第1章:序論
1.1 研究目的 1.2 用語の定義 1.2.1 休息に関連した用語の定義 1.2.2 姿勢の定義
第1章:序論 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"!#$%&' 本研究は、建築人間行動研究の観点から、「行動」「立ち止まり」というそれぞれの現象に関する研究が多く 見られるのに対し、一人の人に対する一連の行動観察から、人間行動にとっての「休息」を定義しなおし、人 が意識的・無意識的に行っている休息*)の行動特性を明らかにする。それによって建築分野における「休息の ための場」に対する概念を再考することが目的である。
* ) 参照「1.2 用語の定義」
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
2
第1章:序論 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"(#)*+,1.2.1 休息に関連した用語の定義 本論では、人間行動の観察の中での活動や休息の状態を詳しく述べて行く必要がある。それに先立ち、そ れらの用語を定義しておく。本論においての「休息」とは、床ずれなど動かなかったことに対して動くこと によって機能の低下を防ぐ方法があることも含むため、それらの原因である「活動」 「疲労」に関しても定義 し直す必要がある。なお、建築側から見た人間行動を観察する上での定義であるので、既存の概念が広域な 定義であるのに対し本論での定義は限定的なもの、または既存の定義とは逆の意味を持つものとなる。 ◇活動(restrain activity/rest) ある一定の姿勢・動作・行為に固定・拘束されることを指す。既存の定義では動くことのみを指している のに対し、本論では、動かない姿勢・動作・行為が固定・拘束されている状態も含む。 既存の定義 ◇活動(activity) 活発に動いたり、働いたりすること。 ◇静止(rest) 動かず、じっとしていること。 ◇固定・拘束される(restrain) 行動や判断の自由を制限されること。一定の状態から変化しないこと。 ( 引用、文献 33、34)
◇疲労(fatigue) 一定の姿勢、動作、 行為を続けることで心身の機能が低下する現象を指す。既存の概念が「肉体疲労」と「精 神疲労」の両面を考えていることに近いのに対し、本論ではより限定的に、 「動いたことによる疲労」と「動 かなかったことによる疲労」の二つを含むものとする。 既存の定義 ◇疲労(fatigue、weariness) (医)生体がある機能を発揮した結果、その機能が低下する現象。その部位によって肉体(筋肉)疲労と精神(神経)疲労に、発現の仕方によって急性 疲労と慢性疲労に大別される。つかれ。 ( 引用、文献 33、34)
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
3
第1章:序論 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇休息(release) 直前に行った活動に対して、活動に固定・拘束されず、活動による疲労を解放するための姿勢・動作・行 為が行われることを指す。既存の概念とは異なり、動くことによる休息も含んでおり、静的休息、動的休息 の両方の性質を持つものとする。 ・静的休息 動く時間が長い時、動かないことが休息になるという考えを指す。休憩に近い意味を持つ。 (図 1.2.1-1) ・動的休息 動かない時間が長い時、動くことが休息になるという考えを指す。アクティブレストに近い意味を持つ。 (図 1.2.1-2) 既存の定義 ◇休息(rest) 仕事や運動などをやめて休むこと。ゆったりした気分でくつろぐこと。 ◇解放(release) からだや心の束縛や制限を取り除いて自由にすること。 ◇固定・拘束されない(free) 行動や判断の自由を制限されないこと。 ◇休憩(rest) 行なっていることを一時やめて、休むこと。休息。 ◇アクティブレスト(active rest) 【新語】 〔レストは休息・休養などの意〕 適度な運動を行なって血行を刺激し,肉体疲労の回復を図る休養法。スポーツ選手のコンディショニング法の一つ。積極的休養。 ( 引用、文献 33、34)
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
4
第1章:序論 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
. /012/#3'45+678
. /0121#9'45+678
. /010/2:#45+678
図 1.2.1-1、図 1.2.1-2、図 1.2.1-3 は、本研究における「休息」の概念を示したものである。青が疲労を、オ レンジが休息を表している。図 1.2.1-1 は「静的休息」を示したもので、 歩行動作をしていて疲れた人が(青)、 座って休んでいる(オレンジ) 。一方で、図 1.2.1-2 は「動的休息」を示しており、座って仕事をして疲れた 人が(青)、椅子を立ったり少し歩いたりして身体を解放して休息している(オレンジ) 。 図 1.2.1-3 は以上の二つをあわせた考え方で、 歩いて映画館に入った人が(青)座ったことで体を休めるが、 (オ レンジ)その時間が長く、途中から座り疲れてしまい(オレンジ→青)その後、移動のために立ち歩いたこ とで身体を解放して休息していることを示している(オレンジ) 。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
5
第1章:序論 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
1.2.2 姿勢の定義 人間行動を観察する上で必要であるので、姿勢に関した定義もここに示す。なお、参考文献 1「建築設計 資料集成(人間) 」には、 「寄りかかり」姿勢に関しての定義は「椅座位」姿勢の一部としてしか載せていな いのに対し、ここでは、「寄りかかり」姿勢だけで「後方寄りかかり」 「前方寄りかかり」 「側方寄りかかり」 の分類を行い、定義している。 ◇歩き 歩行行動時の姿勢のことを示しており、歩き方には様々な分類があるが、その全ての姿勢を指すものとする。 「建築設計資料集成(人間)」文29)によると、歩行のファクター(図 1.2.2-1)は歩行者の条件と歩行者を取り 巻く環境とに大別され、それら歩行ファクターによって差異が生じるため、真の自由歩行の判定は難しい。(図 1.2.2-2)
. /01012/#;<=>)?@ABCDE
. /010121#;<+FG
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
6
第1章:序論 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇立ち 「立位姿勢」を立ち姿勢であると定義する。 (図 1.2.2-3) ◇座り 「椅座位」 (ただし寄りかかりを除く)と「平座位」を座り姿勢と定義する。 (図 1.2.2-3)
. /01012:#HIJKLHMN
図 1.2.2-3 は、「建築設計資料集成(人間) 」文29)からの引用であり、人が日常生活において自己の目的行動 を遂行させるために様々に姿勢を変化させている、それらを大分類しているものである。 「立位姿勢」 「椅 座位」「平座位」「臥位」の4つに分け、日常生活の多様な姿勢を整理分類したものが示されており、これ らを参考にした。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
7
第1章:序論 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇寄りかかり 下記に、寄りかかり姿勢の様々なバリエーションを示すが、そのすべての姿勢を指す。なお、 「3.2 都市 で見られる休息行為のバリエーションと場所」から見られたよりかかり姿勢と、 渡辺らの行った実験文 16)で扱っ たよりかかり姿勢を参考にしている。
・後方 接触部位: 腰 肩 臀部
・前方 接触部位: 頬杖 両手 脇
・側方 接触部位: 片肘 肩 片手
. /01012O#PQRRQJK+FG
「建築設計資料集成(人間) 」文29)には、 「寄りかかり」姿勢に関しての定義は「椅座位」姿勢の一部として しか載せていないのに対し、ここでは、 「寄りかかり」姿勢だけで「後方寄りかかり」 「前方寄りかかり」「側 方寄りかかり」の分類を行い、定義している。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
8
第2章:研究背景
2.1 現代都市における活動と疲労 2.2 現代都市における 休憩スペース 2.3 人の休息についての 考え方の変遷 2.4 既往研究の系譜 2.4.1 本研究の位置づけ 2.4.2 既往研究 2.5 研究フロー
第2章:研究背景 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"#$%&'()*+,-./01 2.1 現代都市における活動と疲労 ◇現代の都市部で働く人の疲労 現代の都市部では、第三次産業の普及や機械化による単純作業の増大、移動時間の増加(図 2.1-1)に伴い、 業務中や移動中など、同じ行為・動作・姿勢を強いられる時間が長くなっている。 都市部においてオフィスワーカー数は増加の一途を辿っており(図 2.1-2)、人は一定の行動・行為・動作・ 姿勢を強いられる場面が増えていると考えられる。(図 2.1-3)都市部で働く現代人にとって、「動かないこと による疲労」は、肩こりや腰痛などの症状を伴って、日常的に自覚されている。 北野らの調査文 7)によると、都市部の住宅街居住者と地方都市居住者では、都市部居住者の方が、余暇活動 時間量において、「広域圏への旅行」を選択しやすいということが示されており、これはつまり都市部居住者 の方が余暇活動に動的な休息を求めていると考えられる。
!"#$%&'()*+,-,./'()*+,-,0&12
2 !"#3#$4564789:;<=> $
2 !"#3!$?@ABCDEDF<=>
三大都市圏の通勤・通学時間は、1985
オフィスワーカーの数は、1970年から
年から増加傾向にある。
増加傾向にある。文 32)
文 29 )
2 !"#3G$'(HIJKL/MNOIJKL)PQRST<UV)WX,YZ[D\]^
都市部で働く人(オフィスワーカー)の方が、通勤時間・仕事中において一定の姿勢に拘束される場面が 多いことが分かる。一方、農山村で働く人(主婦)は仕事内容がバリエーション豊富な肉体労働であり、姿 勢を拘束される場面が少ないことが分かった。図 2.1-3 は、独自に行ったアンケート結果から、姿勢の変化 を表したものである。 早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
10
第2章:研究背景 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"!__%&'()*+,`aBbDB ◇高齢者の生活時間 60歳以上の人(以下高齢者とよぶ)と20∼50代の働いている人(以下労働者とよぶ)の生活時間を 簡単に比較した結果を図 2.2-1 に示す。図 2.2-1 は、日本人の生活時間・2005文 30)より、高齢者と20∼ 50代の生活時間の比較に関して、活動と休息に関連していると思われる項目に関してまとめたものである。 「仕事」「社会参加」 「レジャー活動」 「在宅」「自由行動」について考察する。 m !"!3#$jkl/nopqo&<r-:;stm #$%&$'_`abcd$efgNhijk !"#$%&$'()*+, -"#$%&$'()*., 23 45675 89 :; <=>? =@6AB lmnEiX CDEF GH6IJ KL6MH KL6MHNOPQERST oCpqrstu 1U VWGX YZGX [\GX ]^
/0 ! ! ! -
10 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! -
高齢者は平日と休日の生活時間にあまり差異はなく、仕事時間は比較的短く自由時間が長い。しかし、そ の中で社会参加・レジャー活動にあてる時間は休日の労働者よりも短く、休日でも労働者よりも在宅時間が 長い。すなわち高齢者は平日休日ともに長い自由時間を持っているにも関わらず、労働者と比較してその割 り当てが社会参加・レジャーなどの外向的活動に向かっていない。安村の講義文7)によると、高齢者の精神的 健康と外向性・外出頻度の関連性は高く、「閉じこもり」高齢者に対し、地域全体で積極的に介入した介護に 臨むべきであるとしている。 一方、都市内では数少ない休憩所に高齢者が多くみられる現状(図 2.1-5)がある。図 2.1-5 は都市において、 デパートやスーパーなどの入り口に設置された、無料で使用できる座具を、高齢者が頻繁に利用している状 況についての写真である。高齢者が外出する上で休憩所などの配置は重要な問題であることが分かる。
