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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 一 章   序 論

目次

1.序論  1.1 はじめに  1.2 研究目的  1・3 視覚と聴覚の関係    1.3.1 視覚と聴覚の関係    1.3.2 聴覚の可視化に関する研究    1.3.3 視覚と聴覚の認知機構

2.視聴覚知覚による評価手法  2.1 計量心理学的評価手法    2.1.1 代表的な計量心理学的測定方法    2.1.2 計量心理学的手法を用いた調査手法  2.2 視知覚に関する景観評価手法    2.2.1 視野    2.2.2 視程    2.2.3 視距離    2.2.4 見込角    2.2.5 視線入射角    2.2.6 仰角・俯角    2.2.7 色彩    2.2.8 視野内の人工物占有率  2.3 聴知覚に関する景観評価手法    2.3.1 計量心理指標との関係    2.3.2 可視化による景観評価    2.3.3 聴覚的シークエンスと時間性  2.4 複数知覚(マルチモーダル)現象を考慮した景観評価手法  2.5 複数知覚(マルチモーダル)現象のある空間事例

3.音知覚可視化評価用インターフェース  3.1 インターフェースの目的 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 3.2 音の表現の仕方    3.2.1 音の言語的表現

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   3.2.2 音の視覚的表現  3.3 可視化される音の状態    3.3.1 音の特性と表現について      3.3.2 音の方向定位    3.3.3 音の大きさ    3.3. 4 音の種類  3.4 インターフェース概要  3.5 インターフェースの検証    3.5.1 検証実験概要    3.5.2 検証実験手順    3.5.3 作成された音知覚可視化画像    3.5.4 標本の検定    3.5.5 可視化画像の分析・検証    3.5.6 インターフェースの検証

4.視覚情報による聴覚変化の評価実験  4.1 評価対象空間の選定    4.1.1 評価対象空間の選定条件    4.1.2 対象空間    4.1.3 調査ポイントの設定    4.1.4 音の採取・再生環境  4.2 空間内の視聴覚物理量の分析    4.2.1 音圧レベルの測定    4.2.2 周波数分析を用いた各ポイントの音エネルギー値          の算出    4.2.3 視覚的影響(景観分析)  4.3 視覚情報を受けた知覚音調査    4.3.1 評価用の用語の定義    4.3.2 実験の概要    4.3.3 実験方法 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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 4.4 実験結果  4.5 実空間との補正

5.音知覚評価モデルとケーススタディ  5.1 データの解析    5.1.1 標本の検定    5.1.2 知覚音源位置    5.1.3 知覚音圧    5.1.4 知覚音周波数  5.2 音知覚評価モデル    5.2.1 モデルの抽出    5.2.2 知覚音源位置    5.2.3 知覚音圧    5.2.4 知覚音周波数    5.2.5 知覚音評価モデル  5.3 評価手法とケーススタディ    5.3.1 評価手法の流れ    5.3.2 目白庭園の評価    5.3.3 【ケーススタディ1】京王プラザホテル    5.3.4 【ケーススタディ2】 新宿アイランドタワーパティオ     6.終わりに  6.1 結論  6.2 終わりに  6.3 文献リスト

附01.  音知覚可視化評価用インターフェースのアクションスクリ プト 附02. 評価データ

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 一 章   序 論

第一章 序論 1- 1.はじめに

 近年情報処理(特にヒューマンインターフェース)の分野で 多く用いられる言葉として、「マルチモーダル」という言葉が ある。これまで、パソコンや電話機などの情報通信機器は、人 間の感覚のそれぞれを一つ利用して操作やそれを用いた人間と のコミュニケーションを行ってきた。これらを、複数感覚チャ ンネルを強調的に用いることで、より「操作する」という感覚 から人間を解放していこうという目的からこれらの言葉が標榜 され、研究開発がすすめられているのである。  我々は、空間ともきわめて自然に、複数の感覚を強調的に働 かせ、空間とコミュニケーションをとっているのである。これ らは、経験的に明らかである。しかし、視覚という圧倒的な感 覚への人間の情報処理機構の依存が高い以上、空間体験という ことはある意味で「視覚体験」であった。そして、 「視覚」が独 立してしまった後では、聴覚は「聴覚」の体験に過ぎず、それ 以外の感覚にかんしても、独立せざるを得なかったといえる。  一方で、情報機器が「マルチモーダル」を標榜し続けるとと もに、空間においても、今後、感覚に訴えかけるものがより重 要性を増してくると思われる。空間体験が、独立した感覚の体 験ではなく「マルチモーダル」な空間体験であるということへ の認識が必要となるに違いない。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 一 章   序 論

1- 2. 研究目的  本研究では、水による演出がなされている空間をケーススタ ディとし、空間における視覚と聴覚の複数知覚(マルチモーダ ル)現象を明らかにする。さらに、視聴覚双方の物理的指標と の関係から、心理量を定量的なデータをして扱うことの出来る 評価手法を提案することを目的とする。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

1−3視覚と聴覚の関係 1- 3- 1視覚と聴覚の関係  ※1- 1 モダリティ    視覚、聴覚、触覚などの感覚を 用いて外界からの情報を知覚す る手段や、情報伝達の方法

第 一 章   序 論

 我々が経験する事象や出来事には、複数のモダリティ(※11)からの情報が含まれている場合が多い。さまざまな感覚器

※1- 2 色光ピアノ    交響曲第5番《プロメテウス−火 の詩 Promethee- - Le poeme de feu》(1909- 10)で使うためスクリャ ビンによって考案された楽器で、ス コアの一番最上段に楽譜で示されて いるが、その鍵盤は音響をもたらす のではなくて、演奏会場に強烈な着 色光線を映し出す。作曲者は、一オ クターヴ内の十二の音、及び、十二 の調に、十二の色彩を与え、それぞ れに象徴的な意味づけを行ってい る。)

※1- 3 「ファンタジアFantasia」    そのパンフレットには、 「目で見る 音楽、耳で聴く映像」という言葉が見 い出される。

官により多種多様なモダリティで情報入力することをマルチ モーダルといい、 これによりさまざまな事象を知覚することを マルチモーダルな知覚という。近年、このような言葉が情報通 信の分野で多く用いられるようになったが、元来、人間の知覚 として備わっていたものであり、我々が空間を体験する際に は、必ずマルチモーダルな知覚を用いている。  視覚と聴覚の組み合わせに特化すると、たとえば、われわれ は、耳をすまして音に集中するとき自然に目を閉じるが、これ は、目から入ってくる視覚情報が耳から入ってくる聴覚情報の 処理に妨害的影響を及ぼすことを経験的に知っているからだと 考えられる。また、「ba」という音声に対し、「ga」を発声し ている画像を同時に提示すると、 「da」に聞こえる現象がある。 これはマガーク効果(※1- 10)とよばれ、唇やあごなどの音 声の発声に伴う器官の形や動きの画像情報(読唇情報)が音声 知覚に無意識のうちに影響を与えていることを示している。  そのほかにも、 Alexander Skriabin(1872- 1915)の色光ピア

図1- 1 ファンタジアFantasia      (All Right Disney reserved)

ノ(※1- 2)やディズニーの音楽映画「ファンタジア Fantasia」 (※ 1- 3・図 1- 1)(1940)、岩井俊雄と坂本龍一のコラボレー ション「RemotePiano installation」や<MPIXIPM> コンサー ト(図1- 2)など、「音楽を可視化した芸術作品」は、視覚と 聴覚をそれぞれ強調的に作用させることを目的とした作品であ り、人間の認知が視覚・聴覚を相互的に作用しあっていること がわかる。  このようなことを明らかにするために、 それぞれの感覚を統 合する試みが行われてきた。視覚の可聴化、聴覚の可視化とい

図1- 2 < MPIXIPM>

う研究が行われてきたのは、 一方の感覚系を他方の感覚系と同 等に比較することで、 総合的に把握しようという目的からであ Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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る。これらに関しては、音楽学や心理学・音響工学の分野では 多くの研究が為されてきた。まず、音楽学において考察する

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と、もともと、現在の音楽の五線譜などは、 「音の記譜法」 (図 1- 3、4)は音を視覚的に表現することを目的としたものであ り、音の三要素である「強さ、高さ、音色」というものは、こ れで表現される。しかし、これは、音楽そのものを記録し、再 現するために用いられたものであり、 音の現象そのものを視覚 図1- 3 五線譜(フーガの技法)

と比較するものとは異なる。 音の現象そのものを視覚と比較す るための研究は、音楽学ではなく、むしろ心理学や音響工学に おける研究に依存するものとなる。しかし、この二分野の研究

図1- 4 シュトックハウゼンの記譜法

には決定的な違いが存在する。音響工学においては、音を物理 的に解析して視覚化するということであり、 心理学では音の認 知、心理的な部分を可視化することである。本研究の趣旨から すると、心理学に依存する部分が多いのであるが、心理学での 分析というのは、 音の認知がどのように為されているかという ことを「分析」するためであり、それを視覚的な影響に反映さ せたり、空間的な設計の変化を要求するものではないのであ る。そこで、空間的な設計の変化を要求する研究を考えると 「音響工学」ということになるが、一部で音響心理の研究が行 われているものの、それらは音そのものを分析し、それを設計 に反映させるということに因っており、 音が視覚によってどの ように影響を受けているかといった点までは踏み込むことがで きない。これは、 「音響設計」と「建築設計」という線引きが 為されているためであるといえよう。  また、それらが「どのように相互的な作用を持っているの か。」ということに関しては、未だ、心理学や脳生態学の世界 でも、不明な部分が多い。これらは特に「経験的」な部分に因 ることが多いため、 体験する人間自身がどのような経験を送っ てきたかという部分に関する調査・実験は困難である。現実的 にそれらの認知機構という部分だけでは表現されないというこ とが、このような研究の妨げになっているともいえる。心理学 という学問の特性上、 認知機構という部分に踏み込まざるを得 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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ないということもあり、単純に「音が視覚的な空間特性によっ てどう変化するのか」ということを明らかにするシステムも、 ※1−4   岩宮眞一郎・帯田知礼         (九州芸術工科大学)   「オーディオ・ビジュアル・メディア を通しての情報伝達における視覚と 聴覚の相互作用」   日本音響学会講演梗概集           ( 平 成 3年 10月 )

第 一 章   序 論

現在行われている限りでも、極一部である。近年、映像表現に おける音のタイミングや音の重ね合わせなどに関する研究 (※ 1−4)等で少しずつ試みが為されてきているが、実際の空間 内ということを踏まえると、ほとんど為されておらず、この研 究分野においては黎明期と言えるだろう。

1- 3- 2 聴覚の可視化に関する研究

 「聴覚の可視化」に関する研究は、 「音の可視化」に関する研 究とは純粋な意味では異なる。 「音の可視化」技術が建築計画 に応用される例としては、 そのほとんどの場合騒音対策や音楽 ホールに代表される室内音響設計に関するものである。 ここで は、実例分析をもとに、音がいかにして空間内で均一になる か、また人数、拍手の有無によりそれがどのように影響する か、等という研究がなされている。これらの多くは、 「物理的 音響特性による可視化モデル」であり、これらの研究の中で、 調査結果やシミュレーション結果から音を可視化し、 実際に建 築計画に応用されている。  一方で、 「聴覚の可視化」という観点が、音を認知的な側面 から捉える研究として考えると、このほとんどは「サウンドス ケープ研究」ということになる。これらはフィールド調査を中 心にして行われ、 それらの中でもさまざまな空間の中の音を表 現する手段が開発されている。これらは、直接建築設計を目的 とするものではないために、 空間設計の手段としては今後有効 な手段となるであろう。ここでは本研究の参考とした「物理的 な音響特性による可視化モデル」と、 「聴覚の可視化モデル」つ まり、 音を人の認知的な側面から可視化を行った例を取り上げ る。

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1.「物理的な音響特性による可視化モデル」

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 一般に物理的な音響特性の可視化は二つのタイプに分類する ことができる。

1.幾何音響や波動音響によって「理論計算・解析した」結果を  可視化する。 2.模型実験等のなんらかの実験を行い、 「測定した」結果を可  視化する。

1.の測定には、電磁波や可聴音、超音波、赤外線など、可視光 以外が用いられる。音響特性を主眼とした音の可視化では、音 場全体を把握できることに意義があるが、 現状で音場全体の瞬 時音圧や音圧レベルを同時に表示させることは不可能であるた め、理論計算による結果を可視化することになる。

2.「音線法」 □反射音線図  音源からでた音が伝播し、 物体に反射して室内のある受音点 に到達する状態をその経路図として表現するものである(図 1- 5) 。反射音の音線のうち、レベルが高くかつ時間遅れの大き いものは、音声受聴などを妨げることがある。この表示によ り、問題になりそうな反射音が、どの壁面からくるのかその履 歴を知ることができる。

□反射音分布図 図1- 5 反射音線図

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 ある音線を放射する無指向性の音源を仮定し、客席面に入射 する反射音として数回の反射までを追跡して、任意の時間帯の

第 一 章   序 論

反射音の分布を求めた結果を表現したもの。図のように、音線 の到来方向を、長さは客席面に投影された長さで、短いほど垂 直方向からの入射をあらわしている。

図1- 6 反射音分布図

3.「パーティクルオブジェクトモデル」

 音を粒子の集まりとして捉えて、それらの運動の様子をアニ メーションで表現する手法。コンピューター・グラフィックス ※1- 5 望月太郎    1999年度渡辺研究室修士論文 「視覚障害者と音空間」  - パーティクルオブジェクトモデル を用いた音の可視化シミュレー ション-   

の手法として開発された「パーティクル・オブジェクト」とい う技術を用いて、設定した音源から多数の音粒子を発生させ、 音線法により任意の時間における音粒子の位置を解析して、3 Dにより可視化し、解析した形状内の過渡的なエネルギーの偏 在を計算した音粒子の密度により推定できる。音場の均一性や 反射音の影響を立体的に捉えるのに優れている。 「視覚障害者と 音空間」 (※1- 5、図1- 7)では、パーティクルオブジェクトを

図1- 7    パーティクルオブジェクトモデル

用いて、視覚障害者が聴取によって認知する空間状態を可視化 している。

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4. インパルス応答  インパルス応答とは、あるシステムに衝撃(インパルス)を

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与えるとどのような反応が発生するかを現わすものである。 音 を与えた条件下でどのような応答(レスポンス)が得られるの を分析することで、 空間の音響特性を時系列的に分析すること ができる。

□ウィグナー分布  伝播周波数特性が過渡状態において時々刻々変動する状況 は、インパルス応答の信号処理によりウィグナー分布として表 すことができる。図1- 8はその一例で、反射音の周波数成分の 時系列としての変化がわかり、 聴覚との対応を研究することに より室内音響の評価にも利用できる。

図1- 8 ウィグナー分布(ウィーン・ムジークフェライン大ホール;山崎芳男)

4. 音源(音定位・聴覚、スピーカー特性) □「はりねずみ」(指向拡散度を表す可視化手法)(※1- 6) ※1- 6 E.G. Richardson & E.Meyer ed 「Technical Aspect pf Sound     , volⅢ」  

 受音点に横方向のみでなく、 各方向からどのような音が入射 するかを見るため、 単一指向性マイクロホンを各方向に回転し て測定し、 その入射エネルギーに比例した長さをもって立体的 に表した図である。 音線法が音の出力点である音源から線を発 射しているのとは、逆の手法を用いている。

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※1- 7 山崎芳男(早稲田大学)ら 図1- 9 指向拡散度を表す可視化手法「はりねずみ」

□近接四点法(※1- 7)  原点及び、 直交3軸上数センチの距離に取り付けた近接四点 マイクを受音点に置き、 音源からのDC- Pulse(直流パルスの特 殊波形)により4点のインパルス応答を測定し、相互の信号処 理を行って到来音の方向、強さ、見かけの虚音源位置を算出す る方法。どの方向から、どんな強さの反射音がどのような時系 列で到来しているかを把握することができる。 図1- 10 近接四点法    (ウィーン・ムジークフェライン     大ホール;山崎芳男)

5.「音カメラ」(※1- 8、図1- 11、12)

※1- 8 山下恭弘(信州大学)ら    「音情報と画像を組み込んだ音源探査 システムの開発」   日本建築学会学術講演梗概集2001

 2000年6月に信州大学と中部電力、熊谷組で共同開発され た「音の発生源を特定し、視覚的に表示する装置」は、音源の 位置・大きさ・高低といった情報を特定し、また、同時に撮影 されるデジタルカメラ画像上に音源が表示されるため、 画像上 の物体のどこの部分からどのような音が出ているのかが視覚的 にわかる。この装置により、従来の騒音計では判別が不可能で あった複数の音源を個々に適切な評価をすることが出来るよう になった。この研究では、従来、音の物理的データという観点 があくまで「音単独」に関するものであったのに対し、あくま で視覚へのフィードバックを考慮しているという点で、 評価で きるものである。これにより、音源情報がどこから出ているの かという情報源まで特定することが可能になったものの、 実際 の場合には3−1で述べる音の諸現象などにより、 人間が把握 している音であるかどうかは別の問題であり、 これにより視覚 が音に与える影響を評価することはできない。 本研究で提案さ れる「共感覚可視化評価手法」と併用することで、音の心理的 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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な側面・物理的な側面の双方から分析することが可能であると 思われる。

第 一 章   序 論

図1- 11(上)音カメラ画像 図1- 12(下)音カメラシステム構成図

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  ※1- 9   カナダの作曲家マリー・シェーファー

6. サウンドスケープにおける音の可視化  サウンドスケープの分野においては、 調査や実験で得られた

第 一 章   序 論

いわゆる「Sound Scape」を視覚的に表記する新たな方法を 総称して「ソノグラフィー」と呼んでいる。また、表現手法の 開発において、従来の音の表記方法が、音楽や音響工学などの 専門性を廃し、より一般的な表記法にすることに心がけてい る。そのため、物理的に正確な表記でないものも多いが、人間 にとっての空間の在り方がより明示的に表されている。  サウンドスケープによる音の可視化を大きく分けると、

 スコア・テリトリー・音の状態・音と時間・音の変化

というように分けることが出来る。

図1- 13  9時の大砲及び聖ロザリー・カテドラル の鐘の鳴らし方 Schefer, Murrey ; 「The Vancouver Soundscape」,1964

・スコア(図1- 13、14)  サウンドスケープはそもそも作曲家(※1- 9)によって、 「空 間に存在する音の発見による音楽の拡張」 を目指したことによ り提唱された。そのため、彼らは、従来の五線譜には記譜でき ない新しい表記法を必要とし、演奏者の心理・感傷に踏み込ん だ表記がされたり、スコアそのものも芸術的表現と鳴ってい る。これらは、あくまで「音」についての表記であり、必ずし も空間が結びついていないが、 音を定量的に表現する手段とし て、聴覚の可視化という観点では参考にすることが出来る。

図1- 14  Divan I Shams I Tabrizs Schefer, Murrey ; 「Divan I Shams I Tabrizs」,1977

・テリトリー (図1- 15、16)  都市空間内で人が聴取している音に関する調査結果を、 地図 にプロットしていくと空間内で聴取される空間の領域が表され る。これらは、物理的特性による音の可視化で行われるような 音の到達状況による領域だけではなく、 それぞれの地域に固有 の音を人々が認識しているといった心理的な領域を示している

図1- 15  聖ロザリー・カテドラルの鐘の可聴範囲 Vancouver:By the World Soundscape Project w ith the support of British Coumbia

ものである。ここには、 「ある特定の音を聴いたことがある」と いった「記憶」として扱い、定量化することで図化している。 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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騒音計を用いて、物理的な定量化をめざしたものもあるが、こ れらに関しても環境騒音的手法でなく、 部分的な特性を全体に

第 一 章   序 論

結びつけるという傾向がみられる。このような可視化手法は、 本研究の目指す、知覚量という心理的な指標を定量化し、計画 に結びつけるといった手法につながるものである。 図1- 16  スタンレーパークのイソベルマップ              (等音圧地図)   The Five Villag e Soundscapes, Vancouver:A.R.C Publication,1977

