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はじめに

はじめに はじめに

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はじめに 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

祖母は、10年ほど前に夫を亡くしてから現在まで、独居老人としてヘルパー さんの介護を受けて生活をしている。身体に加齢による、さまざまな痛みや病 気などをかかえながら… 祖母は生活をする上で、私のような健常者には全くなんとも思わないような 些細な事で困っている。例えば、コンセントの抜き差しが大変であるとか、靴 下を一人で履くのが大変であるとか、来客時に2Fにいると階段を下って応対 するのが非常に不便であるとか、若い頃にはなんの苦も無く出来たことが簡単 には出来なくなってきたとか…。また、独りということも非常に淋しいという。 そのような辛さや苦しみは、正直言ってしまえば今の自分では想像ができな いような事だ。しかし確かに祖母は困っている。このことは事実である。 そんな祖母を身近に見ていて、少しでも楽にしてあげたいと感じた。このよ うな高齢者は日本、いや、世界中にどれほどいるのだろうか。このような方々 へ少しでも自分が建築学的に貢献することができないだろうか。そんなことが きっかけでこの研究を始めようと思った。

早稲田大学 理工学部 建築学科 渡辺仁史研究室 2006年度 卒業論文

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目次

*目次 *目次

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目次 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

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早稲田大学 理工学部 建築学科 渡辺仁史研究室 2006年度 卒業論文

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目次 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

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用語の定義・説明

1.用語の定義・説明 1-1.福祉ロボット 1-2.福祉機器 1-3.ICFコード

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

本研究では福祉ロボットとはロボットの中でも、その使用目的が対人的であ り、さらに人間への福祉的関係性が密であるという広義的な意味を持つロボッ トを指すこととする。(図1-1-1)

図1-1-1:ロボットの分類(福祉ロボットの位置付け)

ロボットの条件として有名なのが化学者にしてSF作家であったアイザック・ アシモフ(1920∼1992)が提唱した、「アシモフのロボット三原則」であるが、 正式には「ロボット工学三原則」と呼ぶ。AIによる自律行動が可能か否かを 問わず、ロボットが徹底すべき行動規準として以下の原則が挙げられている。 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過す ることによって、人間に危害を及ぼしてはならない。 (A robot may not harm a human being, or, through inaction, allow a human being to come to harm.) ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただ し、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。 (A robot must obey the orders given to it by the human beings, except where such orders would conflict with the First Law.) ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、 自己をまもらなければならない。 (A robot must protect its own existence, as long as such protection does not conflict the First or Second Law.)

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

実はロボットというものには明確な定義は与えられていない。ロボット産業 の振興は国を挙げての取り組みであり、支援する機関・団体は多い。経済産業 省をはじめ、総務省、消防庁、文部科学省、農林水産省、国土交通省、厚生労 働省など、各省庁がそれぞれのニーズに応じたロボットの開発に取り組んでい る。しかし、ロボットに関する明確な定義が無いため、諸機関・団体が発表す る資料では「※本発表資料になかで用いるロボットとは…」と注釈が添えられ ていることが多い。 それでは様々なロボットの定義を挙げてみる。 ロンドン大学クイーンメリーカレッジ M・W・スリング教授 ・「腕と手をもち,人間にプログラムされて広範囲な連続する操作および運搬 作業のいずれをも行い,その環境についての自己の感覚印象に従って予め命令 された方法により自己の運動を適応させる,自走する装置」 高橋秀俊 東京大学教授 ・「計算機に入出力の能動性が加わったもの,すなわち手足感覚を付加したも の」 森政弘 東京工業大学教授 ・「汎用性,移動性と運動性,自動性,奴隷性,知能性が要求され,とりわけ 移動性と個体性こそ不可欠」 故 加藤一郎 早稲田大学教授 ・「ロボットの三要素は意識する脳,作業する手,移動する足であり,これら が一つの個体としてまとまり,これらをつなぐ器官として遠隔受容器(目、耳 にあたる),接触受容器(皮,感覚)など外界情報収受装置と,平衡感覚などロ ボットの内部情報の蒐集装置が必要」 石原藤男 玉川大学教授 ・「人間を連想させる外観を有し少なくとも見かけ上は人間に類似の動作をな し,かつある分野においては人間と同等もしくはそれ以上の知的能力,それ自 身独立して有する自動機械」 スタンフォード大学のB.Roth ・「ロボットとは人間や他の動物あるいは機械と連携して仕事をする機械で あって,自動形と半自動形がある.ロボットと他の自動機械との区別はあまり はっきりしていなくて,かなり気まぐれ的で,時間的にも意味は移り変わって いる」 JIS(日本工業規格)による産業ロボットの定義(1987年) ・「自動制御によるマニピュレーション機能や移動機能を持ち,いろいろな作 業がプログラムされて実行できる機械」 最後に挙げたJISの定義において、マニピュレーション機能とは、人間で言 えば手や腕の動きや役割に似たもので、アームを器用に動かす溶接ロボットを、 また移動機能は、工場内を自走する搬送用ロボットを想起させる。ちなみにJIS では、産業用ロボットのほか、電子部品実装ロボットや知能ロボットなどの項 目はあるが、ロボットそのものの定義は見当たらない。

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

一方、経済産業省は、報告書の中でロボットの定義を次のように定めている。 ・「ロボットの基本的な特徴は、『(1)力センサーやビジョンセンサー等により 外界や自己の状況を認識し、(2)これによって得られた情報を解析し、(3)その 結果に応じた動作を行う』点にある。つまり、人間でいう『感覚・頭脳・筋肉』 の機能をある程度備えた機械システムであると言える。」(「次世代ロボット産 業振興に向けた経済産業省の取り組み」より)。 センサーで情報を収集し、それに基づいて判断し、何かしら動作をするもの。 それがロボットであると言うことである。 なお、経済産業省では「次世代ロボット」と言う言葉を使い、工場生産にた ずさわる従来の産業用ロボットと、これからの暮らしで役立つであろう新しい タイプのロボットを区別している。具体的には、医療や福祉、防災、メンテナ ンス、生活支援、アミューズメントなど、工場以外の場での活用が期待される ものを「次世代ロボット」とし、産業用ロボットと次世代ロボットの違いとして、 次世代ロボットは移動性が高く、人との物理的距離が近い点を挙げている。 このように定義がたくさんあることが、ロボットとは何かという問題を複雑 にしている。 福祉ロボットの未来を描く試みでもある本研究では、このようなことをふま えて前述のように福祉ロボットを広義的にとらえて行きたいと思う。

図1-1-2:福祉ロボットの生活導入時のモデル図

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

本研究において福祉機器とは福祉用具の中でも特に人間の寸法体系に関わり の深いものと定義する。 福祉用具という言葉は法律によって定義がなされている。 1993(平成5)年、旧厚生省と通商産業省/現厚生労働省、経済産業省によ り福祉機器に関する法律 「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」 通称「福祉用具法」が制定され、その中で福祉用具は『心身の機能が低下し、 日常生活を営むのに支障のある老人または心身障害者の日常生活上の便宜を図 るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具ならびに補装具をいう』 と定義された。これは1975(昭和50)年に旧厚生省の「心身障害研究報告書」 の中で定義づけられた福祉機器の定義である「心身障害、ねたきり老人等の日 常生活の便利または容易ならしめる機器、喪失した機能を代替する機器、心身 障害者の能力開発を行う機器の総称」とほぼ同じである。欧米では、テクニカ ルエイド(technical aids)と呼ばれている。 この意義としては福祉用具を目的に合わせて活用することにより、加齢や障 害による身体機能の衰えや低下を補えること。又、介助が必要な場合には介助 者の労力を軽減できる。福祉用具は身体機能面を補助するだけでなく、主体性 や自主性を支え、社会参加を促す精神的なきっかけともなりうる。 前述の定義は福祉用具が心身の障害で生活を円滑に営めない人の為に工夫さ れた日常生活用具や補装具、機能の改善・維持を図ることを目的とした用具、 さらには彼らの自立を援助するときに、家族や介護者の心身機能の負担を軽減 する介護機器であることを示している。つまり、福祉用具には、主に利用者の 自立支援と、介護者の介助量軽減支援の2つの大きな目的があり、ともに利用 者の日常生活をより過ごしやすくするために導入されるものだということがわ かる。 福祉用具の活用は本人の自立性の維持を目標としながらも、介助者の疲労を 軽減することで安定した介護力を確保し、無理なく安全に生活を継続できる点 に目を向けることが重要である。 以下に福祉用具を利用するにあたっての制度を挙げる。 介護保険 介護保険法に規定する要支援,要介護の認定を受けている被保険者が対象に なる。介護保険で提供されているサービスの中には、福祉用具貸与と福祉用具 購入費の支給という2つのサービスがある。これらのサービスは、適切な福祉 用具の選定の援助・取付け・調整などを行い、要支援・要介護と認定された被 保険者の日常生活上の便宜を図り、その機能訓練に役立てるとともに、介護者 の負担の軽減を図ることを目的としている。 *福祉用具貸与 このサービスでは車いすや特殊ベッドなどの貸し出しを受けられる。一般の 在宅サービスと同様、ケアプランに沿って提供され、要介護度に応じた支給限

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

度額の範囲内で利用料の1割が自己負担となる。

1.車椅子 2.車椅子附属品 3.特殊寝台 4.特殊寝台附属品 5.褥瘡予防用具 6.体位変換器 *福祉用具購入費の支給

7.手すり 8.スロープ 9.歩行器 10.歩行補助 11.痴呆老人

徊感知機器

12.移動用リフト(つり具の部分を除く)

 入浴や排泄などに使用される、貸与になじまない特定の福祉用具を購入す る際に購入費の9割を支給する。支給限度額は年間10万円(自己負担が1割) で、費用の全額を支払い、申請により後で支給限度額の範囲内で払い戻される。 1.腰掛便座 2.特殊尿器 3.入浴補助用具

4.簡易浴槽 5.移動用リフトのつり具の部分

身体障害者福祉法 また,身体障害者手帳を所持している方は,以上に含まれない種目,品目に ついて身体障害者福祉法で給付されるものがある。 身体障害者手帳を所持している18歳以上の方が対象。 給付対象品目は,身体障害者福祉法による補装具の種目,受託報酬の額等に 関する基準ならびに重度障害者日常生活用具等給付および貸与品目による。 その他 福祉用具の公的給付制度には他に,労働災害補償保険,厚生年金保険等傷病 をおった時の条件によって給付を受ける制度が変わってくる。 福祉用具のとらえ方 1.生活支援の立場からすると福祉用具は特別な人のための特別な道具では なく、生活必需品としてとらえることの方が自然である。 2.効果が目に見える。  ・うまくゆけば、その成果ははっきりと目に見える。  ・生活を変える引き金となりうる。  ・前向きの気持ちを育てるきっかけとなる。 3.福祉用具のできることには限りがある。  ・所

道具であり、誰にでも、どのようにでも適合する、万能の福祉用具

   はない。  ・特定の条件下で効果を発揮するもの、用具には限界がある。   (使用目的、本人能力、住環境、介助者能力、他の用具との組み合わせ、    使用頻度)  ・正しく使ってこそ効果があり、誤った使用方法は、却って危害を加える    場合もある。

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての���祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

4.同じカテゴリーの用具でも多くの種類がある。  ・同じような用具でも個々に特性は異なり、多種類がある。  ・使用用途によって、状況によって種類は変わって当然である。  ・多種多様の福祉用具がある事を知ることが福祉用具支援の第一歩となる。 5.使用者の条件は多様  ・環境も条件も能力もいつも同じではない  ・誰かにうまくいったからといって誰にでも合うとは限らない

表1-2-1:福祉用具の貸与と購入について

表1-2-2:福祉用具の分類

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

ICFとは2001年5月、ジュネーブで開かれた第54回世界保健機構(WHO) 総会において、人間の生活機能と障害の分類法として国際生活機能分類(ICF) の採択がなされたものである。「生活機能・障害・健康の国際分類」(International Classification of Functioning、Disability and Health)の頭文字をとったもので、 このICFはWHOにおいて、1980年に国際疾病分類(ICD)の補助として発表 された、機能障害と社会的不利に関する分類である国際障害分類(ICIDH)の 改訂版として、発表されたものである。ICIDHはInternational Classification of Impairments(機能形態障害)、Disabilities(能力障害)、and Handicaps(社会 的不利)の略であり、障害の3つのレベルとして用語を定義した。この改訂に より、国際障害分類の内容が大幅に見直しされ、ICFとして充実された。 前身であるICIDHは、身体機能の障害による生活機能の障害(社会的不利 を分類するという考え方が中心)であったのに対し、ICFはこれらの環境因子 という観点を加え、例えば、バリアフリー等の環境を評価出来るように構成さ れている。また、ICIDHは障害のマイナス面を分類する考え方であったのに対 し、ICFはいわゆる障害に限らず、人間の生活に関わるすべての機能(生理・ 心理的機能、解剖的機能構造、活動、参加)を包括的に扱うこととしている。 その肯定的側面を「機能状態 Functioning」、少なからず否定的側面を「障害 Disability」ととらえているため、すべての人を対象として考えることが可能と なった。ICIDHが障害について個人を中心とした、「医学モデル」と批判された ことを受け、ICFは環境の要因を重視する「社会モデル」の観点を統合した「相 互作用モデル」に基づいた構成になっている。(表1-3-1、図1-3-1) 表1-3-1:ICIDHとICFの概念

