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―戦後名作住 宅 を 再 考 せ よ ―

MODERN HOUSE SCENERY 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程岩岡スタジオ作品集 2015 Students Projects of Graduate School of Architecture Faculty of Science and Technology Tokyo University of Science IWAOKA Studio 2015


MODERN HOUSE SCENERY 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻 岩岡スタジオ作品集2015 Students Projects of Graduate School of Architecture Faculty of Science and Technology Tokyo University of Science IWAOKA Studio 2015


Contents

/ もくじ

CHAPTER 1

概要 / Introduction 06

審査講評会 / Jury judging

12

課題名 / Subject

14

出題者 / Studio master

岩岡竜夫

16

選定住宅作品 / Selected masterpieces

17

序文 / Preface

存在論としての「建ち方」   著:大村高広

CHAPTER

2

住宅作品集 / Collection of works 20

1924 / シュレーダー邸

2015 / しゅレーダー邸

    G.T.Rietveld

    國分元太 ―山名研究室 M1

30

1959 / 山田守邸

2015 / あるまじろん

    山田守

    外川喜裕 ―岩岡研究室 M1

40

1966 / 塔の家

2015 / 木塔の家

    東孝光

    齊藤誠司 ―安原研究室 M1

50

1971 / 松川ボックス

2015 / ♯4

    宮脇檀

    玉江将之 ―岩岡研究室 M1

60

1976 / 住吉の長屋

2015 / 住吉の隠屋

    安藤忠雄

    堀越一希 ―岩岡研究室 M1

70

1976 / 上原通りの住宅

2015 /「突撃隊」軽装備で前へ

    篠原一男

    大村高広 ―岩岡研究室 M1

80

1978 / 今宿の家

2015 / 金が谷の家

    坂本一成

    江間匠太 ―岩岡研究室 M1

CHAPTER

なばりや

3

記録 / Report ( archive, credit ) 92

Statement / 声明 〈外景〉として都市住宅  著:岩岡竜夫 乃木坂ハウス

94

Architect / 選定名作住宅の設計者概要

96

Member / 2015 年度修士課程岩岡スタジオ履修者一同

98

Epilogue / あとがき

iwaoka studio

03


Matsukawa Box Shinjuku-ku

Shibuya-ku

House in Uehara

Tower House Yamada Residence Minato-ku

Tokyo

House in Imajuku Row House, Sumiyoshi

Schroder House Utrecht


CHAPTER 1 Introduction

CHAPTER 2 collection of works 01- 07

Chapter 1 : Introduction

CHAPTER 3 Report ( archive, credit )

概 要 『 戦 後 名 作 住 宅 を 再 考 せ よ 。』


審査講評会

/ Jury judging @二号館四階オープンスペース

 「修士課程最終課題」である本審査会では総勢 7 作品からなる住宅模型 ( 縮尺 1/50 ~ 1/20) 及び周辺敷地模型が机上へ一同に並び、各自持ち時間3分を目処にプレゼ ンテーションが行われた。廊下を歩く学生達は突如現れた模型群に惹かれて、わら わらとオーディエンスとなり集まってくる。二号館四階オープンスペースで行われ た対話形式のパネルディスカッションの周囲を学生が取り囲み、予定していた時間 を大幅に超えて、議論は長丁場へと発展した。

 審査員と学生が放つ議論の中心は、自ずと住宅の「建ち方」へと集中していく。〈外 景〉として現れる表層のみならず、現代住宅として、名作住宅の目と鼻の先に建つ に相応しい〈内部空間〉に至るまでその設計思考が与えられているのか。最終講評 を経た結果、優秀作品として選ばれた二作品は、No.03 齊藤誠司さんの「木塔の家 fig1)

なばりや

」と No.05 堀越一希さんの「住吉の隠 屋

fig2)

」である。対象とする名作住宅は「塔

の家(東孝光)」と「住吉の長屋(安藤忠雄)」というどちらも都市型狭小住宅の代 名詞であり、二人とも前面道路を隔てた真正面に自身の敷地を設定している。「木塔 の家

fig1)

」は幅員約 16 m、商業ビル群に挟まれた外苑西通りに〈木質化のフロント なばりや

ランナー〉として構えるのに対し、「住吉の隠 屋

fig2)

」は、幅員 4 mに満たない住宅

密集地に〈カメレオン〉のように擬態しその気配を潜めている。まさに真逆ともい える敷地コンテクストと「建ち方」を持つ両作品は、名作住宅に対して決して消極 的にならず、むしろ〈異様な〉アグレッシブさを持っている。このような、振れ幅 の全く異なる二作品が優秀賞として選定されたことは、結果として大変興味深いこ とである。

fig1. 齊藤誠司さんの住宅作品「木塔の家」

06

graduate school of architecture

fig2. 堀越一希さんの住宅作品「住吉の隠屋」


08

graduate school of architecture


iwaoka studio

09


10

graduate school of architecture


iwaoka studio

11


課題名

/ Subject

修士課程最終課題

『〈外景〉として都市住宅 』 Modern House Scenery

- 建築と街並みとの関係を再考する -

現代建築と周辺環境との関係を再検証する 建築作品を一歩引いて眺めてみる 住宅によって新しい街並みの構築は可能か

具体的な街並み景観を構成している著名な〈住宅作品〉を 1 つ選定し その住宅と周辺環境との関係を分析する

さらに、

その住宅作品に近接する敷地を借りて そこに新たな〈住宅〉を提案する

12

graduate school of architecture


1.

著名な住宅作品Aの選定

2.

住宅作品Aの分析

3.

既存の街並みBの分析

4.

A + B の分析

5.

新たな住宅Cの敷地選定

6.

新たな住宅Cの設計

7.

B+Cの分析

8.

住宅作品Aと新たな住宅Cの関係 A+C

9.

新たに作られた街並み全体の分析 A+B+C

RESEARCH

DESIGN

OUTPUT

U

デザインプロセス / Design process

nvironme ne nt a rb

B A

都市

C

住宅19xx 住宅 2015

DESIGN/PLANNING

タイムテーブル / Time table 2015. 09. 16

課題発表 本設計課題履修者は課題出題者より課題文を提示され、複数スタジオから希望選択制によってス タジオを決定。(※岩岡スタジオでは課題を進めるにあたり、名作住宅作品を選定するが、竣工後 約20年以上経過した、著名な建築家による専用住宅のみを選定対象として認める。)

11. 15

中間発表 選定した名作住宅の決定及び、設計する対象敷地を明確化する。 過去から現代へ街並みのサーベイを含めたリサーチ結果及び、設計趣旨の概要等を、各自持ち時 間3分をもってプレゼンテーションを行う。発表形式は自由(パワーポイント、模型、パネル等)。

12. 02

最終講評 周辺敷地模型及び、設計を行った住宅模型を 1/50~1/20 で表現し、各自持ち時間3分・質疑応答 5分をもって、課題出題者を前にパネルディスカッションを行う。発表順は選定した名作住宅作 品の竣工年が古い順に行う。

12. 31

入稿締切 最終講評を行った後、本書を出版する入稿データを作成。 マージン 160mm × 227 mmの見開き4ページに、サーベイを含めた設計提案の図面、ダイアグ ラム、テキスト等をレイアウトしたデータを年末を締め日として入稿。

2016

出版

出題の意図 / The intent of Subject  私が以前通勤していた大学の研究室は東京都渋谷区の富ヶ谷にあった。閑静な住宅街の真ん中に小さなキャンパスがひっ そりと建っていたが、「上原通りの住宅」はそのすぐ近くにあってひときわ異彩を放っていた。数年後、〈上原通り〉とは 別の道沿いに、建築家やデザイナーの住宅が次々と現れ始めた。竹の家、ベニヤの家、コンクリートの家、ガラスの家。 自己主張の激しい個性的な〈住宅〉の外観がバラバラに隣接しあう風景、そこには確かに東京の街並みの自由さがあった のだが、果たしてそれは〈街並み=外景〉といえるものなのだろうか。点としての建築作品は線としての街並みを構成す ることができるか、そして既存の街並みに対して新たな図と地の関係を築けるか、それが今回の課題意図である。

iwaoka studio

13


出題者

/ Studio master

岩 岡 竜 夫 T a t s u o

I w a o k a

概要 / Overview

建築作品 / Architecture

名称

東京理科大学 岩岡竜夫研究室

1998/05

立体土間の家 ―戸建住宅

主宰

岩岡竜夫 ( 一級建築士、東京理科大学理工学部教授 )

1999/09

T平面の家 ―戸建住宅

所在地

アトリエ:東京都港区南青山 1-17-3 乃木坂ハウス

2000.03

アビタ戸祭 ( 共同設計 ) ―集合住宅

研究室 :千葉県野田市山崎 2641

2000.05

対屋の家 ―住宅+倉庫

2001.12

八丁堀のローハウス ―戸建住宅

2002.08

i -Box ―移動式小屋

東京理科大学野田校舎二号館四階岩岡研究室

プロフィール / Proile

2003.04

イワサキ・アイテクノプラザ

―外装リフォーム

1960

長崎市生まれ

2003.08

台形面の家 ―戸建住宅

1978

長野県立松本深志高校卒業

2005.05

バレエの家 ―住宅+バレエスタジオ

1983

武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業

2005.12

ラセンの家 ―戸建住宅

1985

同大学院造形研究科建築学専攻修士課程修了 ( 芸術学修士 )

2007.05

アライブ本社工場 ―工場+オフィス

1987-1988 フランス・パリ建築大学第 8 分校留学

2006-2010 エクアス小石川林町 ( 共同設計 )

1990

東京工業大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了 ( 工学博士 )

―分譲マンションの建替え

1992

東海大学工学部建築学科専任講師

2011.3

バレエの家Ⅱ ―住宅+バレエスタジオ

1993-1999 東京工業大学非常勤講師 ( 図学 )

2011.12

乃木坂ハウス ―戸建住宅+アトリエ

1995

同第二工学部建設工学科助教授

2012.04

福浦ハウス ―戸建住宅の改修

2003

同建築デザイン学科教授

2012.10

KDH ―組立式小屋

2011

東京理科大学理工学部建築学科教授、現在に至る

2014.08

中落合のローハウス ―戸建住宅

総評 / General comment  この課題には大きく3つのタスクがある。(1)現存する著名な住 宅作品を各自選定してそれについて徹底して調べること。(2)その 住宅が立地する場所の周辺の様子を調べること。(3)その住宅に隣 接する敷地を借りて新たな住宅を提案すること。建築雑誌などの画 像メディアでは、特に都市に建つ住宅に対して、それが実際に建つ 周辺環境との関係を通して具体的に語られることが少ない。そこで ここではまず対象とする住宅作品について、その中身はもとよりそ れが立地している周辺環境も含めてリサーチをおこない、その住宅 に内在する〈街のコンテクスト〉を見いだすことから始める。「シュ レーダー邸(1924)」から「今宿の家(1978)」まで、学生が選択し た7つの住宅はみなポピュラーな作品であるが、まず建物と周辺環 境との関係を読み解くことで、それぞれ新たな発見と、住宅設計に 対する新たな表現が個別に見いだされたようである。 ig1.「中落合のローハウス」遠景 ig1 = アトリエ・アンド・アイ岩岡竜夫研究室「中落合のローハウス」(2014) ―戸建住宅 撮影協力:山田新治郎(Shinjiro Yamada)「山田新治郎写真研究室」〈http://www.yamadashinjiro.com/〉

14

graduate school of architecture


選定住宅作品

/ Selected masterpieces

1924

2015

『 シュレーダー邸 』 『 しゅレーダー邸 』

S=1:1000

Schroder House

Shu-roder House

設計:G.T.Rietveld 敷地:ユトレヒト 建築面積:94.7m²

設計:國分元太 敷地:前面道路向正面 建築面積:108.8m²

1959

2015

『 山田守邸 』 Yamada Residence

S=1:1000

1966

2015

1971

2015 Matsukawa Box #4

設計:玉江将之 敷地:西側隣地 建築面積:98.0m²

1976

2015

Row House, Sumiyoshi

p.40

『 #4』

設計:宮脇檀 敷地:新宿区西早稲田 建築面積:88.5m²(#2)

