Plumeria♨High temperature 2018 【真夏の水やりの管理について】 1、はじめに 今年はとても暑く長い夏になりました。 皆さんのプルメリアの状態はいかがでしたでしょうか? 我が家のプルメリアはここ数年の間で最も調子の上がらない年になりました。なぜそうな ったのかを考えると今年の夏が特別だったからに違いないと思い、いろいろと調べていく 中で水やりの管理方法によって違いが出ていることに気が付きました。調子の悪い要因は 他にもあったのかもしれませんが、今回は主にその水やりをメインに夏の管理について研 究報告をします。 途中で疑問に思ったことや聞きたいことがあったら最後に聞き取りします。みんなで考え てみたいと思いますのでよろしくお願いします。
2、考察 私の水やりのタイミングは朝の 6 時半ごろから開始して 7 時半ごろに終わり、出勤してい ます。水やりが終わるころには既に暑くて汗だくになる毎日でした。夕方は毎日というわけ にはいきませんが水切れしているものには水やりして、全体的にある程度まで乾いていて も水切れを起こしているようには見えず、その時々で軽く散水する程度でした。葉があまり 茂らなかったので水やりは楽でしたが、葉が茂ってないことも心配でした。 鉢植えの前提ですが、こんな感じで朝の暑くなりだす時間帯で水やりをメインにしていた 人。そうでなく涼しい時間帯の夜をメインに水やりしていた人はどのくらいの割合なのか 気になるところです。 一般の植物の水やりのタイミングについて調べると、真夏は早朝の気温の上がる前か夕方 の気温が下がってからと出てきます。なぜそうする必要があるのか、プルメリアの場合も気 温が上がってからの水やりは悪いことなのでしょうか? この時間帯がいいという人がいてもなぜその時間帯がいいのか、もし具体的なことまでわ かっている人がいても、はたしてそれが全てなのか、インターネットを調べてもプルメリア の夏場の管理について具体的な記実は出てきませんでした。
3、夏の温度帯と成育カレンダー 話が水やりからそれますが、調子の悪かった根本は夏場の高温期の変動によることが大き な原因となっていることがありますので、まず先に、そのことについて考えてみました。夏 の異常は今年だけではなく去年も同じでした。例年と近年の変動イメージをグラフ化して みました。 プルメリアは最高気温が 30 度の温度帯でよく育ちます。それ以上だと成長が悪くなり、そ れ以下の場合は状態を保ちつつ気温低下に伴い時間経過とともに成長が穏やかになる傾向 にあります。
成育の落ちる夏場を赤、最高気温 30 度以下の成育の良い気温帯をオレンジ、やや低気温の 中間気温帯を黄色で示しました。折れ線グラフはだいたいの葉の茂り方を示します。 例年の場合は 6 月から始まった梅雨が 7 月の中旬から下旬にかけて梅雨明けし、夏を迎え ます。プルメリアは適温の時期のオレンジの気温帯で徐々に葉を広げ始めて梅雨明けの時 期には成長が加速して葉をある程度まで茂らせています。その後の夏は高温多湿のプルメ リアにとっても厳しい季節で成長がかなり遅くなります。その暑い夏は 8 月の中旬、お盆 を過ぎたころから徐々に収まり夜は特に過ごしやすい気温になっていきます。9 月に入り、 湿度が下がって快適な日が多くなり、再びよく育つようになります。 そして去年と今年の場合です。 7 月の成長が加速する黄色の期間がとても短く成長が加速する前に猛暑を迎えてしまって います。葉が少ない状態で猛暑を迎え、成長しにくい季節に入ってしまいました。その状態 は 8 月いっぱい続きその 2 か月間は例年の 2 倍の期間となります。そして 9 月に入り気温
が落ち着き、ようやく成長しやすくなりました。 以上のことから夏を迎える前のスタートの時点でつまずいてしまっていることに気が付き ます。夏の終わりまで勢いに乗れずに置いて行かれた状態です。
