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パタゴニア Fall 2021 Journal

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海は怠け者の私に合っている。なにより も空気が濃い。荷物はカヤックが運んでく れる。海も山も同じ冒険のフィールドだが、 座ったままある種危険な遠隔地で冒険が 出来るとは何と素晴らしいことか。英国の 登山家ビル・ティルマンもそれで海に転じた のだろう。もっともティルマンは帆船で私は 手漕ぎ舟だが。私は 1996 年からホーン岬 を 2 度まわった。ティルマンのヨット、ミス チーフの足跡をたどり、パタゴニアのカル ボ・フィヨルドに彼のキャンプ地を探したこ ともある。私は知床での経験を身に付けて パタゴニアやアリューシャン列島へと出かけ た。アリューシャンはカヤックとアリュート 文化が生まれた土地で、2000 年代以来、 この列島に 7 度の遠征を試みた。 海は危険だ。ときに山以上に恐ろしい。 知床にはヒグマが多いが私はそれよりも海 のほうがはるかに怖い。そして人はもっと 恐ろしい。 海で私たちは外来者だ。知床で私たちは よそ者であり、そこにはお互いに折り合いを 付ける知恵が要る。行く先の不安を取り除 くのはそこを訪れる私たちの責任だ。住む 人に不安を与えてはならない。相手の身に

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なって考えること。それが私たちの自由な カヤック行を保証する。 1969 年、ネパールの山奥でチベット難 民の家族と暮らしたときのことを思い出す。 中国の迫害を逃れてヒマラヤを越えてきた 人たちだ。彼らの願いはいつかダライラマ に拝謁することだ。家族は毎日経を唱え、 ヤクの乳を搾りバターとチーズを作ってい た。私も子 供たちとともにヤクを追った。 そのときの少年が年月を経てダライラマの 住むインドのダラムサラにいることを最近 知った。願いがかなったのだ。 私たちはダライラマ 14 世が 話されたよ うに目の前の仕事に真面目に取り組まなけ ればならない。法王はそれがやがてチベッ トと世界を救うことにつながると言われた。 しかし大多数が思考せず体制に盲従すれ ば、人が本質的にもつ狂気や悪が、やがて 私たちの中に現れる。そして凶悪なものの 出現を許す。考えなければならない。無知 であってはならない。ニセコの雪崩問題な どは小さな問題だ。だが私はこの土地に住 む者の責任として、これを放置できない。

〔左上〕この地域にある多数の天然温泉の ひとつから眺めるニセコアンヌプリ(左)と ニセコモイワ(右)。

〔右上〕新谷はニセコなだれ情報を書く前、 気象データを確認して雪上車で山に入る。 そして明るくなった窓の外を不安げに眺める。

〔右〕ニセコを象徴するダケカンバの森の中で この朝最初のターンを刻む新谷。

新谷暁生 は北海道札幌市の出身。北海

道 だけでなく、ネパール、パキスタン、 中国、アンデスなどの山々を登る。シー カヤックガイドでもあり、知床半島をは じめ、世界の辺境の海をめぐる。 私たちはこの物語のフィールドである北海道が 過去にアイヌ民族の生活圏であったことを 確認し、先住アイヌ文化に敬意を表します。


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