2 !"!3!$cde/fR`aBbDBghiX,jkl
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
11
第2章:研究背景 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"G$L<`u)vQw<xyz<{| 過去、筋運動がなされるとき途中に静的な休息を挟むことでその次になされる仕事量は直前の作業の近く まで行われ作業時間の延長がみられることは多くの報告があったが、そこから更に、途中に軽い負荷の運動 がなされると次の筋運動の仕事量が増すという知見も得られ、 「動かないことによる休息」に加え「軽い負荷 の運動による休息」という発想が生まれた。 最初に「軽い運動による休憩」を大きく取り入れたのはスポーツ分野である。スポーツ選手の、限られた 時間を使って少しでも効率的に疲労をコントロールする方法として、「軽い負荷運動による休憩」は、休息・ トレーニングの両面に対し効果を発揮した。 スポーツ分野において試行錯誤の末にたどりついたアクティブレスト重視の習慣は、コンディショニング の基本として根付き、現在は選手たちも抵抗なく「軽い負荷運動による休息」を実行している。文 31) スポーツに始まり、医学、家具の分野でも「軽い負荷による運動」は注目され、近年、アクティブレスト という新しい言葉として辞書に定義された。 「軽い負荷運動による休息」をより日常生活に取り込んでいくべ きであると考えられる。 ◇アクティブレスト(active rest) 【新語】 〔レストは休息・休養などの意〕 適度な運動を行なって血行を刺激し,肉体疲労の回復を図る休養法。スポーツ選手のコンディショニング法の一つ。積極的休養。 (引用、文献 33)
2 !"G3#$B}D~•€I<xyz<{•
アクティブレストの概念が最初に取り入れられたスポーツ分野において、スポーツ選手の1週間のスケ ジュールがどのように変化したのか示したのが図 2.3-1 である。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
12
第2章:研究背景 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"‚$ƒ„…†<‡ˆ 2.4.1 本研究の位置づけ 「1.2 用語の定義」で述べたとおり、本研究において、休息とは静的休息(休憩)と動的休息(アクティ ブレスト)の両面を持つものであると定義する。 動的休息のみ、静的休息のみ、または動的休息と静的休息の比較に関する人間工学的な研究は数多く存在 する中、建築分野から動的・静的休息の両面を考慮した研究や調査をしようという試みは未だ数少ない。 しかしながら、社会的・時代的背景から、日常生活でも動的・静的休息の両面を考慮した休息の概念を持 つべきであると考えられる。 本研究は、動的・静的休息を日常生活に取り込むことための先駆けとして人が意識的無意識的に行ってい る休息行動に関して観察調査を行う。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
13
第2章:研究背景 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
2.4.2 既往研究 <姿勢と疲労の関連する研究> 姿勢と筋肉活動に関する人間工学的研究は数多く存在し、正木らの研究文 14)により、筋電計を用いて姿勢変 化と筋疲労の密接な関係が明らかにされている。すなわち、日常的に行われる姿勢変化が身体的疲労に影響 を与えているということである。 <活動と疲労に関連する研究> 疲労が、高い運動強度の活動が持続されることによって引き起こされるということは、既往研究が多数存 在する上、日常生活でも容易に理解できることである。それに対して、仕事とストレスの関係に関してでは、 GERALD P. KRUEGER ら文 26)によると、身体的な仕事と認知作業とを対比したところ、身体的な仕事は筋肉疲 労を引き起こし結果として作業成績を悪くし、一方、同じく認知作業は一般的な疲労感や疲労を引き起こし、 そして、慢性的に極度になると「燃え尽き」が起こると報告されている。 愛知医科大学附属病院リハビリテーション部の研究文 22)が医療の観点から、日常生活にて起こる筋疲労の多 くは低い運動強度の持続によるものであるとしている。 、低い運動強度の持続として特定の作業を挙げている 論文としては、立川らや野津ら文 23,24)の論文では、縫物やチェーンソー作業などの姿勢が固定される作業によっ て引き起こされる疲労に関して精神・身体面から検討し、作業姿勢が固定されないことが生理機能軽減を防 ぐものであるとしている。 つまり、疲労は、 「動的」な活動と「静的」な活動の2種類から引き起こされ、 その症状は「疲労感の自覚」 「心 身行動の減退」「生理機能の低下」として急性的・慢性的に表れるものである。動的な活動・静的な活動が強 いられる場面において、そのどちらでも、人は疲労を引き起こされるということが明らかとなっている。 <休息に関連する研究> 加藤らの研究文 3)では、休息を、疲労回復に特化した消極的なものと、新生蓄積に特化した積極的なものの 2つがあるとしている。静的休息に関しては建築分野でも座具の形状・配置計画・休憩スペースに関してなど、 多くの報告がなされている。一方、動的休息に関する研究では 1957 年にスポーツ・体育の分野から始まり、 ストレッチングやアイシングなどの特定の動作による身体的疲労コントロール効果に関する人間工学的研究 は数多く存在する。笠原らの研究文1)によって、マラソンなどの過度な身体疲労に対して、動的休息をより効 果的に取り入れる方法なども明らかになっている。更に、それらの応用研究として、加藤をはじめ、佐田、 和泉らの研究文 2 ∼ 5)が、精神作業の疲労回復に対し軽運動による休息が効果を発揮することを示した。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
14
第2章:研究背景 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
活動と疲労、休息に関する既往研究から明らかとなったことを整理したものを図 2.4.2-1 に示す。これは、 拘束される活動の種類・それによって引き起こされる疲労・それに対応する休息には、「動的」 「静的」な2 つの面があるということを示しており、既往研究から、都市の中で引き起こされる疲労と、休息の対応関係が、 「動的疲労」→「静的休息」と「静的疲労」→「動的休息」が効果的なのではないかと考えるものである。 2.4.2 既往研究<休息に関連する研究>で述べたとおり、「動的疲労」→「静的休息」の関係から考えられ た研究は、建築分野でも数多く存在するが、 「静的疲労」→「動的休息」の関係から考えられた研究は、未だ 数少ない上、人間の行動特性と合わせて考えられたものはまだ未開拓の部分である。
Œ••€I XI)ŽK<ƒ„…†••, 2 !"‚"!3#$-.‰01‰`u<ƒ„…†<Š/‹
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
15
第2章:研究背景 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"‘$…†@’D 以下に、研究の流れを示す。 場所や行っている姿勢によって、人が拘束されている活動の種類がわかり、それによって、その人が求め ている休息の形も「動的」なのか「静的」なのか判断できる。それらを踏まえ、研究すべき内容は、人が求 めている休息のバリエーションを、その人の姿勢や場の状況から判断し、その場において提供されている休 息場所のあり方について考察することである。 図 2.5-1 は、簡単な観察調査・実験・資料の収集から始まり、時間軸の異なる二つの行動観察から、人の 拘束される活動の種類と、その時求められる休息のバリエーション・タイミングを明らかにしてくというこ とを示している。
ƒ„…†<‡ˆ
'(I¼½”,`u
¾
¸DÂÃ\Äk<c•Q/`u
<¢£¤D¥¦Z/«8
gfwQ,«8<•ž
'(•©ªX,`u «8<¢£¤D¥¦Z)v Qw§¨•ž
L•¡‹,`u<¢£¤D 01)°X,UV{•<
¿ÀÁÁÀUV)
Å^ÆÇÈÉ
WX,§¨•ž
¥¦Z)vQw§¨•ž
-./`u<:;´=>
-./`u<=>)WX,
)WX,ÊËÌÀ
§¨•ž
•Q:;<–I<Y—˜A Ô<ÕcÖר)*+,U V{•<›œ•ž
™šB\/fw‰L<UV {•)Wfw›œ•ž
ÍÎÏAÐÑDÒZÓ)
ŸQ:;<–I<`u/
*+,ST<
-.<=>)WfwL<
.›œ•ž
.{•)Wfw•ž
6¬-<UV<®¯)°X,`uUV)vQw 6'(•©ªX,±²`u<¢£¤D¥¦Z/³
xœ
6.´`u<µ¶·”,±²¸¹ºZ»
2 !"‘3#$…†<“”
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
16
第3章:人と休息
3.1 筋電計を用いた疲労に対する 姿勢変化の効果検証実験 3.1.1 筋電位計測 3.1.2 実験概要 3.1.3 実験結果 3.1.4 考察 3.2 都市で見られる休息行為のバ リエーションと場所 3.3 寄りかかり座具の利用調査 3.4 ターゲット年齢の違いと休息 をしている場所の調査 3.5 活動と休息の時間的推移に 関連する資料より
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"#$$%&'()*+,-./0123456789:;< 3.1.1 筋電位計測 「姿勢を固定することが疲労」であるということと、逆に「姿勢を変化することが休息」である、という事 を証明するための基礎的調査として、筋電計を用いて、正木らの研究文 13)において定義されている「対称型立 位姿勢」と「自由型立位姿勢」の筋疲労の違いについて検証した。 ◇対称型立位姿勢 本実験では、正木らの研究文 13.14)と同じく、休息立位姿勢の中で基本的なものと考えられる、いわゆる「気 をつけ」の姿勢を指す。 (図 3.1.1-1)
= !"#"#>#?;<@A
◇自由型立位姿勢 その場にいることだけを指定された場合の、個人が自由な姿勢をとれる状況を指す。 ただし「4.3.4 姿勢の定義」で定義する以外の姿勢は行わないような指示のもと実験は行った。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
18
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
3.1.2 実験概要 被験者:4名 実施日:10月14日∼17日 実験場所:55号館S棟8階渡辺研究室・東側会議スペース 本実験では、姿勢を常時固定させた場合と変化させた場合の筋活動の比較を行うため、被験者に対して 対 称型立位姿勢 もしくは 自由形立位姿勢を途中に挟む対称型立位姿勢 を20分間保持させた。 (図 3.1.2-1) 筋活動の測定は、前脛骨筋、腰腸肋筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋、の計4ヶ所で行い、使用した筋電位の 導出法は、皮膚表面に張り付ける表面筋電図法である。表面筋電の貼り付け位置の選定に関しては、永池ら の研究文 17)における、生活動作の運動強度モデルのデータベースを参考にした。 なお、特定の姿勢を指示し筋肉活動量に関して論じる場合、使用筋肉の個人差が出やすいということが結 果を導くための分析を困難にするということは、 正木らの研究 (論文 13,14) から明らかになっていることだが、 今回は各活動筋肉一つ一つに対して論じるのではなく、姿勢変化の有無と総合的な筋疲労の関係について知 見を得ることが目的なので、活動筋肉の個人差は考慮しないこととする。
= !"#"B>#?%&'
= !"#"B>B?CDEF&G
= !"#"B>!?;<6HI
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
19
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
3.1.3 実験結果 "
◇評価方法について
"
&'!", 既往研究文 18 ∼ 21)により、筋電図を用いた筋疲労の測定方法として、筋電図の積分値を読むという方法が適切 &'!"*+ &'!",-
であるとわかってるのでそれを採用した。
&'!"*+
筋電積分値:岡、佐藤ら文 19、21)の研究によると、筋疲労の増加に伴い上昇する値である。積分値の上昇率が高 ! いということは、より筋疲労が増加したと言える。
!"#$
!"#%
!"#$
!"#%
!
