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建 築 要 素 の 関係 設 定 に 着 目 した 知 的 CADの 開発 研 究

1993年 3月

高 本 孝 頼


日 口

…… …… ……………… 。 1 論 …………………………… ……‥‥……………………………………3 第 1章

1-1 研究の背景 1-2 研究の 目的 と方法

………………………………………‥…………………………5

1■

研究の位置づ けと特色

14

論文の概要

………………………………………………………………6

…………………………… ………‥………………‥…………………8 註

。………………………………………。 11

参考文献

2-1 序

……………………………………H

第 2章 設計思考 とCAD機 能の分析 ……………………15 …………………‥………………………………………………………………17

2-2 設計思考 とCAD操 作 ……………………………‥……………………………18 2-2-1 試行錯誤 の設計 プロセス・ モデル ……………………………………………18 2-2-2 要素単位 の設計思考 ……………………………‥……………………………19 2-2-3 設計思考 に対応 したCAD操 作 ………………………………………………20

22-4 CAD操作 の流れの展開 2-3 CAD機 能 の分析 2-3-l CAD機能 の分類

……………………………… ………………………21

………………‥………………………………………………23 ………………………………………………………………23

2-3-2 建築要素の CAD操 作機能 の分類

‥…………………………………………Z

2-3-3 建築要素間の CAD編 集操作 …………………………………………………25 2-4 建築要素の編集操作 を行 う知的 CAD機 能 ……………………………………26 2-4-1 関係付けによる形態操作

24-2

………………………………………………………26

関係付けを使 った建築形態 モデルの概念

……………………………………26

2-4-3 建築要素 を扱 う知的 CADの 概念 ……………………………………………27 2-5 結語 …………………………………………………………………………………29 註

。………………………‥……………・31

参考文献

1-

……………………… ……………31


第 3章

3-1 序

設計変更 に伴 う関係設定の分析

‥………………33

……………………………………………………………………………………35

3-2 CADを 用 いた設計事例 の分析 ‥………………………………………………36 32-1 事例分析 の方法 …………………………………………………………………36 3-2-2 分析結果

…………………………………………………………………………36

3-2-3 分析 による新 たな CAD機 能 の考察

………………… ………………………42

3-3 関係設定の分類 と特徴 ……………………………………………………・・……44 …………………………………………44 3■ -1 建築要素 と要素間の関係設定 の分類 3-3-2 関係設定 の特徴

34 CAD形 34-1 34-2 34-3 34-4

………………………………………………………………… “ ……………………………………………47

態編集操作による関係設定

…………………………………………………………47 柱一辺の移動の編集例 ……………………………………………………48 柱 。壁 と開 口がある編集例 …………………………………………………50 柱・壁 と通 り心移動の編集例 ……‥…………………………………………………………51 関係設定 の種別

3-5 形態操作の関係設定 3-5-1 部材形状 ルール

………………………………………………………………52 ………………………………………………………………1・ 52

3-5-2 接続関係ルール ……・・…………………………………………………………53 3-5-3 相互位置関係ルール ・・…………………………………………………………53 3-5-4 主従位置関係 ルール

……………………………………………………………53

3-5-5 比例位置関係 ルール

……………………………………………………………55

3-5-6 置換関係ルール

3-6 結語

‥………………………………………………………………55

……………‥…………………………………………………………………57 註

…………………………………………58

参考文献 第 4章

……………………………………59

関係設定 に着 目した知的 CADの 操作機能

……………61

4-1 序 ……………………………………………………………………………………63 4-2 関係情報による機能構築 ……‥‥………………………………………‥……64

42-1

関係設定対応 の関係情報

………………………………………………………64

4-2-2 関係情報 の参照 の階層性 ・・……………………………………………………。 65 4-2-3 関係情報 を使 ったコマン ド群 リス ト …………………………………………65

4-2-4 ジョィン ト評価 の形状変更

……………………………………………………66

- 11 -


4-2-5 クローン関係 の特徴 ……………………………………………………………68 4-2-6 関係情報の処理 に関する要件 …………………………………………………69

4-3 関係情報 の関連操作

………………………………………………………………71

4-3-1 関係情報 の設定機能 4-3-2 関係情報の解除機能

……………………………………………………………71

4-3-3 関係情報 の表示機能

……………………………………………………………73

…………………‥………………………………………73

4-3-4部 材 のアフィン変換編集機能

・…・・・・……・・……………74 ・・………………・

4-3-5 プロポーショナル関係情報 の評価 4-3-6 部材 削除 4-3-7 部材複写

………… …………………………………77

………‥………………………………………………………………78 …………………………………………………………………………78

4-3-8 ジョイン ト関係情報 の形態操作 4-3-9 クローン関係 の形態操作

………………………………………………79

………………………………………………………81 註

…………………………………………85

参考文献 第 5章

……………………………………86

システ ムのデー タ構造 とアル ゴ リズム

…………………89

5-1 序 ……………………………………………………………………… ……………91 5-2 システ ム構築 のための基本的な考 え方 ………………… ………………………92 5-2-1 ソフ トウェア構成

………………………………………………・・……………92

5-2-2 図形要素のハ ン ドル名 による関係情報の管理 5-2-3 関係情報 を扱 う基本関数 の仕様

………………………………93

………………………………………………94

5-2-4 クローン関係 の構築方法 ………………………………………………………95 5-3 関係情報のデー タ構造 ……………………………………………………………96 5■ -1 ユニ オン関係情報

5-3-2 ジ ョイン ト関係情報 5-3-3 グル ー プ関鯖 報 5■ -4 ハ ィァラキ関係 情報

………………………………………………………………96 ……………………………………………………………96 ………………………………………………………………97 ……………………………………………│・ ……………97

5-3-5 プロポー ショナル関係情報

……………………………………………………98

5-4 関係情報関連 コマン ドのアル ゴ リズム

54-1 54-2

・……………99 …………………………・

・アル ゴ リズム(移 動 ,回 転 ,ス ケー ル) アフィン変換 コマン ド ユニ ォン部材検 索アル ゴ リズム

……………。 99

………………………………………………100

5-4-3 グル ー プ関係検索アル ゴ リズム ………………………………………………101

- 111 -


5-4-4 ハィ アラキ部材検索アル ゴ リズム ……………………… ……………………103

5-5 結語

・ ・・・ ・・・・・・。107 ・・・・・・

……………………………‥……108

補足説明

………………………………………H2 参考文献 ‥…………………………………H2 註

…………・・………H5 第 6章 試作 システムの性能評価 。………………………‥…………………………………………… …………。 117

6-1 序 6-2 基本編集操作 ………………………………………………………………‥……H8 6-2-1 柱 と壁の編集操作事例

……………………………・・‥………‥… …………H8

6-2-2 柱・壁 と開 回の編集操作事例 ………………………………………………‥H9

6-3 関係情報 の ケース・ スタディ ……………………………………………………122 6-3-1 平面躯体操作例

…………………………………………………‥…………‥122

6-3-2 ファサー ドの編集例 ………………………‥…………………………………12 6-3-3 システムの稼動 シミユレーション例 ¨……………………‥………………125 6■ -4 関係情報 を使 ったシステムの評価

……………………… ……………………127

6-4 クローン機能のケース・ スタディ …………………………………… …………129 6-4-1 ファサー ドのシミュレー ション例 …・・………………………………………129 6-4-2 柱 とアー チの レイアウ ト・ シミュレーション例

64-3

部屋 の レイアウ ト・ シ ミユレー ション例

……………………………131

… …………… ‥…………………132

‥‥‥…………………………………133

6-4-4 クローン機能の効果 とシステム評価

6-5 結語 ………………………………………………………………………………‥135 註 参考論文 第 7章

…………‥…………………………136 …………‥………………………136

… …。…………… …。137

7-1 研究の総括 ……………………………………… …………… ‥‥‥……………139 7-2 研究の結論 ……………………………………………‥‥…………………。 ・…141

7-3 3次元への研究の展開

…………………………………………………・・………141

……………… …………………‥1慇

研究発表 の記録

-lV―

………………………………。147


第 1章 序



1-1 研究の散

1960年 代前半 ,MITの サザー ラン ドが 「スケ ッチパ ッ ド」 をCAD(Computer Aided Design)の 概念 として提案 して以来1),工 学の幅広 い分野 において多 くの技術者や 研究者 によつて CADに 関す る開発・研究 が行われるようになった。建築分野 でも 19

70年 代 に入 るころから,笹 田

[文 献 1)参 照]ら によつて ,建 築用 の

CADの 試作 が行

われ ,こ れに続 くかたちで ,企 業 や大学 における研究の 口火が切 られた。しか し当時 は

,

大型 コンピユー タを中心 とした CAD開 発 であ り,ま だ設計現場 で利用 されるには至 ら なか った。

1980年 代 になるとパ ソコンの価格性能 が向上 し ,多 く利用 されは じめ ,CADと しても次第に実用 として使用 されるようになった 。建築分野 でも製図道具 として ,あ る いはプレゼンテーシヨンの道具 と して認め られるようにな り,大 手の建設会社 の設計者 や設計事務所 でパー ソナルな コンピユー タ上で普及するようにな った 。これは ,図 面変 更 に対 しての省力化や ,精度 をは じめとする品質向上 などの面 で効果が出てきた ことに

よる。また一方研究の面でも,建 築モデルのデータ構造の研究や ,日 本の大手の建設会 社 を中心とした統合化システムの研究などが始まった2)。 しかしながら,建 築設計のCAD利 用 という点では限 られていて ,必 ず しもデザイナ ー

(設 計者)自

らがCADを 禾J用 するのでなく,CADオ ペ レー タが代わつて図形入力

を行 つている場合が多いことがしばしば指摘 されている3〉 。この背景には,CADが 製 図の道具として開発されて来たため,デ ザイナーの思考 (設 計思考)と CADの 操作や 機能 とが乖離 しているためだと考 えられる。つまり,デ ザイナーが発想 した建物イメー ジをCADで 表現する際 に,簡 単 に表現できるようになっているわけではなく,多 くの コマン ドの中か ら操作 を選択 し,ま た多 くのコマン ドを指示したリパ ラメータを入力 し たりし,煩 わしいステップを踏む操作が必要となっていることによる。またデザイナー が描いた複数の線分を建築の部材要素として認識 したとしても ,そ の編集操作では部材 要素 として対応ができない。また最近のCAD機 能が高度化し,ま た機能の数が増え過 ぎた反面 ,そ の操作 を覚えるのに多くの時間を掛ける必要があることも問題点として指 摘 されている。 これに対し,デ ザイナーの思考 を踏まえたCADの 研究 ,と りわけ建築設計の初期段 階の研究もはじまつた。特 に,山 口のデザイン生成フェーズにおける建築的思考支援シ

-3-


ステ ムに関しての研究 [文 誕 )参 照 ]や ,W.」 。 Mitchellに よる トップダウン・ シス テム の研究 [文 献 15)参 照],両 角の 3次元 による建築形態の入力に関する研究 [文 献23)参 照],M.Grossの 建築要素の関係付 けに関する研究 [文 025)参 照]な どが行われるよう になった。 一方 ,建築以外 の分野 の機械や電気系分野では ,む しろ先行 したかたちで研究が行わ れ ,中 でもCADの 知的に関 しての研究が 1980年 代後半か ら盛 んになった 。特 に精 密機械設計の分野 において ,鈴 木 のプロダク ト・モデルを中心 とした統合化 の研究 [文 献 19)参 照]や ,冨 山のメタモデル による研究 [文 献20)参 照],伊藤 の属性 モデ リング に関する研究 [文 献27)参 照],そ れにパ ラメ トリック図形 を組 み込んだ CADシ ステム の研究 [文 献8)参照]と 知的 CADが 注 目を浴びている。しか し現時点 でも ,こ れ らの 研究 は ,機 械分野の中の 自動車や造船 などの膨大な部品を扱 うのではな く,部 品数 も限 られ ,か つ標準的な対象物の範囲 となっている。 これに対 し,建 築 は一 品生産設計の性格 があ り,ま た多 くの部品数か ら構成 されるこ とか ら,設 計 の標準化 を指向する CADの 研究 とはな じみ難 い問題がある。そ こで ,建 築分野 でも独 自の建築 モデルの持 つ知的 CADの 研究が進 んでいる。位寄 らによる建築 知識 ベースの研究 [文 献6)参 照],渡 辺 らによるオブジェク ト指向 を考慮 した建築 モデ ルの研究 [文 献 17)参 照 ],山 田らの意味 モデルを考慮 した建築 モデルの研究 [文 献 13) 参照 ]な どがあげられ ,共 に延長上 には統合化 を目指 したシス テム開発 とな り,設 計対 象そ の ものをモデル化 す る研究 となっている。 また最近 では ,製 図 CADを 中心 とした改善 に関する研究も行われるようになった 。 M.Bonnは ,建 築設計における試行 錯誤 での置換作業に着 目し,デ ザイナーの作図 CAD の効率化 を狙 った研究 を行 ってい る [文 献 16)参 照]。 またDo Fo Stokerら は ,最 近の作図

CADの 機能が多すぎる反省か ら,本来利用 されている10%の 機能 で90%の 作業が行え ることを論 じ,RISCAD(Reduced lnstruction Set Computer Aided Design Systelll)な る

CADを 提案 して いる

[文 献

照]。 これ らは極めて現実的 な着眼点 で ,そ の成果が

")参 実用 に提供される可能性 の高 い研究 として期待 されている。

-4-


1-2 研究の 目的と方法

前節で述べ たように,現 在 の CADは 操作上の難点 によリデザイナーの道具 として利 用 されに くい という問題か ら,本 研究では ,デ ザイナーの思考 を考慮 した知的 CADの 開発・研究 を目的 としている 。 具体的 には ,デ ザイナーが建物 モデルを思考 し,CADを 操作する中で ,図 形要素群 を建築要素 または建築要素間 として関係付 けるルール (関 係設定)が 存在することを想 定 し,そ のルール をCADに 組 み入れることで設計変更 に際 して関連す る図形 の変更操 作 を自動調整する機能の実現 (知 的処理)す ることである。このことにより,デ ザイナ ーの設計思考 に合 わせた建築要素 の操作や建築要素間の操作 で 自動編集 を可能 にしよう というものである。 研究の方法 としては ,ま ずデザイナーの設計思考 や設計過程 とCAD機 能 を照合 して 分析 し,建 築設計 に求め られる CAD機 能 の検討 を行 う。次 に実際の設計事例 を使 つた

CAD操 作 の分析 を行 い ,一般的な建築形態の編集操作 のルールを抽出す る。 この形態操作 のルールの抽 出か ら,新 たな CAD機 能 としての仕様 をまとめ ,試 作 シ ステム を構築 する。次 に試イ 乍したシステムと汎用 CADの それぞれを用 いて ,日 常的な 設計変更事例 のシュミレーシ ョンを行 い ,作 業量や内容 の比較 によつて ,提 案 したルー ルの妥当性 ,試 作 したシステムの有効性 を評価す る。さらにルールの応用性 と拡張性 を まとめる。

-5-


1-3 研究の位置づ け と特色

これまで行われてきた知的 CADに 関す る研究 としては ,主 として次 の 2つ に分類す ることができる。 第 一 は ,在 来 の設計手順や建築形態言語 と呼 ばれるようなルール をCADに 知識 ベー スとして組み込 むことにより,代 案生成過程 (発 想 )の システ ム化 を意 図 した

MitcheH[文 022)参 照 ]や 渡辺 ,位 寄 らの研究

W。

」 .

[文 献 17),6)参 照 ]が ある。既存 の知

識形態に基づ き ,パ ラメー タの値 を変 えなが ら建築形態 (要 素 の組み合 わせや配置な ど) のバ リエー シ ョンを模索するシステムの形式 を取 つている。しか しこのシステムの場合

,

設計対象が システムに蓄積 された知識の内容で限定 される他 ,設 計手順 も標準化 されが ちといった制約がある。 第 二 は ,形 態に関するルールと図形情報 を対応付けておき ,設 計変更が起 きた際 に

,

関連 ルールの調整 と図面修正作業 を 自動化・ 省力化 しようとす る取 り組みかたである。 リレーショナル・ ネットワー クの知識 ベース を応用 したM.Grossの 研究 [文 献25)参 照] や ,形 態情報 の間 に成立 す る基本的な関係式 を用 いて ,寸 法調整作業や形態変更 を省 力 化 しようとす る青木 の研究 [文 献26)参 照]な どがある。これ らは標準的 な設計手順 を想 定せ ず ,設 計過程 で随時形態 に関するルールを組み込 むことを前提 にした新 しい知的 C

ADの 一つ と言 える。しか しこれ らも扱 える形態の構成が限定 されてお り,理論構築段 階 に留 まっている。

第 一の方法 は ,建築 の設計案がある程度固まり技術的検討 を加 える段階での活用が期 待 されている。 ところが建築 をモデル化する作業はも とより,多 種多様 な部位・部材 を 扱 う建築 モデルのデー タベース構築が難 しいこと,現 時点 においてメモ リー容量や処理 速度などのハー ドウェアの能力に限界があるなどが実用上の制約 となっている。また こ の方法は ,設 計刊 頃や建築要素の形状・組み合わせの標準化が前提 となる。したが い

,

個別的 な対応 を求め られるような建築 の設計や ,イ メージが曖味で試行錯誤が多い よう な初期段階の設計支援 には馴染み難 い 。 これに対 し第二の方法 は ,体 系的な建物 モデルを必要 としない身軽 なシステムが構築 でき ,初 期段階の流動的な設計案の検討 にも適応 できる利点 を持 っている。しか し,こ

-6-


れまでの研究は ,扱 える形態や操作が限定 されるなど ,理 論構築 の段階 に留 まっている。 本研究 は ,こ れまでの製図や作 図 CADを 使 って実施 された設計事例 の分析か ら,第 二の方法 による実際 の CADシ ス テムの試作 とその評価 を行 つている。つ まり,本 研究 も前 に述 べ たM.Borlnや D.Fo Stokerら と同様 に ,現 実的な着眼点 で実用 に提供 される成果 を目標 とした研究 でもある。 本研究の特色 としては ,開 発段 階か ら知識 を組み込 んだ CADシ ステムと違 い ,デ ザ イナーが独 自に知識 を組み込んで いき,そ の組み込 んだ知識 を利用 して知的処理 を行 わ せる CADシ ステムとなる。具体 的 には ,あ らか じめ柱や壁 といった建築要素か ら建物 モデル を構築するのではなく,デ ザイナー 自身がその設計過程 で順次知識 を与 えて建築 要素 を定義 し,そ の建築要素をベ ースと した編集操作 を自動化するものである。さ らに ここで組み込 まれた知識 は維持管理 され ,建 物 モデルの生成 に活用 されてい くことにな る。

-7-

,


1-4 論文の概要

本論文は ,7章 より構成 されている。第 1章 は序論 であ り,第 2章 以降の概要 につい て ,章 を追って述 べ る。 第 2章 「設計思考 とCADの 機能の分析」では ,建 築設計 の初期段階 におけるデザイ ナーの設計思考 モデルを提示 し,こ れまで 一般 に用 い られてきたCAD(在 来 CAD) の機能や操作 との関係 ,さ らには機能や操作 に内在する問題点 を指摘す る。本論文 では

,

デザイナーの思考 を大き く次 の 3段 階の作業 の繰 り返 し,視 覚 シミユレーションとでも 呼ぶ べ き試行錯誤 の連続 として捉 えている。すなわち ,建 築設計案の形態や機能 をイメ ージする ,こ れを図形 として視覚表現する ,描 かれた図形 を視察評価 しなが ら,代 案や 詳細 をイメー ジする ,の 3段 階である。また ,こ の段階でデザイナー は部屋 ,壁 ,柱 な どの建築 を構成する要素 (建 築要素)を 単位 に発想 してお り,そ れ らの組み合 わせや相 互関係 を決定 し,調 整する作業 として ,設 計 を展開 しているとい う仮説 を延べ ,CAD 操作 での思考 のフローを検討する。次 にCADを 第 2段 階の道 具 と位置 づ けるとともに 在来 CADの 機能や操作 を分析 し,次 の諸点 を明 らかにした 。在来 CADの モデル生成 機能 は ,大 き く作図機能 と編集機能に区分 されるが ,設 計思考が試行錯誤 の過程 ,す な わち描かれた図形の変更修正の形式で展開 してお り,編 集機能が CADの 性能 を考 える 上で重要である 。また在来 CADで は ,建 築要素の輪郭 を示 す線分や円弧などの図形要 素 に対 して ,複 数 の命令 を組み合 わせなが ら編集操作 を繰 り返すような仕組み を採 って お り,建 築要素 を単位に展開する設計思考 とCAD操 作が的確 に対応 して いない 。した がつて ,建 築要素 の組み合わせや相互関係 を任意 に設定 でき ,そ れに基 づいて操作 でき る機能が CADの 操4■l性 を向上 させるとの仮説 を示 した。 第 3章 「設計変更に伴 う関係設定の分析」では ,在 来 CADを 用 いて進め られた設計 事例 を取 り上 げ ,各 段階で作成 された図面 および ,CADデ ー タとして残 された図形編 集 の履歴 を資料 に ,設 計過程 における図形変更操作の規則性 を分析 し,知 的 CADと し ての機能 を明確 にした。これに基 づ き設計過程 で操作 の対象 となった要素の相互関係 の ルールを関係設定 とし,そ の特徴 と分類 を行 った 。次 に,操 作すべ き関係設定 として次 の 6つ を提案 した。すなわち ,形 状 に関 し部材形状ルール ,接 続 に関 しては接続関係ル

-8-

,


―ル ,位 置 に関 し相互位置関係ルール ,主 従位置関係 ルール ,お よび比例位置関係 ルー ル ,置換 に関 しては置換 関係ルールである。また ,事 例 の分析 を通 して ,い ずれかの建 築要素の設計変更が ,関 連する建築要素の位置や形状の変更調整 を引き起 こす こと,し たがって関係設定 は ,相 互に連関 してお り,ま た階層性も存在す ることなどを述べ る。 第 4章 「関係設定 に着 目した知的 CADの 操作機能」では ,設 計変更 に伴 う図形変更 の作業 を ,第 3章 で述べ た関係設定 を用 いた図形操作 として実現す るための技術的検討 を行 う。すなわち ,線 分 などの図形要素 の幾何 耐 に加 え ,関 係設定 に対応 る関係情報 を付加す ることにより,図 形操作 を自動化す る方法 を提案す る。関係設定 に対応す る情 報 としては ,次 の 6種 類 ,ユ ニオン関係情報 ,ジ ョイン ト関係情報 ,グ ルー プ関係情報

,

ハ イアラキ関係情報 ,プ ロポー シ ョナル関係情報 ,ク ローン関係情報 である 。次 に ,C

ADの コマン ドとして ,関 係情報 の設定機能 ,解 除機能 ,表 示機能 ,さ

らに建築要素単

位 の 自動編集機能 を設け ,こ れらの機能 の操作イメー ジを示す。 第 5章 「システムのデー タ構造 とアル ゴ リズム」では ,汎 用 CADに 新 たなプログラ ム を付加す ることにより,試 作 システムを実現す るものとし,必要 なデー タ構造 とアル ゴ リズムを示 した 。本研究では ,汎用 CADと して広 く利用 されて いるAutoCAD をベースとし,そ の特徴 である図形毎 に属性値 を保持する機能 を応用 して関係情報の処 理機能 を実現 した。具体的 には ,図 形固有 のハ ン ドル (図 形の固有番号 )を 属性値 とし て持 たせ ,そ れをポインターで制御するようなデー タ管理のプ ログラムを構築 した。ま た ,編 集操作 の対象 となる図形群 を自動的 に検索す る方法 ,図 形 に設定 された関係情報 を視覚的 に確認する方法 ,な らびに既 に図形 に設定 された関係情報 を解除する方法 など 必要な機能のアル ゴ リズムを示 した。

第 6章 「試作 システムの性能評価」では ,試 作 したシステム を使 って ,典型的な平面 図 と立面図の設計変更の作業例 を通 して ,そ の操作性 を評価す る。そこでは ,関 係情報 の設定方法 を述 べ ,そ の 自動編集結果 を示 す。この中では ,限 られたコマン ドで ,様 々 な設計変更事例 に対応 で き ,設 計変更の視覚 シミユレー ションが容易 に行 えることを示 す。また ,本 システムを用 いると,在 来 CADを 用 い るのに比 べ ,ほ ぼ 1/4以 下 の操 作手順 で同 じ作業 を行 えることを明 らかにする。

-9-

,


第 7章 「総括」では ,各 章 の結論の概要 を整理 し,今 後の CADの 活用方法 と今後 の 展開 について述べ る 。

-10-


1)1963年 にMITで 開発 された CADの 原型 システム 。 2)こ れまでの建物 モデルの統合化の研究 は ,下 平益作士によつて文献28)で まとめ ら れて いる。 この 中には建築 の意匠か ら設備 ,構 造設計 までの統合化 システム開発 が

T(大成建設)[文 献2)参 照 ],APLUS(東 京電 ジ 力)[文 献7)参照],IBDS(長 澤 ら)[文 献 18)参 照],COMPASS(フ タ)[文 献5)参照],DELTA(三 菱地所 )[文 献 12)∼ 14)参 照]が あげられて まとめてあ り,LORAN一

いる。またこのような統合化 と同時 に建物 モデルのデー タ構造の研究も同時 に行 わ れるようにな った 。

3)日 本建築学会 による 「建築 CAD利 用調査報告」 でその実態 を知 る ことができる 照].

