TALKABOUT46

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トロフィは分捕り品 星野康彦 「ヘリオトロープはひまわりか」のところで書いたように、ヘリオトロープのトロープという部分 はトロペーというギリシャ語だった。このトロペーは回転とか方向転換を意味する言葉だと、その時 書いた。熱帯を意味するトロピックスも、北回帰線のトロピックも関連語だと前回書いた。この意味 をもつ言葉トロペーと関連して、意外な言葉が見つかった。 トロフィだ。

当たる言葉だった。 昔の戦争は、日本でも同じだが、人間同士が槍や剣をもってぶつかり合う白兵戦だ。はじめは敵味 方が正面から激突し、向かい合って戦う。 そのうち、劣勢になった方が逃げにかかることになる。 敗走に転ずるのだ。敵に背中を向ける。向きを変える。方向転換だ。これがトロペーだ。 敗者は敗走し、壊走し、その場からいなくなる。その時、勝者は必ず敵の死体から武具を剥ぎ取る。 当時としても、戦争は、敵を殺すことに意味があるのではなく、勝つことに意味があった。 勝者に とっては勝ったことの証拠が必要だ。証拠がなければ勝ったことにならない。証拠を残さなければな らないのだ。そこで敵の遺した武具を奪う。 勝者は、敵の死者から必ず武具を剥ぎ取る。それがトロパイオンつまり現代語のトロフィであった。 つまりそれは分捕り品、略奪品、戦利品である。オックスフォードの古代語の希英辞典にはこう書い てある。 「敵の壊走の証拠としての戦利品。楯とか兜とかを含む。それを樹の枝に吊るしたり、柱を建てて その上に固定したりする」

ギリシャ語知ろうと語源学(44)

英語のトロフィといえば何らかの競技の優勝者に与えられる、優勝カップのような、あれだ。方向 転換を意味するトロペーという言葉、それが変化したトロパイオンが古代ギリシャ語でのトロフィに

ウーン、そういえばトロフィには楯なんかけっこう多いわけだ。 T A L K A B O U T SPRING 2011 NO.46 平成23年4月20日

TALKABOUTがインターネットで読めることをご存知だろうか。 ネットで「JIA近畿 支部住宅部会」と打ちこんで住宅部会のHPを開き、 「JIAと住宅部会について」をク リックすると、[トークアバウト]の発行というのが見つかる。これを開くとTALKABOUT が出てくる。 だが、以前は冊子の形ではなく、内容だけが横書きで記載されていた。無

JIA 近畿支部住宅部会 代表世話人 関谷昌人 委員長 星野 康 彦 編集長 星野 康 彦

機的で面白くなかった。 これではTALKABOUTではない。 何とか雑誌を読むようなかた ちにできないかと思っていた。 この要求に担当の岡田大次郎さんが答えてくれた。 そ ういうソフトを見つけてくれたのだ。 現在は印刷されたタテガキのTALKABOUT誌の形 のまま、ページをめくって読むことができるようになっている。岡田さんに感謝。(yh)

執筆者連絡先 市居 博

(株)市居総合計画事務所・・・・・・・・〒659-0093 芦屋市船戸町 9-7・TEL0797-32-8554

岩城由里子

Front design

榎 秀夫

たぶ・ふぇろーず・・・・・・・・・・・・〒565-0854 吹田市桃山台 3-6-4・TEL06-6831-1154

・・・・・・・・・・・・・・・〒630-0214 生駒市東生駒月見町・190-1-201

奥田 敦

ATS 造家設計事務所・・・・・・・・・・・・・〒607-8177 京都市山科区大宅古海道町・13-6

星野康彦

星野康彦建築研究所・・・・・・・・〒573-1121 枚方市楠葉花園町 5-5-1313・TEL072-867-3720

森田 進

進研究室・・・・・・・・・・・〒540-0012 大阪市中央区谷町 3-1-24-806・TEL06-6942-0891

好川忠延

好川忠延建築設計事務所・・・・・・・・〒630-0213 生駒市東生駒 3-398-62・TEL0743-89-0162

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SPRING

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TALKABOUT-16


民間活用に使用する」と説明している。

物を集約して建替え、生じた余剰地を

が理解し難いので、用語解説の中に「建

文書の中で理論付けがされた。

者も参加している。数十ページの報告

委員で構成され、地域代表、学識経験

公団・公社および豊中・吹田の両市の

6者協議会は大阪府・千里センター・

議会(2007/10) 」の提言である。

これの原因は6者の「千里再生連絡協

思わぬ環境の激変にあって、初めて本

気付くこともなく見過ごしてしまった。

と考えられる。公表後も多くの市民は

却するための麗句または言訳であった

などと呼ばれたが、公有地を民間に売

当初リザーブゾーン、再生地、活用地

2( 環) 境崩壊を促進するリザーブ用地 売却

としている。

一変する住区が多発し、全域に及ぼう

加わらないので、格安に新築住宅が入

もある。土地代金が建築時のコストに

きで土地利用者を募集しているケース

る。最近URが所有地を定期借地権付

のみで、建物は個人所有とのことであ

土地は公有か、開発者の所有で使用権

3( 他)の方法に定期借地権もある 海外の事情を調べると、事例の多くが

要るところである。

り渡してよいものか、社会的に議論の

これは適切な経営をして来なかったた

供するのではなく売却されている。

れていないが、実行段階では土地を提

った時点で問題が明らかになっている。

民有地のために、大方は建設がはじま

測される。

けで処理したのが実情ではないかと推

出来ることになっている点がわが国風

借地人が途中または期限時に、買取り

たのか考えさせられる。 が、この制度、

タウンではこの方法が利用できなかっ

活用し始めているらしい。千里ニュー

手できる、と好評のようである。

めに建替えの原資が無く、土地を半分

そのために、多くは売却側は「既定の

である。土地経営の前提を考えると、

質を理解したと言うところである。面

処分して建替えの費用に当てる、と言

方針通り」、とか受け手側は「法令違反

事情が変われば当然返却され、土地を

此処で決められたのが、公共の集合住

う緊急の救済策であったと思われる。

はない」などの理由で建設が進行、環

維持し運用すると発想するのが自然で

大手のデベロッパー、住宅メーカーも

が計画された都市「千里ニュータウン」

境崩壊を許容する事実がどんどん増え

あるが?(つづく)

