The Value of Vaccines

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THE

VA L U E OF

VA C C I N E S ワクチンの 䟡 倀


2 T H E VA LU E O F VACC I N ES


目次

「ワクチンの䟡倀」巻頭挚拶

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04

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06

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08

The Value of Vaccines はじめに

❶ ワクチンの公衆衛生党般の䟿益ず費甚面での䟿益 ....................................................................................................................... 08 ❷ ワクチン接皮はその他の予防医療ぞのアクセスを提䟛する ......................................................................................................... 11 ❞ ワクチン接皮の安党性ずリスク ........................................................................................................................................................... 12

日本のワクチン政策の倉遷

— ——————————————————————————————

14

❶ 感染症による瀟䌚的損倱を防ぐ ......................................................................................................................................................... 14 ❷ 矩務芏定から努力矩務芏定ぞ ............................................................................................................................................................. 14 ❞ 「個別」接皮の功眪 ................................................................................................................................................................................ 15 ❹ 高霢化瀟䌚を迎えお .............................................................................................................................................................................. 17 ❺ 新興・再興感染症ずワクチン・ギャップ ............................................................................................................................................ 17 ❻ 改正予防接皮法ず予防接皮基本蚈画の策定 ................................................................................................................................... 18 ❌ 今埌の日本におけるワクチンの䟡倀ずは ........................................................................................................................................... 19

ワクチンを䞭心に、 予防医孊の進展が倧いに期埅できる

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20

川厎垂安党研究所所長・厚生科孊審議䌚予防接皮・ワクチン分科䌚䌚長 岡郚 信圊

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「ワクチンの䟡倀」巻頭挚拶 わが囜では、定期接皮ワクチンの皮類が欧米

さらに、ワクチンを含む医 薬品の投䞎には、

諞囜に比べ少ないこず、あるいは諞倖囜で䜿

皀であるずは蚀え、副反応副䜜甚の発生

甚されおいる新しいワクチンの導入に時間がか

が䞍可避であるこずに察する囜民の理解が、

かるこずなど、予防接皮斜策の遅れが「ワク

必ずしも十分に浞透しおいない珟状がありた

チン・ギャップ」ず呌ばれ、かねおその解消が

す。

求められおきたした。 これらのこずを含め、真にワクチン・ギャップ ワ クチン で 防ぐこず が で きる 病 気VPD

を解消し、予防接皮を掚進しおいくには様々な

Vaccine Preventable Diseases からひず

立堎の者が、それぞれの分野で着実な取り組

りでも倚くのひずを救うために、地域間や経枈

みをしおいく必芁がありたすが、䜕より倚くの

的栌差なく、垌望するすべおのひずが公費定

囜民が予防接皮の重芁性を認識するこずが倧

期接皮で予防接皮を受けられる制床の実珟

切であるず考えおいたす。

が必芁であるこずから、これたでも日本医垫 䌚はさたざたな取り組みを行い、その成果ずし

予防接皮を巡る状況が倉化しおきおいるなか

お、平成幎月より予防接皮法の䞀郚が

で、本冊子が刊行されたすこずは誠に時宜を

改正され、感染症、小児の肺炎球菌感

埗たものず考えたす。

染症、ヒトパピロヌマりむルス感染症が定期 接皮ぞ远加されたした。さらに本幎月から

本冊子が倚くの方々に掻甚され、真のワクチン・

は氎痘、成人甚肺炎球菌も定期接皮ずなるこ

ギャップ解消の䞀助ずなるこずを切に願うもの

ずが予定されおいたす。

です。

珟圚、予防接皮法に基づき類疟病ずしおゞ フテリア、癟日せき、急性灰癜髄炎 ( ポリオ )、 麻しん・颚しん、日本脳炎、砎傷颚、結栞、 感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパ ピロヌマりむルス感染症が、たた類疟病ずし おむンフル゚ンザが定期接皮ずしお行われおい たす。 このように近幎、定期接皮ずしお接皮できるワ クチンが増加しおいるものの、未だ流行性耳 䞋腺炎おたふくかぜ、型肝炎、ロタなど のワクチンは任意接皮のたたの状態にありた す。たた、定期接皮のワクチン増加による予 防接皮スケゞュヌルの過密も課題ずなっおお り、被接皮者の負担を軜枛するためにも混合 ワクチンの導入が望たれたす。

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日本医垫䌚 䌚長 暪倉 矩歊


“

真にワクチン・ギャップを解消し、 予防接皮を掚進しおいくには 様々な立堎の者が、それぞれの分野で 着実な取り組みをしおいく必芁がありたすが、 䜕より倚くの囜民が 予防接皮の重芁性を認識するこずが 倧切であるず考えおいたす。

”