ICIDH

ICF

図1-3-1:ICIDHとICFの構造モデル

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

ICFは多くの目的に用いられうる分類であり、さまざまな専門分野や異なっ た領域で役立つことを目指している。ICFの目的を個別にみると、以下の通り である。 ・健康状況と健康関連状況、結果、決定因子を理解し、研究するための科学 的基盤の提供。 ・健康状況と健康関連状況とを表現するための共通言語を確立し、それによっ て、障害のある人々を含む、保健医療従事者、研究者、政策立案者、一般市民 などのさまざまな利用者間のコミュニケーションを改善すること。 ・各国、各種の専門保健分野、各種サービス、時期の違いを超えたデータの比較。 ・健康情報システムに用いられる体系的コード化用分類リストの提供。 上記の目的は相互に関連しており、異なる文化圏での保健政策、サービスの 質の保証、効果評価などに、さまざまな消費者が利用できるような、有意義で 実用的なシステムの構築が求められている。 次にICFの適用について述べる。 1980年の試案の公刊以来、ICIDHはさまざまな用途に使用されてきた。 ・統計ツール(手段)として:データ収集・記録(例:人口統計、実態調査、   管理情報システム)。 ・研究ツールとして:結果の測定、QOL(Quality of Life,生活の質)や環境因   子の測定。 ・臨床ツールとして:ニーズの評価、特定の健康状態と治療法との対応、職   業評価、リハビリテーション上の評価、結果の評価。 ・社会政策ツールとして:社会保障計画、補償制度、政策の立案と実施。 ・教育ツールとして:カリキュラムの立案、市民啓発、ソーシャルアクション。 ICFは本来、健康分類および健康関連分類であるが、保険、社会保障、労働、 教育、経済、社会政策、立法、環境整備のような他の領域でも用いられる。ICF は国連社会分類の1つとして認められ、また障害者の機会均等化に関する標準 規則の中で取りあげられ、それを組み入れている。このようにICFは、国際的 な人権に関する諸規則・方針や、各国の法令を実施するための適切な手段を提 供する。 ICFは、例えば社会保障や医療の評価、地域・国・国際レベルでの住民実態 調査といったさまざまな場面で、幅広く適用するのに有用である。ICFが提供 する情報整理の概念的枠組みは、予防と健康増進を含む個人的な保健ケア、お よび社会的障壁の除去や軽減による参加促進、社会的支援の推進に応用できる。 また保健システムの研究においても、評価と政策立案の両面で活用が可能であ る。ICFの活用により、 ・障害や疾病を持った人やその家族、保健・医療・福祉等の幅広い分野の従   事者が、ICFを用いることにより、障害や疾病の状態についての共通理解を   持つことができる。 ・様々な障害者に向けたサービスを提供する施設や機関などで行われるサー   ビスの計画や評価、記録などのために実際的な手段を提供することができ   る。

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

・障害者に関する様々な調査や統計について比較検討する標準的な枠組みを   提供することができる。 などが期待されているが、具体的な活用のあり方については、現在、WHOに おいても検討が進められているところであり、我が国においても研究事業等を とおして、効果的な活用方策の検討を行うこととしている。 そうした中で本研究においては福祉ロボット・福祉機器と人間のマッチング において活用を行うことを試みる。また、2-2や2-5にて後述するが老化現象 は人によりかなり個人差があるが、ICFを用いることにより、現在は介護保険 制度によって国が定めた基準により各市町村別に医師の診断などで評価される 要介護度認定がより客観的に判断することができ、新たな基準としても応用で きるのではないだろうか。 「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」(日本語版)の厚生労働省ホー ムページから抜粋するとICFの定義は以下の通りである。 健康との関連において (body functions)とは、身体系の生理的機能(心理的機能を含む)       である。 (body structures)とは、器官・肢体とその構成部分などの、身体        の解剖学的部分である。 (impairments)とは、著しい変異や喪失などといっ                た、心身機能または身体構造上の 問題である。 (activity)とは、課題や行為の個人による遂行のことである。 (participation)とは、生活・人生場面(life situation)への関わりのこ     とである。 (activity limitations)とは、個人が活動を行うときに生じる難しさ       のことである。 (participation restrictions)とは、個人が何らかの生活・人生場面       に関わるときに経験する難しさのことである。 (environmental factors)とは、人々が生活し、人生を送っている       物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成       する因子のことである。 これらの概念の概要は表1-3-2の通りである。表1-3-2に示すように ・ICFには2つの部門があり、それぞれは2つの構成要素からなる。  第1部: 生活機能と障害   (a)心身機能(Body Functions)と身体構造(Body Structures)   (b)活動(Activities)と参加(Participation)  第2部: 背景因子   (c)環境因子(Environmental Factors)   (d)個人因子(Personal Factors)

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

・各構成要素は肯定的と否定的の両方の用語から表現可能である。 ・各構成要素はさまざまな領域からなり、それぞれの領域はカテゴリーに分 かれ、それらが分類の単位となる。個人の健康状況や健康関連状況は適切なカ テゴリーコードを選び、それに評価点(qualifiers)をつけることによって記載 される。評価点とは数字のコードであり、そのカテゴリーにおける生活機能や 障害の程度または大きさ、あるいは環境因子が促進因子または阻害因子として 作用する程度を明らかにする。 表1-3-2:ICFの概観

ICFは人間の生活機能と障害について、「心身機能」、「身体構造」、「活動と参加」、 「環境因子」について合計約1500項目に分類している。 それぞれの項目はアルファベットと数字を組み合わせた方式でコード化され、 アルファベットは以下のようになっている。 「b」:「心身機能」(body functions)→身体系の生理的機能(心理的機能を含む) 「s」:「身体構造」(body structures)→器官・肢体とその構成部分などの、身                   体の解剖学的部分 「a」:「活動」(activity)→課題や行為の個人による遂行 「p」:「参加」(participation)→生活・人生場面(life situation)への関わり 「e」:「環境因子」(environmental factors)→人々が生活し、人生を送ってい る物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子の こと。 ICFは以上の4つの分類に応じたアルファベットの後に数字のコードが章番 号(1桁目)、第2レベル(2桁目)、第3、第4レベル(各1桁)と続く。ICF のカテゴリーは階層構造となっている。したがって、より広いカテゴリーが、 親カテゴリーよりも細かい多数の小カテゴリーを含むように定義されている。 そしてどんな個人でも各レベルにおいて、コードが複数になる可能性がある。

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

それらは相互に独立の場合もあり、相互に関連する場合もある。ICFのコード は評価点があってはじめて完全なものとなる。評価点は健康のレベルの大きさ (例:問題の重大さ)を表す。評価点は小数点(あるいは分離点separator)の 後の1∼2、もしくはそれ以上の数字としてコード化される。どのコードも最 低1つの評価点を伴う必要がある。評価点がなければ、コード自体には何の意 味もない。心身機能・構造の第一評価点、活動と参加の実行状況と能力の評価点、 環境因子の第一評価点、これらはすべて、それぞれの構成要素における問題の 程度を表す。ICFで分類されたこれらすべての構成要素(心身機能、身体構造、 活動と参加、環境因子)は共通スケールを用いて量的に示される。問題がある ということは、その構成概念に応じて、機能障害(構造障害を含む)、活動制限、 参加制約あるいは阻害因子かもしれない。該当する分類領域について、下記の 括弧内に示した適切な評価用語を選ぶ必要がある(xxxは第2レベルの領域の 数字を表す)。ここに示した数量的なスケールを普遍的に用いることが可能にな るためには、研究を重ねて評価の手順が開発される必要がある。ここに示した 大まかなパーセント表示は、較正(測定器などの正確さを保障するために、感 度などの調整を行うこと)された評価器具やその他の評価基準によって、機能 障害、能力の制限、実行状況における問題、および阻害因子を数量的に判定で きる場合のためのものである。ちなみに、「問題なし」または「完全な問題」と された場合でも、5%までの誤差はあるとみてよい。「中等度の問題」の程度は 通常「完全な問題」の半分までである。パーセント表示は、関係する集団の標 準値のパーセンタイル(大きさ順に並べた集団の、例えば30パーセント目に ある個体の示す数値を30パーセンタイルと呼ぶ)を参照して、それぞれの領 域で較正されるべきである。(表1-3-3、表1-3-4)

表1-3-3:ICFの評価点が示す問題

xxx.3 xxx.8

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用語の定義・説明 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

表1-3-4:ICFの構成要素と評価点

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研究背景

2.研究背景 2-1.高齢化社会と居住問題 2-2.高齢者の心身の機能と特性 2-3.ロボットの市場・ニーズ 2-4.要介護認定 2-5.ICFコードと福祉機器 2-6.本研究の位置付け

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

周知の通り、わが国は高齢化社会を迎えている。 平成18年版高齢社会白書によるとわが国の総人口は、平成17(2005)��� 1950年

1 0 月 1 日 現 在 、 1 億 2 , 7 7 6 万 人 とな り 、 前 年 ( 1 億 2 , 7 7 8 万 人 : 推 計 人 口 の 及補正後)に比べて2万人減少し、戦後では初めてマイナスに転じた。 65歳以上の高齢者人口は、過去最高の2,560万人となり、総人口に占める 割合(高齢化率)も20.04%(前年19.5%)と、初めて20%を超えた。(図

1960年

2-1-2参照) 高齢者人口のうち、前期高齢者(65∼74歳)人口は1,403万人、後期高齢者(75 歳以上)人口は1,157万人となっている。高齢者のうち独り暮らしの割合は、 2005年の推計値で男性が9.1%、女性が19.7%である。

1970年

1935年(昭和10)の高齢化率が4.7%と最低であった。1950∼1975年は 出生率低下によって、それ以降は、死亡率の改善により高齢化率が上昇。2006 年(平成18)9月には20.7%となり、世界に類を見ない水準に到達している。 今後も高齢化率は上昇し続け、2025年には30%程度になると予想されている。

1980年

左図(図2-1-1)を見ても明らかなように1950年にはピラミッド型であった グラフが徐々に釣鐘型に変化している様子がわかる。こうした社会背景の中で 1990年

居住問題は多く見られている。その問題を次に述べる。

2000年

2010年

2020年

2030年

図2-1-2:将来推計人口の年齢構造に関する指標2000∼2050年

2040年

2050年

     65歳以上の人口割合

図2-1-1:人口ピラミッドの変遷      左が男性、右が女性

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

1970年代中頃から、高齢者や障害者を考慮した都市環境を整備するために、 福祉のまちづくりが先進的な自治体で繰り広げられ、アクセシビリティ実現と してのバリアフリーが浸透し始めた。1981年の国際障害者年を契機として、 この方向性は全国的なものとなり、国も1990年代以降、「高齢者、身体障害者 等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(平成6年法律第 44号。「ハートビル法」)や「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した 移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号。「交通バリアフリー 法」)を制定して、居住空間におけるバリアフリーを進めることになった。 一方、バリアフリーという概念は、障害者や高齢者などに対する特別な対策 であるというイメージがあり、障害者や高齢者を特別扱いする発想に繋がるこ とから、ノーマライゼーション(1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉 をめぐる社会理念の一つ。障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されるこ となく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿である とする考え方。またそれに向けた運動や施策なども含まれる。)思想の普及につ れて、最近では、障害者や高齢者とそうでない人を区別せずに、最初から障壁 (バリア)を設けないものづくりや空間づくりを進めるというユニバーサルデザ インの考え方が浸透しはじめている。 また近年ユビキタス社会に向け様々な研究が行われている。ユビキタスの語 源は、ラテン語のubiquitas(いたるところに存在する、遍在する)に由来し、 インターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでもアクセス できる環境を指す概念である。最近では、ユビキタスを実現した社会のことを ユビキタス社会と呼んで、さまざまな場面で話題となっている。ユビキタス社 会とは、家庭内、移動中、外出中を問わず、街の中のどこにいても、持ち歩く ことのできるユビキタス端末を使って、周辺のものや場所に関わる情報を入手 できたり、施設設備が利用に合わせて反応したりして、年齢や障害の有無にか かわらずだれでもがそこからの便益を得られる社会のことである。 ユビキタス社会には、少子高齢化、医療福祉、食の安全、環境、教育、交通 などの社会問題や公共的な課題を解決する役割が期待されている。例えば、高 齢者に対して歩行中に周辺の情報を伝達して安全を確保したり、高齢の親をセ ンサーなどが見守って警告を発信したり、健康状態をチェックできるようにな ることなどが考えられている。 国土交通省もユビキタス社会の実現に向けて動き出している。同省は、高齢 者を含む多くの人が、移動経路、交通手段、目的地などの情報にアクセスしな がら、自律的に一人で移動することができる環境の実現を目指して、民間企業 や自治体をサポーターとする「自律的移動支援プロジェクト推進委員会」を立 ち上げている。 高齢者の住宅事情に関しては欧米先進諸国においては、高齢化の進展が我が 国に比して緩やかであったために、高齢社会に即した社会環境・社会システムの 構築が長期にかつ着実になされてきた。しかし、我が国においては、高齢社会

