kayano_soto 3

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DEC.2012

カ カ ヤ ヤノ ノ ソ ソト 33 ト


kayano_soto issue 3

http://blog.livedoor.jp/kayano_soto/

3 Two Inch Punch 6 Taquwami 10 Kent Alexander (Paisley Parks) 14 Seapunk Gang 18 Disc Review 22 Column


Two Inch Punch はロンドン出身の Ben Ash によるソロプロジェクト。これまでに Jessie Ware を 擁する PMR から2枚の EP を出しているほか、DJ としてもイギリスを中心に様々なパーティー に出演しています。そのソウル、R&B の持つロマンチックなフィーリングと、ポストダブステッ プなビートが絡み合うサウンドは独特でありながら、いわゆる「王道のラブソング」が醸す普遍 的な甘い世界観に浸らせてくれます。今回は一貫してその世界観を支える「Love」的なものの背 景に迫るべくインタビューしてみました。(interview / text: 510373)

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―まず始めに簡単に Two Inch Punch について、自己紹介をお願いします。 Two Inch Punch としてこれまでに『Love You Up』、『Saturn』という 2 つの EP をリリース してるよ。いまはもうすぐ出る EP の制作と、NY のプロデューサーとのコラボレーション に取りかかってるんだけど、とても楽しんでるよ。 ―Two Inch Punch の音楽についてご自身で「Luvstep」と呼んでいたり、曲のタイトルも 「Love/Luv」がつくものがいくつかありますが、「Love」というのは重要なコンセプトの一 つなのでしょうか? そうだな、ラブソングって一番力があるものだと思うんだよね。僕は普段 Soul や R&B ベー スのものをよく聴くんだけど、そういう音楽でも Love って重要な要素だし。 ―では、トラックを制作する上でラブソングのようなロマンチックなムードを作り出すこ とは意識していますか? ああ、その点はかなり意識してるよ。 ―過去のインタビューでメロディーの重要性について語っていますよね。Two Inch Punch の楽曲においてメロディーはどのような役割を果たしていますか? 素晴らしい歌詞を聴いたり読んだりするよりも、素晴らしいメロディーの方に感動を覚え るんだよね。本当いつもメロディーのことを考えてる。メロディーを作るときはいつも、 聴く人が何度でも繰り返し聴きたくなるような何か、力強くてダイレクトなものが作り出 せないかって思ってるよ。 ―シンガーとコラボレーションした曲とサンプリングを使っている曲とがあるとおもうの ですが、ご自身では両者の違いはどのようなところにあると思いますか? うーん、ボーカルサンプリングでも生の声でも一緒っていうか、同じように処理できるん だよね。でもサンプリングのいいところはチョップしたり、スクリューしたり、自分の好 きなようにいじれるってことかな。シンガーはそこにいないから、声を最大限にピュアな ものとして扱えるっていうか。既に録音されているボーカルに自分なりの解釈を与えるわ けだから、サンプリングだと好きなだけ自由にやれるっていうのはあるかな。 ―では、シンガーとコラボレーションする場合ではどうですか?自分では歌わないからい つもコラボレーションを伴う作業になる、というようなことを仰っていたのを別のインタ ビューで読んだのですが。 全く歌わないわけじゃなくて、僕が歌うこともあるんだよ。でもそれより僕はプロデュー サー的な役割をしたいんだよね。違う人のボーカルをコントロールしたり、トラックに合 わせてシンガーをディレクションしたり、っていう方が好きなんだ。そうすると曲を外か ら客観的に捉えることができて、違った見方が生まれることもあるしね。

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―『Broken』や『Digital Love Letters』なんかでは生のボーカルと処理されたものとが融合 されていますよね。このようにトラックに合わせて処理したり混ぜたりするプロセスには どういった意図があるのでしょうか? トラックを完全に自分のものにするっていうのが狙いかな。よくアーティストが曲を独自 に解釈したりリミックスしたりする時に、キックをビート毎に足していって BPM を早くし たりするだろ?あれって怠慢だと思うんだよね。僕はボーカルを取り出して新しいものを 作る。そうやってトラックに僕の痕跡みたいなものを遺したいんだ。


―「ラブソング」というと一般的に愛のことを歌った歌を連想しますよね。その意味では 私たちは歌詞を読み取ってその曲をラブソングだと認識しているとも言えます。でも Two Inch Punch の曲を聴いた時、歌詞をうまく聞き取れないにも関わらず、ラブソングなんだ ろうなと感じました。 僕はボーカルを加工してるし、英語のネイティブスピーカーでも歌詞は聞き取れないだろ うな。でも例えば僕は D angelo の大ファンなんだけど、D angelo を聴いた時みんなだい たい何を歌ってるか分かるよね。だけど歌われてる内容よりも、ボーカルのレイヤーだっ たり彼の表現そのものの方に感動させられる。そういうことじゃないかな。それから僕は Soul や R&B に強く影響を受けていて、Soul や R&B はラブソングを連想させる音楽だって いうことももちろん関係していると思うよ。 ―Soul や R&B からの影響が強いということですが、Two Inch Punch にインスピレーショ ンを与えたラブソングがあれば教えてください。 メロディーに関しては Stevie Wonder の楽曲全てだな。ソングライティングやハーモニー については Beach Boys と Steely Dan。それからバイブスやグルーヴは Nas や A Tribe Called Quest とかかな。 ―DJ についても聞かせてください。これまで公開されている DJ Mix はスムースでレイド バックした雰囲気ですが、クラブでプレイするときは Two Inch Punch の楽曲にもあるよう なメロウなムードを作るよりお客さんを踊らせるということを優先していますか? 場合によるかな。クラウドの様子や雰囲気、自分の気分とかそういうものによって変えて るよ。でも音楽が実際感情に働きかける作用がある以上テンポはあまり問題じゃないと思 うんだよね。早くなることも遅くなることもあるけど。だいたいクラブに出かける人は早 い音楽を期待してることが多いし、とにかくみんな踊るのは好きだからね。 ―音楽を作るにあたって、特にビートミュージックを作るにあたってロンドンは良い街だ と思いますか? あぁそう思うよ。イギリスのシーンはすごくアツいしね。新しくてカッコいいエレクトロ ニック・ミュージックやオルタナティブな音楽がたくさん作られてるし、そういう意味じゃ 他の大きい都市よりも先に行ってると思う。この前マンチェスターの Warehouse Project でプレイしたんだけど、あの時のラインナップも凄まじかったよ。イギリスの音楽シーン が盛り上がってるってことを証明するのにぴったりの素晴らしいイベントだった。 ―所属するレーベル PMR Records についても教えてください。Jessie Ware や Julio Bashmore など他にも素晴らしいアーティストのレコードをリリースしていますね。 あぁ彼らは本当最高だよ。僕からしたら PMR はイギリスで一番のレーベルだね。いつも先 のことを見据えながら、今までにないような、でも自然と最先端になるような、オルタナティ ブなポップミュージックをリリースしているんだ。 ―今後の予定は? サウンドクラウドをチェックしてくれればわかると思う。僕はいまあるプロジェクトで NY にいるんだけど、twitter や Facebook にも新しい情報をアップしているからそっちも見て ほしいな。

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Taquwami imawuqaT Taquwami の音楽はエモい。と言うと誤解を与えるのかもしれない。ここで「エモい」というのは、ジャン ルとしての「EMO」ではなくて、とにかくエモーショナルで、リスナーの感情に触れるという意味です。アッ プテンポな曲でもダークな曲でも、「ああああ…」ってなる。この「ああああ」は、例えば思春期に聴いてた 音楽を久々にうっかり聴いてしまったときのたまらない気持ちと似た種類のもので、辞書に載ってる言葉を 当てはめなきゃいけないとしたら「ノスタルジック」ということになるのかもしれない。かもしれないけど、 これでも何か十分に言い表せてないような気がする。とにかく、私は Taquwami の音楽について、このよう に「エモさ」を感じている。これまでも色んなサイトでインタビューが掲載されていたけど、今回のインタ ビューではより核心に迫るべく、「エモさ」をキーワードにインタビューを行いました。以下のインタビュー では、彼がまだまだ進化の途上であることを伺わせる発言も多く、今後の展開がさらに楽しみになりました。 では、どうぞ∼。(interview / text :510373) —まず始めに「Taquwami」の名義で音源を発表し

— 以前はバンドをやられていたそうですね。

ていこうと決めた時点で、何か理想とする音楽のイ

T: ずっとバンドをやってきたので、三点ドラムが

メージはあったのですが?