[文 献

")参 参考文献

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-11-


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21)加 藤啓介 ,北 文夫 ,高 山正春 ;和 手俊明 ,作 間久義 ,武 田真 ,山 本健雄 ,本 田邦夫 :統合建築 CADシ ステム『 LORAN―

T』

の開発・実用化 ,第

テム利用技術 シンポジウム ,日 本建築学会 ,pp.97∼ 102,1990

-12-

13回 情報 シス


22)W.Jo Mitchell(1990), "The Logic of Architecture",

MIT Press, 1990 (ず

参 竃発蒙願気厖

訳 「建築 の 形態言語」 ,鹿 島 出版 ,1991)

23)両 角光男 ,"A Plimit市 e一 Instancing lnteractive Modeling System for Special Design Studies", The Electronic Design Studio, MIT Press, 1990

2)イ

ゴー ル ・ペ ラザ ,木 島安 史 ,両 角光男 :TRACING THE CHANGES IN ⅢE DESIGN DE

VELOPMEM BY CAD(CADに よる設計 上の意匠変 更 の追 跡 ),日 本建築学会計画系 論文報告集 ,No.412,1990.6 25)M.Gross, "Relational Modeling: A Base for Computer―

Assisted Design",

The

Electronic Design Studio, MIT Press,1990

26)青 木義次 :位 置 と寸法 に関す る基本方程式 とその建築形態情報 の生 産 。管理 へ の応 用 一建築 CADの ための基 礎 的研究そ の 5」 ,日 本建築学会計画系論文報告集 ,pp. 57-63,No.427,1991.9

27)伊 藤公俊 :属 性 モデ リン グパ ラダイムとそのガイ ドライ ン ,CAD標 準化 と STE

P,日 本設計工学会創立 25周 年記念 企画 ,1991.9 28)下 平不作 士 :建築生産 シス テ ム統合化 のためのプロダク トモデルの研究 と利用 の展 望 ,情 報処理学会論文誌 ,Vol.32,No.7,pp.839-848,1991 29)Douglas Fo Stoker and Demis BoJones:RISCAD:A Simplified Approach to CAD Systelll Design, ACADIA 92 Proceedings,pp.113-123,1992

30)日 本建築学会 ,情 報 システ ム技術委員会 ,CAD調 査研究小委員会 :第 4回 建築 C

AD利用調査報告 ,第 15回 情報 。システム・利用・技術 シンポジユウム論文集 付録 Ⅱ,1992.12

-13-

,


第2章 設計思考とCAD機 能の分析


)│ :ギ

1「

一 一, ・ ・I ■ ■■

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2-1 序

本章では ,設 計論 に関す る既存 の研究や文献 を引用 しなが ら,建築設計の初期段階 に おけるデザイナーの思考 モデル を提示 し,そ の特性 を考察す る。次 に ,設 計思考の特性 を踏 まえなが ら,こ れまで建築設計分野 で多 く用 い られてきた CAD(在 来 CAD)の 標準的機能や操作 を整理分析 し,設 計思考 を支援する道具 として位置づ けた場合に ,そ れ らの CADの 操作性の 問題点や ,不 足 している機能 を示 す。最後 に ,そ の結果 を踏 ま えて ,本研究 の 目標 とす る知 的 CADの 機能的枠組み を提示す る。 なお在来 CADの 標準 的機能は複数 の文献か ら抽出 した1)。

-17-


2-2 設計思考 とCAD操 作

設計作業の プロセスについては ,こ れ まで設計方法論 などで ,い くつ か分析 され まと め られてきた 。 ここでは ,こ れ らの研究 を踏 まえてデザイナーの設計思考 のプロセスを 考 え ,CAD操 作 との関係 を述べ る。

22-1…

設計プロセス・ モデル

建築の設計思考のプロセスは,一 般的に次の 3段 階モデルで表わされてきた2)。 この 3段 階モデルとは,建 築設計案の形態や機能を発想・思考する,こ れを図形として視覚 表現する,描 かれた図形を視察評価 しながら,代 案や詳細をイメージする,さ らに次の 新たな発想 。思考へと繰 り返し展開 していく試行錯誤のプロセスとなる。つまり ,

図2-1の ような作業の繰 り返しによるサイクルの流れが存在することになる。このサイク ルの繰り返しによって,デ ザイナーのイメージがより具体化 したり,一 方では,設 計変 更が行われたりしながら,次 第に建築の定義が詳細になってい くことになる。

知的作業

図2-1建築設計 の初期段階 にお ける試行錯誤 のサイクル この中で ,建物イメー ジを発想 ・表現する部分 と,評 価 。選択する部分が知的な作業 であるのに対 し,視 覚表現する部分が肉体作業 とな り,肉 体作業が知的作業 を妨げてい ることになる。すなわち ,デ ザイナー は瞬時に発想 ・思考 した建物 イメー ジを思 い描 く のに対 し,視 覚表現 には多 くの作業 と時間 を費や して いるか らである。 また ,こ の試行錯誤のサイクルに伴 い ,漠 然 とした概略の大枠か ら徐 々に詳細 な部分 へ と進むプロセスが一般 に存在す る。この過程が トップダウン思考 と呼 べ るところであ

る。つまり概略から徐々にディテールを決定していく過程であり,デ ザイナーの注目す る設計対象物そのものが変化していくことになる。具体的には,全 体の配置に建物の外

-18-


形 の大枠 を入れるところか らはじめ ,次 に建物 の部屋割 りや通 り心 により柱や壁 の位置 を明確 にして い き,さ らには ,開 口位置や建具配置 な どが考 え られる。

1設 計 プロセス

部分 Hl

部分 112 図か2

トップダウン思考 による設計 プロセ

また一方で は ,柱 や壁 ,開 口などの建築要素 (building element)を 組み立てて い く

,

ボ トムアップ思考 による設計 プロセスも一部存在 して いる。具体的 には ,デ ィテー ルか らの設計やプ レファプな どの設計 などが考 えられる。またデザイナー は表現作業そ のも ので ,線 分や 円弧 ,ポ リラインな どの図形要素(graphic entity)を 使 って描 き始 め ,徐 々にその表現 が進むにつ れて建築要素 として意味を持 つことにな り,ま た建築要素 と建 築要素間の相対位置などか ら,配 置 を決定 していることなどのボ トムア ップ思考 も存在 して いることになる。 以上 ,こ れ らの上下の思考では ,フ ィー ドバ ックが存在 し,ひ とつひとつの展開 で

,

前 に述べた 3段 階の試行錯誤 のサイクルが存在 して い るといえる。

2=2-2 要素単位の設計思考 J.Guadetを は じめ ,多 くの研究 において ,近 代建築 は建築要素の集合 として捉 えるこ

とが 多かった3)。 これは ,建 築 の機能の問題 にとどまるものではな く,設 計過程 におけ

るデザイナーの設計思考 と見ることが自然である。つ まり,デ ザイナーは,建 築の要素 を意識し,そ れを組み立てていくとも読み替えることができる。具体的には,建 物イメ ージを表現するにあたり,線 分などを描くと同時に,部 屋の認識や建築 の部材などを認

-19-


識 していることになる。このことは ,前 項 で示 したデザイナーは建物イメージを発想す る段階から,建 築 の要素 を組み立ててお り,そ れが視覚表現 された後も認識 され続 けて いる。 つ まり,設 計思考 そのものが建築の要素 を組み立てるとともに ,関 係付 け(relation― al additiOn)を 行 う思考が存在 していることにもなる 。

2.2-3 設計思考に対応したCAD操 作 2-2-1と 2-2-2項 で ,設 計思考における特色を述べた。これらの設計思考 と実作業の流

れの上でCADが どのように位置づけられかをまとめてみる。 まず3段 階の試行錯誤のサイクルでは,視 覚表現する段階 ,つ まり肉体作業にあたる ところがCAD操 イ 乍となる。 また建築の要素 を単位 としてCAD操 作を行う上でも,図 形要素単位の操作を組み合 わせて対応させる必要がある。つ まリデザイナーが思考した建築要素や建築要素間の作 図・編集操作では一度図形要素単位の作図・編集操作へと翻訳する必要がある

(図 2-3)。

―一一一―一 デザイナーの思考 ―

― 一

:

CAD機

― 在

― 能

CAD噸 < 思 考の展開 図2-3デ ザィナーの設言 思考と在来 CAD操 作 十 =I:会 ←

:雲

このことは,在 来 CADの 多くが描かれた図形に対 して建築要素としての認識がない ため ,建築要素の組み合わせや配置などの変更に際しても,図 形要素単位での作図・編 集操作を思考してコマン ドを選択・実行しなければならないことを示している。これは デザイナーの思考 とCADを 用いた作業内容が乖離していることの端的な例である。よ

,

- 20 -


って ,建 築要素 における認識や ,柱 と壁 との接続関係 ,つ まり要素間の関係の認識が C

ADに 組み込 まれて操作できることが要求 される 。

2-2-4 CAD操 作 の流 れの展開 次 に ,図 2-3で 示 した CAD操 作 を部分 の作業 の流 れを,デ ザイナーの思考 を交 えて展 開 を行 つてみ る。ここでは ,ま ずデザイナーが建物イメージを発想 。思考 し,そ れ をC AD上 でどの ように表現 。作図す るかを考 え ,そ の表現 を行 うためのコマン ドの操作 を 思考 力滋予われ る。次 に実際 ,コ マン ドを選択する行為 が発生 し,そ の コマン ドの処理 に 応 じて対応・ 操作 してい くことになる。さらに視覚表現 された図形 に対 しては視覚評価 された り,ま た描かれた中か ら最良のものが選択 された りして ,次 のス テップヘ移 る作 業 となる (図 2-4)。

CAD上 で描く 図形操f乍 を思考

コマンド操作手 順に沿って編床

表現された図形 を秤価 。選択

図2-4

CAD操 作のモデル

このようなCAD操 作の作業では,2つ の繰り返し

(ル ープ)が 存在する。ひとつは,

デザイナーがイメージした図形 を表現 しようとして利用するコマン ドの操作の繰 り返し と,も うひとつは,表 現 された図形を見てさらに新たなイメージを描 き,次 の表現へと

-21-


展開 してい く繰 り返 しとなる。 ここで前者は ,さ らに CAD操 作 のコマン ドの選択 とコマン ドの操作手順 に沿 つて 編 集 してい く作業に分 けられる。この場合 ,建 物 イメー ジを作図・編集 して描 くために多 くの コマン ド群 を選択実行すると同時に,そ の コマ ン ドの操作手順 に沿 ってパ ラメー タ を入 力・指示 して い くこととなる。またこの段階 は ,各 デザイナーの習熟度 に左右 され

CAD機 能の理解 の深 さによって利用する コマン ド内容が異な り,コ マン ド操作 の手順 も大 幅 に異なるものとなっている。このことは ,場 合 によって ,思考 した建物イメー ジ を多 くの操作手順 を踏 んで視覚表現することとな り,設 計思考 とは別 に CAD操 作その ものの思考 に多 くの時間が取 られることとなる 。

以上のことから,視 覚表現を行うCAD操 作 によるループを少なくすること,つ まり 建築設計の特性に基づいたマクロ・コマンド的に複数の操作をひとつにまとめることな どが,肉 体作業をより少なくし,本 来の知的作業への集中度を向上するようになること が分かる。

-22-

,


2-3 CAD機能 の分析

本節 では ,CADが 持 つ編集機能や作図機能な どを分析 し,前節 で述 べ た建築要素や 建築要素間の図形操作 について述 べ ,在来 CADの 問題点 をまとめてみる 。

2‐

3-l CAD機 能の分類 在来 CADの 操作 は,主 に作図操作 ,編 集操作 ,画 面操作 ,入 出力操作 ,各 種パ ラメ

ータ

(モ ー

ド)の 設定操作な どの 5つ に分 けられる。この中で CAD上 で建物形態 を生

成す る機能は ,作 図 と編集 の操作 による機能 の 2つ となる。

CAD機 能

r一

一 、

}高

﹁ ト

離 榊

︱ ー J

ヽ _________― ――――――――――――――¨ノ

図2-5。

CAD機 能 一覧

CADに よる図形作成 の初期段階では ,ま ず作図機能 を使 って線分 ,円 ,円 弧 ,ポ リ ラインなどの基本図形 を描 く。次 にある程度 モデルが描かれた段階では ,編 集機能 を使 つて図形 の形状 を削除 した り,変 更 してい く。つ まり,モ デルの作成段階 では ,図 形 の 追加 ,削 除 ,変 更 の 3つ の CAD操 作 で作業が進め られる。このことは ,作 図機能 と編 集機能 を別 な見方 で分類する と,作 図機能 は ,図 形の追加 のみの機能で ,編 集機能 は 図形 の追加 ,削 除 ,変 更 と 3つ の機能 を有す ることが分かる(図 か6)。

-23-

,


r く L

モデル作成

K埋腫 鸞嘗 :堡

図2-6 CADの モデル作成機能の分類 この編集機能 の中で ,既 存の図形 に変更 を加える機能 と追加する機能 は ,従 来 の手描 きによる表現作業 では一般にはできなかったものである。

232

建築要素の CAD操 作機能 の分類

CAD機 能 を使 って編集操作 を行 う場合 ,デ ザイナー は描 かれている図形要素や建築 要素 をどのように意 図 して編集するかを分類 してみる。つ まり図形要素だけを対象 とす る機能か ,建 築要素 の対象 としても機能す るものかについて分類する。

図形要素のみ を対象 とする コマン ド群 図形要素だけにのみ対応するコマン ド群 とな り,建 築要素 として認識 して操作 でき ないコマン ド群 となる。 ・ トリム ,延 長 ,分 割 ,フ ィ レッ トなど。

□日図□ ト リム

図か7

分割

延長

フ ィ レッ ト

図形要素単位 の編集 コマ ン ド

② 建築要素 の対象 としてもある程度機能する コマ ン ド群 図形要素だ けでな く,建 築要素 としても認識 でき編集操作 できるコマ ン ド群 となる。 しか し建築要素 を構成する図形要素群 を選択 指示する必要がある。 ・複写 ,鏡 面複写 ,反 転 ,移 動 ,.回 転 ,尺 度変更 ,ス トレッチなど。

-24-


国擢

囲□回ロロ 反転

移動

回転

尺度 変 更

ス トレッ チ

建築要 素単位 に対応す る編集 コマン ド

以上の分類 か ら,デ ザイナーは既 に描かれている図形群 に対 し,建 築要素 と認識 して も ,そ の編集操作では建築要素 を構成する図形要素群 を選択指示する必要がある。また

CAD上 の形態操作 を行 う場合 ,図 形要素 を対象 として編集すべ きか ,場合 によつては 建築要素 として編集すべ きかを意識 して コマン ドの選択 を行 う必要 も出て くる。

233

建築要素間の CAD編 集操作

在来 CADに よる建築要素単位 の形態操作 は ,柱 や壁の作図機能 ,壁 と柱の壁 との包 絡処理編集機能 など,い くつか実現 されて いるものがある。これ らは ,複 合図形 (合 成 図形 または登録図形 ,グ ルー プ図形 などと呼ばれる)な どを使用 した り,ま たは画層 に よる区別 を行 うことでプログラム的 に対処 したりして いる。 しか し,前 節で述べ た建築要素間での形態操作 については ,在 来 CADで は持ち合わ せていない機能 となる。 これについては ,杉 原 らがまとめた研究か ら引用することがで きる4)。 っ まり,通 り心上の柱や壁 には主従関係 (hierarchical relation)が あ り,通 り 心 を主とす る形態操作 では図2-9に み られるようなものが在来 CADと して未熟 な段階 に あるとl旨摘 している。

⇒ 幸褻 図2-9 通 り心 による形態操作

この場合 ,通 り心 と柱 や壁 ,開 口などの建築要素 とす る配置関係 がお互 いに関連 しな

-25-


が ら決定 されることで ,一般 の設計変更時 にはあ りがちな編集操作 とい える。

24建

築要素の編集操作 を行 う知的 CAD機 能

ここでは,デ ザイナーの設計思考を支援するCADシ ステムとして ,建 築要素や建築 要素間の形態操作を行うための概念の検討を行う。まずは,こ れまでの研究から,図 形 要素から建築要素として対応 されるためには,図 形要素間の関係付けを実現することが 重要であることを述べ,本 研究の 目的とする知的CADの モデルの概念 をまとめてみる。

2-4-1 関係付 け:二 よる形態操作 イ ゴールらによると在来 CADの 編集機能は有効に働 くものの ,一 方 ,建 築要素 など を考慮 した編集 に対 しては煩 わ しい操作 を余儀 な くされるものもあるとしていている5)。 例 えば ,建築要素の形状変更 では新 たに線分 を入力 し直 し,接 続 および位置関係変更 で は図形 の再入力が多いことを指摘 している。このことは ,デ ザイナーが思考する中で表 現 した図形が建築要素として認識 されたにも拘 らず ,図 面の編集 を行 う際には単 なる幾 何学的な情報のみを扱 う在来 CADの 編集機能によって対処 しなければならないか らだ と判断できる。 またM.Gross6)も ,図 形間 に関係付けを行 い ,さ らにその関係付 けに規則性 を組み込む ことで知的な処理 を実現する ことができることを示 して いる。この中では階段 の設計例 を取 り上げ,蹴 上げと踏み面 ,階 高の寸法値がある規則性 に基 づ き一意的に決定 される ことを示 し,建 築設計でのパ ラメ トリックな図形 を提示 している。

24-2

関係付けを使 った建築形態 モデルの概念

CAD上 に描かれた幾何学的な図形 は ,始点 ,終 点 の座標値 を持 つ線分や ,中 心座標 値 と半径 を持 つ 円な どの図形要素 によって描かれている 。ほとんどの在来 CADは ,こ れ らの基本図形 を使 って作図作業 を進め ,設 計図面を仕上げて い くことになる。しか し デザイナーはこれ らの図形要素群 を描 くと同時 に,図 形間に関係付 けのルールを無意識

- 26 -

,


に意図し,そ れを建築要素 として認識 し,認 識 した建築要素間で図形の編集操作 を行つ ている。このことは,作 図設計段階において,CAD上 の幾何学的な情報だけでなく

,

関係付けの意図したルールがデザイナー側の知識 として存在 していることになる。 ここでは,こ れまでデザイナー側だけの知識として存在 していた図形間の関係付けを

,

CAD上 に持たせることができるように検討 したもので,建 築形態モデルを図2-10に 示 す 2つ の情報 に分けて想定 した。

建築形態モデル 丁¬

E正三 警標再層稽報

図2-10 関係付 け情報 と幾何学情報 による建築形態 モデル ここで ,幾 何学情報 は CAD上 の編集対象 となる幾何学デー タで ,可 視部分 の情報 と なる。また関係付 け情報 は ,非 可視部分 とな り,図 形要素間 に関係付け を行 うこととな る。

2‐

4-3 建築要素 を扱 う知的 CADの 概念 以上の ことか ら,デ ザイナーの思考 に合 わせた知 的 CADの 概念 を在来 CADと 比較

して 図か Hに 提示す る。 つ まり,こ れまでデザイナーが思考 した建築要素や建築要素間での図形操作が ,在 来

CADで は図形要素単位 まで翻訳 して図形操作 を行 つていたの に対 し (図 中の在来 CA D操 作 の①∼⑤ ),こ の知 的 CADで は ,こ の翻訳 な しに直接対処 できるようになる (図 中の知的 CAD操 作 の① ∼⑤ )。 言 い替 えれば ,デ ザイナーは思考 した柱や壁 など の建築要素またはその接続関係 にある建築要素間で CAD操 作 カン予えることになる (図 中の知 的 CAD操 作 の③ ∼⑤ )。 具体的 には ,柱 や壁の移動操作 において ,線 分 などの 図形要素まで考慮す ることな く,柱 や壁そのものとして認識 して操作が行 えることにな る。 このことは ,CAD側 の図形要素間 に関係付 けを行 うことができることが重要 となる 。

- 27 -


デザイナーの思考

― 在

CAD機

デザイナーの思考

CAD内 部処理 < 思 考の展開 図2-Hデ ザィナーの思考と在来CADと 知的CADの 操作フロー

=:貪

:羹

-28-


2-5編

以上を箇条書きでまとめると以下のようになる。 まず,デ ザイナーの設計思考 とCAD操 作の分析からは,次 の 5項 目があげられる。 。 デザイナーの設計作業では,建 物イメージを発想 。思考 し,視 覚表現 し,評価 選 ②

択する繰り返しのモデルが仮定できる。

視覚表現 は,肉 体作業であり,CADに よつて支援 されるところである。

CAD操 作では,コ マン ドの選択 とその操作 に沿 つたループの肉体作業が存在する。 よって多 くのコマンドを選択 。指示する操作では知的作業の中断となる。

CAD機 能のうち,編集機能は作図機能より多 く利用され,設計思考の支援にも用 いられる。 デザイナーの認識する建築要素単位などの操作で行えるCAD機 能が必要となる。 建築設計の初期段階では,デ ザイナーが建物イメージを発想・思考しなが ら,建 築形 態の視覚表現 を行い,さ らにそれを評価 。選択などの繰り返 しとなる試行錯誤を行 つて いる。しかしこの視覚表現では,単 に図形 を描 くだけではなく,図 形要素間の関係付け の定義も行いながら対処 していることになる。つまり図形要素群 を建築要素として関係 付けて表現および定義してい くプロセスが生じていることになる。 一方 ,デ ザイナーがCADを 使 つて視覚表現を行う場合 ,多 くは編集機能 を使 った操 作がデザイン思考では優位に働 いていることになる。特に,こ れまでの手描 きには無か った,CADの 複写や移動などの機能ではいろいろな形態操作 の視覚シミユレーション ができるようになってきた。 しかしながら,在 来 CADの 編集機能そのものは,建 築要素 を対象としたものではな く,デ ザイナーが認識した建築要素を構成する図形要素群の選択指示が必要となってい る。これは,デ ザイナーが認識する建築要素としての図形の関係付けの機能が無いため である。

- 29 -


以上のことか ら,デ ザイナーの設計思考 に合 った CAD機 能 としては ,次 のような新 たな仕様が必要 となる。

デザイナーは独 自の発想 に従 って設計 を進めるため ,標準 的 な設計手順 を想定 しな いこと。

デザイナーの意図する建築要素の関係付けが任意 にできること。

関係付けられた建築要素で編集操作が行えること。

- 30 -


1)文 献 6),10),15),17)参 照 。 2)R.Do Wattsの 「円筒 モデル」やJOhn Zeeiselの 「スパ イラルプロセス」などは ,倉 J造

的思考 の概念的 プロセスモデルとして代表 される 。 日本でも ,日 本建築学会大会 の計画部門の協議会 テーマ 「設計方法 と設計組織 につ いて」 (1961.9)で 「設計方法論」の端緒 となった 。