『 住吉の長屋 』

S=1:1000

Wooden Tower House

設計:齊藤誠司 敷地:前面道路向正面 建築面積:32.6m²

Matsukawa Box

p.30

『 木塔の家 』

設計:東孝光 敷地:渋谷区神宮前 建築面積:11.8m²

『 松川ボックス 』

S=1:1000

Armadillon

設計:外川喜裕 敷地:西側隣地 建築面積:86.1m²

Tower House

S=1:1000

『 あるまじろん 』

設計:山田守 敷地:港区南青山 建築面積:143.7m²

『 塔の家 』

p.20

p.50

なばりや

『 住吉の隠屋 』 Spy House, Sumiyoshi

設計:安藤忠雄 敷地:大阪府住吉 建築面積:33.7m²

設計:堀越一希 敷地:前面道路向正面 建築面積:30.4m²

1976

2015

p.60

『 上原通りの住宅 』 『「突撃隊」軽装備で前へ 』

S=1:1000

House in Uehara

Go ahead! Light-armed troops

設計:篠原一男 敷地:渋谷区代々木上原 建築面積:80.5m²

設計:大村高広 敷地:前面道路向正面 建築面積:53.6m²

1978

2015

『 今宿の家 』 House in Imajuku

S=1:1000

16

graduate school of architecture

設計:坂本一成 敷地:横浜市今宿 建築面積:57.4m²

p.70

『 金が谷の家 』 House in Kanegaya

設計:江間匠太 敷地:北側隣地 建築面積:66.3m²

p.80


序文:存在論としての「建ち方」

Preface : Ontology of Architecture

 建築は、それ単体として存在することはできない。周囲の環境

の世界との関わりを考察している。そのとき僕たちはテクスチュ

との相互作用のなかで絶えずもまれ、ゆがみ、平衡することでそ

アルな解釈の戯れを知らず知らずのうちに退け、相関主義をたや

の存在を世界に定着させる。「この建物は建ち方がいい」という場

すく乗り越えてしまっている のだ。

3

3

3

3

3

3

3

3

3

3

3

3

3

3

3

合、大抵はその建物と周辺の環境との関係を指して、そしてそれ

* * *

らが共同してつくる全体性を指していう。とはいえ、「建ち方」と

 まとめよう。「建ち方」とは、建築における存在論であった。そ

いうのは実は、なかなか定義の難しい概念だ。あるときは「配置」

して「建ち方」を考えるということは、建築それ自身の〈全き他者〉

であり、あるときは「構え」である。でも、それは「建ち方」のあ

としての物質性を肯定し、それらの関係性をつぶさに考察するこ

る断面を示しているにすぎない。たとえば、コンテクストが一切

とであった。そのとき僕たちは、建築と世界との関係における思

存在しない場所があったとする。それをひとまず〈原―砂漠〉と呼

考のもうひとつの次元を、開きうる地平に立っている。

ぶことにしよう。〈原―砂漠〉には、文化も歴史も存在しない。周

* * *

囲に建物はなく、光も影もない。しかしそれでも建築は、それ単体

 さて、「建ち方」へのまなざしということについてこれまで書い

で存在することは許されない。それはたとえばその建築の架構が、

てきた。しかし今回僕たちが取り組んだのは、「建ち方」を考える

事実どこかに存在する大工が加工した柱や梁であり、どこか特定

のと同時に、過去の住宅作品を再読することだった。この2つの、

の山林から切りだされた木材であるからだ。建築を構成する大量

一見すると相容れない命題を同時に扱うということはどういうこ

の部品は、それぞれが異なるコンテクストを内包した、どうしよ

となのだろうか。一方で特定の建物・建築家をリサーチし再読を

うもなく具体的なオブジェクトである。複雑に絡み合う産業構造

試みながら、他方で〈外景〉としての建築のあり方を考えるとい

の網の目の中で、種々雑多な特定の物・者の活動の果てに、その

うことは、かなり矛盾した行為ではないだろうか。というのも、 〈外

結節点として建築は存在する。だからこそ〈原―砂漠〉においても、

景〉として建築を考えるということはつまり、建築家の設計した

建築の物質としての実在を認める限り、「建ち方」という議論は成

建物と、その隣に建つなんでもない民家を、どちらも等価な「周縁」

立しうる。「建ち方」は「配置」のしかたや、「構え」のありかた

として、まったくの同一平面上で捉えなければいけないということ

3

3

3

3

3

3

だけを問うものではない。「建ち方」は建物の存在のしかた を問う

に他ならないからである。特殊なコンセプトで建てられた特定の建

もの、つまり建築における存在論である。

物を参照しつつ、しかしそのクリシェで終わってはいけない。ある

* * *

いは、周辺の都市環境をよくリサーチしなければいけないけれど、

  建 築 に お け る 存 在 論 と い え ば、 多 木 浩 二 の『 生 き ら れ た 家 註 1』

単にコンテクストを丁寧に読み込んだだけの解答は認められない。

が頭に浮かぶかもしれない。しかし多木がおこなったのは、建築を

その中庸を探り、矛盾と葛藤しながら各人が答えを見付け出す必

通して人間の生を、その存在の有様を考察することであった。一方、

要があった。しかも、時間が経てば環境は変わるから、その建物

「建ち方」を考えるということは、( 人によって ) 生きられた家では

の周囲には、当初作家が意図していなかったものが建っていたり

なく、( 建築によって ) 生きられた都市を考えるということになる。

もして、その困難さをより際立てる。偶然に、なんの理由もなく、

都市を通して、建築の存在を考察するのだ。このような〈建築を主

環境は変わる。しかし、現代建築を考える上でかなり重要な問題が、

語にする〉という態度は、一見すると奇妙である。それは無機物

その矛盾と偶然性に潜んでいる。

の集合体である建物に人格を与えるような態度であり、あたかも、

* * *

世界における自立した存在者として建物を扱うような態度だから

 僕たちが、ある建築の空間とそこに込められたコンセプトを理

である。現状、そのような視点からの建築論はかなり稀少だろう。

解することは、たやすい。しかしそれらと高速道路を、木賃アパー

Object - Oriented Ontology

「建ち方」へのまなざしは、オ ブジェクト指向存在論を経由し、新

トを、悪趣味な成金住宅を、商業ビルを、建売住宅を、しいては郵

たなしかたで建築を考察する可能性を秘めている。「建ち方」を建

便ポストを、同一平面上で扱うことはとても難しい。でも、必要

築それ自体の存在論として扱おう。簡単なことである。物事をよ

なのだ、絶対的に。都市の中では、それらは偶然にしてなんの理

く見直そう。物と物の関係 / 無関係、物と人の関係 / 無関係をその

由もなく、しかも必然的に、隣り合ってしまうのだから。それらは、

まま描こう。そこには建築家が思ってもいないような事態が、建

どうしようもなく確かに、今ここに存在しているのだから。少々大

築家たちも物・者の一つとしてはめこまれた光景がある。物質と

げさに言えばこのとき必要になるのは、ピラミッドとミースと洗濯

しての建築、それ自体を思考する可能性は、確かに存在している。

機を、アアルトと目の前のコップとあなたを、正倉院と自転車と中

僕たちが建物をどう捉えているか、ではない。僕たちの事情から

性子を、篠原一男とアルミニウムと鳥小屋を、そしてそれら全てを、

はすっかり切り離して、 〈 無人の物自体〉に思考を及ばせること、だ。

等価に測ることができる物差しであり、物差しになりうる軽やか

それは、カント以来の近現代哲学と、そこから多大な影響を受け

な存在論である。僕たちの提案からは、そんな物差しの断片を垣

ているモダニズムの建築論一般においては、極めて困難な、いや、

間見ることができるはずだ。少なくともそのような読みを発生さ

不可能なことになっている。しかし、「建築がどのようなしかたで

せる可能性を、それぞれの提案は持っている。

そこに存在すればいいのか」という思考を巡らせたとき、僕たち は人間から見た建築の表象ではなく、物質としての建築それ自体

[ 著:大村高広 ] 註 1= 多木浩二 (2001)『生きられた家 ―経験と象徴』岩波書店 ,264pp.

iwaoka studio

17


Photo by 東孝光(1982) 『別冊新建築 1982 日本現代建築家シリーズ④ 東孝光』新建築社 ,p.63

東孝光氏による〈一連の都市型住宅〉の金字塔作品「塔の家」

都市型住宅(Urban Housing):都市型住宅とは、めまぐるしく変化

今までの土地上に、今までとは異なる視点で、今までとはまったく

を続ける都市の中で、ひしめき建っている家と家の間でしなやかに

異なる新しい住宅を建てようという試みが、過去から現代に至るま

暮らす、そのための住宅。都市型住宅は、ベッドタウンのような、

で繰り返しなされているのである。

都市近郊の住宅用造成地につくられるものではなく、すでに住宅が

 ここで、建築家や建築学科の学生に「都市型住宅」と尋ねてまず

できあがり、密集した市街地に建てられるものを指す。現代におい

名前が挙がるのが、建築家「東孝光」氏の自邸「塔の家」である。

て土地はすでに細かく区画整理されており、それ以上に広げること

東京青山のキラー通りに林立する商業ビルに挟まれるように建つ太

は難しい状態である。しかしながら、時代は刻々と移り変わり、家

い柱のような建物だ。この住宅は、1966 年に竣工し、建築面積 3.6

族形態や生活様式も大きく変化している。つまり、家族の入れ物で

坪という住宅とは思えない規模に誰しもが驚愕した。都市に住み続

ある住宅が、それに対応できなくなってきているのである。そこで

けることにこだわった住宅版〈小さな巨人〉は、都市構造が激変し

新しく家を建て替えようとするわけだが、今までのような方法では

た現在、外苑のビル群に埋もれるようにひっそりと佇んでいる。コ

大きな改築は難しい。土地が持つコンテクストを最大限に使い、例

ンクリート打放しの粗仕上げが風格さえ漂わせるその風貌は、都市

えば住宅本来のもつ諸室の形式さえ組み換え、新しい空間をつくる。

型住宅の教科書としてリスペクトされ続けている。


CHAPTER 1 Introduction CHAPTER 2 collection of works 01- 07

19XX

Chapter 2 : Collection of works 01 - 07

住宅作品集

CHAPTER 3 Report ( archive, credit )

2015


DESIGN / PLANNING

Photo by 奥佳弥(2009) 『リートフェルトの建築 』TOTO 出版 ,p.45   二階居間、食堂から寝室をみる


1924

シュレーダー邸 / リートフェルト Schroder House, Gerrit Thomas Rietveld, 1924 | Utrecht, Netherlands

Photo by 奥佳弥(2009) 『リートフェルトの建築 』TOTO 出版 ,pp.28-29

名称

:Schroder House

 我々は専ら基本的な形態、単純な空間、基本色を使

設計

:Gerrit Thomas Rietveld

用した。なぜならそれは大変根本的であり、かつそれ

住所

:Utrecht , Netherlands

ら は あ ら ゆ る 連 想 に と ら わ れ な い か ら で あ る。( シ ュ

竣工

:1924

レーダー邸のデザインについて)

構造

:混構造

 その構成はそれぞれの部材がどれ一つとっても他を

階数

:地上二階建

支配することなく、かといってまた他に従属すること

敷地面積

:247.1m²

のないように調律される。こうして椅子の全体が空間

建築面積

:94.7m²

の中に自由に明快に組み立てられ、形態が素材から生

延床面積

:172.2m²

まれ、立ち上がる。(椅子のデザインについて)

建蔽率

:38.0%(許容 - %)

奥佳弥「シュレーダー邸、1924 年 ―家具から建築へ」(1998)『デ・ステ

容積率 

:69.6%(許容 - %)

用途地域

:-

イル 1917-1932』河出書房新社 ,pp.126-129

[ G.T.Rietveld ]

iwaoka studio

21


No.01 シュレーダー邸

國 分 元 太 G e n t a

K o k u b u

所属  :山名研究室 対象敷地:前面道路向正面 敷地面積:266.5m² 建築面積:108.8m² 延床面積:197.5m² 建蔽率 :40.8%(許容 - %) 容積率 :74.1%(許容 - %)

題名 / Title  

01 『 chair lying in house 』 シュレーダー邸 ( Gerrit Thomas Rietveld )

― しゅレーダー邸

Shu-roder House

コンセプト / Concept  「シュレーダー邸」は、その時代の芸術運動である『デ・ ステイル』と関連し多くの見方がなされてきた。

 本設計では、その数多の観点の中から、〈家具の制作手法 が住宅に展開した〉ことのみに着目し、その設計過程をトレー スすることによって、ユトレヒト郊外の閑静な街並みに対し て過激な「建ち方」をするこの住宅に対峙できる、ある種の 〈異様さ〉をもった住宅を設計することが目的であった。

 即ち、まず椅子を設計し、そのコンセプトを住宅に展開す るという設計手法をとった。リートフェルトの椅子が、 「 座る」 という人間のひとつの姿勢に対し合目的に作られているとす るならば、いくつかの姿勢が組み合わされてできるような多 様さをもった椅子があるだろうと仮定し、3つの椅子を設計 した。これらの椅子が人間の姿勢と幾何学によって生成され たように、住宅の外形は諸室とそれを組み合わせた際に浮き 上がるいくつもの規整線によって決定されていく。そうして 建ち上がったこの住宅は、「シュレーダー邸」のそれと異な る印象の〈異様さ〉を備え、ユトレヒトの郊外に佇むことに なるだろう。

審査講評 / Review  「シュレーダー邸」は外観上の幾何学的構成と内部の可動 間仕切りで有名であるが、実物を見に行くと伝統的な連続型 タウンハウスの妻側端部に位置していることに気づく。さら に周辺の歴史を追うと、この住宅が既存の住宅街を背にして 田園風景に向かって開放的に建っていることがわかる。新た な住宅の提案では、建築と家具との包含関係をひっくり返す ことで、 〈 異様な外景〉を創出していることに成功しているが、 外形が反転する室内においても、より身体的な空間構成が構 築されているとよいだろう。

22

graduate school of architecture


iwaoka studio

23


ⅰ .) リートフェルトは、「シュレー ダ ー 邸 」 の 設 計 を 依 頼 さ れ る 1923

ⅰ.) Time Line

年 註 1) までは家具デザイナーとして作 品を制作していた。その家具にみら

Hoge Stole, 1919

れる特徴的な部材の接合法―直交す

Zig-Zag chair, 1932

Bolderwagen, 1918

る垂直材と水平材が互いに接しなが

Schroder House, 1924

Red&Blue chiar, 1918

Steltman chair, 1963

Berlin chair, 1923

ら、軸方向に突き抜ける構法 註 2)―は 「シュレーダー邸」にも展開しており、 その周囲の住宅と完全に異なる作ら れ 方 が、 街 並 み に 対 し て〈 異 質 さ 〉 を放つ要因であるといえる。   ⅱ .) 敷 地 は ユ ト レ ヒ ト 郊 外 に あ ig1. シュレーダー邸

る。1964 年 に 目 の 前 に 高 速 道 路 が  

01

建 設 さ れ る 註 3) ま で は、 敷 地 東 側 に

シュレーダー邸 ( Gerrit Thomas Rietveld )

は田園風景が広がっていた。リート フェルトはその風景に開くように開 放的な窓を二階の隅に備えた。また、

ⅱ.) Analysis : Target + Site

住宅のプランは機能性が重視され階

Schroder House

段 を 中 心 と し た シ ン プ ル な 構 成 に、 二階は可動式間仕切りで空間を変化

site

させることを提案した。このことか

High Way (constructed in 1964)

Prins Hendriklaan

らわかるように、自身の家具制作か ら連続した構成手法を持ち込むと同 時に、敷地のコンテクストや住機能 を充分配慮し設計を行っていた。  ⅲ .) このリートフェルトの設計過 程〈まず椅子を設計し、そのコンセ

ig2. 敷地航空写真

プトを住宅に展開する〉をトレース することによって、ユトレヒト郊外 の閑静な街並みに対して過激な「建

周囲と異なるスケール

田園風景へと開いた開口

周囲と異なる作られ方

シンプルで機能的な平面

街並みに対する

敷地のコンテクスト

ち方」をするこの住宅に対峙できる、 ある種の〈異様さ〉をもった住宅を

「異質なもの」としての存在

設計することができると考えた。

住機能は考慮している ig3. 二階隅の窓

 ⅳ , ⅴ .) リートフェルトの椅子が 人間の「座る」というひとつの姿勢 に対して作られているならば、それ に対していくつかの姿勢が組み合わ さってできるような形態の椅子を考

ⅲ.) Approach

えた。まず、円弧という幾何学に沿っ て 人 間 の「 座 る 」「 寝 る 」 な ど の 姿

Rietveld’ s approach

My approach

勢をスケッチした。その中から2つ 姿勢を選び、重ねあわせたときの残 余を円弧の曲線を頼りにマッスとし て出現させていくという手法で、3 つ の 椅 子 を 設 計 し た。 こ れ よ っ て、

Idea from furniture

+

Function + Context

Idea from furniture

+

Function + Context

1 つの形態から人間の 2 つの姿勢に 対し身体的にフィットする椅子が得 られた。この〈身体的な規整線の重 なりによってマッスを表出させる〉

Schroder House

OUTPUT

手法を住宅の設計へと展開する。 註1, 註2= 奥佳弥「シュレーダー邸、1924 年 ―家具か ら建築へ」(1998)『デ・ステイル 1917-1932』河出書房 新社 ,pp.126-129 註3) 奥佳弥 (2009)『リートフェルト の建築』TOTO 出版 , p.33 図版出典 :ig1= 筆者撮影 2014/3 ig2=google maps を基 に作成 ig3= 筆者撮影 2014/3

24

graduate school of architecture

いくつかの 椅子の製作

概念の抽出

敷地の文脈 住機能と合わせる

住宅の設計


ⅳ.) Chair

position.1

position.2

R1 09 0

base form

R7 3

0 R82 0

R3 3

0

R43 0

R120

1600

R650

R3 80

R230 R3 50

0

850

40 R1

R230 R280

R120 R350 R260 2400

2000 R730 R3 50

『椅子』立面図 S=1:60

ⅴ.) House

Phase1. 室面積の決定

Phase2. 規整線の決定

Phase3. 外壁・内壁の決定

シュレーダー邸の室面積を

室を斜めに振ることで、窓をとった際に 2 面接道の

重複する規整線の残余や重なった部分を壁面と

参考に、諸室の面積を決定。

敷地においてもプライバシーを確保することが可能。

していく。間仕切り壁も同じ考え方で決定する。

iwaoka studio

25


50 20

B

strage

89 0

reading room

kitchen

27 00

R2950

A

A’

 

01 シュレーダー邸 ( Gerrit Thomas Rietveld )

28 60

entrance hall R2760

R3140

bed room

atelier

54 10

22 50

30 20

20 20

38 15

B’

28 60

39 15

N

一階平面図 S=1:200

50 20

B

89 0

working room

child room

27 00

R2950

A’

living room R3140

28 60

A

R2760

child room

54 10

22 50

30 20

20 20

38 15

B’

28 60

39 15

26

graduate school of architecture

N

二階平面図 S=1:200


B

A

A’

B’

N

配置図 S=1:500 

A-A’ 断面図 S=1:500

南東側立面図 S=1:500

北東側立面図 S=1:500

B-B’ 断面図 S=1:500

iwaoka studio

27


01 シュレーダー邸 ( Gerrit Thomas Rietveld )