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

への適切な対応策が構築され、完成するよりも早く、高齢社会が到来してしまっ たために、種々の分野で問題や歪みを生じ、住宅・居住政策の分野についても、 特に、高齢者の居住に関しては、種々の問題が生じている。 ⑴ 借家に居住する高齢者世帯の増加 まず、高齢者の約95%は通常の住宅に居住しているが、その多くが持家であ る。しかし、高齢者のみの世帯すなわち高齢者単身・夫婦世帯の約23%(137 万世帯)は借家に住んでおり、特に高齢単身世帯の約35%、言い換えると84 万人の独居老人が借家に住んでいる。 また、今後、経済構造や雇用形態・給与体系等の変化のなかで、我が国の高 い持家率が維持される見込みは薄いことから、借家住いの高齢者世帯はさらに 増加することが予想される。 ⑵ 高齢者世帯の居住する住宅の構造 高齢者が居住する住宅については、高齢者にとって利便性や安全性の高い住 宅のバリアフリー化が遅れている。 すなわち、「手すり」、「段差のない室内」、「廊下等が車椅子で通行可能」とい う3つの対策でみると、全てに対応しているのは、持家で2.9%、借家で2.3%(公 営住宅10.3%、公団・公社住宅7.0%、民間借家0.3%)であり、逆に、どれ も対応していないのは、持家で67.6%、借家で84.4%(公営住宅70.4 %、公団・ 公社住宅73.4 %、民間借家89.3%)である。 その反映として、高齢者の家庭における転倒、

死等不慮の事故が発生して

いる。 高齢者に対する住宅・居住環境政策は近年本格化してきている。高齢者の 95%が住んでいる住宅について、どのような政策が展開されてきたかについて、 高齢者との関係に着目すると次のようになる。 高齢者向けの住宅政策が正面から取り上げられるようになるのは、本格的な 高齢化の進展が顕著になり始めた昭和60年代に入ってからである。 すなわち、この時期の第五期住宅建設五箇年計画(昭和61年度∼)では「高 齢化の進展に対応するため」の施策目標に1項目を割くなど、それまでの五箇 年計画とは明らかな違いがある。また、この時期には、シルバーハウジング・ プロジェクト(地域高齢者住宅計画)制度(昭和61年度)や高齢者住宅計画 の策定事業(昭和62年度)が創設されている。 平成に入り、高齢社会の到来が目前に迫ってくると、高齢者向けの住宅施策 が本格的に取り上げられるようになった。第六期計画(平成3年度∼)及び第 七期計画(平成8年度∼)では、それぞれ、「住宅建設の目標」のなかで「高齢 化社会への対応」等、独立した項目が設けられている。 一方、この時期、バブル経済が崩壊し、住宅市場では、中堅所得階層による 住宅取得が容易になるためのコストダウン等が行われるとともに、新しい商品 開発として、高齢者向け住宅の供給を取り上げることが進展し、公的にもそれ を支援する施策が展開された。 すなわち、土地所有者などが建設する賃貸住宅を地方公共団体等が借り上げ

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

て賃貸する「高齢者向け借上げ公共賃貸住宅制度」(平成3年度)や生活支援サー ビス付きの高齢者住宅を公団等が賃貸する「シニア住宅制度」(平成2年度)の 創設がなされた。 このような高齢者向けの住宅施策は、次第に本格化し、平成8年度には、公 営住宅について、高齢者等に配慮した入居者資格の設定が行なわれ、また、平 成10年度には、低所得の高齢者を対象にし、民間による供給を中心とした「高 齢者向け優良賃貸住宅制度」が創設された。 また「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の制定等の法的整備が行われ てきた。 このような動きが集約されたのが、平成13年に制定された「高齢者の居住 の安定確保に関する法律」である。この法律は、法律名が示すように「高齢者 の居住の安定確保」を図ることを目的にして、国及び地方公共団体の責務を規 定し、「高齢者の居住の安定の確保に関する基本的な方針」を国が定め、それに 基づいて、高齢者円滑入居賃貸住宅制度の普及、地方公共団体等による高齢者 向け優良賃貸住宅の供給、終身建物賃貸借事業の創設等、各種の施策を実施す ることとしている。 このほか、平成6年にハートビル法が、平成12年には交通バリアフリー法 が制定され、「居住」のみならず、「居住環境」にまで、高齢者対策が拡充され ていった。 最後に、高齢者の居住を支援するものとして、IT を活用した高齢者福祉の向 上について、現在、既に、IT を活用して、遠距離介護を支援する、①安否見守 りサービス、②緊急通報システム等が実用化されているほか、遠隔健康管理シ ステム等の構築がなされている。 今後、この分野の技術の開発は飛躍的に進展すると思われ、さらに、これら の普及は、高齢者の自立した居住・生活を推進するものとして期待されている。 以上見てきたように、我が国においては、高齢者の居住問題について、急速 に進展した高齢化のために、高齢社会に対応したシステムが実現しているとは 言い難いが、ここ数年来、関連する法律の制定を含めて、その対策の充実が図 られている。 しかし、その対策は始まったばかりであり、残された課題も多く、今後、一 層の高齢化が進展することを考慮すると、迅速な体系的整備が必要である。本 研究を行うことにより、その体系的な整備を充実させるための一端になりうる のではないだろうか。

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

加齢に伴って身体機能は低下し、さまざまな退行現象がみられるようになっ てくる。(図2-2-1参照) 高齢者と関連のある言葉に、「加齢」と「老化」がある。「加齢」とは「年を取る」 ということで、受精から死に至るまでの時期の経過を言う。一方「老化」とは、 年齢とともに心身の機能が衰えてゆくことを言い、記憶力の低下、視力や聴力 の低下、運動機能の低下などが代表的なものと言える。「老化」は個人差がかな り大きい。 加齢、老化に加え、高齢期になると、色々な疾患や障害を持つことが多くなる。 また、高齢になるに従って、会社からの退職、仕事からの引退、子供の独立に よる生活様式の変化などによって、社会的役割が変化する。このため、個人の 意識や行動も大きく変化する場合が多い。社会からの孤立感、病気や死に対す る不安や恐れは、加齢とともに増加する。これは、興味や意欲の低下と結びつ きやすく、自己防衛的、受身的、衝動的な行動を伴いがちになる。 つまり高齢者問題を考えるときは、老化の程度の個人差、ひとりひとりが抱 えている疾患や障害を十分考慮して対応していく必要がある。 そこで本研究ではひとりひとりに関するデータベースを作成し必要があると 考え、そのために必要なヒューマンインフォメーションとしてICFコードを用 いることが適切であると考えた。 以下に加齢に伴う

についてま

とめる。 ① 心臓のはたらき 個人差が大きいと考えられる。また心臓から拍出される血液の量は加齢と余 り深い関係は無い。問題は冠動脈の動脈硬化の程度が心臓の寿命を左右してい るといえる。 ② 腎のはたらき 必ずしも誰もが低下するわけではない。しかし色々な疾患にかかり,医療や 介護の対象となっている人の中には排泄機能が著明に低下している高齢者が多 いことも注意すべきだろう。 ③ 神経系のはたらき 高齢者では,長期記憶が比較的よく保たれているのに比し,短期記憶の衰え が目立つようだ。長期記憶はいつまでもリハーサルを続けていると長く保つこ とが出来る。 複雑な思考や,総合的判断力等も,高齢になっても衰えにくいものだ。ただ し短期記憶は年齢とともに急激に衰えることは高齢者は誰もが経験するところ だ。極力本人も介護者も意識してリハーサルに努めるのが望ましい。 自律神経系では、排尿障害や排便障害があげられる。特に高齢者介護におい て最も重要なものの一つにこれらの障害が挙げられ、ADL(Activities of Daily Living、日常生活動作)の低下につながる。

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④ 視力 視力障害は比較的早期に出現し,40歳代にその変化を自覚する。高齢者の 視力障害は白内障に代表される眼疾患,調節力障害による老視(老眼)等が代 表的なものだ。 ⑤ 聴力 加齢による聴力障害は老人性難聴といわれ、高音域になるほどその程度を増 す。低音域は高音域に比べると比較的よく保たれている。難聴になると、聞き 取りが不便になるだけでなく、本人も介護者もいら立ちが増し,不安感や孤立 感が助長される。 ⑥食事の味 味覚・嗅覚の低下は,見逃しがちであるが食事の楽しみを減退させる。味覚 の低下は加齢に比例する。嗅覚も同様に低下するため食欲を刺激することが少 なくなり,食事に対する喜びを忘れる要因となる。介護側はこれらの老人特有 の生理的現象を人格の変化と受け止める傾向があるので注意する必要がある。 ⑦ 呼吸器のはたらき 全肺気量は加齢ではほとんど変化ないが,残気量は加齢とともに次第に増加 するため肺活量が減少することになる。適度の運動,有酸素運動は機能低下を 防ぐため是非とも必要なことといえる。 ⑧ 消化器のはたらき 嚥下反射の不調による誤嚥,便秘,大便失禁をきたしやすく,特に誤嚥によ る嚥下性肺炎,長期の便秘に基づく腸閉塞などの重篤な疾患をひき起こさない よう注意が必要である。 肝機能では,加齢による特有な現象は考えられないが,感染,低栄養など高 齢者に伴いがちの疾病,健康度低下が存在すると,薬物代謝能は容易に低下す る。薬物代謝が低下すると,薬物体内蓄積を起こし薬物による副作用が出て来る。 1回の服用量も少なめにする等細心の注意が必要である。 ⑨ 骨・筋肉系のはたらき 一般に骨塩濃度の加齢的変化は,30歳前後を機に以後低下の傾向を示す。 特に女性では閉経後その傾向が加速し,女性に骨粗鬆症が多数発生する原因と されている。 ⑩血液および造血系のはたらき 栄養状態の指標とされるアルブミン濃度は,80歳以上でも健常者であれば そんなに低下することはない。しかし,高齢者の場合,ごく軽度の疾病であっ ても場合によっては,アルブミン濃度は容易に低下することがあるので注意す べきである。 ⑪ 生殖器系のはたらき 物理的・生理的性能力の限界がきても,人間には精神的・心理的な性生活が 最後まで存在している。また高齢であっても羞恥心等は良く保たれているので, 入浴介護の場合介護者は注意が必要である。

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①夜間行動 夜間の睡眠障害,不眠は加齢とともにその頻度と程度が増加する。特に女性 は男性より不眠傾向が強いようである。また,夜間の不眠は精神的な不穏状態 を招きやすく、翌日昼間の眠気,嗜眠となって現れることがある。 ②食欲と摂食 身体機能の障害がある場合はもちろんのこと,加齢だけでも食欲の減退を招 く。また,歯の喪失,味覚の低下,唾液分泌の低下などが余計にこれらの症状 を増強する。また,食欲不振は更に低栄養状態を招き,貧血,アルブミン濃度 の低下などをきたす。 ③性行動 アルツハイマー病・ピック病など高齢者特有の痴呆が進行すると、社会常識 に反する異常性行動として現れることがある。また、パーキンソン病の治療薬 であるL−Dopaには,男性の性行動を刺激する副作用があることが知られ ている。 ④抑うつ 高齢者ではかなり頻度が高いようである。感情の低下のみならず,行動性の 低下をもたらす。男性より女性に多くみられる傾向がある。 ⑤不安 これも高頻度にみられる。懸念の感情と生理的興奮の入り交じった不快な感 情状態である。 ⑥妄想 妄想は思考内容の障害であり,思考の訂正不能な状態である。アルツハイマー 病や脳血管障害の後遺症としてかなりの頻度でみられる。 ⑦せん妄 可逆性の器質的精神障害のうち頻発するものの一つである。術後せん妄,夜 間せん妄等がよく知られている。意識の一種の夢幻的変化が存在し,錯覚,幻 覚,強い不安,不穏をもたらす幻視が出現する。痴呆と誤解されることがあり, 発生が急速に起こり,また可逆的な点が痴呆と区別される。 ⑧記憶障害 高齢者の記憶障害に特徴的なことは,遠い過去の長期記憶,ごく近い直接記 憶はよく保たれているが,最近の記憶(短期記憶)が障害されていることである。 ⑨痴呆 知能,気質,性格の人格の三つの面にすべて変化を起こす。 ・第1期:変化を嫌い,意欲の低下,社会的事象に関する関心低下が出現 ・第2期 :性格特徴の誇張が起こり(心気症),妄想的,抑うつ的となる ・第3期 :重篤な見当識の喪失,判断力の貧困化,作話持続 ・第4期 : 四肢の硬直,吸引反射など特殊な神経症状で,日常生活を自ら行       うことが不能となる。

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①予備力の減少 20∼30歳代をピークに残存機能は予備力を含めて低下する。個人差は非常 に大きいものがある。 ②適応力の減退 外部環境の変化に対応して内部環境を変化・順応させる力を適応力といい, 減退は身体面だけなく、精神面にもみられる。外気温の変化に対応できず、風 邪をこじらせて肺炎を起こしやすくなるので注意が必要である。  ③反応の遅延 神経機能の低下にともなって、20歳代をピークに徐々に反応が遅くなる。 時間内で行う神経機能の低下が著しくなる。 ④復元力の低下 疾病の治癒に時間を要するようになる。 ⑤防衛反応の低下 主に免疫機能の低下によって抵抗力が弱くなり,適応力の減退により細菌・ ウィルス感染症にかかりやすくなる。 ⑥代謝機能の低下 基礎代謝量の低下によって、所要熱量も約1700kcalに低下する。糖質、脂 質を摂り過ぎる肥満、糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病を招くので注意が 必要である。

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図2-2-1老化による身体の変化

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21世紀を迎え、ロボットに関する研究開発は、これまでの産業用ロボット主 体から、身の回りの日常生活に関連する分野への転換期を迎えており、新しい ロボットの研究開発が日進月歩で進められている。また、本格的な少子・高齢 社会を迎えるにあたり、従来人間の手で行われてきた市民生活支援活動におい ても、ロボット技術の発展に伴い、生活、ビジネス、教育、エンタテインメント、 医療、介護、防災レスキューなどの諸領域でロボットが活躍することについて の期待が高まっている。 2001年5月に報告された「21世紀におけるロボット社会創造のための技術 戦略調査報告書」((社)日本機械工業連合会,(社)日本ロボット工業会)では、 今後の社会・経済環境の変化を考慮しつつ、我が国ロボット産業の市場規模ご との国際競争力を踏まえ、以下の5分野を重要なニーズ分野として特定し、そ の市場規模と概要を以下のように推計している。(図2-3-1) ①