3)こ れは ,文 献 16)の 中で述 べ られている。

4)現 時点で ,図 中の編集操作 は ,ス トレッチ機能 を使 うことでも編集 は可能であるが

,

ここで述 べて いる主従関係 は無視 された形態操作 になる。

5)文 献 13)参 照 。 6)文 献 12)参 照 。 参考文献

1)滝 沢健児 :図 面 と表現/建 築 ,彰 国社 ,1962 2)杉 原健児 ,桐 原武志 ,江 田敏男 ,水 間隆文 :建 築平面図 を中心 としたCAD技 術 に 関す る研究 (そ の 1),第 9回 電子計 31J用 シンポジウム ,日 本建築学会 ,1987,

pp.253-258

3)榎 本ハルフ ,大 井一裕 ,西 川 正文 ,山 脇陽治 :建 築平面図 を中心 とした CAD技 術 に関する研究

(そ の

2),第 9回 電子計算機利用 シンポジウム ,日 本建築学会 ,19

87, pp.259-264

4)長 島雅則 ,カ ロ藤啓介 ,青 木博之 ,平 田泰敏 :建 築平面図 を中心 とした CAD技 術 に 関す る研究 (そ の 3),第 9回 電子計算機利用 シンポジウム ,日 本建築学会 ,1987,

pp.265-270

5)日 本建築 センター編 ,建 築 CADガ イ ドブック,デルファイ研究所 ,1988.12 6)日 本図学会編

:CGハ ン ドブック,森北 出版 ,1989.5

7)吉 田研介 :現 代建築学 (設 計製図),鹿 島出版会 ,1989 8)長 倉威彦 ほか :現 代建築 の発想 一アール・ ヌーボォーか らCADま で 一,丸 善 ,1989 9)川 崎清 ,笹 田剛史 ,山 口重之 ,小 林 正美 ,吉 川員 ,佐 藤不二男 :設 計 とその表現

),鹿 島出版会 ,1990 10)千 田豊満 :CAD/CAMシ ステムー基礎か ら構築 まで ,理 工学社 ,1990。 (空 間の位相 と展開

1

11)MorOzumi Mitsuo, Yasuflulli Kij ima, and etoals. :''Primitive lnstancing

-31-


Interactive Modeling System for Spatial Design Studies", The Electronic

Design Studio(edo WoMitchell,et.als),MIT Press,1990,pp。 457-468 12)M.Gross, "Relational Modeling: A Base for Computer―

Assisted Design", The

Electronic Design Studio, MIT Press,1990

13)イ ゴール ・ペ ラザ ,木 島安史 ,両 角光 男 :TRACING THE CHANGES IN ШE DESIGN

DEVELOPMENT BY CAD(CADに よる設計 上の意 匠変更 の追 跡 ),日 本建築学会計画 系論文報告集 ,No.412,1990.6,

14)両 角光男 ,木 島安史 :3D一

CG時 代 の建築デザインプロセス ,AT,1990。

8,

pp.30-41

15)リ ー・ ケネディ著 ,山 口重之監訳 :建 築デザインのための CAD(製 図 。設計 。シ ステム入門),鹿 島出版会 ,1990.8

16)WoJoMitcheH(1990),"The Logic of Architecture", MIT Press,1990(長

倉威彦

訳 「建築 の形態言語」 ,鹿 島出版 ,1991) 1つ

brぬ 血 Zeid:CAD/CAM Theory ttd Practte,McGraw― mll,Inc"1991

18)図 形処理 中心か ら抜け出 し設計 を指向す る 3次 元 CAD,日 経 CG,1991.9 19)両 角光男 :建築 CAD新 時代 の幕開け

(米 国A/E/C

SYSTEM'92展 を訪ねて),AT,

1992.9

20)高 本孝頼 ,両 角光男 ,位 寄和久 :建築設計インテ リジェン トCADに 関する研究 ― 設計思考 に対応 した CAD機 能の考察 ― ,日 本建築学会中国九州大会 ,1993.3

- 32 -


第3章 設計変更に伴う関係設定の分析


審寡


3-1 序

前章において ,デ ザイナーが図面を描 きながら設計案を試行錯誤する過程では,図 形 要素 (線 分や円弧など)間 に建築要素の関係や建築要素間の関係など,さ まざまな図形 要素間に関係付けを思い浮かべながら図形操作 を行 つているとの仮説を提示 した。 本章では,設 計の変更の過程を記録 した複数の図面 を比較対照 しながら,デ ザイナー が作図の際に参照 している図形要素間の関係設定 (relational setting)を 抽出する。も とより関係設定の参照のされ方や,影 響力は一律ではなく,特 性差がある。そこで,そ れらの特性についても言及し,知 的CADに 関係設定操作機能 を組み込む際の 目安 とし て示す。 考察の事例 としては,熊 本市 。草葉町教会を取 り上げる。この建物は汎用 CADを 用 いて設計 されており,毎 日の作業終了時点の図面がすべてフアイルとして保管 され,設 計変更の過程が的確にトレースできること,ま たその汎用CADに は作図過程で使用 し たコマン ドもすべて記録 され,そ の数 を集計できることなど,操作の状況の客観的観察 が可能であると見なし,こ の設計事例 を用いた。教会建築で ,機 能的には必ずしも一般 的な建物 とは言えないが ,RCラ ーメン構造 3階 建ての建物であり,構 造方式 ,規 模と もに一般に見かける建築であり,そ こで扱われた内容も,部 屋割りや水回り部分の変更 が中心となるなど,デ ザイナーの個性が作業の過程 を左右しているとは考えにくい。し たがって ,本 章での考察は,図 面 を用いた設計過程の分析として,十分普遍性 を持 ち得 ると考える。

- 35 -


3-2 CADを 用 いた設計事例の分析

ここで は,一 般性 のあるRCラ ーメン造 3階 建 ての建物 の設計事例 (「 熊本 ・草葉町 教会」木島安史作 )を 取 り上げ ,そ の設計変更の記録 を追 いなが ら,変 更の 内容・方法 を整理 して普遍的な図面変更 を抽 出・分析 し,さ らに関係設定 がどのようなものか を提 示 してみる1)。 この場合の設計過程 において ,CAD力 輝J用 されたことで ,平 面図の作成途中段階が 時刻歴 でいくつも記録 され ,ま た各設計段階で使用 されたコマン ドの記録も行 われてい る2)。

3.2-1

θ Dブ ラ )わ 庁 朝 う t盤

設計変更 に伴 い時刻歴 で記録 された平面図に対 し,次 の 2つ の視点 に着 目して分析 。 考察 を行 う。

設計 プロセスでの分析 一般 に,設 計 の初期段階 と最終段階では ,対 象 とする作図・編集内容が異なる。そ こで ,い くつかの設計段階の作図変更の経緯 を分析する。また この中では ,建築要素 をと りあえず柱 ・壁 。開 口 。設備 などに分類 し,さ らに部材の位置決定 の基準 となる

通 り心 を加 えて相 互の関係性 を検討する。それ らの関係性 の中か ら普遍 的な規則性 (ル ール :rule)を 分析する。

作図・編集操作 の分析 設計変更に伴 って ,各 作図・編集 などの操作が どのような手順 で行 われたかを整理 し,図 面変更 と各操作手順 との関係 を分析す る 。

3=2-2

術 ホ 吉 月 鷺

上で述べた視点 による分析結果 を,以 下にまとめて示す。

- 36 -


(1)設 計プロセスでの分析 記録 された図面の中から4つ 抽出し,そ れぞれのステップ間の図形変更の内容に着目 して分析 した。ここでは,全 体構成に関わる変更から細部の変更へと対象が移 っている ことが理解でき,こ れも第 2章 でまとめた トップダウン思考による設計作業が読み取れ た。また各ステップにおいて ,デ ザイナーは図形を対象 としている操作ではなく,建 築 要素 を対象とする操作 を行おうとしている。なお,こ こでの建築要素としては,通 り心 柱 ,壁 ,開 口

(ド ア,窓

),タ イル

),設 備

(机 ,椅 子 ,祭壇 ,洗 面台等

(ハ

,

ッチ),

階段 となる。 ① ステップ 1 ここまでは,必要な室規模から,概 略的な間取りを決定 している。まず ,通 り心を 描 き,壁 を配置 しながら構造や配置などの大まかな空間の構成 を決定 している。

□□日□□□□□ lllll]□ l≦ 豊

]]に 1

≡≡

-口

図3-1 ステップ 1で の編集図

ステップ 2 ここでは ,壁 構造 か らラー メン構造 に変更 し,そ のための躯体作図・ 編集操作 を多 く行 つている 。特 に形態操作絡みでは ,柱 配置位置 として通 り心 を新 たに追加 し,通 り心交点上に柱 を配置 して いる。また ,細 かな動線 を配慮 し,開 口や壁 ,階 段 などの 空間 のつなが りに重点 を置 いて ,各 部屋 。通路 の具体的な配置 を決定 して いる 。

- 37 -


□ ] ﹂□] □]

!

._

l

l

図3-2 ステ ップ 2で の編集図 この 時点 で柱 が追加 されると同時 に構造壁 の壁厚 が薄 くなて い る。 CAD操 作 では

,

柱 の追 加作図 と壁厚 の変更編集 を行 うと同時 に ,包 絡処理 のための編集操作 を多 く行

劃 ぽ

っていること力り かる。

ステップ2

ステップ 1

3-3 設計変更事例 。 1 図3-3

ステップ 3 設計編集の対象が部屋単位 に移 り,家 具や設備 の配置 を考慮 して作図 し,細 かな納 まりを検討 している。特 に トイ レ周 りの設計変更 に対 し,間 仕切壁 の延長や開 口位置 の移動 などの形態操作 を行 つている。また通 り心の移動 とそれに伴 う柱位置の移動 も 行 つていた り,再 度通 り心の追加で柱の配置を行 つている (図 3-5参 照 )。 さらに各部 屋 を検討 した結果 ,開 口部 ,壁位置 に変更が起 きて いる (図 3-6参 照)。 この中では トイ レ開 口位置の壁 の移動や ,流 し設備 の変更 。移動 ,女 子 トイ レのパ イプスペー ス ,

の為 の壁作図な どの作図・編集 を行 つている 。

- 38 -


この場合 の CAD操 作 では ,通 り心が ,柱・壁作 図 ,階 段 の配置や トイ レ配置 ,ま た両 開 き開 口位置の作 図や移動編集 など ,他 の建築 要素 と関係付 け を持 つ ことが分 か る。

1

[

l

l

l

│[====E====]

[====]

図34

3-5 じ ヨ

l

l

ステップ 3で の編集図

設計変更事例 。 2

ステップ 3

ステップ2

図3-6 設計変 更事例 。 3

- 39 -


ステップ 4 ここでは最終仕上げでの図形操作 を行 つていて ,窓 枠 の詳細 な作図・編集 ,ま た タ イルの割付けなど検討 を行 った り,細 かな図面的な仕上げを行 つた りしている。また ステ ップ 1か ら4ま で トイ レの壁や開回の レイアウ トで試行錯誤 を繰 り返 している。 この中では ,接 続する壁が変更された り,付 属する開 回の変更が生 じて いる。さらに

壁の延長や厚 さ変更 な どの編集も行われて いる (図 3-8参 照)。

CADに よる図形操作

では ,タ イル割付けを検討 した結果 ,通 り心 をわずかなが らず らして壁 を移動 させ て いる 。

匡﹂ ] ¨ ぃ 一 珠 Ш 日一 図3-7 ステ ップ 4で の編集図

ステップ3

図3■

ステップ4

設計変更事例 。4

(2)作 図・編集操作 の分析 ここでは図形変更に伴 うCAD操 作 の処理内容 とステップ数 をカウン トすることで 建築要素に関する図形操作 を読み取ることができた (表 3-1参 照 )3)。

- 40 -

,


表3-1 作図・

の 分 析結果

1::墓

19

a

[作 図]

b

[複 写]

C

[移 動]

d

[延 長]

e

[拡 大]

f

[削 除]

g

[削 除]→ [作 図]

20

h

[作 図]→ [包 絡 ]

8 4 13

4 2 2

[削 除]→ [包 絡 ] [移 動]→ [包 絡 ]

k l

[移 動]→ [延 長 ]

1

[作 図]→ [部 分削除]

4

[回 転 ]→ [延 長 ]

1

n

[拡 大]→ [移 動 ]

1

0

[移 動]→ [部 分削除]

p

[削 除]→ [作 図]→ [包 絡 ]

q

[移 動]→ [削 除 ]→ [包 絡 ]

2 7

この中では ,包 絡処理 を目的とする図形操作 が多 く,し かも複数 コマン ドを使用 して 対処 していることが分か つた。さらに全体 の作図・編集操作 では ,新規 に作図 を行 う作 業 よ りも ,既 に描かれている図形 を変更する編集作業 が多いこともうかがわれた。

編集操作 の割合が多 い処理

単 に作図操作 したのが全体の 2割 強 で ,ほ とんどが編集操作 に費や している ことが うかがわれた。表欄 の うち a,g,h,

1,pが

作図操作 を行 つている。

包絡処理 を伴 つた処理

移動か ら包絡処理 ,削 除か ら包絡処理 ,ま たは削除か ら作図 して包絡処理 などの よ うに ,全作図・編集操作 の 3割 強 は包絡処理に費や されている。 ここで ,包 絡処理 は 部材 どうしの無駄 な境界線 の削除 などの編集 を指す。表欄では ,h, が対象 となる。

複数 の コマン ド操作 による処理

-41-

i,j,p,q


ひとつの変更処理 を行 う上でも一回の コマ ン ド操作 で終 わることはな く,多 くの場 合 ,複 数のコマン ド操作 の組み合わせ によって変更処理が行われている。表欄 では

,

gか らqま でが複数 コマ ン ド操作 となっている。

3-2-3 分析 による新 たな CAD機 能 の考察 以上の設計事例の CAD編 集操作 による分析か ら,新 たな CAD機 能 として考慮 すべ き点 についてい くつか提示 してみる。

(1)設 計変更 に伴 う包絡処理 の連続 コマン ド操作 前項 の作図・編集操作 の分析か ら,躯 体 を表す連続線分 を考慮 した包絡処理の一連の コマ ン ド操作 を,自 動処理 で対処 できるようにする必要がある。主に柱 と壁 ,そ れ に開 回の移動 に伴 う再包絡処理が必要 となる。

(2)通 り心 を使 った形態操作 通 り心の交点上に柱 を配置 した り,通 り心 を中心 に柱や壁 を移動 した り,形 態操作の 主な制御の線分 として扱 っている。

(3)設 計変更 に伴 う関連 の図形操作 設計プロセスの分析か ら,設 計変更に伴 う他の建築要素 の編集処理操作が生 じて いる ことが分かった 。これはステップ 3,4の 分析結果で取 り上げている。具体的には ,い ずれかの建築要素の設計 変更 に伴 い ,接続 された図形や関連する図形の寸法や位置関係 の変更が引き起 こされ ,図 形操作が新 たに生 じることになる。

(4)要 素間の拘束関係 による図形操作 前項の部材関係 の分析 を通 して ,部 材 どうしの関係性 には相互 に拘束 された関係性が 有る ことが分か った。つ まり壁 とその中 にある開 口部 の関係 は ,壁 な しには開 回は存在 し得 ないことである。また柱 と壁 の移動 において相対的 な位置関係などが存在 している ことも分かった 。また通 り心 と柱や壁 との関係が密接 にあることが分か った 。

-42-


(5)置 換によるシミユレーシヨン操作 図面の中に椅子の割付検討が行われていたが,こ のような一定の範囲の中にある単位 図形を割 り付けるデザインは建築設計の中でよく現れる。しかも一度ならず 2度 3度 と 少し形状 を換 えては置換 して全体 を調整 している。このように,部 分の寸法を微調整 し 全体へ配置 (置 換)す る繰 り返しのシミユレーションは,建築独特の設計手順となる。

,

-43-


3-3 関係設定 の分類 と特徴

本節 では ,前 節 の分析 を更 に進め ,一 般的で普遍的 な図形編集操作 を行 う関係設定の 分類 と特徴を抽 出 してい る。CAD上 で図形要素群 を建築要素 として編集操作 できるよ うにするには ,対 象 とす る建築要素 を明確 にす る必要 がある。また一方 では ,作 図変更 に伴 い ,建 築要素が どの ような編集結果 として期待 されて CAD操 作が行われるかも明 確化する必要がある。 以下 ,平 面図 を使 って建築形態操作 のい くつかの編集例 をあげ ,そ こに存在する関係 設定 の分類 を行 い ,そ の特徴もまとめている。

3-3-1 建築要素 と要素間の関係設定 の分類 関係設定は ,大 きくは次 の 2つ に分類す ることがで きる。

① 建築要素定義のルール

CAD上 での図形は ,図形要素 の集合体 であ り,そ の集合体が 1つ の建築要素 を表 す ことをい う。例えば ,4本 の線分 の集合が柱 であって ,平 行 な線分が壁 を表 す こと は ,平 面図では普遍的な ことと言 える。

② 建築要素間のルール 建築要素間 におけるさまざまな関係性 を①で定義 された図形要素群間 に適応 させ た もの を呼ぶ。例 えばある柱 と壁が つながっているとい う関係性 は ,CAD上 では 2つ の図形間を接続 した関係 として定義 した り,壁 の移動 とともに開 口も移動する位置関 係 として定義 したりする。

﹁︱ ︲ 図

素の定義 ルールと要素間のルール

-44-


3-3-2

日 辱修 R言費 郷ヒー

関係設定 には ,い くつかの特徴 があげられる。 ここでは ,代 表的な通 り心 と柱 ,壁 ,開 口,設 備 の建築要素 を使 った形態編集操作 の 図例 を 図3-10に あげ ,前項 の関係設定 の分類 と照 らし合 わせて特徴 を述べてみる。こ の図例 のA図 が編集前のもので ,こ の図中の通 り心だけを左に移動す ることで ,以 下のB ∼K図 のような複数 の編集後 の結果が予想 されるもの としてまとめて いる。

心動 動 り格 移 通柱 重

働 移  心動 り移 通柱 動 移 □ 開

[I]::ii働

図3-10ル ールの轍

事例

① ルールの強弱 各 ルールには ,編 集 の際 にどれが優先 して採用 されるかとい う強弱がある。例えば H図 は通 り心の移動に伴 い壁 と設備 が移動 した例 で ,C図 は柱 だけ移動 した例 となる。 この場合の編集例 に見 られるように ,壁 と設備 の関係性 は強 い ものの ,柱 と設備 の関

― 朽

,


係性 は弱 いといったことが考えられる。また要素定義 と要素間 のルール として考えた 場合 ,要 素の定義のルールが強 く,要 素間のルールが弱 いルールと言える。

② ルール間での関係性 ルールは単独 に存在するだけでな く,複 数のルールが同時 に存在 し,主 従関係や相 互関係 となって存在する。B図 以外の結果 では ,通 り心の移動 に伴 い ,柱 や壁 ,開 口

,

設備 とそれぞれの関係性 を保 ちなが ら移動 している。これ らには ,そ れぞれの要素間 のルールが密接 に関係付け されていることを示す。

③ ルールのデザイナー依存性 デザイナー は独 自の意図によって ,上 で述べ たルールの強弱 ,そ れにルール間の関 係性 を決定 して いる。つ まり,ル ール はデザイナー に強 く依存 してお り,そ の都度 に ルールの決定 を行 いながら設計 を進めている場合もある。例 えば ,壁 とそれに付随す る設備 との位置関係の強 さは ,デ ザイナーの意図によりD図の ように弱 い (一 緒 に移動 しない)ル ールにも ,H図 のように強 い (一 緒 に移動する)ル ールにもな りえる。この 他 の結果でもい く通 りものルールの強弱やルール間での関係性 の組み合 わせが推測 で き ,こ れらはデザイナーの依存性 によって決め られるもの となる。

-46-


3-4 CAD形態編集操作 による関係設定

本節 では ,前 に述べた設計事例 か ら代表的な形態操作 を取 り上げ ,推 測 できる形態操 作 の 一般的な関係設定について考察 した。具体的 には ,平 面図 の躯体編集 の代表的 な操 作例 をい くつか提示 し,そ の中で 一般 に考慮 できる編集結果 を考 え ,そ の結果が どのよ うな関係設定 に基 づいて図形 の編集が行 われるかについて分析 した。

341

柱一辺 の移動の編集例

図3-11(a)に 示すように通 り心の交点位置に存在する柱 の一辺 を移動す る際 ,考 慮 で きる編集 はさまざま考えられる。例えば ,(b)の 例 では単純 な移動 コマン ドによる線分 の移動 だけとな り,(c)で は ,移 動する線分上の点 を頂点 として柱形状 を変形 させてい る。 (d)で は ,柱 を構成 する要素 を保持 しなが ら編集 した例 となってい る。また (e)で は ,柱 そのものの形状 を保持 して移動 したもので ,さ らにその柱 に取 り付 く壁 の位置 を 保持 した編集 となっていて ,(f)で は,同 じく柱 の形状 を保持 し,か つ壁 との直行配置 関係 をそのままにしてい る。 ここでデザイナーが意図する編集操作 としては ,(d)や (e),(f)が あげられる。 これ らの 図形編集 では ,既 に描かれた柱の形状 と壁 の形状 を意識 した操作 となっている。つ まり(d)で は ,柱 そのものの形状 を変更 したもので ,(e),(f)で は柱 と壁 の形状 を意図 して編集操作 を行 つたことになる。つ まり前提 としては柱や壁 といつた部材 の建築要素 を認識するルールが存在す ることになる。また (e)や (f)の 例 では ,柱 のみの図形 の移 動編集が行われた後 ,壁 との包絡処理 を自動的 に行 うルールが存在する ことになる 。 こ の包絡処理 を幾何学的な処理 で考 えると,柱 と壁 との線分 の交点 を保持す るもので ,互 い に接続 した点 を保持す るルール として想定することもできる 。

これ らをまとめると以下の ようになる。 ① 図形要素群 を建築要素 として関係付 けているルール ② 建築要素間での接続点 を保持 してい るルール

- 47 -


︱ ﹁ ︱

a く

柱 の一 辺移動

c <

丁 頁点 千 多動

(e)

柱 の移饉 カ

(b

カ 線 分 の平 行移 ロ

(d

柱 の一辺拡張

(f)

カ 柱の移百

図3-11 柱 一辺の移動の編集例

4-2 柱 。壁 と開 口がある編集例

3‐

図3-12(a)の 例 は ,2つ の柱間 に挟 まれた壁上の中央に開口があ り,前 項 と同様 に右 柱 の 一辺 を移動 させた例 となる。 この場合 ,考 慮 できる編集結果 は(b)∼ (e)な どがあげ られる。(b)で は ,柱 形状 そのもの を変更 した場合で ,次 の (c)は 柱形状 を保持 したもの で ,結 果的には柱 だけの移動 となるが ,同 時に壁 を引き連れて延長 される。また(d)は

,

(c)の 編集 に加 えて柱間中央 に開 口が位置す ることを保持 して編集 されたもので ,(e)は

右柱 との一定間隔 にある開 口を引き連れて編集 されたものとなっている。この中で想定 できる関係設定 は ,前 項 に加 えて (d)や (e)で の開 口位置の関係 があげられる。さらに詳 しく分析する と,(d)で は等分割 による配置 に関 してのルールを保持 し,(e)で は等間隔

-48-

,


による位置関係 のルール を保持 したことになる。

以上 まとめると,前項以外 に次 のようなルールが読 み取 れる。 ① 建築要素間で相対的な位置関係が存在するルール ② 建築要素間で位置関係が比例関係 で存在するルール

(a)柱 の 移動 例

(b)柱 の 移

― │力

(c)右 柱 のみ の移 動

(d)柱 間中央位置 の 開□ の 保 持

(e)右 柱 面か らの 開□位 置 を保持

図3-12 柱 。壁および開 口を含 む移動

- 49 -


3‐

4-3柱・ 壁 と通 り心移動の編集例 図3-13(a)の 通 り心を中心 とした移動編集も建築設計の上では頻繁 に出て くる形態操

作 となる。ここで は ,(b)の ように単純 に通 り心のみ を移動 した り,(c)の ように通 り 心に柱だけを引き連れて移動 した りする場 合もある。 さらには (d)の ように通 り心 に壁 だけを引き連れて移動 した り,(e)の ように通 り心に引き連れ られて柱 と壁も同時 に移

り心 の 移 動

(b)通

り心 単 独 の 移 動

(d)壁

のみ の 同 時 移 動

百 一

(a)通

(e)柱 ・ 壁 の 同 時 移 動 図3-13 通り心と柱 。壁の移動

- 50 -


動 した りする場合もある .こ の場合 ,一 般 には通 し心 に関係付 けられた柱や壁 の同時移 動 となる (e)の 編集が多 く考 えられる。この例では ,前 述のルールに加 え ,通 り心 と柱 や壁 などの躯体 との関係 に,親 子関係 または主従関係 によるルールを保持 して いること が想定できる。

前 に述べ た以外 では ,次 のようなルールが読 み取れる。 ① 通 り心 を含 む建築要素間 に主従関係 で定義 されるルール

3-44

関係設定 の種別

以上 ,関 係設定 の種別 をまとめ ると次 の ようになる。

① ② ③ ④ ⑤

図形要素群 を建築要素 と して関係付 けているルール 建築要素間での接続点 を保持 しているルール 通 り心 を含 む建築要素間 に主従関係 で定義 されるルール 建築要素間で相対的な位置関係が存在す るルール 建築要素間で位置関係が比例関係で存在するルール

