あるところで は、 この減少度合い が極端なところもあ ります。

する場所として人気ではありますが、 従来のサービスである、レファレンス や図書の貸出部数自体は減少してい るのです−あるところでは、この減少度 合いが極端なところもあります。今のと ころ、図書館はユーザーにとってブロ ーカー的役割でその重要さを保ってい ます。ユーザーたちは、自分たち個人 個人では購入できない資料を、図書館 に頼ってアクセスすることが出来てい るのです。このブローカー的役割は、 個人のアクセス費が現在のまま高値で あるか、もしくはユーザーが各出版社 とそれぞれ交渉する手間がかかり続け る間は、重要であり続けるでしょう。 しかし、もし出版社がユーザー個人 向けの、リーズナブルな価格で手間が かからない、個人アクセスのビジネス モデルを開発したら、どうなるでしょう か。このようなビジネスモデルの開発に は、かなりの努力と多少のリスクが伴 うことは確かですが、彼らが従来のビ ジネスモデルにしがみついているほう が(もしくは左記以外のオプションを 考えるほうが)リスクが高いと言えるで しょう。これらを考えると、図書館員た ちは、今後出版社が学術情報の流通の 在り方を根本的に変えてしまう、新た なマーケティング&セールスモデルを 作りだすことを真剣に検討しておくこと をお勧めします。新しいビジネスモデ ルの世界は、従来通りにビジネスを行 いたいと考える図書館にとって、非常に 不親切なものとなることが予想される からです。


INSIGHT |

出版社の反応

図書館員の反応

Kent Anderson、CEO/パブリッシャー、The Journal of Bone & Joint Surgery

Tony Ferguson、図書館員、香港大学

Rick Anderson氏のエッセイはタイ ムリーなものであり、重要な観察結 果を記しています。現在、我々が直面 しているマクロ経済で経験している 苦労は、予算全体のシステムに隠さ れていた「余分」をさらしているので す。この余分、は経済がまだ色々と不 足の状態にあったときに、意図的に 加えられたものです。何と言っても、 情報が不足している状況のなかで は、ちょっと多めに情報を持っている ほうが、少なめに持っているよりもリ スクが少なかったからです。 しかし、今回、我々がもし「余分」 をカットすることになった場合、この 余分は永遠に戻ってこないのではな いか、ということが密かに疑われる のです。情報という空間では、経済 の循環以外に何か別の力が働いてい るようです、タイムリーに必要な情報 とか、無料の情報への期待とか、 コンテンツのみではなくて、情報サー ビスに支払いたいという意向とか。 出版社はこれまで、ある程度はこ の「余分」がシステムにあることに依 存してきました。余分な印刷物、余分 な購入、余分な契約更新。これらの 余分は、機関相手のビジネスでは利 益が大きかったため、わざわざ個人 ユーザーとのCRMビジネスを考えな くても充分補えるものでした。 しか し、図書館の予算の伸びが停滞し、 また減少しだした今、出版社はこれ までのようなビジネスには弱みがあ る、ということを感じとるようになっ てきました。中には、真剣に、個人向

Rick Anderson氏の記事は、大学側 の図書館への減少する支援と、それ が図書館員や出版社にとってもたら す結果のレビューとしてタイムリーな ものです。そこで質問は、これは本当 にそうなのだろうか?ということで す。本当に図書館予算は元に戻らな いのでしょうか。過去40年に渡る図 書館コレクションの構築を経験して きたなかで、私は頻繁に「ピーターと 狼」の嘘つきピーター役のように、 図書館の終焉は見えていると宣言 し、常に、それをひっくり返されてき ました。大学はいつもなんらかの方 法で、常に上がり続ける料金に対応 する購買パワーをもたらす十分な資 金を探し出してきたのです。 提案された4つのオプションのう ち、Rickは、図書館員が最も恐れな ければならないのは出版社が個人 読者や大学側に直接、情報を売るこ とだとしました。確かに、私たちが今 いる世の中は過去に比べると根本的 に異なることを認めますが、それで も出版社、特に学術ジャーナルを出 版しているところについては、まだ 図書館との関わりをあきらめたわけ ではないと思っています。私は一度、 ある大学出版社に、学術ジャーナル を出版しないことを批判したことが あります。彼は、彼自身もジャーナル を出版したいと思っていることを言 いました。なぜなら、ジャーナルとい うのは書籍と異なり、まだ納品して いない、そして書かれていない情報 にまでも料金を払うことを図書館が