倒なことにならないように、関係者だ

としては、構想の基幹を揺るがす大事

てしまった。公有地を簡単に民間に売

宅建替え手法である。売却とは表現さ

件であった。そして景観・居住環境が

TALKABOUT-15

2011

SPRING

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の未利用容積の活用であった。200

目を付けられたのは、国土交通省主導

みに維持できない状況も現れてきた。

住区では学童が減り、学校が過疎地並

密居住の環境になる。

実現するが、将来は共同住宅並みの過

密状態である。売買では手頃な価格が

なる。道路は広いが宅地利用からは過

は何か不明である。府営住宅は新規入

増加が図られている。本当に急ぐ理由

が吹き、急ピッチの工事で住宅戸数の

利用容積を最大限利用する再整備の風

2 千里中央にタワービル出現

吹田市域でも例外ではなく、住宅供給

が人口減が著しい。

が目立っている。一時的と考えられる

居を停止、公社分譲は準備のため転居

積移転(売買)が行なえるようになっ

1( 容)積移転援用で実現 東京駅、丸の内界隈で実績があり一般

公社、府・市営住宅、公団分譲、供与

0年頃から始まり2005年頃には容

ている。

化している。首都圏では商業地域に住

住宅跡地、研修所、社員寮、サービス

(3)手頃価格に分割 戸建住区では宅地の分割が目立つよ

宅を含む場合の特例割増容積も適用し

再整備に採用した。ここは容積60

798戸に増加した住区もある。

200%の住区では戸数が380から

用の準工業地域まで余すところ無く、

0%の商業地域であるが、750%に

戸数は増えるが住環境が劣化している

て再開発をすすめている例が多い。大

増やし容積移転により1000%を超

ことに危機感をもつ人が少ないことが、

共同住宅化が進む気配である。容積率

す容積のタワー型共同住宅が出現して

千里ニュータウンの危機、そして将来

阪では前掲の通り豊中市域の千里中央

いる。可否・成否は将来の評価になる

を暗示しているように思えてならない。

1( 切)っ掛けは6者協議会?

3 再整備に号砲

が、商業地域に不可解な住宅の誘致で ある。 2( ゴ)ーストタウン出現 これを契機に新千里西町、東町では未

TALKABOUT-14

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うになった。これが住区全体に広がる と35坪をきる宅地が連担するように

跡地にできた分譲住宅


千里ニュータウン乱開発 榎秀夫

2011の現状から未来を展望する 烏の見聞とイメージ 金・土・日、どさっと広告を折り込 んだ朝刊がポストに放り込まれる。大 方アート紙に刷られた豪華なリーフレ ットで、重く嵩張るので取り出すのが 大変である。人気があるのか無いのか、 騒ぐ割には数ヶ月も同じ建物の広告が 続くことも珍しくない。 企画があれば時間が勝負、当然建て

以下は今の印象である。

るが、実情は如何か、探ってみると・・・

などの売却が先行していたのが、最近

譲住宅の建替え、研修所跡地、社員寮

特に目立つのは公団分譲住宅( 団 C 地)

の建替えである。

かっての企業局ルールは通用せず、

現行法で押し通られている。表向きは

年経ったので不便・古い・汚い、法 40 的耐震性に不適合などの内外からの指

摘である。しかし、社会的資産の損失

から現況を是とする理由は、余り検証

されていないようである。使える建物

がどんどん消えている代わりに、戸数

を稼ぐ高層化が進み、過密と樹木の減

少が目立っている。

TALKABOUT-13

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る方も大変である。大方が急ぎの工事 1 建設ラッシュを生む土地

建設は、売却された社宅用地、公社

全国的な課題と共通である。いわく高

であろう、千里には建設用のタワーが

高層建築を予測できる見事な高さのも

の売却地で行なわれている。住人には

齢化、少子化、核家族化、所帯当り3・

(2)もう一つの原因(未利用容積の

のばかりである。景気はよいのか、だ

緑が減った、日陰になった。見通しが

5→2・5人に減少、そして就労層の

(1)民間所有地

が見かけほどではないようである。

悪くなった、駐車場が剥き出しで、景

流出(転勤)が拍車をかけた。極端な

何処よりも多く林立している。しかも

そして竹林を傍観すれば田園都市、

観は台なしと評判がよくない。公団分

活用)

と言う開発時のイメージは消えつつあ

桃山台公団 C2 団地高層化立替工事中(民間の開発)