・音の状態(図1- 17)  建築計画の際に地域の音の状態を把握することで、 視覚的な 部分だけでなく音の状態も可視化した手法である。 このような 手法により、音の状態も考慮した計画を行うことができる。

・音と時間(図1- 18)  音の持つ空間性が視覚的空間構成と異なる点は、 時間という 概念が非常に重要な要素となっている点である。これは、空間 図1- 17  マイケル・サウスワースのイベントマッ プ   The Five Villag e Soundscapes, Vancouver:A.R.C Publication,1977

計画の上でも大変重要な点であり、 騒音問題等が計画段階では 予測できなかったものが、 時間変化により問題点になるという 事例からも必要な概念である。また、人間の行動が連続的に移 動する以上、音の変化も連続的に知覚され、このような要素も 可視化すべき要素であることが伺える。

・音の変化(図1- 19)  都市空間の変化によって、 音がどの様に変化するのかを把握 図1- 18  サウンドスケープの日周期(ヴァンクー バー郊外)   The Five Villag e Soundscapes, Vancouver:A.R.C Publication,1977

図1- 19  ヴァンクーヴァーの鋪装路の音   The Five Villag e Soundscapes, Vancouver:A.R.C Publication,1977

する事が都市計画の評価に利用できると思われる。基調音(※ 1- 10)という都市音の考え方に沿ったものである。

※1- 10 基調音    意識的に聴かれる必要はないが見逃されない音。存在する時点では、意識されていなかったが、 音が消えた時点で、その存在が意識されるような事例のように、都市には固有の音が存在する。

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1- 3- 2 視覚と聴覚の認知機構 1. 視覚の認知機構

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 我々が物体を視覚的に認知するとき、外界の視覚情報は、次 のような過程を経て我々の脳に認識され、 理解されることがわ かっている。

 視覚刺激→網膜への投影→感覚→知覚(明るさ、動き・・・) →特徴抽出→(要素情報統合)→物体認識→(関係性)→概念 形成→(脳内世界への対応付け)→(関係性の了解:理解1) →(情景分析)→(価値の重み付けのある世界への位置付け: 理解2)→情景理解

2. 空間認知メカニズム (1)認知地図と空間認知の研究 ※1- 11   Tolman,E:   Cog nitive Maps in Rats and Man, (Pyscholog ical Review ,55,pp189208.1948)

 空間認知に関する研究は、 心理学の分野では古くから行われ ているが、 空間知識の獲得と利用に関する体系的な研究はトー ルマン(Tolman.E.)のネズミをもちいた迷路実験が有名であ る。 (※1- 11)トールマンは、空間情報が行動の系列として記 憶されているものでなく、 内的な固定座標系にマッピングされ た地図のような知識として獲得されると考え、 そのような空間 知識を認知地図(図1- 20) (CognitiveMap)と呼んだ。これら を利用して、 建築計画分野でも多くの心理的側面を抽出する研 究として行われてきている。

図1- 20 認知地図の例 西應浩司・材野博司 et..al; 「都市空間構造の認知と行動に関する研 究 ―認知地図と視覚行動の分析―」 日本建築学会学術講演梗概集 1999

 定量的な空間認知モデルの構築を行うためには、 人間の空間 認知の定量的な評価が不可欠である。しかし、実際の空間で行 うことは困難であり、CGを用いた実験システムを利用するこ とが多い。 (2)Stevensのべき法則  一般に重さ、明るさ、音の大きさなど量的判断が可能な感覚 に関して、 刺激の物理量と知覚される感覚量の間にべき乗の関 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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係が成り立つとされている。これは、Stevensのべき法則と呼 ばれており、Weber- Fecherの対数則と並んで、心理物理学の

第 一 章   序 論

基本法則のひとつにあげられている。Stevensは、被験者に直 接感覚量を尋ねるマグニチュード推定法( M a g n i t u d e Estimation���と呼ばれる手続きを提唱した。例えば、最初に 基準となる大きさの円を見せる。これを例えば10としたとき、 次に見せるいろいろな大きさの円が、 基準の円に比べてそれぞ れいくらと感じるかを数値で報告させる。例えば、大きい場合 は、25や100という値になり、小さい場合は小数、あるいは 分数で答える。この際、頭の中で計算せずに感覚的に表現す る。  このマグニチュード推定法を用いて、Stevensは刺激強度と 感覚量がべき関数になることを見出した。 すなわち、

   ψ(感覚量) = kS(刺激強度)n

が成り立つ。音の大きさなど外界からくる刺激に関しては、指 数n< 1となる。刺激が弱い間は、わずか変化しただけで、かな り変化したように感じるが、刺激そのものがつよくなると、相 当変化しても、 それほど増加したようには感じないということ がわかる。図1- 21に、nの値「様相特性指数」 (Stevens,1961) を記す。

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図1- 21 様相特性指数(Stevens,1961)

(3)Weber- Fechnerの対数則  物理刺激の強度感覚の大きさは単純な比例関係ではない。 日 常経験でも、暗闇の中でロウソクに点火すると、とても明るく 感じるが、 昼間の明るい部屋でロウソクを灯けても明るくなっ たという感じはしない。ウェーバー(Weber,E.H.)は、弁別閾 は変化の絶対量だけでなく、 原刺激の量にも関係する事を見い だした。原刺激量をI,弁別閾(jnd)をΔIとすると次のように表 現される。

 ΔI/ I=k 図1- 22 Weber- Fechnerの対数則

 ここで、kの値はウェーバー比と呼ばれているが感覚によっ て異なる。フェヒナー(Fechner)はこれを発展させ、感覚量 は刺激強度の対数に比例するとした。すなわち、感覚量をE都 すると、

 E=klog I

が成り立つ。これをフェヒナーの法則という。

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2. 聴覚知覚・認知過程のモデル

第 一 章   序 論

 人間が音声を知覚・認知する場合、ボトムアップ処理では、 まず聴覚器官による音響分析に始まり、 その結果が末梢神経系 を経て、大脳中枢に伝えられる過程において、時間的・周波数 的なそれぞれの音響特徴が抽出される。通常、音響的特徴が明 確でないものが多く、ボトムアップ処理とともに、同時にトッ プダウン処理が必要になる。トップダウン処理では、通常の音 声知覚の際の言語体系だけではなく、経験的に得られた常識 や、その場の状況から判断された知識が利用される。一般に トップダウン処理はきわめて強力であり、 ボトムアップ処理の 不完全な部分を補うものではなく、 あらゆる知識を総動員させ ることで、 入力音声としてある特定の音が存在するに違いない という期待をも作り出してしまうこともある。さらに、処理結 果がこの期待通りのものになるように、 処理過程を導いてしま う能動的な処理である。 「空耳」などもこれに依存するもので あり、また、視覚的な影響により、音が「聞こえる気がする」 という作用(その逆も同様)も、このトップダウン処理による ものである。

3. 聴覚系の研究

 聴覚系の研究では、 従来極めて限定された周囲環境を設定し てきた。実験室では無音かつ一定状態。音自体も変化しない定 常音が求められてきた。これは、聴覚系の研究のほとんどが、 音声知覚や音響知覚など、人間の心理的、生理的なものを追求 した研究であったため、他の要素を廃することで、認知過程や 認知機構などを分析する研究であったからであると思われる。 しかしながら、 実験室や特定のオフィス環境に固定した環境設 定は現象そのものを特殊化してしまい、 周囲の環境音やこれを 形成する音環境の柔軟性を大きく拡大する必要がある。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

4. 視覚と聴覚の協調認知効果(マルチモダリティ効果)

第 一 章   序 論

 音韻の知覚に聴覚以外に視覚情報が関与することが実験で示 されている。 このようなマルチモダリティ間の交互作用説明す るためには、聴覚系の研究で多くなされてきた、音響レベル、 音素レベル、単語レベル、文レベルからなる階層構造を仮定し て諸階層間の相互活性化(interactive activation)を導入する ※1- 12 McGurk効果の実験    選択的順応のパラダイムを 用いて調べた結果では順応刺 激が< 聴覚/ de/ + 視覚/ g e/ > ( 知覚的にはde) の場合に、 聴覚的に/ de/ を提示したと きに見られた順応効果は観察 されず、聴覚的に/ g e/ を提 示したときと同じ効果が観察 された。

ことは魅力的ではあるが、 前述した音声知覚に対する視覚情報 の影響を調べることを目的とした「McGurk効果」の実験(※ 1- 12)ではそれを否定するものである。

□聴覚情報が視覚情報に与える影響 1. 聴覚が視覚を変える効果

※1- 13  下条信輔、Christian Scheir他:   「知覚モダリティを超えて:視 知覚における聴覚の効果」  日本音響学会誌no58,2001

 カリフォルニア工科大学の下條信輔らは、 聴覚に与えられた 情報が視覚の知覚内容を変えるという例を相次いで3つ報告し た。(※1- 13) (1)一つ目の現象(時間分解能)  凝視点の上下に2つの光点を提示し、 どてらが先に現れたか を観察者に判断させる。このとき、一つ目の光点の直前と二つ 目の光点の直後とにそれぞれ短い音を提示すると、 音がないと きに比べて時間分解能が向上する。逆に二つ提示すると、時間 分解能が低下する。一つ目の音と光点、二つ目の音と光点が、 それぞれひとまとまりとして処理されたためにこのような現象 が生じた可能性がある。 (2)二つ目の現象(見え方そのものの変化)(図1- 23)  黒い背景に、白い円盤がフラッシュ提示される。それに、短 い音が伴う。観察者は、何回フラッシュが見えたかを報告す る。すると観察者は、単一のフラッシュに二つ以上のビープ音 が伴うときはいつも、 複数のフラッシュが見えると謝って報告 したのである。ここで興味深いのは、フラッシュが光っている

図1- 23 フラッシュ遅れ錯視

時間は視覚系の時間分解能に比べて非常に短い (この実験では Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

13ms)ので、その間に物理的に2回フラッシュが光っても、 一つに融合して見えてしまうということだ。 ごく短時間内での

第 一 章   序 論

視聴覚の時間分解能を越える視知覚が生じたと考えられる。

(3)三つ目の現象(聴覚情報が解消する視覚情報の多義性)  二つの光点が互いに近づくように動いていくと、 通常は交差 しているように知覚される。この場合、視覚情報は、交差か反 発かという解釈の多義性があるが、 衝突音に相当する聴覚情報 が優位になるわけである。 音を鳴らすタイミングが光点の出く わす瞬間からずれると、音の効果は減少する。これは光点の接 近と音とが衝突という一つの事象に由来する可能性が低下する ことに対応している。

 これらの現象から、 聴覚情報が視覚の知覚内容を変えている ということがわかる。 視覚に影響を与える聴覚の効果について の共通点は「タイミング」であり、つまり時間知覚に関しては 視覚よりも聴覚が優位であることを示している。空間なら視 覚、時間なら聴覚というように、より確かな情報をもたらすモ ダリティがモダリティ間の情報統合において優先されるという ことを、この研究では実証している。  以上のように、1 秒以下の範囲での事象の時間順序の知覚 ※1- 14   「InterComunication」NTT出版   no.36 90- 97,2001

は、物理的な時間順序そのもので決まるわけでも、脳の特定部 位に情報が到達したり処理が完了したりしたタイミングで決ま るわけでもない。脳が、さまざまなモダリティからの時間的に 相前後する情報を統合的に勘案して、 外界の事象を解釈した結 果形成されるのである。(※1- 14)

2. 聴覚が景観の印象に及ぼす効果  音は聴覚的な印象を生ずるだけでなく、 視覚と聴覚の相互作 用により、景観の印象にも影響を及ぼす。景観を快く演出して くれる音もあれば、すばらしい景観を台なしにする音もある。 聴覚情報が景観の印象に及ぼす影響は、Anderson らの研究 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究   ※1- 15    Anderson, L. M., Mulligan, B. E ., Goodm an, L . S ., and Reg en, H. R.,   「E FFE CTS OF S OU NDS ON PERFORMANCES FOR OU TDOOR SETTINGS,」      (E NV IRONME NT AND B E HAVIOR, 15, 539- 566, 1983.)

(※1- 15)でも、指摘されている。草木に覆われた敷地、公園、 住宅地のような所では、自然の音は景観の質を高め、機械音は

第 一 章   序 論

質を損なう。これに対して、開発された景観のもとでは、いず れの音も、その効果があいまいになる。  岩宮眞一郎らは、 都市公園などでの公共空間に音環境デザイ ンを行ったときの空間の印象に与える効果(※1- 16)、カー・

  ※1- 16   佐藤友紀、岩宮眞一郎   「景観の印象に及ぼす音の効果− 映像によるシミュレーション実験 −」   (日本騒音制御工学会研究発表会 講演論文集、185- 188、2000)   ※1- 17   照屋知一、岩宮眞一郎   「音楽再生が自動車内空間の印象 に及ぼす影響−シミュレーション による印象評価実験−」   (日本音響学会講演論文集(春 期)、597- 598、2000)   ※1- 18   岩宮眞一郎、牧野剛巳、前田耕造   「スーパーマーケットにおけるB GMが売場空間の印象に与える影 響−ビデオによるシミュレーショ ン実験」サウンドスケープ   (日本サウンドスケープ協会誌、 1巻、107- 112、1999)

オーディオによる音楽聴取が車外の景観の印象に及ぼす影響 (※1- 17)、スーパーマーケットにおけるBGMが売場空間の 印象に与える効果(※1- 18)等を、映像によるシミュレーショ ン実験で検討している。これらの研究を通して、音が空間の印 象に系統的な影響を与えることを示している。その影響は、主 として、 「共鳴現象」とよばれる視覚と聴覚の相互作用による ものである。 「共鳴現象」とは、音楽の持つ聴覚的印象が、同 一の視覚的印象をもたらす現象のことである。具体的には、 「明るい」感じの音が景観の印象を「明るく」するような音の 効果を指す。さらに、音と景観の調和度と音と景観の相互作用 の間に密接な関係があることも、示されている。 

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

□視覚情報が聴覚に与える影響  

第 一 章   序 論

 人間は、知覚における視覚認知の割合が83.0%に対し、聴覚 認知の割合は11.0% と言われており、ここからもわかるとお り、視覚優位の動物であるといわれる事が多い。しかし、これ は、生理学的な認知の割合であり、実際にはそれぞれの感覚が 総合的に作用しあいながら、互いの知覚を形成している。前述 の「McGurk効果」 (※1- 12)効果などは、その代表例であり、 腹話術の人形の口から声が聞こえるという腹話術効果なども、 視覚情報が聴覚に与える影響である。

図1- 24 視覚の変化により            混乱する音知覚

1. 音源定位がうける視覚情報について  音源定位が視覚的な手がかりから影響を受けることはよく知 られているが、この現象が生じるためには視覚情報と聴覚情報 が時間的、空間的、意味的にある程度近いことが必要とされる。 例えば、水平方向に運動する視覚刺激を提示すると、静止した 音源からの刺激音の音像は視覚刺激とともに移動しているよう

※1- 19 北川智利   (東京都立大学 人文科学研究科) 「視覚と聴覚の相互作用について」 (「人間工学」第35巻)

に知覚する。東京都立大学の北川(※1- 19)は、このような影 響がどのようなメカニズムで両者の情報が統合されているのか を明らかにした。  視覚刺激への順応がラウドネス変化残効にどのように影響を 与えているかを、聴覚:音圧レベルの増大・減少、視覚:サイ ズの拡大・縮小という順応刺激の下、 「聴覚のみ・視覚と聴覚で 変化方向が同じ・視覚と聴覚で変化方向が反対・視覚のみ」と いう条件で調べたところ、視覚刺激のみへ順応した場合にも残 効が生じた。聴覚が視覚に順応すると、音圧レベルが視覚の変 化に比例するということがわかった。変化方向が視覚と聴覚で 一致した場合には聴覚の残効量は加算的に増加した。また、変 化方向が反対の場合には視覚刺激の影響はなくなった。また、 両眼網膜像差の変化を利用した奥行き方向に変化する刺激を用 いた場合においても、同様の結果が得られ、視覚の奥行き方向 の運動が聴覚系の音の大きさの知覚に影響が与えることがわ Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

かった。  これらから、 空間情報における視覚情報の方向と聴覚情報の

第 一 章   序 論

方向が一致した場合、聴覚情報はその影響を受けることがわ かった。これから、景観的な音源の変化が移動と聴覚の移動が 一致することがわかった。

□視覚と聴覚のモーダル間現象(Intermodal Phenomenon) 1. 視覚媒体を用いた音と感性の相関測定 ※1- 20  神保有紀・福田忠彦(慶應義塾大学)   「視覚媒体を用いた音と感性の相��� 測定」        (「人間工学」第35巻)

 福田忠彦ら(※1- 20)は、音とその音が与えるイメージ(感 性)の関係を明らかにすることを目的とし、感性との対応指標 が既に存在する色を媒体とした実験により、 音と感性の関係を 定量的に位置付けた。ヘッドフォンにより再生されるハーモ ニーにマッチすると感じられる順に色片を並べる実験を行っ た。正規化順位法により分析し、それぞれの調性により分析す ると、長調は黄色と黄緑、短調は紫と青がその調のイメージと 一致することがわかった。また、それぞれの色に対応する感性 語に置き換えさらに評価実験を行った結果、長調には「明る さ・暖かさ・澄んだ」等の感性語、短調には「哀れな・寂しさ・ 落ち着き」などの感性語と対応することがわかった。また、色 の尺度地と調性の関係を近似式であらわした。

   以上の研究結果から、 音楽的な音が与える感性と色が与える 感性に相関があることがわかる。これは、 「色調」という言葉 であらわされることがある。「色調」(しきちょう:colored hearing)は、共感覚の代表的なものである。絶対音感を持つ 被験者で調査したところ、例えば、 「ラは黄色」などの傾向が でることがわかっている。1931 年にカール・ジーツ(K ari Ziets)が行った色と音の関係についての実験成果に基づく説に よれば、ドは赤を、レは菫色、ミは黄金色、ファはピンク、ソ は空色、ラは黄色、シは銅色、そしてオクターブの異なる音階 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

も同じ色調になっている。これに対し、例えば「黄色い声」な どは、一般的な体験と言え、本研究で用いる空間内の自然音源

第 一 章   序 論

と色の関係などはこのモーダル間現象に依存していると思われ る。海の波の音から青を想起し、たき火の音から赤色を想起す るのは、音から音源を想起し、その音源の色を想起することか ら厳密にはこの「色調」とは異なるものであると言える。本研 究では、空間内の聴覚情報を扱うため、音と色の関係は「モー ダル間現象」の一つであると定義できる。

・映像の動きと音楽のリズムの構造的関係が両者の調和感と情 緒的印象に及ぼす影響  岩宮眞一郎ら(※1- 21)は、視聴覚素材の調和に対して音 ※1- 21   菅野禎盛・岩宮眞一郎           (九州芸術工科大)   「映像の動きと音楽のリズムの構造 的関係が両者の調和感と情緒的印象 に及ぼす影響」    (日本音響学会平成11年度秋期研  究発表会講演論文集、559- 560、  1999)

楽のリズムと映像の動きの同期、 音楽のテンポと映像の速さの 対応、などの構造的要因が影響を及ぼすことが示している。音 楽と映像の同期やテンポの速さの対応などの構造的要因が視聴 覚素材の調和感と情緒的印象に及ぼす影響を、 特に同期の効果 に焦点を当てて検討した。三次元CGによる単純な動画像を視 覚的なアクセントをつけるためカットチェンジをつけ、 動画像 の動き方と速さ、カット長を要因として、8つの動画像を用意 した。音色が一拍目と二拍目で異なるリズムパターンをMIDI 音源で作成し、 テンポのみことなる2つのリズムパターンを作 成し、8つの動画像と2つのリズムパターンを組み合わせ、同 期・位相ずれ・非同期の三通り、計48パターンの視聴覚素材 を作成し、実験を行った。被験者の評定傾向の違いを検討する ため、被験者を変量とした主成分分析を行い、二つのグループ に分け、 「視聴覚素材の統合感に対する同期の効果」を調査し た。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 これらから、視覚と聴覚の相互作用は、