被験者4名の各筋肉の筋電データを平均化し、姿勢変化直前直後5分間の積分値を平均化し姿勢固定時と " 姿勢変化時のどちらのパターンがより小さかったのかを検証した。 '#& " '#% '#& '#$ '#% '#"
◇筋電積分値による筋疲労分析結果
&'!"()
'#$' '#" !#&
各筋肉における、姿勢変化直前直後5分間の筋電積分値の推移をここに示す。 (図 3.1.3-1) !#& !#$ ' !#%
&'!"*+ &'!"() &'!"*+
!#% !#" !#$! !#"
!"#$
!"#%
!"#$
!"#%
!
" '#& " '#%
"
'#& '#$ '#% '#"
&'!"()
'#$'
&'!",&'!"*+
&'!"*+ &'!"()
'#" !#& ' !#%
&'!"*+
!#& !#$ !#% !#" !#$! !#"
!
!"#$
!"#%
!"#$
!"#%
!
!"#$
!"#%
"
"
'#& " '#(
'#% '#$ '#"
&'!"()
'
&'!"()
'#( '
&'!"*+ &'!"()
&'!"*+
!#&
' !#(
!#%
&'!"*+
!#$ !#"
!#( !
! !"#$
!"#%
!"#$
!"#%
!"#$
!"#%
!
= !"#"!>#?2345JK.L1%&MNO6PQ " '#& '#% '#$
'#" どの筋においても、途中に自由型立位姿勢を行った方が、対称型立位姿勢のみを行った場合よりも、積分 &'!"() '
!#& 値上昇率が低い傾向が見られた。 !#%
&'!"*+
文 20) 蘭らの研究 によって、筋電積分値を用いて筋疲労を測定する方法は筋疲労回復傾向が顕著に見られにく !#"
!#$
!
!"#$ !"#% いと言われていること、さらに、3.1.2 実験概要 でも述べた通り、固定姿勢時の使用筋肉の個人差による影響
が大きすぎるが、疲労軽減の傾向は見られる。被験者の疲労感の自覚に対するヒアリングからも、対称型立 位姿勢の方が自由型立位姿勢よりも心身の疲労を感じることが分かっている。 "
'#(
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文 &'!"() ' &'!"*+
!#(
20
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
3.1.4 考察 以上の結果より、一定の姿勢に固定された場合の疲労はその姿勢を変化させることによって解放される傾 向が見られる。個人が自由に姿勢を変化させることが、筋疲労の面からみた休息行為であると考察される。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
21
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"B?RSTUVW1XYZ[6\]^_`abcde 「3.1 筋電計を用いた疲労に対する姿勢変化の効果検証実験」より、姿勢が固定されることによる疲労は、 個人が自由に行う姿勢の変化によって解放されると考えることができる。ここでは、人が普段行っている姿 勢変化を「休息行為」として扱う。 つまり、都市の中では「休息」を行う人が多く見られる。その中で、椅子に座る休憩に関しては、その特 性に関する研究は多くあるので、ここでは、座具以外を用いた休息行為を姿勢別にまとめる。 ◇都市の中での人の行動 都市の中における人の行動は、 「歩行している」と「歩行せずに立ち止まる」の二つに大別できる。これら の中で、「歩行せずに立ち止まる」人の姿勢の観察を行い、どのようにして休息しているのかを調査した。 ◇座具以外を使用した行動 歩行などのいわゆる動的な活動に対する疲労については、座具などの空間的な対応で満足されると考える 事もできる。一方で、静的な活動に対する疲労については、どのような休息の方法が取られているか、明ら かではない。そこで、まずは「歩行せずに立ち止まる」人の中で、座具を使用していない人の観察を行う。 それによれば、「立位姿勢」 「椅座位」 「平座位」 「寄りかかり」の4つの姿勢に分類できる。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
22
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
= !"B>#fgh23i
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
23
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!
= !"B>Bfjkh23i
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
24
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
= !"B>!flkh23i
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
25
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
接触部位:腰
接触部位:臀部 = !"B>mfnopDqqD23i
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
26
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
接触部位:肩・背 = !"B>mfnopDqqD23i
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
27
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
接触部位:片手
接触部位:肩
接触部位:片肘 = !"B>rfsopDqqD23
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
28
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
= !"B>tfuopDqqD23i
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
29
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
「立位姿勢」(図 3.2-1) より、人はずっと直立していることはできず、足を置いたり手をかけるなどして少し ずつ体勢を変えていることが分かった。 「椅座位姿勢」 (図 3.2-2)は、座具ではない何かを用いた事例を収集した。行われた場所に統一性はなく、人 は座具に似た形状のものがあれば「椅座位姿勢」を取りやすいことが分かった。 「平座位姿勢」 (図 3.2-3)は、都市の中ではあまりとられない姿勢であり、急性な疲労が引き起こされる身体 の活動が行われる場所(公園、海など)において多く見られた。 「寄りかかり姿勢」(図 3.2-4 ∼ 6)は、座具・寄りかかり座具などの有無に捉われず、至る所で頻繁に見られ る姿勢であることが分かった。その事例は多いが、特に多くみられる場所としては、立ち姿勢を拘束される 場面、つまり、駅改札前での待ち合わせ・信号待ち・喫煙所、などであった。 以上、 「歩行せずに立ち止まる」人の姿勢の観察を行い、姿勢に関して分類した結果、人は「寄りかかり」 姿勢を行いやすいことがわかった。つまり、寄りかかり姿勢が「歩行せずに立ち止まる」人の疲労に対して、 寄りかかり姿勢が好まれていると考えられる。 寄りかかりに対する寄りかかり座具が用意されている場所はほとんどなく、人の求める休息の形と都市の 提供する休息の形が一致していないものと考えられる。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
30
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"!?pDqqDkv6w)xy ◇調査背景 2007年6月 京王線沿線・井の頭線の各駅に、 「寄りかかり型」 「通常型」 「高座型」の三形状が連携し た新型の三連座具(図 3.3-1)が配置された。寄りかかり座具の導入はすでに他所で行われているが、このよ うに様々な姿勢が選べる形の座具は稀である。都市における活動に注目する上で、活動の種類と密接な関係 にある「姿勢」は、重要な調査項目である。 寄りかかり・座り姿勢の両方が選べる座具において、属性別に利用状況を調査することで、属性によって都 市の中で求められる姿勢が大まかに分かるのではないかと考える。
2007.6.26 「高座型」「寄り掛り型」「通常型」の3タイプ
バリアフリーに配慮した新型ベンチを導入します ∼材料の一部には使用済みパスネットを再利用し環境にも配慮∼
京王電鉄株式会社(本社:東京都多摩市、社長:加藤奐)では、バリアフリーに配慮し たユニバーサルデザインの形状や高さが異なる3タイプの新型ベンチの導入を進めま す。 この新型ベンチは、お子様からお年寄り、妊産婦のお客様までご利用いただけるよ う、比較的足腰に負担がかかりにくい「高座型」、腰掛けるより寄り掛りたいお客さ ま向けの「寄り掛り型」、一般的なベンチの「通常型」の3タイプになります。 また、材料の一部に使用済みパスネットカードを再利用し、従来のエコベンチより もその使用量を増加させるなど、より環境に配慮した仕様となっており、奥行きの狭 い省スペースなデザインを採用しました。 今回は、京王線の明大前・飛田給・聖蹟桜ヶ丘など21駅と井の頭線の下北沢・永福 町など5駅の合計26駅のホームに設置いたします。来年度以降も順次設置を進めてまい ります。 詳細は下記の通りです。