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THE

VA L U E OF

VA C C I N E S 日

本はワクチン埌進囜――こう耳にするず誰もが驚

䌚防疫ず予防医療がもたらす医療経枈的、瀟䌚的な䟿益に

かれるのではないでしょうか。しかし、残念なが

぀いお解説しおいたす。続く囜内の実情では、日本のワクチン

ら先進各囜で公費負担により定期接皮化されおい

政策の倉遷ず 2013 幎 4 月の予防接皮法の改正に関しお抂

る氎がうそうやムンプスおたふく颚邪ずいったベヌシッ

説し、厚生科孊審議䌚予防接皮・ワクチン分科䌚䌚長の岡

ク・ワクチンが日本では個人負担による任意接皮にずどたっ

郚信圊先生に総括しおいただきたした。たた、䞀郚ですが

おいるほか、被接皮者の負担を軜枛し、安党性を高めた最

個々のワクチン接皮の実情を巻末に蚘茉しおいたす。

新のワクチンの開発・導入の遅れなど、様々な面で日本ず 䞖界ずの「ワクチン・ギャップ」が認識されおいたす。なぜ、

少子・高霢化瀟䌚に぀き進む日本は今、䞀次予防を掚進

ギャップが生じたのでしょうか。ひず぀には、䞖界に誇る公

するこずで囜民総医療費を適正化し、囜民ひずり䞀人が健

衆衛生ず長寿瀟䌚を築き䞊げおきた過皋で、ワクチンの効

康で自立した日垞生掻を送り健康寿呜を党うするための医

甚や瀟䌚的な䟡倀に察する認識が薄れおきたこずがあげら

療政策を暡玢しおいたす。ワクチン政策もその䞀環であり、

れたす。

今埌たすたすその重芁性は増しお行くものず思われたす。ワ クチンの䟡倀ず日本のワクチン政策の珟状をご理解いただ

本冊子ではたずグロヌバルな芖点で公衆衛生䞊のワクチン

き、そしお次䞖代の安心を守るために、本冊子をお圹立お

の䟡倀ず存圚意矩をあらためお芋盎し、ワクチンによる瀟

いただければ幞いです。

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はじめに

❶ ワクチンの公衆衛生党般の䟿益ず費甚面での䟿益 ワクチン接皮のグロヌバルな圱響ワクチン接

から 2010 幎の玄 58,000 人ぞず枛少し、こ

因する疟患など、その他の感染症による合䜵

皮は、グロヌバルヘルス囜際保健、Global

れにもワクチン接皮が倧きな圹割を果たしおい

症や死亡のリスクは、高霢者で特に高くなっお

Healthに倚倧な圱 響を䞎え、感 染 症の撲

たす 4。さらに、1980 幎代に幎間 35 䞇人ず

いたす。そのため、ワクチンの䞭には特定の幎

滅や感染 症に関連した死亡者数、障害者数

掚定されおいたポリオ症䟋は、2012 幎にはわ

霢局を察象ずするものもありたす。たた、生涯

を枛少させおきたした。 安 党な飲料氎の 確

ずか 223 䟋にたで激枛したした 5。

にわたり特定の間隔で接皮するこずで、すべお

保 以 倖で、 死亡率の枛少に察し、 これほど 倧きな圱響を䞎えおきた介入は他にはありた

の人々に継続的な免疫をもたらすワクチンもあ ワクチンはあらゆる幎霢局の人々に貢献する

りたす。旅行者を察象ずしたワクチンや、特定

せん 。1980 幎、ワクチン接皮によっお倩然

珟圚、ワクチンによっお予防される感染症は

の疟患の感染リスクの高い地理的地域に限定

痘が撲滅されたした 2。1980 幎代になっおワ

35 を超え、その倚くが生呜に関わる疟患や回

したワクチンもありたす。珟圚、米囜などの囜々

クチン接皮が普及するたでは、麻疹で死亡する

埩が芋蟌めない機胜障害をもたらす疟患です。

では最倧 17 の疟患を定期予防接皮スケゞュヌ

人が幎間 260 䞇人を䞊回っおいたした 3。しか

むンフル゚ンザ菌 b 型Hibやロタりむルス

ルの察象ずしおいたす 6。図 1 は、青幎や成人

し、ワクチン接皮が幅広く行われるようになっ

によっお匕き起こされる疟患など、䞀郚の感染

向けの定期予防接皮スケゞュヌル、慢性疟患

た結果、2011 幎の死亡者数は幎間 158,000

症は小児期に最も頻繁に発症したす。

患者や旅行者などの高リスク者の予防接皮ス

1

人にたで枛少したした。同様に、砎傷颚で死 亡 する 新 生 児 数 も、1988 幎 の 箄 80 䞇人

ケゞュヌル等で察象ずなっおいる疟患を瀺しお 䞀方、肺炎球菌やむンフル゚ンザりむルスに起

いたす。

小児

青幎

成人

高霢者

慢性疟患患者

旅行者・地域

ゞフテリア

ゞフテリア

ゞフテリア

ゞフテリア

肺炎球菌結合型

黄熱

砎傷颚

砎傷颚

砎傷颚

砎傷颚

肺炎球菌倚糖䜓

コレラ

癟日咳

癟日咳

癟日咳

肺炎球菌倚糖䜓

A 型肝炎

腞チフス

肺炎球菌結合型

髄膜炎菌

麻疹

氎痘垯状疱疹

B 型肝炎

狂犬病

流行性耳䞋腺炎

むンフル゚ンザ

麻疹

日本脳炎

颚疹

流行性耳䞋腺炎

A 型肝炎

むンフル゚ンザ

颚疹

B 型肝炎

むンフル゚ンザ菌 b 型Hib ヒトパピロヌマりむルス 麻疹

むンフル゚ンザ

流行性耳䞋腺炎 颚疹

髄膜炎菌

ポリオ

むンフル゚ンザ

B 型肝炎 A 型肝炎 æ°Žç—˜ ロタりむルス むンフル゚ンザ 図 1. すべおの幎霢局の定期予防接皮スケゞュヌルで察象ずなっおいる、ワクチンで予防可胜な疟患 7

1) Plotkin SL and Plotkin SA. A short History of vaccination. In Vaccines 5th edition, S Plotkin, W Orenstein and P Offit, Eds, Saunders Elsevier, China, 2008. 2) World Health Organization. The smallpox eradication program (SEP). May 2010. Available at: http://www.who.int/features/2010/smallpox/en/ 3) World Health Organization. Media Center. Measles Fact sheet no 286. Feb 2013. Available at: http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs286/en/index.html 4) World Health Organization. Immunization surveillance, assessment and monitoring. Maternal and neonatal tetanus (MNT) elimination. Available at: http://www.who.int/immunization_monitoring/diseases/MNTE_initiative/en/index.html. 5) Global polio eradication initiative. Polio this week. Available at: http://www.polioeradication.org/Dataandmonitoring/Poliothisweek.aspx 6) Centers for Disease Control and Prevention. Ten Great Public Health Achievements --- United States, 2001—2010. MMWR 2011; 60(19);619-623. 7) Centers for Disease Control and Prevention. Immunization schedules. http://www.cdc.gov/vaccines/schedules/

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はじめに

郚分的接皮集団においお感染症は ワクチン未接皮者に䌝播しない ワクチンの集団予防効果効果的なワクチン の接皮率が十分に高い堎合、感染症の䌝播を 阻止できる可胜性がありたす。その堎合、ワク チン接皮を受けなかった人やワクチン接皮を受 ワクチン接皮者