あってベースがあってギターがあって歌があって、っ

Taquwami(以下 T): ものすごく漠然とありました。

ていう曲の作り方しか基本的にはわからなかったん

チルウェーブとヒップホップを合わせよう、みたい

です。その後は迷走して歌も歌うし、ギターもベー

な。でもそれまでヒップホップって Anticon 周辺く

スも演奏しちゃう一人バンド状態で曲を作り、出来

らいしか聴いたことがなかったので、なんとなくの

たのが『Lucky』というチルウェーブっぽい歌集で

雰囲気としてのヒップホップでしたけどね…。

した。それは皮肉なことに結構反響があって…でも ずっと頭の中ではチルホを引きずっていて、そっち

— 現在の Taquwami さんの音楽は、チルウェーブ、

に戻したいと思っていたんです。そこからはとにか

ヒップホップ、ウィッチハウス、トラップなどなど

く音楽を研究目線で聴く時間を作るようにしました。

ジャンルを横断した要素が入っていて、一つの言葉

その中でわかったことを色々試しながら出来たのが

ではくくれないですよね。その始めにあったという

『Lucky』以降の 2011 年に発表した曲達です。そし

「チルウェーブ+ヒップホップ」のイメージから現在

て 2012 年になる時には自分なりのコツみたいなも

のスタイルに辿り着くまではどのような変遷があっ

のを掴んでいて、更には Star Slinger や 808( ドラム

たのですか?例えば 2011 年の頃の曲を聴くと、最

マシン ) を知ったりして、「もうお試し期間は終わり

近の曲よりもビートというよりはチルウェーブ寄り

や!」宣言をしてようやく出来た曲が『vvi+h You』

というか、浮遊感が強いような印象を受けたのです

という曲です。これでダメならもう全部ダメだって

が。

いう気持ちでした。そこからさらに色んな音楽を知っ

T: チルウェーブとヒップホップっていう作りたい曲

た り 研 究 し た り し て 今 に 至 る っ て 感 じ で す か ね。

のイメージは元々あって…そこで一番最初に

2011 年の曲の浮遊感が強いのはでたらめに全体にリ

『Concealed Jealousy』という曲ができました。そ

バーブをかけていたからだと思います。

の時に「チルウェーブヒップホップ出来るじゃん!」

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と思って、そのままそのイメージで続けようとした

— そもそもチルウェーブのどういったところに惹き

のですが、それ以上そのイメージを具現化する技術

付けられたのですか?

も感覚もなくて結局続きませんでした。

T: 夢みたいでなにがなんだかわからない気持ち悪い


音だからですかね。あとは単純にシンセサイザー /

T: 意図は全くないですね。幸せになりたい願望が全

リバーブ / ディレイ / フィルター / っていう自分の

面に出てしまっているだけだと思います。本当は暗

好きな要素が全部、それも過剰に使われていたので

く内省的でもっともやもやしたいんですが、どんど

自然と惹かれました。

ん音を足してしまう癖があって、気づくといつもの 派手な音像でハッピー爆発状態になっているんです。

— 特にこのアーティストっていうのはありますか?

最近それが嫌で悩んでいます。

T: Toro Y Moi の『Causers Of This』と Washed Out の『Life Of Leisure』が好きです。なにか嫌な

̶ その Clams Casino の所属する TriAngle に代表さ

ことがあるとすぐスッ…と現実から逃避してしまう

れるようなダークである種鬱々としたフィーリング

人間なので、そういう時によく聴いてたと思います。

と、HudMo や Rustie に代表されるレイヴィーで過

そ れ ま で そ う い う 時 に は Animal Collective と か

剰なまでの音色が鳴っているビート系の人たちを両

Fishmans とか聴いてました。

極におくとして、Taquwami さんは自分の音楽を どのような位置にあると考えますか?

̶ チルウェーブというと高揚感・浮遊感のあるサウ

T: 難しいですね…。どっちも好きだしどっちにもな

ンドからエスケーピズムというような言葉によって

りたいしどっちにもなりたくないんですよね…まあ

評されることも多いですが、そのようなチルウェー

客観的にみたら Rustie 寄りなのかな。音派手だし。

ブの精神性にも共感するところはありましたか?

でも好きなのは断然 TriAngle 寄りです。

T: 精神性みたいなのはあまり知らないです。あっあ と Slow Magic の『Sorry Safari』にも曲作りの面で

̶ ボーカルが入っている曲はそのメロディーがノス

多大な影響受けました。

タルジックな雰囲気を作り上げるのに大きな役割を 果たしていると思います。また、たとえば『vvi+h

̶ では、ヒップホップだとどのようなアーティスト

you』などではそのメロディーにどこか日本っぽさ

に影響を受けていますか?

を感じたのですが、ご自身ではこの「ノスタルジック」

T: 基本的にトラックメーカーになってしまうんです

と「日本」という言葉を感じさせる要素があると思

が、一 番 は 間 違 い な く Star Slinger で す。あ と は

いますか?

Clams Casino、Prefuse 73、Evian Christ、Friendzone、

T: 両方ともあると思います。単純に自分がノスタル

KC 2.0、Ryan Hemsworth とかです。ラッパーだっ

ジックな音楽が好きですから、それが基本みたいな

たら Le1f とか Kitty Pryde とか好きです。

とこはありますよね。日本ぽいのは仕方ないってい うか Chara とかふくろうずとか好きで定期的に聴き

̶「Love」、「Dream」、「Cosmic」とかキラキラして

ますし…。でも Taquwami では一切その要素を入れ

たりとか、これらの言葉から連想される感覚みたい

ようとしてないし絶対に入れたくないんです。聴く

なものが Taquwami さんの音楽に通してあると思い

人にも感じて欲しくない。と言っても勝手に出てき

ます。こうしたムードを作ることはソングライティ

てしまうのはもうしょうがないので、最近はその要

ングの過程で意識していますか?

素をどうしたら安っぽくならず自分の良さとして扱

T: とにかく夢のような音っていうのは根底にありま

えるのかを前向きに考えています。

すが、基本的には意識してないです。勝手にそうい う雰囲気になってしまうので後付けで曲名に入れて いみたり、です。 ̶ そういったムードがあるからか、例えばウィッチ ハウスのダークさを「陰」だとすると、Taquwami

̶ 処理を加えられたボーカルは、人間のそれではな く機械の声のように聞こえますが、それでもたとえ ばピッチの違いなどで表情が豊かになっていたり、 聞いてると不思議な感覚になるのですが、元々の素

さんの音楽は暗いトーンの曲であっても「陰」では

材をスクリューしたりエフェクトをかけたりする時

なく「陽」のフィーリングを保っていると感じます。

はどういうことを考えていますか?

また、Clams Casino なんかに見られるもやもや感も

T: 人の声の周波数の安心感みたいのだけ無くならな

少ないように思うのですが、暗く内省的になり過ぎ

いようにしてるくらいです。あと最近はボーカルサ

ない、というような意図はありますか?

ンプルを言葉がわかるように使って、曲の雰囲気

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を決めたりもしています。

の人に聴いてもらうためにできる行為って SNS を中 心にいくつかありますけど、思いつく限り全部ダサ

̶ これまでリリースされた EP でのジャケットのコ

いしそれをするくらいなら音楽作るのやめた方が

ラージュも Taquwami さんの世界観を作り出してい

マシくらいに思ってます。

る一つの要因だと思うのですが、浮遊感のあるアー トワークであったり、タイトルの表記なども含めて

̶では、自分の曲でリスナーを「踊らせよう」とい

アーティストとしてのある種のイメージを作り上げ

う意識はありますか?もしくはダンスというフィジ

ようという意識はありますか?

カルな効果よりも、感情に作用する方が重要だと考

T: アーティストとしてのイメージは超 cho 超重要視

えますか?

しています。曲作りは創造力とか技術が必要ですけ

T: あります。踊らせるというか身を任せてほしいなっ

ど、アーティストのイメージは本人の意識次第でい

て思います。もちろん感情に作用することも意識し

くらでも変えられることですからね。それを意識し

ていていますが、それはなんというか自分のためっ

ないのはむしろ変です。と言っても作り上げようと

て感じで外向きには意識してないです。

意気込んでるわけではなく、絶対に妥協しないライ ンを守っている、という感じです。アートワークも

̶ 今はインターネット上で投げ銭制で買えるように

もちろん重要視しています。大体において曲より先

していますが、フィジカルリリースなど理想とする

に見られる部分ですし、アートワークが良くないと

リリース形態はありますか?

曲も良いと思えない病なので。

T: もちろんフィジカルが理想です。レコードとデジ タルで出せたら一番いいです!

̶ タイトルの表記はどうですか? T: それはふざけてただけですね(笑)。『vvi+h You』

̶ ラッパーやボーカリストとコラボレーションして

の頃はそれをやっている人があまりいなかったので

みたい、というような発言を twitter でされていまし

面白かったのですが、今やったら使い方にもよりま

たが、トラックに生のボーカルがのるとこれまでと

すがまあ寒いですよね。シーパンクとか意味のわか

はまた違った印象が生まれそうですね。コラボレー

らないビートものをやってる人ならアリだと思いま

ション相手のラッパーやボーカリストにはどういっ

すが…。『Blurrywonder』の曲も最初は『R◒м∆η†

たことを期待しますか?

i© Gαƶe』とかだったんですけどリリース直前くら

T: 優しさ

いに色々考えてやめました。 ̶ ラッパーやボーカリストとのコラボレーション以 ̶ そのようにトータルで作り上げられた世界観は一

外で今後やってみたいことはありますか?