…2010年:1.5兆円、2025年:4.1兆円

※教育、家庭内バーチャルトレーニング、エンタテインメント型リハビリテーションシ   ステム、コミュニケーション支援及び生活支援システム

…2010年:2,600億円、2025年:1.1兆円

※予防、診断、治療、リハビリテーション、医療施設内の省力化・インテリジェント化、   医学教育

…2010年:2,900億円、2025年:9,900億円

※災害の発生観測・予測、災害の発生防止、災害の対処作業

…2010年:900億円、2025年:3,600億円

※自動分析技術、自動合成装置、バイオ工場

…2010年:8,500億円、2025年:1.4兆円

※人間機械協調生産システム、エコファクトリ、ネットワーク対応工場

参考:2000年の自動車市場規模→約12兆円

図2-3-1:ロボット市場

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

前述の通り、近年様々な目的でロボットは作られ、市場に出されている。 以下は癒しロボット、留守番・警備ロボット・家事ロボット・介護ロボット の購入時の希望許容価格を示したグラフ(図2-3-2)とロボットに行って欲しい と思う家事のグラフ(図2-3-3)と市場と開発についてのグラフ(図2-3-4)であ る。 介護ロボットや家事ロボットへの許容価格はかなり広い範囲となっている。 また面倒な家事とロボットに行って欲しい家事については相関性がみられ、特 に掃除という家事へのニーズは高いことがわかる。またロボット開発者側から としては福祉関係に将来の市場の可能性を感じているということが分かる。 そこで本研究において、これらの高まってきた市場やニーズをふまえ、ロボッ トが生活に入り込んできたことを想定してデータベース化を行うことにより、 新たな生活空間の提案を模索する。

図2-3-2:目的別ロボット購入許容価格

図2-3-3:ロボットにやって欲しい家事と

図2-3-4:市場と開発

    面倒だと思う家事

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要介護認定とは介護保険制度において、介護サービスの利用に先立って利用 者が介護を要する状態であることを公的に認定するものである。一般に要介護 認定は介護を要する状態を意味する要介護認定と日常生活に見守りや支援を必 要とする状態を意味する要支援認定を総称している。認定は市町村によって設 置された介護認定審査会によって判定される。介護保険被保険者または家族に よって市町村に要介護度認定の申請が行われると、調査員によって全国共通の 認定調査票に基づいて訪問調査が行われる。その後、コンピューターによる一 次判定の後、介護認定審査会による一次判定の結果と主治医の意見書とを加味 しての二次判定を通過して最終的に決定される。認定の標準有効期間は新規申 請の場合は6ヶ月、更新申請の場合は1年である。 要介護度とは被保険者が生活していく上で、介護を必要とする度合いを身体 状況から7段階に区分けしたもの。(次ページ表2-4-1参照)認定された要介護 度によって、受けられるサービスや介護保険からの支給される限度金額が異な る。要介護認定の結果においては、自立を意味する非該当の結果が出る事もある。 なお、平成18年4月から介護保険制度が改正され、要介護認定区分もそれ までの6段階から7段階に変わった。これは軽度(要支援、要介護1)に認定 された人が大幅に増加する反面、従来のサービスが必ずしも状態の改善や悪化 防止につながっていないことへの見直しの処置である。要介護者の増加を抑え、 要介護状態の軽減や悪化を防ぐことを目的に介護予防を重視したものである。 新たな認定区分では従来の「要支援」の人が「要支援1」に、「要介護1」の 人の中で『今後改善する可能性が高いと認められる人』は「要支援2」に、そ れ以外の人は「要介護1」と認定されることになった。(図2-4-1参照) 1-3で前述したようにこの要介護認定もICFという概念を用いてさらに客観 的に正確に行うことが可能なのではないだろうか。 介護保険制度では要介護認定を受けた被保険者に対して、手すりや段差解消 等の小規模な住宅改修についての費用を支給する項目がある。そのため近年要 介護認定への希望は高まっている。

図2-4-1:要介護認定の変化

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

表2-4-1:要介護度認定別状態表

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障害への社会的認識は、時代とともに変化してきている。リハビリテーショ ンが本格的に日本で始まった40年前ごろは、障害者の社会参加とは、病院を 出て障害者施設に入所し、医療的な援助から脱却して、施設内での生活を営む ことであり、そのために必要な機能訓練が病院や施設で行われていた。一方、 家庭に退院した障害者は、地域でのリハビリテーションのサービスを受ける機 会も少なく、家族が家庭で障害者介護に追われていた。 その後、彼らの家庭復帰、地域参加が重要視されるようになり、地域におけ る障害者センター、生活支援センターなど、さまざまな社会環境の整備も始まり、 多くの障害者が在宅生活をするようになった。そして、障害者や介護者は家庭 で生活するために必要な心身機能の獲得だけでなく、その機能を補う介護機器 への関心も高めてきた。 この時期のリハビリテーションは、���用者の心身機能の障害を積極的に改善 することが家庭復帰や社会復帰につながると考えて、障害の原因となっている 運動障害、感覚障害、精神障害などの疾病が持つ症状を、身体・精神機能への アプローチで改善させ、日常生活などの活動をしやすくすることが障害者の家 庭や社会への復帰への近道と考えた。1-3で前述の通り、WHOでも1980年に 国際障害分類(ICIDH)が提唱された。つまり、疾病が原因で起こった機能障害 を軽減することが、家庭復帰および、社会復帰への必要条件であり、リハビリ テーションの中でも医療を主体とした医学モデルの背景ともなっていた。しか し、リハビリテーションの現場では、心身に何らかの障害があっても、家屋改造、 職場環境の整備、介護機器の使用を促すことで、障害者の社会参加は十分に可 能だと考えられていた。 1-3で前述の通り、WHOは2001年に国際生活機能分類(ICF)を提唱した。 ICIDHは障害とその原因となる疾病やその結果に重きを置いていたが、ICFで はまず人の健康に起因するものとして、生活機能・障害(心身機能・身体構造、 活動、参加)、背景因子(環境因子、個人因子)の3要素2因子でとらえ、障害 は個人の心身機能や活動・参加等の能力と環境が関係しあう中で生じるものと 位置づけ、環境因子、個人因子等を重視したものとなった。 例を具体的に挙げてみると、片マヒを障害として持っており、特に上肢の随 意運動や歩行パターンなどの心身機能に異常が見られ、歩行と移動などの活動 に支障をきたし、家庭ではベッド上での生活を強いられるようになった高齢者 に、心身機能、環境に適した車椅子を選択し、操作を習得してもらい、外出な どの活動が可能となり、地域のサークル活動などに参加することが出来れば、 この高齢者は生きがいを持って生活することが可能となる。 福祉機器に関わる者はICFの基本概念を共通認識として、福祉機器を利用す る方々の心身機能の影響を考え、福祉機器の活用による活動範囲の広がりを把 握して、参加への援助を積極的に行い、その方々のQOL(Quality of Life,生活の 質)の向上を図る必要がある。 このようにしてICFコードを基本におくことにより福祉機器を利用、活用す ることは非常に重要であると考える。

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研究背景 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

まず、人間、空間、福祉、ロボットという4つの対象が考えられるが、それ らは機械系研究領域、医学・福祉系研究領域、建築系研究領域の3つの中に含 まれると考えられる。既往研究では機械系、医学・福祉系領域での研究はなさ れているが建築的観点からなされた研究はほとんど見当たらない。またICFコー ドの有用性を示した論文も同様である。 そこで今回私は建築的観点から研究を進めたいと考えた。それに当たり、こ れらを結びつけるためにICFコードという情報が必要となってきた。

図2-6-1本研究の位置付け

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研究目的

3.研究目的 3.研究目的

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研究目的 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

人間の身体情報と福祉機器・福祉ロボットの関係をICFコードを用いてマッ チングさせデータベースを作成することにより、それら(福祉機器・福祉ロボッ ト)を導入した際必要な空間の指標を作ることを目的とする。(図3-1)

図3-1:研究モデル図

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研究概要

4.研究概要 4.研究概要

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研究概要 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

既往研究調査 現状調査

福祉機器・福祉ロボット

人間

事例収集

アンケート調査

評価・データベース化

評価・データベース化

ICFコードマッチング 提案・モデル化 空間

図4―1:研究フロー図

 既往論文などを調べ、建築学的な研究範囲を探る。

 施設や展示会に実際に赴き、見学やヒヤリング調査を行うことにより介護   現場や、福祉機器・福祉ロボットの現状を探る。

 展示会などへ赴き、現在販売、あるいは開発が行われている福祉機器・福   祉ロボットの情報を収集する。

 高齢者を対象に日常生活上で困っていることや希望、身体状況などをアン   ケート調査を行うことにより把握する。

 サンプリングした福祉機器・福祉ロボットの情報、人間の情報について様々   な項目により評価し、データベース化する。

 福祉機器・福祉ロボットのデータベースと人間の個人属性のデータベース   をICFコードを利用してマッチングさせる。

 マッチングさせることにより、個人属性別空間の提案・モデル化を図る。

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現状調査

5.現状調査 5-1.高齢者の住まいとしての福祉施設 5-2.福祉機器・福祉ロボットの現状

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

福祉機器などの利用状況や高齢者の生活を知るために現状調査として見学、 ヒヤリング調査に次の施設へ赴いた。

 特別養護老人ホーム  ショートステイ  デイサービスセンター  居宅介護支援事業  http://www.wakuwaku.ne.jp/seiwa-en/nanohana/index.htm  養護老人ホーム  特別養護老人ホーム  ショートステイ  デイサービスセンター  ヘルパーステーション  地域包括支援センター  http://www.aa.alpha-net.ne.jp/seibohp/ 養護老人ホーム  特別養護老人ホーム 軽費老人ホーム  地域包括支援センター http://www.kosaien.or.jp/ (写真撮影不許可)  スペシャルケアセンター   アシステッドナーシングゾーン  リビングゾーン  http://www.gsen.or.jp/tsurunosato/  特別養護老人ホーム  地域ケアプラザ  http://www9.ocn.ne.jp/ hakuhou/index.htm 各施設では趣向を凝らし、様々な方法で利用者の環境やQOL(Quality of Life,生活の質)を高める工夫をしている。しかし多くの問題点もあり、その様 子を主に施設の利用状況、特徴、空間的の問題、利用上の問題という観点から、 次にまとめた。

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

現状調査については以下の展示会に赴くことによって行った。

(主催:社団法人日本ロボット工業会、日刊工業新聞社) http://www.nikkan.co.jp/eve/05ROBOT/ (主催:社団法人 日本病院会、社団法人日本経営協会)  http://www.noma.or.jp/hs/ (主催:財団法人保健福祉広報協会)   http://www.hcr.or.jp/ これらの展示会は非常に新しい技術を駆使して作られた機器やロボットを展 示しており、本研究を行うにあたり、このような新しい機器やロボットの情報 を入手することが大切であると考えた。(図5-2-1)

図5-2-1:各展示会の様子

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

次に福祉機器の現状について述べる。 福祉用具の市場規模(推計値)は、福祉用具法が施行された平成5年に7,731 億円であったものが、平成9年に10,495億円と1兆円を超え着実に成長して いるが、平成13年には11,927億円となっており近年成長率が鈍化している傾 向が伺える。 福祉機器の市場規模(推計値)は、平成7年に13,508億円であったものが 一般製品のユニバーサルデザイン化や公共品の普及を背景として平成13年に は32,134億円と成長している。また、交通バリアフリー法により公共施設や 公共交通機関のバリアフリー化が促進され、低床型バスなどの社会参加支援機 器に大幅な成長が見られる。 公共品の市場規模(推計値)は、調査開始時の平成7年には4,869億円であっ たものが、6年後の平成13年には22,159億円と4.5倍に達している。 つまり、福祉機器の市場規模は2-3で述べたロボットの市場同様、急激に伸 びている状況である。(図5-2-2)

図5-2-2:福祉機器の市場の推計

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

しかし、このように市場が伸びていたり、技術の発展にともない様々な機種 が開発されてゆく一方で、福祉機器の機種の自己選択や決定、お勧めの機種把 握状態、福祉用具専門相談員による利用者のニーズの把握状態、また住環境把 握状態はよくない。(図5-3-3,図5-3-4、図5-3-5) これはやはり機器の種類が多すぎることや、利用者の身体状況をはっきりと 把握しきれていないことに原因があると思われる。つまり、人間と機器と空間 がうまくマッチングしていない状態にあると言える。

図5-2-3:利用者の福祉機器選択について

図5-2-4:利用者の住環境把握状態

図5-2-5:利用者のニーズ把握状態

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

また、5-1でわかる通り、施設における福祉機器のあふれ出し状態は多く見 られる。これには二つの原因が考えられる。 一つ目は、福祉機器自体の必要な面積はある程度限られているが、それを利 用する際において、介護者が介護するのに必要なスペースや利用者の車椅子や ストレッチャーのスペースを考えると必要な面積は相当増加するということで ある。(図5-2-6、図5-2-7)