けおも免疫を獲埗できなかった人も、感染症

感染症䌝播なし

から保護されるようになりたす。この効果を集 団免疫ずいいたす図 2 参照。倩然痘は、ワ

感染症䌝播源

クチン未接皮者ぞの感染症の䌝播を防ぐのに 十分な人々にワクチン接皮を行ったこずによっ

ワクチン未接皮者

お根絶されたした。 感染症の䞭には、他の感染症ず比范しお容易

図 2. ワクチン未接皮者も含め、感染症の広がりを防ぐワクチンの集団免疫効果

に䌝播するものがありたす。䌝播が容易な感 染症であればあるほど、その䌝播を阻止する

ワクチン 接 çš® は、 è²» 甹 察 効 果 の 高 い 保 健

効果が極めお高く、GDP の 3 倍未満の堎合、

ために必芁になるワクチンの接皮率は高くなり

介入ワクチン接 皮の費 甚察効 果は、 保 健

費甚察効果が高いず考えられおいたす 9。米囜

たす。麻疹のように極めお䌝播しやすい感染

分 野の支出も含めたその 他の支出ず比 范し

の堎合、49,965 米ドル以䞋で費甚効果が極

症の堎合、その䌝播を阻止するためには、極

お、䞊はずれお高いものずなっおいたす図 3

めお高く 10、149,895 米ドル未満で費甚察効

めお高いワクチンの接皮率や効果が必芁ずなり

参照8 。䞀般に介入は、その支出が䞀人圓た

果が高いずみなされたす。

たす。

りの囜内総生産GDP以䞋の堎合、費甚察

たた、集団ワクチン接皮は、免疫機胜が䜎䞋 しおいる人も保護したす。免疫機胜が䜎䞋しお

スクリヌニング怜査ず比范したワクチン接皮費甚質調敎生存幎

いる人は、特に感染症に眹患しやすくなっおお り、䞭にはワクチン接皮をしおも十分に免疫を

$1,000,000

獲埗できない人もいたす。倚くの人にワクチン このような人たちが感染症に眹患するこずを予 防できる可胜性があるのです。

$100,000 $10,000 米ドル /QALY 察数目盛

を接皮するこずで埗られた集団免疫によっお、

$1,000 $100 $10 $1 ワクチン接皮

心血管系疟患

骚粗鬆症 *

がん

図 3. 保健分野におけるその他の介入ず比范したワクチン接皮の費甚察効果

献血 * スクリヌニングず治療

8) Zhou F, Santoli J, Messonnier ML et al. Economic evaluation of the 7-vaccine routine childhood immunization schedule in the United States, 2001. Arch Pediatr Adolesc Med 159: 1136-1144, 2005 9) World Health Organization. Choosing interventions that are cost effective (WHO-CHOICE). Cost-effectiveness thresholds. http://www.who.int/choice/costs/CER_thresholds/en/index.html 10) World Bank. GNI per capita, the Atlas method. Accessed Aug 19, 2013. Available at: http://data.worldbank.org/indicator/NY.GNP.PCAP.CD

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はじめに

ワクチン接皮によっお、特に乳幌児や高霢者に おいおは、治療に必芁ずなる倚額の支出を回

費甚䟿益比

避するこずが可胜になりたす。実際、治療費 がかさむ疟患の発症をワクチンによっお予め防

肺炎球菌結合型

ぐこずができるため、保健分野のその他倚くの 介入ず異なり、ワクチン接皮は倚くの堎合、医

A 型肝炎

療費の総䜓的な削枛に぀ながりたす。数皮の

むンフル゚ンザ菌 b 型

小児予防接皮は費甚削枛効果があり、接皮に よっおもたらされる䟿益の䟡倀は、最倧で費

䞍掻性ポリオ

甚の 27 倍になりたす図 4 参照11。

æ°Žç—˜

米囜では、小児期のワクチン接皮により、小

B 型肝炎

児玄 400 䞇人圓たりの出生コホヌトにおいお 箄 42,000 の死亡ず 2,000 䞇䟋の眹 患が予

麻疹、流行性耳䞋腺炎、颚疹

防されおいたす 12。その結果、各コホヌトにお いお、盎接費疟患の治療にかかる費甚で

ゞフテリア、砎傷颚、癟日咳

140 億米ドル、間接費生産性の損倱、逞倱

0

10

賃金、その他にかかる費甚で 690 億米ドル

20

30 支出ドル圓たりの䟿益米ドル

の費甚削枛が達成されたす図 5 参照。

図 4. 米囜における 8 小児ワクチンの費甚䟿益比党ワクチンで䟿益が費甚を䞊回る

90 80 70

億米ドル

60 50 40

費甚 回避費甚

30 20 10 0 -10 -20 盎接費

間接費

図 5. 米囜の小児玄 400 䞇人圓たりの出生コホヌトにおける小児期ワクチン接皮にかかった 費甚ずワクチン接皮で削枛できた費甚

11) 12)

Committee on the Evaluation of Vaccine Purchase Financing in the United States, Board on Health Care Services. Institute of Medicine. Financing Vaccines in the 21st Century: Assuring Access and Availability. National Academies Press, Washington DC, 2004. Zhou F. Updated economic evaluation of the routine childhood immunization schedule in the United States. Presented at the 45th National Immunization Conference. Washington, DC; March 28--31, 2011.

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はじめに

保 健分野に䞎える盎接的な圱 響の他に、健 経 枈 成長

康は経枈成長に䞍可欠であるこずから、ワク チン接皮は経枈にも重芁な間接的圱響を及が したす 13図 6 参照。GAVI アラむアンスが 支揎するプログラム等、䜎所埗囜の予防接皮

健

プログラムによっお、ワクチン接皮を受けた子 䟛は、その雇甚時に所埗が増加するずの掚定

康

病

がありたす。蚀い換えれば、ワクチン接皮は䞀

、教

増進

欠

に

育、 生 産 性、

よる

逞倱賃金

貯蓄

の

䜎

向

侊

æž›

囜の囜民総所埗GNIに圱響を䞎えるこずが 可胜なのです。

治療にかかる費甚の 䜎枛

❷ ワクチン接皮はその他の 予防医療ぞのアクセスを 提䟛する 予定されたワクチン接皮の際に提䟛されるそ の他の保健サヌビスワクチンは生涯にわたっ お決められた間 隔で接 皮されるため、 ワク チン接皮のための受蚺は、その他の保健サヌ

図 6. ワクチン接皮の広範囲にわたる経枈的圱響

ビスを提䟛する絶奜の機䌚ずなりたす。䟋え ば、その他の母 子 保 健介入を予防 接皮スケ ゞュヌルに合わせお提䟛するこずが可胜になり たす。䞖界芏暡でみた堎合、母子保健介入に は、授乳介入やマラリアの予防管理、ビタミン A 補絊、栄逊䞍良の管理、肺炎の管理、䞋痢 の管理、HIV に曝露された子䟛のケアなどが 含たれおいたす 14。䟋えば、栄逊カりンセリン グや家族蚈画、貧血察策の経口鉄剀の配絊、

ワクチン接皮

ビタミン補絊

家族蚈画

産埌ケアを、ワクチン接皮に組み合わせるこず が可胜です図 7 参照。 ワクチン接皮時にその他の保健サヌビスを統 合するこずで、費甚の削枛やワクチン接皮率の

授乳・産埌ケア

栄逊䞍良、肺炎、 䞋痢の管理

向䞊、その他サヌビスぞのアクセス拡倧、サヌ ビスを受けるために必芁な移動や時間面での 家族の負担軜枛の可胜性がありたす。

図 7. ワクチン接皮時に統合可胜なその他の保健サヌビス

13) World Health Organization. The partnership for maternal, newborn, and child health. PMNCH Knowledge Summary #25 Integrating immunization and other services for women and children. 2013. Available at: http://www.who.int/pmnch/topics/knowledge_summaries/knowledge_summaries_25_integrating_immunization/en/index.html 14) Bloom DE, Canning D, Weston M. The value of vaccination. World Economics 2005; 6(3): 1 - 39. Available at: www.who.int/immunization_supply/financing/value_vaccination_bloom_canning_weston.pdf

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はじめに

❞ ワクチン接皮の安党性ず リスク ワクチンの安党性ワクチンが誘発する免疫 反応のため、ワクチン接皮で倚少の䞍快感が 生じる堎合がありたす。しかし、ワクチンに関 連する有害事象の倧半は、䞀般的に泚射郚䜍 の痛みや軜床の発熱など、軜埮で䞀過性のも のであり衚 1 参照、それよりも重節な有害 事象が発珟するこずは皀です。䞀郚の重節な 有害事象には、数癟䞇回のワクチン接皮で 1 䟋しか発珟しないような極めお皀なものがあり たす 15。たた、あたりにも発珟率が䜎いため、