い基礎工事の主役。

の紹介者でもある。口も手も動きが速

兼親方。元大工の経験から他専門工事

主な登場人物:オヤジ:基礎屋の社長

ヤジに導かれ徐々に道が拓かれていく。

た。しかし地元の顔とでも呼ぶべきオ

る現場の基礎工事は一筋縄ではなかっ

あらすじ:フェリーで遠方に行き来す

来るが、それまでに現場にいてくれる

設備はもとより電気ガスも取り付けに

うちに真剣勝負しておきたいところだ。

を痛めずに開けるのは大変だから今の

ッターで開けなければならない。鉄筋

うにすること。これを忘れると後でカ

や給水の管をらくらくと入れられるよ

の間に差し込んでおいて、あとで排水

ンクリートを打つ前に紙パイプを型枠

底に変更してもらおう。

っともないというやつ。連絡して基礎

いてある。これは打ち合わせ外だ。み

中に入れたスリーブは何?ガスって書

い。ありがとうございます。 」基礎の途

1時間20分遅くなり9時半となる。

フェリーに搭乗。いつもより現場着が

たため、昨日は大阪南港20時零分発

前日の10y邸現場立ち寄りがあっ

げてボックスでジョイント、土台下か

す。あとは電話など基礎沿いに立ち上

分電盤のところに二箇所入れただけで

ーブもういれましたか?」「結局ここの

ていったけん」そうかやっぱり。 「スリ

し型枠を搬入中。(つづく)

現場、型枠屋が立ち上がりの打ち放

サイ:電気屋。リブとマブ:設備屋。 だろうか。

バス停留所からバッグを引いて道を

ブル:型枠職人、おっとりしている。 番頭、マナ:後方支援の事務所員(こ

すれ違っていった。やっとプロシード

急いでいると現場のほうから作業車が

こと。10yさん:別のお宅の施主さ

にたどり着くと、いそうなのは電気屋

こでは事務所名は納屋組)。先生:私の

ま。

現場はスリーブの日。スリーブとい

らいれます。 」「まあ、それはそれでい

サイだけか。「設備屋さん今さっき帰っ

うのは直訳したら何かわからぬが、コ

TALKABOUT-12

2011

SPRING

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建物はホールを中心に45度角度を 振り、吹抜けのホールに杉丸太の梁を 十字に架け(十字に架けたのは、ある

トークアバウト

シーダバーン 市居 博

自ら出向くのが最良という考えなので

す。所員は事務所でアシストにあたり

ます。もちろん他の仕事も合間に進め

ろどころ に見える化粧梁には勾配天井

しかし今年に入って、主力の現場速報

ーンと名づけたブログを始めました。

メット等部品類や飲料、昼弁当も欠か

ます。コンベックス、筆記用具、ヘル

にパソコン、携帯、デジカメを駆使し

ていきます。現場事務所は車中で、主

に合わせた長さの違う束を乗せ、リズ

というカテゴリーに於いて時間を割く

せません。なお現場には全仕事の配分

シーダバ

ムとしました。ギャラリー席は二階へ

ことが適わず、結果ほぼ休止状態とな

上、所員が代わって監理・管理を継続

昨秋よりトークアバウト

上る階段で、上から空間の変化ととも

っています。今号では次回アップ予定

することも多々あります。ここに至る

種、オラトリオのイメージです)とこ

に音色を感じることが出来ればと思い

で未発表となっている原稿を載せるこ

には苦難の道のりがありましたが、現

り) ・・・施主の委任を受け設計監理と

現場速報について(ブログ案内よ

構いなしに綴りますので気にせずお読

てください。なお、文体文脈などはお

ルドワークに挑んでいる様子を垣間見

ととしました。

ました。音響は建物が出来上がってみ ないとわからないも、狭い空間ながら

無事引き渡しも終わりピアノが設置

現場管理をかねて最前線に出て仕事を

みくだされば幸いです。また速報とい

在も緊張感もって仕事、つまりフィー

されました。ピアノが入ると急に音楽

します。建築の現場は土地、天候、近

っても年月日は控えているため最新の

天井を高くして弦楽器が豊かに響くよ

の空間らしくなります。階段の途中か

隣、材料器具搬出入・設置、職人、騒

ものとは限りません。

うにと思いました。

らホールを見下ろしながら、弦楽四重

音、その他もろもろの情報拠点であり、

奏が響き渡る日を想像しました。

設計、品質、安全、工程、費用などの 検討事項の最終決着場ですから、総合

現場速報 10Z邸15日目午前、型

-

的に施主に対しての責務を果たすには

TALKABOUT-11

2011

SPRING

NO.46


ました。声楽に関わってみると、楽器 にはない人間の声の円熟した魅力に感 動しました。合唱では、各パートの声 を合わせることで一つのハーモニーが 出来上がる(構成される)ことが練習 を通じて体験でき、とても勉強になり ます。最近は、色々な音楽を聴くとき にも「この一音が無ければこの曲が成 立しない」陰に隠れた一音を探すよう になりました。 子どもの頃から音楽に関わっていた こともあり、大学の卒業設計は建築の イメージを音楽から取り込みたいと思 いました。当時ピアノで練習していた ムソルグスキーの「展覧会の絵」を元 に美術館の計画をすることにしました。 この曲は、ムソルグスキーが彼の友人 であったヴィクトル・ハルトマンの遺 作展を歩きながら、そこで見た10枚 の絵の印象を音楽に仕立てたものです。 ムソルグスキーが絵を見て作ったその