28

graduate school of architecture


iwaoka studio

29


DESIGN / PLANNING

Photo by 建築家山田守展実行委員会(2006) 『建築家山田守作品集』東海大学出版会 ,p.120   二階玄関ホールから螺旋階段をみる


1959

山田守邸 / 山田守

Yamada Residence, Mamoru Yamada, 1959 | Minato-ku, Tokyo

Photo & Text by 建築家山田守展実行委員会(2006) 『建築家山田守作品集』東海大学出版会 ,p.118.126

名称

:山田守邸

 自分はどういうものか自分の家を造る気にはなれな

設計

:山田守

かった。一度本当の家に住み度いと伝う老妻の希望も

住所

:東京都港区南青山

あり、65 歳にして初めて止むを得ず本当の家を建てる

竣工

:1959

ことになった。私の家は単に憩いの家ではなく、一階・

構造

:RC ラーメン構造

三階は働くための場所であり、二階が普通の家族住宅

階数

:地上三階建

である。都内に住宅を持つことは必ずしも良くないが、

敷地面積

:370.0m²

ここは住宅専用地域であって都心に関係の多い仕事を

建築面積

:143.7m²

持った人が住むところではある。不燃立体化と美しい

延床面積

:417.6m²

環境を造ることに協力する様な家を造って置けば、将

建蔽率

:38.8%(許容 60%)

来も何かに利用されるであろう。

容積率 

:112.9%(許容 300%)

用途地域

:第二種中高層住居専用地域

[ 山田守 ]

iwaoka studio

31


No.02 山田守邸

外 川 喜 裕 Y o s h i h i r o

T o g a w a

所属  :岩岡研究室 対象敷地:西側隣地 敷地面積:267.0m² 建築面積:86.1m² 延床面積:345.4m² 建蔽率 :31.9%(許容 60%) 容積率 :129.4%(許容 300%)

題名 / Title  

02 『 都市での装い 』 山田守邸 ( 山田守 )

Clothes of the city

― あるまじろん

コンセプト / Concept

Armadillon

 「山田守邸」が竣工された 1959 年から街は劇的に変化した。 青山の一等地で今も「山田守邸」は人々に愛され続けている。

〈一階にある喫茶店の絡まる蔦や茂った庭、空缶に入った珈 琲豆の匂い。マスターと談笑する馴染み客。靴を脱ぎ、印象 的 な 螺 旋 階段をのぼる二階のギャラリーは庭を緩やかに包 み、包まれ、生け花や着物の展示が和室と好く馴染む。〉

 いつ訪れても、この自邸の周りは “ 青山 ”“ 表参道 ” とは 違った活気をもっているように感じる。

 山田守はどのようにしてこの空間を創り出したのか。これ はどうして今も尚、敬愛される建物であるのか。この「山田 守邸」を分析・観察していく中で、その所以をさぐり、隣地 にそれを省み、発展させることで、設計を進めていく。

審査講評 / Review  「山田守邸」は自身のアイコンでもある Y 型の建物配置と 水平ラインを強調した外観、そして居住空間とアトリエ空間 を立体的に併存させるための二重の動線構成が特徴的な住宅 である。新たな住宅では、これらの特徴すべてを継承する形 で丁寧に設計されており、山田自身がデザインした築山状の 小 さ な 庭 園 を 挟 む 奥 の 敷 地 を 使 っ て、 二 重 階 段 を 内 包 し た ギャラリー付きの併用住宅を提案している。建物全体が細長 いヴォリュームとしたために空間構成が単調となっているの で、もうひと工夫が必要であろう。

32

graduate school of architecture


iwaoka studio

33


ⅰ .) Analysis ―Surrounding environment  「山田守邸」周辺は第二種中高層住居専用地域に該当し、この「山田守邸」が接する道路は明治通りや青山通りの景観とは異なっ た様相をもつ。中でも自邸周辺は高さのある建物がなく、自邸の庭の木々が鬱蒼とした感じがとても魅力的である。そして、それ は「山田守邸」の「建ち方」が玄関アプローチと庭に分割していることで創り出されている。この敷地に対しての自由が豊かな緑 を生み、そして、それが山田守が求める〈自然と調和した住居環境〉が成立している。

E : entrance approach G : garden

E

02  

G

山田守邸 ( 山田守 )

E

G

N

配置図 S= 1:1000

ⅱ .) Spatial Composition  「山田守邸」は竣工当時、上記のように公的空間で私的空間を挟んでいる。この独特の計画は現在、一階はカフェ(公的)、二階はギャ ラリー(公的)、三階は住居(私的)となっている。今回の設計では上記のことを踏まえ、交差する二つの階段により私的空間と公 的空間を階層ごと交互に配置するように動線配置を組んでいる。

『 Yamada Residence 』 『 Armadillon 』 private space

public space private space

public space

public space private space

private space

private space

public space public space

34

graduate school of architecture

: flow line


Om

ote sa nd o

St at

ion

Ga ien ma e

Jin gu ma e

a

y ibu Sh

Roppongi

Shibuya

広域配置図 S=1:5000 

iwaoka studio

35


15

80

R

50 55

B

95 0

30

Rg

W

Ba O

20

S

RF

596

1360

0

4520 2320

3F

Rg

A : approach B : bed room Ba : bath room Ch : child room Df : dirt room E : entrance G : garden Ga : gallery K : kitchen L : living room

840

452

0 304 0

600

148

0

4120 2600 3800 600 320

02  

3260 3690

: office room : rooftop : rooftop garden : study room : storage space : wet area : veranda : void : private space : public space

430

E

St

Ch

Ga

950

869 0

4550

2650

607

0

950

0 300 1600 0

200 580

800

0

2F

V

182 3200 0 138

136

L

620

256 0 504 0

V

3F

0

240 860

1360

3680 2320

95

0

0

50

50

1400

95

0

15960

3880 2040

280 4160 0

26 45

1280

3020

184

0

440

164 580 0 0

2600

3020

3020

B

3020

C'

G

A

E

Df

Vo

Df

K

144

0 376

0 452 0

160

140

720

0

920

2F

A

0

G

3680 1760

1920

280 0

C

B'

2520

414 0

山田守邸 ( 山田守 )

140

O R Rg S St W V Vo x x'

3680

252

0 380 0

128

0

562

0

182

0

N

1F

36

graduate school of architecture

『山田守邸』『あるまじろん』各階平面図 S=1:300

1F


16150 3020

2600

3020

3020

3020

700

3050

3150

12750

3100

2750

1500

550

2600

2730

12850

2900

2650

A-A’ 断面図 S=1:200

550

2600

2730

12850

2900

2650

B-B’ 断面図 S=1:200

C-C’ 断面図 S=1:200 4650 1000

2650

1000

iwaoka studio

37


02 山田守邸 ( 山田守 )

38

graduate school of architecture


iwaoka studio

39


DESIGN / PLANNING

Photo by 五十嵐太郎 監修 , 新建築社(2014) 『戦後日本住宅伝説 挑戦する家・内省する家 』新建築社 ,p.56   二階居間から階段、吹抜をみる


1966

塔の家 / 東孝光

Tower House, Takamitsu Azuma, 1966 | Sibuya-ku, Tokyo

Photo & Text by 東孝光(1982) 『別冊新建築 日本現代建築家シリーズ④ 東孝光』新建築社 ,p.62.63

名称

:塔の家

 まずこれをつくって仕事を始めた、私の最初の作品

設計

:東孝光

だ。その後の私の進路に深く関わっている。内外とも

住所

:東京都渋谷区神宮前

コンクリート打放し、床にビニールシートを置いただ

竣工

:1966

けの、質素で極度に単純化された住居であるが、レベ

構造

:壁式 RC 造

ル差・吹抜け・ワンルーム・屋根裏部屋・地下室など、

階数

:地下一階地上五階建

それまでの日本の住宅では強く意識されなかった都市

敷地面積

:20.6m²

型住居のための独自の手法の先駆けがそこにあると思

建築面積

:11.8m²

う。また、都市の外部空間への関心も払い、地上より

延床面積

:65.1m²

一段高くなった玄関ポーチが、建築と一体化した囲い

建蔽率

:57.4%(許容 60%)

壁や飛び梁によって高い空間性を獲得している。

容積率 

:316.4%(許容 400%)

用途地域

:住居地域(竣工当時)

[ 東孝光 ]

iwaoka studio

41


No.03 塔の家

齊 藤 誠 司 S

e

i

j

i

S

a

i

t

o

所属  :安原研究室 対象敷地:前面道路向正面 敷地面積:36.1m² 建築面積:32.6m² 延床面積:149.1m² 建蔽率 :90.3%(緩和許容 100%) 容積率 :353.6%(許容 400%)

題名 / Title  

03 『 時をつなぐ家 』 塔の家 ( 東孝光 )

House that links the time

コンセプト / Concept

― 木塔の家

Wooden Tower House

 個人の所有物である家が一つの世界であるのに対して、東 京という街は人々の欲望・願望が渦巻く混沌とした世界であ る。そのため、時代の情勢・価値観に基づいて、街はその姿 を劇的に変化させている。

 敷地のある神宮前3丁目は、かつて木造住宅地域であり、 現在は鉄骨や RC による高層で無機質な建物が林立し、将来 的には木質化が進むと言われている。「塔の家」と街との関係 を遡って見ると、時代と周囲の変化に対して、「塔の家」は果 たす意味を変えながら、常に街並みに寄与してきたことがわ かる。このような「塔の家」を「時をかける家」と言っても いいだろう。しかし、街並みは歴史の上書きを繰り返し、以 前の街並みはほとんど残らず一時代的なものとなっている。

 本提案は、時を感じられない現状に対し、街並みに時の断 片を埋め込み、都市体験へと還元できないかと考えた。つま り、私が提案するものは「時をつなぐ家」であり、この住宅 が街並みの変遷を映す鏡としてこれからの街並みを形作って いくと考える。

審査講評 / Review  塔の家は東京都心の三角形の狭小敷地に現存する著名な都 市住宅であるが、街路を挟んで斜向いに相似形の三角敷地が 存在していることはあまり知られていない。新たな住宅の提 案では、「塔の家」が単に狭小住宅の象徴ということだけで はなく、東京の都市計画の歴史が刻まれていることに着目し て、 都 市 が 木 質 化 へ と 向 か う 現 在 を 象 徴 す る よ う な 住 宅 と なっている。四階までを RC、その上の三層分を木質構造と する外観の表現は魅力的だが、フットプリントがミニマムな 建物の立体構成に新たな提案が欲しかった。

42

graduate school of architecture


iwaoka studio

43


ⅰ.) Analysis ―History of cityscape  様々な要素が混在する敷地に対して多角的に調査を行う。土地の歴史

fig1)

を追うことで斜向かいに同様の経緯で生まれた双子敷地

があることを発見し、本提案の敷地とした。また、街並みを構成する素材の調査では、用途地域の変遷

fig2)

fig3)

により敷地周辺は主に

無機物のファサードで構成され、かつての木造地域の名残は失われてしまっている。現状だけでなく過去を洗い直すことで、「塔の家」 は街並みの中での意味を変化 fig4) させながら存在しており、〈街のアイデンティティ〉をつなぐ希少な存在になっている。

提案

03  

土地の歴史

木質化

都市の木質化

2065

塔の家 ( 東孝光 )

俯瞰写真(竣工当時)

低層木造の街並

無機質な街並の

特異点

特異点

ⅱ.) Concept  新たな住宅にも「塔の家」と同様に〈街 のアイデンティティ〉を顕在化する必要性を 感じた。そこで、経てきた 時を感じられ な い現状の街並みに対し「木質化」することで、 木造地域であった「過去」と都市の木質化

建物面の連続 素材感

が進む「未来」という時をつなぎ、〈街のア 外苑西通り

「塔の家」

イデンティティ〉を継承する家を提案する。

ⅲ.) R.C+Wood / Fireproof building

ⅳ.) Structure / Vista

 耐火建築の条件と構造的制約から四層以下を RC 壁式構造、五層以上を耐

 周辺環境から螺旋状とする。垂直移動とともに

火集成材による木造軸組構造とする。RC 部は恒久的なシェルターとして、木造

異なる空間性と外部との関係が展開

部は生活に合わせ変化する可変性を持つ。営みの変化が建築に現れ、街に人

うに計画する。開口の先には街を構成するランド

間味のある表情をもたらす。

マークが見え、生活に都市の情景が織り込まれる。

fig5)

されるよ

耐火建築条件

m

0m

26

29

青山霊園の緑

0m

m

Wooden

への視線 一時間耐火

渋谷の摩天楼 への視線

建物の間を抜ける 耐火集成材

構造的制約

RC

二時間耐火

外苑への視線 屋根を超える視線

一時間耐火木造三階建、柱外寸法 260×290mmで可能。 ( 荷重支持部 120×120mm) 道路上を抜ける視線

44

graduate school of architecture


1680 

1799 

1858 

site 

1892 

Tower House

Wooden Tower House

1947 

1963 

1964 

1997 

1973 

2015 

1981 

1989 

2015 

賑 視線

の抜

塔の家

Site

fig1= 神宮前3丁目の歴史。大きな変化は 1963 年から現れる外苑

落ち着きの

ある路地

西通りで、 「塔の家」の敷地はこの開発による変形地である。 視

2

*google mapsを基に作成

fig2 = 「塔の家」の斜向かいに同様の経緯で生まれた土地がある。 抜

ここを敷地とする。

『 * 法14条地図』東京法務局

け(

GL +

53

00

1

fig3= 用途地域の変遷。敷地の用途は 50 年の間に住居地域から近

3

隣商業地域に変化しており、その結果、木造低層から高層で ファサード面が揃った街並みに変化している。

4

『 * 渋谷区都市計画図』渋谷区都市計画課都市計画係 〈https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/machi/toshi_sodan.html〉

fig4= 竣工当時はランドマークとして、(左)

5

現在は全体の街並みに馴染んでいる。(右) *左 : 東孝光(1988) 『「塔の家」白書』住まいの図書館出版局,p.105 *右 : 筆者撮影2015/10

fig5= 敷地環境の調査。二面の前面道路は性格が異なり、高さと 方向により印象の異なる風景が広がる。

iwaoka studio

45


7F

T

B

5F

ub

3F

A’

1F G

LD

Os

K T

 

03 塔の家 ( 東孝光 )

A

6F

V

T

Ch

BF

2F

4F

A

S

Eh

T

V

『木塔の家』各階平面図 S=1:250

A

: アトリエ

B : 寝室

 atelier  bed room

Ch : 子供室

 child room

Eh : 玄関ホール

 entrance hall

G

 garage

: 車庫

LD : 居間

 living dining

K

 kitchen

: キッチン

Os : 多目的室

 open space

S

: 書斎

 study

T

: テラス

 terrace

ub : 浴室

 unit bath

V

 void

: 吹抜

N

 RC 部は過酷な外部環境に対するシェル ターであり、木造部は穏やかになった環 境と親和する。外部との関係は大きな開 口部だけでなく、外に張り出した壁が空 間 を 囲 い 取 る こ と で 内 外 が 曖 昧 に な り、 生活に外部環境を取り込むファクターと な る。 ま た、 木 造 部 は 生 活 に 合 わ せ 可 変する柔軟性を持っているため、ライフ スタイルの変化にあわせて、増改築が可 能である。街の路地のようなアクセスの エントランスから入る室内は、各フロア で異なる空間性と外部との関係が展開さ れ、一連の空間体験は街での体験の延長 として生活を営む背景となる。

46

graduate school of architecture

南東側立面図 S=1:250

北側立面図 S=1:250


B

7FL=GL+17600 Wooden Ch

6FL=GL+14600

Os

5FL=GL+11600

S

4FL=GL+8600

LD

3FL=GL+5600

RC Eh

2FL=GL+2600

G

1FL=GL+1600 GL±0

A

BFL=GL-3000

A-A’ 断面図 S=1:150

iwaoka studio

47


03 塔の家 ( 東孝光 )