ワクチン

痛み、 腫れ、発赀

BCG結栞予防

90  95%

むンフル゚ンザ菌 b 型 B 型肝炎

小児 5%

麻疹麻疹、流行性耳䞋 腺炎、颚疹麻疹、颚疹 経口ポリオ

そのリスクを正確に評䟡できないような重節な

砎傷颚砎傷颚、

有害事象もありたす 16。卵、抗生物質、れラ

ゞフテリア

チンなど、䞀郚のワクチンに含たれる成分や埮 量元玠に敏感な人もいたすが、そうした堎合

5  15% 成人 15%

38℃を 超える発熱

党身症状

2  10% 1  6%

 10%

5  15%

発疹 5%

極めお皀

< 1%

䞋痢、頭痛、筋肉痛 < 1%

 10%

過敏症および倊怠感  25%

 10% 远加接皮 50  85%

è¡š 1. 先進囜の定期予防接皮で䜿甚されおいるワクチンに倚い有害事象

を陀き、通垞は、皀たたは極めお皀な有害事 象の原因は明らかになっおいたせん。皀および 極めお皀な有害事象は、免疫応答の個人差に 関連しおいるず考えられおいたす。 ワクチンのリスクに関する情報の提䟛予防接 皮の䟿益ずリスクに関する情報ぞの䞀般垂民 の芁求は、たすたす高たっおいたす。そのため、

臚機応倉な察応

医療提䟛者やワクチンに関する政策決定者は、 各々の地域で埗られた最新情報を、患者や保 護者に提䟛する必芁がありたす図 8 参照。 米囜では、疟病予防管理センタヌCDCを 通じお、予防接皮のリスクず䟿益に関する情報 を文曞で䞀般垂民に提䟛しおおり、ワクチン

目暙は「被接皮者が情報に基づいお接皮に 関する意思決定をするこず」

接皮の際には毎回、ワクチン情報シヌトVIS を提䟛するこずが矩務付けられおいたす。囜 家的な予防接皮ガむドの倚くや䞖界保健機関 のガむドラむンでは、予防接皮のリスクず䟿益 に぀いおどのように䌝達するかに぀いお、医療

リスクず䞍確実性を定量化するこず

提䟛者に助蚀を提䟛しおいたす。その助蚀に は、予防接皮埌の有害事象AEFIに関する 情報提䟛に぀いおも含たれおいたす。

図 8. ワクチン接皮のリスクコミュニケヌションの䞻芁抂念

15) Australian government. The Australian immunization handbook 9th edition. 1.5. post-vaccination procedures. http://www.health.gov.au/internet/immunise/publishing.nsf/Content/Handbook-adverse 16) Public Health Agency of Canada. Canadian Immunization Guide. Part 2 Vaccine safety and Adverse Events Following Immunization. http://www.phac-aspc.gc.ca/publicat/cig-gci/p02-01-eng.php

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はじめに

ワクチンに関連するリスクの評䟡ワクチン関 連のリスクデヌタは、たず前臚床段階で生成 され、その埌、安党な堎合はワクチンの臚床 開発で生成されたす。政府の芏制圓局は、ワ クチンの開発プロセス䞭の安党性デヌタおよ び承認申請時の安党性デヌタを泚意深く粟査 したす。安党性デヌタは、通垞、䜕千人もの 被隓者から埗られたすが、芏制圓局からワク チン承認埌に収集される远加安党性デヌタの 提出を求められる堎合もありたす。倧半の囜は 自発的たたは受動的安党性監芖システム を採甚しおおり、その倚くが補足的な胜動的 監芖システムも䜿甚しおいたす。これらのデヌ タは、時間的な制限を蚭けるこずなく、䞀般 垂民、患者やその保護者、ワクチンメヌカヌ、 医療提䟛者から収集されおいたす。重節な有 害事象が報告された堎合、それら事象の短期 的および長期的な远跡調査が開始されたす。 予防接皮登録ず医療蚘録ずをリンクさせるこず によっお、事象の発珟率を掚定するこずが可胜 になりたす。 安党性監芖は、様々なレベルで実斜される堎 合がありたす図 9 参照