方で Taquwami さんというアーティストの匿名性も

T: シンガーをプロデュースしてみたいです。Blood

強調しているように思えます。その世界観がインター

Orange イケイケで羨ましいです。あと東京でチル

ネット上で展開されているからこそなのかもしれな

ウェーブとかウィッチハウス後のビートみたいな人

いですが、匿名性を保とうとする狙いはあるのでしょ

だけを集めてコレクティブ兼パーティーを作りたい

うか?

と思っています。自分が定期的に出るイベントが欲

T: これは正直意識してないですね。名前も普通に出

しいし、東京から世界になにかしらをアレしたいと

してますし、自分が写ってる写真で良い写真があれ

いう理由からです。まだ目星も含めて誰もいないん

ばすぐにでもアーティスト写真に使うくらいです。

ですが、日本でこういう音楽やる人全然出て来ない

でも写真を撮られるのはこの世で一番嫌いな行為な

ですよね…僕が知らないだけなのか。いたら教えて

のできっとそうすることはないでしょう…。まあと

欲しいです!

にかく自分がダサいと思うこととか安っぽいことは 絶対にやらないようにしているくらいです。たくさん

Ruddyp & Taquwami Hold <Void Youth>

Taquwami Blurrywonder <Void Youth>


KE NT ALEXANDER

INTERVIEW

Paisley Parks

Pan Pacific Playa のコア・メンバー、脳、Kes の両氏を中心に構成される Paisley Parks。 10 月の TRAXMAN Japan Tour では、メイン・アクトの後という出番を物ともせずドープで不埒 なライブをカマした光景は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。 そんな彼らに Zine の初号でインタビューを敢行したが、その時はメンバーが一人欠席していた。 その不在だった人物こそが、今回のインタビューを快く引き受けてくれた Kent Alexander だ。 カルフォルニア生まれ、横浜育ち。アメリカ人の父親、日本人の母親を持つ PPP 最年少の青年は、 現在アメリカの大学に在学中。12 月下旬に日本帰国予定らしい。 Paisley Parks の不穏で謎めいた言葉のヴォイス・サンプリングは彼の声によるものである。 今回のインタビューは、Kent が実際に見てきた光景、シカゴ、ニューオーリーンズという都市 に息づくゲットー・ミュージックの状況の考察を話してもらった……とカッコ良く言いたいが、 実際は彼の生い立ちやエピソードを聞いている内に話が脱線しあの音楽はどう、この音楽はこう だよと雑談が始まってしまい全て文字に起こしてみたら、その雑談の方が面白かったというハプ ニングからこのような形が産まれた。 ケントが足を運び目で見た、ご当地音楽見聞録、存分にお楽しみ下さい。(interview / text: D.J.A.D)


̶そういやケントって今、シカゴに割と近いトコ住んで るじゃん。そっちでジュークとか聴きに行ったりしない の? KENT(以下 K): てか前置きしとくけど、ジュークはシ カゴで今のところ流行ってはいない!ゲットーに留まっ ているから、それ以上にならないっていうか。企業側が 後押ししたがらないシーンというか。そこにお金がない から。ビジネスとして音楽を捉えてる人は良いマーケティ ング材料じゃない側面があると思う。メインのクラブシー ンは別で六本木のようにあるし。 ̶六本木っていわゆるチャラ箱的なってこと? K: そうそう、ディスコ・カルチャーみたいな。 ̶商業化されたものでってことね。 K: うん、そんでもって男女の出会いの場のような。 大バコとかもあるんだけど、そこは毎週世界的な大物を ブッキングしてやってる感じ。 ̶じゃあジュークなどゲットーで活動してる人が大バコ でやるって機会はあまりないの? K: スマート・バーってトコでやってるかな(ここでジュー ク の ビ ッ グ・パ ー テ ィ『Juke Fest』が 行 わ れ て い る)。 そこは結構ジューク押してるんだけど、逆に言うとそこ しか押してない。オレがラジオで DJ ストリーミングやっ た時も Tribe( シカゴのフットワーク・ダンスクルー ) の ヤツが「ラジオでフットワークが流れてる!」って反応 したくらいだから…マジで流れてないんだなって思った。 実際来てみても流れてないし。。 ̶ケントの周りの、例えば大学の友達とかはジューク聴 いてないの? K: 聴いてないっつーか、大学に友達がいないからなー。 全然ハマんないっつーか。気が合うヤツがいないし、結 局こっちの大学生っていっても日本の学生と変わんない し。めちゃめちゃ音楽好きなヤツがたくさんいるってワ ケでもないんだよね。 ̶マジかぁ、なんか意外というか。。バトルグラウンド (シカゴのサウス・サイドにあるフットワーク・バトルの メッカ的な場所)とかは行ったりした? K: まだ行ったことない、今学期の目標かな。それにオレ 見た目が白人だから少し怖いっていうか。アジア人なら マ イ ノ リ テ ィ 同 士 の シ ン パ シ ー じ ゃ な い け ど「OH∼ ↑↑」ってなるんだろうけど…だから TRAXMAN と一緒 に行ったら大丈夫って睨んでるんだけどね(笑)。という かあの人と普通に会って話してみたい! ̶絶対話した方がいいよ。あの人、超いい人そうだもん (笑)。でもまぁアレやね、ジュークはシカゴでは大バコ というよりロフト・パーティなど内々な感じで楽しんで いる感が強いね。 K: それもそうだし、あとはやっぱバトルグラウンドだと

思う。でも、動画とか見てる限り客増えてるっぽいから 今後の動きは分からないね。ただ現状はそんな感じだし シカゴのアーティストも、シカゴでというより最近は外 でやる機会も出てきたでしょ? ̶確かにね。DJ Rashad や DJ Spinn、そして TRAXMAN もヨーロッパへツアーする機会が出てきたね。 K: そうそう、そういう面じゃ特殊なのかな。ニューオー リーンズ行ったら、バウンスがガンガンかかってたし。 ̶今、ニューオーリンズ・バウンスの話が出てきたけど、 現地でバウンスはローカル・サポートが強いって前に教 えてくれたけどホントなの? K: いやスゴかったよ。前付き合ってた女がヨリを戻した かったか知らねーけど、ニューオーリーンズにタダ旅行 さしてくれて。 ̶へーなんかムカつく(笑)。 K: へへへ(笑)。そんで高速でニューオーリーンズのエリ ア入ったら、運転してる黒人のキレイな姉ちゃんの車か らバウンスがいきなり聴こえてきて「出た!」と思った の! ̶あの音楽ってアゲまくるじゃん。あれって歌のサビと かをサンプリングしてあーいうテンションにしてるの? K: そう。そしてベースとなってるリズムも2つだけしか なくて。トリガーマンって人のビートと、ブラウン・ビート …。 ̶(送られたリンクを聴く)あーそうだこんなんだ。 K: この2つが大体元みたいなもの。バウンス知ったのも そんな昔じゃないんだよね。Diplo の『Express yourself』っ て曲が超バウンスで。 ̶そ う な ん だ、て か バ ウ ン ス で 言 っ た ら 日 本 で は threepee boys って DJ ユニットの人らが最近 DJ でかけ てるのをよく見るよ。 K:(送った threepee boys のブログを見る)ハバネロと か LEF!!! とかとも共演してるじゃん、この人達!オレは このシーンに入って行きたいよ…オレこの人達の動きを アメリカからいいなーいいなーって羨ましく見ててさ(笑) 。 ̶冬に日本帰って来たらいくらでも行けるよ。 K: そうなんだよねーそしてオレもできるんだぜ!!って いうのを証明したいんだよ(笑)。 ̶ははは!いいね。向こうもケントの存在知ったら喜ぶ と思うよ。まぁそんな感じで、バウンスは日本でも徐々 にかける人が出てきてるって状況だと思うんだけど、まぁ 踊ってて楽しいよね。 K: うん、あとバウンスで面白いところは全米で唯一ゲイ・ ラッパーが認められてることなんだよね。