《京王永山駅に設置された新型ベンチ》 記
= !"!>#?z{|}|T~•€W1•‚ƒ„kv 引用、文献 36
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
31
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇計測方法 2008年4月20日と5月31日の二日間にわたり、カウンターを用い三連座具の設置された対面のホー ムから、座具使用者数を簡易的に計測した。 計測にあたり、利用者の属性は「若者」 「中年」 「高齢」という分類をする。
= !"!>B$$$‹Œb•_
= !"!>!$$…†‡ˆb‰w)Š
3種類のベンチを利用した属性別の人数から、 「寄りかかり型」は若年層に好まれやすいということが分か る。なお、5月31日の通常型の使用人数が非常に少ないことに関して、一人の使用時間が非常に長かった ことが挙げられる。この日は雨も降っており、場面として、人が静的休息を求める度合が高かったと考えら れる。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
32
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇考察 属性別の利用者数観察とは別に、全体のベンチ利用状況から、図 3.3-4 のような考察がなされた。 各ベンチ(寄りかかり、通常、高座)に対して、 「身体疲労」 (予想される身体の疲労回復度合い) 「手軽さ」 (その座具を利用するまでに現れる姿勢変化のしやすさ) 「滞在時間」 (利用者のおおよその滞在時間が、より 短いか否か) 「視線の高さ」「省スペース」(その座具を使用したことで、その人が占める面積がどのように変 化するのかということ。立ち姿勢と座り姿勢を比較すると、立ち姿勢の方が省スペースである。 )という5項 目で評価した。 「視線が高い」 「省スペース」に関しては、座具形状から判断できる。 「身体疲労」は、「滞在 時間」の短さに反比例し、逆に、「手軽さ」は「滞在時間」の短さに比例すると考えられる。寄りかかり姿勢 は手軽でスペースを取らない姿勢であり、座り姿勢は手軽ではないが、より身体疲労を軽減させてくれる姿 勢であると考察される。 H
˜™,-
H
€$
”•–—$
š›œ_›$
•|žŸ*$
˜™,-
š›œ_›$
H
€$
”•–—$
•|žŸ*$
€$
˜™,-
š›œ_›$
”•–—$
•|žŸ*$
pDqqD??????????¡¢????????$???Ÿk$ = !"!>m$$Ž•€W1•ˆb‰.‘01’“
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
33
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"m?•_£¤¥¦§6¨*cXY(©ª*1de6xy ◇巣鴨地蔵通り商店街 高齢者が集う商店街において、無料で利用できる座具の配置および形状に関する観察調査を行った。 座具以外のものを用いて行われた静的休息行動の例も記載する。
= !"m>#?«¬-®¡D¯°±.²F1kv6³´cµ¶.·*ª6xy¸8
座具形状は、座面高さの低いベンチがほとんどであった。1人のベンチ利用時間が長いことから座具はす ぐ満員になってしまい、座具以外を用いた休息行為の例が多数見られる。その中には、寄りかかり姿勢もあっ た。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
34
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇秋葉原の歩行者天国 若者が集う商店街において、無料で利用できる座具の配置および形状に関する観察調査を行った。
¹º»¼½¾6¿ÀžÁ kvc©ªÂ)TÃ1LÄŵ¶(ÆÇª*1 µ¶È\_žÉ¹Ê1¿ÁpDqqDÁŸk‚
= !"m>B?ËÌÍÎZŠÏÐ.²F1kv6³´cµ¶.·*ª6xy¸8
座具は設置されていなかったが、道路わきの柵が、寄りかかり座具の機能を果たしていた。使われ方は、 寄りかかりはもちろん、荷物を置いたり、腰を添えるように立ったりと、一時的な休息として様々な方法が 見られた。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
35
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"r?ÑÒcXY6–—ÓÔÕ.‘„01Ö×LD ◇活動と休息のリズム 活動と休息は常に交互におこるものである。活動と休息の推移は日常的に起きており、そのことを述べて いる論文・文献は数多く存在する。それらの参考論文・文献と基礎調査結果の資料を、活動と休息のリズム として、異なる時間軸の長さに分けてここにまとめる。 (図 3.5-1)
(.
(/0
R S T U
(12 34 54 (4 5672
(572
V Þ S W ß X T Y Z [
872 G H -
C Þ D E Þ F
(72 I J K
L M N O
P Q
39:
(;:
< = > ? @ & '
A B > ? @ & '
;:
!: 9:
= !"r>#?ØÅ1–—Ù.²*ª6ÚÛÅÑÒcXY6]ÜÝ
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
36
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇バカンスのリズム かつての、労働時間が長く筋力に頼る肉体労働時代において、余暇とは、次への仕事への活力を見出すた めの休息や安静にあてられ、疲労の回復を図るものであった。しかし、現代では、第三次産業の普及や機械 化による単純作業の増大や、週休二日制による余暇時間の変化に伴い(図 3.5-2)、かつての休息・安静とい う動かない疲労回復法から、運動・バカンス・社会参加を実施することによる回復を計ろうとする動的な休 暇が取り入れられるようになってきた。北野らの研究文 6,7)によると、余暇活動時間において「広域圏への旅行」 は「個室空間でのマスメディア」と同程度行われていることや、「自由時間」内で「社会参加」にあてられる 平均時間が僅かではあるが、常に増加していることが明らかになっている。 平均的な社会人の年間予定から考えられる、休暇としての活動と休息のリズムをここに示す。 (図 3.5-3)
= !"r>B?ZÒ–—6ÔÕàÐáâÑ–—xyã
= !"r>!?¦—6Xä]ÜÝ6ÔÕ
◇サーカディアンリズム 24時間の流れの中で、人体の機能はリズムを持って活動しているということが判明している。たとえば、 睡眠−覚醒、体温、 作業効率のリズムである。 (図 3.5-4) 概日リズムの振り幅や位相は測定項目によって異なる。 生体リズムの指標としてよく用いられるメラトニンホルモンは夜間に集中的に分泌される。体温は午前中に 上昇し、夜間は低下する。全体的な活力や作業効率にも概日リズムがあり、どちらも日中は高く、夜間は低 下する。日中でも午後2時前後は作業効率低下することが知られている。文 29)
= !"r>m?âåæçåèéêë]ÜÝc©ª6ÑÒcXY6]ÜÝ
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
37
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇睡眠時の寝返りリズム ヒトの睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の2つの睡眠からなる「レム−ノンレム睡眠サイクル」が存在 する。各睡眠は約90分周期で交互に繰り返して現れ、体温のサーカディアンリズムによって異なるが、そ のサイクルは平均して4, 5回見られる。 (図 3.5-5)このサイクルによって睡眠の質が変化することが知られ、 更に、レム−ノンレム睡眠サイクルのスイッチとして寝返りがあるという知見も得られている。寝返り時に からだの動きがスムーズになされることがより良い睡眠を得るための重要な条件の一つであるとした研究は 数多く存在する。 レム−ノンレム睡眠サイクルから考えられる、睡眠時の活動と休息のリズムをここに示す。 (図 3.5-5)文 8 ∼ 10)
= !"r>r?ìí–6ÑÒcXY6]ÜÝ
◇着座時の姿勢変化リズム 小杉らの論文文 11)によると、人は一時間椅子に座って作業する場合も、足を組むなど個人にとって最適な姿 勢を取り続けていると考えることができ、その姿勢変化回数は、時間経過に伴い増加する。(図 3.5-6)姿勢 変化回数推移から考えられる、着座時における活動と休息のリズムをここに示す。 (図 3.5-7)
= !"r>t?ïk–62345ðñcòó–—6‘ô
= !"r>î?ïk–6ÑÒcXY6]ÜÝ
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
38
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇テーマパークにおける運動強度リズム テーマパークで過ごすことをネガティブに捉えると、半日間程度、園内に拘束されるということである。 園内に拘束された人は、活動−休息を繰り返すことによって一日楽しんでいられるのではないだろうか。本 研究で独自に行った調査から、一日の中での運動強度の推移から考えられる、テーマパークにおける活動と 休息のリズムをここに示す。 (図 3.5-8) \]^_`abcde ( ' & % $ # " !