第 一 章   序 論

1.視覚が聴覚に与える影響 2.聴覚が視覚に与える影響 3.視覚と聴覚が強調的にひとつの感性を作り出す作用

の3つに分けられることがわかる。本研究では、それらの全て を網羅することは出来ないが、 空間内でも同様の現象が起こっ ていることは明らかである。また、同じく岩宮眞一郎氏の研究 から、明らかなとおり、空間体験の印象が強調されるのは、視 覚と聴覚が明瞭に重なり合っているときであり、これは、現 在、視覚優先で軽視されている、建築設計分野における音の存 在が強調されるべき項目であると思われる。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

第二章 視聴覚知覚による評価手法 2- 1 計量心理学的評価法 2- 1- 1 代表的な計量心理学的測定手法        方法的分類

測定法

目的・対象

評価尺度を伴わない方法 観測的方法

アイマーク・レコーダー ビデオカメラ

注視点行動

想起法

情報量、イメージ分析

視覚記憶測定法

再生法(マップ法等) 再認法 評価尺度を伴う方法

分類評価尺度 序数評価尺度

距離評価尺度

選択法 評定尺度法

分類、位置づけ 分類、位置づけ

品等法(順位法)

、重み付け

一対比較法 分割法

重み付け

系統カテゴリー法 比例評価尺度

等現間隔法 マグニチュード推定法

刺激量と心理量の対応

多元的評価尺度

百分率評定法倍数法 SD法

意味、情緒

調整法

閾値、等価値等定数の決定

観測的方法あるいは評定尺度による方法

恒常法 極限法 ※2- 1 「土木工学大系 13 景観論」 (土木工学大系編集委員会編 290- 321)

図2- 1 代表的な計量心理学的測定方法の分類(※2- 1)

2- 1- 2 計量心理学的手法を用いた調査手法例  景観の評価において、計量心理学手法を用いた場合、視覚に 関する景観評価だけではなく、聴覚やその他の感覚における心 理評価手法としても同様の手法を用いることが多い。一般に心 理評価をする場合、心理的影響に起因する対象となる際の媒介 となる感覚がどれであるかというところで、視覚、聴覚、その 他の感覚という部分で分けられるが、評価法そのものはそれ程 代わりがないからである。 2- 1- 2- 1. 評価尺度を伴わない方法 a. 観測的方法  □ビデオカメラを利用した測定  ビデオカメラレコーダーを用いて、注視点の行動や視覚的興 味対象の分布状況等の視覚に関する情報を取得する方法。観測 ※2- 2    眼球の動きから実際にどこを注視 しているかを正確に把握する装置

的方法としては、このほかにもアイマークレコーダー(※2- 2) を用いる方法や写真撮影を用いる方法等が挙げられる。 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

解析内容例としては、以下の方法が挙げられる。

・視線の方向: 一定時間内にどの方向(上下、左右)をどの程度の時間見て いたか。自然の方向が不定であれば、景観の多様性が高いこ

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

とが考えられる。 図2- 1 CCDカメラの取り付け例

・注視対象: 特定の興味対象として注視される要素の分布位置、種類、内 容、注視時間等。一般的に注視時間が長ければ興味対象とし ての評価が高いと考えられる。 ・画像構成: 静止画をコンピュータに取り込み、画像処理ソフトを用いて 空間構成(緑視率、空域量、水域の量等)を数値的に解析。他 の画像との空間構成の定量的比較が可能となる。

b.記憶測定法 □想起法 ※2- 3 事物の名称や写真等

 被験者の自由な意見を聞いたり、ある対象(※2- 3)によっ て連想される事物や対象を聞いたりする方法。調査は、アン ケートによる方法とヒアリングによる方法が考えられる。例え ば、出された要素を複数のカテゴリーに分類(景観分類)し、 要素数や平均想起率の分析などを行う。こうした結果は、地域 景観を特徴づける要素の把握、各要素の重要性の評価等に活用 可能である。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

2. 評価尺度を伴う方法 a. 序数評価尺度 □一対比較法  n個の対象を二つずつの組み合わせにし、 その対ごとに上位 判定を行わせ、その判定を統計処理によって順位付けする方 法。判定が二者択一であるため、判定に狂いが生じにくく、判

対象森林 比較森林

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

ミズナラ林 アカマツ林 スギ林

ミズナラ林*

0.5

0.41

0.25

アカマツ林*

0.59

0.5

0.28

スギ林*

0.75

0.72

0.5

好ましさの評価点**

100

86

22

* 数値は比較森林より好まれる確率を表す。 **最も好まれるものを100、好まれないもの を0とする

表2- 1 一対比較法による森林景観比     較の例      ※2- 4    使用機材、撮影時刻、季節、天 候、光線の状況、その他調査の趣 旨に直接関係しない被写体の状況 等

定順位付けや距離尺度を構成するデータとしての信頼性が高 い。データは主に距離尺度を導くのに用いられる。この方法で 景観の評価を行う場合は、 一般的に写真を用いた方法が用いら れることが多いが、この際、撮影条件(※2- 4)を可能な限り 統一させることが重要となる。

b.比例評価尺度 □マグニチュード推定法  ある刺激の持つ刺激量を直接推定する方法である。 得られる 尺度は比例尺度とされる。まず一つの標準刺激を設定し、その 刺激量を100とする。次に比較刺激を与え、標準刺激に対する 刺激量を推定させ、 この平均を感覚的刺激量として各刺激を位 置づける間隔尺度を構成する。

c.多元的評価尺度 □SD法 ※2- 5 順序尺度上   質問の回答内容の順序関係を示すも の

 形容詞対の順序尺度上(※2- 5)に心理反応を反映させる方 法である。 SD法は色彩の心理効果や空間体験で生じる心理反 応などを的確に捉える方法として広く応用されている。 SD法

※2- 6 形容詞の対   両極端の形容詞を5ないし7段階程 度に区分した尺度、すなわち評定尺 度、形容詞対は任意に設定する

では、 調査の対象とする空間において連想されるような形容詞 の対(※2- 6)を配置した図1の様な調査票を用いる。評定尺 度は普遍的な尺度ではないため、対象とする空間とそれ以外、 あるいは対象とする空間と類似した他の空間でのデータと比較 する必要がある。また、統計的処理を行うためには最低10人 以上の調査対象者のデータを収集する必要がある。

※2- 7 対象空間    あるいは対象とする空間を的確に 捉えた画像でもよい。

 調査では、対象とする空間において(※2- 7)被験者にすべ

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

ての評定尺度上のいずれかの位置に○印を付けさせる。なお、 不適当な箇所がひとつでもあればその回答全体が無効となる点 に留意が必要である。このため、調査票はその場で回収し、記 入漏れ等がないことを確認することが望ましい。 調査票のデー タは、各評定尺度について「悪い評価∼よい評価」に「1∼5 図2- 2 SD法調査表の例

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

(または7)」の得点を与えた上で分析する。分析は統計手法の ひとつである「因子分析」を用い、因子負荷量と因子軸を求め る。この処理はソフトで行うことが可能である。最後に因子分 析の結果現れた因子軸の意味について、 因子軸を構成する評定 尺度から考察する。  SD法は、形容詞対を用いる手法として、心理評価手法とし て、一般的に定着している。しかし、形容詞対を選択する基準

図2- 3 心理空間への平均因子得点 (高校生グループの心理空間とその中に おける森林AからDの位置)

というものが曖昧であり、 調査対象者の傾向によってはかなり 偏ってしまうこと。さらに、3- 2- 1で述べるように、言語的な 意味に置き換えるために、厳密な結果が得にくい。多元的な評 価尺度を一度に捉えるということは困難であり、 SD法から得 られた結果というものは、 結果的にそうであると必ずしも言い 切れないという点で、 本研究ではSD法を用いない手法を考察 する。

3. 観測的方法あるいは評定尺度による方法 a. 極限法  ある刺激を段階的に変化(上昇/下降)させ、所定の反応を 被験者に行わせる方法である。 特定の価値基準にしたがった反 応を探り、 判断が切り替わる点を感覚の閾値として決定するこ とができる。

2- 2  視知覚に関する景観評価  2- 1- 1、2- 1- 2の様な評価法は、視覚に限るものではないと いうことは前述の通りである。これを視覚に特化するために は、 「見る」という基準の元での、心理指標もしくは物理指標 が必要となる。以下に、視覚の物理指標について述べるものと

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

する。

2- 2- 1 視野  人間が特定の対象を否検索的に眺める場合(例:展望台から 景色を眺める場合)の視野は、既往の研究の結果によって以下 の図2- 4に示す「60°コーン説」が定説となっている。なお、 図2- 4 視野60°コーン説 

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

35mmフィルム、28∼35mmレンズを用いて撮影した写真が この視野に近い。なお、視野は、視点の移動速度の増加に伴い 狭くなる特性がある(図2- 5)ことから、例えば走行中の車両 からのシークエンス景観を取り扱う際等には留意が必要である

2- 2- 2 視程 図2- 5 動視野と注視野 

 視対象への視距離が大きい場合、大気の混濁や天���、光線等 が制約条件となり、対象が見えなくなる。このような対象の見 え方を表す概念が「視程」である。視程は各地域の気候条件、 さらには同一の場所であってもその時々の季節や時刻、 天候等 によって大きく変化するものであることから、 視対象がどのよ

図2- 6  視距離に応じた認知を規定とする要因の 変化 

うな条件下で眺められることが多いのかを把握することが重要 となる。

2- 2- 3 視距離  視距離によって構造物等の認知を規定する要素 (テクスチュ ア、色彩、形態等)は図2−6のとおり変化するとされる。ま た、視距離に応じた広葉樹の見え方の変化に着目した「近∼中 ∼遠景」の区分が試みられているが、これによれば、樹木のテ クスチュアが認識できる中景域は視距離3km以下であるとさ れている。

2- 2- 4 見込角  視点からの対象の見えの大きさを表す指標であり、 一般的に は視点から対象を見込む垂直視覚及び水平視覚を指標値として 図2- 7   見込角の概念 

用いる(図2- 7)。  対象の一辺(高さ、幅等)をS、対象までの視距離をdとす Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

ると、見込角sは下式で求められる。

S = s/d

S = 2tan −1 (s /2d) (度)

(ラジアン)

 人間の視力で対象をはっきりと識別できる見込角の大きさ

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

(熟視角)は、研究例によって解釈が異なるが、一般的には1 °∼2°が用いられている。

図2−6    入射角に応じた見え面積の変化

2- 2- 5 視線入射角  視線と面のなす角の大きさによって対象の面の見えの面積は 変化する。視線入射角(視線と面とのなす角)をθとすると、 θ=90°の時に見えの面積は最大となり、最も目につきやす いこととなる(図2−6)。

2- 2- 6 仰角・俯角 図2−7    仰角・俯角の概念

 仰角は対象物の上端と視点を結ぶ線と水平線のなす角度であ り、俯角は対象物の下端と視点を結ぶ線と水平線のなす角度で ある(図2−7)。 □仰角  仰角は、都市等における“囲み”の感覚を示す指標として旧 来から用いられている。 視点周囲の壁面への仰角に応じた感覚 の変化としては、図2−8が定説となっており、仰角14°が 囲みの感覚の閾値であるとされている。*1  また、仰角は人工物の出現による“圧迫感”の程度を把握す る指標としても頻繁に用いられている。

□俯角 図2−8    囲みの感覚と仰角度

 俯瞰景においては、俯角が目につき易さの重要な指標とな る。一般に俯角10°は俯瞰景における中心領域であるといわ れている。このため、構造物等が俯角10°近傍に出現した場 合、最も目につきやすいこととなる。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

2- 2- 7 色 彩  色彩は、色相、明度、彩度等で表される。色彩は視野内に存 ※2- 9 景観分野における代表的指標    ・2色の調和について、相互の明度 が大きいほど調和しやすく、彩度 差の調整のみでは調和が得られに くい。  ・無雪季の自然風景地において特に 視認性が高いのが「白色」、特に  低いのが「茶色」である。  ・ 「濃黄緑」、 「灰」、 「灰/暗茶」、 「明 茶/灰赤」が好ましい。複数の色 の組み合わせでは、対比色より同 系色の方が好まれる。

在する複数色の相互関係によって、調和・不調和が生じること となる。景観の分野における色彩の調和に関する研究は、施設 の色彩計画等において積極的に取り組まれている。また、景観 以外の分野でも様々な研究が行われており、 多くの知見が得ら

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

れている。※2- 9 に代表的な指標例を示す。

2- 2- 8 視野内の人工物占有率  眺望の中に人工物が存在する場合、 人工物による景観破壊の 程度は、視野に占める人工物の大きさ(割合)によっても規定 される。研究事例では、法面の視野(この場合35mmカメラ で35mm レンズを用いて撮影した写真)内の占有率が 0.021 %以下であればその存在が気にならなくなるとされる。また、 水平画角約40°の場合、建築物等の視野占有率の許容限界値 は、縦長では0.04%、横長では0.06%であるとされている。

2- 3 聴知覚における景観評価手法 2- 3- 1 計量心理指標との関係  前述の通り、2- 1- 2の計量心理学的な指標は、知覚的な音環 境を評価する場合にも同様の手法を取ることが多い。 しかしな がら、音環境というキーワードにおける評価というのは、1- 32で述べたように、その殆どが騒音評価や音響評価に分類され るもので、空間に存在する音を、景観要素として積極的に評価 するという手法を考えると、未だに少ないことは否めない。  心理評価手法に関しては、一対比較やME法などの定量的な データを取得することが聴覚心理においては困難であるため、 その殆どがSD法である。しかし、2- 1- 2で述べたように、S D法から得られたデータというのは、 曖昧さと被験者の経験的 な傾向によって大変偏りが見られるため、 正確なデータとして は不足している点が多いと筆者は考える。その為、本研究で は、一対比較やME法をモチーフとした定性的でない、定量的 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

なデータを得るための評価手法という点を念頭において、 その 開発を行った。

2- 3- 2 可視化による景観評価  聴覚は、視覚と異なり不可視の対象であるため、音は必ず、 可視化するということが求められる。これに関しては、1- 3- 2

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

で述べたような、 「物理的な音響特性の可視化」と「サウンド スケープにおける可視化」の二つに大きく分けられる。心理評 価手法という点では、 サウンドスケープがそれを担っていると も考えられるが、サウンドスケープにおける可視化の場合、評 価そのものに客観性が欠けており、 音楽から喚起された絵とい う芸術表現的な一面を持っているため、 評価者本人の主観性が 入っていることが多い。これでは、可視化という側面から考え ると、汎用性は極めて低く、特定の音場における特定の表現と いうところに留まらざるを得ない。音という対象が、音楽とい う芸術的側面と深く関わっていると考えると、 このような傾向 から切り離すことは大変困難であると思われるが、 工学的な心 理評価としての可視化手法が、求められているのも事実であ る。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

2- 3- 3 聴覚的シークエンスと時間性 ※2- 10 金川暢宏   「庭園空間における聴覚的シークエ ンスの記述法に関する研究」   (1999年度渡辺研究室卒業論文)

 筆者は、卒業論文で「聴覚的シークエンス」 (※2- 10)とい う可視化手法を提案した。1- 3- 2で述べたように、音の表現と して最も重要であるのは、その時間性である。時間的変遷と空

       右は、音線法反射音線図を三次元 にしたものを時系列により連続的 に並べたもの。左は、音の大きさを SD法で取ったものを時系列毎に 変化量としてとったもの。両側か ら圧迫されるほど音が大きいと言 うことになる。

間的表現を重ね合わせ、 さらにこれを客観的に空間を評価する 手法として用いる事で、 視覚系の景観表現に特化していたシー

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

クエンスという概念を聴覚系に持ち込むことに成功した。 以下 に可視化図の一例を挙げる。

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23 図2- 9 聴覚的シークエンスの記述および可視化(目白庭園)

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

2- 4   複数知覚(マルチモーダル)現象を考慮した景観評価手法  視聴覚の相互作用があるということは、1- 3- 1 で述べた McGurk 効果に代表されるように、既知の事実である。し かしながら、これらに特化した景観評価手法を行うという ことは、必要性があることは確認されているものの、複数の

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

知覚を扱うということによる情報量の多さから、景観評価 という点で行われた例は殆どない。この研究分野において ※2- 11 戸谷宗史   「空間における知覚の相互作用に関 する研究」   (2000年度渡辺研究室卒業論文)

は、1- 3- 2 で述べたような特定の条件に特化した実験室実 験によるものが殆どで、実際の景観評価や空間評価に置き 換えたものは殆どない。2000年度に当研究室では、新宿サ ザンテラスを対象空間として、その共感覚作用を明らかに するために可視化を行った。(※ 2- 11)音を評価の軸とし た、視覚に対する影響度を複数点でしらべ、SD法による評 価からその印象の変化を明らかにした。図2- 10に、一例を の可視化図を掲載する。  これらの可視化から、空間内においても、視覚情報による 聴知覚には大きな変化があることが分かった。これには、騒 音軽減効果のほか、空間の演出手法としても大変効果があ ると予想される。さらに、これらの研究分野は、視覚・聴覚 のような物理的指標が得られないため、定量的なデータを 導き出す手順が必要とされる。本研究では、空間における複 数知覚(マルチモーダル)現象を明らかにするだけでなく、 これらから、視覚聴覚の双方の物理的指標との関係を明ら かにし、定量的なデータとして扱える評価手法を提案する ことが必要であり、この研究分野に関してもより、多くの空 間で行い、汎用性を広げるべきであると筆者は考える。  

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

※ 2- ○     「空間における知覚の相互作用に     関する研究」       新宿サザンテラスのA地点からB 地点までの七カ所をランダムにと り、そこで採取した音を用いた「視 覚無し」の音評価実験と、現地に直 接被験者を動員する被験者実験を行 い五段階で音の印象の大きさについ て尋ねた。(SD法尺度)    図2- ○が視覚なしの状態の各箇 所の印象の強さを濃度で表したも の、図2- ○が視覚ありの状況であ る。二つを比較すると、空間構成が 複雑な地点では、音の印象が弱ま り、単純な値地点では、音の印象が 強まるという事が分かった。    また、図2- ○のように、展望では メッシュモデルを提案し、空間内の 共感覚現象解明のためも布石となっ た。

A

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

B

図2- 10 共感覚現象の可視化 (視覚情報が無いときの電車の音) (新宿サザンテラス)

A

B

図2- 11 共感覚現象の可視化 (視覚情報が無いときの電車の音) (新宿サザンテラス)

図2- ○ 共感覚可視化例 (メッシュ化)           (新宿サザンテラス)

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

2- 5 複数知覚(マルチモーダル)現象のある空間事例  実際に、様々な状況で、我々は複数知覚を利用していること は事実であるが、空間体験の要素として、この現象を意識の上 下に関わらず、 知覚することができる空間を認識する必要性が ある。ここで、複数に分類して、これらの空間事例をまとめる こととする。

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

□分類の仕方  空間を視知覚的に理解するのか、 空間を空間体験として総合 的に理解するのかという点と、 それぞれの空間理解の媒介手順 を分類の軸とする。以下に、媒介の要素を述べる。

・音 :音源発生が人間を媒介とするものと自然発生的なもの     に分けることが出来る。 ・視覚:空間を視覚的に理解すると言うこと。 ・空間:事象としての空間。厳密には、空間と音・視覚を分類 するのは誤りと言えるが、ここでは、総体としての空 間を表す。 ・人間 ・体験:空間そのものを体験するということ。

これらを用いて以下のように分類し、事例を挙げる。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

1. 音楽的理解による空間変化 (音(=空間)  → 人間 → 体験)  空間から発生する音を認識して、 人間の空間体験が変化する ということ。空間体験が変化するのであって、視覚的な変化を ねらったものではない。空間そのものの変化というよりは、内 的な変化が起こっている事例。 サウンドスケープによる音の音