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̶レゲエとかではゲイの人がよく差別されたり時には迫 害を受けるなんてことも未だにあるね。 K: うん、まぁヒップホップも基本的にそうなんだけど、 バウンスはオカマだけのシーンとかあるんだよね。完全 に許されているトコが。これがそれシーンのバウンス。 ̶ (リンクを見て)……これはイカツいなぁ(笑) 。こんな タイトで丈の短い服の人見たことないで!! K: モロでしょ(笑)。これがシッシー・バウンス(Sissy Bounce)って言って。オネェ・バウンスみたいな感じ。 ニ ュ ー オ ー リ ー ン ズ・バ ウ ン ス の サ ブ ジ ャ ン ル だ ね。 ̶そのシッシー・バウンスも結構曲あるの? K: 死ぬ程あるくさいね。あ、これが普通のバウンス。若 手のヒップホップみたいな感じ。 ̶ニューオーリーンズ・バウンスって元々ヒップホップ となんか関係あるの? K: ニューオーリーンズは普通のヒップホップをやってい る人もいっぱい居るみたいで、そのヒップホップからバ ウンスに派生したような感じかな。オレの買ったポップ スの CD でも、普通の曲の中にバウンスが数曲入ってる とか平気であるね。あとやっぱローカル・サポートがあ るからさ。 ̶それって具体的にどういったトコで感じる? K: ニューオーリーンズのバーボン・ストリートってのが あって、一つの通りにバーが何十軒とあるような飲み屋 街で。そこの小さいチャラ箱みたいな場所を覗いてみん な踊ってんじゃんヒット曲とかで。そこでバウンスがか かると「うわ!キターー!!!」みたいになってる。 ̶US TOP40 とバウンスが MIX されてるとかスゴいね。 K: そうそう。ホントに「この曲知ってるー!」とかになっ てて!オレはその曲全然知らなくて、オレはもう「バウ ンスきた!!」でブチ上がってるんだけど(笑)。 ̶ポップスとカルチャーとしての音楽が一緒くたになっ てる光景って面白いな。 K: うん。でも、バウンスのみのシーンはもっと深いとこ ろにあるみたいなんだけど。で、そこにいた黒人に「良 いバウンスのハコ無いの?」って聞いたら教えてくれた んだけど、行かない方がいいって言われた。「何で白人が いるの?」ってなって危ないかららしい。 ̶やっぱ見た目の人種的な問題はあるんやねぇ。 K: それにニューオーリーンズは治安が激悪いから。観光 用のエリアが中心にあって、それの周りは全部ゲットー だった。 ̶やっぱニューオーリーンズ・バウンスもゲットー音楽 だね。

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K: バリバリでしょ。ヒップホップ自体がゲットー・ミュー ジックだからね。まぁノリやすいから現地で認知されて るってのもあると思うし。 ̶実際バウンスがかかっても、ゲットー以外の住民も普 通に踊ってるんでしょ? K: 全然踊ってる。やっぱ周りにあるものだし。さっき言っ た高速で黒人の姉ちゃんが車でかけてたって話も、その 1台じゃないし。それだけ根差してるのを見てアガった ね! ̶すごいね、そりゃローカル・サポートがあるってのも 頷ける。 K: 逆に言ったら、ニューオーリーンズでしかバウンスと か街で聴かないもん。それで言ったら Juke / Footwork もそうでしょ?元々プラミュー (Planet Mu) とかがリリー スする前は閉鎖的な環境だったじゃん。行かないと分か んないみたいな。 ̶まぁ確かに。でもシカゴのど真ん中でフットワークが かかったり踊ってるってことはあまり無いと思う。それ こそ大きな流れを求めて、ヨーロッパや他の地域へ行っ てる感じも受けるんだけど。 K: うん。それって TRAXMAN が言ってたんだけど、ハウ スと同じ道を通ってるというか。ハウスはシカゴで産ま れて、ヨーロッパで成長したって感じだけど、現在名の 知られているアーティストがほとんどヨーロッパへ行っ た時点で、もぬけの殻というか。 未だにハウスがクソ盛り上がっているっていう風に想像 する人がいるかもしれないけど、全く違うっつーか。行っ たら Lady Gaga の remix がたくさんかかってました、み たいな。そんなノリも見たから、その土地で根付いて ない感じには「あぁ…」ってなりましたね。 ̶うーん、それは市場が小さい音楽がマスへ向かおうと する段階において、避けられない問題だと思う。 K: でも、アメリカが国ごとダンス・ミュージックにハマっ たのってホント最近だと思う。ここ4、5年で急に流行 り出したってのはあるから。ポップ・シーンとかでね。 今までロックとかヒップホップだったけど、ここ5年く らいで Black Eyed Peas とか売れ線エレクトロみたいなの がチャートを賑わせてる状況だし。なるほどねーって感 じだけど(笑)。 ̶でもニューオーリーンズ・バウンスはその売れ線と一 緒に、現地で愛されてるわけやろ? K: 歴史が深いからかなー?あ、あとヒップホップ的だか らってのもあるかも。分かりやすいしバウンスは。ジュー クは異質な部分は絶対にあるじゃないですか。妙なベー スとか。変な感じを追っているというか。 ̶完成したらダメみたいなとこは間違いなくある。ただ、


そんな音楽をヨーロッパや日本で求めている人がいるこ とを考えるとジュークのコアに対する訴求力はすげぇな と思う(笑)。 K: そうそう、そしてシカゴのジューク作ってるアーティ ストからしたら意味不明だと思うよ。「このタイミングで 受けるんだ」みたいな(笑)。 ̶「いきなり来たね ww」みたいな(笑)。 K:「ヨーロッパ行くんだって」「へー」的なやりとりして ると思うもん、向こうは(笑)。その何じゃそりゃ感は すごくあると思う。

世界のオモシロ DANCE MUSIC selected by KENT Shangaan Electro シャンガーンエレクトロ

南アフリカのゲットー (?) ダンス ミュージック。基本的に4つ打ち のリズムで、木琴などが奏でる明 るいアフリカンなメロディとサウ ンドのローテク感がいい味を出し ている。BPM 帯が近いので、シャ ンガーンエレクトロを Juke とクロ スオーバーさせた企画が UK のレー ベル Honest Johnʼ s からリリース されており、RP Boo や Rashad& Spinn 等が参加している。

̶その訳分からん感じはジュークの特徴だしヤバいって 言われる一つの理由だと思う。 K: まー地域によって音のスタイル変わりますよね。アメ リカはデカイし。 ̶東京、横浜の感覚とかじゃないよね。関東、関西くら いのスケールだよねきっと。 K: そうそう!そして北に行けば行くほど BPM 上がるよ うな気がする。シカゴとニューオーリーンズ、それぞれ のローカル音楽の BPM は全然違うじゃないですか。あ、 ロシアでガバが盛り上がっているシーンがあるみたくて。 北国の方が BPM が早いものが好まれる気がする。

Tuki /Raptor House トゥキ / ラプターハウス 南米ベネズエラのゲットーで生ま れたハウスミュージック。200 0年代後半に発生したラプターハ ウスと呼ばれていたものが、現在 はゲットー色が濃くなりトゥキと いうジャンルに進化している。ト ライバル感漂う RAW なリズムと、 初期ハードスタイルを思わせるシ ンセ使いが特徴的。声ネタも多様 されているが、ゲットーハウス等 と違い、黒人色全開の声ネタでは なくヨーロッパ産ダンスミュー ジックでよく使われる声ネタが Raptor House では使われていた。 Tuki に進化した後は各アーティス トが自らの声をサンプリングして 使うことが多くなった。

̶寒いから早いので踊って身体暖める的な本能が働いて るのかな? K: そうだと思う!あくまでオレの見解だけど ( 笑 )。だけ ど絶対そんな気がする!気温と BPM の関連性、研究課題 だ(笑)。 ̶それで論文書いてよ(笑)。 K: 卒論のテーマこれにしよかな。学部と全然関係ねぇけ ど(笑)。

Electro Swing

エレクトロスウィング 東ヨーロッパで流行しているダン スミュージック。1930 年代にア メリカで生まれたスウィングジャ ズの手法を取り入れ、現代的なエ レクトロニックビートやベースを 加えアップデートしている。サン プリングを用いた曲が大半だが、 中にはホーンセクション等を自ら 演奏する猛者も存在する。

番外編!シャンガーンあれこれ 1. シャンガーンディスコ シャンガーンエレクトロになる前はディスコだったらしいです。 2. Vomaseve ヴォマセヴェ シャンガーン+アホな声ネタ=Vomaseve ・・・なのか?w みんなめっちゃ踊ってて楽しそうですね。 3. シャンガーン讃美歌 この人、神父らしいです。 1. 2. 3.

Bhangra バングラ イギリスに移住したインド人達が 生み出し、インドに逆輸入され発 展したダンスミュージック。イン ドの伝統音楽をダンスミュージッ クを作る機材で作りました!と言 わんばかりのわかり易いインドノ リが特徴的。1980 年代から続い ている非常に幅の広いジャンルで、 ヒップホップ、ハウス、ドラムン ベース等様々なジャンルがバング ラ解釈されてリリースされている。