4、弊害 ヘイガイ 今年の関東地方は、暑くて湿度が高く、晴れの日が続いて熱中症になる人が多発しました。 プルメリアも不調となりやすい弊害がいくつか思いつきます。 ・屋外に出していたにもかかわらず晴れた日が続いたせいでハダニが繁殖し、落葉した。 ・高温と強い光が長時間続いたせいで葉の展開が止まってしまった。葉焼けをおこした。 ・雨が降らず高湿度による感染症が発生した。そのせいで成長が悪くなった。 ・鉢が過熱して土の中が高温になったために高温障害となり成長が悪かった。 また、葉を茂らすことができずに夏を迎えたことによっておこった弊害もいくつか思いつ きます。 ・土が乾きにくく蒸れやすかった。 ・土が乾きにくいために乾燥と湿潤の循環がされにくいため土壌環境が低下した。 ・葉数の少ない状態なので光の当たる量が多すぎているように感じた。 真夏に成長が遅くなる状態はなぜ起こるのか調べてみました。 ・植物は高温にさらされるとヒートショックタンパク質群の作用で休眠状態に入る。このほ かのホルモンの働きでも起こる。 ・ 「高温/低温/乾燥などにさらされた土壌中の根も様々な機能が抑制されると考えられま す。生理的な活動が抑制されているときは、病原菌への抵抗機能も低下します」 つまり、気温が高すぎても冬場のように葉を落とすことなく休眠状態におちいることにな り、土が乾燥状態になった場合も同じく休眠状態になるということです。 参考文献・引用元:日本植物生理学会 みんなのひろば>植物 Q&A>根の障害と温度 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2803
5、暑さ対策 夏場の暑さ対策の方法について考えてみます。
・遮光 光量を制限することによって成育がよくなる。水分供給が楽になり葉の展開がよくなる。 ・地植え、半地植え 土の中に根を張るため、土が高温になりにくく、根の成長も良くなり成育状態もよくなる。 ・水切れ対策 日照調整の他に水やり回数を増やすなど。 ・水はけ対策 水はけのいい土を使い通気性のいい土壌環境にすることで根の発育を良くする。 ・鉢の温度上昇対策 鉢の周辺を日陰にして温度上昇を抑える。風通しを良くする。
6、プランジング/Plunging(半地植え) 暑さ対策にもなっている半地植えについて。 地植えは今ではよく見る育て方のひとつになっていますが、初めて知ったのは 10 年近く前 になります。私が知る限りでは「Plumeria101」さんがインターネット上で 2001 年に公 開し、それをきっかけに世界にその方法プランジング/Plunging が知られたと思われます。 その効果は101さんのサイト内の記実を引用させていただくと下記のとおりです。 引用元:http://www.plumeria101.com/ ・水切れを解消できる。 ・土壌温度が一定であるために成育がよく、水分や栄養の吸収ができる。 ・風が強い時も吹き飛ばせることがない。 ・秋に引き抜いて再び家の中に取り込むことができる。 そのやり方は春はまず地置き、つまり土の上に置いて目覚めさせます。ある程度まで目覚め て根を土に広げ始める時期に土の中に半分埋めます。さらに葉が茂り始めたら土の高さま で鉢を埋めます。
私もこの方法を6年ほど前に試していて Kaneohe Sunburst を半地植えにしてみたら、よ く育って秋には花芽を付けて咲いていました。
この方法は確かに成育よく暑さにも強く育ちましたが、気を付けるべきポイントがありま した。一つめは鉢の中で根があまり育たないことです。若い苗はいつまでも根がぐらついて いました。また花が咲いても成長にかたよるので咲き終わるのが早く感じました。それとも うひとつは通常の鉢植えの育て方に比べると節間が間延びしてあっというまに天井に届く ことになるので気を付けなければなりません。日本の場合は冬場の置き場所の問題があり ますので大きく育つのは困りものです。土の中に根をやや張り込みにくくする意味でごく 浅く埋めるか地上に置くだけの地置きにすることをお勧めしています。プランジングとは 直訳すると差し込むというような意味になりますが、鉢を差し込むというよりも根を差し 込むという意味で Root Plunging ととらえるほうが正しく感じます。 7、高温時の水切れ対策 気温が高い時に水切れを起こした場合、水やりをしていいのか、それとも水やりは良くない 方法なのかどちらにしていいのか判断に悩むところですが、このことに関しても具体的な ことを調べてみることにしました。 まず、水切れ状態は放置していいのか考えると、土が完全に乾いてしまうことは植物にとっ て致命的なことにつながり、プルメリアに置き換えると乾燥には強いとはいえさすがに弱 ってしまいます。4 の項目で書いているようにヒートショックタンパク質群の作用で休眠状 態になり成長が止まってしまうことになりますので、水やりは必要なことになります。ただ し、その方法はいくつか注意するべきことがありました。 まず水やりの量はたっぷり与えます。これは高温になった土壌を冷却して環境を良くする ことになります。中途半端に給水した場合は土の温度が下がらずに高温障害や酸欠になり ます。そして水が土壌にとどまることも酸欠の原因となりますので水はけの良い土である