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

楽的解釈による空間演出に傾向が見られる。

・サウンドスケープ(さいたま新都心ラフレさいたま): 自然現象としての風がアトリウムに設置されたパイプオルガン を奏でる。屋上庭園の風センサーに接続されており、リアルタ 図2- 12 サウンドスケープ         (ラフレさいたま)

イムで風速に合わせて響きが変化する。(図2- 12)

2. 空間認知補助のための演出        (空間 → 音 → 人間 → 視覚 → 空間)  空間から発生する音を通して、 人間が改めて空間を認知する ということ。特に、視覚的な変化が挙げられる。1と異なる点 は、空間を積極的に認知するということである。

・鶯張りの廊下(京都知恩院): 歩行の速度リズムを始め、歩き方が音に反映される。移動行為 と密接に導きながら空間状態および行動を理解する。(図2図2- 13 鶯張りの廊下         (京都知恩院)

13)

3. 音の物理的特性による空間変化                 (音  → 空間 → 人間)  空間を利用して、 音が人間に伝達される効果を変化させるも の。直接的に音を認知するのとは異なるため、複数知覚が起こ りやすい事例である。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

・スウィープエコー(東京国際フォーラム): 鳴き竜現象と同義。手をたたくなどすると、園とが天井と床に 反響し、 聞こえる際に低い音から高い音へと変化する独特の音 響効果。(図2- 14)

図2- 14 スウィープエコー         (東京国際フォーラム)

4. 音による視知覚の変化

第 二 章   視 聴 覚 可 視 化 に よ る 評 価 手 法

                (音  → 人間 ← 視覚)  音が視覚を変化させる。 複数知覚現象が起こっていると言え る状態である。

・視覚によるマスキング(明治神宮参道)  参道において、 樹木のすぐ裏手に並行する電車の音と発車メ ロディーの音が大木の視覚的な効果によって、 音の影響を軽減 している。(図2- 15)

図2- 15 視覚によるマスキング          (明治神宮参道)

  

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

第三章 音知覚可視化評価用インターフェース

3- 1 インターフェースの目的  我々が認識する「音」は視覚やその他の諸条件によって変化 する。この変化が、「どのように」、「何に」影響を受けて変化 するのかを分析するためには、実験が必要となる。この実験で

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

は、通常の空間内における「視覚の影響を受けた音」の他に、 「視覚の影響がない音」、 「視覚が実際の空間と異なる場合の音」 を分析することで、その影響を知る必要があり、この「視覚の 影響がない・・・」 、 「視覚が実際の空間と異なる・・・」とい う状況は、実際の空間内で体験することができないため、仮想 的に作り出す必要がある。本研究では、「音を視覚的に表現す る」ことを目的とした実験用インターフェースを作成し、これ を用いて共感覚現象を検証する評価法を提案する。

3- 2 音の表現の仕方 3- 2- 1 音の言語的表現  人間が「認知する音」を表現する手法は、 「高い・低い」 、 「き れいな・きたない」などの形容詞対を用いた方法、 「トントン」 「バンバン」などの擬音表現など、その殆どが言語的表現に変 化させたものである。音の研究の多くが、形容詞対を用いたS D法による分析によるのも、これに起因するものである。一般 的に用いられる、音の表現、つまり「それはどんな音か」とい う問いに対して、表現する言語的表現としては次のようなもの が考えられる。

□硬い・柔らかい・冷たい・暖かい音  「音が硬い」とは金属的な高音域が目立っている場合で「音 が柔らかい」とは逆にそれが控え目であることをいう。「音が 冷たい」とは冷水に浸かったような瑞々しい感覚であり、「音 が暖かい」とは陽の下にいるような若干、膨らみのある感覚を いう。硬くて冷たい、柔らかくて暖かい、硬くて暖かい、柔ら Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

かくて冷たい、などと組み合わせることで表現の幅が広がる。

□透明感・S/ N感・歪感・雑味  音の透明感は高いほど澄んだクリアな音ということになる。 S/ N感はシグナル(Signal)とノイズ(Noise)と割合で分母のノイズ(N) が低いほど全体として数値が高くなるからS/ N感は高いほど一般 的に音質は良好とされる。歪感は音の歪み具合でこれは低いほど

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

元の音に近い正確な音(原音忠実)ということになる。歪みが負に 目立つ場合は「雑味がある」などともいう。透明感とは違うが、 様々な音像がハッキリとクリアにきこえる音の場合は「音離れが 良い」などともいう。

□量感・力感  どちらも音の全体、もしくは低音域に使われることが多い。量 感が高いほど音の情報量が多い。つまりより解像度の高い「繊細 な音」が表現できる。また低音域の場合は密度が高く音が潰れな い。力感は文字通り音の力具合を表し、音圧や音量に始まり音の 芯や筋などがどれくらい力強いかを表現する。これが高いほど 「図太い音」になる。この二つの関係は乖離しているが相補的でも ある。しかし相殺するものではなく、また量感と力感のどちらが 欠けてもよい音とはいえないだろう。

□レンジ・スケール感・音場  レンジとは幅のことで、この場合は音の幅。再生周波数範囲が 広い場合に使う。レンジが広い(ワイドレンジ)、レンジが狭い(ナ ローレンジ)などという。ダイナミックレンジはシグナル(S)の最 小値と最大値の比率でありdB(デシベル)という単位で表す。S/ N 比にも依存する。ダイナミックレンジの値が大きいほどノイズが 減り必然的に音質は向上する。スケール感は音の空間的な広がり を表し、レンジが広いことで最小音と最大音の再生能力の幅が広 い「スケール感がある」音となる。左右または「奥行きのある」立 体的な音の表現力によりまるでそこにあるような「音場」が現れ Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

る。

□コモリ感(暗騒音化)・抜けの良さ  コモリ感とは独得の頭内定位で音が頭内で響いているような 感覚。 密閉型ヘッドホンなどのマイナス面として語られる場合 が多い。抜けの良さは、開放型ヘッドホンの特徴で、音がこも らずに抜けてゆく感覚をいう。抜けが良い反面、音圧が下がる

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

場合もあるから抜けが良いから一概に音質が良いとはいえな い。コモリ感も弾力のある低音を表現する場合もある。

□ドンシャリ型・カマボコ型・フラット  ドンシャリ型はハイ(高周波数帯)とロー(低周波数帯)が 上がっている、またはハイとローにブースト(増幅)がかかっ ている場合に云われる蔑称。カマボコ型はその名の通り、逆に ハイとローが落ちている場合に云われる。 全ての周波数帯域で バランスのとれている音はフラットという。

□色づけ・味づけ  ソフト(原音)にはない音の特徴を機器側で付加されているこ と。まったく色づけや味付けがない場合は「原音忠実」や 「ニュートラル」などという。色づけや味付けは好意的に取ら れる場合とそうでない場合が人によって異なる。 原音への色づ け・味つけを意図的に行うことを「再生芸術」ともいう。

これらを、周波数毎にまとめると、以下のような表現となる。

低音域: +(大きい): 伸びのある・タイト(引き締まった)・パンチのある・シャープ な・量感のある・力感のある −(小さい): ふやけた・ぼやけた・こもった Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

中音域: +(大きい): ハッキリした・抜けの良い・立ち上がりの良い・躍動感のある −(小さい): ぼやけた・筋の通らない・沈んだ

高音域:

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

+(大きい): 伸びのある・スピード感のある・澄んだ・硬質な −(小さい): 刺激音・シャリついた・硬い

 形容詞対を用いたSD法による、音の印象調査には、このよ うな言語的手法を用いる。ここから、我々が認識する音を調査 するわけであるが、 音を一度言語的表現に変換するということ は、 「音→言語」という認知経路のフィルタを通さなければい けない。音の印象のみを調査するという目的においては、その 手法は有用であると思われるが、 例えば音と視覚のモーダル間 現象などの調査を行う場合には、この手法は、音と視覚の要素 の双方を言語的表現に変化させなければならず、これは、音と 視覚の双方の全体としての情報を伝えることができない。 つま り、「限定された表現」となるわけである。

3- 2- 2 音の視覚的表現  音の言語的表現の中には、視覚的・空間的な表現を用いるも のも多々ある。音の輪郭(全体的なシルエット)をあらわすも のがその代表例であり、マイルドな輪郭、シャープな輪郭、ぼ やけた輪郭、ハッキリした輪郭、歪んだ輪郭、と使い分けるこ とで、音の全体的な傾向を表現できる。このように音像はとき として映像の表現に置きかえて語られる。 音により喚起された 視覚的イメージはその形、色、動きにまで及び、若干、印象的 な曖昧さを持ちながらも、豊かな表現を与えてくれる。このよ Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

うな、言語的表現は、音を視覚的表現に置き換えることで、 我々がわかりやすい形での表現を可能にしていると言える。 音 の視覚的な影響を定量的に表現するためには、 視覚的なイメー ジとして表現することは有用であると思われる。  また、音の言語的表現の中には、空間的な表現に置き換えた ものも多く、例えば、オーディオ雑誌やオーディオ製品のカタ ログでの音の表現では、 以下のような表現が用いられることが

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

ある。

「奥行きのある音」: 各音域の音量(ボリューム)によって決定づけられるのが、 「奥 行き」である。中音域が弱い場合、低音や高音部を受け持つ楽 器よりヴォーカルやギターが奥方向に位置するように感じられ るため、奥行きのある音と感じる。つまり、これは周波数特性 がフラットではない事を指す。 「前に前に来る音」: 「奥行きのある音」の反意語であり、中音域が強い場合、低音 や高音部を受け持つ楽器より、 ヴォーカルやギターが前方向に 位置するように感じられるため、 前に前に音が来るように感じ る。

 このように、音を空間的表現に置き換えることで、我々はそ の音がどの様なものであるかを認識することが出来る。 「中音 域が弱い音」というより、 「奥行きがある」という表現の方が ※3- 1 北川 智利(都立大) 「視覚と聴覚の相互作用について」 ※3- 2 神保有紀・福田忠彦(慶大) 「視覚媒体を用いた音と感性の相関測定」

より伝達に適している。

 実際に、音を視覚的な表現に変換させる評価法は、1- 3- 2で 述べたような「視覚と聴覚のモーダル間現象」を評価する際に 用いられる。例えば、音源方向を限定された範囲内でプロット させたり(※3- 1) 、音を色で表現する(※3- 2)ことなど、目 的に沿った視覚的表現を行うことで評価をおこなっている。 し かし、このような研究においては、認知心理学の研究としての Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

特性上、 あくまで音が視覚から受ける影響や視覚が音から受け る影響を調査するものであるため、 特定の空間や空間状態と相 互関係を持ったものではない。  本研究の目的は、限定された条件下での認知ではなく、 「評 価対象の特定の空間内における、視覚と聴覚の認知」であり、 これにより、評価手法に関しても、実空間における空間状態と 緊密な連携を持っていなければならない。この条件としては、

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

例えば、視覚的な影響のない状況では、物理的な音響特性に近 い表現をすることができ、視覚的影響のある状況では、実際の 空間内で行う音の評価と限りなく近いものでなければならな い。つまり、空間的との緊密な関係に裏付けを持っていること が最重要事項であり、 空間的表現の可能な評価手法を用いるも のとする。  さらに、 「聴覚と視覚を総合的に把握し、それぞれの相互の 影響を見る」場合、まず求められるのは、どちらかの感覚系に 統合するか、別の異なる系に統合するということである。視覚 と聴覚は単位そのものが異なるため、 これは当然であるといえ る。また、これらを心理的なフィルタ、つまり認知的に評価す る際には、 視覚と聴覚を直接数値に置き換え定量的に把握する のは、言語表現と同様に情報量を限定してしまうほか、 「感じ られた音」を定量的な数値として評価することは困難である。 よって、前にも述べたとおり、聴覚を視覚化(可視化)するか、 図3- 1 系の選択

視覚を聴覚化(可聴化)するという方法を選択することにな る。その双方のなかで、視覚の情報量と聴覚の情報量を比較す ると、圧倒的に視覚の方が多い。これは、音の表現として「透 明な音」 「明るい音」 「はっきりした音」など、視覚的な表現に 依存することはあるが、 「テンポのいい空間」や「歪んだ空間」 などの言葉は同じ隠喩表現の中でも一般性がないという事から も分かる。つまり、聴覚を視覚に置き換えることは、視覚を聴 覚に置き換える場合よりも、 各感覚の情報量を保持しているこ とである。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

3- 3 可視化さ���る音の状態

3- 3- 1 音の特性と表現について  本研究における、音の評価の目的は「視覚の影響を受けた状 況下での音の変化」である。変化が視覚のどの要素に影響を受 ※3- 3    物体を認知する際の物体の視覚的 三要素は「位置・形・色」であり、物 体そのものの形状としての視覚的三 要素は「点・線・面」というように、 「視覚的要素」という言葉はその用途 によって異なる。

けたかを明らかにするためには、視覚の印象要素と近い、また は同じである必要がある。視覚の要素は「位置・形・色」 (※

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

3- 3)で単純化することができるため、音の特性もこれで表現 できる評価法を考慮する必要がある。

3- 3- 2 音の方向定位(Localization)  空間内で感じる音の要素の中で、最も空間的であるのは、音 源方向であるといえる。音源方向は、音源から発生された音が 左右両耳へ伝わるまでに頭部や耳たぶに反射することによる周 波数特性の変化、および到達時間の差異により、経験的に察知 する。音量や音の種類と異なり、音源から音が発生するという ことを経験的に熟知している場合、 視覚的に音源の位置を認識 することにより、最も視覚的な影響を受けやすい。例えば、 ホールなどで音楽を鑑賞する場合、 精密な音響設計により受音 点で聴取できる音の方向がすべての座席で、 均等になっている 状況下においても、音楽が聞こえる方向が、演奏者の方向であ 図3- 2 音の聴取範囲 

るように認識するのは、視覚的な作用によるものである。  よって、音の方向の表現は、視覚的な影響を評価する場合に おいて、重要である。この要素を表現することには最も自由度 の高い表現が求められる。  しかしながら、自由度が高ければ高いほど、その評価すべき 範囲は広がる。音の聞こえる方向は、頭部を中心として全方位

図3- 3 視覚コーン 森紀久、伊藤恭行、上野淳: 「建築空間の記述法に関する研究」 日本建築学会学術講演梗概集1995  no.5426 

にわたっている(図3- 2)が、例えば、頭部の後方の音を表現 する場合に、 これを直感的かつ視覚的な表現を行うことは大変 困難なことである。さらに、 「空間内の視覚刺激との比較」と いう目的を考えると、 比較が行いやすい表現手法にしなければ ならない。視覚は、視覚コーン(図3- 3)に代表される評価 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

法の通り、あくまで二次元平面的に評価されることが多く、こ の評価法との対応関係を可能にさせるためには、 二次元平面的 な表現手法が求められる。  よって、本インターフェースで用いる、音の方向に関する表 現手法としては以下の二つの点を重視することとする。

・操作性が直感的で、音を感じる方向(仮想的音源定位方向)

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

を可能な限り表現することができる。 ・視覚コーンなどの視覚系の景観研究と対応させるため二次元 平面による表現である。

 以上は、相反する条件であるが、 「表現できない音に関して は表現しなくて良いものとする」という前提条件のもとで、

「聴取点から前方1mに2.5m×2.5m (500pixel×500pixel) のスクリーンがあるものとしてそのスクリーン上に音源定位方 向を描画する」(図3- 4) 図3- 4 仮想的なスクリーン 

という仮想的条件を設定し、 音の方向定位を表現するものとす る。

3- 3- 3 音の大きさ  音の大きさに関しては、一般的に数値で表現される。音のエ ネルギー値が物理的なエネルギー量であるのに対し、 可聴音域 などの認知的な補正値を加えたものをdb(デシベル)で表現 する。これはデシベル尺度というものであり、対数尺度を用い る。人間の聴覚が音の刺激の非常に広い範囲を聴きわけられ、 可聴範囲の最大、最小のエネルギー比は 103 : 1 以上にも及ぶ ことと、 「感覚の大小は刺激の強さの対数に比例する 」 (WeberFechnerの法則:1- ○)に起因するものである。騒音評価な ども、このデシベル尺度で評価されることが多い。  しかしながら、 音の大きさに関しても視覚的な影響が新たな Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

協調作用を生むことがある。例えば、高速道路の騒音を軽減す

※3- 4 倉敷市 高速道路

るために、壁を付けたところ、デシベル値では1db程度の差 しか計測できなかったにもかかわらず、 苦情が減ったという例 がある。(※3- 4)これは、視覚的な音源認知の有無が音の大 きさに対する認知を変化させているといえる。また、 「カクテ

※3- 5   「カクテルパーティ現象」   複数の音源から到来する音の混合 のなかから特定の音源の音だけを 抽出して聴くことが出来る能力。

ルパーティー効果」(※3- 5)の様に、音の選択的聴取の例も あり、人間の音の大きさに対する認知は必ずしも、物理特性と

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

しての音の大きさに比例するものではないということが言え る。  本インターフェースでは、これに着目し、音の大きさを数値 で認識できない量で表現可能であるように、 設定することとす る。大きさを表現するためには、図形的な視覚要素(※3- 4) としての「点・線・面」の中で「線・面」によって表現するこ とができる。 「線」では、3- 3- 2の音の方向定位に関して、適 切な表現が不可能であることから、 「面」による表現、つまり 「面的広がり=面積」で表現するものとする。この場合、面的 広がりを表現するために、描画の自由度を高めると、客観的に 音の大きさを表すことができない。 同面積の四角形と三角形を かき分けることは大変困難であり、 「同音量である」というこ とを、自由な描画表現では表現できないことになる。よって、 描画される形としては、同一の形状でなければならない。  さらに、 同時に音源方向も定位するということを考慮する必 要がある。必然的に、形状の中心点、または重心となる点が定 義しやすいということから、正多角形または円(正円・楕円) ということになる。ここで、正多角形に関しては、複数の多角

やすい

形の中から音を表記するのに適切な多角形を選択する基準がみ つからないということと、正円と楕円の二種類の双方におい て、中心点・面積を定義しやすいということに着目し、本イン ターフェースで音の大きさを表現する種類としては「円形(中

図3- 5 円を選択する過程

心点が音源方向)」というものとする。

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49


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 次に円の作成手法に関する検証調査について説明する。

□実験1 「音の大きさを表現するための円の描画手法の選定実験」

■実験概要  同じ音の大きさを表すことのできる円の描画手法を抽出す

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

る。 ■実験サンプル  ダミーヘッドマイクで採取された水音 : 各1分 図3- 6 目白庭園 (東京都豊島区)

 目白庭園×4種類・早稲田大学理工学部中庭噴水

図3- 8 早稲田大学理工学部中庭噴水      (東京都新宿区)

図3- 7 音採取位置(目白庭園)

■被験者  正常な聴力・色覚があると認められる成人3 名 ■実験方法(図3- 9) 1.5種類の音のWAVファイルをランダムに流し、繰り返し 再生する。 2.以下の計3個の円描画用インターフェースを用いて、500 ×500(Pixel)のエリア内に音の大きさを表現する。

  ・中心型(正円)   ・対角型(正円) 図3- 9 実験方法

  ・対角型(正円・楕円) Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

50


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

図3- 10 円の描画手法

3. 同じ音圧レベルの音に対して、同じ円を描画する率の最 も高い円の描画手法を選定する。

■実験結果  実験により求められたデータの分散をしらべ、 各々の作成方 法毎のデータは以下の通りである。

作成手法

分散

対角型(楕・正円)

0.0005

中心型(正円)

1.0340

対角型(正円)