図5-2-6:福祉機器のスペース

図5-2-7:実際の介護現場での状況

二つ目は、要介護度によって必要な機器が違うということである。 要介護度認定者数は2-1で述べたような高齢化社会という状況もあり、年々 増加している。さらに現在の施設利用者の要介護度はこの5年間で徐々に高 まってきたが要介護度の変化率としては維持が60.8%、改善が9.3%、悪化が 29.9%と、悪化のパーセンテージが改善のパーセンテージを20.6ポイントも上 回っており今後もこの傾向は持続すると予想される。(図5-2-8)

図5-2-8:施設利用者の要介護度の変化

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

要介護度の変化に伴い、今まで必要であった福祉機器が不必要になったり、 新たな福祉機器が必要になったりとして、施設はこれらの変化に応じてそれぞ れの福祉機器を収納するスペースが必要だが、多くの施設でこのような余裕は 無い。以下に要介護度と福祉機器の関係を示す。(図5-2-9、図5-2-10)

図5-2-9:性別・要介護度

図5-2-10:要介護度と福祉機器貸与状況

これら二つのことが原因で施設での機器のあふれ出しという現象が起きてい ると考えられる。この問題を解決するにはやはり利用者一人一人の状況を把握 して、機器を選択し、機器の必要スペースも考慮し、空間を構成させてゆく必 要がある。これには前述したとおり、しっかりとした、人間と機器と空間のマッ チングが必要であると考える。 以上に述べたことが福祉機器の現状である。

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

次に福祉ロボットの現状について述べる。 1-1や2-4で前述したように、現在ロボットは様々な場面で活躍している。 非製造業分野におけるロボットの需要予測は図5-2-11のようになっており、医 療福祉分野での伸び率が非常に見込まれている。

図5-2-11:非製造業分野におけるロボットの需要予測

福祉ロボットとはどんなものなのか、日本福祉大学の山羽和夫教授は福祉ロ ボットについて以下のような三原則を提案した。 福祉ロボットは体力的、年齢的にハンディを有する人間および周囲      の人間に常に慈愛と癒しの心で接し、必要とする範囲内で介助に努      めなければならない。 福祉ロボットは与えられた命令に服従しなければならない。但し与      えられた命令を実行した結果が周囲に幸福をもたらさないと予測さ      れたときはこの限りではない。 :福祉ロボットは人間および人間性に危害が及ぶ場合にはその人間に      替わり自ら犠牲となるべき行動を選択するとともに、その際に生ず      る破損に対して自己の修復量を抑えるよう行動を選択すること。 この原則で福祉ロボットに最も問題なのは人とロボットの相互関係において利 用者のロボットへ適合関係であり、この適合関係、つまりマッチングが人(高 齢者・介護者)との共存に最も重要である。そしてこのWell Beingこそが福祉 の姿であり、介護者は高齢者や身体障害者が自立できるよう行動することにな る。そして高齢者・身障者がいきいきと暮らせるような自立やリハビリテーショ ンをサポートできるロボットが自律機能を有する福祉ロボットということにな るのである。

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

しかし福祉分野のロボットと一言で言っても、多種多様のロボットがある。 高齢者や障害者の自立、介護をはじめ、リハビリテーションに用いるものなど、 医療分野との関わりも大きい。現在までに研究・開発されている福祉ロボット としては、介護支援ロボット、自立支援ロボット、機能回復訓練ロボット、エ ンターテイメントロボットなどがある。 介護支援ロボットとしては、寝たきりの人などを抱えあげて移乗する移乗支 援ロボットが研究されている。移乗支援の他にもおむつ交換支援ロボットなど の研究がされているが、実際に身体に接触する作業であるため、安全性、小型 軽量化、操作性、コストの面で多くの課題が残っている。また、介護支援ロボッ トを導入したからといって介護者が減らせるわけではなく、導入したとしても 安全性の面で介護者が必ず横についていなければならない。したがって、人件 費削減には繋がらず、導入するメリットが見出せないという状況にある。 自立支援ロボットは、障害者や高齢者のADL( Activity of Daily Living、日常 生活動作)を支援するロボットを言う場合が多い。代表的なロボットとしては、 パワーアシスト技術を応用した歩行支援ロボットがある。これは、ロボットアー ムに寄りかかる状態で歩行するもので、パワーアシストにより軽い力で押すこ とができる。さらに立ったり座ったりする動作を補助する機能を有しているロ ボットも開発されている。歩行支援ロボットの他にも世界でよく使われている 図5-2-12:Handy-1

ロボットとして、食事支援ロボット「Handy-1」(図5-2-12)がある。これは、 イギリスの「Rehabilitation Robotics Limited」から市販されているロボットで、 主として障害児への教育目的で開発されたものであり、操作方法も容易にでき るよう設計されている。使用者の簡単な指や腕の動きをタッチセンサーが検出 し、マニピュレータを操作して、指定されたトレイの中から1つを選定し口元 まで持ってくる仕組みとなっている。さらに動作部のトレイを交換することで、 洗顔、歯磨きなどの支援もできる。販売価格は約60 万円であり、2001年春 の時点で200 人以上の重度障害児に使用されている。日本においても、「セコ

図5-2-13:マイスプーン

ム」より開発された食事支援ロボット「マイスプーン」(図5-2-13)が2002 年 5月から販売されている。身体の状態や使える部位によって操作装置もジョイ スティック、ボタンから選択ができる。価格も1台40 万円程度である。さら に、汎用的な自立支援ロボットとしては、オランダの「Exact Dynamics 社」の 「MANUS」(図5-2-14)という机や車椅子にも搭載可能なロボットがある。食 事、洗顔・髭剃りなどの動作、服やメガネのズレを直す、かゆい部分を掻く、 排泄行為の補助など、日常生活の様々な場面で使用されている。操作に慣れる と、ドアを開けたり蛇口をひねるなど複雑な動作もできるようになる。価格は、 約300 万円と高めに設定されているが、2001 年の春時点で120 人程度のユー ザーの存在が報告されている。オランダにおいては、「MANUS」の購入者に対

図5-2-14:MANUS

して政府からの援助があり、オランダ国内のユーザーが多い。 前述の「handy-1」や「マイスプーン」などの食事支援ロボットという用途 が限定的なロボットと比較して、汎用的に使用される「MANUS」では、いくつ

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

かの課題もある。例えば、操作が難しい、可搬重量が小さい、動きが遅いなど である。様々な用途に使えるところが利点であるが、その分操作技術も要求さ れる。また、軽いものから重いものまで幅広い重量のものを持ち上げようとし たり、素早い動作を求めようとすれば、必要とされるパワーも大きくなり、誤 作動時の身体を傷つける危険性が高くなる。このように機能性と、安全性や操 作性には相対関係にある。 機能回復訓練ロボットとしては、例えば、下肢麻痺の状態となった患者のリ ハビリテーションを行うロボットがある。これは、「(株)安川電機」が開発し た「下肢運動療法装置(TEM)」(図5-2-15)というもので、理学療法士が教え 込んだ動作を忠実に再現するところに特徴がある。機能回復訓練機としては、 図5-2-15:下肢運動療法装置(TEM)

片足歩行や左右に速度差をつけた歩行訓練機やこれを応用して転倒予防のため の反射神経の訓練を行うシステムや、単調な訓練の繰り返しや苦痛と忍耐が必 要とされるリハビリテーションに対する患者のモチベーションを高めるために、 エンターテインメントの要素を取り入れた機能回復機器が開発されている。エ ンターテインメントの要素を取り入れた機能回復機器には、ゲームメーカーと の共同開発により、実際の風景が画面に映し出され、歩行と連動して変化し、 散歩しているような感覚で訓練できる歩行訓練機などがある。また、もともと ゲーム機であったものをリハビリテーションも兼ねて導入している施設もある。 これらの他にも、介護者や介助者を支援するロボットもある。従来、自動車工 場などで使われていた技術を応用した搬送ロボットが典型である。カルテを運 んだり食事を運んだりすることができ、病院等の施設内で主に使用されている。 最近、話題となっているエンターテイメントロボットは、アニマルセラピー と似た効果が得られるロボットである。代表的なものとして、「ソニー(株)」

図5-2-16:AIBO

の「AIBO」(図5-2-16)や世界一の癒しロボットとしてギネスブックに認定さ れたアザラシ型ロボット「パロ」(図5-2-17)などがある。喜怒哀楽を表したり、 簡単な日常会話を交わすことができ、一人暮らしの人の話し相手やペットを飼 えない家庭などで使われることで、コミュニケーションが図れ、メンタル部分 でのケアができる。 現在ロボットの普及が進んでいる、製造業の現場と医療・福祉分野の現場では、 次の5つの相違点がある。 ①直接、人に接する ②反復や単調な動作のみならず、多様な動作パターンが求められる ③誤作動が許されない

図5-2-17:パロ

④ロボットに関する専門知識がない人が使用する ⑤ロボットを使用するスペースに限界がある などである。①、③、④については安全性、②については機能性、⑤につい ては技術性が求められる。 安全性については、国際安全規格(ISO/IEC)の最上位規格である基本安全規

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格(A 規格)の国際工業規格案ISO/DIS12100 のなかで、本質安全設計、安全防護、 追加安全法策、使用上の情報(残留リスク)が規定されている。 本質安全設計とは、対象となる機械・装置の設計段階で可能な限りリスクを なくすあるいは低減することをいう。 安全防護は、機械装置自体のリスク低減策では不十分な点を別の手段をもっ て補うことである。 追加安全方策は、安全防護の追加的安全対策といえる。 使用上の情報(残留リスク)とは、前述した3つの安全方策を施した上で残 るリスクを使用上の注意事項などの形で利用者に伝えることをいう。 安全防護のなかには機械・装置を停止させることで安全を確保する方法と安 全柵などで機械・装置から離れることで安全を確保する方法がある。製造業に おいては、ロボットとオペレーターとの間に安全柵や一定のスペースが設けて あり、危害を被る可能性は低い。一方、医療、福祉分野のロボットについては、 人に触れることが前提とされていることから、隔離による安全策がとれない ことがあり、危険性が高まる。万が一機械装置に異常が生じた場合に、必ず安 全側の状態に固定され、被害を最小限にとどめることができるような仕組みを 「フェールセーフ」という。例えば、再起動防止回路や急停止回路、非常停止回 路などがある。また、誤使用による人為的ミスの事故の可能性がある。たとえ、 このような人為的ミスを犯しても被害を与えない機能や仕組みを「フールプルー フ」という。医療・福祉分野のロボットは介護者や医師などロボットについて の専門的知識を持たない人が操作を行うので、この「フェールセーフ」や「フー ルプルーフ」に基づいた安全なシステムを組み込む必要がある。 また、製造業においては、機能性や技術性について、同一工程、同一規格の 製品を製造するロボットが必要とされるが、医療・福祉分野においては、患者、 障害者、高齢者個々人の体格から症状といったものまで千差万別であることか ら、完全に個人のためにカスタマイズされたロボットか、1台で臨機応変に対 応する多機能ロボットでなければならない。しかし、多機能化すればコスト増 にも繋がるし、操作も複雑になる。 しかも、製造業におけるロボットは、工場内で使用され、設置スペースが確 保できるが、医療・福祉分野では、病院や福祉施設から在宅まで、ロボットを 設置するスペースは限定されることが多く、よりコンパクトなものが求められ る。そのためにも極小化、軽量化技術の向上が要求される。しかしこのように 機能性や技術性を追求していくと、製品化したときの価格が高騰してしまう。 在宅介護などで使われる介護支援ロボット、自立支援ロボットは、価格をいか に抑え操作を容易にできるかがポイントであり、今後の普及化の最大の課題と いえる。

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最後に福祉ロボットと福祉機器の現状の位置付けを機能性と空間性という側 面から行う。(図5-2-18) 福祉機器は主に身体的作用が大きく、福祉ロボットは散らばっている。精神 的作用が強く、かつ空間的に大きい分野はまだ確立されていないのが現状であ る。今後はこのような分野への発展が望まれる。

図5-2-18:福祉ロボットと福祉機器の持つ機能と空間性

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現状調査

5.現状調査 5-1.高齢者の住まいとしての福祉施設 5-2.福祉機器・福祉ロボットの現状

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福祉機器などの利用状況や高齢者の生活を知るために現状調査として見学、 ヒヤリング調査に次の施設へ赴いた。

 特別養護老人ホーム  ショートステイ  デイサービスセンター  居宅介護支援事業  http://www.wakuwaku.ne.jp/seiwa-en/nanohana/index.htm  養護老人ホーム  特別養護老人ホーム  ショートステイ  デイサービスセンター  ヘルパーステーション  地域包括支援センター  http://www.aa.alpha-net.ne.jp/seibohp/ 養護老人ホーム  特別養護老人ホーム 軽費老人ホーム  地域包括支援センター http://www.kosaien.or.jp/ (写真撮影不許可)  スペシャルケアセンター   アシステッドナーシングゾーン  リビングゾーン  http://www.gsen.or.jp/tsurunosato/  特別養護老人ホーム  地域ケアプラザ  http://www9.ocn.ne.jp/ hakuhou/index.htm 各施設では趣向を凝らし、様々な方法で利用者の環境やQOL(Quality of Life,生活の質)を高める工夫をしている。しかし多くの問題点もあり、その様 子を主に施設の利用状況、特徴、空間的の問題、利用上の問題という観点から、 次にまとめた。

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現状調査については以下の展示会に赴くことによって行った。