曲を聴きながら、曲から建築を想像す

すが、たまに仲間と集って弦楽四重奏

夫婦の住宅です。30数坪程の住宅で

望を受け、卒業設計以来のことになり

る作業をしました。曲の構成やリズム

ますが音楽と建築を考える機会となり

が出来るような空間がほしいとのご要

いながら建物をイメージしました。こ

ました。日本建築や日本の音楽が「静」

や和音、変調などを常に頭の中でうた

の曲は組曲ですので一曲につき一つの

す。しかし空間的装飾には頼らず、空

で「間」であるなら、西洋の音楽は「動」

小さな建物を計画し、中庭を中心にそ

間構成の変化と不揃いな自然感による

であり間を埋める「装飾」でもありま フの大門という曲で大きなシンボリッ

動き、規則性を強調しないリズム、そ

れぞれの建物を回廊(曲の途中で入る

ク な 門を つくり ま し た 。(こ れ は 最 終

して長調から長調への〝転調〟を感じ

プロムナード)でつなぎ、最後のキエ

棟)その作業が大変面白かったことを

る音楽性を内包させたいと思いました。

思い出します。 先日竣工した住宅は音楽をされるご

TALKABOUT-10

2011

SPRING

NO.46


市 民か ら 取 り 付 け て 彼 は デ ル フ ォ イ に 旅 立

音楽とともに

誓いの通りスパルタ市民はこの法制をひ

趣味は何ですか?と聞かれると、と

使ってはならないと。こうしておけば、豪

う 訳 だ 。 ま た 、 同 じ 敵 と 度々 戦 う な 、 と い

と つ も 変 え るこ と な く 守 りリ ュ ク ー ル ゴ ス

りあえず「音楽です」と答えます。音

岩城由里子

うのもあ る。 何 度 も戦え ば 相手 は防 御を 覚

が帰ってくるのを待ったのだが、彼はつい

楽鑑賞も好きですが演奏するのも好き

った。

え 、 そ れ 故 に 好 戦 的 にな る か ら だ と い う の に帰ってはこなかった。

華 な 家 具 調 度 品 な ど 持つ 気 も 起 ら な い と い

で あ る。 そ の 洞 察の 深 さ に 驚 嘆 す るよ り な

立派な託宣を得たのでこれを書いてスパ

初めからそのつもりだったのだ。

ノに向かうと何もかも忘れてとてもリ

習っていました。今でも、たまにピア

です。子供のころから長い間ピアノを

い。 リ ュク ー ル ゴ ス が 行 っ た 大改 革 が 人々 の

ルタに送 り届け た あと 、 彼 は市 民の誓い を

の他は大学時代にオーケストラ部でチ

生 活 や 慣 習 の 中 に浸 透 し て 最 早 ス パ ル タ も

死 ん だ の で あ る 。 自 分 の 命 まで 道 具 と し て

ェロを弾いていたこともありましたが、

フレッシュする事ができます。ピアノ

ての人々を民会に集めてこう伝えるのであ

使って人々の永遠の安寧を希求する姿に心

これは途中で挫折してしまいました。

永遠のも のとさ せるため に自ら 食 を断って

る。 「これまでやってきた改革は十分に成功

打たれる。

磐 石 と 思 え るよ う に な っ た あ る 日 、 彼 は 総

しているが、ここに最も重要な改革の項目

託 宣 を 得 る まで は 皆 に 公 表 す る 訳 に は い か

点でギリシャ諸国の首位にあったとプルタ

年の間破ることなく運用して協和と名声の

が出来ればチェロ教室に通いたいと思

ると羨ましくなります。いつか、時間

ドケースを持っている人を街で見かけ

チェロには未練があり、チェロのハー

な い 。 そ こで 私 が そ の 応 え を デ ル フ ォ イ に

ークは書いている。

っています。現在の音楽との主な関わ

そ の 後 、 ス パ ル タ の 民は こ の 法 制 を 五 百

お伺いに行くので、皆は私が帰るまでこの

参 考 文 献 : プ ル ター ク 英 雄 伝 ( 一 ) 河 野 与

が 残さ れ て い る 。 し か し 、 そ の 内 容 は 神 の

法律を少しも変えないで待っていてくれな

りは合唱です。以前は全く声楽には興

味がなかったのですが、どこでも練習

一訳 岩波文庫

が帰ってくるまでは現在の国政を固く守っ

できる気軽さもあり10年前より始め

いか?」と。皆これを快諾したので、自分

て 運 用 す る と い う 誓 い を 王た ち 元 老そ し て

TALKABOUT-9

2011

SPRING

NO.46


る非難と名声に対する賞賛のみが差異を示

徳性を以ってのみ一位を争い、恥辱に対す

と人々を説得して、生活の面では皆平等で