けセールスに戻るほうが購読の継続 につながる、そのほうが広告主にとっ ても良い結果を示すことが出来るの ではと考え始めています。 ですが、これらはつまるところ、 従来からある商品のためのちょっと した戦術でしかありません。多くの 出版社が望んでいるのは、 「従来の 出版とは異なる、なにか新しい情報 サービス」を作り出すことなのです。 このアプローチは、出版社の基本 的な特性、戦略、投資、パートナーシ ップ、そして顧客に疑問を投げかけ、 損なうものになります。ですが、この 何でも余る時代−誰でもが容易に出 版することが出来、どのようなコンテ ンツでもすぐに一般化し、専門性も なくなってきている今−コンテンツ を生産する者よりも、そのコンテンツ の生産者をサポートするサービスの ほうが重視されてきているのも確か なのです。

出版社はこれまで、ある 程度はこの「余分」がシ ステムにあることに依存 してきました。

現存する学術コミュニ  ケーションシステムは、 不合理かもしれないが、 機能するのです。

約束してくれるからだ、ということで す。ジャーナルの出版は、率直にお 金になるということです。 現存する学術コミュニケーション システムは、不合理かもしれないが、 機能するのです。機能するのは教育 機関にとって評価が重要だからで す。その大学の評価というのは教授 たちに反映されるものであり、出版 社にとっての評価は質の高いリサー チに反映されるものであり、図書館 にとっての評価というのは蔵書コレ クションの質、設備、サービスに反映 されるものなのです。このどれか一つ でも失われると、システム全体が壊さ れ、存続が危うくなるのです。私は、 リサーチの仕方や、出版の方法、 図書館の意義がこの先かわろうと も、三者全員がそれぞれの役割をこ の先何年も何年も果たし続けていく であろうと、楽観的に考えているの です。

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学会・会議 当出版局が2010年10月∼2011年1月までに参加出席する主要な学会・会議一覧です。 一覧に掲載されている学会・会議に出席される場合は、ぜひ当局ブースにお越しください。 なお、当日詳細な打ち合わせをご希望の場合、学会・会議出席担当者まで事前にメールにてお申し込みください。 アジア

Innovate and Motivate 2010年10月25日 香港

担当:Liu Liping、ジャーナル部門 liu.liping@oup.com NTU Library e-Resource Fair 2010 2010年10月27∼28日 シンガポール

担当:Kaushik Ghosh、ジャーナル部門 kaushik.ghosh@oup.com CONCERT 2010年11月10∼11日 台北(台湾)

担当:Liu Liping、ジャーナル部門 liu.liping@oup.com The 12th Library Fair & Forum 2010年11月24∼26日 横浜(日本)

担当:Kazunori Oike、ジャーナル部門 kazunori.oike@oup.com SIS Conference 2010年11月24∼26日 カルカッタ(インド)

担当:Swastika Chatterjee、ジャーナル部門 swastika.chatterjee@oup.com International Conference on Digital Library Management 2011年1月11∼13日 カルカッタ(インド)

担当:Swastika Chatterjee、ジャーナル部門 swastika.chatterjee@oup.com オセアニア

LIANZA 2010年11月14∼17日 ダニーディン(ニュージーランド)

担当:Marika Whitfield、オンライン部門 marika.whitfield@oup.com 欧州

Frankfurt Book Fair 2010年10月6∼10日 フランクフルト(ドイツ)

担当:Wolfgang Steinmetz、ジャーナル部門 wolfgang.steinmetz@oup.com 担当:Katharina Baier、オンライン部門 katharina.baier@oup.com JISC RSC YH Annual Learning Resources Conference 2010年10月14日 シェフィールド(英国)

担当:Jennifer Brothwell、オンライン部門 jennifer.brothwell@oup.com

Internet Librarian International 2010 2010年10月14∼15日 ロンドン(英国)

担当:Hannah Dernie、ジャーナル部門 hannah.dernie@oup.com Working In A Digital Age: The Tenth Anniversary E-books Conference 2010年10月21日 エディンバラ(英国)

担当:Jennifer Brothwell、オンライン部門 jennifer.brothwell@oup.com Public Library Authority Conference 2010年10月20∼22日 リーズ(英国)

担当:Ged Welford、オンライン部門 ged.welford@oup.com Hellenic Conference Of Academic Libraries 2010年11月3∼5日 アネテ(ギリシャ)