(主催:社団法人日本ロボット工業会、日刊工業新聞社) http://www.nikkan.co.jp/eve/05ROBOT/ (主催:社団法人 日本病院会、社団法人日本経営協会)  http://www.noma.or.jp/hs/ (主催:財団法人保健福祉広報協会)   http://www.hcr.or.jp/ これらの展示会は非常に新しい技術を駆使して作られた機器やロボットを展 示しており、本研究を行うにあたり、このような新しい機器やロボットの情報 を入手することが大切であると考えた。(図5-2-1)

図5-2-1:各展示会の様子

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次に福祉機器の現状について述べる。 福祉用具の市場規模(推計値)は、福祉用具法が施行された平成5年に7,731 億円であったものが、平成9年に10,495億円と1兆円を超え着実に成長して いるが、平成13年には11,927億円となっており近年成長率が鈍化している傾 向が伺える。 福祉機器の市場規模(推計値)は、平成7年に13,508億円であったものが 一般製品のユニバーサルデザイン化や公共品の普及を背景として平成13年に は32,134億円と成長している。また、交通バリアフリー法により公共施設や 公共交通機関のバリアフリー化が促進され、低床型バ���などの社会参加支援機 器に大幅な成長が見られる。 公共品の市場規模(推計値)は、調査開始時の平成7年には4,869億円であっ たものが、6年後の平成13年には22,159億円と4.5倍に達している。 つまり、福祉機器の市場規模は2-3で述べたロボットの市場同様、急激に伸 びている状況である。(図5-2-2)

図5-2-2:福祉機器の市場の推計

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しかし、このように市場が伸びていたり、技術の発展にともない様々な機種 が開発されてゆく一方で、福祉機器の機種の自己選択や決定、お勧めの機種把 握状態、福祉用具専門相談員による利用者のニーズの把握状態、また住環境把 握状態はよくない。(図5-3-3,図5-3-4、図5-3-5) これはやはり機器の種類が多すぎることや、利用者の身体状況をはっきりと 把握しきれていないことに原因があると思われる。つまり、人間と機器と空間 がうまくマッチングしていない状態にあると言える。

図5-2-3:利用者の福祉機器選択について

図5-2-4:利用者の住環境把握状態

図5-2-5:利用者のニーズ把握状態

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また、5-1でわかる通り、施設における福祉機器のあふれ出し状態は多く見 られる。これには二つの原因が考えられる。 一つ目は、福祉機器自体の必要な面積はある程度限られているが、それを利 用する際において、介護者が介護するのに必要なスペースや利用者の車椅子や ストレッチャーのスペースを考えると必要な面積は相当増加するということで ある。(図5-2-6、図5-2-7)

図5-2-6:福祉機器のスペース

図5-2-7:実際の介護現場での状況

二つ目は、要介護度によって必要な機器が違うということである。 要介護度認定者数は2-1で述べたような高齢化社会という状況もあり、年々 増加している。さらに現在の施設利用者の要介護度はこの5年間で徐々に高 まってきたが要介護度の変化率としては維持が60.8%、改善が9.3%、悪化が 29.9%と、悪化のパーセンテージが改善のパーセンテージを20.6ポイントも上 回っており今後もこの傾向は持続すると予想される。(図5-2-8)

図5-2-8:施設利用者の要介護度の変化

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要介護度の変化に伴い、今まで必要であった福祉機器が不必要になったり、 新たな福祉機器が必要になったりとして、施設はこれらの変化に応じてそれぞ れの福祉機器を収納するスペースが必要だが、多くの施設でこのような余裕は 無い。以下に要介護度と福祉機器の関係を示す。(図5-2-9、図5-2-10)

図5-2-9:性別・要介護度

図5-2-10:要介護度と福祉機器貸与状況

これら二つのことが原因で施設での機器のあふれ出しという現象が起きてい ると考えられる。この問題を解決するにはやはり利用者一人一人の状況を把握 して、機器を選択し、機器の必要スペースも考慮し、空間を構成させてゆく必 要がある。これには前述したとおり、しっかりとした、人間と機器と空間のマッ チングが必要であると考える。 以上に述べたことが福祉機器の現状である。

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次に福祉ロボットの現状について述べる。 1-1や2-4で前述したように、現在ロボットは様々な場面で活躍している。 非製造業分野におけるロボットの需要予測は図5-2-11のようになっており、医 療福祉分野での伸び率が非常に見込まれている。

図5-2-11:非製造業分野におけるロボットの需要予測

福祉ロボットとはどんなものなのか、日本福祉大学の山羽和夫教授は福祉ロ ボットについて以下のような三原則を提案した。 福祉ロボットは体力的、年齢的にハンディを有する人間および周囲      の人間に常に慈愛と癒しの心で接し、必要とする範囲内で介助に努      めなければならない。 福祉ロボットは与えられた命令に服従しなければならない。但し与      えられた命令を実行した結果が周囲に幸福をもたらさないと予測さ      れたときはこの限りではない。 :福祉ロボットは人間および人間性に危害が及ぶ場合にはその人間に      替わり自ら犠牲となるべき行動を選択するとともに、その際に生ず      る破損に対して自己の修復量を抑えるよう行動を選択すること。 この原則で福祉ロボットに最も問題なのは人とロボットの相互関係において利 用者のロボットへ適合関係であり、この適合関係、つまりマッチングが人(高 齢者・介護者)との共存に最も重要である。そしてこのWell Beingこそが福祉 の姿であり、介護者は高齢者や身体障害者が自立できるよう行動することにな る。そして高齢者・身障者がいきいきと暮らせるような自立やリハビリテーショ ンをサポートできるロボットが自律機能を有する福祉ロボットということにな るのである。

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しかし福祉分野のロボットと一言で言っても、多種多様のロボットがある。 高齢者や障害者の自立、介護をはじめ、リハビリテーションに用いるものなど、 医療分野との関わりも大きい。現在までに研究・開発されている福祉ロボット としては、介護支援ロボット、自立支援ロボット、機能回復訓練ロボット、エ ンターテイメントロボットなどがある。 介護支援ロボットとしては、寝たきりの人などを抱えあげて移乗する移乗支 援ロボットが研究されている。移乗支援の他にもおむつ交換支援ロボットなど の研究がされているが、実際に身体に接触する作業であるため、安全性、小型 軽量化、操作性、コストの面で多くの課題が残っている。また、介護支援ロボッ トを導入したからといって介護者が減らせるわけではなく、導入したとしても 安全性の面で介護者が必ず横についていなければならない。したがって、人件 費削減には繋がらず、導入するメリットが見出せないという状況にある。 自立支援ロボットは、障害者や高齢者のADL( Activity of Daily Living、日常 生活動作)を支援するロボットを言う場合が多い。代表的なロボットとしては、 パワーアシスト技術を応用した歩行支援ロボットがある。これは、ロボットアー ムに寄りかかる状態で歩行するもので、パワーアシストにより軽い力で押すこ とができる。さらに立ったり座ったりする動作を補助する機能を有しているロ ボットも開発されている。歩行支援ロボットの他にも世界でよく使われている 図5-2-12:Handy-1

ロボットとして、食事支援ロボット「Handy-1」(図5-2-12)がある。これは、 イギリスの「Rehabilitation Robotics Limited」から市販されているロボットで、 主として障害児への教育目的で開発されたものであり、操作方法も容易にでき るよう設計されている。使用者の簡単な指や腕の動きをタッチセンサーが検出 し、マニピュレータを操作して、指定されたトレイの中から1つを選定し口元 まで持ってくる仕組みとなっている。さらに動作部のトレイを交換することで、 洗顔、歯磨きなどの支援もできる。販売価格は約60 万円であり、2001年春 の時点で200 人以上の重度障害児に使用されている。日本においても、「セコ

図5-2-13:マイスプーン

ム」より開発された食事支援ロボット「マイスプーン」(図5-2-13)が2002 年 5月から販売されている。身体の状態や使える部位によって操作装置もジョイ スティック、ボタンから選択ができる。価格も1台40 万円程度である。さら に、汎用的な自立支援ロボットとしては、オランダの「Exact Dynamics 社」の 「MANUS」(図5-2-14)という机や車椅子にも搭載可能なロボットがある。食 事、洗顔・髭剃りなどの動作、服やメガネのズレを直す、かゆい部分を掻く、 排泄行為の補助など、日常生活の様々な場面で使用されている。操作に慣れる と、ドアを開けたり蛇口をひねるなど複雑な動作もできるようになる。価格は、 約300 万円と高めに設定されているが、2001 年の春時点で120 人程度のユー ザーの存在が報告されている。オランダにおいては、「MANUS」の購入者に対

図5-2-14:MANUS

して政府からの援助があり、オランダ国内のユーザーが多い。 前述の「handy-1」や「マイスプーン」などの食事支援ロボットという用途 が限定的なロボットと比較して、汎用的に使用される「MANUS」では、いくつ

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かの課題もある。例えば、操作が難しい、可搬重量が小さい、動きが遅いなど である。様々な用途に使えるところが利点であるが、その分操作技術も要求さ れる。また、軽いものから重いものまで幅広い重量のものを持ち上げようとし たり、素早い動作を求めようとすれば、必要とされるパワーも大きくなり、誤 作動時の身体を傷つける危険性が高くなる。このように機能性と、安全性や操 作性には相対関係にある。 機能回復訓練ロボットとしては、例えば、下肢麻痺の状態となった患者のリ ハビリテーションを行うロボットがある。これは、「(株)安川電機」が開発し た「下肢運動療法装置(TEM)」(図5-2-15)というもので、理学療法士が教え 込んだ動作を忠実に再現するところに特徴がある。機能回復訓練機としては、 図5-2-15:下肢運動療法装置(TEM)

片足歩行や左右に速度差をつけた歩行訓練機やこれを応用して転倒予防のため の反射神経の訓練を行うシステムや、単調な訓練の繰り返しや苦痛と忍耐が必 要とされるリハビリテーションに対する患者のモチベーションを高めるために、 エンターテインメントの要素を取り入れた機能回復機器が開発されている。エ ンターテインメントの要素を取り入れた機能回復機器には、ゲームメーカーと の共同開発により、実際の風景が画面に映し出され、歩行と連動して変化し、 散歩しているような感覚で訓練できる歩行訓練機などがある。また、もともと ゲーム機であったものをリハビリテーションも兼ねて導入している施設もある。 これらの他にも、介護者や介助者を支援するロボットもある。従来、自動車工 場などで使われていた技術を応用した搬送ロボットが典型である。カルテを運 んだり食事を運んだりすることができ、病院等の施設内で主に使用されている。 最近、話題となっているエンターテイメントロボットは、アニマルセラピー と似た効果が得られるロボットである。代表的なものとして、「ソニー(株)」

図5-2-16:AIBO

の「AIBO」(図5-2-16)や世界一の癒しロボットとしてギネスブックに認定さ れたアザラシ型ロボット「パロ」(図5-2-17)などがある。喜怒哀楽を表したり、 簡単な日常会話を交わすことができ、一人暮らしの人の話し相手やペットを飼 えない家庭などで使われることで、コミュニケーションが図れ、メンタル部分 でのケアができる。 現在ロボットの普及が進んでいる、製造業の現場と医療・福祉分野の現場では、 次の5つの相違点がある。 ①直接、人に接する ②反復や単調な動作のみならず、多様な動作パターンが求められる ③誤作動が許されない

図5-2-17:パロ

④ロボットに関する専門知識がない人が使用する ⑤ロボットを使用するスペースに限界がある などである。①、③、④については安全性、②については機能性、⑤につい ては技術性が求められる。 安全性については、国際安全規格(ISO/IEC)の最上位規格である基本安全規

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格(A 規格)の国際工業規格案ISO/DIS12100 のなかで、本質安全設計、安全防護、 追加安全法策、使用上の情報(残留リスク)が規定されている。 本質安全設計とは、対象となる機械・装置の設計段階で可能な限りリスクを なくすあるいは低減することをいう。 安全防護は、機械装置自体のリスク低減策では不十分な点を別の手段をもっ て補うことである。 追加安全方策は、安全防護の追加的安全対策といえる。 使用上の情報(残留リスク)とは、前述した3つの安全方策を施した上で残 るリスクを使用上の注意事項などの形で利用者に伝えることをいう。 安全防護のなかには機械・装置を停止させることで安全を確保する方法と安 全柵などで機械・装置から離れることで安全を確保する方法がある。製造業に おいては、ロボットとオペレーターとの間に安全柵や一定のスペースが設けて あり、危害を被る可能性は低い。一方、医療、福祉分野のロボットについては、 人に触れることが前提とされていることから、隔離による安全策がとれない ことがあり、���険性が高まる。万が一機械装置に異常が生じた場合に、必ず安 全側の状態に固定され、被害を最小限にとどめることができるような仕組みを 「フェールセーフ」という。例えば、再起動防止回路や急停止回路、非常停止回 路などがある。また、誤使用による人為的ミスの事故の可能性がある。たとえ、 このような人為的ミスを犯しても被害を与えない機能や仕組みを「フールプルー フ」という。医療・福祉分野のロボットは介護者や医師などロボットについて の専門的知識を持たない人が操作を行うので、この「フェールセーフ」や「フー ルプルーフ」に基づいた安全なシステムを組み込む必要がある。 また、製造業においては、機能性や技術性について、同一工程、同一規格の 製品を製造するロボットが必要とされるが、医療・福祉分野においては、患者、 障害者、高齢者個々人の体格から症状といったものまで千差万別であることか ら、完全に個人のためにカスタマイズされたロボットか、1台で臨機応変に対 応する多機能ロボットでなければならない。しかし、多機能化すればコスト増 にも繋がるし、操作も複雑になる。 しかも、製造業におけるロボットは、工場内で使用され、設置スペースが確 保できるが、医療・福祉分野では、病院や福祉施設から在宅まで、ロボットを 設置するスペースは限定されることが多く、よりコンパクトなものが求められ る。そのためにも極小化、軽量化技術の向上が要求される。しかしこのように 機能性や技術性を追求していくと、製品化したときの価格が高騰してしまう。 在宅介護などで使われる介護支援ロボット、自立支援ロボットは、価格をいか に抑え操作を容易にできるかがポイントであり、今後の普及化の最大の課題と いえる。