48

graduate school of architecture


向きにより異なる表情を見せ、街並みに多様さをもたらす。

N

配置図 S=1:500 

この住宅が街の変遷を映す鏡として、現在そして未来の街並みを形成していく。

iwaoka studio

49


DESIGN / PLANNING

Photo by 五十嵐太郎 監修 , 新建築社(2014) 『戦後日本住宅伝説 挑戦する家・内省する家 』新建築社 ,p.87   一階居間から書斎をみる(松川ボックス #2)


1971

松川ボックス / 宮脇檀

Matsukawa Box, Mayumi Miyawaki, 1971/1978 | Shinjuku-ku, Tokyo

Photo & Text by 宮脇檀(1980) 『別冊新建築 日本現代建築家シリーズ① 宮脇檀』新建築社 ,pp.132-133 ,p.135

名称

:松川ボックス #1/#2/#3

 二つの箱が向かい合うという形で作られた松川ボッ

設計

:宮脇檀

クスは両者を結ぶものとして中庭が大きなテーマで

住所

:東京都新宿区西早稲田

あったし、その時点で既にこの中庭を囲む 3 番目の棟

竣工

:1971/11(※第一期)

が当然イメージされていた。第一期が純住宅であった

構造

:RC+W+S 混構造

のに対し、第二期はそれから7年後、当然のことなが

階数

:地上二階建

ら第二期では異なった手法になっている。住宅兼ギャ

敷地面積

:358.9m²

ラリー+アパートという型なので、混構造は多少様式

建築面積

:88.5m²(※第二期)

として使われているし、表現も日本的なディテールを

延床面積

:157.5m²(※第二期)

濃くしている。第二期の工事と同時に塀が取り換えら

建蔽率

:45.8%(許容 60%)

れ、中庭の舗装も腐ってしまった木から石になった。

容積率 

:74.0%(許容 300%)

用途地域

:第二種中高層住居専用地域

[ 宮脇檀 ]

iwaoka studio

51


No.04 松川ボックス

玉 江 将 之 M a s a y u k i

T a m a e

所属  :岩岡研究室 対象敷地:西側隣地 敷地面積:189.0m² 建築面積:98.0m² 延床面積:207.0m² 建蔽率 :52.0%(許容 60%) 容積率 :109.5%(許容 300%)

題名 / Title  

04 『 都市のインテリア 』 松川ボックス ( 宮脇檀 )

City/Interior

― 松川ボックス#4

Mastukawa Box #4

コンセプト / Concept

 「松川ボックス」に近接する敷地に対して、今回二世帯住宅 として「松川ボックス #4」を提案する。

 宮脇檀設計の「松川ボックス」が第一期から第三期を経て、 中庭を介して個々の建物の関係性が変化していくという点、 プライバシーとしての RC 造、インテリアとしての木造という 混構造を採用している点に着目し設計を進めていく。

  既 存 の「 松 川 ボ ッ ク ス 」 に 対 し 大 き く 門 型 に 開 き 視 線、 動 線 の 抜 け を 意 識 し、 連 続 的 な 中 庭 を 形 成 し た。 次 に、 宮 脇 が 内 部 の イ ン テ リ ア と し て 採 用 し た 木 造 軸 組 を S 造 軸 組 と し RC 造 の 内 か ら 外 に 出 す 事 で、「 都 市 の イ ン テ リ ア 」 と 位 置 づ け、 都 市 と 住 宅 と の 間 に 中 間 領 域 を つ く り 出 し た。 こ の 混 構 造 は 3 つ の 個 性 を 持 っ て い traffic line

private space

る。 動 線 と し て の 軸 組、 プ ラ イ ベ ー ト ス ペ ー ス と し て の semi - public space

traffic line

RC 造、 セ ミ パ ブ リ ッ ク ス ペ ー ス と し て の S 造。 動 線 は 居 室 間 を 繋 ぐ と 同 時 に、 都 市 に 対 し て 開 く 中 間 領 域 と な り、 private space

プ ライベートスペースは幅 2m の中にプライバシー性の高い semi - public space

機能を配置した。セ ミパブリックスペースは、親世帯、子世 帯とが常にお互いを意識し合える関係をつくり出している。

審査講評 / Review  「松川ボックス」は RC 造の外殻と木造の軸組造とが入れ子 をなす住宅で、こうした建物が同一敷地内に離散集合形式で 複数配されていることが特徴である。さらにその建物群は中 庭を中心として増改築を繰り返しており、新たな住宅の提案 では、こうした時間的流れの中での第4段階の方向性を説得 力のある形で示している。すなわち、隣接する敷地に二世帯 住宅を新たに提案することで既存の中庭を通り抜け状とし、 さらに RC の箱の外側に S 造の共用通路を回すことで混構造 の表情を連続させている。

52

graduate school of architecture


iwaoka studio

53


ⅰ .) Relationship changed through the courtyard  「松川ボックス」は #1 から #3 までに、中庭を介してそれぞれのボックス間の関わり方が変化してきた。#1 では住居と客間兼茶 室として住人と来客者との間に適度な距離感をつくり出し、#2 では新しくできた賃貸住居に対し、大家と住人とを分けるのではな く中庭を介して緩やかな繋がりをつくり出した。しかし、#3 はそれぞれのボックスに対して格子状の塀を用いて、住人同士のアプ ローチ動線を隔てている。

#1

#2

#3 2F

2F

 

04 松川ボックス ( 宮脇檀 )

#1( 第一期 1971)

#3( 第三期 1991)

#2( 第二期 1978)

2F

『松川ボックス #1/#2/#3』各階平面図 S=1:600

ⅱ .) R.C construction which protects privacy , Wooden construction as an interior  「松川ボックス」は RC 造と木造の混構造を採用している。周囲からプライバシーを守る為の RC 造、住宅内部のインテリアとし ての木造。#1 では、RC 造と木造が別々の構造体として建てられているのに対し、#2 では RC 造に支持されるかたちで、木造が使 われている。

RC造

#1( 第一期 1971)

木造

#2( 第二期 1978)

『松川ボックス #1/#2』断面図 S=1:200

54

graduate school of architecture


R=

100

R=

M

100

M

ⅲ .) Analysis ―Surrounding structure  計画敷地の周囲 100m の構造形式をリサーチした。 「松川ボッ クス」を境として東側に低層木造住宅が密集し、前面通り沿い ~大通りに面して高層 RC 造が建ち並ぶ。計画敷地は、 「 松川ボッ クス」西側に隣接する、他の構造体が交わる中間拠点である。

W

S S

松川ボックス敷地

計画敷地

広域配置図 S=1:1500 松川ボックス敷地 計画敷地

iwaoka studio

広域配置図 S=1:1500

N

RC

W

N

RC

55


ⅳ .) Matsukawa Box #4 traffic line

 設計に用いた混構造には 3 つの個性がある。1つ目は居室間を繋ぐ動 線としての S 造。都市に対し開いた関係性をもつ中間領域 をつくり出すと同時に、建材にはパンチングメタルを用い視線を遮らないようにする事で室内でも家族間の存在を感じる事ができ private space

る。2つ目はプ ライベートスペースとしての RC 造。室内の幅を内寸 2m におさえ、都市、中間領域に対してプライバシー性を強 semi - public space

くし空間にギャップをつくり出した。3 つ目はセ ミパブリックスペースとしての S 造。都市や家族間の視線を繋ぐ働きをもつ。

 

04

A

松川ボックス ( 宮脇檀 )

LD K

C’

C

E

E

B’

B

G

A’

ad

traffic line

56

graduate school of architecture

private space

N

『松川ボックス #1~#4』一階平面図 S=1:300

frontal ro

semi-public space


ub T

Ch

B

Lr cl

cl

S cl

K

B

LD

T

R

cl Dr

ub

2F

3F

4F

5F

『松川ボックス #4』各階平面図 S=1:300

寝室

書斎

B

屋上

洗濯室

浴室

浴室

寝室 子供室 キッチン

客間

キッチン 車庫

: 寝室

bed room

Ch : 子供室

child room

cl

closet

: 納屋

Dr : 客間

drawing room

E

: 入口

entrance

G

: 車庫

garage

K

: キッチン

kitchen

LD : 居間

living dining

Lr : 洗濯室

laundry room

R

: 屋上

rooftop

S

: 書斎

study

T

: テラス

terrace

A-A’ 断面図 S=1:300

寝室 屋上 洗濯室 寝室 子供室 LDK LDK

C-C’ 断面図 S=1:300

B-B’ 断面図 S=1:300

立面図 S=1:300

iwaoka studio

57


04 松川ボックス ( 宮脇檀 )

58

graduate school of architecture


iwaoka studio

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DESIGN / PLANNING

Photo by 千葉学(2008) 『Heavenly Houses 3 住吉の長屋 / 安藤忠雄』東京書籍 ,p.31    一階台所、食堂から中庭をみる


1976

住吉の長屋 / 安藤忠雄

Row House, Sumiyoshi, Tadao Ando, 1976 | Sumiyoshi-ku, Osaka

Photo by 千葉学(2008) 『Heavenly Houses 3 住吉の長屋 / 安藤忠雄』東京書籍 ,p.17

名称

:住吉の長屋

 〈PACKAGED ENVIRONMENT〉 そ の 内 部 空 間 の コ ア

設計

:安藤忠雄 貴志雅樹

となる空間は、外界との接触を最小限に押えられたが

住所

:大阪府大阪市住吉区

故に生じた〈個〉の部分と、天空に向かって唯一の触

竣工

:1976/2

手を延ばした〈突出した孔〉から注ぐ光との出会いの

構造

:壁式 RC 造

空間として、イメージされる。住居を都市の諸悪から

階数

:地上二階建

隔絶し、まさに、個の領域で、操作可能な内部空間の

敷地面積

:57.3m²

充実に、すべてを託した〈都市ゲリラ住居〉とは、大阪・

建築面積

:33.7m²

東京などの大都市における、独立住居の存在を意味づ

延床面積

:64.7m²

ける論理を包摂している。

建蔽率

:58.8%(許容 60%)

安藤忠雄「都市ゲリラ住居」 (1973) 『臨時増刊号 都市住宅 住宅第 4 集』

容積率 

:112.9%(許容 200%)

用途地域

:第二種中高層住居専用地域

鹿島出版会 ,pp.18-19

[ 安藤忠雄 ]

iwaoka studio

61


No.05 住吉の長屋

堀 越 一 希 K a z u k i

H o r i k o s h i

所属  :岩岡研究室 対象敷地:前面道路向正面 敷地面積:38.0m² 建築面積:30.4m² 延床面積:39.1m² 建蔽率 :79.9%(緩和許容 80%) 容積率 :93.5%(許容 200%)

題名 / Title  

05 『 都市スパイ住居 』 住吉の長屋 ( 安藤忠雄 )

Urban spy residence

コンセプト / Concept

なばりや

― 住吉の隠屋

Spy House, Sumiyoshi

 「外部環境への〈嫌悪〉と〈拒絶〉の意思表示としてファサー ドを捨象し内部空間の充実化をめざす―」  ―1973 年。安藤は、マニフェスト「都市ゲリラ住居」に おいて、メタボリズムの蔓延る世界を否定し矩形の箱にミク ロコスモス(小宇宙)を追求した。仮令その言説が仮想であ れ、戦うべき対象を明確に定めたことによって、住居に強靭 な形式性を与えたことは言うまでもない。

 ―2015 年。かつて、伝統的構法による長屋町が形成され ていた住吉区は、現代法規によって整理整頓され、車庫付き 三層の〈RC密〉へと姿を変える。〈建蔽率許可制度によっ て大量生産される住宅生成フロー〉これを新たなる敵と定め、 都市認識と巧みに乖離させることで成り立つ、快活な〈裏切 り行為〉による「都市スパイ住居」は、現代においていかな る意味をもちうるか。

 奥行 5 間を真っ二つに切断し、生活は地下 - 建築限界 10 mに至るまでファサード側で全て完結する。回避不能な車庫 によって決定された強靭な断面形式と、内部空間の裏切りは、 いかに、容積率を無駄にし、法規を愚弄するかに徹している。 言うなれば「都市スパイ住居」は、騙された都市生活者のア ジトが、独立住居の存在を意味づける論理を包摂している。

審査講評 / Review  「住吉の長屋」は周辺環境に対して完璧に閉鎖することで 住むことのリアリティを獲得しようとした住宅といわれてい るが、実際には強固な壁で閉じれば閉じる程、周囲から突出 した存在となるといったジレンマが生じている。対面する新 たな住宅では、閉じた表現の背後に隠された開放的な空間と いう構成を、既存の「住吉の長屋」以上に誇張し拡張して提 案している。「住吉の長屋」同様に、住宅としての機能動線 にはやや問題があるものの、天井7m を超える吹き抜けは、 建物の内外を曖昧化する空間として説得力がある。

62

graduate school of architecture


iwaoka studio

63


Spy House, Sumiyoshi

〉〈ヴ

エンシ

ぱ ら〈 工 業 〉 の 発 展 の 理 論 に そ の 主 軸 を 置 き、 そ れ に 巻 き 付 い て 浮 上 し て く る 資

ツ& クラフト運動〉

てはいい古されたいいまわしであろう。が、しかし、そのような近代技術と近代資本主義理論の浸

の原理〉、そしてそれをより好ましい形で可能たらしむ〈技術進展の原理〉を通して、近代の人間が、道具的存在に

クス化していることは、いまとな リアムモリスの〈ア

ラリ ズム〉 〈 ア ノ ニ マ ス・ ア

キテクチ

〉 〈 デ ザ イ ン・ サ

ベ イ 〉 等 々、 ヴ

キ キ

ブラリ ブラリ

キテ

の う ち の 一 つ 〈 情 報 都 市 〉 と い う 言 葉 は、

も多岐に及び、まさに百花繚乱の感が濃いが、そ

プ・ ア

ンを見つけかね蛇行しているのが実状であるにもかかわらず、〈多様化〉という、便利で、曖昧模糊とした言葉の中に吸収されようとしている状況

ナキ

クに光る 白色イメ

ジ の、 ホ モ ジ ニ ア ス で あ く ま で も ク

ルな世界であ

て、住居の理論にそのような〈上〉からのヴ

ロク ラ シ

―――それはト

て、そのような

ス を、 内 包 し な

はいうに及ばず、ゲリラⅢ ( 富

として、イメ ジされるのである。重層化し、錯綜した都市の中で、高度な〈情

ジと し ての、 ゲリ

マン、ゲリラⅡ ( スワン商会ビ

た職業をもつ人々で、 ゲリラⅠ ( 加

ている。彼ら自身が、彼ら自身の大事業で

マ は、

て、、そこにミクロコスモスを現出せしめ、あらたなリ

たのである。非人間的環境に対して、お人好し的な触手を可能な限り拒否し、これら三住居の立地環境を生

クな概念としての〈個〉を、理論の中心に据えることが、この三住

ド を 捨 象 し 内 部 空 間 の充 実化 を め ざ す こ とに よ

たことが、幻想であり、無意味であることが、あまりにも明白である以上、我々の三住居に対するテ

クな、内外空間

論よりは、そのような都市に、それでも住みついていこうとする人々の意志と、その時の唯一の解決策を、よ

た。この事実は、何を意味

の諸事情、職業との関係など、様々な要因のバランスを計り、そ

そ の 職業 的基 盤 を持

島 邸 ) は、 都 心 の 会 社 の サ ラ リ

つ社会的機能に密接にからま

基盤に据えた、自己表現としての住居を求めること。 PACKAGED

のでなく、あくまでも〈個〉のレベルからしかなされない。〈個〉

け れば な らぬ。〈 都 市ゲリラ住 居 〉 は、イメ

住居は、当然のことながら、動物的とでもいえるような、強烈な

居 で あ り、 現 代 都 市 の 中 で 人 間 的 復 権 を 望 み う る 最 右 翼 は、 こ の

タルであることを禁じ、〈個〉を部品化し、そして〈技術〉から魂をも抜き取りうるものであるが―――

ルタ

ジの

を直截に引きずり込むことは、本質的にできない。住居とは〈物 ( 都市なども含む )〉からも〈多数〉からも、離脱したところに存在する。そして、あく

ニテ

マと して 追 及 す る と い

ア な 形 で、 登 場 す る 結 果 と な

をその空間に追い求めることになる。ここで、前節に述べた、住居に対するベイシ

ざしているといえよう。そして、その内部空間のコアとなる空間は、外界との接触を最小限に押えられたが故に生じた〈個〉の部分と、天空にむか

て唯一の触

黒い外皮で梱包されたこれらの建築は、外皮からの、ずうずうしくも、煩わしくもある、さまざまな要因を遮断した、いわば〈 PACKAGED ENVIRONMENT〉をめ