にある土地の不平等をなくすることである

同様 に育て ら た 。 食 べ 物 は 少な めで 衣服 は

入 り 青 年 に な る まで 続 け ら れ る 。 女 も 男 と

タ教育と呼ばれる厳しく過酷な集団生活に

供は七歳 にな る と親の元 を離れ 今日スパ ル

改 革 の 手 は 結 婚 制 度や 教 育 に も 及 ぶ 。 子

タだが決してそうではない。

産主義的な暗い国として映りがちなスパル

主義の明るいアテネに比べて自由のない共

こ と が 良 く 分 か る。 ど ち ら か と い う と 民 主

福を実現するために注意深く立法している

尽 く し た 深 い 洞 察と 優 れ た 叡 智 で 人 間 的 幸

者で は な く 、 人 間 の 弱 さ 強 さ の 機 微 を 知 り

すような生き方に導いていった。

下着にも満たない粗末なもので半裸であっ

更に深く リュク ー ルゴス の智慧 を感じる

また人々を責めなかったという。

更 に 、 土 地 以 外 の 財 産 の 不 平 等 も 解 消す

た。 『テルモピュライの戦い』で有名なレオ

彼は、疲弊する国を救う道は貧富の根源

る必要があったが人情としてこれはなかな

のは『レートラー(言葉) 』である。これは

彼はこれを文字にさせなかった。 『レートラ

ーニダースの妻ゴルゴーの逸話もでてくる

葬儀についても語られている。死者に対

ー』の中で文字にすることを禁じているの

か手放せない。そこで彼は一計を案じ貨幣

く設 定し 人々が 蓄財しに くいよ うに画 策 す

す る 迷信 や 穢 れ の 意 識 を な く さ せ る た め に

だ 。 書 き 物 に し た 規 定 や 変え ら れ な い 慣 習

国の根幹をなす憲法のようなものであるが、

るのである。価値が低いから貯めると嵩張

墓 地 を 市 内 に 設 けて 墓 標 は 神 殿 の 近 く に 置

で 縛 るよ りも機 宜 に 応じて 教養 あ る人々 が

が、スパルタの女性は心身ともに強い。

る。 持ち 運 ぶ の も 一苦 労 。 おま け に 鉄だ か

いても差し支えないとした。また、戦争で

を 金 銭銀 銭 か ら 鉄 銭 に 替 えて そ の 価 値 を 低

ら長 持ち しない 。結果 的 に、人 々 の 心か ら

が 同 じ 料 理 同 じ パ ン を 食 べ る の で あ る。 流

第 三 の 改 革は 会 食 の 制 度 で あ っ た 。 全員

に暮れる 人の心 を早く解 くよう に仕向け た

に 服 す る 期 間 も 十 一 日 と 短 く 定 めて 悲 し み

以外は墓 標に記 す ことが で きな かった。 喪

死 ん だ 男 か 神 に 仕え る 職 に あ っ て 死 ん だ 女

柔軟でしかも堅固な仕組みではないか。

る こ と が な い か ら 文 字 に す る 必 要 もな い 。

れているし、人間の悟性によるものは変わ

是 認 す る よ う な 追 加や 削 除 が あ る ほ う が 優

蓄財の意欲が失われてゆくことになる。

石に食欲に関することなのでこれには大き

のである。

投げつけられてリュクールゴスはその最中

リ ュク ー ル ゴ ス と い う人 が厳 格 な 原理 主 義

こうして彼が行った改革を見てくると、

扉は鋸だけでつくりその他の一切の道具を

も 言 及 し て い る 。 天 井 は 斧で 削 り 、 玄 関 の

『レートラー』では、家の普請について

な不満が富者から生じて大勢の人から石を

に片 目を 潰 さ れ る 。 し か し 、彼 はひ るま ず

TALKABOUT-8

2011

SPRING

NO.46


る 兄も死 んだ ので 、次は 弟 のリ ュクー ル ゴ

され、その後の王位を引き継いだ総領であ を 避 け る た め に 彼 は 国 外 に出 た 。 そ れ を 機

ていると嫌疑を起こす者があったのでそれ

とか大改革とかいったレベルではない。革

リ ュク ー ル ゴ ス が や っ た こ と は 国 政一 新

も、その変革の手法は実に用意周到で緻密

命 と い う 言 葉 で も足 り な い。 全 く 新 し い 国

嫌 が る 人 よ り 慕 う人 の 方 が 多 か っ た の だ

で あ っ た 。 い ま そ こ に い る 人々 を 騙 す の で

会 に諸 国 を 旅 し て 見 聞 を 広 め 政 治 や 法 律 の

身篭っている事を知って、生まれてくる子

ろう、スパルタからは度々迎えの使者が旅

はなく脅 かすので もなく 少しず つ納得さ せ

