TALKABOUT 45

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合な場所とは思えない。また、そこに

地勢的にみても烽火を上げるのに好都

所として説明されるのが一般的だが、

とらしく、飛火野は烽火台のあった場

「飛火」とは「飛ぶ火」で烽火のこ

知らなかった自らの不明を恥じた。

深い祭が地元奈良であったことを全く

いということだった。こんなにも興味

の儀」に参加してそれを体感して欲し

が断然面白く、今回午前零時の「遷幸

ような一点の曇りも無い星空が広がっ

ように寒く、放射冷却を約束するかの

こと。外は既に深々と冷えて凍てつく

とももの凄くハイライトのひとつとの

て起こす(?)バリバリという音が何

ではなかったのか。いずれにせよ、華

飛ぶ火とは果して死体から発する燐火

たのか、死者を弔う場所であったのか。

る場所である由。それが古戦場であっ

この辺りがどうやら死と深い関係のあ

守(ノモリ) 」に出てくる鬼の話に至り、

(ノモリ)の鏡」という池から能の「野

ある「雪消(ユキゲ)の沢」と「野守

想いを馳せることで目の前に見える事

はないが、昔の人の死生観や宇宙観に

た。ここに書いた飛火野の話は定説で

スモロジーに華が咲き夜は更けていっ

北軸や東西軸の話に波及して古代のコ

神神社(オオミワジンジャ)の話や南

邪馬台国の存在で喧しい桜井周辺の大

で体を温め、更に話はこの周辺から今

場所を料理屋に移し地鶏鍋と日本酒

ンクあたりまできたところで案内が回

早に歩いたが、二の鳥居の手前のクラ

してゆく。玉砂利を踏み締めながら足

気と漆黒の闇が徐々にその行為を拒絶

照らして歩く人もいるが張り詰めた空

らない。懐中電灯やケータイで足元を

写真は禁じられていて歩くのもままな

遷幸の儀に際しては、一切の照明や

ていた。

やか平城京とは別にその下に築かれた

出ましの音は間近に聞けないようだ。

ってきて静止を求められた。残念なが

ふと時計を見たら午前零時まで三十

しかし、これが結果的には最高に良か

物もまた活き活きとしてくるのが何と

ら、その地にある春日大社の祭が生命

分もない。急がなければ若宮のお出ま

った。遷幸の儀の卓越した空間性とド

ネクロポリスが御蓋山(ミカサヤマ)

誕生に関わるというのは誠に気宇壮大

し(誕生?)の瞬間に立ち会えない。

ラマ性はこの場所にいて初めて完璧に

ら闇を切り裂くバリバリという若宮お

な話ではないか。

半井さんの話では、そのとき神官たち

味わうことができたのだ。

も嬉しい。

半井さんによれば、おん祭はその背

が手にした榊の枝葉で社の四周を叩い

の足元の飛火野で連環しているとした

景もさることながら祭の行事それ自体

2010 TALKABOUT-7

SPRING

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