= !"r>ù?ú_û_ü_ý.²F1ÑÒcXY6]ÜÝ
◇商業施設におけるストレスリズム 安藤らの研究文 28)によると、商業施設において人は常に様々な情報を入手しながら移動しており、諸所の要 因により様々なストレス変動がある。ここに、商業施設内でのストレス値の遷移から考えられる、商業施設 における活動と休息のリズムをここに示す。 (図 3.5-9)
= !"r>õ?¯ö÷ø.²F1ÑÒcXY6]ÜÝ
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
39
第3章:人と休息 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇対称型の立位姿勢時の筋肉活動リズム 重心対称型の、いわゆる「気をつけ」の立位姿勢を指示し、左右の前脛骨筋の筋活動を表面筋電により筋 電図を記録した。 姿勢を指示したが、一定時間毎に筋活動量に変位が生じる。本研究における独自の実験結果より、筋肉活 動量から考えられる、対称型立位姿勢時の活動と休息のリズムをここに示す。 (図 3.5-10)
% MVC
!"""""""""""""""""""""""""""""""#""""""""""""""""""""""""""""""""""$!"""""""""""""""""""""""""""""""""""$#""""""""""""""""""""""""""""""""""%!"""" àNã
= !"r>#þ?/ÿ‚gh23–6ÑÒcXY6]ÜÝ
◇自由型の立位姿勢時の筋肉活動リズム その場に居ることだけを指示し、左右の前脛骨筋の筋活動を表面筋電により筋電図を記録した。 一定時間毎に筋活動量に大きな変位が生じる。本研究における独自の実験結果より、筋肉活動量から考え られる、立位姿勢時の活動と休息のリズムをここに示す。 (図 3.5-11) % MVC
!"""""""""""""""""""""""""""""""#"""""""""""""""""""""""""""""""""$!"""""""""""""""""""""""""""""""""""$#"""""""""""""""""""""""""""""""""%!"""" àNã
= !"r>##?!"‚gh23–6ÑÒcXY6]ÜÝ
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
40
第4章:研究方法
4.1 研究方法について 4.2 駅の待ち合わせにおける姿勢 変化の観察調査 4.2.1 調査概要 4.2.2 調査日時 4.2.3 調査項目 4.2.4 観察調査記入表 4.3 東京ディズニーランドにおけ る行動観察調査 4.3.1 調査概要 4.3.2 調査日時 4.3.3 調査項目 4.3.4 行動の定義 4.3.5 観察調査記入表
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"#$$%&'()*+, ◇人の行動と姿勢 伊藤の論文文 27)において、人間の行動は、 行動→行為→動作 に分解できるとされており、本論でも、人 間行動を観察する上で行動を分解して捉え、それぞれについて調査分析を行うことで、様々な形の「休息」 について考察がなされるものとする。 本論における分解は 行動→行為→動作→姿勢 とする。これは、本論において姿勢と疲労には関係あると いうことを、 「第2章;研究背景」 「第3章;人と休息」において述べており、 「姿勢」に関わる「活動と休息」と、 「行動」に関わる「活動と休息」の、それぞれについて考えるためである。よって、人間の「行動変化」と「姿 勢変化」に着目した行動観察を、その研究方法とする。
!"# $%#
$&#
%'# !"#
$&#
%'#
!"# !"#
%'#
!"# !"#
$%# $&# %'#
!"# !"#
- !"#.#/01)23456789
図 4.1-1 は、本論における行動の分解について説明したものである。単一または複数の姿勢、動作、行為によっ て、ひとつの行動が行われるものとする。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
42
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇行動と時間 「3.5 活動と休息の時間的推移に関連する資料より」において、どのような時間軸で見ても活動と休息は 常に繰り返しているものであると考えられ、時間軸が異なれば、人間の行う「活動と休息」の様子は全く違う。 本論では、時間軸の大小それぞれに関わる「活動と休息」について考えるべきであると考えられ、研究は その双方を取り上げる。そこで、5∼20分という短い時間軸と、8∼10時間という長い時間軸において、 それぞれ人間行動観察を行った。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
43
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!":/;7<=>?@)234ABCD7EFGH 4.2.1 調査概要 ◇駅の待ち合わせにおける姿勢変化の観察調査 駅構内の待ち合わせスポットにおいて、個人の嗜好による姿勢変化を観察するため、 「一人で、待ち合わせ 行動を始めた人」の姿勢変化を 4.2.3 の調査項目において観察調査した。
4.2.2 調査日時 調査日時:2008年9月9日∼10月11日 調査人数:57人 調査場所:2か所 池袋駅いけふくろう周辺、新宿駅中央東口改札周辺
4.2.3 調査項目 ◇観察対象者の情報 1.性別 2.年齢 3.女性であれば履物(ハイヒールか否か) 4.女性であれば被服(スカートか否か) ◇行動 5.待ち合わせを開始した時刻 観察終了時刻 ◇姿勢 6.姿勢の状態(参照「1.2.2 姿勢の定義」 ) ・項目3について 履物について、履物がハイヒールであるのかどうかは、人の歩幅に影響を与えることは文献から分かって いる。文 29)そこで、履物が姿勢の変化に影響を与えるのではないかという仮定の下、この項目を取り入れた。 ・項目4について 被服について、スカートであるのかそうでないのかは、人の姿勢の選択に制限を与えるものと考える。例 えば、スカートをはいた女性がしゃがまないのは、日常生活で想像できることである。よってこの項目を取 り入れた。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
44
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
4.2.4 観察調査記入表 ZI[\]A^_,-
<=>?@IJKLMNOP>Q R<
() *+
=STUVW4XYZTUVW4X
uv789:wx9yAgz{ghij9| }~• mnop qrsot€ qrsot& ,-.
/
.
[\]^O_QEF`a[Pb)c 6NOP>QEFdefW4X
0.
\7gh[IJ7ABCDijk, lQWm,n7S)fk,op[A
,-kl12
,-12
,-3412
BCDij4fN,QGHW4X
56789: !"`!"?@AaG7bL:cde@LTfg56L:hij9 !" ;<==< > !"?@ABC DEFG D HI H JKFG J LMNO LM PQFG P R$ R 56U
!" > H R LM R
$ST12 VWXVY !"#! !"$! $"#! !"%!
!"?@ABC J J D J P
!"
$ST12 !"?@ABC
IJ_EFt7uE)gk,5kOX
qrs7EFGHf[4X
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
45
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"v$$wxyz{|}~•€)234•‚756EFGH 4.3.1 調査概要 ◇東京ディズニーランド 行動調査の場所として東京ディズニーランドを選んだ理由を挙げると、まず、人が長時間特定の空間内に いることを要求される場であることがある。長時間の拘束を受ける中で、 人は常に活動していることは出来ず、 何らかの方法によって休息しているものと考え、その方法について観察調査を行う。 また、東京ディズニーランドは、常に様々な休憩場所を用意してある場でもある。たとえば、移動中に歩 き疲れた場合は座ることのできるイスやお店がすぐに用意されており、地図を見るため簡単に寄りかかりた いと感じれば、それに適した花壇の柵が数多く設置してある。人がどのような行動、行為、動作、姿勢によっ て休息を行っているのか分析するにあたり、選択できるものの数が多い場であるということも、今回、重要 な理由の一つである。 ◇調査概要 東京ディズニーランドにおいて、観察者が入場者を追跡し、ボイスレコーダー(図 4.3.1-1)にてその行動 変化を記録し、後に 4.3.3 の調査項目を記入した。 観察対象者の選出について、調査時間が長時間であることと調査場所が雑多である関係上、一人の人間を 追跡するにあたり非常に困難であり、それぞれの日程において以下のような制限を受けた。 10月10日 「調査者にとってまったくの他人だが、見失わないよう、ある程度目立つ女性二 人組の一人を、観察対象者とした。 」 10月12日・13日「調査者の知人に対し、好きなように園内を回ってもらうことを指示し調査者が 同伴する。一日の行動変化に関して調査者の意見を取り入れることがないよう 配慮し、記録した。 」
- !"v"#.#/ƒ„…†‡}ˆ}// /////‰Š‹Œ•Ž•$•‘’“”.•–”“$•.!—
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
46
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇人の行動 ディズニーランド内での人の行動について、例えとして一連の典型的行動を述べる。 「まず園内に入り、移動し、アトラクションに乗るために行列に並ぶ。アトラクションに乗った後、ま た移動し、露天にて飲食を購入し、ベンチに座って食べる。 」 図 4.3.1-2 は、以上の一連の典型的行動を画にしたものである。 これらの行動の中で、行列行動は他の行動とは異なった特徴を持つと考えられる。つまり、他の行動は 主に動くことを前提としているのに対し、 行列行動は主として動かないことを前提とした行動である。よっ て、行列行動中は、別途姿勢変化について調査することとする。調査の詳細は「4.3.5 観察調査記入表」 に示す。
- !"v"#.:/•˜7™šJ56
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
47
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
4.3.2 調査日時 ◇調査日時:2008年10月10日、12日、13日 調査人数:3人 調査時間:8∼10時間 調査場所:東京ディズニーランド園内
4.3.3 調査項目 ◇観察対象者の情報 1.性別 2.年齢 ◇行動 3.入園時刻 退園した時刻 4.何時にどの行動からどの行動(参照 「4.3.4 行動の定義」 )に遷移したのか ◇姿勢 5.行列中の姿勢の状態(参照 「1.2.2 姿勢の定義」 )
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
48
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
4.3.4 行動の定義 4.3.3 の調査項目について、詳細を述べる。 以下の定義に則って人のその時の行動が「歩行」 「立ち止まり」 「着座」 「行列」のどの行動かを判断する。 ◇歩行 アトラクション・商業店舗・パレード鑑賞など様々な目的物を目指し歩くこと、目的もなくぶらぶら歩く こと、その両方を指す。 ◇立ち止まり 立ち止まった場合、理由・目的が何であれ、立ち止まりであると定義する。 ◇着座 着座した場合、理由・目的が何であれ、着座であると定義する。アトラクション中に座った場合もここに 該当する。 ◇行列 アトラクションに入る前、店舗、露天などで行列に並ぶことを指す。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
49
第4章:研究方法 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
4.3.5 観察調査記入表 ›56EFGHœ•ž Œ•ŽA^_,() *+ uv789:wx9yAgz{ghij9| }~• mnop qrsot€ qrsot* ,-.
/
.
0.
,-kl12
,-12
’•LTA=c“9”•“•de@LTfg56L:hij9 ‘% 9 †pžŸ ¡•$„kl $l †pžŸ ¡•$„34 $3 †pžŸ ¡•34 †‡!"†> †pžŸ ¡•g™A;”˜!"iST= !"†H!"†R ‘%…7‡ST“•wrm`–—˜™•š›LT| ‚ HIœ•ST“• T ;<==ST“• ;
56789: $%
56U
$% 9 ‚ 9 $l $3
Ÿ
,-3412
•.A%• ˆA1A1‰w€1€W| DE ##$%& ##$'( #)$(' #)$#' #%$#(
7¡i756CDK8r
siGHNOX
$%
ˆA1A1‰w€1€W| DE
Š‹
IJ_EFt7uE)gk ,EFNOX
›5¢¡7ABEFGHœ•ž 5¢f+hIJj4567¡i7G
$„…A!"^_,-
H[7iQABCD7IJ£¤¥[
$S:9T!"•de@LTfg56‚ƒ 56789: !" ;<==< > HI H LMNO LM R$ R 56U
5¢¡i7ABCD
!" > H R LM R
$ST12 VWXVY !"#! !"$! $"#! !"%!