スが 王 に な る も の と 誰 も が 思 っ て い た 。 実

供が男であれば彼こそがこの国の正当な王

先にあったそうだ。プルタークは書いてい

大きな変革へと導いてゆくのである。

を創 造し たとい った ほ うが いい だろ う。で

位 継 承 者 で あ る と 言 明す る 。 し か し 手 に し

る 。 称 号 と 名 声 以 外 は 何 ら 民衆 と 変 わ る と

彼 は ま ず 最 初 に 、二 人 の 王の 下 に 二 十 八

知識を深めてゆく。

た 権 力を 自 ら 放 棄 す る人 間 な ど いな い 。 自

こ ろ の な い 凡 庸 な 王 よ り 、リ ュ ク ー ル ゴ ス

際 彼 は 王 位 に 就 く の だ が 、 兄 嫁 が 兄の 子 を

分を后に迎えてくれるのであれば堕胎する

で も な い 国 政 シ ス テ ム を つ く り 国 の 安寧 を

人の元老を設置して独裁制でもなく民主制

また、王にしても彼が傍にいてくれること

図 っ た 。 こ れ に 関 す る デ ルフ ォ イの託 宣 を

には 統 治 者 ら し い 天性と 指 導 力 が あ った 。

うにみせて 上手 く懐柔し堕胎さ せずに出 産

で民心を御せると考えていたのだと。

と い う 兄 嫁 の 申 し出 を 、 一 見 受 け 入 れ た よ

さ せ 、 そ の 子が 男 ( 女 の 場 合 も 生 き る 道 を

始 す る の で あ る 。 既 に 無 政府 状 態 の よ う な

と だ 。 王 や 元 老 が 強 権 的 にな ら な い 巧 み な

が あ っ た が 議 決 権 は 民衆 に あ っ た と い う こ

『レートラー(言葉) 』と名づけた。面白い

位を甥に譲り自らは後見としてその後の政

時代は極限に達して貧富の差が広がり人心

バランスが内包されている。

そうして、彼は人々から迎えられて帰国

治を司っ た。彼 が 王として 在位 した期間 は

も 荒 廃 し て 国 力 も著 し く 弱 ま っ て い た 。 彼

次 に リ ュ ク ー ル ゴ スが 行 っ た の は 土 地 の

考えてあった)だったので「スパルタの人々

僅かに八ヶ月であった。リュクールゴスと

は デ ル フ ォ イ に 出 向 き 有 名 な 『 神々 の 友 に

再分配である。当時のスパルタでは不平等

の は 、 王 や 元 老 には 議 案 提 出 と 撤 回 の 権 限

いう人物を象徴する話である。当然彼を深

して人よりも神に近きもの』として国政の

が 極 端 に な り富 は 少 数 に 偏 り 大 多 数の 貧 者

し 、 愈々 歴 史 に 残 る ス パ ル タ の 大 改 革 を 開

く信頼する人々が増えてゆくことになる。

大 改 革 を 後 押 し す る 強 力 な 神託 を 得 る の で

が国家の負担となっていた。

よ、お前たちの王が生まれた」といって王

と こ ろ が 、 好 く 人が い れ ば 妬 む 人 も い る

ある。

という訳で後見とは名ばかりで王位を狙っ

TALKABOUT-7

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NO.46


第二

いばか り だ。 先 日 放送さ れた N HKの番 組

する体たらくは既に人心を遠く離れて虚し

政 策 に 手 を 付 け ら れ ず 不 安定 な 政 局 に 終 始

に は あ ま り に も 経 験 不足 な そ の 手 腕 故 に 、

無 為 無 策 の 政 治 に 対 す る 国 民 の 不満 は ひ た

三十 年 に な る か も 知 れ な い と 囁 か れ る今 、

失われた 十年が 二十年になりこ のままだ と

セ ッ ト さ れ る と い う 具合 だ 。 バ ブ ル 崩 壊 後

が革命や戦争となって大噴火して時代がリ

つなく、生まれた時代さえ様々な意見や言

ス に つ い て 正確 に 分 か っ て い る こ と は 何 一

扨 、 プ ル タ ー ク によ れ ば 、 リ ュ ク ー ル ゴ

かに窺えるところが時を超えて魅力的だ。

あ り 、 文 章 の 外 に 愛す べ き 作 者 の 人 柄 が 微

評 は 司 馬 遷 の 『 史記 』 に も 通 ず る と こ ろ が

『な ぜ 日本 は 戦 争 へと向 か っ た のか すら鬱積するばかりである。

利党略中心の政局に終始する不毛政治であ

こんなにも思慮深く清廉な政治家(立法者)