担当:Victoria Lopez、ジャーナル部門 victoria.lopez@oup.com 担当:Helen Edgington、オンライン部門 helen.edgington@oup.com Asamblea Rebiun 2010年11月3∼5日 ラス・パルマス(スペイン)

担当:Annaig Gautier、オンライン部門 annaig.gautier@oup.com Pharma-Bio-Med 2010 2010年11月7∼10日 セビリヤ(スペイン)

担当:Hannah Dernie、ジャーナル部門 hannah.dernie@oup.com London Online 2010年11月30日∼12月2日 ロンドン(英国)

担当:Wolfgang Steinmetz、ジャーナル部門 wolfgang.steinmetz@oup.com 担当:オンライン部門 onlineproducts@oup.com

北アメリカ

Virginia Library Association 2010年10月21∼22日 ポーツマス、ヴァージニア

担当:Jenifer Maloney、ジャーナル部門 jenifer.maloney@oup.com 担当:Colleen Bussey、ライブラリーセールス部門 colleen.bussey@oup.com Pennsylvania Library Association 2010年10月24∼27日 ランカスター、ペンシルバニア

担当:Belinda Hayes、ジャーナル部門 belinda.hayes@oup.com 担当:Susan Goodgion、ライブラリーセールス部門 susan.goodgion@oup.com Internet Librarian Conference 2010年10月25∼27日 モンテレー、カリフォルニア

担当:Taylor Stang、レファレンス&オンライン マーケティング部門 taylor.stang@oup.com Charleston Conference Vendor Day 2010年11月3∼6日 チャールストン、サウスカロライナ

担当:Francesca Martin、ジャーナル部門 francesca.martin@oup.com 担当:Deb Farinella、ライブラリーセールス部門 debbie.farinella@oup.com ALA Midwinter 2011年1月7∼11日 サンディエゴ、カリフォルニア

担当:Jenifer Maloney、ジャーナル部門 jenifer.maloney@oup.com 担当:Rebecca Seger、レファレンス&オンライン マーケティング&セールス部門 rebecca.seger@oup.com 担当:Deb Farinella、ライブラリーセールス部門 debbie.farinella@oup.com 南アメリカ

London Onlineへご参加ですか? OUPの様々な商品一連のご紹介を予定していま す。この中には、Oxford Bibliographies Online、Taruskinの Oxford History of Western Music、Oxford Medical Handbooks Online Phase 2、リニューアルされた Oxford English Dictionary、そして2011年に新規参加するジャー ナルの数々をご紹介いたします。

XVI SNBU / II SIBDB Biennial Conference 2010年10月17∼22日 リオデジャネイロ、ブラジル

担当:Greg Goss、ジャーナル部門 greg.goss@oup.com

フリートライアルのお申込みでくじ引きに参加で きます。たくさんの賞品をご用意してます。 打ち合わせのご予約、その他のお問い合わせは学会・会議出席担当者までメールにてご連絡ください。

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オックスフォード大学出版局の 主要連絡先 オックスフォード大学出版局の、出版物・サービスに関するご質問や お問い合わせは下記連絡先へメールまたはお電話にてご連絡ください。

ジャーナル連絡先 OUPは、図書館(単独または複数施設)やコン ソーシアムがパッケージ(オックスフォードジャ ーナルコレクション)として、または図書館利用 者のニーズに合わせて選択的にカスタマイズし てご利用いただける、230 誌以上の学術ジャー ナルを出版しています。過去にさかのぼるバック ファイルも、Oxford Journals Archive からご利 用いただけます。

販売 製品情報、無料体験版のリクエストおよび見積 は、library.sales@oup.comまでメールをお送り ください。販売担当者に個別に連絡するに は、www.oxfordjournals.org/for_librarians/ quote.html サイトよりご連絡ください。

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オンラインプロダクツ 連絡先 オックスフォード大学出版局では、多くのオンラ インプロダクツを提供しています。当局の評価 の高いものには、Oxford English Dictionary、Oxford Dictionary of National Biography、Oxford Reference Online、Oxford Bibliographies Online および Oxford Scholarship Online などがあります。

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書籍を越えて: デジタルの未来とパラレルプロセス OUP公文書保管人の視点 Dr Martin Maw、公文書保管人、OUP

