53 石垣哲朗編
を訪ねるのも、しばらくぶりだ。
いる。
二階の部屋を覗くと、ベッドに腰掛けている海の姿が見えた。何かを夢中でいじっているよ うで、俺の存在にも気付いていない。ベッドの上には何冊かのカメラ関係の雑誌が散らばって
﹁おい、海﹂ 声をかけると、海はびくっと驚いたように振り向いた。その顔はいつもの海のまんまで、俺 は少しホッとする。 ﹁なんだよ。いきなり入ってくんなよな﹂
﹁七海さんが入れてくれたんだよ。海、春休みだってのに全然連絡してこねぇからよ﹂ 軽口を叩き合いながら海の隣に腰を下ろす。見ると、海の手にはビデオカメラのようなもの が握られていた。 ﹁それ、何?﹂ ﹁見ての通り、8ミリカメラだよ。多分、爺ちゃんの﹂ ﹁触ってみていいか﹂
海に頼んで、8ミリカメラというそれを触らせてもらった。 こんな古いカメラを触るのは初めてのことだ。少し緊張しながら手に乗せると、見た目より もずっしりくる。グレーと黒のツートンカラーのボディにファインダーとレンズ、シャッター