0.0012

表3- 1 円の作成方法の違いにおける分散度

■結論  よって、音の大きさを円で表現するのに最も適した方法は 「対角型(正円・楕円)」である。

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51


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

3- 3- 4 音の種類  音の種類は周波数特性と時間変化(図3- 11)によって定義 される。楽器の音色が異なるのは、各周波数成分ごとの強さ (スペクトルレベル)が異なるからである。このスペクトルレ ベルが周波数の全域にわたって等しく、 一様に連続している場 合を白色雑音(図3- 12:ホワイトノイズ)と呼ぶ(光の白色 光が連続スペクトルを持つものになぞらえている)。また、一

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

般に心地よい音といわれる 1/ f ゆらぎを持った音(図 312:ピンクノイズともいう)というのは、周波数と音の強さが 反比例の関係を持っている音である。時間変化は、音の減衰を 表すものであり、音の立ち上がりと収まりによっても、音の種 類が異なると表現される。 図3- 11 音の周波数特性と時間変化

 騒音・音響という一般の建築音響学の目的と異なり、本研究 では、空間に音を加えるという設計を仮定している。この場 合、設計される音というものは、その殆どの場合、定常音であ る。空間である以上、時間変化のある、人の話し声や車の騒音 などの時間変化を持つ音に対する考慮も必要であるが、 本イン ターフェースで評価される音は、 「ノイズではなく、意図的に 計画された音」であるということを考慮すると、ノイズの影響 も、評価対象となる音に反映されるため、基本的に時間変化が ないと考えて良い。結果的に、本インターフェースで評価され る音の種類というのは、音の周波数特性ということになる。  3- 3- 1 で述べたように、 「音の種類」を「色」で表現するこ 図3- 12  ホワイトノイズとピンクノイズ

とが求められるわけだが、 一般に音を色で解釈するという状況 が我々の生活にはあまりない。1- 3- 2で述べたような「色聴」 の能力を持つ被験者はまれである。よって、音の種類を把握す るのに、 最も適切な評価法を決定するために以下のような実験 を行った。

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52


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

「音の種類を表現するための色の選択手法の選定実験」

■実験概要  同じ音を表すことのできる色の選択手法を抽出する。 ■実験サンプル  水音(ダミーヘッドマイクで採取:各1分:目白庭園※×4・

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

早稲田大学理工学部中庭噴水) ■被験者  正常な聴力・色覚があると認められる成人3 名 ■実験方法 1.5種類の音のWAVファイルをランダムに流し、繰り返し 再生する。 2.以下の計○個の色選択用インターフェースを用いて、最も 音のイメージに近い色をパソコン上で選択する。

  ・RGB スライダー型   ・カラーパレット型(※3- 7)    (216色WE Bカラー・166色・青系96色・青系25色)   ・カラーピッカー型(H(色相)=250・240・230) ※3- 7 なお、事前実験により、水音が青 であるということは、実証してい る。

図3- 13 RGBスライダー型

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53


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

図3- 14 カラーパレット型(WEBカラー216色)

図3- 15 カラーピッカー型

3. 同じ音に対して、同じ色を選択する率の最も高い色の選 択手法を選定する。

■実験結果  実験により求められたデータの分散をしらべ、 各々の作成方 法毎のデータは以下の通りである。

Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

54


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

色選択手法

RGB分散

カラースライダー

1.00235

カラーパレット

0.09576

カラーピッカー

0.01484

表3- 2 色の選択方法の違いにおける分散度

■結論  よって、音を色として選択するのに最も適した方法は「カ ラーピッカー型」である。

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

 なお、ここで、水音を表現するのに、あらかじめ、H=250 としたのは、 事前のアンケートにより、 複数の音源を利用したサンプル実験 を行った際に水音を「青」と答える傾向が高いことに起因す る。(アンケート結果は付2- 1)

 色は「H(色相) 、S(彩度) 、B(明度) 」で、表すことが できる。なお、高周波域の高い音は明度大、低周波域の高い音 は、明度小であると予想される。

なお、RGB値からSB値を求めるためには、以下の変換式で 可能である。 (なおHについては、 本インターフェースでは固定であるため、 ここでは除く)

S = {Max(R,G,B) − Min(R,G,B) } /Max(R,G,B) ×100 B = Max(R,G,B) /2.55 ( S : 彩度 B:明度)

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55


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

3- 4 インターフェース概要  本研究で用いるインターフェー���はMacromedia社のFlash ※3- 6   本インターフェースは M a c r o m e d i a 社 FlashPlayer5以降でのみ、使 用可能である。

(※3- 6)のactionscriptで作られた、sw f形式のファイルで、 その画面、及び各部の概要は、以下のものである。

D

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

J A B

E C

F I

G H

図3- 16 心理音可視化評価用インターフェース

【各部の概要】 A.描画エリア:  500(Pixel)×500(Pixel) で、中心点が頭部が顔面の中 心点となる。エリア内をドラッグすることで、円を描画するこ とが出来る。マウスを離すと描画した円のRGB値がログ出力 エリアに出力される。 B.色表示ボックス:  選択された色が表示される。 C.色選択エリア:  ドラッグすることで、色表示ボックスの色が変化し、クリッ Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

56


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

クして色を選択する。 D.作成ボタン:  クリックすると、描画可能になる。 E.ログ出力エリア:  描画された円の名前(ShepeX)、位置(X座標、Y座標) 、大 きさ(幅:Width 、高さ:Height)が「XYPositionエリア」 に、描画された円の色のRGB値が「RGBColor」に表示される。

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

F.ログ出力ボタン:  クリックすると描画された円の位置と大きさが出力される。 G.削除ボタン:  消去したい円をクリックすると円が削除される。 H.全削除ボタン:  クリックすると、 エリア内に描画された円がすべて削除され る。 I.ログリセットボタン:  クリックすると、出力されたログがクリアされる。 J.ヘルプボタン:  実験の概要を説明する。

 また、キーボードのカーソルキーの右(→)で、描画エリア 内に表示される画像が変化し、左(←)で戻すことができる。

 インターフェースの利用手順は以下のようになる。

【利用手順】 1. 音を聴取したら、そのイメージを想起する。 2. まず、音の流れてくる方向を認識し、次に音の大きさを把 握。最後に、音の種類を把握する。 3.把握した後、インターフェース内でまず、色選択エリアをド ラッグし音の種類に対応する色を選択する。 4.色選択エリア内をクリックし、色を選択した後、作成ボタン をクリックし、描画エリア内で円を描画する。 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

57


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

5. 円の個数は任意なものとし、描画完了後、ログ出力ボタン で、円のプロパティを出力する。

この1から5までの手順を、一つの過程とし、音の変化、描画 エリア内の画像の変化ごとに、これを繰り返す。

3- 5 インターフェースの検証

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

 作成されたインターフェースで表現される音のイメージ画像 は、個々の印象の差や、音を視覚化する能力の差によって、異 なる。しかしながら、複数の被験者から得られる傾向は、空間 の音の状態に対応するものでなければ、 このインターフェース を使った評価法そのものの、正当性は得られないことになる。 そこで、白色無地の画面上に表現された音のイメージを用い、 検証を行う。

3- 5- 1 検証実験概要  白色無地の描画エリアで行う実験では、 「視覚的影響が無い」 状況に近似されたと仮定される。視覚的影響が無い状態では、 音の物理量評価で得られる音の空間特性に近い状況であると予 想される。つまり、白色無地の描画エリアで描かれた音のイ メージ画像から得られる値が、 物理的特性から得られる値に近 い傾向が得られれば、 本インターフェースを用いた評価という ものは正当であると言える。よって、以下に白色無地の描画エ リアを利用した実験を行い評価を行う。

3- 5- 2 検証実験手順  実験では、目白庭園の図3- 17上の7ポイントで採取された 8 種類の音(各1 分)を利用した。実験は、4章で行った「空 間における共感覚作用の評価」と同時に行ったため、各音の音 圧レベル、周波数特性については、4- 3- 1、4- 3- 2で示してい る値と同値であるが、 参考までに以下に各ポイントで採取され

Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

58


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

音圧レベル(db) point1

47.057

point2

54.255

point3

56.814

point4

56.831

point5-1

64.949

point5-2

65.414

point6

73.057

point7

73.057

た音の物理的特性について示すこととする。なお、音の採取方 法(4- 2) ・物理的特性分析手法(4- 3)も同様である。

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

表3- 1 各音の音圧レベル

平均周波数(hz) point1

9529

point2

9647

point3

9691

point4

9878

point5-1

10099

point5-2

10260

point6

9969

point7

9661

表3- 2 各音の平均周波数 (周波数分析の方法については4- 22を参照)

図3- 7 音採取位置(目白庭園)

※3- 7 Wav     (Window s Audio)    Window sの標準サウン ドファイル形式。基本的な 仕組みはほとんどAIF F ( Macの標準サウンドファ イル形式:Au dio Int erchange File Format)と同 じだが、ヘッダ情報が異な る。高品位のサンプリング データで、音楽データの保 存に向く。

※3- 8     特定周波数出力ソフト(藤 田式周波数出力機九八型) で、可聴域(20hz∼20khz) を聴取することができると 認められた。

 実験は、以下のように行う。 1.8種類の音のデータのWavファイル(※3- 7)をサウンド カード出力のあるノートパソコンで、ランダムに再生させる。 (ランダム再生機能のあるwavファイルプレイヤーであれば何 でも良い。本研究では、Window s 用ソフト「MusicMatch JUKEBOX」 (米・MUSICMATCH社・シェアウェア)を使用。)

2.被験者は、正常な色覚・聴覚があると認められた(※3- 8) 9名の被験者であり、被験者には

「今から再生される音の中で、水音を聴取してください。さら に、あなたの1m前方に正方形のスクリーンがあると仮定し、 そのイメージをそのスクリーン内に表現してください。 イメー ジの要素は、方向・大きさ・色の三要素です。なお、方向(円 Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

59


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

の中心点)は音源の方向、円の大きさは音量、円の色は音の種 類を表すものとします。」

と、実験前に説明を行った。

3.1分間音のみを聴取し、 その後さらに一分間の音の再生時間 内に、インターフェースを利用してイメージ画像を作成する。

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

4.作成後ログを出力し、記録後にログをクリアし、描画エリア 内の円も削除する。

5. 次の音に移動し、3 ∼4 の同様の過程を繰り返す。

6.これを8種類の音について8回繰り返し、実験を終了する。

Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

60


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

3- 5- 4 分析・検証  作成された音イメージ画像について、 「1.位置、2.大きさ、3. 色」の三点に関して分析を行い、それらと物理的な音の空間特 性との比較により、インターフェースの評価を行う。

1. 円の位置  円の位置に関して、 9名の被験者から得たデータは以下のよ

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

うになる。なお、円が複数ある場合は、主音(最も面積の大き な音)を分析対象とする。 X値 被験者

A

B

C

D

E

F

G

H

I

point1

-130

-201

-45

-167

3

-90

-184

-174

point2

-101

34

35

66

-16

-137

-38

3

-164 5

point3

-83

-228

-86

-45

16

-93

-144

-113

-6

point4

-51

-98

-89

-142

6

-94

-147

-132

-207

point5-1

-99

17

-47

52

-21

-111

4

-122

-90

point5-2

147

100

215

165

103

-124

149

164

187

point6

-212

-149

-82

-116

-167

-163

-138

-131

-186

point7

117

-33

80

10

-7

-143

29

2

-17

Y値 被験者

A

B

C

D

E

F

G

H

I

point1

-14

-130

-1

-104

-62

75

58

-79

98

point2

-70

-218

21

-56

-23

-69

-18

5

43

point3

198

-40

5

32

10

36

135

-17

-12

point4

115

-79

75

-1

-94

-163

58

145

-35

point5-1

-35

-59

131

25

24

-64

-93

-72

-6

point5-2

-45

-148

84

14

18

32

-60

-29

-62

point6

-18

-178

122

52

10

-26

-8

6

-30

point7

-28

-163

120

-12

-21

191

48

29

203

  表3- 3 被験者が描画した最大面積の円の位置(X座標・Y座標)

 円の位置は、音の方向を表している。空間内の音の方向は、 ※3- 9     金川暢宏     「庭園空間における聴覚的 シークエンスの記述法に関 する研究」1999年度卒業 論文

物理的特性を見る場合、音線法を用いた反射音線図(1- ○)に よる可視化で明らかになる。 対象空間である目白庭園内を音線 法で表すと、図3- 9 のようになる。 (※3- 9)これから、対象 空間内では、音源はポイント5の前方・後方の滝・せせらぎの 二カ所であり、 ポイント7周辺の赤鳥庵の壁面に反射すること が分かる。さらに、この音線法の反射音線図の上に、各ポイン Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

69


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

トに設定された受音点と前方1mに仮想的に設置されたスク リーンを配置する。 この受音点に入射する音を可視化するため に、 「反射音線図の音の発射点・反射点」を音の発生源として、 受音点に向かって直線を引く。これらを重ねたものが、図310 であるが、これを、わかりやすくするために、各ポイント の受音点の上部を視線方向として並べ替えると、図3- 11のよ うになる。

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

図3- 9 目白庭園の反射音線図

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70


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

図3- 10 反射音線図に受音線可視化モデルを重ねたもの

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71


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

図3- 11 受音線可視化モデル

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72


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 これは、1- 3- 2 で述べた「はりねずみ」 (指向拡散度を表す 可視化手法)と似ているが、 「はりねずみ」が指向性マイクに より採取された音の特性から可視化されているのに対し、図 3- 11 の可視化モデルでは、一つの音源であると仮定し「音源 との距離と音圧レベルは反比例する」という定義のもとに、作 成したものである。つまり、このモデルでは、線の長さが長け れば長いほど、音圧レベルは小さくなるということになる。

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

 さらに、この受音線モデルを利用して、インターフェースの 評価を行う。受音点の前方1 m に仮想的に配置されたスク リーン上に、 受音点に入射する音の平面方向に広がる範囲を把 握することができる(断面図から求めることで、断面方向:Y 方向に関しても把握することが出来る)。このために、図3- 12 のような、便宜的に上部をカットしたものを作成する。図か ら、スクリーン部分に入射する音の範囲を求めたデータは以下 のようになる(表3- 4)。

- 210

- 160

- 70

- 50

- 90

80

50

- 150

220

- 190

0

- 120

- 60

- 30

- 80

50

( Pixel )

図3- 12 受音線可視化モデルの上部をカットし、スクリーンと交わる範囲を分析する

Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

73


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

受音範囲(X座標) min

max

point1

- 210

- 70

point2

- 90

50

point3

- 150

0

point4

- 120

- 30

point5-1

- 160

80

point5-2

50

220

point6

- 190

- 60

point7

- 80

50

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

表3- 4 受音線モデルにより求められた受音範囲(X座標 ; Pixel )

 被験者実験から得たデータ(表3- 3)と受音線モデルから得 られたデータ(表3- 4)を比較するために、各ポイント毎の散 布図(図3- 13)を作成する。このグラフ上において、 ”●”は 各被験者のデータ。”□” 、”△”は受音線モデルからもとめら れた範囲の最外側と最内側である。このグラフからみると、各 被験者のプロット点の大部分は、 受音線モデルの受音範囲内に 位置していることが分かる。  ここから、 インターフェース内に描画された円の中心点が実 際の空間内の音の方向から求められたものと同様であると、 検 証された。 X 250 200 150

Max

100 50 0 -50 -100 -150 -200

Min

-250

1    2    3    4   5- 1   5- 2   6    7 point

図3- 13 各ポイント毎の散布図と受音線範囲(X座標)

Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

74


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

2. 円の大きさ  被験者実験により、作成された円の幅(Wid t h) と高さ (length)のデータが出力される。ここから、円の面積(幅/ 2 ×高さ/ 2×3.14)を算出し、得られたデータは以下のものと なる(表3- 5)。 2 W H 3.14 (Pixel )

被験者

A

B

C

D

E

F

G

H

I

point1

6130

2779

29186

6556

35042

18981

8523

17386

7574

point2

13200

432

28866

12649

16972

9844

12503

15750

13573

point3

5464

501

14318

43608

34779

7103

16033

20724

13226

point4

10621

12081

15586

23552

47394

4922

28618

19349

3184

point5-1

16191

15829

14924

74091

35920

13164

41432

32386

14328

point5-2

4985

6954

10943

46905

76566

12335

36616

9043

9274

point6

4572

881

24439

45800

56494

13072

28403

26976

7184

point7

1590

1896

14921

8729

32770

8806

25575

12460

4635

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

表3- 5 被験者が描画した最大面積円の面積 

複数音を描画した場合、単純比較するために、主音と思われる 最大面積の円をサンプルとして、 各ポイント毎の算術平均値を 算出すると以下の通りになる。音の大きさは、各ポイント毎の 比較であり、描画される円の大きさは、最初の音で描いた大き さとの比較となるため、分散が高くなる。しかし、倍比較であ るため、 「小さな円を描く」被験者Bは全体的に小さな円を描 いており、その反対も同様である。これにより、算術平均され た値により、各ポイントの円の大きさを比較することができ る。各ポイントの円の大きさは、表3- 6 のようになる。 平均面積

(Pixel2)

point1

14684

point2

13754

point3

17306

point4

18368

point5-1

28696

point5-2

23736

point6

23091

point7

12376

表3- 6 被験者が描画した最大面積円の各ポイント毎の平均面積

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75


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 被験者実験の際、3- 5- 2で述べたように「円の大きさは音の 大きさを表すものである」と説明をしているが、これより、視 覚的影響がない、つまり聴覚のみの状態では、デシベル値と相 ※3- 10    デシベル値の平均の算出の仕方       音の平均値(db)=

関するものでなければならない。前述したように、デシベル値

   

音のエネルギーを聴覚認知に変換したものである。

  n = k  (D ndb( ) /10 )  10 × log101/ n × ∑ 10     n =1 

は可聴音域などの認知的な補正値を加えたものであり、 純粋な

 3- 5- 2 で示された、各ポイントの音圧レベルは表 3- 1 であ

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

り、これと表3- 6の値の相関を分析すると、以下のような相関 行列M1 が得られる。

 円の平均面積と音圧レベルの相関行列

 1 0.86822504  M1 =  1 0.86822504 

 相関係数は0.868≒0.9で、1に近い値であると言えるので、 ここから、 円の大きさは音のデシベル値とかなり相関があると 言え、インターフェース内に描画された円の大きさは、実際の 空間で認知される音の大きさと同様であることが、検証され た。

3. 円の色  前述したように、 音と色を変換する能力を持つ人間は稀であ る。つまり、選択された色に傾向を見いだすことは難しい。し かしながら、色を単純にRGB値やCMYK値のような、色と しての要素として分析するのではなく、色相・明度・彩度とい う色の要素に分けて、分析を行うことで、音の種類が円の色に ※3- 11  RGB- HSB変換式 S(彩度)={Max(R,G,B)       Min(R.G,B)}/      Max(R,G,B)×100 B(明度)=Max(R,G,B)/ 2.55

より表現されるかどうかを判別することが出来る。  被験者実験により、円のRGB値が出力されるが、これを33- 4で利用した「RGB- HSB変換式」 (※3- 11)を用いて、 変換する(表3- 7)。ここでH(色相)はH=250で固定される Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

76


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

ので、音の種類の変化はS(Saturation:彩度)またはB (Brightness:明度)のどちらか、または両方に現れることと なる。  一方で、3- 5- 2で述べられた、音の周波数分析から、各ポイ ントにより採取された音の平均周波数を求めることが出来る (表3- 2)。3- 3- 4で述べたように、定常音の場合、音の種類は 周波数特性であらわすことができる。よって、明度または彩度