次節では ,こ れ らの関係設定 を CAD操 作 の立場 に立 ってよ り明確 にす る。

-51-


3-5 形態操作の関係設定

ここでは ,前 節 で取 り上げた 6種類 の代表的なルールを,CAD操 作 の機能 の観点か ら,そ の 内容 を明確 にし定義付けを行 う。

351

部材形状ルール

柱や壁や開 口などの部材 ,つ ま り建築要素の形態は 自由に設定 される。すなわち ,任 意に描 いた図形要素群 を一つの建築要素として認識 し,そ れを構成する図形要素群 は一 体的 に操作 されるものと意図する。つ まり図形要素群 によって構成 される部材 は ,建 築 要素 として編集できる。 このルールが前 に述べた要素定義ルール となる。

6ヽい 田¨

図3-14 部材形状 ルール

- 52 -


3巧-2 接続関係ルール

建築要素の輪郭 を表す図形要素は ,設 計変更 に伴 う操作変更 に対 して ,当 初定 めた接 続状態 を保持するよう指定できるものと意 図する。例 えば ,柱 と壁が接続 している場合 輪郭 を表す線分は包絡処理 によって相互に接続 しているが ,設 計変更 により柱 ,壁 の一 方が動 いた後 にも輪郭線 の接続状態は保持 される。

編 集 前の接続点 編 集 後 の接続点

図3-15 接続関係ルール

3巧-3 相互位置関係ルール

建築要素間の形態操作 にあたっては ,柱 群や壁群 ,開 口群 として常 に相対的 に移動 し たい場合がある。つ まり離れた柱群 を同時 に移動対象 とするとき ,こ れ らにはグルー プ 的な関係付け されたルールが存在することになる (図 3-16参 照 )。

33-4

1立 i置躍 旧ゆ薇ルール

建築要素群 は当初定めた位置関係 を保持するよう指定 できるもの とし,こ の場合 ,建

- 53 -

,


″ 、 嬢 ギ聟 lttF里 堡

図3-16 相互位置関係ルール

築要素の輪郭線 に対応す る図形要素 は ,相 対的位置関係 を保持 するもの と意図する。例 えば ,柱 や壁 は通 り心上 に位置す るものとし,通 り心が移動 した場合は柱 ,壁 も同時に 移動す る。また柱間にまたがる連続 した壁群 を心 ずれと して ,同 時 に移動 した りする (図 3-17参 照 )。

通 り,い の移動

図3-17 主従位置関係ルール

-54-


3-5-5 比例位置関係ルール 建築要素の配置では ,柱 間の 中央 に位置 して配置 した り,1/3の 位置で配置 した り す るルールで ,柱 間 を変更 しても この中央や 1/3の 位置関係 を保持す るルールとなる。

図3-18 比例位置関係ルール

3-5-6 置換関係ルール ここでの置換関係 は ,形 態操作 そのものを対象 としたもので はな く,前 述の設計事例 の分析 の考察か らまとめたもの となる。つ まり設計対象 とす る建築要素 は ,デ ザイナー の設計段階の試行錯誤 により形状 を変 え ,シ ミユレー ションされてい くことになる。 こ こで は ,異 なる建築要素 のシミユ レーションのための置換 を配慮 したルールとなる。図 3-6と 図3-8の 事例 に見 られる玄 関開 回の形状の変更 ,図 3-8の 事例 に見 られる トイ レ手洗

い流 しの設備 の変更のように ,こ のような置換操作 は設計変更時多 く見受け られる編集 操作 となる。 図3-19に は ,簡 単なファサー ドの編集例のイメージで置換関係ルール を説明 して いる。

- 55 -


轟圏爾圏 :

:Li i目 目 │

l_1≡

:姜

:11_:

國 ⇒ 國 ⇒圃 図3-19 置換関係 ルール

- 56 -


3-6編

本章では,ま ずCADを 使 つた設計事例 をもとに関係設定の分析 とその特徴 を述べた。 これ らを箇条書 きにすると,以 下のようになる。 ① ルールには強弱が存在する。 ② ルールは複数存在 し,ま たルール間でも相互に関係性がある。 ③ ルールはデザイナーの依存 によつて任意に決定 される。 次 に設計変更に伴うルールを抽出し,関 係設定 として以下の 6個 にまとめた。 ① 部材形状ルール ② 接続関係ルール ③ 相互位置1関係ルール ④ 主従位置関係ルール ⑤ 比例位置関係ル∵ル ⑥ 置換関係ルール 以上 ,こ こであげたルールをCADシ ステムに構築する前提 として ,次 のことがまと められる。 メ)を 汎用 CADの 操作過程で図形 と ① 設計者が形態の決定に使用する揮発的なルーノ 対応付けて記録管理する。 ② 設計変更に際しては ,形 態の一部あるいはルールの一部を変更すると,CADが 関 連するルールや図形要素を検索 し,そ れらを自動調整・変更する。

…57 -


註 これは ,RC造 3階 建 て ,延 べ床面積 564ぷ の ラー メン構造 の箱型 の形状 となっ なっている 。この設計過程 の記録 として ,32枚 のフロッピー ・ディスクに合計

55枚 の図面が保管 されている。使用 ソフ トは ,AutoCADを

1

使 っていて ,設

計変更 ごとのコマン ド記録 も取れて いる 。 またこの記録 は,文 献3)の イ ゴール らの研究 によっても分析 されたが ,こ の中で は ,設 計過程 における設計変更 とそれに対応 した CADに よる図面変更作業 を考察 しながら,建 築設計用 の CADに 求 め られる機能 を考察 している。 2)

本研究では ,平 面図 を前提図面 としている。この理由は ,一 般 に ,建 築設計の初期 段階で形態操作 を行 うと考えられる図形 または図面としては ,平 面図が中心的 に位 置づ けられて いる。この図面内では ,柱 ,壁 ,開 口や設備 などの建築要素が明確 に 他 の図面 に比 べて認識 できるか らである。またル・ コルビュジェも述 べている 「形 態 の完成 は ,建 築家評価 の試金石 となる 。形態の完成 は ,精 神 の純粋 な創造行為 な のである。その場合 ,芸術家 としての建築家 にとつて重要 なことは平面 (プ ラン) に立ち戻 ることである。」 (1923年 )の ように ,平 面 (プ ラン)を 表 した平面図が設 計段階で ,最 も参照 される図面 といえる 。 よつて平面図は,建築設計 で最もプライオ リテ ィが高 い図面 といえる 。ここで も 対象 とする全ての編集例 で平面図 を使 って分析 を行 つている。 その他 ,建 築設計 の初期段階で デザイナーが作成する図面では ,配 置図や立面図

,

断面図などがあるが ,配 置図や立面図 に関 して形態 を編集操作するそのものの編集 普遍的なものが見つか り難 い点があ る。断面図 に関 しては ,一 部平面図 と同様 な形 態操作が含 まれてい るといえる。 3)

各図面間での変更内容 を読 み取 り,そ の間で用 い られたコマン ドの操作 ステップを カウン トしている。ただ し,包 絡処理 などの操作 では ,複 数操作 をひとまとめにし てカウン トしている。また編集操作 のステップのカウン トにおいて ,履 歴がすべて とれている状態 にはなかった。 この場合 ,で きるだけ少ない操作 ,も しくは少 ない 作業時間 と考 えられる編集操作 を考 えて対処 して いる。

4)

揮発的なルールとは ,設 計者が形態 をイメー ジし図形 を定義す る際 ,局 所的 に利す るルールを意味 し,一 般 に設計過程 において間欠的 にしか参照 されない 。

- 58 -


参考文献

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),鹿 島出版会 ,1989

(設 計製図

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系論文報告集 ,No。 412,1990.6

4)瀬 川洋一郎 ,高 本孝頼 ,木 島安史 ,両 角光男 ,真 野恵 司 :建築設計 CAD開 発 のた めの設計事例分析 ,日 本建築学会関東支部 1990年 度研究報告集 (計 画系),pp.149

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その 1-CAD開 発のための建

築設計 ルールの分析 ― ,日 本建築学会九州支部 1990年 度研究報告集 (計 画系),pp. 25∼ 28,1991

6)真野恵司 ,高 本孝頼 ,両 角光男 ,木 島安史 ,前 田慎二 ,岡 本憲文 ,矢 野雅 :建 築設 計インテ リジェン トCADシ ステムに関す る研究

その l

CAD開 発 のための建

築設計ルー ルの分析 ,日 本建築学会 1991年 度大会学術講演梗概集 [A],pp.1333∼ 13 34,1991

- 59 -


第4章 関係設定に着目した知的CADの 操作機能


:撚

fI藤

i難


4-1序

前章では ,図 面変更 にともなう図形操作 の事例 を通 して ,6種 類の関係設定 を提示 し た。本章 では ,こ のルールに従 って建築要素や建築要素間で形態操作が できるCAD機 能 の実現 のために,図 形要素間の 関係付 けの情報処理 を行 つている 。具体的には ,関 係 設定 に対応 した図形要素の関係付 けとして関係情報 (relational information)1)を 用 い

,

6種 類 の関係設定 に対応 したユニ オン関係情報 ,ジ ョイン ト関係情報 ,グ ループ関係情 報 ,ハ イアラキ関係情報 ,プ ロポー ショナル関係情報 ,ク ロー ン関係情報 を提示 してい る。また ,こ こでは各関係情報に関する命令 (colnlland)群 やその操作 イメージなどの仕様 も提示 してい る。

CADの コマ ン ドとして ,ク ローン関係以外の関係情報 では設定機能 ,解 除機能 ,表 示機能 ,お よび建築要素単位 の 自動編集機能 を提示 し,ク ロー ン関係情報 による置換操 作 に関 しても ,設 定 ,解 除 ,複 写 ,置 換 ,表 示機能 を提示 して いる。また関係情報 の特 徴 と して ,強 弱関係 ,ジ ョイン ト関係の評価 の違い ,ク ローン機能 について述べている。 さらに ,こ の 関係情報 を使 って形態操作するCADシ ステムの機能 の外部仕様 )を まと め ,操作手順 などを示 している。 これ までの在来 CADで の関係付けの機能 は ,複 合図形化も しくはグルー プ化 ,シ ン ボル化などがある3)。 しか し,こ れらの機能 では ,前 章 で述べ たようなルールに沿 った 編集操作 を行 うには不十分なもの となっている。 ここで述 べ るCADの 機能 としては ,ル ールに沿 つて建築要素や建築要素間の関係付 けができ ,ま たその関係付けに応 じた編集操作ができると同時 に ,関 係情報 を用 いたこ とによる建築形態の成 り立ちや定 義 を組み込 むことができ ,し かもそれ を記録管理 す る ことも可能 となる。

- 63 -


42

関係情報 による機能構築

前章 で説明 した図形操作 に関す る関係設定 をCAD上 に実現するため には ,図 形その ものの幾何学情報 の他 に属性情報 を使 って関係付けを行 う必要 がある。本研究では ,こ の関係付けとして用 いる属性情報 を関係情報 と呼 び ,各 関係設定 に対応 したそれぞれの 関係情報 を用 いて展開している。 本節 では,ま ず関係設定 に対応 したそれぞれの関係情報 を示 し,そ の 内容 を明確 にす る。次 にCAD上 の機能 として必要 となるコマン ドを提示 し,機 能 の概念 と,操 作 に関 す る要件 をまとめている 。

4=2-1

関係動

の岬

前章 で取 り上げた関係設定 は ,デ ザイナーが意図 して図形要素間に定義するルー ルで あ り,ま たその形態 を操作す る上でのルールともなる。ここで述 べ る関係情報 は ,図 形 内部 で図形間の関係付けを行 うための情報 であ り,関 係設定 を実現するための内部 的な 情報 となる。つ まり,関 係設定がデザイナーとい う 「人」 を通 して読み取 つた規則性 と な り,関 係情報 は 「CAD」 を通 して設定 されるべ き情報 となる。 よつて ,関 係設定 を実現するためには ,属 性情報 となる関係情報 をそれぞれ対応 させ て構築する必要がある。A4-1に ,こ の関係設定に応 じた関係情報 を提示 す る。

A4-1関 係設定と関係情報 :関係設定

:関 係情報

部材形状ルール

ユニ オン関係

接続関係 ルール

ジョイン ト関係

相 互位置関係ルール

グル ー プ関係

主従位置関係ルール

ハ イア ラキ関係

比例位置関係ルール

プロポー シ ョナル関係

i

置換関係 ルール

-64-

クロー ン関俯

)


ここで ,ユ ニオン関係 は ,複 数 の図形要素群 を 1つ の建築要 素 として関係付け を行 う 情報 。ジ ョイン ト関係 は ,包 絡処理 に拘 るような図形 上の接続 に関する情報で ,相 互の 線分 の端点 どうしの接続 を保持す る情報 。グルー プ関係 は ,部 材 の相互の位置関係 を保 持す る情報 。ハ イアラキ関係は ,部 材間 に主従関係 を持たせて位置関係 を保 つ情報 。プ ロポーショナル関係は ,一 線分 の 図形要素 に対応 して比例位置 を保持 させる情報 。クロ ーン関係 は ,そ の他の関係情報 を継承 して複写・置換 を支援す るための情報 。 これ らの関係情報 の 内部的なデー タ構造 については ,次 章 で詳細 に述 べ る。

4=2-2 関係情報 の参照 の階層性 前章 で ,関 係設定 の特徴 としてルールの強弱 とルール間の関係性 を述 べ た。つ ま り各 ルールには強弱があることと,複 数 のルールが同時 に存在す る ことである 。ここでの関 係情報 を使 って関係設定 を実現す る上で ,こ の 2つ の特徴 を配慮 をして いる。特 にルー ルの強弱 として ,関 係情報 の相互 間で表4-2の ような階層関係 を持たせた。 表4-2関 係情報 の参照の階層性

ここで ,ユ ニオン関係の編集操作では ,同 時 にジョイン ト関係 およびプロポー シ ョナ ル関係 の処理が 自動で行 なわれ ,ハ イアラキ関係の編集操作では ,同 時 にジヨイン ト関 係 お よびユニ オン関係 ,プ ロポー ショナル関係 の処理 が 自動 で行 なわれる。またグルー プ関係 とハ イアラキ関係 は同等 と見 なしている。

4-2-3 関係情報 を使 ったコマン ド群 リス ト まず関係情報 を使 って作成 した コマン ド群 をA43に 示す。 この中には ,関 係情報 を 図形 に設定す る機能 ,関 係付け られたもの を解除する機能 ,関 係付け られた図形群 を表 示す る機能 として各 コマ ン ド群 を提示 して いる。また ,図 形要素間 に設定 されたことで 部材 として編集する変形機能 (移 動 ,回 転 ,ス ケール)と 部材数変更機能 (削 除 ,複 写),

- 65 -


それにジョイン ト関連 の コマン ド群 を提示 している。さらに置換編集 を対象 とす るクロ ーン関係 に関す る コマン ド群 を示 している。 表牛3

CAD操 作 コマン ド機能 一覧

:解 除 1111■ F111:表 示 設 定│ エ ン ン表示 ル を 設定 =オ 解除 │ =オ ゛ ゛ ゛ と│じ :た ケルプ設定 クルプ解除 │ク ll― プ 表示 yア ラ Mア ラ キ設定 ノ イア升解除 │ ′ キ表示 ゜ ゜― ― フロ ホ ショ ナル プ utt° 泊劫 :

軸 線 朧

:::::│││:│:│:│:│││

設定 解除 ゛ ゛ ショ イント イント 受仄ヒ ショ 言 解除 た 一 を一

鱗一 器 一

鰯一 恕一 朧

エ オン 移動

゛ 域 ン肖J除 シ ョイント荘 多動 一 直線化 殉 トプ 肖り 除 ′ ツアラ キ肖J除 平行イヒ 劫 液 写 ゛ クルプ複写 屑ア ラ 鞭 写

グルプ移動 ノ イアラ キ移動 =オン回転 グルプ回転 タ イアラ キ回転 ・ス 域 ン ケー Jbl ゛ クルプ・カー JII ・ス ノ イアラキ ケー Jll

:奎

424

変形操作i11::部 材数変更1::ガ ヨ イ ン ト 瀾腱

置換を対象 │と :し iた 機能

題 蜃 卜

:

クローン言 ヒ 史天 ー クロ ン 角翠膨 賓

: : :′

ヨ LJ

ーン クロ 複写 │ ー クロン 置換 │

ーン削除 クロ ーン表示 クロ

ジョィン ト評価の形状変更

接続関係 にあるジョイン ト関係情報 は ,移 動 (皿 OVe)コ マン ドによつて 図4-1の ような 2 つの形状変更 を起 こす。ただ し,柱 と壁 にはユニオン関係が既 に設定 されているものと す る。この移動 コマ ン ドは ,前 項 の関係情報 の強弱 によつて ,ユ ニオン関係 ,グ ルー プ 関係 ,ハ イアラキ関係 においても影響 を及ぼす。内部処理 では ,そ れぞれの関係情報 を 検索 しながら,ジ ョイン ト関係情報 を評価 (evaluatiOn)5)す ることを行 っている。 評価 は ,移 動 した線分 の端点 の位置 に接続関係 にある線分 を変形す る端点評価 (end―

- 66 -


point evaluation)と

,は じめに移動 した線分と接続関係にある線分との角度を変えずに

交点 を保持するように変形する交点評価(intersection evaluation)の 2つ を持つ。これ らの選択は,オ プションとして切 り替えるようにしている。

a。

b。

端点評価の編集結果

編集前 (矢 印方向へ千 釘力)

c.交

点評価の編集結果

図← 1 ジョイン ト評価の形態変更

(1)端 点評価 端点評価 とは ,あ らか じめハ イアラキ ,グ ルー プ ,ユ ニォ ン関係下の図形群 を編集後

,

その図形群 と接続関係 にある線分 を自動編集する評価 となる 。図←2の 例 に示 す ようにユ ニオン関係 にある柱 だけを移動 (同 図 .a)す ると ,ジ ョイン ト関係 にある線分 をユニ オン関係の柱の保持 された端点 に 自動編集 (同 図 .b,c)す る。

a.柱

(ユ ニオン関係)移 動

b.下 方壁の線分延長

c。

右壁の線分延長

図■2 ジ ョィン ト関係の端点評価 による形状変更

- 67 -


(2)交 点評価 交点評価 とは,あ らかじめハイアラキ,グ ループ,ユ ニオン関係下の図形群 を編集後

,

その図形群とジョイント関係にある線分 どうしの角度 を変えずに自動編集する評価 とな る。図■3の 例に示すようにユニオン関係にある柱だけを移動

(同 図

.a)す ると,ジ ョ

イント関係にある線分どうしの角度 は変えずに交点を求めて自動的に形状を編集

(同 図.

b,c)す る。

日 ・ a.柱

(ユ ニオン関係)移 動

b.下

方壁の線分延長

図4-3 ジョイン ト関係 の端点評価 による形状変更

4=2-5 クローン関係の特徴 置換編集機能 として ,ク ローン関係情報 を使 って ,設 定 ,解 除 ,複 写 ,置 換 などの機 能 を用意 して いる。これ までの在来 CADで も ,図 形 を複写す る機能や ,一 括 して 図形 群 を置換する機能 などは実現 されている。しか し,こ こでは ,在来 CADの 機能 との違 いを明確 にす るためのクローン関係情報 を使 つた機能 のうち主な特徴 を述 べている。

(1)ク ローン名 にを意識 しない操作 在来 CADで は ,一 般 に図形間 に関係付 けを行 う上で名称の設定が必要 となる。 この 名称 を設定す ることで ,他 との図形群 の区別が可能 とな り,名 称 によって一括置換 など も可能 となる。しか し,図 形操作 上 ,名 称 のキー入力 は思考 を中断す るものとなってい る。また ,表 示 されてい る範囲での図形群 の置換操作 では ,名 称が無 くても処理が可能 となる 。 この ことか ら,ク ロー ン関係 を設定する際 ,名 称 となるクローン名 を意識することな く処理 できるようにする。また ,編集操作 (複 写や置換 )で も ,ク ロー ン名 を入力す る

-68-


ことな く,ク ローン関係 の図形群 を指示するだけの操作 とする。

(2)ク ローン部材 の形状変更 い くつかの在来 CADで は ,同 種 の関係付 けられた図形群 に対 して ,一 部 の図形群 の 部分的な形状変更ができない ようになっている。 ここでは ,試 行錯誤の作業 の自由度 を高 めるとともに ,デ ザインが繰 り返 されて い く 段階 で ,多 様性 が生 まれるようにするため ,複 写配置 されたクローン部材 の形状 を変更 した り,挿 入す る際 の基点位置 を自由に変更できるようにする。

(3)ク ローン部材 の置換 在来 CADで は ,置換対象 となる図形群 は同種 であることの制限があ り,部 分置換 が できず ,す べ て一括置換 を行 うようになっている。 ここでは ,同 種 のクロー ン部材 であれば ,ど の部材 を置換元 としても他の部材 と置換 す ることがで きるようにする。

(4)関 係情報 の継承 クローン部材 を複写 した り置換 した りする場合 ,ク ロー ン名 とそのクローン部材 が持 つ関係情報 (ユ ニオン関係情報 ,ジ ョイン ト関係情報 ,グ ルー プ関係情報 ,ハ イアラキ 関係情報)も 継承するものとし,こ れを生かしたクローン部材 の編集操作 を利用す る こ とができる。

42-6

関係情報の処理 に関す る要件

前章で述 べ たルールの特徴 を生か し,関 係情報 にも以下のい くつかの特徴 を持たせ た 。

① 任意形状 に対処

CAD上 の 図形 の関係付 けは ,柱 や壁 ,開 口と言 つた具体的 な名称 の意味付 けを行 うのでな く,任 意の形状 に対 してデザイナーが部材 を意識 しないで関係付 けを行 える こととしてい る。つ ま り,建 築要素の柱 ,梁 ,壁 な どの標準的 な部材 をメニ ユーに用 意 したシステムではな く,関 係情報 によつて任意形状 に対応できるように したシステ

-169 -


ムとなる。 このことは ,建 築設計 の初期段階 における柱・壁 とも区別がつかない建築部材 を持 つ任意形状の建物 に対 して対処できるようにした CADと なる。

再定義による関係付 け 建築設計の初期段階 では ,試 行錯誤の連続であることか ら,関 係付けを行 つたとし ても ,ま たす ぐに別な図形間 に関係付 けを行 うことがある。この対応 と して ,関 係情

報の設定 は自由なタイ ミングでできることとし,再 度別 な図形 とも関係付けができる ようにしている。 ただ し,一 部 の関係情報 においては内部のデー タ構造が壊れることで ,操 作上注意 が必要 な場合がある6)。

ルールの強弱 の実現 関係設定 の強弱 に対応 させて ,関 係情報 の階層関係 を持 つ ように した。具体的には

各関係情報が設定 された図形群の 自動検索で ,他 の関係情報も含めて図形検索 を行 う かどうかによつて ,ル ールの強弱 を考慮 している。

関係情報 の表示機能 関係情報 を設定すると,非 可視デー タであるために ,そ の関係が明確 にならないも のがある 。ここでは ,い くつかの関係情報 において ,情 報 が明確 になるように関係 し た図形群 をハ イライ ト表示 (既定値以外 の色 または線種 で一時的に表示 )さ せる機能 を設けている。

この他 の要件 として ,ハ イアラキ関係情報 の設定 において矛盾 を生 じる恐れに対す る 処理が必要がある。つ まり,主 従関係がルー プをしている場合 などがこれにあたる。現 時点 では ,ユ ーザは自由にハ イアラキ関係情報 を設定 できるが ,特 別 なチェ ックや エ ラ ー処理は行 つていない。 しか しプログラムの上では ,検 索時点 で無限ループに入るのを 防 ぐことを行 つている。つ まり,プ ログラム上無限ループに入 らず ,矛 盾 の関係の まま 編集操作がで きるようになっている。

- 70 -

,


4-3

関係情報の関連操作

本節では,関 係情報 を用いたコマン ド機能の操作 を説明する。 まずは関係情報の設定 ,解 除ならびに表示の各機能の操作について説明し,次 に建築 要素 として図形操作する編集 コマン ド群 を説明する。