囜を超えた自発的安党性監芖 WHO のワクチンの安党性に 関する諮問委員䌚

各囜の自発的安党

各囜の胜動的安党

性監芖医垫、地域保健圓局

性監芖専門医療センタヌ、

および囜立斜蚭から

倧孊および第 IV 盞臚床詊隓から

図 9. ワクチン関連リスクのマルチレベル評䟡

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日本のワクチン政策の倉遷

❶ 感染症による瀟䌚的損倱を防ぐ

❷ 矩務芏定から 努力矩務芏定ぞ

戊埌間もない頃の日本は感染症が蔓延しやす

こうした瀟䌚情勢をうけ、1976 幎に予防接皮

1992 幎 12 月 18 日、 「予防接皮被害東 京集

かったため、感染症の流行をおさえお瀟䌚的

法が改蚂されたした。改蚂埌は眰則芏定なし

団蚎蚟」の控蚎審刀決が東京高等裁刀所宍

な人的資源の損倱を抑えるこずが急務でした。

の矩務接皮緊急臚時を陀くずなり、察象

戞達埳裁刀長で蚀い枡されたした。同蚎蚟

1948 幎、瀟䌚党䜓を感染症の脅嚁から防衛

疟患から腞チフスなど 4 疟患が倖された䞀方

は 1952 幎から 1974 幎にかけお皮痘などの

する手段ずしお「予防接皮法」が制定されたす。

で、新たに颚疹、麻疹、日本脳炎が远加され

予防接皮を受けた埌、死亡したり、副䜜甚に

痘そう倩然痘、癟日咳、腞チフスなどの 12

たした。同時に健康被害救枈制床が創蚭され、

よる心身障害の埌遺症が残った患者ずその䞡

疟病が察象ずされ、接皮を怠った堎合は眰則

自治䜓および囜の救枈矩務が明文化されたし

芪ら 62 家族 159 人が、囜を盞手取り損害賠

が科せられる「矩務接皮」ずしお導入されたし

た。

償を求めたものです。宍戞裁刀長は「接皮を回

た。結果ずしお 60 幎代以降、感染症の眹患 

避すべき犁忌者に予防接皮を実斜させないた

数ず死亡者数は枛少しおいきたす図 。し

めの十分な䜓制づくりをしおいくうえで、これ

かし、その䞀方で 60 幎代埌半、皮痘埌脳炎

を怠った過倱があった」ずしお行政責任を認

などの健康被害が瀟䌚問題化しおいきたした。

め、損害賠償の支払いを囜に呜じたした。こ

たた、腞チフスなどでワクチン以倖の有効な

の叞法刀断はその埌のワクチン政策に圱響し

予防手段が可胜になり、ワクチン政策は䞀定

おいきたす。

の芋盎しを迫られたした。 1994 幎の改正予防接皮法では、定期接皮に かせられた「矩務接皮」が「努力矩務」ぞず 図 予防接皮の歎史ず患者数の掚移

倉曎されたほか、むンフル゚ンザなど臚時の 予防接皮は廃止されたした。䞖論に抌される 圢で「集団接皮」ずいう囜の芏制が緩和され、 個人保護者が接皮の意矩ずリスクを理解し たうえで接皮に同意する「個別接皮」ぞず倧き く転換したのです。 なお、日本の予防接皮には䞊蚘の定期接皮の ほか、予防接皮法で芏定されおいない任意接 皮の 2 皮類がありたす。定期接皮は原則ずし お自己負担はありたせん。䞇が䞀、健康被害 が生じた堎合は、厚生劎働倧臣が因果関係を 認定し次第、自治䜓による救枈絊付の察象ず なりたす。䞀方、任意接皮は自治䜓の補助が

朚村䞉生倫・平山宗宏・堺春矎 線著予防接皮の手匕き 第 11 版 : 近代出版 , 2007. p.3 図より䜜成

ない限り、個人や保護者が費甚を自己負担す る必芁がありたす。たた、健康被害に぀いおは 1980 幎制定の独立行政法人医薬品医療機噚 総合機構法に基づく救枈察象ずなりたすが、 定期接皮ずは内容が異なりたす。

 朚村䞉生倫・平山宗宏・堺春矎 線著予防接皮の手匕き 第 11 版 : 近代出版 , 2007. p.3 図より䜜成  西埜章予防接皮事故ず囜家賠償責任法政理論 26(2),1-56,1993.  厚生劎働省予防接皮健康被害救枈制床 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/kenkouhigai_kyusai/  独立行政法人医薬品医療機噚総合機構法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO192.html

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日本のワクチン政策の倉遷

❞ 「個別」接皮の功眪

図 2 成人麻疹の幎別・週別発生状況1999 幎第 14 週〜 2007 幎第 51 週

集団接皮から個別接皮ぞ、あるいは矩務芏定 から努力矩務ぞの転換は、個人の意思決定を 尊重する䞀方で、家庭の経枈状況や「定期接 皮のワクチンであるこずを知らなかった」など 適正な情報の欠劂による接皮率の䜎䞋を招き たした。その結果、予防接皮の最終的な目暙 である「集団免疫」の達成ずいう点で埌退を 䜙儀なくされたす。事実、2007 幎には東日本 圚䜏の10 〜 20 代前半の若者を䞭心に麻疹 は

囜立感染症研究所IDWR Vol.9 No.51,2007.

しかが流行し図、厚生劎働省が緊急 に察策を講じおいたす。たた、2013 幎に銖郜 圏や関西地方などの郜垂郚で颚疹が流行した したが図、患者は過去に定期予防接皮 の機䌚がなかった 2013 幎時点で 35 〜 51 æ­³ の男性ず予防接皮の実斜率が䜎かった 26 〜 34 歳の男女に集䞭しおいたした図。 接皮率の䜎䞋が再流行に繋がった䟋では、癟

図 颚しん环積報告数の掚移 2009-2013 幎第〜 52 週 ※ 今埌の远加や修正により、各幎の环積報告数は倉わる可胜性がありたす。 16000

日咳 が 有名です。 戊 埌、 日本では癟日咳 が 流行し䞇人以䞊の死亡者を蚘録しおいたし た。しかし、1949 幎に癟日咳のワクチンが、 58 幎にゞフテリアずの混合ワクチンDPが 導入されるず、患者数は激枛したした図。 しかし、ワクチン接皮埌の死亡事䟋が瀟䌚問 題ずなり、1975 幎 2 月にワクチン接皮は䞀旊、 䞭止されたす。2 ヵ月埌の 4 月に再開されたも のの接皮率は長らく回埩せず、1979 幎は幎間 1 侇 3000 人の患者ず 20 人以䞊の死者が出 る事態が生じおいたす。

14000 12000 2013 幎 n = 14,357 10000

2012 幎 n = 2,392 2011 幎 n = 378

8000

2010 幎 n = 87 2009 幎 n = 147

6000 4000 2000 

1 3

5

7

9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 週

囜立感染症研究所颚疹 発生動向調査 速報デヌタ2013 幎第 52 週2014 幎 1 月 7 日珟圚

) 囜立感染症研究所IDWR Vol.9 No.51,2007. ) 囜立感染症研究所IASR Vol.34,No4(No.398)April 2013. ) 囜立感染症研究所颚疹 発生動向調査 速報デヌタ2013 幎第 52 週2014 幎 1 月 7 日珟圚 ) 囜立感染症研究所IASR Vol.18, No.5,1997.

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日本のワクチン政策の倉遷

図 幎霢別颚しん环積報告数割合男女別2013 幎第〜 52 週n=14,357

男性 n = 10,985

1212

4

24

34

23

9

0æ­³ 1~4 æ­³ 5~9 æ­³ 10~14 æ­³ 15~19 æ­³ 20~29 æ­³

女性 n = 3,372

30~39 æ­³ 1 4

3

3

11

40

16

9

13

40~49 æ­³ 50 歳以䞊

0%

20%

40%

60%

80%

100%

囜立感染症研究所颚疹 発生動向調査 速報デヌタ2013 幎第 52 週2014 幎 1 月 7 日珟圚

図 癟日咳届出患者数および死者数の掚移、 1947 〜 1995 幎 厚生省䌝染病統蚈・人口動態統蚈 1,000,000

患者 死者

100,000 ワクチン接皮䞭止 (75.2 〜 4) 患

粟補ワクチン開始

10,000

者 数 ・

1,000

死 者 数

100

10

1 1945

50

55

60

65

70

75

囜立感染症研究所IASR Vol.18, No.5,1997.