例えば樹齢一万年とかの大木を目の前にした時とか、普段パワースポットとかそういうスピリチュ アルな感じのものをあまり信じてないとしても、その荘厳な存在感に圧倒されて、やっぱそうい うのあるのかなー、とか思ってしまったりしないでしょうか。 「空」とか「大地」とか、自然に存 在する輪郭がつかめないくらい広いものって、どこまでいっても終わりがないような、どこまで いってもその本質に迫れないような。それ故に神秘的で、科学では計れない不思議な力があるの かなーなんて。海も同じで、地平線が見えててもそれはずっと遠くて、どこまでいっても水で、 波の音は耳に心地いいんだけど、遠くの方では荒れ狂っていたりとか。 「Seapunk」はそんな海の不思議なパワーにとり憑かれてしまった人たちによる表現活動です。 「表現活動です。 」と言い切ってみたものの、実際どんな表現かと聞かれるとよくわからない。と りあえずあるのは海、イルカ、変な特殊文字、サイバーっぽいアートワーク、トロピカル?ジュー ク?ト ラ ッ プ?レ イヴ?そ ん な 断 片 的 な イ メ ー ジ だ け。日 々 の イ ン タ ー ネ ッ ト 活 動 の 末、 「Seapunk Gang」というサイトにたどり着いたものの、そこにはジャンルを飛び越えまくった音 源がたくさん貼られていて結局何が Seapunk なのかはよくわからないまま…。Seapunk タグのつ いた音源は私は好きだけど、かといって海への憧憬、からの髪を青くする、とかもいまいちピン とこないし…。そもそも何がこの人たちを Seapunk にのめり込ませて、それに特化したサイトを 作らせるに至ったんだろう…。 というわけで、今回は Seapunk に関する音源を日夜ウェブ上で紹介しまくる素敵なサイト 「Seapunk Gang」とそれを運営する GIAD と CHIAMU という二人のイタリア人による同名のコレ クティブにメールインタビューを試みました。 インタビューに答えてくれた彼らの返答を混ぜながら、Seapunk とは何かに迫ってみます。


ま ず 、そ も そ も「 Se ap un k 」 と い う タ ー ム が 初 め て 使 わ れ た の は 、 2 0 1 1 年の夏のある日のこと らしく、ブルック リ ン 在 住 の D J 、Lil In t e r n e t が 奇 妙 な 夢 を み て、そ の 内 容 を ツ イ ー ト し た 際 に 「 Se ap un k 」 と い う 言 葉 使 っ た の が 始 ま り だ そ う です。それを面白がった 彼らの仲間によっ て「#Seapunk」というハッシュタグが作られ、Twitter、そ して Tumblr によってインターネット上で急速に拡散さ れ た の だ と か 。こ の タ ー ム が さ ら に 知 ら れ る こ と に な っ た の は 、 そ の 年 の 9 月に Cor al Re c or ds Internaz ionale からリリースされたコンピレーションアルバム『#Seapunk Co m pi l a ti o n V o lume 1 』に よ る と こ ろ が 大 き い。こ の コ ン ピ に は レ ー ベ ル 創 設 者 の Fir e For Effect の 他、 Tea m s 、 L e 1 f 、 Slava 等 のト ラ ッ ク が 収 録さ れ て い ま す。 F i re Fo r E ff e c t・Ult r ad e mon ・Pan 等々いろんな名義を 持 つ A l b e r t Re dw in e は 元 々 Lil In ternet の 仲 間 で、 Seapun k を 広 め る べ く こ の レ ー ベ ル を 始 め た そ う で す。 レ ー ベ ル 創 設 時 に は LA に い た 彼 も 今 は シ カ ゴ に 移 り 住 み 、シ カ ゴ で S e a pun k のパーティーをやっているらしい。 こ こ ま で は 去 年 の話で、Se ap un k Gang が始まったのは 今年 の 1 月 、 そ れ も 完 全 に S e a p u n k だ け で や っ て く こと にし た の は ほんの数ヶ月前なんだと か。 曰 く 「 こ の 新 し い サ ウ ン ド に つ い て 調 べ 始 め た の は U nicorn K id の B oys of Pa ra di s e の P V を 見 て か ら だ ね。あれ(同曲を収録した『Tidal R ave EP 』)は革命みたいなハンパな い レ コ ー ド だ よ。」( 以 下 、「」内 は イ ン タ ビ ュ ー に 答 え て く れ た Seapunk G ang の Chia mu の 発 言 ) こう して 始 ま っ た Se ap un k Gan g ですが、彼らが Seapunk G ang として目指して い る こ と に つい ては 以 下 の ように語っています。 「 ウ ェ ブ 上 で み ん な が 新 し い サ ウ ン ド に 出 会 え る よ う な 仮 想 空 間 を 作 り た い ん だ。も ち ろ ん 海 に 関 係 す る や つ で。そ れ と、僕 ら が 作 る 3D グ ラ フ ィ ッ ク を ウ ェ ブ や 洋 服 で 展 開 す る っ て い う こ と に も 情 熱 を 注 い で る。曲 や ア ー ト ワ ー ク や P V っ て い う の は 目 に 見 え な い ア ー ト フ ォ ー ム を形 成す る だ ろ 。」 彼ら のサ イ ト で は Soun d c loud を中心 に、彼らが選び抜いた Seapunk のアーティス ト の 音 源 が 紹 介 さ れ て い ま す が、そ の 音 は ジ ュ ー ク だ っ た り ド ラ ム ン ベ ー ス だ っ た り、ハ ウ ス , チ ッ プ チ ュ ー ン 、ト ラ ッ プ、チ ル ウ ェ ー ブ な ど な ど 多 岐 に 渡 っ て い て、音 楽 的 に Seapu n k を ひ と く く り に す る の は 難 し そ う な ん で す け ど、で も こ ん な に ジ ャ ン ル を ク ロ ス オ ー バ ー し た 音 源 の 中 から どう や っ て 選んで、 「これは Se ap unk」というようにラベリングをしているの で し ょ う か 。 「S e ap u n k G a n g では Se ap un k だけを 取り上げるわけじゃなくて、Seapunk に混 ざ っ て い る す べ て の ジ ャ ン ル の 音 楽 を 取 り 上 げ て る ん だ。ト ラ ッ プ の ア ー テ ィ ス ト も い れ ば、 ウ ィ ッ チ ハ ウ ス の ア ー テ ィ ス ト も い て、他 に も ベ ー ス や テ ク ノ、ト ロ ピ カ ル イ ン デ ィ ー も。ト ラ ッ プ と レ イヴ の 融 合 っ て い う の が Se apun k の 一 番 の 特 徴 か も し れ な い け ど、あ ん ま り ど う タ グ を 付 け る か 、 み た い な こ と は 気 に し て な い よ。た だ 良 い バ イヴス を 放 っ て る ト ラ ッ ク を ポ ス ト し て る だけ 。」 「な ん か 魔 法 が か か っ た み た い に 色 ん な 種 類 の ば ら ば ら な ス タ イ ル の 音 楽 が 1 つ の 波 に な っ て 、 それ が起 き る べ き時に起きるべき場所で 起こったって感じじゃないかな。」 その 魔法 が S e a p un k ってことですかねー。 こ の よ う に、音 楽 的 に は ひ と く く り に で き な い の が Seapunk と 言 え る か も し れ ま せ ん が 、 音 楽性 の他 に も 色 々と興味深い特徴があり ます。 まず 一環 し た コ ンセプトである「海」。以下は、D az ed and Confused 誌で U ltrademo n が 語 っ てい た海 へ の オ ブセッション。 人 間 は 水 生 の 哺 乳 類 だ と 思 う ん だ よ ね。だ か ら 海 岸 は 僕 に と っ て 僕 ら が 生 ま れ た 場 所 を 象 徴 して るん だ 。 僕 らって猿よりイルカや鯨 に似てると思うんだよ。 こ う い う 場 面 を 想 像 す る ん だ。満 月 の 浮 か ぶ 夜 空 に 星 が 輝 い て て、天 の 川 も 見 え る 。 そ こ で 、 友 達 や 愛 す る 人 た ち が 終 わ り の な い レ イ ヴを や っ て る っ て い う。僕 に と っ て の 海 の 本 質 っ て そ うい うこ と だ よ 。