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

の平均値(表3- 8)あるいはその両方が、平均周波数と相関が あれば、色は音の種類を表していることとなる。 S(彩度) 被験者

A

B

C

D

F

G

H

13.0719 24.63768 32.08955 37.66234

I

point1

45.45455

point2

76.59574 34.97942 26.96629 1.762115 31.40097 14.36464 42.77457 43.47826

point3

13.29114 64.70588 33.49057 13.54167 68.69159 68.85246 30.19802 14.72081 91.41414

point4

76.66667 14.64435 21.31148 46.72131 38.27751

point5-1

83.89262 32.58929 22.10526 28.86179 54.03226 38.81279 28.63071 27.19665

point5-2

94.14634 31.03448 42.73504 3.867403

point6

57.52212 54.65839 29.23077

point7

44.1048 27.07182

E

52 75.80645 87.1345

96.2766 44.81132 48.30508 94.23868 94.7619

42.7907 19.10112 15.89958 22.07207 99.02439

7.5 85.64356 11.18012 21.61017 28.92562 87.94643

21.2766 47.71574 29.83871 36.47059 45.90164 24.70588

35 46.15385

94.0678

B(明度) 被験者

A

B

C

D

E

F

G

H

60 81.17647 52.54902 60.39216

I

point1

73.33333 89.80392 70.98039

point2

55.29412 95.29412 69.80392 89.01961 81.17647 70.98039 67.84314 43.47826 67.05882

point3

61.96078 46.66667 83.13725 37.64706 83.92157 71.76471 79.21569 14.72081 77.64706

point4

35.29412 93.72549 71.76471 95.68627 81.96078 73.72549 83.13725 48.30508 95.29412

point5-1

58.43137 87.84314

point5-2

80.39216 90.98039 91.76471 70.98039 84.31373 69.80392 93.72549 22.07207 80.39216

point6

88.62745 63.13725 76.47059 47.05882 79.21569 63.13725 92.54902 28.92562 87.84314

point7

73.72549

74.5098 96.47059

97.2549 85.88235

52 24.31373

94.5098 27.19665 82.35294

77.2549 48.62745 66.66667 47.84314 33.33333 70.58824 46.15385 92.54902 表3- 7 被験者が描画した最大面積円の彩度(S)と明度(B)

彩度(S)

明度(B)

point1

39.09989892

62.72766885

point2

39.93961251

71.10542768

point3

44.3229195

61.85351072

point4

53.47255571

75.43259112

point5-1

45.6536957

78.27239496

point5-2

41.18568172

76.04722369

point6

42.6907983

69.6627595

point7

42.34786602

61.86023127

表3- 8 被験者が描画した最大面積円の平均彩度・平均明度

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 相関分析を行ったところ、相関行列M2,M3 のようになった。

彩度と平均周波数との相関行列

 1 0.24827762 M 2=   1  0.24827762 

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

明度と平均周波数との相関行列

 1 0.79722376 M 3=   1  0.79722376 

 彩度と平均周波数との相関は、相関係数=0.25であり、これ は相関があると言うことは出来ないが、明度と平均周波数は、 相関係数=0.79であり、高い相関を持っていると言える。これ らから、 音の種類は色彩の明度という形で表現されていること が明らかになり、本インターフェースでは、実際の音の種類を 表現することができると言える。なお、彩度に関しては、各ポ イント毎の散布図は、図3- 13のようになり、近似直線からも 分かるとおり、ポイント毎の差は殆ど生じず、同じ水音であれ ば、その周波数特性によらず、ほぼ一定であることを示してい る。

60

彩度

50

40 y = 0.2293x + 42.557 30

20

10

(ポイント) 0

1

2

3

4

5- 1

5- 2

6

7   

図3- 13 彩度の各ポイント毎の散布図と近似直線

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

3- 5- 5 標本の検定  得られた被験者データ標本の差の検定を行うことで、 各デー タが音の違いによって正しい差が得られていることを検定す る。ただし、音の違いを表現するということは極めて小さな差 にすぎないため、最も音圧の大きなポイント5- 1と最も音圧の 小さなポイント1の差の検定を行う。なお、標準偏差は「67159 」であり、平均標準偏差は87166のとき、T値=0.046134928

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

となり、有意水準=0.05より小さいため、差があると検定さ れた。  なお、同様にして行った結果、

X値・面積・明度に関しては差があると認められ、 Y値・彩度に関しては差がないとされた。

ここから、3- 5- 4で行った、分析結果のうち有意であるのは、 相関があると認められる。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

3- 5- 6 評価法の検証  3- 5- 4 の分析・検証から、 「音源方向=円の中心点」、 「音の 大きさ=円の大きさ」、 「音の種類=円の色(明度) 」で表すこ とができることが確認された。ここから、無地の描画エリア内 というのは、 「視覚がない状態(聴覚のみの状態) 」であること が検証できた。つまり、同じ調査で描画エリア内に、視覚刺激 を加えた場合に描画される円が異なれば、 それは視覚刺激に起

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

因しているものであると考えられる。これにより、視覚刺激が 変化させる音の状態を把握することができる。4章の「空間に おける共感覚作用の評価法」では、空間状態を表す視覚刺激が 与えられたことで、音がどの様に変化するかを検証し、変化さ せる視覚刺激の与え方と、視覚刺激と聴覚刺激により、双方の 印象を相乗させる状態について検証し、 視覚刺激と聴覚刺激が 変化させあう空間を評価するものとする。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

3- 5- 3 作成された音イメージ画像(描画エリア:無地)

 【ポイント 1】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

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被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

  【ポイント 2】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

  【ポイント 3】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

  【ポイント 4】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

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被験者E

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  【ポイント 5- 1】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

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被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

  【ポイント 5- 2】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

  【ポイント 6】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

  【ポイント7】 被験者A

被験者F

被験者B

被験者G

被験者C

被験者H

被験者D

被験者I

第 三 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

第四章 視覚情報による聴覚変化の評価  4- 1 評価対象空間の選定 4- 1- 1 評価対象空間の選定条件  評価の対象空間の選定に当たっては、以下の条件を選定条件 とした。

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

【条件1】定常音が評価対象音となる。  音の分析手法は大きく分けて、「周波数分析」と「時間周波 数変化」である。音は常に時間軸とともに変化する要素である ため、時間という概念から切り離すことはできない。しかしな がら、時間変化は不確定要素であり、時間変化の予測の前段階 で、時間変化が無いと仮定される状況、つまり定常音で行える 分析手法を確立することが先決である。4- 2の説明にあるFFT 分析がそうであるように、まずは、ある時間一点で行える調査 手法を確立し、その後、それらを重ね合わせることで時間変化 は解決できる。そこで、本研究では、定常音音源をもつ空間で 評価を行った。

【条件2】音源が固定音源である。  音源が固定であるということは、設計段階である程度の予測 が出来るモデルを作成すると言うことである。音源の設置位置 の自由度が高い場合においても、汎用性のある評価法を作成す るには、まず固定音源でどこまで、空間内における視覚的な影 響が与えられた認知音が変化するかを明らかにできるかを把握 することが重要である。

【条件3】音源そのものが鑑賞要素である。  我々が、音を聴取する場合、その音源を認知する場合としな い場合に分けられる。前者においては、音楽ホールで演奏者を 見ながら音楽を聴く場合や、街で車のノイズを感じるときであ り、後者は建物の中にいるときの外部騒音であろう。騒音研究

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

※4- 1  本研究における庭園の位置づけ    庭園ということを考えると、 その歴史的源流やや地割・石組 にもふれなければならないが、 ここでは、「水のある空間」の一 例として取り上げるものとし、 庭園���地割の精神性や形状的な 概念などは、極力無視するもの とする。これは、庭園を調査対象 空間とすることに対する非常な 矛盾点でもあり、危険であるこ とは十分理解の上である。日本 庭園とは、自然に対する精神性 の現れであり、作庭家が自然の 素材に敬意を払い、一切の加工 をすることなくそれでいて高度 な表現をしたものである。本研 究で評価法確立のために研究対 象とする「廻遊式池泉庭園」に関 しても、水をあつかった庭園(池 泉庭園)は、自然景観の縮景表現 であったり、思想的背景も大変 大きいものである。当然、音に関 しても石組等と同様に扱われ、 設計(修景)が行われている。し かし、本研究は、あくまで、空間 内における視覚と聴覚の相互作 用についての研究であり、その 汎用性を目指すものであるため、 庭園という特定の空間にこだわ らないこととする。

※4- 2 目白庭園 (東京都豊島区目白3−20−18)    平成2 年開園した新しい庭 園。滝に築山、池を配した伝統 的な回遊式庭園。池に面 して数 奇屋造りの茶室「赤鳥庵」 (せき ちょうあん)が建っている。庵 の名前は、この地で創刊された 童話雑誌『赤い鳥』にちなんで つけられた。

では、一般に、騒音レベルという評価基準で騒音の対策がなさ れている。しかし、1- ○で取り上げたように、視覚的な影響を 遮断することで騒音が軽減されたという例もある。一方で、音 源そのものによって「音が大きく聞こえてしまう」場合もある と思われる。どのような空間要素によって影響されるのかなど も、重要な評価項目になる。それらを明らかにするために、 「あ

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

きらかに音源だとわかる空間要素」を取り上げることで、音源 にどれだけ影響されるのかを評価することができる。

これらの3点を評価選定条件とし、汎用性のある評価法の確立 を目指した。

4- 1- 2 対象空間  以上の三点を考慮すると、都市公園における水辺空間や噴水 空間、日本庭園(池泉庭園)における滝などが当てはまる。本 研究では、周辺環境からのノイズの影響を受けない状況として の庭園空間(※4- 1)を用いて評価法を模索し、ケーススタディ として都市空間における水辺空間において評価を行うこととす る。  庭園空間では、目白庭園(※4- 2)を調査対象空間とした。 ケーススタディについては、5章で述べるものとする。

4- 1- 3 調査ポイントの設定  目白庭園における調査ポイントは、3章における調査ポイン トと同様であり、図3- 7 に示されたポイントとする。

4- 1- 4 音の採取・再生環境  本研究では、ダミーヘッドマイク(※4- 3:図4- 1:KU- 100: 独Georg Neumann 社)によるバイノーラル録音方式(※43)を用い、これをDAT(※4- 4)を接続し、音の採取を行っ た。システムは以下の図の様である。 (図4- 2)ダミーヘッドマ イクによるバイノーラル録音をヘッドフォンを用いた聴取を Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

行ったとき、個人によっては前後の識別が非常に困難である。 これは頭を動かした時のHRTF(※4- 4:頭部伝達関数)の 変化による手がかりが得られないからである。よって、3- 3- 2 で述べたような前方スクリーンの設定は前後の音源定位を無視 するものとして適当なものであると考えられる。 前後における 音源定位が再生環境としては、 完全に仮想的な状況が得られる 設備がないため、ヘッドフォンステレオによって再生を行っ 図4- 1 KU- 100

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

た。DAT の録音レベルは、採取された全ての音素材に対し、 3.5とし、各ポイントにおいて、1分間採取し、再生を行うも

※4- 3  ダミーヘッドマイク 製造:Georg Neu mann社(独) w w w .neumann.com 製品名:KU- 100 仕様:ダミーヘッドマイクシステ ム IC5(5芯・10mケーブル) AC20(変換ケーブル) ※4- 4 DAT(Dig italAudioTape) 製造:ソニー株式会社 製品名:TCD- D100 

のとする。  被験者実験は無音・無着色の部屋内にて行った。音の再生環 境は3- 5と同様にノートブックパソコン(GatewaySolo3350) でWavファイルを再生した。

※4- 3    バイノーラル録音    ヘッドフォンによる立体 音再生を目的とした2chに よる音声録音。多くの場合、 ダミーヘッドなどを用いて HRTF(※4- 4)込みの音を 録音する、両耳の実質間隔と 角度をあけて左右に配置し た単一指向性マイクロフォ ンを用いて録音する、既にあ る音源に人工的にH RTF を 付加することで実現されて いる。 ※4- 4   HRTF (頭部伝達関数:Head- Related Transfer Functions)    異なる方向からくる音のピ   ッチやタイミングに対してリ   スナーの生理機能が及ぼす影   響の数学的表現。

図4- 3 耳に粘土が入ったときのHRTF の変化

図4- 2 録音時システム構成

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

4- 2- 1 音圧レベルの測定  音圧レベルの測定には、米EXTECH社(www.extech.com) の騒音計Deg italSoundLevelMeter(図4- 4)を用いた。  騒音計は物理的意味あるいは感覚的意味において、 音が大き いか小さいかを判定し、数値化する測定器である。ここで感覚 的意味の音の大小は、音を聞く人の判断によるが、これでは

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

種々不都合が生じるので、一般に大きな音は騒音と考え、物理 量(音圧)に人の耳の感度を補正した値を音圧レベルといい、 図4- 4 DegitalSoundLevelMeter     (Extech社製)

dB で表わし、騒音計の周波数補正特性“A”を使用して計測 した。  これにより計測した各ポイントの音圧レベル(※4- 5)は、

※4- 5 音圧レベルは以下のように算出   し、音の平均値を音圧レベルとし   た。        音の平均値(db)=    

  n = k  (D ndb( ) /10 )  10 × log101/ n × ∑ 10     n =1 

以下のようになる。 ポイント名

Min(db) Max(db)

平均(db)

point1

44.1

48.8

47.06

point2

45

57

54.26

point3

48.4

59.5

56.81

point4

60.5

67.1

64.95

point5(-1・-2)

71.5

74.2

73.06

point6

64.3

66.3

65.41

point7

51.8

59.1

56.83

表4- 1 各ポイントの最大・最小デシベル値と平均デシベル値

4- 2- 2 周波数分析をもちいた各ポイントの水音エネルギー値の算出

・フーリエ変換による水音のエネルギー値の抽出  本研究においては、DATで録音する際に用いたマイクは超 指向性マイクではなく、 より人間が聴取している環境に近づけ るためにダミーヘッドマイクを利用している。よって、録音さ れたデータの中には、水音だけでなく、近隣の住宅から発生さ れる暗騒音や鳥の鳴き声など多くの音が入っている。この DAT で録音したデータの中から水音の周波数帯を割り出し、 水音が空間内で音をどれだけ占めているかを分析する必要があ る。しかし、電車の音や人の声と異なり、水音は「ピンクノイ ズ」 (図3- 12)と言われる1/ f特性をもっており、特定の周波

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

数帯に特化しているわけではない。そこで、採取された音を フーリエ変換することで、 得られた周波数帯ごとのエネルギー 値と1/ fのエネルギー値を比較し、採取された音の中で水音が 占める割合を算出することとする。 ここで、音声のフーリエ変換・w avelet変換について説明を 行う。

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

1.フーリエ級数展開  フーリエ級数展開とは「どんな複雑な周期信号でも、ある周 波数成分の重ね合わせで表現できる」ということである。つま り、どのような波S(t)でも、

  S(t)=直流成分+ Sum{N=1 To Infinity}×      {A(N)×sin(w t+ b)+ B(N)×cos(w 2t+ c)}

という様に単純な正弦/ 余弦波の重ね合わせの重ねあわせであ らわすことが出来る。しかし、実際の処理を行うとき、これは 使うことが出来ない。なぜなら、

 1:音声は周期的な波ではなく、経時的に変化する。  2:フーリエ級数展開は対象波の周期がでないと展開できない。

からである。ここで、 「一定時間で区切ってその区間における 周波数成分を分析する」。これがフーリエ変換である。フーリ エ変換には、 「離散フーリエ変換」と「高速フーリエ変換」が あり、音声処理・信号処理の世界で用いられるものは「離散 フーリエ変換」である。しかし、これらには、アルゴリズ ムの差による計算量の差だけであって、他(精度)などは何も 違いがない。   2.wavelet変換  フーリエ変換が解析対象の波形を正規直交系である定常な正

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85


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

弦波で関数展開するのに対し, ある時刻の前後でのみ振幅を持 つ非定常波形で関数展開する. その係数が瞬時スペクトルに対 ※4- 6 ウィグナー分布    伝搬周波数特性が過度状態におい て時々刻々変動する状況を、インパ ルス応答の信号処理により表したも の。

応し,ウィグナー分布(※4- 6、図4- 5)と共に非定常なデー タのスペクトル解析に応用される.

 本研究では、水音に関しては、定常的であると仮定してい る。定常的な音源であると仮定されている。よって、本研究で

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

はFFT(高速フーリエ変換)解析してよいということになる。 なお、音が経時的に変化する環境状態においては、FFTで解析 するより、wavelet変換を用いることで、より精度の高い分析 図4- 5 ウィグナ−分布による インパルス応答の三次元表示

が可能になるといえる。  これらを踏まえ、本研究では、FFT変換・wavelet変換の両 方が可能なアプリケーションソフト「サウンドモニター FFTwave」 (Window s対応) (図4- 6)を使って、解析する。 「サウンドモニターFFTwave」では、 WAVEファイル、CD、 外部ライン入力など、 サウンドボードを経由してでパソコンに 取り込んだ WAVE データをフーリエ変換、 または wavelet 変 換し、音の周波数特性をリアルタイムで表示することができ る。dB 表示、対数表示、オクターブ表示、ピークホールドの 機能もありますので、電気信号などの解析も可能である他、音 階で表示することもできるので、今「ド」の高さの音が出てい るといったことがリアルタイムで分かる。

図 4- 6・ サ ウ ン ド モ ニ タ ー F F T w a v e ( 上 は Wa v e l e t 表示)

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86


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 なお、ここでは、サウンドモニターFFTwaveの時間周波数 チャート(図4- 7)という項目を用いる。これは、一定時間に おいて、音の周波数帯ごとに色分けしたものであり、さらに、 ここから、それぞれの音のエネルギー分布を調べるために、各 周波数帯のエネルギーを調査する。各周波数帯のRGBを分析 し、それを標準チャンネルを 0db としたエネルギー分布に変

図4- 7 時間周波数チャートの例

換する。なお、この変換式(※4- 7)は、

※4- 7     サウンドモニター上の対応関係か ら算出した。

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

・(R=255,G=0,B=0 ∼(R=255,G=255,B=0)  ∼(R=0,G=255,B=0)∼(R=0,G=255,B=255)の時  (仮想Db値)=- (40/ 410)×(410- R+ B) ・(R=0,G=255,B=255)< (R=0,G=0,B=255)の時  (仮想Db値)=- (40/ 410)×(410- R- 2B- G)

   (基準Dbを0としたときの値)

となる。これによる変換を用いた結果(※4- 8)は、以下のよ

※4- 8  左右のdb値をを※4- 6を使って平均

point1

hz

うになる。

ave

point2

db

hz

ave db

500

-33

-31

-32

500

-30

-33

-31

2000 3500

-38 -49

-43 -52

-40 -50

2000 3500

-33 -47

-35 -47

-34 -47

5000 6500

-49 -57

-58 -62

-51 -59

5000 6500

-45 -52

-50 -55

-47 -54

8000 9500

-64 -67

-66 -62

-65 -64

8000 9500

-66 -59

-58 -57

11000 12500

-66 -69

-64 -68

-65 -69

11000 12500

-66 -63

14000 15500

-68 -70

-71 -74

-69 -72

14000 15500

17000 18500

-68 -74

-68 -69

-68 -71

20000 21500

-74 -69

-74 -72

point3 hz

ave db

point4 hz

ave db

500 2000

-29 -35

-31 -36

-30 -35

500 2000

-28 -26

-27 -28

-27 -27

3500

-46

-43

-44

3500

-30

-35

-32

5000 6500

-47 -55

-46 -59

-46 -56

5000 6500

-34 -45

-40 -42

-36 -43

-61 -58

8000 9500

-60 -64

-61 -60

-60 -62

8000 9500

-43 -45

-49 -52

-45 -47

-61 -69

-63 -65

11000

-69

-61

-64

11000

-54

-50

-51

-68 -72

-65 -70

-66 -71

12500 14000

-62 -70

-66 -65

-63 -67

12500 14000

-48 -53

-49 -55

-49 -54

17000 18500

-68 -74

-69 -66

-68 -69

15500 17000

-74 -66

-67 -66

-69 -66

15500 17000

-59 -52

-54 -58

-56 -54

18500

-69

-71

-70

18500

-58

-55

-56

-74 -70

20000 21500

-67 -69

-68 -70

-67 -69

20000 21500

-69 -70

-66 -74

-67 -72

20000 21500

-59 -64

-68 -69

-62 -66

point5-1 左 右 ave hz db 500 -26 -26 -26

point5-2 hz

2000 3500 5000 6500 8000 9500 11000 12500

-28 -33 -34 -47 -48 -44 -46 -47

-27 -37 -37 -42 -41 -39 -45 -49

-28 -35 -36 -44 -44 -41 -46 -48

14000 15500 17000 18500 20000 21500

-59 -50 -49 -55 -58 -64

-46 -54 -53 -63 -56 -63

-49 -52 -51 -57 -57 -64

ave db

500 2000 3500 5000 6500

-22 -33 -35 -35 -45

-23 -26 -31 -36 -36

-23 -28 -32 -35 -39

8000 9500 11000 12500 14000 15500

-45 -46 -47 -44 -52 -51

-39 -34 -40 -38 -43 -43

-41 -37 -42 -40 -46 -45

17000 18500 20000 21500

-51 -55 -57 -66

-50 -46 -47 -54

-50 -48 -50 -57

point6

hz

ave

point7

db

hz

ave db

500

-25

-27

-26

500

-30

-24

-26

2000

-20

-32

-23

2000

-33

-34

-33

3500 5000

-32 -28

-36 -38

-34 -31

3500

-40

-46

-42

5000

-39

-51

-41

6500

-41

-48

-43

6500

-48

-51

-50

8000

-43

-48

-45

8000

-53

-63

-56

9500

-41

-51

-44

9500

-51

-63

-54

11000

-43

-47

-45

11000

-55

-53

-54

12500

-43

-47

-44

12500

-55

-57

-56

14000

-50

-58

-53

15500

-51

-52

-51

14000 15500

-64 -63

-57 -62

-59 -62

17000

-48

-61

-51

17000

-64

-62

-63

18500 20000

-50 -55

-60 -72

-53 -58

18500

-63

-63

-63

20000

-66

-69

-67

21500

-60

-68

-62

21500

-73

-71

-72

表4- 2 各ポイントの周波数分析(平均dbを0としたもの)