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現状調査 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

最後に福祉ロボットと福祉機器の現状の位置付けを機能性と空間性という側 面から行う。(図5-2-18) 福祉機器は主に身体的作用が大きく、福祉ロボットは散らばっている。精神 的作用が強く、かつ空間的に大きい分野はまだ確立されていないのが現状であ る。今後はこのような分野への発展が望まれる。

図5-2-18:福祉ロボットと福祉機器の持つ機能と空間性

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データベースについて

6.データベースについて 6-1.福祉機器・福祉ロボットのデータベース 6-2.個人属性のデータベース 6-3.マッチングシステムについて

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データベースについて

「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

資料編のデータベース1は福祉機器・福祉ロボットについてのデータベース である。このデータベースは1-1、1-2にて行った定義をふまえて   (主催:社団法人日本ロボット工業会、日刊工業新聞社) http://www.nikkan.co.jp/eve/05ROBOT/ (主催:社団法人 日本病院会、社団法人日本経営協会)  http://www.noma.or.jp/hs/ (主催:財団法人保健福祉広報協会)   http://www.hcr.or.jp/    にて行った現状調査で収集したパンフレットやホームページにて参照した データに基づいて作成されている。 5-2で述べたようにこれらの展示会は最新機器やロボットの事例を収集する ことができ、本研究をする上で非常に有効であると考える。 機器名称、写真、図面、利用目的、設置寸法、使用寸法、対象施設、利用空間、 対応ICFコードにて評価を行った。 詳しくは資料編参照。

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データベースについて

「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

資料編のデータベース2は個人属性についてのデータベースである。このデー タベースは06.10.16∼06.10.27の間に行ったアンケート調査のデータを基に 作成されている。(アンケート内容は資料編参照)    養護老人ホーム  特別養護老人ホーム  ショートステイ  デイサービスセンター  ヘルパーステーション  地域包括支援センター  http://www.aa.alpha-net.ne.jp/seibohp/

養護老人ホーム  特別養護老人ホーム 軽費老人ホーム  地域包括支援センター http://www.kosaien.or.jp/    在宅介護サービス の協力、また、知人、友人の祖父母など高齢者の協力により196部アンケー トを配布し、129部回収した。 その個人ごとの性別、年齢、要介護度、現在使用福祉機器、現在の生活の場、 困っていること、希望、身体状況、対応ICFコードにて評価を行った。 詳しくは資料編参照。

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データベースについて

「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

ファイルメーカー株式会社から販売されている、データベースソフトウェア、 FileMaker Pro 8.5を用いてそれぞれデータベースを作成した。その後、このソ フトウェアのリレーションシップ機能を利用し、データベース1のICFコード とデータベース2のICFコードを関連付けることによりマッチングを行った。 (図6-3-1、図6-3-2)

図6-3-1:データベース1・2のICFコードによるマッチング

図6-3-2:FileMaker Pro 8.5のリレーションシップ機能の様子

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アンケート分析

7.アンケート分析 7-1.アンケート集計結果 7-2.アンケートから読み取れる傾向

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アンケート分析 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

129部のアンケートの集計結果を記す。

図7-1-1:男女比

表7-1-1:日中と夜間における生活の場の大きさ

図7-1-2:生活の場

図7-1-3:身体の自覚症状上位3項目

図7-1-4:国民生活基礎調査による身体の自覚症状上位5項目

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アンケート分析 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

図7-1-5:要介護度別人数

図7-1-6:要介護度と年齢分布

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アンケート分析 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

図7-1-7:日常生活で困っていること

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アンケート分析 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

このアンケートは、主に比較的軽度の障害である高齢者、比較的健康な高齢者、 健常者である高齢者を対象に行った。高齢者対象というのは2-2でも述べたよ うに加齢による、身体的機能の低下や、生活上で困っていることが増加してゆき、 それに伴い、福祉機器や福祉ロボットを利用する可能性が高く、本研究を行う にあたり、適した対象者であると考えたからである。しかし、あまりに障害の 重い、寝たきりの方など要介護度が高い方はほとんどの生活をベッド上で過ご すことになり、対象者として適さないと考え、以上のように対象者を絞った。 本研究は個人個人に対応する空間を探ることが目的なので、全体を集計して 分析するということに重きを置く必要はないが、高齢者の現状を知るという意 味で分析を行う。 それでは傾向を見てゆく。 図7-1-1を見て明らかな通り、圧倒的に女性が多い。実際に施設に赴いても ほとんどが女性であった。アンケートを行った施設の一つである、聖母ホーム においては、女性45名、男性3名という状況であった。 表7-1-1を見ると日中平均は10.6畳、夜間平均は6.7畳となった。予想通り、 夜間の方が小さいスペースである。 2-1において約95%の高齢者が通常の住宅に居住していると述べたが、今回 のアンケートでは64%の高齢者が通常の住宅に居住しており、非常にパーセン テージが低くなっている。(図7-1-2)これは、アンケート調査をあえて、一般 の高齢者だけでなく、福祉機器に触れる機会の多い福祉施設にも依頼したとい うことが理由に挙げられる。 図7-1-3と図7-1-4を比較してもらいたい。本アンケートにおいて約半数の 48.8%の方が腰痛を訴えている。この有訴率は図7-1-4での9.5%をはるかに しのいでいる。また、膝痛、肩こり、肩痛においても同様のことが言える。こ れは高齢者を対象にしたということが原因に挙げられるだろう。本研究室でも 多く研究が行われているが、今後もやはり、腰痛対策ということは必要である と思われる。 図7-1-5においては本アンケートを主に、要介護認定無しまたは要介護度が 低い高齢者に依頼したということがわかる。しかし、要介護度が低いからと言っ て健康であるとは言いがたい。それは前述した図7-1-3で明らかであろう。要 介護度という7段階で高齢者を考えるよりも、やはり、本研究が扱うICFのよ うに個人個人の身体状況を把握することが大切なのではないだろうか。 年齢と要介護度の分布は図7-1-6で分かる。2-2で老化は個人差が非常に多 いと述べたが、61∼65歳で要介護1の方が1人いるのに対し、91歳以上で も要介護認定無しの方が1人いることをみるとそれがよくわかる。 最後に図7-1-7であるが、半数以上の62.8%の方が高い所に手が届かなくて 困っている。これに対して今後建築的解決を考察する必要があるだろう。高い 所に収納が集中しているキッチンなどのしつらえを少し変化させるだけでもこ のような問題は解決できるのではないだろうか。

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アンケート分析 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

また、それに続く掃除機が重い・掃除ができない、も非常に高い数値である。 福祉ロボット、ルンバのニーズが感じられる。また、人に頼むのが心苦しいと 精神的に困っていることが上位に来ていることも特筆すべきことであろう。こ うした点に関しては福祉ロボットの技術の発展により解決される問題なのでは ないだろうか。市場の可能性があると考えられる。 意外であったのは空間的要素について困っているということがさほど見られ ないということである。浴槽が狭い・広い、台所が狭い・広い、流し台が高い・ 低い、洗面台が高い・低いの項目については下位を占めている。台所が広いと 答えたのは麻痺などで動ける範囲が限られてしまっている方などであった。 このように空間的要素について困っているということが下位を占めている中 で脱衣所が狭い、が12.4%という点に関しては空間要素として考察する必要が あるのではないだろうか。 また、腰痛の有訴者が多い中でやはり、浴槽をまたぐのが大変、27.1%は家 庭内最も段差があると思われる風呂の状況を再考すべきであろう。同様に便器 から立ち上がるのが大変、20.9%、浴槽から立ち上がるのが大変、17.8%も立 ち上がりという動作を補助すべき建築的考察が必要である。 以上のようなことが、本アンケートによって見出された。

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考察

8.考察 8-1.提案・考察 8-2.展望

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

データベースに基づき、空間を提案、考察する。 1.廊下幅について

現状の建築基準法では左図のように施設などにおいて、廊下幅は最小寸法で 1200㎜以上とされているが、すれ違い等を考慮すると右図のように1510㎜ 以上必要となるとかんがえられる。手すりなどを考慮すると1650㎜以上は必 要であろう。(図8-1-1)

図8-1-1:廊下幅の提案

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

2.トイレについて

設計資料集成において、介護者を考慮したトイレの車椅子用ブースの最小寸 法として上図のようなものを提案している。しかし、これでは電動車椅子では 入ることが出来ない。そこで下図のような電動車椅子の回転半径に対応したト イレブースの最小寸法を提案する。(図8-1-2)

図8-1-2:トイレの提案

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

3.風呂について

設計資料集成では上図のように提示しているが、これでは水まわり用車椅子 が回転できない。そこで下図のように最小寸法として提案する。(図8-1-3)

図8-1-3:風呂の提案

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

4.車椅子の回転半径の寸法について

2.や3.でも提案したように、多くの資料において車椅子の回転半径は1500 ㎜とされ、またほとんどの場合、電動車椅子については触れられてい���いのが 現状である。 さらに車椅子では最小回転半径としては1500㎜であるが、実際に車椅子を 使用する時に回転する際には片輪を軸に回転するので、1700㎜という寸法が、 電動車椅子では2100㎜という寸法が必要になってくる。(図8-1-4) こうしたことを考慮して空間を構成してゆく必要もあるのではないだろうか。

図8-1-4:車椅子、電動車椅子の回転半径

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

5.

の種類と歩行幅

の種類によってその歩行幅は異なってくる。住宅内においてこれらの機器 を導入した際に、廊下幅を設定する基準となりうる。

図8-1-5:

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の種類と歩行幅

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

6.機械浴槽の導入に際して

機械浴槽については、左図のような資料編データベース1のNO.06の通りで あるが、(図8-1-6)実際の介護現場では一つの機械浴槽では足りないという現 状がある。 そこで、これを二つ導入した際に必要であると考えられる空間を提案する。(図 8-1-7)理想としては4500㎜×9000㎜の空間が必要であるが、これはかなり 余裕を持ったスペースであるといえる。 最小寸法として下図の4500㎜×8000㎜を提案する。 図8-1-6:機械浴槽必要寸法

図8-1-7:二つの機械浴槽の導入例

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

7.高齢者施設における居室について

以下の図(図8-1-8)は標準的な高齢者施設の4人用の居室である。(東京弘 園済老人ホームを参照)一人当たり約8㎡の割り当てとなっている。灰色部分 が収納スペースである。図のようにポータブルトイレを置いたとするとほとん ど自由なスペースはなくなってしまい、個人の所有物があふれ出してしまうと いうことにつながる。また、車椅子を回転できるスペースは入り口近くの一箇 所に限られ、さらに電動車椅子では回転できない、つまり入れないのが現状で ある。このような居室の現状があることに対して、さらなる建築的工夫と法整 備などが必要となってくるのではないだろうか。

図8-1-8:高齢者施設の居室

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

以上のような空間の提案、考察を行った。 やはり福祉機器を導入するに当たって、それなりの多くのスペースが必要と なってくることがわかった。また基準などで定められている最小スペースを実 際の現場で応用したとするとかなりの不具合が出てきてしまうであろう。今後 さらに細かくICFコードにより福祉機器を分類することでより豊かな空間の提 案ができると考えられる。

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考察 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

本研究においてはICFコードを利用したデータベースに基づいて、身体状況 と空間の間に、福祉機器・福祉ロボットの寸法情報を挿入することによって空 間の寸法体系を確立し、ICFコードの空間的要素への有用性を示すことが出来 た。 しかし本来のICFコードの目的としては1-3でも述べたように、健康状況と 健康関連状況を記述するための、統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供 することである。 つまり、福祉機器などに頼らないような全くの健常者においてもこのICFコー ドは適応するのである。 ICFコードを用いた空間評価、有用性などをさらに進展させるためには、動 作解析を行うことなどにより、個人の身体状況をより細かく把握し、ICFコー ド化するとともに、その個人の利用する環境要因をより細かくICFコード化す ることが重要である。そうすることにより、例えば住宅内や外出時にかかる身 体機能やその場の空間要素をより直接的、個別寸法体系としてカスタマイズす ることが出来るようなシステムへの応用が図れるのではないだろうか。(図8 -2-1)

図8-2-1:身体状況-ICFコード-空間情報のイメージ図

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まとめ

9.まとめ 9.まとめ

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まとめ 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

以上見てきたようにICFコードによる人間と福祉機器・福祉ロボットのマッ チングにより、空間の提案を行うことができた。 しかし本研究においては、福祉ロボットの寸法体系を確立することができな かった。今後、さらに福祉ロボットの研究が行われ、寸法体系を確立すること が出来るようになることを期待する。