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… う ー む 。 わ かるような、わかんないような。 S ea p u n k G a n g はこのアティチュードにも完全 に 共 感 し て い て、以 下 の よ う に 答 え て く れ て い ます。 「S e a p u n k は 海 の 穏 や か さ や イ ル カ の 魂 を ば っ ち り 表 現 し て る と 思 う。海 と か 海 に 関 係 す る も の か ら 得 ら れ るフィーリングと、Se a punk の音 楽 に は 繋 が り が あ る ん だ。海 に 潜 っ た み た い な サ ウ ン ド は よ く サ ン プ リ ン グ さ れ て い る し、流 動的なベースや硬いシンセのサウンドは深海に い る み た い な 感 覚 に さ せ て く れ る。」 海 に 潜 っ た み た い な サ ウ ン ド、そ れ か ら こ の コ ン セ プ ト 、 両 方 が あ っ て の Seapunk と い う こ と に な る の で しょうか? ま た 、 海 と い う コ ン セ プ ト の 他 に も Sea p u n k の特徴として特殊な文字を使ったりサイバーっ ぽい 3D のアートワークを用いたりというよう な 特 徴 が あ り ます。Se ap un k Gan g のサイトで も こ れ は 頻 繁 に 見 ら れ ま す が 、「す べ て の シ ン ボ ル に は 意 味 がある」らしい。 つ ま り 彼 ら に 言わせると、 「 S ea p u n k は 7 0 年代のヒッピー・カルチャーや 90 年代のレイヴ・カルチャーにお け る シ ン ボ ル の 使 い 方 に 立 ち 戻 っ て る と 言 え る ん じ ゃ な い か な。少 な く と も 20 年 毎 に 自 然 と の 調 和 み た い な も の を 求 め て、こ う い う ト レ ン ド が ア ン ダ ー グ ラ ウ ン ド の シ ー ン か ら 出 て き て る っ て こ と だよね。」 なるほどー。 と こ ろ で 前 述 したように Se ap un k の主戦場はインターネット、特に Tumblr と の 繋 が り が 大 き い よ う です。Ult r ad e mon や、レーベル所属のアーティスト Zombelle がシ カ ゴ に 移 っ た こ と か ら Se ap un k の ホ ー ム は シ カ ゴ と も 言 え ま す が、実 際 の と こ ろ の ホ ー ム は T u m b l r と い う見方もあります。Se apunk G ang のサイトも Tumblr ですが、そ の 魅 力 に ついては 「 T u m b l r は ポ ス トをシェアしたり、ハッシュタグを使って僕らのサイトを発見した り し て も ら え る 可 能 性を持ったプラットフォームだと思う。実際 Tumblr はアイデアや色 ん な 形 態 の ア ー ト を 拡散するのには最も効果的だよ。Tumblr では人々がトレンドを作っ て 、 そ れ が 自 然 に 広 がっていくのを誰も止められないんだ。」 と の こ と 。 こ れは『クリエーターが自己表現し、それを世に広める為のプラット フ ォ ー ム 』 と い う T u m b l r の創立目的と近いのかも。 し か し 、 こ う し て イ ン タ ー ネ ッ ト を 中 心 に 広 が っ て い る こ と や、そ も そ も Twi t t e r で の ジ ョ ー ク の よ うなものから発展したというような背景から、Seapunk はハイプだ と か 、 む し ろ 存 在 し て な い、と い う よ う な 見 方 を す る 人 も い る の も 事 実。こ の 先 ど う な る ん で し ょ うか。 「 S e a p u nk は ジ ョ ー ク だ と は 思 わ な い よ。こ れ は 全 て の ア ー ト フ ォ ー ム を 巻 き 込 ん だ 鏡 な ん だ。 す ご く 大 事 な ア ン ダ ー グ ラ ウ ン ド の 感 性 を 映 し た 鏡。新 し い の は、こ れ が ス ト リ ー ト じ ゃ な く て インターネットで起きてるってことだね。」 「(音 楽 性 に つ い て は)Seapun k を 定 義 づ け る 重 要 な ア ル バ ム が 必 要 だ と 感 じ て る よ。 Unic o r n K i d の 新 譜 が そ れ に な る か も し れ な い。イ ン タ ー ネ ッ ト 上 に は 無 数 の E P や シ ン グ ル 、 そ れ か ら 形 に 成 っ て な い ア イ デ ア が 存 在 し て る け ど LP を 出 す っ て い う の は 違 っ た チ ャ レ ン ジ に なるはずだからね。」

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Ul t r a d e m o n は Se ap un k は音楽のジ ャンルではなく、 ファッション、サウンド、 イ デ オ ロ ギ ー な ど な ど を 内 包 し た ラ イ フ ス タ イ ル だ と 言 っ て い ま す が、言 い 換 え る と 、 S ea p u n k は ウ ェブ上でヴァイラルに広がり、今も発展し続けるアンダーグラウンド で コ ン セ プ チ ュ ア ル な アートフォーム。ということでしょうか。 私 は 今 ロ ン ド ン に 住 ん で る の で す が、以 前 に も イ ギ リ ス に 住 ん で い た こ と が あ り、 そ の と き こ の 国 で 流 行 っ て い た の が「ニ ュ ー レ イヴ」だ っ た ん で す が、冗 談 の よ う な タ ー ム が ど ん ど ん 大 き く な っ て 結 局 実 態 が よ く わ か ら な い、と い う 現 象 っ て あ の 時 と 似 て る な ー と ぼ ん や り 思 っ た り しました。ニューレイヴも K laxons のメンバーが冗談で使ったら、 雑 誌 を 中 心 に ど ん ど ん 拡 散 さ れ て ダ ン ス ミ ュ ー ジ ッ ク+ロ ッ ク み た い な の が な ん で も か ん で も ニ ュ ー レ イヴみ た い な 状 況 に な っ て た の を 思 い 出 し ま す。蛍 光 色 を 使 っ た 派 手 な フ ァ ッ シ ョ ン っ て い う のもアイコンの一つだったし。でも違うのは U ltrademon のよう な 作 り 手 に 明 確 な「 海 」っていうコンセプトがあって、それを Seapunk G ang のような受け 手 が ち ゃ ん と 共 有 し て る っ て こ と な ん で し ょ う か。ニ ュ ー レ イヴに は、結 局 オ リ ジ ナ ル・ レ イ ヴ と 繋 が り も な い の に レ イヴと か 言 っ ち ゃ っ て ー み た い な 批 判 も あ り ま し た が、こ っ ち は オ リ ジ ナ ル ・ レ イ ヴ の延長線上にあるという意味では、Seapunk がほんとのニューレイ ヴ だ っ た り し て 。 こ な いだ見た Un ic or n Kid のライブで踊り狂う若者を見てたらそんな こ と を 考 え た り し て し ま い ま し た。数 年 前 蛍 光 色 の 服 が 流 行 っ た よ う に、キ ッ ズ が み ん な 髪 を 青 く す る か っ て 言 っ たらそれはないと思いますが。 そ れ は と も か く 、Se ap un k。なんだか よくわかんないままでも十分楽しめたけど 、結 構 ち ゃ ん と コ ン セ プ ト あ る ん だ な ー と わ か っ た ら よ り 楽 し め そ う な 気 が し ま す。興 味 を 持 っ た ひ と は S e a p u n k Gan g は も う す ぐ 新 し い タ イ ダ イ の T シ ャ ツ を リ リ ー ス す る ら し い の で 、 そ れ 着 て S e a p un k ライフに足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

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C S I W D E I V RE

Karenn Untitled (Sheworks04)

Karenn & The Analog Cops Untitled (Bleep)

Karenn は UK ベースミュージックの若き才能である、Pariah と Blawan という 20 代 半ばで両者ともに UK だけでなく世界中で支持を得ている DJ /プロデューサーによ るユニットである。これまでも少量のプレスで自身のレーベルである Works The Long Nights からリリースを行っていた Karenn であるが、この度彼らから届けられ た二枚の新作は、彼らが UK ベースミュージックの新たな可能性を探る存在であるこ とを確信させる内容になっている。ダブステップ/ UK ベースがテクノやハウスと合 流していることは既に方々で指摘されているが、たとえば Sheworks のカタログ4番 での『Clean it up』でのダブステップの DJ がスクラッチをして展開を作る時の「キュ ルキュル」というあの仕草を思わせるし、ベースは堅い四つ打であるがその上ではダ ブステップを通った音が自由に鳴らされている。そして加えて、Surgeon や Regis(つ まり British Murder Boy)などを思わせる真正面からのテクノが鳴らされているとこ ろに僕は UK のダンスミュージックだけでない、アンダーグランドの水脈がこの最前 線にまで繋がっていることを感じさせる。 思えば、Pariah による R&S からの久々の 12 インチ『Rift』ではそれまでのガラージ スタイルから一気にインダストリアルの匂いを醸し出すテクノへとシフトしていた し、Blawan にはこれまでも、そして近作では過剰なまでぐらいのホラーのセンスが 埋め込まれた 12 インチ『Why they hide their body under my garage』が話題になっ ていた。彼らの音楽には明らかなインダストリアル、つまり UK のアンダーグランド・ ミュージックにおける一つの精神が宿っているのだ。僕はここに Downwards(前述 の Regis が主宰するレーベル)から最近ではハードコア・パンクまでを扱うアンダー グランドの重要レーベル Blackest Ever Black、そしてこのレーベルからリリースもし ている Cut Hands のようなノイズ・ミュージックに至るまでの繋がりを感じとった。 それは Pariah 自身がインタビューにおいて、インダストリアルと UK テクノの繋がり という地下水脈について言及していたことによって確信に変わった。この重要な歴史 が今も絶えずに更新されていることを2人の音楽は証明しているのではないか。全て は地下で繋がっているのだ。(N)


DJ AFlow Get Big EP (Booty Tune)

Uncle Texx Welcome 2 Ma World EP (Booty Tune)