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87


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 表4- 2は、最大周波数を0としたときの値である。これを、 表1で求めた、最大・最小・平均周波数の実地測定から、補正 を行い、さらに、左右平均を取ると以下のようになる。

point1

point2

point3

point4

point5-1

point5-2

92.2 90.5 83.4 82.5 74.2 74.5 77.2 72.4 70.0 69.4 66.3 67.3 60.8 61.0 54.2

91.2 85.9 81.7 78.7 75.3 72.8 77.1 71.6 73.7 68.3 68.9 63.5 65.7 64.1 57.3

point6

point7

hz/db 500 2000 3500 5000 6500 8000 9500 11000 12500 14000 15500 17000 18500 20000 21500

76.5 68.1 58.2 56.9 49.2 43.6 44.5 43.4 39.5 38.8 36.7 40.2 37.5 34.6 38.1

81.1 78.1 65.4 65.5 58.6 51.5 54.4 49.7 47.1 46.3 41.2 43.9 43.6 44.8 42.7

85.3 79.4 70.5 68.6 58.6 54.7 53.4 51.2 51.5 48.3 45.5 49.0 45.2 47.5 43.4

84.8 84.9 80.3 75.8 68.7 66.6 65.0 60.5 63.4 57.8 56.0 58.0 55.6 50.4 46.3

83.5 86.6 75.7 78.9 66.4 64.3 65.8 64.6 65.1 56.8 58.5 58.9 56.7 51.9 47.6

83.7 76.6 68.4 68.7 60.5 54.0 56.2 56.0 54.3 51.1 47.7 47.2 47.0 42.8 38.2

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

表4- 3 各ポイントの周波数分析(左右平均:実地測定値からの補正値)

 さらに、 これらの周波数帯と各周波数帯のデシベル値からデ ※4- 9 本研究では「平均周波数」と定義   する。

シベルの重心点(※4- 9)を求める。

ポイント名 平均周波数(hz) point1

9529.04

point2

9646.71

point3

9691.12

point4

9877.97

point5-1

10099.36

point5-2

10260.07

point6

9969.12

point7

9661.27

表4- 4 各ポイントのデシベルの重心点(平均周波数)

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88


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 次に、表4- 3から求められた、周波数解析から、簡易的なス ペクトルを示すために、グラフ化を行う。これらのデータを縦 軸を音圧レベル(db)、横軸(対数軸)を周波数(hz)とした、 各ポイントにおける測定グラフは以下のようになる。なお、こ れらに、 対数直線の近似曲線を重ねたものがピンクノイズであ ると考えられ、これを水音の周波数特性であると仮定する。

point4

100

100

90

90

80

80

70

70

60

60

db

db

point1

50

50

40

40 y = -0.0016x + 65.186

30

1000

10000

y = -0.0017x + 84.035 R2 = 0.9425

30

2

R = 0.7878

20 100

20

100000

100

1000

hz

10000

100000

hz

point2

point5-1

100

100

90

90

80

80

70

70

60

db

db

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

60

y = -0.0016x + 90.289 2

50

R = 0.943

50

40

40

y = -0.0017x + 73.485 2

R = 0.831

30

30

20 100

1000

10000

20

100000

100

1000

hz

point3

100000

point5-2

100

100

90

90

80

80

70

70

60

60

db

db

10000

hz

50

y = -0.0013x + 87.214 2

R = 0.9167

50 y = -0.0018x + 76.291

40

40

2

R = 0.8256 30

30

20

20 100

1000

10000

100000

100

1000

10000

100000

hz

hz

表4- 7- 1 各ポイントの周波数特性グラフ(その1)

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89


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

point7

100

100

90

90

80

80

70

70 db

db

point6

60 y = -0.0016x + 83.075

50

60 50

2

R = 0.8979

40

40

30

30

20 100

1000

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

10000

100000

y = -0.0018x + 76.757 R2 = 0.9112

20 100

hz

1000

10000

100000

hz

表4- 7- 2 各ポイントの周波数特性グラフ(その2)

 これから、ピンクノイズ(1/ f)(※4- 8)と比較するため に、近似直線(対数軸)を描き、重相関係数R2 を算出すると、 近づけば近づくほど、高い数値がみられる。これにより、滝に 近づいた部分では音全体における水音の占める割合が高いこと ※4- 8 ピンクノイズ    「1)周波数ゆらぎが1/f、2) 周波数特性が低音に偏らないもの、 3)音圧の時間変動が大きなもの、 4)音圧が小さいも の」の4条件 のうちなるべく多くを満たすものと されている(久保田ら 1997 な ど)。

がわかり、離れた部分では、それ以外の音が占めていることが わかる。ここから、各周波数帯のピンクノイズ(=水音)の占 める割合を算出することができる。

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90


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

4- 2- 3 視覚的影響(景観分析)

 音に影響を与える視覚的影響としては、 本研究では二つの意 味を持つこととする。  一つは、描画された音源の位置(中心点が音の発生源と仮定 されている)と比較するための、視覚における音源の重心点で

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

あり、一方は描画された円の大小(音の大小と仮定されてい ※4- 9    なお、座標系は、画像の中心を   (0,0)と取り、下のような座標をと る。 Y

る)と比較するための、視覚における音源面積である。これら を分析する必要がある。

・景観画像における音源の重心点

0,- 250

X:- 150 Y:- 100 X - 250,0

0,0

Widrth(幅)   ; a Heights (高さ) ; b

250,0

b/ 2

0,250

c/ 2 a/ 2

c/ 2

a/ 2

b/ 2

図4- 8 重心の測定方法

ポイント名 写真名 ※4- 10     なお、写真1は正しい画像であ り写真2は音の採取方向から、25 度ずらした際の画像である。

point1

X

Y

写真1

166

-3

写真2

0

21

写真1

-147

56

写真2

-190

42

point5-1

写真1

-138

-139

point5-2

写真1

-30

150

point6

写真1

-141

69

写真2

127

95

写真1

-140

-14

写真2

-109

64

point2

写真1 写真2

point3

写真1 写真2

point4

point7

表4- 5 各ポイントの画像の重心点

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91


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

・景観画像における音源面積測定  景観画像を「音源」 「水面」 「その他の要素」の三つに分け、 それらの景観画像内の面積を測定するために、NHIimage(※ ※4- 11   NIH image  米国国立衛生院(National Institute of Health)で開発された フリーウェアソフト。画像解析 などが可能。(Macintosh)

※4- 12   二値化   フルカラー画像を白と黒のみを 使った画像に変換する。「閾値に よる二値化」(各ピクセルの明る さを求め、それがある一定の値よ りも大きければ白、小さければ黒 を出力する方法)、「疑似階調表 現」(点の密度を変化させて多く の階調を表現する方法)、 「ランダ ムディザ法」(階調を表現するた めの密度を確率として考える方 法) 、 「誤差拡散法」 (あるピクセル の処理によって生じた誤差を周囲 のピクセルへ割り振り、続く処理 においてその影響を考慮すること で全体としての誤差を最小にしよ う と い う も の ) が あ る 。 NIHimageでは、○○○を取って いる。

4 - 1 1 )を用いて測定を行った。あらかじめ音源部分を adobePHOTOSHOP 内で黒く塗りつぶし、これを二値化(※ 4- 12)して塗りつぶし部分のピクセル数を測定した。   音源以外の面積を測定する!!!

ポイント名 写真名 point1 point2 point3 point4 point5-1 point5-2 point6

図4- 9 黒く塗りつぶした画像

point7

写真1

音源面積 519

写真2

405

写真1

105

写真2

279

写真1

0

写真2

0

写真1

6311

写真2

5344

写真1(しぶき)

31314

写真1(水面)

214330

写真1(しぶき)

136591

写真1(水面)

143367

写真1

13942

写真2

8944

写真1

2030

写真2(不可視) ※4- 13    Point5- 1、2では、水面と 音源と認識されると予想され る、 「しぶき」の部分の面積を 測定した。

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

978

表4- 6 各ポイントの画像の音源面積

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92


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

・景観画像の明度 ※4- 14 作成したマクロプログラム (NIH imageで使われる)   

 NIHimageの分析機能を用いて、 グレースケールに変換した 画像内の濃度をヒストグラムによって測定した。 (図4- 10)作

******************** macro 'meido macro[0]'; var i,h:integer; tab:string; begin tab:=chr(9);

成したマクロプログラム(※4- 14)を用いてこれをテキスト データとして抽出した。 NIHimageにおいては画像内のグレー 濃度測定(1から255の測定値)であるため、これを明度(パー

Measure;

セント測定値)に変換し、平均明度を求めた(※4- 15)。

New TextWindow ('result', 300, 600); for i:=1 to 255 do beg in h:=histog ram[i]; w riteln(i:0,tab,h:0); end;

 なお、測定部位は、 「全域」 「音源」 「水面」とした。各ポイ

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

ントにおける測定範囲は以下のようである。(図4- 10)

end; ※4- 15     平均明度の算出のしかた。

0                      255

0                      255

ポイント1(写真1) 滝

ポイント1(写真1) 水面

0                      255

0                      255

ポイント1(写真2) 水面

ポイント3(写真2) 水面

0                      255

ポイント5- 1(写真1) 水面

ポイント2(写真1) 水面

0                      255

ポイント2(写真2) 水面 図4- 10 ヒストグラムの例

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

 これらから得られた測定結果は表4- 7 のようになる。 point5- 1

point1

写真1 point2

写真2

写真1

写真2

写真1 point5- 2

写真1 point6

point3

写真1

写真2

写真1

写真2

point7

point4

写真1

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

写真1

写真2

写真2

図4- 11 各画像の音源位置(赤が音源・青が水面)

ポイント名 Scene1

写真名 写真1

全体 滝 水 41.2904804 56.2487912 29.3365996

Scene2

写真2 写真1

48.671787 60.9403895 35.2164674 50.2197169 39.8961731

Scene3

写真2 写真1

49.0159252 45.9347274

Scene4

写真2 写真1

45.3014288 18.992378 35.8830659 67.9800051 39.7300904

Scene5-1

写真2 写真1

34.9086172 66.5914183 40.1937466 32.9656778 75.7135825 51.9252879

Scene5-2 Scene6

写真1 写真1

41.7064831 53.5960226 40.9168486 36.6066677

Scene7

写真2 写真1

48.4297867 32.8762156 42.2552549 48.0158375 26.9473113

写真2

43.1183662

38.7795535 55.4121961 34.7368096 表4- 7 各画像の平均明度

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

4- 3 視覚情報を受けた知覚音調査 4- 3- 1 用語の定義  評価において使う用語の定義は以下の通りとする。   ・知覚音   :物理的な音の状態でない、人間が聴取し頭          部伝達を経て、音として認知する音。

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

 ・知覚音源定位:一般に「音源定位」とは、音だけを聴取し た際に人間が「音源の箇所」として認知す る音源の仮想的な位置であるが、 ここでは、 視覚系の影響を受けた上での音源の位置と         して定義する。  ・知覚音圧  :3- 3- 3で示したように、デシベル値は音の          エネルギー量に対し、可聴音域などの認知 的補正値を加えたものである。これに、さ らに視覚系の認知補正を加えた音圧を「知 覚音圧」とする。  ・知覚周波数 :音の周波数(※4- 16)は物理的特性であ ※4- 16     周波数とは、音に限ったことで なく、一秒間に繰り返す波の数 (振動数)のことである。Hzは、 秒の逆数で Hz=1/ sと定義されて いる。

        り、 これに対して知覚的な補正を厳密に行う         ことは困難である。しかし、例えば視覚情報         による影響で知覚される音の種類が異なる          (聞こえかたが異なる)という意味で、知覚         周波数 とう言葉を用いる。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

4- 3- 2 実験の概要  3- 3で示したように、描画された画像の各要素は、以下のよ うな知覚的意味を持つ。

・位置   ; 知覚音源定位 ・大きさ  ; 知覚音圧  

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

        (描画面積大= 知覚音圧が高くなる) ・色(明度) ; 知覚周波数  (明度高 = 知覚周波数高)

 これらを前提条件として、景観画像が提示された場合に、3 章で検証された「知覚音可視化評価インターフェース」を利用 して知覚音を調査し、 視覚的影響がある状況下での知覚音の調 査を行う。さらに、得られた知覚音のパラメータに視覚的影響 による変化が見られた場合、その要因を調査する。

4- 3- 3 実験方法

 3 章で、知覚音を評価することが可能であると検証された 「知覚音インターフェース」を用い、以下の実験を行う。 ※4- 17 同箇所で同方向

【実験1】視覚情報の有無による知覚音変化調査  4- 1- 3で設定された調査ポイントで、音採取時と同時に同箇 所で同方向を向いて(※4- 17)、撮影された景観画像を用い、 これが視覚的空間情報として与えられた際の知覚音について、 「知覚音インターフェース」で調査を行う。これにより得られ た知覚音と3章で得られた視覚情報がない状態での知覚音を比 較し、視覚情報が知覚音に与える影響を調査する。

【実験2】視覚情報の変化による知覚音変化調査  実験1と同時に、 音採取時と同時にダミーヘッドマイクの採 取位置・採取方向から図4- 11���ように、ずらした景観画像を Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

用い、同様の調査を行う。実験1で示された視覚情報の影響に よる知覚音の変化において、 変化を与える視覚情報の要素を検 証し、 さらに正しい視覚情報が知覚音との関係について検証す ることで、評価モデルを算出する。これらから、音と視覚の総 合的な景観計画のための正しい音計画を行う上での評価を行う ことが出来る。

※4- 12 実験2のずらしかた

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

4- 3- 5 実空間の補正  実験は、パソコンの画面上で行われるため、現実空間との補 正をする必要がある。実際の地点で【実験1】と同じ条件、つ まり、視覚情報が与えられた状況下で、複数名の実験の被験者 に知覚音の描画をさせる。 ここで得られた知覚音の描画データ とパソコン上で得られた知覚音の描画データを比較し、 最後に 全体の補正を行う必要がある。 (なお、現地実験による知覚音 要素は知覚音源定位・知覚音圧の二項とする。)

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

4- 4 実験結果とデータの解析 4- 4- 1 描画結果  実験1と実験2における描画結果は 次ページ以降の、以下 のようになる。

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第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 可 視 化 実 験

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 1】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 1】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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100


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 2】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 2】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 3】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 3】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 4】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 4】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 5- 1】 [無地]

[実験1]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 5- 1】 [無地]

[実験1]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 5- 2】 [無地]

[実験1]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 5- 2】 [無地]

[実験1]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 6】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 6】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 7】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 7】 [無地]

[実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 1- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 1- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 2- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 2- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 3- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 3- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 4- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 4- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 5- 描画】 [5- 1]

[5- 2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 5- 描画】 [5- 1]

[5- 2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 6- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 6- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 7- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者A

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者B

被験者C

被験者D

被験者E

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

【ポイント 7- 描画】 [実験1]

[実験2]

被験者F

第 四 章   視 覚 情 報 に よ る 聴 覚 変 化 の 評 価 実 験

被験者G

被験者H

被験者I

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

第五章 音知覚評価モデルとケーススタディ 5- 1 データの解析 5- 1- 1 標本の検定  4- 4 で描画された円のデータについて、差の検定を行う。 データは付02に掲載したデータであるが、ポイント毎に円の 重心(X座標・Y座標) 、幅(Width)、高さ(Heights)、面積

第 五 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 モ デ ル と ケ ー ス ス タ デ ィ

(S)、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Brightness) ※5- 1      (※3- 8)と同様の被験者選定試   験を経た。

についてデータを抽出した。被験者は正常な聴力・色覚がある と認められた(※5- 1)成人9名であり、これは、3- 5- 2のイ ンターフェース検証実験と同様である。  これらから、得たデータの検定は、3- 5- 5と同様に、近い箇 所の音であり、さらに標本が少ないので、有意差が生まれにく

※5- 2      自動的に写真1の時に関する   差の検定となる。

いことから、音源に最も近い点であるポイント5- 2と最も遠 い点であるポイント1 の間で行った(※5- 2)。検定は、母平 均の差の推定を行い、離れたポイントでの音のサンプルなの で、対応が無いした。サンプルサイズ    n1 + n     であ 2 < 100 る母集団分布は正規分布を持っており、σ 1、σ 2 に関しては未 知であるが、標準偏差 σ 12=σ 22 であるため、t検定を行った。  検定は、重心(X、Y) ・彩度 ・明度に関しては、帰無仮説 「 m1

= m 2」で対立仮説「 m1 ≠ m 2」である両側検定、面積に関

しては、 「

m1 > m 2 」であるとし、片側検定とした。有意水準

は0.05 とし、各項目についてポイント1とポイント5 - 2 の データで検定を行った。

□座標データ ( X 座標・Y座標)  ポイント1とポイント5- 2の座標データは、表5- 1のように なる。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

X 被験者

point1

point5-2

A

- 182

B C

point1

point5-2

148

95

- 57

- 163

22

- 42

- 127

- 112

184

108

-6

D

-1

44

- 55

18

E

- 94

- 43

-4

167

F

- 117

- 83

78

95

G

- 182

165

11

106

H

- 216

114

18

- 18

- 133

178

62

- 71

I

第 五 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 モ デ ル と ケ ー ス ス タ デ ィ

表5- 1 ポイント1とポイント5- 2における座標データ

 これらを使いT検定を行いP値を算出すると、 X 座標に関するP値は、

Px = 0.0015219 < 0.05 となり、有意差が認められた。一方、Y座標に関するP値は、

Py = 0.643192 > 0.05 となり、有意差が認められなかった。 つまり、3- 5- 4で述べたように、有意差が認められたのは、X 座標のみであった。(※5- 3) ※5- 3    改めて、高さ方向の変化を音で認 識するのは難しいことが分かる。

□面積  次に面積について検定を行う。面積は、音圧が大きいほど面 積が大きいという予測が可能であるから、片側検定を行う。面 積のデータは表5- 2 の通りである。 被験者

point1

point5-2

A

7800.5

7363.75

B

1378.3

11507.5

C

33920

24518.5

D

5606

47595

E

14937

40434.5

F

8639.3

6358.5

G

10169

19412.5

H

11888

51880.25

I

5888

8620.5

(Pixel2) 表5- 2 ポイント1とポイント5- 2における 面積データ

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

このデータからT検定を行い、P値を算出すると、

Ps = 0.03421788 < 0.05 から、P値は0.05を下回り、有意差が得られた。これも、34- 5 のインターフェースの検証と同様の結果が得られた。