このような政治家不在の現代にあって、

ときに休 戦する制度を設 けたの は彼だと 哲

い 伝え が あ る よ うだ 。 オ リ ュ ン ピ ア の 祭 の

回 』 の 中 で 、 大 戦前 夜 の こ の 国 の 政治 が 党

ったと語られていたが、若しそれが事実で

学者アリストテレースは云っているし、ホ

違 う 時 代 の 同 じ 名前 の 人 物 の 業 績 が 混 ざ り

が い た の か と 感 嘆す る 人 物 が い る 。 そ れ が

く貢献したリュクールゴスその人である。

合 っ た 仮 想 の 人 格だ と い う人 さ え い る く ら

あ れば 現 代と あ ま り に も 酷 似 し た 政治 的 様

抑も、政治というものは時代が安定して

彼の志の高さ、智慧の深さ、そして人々へ

い だ 。 そ れ 程 に 彼 の 人 物 と 業 績 が 偉 大だ っ

メー ロス と 面識 が あった と い う 人 もい る 。

いるときはそう目立たない。役に立ってい

の 愛の 大 き さ を 思 う と き 、 現 代 の 政 治 家 に

た と い う こ と だ ろ う 。 概 ね ヘー ラ ク レ ー ス

ギ リ シャ 時 代 に ス パ ル タ の 国 政 改 革 に 大 き

るようにも見えない。ところが、風向きが

比してその徳の差に愕然とせざるを得ない。

相であり妙な寒々しさを感じた。

変わって不安定になってくるとたちまち政

因 と な っ て 徳 政 令 が 出 さ れ る よ うな 段 に は

は 大体 が 時 の 政 府 の 財 政 や 経 済 の 逼 迫 が 原

つ時代は周期的にやって来るようで、それ

歴史を俯瞰してみるとこのような波風の立

治 や 政 治 家 の 手 腕が 問 わ れ る こ と に な る 。

偉 人 と ロ ー マ 時 代の 偉 人 を 対 比 的 に 描 い て

で 同 じ よ う な 業 績 を 上 げ た ギ リ シャ 時 代 の

な の だ が そ れは と もか く 、 内 容 は 同 じ 分 野

よ り 『 プ ル タ ル コ ス 対 比 列 伝 』 の 方が 好 き

て 知 る こ と がで き る 。 個 人 的 に は こ の 書 名

彼 の業 績 は 『 プ ルター ク 英 雄 伝 』 を通 し

ルゴスの父であった王もこの混沌の中で殺

な く 無 秩 序な 時 代 が 続 い て い た 。 リ ュ ク ー

王は蔑まされるといった状態で永らく法も

衆 に 対 し て 強 権 的な 王 は 憎 ま れ 民衆 に 阿 る

当時スパルタは王制を布いていたが、民

から十一代目の人だったということで話は

お 上 の 権 威 も 地 に 落 ちて 国 の あ ち こ ちで 打

いて非常に面白い読み物である。その人物

進んでゆく。

壊 し な ど の 暴 動 が 起 り 、 や がて そ の マ グ マ

TALKABOUT-6

2011

SPRING

NO.46


しています。

性能を得る時代となり次の展開を模索

機械である車は、人が充分満足できる

よく見かけます。

初期型ですが、人気車ですので今でも

ーの中古車と縁がありました。

ンジンの振動、車が発するそのままの

鉄板然としたドアを閉め、排気音、エ

で、磨けば光る。

じることができる理由は、他にあるよ

でも楽しいと思うこと、心地良いと感

件であることは確かです。

高性能が、人の琴線に触れる大切な条

が降ってくると大変です。

幌は電動で閉まりませんので、急に雨

乗り心地です。

ートもへたっており、なかなか厳しい

雨は漏りますし、サスペンションやシ

人をわくわくさせてくれる15年以上

決して速くはないのですが、これほど

に新しい世界が開くことを実感します。

いくつになっても、一歩踏み出すたび

しみます。

情報を体で感じ、そして太陽と風を愉

うな気がします。

も前の、この車の設計者とマツダに感

謝いたします。

長いトンネルも苦痛です。音と臭いが 尋常ではありません。 その上わけのわからない液体がエンジ

れるうちに乗っておきたい・・・。

安を覚える昨今、ミッション車にも乗

齢を重ね、車の運転や視力にも少し不

見ていたスポーツカー。

ミッションとハンドルを操る悦びは、

爽快です。

気分は、単車に乗っていた頃の高校生。

ます。

晴れた日に幌をたためば世界が変わり

べ く 民主 党 に 政 権 与党 の 座 を 負 託 した の だ

民意は前の国政選挙で二大政党制に向かう

た 政 治 の 癒 着 と 硬直 が 齎 す 弊 害 が 極 に 達 し 、

つ の 政 党 が 占 め て き た こ と に よ り常 態 化 し

ン下からぽたぽた落ちていますが・ ・ ・、

リュクールゴスという人

原点というか、至極あたり前のことで 幸せを感じるのかもしれません。

二十歳の頃から車に乗っておりますが、

そんなことをなんとなく考えて5、6

男子の本懐。

が、寄り合い世帯故の脆弱性と政府を担う

森田 進

年経ち、乗るならこの車そしてこの色

おんぼろもコンパウンドとポリメイト

戦後の殆どの時間を、自民党というひと

と決めていた、ユーノス・ロードスタ

今まで買うまでには至らず、長い間夢

2011

TALKABOUT-5

SPRING

NO.46


更に、もう一つは、先日の地震で 棄して、危険な所に,防災拠点である

も一番安全な大阪城周辺をわざわざ放

車好きでない方には申し訳ないのです

ユーノス・ロードスター

WTCのエレベーターが止まったり、

大阪府庁を移すのか、これと引換えに

が、古い車との出会いがあり、そんな

津波の様子を伝えている。これを見て

壁に損傷があったという事で、府議会

財政赤字を解消しても大阪に取って幸

話を少しだけ。

であろう。

議長が不適当な発言をした。これで議

せな事にならないのではないか。

魅力的な性能を奢る自動車は、国内外

奥田 敦

長を辞任したが、地震時にエレベータ

今まで書いた事はJIAの諸君ならほ

を問わず多くあります。

私はこの文章を書いていながら、

ある意味では安全な事である。しかし、

とんどの人がそんな事は先刻承知だろ

ーが止まるのは至極当たり前の事で、

構造物と人との関係で安全であっても、

の状況と自制心。

天井知らずの加速を止めるのは、道路

いのである。公益法人としてのJIA

エンジンの限界ではありません。

うと思うが、社会では案外解っていな

庁という防災拠点は困る事になり、都

の社会貢献活動はこう言った事を社会

ビル全体が機能しない事になると、府

市としては大変な危険性をはらむ事と

セカンドギアでレッドゾーンまで回さ

いそうです。

に理解してもらう様、働きかける事が

いたつもりである。

フルアクセルでもタイヤはスピンもせ

なる。せめて、階段で上り下りの出来

は望ましいのではないか。そうなると、

(磯崎氏はこの原稿を書き上げた日の

ず怒濤の勢いでほぼ真っ直ぐに進み、

なくても異次元の速度域になってしま

津波、高潮の最先端の海の近くに、防

朝日新聞2011/4/6朝刊で、こ

そして

大切である。そのためにこの原稿を書

災拠点とならねばならない府庁を置く

の都庁の事、錯綜体の事を述べている

る範囲の高さの建築が防災拠点として

のは如何かという、ごく常識的な結論

山道では意のままに操ることができ、

タイヤも鳴らなければ滑る気配もあり

ので参考とされたい。 )