Japan Juke / Footwork シーンの若手ツートップが Booty Tune から揃ってリリース。 Juke を聴いている人は前から知っているだろうが、 彼らは「若手」とチヤホヤされるビー ト・メイカーではない。野村語録でいう「二流は褒める」ではなく「一流はけなす」といっ た具合に。去年あたりから、ほぼ同じタイミングで Juke を作り始めた二人だが、この 進化のスピードには正直、国内のみならず Earl、Taye、Manny などシカゴのヤツらも 驚いているようだ。 テックスの作品は、 「圧倒」という言葉がふさわしい迫力全開のトラックが並び、クラッ プ、ベースなど音それぞれ一発の破壊力がマジでエグい。特に D.J.Fulltono がよくプレ イする『Contact』 、そして3連で刻まれた轟音ベースに鼓膜を覆われる『Texx From Outer Space』でその特徴は顕著に表れている。D.J.April がいつだかヤバい Footwork を 「RPG ゲームのラスボス感」と評していたが、その形容がズバリ当てはまる無敵な感じ。 一方のアフ朗、ソウルネタのサンプリングという十八番が更にグレード・アップして披 露されたトラックに耳を奪われる。TRAXMAN をして「コイツは良い耳を持っているよ うだな」と言わしめたように、グッド・ミュージックへの感度が非常に高いのだろう。 『Love Man』で耳を襲う弾みまくるベース、炸裂するタイミングが痛快なクラップなど Juke のエクストリームな要素と、元ネタの美しさを同居させるセンスは、シカゴと肩を 並べる、あるいは食ってしまうレベルまで到達している。 しかしアレだ、さっきノムさんの言葉を引用したけど、この両作品を貶す言葉が出てこ なかった。オレの耳が悪いのか、それとも誰が聴いても最高なトラックなのだろうか。 そ れ は 貴 方 が 聴 い て 判 断 し て ほ し い。た だ 1 つ 言 え る こ と は、こ れ ら の Juke / Footwork の EP は国内最高峰レベルであること。テックスはヘルニアの具合良くなった かな。(A)

Cube Face Fair Use EP (Cadence Collective)

ブライトン出身のトラックメーカー Cube Face によるビュー EP。ニューヨークとイギリスをベースに活動するアーティスト 集団 Cadence Collective のレーベルからリリースされました。 冒頭 4 分間の『Intro』は、辺り一面真っ白い雪原に雪が舞い落 ちる音だけが響いているような静けさで、その美しい世界観へ と聴く者を誘います。映画の台詞のような話し声や吐息、 チョッ プドされたボーカルやそれらを包み込む繊細なノイズが柔らか なビートに乗っかって作り出されるその世界観には、一曲一曲 否が応でも頭の中に浮かんだ映像を当てはめてしまう。音楽的 にはポストダブステップ∼エレクトロニカの中間といったとこ ろだけど、ローファイなプロダクションからか温かさも感じさ せる冬の夜のサウンドトラック。(5)

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Halls Ark (No Pain In Pop)

ロンドンを拠点に活動するによる Sam Howard によるソロ ユニット、Halls のファースト・アルバム。重心の低いベー スは(ポスト)ダブステップを経過した後の音の在処を感じ させ、また儚くささやくように鳴るピアノ、リズムトラック、 そしてボーカルが美しく絡んでいく点には、既に指摘されて いるように James Blake 以降の音であるとの印象を受ける。 しかし、冒頭のコーラスワークや教会にて録音した音を用い たノイズ・トラック、そして弦楽器(に聴こえる)音が絡ん でいく音楽性は James Blake が持っているクラブミュージッ クやダブの要素とは違う、空に導かれるようなある種の神聖 さを感じさせる。それにしても…暗い。イギリスの暗く淀ん だ曇り空にこの重々しさはあまりにもマッチする。(N)

去年から順調なリリースを重ねるサタポが、ベスト盤をフィ ジカルでリリース。 大ネタのサンプリング、時に奇怪に響く鮮烈なシンセ、どの タイミングで考えついたか想像つかない言葉……これらの要 素に圧倒されると同時に人懐っこさを感じる。そう、Juke / Footwork ユニットの西横綱のトラックはリスナーを笑顔に する。このベスト盤を聴けば、今言ったことが間違いなく分 かる。 ハナモゲラップで聴かせる Frose Pine の軽妙な言葉選びのセ ンス。これにはヘッズの間で合唱が起きるなど浸透を見せ始 めている。無機質に、そして無造作にバラ撒かれたように響 くハイハットは「サタポや!!」と聴こえたら一発で分かる ほど特徴的。音、言葉でリスナーの聴覚を卍固め。サタポの これからの動向からホンマに目が離せませんで。いてこませ ∼♪♪♪(A) (2013 年 1 月 19 日、全国発売予定)

Shelter Point Forever For Now (Hutflush)

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Satanicpornocultshop AtoZ!!!!!Alphabet Busters!!!!! (nunulaxnulan)

ポストダブステと R&B、ガラージ、 (若い)2 人組、イギリス。 っていうのが流行っているのかなんなのか。現在イギリスで めちゃくちゃ売れまくってる Disclosure を筆頭に、Bondax、 Maribou State な ん か も そ れ ら の 要 素 を 持 っ て ま す が、 Shelter Point もそこに仲間入りするのかも。Hotflush の新リ リースはこのコヴェントリー出身の 20 歳の 2 人組のデビュー EP です。前述のデュオ達と違うのはなんといってもその歌心 でしょうか。特に1曲目『Braille』はミニマルなビートに憂 いのあるささやくような歌声が落とされる繊細なトラック。 ノスタルジックで青く気怠いその雰囲気は Vondelpark なん かを思い出しました。とはいえ EP 通してその世界観を貫い てるかというとそうでもなく、後半は流行りのガラージ路線 だったりするので、今後どう変わるのかを楽しみにしつつ Mount Kimbe の Warp へ移籍後の穴を埋める存在になること を期待します。(5)


Darkstar Time Away (Warp)

FRUITY Rocks EP (Shinkaron)

名門レーベル Warp への移籍も納得ができるダブステップと エレクトニカをユニークに繋いだバンドによる、来年初頭リ リース予定のアルバムからのリードシングル。ボトムとパー カッションにベースミュージックの気配は残るものの、曲の 基礎をなすのは幻想的なボーカルと木琴のような音であり、 ゆっくりと体に音楽を染み込ませてくれる。聴く者の体が音 楽の方へと溶け込むようなその体験は、アンビエント・ミュー ジックを聴く時の体験とも通じるものがある。この印象は、 タイトルトラックに加え収録されている 10 曲のアンビエン トトラック(これらはエンドレスに流れるように溝が掘られ ている)からは、永遠に音楽が鳴る空間にいられるような感 覚を与える点によって強められる。彼らは音楽にしか作れな い環境を作ろうとしているのかもしれない。(N)

Boogie Mann Yokohama Midnight Footwork (Shinkaron)

このレーベル、注目しときましょ。Wezee、Boogie Mann、そしてオーナーの FRUITY が所属している SHINKARON。現在、ここから2つの Juke EP がリリースされている。 まずは FRUITY が『Rocks EP』をオーナーとして挨拶代わりにドロップ。DJ で Trap、 Dubstep、Juke など多彩な MIX を披露するような個性からか、フリーキーな雰囲気が 醸し出されている。 『Rocks』の自身による軽快な声ネタ、 『Still Goes On』の喉ごしの良 いメロディなど、カジュアル且つ、多彩なトラックを収録。 そして Boogie Mann、繊細に響くサンプルネタ、シンセの音色…ベタで臭せぇタイトル にも頷ける作品。特に『Take Me Bakk』は、LUVRAW&BTB のトラックに通ずるメロウ な質感が存在する。だが、そのユルさは Footwork へリスナーを引き込むフックだ。前 述のシンセやベースの3連による変調、そこへ覆い被さるようなベースにより、優美さ から変貌した Footwork の「ヤバさ」を聴覚へ刷り込む。 明確な色の違いを持ったビート・メイカーが顔を揃える SHINKARON。これからドロッ プされるであろう Wezee の作品もフットワーク・ダンサーという背景がトラックへど う反映されるのか非常に楽しみだ。

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第2回

text by D.J.A.D

さて、球技大会第 2 回目。季刊でリリースするこの Zine では、開幕→前半戦終了→シー ズン終了→ストーブリーグと書くことが絞れるので、楽っちゃ楽でいいですね。という ことで今号では、僕の贔屓チームの総括でも。 北海道日本ハムファイターズ、リーグ制覇!!やったぜ!!!!もうこれだけでも十分 すぎますよ。 思えば、栗山監督が就任した時は「おいおい栗さんで大丈夫かいな、報ステやってりゃ いいやんけ」とこの監督人事には懐疑的でした。ただ、シーズンを終えて分かったことは、 このチームにはモチベイターとしての監督がフィットするのでは?ということ。 北海道移転からの時代しか知らないのですが、日本ハムというチームはフロントの手腕 により力を付けてきたイメージが強く、現場スタッフの人選、ドラフト戦略、選手育成 など、このチームをどうしたいのかというフロントの意図が明快なのがチーム特徴です。 だからこそ、当初は栗山監督という人選の意図がどういったものかあまり分かりません でした。 この監督の長所は、一貫した選手起用。これは選手もやりやすかったでしょうね。 技術的なことに関しては、良い意味で放任主義。ひたすら「お前に任せるぞ」という選 手起用を続け選手たちが期待に応え続けた、結果優勝というようなシーズンだったと思 います。 このタイプの監督が輝けるのは有能かつチーム戦術を むことができる現場スタッフが っていること。 福良ヘッドを始め、清水守備・走塁コーチ、吉井投手コーチを始めとしたコーチ陣が 個性が強めな選手が集まるこのチームの手綱を締めて、チームをまとめていたと言えま す。 ただ、上に挙げたコーチは来年 3 人ともいなくなるんですよね…これは痛手のような。 シーズン通しての投手陣の采配は、栗山監督の経験不足が否めませんでした。 シーズン中盤まで起用を続けた斎藤佑樹の2軍幽閉、継投のタイミングの改善は吉井 コーチの進言で形になったという記事がチラホラ。 そしてチームの4番として成長した中田も1軍打撃コーチの田中幸雄氏ではなく福良 ヘッドに教えを乞うことが多く(キャンプ情報、日々の新聞など見た感じ)スラッガー として完全に独り立ちできるまでは、福良さんに居てほしかったですけどね。 現横浜2軍監督、白井元ヘッドが戻ってきてくれると個人的には嬉しいですが横浜との 契約を延長したみたいなので、他を当たらないとダメですね。このチーム、選手の意識 や姿勢は特に心配するところではなさそうなので首脳陣の人選、特にディフェンス面の コーチ、ヘッドコーチは慎重になって選んでほしいものです。 日ハムが暗黒期を迎える時、それはフロントが暴走したときなのでその時はファンも しっかり野次を飛ばしましょう。 今回はこの辺で……え、何?コンサ??いやー色々ポジってみたけど無理でしたね。 J2 から出直します。なんかホントすみませんでした。センターバックの若者2人が育っ たらまた上がってくると思います。来年はガンバ大阪と下で頑張ってきます(前田の呪 い)書いている時点ではまだ G 大阪の降格も決まってないけど、ほぼ確定でしょ。残れ たら奇跡。