2-6で位置付けたように、本研究は機械系研究領域、医学・福祉系研究領域、 建築系研究領域という3つの領域をまたいでいる。 アンケートを行う際に対象者の一人方が次のように言った。 「私は膝に人工関節が入っている。本当に悔しいのは、人工関節の重さのせい で趣味で大好きであった水泳が出来なくなってしまったことだ。」 と。非常に印象的であった。 正直高齢者や障害者の抱える問題は複雑で建築的領域だけでは解決できない ことはたくさんある。医学・福祉系の研究が進めば軽い人工関節を作ることが 可能になり、この方の望みが叶うかもしれない。また、機械系領域が発達すれ ば泳ぎをサポートしてくれるロボットが出来るかもしれない。こうした様々な 分野の研究の発達が望まれる。 このように本研究を行うにあたり、社会的背景はあまりにも複雑すぎるが、 建築学的領域の研究として、本研究が少しでも生活上、困っている方の人生の 質を高めるために役立ってくれることを願う。

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おわりに

おわりに おわりに

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おわりに 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ ICF コードを利用したデータベースによるマッチング∼

この論文を仕上げるのにどれほどの出来事があったか…正直思い出すだけで 辛い出来事がたくさんあります。本当にたくさんです。 しかし本当に、本当にたくさんの方々の支えがあってようやく書き上げるこ とができました。自分一人だけの力では決して書くことが出来なかったでしょ う。 私は他人よりも一年長くこの卒論というものに時間をかけることになってし まいました。そうした中で渡辺先生には本当に大変なご迷惑をおかけいたしま した。しかしこんな自分のことを長い間とても温かく見守ってくださり、さら に毎回の中間発表時には非常に的確なアドバイスをしてくださり、本当にあり がとうございました。あの時の先生のメールでの『良い意味で「いい加減」に 「気楽」に構えることが一番』、『こんな時にしかできない自分の好きなことを思 う存分やってみた方が得られることは多いのではないでしょうか?』というお 言葉に私はとても勇気付けられました。感謝の念が耐えません、ありがとうご ざいました。 そして長澤さん、本当に世話の焼ける問題児の自分ですが、ここまで、論文 を書くことができるまで、自分は成長しました。精神的にとても弱い自分を温 かい言葉でサポートしてくださったり、やさしく見守ってくださったり、この 論文を書くために本当に大切なアドバイス、軌道修正をしてくださり、本当に ありがとうございました。長澤さん無しではこの論文、今の自分はありません。 ありがとうございました。 そしてアンケートに協力してくださった方々、ありがとうございました。ア ンケート回収を手伝ってくれた友達のみんな、ありがとう。論文出来上がったよ。 弘済園の岡田様、(株)ゆあ・はんずの大貫様、聖母ホームの竹内シスター、 多くの施設が断って途方にくれていた中、お忙しいにもかかわらず、アンケー トのご協力本当にありがとうございました。 そして前期に一緒に施設、展示会を訪問しまくった

藤さん、担当者として

サポートしてくださった浅野さんをはじめ、健康空間ゼミの皆さん、ありがと うございました。みなさんのゼミでの助言とても参考になりました。 最後に、特に言葉には表わしては来なかったけれど、何気にいつも気にして いてくれたお父さん、そして、毎日ご飯を作ってくれて、落ち込んだ時も励ま してくれたお母さん、そして、中国に嫁いだ姉、そして、家に行った時や電話 越しで自分のことを気にしてくれて元気付けてくれたおばあちゃん、そして、 かわいい癒し系のルビ、家族は本当に僕の支えです。宝物です。普段あまり言 えないのでここで…ありがとう。ありがとう。 皆さんありがとうございました。本当にありがとうございました。 卒業論文終わりました。 2006.11.08 佐古 崇

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参考文献

*参考文献 *参考文献

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参考文献 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

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   建築計画および生活行動への応用に関する研究」、日本建築学会大会   

概集2005年、p629-630

  

グに関する研究」、早稲田大学渡辺仁史研究室卒業論文2005年

2) 朝比奈真実:「ICFを用いた外来患者の心身状態と病院環境のマッチン

3) 土肥健純:「医療におけるロボティクスの現状と将来」、 日本ロボット     学会誌、 Vol.18、 No.1、 p.29-32 (2000) 4) 藤江正克、 他:「高齢者の日常生活を支援するロボット技術、 ロボット」   

日本ロボット工業会、 No.128、 p.29-33 (1999)

5) 亀本和彦、福田理、池田勝彦:「高齢化社会に向けた住宅・居住環境対策」     国土交通省総合調査「少子化・高齢化とその対策」、p.184-197(2005)

6) 河村ちひろ、河野康徳:「補聴器装用とQOL― 評価尺度のための予備     的検討―」、新潟青陵大学紀要第6号、2006年3月

7) 長澤泰:「ICFが建築計画研究におよぼす影響と建築計画研究への応      用」、日本建築学会建築計画委員会ノーマライゼーション環境小委員     会講演資料、(2005) 8) 「福祉住環境コーディネーター検定3級テキスト改訂版」、東京商工会     議所、2001年6月 9) 京極高宣、市川洌「新訂福祉用具の活用法」、北隆館、2004年9月 10) 早野幸雄:「人にやさしい福祉用具の開発の推進」日本障害者リハビ     リテーション協会発行「ノーマライゼーション障害者の福祉」1995     年10月号(第15巻 通巻171号) p17-20 11) 世界保健機関、「ICF国際生活機能分類 国際障害分類改定版」、障     害者福祉研究会、中央法規出版 、2002年8月 12) 大川弥生、「介護保険サービスとリハビリテーション∼ICFに立っ     た自立支援の理念と技法∼」、中央法規出版 、2004年5月 13) 坂本啓治:「福祉用具とこれからの住環境-わが家に住み続けるため-」、     久美株式会社、2001年12月 14) 児玉桂子、鈴木晃、田村静子:「高齢者が自立できる住まいづくり-安     心生活を支援する住宅改造と工夫」、彰国社、2003年5月 15) 「介護サービス統計資料年報2005」、生活情報センター、2005年3      月 16) 日本建築学会編:コンパクト建築設計資料集成バリアフリー、丸善株式     会社、2002年2月

17) 日本建築学会編:建築設計資料集成【人間】、丸善株式会社、2003年    1月 18) 野沢直樹:「FileMaker Pro8 スーパーリファレンス for Macintosh」、 

    株式会社ソーテック社、2006年1月

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参考文献 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

19) http://www.tokyo-kasei.ac.jp/ ichimaru/newcurriculum/           appliednutrition/datafiles2001/21936052AN.htm 20) http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html 21) http://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/seizo/jisedai/robot/          13fy_needs_chosa/1chapter.pdf 22) http://japan.internet.com/research/20021210/1.html 23) http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0511/01/news007.html 24) http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/barrier-free.html 25) http://www.techno-aids.or.jp/ 26) http://www.expo2005.or.jp/jp/E0/E1/nat/robot/index.html 27) http://www.kaigo.ssw.or.jp/kaigo/souron/bunnrui/hyou.html 28) http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/IPPAN/ippan/scm_o_NinshouNyuuryoku 29) http://plaza.umin.ac.jp/ haruna/icf_jpn/index.htm

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資料編

*資料編 *-1.データベース1 *-2.データベース2 *-3.アンケート用紙

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資料編 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

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資料編 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベース���よるマッチング∼

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資料編 「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」∼ICFコードを利用したデータベースによるマッチング∼

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調査の説明      福祉機器、福祉ロボットの生活空間への導入についての意識調査

私は、早稲田大学理工学部建築学科の卒業研究で 「福祉機器、福祉ロボットの生活空間への導入について」 研究を行っております。 現在、情報・IT技術の発達により、多くのロボットや福祉機器の開発が進んでいます。 福祉の観点から、高齢者や障害者などの「生活弱者」の生活空間に、それを補助する福 祉機器、福祉ロボットが導入されることが期待されています。 そこで、実際の生活の場にこれらが取り入れられるために、住宅や福祉施設の部屋など の建物環境の整備や、そこで必要とされる機能を知ることを目的にアンケート調査を実 施したいと思います。

 質問の内容は、日常生活の場や、動作に関する簡単なアンケートとなっておりますの で、あまり考えすぎずに気楽に回答するようにして下さい。この調査は、上記の目的の ために集計をして資料づくりのために行うもので、あなたの知能や性格などを個別に測 定することを目的として行っているものではありません。また、身体の不自由さと機器 の必要性、ニーズを知るために、身体の状況についてお聞きしますが、本調査で得られ たデータは全て統計的に処理し、個人を特定することはありません。またこの調査で知 り得たデータは、卒業論文などの学術目的にのみ利用し、データの扱いについては、プ ライバシーに配慮し、皆様にご迷惑をおかけする事はありません。調査の結果について は、ご希望の場合、集計結果についてお答えする事ができます。(個別の回答結果につ いてはお答えいたし兼ねますので、ご了承下さい。)  お忙しい中、誠に恐縮ですが、どうぞご協力をお願いいたします。

                           

早稲田大学理工学部建築学科 渡辺仁史研究室 佐古 崇(さこ たかし) 〒169-8555 東京都新宿区大久保3-4-1  (研究室)03-5286-3276 (電話)090-1708-2285


「福祉機器により動作や家事の補助を受ける当人」への調査を前提に質問を作成してあります。 この調査では、現在、福祉機器や福祉ロボット等を使用している方でも、使用していない方でも 結構です。できるだけ、上記のアンケート対象者ご本人が、回答(記入)ください。ただし、ご 本人による回答(記入)が難しい場合は、介護者などの方が本人の意思を反映させて、回答くだ さるようお願いいたします。回答者が、介護者の場合には、被介護者「福祉機器により動作や家 事の補助を受ける当人」の立場としてお答えください。 【1】本調査票を記入するのはどなたですか?当てはまるものに一つチェックしてください。 □:本人 □:介護者    その他[                  ]

【2】掃除、洗濯において困っていること、または困っていたことを自由に記述して下さい。    またその他下の例の中から当てはまるものがあれば全てにチェックしてください。

例 □:掃除機が重い □:高い所に手が届かない □:ゴミの分別が難しい  □:ゴミ出しが大変 □:洗濯物の移動が大変 □:物干しが大変  □:洗濯物の取り込みが大変 □:アイロンがけが大変 □:洗濯物をたたむのが大変 □:洗濯物をしまうのが大変 □:掃除が出来ない □:洗濯が出来ない  □:ゴミ出しが出来ない □:人に頼まなくてはいけないことが心苦しくて困っている    【3】食事、台所において困っていること、または困っていたことを自由に記述して下さい。    またその他下の例の中から当てはまるものがあれば全てにチェックしてください。

例 □:台所が広い □:台所が狭い □:配膳が大変 □:食器の片付けが大変  □:食器を洗うのが大変 □:箸が使いづらい □:椅子に座って食べるのが大変     □:調理が大変 □:調理器具が重い □:流し台が高すぎる □:流し台が低すぎる □:収納場所が少ない □:暗い □:台所仕事ができない      【4】風呂場、トイレにおいて困っていること、または困っていたことを自由に記述して下さい。    またその他下の例の中から当てはまるものがあれば全てにチェックしてください。

例 □:脱衣所が寒い □:浴室が寒い □:床が冷たい □:滑りやすい □:浴槽が狭い □:浴槽が広い □:浴槽をまたぐのに苦労する □:浴槽にしゃがむのに苦労する □:浴槽から立ち上がるのに苦労する □:脱衣所が狭い □:脱衣所が広い □:洗面台が高すぎる □:洗面台が低すぎる □:身体を洗うのに苦労する  □:便器にしゃがむのに苦労する □:便器から立ち上がるのに苦労する □:一人では入れない □:人に頼むのが心苦しくて困っている     


【5】あなたが日常生活をする上で動作的、精神的に苦労したり、面倒だったり、困ったり    している、不便に思ったり、人の手を借りたいと思うものを5つ以上自由に挙げてく    ださい。   例)夜一人が寂しい、コンセントの抜き差しが大変、靴下を一人で履くのが大変,   来客の時に2Fなどにいるととても不便…など

【6】あなたが思う「このようなことを補助してくれる福祉ロボットや福祉機器があればよい」    と思うものを自由に記述してください。       (例)肩をもんでくれる、荷物を持ってくれる、階段をラクに昇降させてくれる…など

あなた自身についてお聞きします。 【7】あなたのお身体で痛みやマヒなど不自由なところなどがあれば例を参照に症状とともに    挙げてください。 例

マヒ 認知症

腰痛

前面

背面


【8】あなたの性別は? □:男性 □:女性 【9】あなたの年齢に当てはまるものに一つチェックしてください。 □: ~50歳 □:51~55歳 □:56~60歳 □:61~65歳 □:66~70歳  □:71~75歳 □:76~80歳 □:81~85歳 □:86~90歳 □:91歳~ 【10】あなたの要介護度はいくつですか?当てはまるものに一つチェックしてください。 □:要介護認定なし □:要支援1 □:要支援2 □:要介護1 □:要介護2    □:要介護3 □:要介護4 □:要介護5

【11】あなたが現在使用している福祉機器があればお答えください。複数チェック可。 □:杖 □:歩行器 □:車いす □:電動車いす □:介護用ベッド □:簡易トイレ  □:移乗用リフト □:手すり □:スロープ □:機械浴槽、特殊浴槽 □:補聴器  その他[                                   ] 【12】あなたが現在主に生活の基準の場としているところはどこですか?     当てはまるものに一つチェックしてください。    □:自宅 □:福祉施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設など)  その他[                           ] 【13】あなたが日常生活で日中主に生活している場と夜間主に生活している(寝ている)場の     大きさはそれぞれおよそどれくらいですか?数字をご記入下さい。 日中

畳程度

夜間

畳程度

質問は以上で終了です。ご協力ありがとうございました。


「人間と空間のインタフェースとしての福祉ロボット・福祉機器」~ICFコードを利用したデータベースによるマッチング~