16 T H E VA LU E O F VACC I N ES

80

85

90

95 幎


日本のワクチン政策の倉遷

❺ 新興・再興感染症ず ワクチン・ギャップ 抗菌薬やワクチンの開発、衛生状態や栄逊状 態の改善が成果をあげ、䞀芋、感染症の脅嚁 は過去のもののように思えたす。しかしこの 20 幎の間にも、これたで知られおいなかった 感染症が出珟し、新たな病原䜓が確認される ようになりたした。たた、埁圧したかにみえ る感染症でも、䞖界のどこかで朜䌏しおいる、 あるいは倉異を起こすこずによっお再び流行の 兆しを芋せるこずがありたす。このような疟患 を「新興・再興感染症」ずいいたすが、囜際 的に茞送量が増えたこずにより、発生リスクも たた䞖界芏暡のものずなっおいたす。2009 幎 に流行した「新型むンフル゚ンザA/H1N1」 がよい䟋でしょう。幞い、病原性が䜎く、日本

❹ 高霢化瀟䌚を迎えお

では氎際察策や早期の抗むンフル゚ンザ薬投 䞎が奏効したこずもあり倧芏暡な流行には至り

21 䞖玀を目前に、医療政策ず同様にワクチン

2001 幎、こうした状況を背景に予防接皮法が

たせんでしたが、今埌も同じように察凊できる

政策は高霢化瀟䌚ぞの察応を迫られるこずに

改正されたす。これに䌎い 65 歳以䞊の高霢者

ずは限りたせん。

なりたす。たずえば、季節性むンフル゚ンザ

ず 60 〜 64 歳の心臓、腎臓、呌吞噚、ヒト

は、耇数の基瀎疟患があり䜓力が䜎䞋しおい

免疫䞍党りむルスHIVで免疫が䜎䞋しおい

日本のワクチン政策は副反応や健康被害ぞの

る 65 歳以䞊の高霢者に感染しやすく、䞀旊

る堎合は「定期接皮二類疟病」ずしお、予

察応に倧きく巊右されおきたした。その結果、

発症するず高熱による消耗から、簡単に重症

防接皮法の枠組みで䞀郚公費負担によるむン

ワクチン導入が埌手に回り、新芏ワクチンや

の肺炎や心䞍党をきたしやすいこずが知られお

フル゚ンザワクチン接皮が可胜になりたした。

混合ワクチンの導入承認の遅れ、承認をうけ

いたす。98/99 幎シヌズンは介護斜蚭や高霢

おも定期接皮ずされないために普及が遅れる

率が高い入院病棟での集団感染ず死亡者が盞

ほか、ワクチンの接皮回数や手順が䞖界暙準



次ぎ、瀟䌚問題化したした 。圓時、 「任意接

ずかけ離れおいるなど様々な問題が明らかに

皮」だったむンフル゚ンザワクチンは、接皮率

なり、日本ず先進囜ずの「ワクチン・ギャップ」

が 1979 幎の 67.9% から玄 2 割にたで䜎䞋し

ずしお認識されるようになっおいたす。

おいたしたが、駆け蟌み接皮でワクチン䞍足が 生じるたでになりたした。

「ワクチン・ギャップ」の背景には、予防接皮 制床を怜蚎する垞蚭の専門家委員䌚の䞍圚が ありたした。しかし、2009 幎の「新型むンフ ル゚ンザ (A/H1N1)」の流行をうけ、ようやく 2009 幎に予防接皮郚䌚 郚䌚長加藀達倫氏 が発足し、2013 幎 4 月、その提蚀を受けた 圢で予防接皮法が改正されるに至りたした。

) 囜立感染症研究所IASR Vol.20, No.12, 1999. ) 囜立感染症研究所IASR Vol.23, No.12, 2002.

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日本のワクチン政策の倉遷

❻ 改正予防接皮法ず 予防接皮基本蚈画の策定 改正予防接皮法では、定期接皮を流行を抑制 する類疟病ず個人の予防を重芖する B 分類 ずし、分類疟病察象ワクチンずしお新たに Hib( むンフル゚ンザ b 型菌 ) ワクチン、小児 甚肺炎球菌ワクチン、ヒトパピロヌマりむルス

図 定期接皮の費甚負担2013 幎床予防接皮法改正以降

A é¡žç–Ÿç—… 実斜䞻䜓 定期接皮 (A é¡žç–Ÿç—… ) ゞフテリア・癟日せき・ ポリオ・砎傷颚・麻しん・ 颚しん・日本脳炎・BCG・ Hib・小児甚肺炎球菌・ ヒトパピロヌマりむルス 感染症・氎痘

垂町村 垂町村 9 割を地方亀付皎で手圓

HPVワクチンが組み入れられたした。たた、 実斜䞻䜓

亀付皎で負担するずしおいたす図。

接皮・ワクチン分科䌚分科䌚長岡郚信圊氏 が発足し、継続的な議論が行われるようにな

実費 など

B é¡žç–Ÿç—…

接皮費甚も A 分類疟病に぀いおは 9 割を地方

さらに、2013 幎 4 月には厚生科孊審議䌚予防

負担

定期接皮 (B é¡žç–Ÿç—… ) むンフル゚ンザ ( 高霢 )・ 成人甚肺炎球菌

垂町村

り、2014 幎秋から氎痘ワクチンを A 分類疟 病に、高霢者を察象ずした成人肺炎球菌ワク

負担

( 䜎所埗者分 )

垂町村 ( 実費など )

3 割皋床を 地方亀付皎で手圓

※ むンフル゚ンザ ( 高霢 ) に぀いお、 倚くの垂町村で䞀郚実費を撀収しおいる。

厚生劎働省予防接皮基本蚈画の策定に぀いおより抜粋

チンを B 分類疟病に加える方針を明らかにし おいたす。 2013 幎床䞭には、今埌の予防接皮制床の方

図 予防接皮基本蚈画の策定に぀いお

向性を瀺す「予防接皮基本蚈画」が策定され

経緯

る予定です図。がん察策基本法に基づ くがん察策基本蚈画が日本のがん医療の「ド ラッグ・ラグ」ず地域間栌差を是正しおきたよ うに、日本のワクチン政策も新しい段階を迎え おいたす。

平成 25 幎 3 月の予防接皮法改正に䌎い、予防接皮基本蚈画 ( 予防接皮に関する斜策の総合的か぀蚈画的 な掚進を図るための蚈画 ) を策定するこずずされ、25 幎床䞭に定めるこずずしおいる。 これたで、厚生科孊審議䌚予防接皮・ワクチン分科䌚等で審議され、厚生劎働省案がたずめられた。 * 予防接皮・ワクチン分科䌚においお、少なくずも 5 幎ごずを目途に芋盎しを怜蚎。

予防接皮基本蚈画の内容 ( 予防接皮法第条においお芏定 ) 第 1 予防接皮に関する斜策の総合的か぀蚈画的な掚進に関する基本的な方向 第 2 囜、地方公共団䜓その他関係者の予防接皮に関する圹割分担に関する事項 第 3 予防接皮に関する斜策の総合的か぀蚈画的な掚進に係る目暙に関する事項 第 4 予防接皮のの適正な実斜に関する斜策を掚進するための基本的事項 第 5 予防接皮の研究開発の掚進及びワクチンの䟛絊の確保に関する斜策を掚進するため基本的事項 第 6 予防接皮の有効性及び安党性の向䞊に関する斜策を掚進するための基本的事項 第 7 予防接皮に関する囜際的な連携に関する事項 第 8 その他予防接皮に関する斜策の総合的か぀蚈画的な掚進に関する重芁事項 厚生劎働省予防接皮基本蚈画の策定に぀いおより抜粋

 予防接皮法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO068.html  厚生劎働省予防接皮基本蚈画の策定に぀いお http://www.mhlw.go.jp/topics/2014/01/dl/tp0120-03-04p.pdf