み出した、その裏返しとして、無趣味で、魂の拡散した、通俗的構成主義様式で、均質化している近代建築に対する、ささやかな〈抵抗〉と〈怨念〉を象徴する、

居 で、 あ ま り に も ピ

アリテ

外部環境への〈嫌悪〉と〈拒絶〉の意思表示としフ

の 相 互 貫 入 〉 を、 空 間 的 テ

り有効に吸いあげることの方が、はるかに、地についた行為ではないか。そして、三地域とも外部環境の劣悪化の故に、たとえば、〈ドラマテ

し て い る の か …。 中 途 半 端 な 偽 善 的 な コ ミ

の out-put として出てきたのが、三者とも、大都市過密地域の猫のひたいほどのエリアを所有して、独立住居建設するという結論であ

ある、住まいを持ちたい、という願望実現のために、予算、家庭内

ル ― 小 林 邸 ) は 工 業 地 域 か ら 日 夜 生 み 出 さ れ る 汚 れ た 作 業 着 に、

藤邸 ) の、TV プロデ

ENVIRONMENT ここに住居の施主は、いずれも、都市のも

を思考の中心に据えること、あるいはただ、肉体的直観を

ラ の ア ジ ト。 こ れ ら の 思 考 の 構 築 は〈 上 〉 か ら な さ れ た も

い わ ば〈 劇 的 に 生 を 獲 得 す る 〉 よ う な ス ペ

〈住まう〉欲求のもつ本質の復権であろう。従

に、対抗し、終局を告げうる唯一の砦は、〈個〉から構築された住

報 化 〉 と、 そ れ に 伴 う ビ

中心に据える。即ち住居はそれらをす ぽりとのみ込んでしまうようなシ

ま で、 〈 個 〉 か ら 発 せ ら れ る、 〈住まう〉 〈生活する〉ということに対する自我の、ある時は、グロテスクなまでむき出しの裸性の欲求を、思考の中心、イメ

ブラリ

共同幻 想的にのみ存在するメタリ

一言で言えば、都市を〈情報〉処理の巨大なシステムとして把握していこうとする考えであり、 社会のメカニズムを考察するうえで意味を持ち、その指し示す世界は、

のような時代のカオス的断面の中で〈都市ゲリラ住居〉はいかなる意味をもちうるか。例えば、多彩なヴ

クチ

を想起すれば、あらためて、その潮流の底の深さを感じずにはおれない。時代の流れに敏感な建築分野では〈多様化〉に呼応して〈カプセル〉〈ポ

リエ ン テ

を嚆矢とし、初期バウハウスなどの流れに汲みとれる〈近代〉の病根に対決する〈抵抗〉の運動が、常にこの問題の狭間で挫折、解消してゆき、今尚、明確な オ

透の過程で、かたや、いかに多くの〈人間的諸事情〉が、忘却の片隅に追いやられてきたか。建築の分野においても、ウ

墜 落 し、 ホ モ・ エ コ ノ ミ

個を中心据えること、あるいは、また…に産業革命以来の諸技術の展開が、も 本 の 論 理 と し て の〈 経 済 的 エ フ

率 200%で前面道路が 4m の敷地

ジされる。そして、〈闇〉に相当する部分も、それぞれ性格づけされることは、あらため

た大都市が、その体内に根深く所有した、深い悲しみなのではないか。

 

対象地域 : 防災性向上重点地域

ig1. Urban guerrilla residence 1973

適用条件 住吉の長屋 - 東邸

住吉の長屋 ( 安藤忠雄 )

76 19

w Ro ―

e

us

ho

os

iy

se

ou

H

hi

y Sp ―

um

,S

5

1 20

um

,S

hi

os iy

graduate school of architecture

64

ig5. Isometric

S=1:500

ig4. Plan/Facade

住吉の隠屋

住吉の長屋

既存長屋

ig3. Building coverage relaxation 2002

される、空間体験と認識の乖離。

section

路を狙撃する。開口制限により通

 く ) に面する部分の各室ごとの開口面積  の合計は 0.5m² 以内

plan

力換気システムによって環境効果

 位置に定められていること

 反対の隣地境界から 0.5m以上後退した 

block

・ 原則として連続しており、前面道路と 

快活な裏切り行為によって生み出

壁面線

ig1 = 安藤忠雄「都市ゲリラ住居」(1973)『臨時増刊号 都市住宅  住宅第 4 集』鹿島出版会 ,pp.18-19 ig3 =『大阪市建蔽率許可制度』大阪市住宅局建築指導部建築企画課  ig4 = 千葉学(2008)『Heavenly Houses 3 住吉の長屋 / 安藤忠雄』  東京書籍 ,pp.64-65.70-81pp.70-71

相似していることに気づかされる。

される。

避不能の車庫により押出された〈コ

 ではない

が「住吉の長屋」と トの造形

fig5)

対する容積率低減係数も指定容積

この住居に与えた。具体的には、

・ 原則として 60m² 以上

ig2. Bird's-eye view

・ ただし、既存不適格に対してはこの限り

へと至ったとき、初めてパラペッ

るというもの。また、全面道路に

に、その適用条件を嘲笑う形式を

敷地面積

 整形な土地であれば可

な上界が現れる。住人が塔屋屋上

現行法規+20%の緩和措置を認め

略したヴォリュームに対して、逆

外壁面の開口制限 前面道路

・ 敷地境界線 ( 外壁線等に面する部分を除

イトで賄い、吹抜で促進される重

率許可における範囲を適用条件を

により緩和奪 建蔽率許可制度

fig3)

前面道路

階数制限三階以下 : 高さ 10m 以下

からは、西日が勢いよく前面道 fig4)

手 を 延 ば し た〈 突 出 し た 孔 〉 か ら 注 ぐ 光 と の 出 会 い の 空 間 と し て、 イ メ

のように擬態する秘密結社が佇む。

単に〈諧謔性〉として、すましてしまうことができぬところに、過密化し、疲弊しき

サード fig2) に、まるで〈カメレオン〉

全面道路と反対側の隣地境界線

で前面道路側五層で潜伏生活の全

三階外壁面の後退 : 1.5m以上

てを担う。荒摺りの内壁仕上と打

1

スプリットされた右出窓サッシュ

構造:準耐火または耐火建築物

風及び採光の九分九厘をトップラ

適用対象街区

を得る。階段状にテーパ―のつい

壁面線指定の範囲

 において適用

スティールラチスで四層+塔屋を

・ 原則一街区であること

浮遊させ構造を切替えると同時に、

災害に強いまちづくりを進めるこ

とは、大阪・東京などの大都市における、独立住居の存在を意味づける論理を包括している。この子供じみた諧謔性をおびた名称と形態を所有した住居が、実は、

窓によって採光を得る画一的ファ

壁面線等の後退 : 0.5m以上 1.25

放シ立面のコントラスト、奇妙に

とを目的とした制度である。建蔽 都市ゲリラ住居

て、いうまでもない。住居を都市の諸悪から隔絶し、まさに、個の領域で、操作可能な内部空間の充実に、すべてを託した〈都市ゲリラ住居〉―――いいかえれば、

住宅を据える。車庫付き三層、出

壁面線等

えた適用範囲外(地下~塔屋)ま

満たす一定の区間において最大で 大阪県大阪市

老 朽 木 造 住 宅 の 建 替 え を 促 進 し、

―2002年創設

 密集住宅地における既存不適格

建蔽率特例許可

都市生活者のアジトは、そのようなコンセプトのもとに、 〈私〉〈夫妻〉 、あるいは、 〈家族〉という最小単位での〈私の存在感〉を求めたのである。 〈都市ゲリラ住居〉

奥行2間×間口 5 間に新たなる

住宅 ( 併用住宅を含む )

空間は形成される。階数制限を越

の場合には 0.4 から 0.6 へと緩和

まず敷地を真っ二つに両断し、回

05

の字型ヴォリューム〉によって住

60% 70% 80%  「都市ゲリラ住居 fig1)」の真正面、

・ 主たる土地利用が住宅地である

・ 又は住宅に成ることが認められる街区内

た壁式構造を三層上部で切断し、

・ ただし既存建替え等の場合 ( 開発許可等  を伴わない場合 ) は概ね 120m² 以上で

屋上庭園・外部階段が迎える新た

間口 × 奥行

2 間 × 7間半 2 間 × 5間


8300 3750

4550

990

2760

2550

2000

アスファルト防水 断熱材 t=30 スラブ勾配コンクリート直均シ(1/150)

建築限界≦GL+10,000

壁: コンクリート打放シ仕上 t=150

200

パラペット天=GL+9,760 RF=GL+9,560

アスファルト防水 断熱材 t=30 スラブ勾配コンクリート直均シ(1/150)

道 路 斜 線

CH=1400

1960

605 150 天井: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

床: モルタル t=30 金ゴテ 撥水材防塵塗装

CH=2250

2430

壁: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

650

床: 野芝 t=30mm 土 t=30mm 浸水シート防根シート スタイロフォーム t=25mm

子供室

出窓: コンクリート打放シ仕上 t=100mm

床: ナラフローリング t=15mm

1366

壁: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

敷地境界外壁面に対する 開口制限0.5sqm以下

壁: コンクリート打放シ仕上 t=200mm

造作家具: ラワン合板 t=36mm 壁: 樹脂モルタル木鏝横摺り t=5mm スタイロフォーム t=30mm

2FL=GL+2,750

寝室

壁: コンクリート打放シ仕上げ t=150mm 化粧型枠 900×1800mm 化粧型枠 900×900mm

床: ナラフローリング t=15mm

150

梁: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

壁: コンクリート打放シ仕上 t=250mm

8480

天窓による有効採光面積20.7sqm

前面道路に対する有効採光

2800

天井: 耐候性鋼 t=15mm

CH=2250

9760

250 150

壁: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

書斎

玄関

2525

CH=2250

3250

2550

壁: 樹脂モルタル木鏝横摺り t=5mm スタイロフォーム t=30mm

壁: コンクリート打放シ仕上 t=300mm

11410

天井: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

吹抜 CH=7700

2800

2550

壁面線から1.5m後退

1580

1.25 屋上

納屋

ルーフガーデン

6050

1

階数制限3階建以下(地階,塔屋を除く)

1500

3FL=GL+5,550

PF=GL+7,980

壁: コンクリート打放シ仕上 t=150

天井: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

ポーチ

壁: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

4000

1FL=GL+200 S.GL=GL±0 前面道路

天井: コンクリート打放シ仕上 t=150mm

道路境界線

敷地境界線

浴室

壁: コンクリート打放シ仕上 t=350mm

床: タイル張り 300角 t=10 アスファルト防水 断熱材 t=20

床: 玄昌石張り 300角 t=10mm 捨てコンクリート t=70mm

50 50 300

BFL=GL-2450

2530

居間 JUTUL F400BBE w656×h718×d584

壁、天井: タイル貼り 300角 t=10mm

CH=2250

2650

2450

壁: コンクリート打放シ仕上 t=350mm

2930

煙突径 ○ Φ150mm

30

30 1650

500

4700

1950 3600

2074.76

8300

X1

X2

X3

『住吉の隠屋』長手断面詳細図 S=1:100

iwaoka studio

65


 

05 住吉の長屋 ( 安藤忠雄 )

ⅳ ⅰ .) living room ⅱ .) rooftop garden ⅲ .) outside stairs ⅳ .) facade ⅴ .) bed room

66

graduate school of architecture


iwaoka studio

67


a 200 500

1580

RF

b

パラペット天

500

2430

塔屋

2800

9760

3FL

2550

2FL

05

道路境界線

2450 2650

住吉の長屋 ( 安藤忠雄 )

敷地境界線

 

1FL

elevation

BFL

a-a’ section

a’

A-A’ section

『住吉の隠屋』断面図 S=1:300

b’

パラペット天 RF

500

c

500

2430

塔屋

8480 2800

3FL

2550

2FL

道路境界線

2450 2650

敷地境界線

1FL

BFL

c-c’ section

c’

b-b’ section

B-B’ section

短手・長手断面図 S=1:300

200

パラペット天 RF

C

V

V

B : 寝室 Bd : 勝手口 C : 排煙筒 Ch : 子供室 Cl : 納屋 E : 入口 G : 車庫 K : 食堂 L : 居間 R : 屋上 Rg : 屋上庭園 S : 書斎 T : テラス U : 家事室 V : 吹抜

Rg

L S

-Bed room -Back door -Chimney -Child room -Closet -Entrance -Garage -Kitchen -Living room -Roof top -Roof garden -Study -Terrace -Utility -Void space

Cl

Bd K

E G U

BF

B

Ch

T T

1F

2F

3F

PF 各階平面図 S=1:300

68

graduate school of architecture


4700

X1

75

4700

4700

X1

X2

X2

d

14100 1階平面図

4700

d

4700

4700

14100 1階平面図

X3

X3

X4

X4

75

35515 400

RFL(梁)

RFL(水下)

RFL(水下)

2550

RFL(梁)

1200

C-C’ section C-C’ section

150

200 300 800 1000

1FL

敷地境界線

200 300 800 1000

敷地境界線

道路境界線

道路境界線

elevation elevation

2FL

2900

5800

2FL

2900

150

2550

1/150

5800

1/150

1/150

35515 400

パラペット天パラペット天 1/150

1FL

d-d’ section d-d’ section

1200

Y2

Y2

d’

B

A

『住吉の長屋』断面図 S=1:300

d’

B’

C

C’

A’

配置図 S=1:400

広域配置図 S=1:2500

iwaoka studio

69


DESIGN / PLANNING

Photo by 篠原一男(2011) 『Kazuo Shinohara:Casas/Houses』2G,p.169   二階居間、食堂をみる


1976

上原通りの住宅 / 篠原一男 House in Uehara, Kazuo Shinohara, 1976 | Sibuya-ku, Tokyo

Photo by 篠原一男(2011) 『Kazuo Shinohara:Casas/Houses』2G,p.163

名称

:上原通りの住宅

 二層分のコンクリート殻は1回のコンクリート工事

設計

:篠原一男

で終了した。ふたつの型の方杖が柱頭で直行している 6

住所

:東京都渋谷区代々木上原

本の柱でこの殻を支持する。外殻をつくるために有効

竣工

:1976/5

な解法であったこの方杖による無梁版構造は、敷地と

構造

:RC 造一部鉄骨造

家族構成に対応する平面と合わせた時、1 カ所で混乱が

階数

:地上二階建

生じた。間を置いてつくる予定であった屋上の小屋を、

敷地面積

:136.5m²

本体工事の直前に同時に施工することに決まった。鉄

建築面積

:80.5m²

骨に鉄板折板でボールドを架けたが、ここでも異なっ

延床面積

:203.6m²

た系に属する事物の突き合わせを私は選んだ。

建蔽率

:58.9%(許容 60%)

篠原一男「第三の様式」 (1977) 『建築雑誌 新建築 1977 年 1 月号』新建

容積率 

:149.0%(許容 150%)

用途地域

:第一種低層住居専用地域

築社 ,p.219-228

[ 篠原一男 ]

iwaoka studio

71


No.06 上原通りの住宅

大 村 高 広 T a k a h i r o

O m u r a

所属  :岩岡研究室 対象敷地:前面道路向正面 敷地面積:107.5m² 建築面積:53.6m² 延床面積:92.2m² 建蔽率 :49.9%(許容 60%) 容積率 :85.8%(許容 150%)