4‐

3-1 関係情報の設定機能 関係情報 を幾何情報 に付加す る (具 体的 には図形要素 にポインタを設定する)機 能 で

,

各関係情報 に対応 した設定操作 になって いる。また関係情報 は再設定 も可能 となってい る。詳細 には以下の ような設定操作 となる。

(1)ユ ニオン設定 ユニオン関係情報 を設定す る。具体的 な操作 としては ,コ マン ドを入力後 ,部 材 とし て認識する図形要素群 をウィン ドウなどで指示する (図 -4)。

柱の構成要素 となる図形要素群をウィンドウで囲んで設定 図44

ユニォン設定

(2)ジ ョイ ン ト設定 接続関係 ルールに沿 つたジョイン ト関係情報 を設定する。コマン ド起動後 の図形指示

-71-


の操作手順はユニオン設定 と同様 である。ただし,線 分 どうしの端点が同 じ位置である ことを内部でチェ ックして いて ,端 点が離れた線分は ,I旨示 してもジョイン ト関係 は設 定 されない。

(3)ハ イアラキ設定

主従位置関係ルールに沿つたハイアラキ関係情報を設定する。操作としては,コ マン ド起動後,ま ず主となる 1つ の部材を指示 し,従 となる 1つ 以上の図形要素または建築 要素を指示する

(図 4-5)。

① 予 め壁 と両端 の住 をユニ オ ン関係 として 定義 してお く

④ 親 とな るIEり 心 を 先 に指示

○ ―○ 次に子となる部材 (柱 、壁)の 指示 図4-5 ハ イアラキ設定

(4)グ ルー プ設定 相 互位置関係 ルールの設定 で ,操 作 の手順 はユニ オン設定 と同様 であ るが ,実 際 には ユニ オン関係 と して指示 された建築要 素 を意識 して指示 す ることとなる (図4-6)。

「 ¬ 図4-6 グルー プ設定

(5)プ ロポーショナル設定

- 72 -

,


比 例配置ルールに対応 した関係情報 を設定する機能 となる。コマン ド指示後 ,プ ロポ ー シ ョナル関係 を設定す る線分 を指示 し,あ らか じめ設定 して いたユニ オン関係 の図形 を指示する。さらにプロポーショナル関係 を設定す る線分の端点の近 い方か らの線分比 率 を入力す る (図 牛 7)。

/③ ヱ身

比例配置する部材 を指示

比例 関 係 の 比率 を指 示

図4-7 プロポー シ ョナル設定

4‐

3-2

関係 情 報 の解 除 機 能

すでに設定 されている関係情報 を解除す る機能 となる。操作 としては ,各 関係情報 に 対応する コマ ン ド入力後 ,ウ ィン ドウで部材 を指示す る。ここで ,ユ ニオン解除 ,ハ イ ゛ イント 解除の 5つ 共に同じ操作 と アラキ解除 ,グ ループ解 除 ,プ ロポーショナル解除 ,シ ョ なる。 ここで解除機能 を別 々 に分けたことは ,一 部の関係情報 は保持 できるように対処 した ことによる 。つ まリハ イアラキ関係だけを解除する とき ,他 の関係情報 は解除 されない ままとなる。

4-3-3 関係情報 の表示機能 設定 した関係情報 を確認す る機能 。コマン ドを入力 し,任 意 の図形要素の 1つ を指示

- 73 -


す ると,ユ ニオンまたはハ イアラキ関係 れる

,

グルー プ関係 にある部材カシヽイライ ト表示 さ

(図 4-8:破 線表示 )。

_「

Ч

‐ ‐

‐ ‐ ‐

│‐

1

│―

関係表示機能

4‐

34部 材の アフィン変換編集機能 関係情報 に対応 した部材単位 の編集機能 を設けた。なお関係情報 の階層性 で述べ たよ

うにユニオンおよびハイアラキ ,グ ループ関係 にある編集時 にはジョイン ト関係 の処理 が同時に行われ ,ユ ニオン関係情報の場合 にはユニオン表示も行われる。

(1)部 材移動機能 (ユ ニオン移動 ,ハ イアラキ移動 ,グ ルー プ)

部材 を構成す る図形要素の 1つ を指示す ることで ,ユ ニオン関係 またはハ イアラキ関 係 にある図形要素群 を検索 し移動 の対象 とする。ここでは ,部 材単独 の移動 とハイアラ キ関係 を意識 した移動 を区別す るためにユニオン移動 とハ イアラキ移動 とに分けた。 図← 9の 関係付 けを想定 した場合の ユニオン移動 とハ イアラキ移動の違 い を図4-10に 示 し た。ここで壁 Aの ユニオン移動 は壁 Aの みの移動 とな り,壁 Aの ハ イア ラキ移動では子 となる設備の位置関係 を保持 した ままで移動することになる 。また通 り心 Aの ハ イアラ キ移動 においては柱 と壁 A,そ れに壁 Aに 関係 した設備が移動する。これ ら2つ の機能 にお いては,常 にジョイン ト関係 による部材間の包絡処理が 自動 で行 われる (図 4-11)。

- 74 -


/\

/\

壁B

墨豊A

ヽ 設備

通 り心 A

二ふ 県

図←9 ハ イアラキ関係情報 の設定図

阿 ゆ

通 り心 Aの ハ イア ラキ移動

壁 Aの ハ イアラキ移動 図 4-10

部材移動機能

- 75 -


ジヨイン ト関係を考慮した処理

図←H

ジヨイント関係を考慮しない処理

ジヨイン ト関係 の処理

(2)部 材回転機能 (ユ ニ ォン回転 ,ハ イアラキ回転)

部材 の移動機能 と同 じようにユニオンおよびハ イア ラキ関係 の部材 の 回転編集 を行 う。 ここでも図4-9の 関係付 けを使 った編集操作例 を示 している (図 4-12)。

lLユ ニ 」 オ ン 回 転

A のハ イアラキ回転

通 り心 Aの ハ イア ラキ回転

図4-12 部材回転機能

(3)部 材 スケール機能 (ユ ニオン・ スケール ,ハ イア ラキ・スケール)

これも部材 の移動 ,回 転機能 と同じようにユニオンおよびハ イアラキ関係 の部材 を対 象 とし,拡 大 ,縮小のスケール編集 を行 う。同じく図4-9の 関係付けを使 った編集例 を 図← 13に 示す。

- 76 -


壁 Aの ユニ オン・ スケール

通 り心 Aの ハイアラキ ,ス ケ ール

壁 Aの ハ イア ラキ ・ スケール

図← 13 部材 スケール機能

(4)部 材複写機能 (ユ ニ オン複写 ,ハ イアラキ複写 ,グ ルー プ複写)

幾何情報 と共 に関係情報も複写 される。システム内部 では複写 される図形要素 の 中の 全ポインタの再構築 を行 う。ここでは ,部 材単位 の複写 とハ イアラキ関係の複写 と し てユニオン複写 とハ イア ラキ複写 を設けた。

4‐

3-5 プロポーショナル関係情報 の評価 プロポーシ ョナル関係情報は ,ジ ョイン ト関係 によつて評価 された部材の中 に存在す

る場合のみ評価 の対象 となる。このことにより,他 の 関係情報 による編集機能 を使 つて 形態操作 を行 うと,プ ロポー ショナル関係が組み込 まれている線分 を検索 し,プ ロポー ショナル関係 の形態操作 を自動的 に評価す る (図 4-14)。

- 77 -


柱移動

図←14 プロポー ショナル関係の評価

4■

3-6 締 鵬 部材 の ユニ オ ン関係 またはハ イアラキ ,グ ルー プ関係 の 図形 を削除す る機能 で ,ユ ニ

オン削除 とハ イア ラキ ,グ ル ー プ削除の 3つ の機能 を持 つ 。

4‐

3-7 締

1夏警 ヌ

部材 のユニ オン関係 またはハ イアラキ ,グ ループ関係 の図形 を複写す る機能で オン複写 とハ イアラキ ,グ ループ複写の 3つ の機能 を持 つ 。

- 78 -

,


4‐ 3毬

ジョィン ト関係情報の形態操作

ジ ヨイン ト関係情報 を用 いた編集機能 として ,以 下 の 3つ を用意 した。 これらは ,建 築形態の操作 を行 う上では ,基 本的な編集機能 といえるが ,こ れまでの

CADで は実現 されていなかったことによ り,あ えて ここで取 り上げて いる。 (1)ジ ヨイン ト移動 ジ ヨイン ト移動は ,接 続関係 にある端点 を移動す る機能 となるが ,端 点評価 と交点評 価 の 2つ のオプションを持 っている (図■ 15)。

0移 動点を指示

― ノ

1:′ 線分の端点近くを指示

`fff] │

ジ ョイ ン ト移動編 集前

交 点 E7価 に よ る結 果

端 点 評 価 に よ る結 果

図4-15 ジョイン ト移動

(2)平 行機能 す でに描か れている線分 を基準 にして ,他 の線分 を平行 にす る機能 となる。操作 は

,

まず基準 となる線分 を指示 し,次 に平行 にする線分 を指示す る。図4-16に 示すように

,

指示 した端点 に近 い方 を基準 にして平行化 を行 う。つ まり,右 図の場合 ,左 端 に近 い方 を指示 したことで ,左端 を基点 に して 自動平行化 を行 う。

0線 分の蟷点近 くを指示

O平 行にする基本線分を指 示

図4-16 平行機能の編集例

- 79 -


(3)一 直線機能 これは ,躯 体形状 などの面合わせに考慮 したもので ,ジ ョイン ト関係 にある形状 を一 直線 に修正する機能 となる 。図牛 17に 示す ような左端 の凸部分 にあわせて ,右 側 2つ の 凸部分 の出つ張 りを一直線 に形状変更する機能 となる 。また この場合 ,交 点評価 と端点 評価 では ,異 なる結果 となる。

0-直 線にする線分を指示

0塾 準となる線分を指示

② 一直線にする線分を指示

交 点評 価 に よ る結果

図4-17

-直 線機能の編集例

- 80 -

←一

喘 点評 価 によ る結果


439

クローン関係の形態操作

ク ローン機能 を有する部材 を利用す るには ,ク ロー ンの設定 ,解 除 ,複 写 ,置 換 など のコマン ド機能が必要 となる。ここでは ,パ ターン割 り付 けを例 に取 り,各 機能 および その操作 について説明を行 う。

(1)ク ロー ン関係の設定 図形群 を建築要素 として関係付 けを行 い ,そ の中の代表部材 (main member)を ク ロー ン部材 として選択 し,そ の基点 (base point)位 置 を指示することで 自動 的 にクロー ン関 係が設定 される。またクローン関係 を定義す る前 に ,そ の他 の 関係情報 を設定する必要 がある。例 えば ,図 4-18の 図形群 に対 しジ ョイン ト関係情報 とユニオン関係情報 とを設 定し

(こ

の場合 ,ユ ニオン関係情報 はすべ ての図形 に対 して設定 して い る),こ れ らの

部材 のうちの一点鎖線 を代表部材 とし,ク ローン部材 として設定 して い る。このように 設定 した後 に ,図■ 19の ように図形編集 を行 っても ,各 関係情報 による形態操作 の編集 が可能 となる。つ まりこの場合 ,実 線 の移動だけで図形編集シ ミユレー ションが容易 に 行 える。ただ し,代 表部材 の図形編集はで きない。

(2)ク ローン関係の複写 ク ローン関係が定義 されると,そ の部材 を任意の位置 に複写することになる。操作 と しては ,ク ロー ン関係 の代表部材 を指示 し,基 点位置 をもって複写 を行 うことになる (図 4-20)。

ここでの クローン関係の複写 は ,上 で述 べてきた クローン関係 における関

係情報 の継承 を行 つてお り,複 写 した新 たな図形群 の 中でも同様な関係 でのハ ン ドル を 持 つ ポインタ情報 を生成 していることになる。

(3)ク ローン関係 の置換 図形編集 した 1つ の クローン関係 を,同 種 の他のクローン関係 と置 き換 える機能 であ る。操作 は ,置換元 となるクロー ン関係 にある図形 を指示 し,次 に置換 す るクロー ン関 係の代表部材 を指示するだけである。この場合 ,ユ ー ザは ,基 点及びク ローン名 を意識 する ことな く,置換操作 が行えるようになっている。 (図 21)。

-81-


` ミ ル‐ ・ ジョイ ン ト関係情報 一 代表部材 ● クローン制御点 (基 点位置 )

E]4-18 クローン関係の定義

矢 印の線分移│力 のみを行な つた場合 の編集

図4-19 クロー ン関係 の編集例

左 図 の クロ ー ン部 材 を選 択 し、基点 を指示す る ことで 複写 を行 な う。

図■ 20 クローン関係 の複写

- 82 -


左下隅 の クロ ー ン部 材 が 置換元 矢印で 指示 された 図形 が置換 された クロ ー ン部材

図4-21 クローン関係 の置換

(4)ク ローン関係 の表示 多 くの同種のクローン部材 を定義す ると,ど の部材 が設計者が関係付 けたクロー ン関 係か ,ま たどの部材 とどの部材が同 じ種類 どうしのクローン関係 かが分か らな くなる恐 れがある。このため ,ク ロー ン関係 の表示機能 を設けた。この表示機能 には 2段 階 あ り

1段 階では 1つ の クロー ン関係 を構成す る図形 ,つ まり部材 として関係付け られた図形 群 を一時的 に破線表示 し,代 表部材 の端点か ら基点位置 までの矢印 を表示す る。 2段 階 目では ,同 種 の クローン部材 の クロー ン関係群 を捜 し出 し,そ の数 を表示 し,全部 の ク ロー ン図形 を破線表示す る (図4-22)。

-83-

,


こ こ では ,形 状 の 異 な るも の は 別な ク ロ ー ン名 を持 つ も の とす る 。

第 一 段 階 :左 上 図 が 1つ の ク ロ ー ン部 材 を 構 成 す る 関 係 情 報 の 表 示

第 二 段 階 :同 じ ク ロ ー ン名 の 部 材 を 破 線 表 示

図■ 22 クローン関係の表示

-84-


1)関 係情報 とは ,図 形間 に関係付けを行 うための情 報 を指 し,属性 による情報 となる。

2)外 部仕様 とは ,ソ フ トウェア用語で ,入 出カインタフェー ス部分の設計仕様 となる 。 ここでは ,画 面操作や操作手順な どを記載 してい る。

3)複 合図形 は ,ソ フ トウェア・ パ ッケージAutoCAD上

の機能で ,図 形群 を 1つ

の図形 として指示操作 でき ,一 度 に同 じ複合図形群 を別 な複合図形 と置 き換 えるこ ともできる。ただ し名前 の管理や挿入基点の指示 など煩 わ しい操作も残 っている 。 グルー プ化は ,ソ フ トウェアのGDS(こ こでは ,ユ ニオン図形 と呼ぶ)や 皿iniCAD上 の機能にあ り,復 数 の図形要素 をまとめて編集操作 の対象 としたもので ,階層構造 を持 つことができ,階 層構造 に関係 な く図形指示 での移動 ,回 転 ,縮 尺 などのアフ ィン変換編集 が可能 となっている。miniCADの 場合 ,名 前 の管理 は必要 ない。 シンボル化は ,在 来 の殆 どの CADソ フ トで実現 されていて ,既存 図形群 を登録 し 呼 び出して何度も利用する機能 となる。 いずれも内部処理 では ,図 形 間 に関係付けを行 つて編集操作 をするが ,CAD画 面 上ではその関係付 けは見えな い。つ まり関係付けは属性情報 として持 たせてい るこ とになる。

4)ク ローン 自体の語彙の定義 は ,遺伝学用語 としては 「遺伝 的均 一性」であ り,生 化 学用語 としては 「一個 の細胞 より由来する細胞集 団」 としている。ここで後者 の場 合 ,さ らに加 えて 「クローンの特性 を受け継 ぎなが ら増殖 す る際 ,そ の形質 を変化 させる可能性 をもったものである。」 ともしている (文 献 建築要素を一個 のクローン細胞

(こ

1)参照)。

同一形状 の

こではこの要素 をクロー ン関係 と呼ぶ)に 見 立

て ,CAD上 でこの細胞 を増殖 (複 写)さ せた り,変 化 (変 形 )さ せた り,さ らに は変化 した細胞 で仲間の細胞 を置換 させた りしなが ら,細 胞集団 を完成

(レ

イア ウ

ト)さ せて行 くような機能 をクローン機能 と名付 けた。すなわち,建 築要素の輪郭 線 に対応する基本図形の集 ま りを細胞 と考 え ,他 の関係情報 を使 った編集機能が利 用 できるよう,基本 図形 に埋 め込 まれた関係情報 を保持 した状態で複写や置換 を繰 り返す機能 となる。

5)こ こでの評価 (evaluatiOn)と は ,コ マン ド実行時 に直接関係する図形群 を編集対象 として 自動作図 した後 ,ジ ョイン ト関係 にある図形群 を自動的 に検索 し編集す るこ とを指す。

6)つ まり,関 係情報設定 において ,既存 の関係情報 を無視 して再設定するため ,操作

-85-

,


上 関係情報 を壊す恐 れがある。

参考文献

1)井 村伸 正 ,大 島泰郎 ,尉 │1正 則 ,永 井克孝 ,三 浦謹 一郎 ,水 島昭二 編 :生 化学 ハ ン ドブック ,丸 善株式会社 ,1984.1

2)Markus Bonn:MODELING ARCHITECTURAL FORMS ⅢROUGH ttPLACEMENT OPERAT10NS, ACADIA 87 Proceedings,1989,pp.103-130 3) Williatt Jo Mitchell, The topdown System and lts Use in Teaching, ACADIA 87 Proceedings,1989,pp。

103-130

4)高 本孝頼 ,両 角光男 ,木 島安 史 ,前 田慎 二 ,真 野恵司 ,岡 本憲文 ,矢 野雅 :建築設 計 インテ リジェン トCADシ ステ ムに関す る研 究

その 2-POCPを

加 えた シス

テ ム開発 とその評価 について一 ,日 本建築学会研究報告 九州支部 (計 画系 ),第 32

3,pp.29∼ 32,1991 号。 5)TAKAMOTO Takayori,MOROZllMI Mituo,KIJIm Yasufumi,SEGAWA Youichiro:"A STUDY ON THE DEVELOPMENT OF OB」 ECT ORIENTED INTELLIGENT CADD SYSTEM,THE FOURTH INTERNAT10NAL CONFERENCE ON COMPUTING IN CIVIL AND BUILDING ENGINEERING(Extended Abstracts),p37,1991

6)矢 野雅 ,高 本孝頼 ,両 角光男 ,木 島安史 ,前 田慎 二 ,真 野 恵 司 ,岡 本憲文 :建 築設 計 インテ リジェン トCADシ ス テムに関す る研究

その 2

ォブジ ェク ト制御点

(OCP)を 考慮 したシス テ ムの構築 とその評価 ,日 本建 築学会 1991年 度大会学術 講演梗概集 [A],pp。 1335∼ 1336,1991

7)高 本孝頼 ,両 角光男 ,木 島安 史 ,真 野恵司 ,矢 野 雅 :建築 設計 インテ リジェ ン トC

ADシ ス テ ムに関す る研究

その 3

オブジェク ト制御点

(OCP)を 考慮 したシ

ス テムの機能 とその拡張 ,日 本建築学会 1991年 度大会学術 講演梗概集 [A],pp.1337

-1338,1991

8)高 本孝頼 ・ 両角光男 研究

(ク

。位寄和 久他 :建 築設計支援 インテ リジェン トCADに 関す る

ロー ン機能 の開発 ),第

14回 情報

。システム・ 利用技術 シンポジウム論

文集 ,1991,pp。 169∼ 174

9)矢 野雅 ,高 本孝頼 ,両 角光男 ,豊崎実 ,山 内博行 :建 築設 計支援 イ ンテ リジェ ン ト

CADシ ス テ ム開発 に関す る研究 一部材配置機能 と形状編 集機能 の 開発 ― ,日 本建 築学会研究報告九州支部 (計 画系 ),第 33号・3,pp.5∼ 8,1992

- 86 -


10)

高本孝頼 ,両 角光男 :建築設計インテ リジェン トCADシ ステムの研究開発 (建 築 。 要素の形態操作 のルールとその応用例 ),社団法人 日本 コンピユー タ グラフ ィイ ク協会 ,第 8回 NIC∝ m田 論文 コンテス ト論文集 ,1992.H,pp.233-241 Josep Fargas and Pegor Papazian: Metaphors in Design: An Experiment with a

Frame, Two Lines and Two Rectangles, ACADIA 92 Proceedings,1992,pp.13-22

-87-


第5章

システムのデータ構造とアルゴリズム


::│ 卜 1 111t‐ │11 :1● r‐ │■ ■● 11.l

il l.:き

.1'li:)`│││111:│ '11‐

、1.: │:│‐ .`

:■

1● :i‐

‐■ ■11‐

::il l・ :│:11■ =il● 1

│││:│■

11■ ."

■│::=11■.鱗 ■1111■ │■,■ 1111■ Ⅲlユ 議 鷲 Ⅲ ■ ,■ 11■綸1静 1::鱗轟 轟 轟 慾裁轟 札凛 轟 等 苺 靖諄 : 翻 脚=締 椰 l i111:iF‐

IF■1111二 :li十,│11,I111411轟

.灘 脚 ■

1111島 1議 │二 llI:驀 :轟 11'I:::襲 i鮮 `111鐵

1裁 :よ

i轟

i

:ふ


5-1

炉 声

本章では ,前 章 までで述 べてきた知的 CADを 実現す るために必要 なデー タ構造 と主 要 なアル ゴ リズムを提示 す る。 具体的 には ,図 形固有 の番号 となるハ ン ドル名 (handle)を 属性値 として持 たせ ,そ れ をポインタ1)(pointer)で 制御す るデー タ管理のプログラムを構築す る。また ,建 築要素 として編集操作 の対象 となる図形要素群 を自動的 に検索す る方法 ,図 形要素 に設定 され た関係情報 を視覚的に確認す る方法 ,な らびに既 に図形要素 に設定 された関係情報 を解 除す る方法 な どの必要 な機能 のアル ゴ リズムを示す。 本研究では ,汎 用 CADと して広 く利用 されているAutoCADを

ベースとし,そ

の特徴である図形 ごとに属性値 を保持する機能 を応用 して関係情報 の処理機能 を実現す る。 また開発言語 は ,AutoCAD上

で稼動す るインタプリタのAutoLISPを

いる。ただ し,こ こで述 べている仕様 において は ,必 ず しもAutoCADに ることはな く汎用 に利用 できるように述べ ている。

-91-

限定 され


5-2 システム構築のための基本的な考え方

システム構築 の前提 として ,プ ログラムのモジュール化および階層化 を考慮す る必要 がある。また関係情報 を操作す るデー タ構造 には ,図 形要素の持 つ属性値 を利用 し,図 形固有の番号 (ハ ン ドル名)を ポインタにして実現する。これ らの書 き込み (設 定 )と 読み取 り (抽 出)に は ,LISP言 語 で一般 に用意 されいる put関 数 と get関 数 と 同 じような機能 を持 つ基本関数 を独 自に開発する。 ここでは ,ソ フ トウェア開発の上での基本的な方針 ,お よび関係情報 の処理 を行 う上 の基本的仕様などを明確 にする。

5-2-1 ソフ トウェア構成 本 システムの構築 では ,プ ログラムのモ ジュール化 を考慮 して ,図 5-1に 示すような階 層構造 を構築 す る。ユー ザが操作する上では ,す べてメニ ュー を通 して行 うように した。 ここで ,メ ニ ュー・ プログラムの 内部 には ,関 係情報 を操作するコマン ドを組み込 み

,

コマ ン ド以下の LISPプ ログラム (関 数 )は ,複 数 の関数 モジュール を用意 し,階層 構造 に分けて構築する。

¬ 「

│ユ ー ザ操作

に_________― ノ

↑↓ ↑                ↑

ユーザ・ メニュー

メニュープログラム

LISPプ ログラム

図形データベース

図5-1 システム構成概要

- 92 -


522

図形要素 のハン ドル名 による関係情報の管理

関係情報 を図形内部 に持たせることは ,図 形要素間 に関係付 けを行 うことであ り,こ こでは ,図 形要素固有のハン ドル名 を使 ってポインタ処理 を行 なわせて いる。 現在ネイテ ィブな CAD僻

)と して ,各 図形要素 には半永久的な固有のハン ドル名

を持 つことができる。この半永久的 とは ,CAD上 で初期 に図形 を作成 してい く段階か らハ ン ドル名 が付けられ ,途 中保存 し,再 起動 しても前 と同 じハン ドル名 で図形要素が 設定 されていることをいう。 このハン ドル名 を関係付けの情報 として利用 し,情 報処理 としてのポインタ処理 を行 わせている。具体的 には ,3つ の図形要素 を 1つ の集合体 として関係付 けをすると

