TALKABOUT43

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のだろう、口語的なリズムを大切にし

思うとちょっと痛い。

清水訳との違いに随分と困った記憶が

ッチと雰囲気は清水訳でしか味わえな

ある。感情移入できないのだ。あのタ そういえば、探偵と建築家、どこか似

いから何度も読み返した。

てチャンドラーの描くフィリップ・マ ーロウを実に生き生きと日本語化して てはいないか。

それほどの名訳だけど、そこまで日

それ自体が名訳である。

事務所の椅子に座って来る当てのな

一匹狼だ。

意訳や省略などをして、ひょっとした

逆に見れば、映画的な感覚でかなりの

本語としてこなれているということは、

出逢ったぼくは、一読してその文章が

飛び切り美人の秘書はいないが、バ

らフィリップ・マーロウならぬ「清水

い依頼者を待っている。

創り出す世界に魅せられてしまった。

ーボンならいつもデスクの引出しの中

二十歳ぐらいにチャンドラーの小説と

『長いお別れ』を読んだときなどはす

マーロウ」になっているのではないか、

y l e v o L y M l l e w e r a F

」(『さら

ば愛しき人よ』)を買ったのだけどこれ

い立ち「

それで、一度原文を読んでみよう思

とも思った。

にある。

はアトリエ系の事務所だけかな。

で書かれていていたが、こういう気分

渡辺武信氏も同じようなことを何処か

損をしても筋は曲げない(つもり)。

っかり嵌ってしまい、友達を誘ってカ クテルバーに行ってはギムレットを飲 み歩いたものだ。

放浪時代に、サンフランシスコで「マ ・

ーロウ マップ」なるものを手に入れて、

ったことがある。この本の中に出てく

いずれも日本語に翻訳されていて貪る

ウを主人公とする長編は七編ある。

対訳的に読んだわけではないので訳の

フィット感があったのだ。

語と日本語の差を感じさせない見事な

る「ビクター」のモデルになった店も

ように読んだけど、そのうち『高い窓』

正確度とか省略については意識しなか

が驚いた。そんな危惧は全くなく、英

ちゃんと載っていて、其処を訪れ、主

が田中小実昌訳(現在は清水訳もある)、

ったが、実際にはそのようなことが結

それはともかく、フィリップ マーロ

人 公 よ ろ しくテ リ ー レノ ック ス を 偲

『大いなる眠り』が双葉十三郎訳で、

小説の舞台になった場所を訪ねてまわ

んでギムレットを頼んだりもした。今

2008 TALKABOUT-7

SPRING

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