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文/ Shigeru Nakamura

この所「文脈」について考えている。というのは <Hotflush しくなるが、何かを産もうと試みる人間が共通して持っている のボスである が にとって重要なことは文 気持ちだと思う。その結果が彼を有名にしたり、富を与えるこ Recordings> Scuba DJ 脈を知っていることだ、という趣意の発言をしていたことだっ とになるかどうかは別にしても 。 … たり、また において村上隆氏が現代アートを観る聴衆 自 分 ら し さ を 追 求 し な が ら 意見を吐き出すのは難しい。僕は Twitter が「感じるままに」というスタンスで作品を観る態度について この ZINE のレビューですら、 全く書くことができない時がある。 批判していたことだったりがきっかけにある。つまり、何かを 何が対象の音楽の要素なのか、細かく分析したり他の音楽など 作る側も、それを受ける側も一定の訓練や勉強が必要というこ の繋がりを考える時に、いかに自分が音楽を知らないかを思い とである。村上隆氏のツイートに重ねてツイートしていた奈良 知らされる。ただそれは所謂「無知の知」とも同じもので、自 美智氏の言葉を借りれば、そもそも感じるというものは一定の 分の無知に向かい合った時に新たな音楽やジャンルへの扉が開 学びの後にある訳で、それがなければその感情は「薄い」とい くような感覚も覚えるのだ。そしてさらに、何を自分はその音 うことだ。 楽に感じるのかを書くことも同様に難しい。時に僕は小学生の 興味深いのは、僕が近年インターネットや友人とのやりとり 時 に 書 い た 、 読 書 感 想 文 を 思 い 出 す 。 ただ「良い」のではなくて、 の中で、以上の「文脈」に対して二つのリアクションに出会う 何が良いのか。どうして良いのか … 結局は自分を客観的に見よ ことだ。まず、文脈を知っていることが必ずしも芸術や音楽を うとする行為であるのかもしれないと思う。ここで、冒頭の文 楽しむための前提ではないというリアクションである。特に音 脈に戻るが、音楽への無知、そして自分の感覚への無知、とい 楽の場合、気づいた時に体が勝手に動いていることはよくある う二つの無知が音楽が好きだという素直な気持ちによって僕の ことで、何も知らなくても涙が出ることや楽しくなることはた 音楽を掘る推進力になる。つまり、僕は「好きこそものの上手 くさんある。もっとも、この意見に対しては体が動く前にある なれ」とはよく言ったもので、文脈は好奇心の後についてくる 一定程度の(無意識での)経験があったからだと反論すること ものだと思う。 もできるだろう。人間は自分が想像もしないところから何かし さ ら に 加 え れ ば 、 新 しい文脈を作り出す一歩になり得る可能 らの影響を受けている可能性は多いにある。 性 は 、 全 て の 人 、 で は なく全てのコミュニケーションや意見の また別の感情として、アートや音楽、そして話を広げれば文 交換の下に起きる … というのは別にここで改めていうまでもな 学をも含めた作品に対する批評や論考について、それらのもつ いことだ。色々な人が異なる感想や意見を持っていることが如 頭でっかちな印象から多くの人が、面倒な議論や小難しい単語 何 に 面 白 い こ と か 、 い つ も 実 感 す る 。 な の で 、 僕 は 決 し て 人 の なんか使わずに「楽しいからいいじゃん」というリアクション 感想を「薄い」と判断することはしたくないが「良いよね」 「ヤ は僕の周りでもよく見聞きする。しかし、物事が個々人によっ バいよね」といったお決まりの言葉だけでライブ後の感想がや てどのように見えるか、そしてそのリアクションとしてどのよ りとりをされているのを聴くと、なんだかなぁと思うことも多 うに立ち位置をとるかという視点は、他者へのアピールである い。自分の思うことを素直に表現することが直ぐに「杭」とし と同時に、それは音楽やアートのどのような要素が自分をなぜ て受け止められ叩かれやすくなっている時代には、そもそもコ ここまで楽しませるのか、何が面白いのかを明らかにしようと ミュニケーションの第一歩である最初の一言がおきにくくなる いう試みが自分を知るからだということも改めて強調しておく のかもしれない。僕らはこの ZINE を通じて第一歩を踏み出し 必要があるかもしれない。 「同じようなことはしたくない」 「こ ているつもりである。その第一歩に読者がどうリアクションを ん な こ と は も う 誰 か が や っ て い る」 「で は ど う す る?」 「 …僕 とってくれるかは 僕 …らはもちろんわからないのだけれど。■ は何ができる?何を愛している?」これは表現者と言えば堅苦

クリティカル

なんとなく


美波里ならこう言うね

「週 6 日は体調不良」。そんなキャッチフレーズの人が、以 前見た素人オーディション番組に出ていました。いかにも不 健康そうな細い女の子で、その顔色の悪さとかをよくいじら れていた気がする。しかし考えてみれば私もそんな感じだ。 体調になんの不調も感じない日なんてないような気がする。 基本的に頭痛だし。腰痛とか他にも色々。膝に水たまってる し。それでなくてもどういうわけか最近は一日中眠いから元 気も出ない。周りからどう見えてるのかはわからないけど、 「元気そうだな」とは思われてないでしょう。   How are you? とは英語圏では挨拶の言葉ですが、私はこ れがすごく苦手です。「調子どう?」って言われても調子い いことなんてないもん。でも Hi! How are you? って毎日 何度も交わす挨拶なのに、その度に「いやーちょっと腰痛く て、頭も痛いし調子良くないっすわー」とか言ってもねぇ。っ てか言われる方もそんな詳細な答え求めてるわけじゃないだ ろうし。そもそも私の体調に興味があって聞いてるわけじゃ ないし。だからいつもとりあえず Fine とか Good とか 答えるわけです。  でもそうするとだいたい How are you? Good! Good? Yes, good. … みたいな感じでとりたてて盛り上がらない。 How are you? は会話の緒なはずなのに、入口から中に入る までもなく終わる。こっちも向こうの入り口に入らないし、 向こうも入ってこないので、玄関先の挨拶だけで済んでしま う。  たぶんここで盛り上がれるか否かがコミュニケーション能 力の差なんでしょう。会話の緒としての軽い、内容のない無 難な挨拶。これができるか否か。できて初めて大人と言える ような気もする。  小津安次郎の「お早う」の中で、大人がそういう上辺だけ のどうでもいい挨拶をするのを理解できなくて、子供が親に 反抗するみたいな部分がありますが、あの子の気持ちがすご くわかる。「天気がいいですね。」「そうですね。」なんてなん の意味があるんだ。いや、私もいい歳なのでそういうのが必 要なコミュニケーションもあるというのは理解できるけど も。誰か「天気がいいですね。」「そうですね。」の次に続く 正しい台詞を教えてくれよ。            美波里ならどう返すんだろう。やっぱり趣味が温泉だから、 「こう寒くなると温泉でも行きたくなるわね∼。」なんて言っ て会話を自分のフィールドに持っていくんだろうか。そうし たらさぞかしその会話も楽しくなるんだろうな。 美波里みたいな押しの強さがあればもっと人生楽しいんだろ うな。そういう前向きで外向きな部分が私に少しでも備わっ ていれば、もしかしたら体調も悪くないかもしれない。病は 気からというし。  果たして私に How are you? に対して心から Fine. と 言える日は来るのでしょうか…。

文/ 510373


kayano_soto issue 3 / Dec. 2012 text & edit by kayano_soto crew D.J.A.D / Shigeru Nakamua / 510373 http://blog.livedoor.jp/kayano_soto/ contact:radiokayanosoto@gmail.com


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