,

図5-2の ように ,各 ハ ン ドル名が互 いに内部 で保存 されることになる。

d

ヽ ミl

図5-2 ハ ン ドル名 による リンク構造 のポイン夕申聯卸

図5-2は ,リ ンク構造 (link structure)3)に よってポインタ制御 を行 わせた例で ,各 図 形要素 A,B,Cの 内部情報 には ,表 5-1の ような関係付 けられた情報 を持 つことにな る。 表5-1内 部情報 による関係付 け

A

B

B

C

C

A

このハン ドル名 をリンク構造 に持 たせることで ,任 意 の図形指示 でも ,関 係付 け され た図形群 を検索す ることが可能 となる。

- 93 -


5=2-3 関係情報 を扱 う基本関数の仕様 前項 で ,図 形要素の一つひとつ に,ハ ン ドル名 と属性値 を使 って ,関 係付けす ること を述 べた。この属性値 をプログラム上で利用するには ,属 性値 を書 き込みする関数 と読 み取 る関数が必要 となる 。これを LISP関 数 で提示 すると put関 数 と get関 数 と なる。この関数 の仕様 と して ,引 き数 とリターン値 (帰 値 )を 明確化す ると以下の よう になる。 t

e 脚g t

en hd re);属 性値 の書 き込み (設 定 )関数

en re) ;属 性値 の読み取 り(抽 出)関数 (リ

ター ン値 は ,ポ インタとなるハ ン ドル名 )

ここで ,put関 数およびget関 数 の引き数 の内容は ,以 下の ようになる。

enは ,図 形要素のハ ン ドル名 。

hdは ,設 定する

(関 係付 けする)ハ ン ドル名 。

reは ,関 係情報 の種類

(ユ ニオン関係 ,ハ イアラキ関係 など)。

この 2つ の基本的な関数 を揃 えることで ,図 形要素間の関係情報 を実現することがで き ,ユ ニオン関係やハ イアラキ関係 などを区別 して設定 した り取 り出したりすることが できることになる。 これら2つ の関数 は ,図 5-3の ような概念 で使用 される。

… …・

A… ………ヽ

(put 'A 'B 'U)

図5-3 ハ ン ドル名 を扱 う基本関数の概念図

-94-


524

クローン関係 の構築方法

ここでは ,前 章で示 したクロー ン関係 のいくつかの特徴 に応 じて ,構 築方法 を以下に 示す。

(1)ク ローン名 による識別 ク ローン部材 を登録すると,暗 黙 にクローン名 が付加 され ,ク ローン部材 を複写する とクローン名 も複写 される。同種 の クロー ン名 を持 つ部材群 をク ロー ン部材 グループ (clone member group)と 呼ぶことにする。当然の ことながら,一 つの設計案 の 中 に複数

の クローン部材 グループが共存で きる。

(2)ク ローン関係設定 の 内部処理 この クロー ン関係設定 の内部処 理 としては ,指示 された基点位置情報 およびクローン 関係 を構成する代表図形固有のハ ン ドル名 のポインタ情報 とをクローン関係情報 (clone relational information)と し, これに クローン名 を自動的 に付け ,ク ローン制御点 (clone cOntrol point)と して保管 してい る。この ク ローン制御点 は ,ク ロー ン部材 を

管理 する基準 となるもので ,実 際 CAD画 面上では非表示 となっている 。

(3)ク ローン関係置換 の内部処理 置換 されるクローン部材 を消去 し,置換元 となるクローン部材 の関係情報 を保持 して 複写 を行 う。

- 95 -


53

関係情報のデータ構造

本節では,各 関係情報のポインタ制御 のデー タ構造 をそれぞれ明確にする。

5-3=1 ユニォン関係情報 同一部材の形状 を定義する情報で ,図 形要素群 のひとつひとつに順次 ポインタで リ ンク構造にして持 たせる。関係設定 における部材形状ルール を実現 して いる(図 5-4)。

次の図形要素のポインタを リング構造で保持

図54ユ ニォン関係情報

53-2

ジョィン ト関係情報

図形要素の 中の線分 どうしが接点で隣接関係 にある形状 を保持する情報で ,互 いの ポインタを関係情報 として持 つ 。編集操作 において部材 の寸法や形状が変更 された時 に接続関係ルール に沿 つて 自動調整 される (図 5-5)。

卸材 の形状を変 更

L√lF

接点での相互0ポ インタを保持

図5-5ジ ョイン ト関係情報

- 96 -


5-3-3 グループ関脚 柱群や壁群 として操作す る場合 ,こ のグルー プ関係 を持 たせて処理す る。この場合 ユニオン関係 と同 じような構造 を持 たせるが ,以 下 に説明す るような関係情報の強弱 関係 で扱 う編集操作が異なる(図 5-6)。

「`、 ジ ヨイン ト関係 と柱に ジヨイ ン ト関係が 設定済み

図5-6グ ルー プ関係情報

534

ハ ィアラキ関係情報

部材間または図形要素相互間での位置関係ルール を実現す るもので ,こ こでは主 (親 )か ら従 (子 )へ の片方のポインタを持 つ関係情報 となる 。この主か ら従へのポ

インタは階層 (ハ イアラキ)構 造 で持 たせ ることができ,例 えば主となる通 り心 を移 動 させると,従 となる柱や壁 ,さ らには壁 に取 り付 く開口も同時 に位置関係 を保持 し て移動することになる (図 5-7)。 週り心0

inり 心 n

ヽ ′ 桂

ミ 壁n

伯 證 ヽN

′ 整B

遺 り心n

´ '、 ′´1´ ′ ´ ′ も

聟n

‐ヽヽ ‐ヽ ミ‐ヽ‐_全 │:::::::]

図5-7ハ イアラキ関係情報

- 97 -

,


5-3-5 プロポーショナル関係情報 基準となる 2部材の図形要素間で ,基 準の片方の基点

(こ

の場合端点)と なる部材

からの距離比率 を持たせた関係情報で,2つ の部材の配置変更 によつてこの関係情報 が組み込まれている部材の自動配置が行われる(図 5-8)。

図5-8プ ロポーショナル関係情報

-98-


5-4 関係情報関連 コマン ドの アル ゴ リズム

関係情報が組み込 まれた図形 を対象 とす る編集処理 では ,コ マン ドに合わせて組 み込 まれた関係情報 を検索 し,図 形編集 の 自動化 を行 うアル ゴ リズムが存在する。そ こで

,

ここで は ,主 な機能 のアル ゴ リズ ムを明確 にす る4)。

541

アフ ィン変換 コマ ン ド・ アル ゴ リズ ム (移 動 .回 転 ,ス ケ■ )

アフィン変換 コマン ドを起動す ると,図 5-9に 示す流れで処理 を行 う。具体的には ,ま ず コマン ドを選択・起動 し,図 形指示 を行 う(同 図① )。 すると内部処理 で ,指示 された 図形 か ら関係情報 を読み取 り,ユ ニオン関係 ,ハ イア ラキ関係 ,グ ルー プ関係 にある図 形群 を検索す る (同 図② )。 選択 された図形群 に対 し,ア フィン変換 のコマン ド操作 を行 う(同 図③ ,④ )。 例 えば ,移 動 (mOve)で あれば ,基 点 と移動点 を入力す ることになる。 次 に内部処理 では ,ジ ョイン ト関係す る線分 を検索 し(同 図⑤ ),自 動修正 を行 う(同 図⑥ )。

部材検索処理

〔 図5-9

〕入力指示操作

〔三IE)自 動賊國哩 アフィン変換処理 の場合の アル ゴ リズム

- 99 -


542

ュニォン部材検索アル ゴ リズム

ユニオン部材の検索では,指 示 された図形 をもとにユニオン関係情報 を持 つ図形 を検 索 してい くアル ゴ リズムとなる。フロー図 とプログラム・ リス トを以下 に示す。

(setq

rts

(ssadd en))

(setq ns en) ンオ ン オ ニオ ニ ユニ ギ

│:│::│ミ 111夢 i:nlil;))

あ り

(setq

rts (ssadd ns rts)))

ユニオン部材図形群帰値 図5-10 ユニ オ ン部材検 索 (unsearch)ア ル ゴ リズム

:<ユ ニ オ ン 関係 >ユ ニ オ ン 関係 の 図 形 群 を検 索 : en :検 索 す る対 象 図 形 エ ンテ ィ テ ィ名 ; リター ン値 :ユ ニ オ ン 関 係 の 図 形 群 (対 象 図 形 を含 む

)

(defun unsearch ( en / rts ns) (setq rts (ssadd en) ns en) (while (and (setq nS (unget ns)) (setq ns (handent ns)) (■ ot (SSmemb ns rts))) (Setq rts (ssadd ns rts))) rts)

リス トト 1ユ ニオン関係情報の検索アル ゴ リズム ここで ,unget関 数 は ,(defun tlnget(en)(get en'U))と なる。

- 100 -


5-4-3 グルー プ関係検索アル ゴ リズム グループ関係 は ,ユ ニオン関係 とほとんど同 じ様なアル ゴ リズムとなる。 ただし,グ ループ関係 の検索 にあたつては ,ユ ニオン関係 を最初 に検索 し,そ の 中か ら最初に抽出できるグルー プ関係情報のみ を有効 とす る。これは ,縦横 に柱 が配置 され ていて ,縦 に列 ぶ柱群 の グループ関係 にあるものと ,横 に列ぶ柱群 のグループ関係 にあ るとき,両 方 にグルー プ関係 を持 つとき,区 別 して検索できるようにしたことによる。

Y…

4‐

彊れ │

X-4

Oを 指示 した場合 ,C21,

C22,C23,C24を

0を 指示 した場合,C12,

C22,C32,C42,C52を

X-5

検索 検索

C22 1柱

図5-11 ユニォン関係 にある柱 の異 なる指示 によるグルー プ関係検索 の違 い

- 101 -


ユニオン関係図形 からグループ関係 を

%匹 `熙

グルー プ部材図形群帰値 図5-12 グルー プ部材検索 (grsearch)ア ル ゴ リズム

:<グ ル ー プ 関 係 >グ ル ー プ 関係 の 図 形 群 を検 索 ; input en:検 索 す る対 象 図 形 エ ンテ ィテ イ名 : リタ … ン値 :グ ル ー プ 関 係 の 図 形 群 (対 象 図形 を含 む

)

(defun grsearch ( en / ss uns grs i n) (setq uns (unsearch en) n (SSlength uns) i l grs (SSadd en)) (Whi:0 (and (nOt (grget en)) (く i n) (setq en (ssname uns i) i(1+ i)))) (While (and (setq en (grget en)) (setq en (handent en)) (not (ssmemb en grs))) (setq grs (ssadd en grs) uns (sSadds (unsearch en) uns))) (ssaddS uns grs))

リス ト5-2グ ループ関係情報 の検索アル ゴ リズム

- 102 -


5-4-4ハ ィァラキ部材検索 アル ゴ リズム ハ イアラキ部材の検索 では,図 5-13に 示すようにユニオン部材の階層構造 を考慮 して 行 う必要 がある。この階層構造 での検索 を行 うには ,同 じ検索関数 を使 った繰 り返 し

,

つ ま り再帰的

(リ

カーシブ)に 検索 を行 う必要 がなる。ここでは ,ハ イアラキ部材 のメ

イン・ プログラムの他 に 2つ のサブ・ プログラムを作成 して対処 し,そ のうち 1つ が再 帰的 プログラムと してい る。 (補 足説明 :再 帰的なプログラムを用 いる理由として ,ハ イア ラキ関係 を設定 した ことを認識 できる (覚 えて い られる)範 囲が ,最 大

10階 層も

行か ないことを前提 としているためである。)

一 ② ︲, ︲ ﹁ . 一 ﹁   一

処理 の流 れ ①代表図形指示 (ユ ニ オン部材検索) ② ハ イアラキ部材検索 ③ ユニオン部材検索 ④ ハ イアラキ部材検索 ⑤ ユニオン部材検索

図5-13ハ イアラキ部材検索 の処理 の流 れ

まずメイン・ プログラムでは ,指 示 されたユニオン部材に組み込 まれているハ イアラ キ関係情報か ら検索す る。ここでは ,ユ ニオン部材 には ,1つ のハ イアラキ関係情報 し か存在 しないとす る制限 を付けている。図5-14に そのフロー図 を示す。 次 にハ イア ラキ部材検索のメイン・ プログラムで用 いたサブ・ プログラム(hisearcト s)の フロー図 を図5-15に 示す。ここでは ,再帰呼 び出しのハ イアラキ関係 の図形群 を検

索す るプログラム(hisearch― sub関 数 )を 用 いて処理 している。

- 103 -


■ ニオン関係情報 の中 ハ イア ラキ図形

ハ イア ラキ

ハイアラキ部材図形群帰値 図5-14 ハ イアラキ部材検索のメイ ン・ プログラム (hisearch)の フロー 図

無限ループのチェック の為の初期設定

ハ イアラキ部材 の検 索

関係図形数 で検索

ハイアラキ部材図形群帰値

図5-15 ハイアラキ部材検索のサブ・ プログラム(hisearch― s)の フロー図

- 104 -


クヽイア ラ 関係情報 があ り ルー プでないカ

ハ イアラキ関係の 従図形群抽 出

,

従図形 なし

← 再帰呼び出 し

入力図形要素 を帰値 図5-16 ハ イアラキ部材検索 のサブ・ プログラム(hisearc卜 sub)の フロー図

:<ハ イ ア ラ キ 関係 >子 供 の 図形 を検 索 ; input en:検 索 す る 対 象 図 形 エ ンテ イ テ イ名 ; リタ ー ン値 :子 供 の 図 形 群 (対 象 図形 を 含 む )

(defun hisearch ( en / i n ss )

(setq SS(unsearch en)n(sslength ss)iO), (whi:0 (and (く

ユニオ ン関係検 索

i n) (nOt (higet (ssname ss i))))

(setq i(1+i))):最

初 の ハ イ ア ラ キ 関 係 情 報 を持 つ 図 形 を検 索

(if (く i n) (setq ss (ssadds ss (hisea rch―

s (ssname ss i)))))

SS)

; 1つ の 図 形 か ら関 係 す る 図形 群 の 検 索 : input en:ェ

: :

(ハ イ ア ラ キ 関 係 )

ンテ イテ イ名

:子 供 の 図 形 群 (対 象 図形 を 含 む ) χss:無 限 ル ー プ を チ ェ ックす る 図形 群 リタ ー ン 値

(defun hisearch― s ( en / %ss ssg sgr ss i)

(setq Xss (sSadd)) ; 初 期 化

- 105 -


(setq ss (hisearch-sub en) ssg ss ( repeat (ss I ength ss) (setq sgr (unsearch (ssname ss ssg (ssadds sgr sss)))

i

0)

i)) i

(l+

ssg)

; 1つ の 図 形 か ら 関 係 す る 図 形 群 の 検 索 (ハ イ ア ラ キ 関 係 ) : input en:ェ ンテ イ テ イ 名 ; リタ ー ン 値 :子 供 の 図 形 群 (対 象 図 形 を 含 む : χssは 無 限 ル ー プ をチ ェ ッ ク す る 為 の グ ロー バ ル 変 数 )

(defun hisearch― sub ( en / SS h hiS )

(cond ((null en) nil) ((and (Setq hiS (higet en)) (cOnd ((and XSS (Ssmemb en Xss)) ni:) (t (setq χss (ssadd en χsS))))) (setq ss (ssadd en))

無 限ル ー プ

(mapcar'(lambda ( h / e ) ; h : tt2 j:lV* (if (setq e (handent h)) (setq ss (ssadds (hisearch-sub e) ss)))) (mapcar'cdr his)), r\.{ V +EI$Ozr7 FbeU =

ss)

(t

(ssadd on)

)))

リス ト5-3ハ イアラキ関係情報の検索アル ゴ リズム

- 106 -

7

]'


ここでは ,関 係情報 をCAD上 の機能 として構築す るためのデー タ構造 と主要 なアル ゴ リズムを提示 した。この中では ,グ ラフ理論 〉と探索 に関す るアル ゴ リズム を応用 し て CAD上 に組み込 んだものとなる。 本 システムの開発 では ,特 に関係付けの知識 となる属性値の書 き込み (設定 )と 読み 取 り (抽 出)を 行 う関数の

put関 数 と get関 数 が重要とな り,ま た編集操作 では

関係付けされた図形要素群 の検索が重要 となっている 。なお具体的に ,複 写や移動 ,拡 大縮小などの コマン ドの起動 においては ,在来 の CAD機 能 を用 いてい る。 また ここで述 べていないジョイン ト関係 の アル ゴ リズムについては ,2段 階の処理 で 対応 していて ,あ らか じめ指示 された図形要素群 に関係する編集 を行 つた後 ,接 続 の再 作図 を次 の段階で 自動編集 してい る。 クローン関係 の アル ゴ リズムにおいては ,AutoCAD独 この 中か ら割愛 している 。

- 107 -

自のテクニ ックとな り

,

,


補足説明

1.既 存のシステ ム開発 について 本 システム開発 において ,初 期 の段階では ,オ ブジェク ト指向の概念 であるい くつか を利用 していた6)。 しか し,処 理速度の問題 ,プ ログラムとデー タ構造 の一致 ,プ ログ ラムの記述の難 しさなど現実 として有効 に働 くものは少なか った。つ ま り人工知能 の一 時期 のブームの時 に出てきた知識表現 と似 ている。それは知識表現の概念が先 にあ り

,

はつきりした問題 もな く,無理 にその知識表現 に合わせた問題 を作 った ことによる。結 果的 には使 えるシステムは出来上がらず ,数 多 く開発 された知識表現 を構築 したエ キス パー ト・ シェル・ ツールもそれほど使われな い まま今 日に至 っている。オブジェク ト指 向の場合 ,ウ ィン ドウ 。マネージヤーやデす タベースなどの特殊 なところでは成果 が出 てきているが ,す べてがこれまでの手続 き型 言語 に取 つて変 わるものではないと考 える。 本 システム開発 でも ,オ ブジェクト指向そのものである言語や ツール を利用するので はな く,あ くまで概念 レベルで利用できる部分 を参考 にした程度である。ここで利用 し た概念 では,メ ッセー ジの概念 とインヘ リタンスの概念である。 メッセージの概念 は,各 関係付 けが同等な関係 であった り,ま たは主従関係 であった りする場合 ,そ の関係する図形要素の検索 で ヒン トとして活用 した。つ まり,通 り心 と 柱 ,壁 ,設 備 の関係付けがなされているとき ,通 り心 を指示 した状態か ら関係付け られ た図形群 を検索す るところで用 いた。 それから,イ ンヘ リタンスの概念は,関 係付 け された部材 の複写 を行 う際 ,関 係付け を壊 さずに継承す る処理 で活用 した。これは ,関 係付 けを継承 し,関 係付 けした図形群 を生成するには ,別 に新 たな関係付けを作 りあげる必要があ つた。

2.LISP関 数の基本仕様 LISP言 語 は ,関 数 (function)を 基本 とし,リ

ターン値 (帰 値 または戻値)を 利

用す ることでプログラムを作成 してい く。 ここでは ,以 下 の組み込み関数

(AutoCADが

既存 に持 つ)を 説 明す る。

この中 に出て くる引数 は ,次 のようになる。 く argl〉 :引 数 リス ト。 ロー カル変数がある場合には 「/」 で 区切 る。 〈 atom〉 :ア トム または ,ア トムを返す評価 関数 。 くexpr〉 くlist〉

く numb〉 〈Sy皿 〉

評価関数。 リストデー タ。 数値または,数 値を返す評価関数。 シンボル (関 数名など)。

- 108 -


くtest〉 :condま たはwhileの 関数判定用 の評価関数 。 また以下の引数 は ,AutoCAD固 有 となる。 :エ ンティテイ名 。 く en〉 〈 :ハ ン ドル名 。 hd〉 くss〉 :エ ンティテイ群 。 1)エ ンテイテイ名 とは ,AutoCAD固 有 のテ ンポ ラリーな図形要素の (注 名称 となる。ハ ン ドル名が作業 のセ ッシヨンに関係 な く同一名が付 けら れて いるのに対 し,エ ンティテ ィ名 は作業 セ ッシ ョン毎 に異 なる名称 と なる。 (注 2)関 数名 に*印 があるものは

1+

,AutoLISP固

有 の関数。

(1+ 〈numb〉 )

引数 を 1だ け加 えた値 を返 す 。 ex。 (1+ 5)=〉 6 (く

くatom〉 〈atom〉

)

大小関係 を示 す関数 。 ex。

(く (く

and

15)=〉 t(真 ) 51)=〉 nil(偽 )

(andく expr〉 ...)

式 の リス トの論理積 (AND)の 結果 を返す。 ex。

car

(and(=11)(1+5))=〉 t (真 ) (and(=23)(1+5))=〉 nil(偽 )

(car くliSt〉 )

リス トの最初 の要素 を返 す 。 ex。 (car'(abc))=〉 a cdr

(cdr〈 list〉 )

リス トの最初 の要素 を除 い た リス トを返す 。 ex。

cond

(cdr'(abc))=〉 (bc)

expr〉 .‥ )。 … ) (cond(〈 test〉 く

任意の数 の リス トを引数 として受け ,各 リス トの最初 の項 を評価 し,い ずれか力ヽil(偽 )以 外の場合 ,最 初の項以外 を順次評価 していき,最 後 の 項 の値 を返す 。 ex。 (cond ((= s l)t)

((=s2)nil) (t (+ s4)) この例 の場合 ,sの 値が 1の 場合 t(真 )を 2の 場合nil(偽 )を それ以外 は ,sに 4を 加 えた値 を返 す。 ,

,

deflln

く argl〉 く expr〉 ユーザ関数 を定義す る関数 。 (defllnく syll〉

.…

- 109 -

)


ex。

(defun abc(xy/z) (setq z(+xy)) (1+z)) この例では,abcと いうユーザ関数 を定義 している。 この関数は,引 数 ,yに 対 し,x■ y+1の 値 を返す。 ここで,zは ,ロ ーカル変数。 /は ,ロ ーカル変数の区切り記号 となる。

handents

hd〉 ) (handent く ハ ン ドル名 〈 hd〉 か らエ ンティテ ィ名 を返 す関数 。

if

testexpr〉 く thenexpr〉 [〈 elseexpr〉 ]) (if 〈 〈testexpr〉 の条件が真 の場合 ,〈 thenexpr〉 を評価 し elseexpr〉 はオプシ ョンで無 けれ ば 偽 の場合 ,〈 elseexpr〉 を評価 する。く ,

,

nil(偽 )を 返す 。 ex。

lambda

(if(=13)"yes""nO")=〉 (if(=2(+11))"yes"))=〉

"no" "yes"

expr〉 。 (lambda〈 argl〉 〈 …)

名前 の無 い関数 を定義す る 。 ここで ,〈 argl〉 は引数 ,〈 expr〉 は評価関数 。 ex。 (setq exp'(lanbda(x)(1+x))); expを 1加 える関数 。

(mapcar'(lambda(x)(+x5))'(123))=〉 (678)

mapcar

not

(mapcar 〈func〉 〈listl〉 .. 〈listn〉 ) 引数 として指定 され た リス トlistlか らlistnの 各要素 ごとに指定 の 関数 〈func〉 を実行 し,そ の結果 を返 す 。 ex。 (mapcar '1+ '(4 5 6)) =〉 (5 6 7) (mapcar '+ '(2 3 4)'(4 5 6))=〉 (6 8 10) (not くitem〉 )

も し,項 目〈item〉 がnil(偽 )で あれば ,T(真 )を ,そ うでなけれ│ね il(偽 ) を返す。 null

(null〈 item〉

)

も し,項 目〈item〉 がnil(偽 )で あれば ,T(真 )を ,そ うでなけれ1飾 il(偽 ) を返す。nOt関 数 と同 じ働 きをする。

quote(')

(quoteく expr〉 ) または '〈 expr〉 〈 expr〉 を評価せ ず に返 す。

repeat

expr〉 .… ) (repeatく nllmb〉 〈 expr〉 をく nulnb〉 回実行 し,最 後 に評価 された式 の値 を返 す。 各式〈

setq

(setq〈 sym〉 くexpr〉

[〈 syln〉

くexpr〉 ].…

)

expr〉 を評価 し,シ ンボルく sym〉 に代入す る関数。 式く 最後 に代入 された値 を返 す。 ex。 (setq b 123 c 4.7) =〉 4.7

- 110-


=〉 abc

(setq x 'abc) ssadd事

: (ssadd [く en〉

[く ss〉 ]])