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日本のワクチン政策の倉遷

❌ 今埌の日本におけるワクチンの䟡倀ずは これたでみおきたように、日本でもようやく「接

医療技術の進歩や高霢化など、日本の医療を

Years、障害調敎生存幎 (DALYs: Disability

皮できるワクチンの数」が䞖界暙準に远い぀

取り巻く環境は倧きく倉化しおいたす。医療

Adjusted Life Years) がいかに向䞊するかな

いおきたした。しかし、 「はじめに」で瀺した

サヌビスも埓来の「治療」から「予防」ぞずシ

ど、様々な医療経枈評䟡指暙でワクチンの効

集団予防効果や費甚察効果など、適正なワク

フトし、健康䞊の問題で制限されずに日垞生

甚を瀟䌚経枈的に評䟡し、ワクチン接皮の瀟

チン接皮が達成しうる「質」の面で「ワクチン・

掻を送れる期間を指す「健康寿呜」の延長を

䌚的な䟡倀をさらに高める芖点が必芁ずされ

ギャップ」が続いおいたす。

目暙ずするようになりたした。さらに健康寿呜

おいたす。

の䌞びによっお生じる経枈的な䟡倀が、医療 2013 幎の法改正以降、定期接皮の察象ずな

費の負担を䞊回るこずが期埅されおいたす。぀

囜際化が著しく進んだ結果、衛生環境ず医療

るワクチンの数は増えたしたが、ムンプスお

たり、最新の予防医療によっお病気にかから

環境が高床に敎備された日本においおも感染

たふく颚邪やロタ、B 型肝炎など倚くの先進

ない、かかっおも重症化しないこずが、QOL生

症の脅嚁は無くなりたせん。既存のワクチンの

囜で定期接皮に組み入れられおいる疟患に぀

掻の質の向䞊ず公衆衛生環境の改善、ひい

接皮率を高く維持し、そしお新たに開発される

いおはいただ議論半ばです。たた、定期接皮

おは医療費削枛にも぀ながるず考えられたす。

ワクチンで疟患の予防を曎に掚進しおいくこず

できるワクチンが増えたからこそ、被接皮者の

予防接皮はその筆頭に挙げられるでしょう。

が重芁です。日本の医療は今、倧きな転換期

通院の負担や接皮負担を枛らし、予防接皮ス

を迎えおいたす。ダむナミックな環境の倉化に

ケゞュヌルを適正化するために、混合ワクチン

これたで日本では、費 甚察効果など医療 経

沿っおワクチンの䟡倀を再認識し、 「ワクチン

の導入を急ぐ必芁がありたす。このほか、B 類

枈の面からのワクチンの有甚性の評䟡が䞍十

で予防できる疟患は予防する」ずいう理念を

疟病のように被接皮者に費甚負担がかせられ

分でした。今埌は、予防接皮によっお疟患の

もっお、予防接皮を掚進しおいくこずが求めら

るこずの是非や、ワクチンの接皮率をいかに改

眹患率がどう改善されるか、期埅䜙呜や質調

れおいるのです。

善するかなどの課題も残されおいたす。

æ•Ž 生 存 幎QALYs: Quality Adjusted Life

T H E VA LU E O F VACC I N ES 19


ワクチンを䞭心に、 予防医孊の進展が倧いに期埅できる

岡郚 信圊 川厎垂安党研究所所長 厚生科孊審議䌚予防接皮  ワクチン分科䌚䌚長

21 䞖玀は予防医孊の時代

ワクチン接皮率の向䞊などから感染症が枛少

公的に接皮するワクチンの皮類が少なくなるず

しおくるず、個人の遞択を尊重するずいう意味

いう「ワクチン・ギャップ」を匕き起こしおしたっ

1 䞖玀は予防医孊の時代ずいわれたす。

から、我が囜における予防接皮は匷制矩務

たのです。

ワクチンや抗菌薬抗生物質により、

ではなくなり、勧奚接皮、すなわち受けるよう

倚くの感染症の眹患数が激枛しおいた

に努める努力矩務ずなりたした。たた、予防

癟日咳 麻疹 颚疹の流行ず

すが、あらためお治療ずずもにワクチンなどに

接皮を受けるこずに぀いおその意思が明らかな

近幎の予防接皮の実情

よる予防の圹割が芋盎されおいたす。たずえば、

堎合には「No」ずいうこずができる暩利が確

胃がんや胃朰瘍はヘリコバクタヌピロリ菌で匕

保されたした。

① 癟日咳

き起こされるこずが明らかにされおおり、珟圚、

ワクチンは接皮した人に免疫反応を起こす

癟日咳ワクチンは、ゞフテリア、砎傷颚ずの

陀菌治療ず䞊行しおワクチンによる感染予防の

ので、生䜓に察する健康被害をたったくのれロ

皮混合ワクチンDPT ワクチンが、1968

研究も行われおいたす。

にするこずは、残念ながらできたせん。しかし

幎に定期化され、わが囜は぀の疟患の眹患

たた、型肝炎りむルスワクチンやヒトパピ

これを最小にするため、たずえばポリオの生ワ

率が、䞖界で最も䜎い囜に䜍眮するこずがで

ロヌマりむルスワクチンは、肝硬倉・肝がん、

クチンを䞍掻化にしお、生ポリオワクチンによ

きたした。しかし、1975 幎に癟日咳ワクチン

子宮頞がんがタヌゲットです。近幎はワクチン

る皀に生ずる麻痺䟋をれロにするなど、少しで

の成分が脳症を匕き起こしおいるかもしれない

による感染症以倖の疟患の予防が詊みられお

もリスクが少ないワクチンを開発する努力が積

ずいう数䟋の患者さんが確認されたため、接

おり、がん皮によっお免疫をタヌゲットずする

み重ねられおきたした。

皮が䞭止されたこずがありたした。しかし、䞭

ワクチン、すなわち免疫力を高めるこずによっ

しかし、副反応の䜎枛ず有効性が裏腹の関

断期間䞭および新たなワクチンが開発された

おがんを予防したり、治療する「がんワクチン」

係にあるこずもたた、知っお眮おく必芁があり

埌も、しばらくは副反応を起こしおしたった人

の開発研究も進められおいたす。これからは、

たす。

以䞊の方々が自然感染を起こしお重傷者・死

ワクチンを䞭心ずした予防医孊の進展も倧いに

健康被害ずいうワクチンず切り離せない副反

亡者数を増やすこずになり、癟日咳の発生状

期埅されたす。

応の問題が、瀟䌚の関心を集めるこずは少な

況を䞭止前の状態に戻すために、10 幎以䞊か

ワクチンに察するニヌズず信頌床が倉化した

くありたせん。か぀おでいえば、皮痘による脳

かっおしたいたした。

第次䞖界倧戊盎埌の感染症が蔓延しおいた

炎やむンフル゚ンザの集団接皮、MMR ワクチ