ジタル技術は時として、や やこしくもあります。出版 社はドアがいくつもある家 の鍵束を手にしつつ、どの鍵がどのド アに合うものなのかわからないという 状態です。そして、もしドアが開いたと しても、そのドアの向こうには空っぽ の棚があるだけなのか、もしくは想像 したこともないような宝の山に出会え るのか、まったく見当もつかないので す。ヨーロッパで印刷技術が発明され た15世紀以降、初めて出版業界が印 刷業の新たな可能性に対して考えを 覆したのです。 もしかしたら、デジタル出版という のはプロセスであると考えるのが一番 良いのかもしれません。収集、選別、 その後、従来の書籍とはまた別の方 法で物を作り出すことに他なりませ ん。印刷された書籍に慣れ親しみ育っ てきた多くの人々は、この考え方に馴 染めず、むしろ脅威に感じるかもしれ ません。ですが、英語の読み方だっ て、時代に合わせて進化を遂げてきた ものなのです。はるか昔、読み書きが できるギリシャやエジプトの知識人 たちにとって、ブストロフェドン (boustrophedon)−文章を端で折 り返す書き方、左から右に書くと、次 の行はまるで畑を耕す牛のように右 から左へ引き返す、 「牛耕式」と言わ れる書き方が普通でした。また同じよ うに、中世の僧侶であれば、句読点も なにもないラテン語の塊を見たとして も、青ざめたりすることはありません でした。今日、当たり前のこととして受 け入れられている句読点も、7世紀に 入って聖書の模写が行われるようにな ってから使われだし、その800年後に ベネチアの商業印刷の父、 マヌティウ スにより一般的になったものなので す。ですから、新しい技術が、現在の テキストをより改善し、その読み方を 変えることも容易に想像できることで す。 一昔前の人々は情報にアクセスする

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ことについて、偏見が少なかったよう です。 1520年にオックスフォード大 学では Compotus Manualis ad Usum Oxoniensum(「学生のための 手計算ガイド」)というパンフレットを 数学のプロジェクトに取り入れまし た。大学の専門用語でわかりにくくな っていましたが、指を曲げたり、両手 のひらや関節を使う運動を開発する ことで全ての西暦を表すことができる というもので、現在も使われている指 のバイナリーや韓国のチセンボップと 類似しているものです。

出版方法の変化はリテラ シーを向上させられる このようなツールは知識人にとって必 要なものであることが証明されてい て、似たようなツールに関する書籍を エリザベス時代の数学の魔術師、 John Deeの図書で見つけることがで きます。ルネッサンス時代の学者なら ば、このような技術は書物から学ぶこ と同様に自然なこととみなされ、 「記 憶の宮殿(memory palace)」とい う、書籍全巻を記憶し自在に取り出せ る、素晴らしい記憶方式の簡易版と 考えたでしょう。また、このような能力 があることで、印刷された文字を過小 評価したわけではなく、むしろ、ツー ルは、印刷物がないときに、言葉が伝 える意味を連想させることが出来たの です。 このようなツールと並行と考えられ るのが手話です。欧州の学者たち は、17世紀、様々な記号やその意味に ついて、問い始めました。きっかけと なったのは中国の漢字が西洋に伝わ ったときでした。学者によっては、そ れまで親しんでいたインド・ヨーロッ パの文字とは全く異なる漢字を、実物 からヒントを得た絵文字と間違うケー スも出てきました。捉え方は間違って いたものの、この考え方はやがて記号

についての哲学的な 意味について考えるま でに発展し、英国では 聴覚障害者のための 最初の掌アルファベッ トを組み立てることに つながりました。オッ クスフォードでは、こ の考えをGeorge Dalgarnoの著 書、Deaf Man’s Tutor (1680) によって一般的 なものに広めました。 Dalgarnoは、アルファ ベットを掌に配置させ ることで、聴覚障害者 たちとのスピーディー なコミュニケーション に成功しました。書籍 を読むことについては また全く違う手法を使 いましたが、この掌 アルファベット方式は それと同等の役割を 持ったのです。 これらの経験を通し て2010年の現在にも 言えることは、出版の 方法が変わるからとい って、必ずしもリテラ シーを貶めるものでは ない、ということです。 むしろ、リテラシーを 高める変化なのかもし れません。 マヌティウ スの印刷技術は手書 きの書籍文化を壊しは しましたが、代わりに 学問を国際的に広め、 多くの人が読み書きで きるようになりました。1515年、 マヌテ ィウスの葬式では、多くのヒューマニ ストたちが敬意を表し、彼の棺を彼の 印刷した本で埋め尽くしました。今 日、携帯パソコンなどの新しい技術を 発明したパイオニアが、その後、印刷

の父マヌティウスのように敬意を表し てもらうことになるかもしれません。


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