引数無 しの場合 ,エ ンテ ィテ ィ群 を作成 。

sslength8:(sslength〈 ss〉 ) エ ンテ イテ イ群 くss〉 の 中のエ ンテ イテ イの数 を返 す 。 ssmelllF :(ssmembく en〉 〈ss〉 ) ss〉 に含 まれるか ど うかの判定 。 エンティテ ィ名 く en〉 がエ ンテ ィティ群 く 含 まれる場合 ,エ ンティテ ィ名 くen〉 を返 し ,含 まれない場合 nil(偽 )を 返す 。

ssnamel :(ssnameく ss〉 くnunb〉 ) エンテ ィテ ィ群 くss〉 の中のくnumb〉 番 目のエ ンテ ィテ ィ名 くen〉 を返す。 〈 nullb〉 は ,0 か ら (sslength ss)-1 まで となる 。

while

:(whileく

test〉 く expr〉 .… 。 ) expr〉 を 最初 の項 くtest〉 を評価 し,nil(偽 )で なければ ,次 の項以下 のく く ヽil(偽 い test〉 力 )に なる まで繰 り返す。 評価 して く。最初 の項

またユー ザ定義関数 を以下 に示 す。 grget

: (grget〈 en〉 ) グルー プ関係情報のポイ ンタとなるハ ン ドル名 を返す。

grsearch: (grget く en〉 ) 入力 された ,エ ンテ イテイ名 か らグルー プ関係情報 のエンティテ イ群 を返 す。 higet

: (higet〈 en〉 ) ハ イアラキ関係情報 のポ イ ンタとなるハ ン ドル名 の リス トを返す。

hisearch: (hisearch くen〉 ) 入力 された ,エ ンテ ィテ ィ名 か らハ イア ラキ関係情報 のエ ンテ ィテ イ群 を 返す 。 ssadds

: (ssadds くssl〉 〈ss2〉 ) 2つ のエン テ ィテ ィ群 を足 し合わせ る関数 。

unget :(llngetく en〉 ) 入力 された ,エ ンティティ名 か らユニオン関係情報のエンティティ群 を返 す。 llnsearch:(llnsearchく

en〉 )

入力 された ,エ ンティティ名か らユニオン関係情報のエンティティ群 を返 す。

- 111-


1)こ こでのポイ ンタは ,コ ンピユー タ内部で持 つ図形要素 をア ドレスとして結 び付 け たもの 。つ まり関係付けそのもの となる。

2)AutoCAD GX-5バ

ー ジョンの機能 を指す。

3)リ ンク構造 とは ,ポ インタ制御する中のひとつの方法 となる 。

4)こ こで示すアル ゴ リズムは ,主 に汎用 的なもののみを提示 してい る。この他にも多 く思考 した アル ゴ リズムがあるが ,AutoCADに

依存 してるため割愛 してい る。

5)こ の グラフ理論では ,図 形要素そのものが節点 (nOde)で ,関 係付 け されたポインタ が有向グラフ(directed graph)と して考慮 してい る。

6)こ れまでの開発 では ,2回 の大きなバー ジョン・ アップを行 つてきた 。初期バー ジ ョンでは ,こ のオブジェク ト指向の基本概念 を使 って開発 したが ,処 理速度の問題 やアル ゴ リズムの記述 の問題 があ り,第 2バ ージョンのオブジェク ト制御点 を用 い て対処 した [文 献 10)∼ 14)参 照]。 しか しこれも処理速度 が遅 くなる点 の操作性 の 問題があり,現 行の第 3バ ー ジョンでは ,代 わ りにここでの新 しい概念 となる関係 設定 を考慮することに至 った。

参考文献

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:LISP,培

風館 ,1982.9

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3)湯 浅太一 ,萩谷 昌己著 4)Rodney

会社 ,1986.H

5)伊藤誠著 :TURBO Pascalに よるデー タ 。図形処理 ,近 代科学社 ,1988。 6 6)Ro E。

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ウヒル ,1989。 12 7)G.0。 Head,C.A.Pietra,KoJo L.Segal著

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アプ リケー シ ヨン開発用

11

10)高 本孝頼 ,木 島安史 ,両 角光男 ,前 田慎二 ,岡 本憲文 ,矢 野雅 :オ ブジェクト指向

- 112-


建築設計 CADシ ス テムの研究開発一〇CPと

SOCPを 使 つた位置 と形状 の扱 い

について一 ,日 本建築学会関東支部 1990年 度研究報告集 (計 画系),pp.149∼ 152, 1991.1

高本孝頼 ,両 角光男 ,木 島安史 ,前 田慎二 ,真 野恵司 ,岡 本憲文 ,矢 野雅 :建 築設 計インテ リジェン トCADシ ステムに関する研究

その 2-POCPを 加えたシス

テム開発 とその評価 について一 ,日 本建築学会九州支部 1990年 度研究報告集 (計 画 系),pp.29∼ 32,1991.9 12) TAKAMOTO Takayori, MOROZUMI Mituo, KI」 IMA

Yasufumi, SEGAWA Youichiro : "A

STUDY ON THE DEVELOPMENT OF OB」 ECT ORIENTED INTELLIGENT CADD SYSTEM,

THE

FOURTH INTERNAT10NAL CONFERENCE ON COMPUTING IN CIVIL AND BUILDING ENGINEERING(Extended Abstracts),p37,1991.9 13)

矢野雅 ,高 本孝頼 ,両 角光男 ,木 島安史 ,前 田慎 二 ,真 野恵司 ,岡 本憲文 :建 築設 計インテ リジェン トCADシ ステムに関す る研究

その 2

ォブジェク ト制御点

(OCP)を 考慮 したシステムの構築 とその評価 ,日 本建築学会 1991年 度大会学術 講瀬 14)

1既集[A],pp.1335∼ 1336,1991.9

高本孝頼 ,両 角光男 ,木 島安史 ,真 野恵司 ,矢 野雅 :建築設計インテ リジェン トC

ADシ ステ ムに関す る研究

その 3

オブジェク ト牛蜘 点

(OCP)を 考慮 したシ

ステムの機能 とその拡張 ,日 本建築学会 1991年 度大会学術講演梗概集 [A],pp。 1337

-1338,1991.9 15)

R.セ ジウィック著 ,野 下浩平他訳 :ア ル ゴ リズム

第 2巻 =検 索 。文字列 ・計算幾

何 ,近 代科学社 ,1992.2 16)

高本孝頼 ,両 角光男 :建築要素 に関する設計 ルール (関 係情報 )を 考慮 したシステ ムの試作 とその評価 (建築設計支援のためのインテ リジェン トCADの 開発 に関す る研究 その 1),日 本建築学会計画系論文報告集 ,No。 441,pp.159-166,1992.11

- 113-


第6章 試作システムの性能評価


鶏● 1

1,1‐

1● │■

1l1111

,│1111:1111111111三 │││1111111itii=111:1111111111111:111111 :11111■ 11:キ i■ lI■ 二 11ユ 11● ■ :,:11■ llilお 111「 1111111犠 111111■ ■lti11■ 1111111

轟 I車輔雌翻 11癬懇 鍵職編轟i奥搬轟 1事耐 littli鍮摯 1

1,II摯 静 1勲懲轟轟撃 1義 億 麓直鷺組盛│1鳳鳳壼 漁薬:薄 111辮轟‖鸞 :拝 1鑽 :辞 i

群 難警 攀攀響 騨難癬朝難韓 ま 肇 寺

=:僣

露:彗苺1難ii爵碧:葺耕撃 模│:購 挽 :鮮 1轟碁:籍網野


6-1 序

本章では,第 4章 および第 5章 の仕様に基づいて構築 した試作 CADシ ステムを用い い くつかのケース・スタディを使 ってシステム評価 を行つている。

,

ここでは,ま ず第 3章 の中で提示 したCAD編 集例 を上げ,パ ラメー タの設定や コマ ンドの選択 によつていろいろと編集操作できることを示す。ひとつの編集操作でも,関 係情報の内容や階層性によつて,さ らにはジヨイント関係の端点評価か交点評価によつ て ,い ろいろな編集結果 となる。つまり,コ マン ドの選択 とジョイント関係のパ ラメー タ

(端 点または交点の評価パ ラメータ)を 変えることで,い

くつもある編集結果から一

つを選択できることを示す。 次 に,ケ ース・スタデイ上で,ク ローン関係以外の関係情報 を使つて,2次 元の平面 図だけでなく立面図も取 り上げ,そ の中の編集操作 を例に取り上げ説明 している1〉 。 さらにクローン機能に関 しては,そ の事例 を3次 元まで広げて検討 している。 システムの性能評価の方法 としては,一 般的な平面図の事例 を用意 し,在 来 CADが 持つ機能と試作 システムによる機能の操作ステップの相違などを通じてまとめている。

- 117-


6-2-集

操作

本節では ,3-曇で取 り上げた通 り心 ,柱 ,壁 および開 口を持

つ平面図 の一部分 を例 に

,

関係付 けの設定 およびその編集操作 を説明す る。

6■

2-1柱 と壁備

劇 詐 朝

ニ 柱 と梁に図6-1の ように関係情報 を設定 して関係モデルを作成する。ここでは,ユ オ ン関係 とジヨイント関係の定義付 けを行っている。まず ,順序 は関係ないが ,形 態操作 ユニ する図形全体 をウィンドウで囲みジヨイント設定 を行 う。次に,柱 と壁 をそれぞれ オン設定する。この場合 ,通 り心は表示だけで ,関 係情報は組み込まれていない。

柱 のユ ニオン

0ウ インドウ‖■ 訴 '日

露点にジヨイントロ慎饉壺

となる。 ト ただし,ウ インドウに内包された図形だけが対象となり,ウ インドウに掛かる図形は対象タ

図6-1 基本的な平面図の部分図 一 以上の関係情報 を組み込 んだ後 の形態操作 を図6-2に 示す。ここでは ,柱 の 辺 を指示 して ,ジ ョイン ト移動 ,ユ ニオン移動 を行 つている。ジ ヨイン ト移動 では ,単 に柱形状 の り が変わる。ユニ オン移動 では ,ジ ヨイン ト関係 の評価 によつて接続関係 にある壁 取 付 く位置が変 わる ことになる。 このように ,柱 の形状 を変更す るのか ,柱 だけを移動するのか ,ま た壁 まで含めて移 ことがで 動す るのかを ,コ マン ドの選択 とオプシヨンのジ ヨイン ト評価 よって操作す る きる。

- 118-


ユニオン移動

図6-2 形態編集操作結果

622柱

。壁 と開 回の編集操作事例

図6-3は ,柱 ・壁 と開 回の建築要素 を使 った編集操作事例 となる。ここでは ,ジ ョイン ト関係 ,ユ ニ オン関係 ,プ ロポー ショナル関係 ,そ れにハ イアラキ関係 の関係付けの定 義 を行 つている。 ジ ヨイン ト関係 の設定 では ,図 形全体 をウィン ドウで指示 し,両 柱 と開 口部 のユニオ ン関係 の設定 も同様 にウィン ドウで指示する。また ,壁 のユニ オン関係の設定では ,壁 を構成する 2つ の線分 を指示す ることになる。 また ,開 回のプロポーショナル関係 では ,壁 の中央 に位置付 けることで ,壁 を構成す る線分 のいづれか を指示 し,す でにユニオン関係 にある開 口部 の一部 を指示す ることに なる。ここでは開 口部の中央部 を指示す ることで配置位置 を限定 してい る。また この後 プロポー ショナル設定 では ,比 例 のための比率 を数値 を入力す る必要 があ り,こ こでは

,

「0.5」 をキー入力 している。 また柱 と開 回のハ イアラキ設定 では ,主 となる右柱 の下線分 を指示 し,従 となる開 口 を構成する一線分 を指示す る。 形態編集操作 では ,図 6-4の ように ,ジ ョイン ト移動 ,柱 のユニオン移動 ,そ れにハ イ アラキ移動 を行 つている。ここでユニオン移動では ,プ ロポーショナル関係の設定 を行 った場合 と行 わなかった場合の 2通 りに分 けて操作 している。 ここでは ,開 日の位置 の決定 を左柱 との相対位置で合わせるのか ,ま たは右柱 との相 対位置 に合わせるのか ,さ らには柱間の中央 に位置づ けるか といった形態操作 の違 い を 示 した。

-119-


壁 の ユ ニ オ ン設 定

柱 と開 回の ハ イ ア ラキ 設 定 主とな る柱線分指示

図6-3 柱壁開 回の関係情報設定

- 120 -


ジ ョイン ト移動

比例設定な しの柱ユニ オ ン移動

比例設定あ りの柱ユニオ ン移動

比例設定な しのハ イアラキ移動

形態編集操作結果

- 121 -


6-3 関係情報のケース・ スタデイ

ここでは ,建 物全体 の形状 での形態操作 の事例 を取 り上げて ,そ の関係情報 の操作例 を示 す。この中では ,平 面図の他 に,立 面図の形態操作 についても取 り上げてみた。

631

平面躯体操作例

図6-5に 示す例では ,通 り心 と柱 ,壁 ,開 口および設備機器 を配置 した時点で ,前 節 と と同 じように関係情報 を与 え ,通 り心および躯体 の一辺の線分 を操作 した例 を示 してい る。 A図 では ,通 り心 を移動 した時点で ,関 係付け られている柱や壁だけでな く,左 端 にある設備機器 (長 方形 で表示)も 同時 に移動 し,中 央位置 あたりにある間仕切壁 との 接続関係 も自動包絡処理 を行 つていて ,結 果 はA'図 のようになる。B図 は ,通 り心 と 問仕切壁 とにハ イアラキ関係情報 を埋め込んであるために ,通 り心の移動 だけで間仕切 壁 の移動 とその両端 での包絡処理 (接 続関係の保持 )を 行 つている。結果 は B'図 とな る。次の C図 は ,壁 のみの移動 だけになるが ,左 下 にある設備機器 も含めて移動 を行 つ てい る。 結果 は C'図 となる。 最後の D図 でも同 じように壁 だけの移動 を行 つて いる が ,左 下 にある設備機器 との関係情報 が組み込 まれていないために壁だけの移動 となっ てい る。結果 はD'図 となる。 以上 ここでは ,特 に通 り心 を中心とした形態操作が 自由にで きるようになったことを 示 している。このことは ,製 図 による通 り心の意味が これまでの基準線 だけだ ったのが

,

CAD上 では ,新 たに制御線 としての意味 を持 つことができるようにな ったともい える。 つ まり,CAD上 の形態操作 では ,通 り心 を他 の建築要素 と意味付けすることで ,多 く のシミユレー ションが短時間 にできるようになる といえる。

… 122 -


図6-5 平面躯体操作例

- 123 -


6-3-2 ファサー ドの編集例 図6-6に 示す例 は ,フ ァサー ドの設計 にお いて ,ジ ョイン ト関係 ,ユ ニ オン関係 ,プ ロ ポー ショナル関係 ,ハ イアラキ関係 を組み込んで操作 した例 となってい る。上段の図が 操作前 の図面 で ,下 段 の図が操作後 の結果 の図面 となる。この上段 の図の中の矢印が付 いている 3つ の通 り心の移動編集 を行 うだけで ,内 部 で関係付 け らた情報 によつて等間 隔で移動 した り,プ ロポー ショナル関係 で中央 に位置 したりす る 自動編集が行 われてい る。この場合 ,2階 の開 回はほとんどハ イアラキ関係 による柱や梁 との等間隔での移動 が行われている。また 1階 部分 では ,梁 の移動 によつて ,中 央位置 にある大 きな高 い位 置の窓が梁 とは等間隔 に移動す ると同時 に,ユ ニオン関係にある小 さな窓 まで含 めて移 動 を行 つている。また柱 の移動 によつては ,中 央位置 にある比例関係が保持 され ,か つ ユニ オン関係 にある小 さい窓まで移動 を行 つている。

回 回 回 回 │‖

図 ―

図6-6 ファサー ドの編集例

- 124 -


6-3-3 システムの稼動 シミユレーション例 ここでは ,関 係情報 を組み込 み試作 した本システムと在来 の CAD機 能 との操作 の比 較 を行 う。図6-7に 編集操作 内容 を平面図内に示 し,図 6-8で 編集操作の結果 を示す。

(1)各 関係情報の設定 この場合の ユニオン関係情報 は ,柱 ,壁 ,開 回の各部材 を構成する図形要素群 それぞ れについて設定 した。ジ ヨイン ト関係情報 は図形全体 をウィン ドウで指示 して一括設定 した。ハ イアラキ関係情報 の設定 は後でのシミユレーション操作 を考慮 して ,通 り心 を 親 ,柱 と壁 を子に,ま た壁 を親 ,開 口を子 として 2階 層 の関係 を設定 している。

(2)部 材編集 シミユレー ション操作 次 に部材の移動 ,回 転 ,ス ケー ルの編集機能 を使 つて編集 シ ミユレー ション操作 を行 った 内容 と内部処理 を以下に示す。

① 壁のユニオン移動

壁のユニオ ン・ スケ ール

② 通 り心の イアラキ移動 'ヽ

p通 り0ハ イ キ 回 転 ア ラ

o壁 のユニオン回転

`C・

図6-7 関係情報 を組み込 んだ平面図での編集操作

- 125 -


① 壁 のユニオン移動 :直 角壁 の線分 の うち 1つ を指示 して基点 と移動量 を入力する。 内部処理 では ,壁 の移動 を行 うと同時 に壁 どうしの包絡処理 を自動で行 つている。 ② 通 り心のハ イアラキ移動 :通 り心 1つ を指示 して基点 と移動量 を入 力する。内部処 理では ,通 り心 に関係付け られた柱 と壁 ,開 口を同時 に移動 し,包 絡処理 を行 つてい る。

③ 壁 の ユニオン回転 :間 仕切壁 の 1辺 を指示 し,回 転の基点 と回転角度 を入力する。 内部処理 では ,回 転

両方の壁 との包絡処理 を行 つている。

④ 通 り心のハ イアラキ回転 :② と同様 に通 り心 1つ を指示 し,回 転基点 と回転角度 を 入力す る。内部処理 では ,関 係付 け られた柱 と壁 ,開 口を同時 に回転 し,包 絡処理 を 行 つている。

図6-8 編集操作結果

- 126 -


⑤ 壁 のユニ オ ン・ スケール :壁 を構成 す る線分 の 1つ を指示 し,基 点 と拡大率 を入力 す る。内部処理 では ,壁 厚 を変更 し,両 端 の柱 と① で編集 した壁 との包絡処理 を行 つ て い る。

⑥ 開 回のハ イアラキ・ スケール :ド ア開 日の中心 ある補助線 を指示 し,拡 大する基点 と拡大率 を入 力する。内部処理 では ,補助線 とハ イアラキ関係 にある ドア と壁 の開 口 線分 とを拡大 す る。

6-3-4関 係情報 を使 ったシステムの評価 ここでの編集操作 を標準的 な在来 CADシ ステムと比較 した結果 を表 6-1に 示す。こ の中では使用 した コマン ドの数 とその後 に入力 したバ ラメー タの数 を比較 した。結果は コマ ン ド数 と入力 したバ ラメー タ数 の両方共 に在来 CADの ほぼ 1/4の 操作 で図面編 集が行 えた。 これは本 システムの操作 が編集 コマン ドを選択 した後に移動や回転 ,ス ケールのパ ラ メー タを入力す るだけであるのに対 し,在 来 CADで は図形要素単位 の編集 のために複 数 の コマン ドを入力し,さ らにパ ラメー タも多 く入力する必要 があることによる。つ ま りこの図形要素単位 の編集 としては特 に包絡処理 を行 うために多 くの後処理が必要 とな る。ここでは単純 な事例 での操作 を行 つたが ,さ らに複雑な事例 の編集操作 では本 シス テム との差が より大きく出て くると考 える。 この他 ,本 システムでは柱 ,壁 などの部材単位 による建築要素で編集操作 できるもの が ,在 来 CADだ と常 に線分 などの図形要素での幾何学的な編集 を意識 した編集操作 を 行 う必要があ つた 。つ まり在来 CADだ と,1つ の編集操作 でも ,い くつもある編集 コ マン ドをいろい ろと組み合わせて対応 できるようになっている。これは操作者 にとつて 効率化 を常 に配慮 した幾何学的な編集操作 を行 う必要 があ り,煩 わ しい問題点 となって いる。

- 127 -


表6-1 本 CADシ ステムと在来 CAD

け 静

::在 来:i01A::D:操 作 轟:ヤ :iジ ::ド 1滋 び入│ガ C くPT〉 くPT〉 ‖OVE

:::

① ユニオン移動

UN‖ OVE

くPT〉

くPT〉 くPT〉

くPT〉 くPT〉

② ハイアラキ移 動

F:LLET FILLET F!LLET

くPT〉 くPT〉

F ILLET

くPT〉 くPT〉

くPT〉 くPT〉 くPT〉 くPT〉

コマンド 5/入 力 13 STRETCH C くPT〉 くPT〉

コ マンド 1/入 力 3 くPT〉 PC‖ OVE

くPT〉 くPT〉

くPT〉 くPT〉

コマンド ③ ユニオン回転

1/入

コマンド

力 3

1/入

ROTATE

UNROTATE くPT〉

くPT〉 くPT〉 くPT〉 くAG〉

くPT〉 くAG〉

④ ハイアラキ回転

コ マンド 1/入 力 3 PCROTATE くPT〉

FILLET

くPT〉 くPT〉

F ILLET

くPT〉 くPT〉

F:LLET FILLET コマンド ROTATE

くPT〉 くPT〉 くPT〉 くPT〉

5/入

コマンド 1/入 力 3 UNSCALE くPT〉 くFC〉

くPT〉 くAC〉

F:LLET F!LLET FILLET

くPT〉 くPT〉

F ILLET

くPT〉 くPT〉

F!LLET FILLET コマンド SCALE TR:H

くPT〉 くPT〉

くPT〉 くPT〉 くPT〉 くPT〉

くPT〉 くPT〉

7/入

くPT〉 くPT〉 くPT〉 くPT〉 くPT〉 くPT〉

TRl‖

・スタール ⑥ ハイアラキ

コマンド SCALE TR!‖

1/入 力

2 一6 ●

コ マンド

コマンド

力 17

くPT〉 くPT〉 くFC〉

TR!‖

コ マンド 1/入 力 2 PCSCALE くPT〉 くFC〉

力 12

W くPT〉 くPT〉

くPT〉 くAG〉

・スタ…ル ⑤ ユニオン

力 5

4/入 W

力 9

くPT〉 くPT〉 くFC〉 くPT〉 くPT〉

2/入

力 6

II ユマン

こ こ で ,く PT〉 ,く AG〉 ,く FC〉 は そ れ ぞ れ 座 標 点 ,角 度 ,倍 率 の 入 力 ,ま た ウ ィ ン ドウ 指 示 の 制 御 文 字 入 力 ,そ の 他 は コ マ ン ド名 と な る 。

Wは

- 128 -

C


6-4 クローン機能のケース・スタディ

本節 では ,構築 したクロー ン機能 を使 って ,い くつ かのケース・ スタディでシステム の評価 を行 つてみる。

6-4-1 ファサー ドのシ ミユレーシ ョン例 ここでは 1つ のモジュール となる窓の枠 のみを,フ ァサー ドの割 り付 け領域全体 内に 繰 り返 し配置 し,次 にデ ィテール を決めた窓 を繰 り返 し配置す るシミユ レーションを行 っている。また この中では ,1つ のパ ター ンだけでな く,複 数 のパ ター ンを組み合 わせ

てシミユレーションを行 つている。操作は,ま ず枠のみをクローン部材 として定義 し

,

フアサー ドの割 り付け領域内に基点を移動 させて連続配置する。次にディテールを詰め た窓としてクローン部材 を再定義 し,ク ローン置換 を使って枠のみのクローン部材 との 置き換えを行 つた。さらに,い くつかのディテールを詰めた窓枠 を,関 係情報 を使 つて 再定義 し,レ イアウトのシミユレーションを行つている

(図 6-9)。

ここでの操作では

,

窓枠の代表部材となる補助線 を利用 し,ク ローン定義 ,及 び再定義 ,置 換の一連の作業 を容易に行うことができた。

- 129 …


図 図図

図 財 図 区 1財 閂 図 図 図 図

呂鱚図 財 図図 呂呂呂 財 図図

図6-9 ファサー ドの設計 シミユ レーション

- 130 -


6-4-2柱 とアー チの レイアウ ト・ シミユレーション例 3次 元的 に部材 を定義 した例 として ,柱 とアーチをクローン部材 として配置 ,編 集

,

置換 してい くシミユレーションを行 つている (図 6-10)。 この場合も ,前節 と同様 なシ ミユレーションを行 うが ,3次元 での基点位置の指示がほとん ど初期 の段階だけで済む ことか ら,そ の効果が大 きく出てきた。つ まり在来 CADで は ,3次 元 の基点位置 の指 示 は煩わ しく,部 分置換 のたびに再度その操作が必要 になる。

図6-10

3次 元での列柱のシミユレーション

- 131 -


6-4-3部 屋の レイアウ ト・ シ ミュレー ション例 独 身寮などの アパー トの間取 りを例 にとり,3次 元 での レイアウ トのシミユレー ショ ンを行 っている (図 6-H)。 ここでも ,最 初 に枠だけの間取 りか ら,デ ィテールを詰め たものに置換 し,さ らにはデ ィテール を入れ換 えて検討 している。ここでは ,ク ローン 部材 にいくつかの関係情報 を設定 したもの を示 してお り,壁 としての建築要素での編集 操作 を可能に し,さ らに一つの部屋から全体の レイアウ トヘの展開を速やかに操作す る ことが容易 となっている。

図6-11 部屋 の レイアウ ト・シミユレーション

- 132 -


6-4-4 クローン機能の効果 とシステム評価 以上 クローン機能 を使 つて レイアウ ト及びシミユレーションを行 つたが ,こ れ らを在 来 CADの 持 つ複写機能や複合図形の持 つ編集機能 と比較 し,そ の効果 をまとめる2)。

(1)ク

ローン部材 の複写の容易性

在来 CADで の複写機能では ,複 写する図形群の すべての選択指示が必要 である 。 これ に対 し,ク ローン機能では ,代 表部材 だけの選択指示 で済 む。もし複写する図形 が複合図形である場合には ,複 写 の際 に図形群 の指示 は一回で済 むが ,次 の (2)の 再定 義で煩 わ しい編集操作 が余儀 な くされる。 これを在来 CADの 持つ複写 (COPYコ マン ドとする)機 能 を使 つて操作すると次 の よ うなステップを踏む ことになる。 (た だ し,複 写す る図形群 はウィン ドウで指示 で き るものとする)

[C0PY(rt)w(rt)(pt)(pt)(r t)m(rt)(ptl )(pt2).