ことが大事です。 それと、高いところから葉にも水をかけるのも悪い影響があります。水分が葉に付くと気孔 が開いてしまい水分が抜けてしまいます。土の乾燥時は気孔が閉じているのが通常ですの で気を付けなくてはなりません。葉水をしながら少量の水をあたえるのは最悪の方法と言 えます。なによりも移動可能な苗でしたら日陰に移動してあげて日照調整してあげること も大事です。 参考文献:日本植物生理学会 みんなのひろば>植物 Q&A>根の障害と温度 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2803
8、根はいつ成長しているのか 根は土の乾燥、温度、水捌けの状態により生育不良になることがわかりましたが、成長する 時間帯はいつなのか気になりました。真夏の昼間は高温になり、殆ど成長してないと思われ ますが、光合成をしてない夜間は成長しているのか気になるところです。そこで昼夜の根の 成長変化について実験をしてみました。実験の方法は土の中では見えないので土の上から 出てきた根の動きを写真撮影により確認しました。 実験の条件 ・撮影 朝→夕方→翌朝の 3 回。 ・水やり 朝と夕方の 2 回。 ・環境 透明の屋根の下。日中は保湿のため鉢の上の半分に板を置いた。 ・天気 日中は晴れ。夜は雨のち曇り。 ・気温 最高気温 28 度、最低気温 18 度。
この画像の見ると日中の成長も夜間の成長もしていることがわかりました。このことによ り成長が可能な環境下である場合は根の成長は昼夜行われていることになります。
9、根の成長する環境と水やりのまとめ 根は条件がそろうと驚くほど良く成長していることがあります。思い起こすと真夏の暑い 時期でも長雨の続いた後に鉢から根がたくさん飛び出すくらいに成長していることがあり ます。 長雨で成長したのは土が乾燥してない湿潤な状態で、滞らず少しずつ新しい空気を含む水 が流れている状態。温度は高すぎず成長に適した温度帯とこんな感じだと思います。 このことを考えると夏場の暑い時期は気温の下がる深夜から朝方にかけて根が成長しやす い温度帯であることがわかります。この時間帯に土があるていど湿ってないと根の育ちが 悪く、更に水分の供給量が上がらずに地上部も連動して成長しないことになります。 このことから夜間は土が湿っている状態が理想的なので水やりのメインは夕方から夜に行 うことが理想的だという結論になりました。 私の場合、夜は基本的に水やりをしていなかったので土が乾燥気味だったように思います。 これからは夜をメインにすることにしました。 春のまだ気温が低く生育がまだ安定しない時期の土は乾燥気味に管理ですが、真夏の場合 は逆に乾燥状態にならないようにすることが大事でした。 ただし、生育状態が悪く葉が茂ってない状態で土が乾きにくいのであれば、水はけの良い土 にするとか鉢のサイズを小さめにするなどの工夫も必要に思います。いつまでも土が乾か ないと湿潤と乾燥のローテーションによる空気の入替えが滞り根の成長が悪くなります。 それとさらに土の呼吸をしやすくするために多孔質の土を使うことをおすすめします。 水やり三年という言葉が業界の人を中心によく聞くことがありますが、プルメリアは水や り 10 年だと昭和 40 年代からプルメリアを育てている人が言っていました。私は 20 年育て ていますがやっとひとつの答えが出たので水やり 20 年でもいいと思います。とても過酷な 夏になりましたが、それがいい経験となりました。やはり経験が大事だとつくづく感じまし た。以上が私のレポートです。ありがとうございました。
許可を得ずに無断での複製を禁止します。 Plumeria Society of Japan Plumeria University PUS#196 2018 年 10 月 著者 山口 誠一