□彩度・明度

第 五 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 モ デ ル と ケ ー ス ス タ デ ィ

 彩度と明度に関しては、両側検定を行った。データは表5- 3 の通りであり、これから、T検定を行い、P値を算出した。   被験者

彩度 point1

明度

point5-2

point1

point5-2

A

70.1299

92.0245

63.9216

60.3922

B

31.2500

35.5932

92.5490

87.8431

C

22.0859

26.0274

85.8824

63.9216

D

36.1789

7.6190

82.3529

96.4706

E

20.0000

1.1858

99.2157

78.4314

F

32.2981

32.2981

63.1373

63.1373

G

52.4272

17.0940

91.7647

40.3922

H

38.9610

23.3480

89.0196

60.3922

I

92.2619

96.3134

85.0980

65.8824

表5- 3 ポイント1とポイント5- 2における彩度・明度

彩度のP値 PB は、

PB = 0.28132052 > 0.05 であり、有意差が得られなかった。 明度のP 値P s2 は、

Ps2 = 0.0449093 < 0.05 であり、有意な差がえられ、これに関しても、3- 4- 5と同様の 結果が出た。これらから、付02の実験データからは、X座標・ 面積(幅・高さ) ・明度に有意差があるとし、これをもとに、分 析を行う。

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

5.1.2 知覚音源位置

 知覚音源方向を、各ポイント毎に分析を行う。写真1(正し い景観方向)と写真2(15 度ずらした方向)に関して、描画 された円の中心のみ抽出して分析を行う。なお、本データの数 値データに関しては、付02 に掲載する。  各写真において、視覚的影響の無い場合(no)と視覚的影響 のある場合(写真1;P1、写真2;P2)に関して重ね合わせ、

第 五 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 モ デ ル と ケ ー ス ス タ デ ィ

[ポイント1]

-250

-250

-250

-200

-200

-150

-150

-150

-100

-100

-100

-50

-50

-200

-250

-150

重ね合わせ

写真2

写真1

-50

50

150

250

-250

-150

-50

-50 50

150

250

-250

-150

-50

50

0

0

0

50

50

50

100

100

100

150

150

150

200

200

200

250

250

150

250

no p1 p2

250

[ポイント2]

-250

-150

重ね合わせ

写真2

写真1

-250

-250

-250

-200

-200

-200

-150

-150

-150

-100

-100

-100

-50

-50 -50

-50

50

150

250

-250

-150

50

150

250

-250

-150

-50 -50

0

0

0

50

50

50

100

100

100

150

150

150

200

200

200

250

250

250

50

150

250

no p1 p2

[ポイント3]

-250

-150

重ね合わせ

写真2

写真1 -250

-250

-250

-200

-200

-200

-150

-150

-150

-100

-100

-100

-50 -50

-50 -50

50

150

250

-250

-150

50

150

250

-250

-150

-50 -50

0

0

0

50

50

50

100

100

100

150

150

150

200

200

250

250

200 250

50

150

250

no p1 p2

図5- 1  Hitoshi W atanabe Lab. W aseda Univ. Architecture Master’s thesis 2001

132


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 第 五 章   音 知 覚 可 視 化 評 価 モ デ ル と ケ ー ス ス タ デ ィ

[ポイント4]

-250

-250

-200

-200

-200

-150

-150

-150

-100

-100

-150

-50

50

150

250

-250

-150

50 0

50

50

100

100

150

150

200

200

250

250

150

250

-250

-150

-50

50

150

250

no p1

0

p2

50 100 150 200 250

[ポイント5- 2]

写真1

写真1

-250

-250

-200

-200

-150

-150

-100

-100

-50 -150

-50

-50

0

[ポイント5- 1]

-250

-100

-50

-50 -250

重ね合わせ

写真2

写真1 -250

-50

-50

50

150

250

-250

-150

-50

50

0

150

250

0

50

50

100

100

150

150

200

200

250

250

[ポイント6]

-250

-150

重ね合わせ

写真1

写真2

-250

-250

-250

-200

-200

-200

-150

-150

-150

-100

-100

-100

-50

-50

-50

50

150

250

-250

-150

-50

-50

50

150

-250

250

-150

-50

50

0

0

0

50

50

50

100

100

100

150

150

150

200

200

200

250

250

250

150

250

no p1 p2

[ポイント7] -250 -200 -150

-150

-50

-50

-250

-250

-200

-200

-150

-150

-100

-100

-250

重ね合わせ

写真2

写真1

50

150

250

-250

-150

-50 -50

0

0

50

50

100

100

-100

50

150

250

-250

-150

-50 -50 0 50

50

150

250

no p1 p2

100 150

150

200

200

250

250

150 200

図5- 2 知覚音源方向(その2)

250

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133


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 付

付1. 「音知覚評価用インターフェース」の    ActionScriptプログラム

 第三章で作成された「知覚音評価用インターフェース」は、 Macromedia 社Flash5 の機能であるアクションスクリプトを 利用して作成された。付1- 1に示したインターフェースの概要 を参考に、以下にActionScriptプログラムを掲載する。

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

付1- 1 知覚音評価用インターフェース

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185


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 付

1. フレームアクション

// マウスカーソルの変更 Mouse.hide(); _root.attachMovie("Pointer", "Pointer", 10000000);

  ※色を表す関数を16進数で表示する ために、10進数の配列を16進数に 定義する。

/ / 16進数の配列の作成

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

HexSeries = new Array("0", "1", "2", "3", "4", "5", "6", "7", "8", "9", "A", "B", "C", "D", "E", "F"); HexTable = new Array(); CounterC = 0; for (CounterA=0; CounterA<16; CounterA++) { for (CounterB=0; CounterB<16; CounterB++) { HexTable[CounterC] = HexSeries[CounterA]+HexSeries[CounterB]; CounterC++; } }

/ / 現在のカラー表示用のColor オブジェクトを作成する   ※選択しているカラーを表示するた  めのオブジェクトの作成。

CurrentColor = new Color(CurrentColorDisplay); clrt = new Object( );

/ / カラーを調整するAdjustColor 関数   ※カラーを調整する関数を宣言

function AdjustColor () {

// RGB取得のためのパラメータ mx = _xmouse; my = _ymouse;

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186


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

  ※カラーピッカー上のポインタのX  Y座標からRGBを取得する。H  =250の際のRGBの取得は以下  の図の様になる。

// 現在のカラーを設定 //カラーピッカーから色を取得 if (mx>=645 && mx<=795 && my>=200 && my<=350) { bx = _xmouse-645; by = _ymouse-200; RedValue = int((255-(((bx/150)*255)))*((150-by)/150)); GreenValue = int((255-(((bx/150)*255)))*((150-by)/150)); BlueValue = int(255-((by/150))*255); CurrentColor.setRGB (parseInt (HexTable [RedValue]

図- 付1- 1 RGBの取得

+HexTable[GreenValue]+HexTable[BlueValue], 16));

付   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

} }   ※座標で得たRGBの値(10進数)  を16進数のカラー関数に置き換え  る。

AdjustColor();

// 描画のためにマウスポインタの位置を調べる関数 function MouseInBounds () { if (_xmouse>120 && _xmouse<655 && _ymouse>10 && _ymouse<540) { return (true);   ※マウスポインタが描画エリアにあ  る時のみ、CurrentColorDisplay  内のカラーを作成する円に返す。

} else { return (false); } } function Reset () {

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究   ※消去された際に、ShapeCountを  0にする。

// 図形を消去する for (Counter=0; Counter<=CurrentColorDisplay.ShapeCount; Counter++) { removeMovieClip ("Shape"+Counter); } ShapeCount = 0; }

  ※このオブジェクトにアクションを  設定し、アクションを呼び出せる  ようにする。

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

2. ムービークリップ「CurrentcolorDisplay」  のアクションスクリプト

インスタンス名「CurrentcolorDisplay」

//円の作成と消去のイベント onClipEvent (mouseDown) { if (_root.ToolType == "Eraser" && _root.MouseInBounds()) { if (substring(_root.Pointer._droptarget, 2, 5) == "Shape") {   ※各ボタンに割り当てられた     ToolTypeを呼び出し実行する。

eval("_root."+substring(_root.Pointer._droptarget, 2, 50)).removeMovieClip(); } } else if ((_root.ToolType == "Ellipse") && _root.MouseInBounds()) { PenDown = true; ShapeCount++; X1 = _root._xmouse; Y1 = _root._ymouse; _root.attachMovie(_root.ToolType, "Shape"+ShapeCount, ShapeCount+100); eval("_root.Shape"+ShapeCount+"Color")

= new

Color("_root.Shape"+ShapeCount);

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 付

eval("_root.Shape"+ShapeCount+"Color").setRGB(_root.CurrentColor.getRGB());

} } //マウスを放したらアクションを終了 onClipEvent (mouseUp) { PenDown = false; }

//エリア内のマウス位置から円を描画する onClipEvent (enterFrame) { FrameCount++;

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

if (FrameCount%2 != 0 && _root.ToolType == "Pen") { X1 = _root._xmouse; Y1 = _root._ymouse; } else { X2 = _root._xmouse; Y2 = _root._ymouse; } if (PenDown && _root.MouseInBounds()) { if (_root.ToolType == "Pen") { ShapeCount++; _root.attachMovie(_root.ToolType, "Shape"+ShapeCount, ShapeCount+100); } with (eval("_root.Shape"+ShapeCount)) { _x = ((X2-X1)/2)+X1; _y = ((Y2-Y1)/2)+Y1; _xscale = X1-X2; _yscale = Y1-Y2; }

  ※3- 3- 3で決定された円の作成方   法。対角線を引くことで円を作成  する。

} }

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 付

/ / イベントの継続 onClipEvent (mouseMove) { startDrag ("_root.Pointer", true); updateAfterEvent();   ※複数の円を書くことが出来るよう  に、イベントの継続を宣言する。

   ※はじめに、円を作成する際に、   このMak eを押すことで、     CurrentColorDisplay で設定   した、 「Ellipse」 (円)の関数を   呼び出す。

}

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

3. ボタン「Make」のアクションスクリプト

on (release) { _root.ToolType = "Ellipse"; }    ※円を描画し終わったあと、     「SET」を押すとログを書き出   せるようにする。     そのため、このアクションで    は、CurrentColorDisplayで   記録された「ShapeCount」を   取得するほか、tempで、Shape   の中心のX座標・Y座標を取得、   temp2で、ShapeのWidth    (幅) ・Height(高さ)を取得す   る。これらを組み合わせ、     XYposという関数を設定し、    これがログとして記録される。

4. ボタン「SET」のアクションスクリプト

on (release) { for (j=1; j<=CurrentColorDisplay.ShapeCount; j++) { temp ="Shape"+(j)+"\n"+"X:"+int(getProperty(eval("Shape"+j), _x 0)

-390)+":"+"Y;"+int(getProperty(eval("Shape"+j), _y)-270); temp2 = "Width:"+int(getProperty(eval("Shape"+j),

_width))+":"+"height;"+int(getProperty(eval("Shape"+j), _height));

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190


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 付

XYpos = XYpos+"¥ n"+temp+"¥ n"+temp2; } }

  ※描画エリアで円を描画すると、そ  の際のCurrentColorDisplay の  色を取得することができるように  する。それにより、描画した円の  色が取得できる。dataR、dataG、  dataBという形でMath関数を使  用することで設定し、RGBのそれ  ぞれについて取得し、これらをま  とめてRGBshow とする。RGBと  いう関数を設定し、RGBのログと  して取得される。

4. ボタン「RGBgetfloor」  のアクションスクリプト

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

on (release) { for (p=1; P<=CurrentColorDisplay.ShapeCount; P++) { dataR = Math.floor(dataRGB/0x10000); dataG = Math.floor(dataRGB/0x100)%0x100; dataB = dataRGB%0x100; RGBshow = "R"+";"+(dataR)+"G"+";"+(dataG)+"B"+";"+(dataB); } RGB = RGB+"¥ n"+"shape"+(P-1)+" ¥ n"+RGBShow;

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視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究   ※CurrentColorDisplay で設定さ れた「Eraser」の関数を呼び出す ことで、クリックされた円を消去 することができる。 また、このとき、消去された分の円 のShapeCountを減少させる。

5.ボタン「Clear」のアクションスクリプト

on (release) { _root.ToolType = "Eraser"; CurrentColorDisplay.ShapeCount--; }   ※作成された円をすべてResetする  ことで、すべての円を消去するこ  とができる。また、このとき、     ShapeCountも0に戻す。

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

6. ボタン「All Clear」の  アクションスクリプト

on (release) { Reset( ); CurrentColorDisplay.ShapeCount = 0; }

  ※XYpos、RGBの両関数をクリア  し、記録されたログをクリアす   る。

※XYpositionの関数=XYpos

7. ボタン「LogReset」の  アクションスクリプト

on (release) { XYpos = " ";

 RGBcolorの関数=RGB

RGB = " "; }

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192


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

9.ムービークリップ「Album」 内のフレームアクション

[1フレーム目] / / そのままでは自動的に写真が動いてしまうので、 / / はじめに停止させる関数を記述する。

stop ();

付   音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

[25 フレーム目] / / 25 枚の画像を終了した後、 / / もう一度繰りかえす関数を記述。

gotoAndPlay (1);  ※右へのカーソルで、オブジェク ト「Album」内で、次のフレー ムに移動するように設定。

10..ボタン「NEXT」のアクションスクリプ ト

on (keyPress "<Right>") { tellTarget ("Album") { nextFrame (); } }

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193


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究  ※左へのカーソルで、オブジェク ト「Album」内で、前のフレー ムに移動するように設定。

11.ボタン「BACK」のアクションスクリプ ト

on (keyPress "<Left>") { tellTarget ("Album") {

※なお、ボタン「Next」と「Back」はエ  リア外に配置し、インターフェースに  はでてこないようにする。

prevFrame (); }

  音 知 覚 可 視 化 評 価 用 イ ン タ ー フ ェ ー ス ア ク シ ョ ン ス ク リ プ ト

}

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194


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究

02. 描画データ  

【X座標・Y座標】 Point1 被験者 A A-2 B B-2 C D E E-2 E-3 F G H I I-2 zB-3

無地 X

写真1 X

Y -130

-14

-201

-130

-45 -167 3 5

-1 -104 -62 144

-90 -174 -184 -164 -111

75 -79 58 98 217

写真2 X

Y -182 -199 -163 143 -112 -1 -94 -158 -116 -117 -182 -216 -133 -77 37

95 151 -42 -27 108 -55 -4 56 171 78 11 18 62 184 55

Y -170 -148 63 -58 -63 -56 -114 -115

99 206 -81 -95 84 10 19 85

-165 -136 -220 -163

58 10 -36 101

-178

-87

Point2. 被験者 A A-2 B B-2 C D D-2 D-3 E E-2 F G G-2 H I

無地 X

写真1 X

写真2 X

Y

-101 -103 34 240 35 66

-70 32 -218 -161 21 -56

-108 -136 -135 -221 -40 169 94

60 159 -207 100 58 -44 81

-16

-23

-137 3 194 -38 5

-69 5 -19 -18 43

-133 122 -155 -80 203 -35 2

82 66 49 52 55 4 66

Y -122 -83 -92 -150 115 152 137 -89 -76 118 -170 -53 -83 -34 9

86 180 -187 148 -5 -137 154 -128 12 0 40 -5 180 -55 107

Point3 被験者 A A-2 B B-2 C D D-2 D-3 D-4 E E-2 E-3 E-4 E-5 F G H I

無地 X

写真1 X

Y -83 -113 -228

198 157 -40

-86 -45 212 232 -218 16 12

5 32 -178 -225 -195 10 46

-93 -113 -144 -6

36 -17 135 -12

写真2 X

Y

Y

-97 -185 -155 -163 -78 -29 232

218 188 -101 -140 -63 23 -225

-195 -127 -185 40 -148 40

98 131 -45 -123 62 41

-166 17 81 95 -215 -140 -123 -168 1

0 -115 52 58 94 -61 18 60 103

-155 -192

-93 -18

-93 -121 -185 14

34 62 58 200

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195


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 【X座標・Y座標】

point4 被験者 A A-2 A-3 A-4 A-5 A-6 B B-2 C D D-2 E E-2 E-3 F G G-2 H H-2 I I-2

無地 X

写真1 X

Y -51 -52 -172 -103 -186 -144 -98 177 -89 -142 81 6 8 -174 -94 -132 225 -147 215 -207 9

115 93 69 75 130 42 -79 -61 75 -1 50 -94 -10 24 -163 145 -2 58 -155 -35 49

写真2 X

Y -118 -218 -167 -176 -199 -101 -75 -203 -149 -126 103 -166 78 215 -120 -139 239 -139 220 -201 -61

81 82 64 96 25 41 -87 -42 54 27 49 61 -92 -39 40 81 -66 62 -186 23 76

Y -107 -102 -170 -137 -162 -184 -162 -74 7 -124 85 -172 18 209 -155 -147 234 -186 233 -182 62

-67 80 63 60 99 20 -9 72 28 28 45 54 -77 -41 -12 11 -62 55 -139 41 73

point5-1 被験者 A A-2 A-3 A-4 B B-2 C D D-2 E E-2 E-3 F F-2 G G-2 H H-2 I

無地 X

写真1 X

Y -99 -180 -102 -170 17 -109 -47 52 -101 -21 -16 -85 -111 -88 -122 239 4 -167 -90

-35 192 159 138 -59 -121 131 25 -112 24 -118 -28 -64 -110 -72 -64 -93 180 -6

Y -65 -145 -91 -73 5 -72 -78 -64 124 -186 198

-40 153 115 160 -119 -54 -92 -113 -42 -7 18

-106 -165 -127 15 -140 81 -22

-79 -133 -76 -12 -160 -35 20

point5-2 被験者 A A-2 A-3 A-4 B B-2 C D E E-2 E-3 F G H I

無地 X

写真1 X

Y 147 178 155

-45 -110 96

100 170 215 165 103

-148 -85 84 14 18

124 164 149 187

32 -29 -60 -62

Y 148 185 93 113 22 -57 184 44 -43 -169 158 -83 165 114 178

-57 -145 105 76 -127 -55 -6 18 167 71 17 95 106 -18 -71

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196


視覚と聴覚の複数知覚による外部空間の評価モデルの研究 【X座標・Y座標】

point6 被験者 A A-2 A-3 B B-2 C D E E-2 E-3 F F-2 G G H

無地 X

写真1 X

写真2 X

Y

Y

-212 -173 -171 -149 -197 -82 -116 -167

-18 105 60 -178 -82 122 52 10

-183 -115 -126 -144

49 133 101 -139

-163 -124 -115 23

-22 87 52 -170

-93 -160 -113 -145

14 85 43 118

-163 -78 -186 -131 -138

-26 -60 -30 6 -8

-150 -167 -196 -147 -171

42 77 4 70 26

85 -3 -138 168 -71 -56 -52 -43 -149 -172

-26 26 43 189 114 68 3 -42 70 -11

point7 被験者 A A-2 A-3 B B-2 B-3 C D E E-2 F F-2 G H I

無地 X

写真1 X

Y 117 86 5 -33 101 72 80 10 -7 178 -143 -180 2 29 -17

-28 15 31 -163 -147 -38 120 -12 -21 37 191 152 29 48 203

写真2 X

Y 69 157 -106 -39 -103 67 -92 -117 11 -116 147 -159 -86 -140 21

111 144 30 -26 -33 -31 79 24 -107 -9 90 -5 79 42 175

Y 79 -49 -70 124 70

155 91 59 -33 -86

45 -2 -86 -148 -111 -139 -107 81 34

118 101 95 -80 142 38 32 120 157

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