!"
$ST12
\_¦)§¨©ª[+X !"
$ST12
KqrsiGHNOX
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
50
第5章:研究結果
5.1 駅の待ち合わせにおける姿勢 変化の観察調査結果 5.1.1 経過時間と姿勢変化回数 の関係 5.1.2 姿勢遷移について 5.2 東京ディズニーランドにお ける行動観察調査結果 5.2.1 一日の行動割合 5.2.2 一日の行動推移 5.2.3 シチュエーションで分類 した場合の姿勢推移 5.2.4 シチュエーションで分類 した場合の各姿勢時間の 関係
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"#$%&'()*+,-./0123&456789 5.1.1 経過時間と姿勢変化回数の関係 経過時間と姿勢変化回数の関係を示したグラフをここに示す。(図 5.1.1-1)経過時間5分で、姿勢変化回 数が大きく増加することが読み取れる。なお、グラフからは、5分以降は回数が減少する傾向も読み取れるが、 15分以降の観察データ量が少ないことから断定はできない。
!"+ !"* !") !"( !"' !"& !"% !"$ !"# ! #
$
%
&
'
(
)
*
+ #! ## #$ #% #& #' #( #) #*
: !"#"#;#$%&'()*+<,-./=><?@0123AB&CD
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
52
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
5.1.2 姿勢遷移について 姿勢の遷移確率表・図をここに示す。 (図 5.1.2-1) 「3.2 都市で見られる休息行為のバリエーションと場所」や「3.3 寄りかかり座具の利用調査」において、 寄りかかり姿勢に関して考察を述べており、この姿勢の遷移確率図でも、寄りかかり姿勢を中心においた。
N !"#"E;#$%&'()*+<,-./FGOPN TO
0. 36 0. 04
寄
立
歩
0. 36
座
0. 07
0
0. 05 0. 32
0. 83 0. 76
0. 12 !"#$
0. 16 : !"#"E;#$01&FGHIJKLM
姿勢が遷移する過程において、寄りかかり姿勢を経由して遷移する場合が多いことが読み取れる。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
53
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"E$QRSTUVWLXY,-./Z[456789 5.2.1 一日の行動割合 ◇全日データ 調査した3データにおける行動の推移を図 5.3.1-1 に、1日の行動の割合を図 5.2.1-2 に示す。 !"#$
\gh\g] %&#$ '(#$ &.#$
_$$`````#`````$$E`````$$a`````$$b`````$$!`````$$c`````$$d`````$$e````$$`f`````$$#_ <? \gh\i]
_$$`````#`````$$E`````$$a`````$$b`````$$!`````$$c`````$$d`````$$e````$$`f`````$$#_ <? \gh\j]
_$$`````#`````$$E`````$$a`````$$b`````$$!`````$$c`````$$d`````$$e````$$`f`````$$#_ <? : !"E"#;#$\],-./Z[&^G \gh\g]
!"#$ %&#$ '(#$ )*++*#$ ,-#$
\gh\j]
&.#$
!"#$ %&#$ '(#$
\gh\i]
)*++*#$ ,-#$ &.#$ !"#$ %&#$ '(#$ )*++*#$ ,-#$ &.#$
: !"E"#;E$k]&Z[<?l)
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
54
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
5.2.2 一日の行動推移 ◇一日の前半と後半による比較 観察を行った全体時間を前半後半に分け、 「歩行」 「着座」「立ち止まり」「行列」の各行動の、時間の前半 後半での推移と、その行動が起きてから次に起こるまでの平均間隔時間の推移を示す。 (図 5.2.2-1 ∼ 8)
&'#$
&'$%
%"
(!
%!
'!
$"
"!
$!
&!
#"
%&#$
%!
#!
$!
"
#!
%&$2
!
!
(分)
/0
(分)
10
: !"E"E;#$mn@onpqrstuvwZ<?
/0
10
: !"E"E;E$mn@onpqrstuvwZ?x<?
・歩行に関して 一日の前半後半で、歩行行動は後半の方が長くなるが、その間隔は後半の方が短くなることが分かる。一 回に歩く時間が、後半の方が長いと考えられる。
!"$%
!"#$ %"
(!
%!
'!
$"
"! &!
$! #"
%!
!"#$
#!
$!
"
#!
!
(分)
!"$2
!
/0
10
: !"E"E;a$mn@onpqrstuvyz<?
(分)
/0
10
: !"E"E;b$mn@onpqrstuvyz?x<?
・着座に関して 着座行動は、後半になれば短くなるが、その間隔も短くなる。つまり、後半の方が、短い時間でこまめに 着座行動をとるようになっているのだと考えられる。 (割) (分)
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
55
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
)*+,-$%
)*+,-#$ %"
(!
%!
'!
$"
"!
$!
&!
#"
%!
'(34*#$
#!
$!
"
#!
!
(分)
'(34*$2
!
/0
(分)
10
: !"E"E;!$mn@onpqrstuvP({|}<?
/0
10
: !"E"E;c$mn@onpqrstuvP({|}?x<?
・立ち止まりに関して 立ち止まり時間は、全体として短いが、その間隔も全体として短い。すべての時間において、何度も行わ (割)
(分)
れている行動だと分かる。また、後半の方が間隔時間が長くなる傾向が見られ、これは、後半の方が立ち止 まる回数が減るということである。
'(#$
'($%
%" %! $" $! #"
&.#$
#! " !
(分)
/0
10
: !"E"E;d$mn@onpqrstuvZ~<?
)! '( '' '& '$ '! "( "' "& "$
(分)
&.$2
/0
10
: !"E"E;e$mn@onpqrstuvZ~?x<?
・行列に関して 行列行動に関して、前半の方は短い間隔で長時間行われ、後半になると長い間隔で短時間行われているこ とが分かる。長い行列に並ぶ行動(人気のあるアトラクションに並ぶ)は、 前半に集中していたことが分かる。 (割) (分)
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
56
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇1時間ごとの行動の推移 経過時間と行動変化の関係を見出すため、行動観察調査のデータを1時間毎に分け平均化し、経過時間と 行動の割合の推移を求めた。図 5.2.2-9 に全体の推移を、図 5.2.2-10 ∼ 13 に各行動の推移を示す。 歩行・着座行動は前半に一時減少するが後半にまた増加傾向をみせ、それに対し、行列行動は前半に一時増 加するが後半に減少する。
#!!" +!" *!" )!" ,-
(!" '!"
567
&!"
&.
%!"
!"
$!"
'(
#!"
%&
!"
: !"E"E;f$=><?@Z[&^G
%
&'
&" &! %" %! $" $! #" #! " !
: !"E"E;#_$wZZ[&^G
%
%
!"
&" &! %" %! $" $! #" #! " !
)*+,-
&" &! %" %! $" $! #" #! " !
: !"E"E;##$P({|}Z[&^G
: !"E"E;#E$yzZ[&^G
%
'(
&" &! %" %! $" $! #" #! " !
: !"E"E;#a$Z~Z[&^G
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
57
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
5.2.3 シチュエーションで分類した場合の姿勢の推移 ◇シチュエーション 都市の中での人の行動と同じく、人の行動は「歩行せずに立ち止まる」と「歩行している」の二つに大別 できる。本観察結果も、「歩行せずに立ち止まる」と「歩行している」を指示されるシチュエーション、 ア トラクションのための行動 パレードのための行動 と それ以外の行動 の分類である。ただし パレード のための行動 はその性質上、行われる姿勢変化がその場の条件に拘束されすぎるので、今回は分析の対象 外とした。 すなわち、 アトラクションのための行列行動 それ以外の行動 を「立ち止まりシチュエーション」 「歩き シチュエーション」の行動であると分類し、その中で姿勢の変化について分析する。 歩きシチュエーション内での経過時間と行われた姿勢の推移に関してのグラフを図 5.2.3-1 ∼ 5 に、止まり シチュエーション内での経過時間と行われた姿勢の推移に関してのグラフを図 5.2.3-6 ∼ 10 に示す。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
58
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇歩きシチュエーションにおける経過時間と行われた姿勢の推移 #!!" +!" *!" )!" (!" '!"
!
&!"
)
%!"
'
$!"
%
#!" !"
: !"E"a;#``w•‚ƒ„…W‚†Xp&<?=>@01&^G
"-./
&2./ !")
!")
!"(
!"(
!"'
!"'
!"&
!"& !"%
!"% !"$
%
!"$
!
!"#
!"#
!
!
(割)
(割)
: !"E"a;E$w•01&^G
: !"E"a;b$z}01&^G
)*./
0-11-./
!")
!")
!"(
!"(
!"'
!"'
!"&
!"& !"%
!"% !"$
'
!"# !
(割)
: !"E"a;a$P(01&^G
!"$
)
!"# !
(割)
: !"E"a;!$€}••}01&^G
アトラクション間の移動などの歩くことを指示されているシチュエーションにおいて、歩き姿勢の割合は 時間経過とともに減少し、後半になるにつれて着座姿勢が増える傾向が見られる。立ち姿勢と寄りかかり姿 勢はともに経過時間に対して変化が見られなかった。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
59
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇立ち止まりシチュエーション内における経過時間と行われた姿勢の推移 #!!" +!" *!" )!" (!"
"
'!"
)
&!"
%
%!"
'
$!" #!" !" 89:8;
:8;<=8;
=8;<>8;
: !"E"a;c``P({|}‚ƒ„…W‚†Xp&<?=>@01&^G
"-./ "-./
&2./ &2./ )2./ !") !") !"( !"( !"' !"' !"&
!") !"( !"( !"' !"' !"& !"& !"%
!"% !"&
!"$ !"% !"# !"$ ! !"#
%' %
! "
!