. . (ptn)]

これに対 し,ク ローン機能 の複写 (CLCPコ マン ド)だ と ,ア ン ダー ラインで示 された 部分 が短縮 されたことになる。 [CLCPく rt〉 くptc〉 くptl〉 くpt2〉 ...く ptn〉 ] ptn〉 は複写す ここで ,く rt〉 はリターン 。キー入力 ,く pt〉 は座標点指示 ,く ptl〉 .。 く

る基点位置 の指示 ,く ptc〉 はクローン部材指示 ,そ の他 はキー入力。

(2)ク

ロー ン部材 の再定義の容易性

ク ローン部材 の定義では ,関 係付 けを用 いて行 うが ,こ のことによリディテール を 詰 めた り,一 部変更 したりす る操作が編集段階では容易 に行 うことができた。在来 C

ADの 複合図形 の場合 ,一度分解 (explode)し て ,基本的な CADの 作図編集 コマン ドで 図形 の変更 を行 う必要がある。これは分解 した時点で複合図形 ではな くな り,そ れに伴 い基点 を失 うため ,再 定義 を行 うのに再度元 の図形群 と同 じ図形要素 を選択指 示 し ,さ らに基点位置 と複合図形名 を入力するなどの煩わ しい操作 が生 じる。

(3)ク

ローン部材 の置換の容易性

- 133 -


複合図形 の置換 では部分的な置換 は出来ず ,一 括置換 しかない 。在来 の CADで は 別な複合図形 を作成 して複写する操作 となる。しか しここでの クローン部材 は ,一 部 の置換 を許 し ,シ ミユレー ションが容易 に行 えるように してい る。この ことは ,試 行 錯誤 での全体 と部分の相互の置換 による繰 り返 しが多い中で ,操 作 ステ ップを大幅 に 少な くすることができたことで実証 された 。 この置換操作 を在来 CADの 複合図形 と複写機能 を使 って行 うと,次 のようなステ ップを踏む ことになる。 ① 置換先 の複合図形 をあ らか じめ削除する(ELASEコ マン ドとする) [ELASEく rt〉 くptbl〉 くptb2〉 ...く ptbn〉 ]

② 複合図形 を呼び出す (INSERTコ マン ドとする)。 [:‖ SERTく rt〉 くname〉 くrt〉 くpt〉 くrtl〉 くrt2〉 くrt3〉 ]

③ 複合図形 を複写す る(COPYコ マン ドとする)。 [COPYく rt〉

│く

rt〉 mく rt〉 くptl〉

くpt2〉

..口

くptn〉

]

これに対 し,ク ローン機能 の置換 (CLEXコ マン ド)で は ,ア ンダー ラインで示す部分 に短縮 された ことになる。 [EXCPく rt〉 くptc〉 くptcl〉 くptc2〉 ...く ptcn〉 ] ptbn〉 は削除する複合図形 の指示 ここで ,く rt〉 はリターン 。キー入力 ,く ptbl〉 .口 く

,

くname〉 は複合図形名のキー入力 ,〈 pt〉 は座標点指示 ,く ptl〉 ..く ptn〉 は複写する基点位 置の指示 ,く ptC〉 は置換元 の クローン部材指示 ,く ptCl〉 ..く ptcn〉 は置換 するクロー ン部 材指示 ,そ の他 はキー入 力。

(4)ク ローン名 と基点位置 を意識 しない操作 クローン制御点 を用 いていることにより,基 点の保持 を行 い ,し かも クローン名 の 暗黙 の制御も行 っている。 このため ,ク ローンの定義や再定義 ,置 換な どを行 う際

,

クローン名 と基点位置 を意識 しな くても操作 できる。複合図形 では ,再 定義や置換 を 行 う際 ,常 に複合図形名および基点位置 を意識 して操作 を進めなければならない 。 以上のことにより,ク ローン機能 だと,在来 CADに 比 べ ,分 解や図形群の指示

,

基点位置の指示などの余計 な操作 に煩 わせなが ら行 うことな く編集操作 が行 えた。ま たこのことにより,試 行錯誤 の設計作業に集中でき ,思 考が中断 されることなくデザ イン・ シミユ レーションが多 く行 えた。

- 134 -


6-5濡

ここでは ,関 係設定 に基づ く関係情報 を組み込 んで試作 したシステムの操作事例 を示 した。この中では ,形 態操作 を行 う上で ,デ ザイナーが図形 の 中に意図する関係付 けを 組み合わせて行 い ,さ らに編集操作段階で どの コマン ドを指示するかで ,い くつもの編 集結果 を操作 できることを示 した。 また通 り心 を制御線 として利用 し,こ の関係情報 の 中のハ イアラキ関係 を使 うことで

,

形態操作 を建築要素単位 だけでな く,要 素単位の間でも操 ることができ ,短 時間 に多 く の形態編集 のシミユレー ションができることを示 した。事例 と しても ,平 面図だけでな く,立 面図でも形態操作 を行 えることを示 した。 す なわち ,こ れらの関係情報 を用 いたシステムを実現 したことによつて ,設 計者 は揮 発的であつた関係設定 を知識 として図形 に組み込 むことができ ,図 面の 中の線分 ひとつ ひとつに建築 的な意味 を持 たせ ることができるようになった 。つ まり図形要素単位 では な く建築要素単位 で編集操作 が行 えるようになった 。これは在来 CADに おいて幾何学 的な図形編集操作 に思考 が多 く割 かれていたことに対 し,建 築 的な思考 での編集操作 に 時間 を割 り当てることができるようになったのはもとより,試 行錯誤の 多い建築設計 の 編集操作作業 の効率化 を計 ることができるようになったことによる。

またクローン機能 を実現 したことにより,短 時間に複数の代案を作成 し,デ ザインの 視覚 シミユレーションが行えるようになった。これは,一 つには,関 係情報 を持つ クロ ーン部材のユニット・パ ターンの生成が容易となり,短 時間に多 くの図形 を生成できる ようになったことと,ま た一つには,全体配置のレイアウトにおいてもクローン部材の 置換機能により,多 くのパターンの置き換 えによるシミユレーションが容易にできるこ とによる。これまでの在来CADで は一括置換であつたものを,こ のクローン機能 を使 うと,親 が 1つ できることで複数の子を複写機能で生成でき,ま た子を親 として他の親 や子を部分置換機能で置 き換 えることができることが可能になったことにもよる。また ここでは,部 分となるディテールを詰める作業と全体の レイアウト作業が容易に行え

,

これまでCAD操 作がボ トムアップ思考を配慮 していたのに加 えて,ト ップダウン思考 での部分 と全体 とでの繰 り返 しの設計作業 を容易にしたことも示された。

- 135 -


本研究の関係情報 は ,2次 元 だけでな く,3次 元 でも適応 できるが ,プ ロポー ショ ナル関係 とジョイン ト関係 だけが 2.5次 元の線分 (高 さを与 えても可能)と い う

制限が付 いている。

2)こ こでは ,一 般的な編集の コマン ド操作 との比較 を行 うために ,そ のキー入力操作 とそのパ ラメー タ入力の操作の違 い をまとめている。

1)Markus BOnn:MODELING ARCHITECTURAL FORMS THROUGH REPLACEMENT OPERAT10NS, ACADIA 87 Proceedings,1989,pp.103-130

2)William 」。Mitchell, The topdown Systelll and lts Use in Teaching, ACADIA 87 Proceedings,1989,pp.103-130 3)

TAKAMOTO Takayori, MOROZUMI Mituo, KIJIMA

Yasufumi, SEGAWA Youichiro : "A

STUDY ON THE DEVELOPMENT OF OB」 ECT ORIENTED INTELLIGENT CADD SYSTEM", THE FOURTH INTERNAT10NAL CONFERENCE ON COMPUTING IN CIVIL AND BUILDING ENGINERING(Extended Abstracts),p37,1991.8 4) 高本孝頼 ・両角光男 ・位寄和 久他

研究

(ク

ロー ン機能 の開発 ),第

:建築設計支援 インテ リジェン トCADに 関す る

14回 情報

。シス テム・ 利用技術 シンポジウム論

文集 ,1991,pp.169∼ 174 5) 高本孝頼 ,両 角光男

:建 築設計 インテ リジェン トCADシ ス テ ムの研究開発 (建 築

要素 の形態操作 のルール とその応用例 ),社 団法 人 日本 コン ピュー タ・ グラフ ィイ ク協会 ,第 8回 NICOGMPH論 文 コンテ ス ト論文集 ,1992.H,pp.233-241 6)

高本孝頼 ,両 角光男 :建 築要 素 に関する設計 ルー ル (関 係情報 )を 考慮 したシステ ムの試作 とその評価 (建 築設計支援 のためのイン テ リジェン トCADの 開発 に関す る研究

7)

その

1),日 本建築 学会計画系論文報告集 ,No。 441,1992.H,pp.159-166

」osep Fargas and Pegor Papazian: Metaphors in Design: An Experiment with a

Frame, Two Lines and Two Rectangles, ACADIA 92 Proceedings,1992,pp.13-22

- 136 -


第7章 総


1榊 聾 響

l事 柳

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献■ 1


7-1 研究の総括

本論文では,大 きくは 2つ のテーマで研究を進めてきた。第一は,「 デザイナーの設 計思考とCADの 形態操作からの関係設定の抽出」で ,第 2章 と第 3章 からなり,デ ザ イナーが設計 を行うプロセスを考察 し,さ らに在来 CADを 使 つて形態操作する中での ルール ,つ まり関係設定の抽出を行った。また第二は,「 関係設定 に基づ くシステムの 試作 と評価Jで ,第 4章 から第 6章 までからなり,関 係設定 に対応 した関係情報の提示 と,そ れを図形に組み込んで建築要素で自動作図処理するCADの 実現方法の技術的検 討 ,そ れに試作システムを使 っての実例の評価 を行つた。 第一では,デ ザイナーの設計思考プロセスと,設 計思考での CADに よる形態操作 を まとめると以下のようになる。 (1)デ ザイナーの設計思考プロセスのまとめ

① デザイナーは,建 物イメージを発想・思考 し,視 覚表現 を行い,さ らにそれを評 価 。選択 し,再 度発想・思考の繰り返しを行う3段 階の試行錯誤 の設計プロセス の仮説 を提示 した。 ② デザイナーは,視 覚シミュレーションを行いながら,ま た多 くの試行錯誤を繰り 返 し,設 計変更を行う トップダウン思考 とボトムアップ思考が存在する。 ③ デザイナーは,視 覚表現の中で ,単 に線分などの図形を描くのでなく,図 形間に 関係付けを意図しながら建築要素を作成 してい く。 ④ デザイナーは,建 築要素に伴って図形操作 を行 つている。

CADに よる形態操作の分析のまとめ

(2)設 計思考での

① 設計変更に対 し,編 集 コマンドを使 つて図形操作を行う。 ② 設計変更に対 し,包 絡処理 などのための連続 したコマン ドによる図形操作 を多 く 行 つている。 ③ 設計変更による建築要素の編集操作から,関 連する建築要素の編集操作 を伴うこ とがある。 ④ 通 り心を制御線に使 った図形操作が多く行われる。

- 139 -


デザイナー は ,発 想 した建物イメー ジの形状 と位置 ,大 きさを決 めて建築要素 の 決定を行 つている 。

(3)在 来 CADの 編集機能の分析 のまとめ ①

設計変更 に対 し,線 分 などの図形要素単位 の操作 しかな く,建 築要素単位の操作 ができな く,デ ザイナー は ,一度図形要素での編集操作 への翻訳 を行 って対応 し ている。

建築要素の編集 において ,コ マン ドの選択 ・操作 の 2重 ループが存在 し,煩 わ し い操作 を強 い られている。

(4)知 的 CADに おける関係設定 のまとめ ①

部材形状ルール

接続関係ルール

相互位置関係 ルール

主従位置関係ルール

比例位置関係 ルール

置換関係ルール

第二 は ,上 でまとめた関係設定 を,CADの 属性値 を使 い関係情報 として ,以 下 のよ うに対応付けた。

部材形状ルール

ユニオン関係情報

接続関係ルール

ジョイン ト関係情報

相互位置関係 ルール →

グルー プ関係情報

主従位置関係ルール →

ハ イアラキ関係情報

比例位置関係 ルール →

プロポー ショナル関係情報

置換関係ルール

クローン関係情報

さらにこれらの関係情報 を使 つて試作 システムの開発 を行 い ,在 来 CADと の操作 の 比較 か らその有効性 を述 べた。

- 140 -


7.2

D縮 汗 杷θ 石 り

本研究の成果 により,在来 CADで の操作 の煩 わ しさを大き く改善 し,建築要素 の単 位 で編集操作が行 えるようにな り,よ リデザイナーの思考 を直接的 に支援することがで きるようになった。 一方 ,関 係設定 を任意 にCAD上 の図形間に設定 で き ,ま たそれに沿 つて編集操作が できることか ら,デ ザイナーにとって は自由に建築要素 を構築 することが可能 とな って いる。このことは ,予 め決 まった建築要素か ら建物 モ デルを構築す るの と違 い ,デ ザイ ナー 自身が建物 モデル として知識 を図形 に教 えてい くことになる。またこの教 えた知識 で編集操作が可能 となり,教 えた知識 は保持 された状態で管理す ることができる。 この ことは ,ど の ようにして建築要素 などの設定がなされたかが記録 できることか ら,建築 の成 り立ち自体 を教 えることができることにもなる。 また ,本研究 は ,建 築設計 の初期段階における知的 CADシ ステムとして考慮 してき た。 しか し,本 研究でまとめあげた関係設定は ,建築分野 の意匠設計だけでな く,ま た 他の分野 でもい ろいろな図形処理 において利用 できるルールと考 える。

73 3次元への研究の展開

本研究では ,主 に 2次 元 の平面図の事例 を中心にケース・ス タディを行 つた 。現時点 での試作システムのすべ ての関係情報 は ,平 面図 を立 ち上げた 2.5次 元 まで対応 できる ようになって いる 。つ まリジョイン ト関係 およびプロポーショナル関係 に関 してのみ

,

2次 元 または 2.5次元 の線分 に限定 していることによる。 このジョイン ト関係や プロポー ショナル関係 を 3次 元で満足 して対応 できるようにす るには ,プ ロ グラム開発 の上でより複雑な処理が必要 となる。具体的には ,3次 元 での 面 と面 との接続 を保持す るルールや ,全体座標系 とロー カル座標系 との関係 を意識 した ルァ ルの処理 を考慮する必要が出て くる。

- 141 -



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本研究 を進めるにあた り,熊 本大学工学部両角光男教授 には ,4年 間の暖かいご指導 とご鞭撻 を賜 つた。また ,熊 本大学位寄和久助教授 には ,本 研究 に対 して適切な ご助言 とご指導 を賜 つた。ここに記 してお二人の先生に深 く謝意 を表 したい。 本論文 をまとめるに際 して ,熊 本大学工学部北野隆教授 ,延 藤安弘教授 ,中 村良三教 授 ,牧 野雄二教授 には ,有 益 なご助言 とご支援 を賜 り,心 より謝意を表 したい。 また ,熊 本大学工学部 にお いて研究活動 をともにしてきた大学院生又 は学部学生の諸 君 には ,心 よりお礼 を申 し上 げたい。 米国ハーバー ド大学 Graduate School of Designの William Jo MitcheH教 授 (現 マ サチ ューセ ッツエ科大学教授 )と 大阪大学工学部笹 田岡J史 教授 には ,本 システム開発 に て貴重なご意見 を承 り,日 本 オー トデスク株式会社岩本卓也社長には ,シ ステムの技術 的な ご援助 を賜 った。心 よりお礼 を申し上げたい 。

株式会社構造計画研究所三吉健滋技術営業本部取締役部長 には ,本 研究遂行上なにか と便宜 を図つて頂 き,ま た心強 いご支援 を賜 つた ,厚 くお礼 を申し上げたい。さらに株 式会社構造計画研究所富野壽代表取締役社長 ,久 米融技術営業本部取締役部長 ,菊 地亨 技術営業部部長代理 ,出 水田勉 CAD営 業部部長代理 には ,ご 理解 とご援助 を頂 き ,心 よりお礼 を申 し上げる次第である。またいつも暖かいご声援 を送って下 さつたCAD営 業部 の諸兄 ,村 上祐治氏 ,熊 谷優氏 ,川 合康一氏 ,前 田慎 二氏 ,他 の皆 さんに心 よりお 礼 を申し上げたい 。

最後 に ,今 は亡き千葉大学 工学部木島安史教授 には ,社 会人 である著者 を熊本大学大 学院博士課程 へ招 いて頂 き ,い ろいろとご支援 とご鞭撻 を賜 り,本 論文 をご報告 できな か つたのは悔や まれるが ,心 より謝意 を表 したい気持 ちである。

1993角 F3リ ヨ

高本

- 145 -

孝頼


研究発表の記録


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研究発表の記録 種類別 資料

発表年月

題 名

3次 元モデラーから図面編集システムヘの変換

発表誌名

共著者 本論文対応

1990.10

問題点

日本建築学会大会学術講演 木島安史 梗概集 EA] 両角光男

2.論 文

オブジェク ト指向を考慮 した建築設計 CADシ 1990.12 ステムの開発

日本建築学会情報シ 好AFJ用 木島安史 ム論文集,第 13号 両角光男 技術シンポゾウ

3.資 料

オブジェク ト指向建築設計 CADシ ステムの研 1991.01 究開発一〇CPと SOCPを 使 つた位置 と形状 の扱 いについて一

日本建築学会関東支部研究 木島安史 報告集 (計 画系) 両角光男 前田慎二

1。

第 5章

岡本憲文 矢野雅 4.資 料

建築設計 CAD開 発のための設計事例分析

1991.01

日本建築学会関東支部研究 瀬川洋一郎 報告集 (計 画系 ) 木島安史

第 3章

両角光男 真野恵司 5.資 料

6.資 料

建築設計インテ リジェン トCADシ ステムに関 する研究 その 1-CAD開 発のための建築設 計ルールの分析―

1991.03 日本建築学会研究報告九州 真野恵司

建築設計インテ リジェン トCADシ ステムに関 する研究 その 2-POCPを 加えたシステム 開発とその評価について一

1991.03 日本建築学会研究報告九州 両角光男

支部 (計 画系)

支部 (計 画系)

第 3章

木島安史 両角光男 前田慎二 岡本憲文 第 4章

木島安史 前田慎二 真野恵司 岡本憲文 矢野雅

7.論 文 A STUDY ON THE DEVELOPMENr OF OBJECT 0RIENTED INTELLIGENT CAAD SYSTEM

瀬川洋 一郎 木島安史 両角光男

第 4章

木島安史 両角光男 真野恵司 前田慎二 岡本憲文 矢野雅

第 3章

1991.09 日本建築学会大会学術講演 木島安史

第 4章

1991.08

THE FOURTH INTERNAT10NAL CONFERENCE ON COMPUTING IN CIVIL AND BUILDING

ENGINEERING (Extended Abstracts) 8。

9。

資料

建築設計 インテ リジェン トCADシ ステ ムに関 1991.09 す る研究 その l CAD開 発のための建築 設 計ルールの分析

資料 建築設計インテ リジェン トCADシ ステムに関 する研究 その 2 ォブジェク ト制御点 (OC P)を 考慮 したシステムの構築 とその評価

- 149 -

日本 建 築 学会 大会学術 講演

梗概集EA]

梗概集 EA]

両角光男 真野恵司 前田慎二 岡本憲文 矢野雅


種類別 10。

発表年月

題 名

資料 建築設計 インテリジェン トCADシ ステムに関 する研究 その 3 ォブジェクト制御点 (OC P)を 考慮 したシステムの機能 とその拡張

H.論 文 建築設計支援インテ リジェン トCADに 関す る

梗概集 [A]

1991。

12

支部 (計 画系 )

梗概集 [A]

第 6章

第 4章

矢野雅 豊崎実 山内博行

1992.08 日本建築学会大会学術講演 豊崎実

に関する研究 (そ の 1)一 設計者 の意識 と関係 を用 いた試作 システ ムの対応 ―

第 4章 第 5章

両角光男 矢野雅 山内博行

1992.03 日本建築学会研究報告九州 両角光男

開発 に関 す る研究 一部材配置機能 と形状編集機 能 の開発 ―

14.資 料 建築設計 インテ リジェン トCADシ ステ ム開発

日本建築学会情報漱テム 利用 両角光男 ム論文集 ,第 14号 位寄和久 技術シンポゾウ 前 田慎 二 矢野雅

支部 (計 画系)

第 4章

木島安史 真野恵司 矢野雅

1992.03 日本建築学会研究報告九州 豊崎実

開発 に関する研究 ―試作 システムと設計者 の意 識の対応 ―

13.資 料 建築設計支援イ ンテ リジェン トCADシ ステ ム

共著者 本論文対応

1991.09 日本建築学会大会学術講演 両角光男

研究 ―クローン機能の開発 ―

12.資 料 建築設計 支援イ ンテ リジェン トCADシ ス テ ム

発表誌名

第 6章

両角光男 矢野雅 山内博行

資料 建築設計 インテ リジェン トCADシ ステ ム開発 に関する研究 (そ の 2)一 部材配置 と形状編集 への拡張 ―

1992.08 日本建築学会大会学術講演 両角光男

16.論 文 建築設計 インテ リジェン トCADシ ステ ムの研

1992.H 社団法人 日本 コンピユー タ 両角光男

第 4章 第 6章

1992.H

両角光男

第 5章 第 6章

1993.03 日本建築学会研究報告中国 両角光男 九州支部 (計 画系)第 9号 位寄和久

第 2章

15。

梗概集 [A]

。グラフィイク協会 第 8回 NI∞ GRAPH論 文 コンテ ス ト論文集

究開発 (建 築要素 の形態操作 のルール とその応 用例 )

17.論 文 建築要素 に関する設計ルール (関 係情報 )を 考

慮 したシステムの試作 とその評価 (建 築設計支 援 のためのインテ リジェン トCADの 開発 に関 する研究 その 1) 18.資 料 建築設計支援インテ リジェン トCADに 関す る

研究―設計思考 に対応 した CAD機 能 の考察 ―

… 150 -

日本建築学会計画系論文報 告集 ,No。 441

第 4章

矢野雅 豊崎実 山内博行


建築要素の関係設定に着目した知的CADの開発研究  

1993年度,不明,高本孝頼

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