題名 / Title  

06 『 Uehara Inverted 』 上原通りの住宅 ( 篠原一男 )

―「突撃隊」軽装備で前へ

Go ahead! Light-armed troops

コンセプト / Concept  都市を否定し、小さな住宅の中で閉じたユートピアを目指 していた篠原一男の作品は、「第3の様式」を境に、積極的 に都市を論じる方向へ向かう。篠原にとっての都市とは、複 数の場の離散的な複合であり、事物の無造作な衝突であり、 混乱した美しさをもつ現象であった。いま、住宅の「建ち方」 を考えるとき、篠原一男が「第3の様式」において残した仕 事は大変示唆に富む。

 本提案では、篠原一男の「第3の様式」の分析を通して、 そこでのキーコンセプトを「建ち方」の問題として生成変化 させることを試みた。ここでは、篠原が想定していた〈イメー ジとしての都市空間〉を、前面住居のファサードや隣家との 空隙、庭との関係といった実在する事物に置き換えている。

 具体的には、建築ボリュームをできる限り小さくし、かつ 架構を「外付け」にすることで建築エレメントを敷地の四周 に露出させ周辺環境と直接対峙させるという方法をとった。 1つの小さな住宅が敷地に出現することにより、周囲のなん でもない風景が活性化される。そんなことを考えながら設計 をした。

審査講評 / Review  「上原通りの住宅」は(設計者の意図に反して)ある種の ロボットのような愛くるしい表情を見せる家であり、竣工し てから現在まで周囲に対して常に異彩を放し続けてきた。そ の正面に向かい合って建つ新たな住宅の提案では、構造体を 露出させるというやや古典的な表現手法を用いているように 見えるが、この形式が住宅相互の間にできる余白としてスキ マを建築化するための道具立てであるようにもみえる。そう した意味で、都市を住宅に重ねることに成功しているとみて よいだろう。

72

graduate school of architecture


iwaoka studio

73


ⅰ.) A nother possi bi l ity of third style

白の家 *1

未 完の家 *2

第 1の様 式

第 2の様 式

篠さんの家 *3

  篠 原 一 男は、時 代とともに思 想を展 開させ、それらを自ら様 式として順 列 化させ た 建 築 家 だった 。伝 統 に 傾 倒した「 第 1 の 様 式 」、キュー ビック な外形と垂直性の高い内部空間を特徴とする「第 2 の 様 式」。それに続く 「 第 3 の 様 式 」の 代 表 作 がこの「 上 原 通りの 住 宅 」で ある。そ の 後 篠 原 は 幾 何 学を多 用した「第 4 の 様 式」に 向 かうが、私 は「第 3 の 様 式」に お け

伝 統、分 割 / 連 結、正 面 性  

抽 象、亀 裂、垂 直 性  

上 原 通りの住 宅 *4

ハウスインヨコハマ * 5

第 3の様 式

第 3の様 式

る篠 原 の 思 考と実 践 に はまだ 展 開 の 余 地 が 残されているので は な い か と考えている。それ は「第 3 の 様 式」に はもれ なく、外 的 な 因 子 が 建 築 の 中 に「他 者」として取り込まれているからである。ここで は 取り込まれてい る「他 者」に つ いてもう一 度 考え、 「建ち方」という水 準まで 議 論を展 開し てみよう。

具 体、カオス、即 物 性

都 市、衝 突、幾 何 学

 

06 上原通りの住宅 ( 篠原一男 )

exterior element

ⅱ.) Exterior spatial element in interior space

primitive structure

谷 川さんの住 宅 *6

 「第 3 の 様 式」の 一 連 の 作 品で は、 〈外 的 な 要 素 = 他 者〉と、 〈プリミティ ブ な 架 構 =自律 的 な 要 素〉の 対 立 が 繰り返し用 いられている。 「第 3 の 様 式」の 最 初 の 作 品である「谷 川さん の 住 宅 * 6」を例 に 取ると、内 部 に 取り

上 原 曲り道の住 宅 *7

込まれ た 斜 面 は 明らか に 外 的 な 要 素 、つまり自分自身で は〈 完 全 にコン トロー ルしきれ な い 存 在 = 他 者〉である。一 方、斜 面 からすっと伸 びる方 杖をもった 柱 は、無 限 に反 復 が 可 能であるような、自律 的でプリミティブ なストラクチャーで ある。個々の エレメントは 文 化 的 な 意 味 が 剥 奪され 高 圧 線 下の住 宅 *8

即 物 的 に用 いられているの にもか かわらず、互 い に関 係しあうことで、新 た な 意 味 や 場 所 が 無 限 に 生 産される。これ が 篠 原 が目指した〈冷 た い 意 味の空間〉だ。

circul at io n

ⅲ.) A nal ysi s ― H ouse in Ueha ra   方 杖 をもつ 6 本 の 柱 で 二 層 分 の 高 さを 持 つコンクリートの 外 殻 を 支 え、内 部 を 木 造 の 床・壁 で 分 節 する、というの が「 上 原 通りの 住 宅 」の 基 本 的 な 構 成である。この 構 成 により5 m の 斜 線 制 限をクリアしつ つ 2 台 分 の 駐 車スペ ースを確 保し、か つコンクリートの 打 設を1 回で 済ませてい

structure

る。構 造 的 に も 構 法 的 に も 、予 条 件 に 対して 極 め て 合 理 的 な 解 答 で あ る。しかし、合 理 性を徹 底させることにより生まれるの は、プランニングと 架 構 の 決 定 的 なズレ で ある。このプラン ニングと架 構 のズレ 、あるい は 異 なる架 構 形 式 の ハ イブリッド が 、篠 原 の いう「 異 なった 系 に 属 する事 物の突き合わせ」だ。ここで重要な の は 個々の部品が「単体でみると合 理 的であり、か つ 意 味を持 た な い」ことである。それらが 無 造 作 に 複 合 する

*1~8(2011)『Kazuo Shinohara:Casas/Houses』2g,287pp.

ことで、詩的インパクトが発生する。

*1) p.74 , *2) p.100 , *3) p.104 , *4) p.162 , *5) p.240 , *6) p.159 , *7) p.197 , *8) p.211

Co n c r e t e c o l u m n

74

graduate school of architecture

Co n c r e t e s h e l l

wood

steel


2 1

1 : si te     2 : H o u se i n U e h a ra

広域配置図 S=1:2000

iwaoka studio

75


ⅳ.) Relat i vi zat i on of the shell   本 提 案で は、篠 原 一 男 の 建 築 がもってい た 外 殻を相 対 化 することで、 構 成 材と周 辺 環 境を直 接 対 峙させることを試 みる。つまりこれ は、 「第 3 の 様 式 」で 篠 原 が 組 み 込 んで い た〈 外 部 因 子 = 他 者 〉を、文 字 通り両 隣

L GL+4310

の 民 家 に 対 応させることで、 「異 なるもの 同 士 の 複 合」というコンセプト DR

を「 建ち 方 」の 水 準まで 引 き上 げられるか を 検 証 するもの で ある。いま

B

我々が 議 論 すべ きは イメージとしての 都 市で は なく、ましてはアナロジ ー やメタファーとしての 都 市で もな い。向こう三 軒 両 隣 の 具 体 的 な 都 市 環 境である。前 面 住 居 のファサ ードとの 関 係 の 中で、両 隣 の 住 居との 空 二階平面図 S=1:300

隙、あるい は 庭との 関 係 の 中で、 〈冷 た い 意 味 の 空 間〉を発 生させること はできるか。小さな 住 宅 の「建ち方」のアイデアによって、都 市を活 性 化 させることは 可能か。

上原通りの住宅 ( 篠原一男 )

UP

 

06

room 1 GL+2000

GL+1000

D

K

DOWN

T GL+1500

一階平面図 S=1:300

ⅴ.) External struc tur e  (A)まず、法規いっぱいのボリュームを設 定。 (B)周 辺 の 空 隙 が 小さく 死 んで いるので、1 . 5 m ず つ ボリュームをセットバック。 ( C )外 部 空 間 に A

余 裕 が 出 てきた 。そこにシンプ ル な 架 構 を 設 定 。しかしストラクチャー によるプランニング・外皮の制約が 大きい。 (D)思い切って架 構を「外 付 け」にする。外 部 空 間 に建 築エレメントが 露 出し、内 部 空 間・外 皮 の 構 成

WC

room 2 GL-800

GL-1650

DOWN

がストラクチャーから独立する。しかしまだ 単 調 なリズムで無駄が多い。 (E)架 構 の 数 を 減らしシンプル に 、か つ 個々の キャラクター が 際 立 つよ うに する。建 物 の 四 周 にそれぞ れ 別 の キャラクターをもった 建 築 エレメ

地階平面図 S=1:300

ントがあらわ れ た。 (F)最 後 にプランニングと外 皮、インテリアの 要 素を 複 合させる。過 剰 に キャラクタライズされ た 外 部 空 間とニュートラルで 無個性な内 部空間の対比。

A . 60 % /1 5 0 %

B . setback

C . set the structure

L

room 1

D . e x terna l

E . si m pl i fi c a t i o n

D

F . synthetics

A

断面図 S=1:300

A:アトリエ K:キッチン D:ダイニング L:リビング B:バスルーム WC:トイレ room 1 :子供部屋 room 2 :寝室 T:テラス

76

graduate school of architecture


B DR 310 +4 GL

配置図 S=1:1000

iwaoka studio

77

L


06 上原通りの住宅 ( 篠原一男 ) 1. 西側隣家のとある一室からの眺め、混乱 2.「上原通りの住宅」三階からの眺め 3. 東側隣家のとある一室からの眺め。フレーミングにより  外形が断片化されることで架構が消え強い浮遊感を生む 4. 南側隣家のとある一室からの眺め、即物性

78

graduate school of architecture

5. 6. 7. 8.

西側隣家のとある一室からの眺め、抽象 西側隣家のとある一室からの眺め、日常 二階内部 (GL+4300)、外在化した架構が現れては消える 一階主室 (GL+1000)、ニュートラルな内部空間

9. 10. 11. 12.  

西側隣家との空隙、象徴 正面道路側外観、塀を建築のエレメントとして扱う 周囲との関係の中で四面がそれぞれ異なる外形となった 南側の外部空間、露出した架構が隣家の庭と対比的に現れる 過剰にキャラクタライズされた外部空間


iwaoka studio

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DESIGN / PLANNING

Photo by 坂本一成研究室 , 新建築社(2008) 『坂本一成 / 住宅 ( Kazunari Sakamoto/Houses )』新建築社 ,p.43   二階主室から玄関を見下ろす


1978

今宿の家 / 坂本一成

House in Imajuku, Kazunari Sakamoto, 1978 | Yokohama-shi, Kanagawa

Photo by 坂本一成研究室 , 新建築社(2008) 『坂本一成 / 住宅 ( Kazunari Sakamoto/Houses )』新建築社 ,p.40

名称

:今宿の家

 横浜の内陸部の一様にけだるい大規模な新興分譲住

設計

:坂本一成

宅地の一区画にこの建物は計画された。この住宅の図

住所

:神奈川県横浜市今宿

像 が 私 の 他 の 住 宅 と 著 し く 異 な っ て 見 え る と す れ ば、

竣工

:1978/12

それはファサード全体のプロポーションのとり方の違

構造

:木造 , 軸組構法

いと、積極的な開口部の配列の扱いによるのであろう。

階数

:地上二階建

内部を性格づけているのは主階である上階を覆う水平

敷地面積

:165.4m²

な天井であり、さらにそれによって上面を均一に限定

建築面積

:57.4m²

された全体が、床のレベルの序列的変化によって各場

延床面積

:98.7m²

を形成している仕方による。

建蔽率

:34.7%(許容 40%)

坂本一成「家形を思い、 求めて」 (1979) 『建築雑誌 新建築 1979 年 2 月号』

容積率 

:59.7%(許容 80%)

用途地域

:第一種低層住居専用地域

新建築社 ,pp.215-221

[ 坂本一成 ]

iwaoka studio

81


No.07 今宿の家

江 間 匠 太 S

h

o

t

a

E

m

a

所属  :岩岡研究室 対象敷地:北側隣地 敷地面積:172.2m² 建築面積:66.3m² 延床面積:88.5m² 建蔽率 :38.5%(許容 40%) 容積率 :51.4%(許容 80%)

題名 / Title  

07 『 今宿の家を思い、求めて 』 今宿の家 ( 坂本一成 )

Seeking the House in Imajuku

― 金が谷の家

コンセプト / Concept

House in Kanegaya

 分譲住宅地では、効率的な街区割りのため背中合わせに敷 地が分割されている。「今宿の家」が南側に前面道路を有する ので、背中合わせになっている敷地は北側に前面道路を有し 北側アプローチとなっている。「今宿の家」のファサードは 南向きだからこそ可能だが、背中合わせ北側の敷地で、前面 道路に対してファサードを形成することが出来るだろうか。

 この土地は北向き斜面のため、造成により前面道路から 2 ~ 3 mの擁壁上に敷地がある。そこで建物をアイレベルに入 る高さまで押し下げ、開口の大きさと位置を見直すことで、 北側アプローチの住宅の前面道路に対してファサードの形成 を試みる。また「今宿の家」に面する室は、 「 今宿の家」をオマー ジュする。

 分譲住宅地では、均質化した街並みが続いている。このよ うな場所にどのようにして新しく街並みを構築していくこと が出来るだろうか。周囲の住宅の一部をオマージュし、そこ に新たな価値を付加させる。「今宿の家」の一部をオマージュ し、北面のファサードのあり方を付加させる。

この住宅でその答えを示せたのではないだろうか。

審査講評 / Review  「今宿の家」は横浜郊外の丘陵地に開発された戸建分譲住 宅 の 一 角 に 建 つ 建 物 で、 南 面 の 街 路 に 対 し て フ ァ サ ー ド を セットバックさせつつ周囲と異化されたアイコンを作り上げ ている。新たな住宅の提案では、この建物と背中合わせとな る北面の敷地を設定している。敷地と道路との境界面に存在 する既存擁壁を本体と繋げて建築化することで、異化された ファサードをつくることに成功しているが、ファサードが北 面になることを逆手に取った空間構成をさらに詰めていくこ とができたのではないかと思われる。

82

graduate school of architecture


iwaoka studio

83


ⅰ .) House in Imajuku  戸建て住宅の最も一般的な配 置である、敷地の南側にとった 庭に、住宅の長手の開口を向け る南面配置をしている。また周 囲のファサードはライン状に 揃 え ら れ て い る。 フ ァ サ ー ド

 

07

は、家型を基本としているが、

二階平面図 S=1:200

妻側に下屋を張り出させて変形

今宿の家 ( 坂本一成 )

させ、さらに袖壁がつけられて いる。また、架構と表層とが意 図的にずらされていることによ House in Imajuku

り、開口部のガラス越しに柱が 見えてきている。

N

一階平面図 S=1:200

ⅱ .) Site  新興分譲住宅地では、効率的 な街区割りのために背中合わせ に敷地が分割されている。「今 宿の家」が南側に前面道路を有 するので、背中合わせになって いる敷地は北側に前面道路を有 し北側アプローチとなってい る。「今宿の家」のファサード は南向だからこそ可能だが、背

断面図 S=1:200

南側立面図 S=1:200

中合わせ北側の敷地で前面道路 に対してファサードを形成する ことが出来るだろうか。

ⅲ .) Elevation of the surrounding housing  周辺住宅の前面道路側立面を 見ると「今宿の家」のように、

site

南側に前面道路を有する住宅の ファサードは、開口部が大きく 取られていることがわかる。し かし今回の計画地のように北側 に前面道路を有する住宅は、小 さな開口が多数設けられ建物裏 という印象が強く、また北側斜 面ということもありファサード は形成されていない。