!
(割)
!"$ !"% !"# !"$ ! !"#
89:8;
:8;<=8;
(割)
=8;<>8;
: !"E"a;d$w•01&^G
89:8;
=8;<>8;
: !"E"a;f$z}01&^G
0-3-./ 0-11-./
)*./ !") !")
!") !") !"( !"( !"' !"' !"&
!"( !"( !"' !"' !"&
!"& !"%
!"& !"%
!"$ !"% !"# !"$ ! !"#
' '
!"$ !"% !"# !"$ ! !"#
))
!
!
(割)
:8;<=8;
(割)
89:8;
:8;<=8;
=8;<>8;
: !"E"a;e$P(01&^G
89:8;
:8;<=8;
=8;<>8;
: !"E"a;#_$€}••}01&^G
行列行動などの立ち止まっていることを指示されるシチュエーションにおいて、立ち姿勢の割合は時間経 過とともに減少し、寄りかかり姿勢が増える。時間経過とともに、座り姿勢が出現することも分かる。なお、 歩き姿勢は時間経過とともに減少するが、今回の調査が行列並びを調査してきたことから、歩き姿勢の時間 に関しては、その行列の進度によるものであるので、参考にはできない。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
60
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
5.2.4 シチュエーションで分類した場合の各姿勢時間の関係 シチュエーションの分類を「歩行せずに立ち止まる」と「歩行している」を指示するシチュエーションで 分けたので、歩きシチュエーションにおいては歩き姿勢の占める割合が、立ち止まりシチュエーションにお いては立ち姿勢の占める割合が、最も大きく出た。 つまり、歩き姿勢が主となるシチュエーション内において歩き姿勢に対して他の姿勢がどの程度の時間現 れるのか、立ち姿勢が主となるシチュエーション内において立ち姿勢に対して他の姿勢がどの程度の時間現 れるのか、がそれぞれ算出される。
各シチュエーションにおいて、算出式は以下である。
歩きシチュエーションにおける歩き姿勢に対する他姿勢出現時間算出式
?@ABC%H?@DABE?@FG#$ 立ち止まりシチュエーションにおける立ち姿勢に対する他姿勢出現時間算出式
?@ABC'(?@DABE?@FG#$ これは、単に姿勢の平均時間ではなく、その姿勢が各シチュエーションの主となる姿勢(歩き姿勢もしくは 立ち姿勢)に対して何回出現したのか、という割合も考慮した、ということである。 例えば、立ち止まりシチュエーションにおいて、座り姿勢の、立ち姿勢に対する出現時間が知りたいのであ れば、 座り姿勢を行った回数 を 立ち姿勢を行った回数 で割り、そこに 座り姿勢の平均時間 を掛ける ということである。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
61
第5章:研究結果
空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
% #
' ) "
!
"!
#!!
#"!
$!!
$"!
%!!
%"!
&!!(秒)
: !"E"b;#$w•01,‡ˆ/‰01&Š‹<?
' #
% ) "
!
"!
#!!
#"!
$!!(秒)
: !"E"b;E$P(01,‡ˆ/‰01&Š‹<?
歩きシチュエーションのデータからは、平均すると、歩き姿勢が約250秒続くと、約60秒の立ち姿勢、 60秒の座り姿勢が出現していることがわかった。 立ち止まりシチュエーションのデータからは、平均して、立ち姿勢が約90秒続くと、約10秒の歩き姿勢、 約50秒の寄りかかり姿勢が出現していることがわかった。 両方のグラフから、立ち姿勢の方が、歩き姿勢よりも短い出現時間であることも分かる。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
62
第6章:総括
6.1 考察 6.2 展望 6.3 参考文献リスト 6.4 おわりに
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"#$$%& ◇経過時間と姿勢変化 「5.1.1 経過時間と姿勢変化回数の関係」より、待ち合わせ行動中、時間が経過するにつれて人は姿勢を変 化させるということがわかった。 待ち合わせ行動は、「歩行せずに立ち止まる」行動であると考えられる。「3.1 筋電計を用いた疲労に対す る姿勢変化の効果検証実験」から、姿勢を変化させることが疲労を開放する方法であると考察されているこ とも踏まえると、人は、 「歩行せずに立ち止まる」行動において、その拘束に対して、無意識のうちに姿勢を 変化させ休息を行っており、時間経過によって、その回数すなわち「姿勢変化という休息に対する欲求」が 上昇する傾向にあるということが考察される。 ◇特定の拘束がある中での姿勢の遷移確率 「5.1.2 遷移確率について」から、 寄りかかり姿勢が他の姿勢に変化しやすい姿勢であるということが分かっ た。 なお、確率が高いということは出現回数も多いということであり、その人が常に個人にとって最良の姿勢 を取っているものと考えるのであれば、 寄りかかり姿勢は、 好まれる姿勢であるということも考察できる。 「3.2 都市で見られる休息行為のバリエーションと場所」と「3.3 寄りかかり座具の利用調査」から、寄りかか り姿勢は手軽で、いたる所で簡単に行える姿勢であるとわかったことも踏まえると、寄りかかり姿勢は、人 がちょっと休むことに最も適した姿勢であり、 「歩行せずに立ち止まる」行動中に有効な姿勢である。 ◇長い時間軸においての行動変化 「5.2.2 一日の行動推移」において、 「行列行動」 ・「立ち止まり行動」の時間が減少していたこと、間隔時 間が延びていたことから、人は、長時間特定の空間内にいることを要求される場において、時間が経過する につれて「歩行せずに立ち止まる」行動を好まなくなると考えられる。 「歩行行動」・ 「着座行動」の時間が増加、その間隔時間が減少したことは、長時間特定の空間内にいること を要求される場において、時間が経過するにつれて「歩行している」または「着座している」行動が好まれ るということであり、後半になるにつれ、こまめにその行動をとろうとしていることが分かる。 「2.1 現代都市における活動と疲労」において述べているように、都市の中で「歩行せずに立ち止まる」 行動を強いられる場が増えている現状、 人が好まない「歩行せずに立ち止まる」行動をいかに上手に過ごすか、 という考えを持つべきなのであり、その解決として、こまめに「歩行」行動や「着座」行動を挟むことが挙 げられるのではないだろうか。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
64
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇歩きシチュエーションにおける姿勢変化 「5.2.3 シチュエーションで分類した場合の姿勢推移」より、 「歩行している」状況において、その時間経 過と姿勢の推移ついて、時間が経過するにつれて、 「歩き姿勢」が減少し、 「座り姿勢」が増加することが分かっ ている。これは、人は「歩き姿勢」を強いられた場合、その姿勢を維持し続けることが困難なのだと考えら れ、その代わりに「座り姿勢」を増やすことで、その拘束のなかで休息を行っていると考察される。「立ち姿 勢」が減少せずに行われていたことも、 「歩き姿勢」の拘束による疲労に対する休息であると考えられる。な お、これは 動的な疲労→静的な休息 の関係であり、建築において既往研究が数多く存在している分野である。 ◇立ち止まりシチュエーションにおける姿勢変化 「5.2.3 シチュエーションで分類した場合の姿勢推移」より、 「歩行せずに立ち止まる」状況において、そ の経過時間と姿勢の推移について、時間が経過するにつれて、 「立ち姿勢」が減少し、「寄りかかり姿勢」「座 り姿勢」が増加することが分かっている。これは、人は「立ち姿勢」を強いられた場合、その姿勢を維持す ることが困難であり、その代わりに「寄りかかり姿勢」「座り姿勢」を増やすことで、その拘束の中で休息を 行っていると考察される。 「座り姿勢」が「寄りかかり姿勢」よりも現れにくいのは、その場に座具がないからであり、「3.3 寄りかか り座具の利用調査」から分かっているとおり、 「寄りかかり姿勢」が手軽な姿勢だからである。 「3.1 筋電計を用いた疲労に対する姿勢変化の効果検証実験」も踏まえると、「歩行せずに立ち止まる」行動 において、「立ち姿勢」→「寄りかかり姿勢」という姿勢変化が、有効であると考えられる。 座具のない場所は都市の中で数多く存在するのであれば、 (参照:「3.2 都市で見られる休息行為のバリエー ションと場所」 )「寄りかかり姿勢」を提供することも有効であると考えられる。なお、これは 静的な疲労→ 動的な休息 の関係であり、建築において未だ未開拓な部分である。 ◇歩き姿勢に対する姿勢 「5.2.4 シチュエーションで分類した場合の各姿勢時間の関係」より「歩き姿勢」を続けることのできる時 間と、一定時間続けた場合に他にどのような姿勢をどの程度の時間挟むことが多いのかが分かった。 姿勢変化を休息ととらえると、以上の結果から、どの程度の距離歩いた場合、「立ち姿勢」「座り姿勢」「寄 りかかり姿勢」といった休息がどの程度必要なのかが分かる。なお、これら「歩き姿勢」に対する休息の考 え方は 動的な疲労→静的な休息 のものであり、建築において既往研究が数多く存在している分野である。 ◇立ち姿勢に対する姿勢 「5.2.4 シチュエーションで分類した場合の各姿勢時間の関係」より「立ち姿勢」を続けることのできる時 間と、一定時間続けた場合に他にどのような姿勢をどの程度の時間挟むことが多いのかが分かった。 「寄りかかり姿勢」が最も簡単に行われる姿勢であり「立ち姿勢」に対する時間が長く、簡易的であるが、 疲労感の自覚を軽減する効果はあまり無いのではないかと考えられる。「座り姿勢」は座具がないにも関わら ず行われ、短い時間で休息を求める人に、休息を与えているものと考えられる。なお、これは 静的な疲労→ 動的な休息 の関係であり、建築において未だ未開拓な部分である。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
65
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
図 6.1-1、2 は、以上の考察をまとめたダイアグラムである。 図 6.1-1 は、特定の拘束を受けた場合、人間の行動変化には、時間の流れに合わせた行動変化として「活動」 と「休息」の推移が存在し、さらに、その行動の中にも、活動と休息の推移が姿勢の変化として存在するこ とを示している。
J I
E
I
E
K
J L M
D G
H
E
E
D F F
E
E
D F F
E
E
K
D J J K E K L L F L M M F M E E E E
D
F F
E
I
E
G
H
E
J
K
D E L F M F E E
D F F
E
E
J
D F F
E
E
K
L M
F F
E
E
NOPQ
' !"#(#)*+,-.,/0123456789:;0<=>6?@A,BC
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