している「幕末大坂の事件史、災害史」

ません。

が出てくる。今、大阪城博物館で開催

を見ても、嘉永7年の大坂を襲った大

TALKABOUT-4

2011

SPRING

NO.46


参加した事務所の案を見ても、これを

保存は考えていなかったようである。

老朽化しているという事になっており、

このコンペの時の与条件では、本館は

更をするのは如何かと思う。しかし、

ここまで作っておきながら根本的な変

簡単に根本条件を変えていいものか。

変わった事は認めるとしても、こんな

社会の経済状況がこの20年で大きく

う機能を果たせるのか気になる所であ

な事は、果たしてこのビルは府庁とい

匠の問題も重要であるが、もっと大事

は疑問なのである。ただそう言った意

しかし府庁として相応しいのかどうか

それで又相応しい企業もあるだろう。

る。普通の貸ビルだとすれば、それは

らする、空調の無駄さだけが感じられ

が屋内体育館を兼ねている様な錯覚す

考え方に基づいていると言われている。

高層を造らなかった磯崎氏の案はこの

れた東京都庁コンペで、落選覚悟で超

基づいて述べている。1985年行わ

ると、氏は旧都庁の実地調査の結果に

て行政の機構がその役割を果たしてい

機構が相互に複雑に連携する事によっ

「錯綜体」と呼んでいる。役所内部の

が頻繁なのである。これを磯崎新氏が

しろその途中階相互を行き来する交通

錯綜体についての説明は省くが、要は

る。 このWTCビルは、先に述べたよ

保存活用する案は一つもなかった。こ の保存が一つの条件変更であれば、こ

基準階の床面積の小さい階を多層に積

と言われる用途には相応しくないとい

うにいわゆる貸ビルとして、床貸しの

合は、下階のアプローチから各階まで

う事である。先日も、最近できたある

の本館を活用し、現在の財政状況に見

さて、先に述べたWTCの建築が

の輸送を主な目標としている。途中階

町の超高層市役所に所用をあちこちの

み重ね、移動手段をエレベーターの能

気になるというのはどう言うことか。

相互の連絡はほとんど考慮していない

課を回ったが、エレベーターの待ち時

ビルとして設計されたビルである。建

まずその第一は、その外観である。誰

筈である。構造が「ツリー構造」なの

間や高層階用と低層階用との乗り換え

合った新たなマスタープランの修正コ

が設計したかは私は知らないが、バブ

である。

にイライラした記憶がある。おそらく

力だけに依存している超高層は、庁舎

ルの頃を思い起こさせるビルの外観が

しかし、庁舎建築は内部輸送は決して

そう言った問題が日常的に発生するの

物内部の交通システムが、貸ビルの場

気に入らない。1階2階のあのこけ威

ツリーの様な単純なものではない。む

ンペをすれば良いと思う。

しの漠然とした大空間は、ビルの玄関

TALKABOUT-3

2011

SPRING

NO.46


にも明治の時代精神が感じられる。今

である。

及びその周辺はどうなるのかという事

最近,府庁移転問題がマスコミを

たらしい。更に府庁が西区に全面的に

い。事実、大阪府はずいぶん安く買っ

それを安く買いたたこうという事らし

修理が行われる事になったというニュ

れていた。最近、最上階の「正庁」の

取り壊す話があり、保存要望書が出さ

震補強費に多額の費用がかかるとして

府庁移転問題 回はどうだろうか。新聞によるとWT

賑わしている。西区に移すという。現

移転すると跡地が売却できる。その不

ースをテレビで見て、保存される事に

好川忠延

年竣工である 15

動産収益で府の財政赤字が解消できる。

なったのだなと思っているが、残され

大正15年竣工の本館は一時、耐

から、 90 年近くこの場所の風景となっ てきた訳である。しかし、ここに建設

この魅力が移転を推進させているとい

てうまく活用されれば良いのだが、主

Cビルは大阪市が持て余しているから、

されるその前の約50年間は西区江之

う事らしい。明治時代と違って、ずい

る。更にその前の明治維新から明治7

ると、とんがり屋根の瀟酒な建物であ

亘る財政赤字は大変の問題であり、知

い現実主義であるが、大阪府の長年に

ぶん不動産屋的発想で、身もふたもな

いる様子も寂しいものがある。

つんと空になった本館だけが残されて

要な部署が西区に行ってしまって、ぽ

在の府庁本館は大正

子島の木津川近くにあった。写真で見

年までは、現在の大手前の知事公舍辺

事のこの一発逆転を狙うアイデアに賛 成したくもなるが、このアイデアには

阪府庁舍・周辺整備基本計画提案競技」

府庁の全体構想は1989年、 「大

にあった江戸幕府時代から引き継いだ 代官屋敷を使っていたそうだ。今度の

という指名コンペが行われ、黒川紀章

した状態である。こんなに大騒ぎした

いくつかの問題を孕んでいると思えて

その一は、私は移転先のWTCビ

コンペをしてわずか20年で基本計画

府庁移転問題の新聞記事を読んで、ま

という言葉を思い出した。明治7年に

ルがどうも気になるという事である。

を放棄してしまっていいものなのか。

氏が当選し、現在、その警察棟が竣工

移転した時は,新しい時代を迎えて、

これについては後に述べる事として、

設計者の黒川氏はすでに亡くなったし、

ならない。

大阪は海外に飛躍しなければならない

もう一つは、移転後現在の府庁舎本館

た、西に行くのかと、歴史は繰り返す

と、海の近くに移転したという、如何

TALKABOUT-2

2011

SPRING

NO.46


TALKABOUT

46

SPRING 2011 ARCHITECTS ESSAY MAGAZINE 府庁移転問題・・・・・・・・・好川忠延・・・2 ユーノス・ロードスター・・・・・・・・・奥田

敦・・・4

リュクールゴスという人・・・・・・・・・森田

進・・・6

音楽とともに・・・・・・・・・岩城由里子・・・9 トークアバウト

シーダバーン・・・・・・・・・市居

千里ニュータウン乱開発・・・・・・・・・榎

博・・・11

秀夫・・・13

ギリシャ語知ろうと語源学(44)「トロフィは分捕り品」・・・・・・・・・星野康彦・・・16

ユーノス・ロードスター

ユーノス・ロードスターをよくご存じない方のために 二人乗りのオープンカー 幅 1.7m弱、長さ 4m弱、重さ 990kg の小さな車で、排気量は 1800CC 1989 年から製造、国外でも多くのファンを持ち、このカテゴリで生産台数は世界一

NO.46

SPRING

2011

TALKABOUT-1


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