配置図 S=1:500

84

graduate school of architecture


ig1.「今宿の家」ファサードとその後背部に現れる「金が谷の家」トップライト

大きな開口 fig2) が設けられ、ファサードを形成している。

ig2. 南側に前面道路を有する住宅

小さな開口 fig3) が多数設けられ、建物の裏の印象が強い。 ig3. 北側に前面道路を有する住宅

 建物が擁壁上にあるためアイレベルでは擁壁しか見えない。建 物をアイレベルの高さまで押し下げfig4)、開口の大きさと位置を見 ig4.「金が谷の家」ファサード

直すことで北側前面道路に対してファサードの形成を試みる。

iwaoka studio

85


A

B -1400

-2400 ±0

-1200

ⅳ .) House in Kanegaya  南側に面する室は、「今宿の

-1100

家」主室の構成をオマージュし

-900

-900

建物を下げたことにより、 スキップフロアで全体を構成する。

+1200 -1200

ており、水平な天井と床のレベ

+1700

+1300

+1300

ルの変化によって各場を形成し ている。それに対して、北側の 室は完全に「今宿の家」と距離

 

07

+300

+900

+300

+900

をとるために、建物中心の壁に よって室同士が切り離されてい

今宿の家 ( 坂本一成 )

二階平面図 S=1:200

る。北側の室の採光は南面の屋 根に設けられたトップライトに より得ている。

House in Kanegaya

ⅴ .) Flow planning

A’

B’

N

一階平面図 S=1:200

 スキップフロアのため主室ま で玄関から階段 6 段で辿り着 く。この構成は、9 段の階段で 主室に辿り着く「今宿の家」と 同様である。動線の全体構成は スキップフロアにより、少ない 段数で上階に上がることができ る。最上階の主寝室には、トイ レや風呂場に抜けれる小さなに じり口により、動線は一筆書き

A-A’ 断面図 S=1:200

のようにつながる。これは「今 宿の家」へのオマージュである。

北側立面図 S=1:200

ⅵ .) North side elevation  「今宿の家」に面する南側立 面は、採光や動線に基づいた架 構に左右されない自由な開口が 開けられている。北側立面(ファ サ ー ド ) は、 建 物 が ア イ レ ベ ル に 入 る よ う に 下 げ ら れ、 こ の住宅地に漂わせるために開口 の大きさは小さく開けられてい

B-B’ 断面図 S=1:200

南側立面図 S=1:200

西側立面図 S=1:200

東側立面図 S=1:200

ひら

る。また、南側平面に設けられ たトップライトから入る光が北 側立面の窓を抜けて、前面道路 にまで光を落とす。道路側から 建物を見上げると、まるで窓が 光っているように見える。

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iwaoka studio

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ⅶ .) Cross-sectional composition

House in Imajuku House in Kanegaya  

07 今宿の家 ( 坂本一成 )

断面図 S=1:300

広域配置図 S=1:1200  分譲住宅地では、均質化した街並みが続いている。このような場所に、どのようにして新しく街並みを構築していくこと が出来るだろうか。この問いの答えとして、周囲の住宅のコンセプトを一部オマージュし、そこに新しいコンセプトをつな げることで、新しく断面方向に街並みを形成することの可能性をこの住宅で示せたのではないだろうか。

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iwaoka studio

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IWAOKA LAB shelf units 岩岡竜夫研究室 [ 建築計画 , 意匠 , 設計 ] (IWAOKA LAB . Architectural Planning and Design) : すべての建物は「寸法」によってその形や空間が決定されてい

落、 都 市 空 間 な ど に み ら れ る デ ザ イ ン の 解 読 を 試 み て い ま す。そうした調査研究と並行して、住宅を中心とした実際の 設計活動を展開し、新しい建築空間の創造に挑戦しています。

ます。建物や空間の寸法(サイズ)は、人々の思考や行動に

2014 年度の研究テーマ

対してさまざまな影響を与えています。岩岡研究室では、特

 ・住宅建築に関する研究及び設計

に 建 物 の ス ケ ー ル( 大 き さ ) や モ ジ ュ ー ル( 単 位 空 間 ) に

 ・建築の構法および素材に関する実践的研究

関 す る 調 査 を ベ ー ス と し て、 建 築 物、 外 部 空 間、 街 並、 集

 ・近代建築作品および伝統的集落に関する調査研究


CHAPTER 1 Introduction

CHAPTER 2 collection of works   01- 07

( ア ー カ イ ブ ・ クレジット )

Chapter 3 : Report ( archive, credit )

記録

CHAPTER 3 Report ( archive, credit )


Statement / 声明

『〈外景〉として都市住宅 』

[ 大 学 教 授・ 建 築 家 ]

Modern House Scenery

著者:岩岡竜夫

 都市景観とは主に建物の外観が離散集合して構成されたものである。以前「日本 の現代住宅には外観がない」と言った先生がいたが、それは実体として外観ではなく、 風景や景観として外観、すなわち〈外景〉のことを指していることが分かった。ど う見えるかとは相対的なものである。つまり、どんなに美しく見える建物もその建 物の両隣あるいは前後の建物が陳腐であれば、その建物の評価は落ちるだろう。あ るいは逆に、どんなにつまらなく見える建物でも、その周辺環境の中で価値をもつ 建物もあるだろう。トリミングが自由な写真空間と視覚的にシームレスな現実空間 との違いは大きい。つまり〈外景〉とは、周囲の環境との関係性から生まれる建築 の外観の表情であり、その意味である。

 乃木坂の住宅街の一角に建つ「乃木坂ハウス

fig1)

」は、同じ形の窓が付いたノッペ

リとした白い建物である。建物そのものは(大きさが異常に小さいものの)普通の ビルのようにしか見えないかもしれないが、その「建ち方」は周囲の建物とかなり 異なっている。他の建物に比べて道路に対してやや出っ張っている fig2) のである。つ まり、道路斜線の(合法ではあるが)一般的なルールに則っていないからである。 建物そのものだけを見ると目立った特徴はないが、街並み全体から見るとそれは異 質な存在であり、すなわち目立っているといえる。東京あるいは日本の街並みの輪 郭がこうした形で立体的に少しずつ更新されていくことに、可能性を感じている。

ig1.「乃木坂ハウス」近景

ig2.「乃木坂ハウス」遠景

ig1 ,ig2 = アトリエ・アンド・アイ岩岡竜夫研究室「乃木坂ハウス」(2011) ―戸建て住宅+アトリエ 撮影協力:山田新治郎(Shinjiro Yamada)「山田新治郎写真研究室」〈http://www.yamadashinjiro.com/〉

92

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太陽光集熱器

洗面・浴室

シスターンタンク

▽最高高さ(GL+10000)

1000

ラインポンプ

テラス 雨水

▽軒高(GL+9000)

テラス 冷却塔 貯水槽

ラインポンプ デッキ材: セランガンバツ t=30mm

ファンコイルユニット (井水利用) 天井内循環パイプ(冷暖房) 天井:コンクリート打放し

3750

RF

収納 2150

個室 建具:シナ合板 UC

SPF '2×'8材

個室 床:コンクリート金鏝仕上 防塵塗装 40

床内循環パイプ(冷暖房)

10000

250 30 180

▽3FL

天井内循環パイプ(冷暖房) 天井:コンクリート打放し

3F 外壁:イソバンドBL-H 35mm 内装:PB t=15mm EP

2600

2850

共用室

中梁:H鋼125×125 OP カウンター天板: 杉(無垢材) UC

キッチン

外壁:イソバンドBL-H 35mm カウンター腰壁: シナ合板 UC

内装:PB t=15mm EP

40

床:コンクリート金鏝仕上 防塵塗装

▽2FL

30

220

床内循環パイプ(冷暖房)

180

梁:H鋼250×125 OP

天井:ロックウール吹付け 鏝押え

共用室

内壁及び建具: イソバンドBL 35

給湯 給水

2250

ポーチ

2000

便所

2F 給湯器接続 アスファルト敷き t=60mm 砕石 t=90mm スタイロフォーム t=100mm 60

床:モルタル金鏝仕上 防塵塗装

電動二方弁

60

▽GL

150

▽1FL

250

250

井水 床・天井循環(冷暖房) 熱交換(冷却塔)

スタイロフォーム t=30mm 差圧調整弁 250

A’

A

温度調節器

アトリエ 天井:コンクリート打放し

熱交換(給湯補助用) 熱交換(ガス)

2550

160

ドレン管(FCU)

1950

熱交換(太陽光集熱器)

蓄熱槽(冷房用)

蓄熱槽(暖房・給湯用) ラインポンプ

熱交換コイル

ポーチ ファンコイルユニット (井水利用)

熱交換コイル(銅製)

床: コンクリート金鏝仕上 防塵塗装 床内循環パイプ(冷暖房)

1F

60 60

340

300 40

▽BFL

A-A’ 断面詳細図 S=1:80 1950

2250 4200

建物名称:乃木坂ハウス

 約 10 坪の敷地内に、合法的に最大限の床面積(許容

設計  :アトリエ・アンド・アイ

容積率は 160%)を確保するために、天空率によるヴォ

     岩岡竜夫研究室

リューム設定、地下室および駐車スペースの設置、さら

住所  :東京都港区

に天井高の低い収納スペースや屋上テラスなどを立体的

竣工  :2011/12

に設けた。結果として建物の外形は、直方体の四隅を斜

構造  :鉄骨造一部 RC 造

めに面取りした形状となり、ぞれぞれの斜めの外壁面に

建物用途:専用住宅+アトリエ

開閉可能な開口部を設けることで、高密度な住宅地であ

敷地面積:34.4m²

りながら、周辺から十分な採光と通風を室内全体に取り

建築面積:22.3m²

入れている。さらに室内の温熱環境は、地下からの井戸

延床面積:86.3m²

水、天空からの太陽光や雨水などを補助エネルギーとす

建蔽率 :64.7%(許容 70%)

るパッシブな輻射(=放射)式冷暖房システムによって

容積率 :86.3%(許容 170%)

成立している。また外壁面の室内側には H 型鋼による

用途地域:第二種住居専用地域

フィーレンデール形式の構造体が露出しているが、それ

     第三種高度地区

らを壁面収納棚の一部として有効に利用している。

アトリエ

B1F 各階平面図 S=1:150

iwaoka studio

93


Architect / 選定 名作住宅の設計者概要

No.00 ○○○○○○○

氏  名

Taro Kenchiku

事務所:○○○建築設計事務所

略歴: 主な作品: 主な受賞:

参考文献 / List of References Front cover 奥佳弥(2009)『リートフェルトの建築』TOTO 出版 ,p.28-29 建築家山田守展実行委員会(2006)『建築家山田守作品集』東海大学出版会 ,p.126 東孝光(1982)『別冊新建築 1982 日本現代建築家シリーズ④ 東孝光』新建築社 ,p.62 宮脇檀(1980)『別冊新建築 1980 日本現代建築家シリーズ① 宮脇檀』新建築社 ,pp.132-133 千葉学(2008)『Heavenly Houses 3 住吉の長屋 / 安藤忠雄』東京書籍 ,p.17 篠原一男(2011)『Kazuo Shinohara:Casas/Houses』2G,p.163 坂本一成研究室 , 新建築社(2008)『坂本一成 / 住宅 ( Kazunari Sakamoto/Houses )』新建築社 ,p.40

Chapter 2 p.18 東孝光(1982)『別冊新建築 1982 日本現代建築家シリーズ④ 東孝光』新建築社 ,p.63 pp.20-21 奥佳弥(2009)『リートフェルトの建築 』TOTO 出版 ,pp.28-29,p.45 p.24 奥佳弥「シュレーダー邸、1924 年 ―家具から建築へ」(1998)『デ・ステイル 1917-1932』河出書房新社 ,pp.126-129 p.24 奥佳弥(2009)『リートフェルトの建築』TOTO 出版 ,p.33 pp.30-31 建築家山田守展実行委員会(2006)『建築家山田守作品集』東海大学出版会 ,p.118.120.126 p.40 五十嵐太郎 監修 , 新建築社(2014)『戦後日本住宅伝説 挑戦する家・内省する家 』新建築社 ,p.56 p.41 東孝光(1982)『別冊新建築 日本現代建築家シリーズ④ 東孝光』新建築社 ,p.62.63 p.45 『法 14 条地図』東京法務局 p.45 『渋谷区都市計画図』渋谷区都市計画課都市計画係〈https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/machi/toshi_sodan.html〉 p.45 東孝光(1988)『「塔の家」白書』住まいの図書館出版局 ,p.105 p.50 五十嵐太郎 監修 , 新建築社(2014)『戦後日本住宅伝説 挑戦する家・内省する家 』新建築社 ,p.87 p.51 宮脇檀(1980)『別冊新建築 日本現代建築家シリーズ① 宮脇檀』新建築社 ,pp.132-133 ,p.135 p.54 宮脇檀(1980)『別冊新建築 日本現代建築家シリーズ① 宮脇檀』新建築社 ,p.135.137 pp.60-61 千葉学(2008)『Heavenly Houses 3 住吉の長屋 / 安藤忠雄』東京書籍 ,p.17.60 p.61.64 安藤忠雄「都市ゲリラ住居」(1973)『臨時増刊号 都市住宅 住宅第 4 集』鹿島出版会 ,pp.18-19 p.64 『大阪市建蔽率許可制度』大阪市住宅局建築指導部建築企画課 p.64 千葉学(2008)『Heavenly Houses 3 住吉の長屋 / 安藤忠雄』東京書籍 ,pp.64-65.70-81 pp.70-71 篠原一男(2011)『Kazuo Shinohara:Casas/Houses』2G,p.163.169 p.71 篠原一男「第三の様式」(1977)『建築雑誌 新建築 1977 年 1 月号』新建築社 ,p.219-228 p.74 篠原一男(2011)『Kazuo Shinohara:Casas/Houses』2G,p.74.100.104.162.240.159.197.211 pp.80-81 坂本一成研究室 , 新建築社(2008) 『坂本一成 / 住宅 ( Kazunari Sakamoto/Houses )』新建築社 ,p.40.43 p.71 坂本一成「家形を思い、求めて」(1979)『建築雑誌 新建築 1979 年 2 月号』新建築社 ,pp.215-221 p.84 坂本一成(2014)『坂本一成 住宅めぐり』フリックスタジオ ,p.48

Chapter 3 p.93 図版出展:岩岡竜夫「乃木坂ハウス」アトリエ・アンド・アイ岩岡竜夫研究室

Photograph 山田新治郎(Shinjiro Yamada)「山田新治郎写真研究室」〈http://www.yamadashinjiro.com/〉: p.06.92 堀越一希(Kazuki Horikoshi): pp.07-12 ,p.15.22.23.28.29.32.33.38.40.39.42.43.52.53.58.59.62.63.64.66.67.72.73.82.85.87.89.97.99 ,Back cover

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graduate school of architecture


No.01 シュレーダー邸

ヘリット・トーマス・リートフェルト

Gerrit Thomas Rietveld

略歴:1888 年 オランダのユトレヒトに家具職人の次男として生まれる。1904 年 ユトレヒト美術・美術工芸学校夜間コースで学び、昼間 C・J ベヘール銀 器製造会社で見習いとして働く。1917 年 家具作家として独立し、家具工房を設立。1925 年 建築家として独立。1961 年 J・ファン・ディレン、J・ファン・ トリヒトとパートナーシップを組む。1964 年 シュレーダー邸にて逝去。 主な作品:レッド&ブルー・チェアー(1923)、シュレーダー邸(1924) 、ローハウス - ユトレヒトの低層住宅(1931-1934)ゴッホ美術館(1956)など 主な受賞:世界遺産「シュレーダー邸」(2000)など。