66
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
図 6.1-2 は、時間経過やシチュエーションに合わせて、姿勢変化としての活動と休息の推移は異な ることを示している。なお、姿勢を囲っている四角の面積が大きいものほど、直前の姿勢から、そ の姿勢に移りやすいことを示している。
' !"#(R)89:;?S3,>6?@A,T
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
67
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"R$$UV 人間の行う活動には様々な種類があり、そのための疲労にも種類がある。そして、その疲労に見合った 休息行動として、考えなければならない行動は複数に存在し、そのための行動、行為、動作、姿勢は多様 に変化する。 その変化は、時間の流れの中で常に行われるものであり、一定の行動、行為、動作、姿勢に対してのみ を休息と考えていてはならない。そのような時代の流れ・日常生活における人の要求が存在しているので ある。 現在の建築において、休息する場と言えば、座具の配置計画、座具形状の計画といった考え方をしがち であるが、休息は、座ることだけ、安静にすることだけ、を考えていてはならない。 都市の中には、信号待ちの場所、駅のホーム、歩道、など、休息できる空間に数えなければならない空 間が多数存在している。そして、それら休息する場所の中にも、様々な休息のバリエーションの提供があ るべきである。 ◇公園 現在、動くことで休息を行うための建築として、まずは、公園の中で提供される散歩道が挙げられる。 「葛 西臨海公園展望レストハウス」(図 6.2-1)や「横浜大さん橋」(図 6.2-2)などの、屋内と屋外を一体化さ せた施設は、歩くことで休むための建築であるといえる。以下の事例を動的な休息を提供する場として挙 げた理由に、動的な休息があるだけではなく、その中に、ずっと歩かせない、活動と休息が交互に行われ るように、静的な休息を提供する場も同時に計画されている、ということがある。動的休息・静的休息の 一方のみで考えないことが必要なのである。
' !"R(#WXYZ[\]UV^_`ab_c
' !"R(R defghi
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
68
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇寄りかかり姿勢 本研究において、公共の場において最近普及した新しい形の寄りかかり座具の利用状況調査を行ってい るが、近年、寄りかかり姿勢の取り入れは積極的に行われている。調査場所でもあった駅ホームでは、座 具よりも省スペースな寄りかかり座具の導入を進めている。さらに、喫煙所は座具ではなく寄りかかり座 具を設置し、 (図 6.2-3)オフィスのイスは寄りかかり型のものに注目が集まっている。図 6.2-4 は、沖電 気工業と岡村製作所が発表した新しいオフィス椅子の形状である。 都市において、休息のための空間に、寄りかかり姿勢を取り込むことで、より心身に負担をかけない、 新しい形の休息場所の提案が可能なのではないだろうか。少なくとも、都市の中で人は寄りかかり姿勢を 積極的に行っている現状はある。
' !"R(j _klmln_opqrst
' !"R(u vwxyz_{|} ~•€•‚ƒ„…^x†l‡ˆ
◇時間と休息 経過時間・距離などに合わせて、休息が他者から供給される場面がある。 たとえば、マラソンの給水所は、選手が走った距離に合わせて設置されているものであり、時間の流れと 休息のタイミングを考慮して供給される。他にも、トレーニングマシーンは一定時間経過すると動作を停 止するものがあり、任天堂 WII FIT は一定時間経過すると体を安静にすることを警告する。アスレチック における遊具の配置はだんだんと難易度が高い遊具があらわれるようになっているなど、供給の形は様々 である。 日常生活の中でも、どの行動が活動にあたり、どの行動が休息にあたるのか、人間行動調査からその判 断基準を立て、時間と活動の兼ね合いによって引き起こされる疲労に対し、どのような休息が適している のか、どのようなタイミングでどのような休息が供給なされるべきなのか知ることが、これからの課題で ある。
建築における休息の考え方が変わること、そこから、建築の在り方を見直すことが、これからの社会に おいて建築が考えるべき重要な問題であると考える。
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
69
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"j)‰%Š‹Œ_` 参考文献 ◇積極的休息に関する既往論文 1. 笠原政志: アクティブレストにおけるストレッチングとアイシングの併用及び順序が疲労回復効果に与える影響 2. 近藤正子: 軽度の身体運動が心身に及ぼす影響について、バイオフィードバック研究、2001 3. 加藤恵子: 精神作業の疲労回復に及ぼす運動の効果、名古屋文理短期大学紀要第15号、1990 4. 佐田吉隆: 内田クレペリン精神検査を用いた精神面での積極的休息の効果、性格心理学研究第8巻、2000 朗読による精神面での積極的休息が知覚−運動学習に及ぼす効果、教育心理学研究、2000 5. 和泉光保: 暗算における積極的休息が安産作業量に及ぼすえいきょうについて、近畿福祉大学紀要 vol8、2007 ◇余暇に関する既往論文 6. 菊池義浩: 社会性余暇に注目した余暇活動の実態とその推移について、日本建築学会学術講演梗概集、2006 7. 北野幸樹: 余暇活動の変遷に関する研究 その1 ∼経年的変化からみた余暇活動の動向と特性について∼、日本建築 学会学術講演梗概集、2006 ◇睡眠に関する既往論文 8. 藤森久: 睡眠−覚醒サイクル制御機構の神経回路モデル、日本建築学会学術講演梗概集、1999 9. 上西園武良: ベッドにおける寝返り性の研究(マットレス素材による生体負荷の差異)、日本建築学会学術講演梗概集、 2005 10. 上西園武良: 枕の開発における効率的な人間中心設計の方法、日本建築学会学術講演梗概集、2007
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
70
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇着座姿勢に関する既往論文 11. 小杉勝己: 身体情報別に見た VDT 作業における着座姿勢の時系列変化に関する研究∼身体情報が着座姿勢保持時間に与 える影響∼、日本建築学会学術講演梗概集、2003 ◇姿勢に関する既往論文 13. 正木健雄: 姿勢の研究 ( 第 1 報 ) : 休息立位姿勢の実態について、体育學研究、1960 14. 正木健雄: 姿勢の研究第二報∼休息立位姿勢における筋電図の個人差∼、体育学研究Ⅷ、1963 15. 猪飼道夫: よい姿勢とは何か、体育学研究Ⅱ、1958 16. 渡辺秀俊: よりかかりをアフォードする高さ寸法∼身体を支持する環境の働きに関する研究(その1)∼、学術講演梗 概集、1998 ◇筋電計測に関する既往論文 17. 永池俊也: 筋力低下を予防する住空間のデザイン∼日常生活動作時の腰部周りの筋活動量計測∼、2004 18. 松井香代子: 腰部負荷と筋活動からみた調理空間の研究、2005 19. 佐藤寿晃: 随意収縮および電気刺激による筋疲労後の筋電図学的解析、山形健康科学大学紀要、2006 20. 蘭和真: 表面筋電図のパワースペクトラムからみた筋疲労回復過程、東海女子大学紀要、1986 21. 岡久雄: 筋疲労の定量化∼筋の粘弾性、筋電図、電気刺激激闘値∼、社団法人電子情報通信学会、1996 22. 愛知医科大学附属病院リハビリテーション部、 筋疲労の解−低強度・持続収縮での検討−、理学療法学第 24 巻学会特別号、1997
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
71
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
◇活動に関する既往論文 23. 立川 史郎: チェーンソー作業者の作業姿勢が労働負担に及ぼす影響、日本林學會誌、1991 24. 野津 哲子: 縫製作業における疲労の研究 第 3 報、島根女子短期大学紀要、1987 25. 菅原 徹:筋の単一運動単位活動の疲労性変化、J−STAGE バイオメカニズム Vol. 17、2004 26.GERALD P KRUEGER:持続した労働、疲労、睡眠の減少および作業成績;これらの問題についての報告、 WORK & STRESS、1989 ◇人間行動に関する既往論文 27. 伊藤あかね:要介護高齢者の日常生活行動のモデル化に関する研究、2001 ◇商業施設におけるストレス値のデータ引用 28. 安藤駿介:休符モデルからみた大型商業施設における買い物行動、2008 ◇文献 29. 日本建築学会 編、建築設計資料集成(人間) 、丸善株式会社、2003 30. NHK放送文化研究所 編、日本人の生活時間・2005∼NHK国民生活時間調査∼、NHK出版、 2006 31. 山本利春 著、疲れたときは、からだを動かす!アクティブレストのすすめ、岩波書店、2006 32. 再 考 / 東 京 オ フ ィ ス 市 場 の「 2 0 1 0 年 問 題 」http://www.nli-research.co.jp/report/misc/2005/ fudo0504-a.pdf 33. 三省堂提供「大辞林 第二版」 34. 三省堂提供「EXCEED 和英辞典」 35. 安村 誠司 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、高齢者における「閉じこもり」、日本老年医学会雑 誌 Vol. 40、2004
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
72
第6章:総括 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"u)1•E0
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
73
第7章:資料編
第7章:資料編 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
!"#$$%&'()*+,-./0123456789:;< ===>8?@AB 被験者1
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
75
第7章:資料編 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
被験者2
被験者3
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
76
第7章:資料編 空間行動における「活動と休息」の推移に関する研究
被験者4
被験者5
早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 2008年度 卒業論文
77