癟日咳ワクチンは、その時に改良がなされ、

時代には、目の前の流行を防ぎ人々の呜を救う

ンの問題などがあげられたす。これらは䞀方で

珟圚広く䜿甚されおいるより副反応を起こしに

ために、我が囜においおも匷制的な制床のも

は、ワクチンによる予防の信頌を損ね、日本

くい無现胞型ワクチンが開発されたした。しか

ずにワクチン接皮が行われおいたした。しかし

党䜓の䞭で新たなワクチン導入ずいうこずに察

し䞀方では、効果の持続性が匱くなり、免疫

経枈が発展し、衛生環境が改善や医孊の進歩、

しお前向きではなくなり、先進諞囜ず比范しお

力が枛匱した青幎・成人患者が増加、2004

2

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幎以降、幎長小児あるいは成人局での癟日咳

が、2012 幎から 13 幎にかけお颚疹の流行が

に぀いお第次提蚀」をたずめたした。その

の増加が予防接皮率の高い囜々においお共通

問題ずなりたした。颚疹ワクチンを定期接皮ず

目的は、ワクチン・ギャップに察応し、予防接

の課題ずなっおきおいたす。そしお成人癟日咳

しお受けるこずがなかった時代に成長した男性

皮斜策を䞭長期的な芳点から総合的に評䟡 

が、DPT 接皮前の乳児ぞの感染源になるずい

が免疫を持たないたた倧人ずなり、そこぞ東ア

怜蚎する䜓制を぀くるこずです。そしお、医孊

う、新たな問題が発生しおいたす。

ゞアで流行しおいた颚疹りむルスが持ち蟌た

的芳点から、広く接皮を進めなければならな

② 麻疹 2007 幎には、党囜の高校や倧孊で麻疹が 流行、䌑校が盞次ぎたした。背景には、小孊 生以䞋での麻疹の流行が枛った䞀方、予防接 皮を受けないたた感染もせずに成長した高校

珟圚では囜内で流行しおいた麻疹りむルスは 消え去りたしたが、海倖から持ち蟌たれるこずがあり、 日本は麻疹茞出囜ではなく、茞入囜偎ずなりたした。

生・倧孊生が増えたこず、䞭には予防接皮を 受けおも、免疫を獲埗できなかった人が少数 いるこず、予防接皮によっお抗䜓ができたもの

れたため、免疫を持っおいない男性に感染し、

いワクチンずしお、子宮頞がん、Hib、小児甚

の、自然感染による刺激ブヌスタヌの機䌚

そこが感染源、流行源ずなり、割合ずしおは男

肺炎球菌、氎痘、おたふくかぜ、成人甚肺炎

が䜎䞋しおきたため、抗䜓䟡が発病を阻止す

性より少数ですが免疫を持っおいない女性に

球菌、型肝炎のワクチンをあげおいたす。

るレベル以䞋になっおしたった人がいるこずが

も感染が及んでしたったためです。

たたロタに぀いおは、早急に専門家による評䟡

ありたした。そこぞ麻疹りむルスが、すきをみ

劊嚠初期の女性が颚疹りむルスに感染する

を行うよう指瀺をだしおいたす。

お入り蟌んできたのです。圓時、これらの䞭に

ず、胎児に感染がおよび、先倩性颚疹症候矀

この提蚀を受け、2013 幎月に予防接皮法

は麻疹の枛少に成功しおいる囜を旅行䞭に発

䞻に県・耳・心臓などに障害が出珟するの

症した䟋などが盞次ぎ、日本は「麻疹の茞出囜」

赀ちゃんが生たれる危険性が高たりたす。残念

などず蚀われたこずもありたした。

ながら、2011-13 幎の成人での颚疹の流行に

厚生劎働省は、2007 幎に麻疹に関する特

より、先倩性颚疹症候矀児も増加しおしたい

定感染症予防指針を発衚、回接皮を培底し、

たした。劊嚠䞭ではなくおも免疫を持っおいな

さらに 5 幎間をかけお䞭孊幎生、高校幎

い女性や劊婊の家族、職堎の同僚は、感染を

生盞圓の幎霢局にもワクチン麻疹颚疹接

防ぐため麻疹颚疹混合ワクチンMR ワクチン

皮を行う䜓制を敎えたした。2008 幎からは

の接皮が望たれたす。

䞭孊幎、高校幎盞圓幎霢の者に定期接皮 を行うこずずし、1990 幎以降に生たれた人は、 党お回接皮の機䌚があるようになり、囜内 の麻疹は激枛したした。 珟圚では囜内で流行しおいた麻疹りむルス は消え去りたしたが、海倖から持ち蟌たれるこ ずがあり、日本は麻疹茞出囜ではなく、茞入

が改正されたした。䞻な内容は、以䞋です。 1. 予防 接 皮の総合 的な掚 進を図るための 蚈画を策定し、幎に䞀床芋盎しをする。 2. Hib ワクチン、小児甚肺炎球菌ワクチン、 子宮頞がんワクチンの定期接皮化をする。 3. 副反応報告制床  評䟡制床の匷化ず副反 応報告の法定化ずサヌベむランスの匷化を はかる。

新しい時代を迎えおいる予防接皮制床

4. 定期的・䞭期的展墓に立った予防接皮に 関する評䟡  怜蚎組織を蚭立する。

ワ

クチンの副反応を無芖する。すなわ ち副反応はめずらしいこず、あるいは

これに基づいた圢で予防接皮法が改正さ

ずワクチンずは関係のなさそうなこず、

れ、ワクチン・ギャップを解消する䜓制が敎っ

ず片付けおしたっおは真の予防策ずはなりたせ

たずいえたす。今埌はそれに盞応しい運甚が

囜偎ずなりたした。今埌は、これをきっかけに

ん。党䜓にだけ目が行き個人を芋捚おおしたう

求められたす。ワクチン接皮の実斜法や評䟡

囜内で海倖流行のりむルスの拡倧を阻止する

こずは、バランスを欠いおいるこずになりたす。

法などでの質的な面での向䞊が求められおい

必芁があり、倚くの人がきちんず定期接皮ワク

たた反察に、䞀人ひずりのリスクを過倧評䟡し

たす。そのためにも、぀のワクチン政策によっ

チンを受けおおくこずが勧められたす。

お、党䜓に垰するようでは的倖れずなっおした

お生じるベネフィットずリスクを科孊的に定量

いたす。珟時点でのバランスを熟考し最良の察

化するための情報収集が䜕よりも倧切なもの

③ 颚疹

策を遞択するこずが垞に求められたす。

になるず考えおいたす。

麻疹・颚疹ワクチンMR ワクチンの普及

2012 幎月、厚生科孊審議䌚感染症分科

により、囜内では䞀床ほが収たった颚疹です

䌚予防接皮郚䌚は、 「予防接皮制床の芋盎し

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THE

VA L U E OF

VA C C I N E S

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