No.02 山田守邸

山田守

Mamoru Yamada

事務所:山田守建築設計事務所

略歴:1894 年 岐阜県羽鳥郡上中島村に生まれる。1920 年 東京帝国大学工学部建築学科を卒業し逓信省に入省する。同年、青年建築家のグループ分離派 建築会を結成する。1946 年 通信建設工業株式会社を設立する。1949 年 山田守建築設計事務所を設立。1951 年 東海大学の理事に就任し、工学部建設工学 科の主任教授も兼ねる。1966 年 逝去。 主な作品:聖橋(1927)、東京厚生年金病院(1953) 、山田守邸(1959)、京都タワー・ビル(1964)、日本武道館(1964)など。 主な受賞: 芸術選奨(文部大臣賞)「旧東京厚生年金病院」(1953)、日本建築学会賞作品賞「旧大阪厚生年金病院」(1954)、 藍綬褒章(1964)など。

No.03 塔の家

東孝光

Takamitsu Azuma

事務所:東孝光建築研究所

略歴:1933 年 大阪府で生まれる。1957 年 大阪大学工学部構築工学科を卒業し郵政省大臣官房建築部に入る。1960 年 坂倉準三の坂倉準三建築研究所の大 阪事務所に移る。1966 年 独立 自宅内に東孝光建築研究所を設立。1985 年 大阪大学工学部環境工学科教授に就任。事務所名を「東環境・建築研究所」と 変更し、代表に長女東利恵が就任する。1997 年 大阪大学名誉教授となり、千葉工業大学工業デザイン学科の教授となる。2015 年 逝去。 主な作品:塔の家(1966)、さつき保育園(1973) 、ワット・ハウス(1977)、 阿佐ヶ谷の家(1993)、 姫路工業大学書写紀念会館(1955)など。 主な受賞:日本建築学会賞作品賞「塔の家から阿佐ヶ谷の家に至る一連の都市型住宅」(1995)など。

No.04 松川ボックス

宮脇檀

Mayumi Miyawaki

事務所:宮脇檀建築研究所

略歴:1936 年 洋画家宮脇晴とアップリケ作家の宮脇綾子の子として愛知県名古屋市で生まれる。1959 年 東京芸術大学美術部建築学科卒業。1961 年 東京 大学大学院修士課程高山研究室 修了。1964 年 一級建築士事務所 宮脇檀建築研究室を設立。1991 年 日本大学生産工学部建築工学科教授就任。1998 年 逝去。 主な作品:もうびいでぃっく(1966)、松川ボックス(1971) 、伊藤清永美術館(1990)、姫路市書写の里・美術工芸館(1994)など。 主な受賞:日本建築学会賞作品賞 「松川ボックス」(1980)、グッドデザイン賞 施設部門 「フォレステージ高幡鹿島台」(1999)など。

No.05 住吉の長屋

安藤忠雄

Tadao Ando

事務所:安藤忠雄建築研究所

略歴:1941 年 大阪府大阪市港区に生まれる。1965 年 この年より 4 年間、2 度にわたり世界を放浪。1969 年 安藤忠雄建築研究所を大阪に設立。1997 年 東京大学工学部教授に就任。2002 年 南カリフォルニア大学客員教授。2005 年 東京大学特別栄誉教授。2005 年 安藤忠雄文化財団を設立。2011 年 東日本 大震災復興構想会議議長代理。2012 年 新国立競技場 国際デザイン・コンクール審査委員長。国立競技場将来構想有識者会議委員。現在に至る。 主な作品:住吉の長屋(1976) 、六甲の集合住宅(1983) 、光の教会(1989) 、フォートワース現代美術館(2001) 、表参道ヒルズ(2006)など。 主な受賞:日本建築学会賞「住吉の長屋」(1979)、日本芸術大賞(1994) 、プリツカー賞(1995)、国際建築家連合 UIA ゴールドメダル(2005)など。

No.06 上原通りの住宅

篠原一男

Kazuo Shinohara

事務所:篠原一男

略歴:1925 年 静岡県生まれ。1947 年 東京物理学校卒業、その後東北大学で数学を学ぶ。建築に転向し、1949 年 東京工業大学建築学科に入学し、清家清 に師事。卒業後、同大学助手。1970 年 同大学教授。1986 年 東京工業大学名誉教授。同年-退官に至るまで東工大の教壇に立つ。東工大教授の他、イエー ル大学客員教授、ウィーン工科大学客員教授。2006 年 逝去。 主な作品:土間の家(1963)、白の家(1966) 、未完の家(1970)、上原通りの住宅(1976) 、日本浮世絵博物館(1982)、東京工業大学百年記念館(1987)など。 主な受賞:日本建築学会賞「未完の家、以後の一連の住宅」 (1972) 、紫綬褒章(1990) 、毎日芸術賞特別賞受賞(1997) 、日本建築学会大賞(2005)など。

No.07 今宿の家

坂本一成

Kazunari Sakamoto

事務所:アトリエ・アンド・アイ坂本一成研究室

略歴:1943 年 東京都に生まれる。1963 年 東京都立立川高等学校卒業。1966 年 東京工業大学卒業。1971 年 東京工業大学大学院博士課程を経て武蔵野美 術大学建築学科専任講師。1977 年 同大助教授(現准教授)。1983 年 東京工業大学助教授(現准教授)。1991 年 同大教授。2009 年 東京工業大学退官 同大 名誉教授。現在に至る。 主な作品:水無瀬の町家(1970)、代田の町家(1976) 、今宿の家(1978)、House F(1988) 、コモンシティ星田(1992)、 東工大蔵前会館(2009)など。 主な受賞:日本建築学会賞作品賞「House F」 (1990)、村野藤吾賞「コモンシティ星田」(1992)など。

iwaoka studio

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Member / 2015 年度修士課程岩岡スタジオ履修者一同

No.00 ○○○○○○○

氏  名

Taro Kenchiku

所属:○○研究室 修士○年

1― 設 計 や プ レ ゼ ン で 意 識 し た こ と を 教 え て く だ さ い 2― 最 終 課 題 『 住 宅 設 計』 を 通 し て 、 な に を 学 び ま し た か

 選定した名作住宅から、履修者7人の建築的な趣味嗜好や経験が垣間見えること もこの課題の機知な面白さであるといえる。例えば No.01 国分元太さんは、インター ナショナルな彼の人柄や実際の訪欧経験に起因して、ひとり異国の「シュレーダー邸」 を選んだのだろう。一方で、No.04 玉江将之さんの「松川ボックス #4」では、木造 在来構法の実務経験に触れた彼なりのアプローチが、野心ある鉄骨造へとその姿を 変え、訴求力を増している。さらに言えば、「塔の家」を選んだ No.03 齊藤誠司さん と東孝光氏の出身校が、偶然にも同一であることが出版間際に発覚した。何らかの 因果関係が有る無しにせよ、自らが ” 面白い “ と思い選んだ名作住宅に〈挑戦状を叩 き込む〉という目線でみたとき、決して保守的にならず屈強な野心をもって臨んだ 意識が、意欲的なアウトプットとなって各人の設計に現れていた。改めて作品を俯 瞰してみても、どれひとつとして混じり気の無い、癖のある「建ち方」をしている という事実が、各人が悩み葛藤した末に導き出した〈答え〉を物語っている。

 第一号となる本書が出版されることになったキッカケの一つとして、例年に比べ 修士課程へと進学する意匠系が非常に多かったという事実が挙げられる。数多くの 猛者達が互いに切磋琢磨しながら課題に取り組むことで、個人のレベルを高めなが らもお互いを認めあい、信頼関係を築き上げてきた。修士課程最後の課題を「住宅 設計」で締めくくるということ、しかも、戦後名作住宅の超近接に設計するという 大往生は、修士設計を控えた私たちに深い思考能力と詳細な設計能力を試す最後の 試練を与えてくれたと思う。本書を第一号として、初陣である岩岡スタジオのメン バーをここに記録する。

課題履修者一同(左から、國分 , 齊藤 , 外川 , 玉江 , 堀越 , 大村 , 江間)2016/02/13

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graduate school of architecture


No.01 シュレーダー邸

國分元太

Genta Kokubu

所属:山名研究室 修士 1 年

1― 設計では椅子からの過程を明確にするようにしました。悩んだら主観によるカッコよさを大切にし判断していきま した。プレゼンでは原点回帰し、きれいな白模型をつくるよう心掛けました。

2― ふと思い立って学部2年時の住宅課題と今回の住宅を見比べたら、どちらも住みにくそうだなあと思いました。こ の課題では住宅と都市の関係について、他の人の案を通じて多く学べたと思います。

No.02 山田守邸

外川喜裕

Yoshihiro Togawa

所属:岩岡研究室 修士 1 年

1― 古き良き蔦珈琲店、こじんまりした和のギャラリー、それらと共鳴する庭のみどり。忙しなく変わる表参道の中で この「山田守邸」は独特の情味をもつ。そのあたたかさを創出・表現すること。

2― 田舎者の自分にとってここらは背伸びが必要な場所だった。表参道に遊び、その緊張に馴染む頃に出逢ったこの建 築物は山田守を知らなくても何かを感じた。そして、そのようなものと触れ合い、観察・分析し、まねること。

No.03 塔の家

齊藤誠司

Seiji Saito

所属:安原研究室 修士 1 年

1― 混沌とした敷地のコンテクストからコンセプトとなるものを丁寧に取り出すことと、街での体験が住宅内にも取り 込まれるようなプランニング。そして、社会に出ると当分経験できない住宅の設計を楽しむこと。

2― 法規に対する意匠的回答の難しさと、建築をコンセプチュアルに現実のものとする中で生まれる建築家の葛藤。加 えて、計画性の重要さと結局何とかなるということを再び思い知らされた。

No.04 松川ボックス

玉江将之

Masayuki Tamae

所属:岩岡研究室 修士 1 年

1― 「松川ボックス」への視線・動線をどのようなかたちで繋げていくかを意識しながら設計を進めた。また、当時宮脇 檀が都市に対して意識していた「建ち方」をふまえて、自分なりのアプローチから現代の「建ち方」を考えた。

2― 住宅設計を通して自分がどれだけ、一般的に規格化されている住宅スケールが身に染まっているかを学んだ。今後は、 こういったスケール感に対して疑いをもって設計と向き合っていきたいと思う。

No.05 住吉の長屋

堀越一希

Kazuki Horikoshi

所属:岩岡研究室 修士 1 年

1― 戦後名作住宅の目の前に建てるという無理難題に対して、とにかく徹底的に、徹底的にやらなければと思って取り 組んだ。結局「住吉の長屋」に若干引っ張られていることは否めない、反省です。

2― 40 年前、安藤忠雄が単純な箱の中にこれほどの収まりと情報量を与えていることを目の当たりにして驚愕した。安 藤はすごい。と同時に、負けてられないなあと改めて感じた。

No.06 上原通りの住宅

大村高広

Takahiro Omura

所属:岩岡研究室 修士 1 年

1― 今回の課題は「過去の名作住宅の現代化」と「建ち方」という、2つの難しい問題を同時に相手にする必要があっ たので、 「上原通りの住宅」をどう読めば「建ち方」の問題へと議論がシフトするのかということを考えていました。

2― やっぱり住宅は難しい。与条件をかなりクリアにして解いていかないとリアリティが出ず、かといって実務的にや り過ぎても、アンビルドの課題として意味がなくなるからです。でもおもしろかった。

No.07 今宿の家

江間匠太

Shota Ema

所属:岩岡研究室 修士 1 年

1― 坂本先生の住宅を邪魔しないように、だけど周囲の住宅とは違う雰囲気で、この分譲住宅地に漂わせたかった。プ レゼンでは、あえてこの地味さを出していることを伝えることを意識した。

2― 自分は、住宅の設計が一番難しいと思っている。学生最後の課題として住宅設計を取り組むことができたのは、本 当によかった。今回の設計を通して、改めて住宅設計の難しさを学んだ気がする。

iwaoka studio

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Epilogue / あとがき

 課題提出前、岩岡先生が私たちに突然「この課題を本にしようかと思っている。」 とおっしゃった。ただでさえ、名作住宅の超近接に設計するという大仕事にさらに 拍車をかけ、ハードルを上げられたのだ。他スタジオで教鞭をとる安原幹先生は中 間講評の終わり際「これはまたエグイ課題だな ...。」とこぼしていたのを小耳に挟ん だ。苦笑いをしたのは私だけではないはず。思い返してみれば最終課題で住宅を設 計するという、他大学でさえ中々味わえないこの経験に面白さを覚えて履修してみ たものの、理科大の学部2年時に通り過ぎた、まだ駆け出しの初々しい住宅設計と は天と地の差である。それもそのはず「建ち方」に正解など無く、設計者である住 宅を調べれば調べるほどその住宅作品の素晴らしさに改めて気づかされる。自身の 設計と名作住宅を比較して暗中模索しながら葛藤する日々が続いていた。皆口を開 けば「意味がわからない」「勝てる気がしない」と、行き場のない愚痴を仲間内で言 い合っていた。そのためか、最終講評では他者が一体名作住宅に対してどのような アプローチを仕掛け、住宅設計を紐解いていくのか自分の作品以上に期待していた ことを覚えている。〈名作住宅 vs 現代住宅〉という非常に皮肉れたプログラムだか らこそ、通常の設計課題では決して得られない、自分の案との相対的な視点を獲得 することができた。それだけでも、この課題が非常に有意義であったことは間違い ないだろう。全体を通して、これまでの課題としては最も濃密な設計と思考能力を 養えたことに疑いはない。非常に辛く、吐きそうになるが、面白かった。ただひた すら、やりがいのある課題だった。

 第一号となる本書を出版するにあたって、データ入稿やレイアウトのすべては学 生が担当し企画・編集・出版を行った。課題の一環として、終了後このような冊子 を作成し読者に読んでいただけるという自覚は、少なからず課題履修者の意識を高 め、作品の質を向上させたと思う。それだけでなく、修士課題を記録として残し、 後輩へとバトンを渡す第一号という意味でも大きな足跡を残せたのではないか。

 最後に、本課題出題者である岩岡先生には各作品に対し、温かくも厳しいお言葉 を寄せていただきました。ならびに、協賛していただいた総合資格学院様には本書 出版にあたり多大なるご協力を承りましたことを、この場をお借りして感謝申し上 げます。本当にありがとうございました。また、各ページのオリジナルデータを作 り上げてくださった学生編集協力のみなさん、ご協力ありがとうございました。願 わくば 10 年後、この冊子を読み返しながら「自分達もまだまだだったな」と岩岡先 生と履修者7人で笑いながら酒の肴にでもしたいと思っています。

[ 著 : 堀越一希 ]

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graduate school of architecture


MODERN HOUSE SCENERY 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻 岩岡スタジオ作品集2015 Students Projects of Graduate School of Architecture Faculty of Science and Technology Tokyo University of Science IWAOKA Studio 2015

発行日 2016 年 3 月 9 日 初版第一刷発行

発行 東京理科大学岩岡研究室 〒 278-0022 千葉県野田市山崎 2641 東京理科大学野田校舎二号館四階岩岡研究室 ダイヤルイン : 04-7122-9420 学科事務室内 : 04-7125-7533 URL : http://www.rs.tus.ac.jp/iwaokalab/home.html

編集委員 岩岡研究室

編集協力 ( 学生 ) 江間匠太 大村高広 國分元太 齊藤誠司 玉江将之 外川喜裕 堀越一希

企画編集 岩岡竜夫 堀越一希

デザイン 堀越一希

協賛 株式会社 総合資格

本書の一部または全部を無断で複写、複製、転載、あるいは磁器媒体に入力することを禁じます。


19XX [ FRONT ] G.T.RIETVELD MAMORU YAMADA TAKAMITSU AZUMA MAYUMI MIYAWAKI TADAO ANDO KAZUO SHINOHARA KAZUNARI SAKAMOTO

MODERN HOUSE SCENERY

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Modern House Scenery  

This work book contains students projects of graduate school of architecture, Faculty of Science and Thechnology, Tokyo University of Scienc...

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