Asia Research News 2022: ELSI Japanese Version

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ELSI | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY

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40億年前の火星の想像図

ELSI次期所長について

関根康人は、地球化学者、教授、 そして地球生命研究所(ELSI) の 次期所長(2022年4月任期開始)。 惑星や衛星に生命を生み出し、 そ してそれを支える環境要因を化 学的視点から理解することによっ て 「なぜ地球は居住可能な惑星 なのか」 や「太陽系では地球以外 に生命は存在するのか?」 などの 質問の解明に繋がる研究を行う。 関根ラボの研究対象は、地球、火 星、土星の衛星であるエンケラド ゥスとタイタン、木星の衛星エウロ パなど。2018年ELSI入所。

進化の幕開け: ELSIが挑む地球外生命の探求 東京工業大学地球生命研究所(ELSI) は今年、転機を迎える。10年前の設立当初からのテーマで あった 「地球と生命の起源」 から踏み出し、地球外生命の可能性まで研究対象を広げていく。 次期 所長の関根康人教授にこれからのELSIが目指すところを聞いた。

これまでとこれからの10年間の ELSIについて教えてください。 これまでの10年間でELSIは、分野融 合によって生命の起源を地球の形成 と進化の帰結の一つとして理解する という土台「ELSIモデル」 を作りまし た。 ELSIモデルは、生命の起源を単なる 化学反応として理解するのではなく、 太陽系の形成から現在の生命圏や 人間圏ができるまでの、一連の地球 生命間の相互作用の一つの帰結とし て理解するためのものです。

Credit: N. Escanlar, ELSI

応できるのか、地球外でも生命は発 生することができるのかを理解した いと思っています。

から 「Universal Biology」 にも移して いきます。 「Universal Biology」 の概 念の創成することを大目標として、地 球以外にも生命を宿す惑星の可能 地球外の生命の可能性を考える上 性を明らかにしていきます。生命の普 では、JAXAやNASA、 ESAとも有機 遍性を追求すれば、おのずと地球を 的な協力関係を作る必要があります。 飛び出して宇宙における生命を考え これにも次の10年では力を入れま る必要があります。 す。ELSIが予測した、地球外生命が

関根先生自身は、研究者としてど んな研究を行っていますか? 私自身は、地球を含めた太陽系天体 が持つ、大気や海洋の起源・進化に ついて興味を持って研究しています。 特に、化学的な側面から、天体の大 気や海洋の化学組成が、 どのように 進化し、 どのような要因でそれが決 定されてきたのか、理解したいと思っ て研究しています。研究手法は、室内 実験、探査データの解析、数値モデル、 野外フィールド調査など、 多岐にわた ります。

モンゴルの凍った湖での現地調査。

Credit: ELSI

2022

なぜELSIで研究をしようと思った のですか? 私がELSIに来たのは、2018年6月で す。3年半くらいが経ちました。ELSI

Credit: Creative Commons

い分野です。ELSIは、世界中の誰も が思うような、皆さんの 「夢や好奇心 を集めるランドマーク」 になっていき たいと思っています。一部の億万長 者だけが支援する特別な研究所でも なく、 また逆に、国家が国策により多 大な資金を投入するような研究所で もなく、人類が普遍的に持つ好奇心 を満たし、夢をかなえることで、皆さ んに支えられて持続する研究所を目 指したいと思っています。 これができ 次の10年間で、 ELSIはどのような るのは世界でも限られた環境だけだ 研究所を目指していきたいですか? と思います。 そして、 日本はそのうち の一つの場所だと思っています。 ELSIが標榜する 「生命の起源」 や「地 球外生命」 は、一般からも関心が高

ASIA RESEA RC H NE WS

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Further Thilina Heenatigala | thilinah@elsi.jp information Earth-Life Science Institute (ELSI) Tokyo Institute of Technology

で研究しようと思ったのは、生命科学 や複雑系科学といった分野との密接 な共同研究ができると思ったからで 具体的には、合成生物学で地球の生 す。私のこれまでの研究歴では、化 命あるいは地球外の生命を含めた 学に着目した研究を行ってきました 異なる生命の形を、機能を持つ分子 が、10年ほどが経ち、地球外生命に たちからデザインして作っていきます。 本腰を入れて研究するためには、 そ 地球の生命の起源だけでなく、 まだ ろそろ生命科学の方向へ軸を移す時 見ぬ異なる生命の形を理解するには 期が来ていると感じたからです。 こうしたアプローチが必要です。

Credit: Creative Commons

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太陽系の起源から現在までの間には、 地球が今の姿になる上で重要な分 岐点がいくつかありました。 この分岐 点で異なる方向に進んでいたら、地 球は今のような星ではなく、生命も誕 タイタン、 エンケラドゥスと土星付近を巡回する土星探知機「カッシーニ」 の様子。 生していなかった、 あるいはまったく 別の形の生命が誕生していたかもし 火星などで見つかるようなことがあ 地球外生命は、 その惑星・衛星の環 れない、 そのような分岐点と地球・生 境に適応した生命であるはずです。 命が誕生するための選択を表したの るのではないかと期待しています。 惑星や衛星の環境で出現し、適応し、 が、ELSIモデルです。 現在、ELSI全体のテーマは 「地球 進化しうる生命とはどのようなものか、 これからの10年では、ELSIモデルに と生命の起源」 ですが、 このテーマ 合成生物学という生命を部品から作 基づき、 これを発展させ、地球だけで も変化していくということでしょうか。っていく学問領域をELSIに新たに加 えて、 「ありうる地球外生命のカタチ」 なく太陽系の他の惑星や衛星、太陽 これは ELSIはテーマを 「地球と生命の起源」 を探求しようと思っています。 系外の惑星にこのELSIモデルが適

海外でも行われていない、斬新な実 験的試みです。


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