Interbrand 30th year initiative 06

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ISSUE 06 「日本ブランド」は顧客との新しい関係を構築できるか?

オムニチャネル時代のブランド戦略 AUGUST 2014



30th

YEAR

INITIATIVES

BRANDS HAVE HAV A E THE POW AV POWER WER TO CHANGE JAP JAPAN PA P AN これからの日本ブランドの30年に向けて

ISSUE

06

AUGUST 2014


もがブランドタ チ イントの

ブランドはどう な

がこの 2

わってし 用に

った。通

げて

化するのか。

ートフ

すでに日

ンを

だ。テレ

シャルメディ

ンなどへの

の中、新

り、

と言う。ス

この る

1 日あたり

「メディ

で増

で大きな

ート

化によって、 年 が、あら

ートフ

が、2010 年と

きているのだ。 出 メディ

みをする 10 代

化が 報

は、

を見ながら

3

。 活の

にしている

ると

加した

の 4

3 年ですっかり

メディ

2014」 めてい 通

する「オムニチャネル」で

ある。オムニチャネル化により、 スメ ディ

での「

う一

での「

となった。

」 インターネ

を訪れて「

はすでに

トや

のもの

が発信できる

2 Interbrand 30th Year Initiative 06

」とい ー

うオムニチャネル時代、

シャルメディ

が、 スメディ

する情報発信 り

るからである。

顧客は、 がリ

ルかネ

ることなく、 きな

きなチャネルで

顧客と 客

することが

メー

も、発信

つことがあ

トかを意

きな時

にすることができ

るようになる。 一方でメー

る販売チャネルや

チャネルを

ーは、 直

になる。 顧

メディ

という

という

えて、 もがいつでもどこでも

さえ いに

ローチができる、 もがブランドの チ

イントを

うことができる。 こ

れがオムニチャネル時代なのである。

そんな時代に、 「日本ブランド」はどのよ うに考え、 見を

すべきか。 ここで、3 つの

したい。


かし企業が顧客発信の情報をコントロー

1 オムニチャネル化により、 顧客参加の

メー

に増える

ーは、 売や販社に

や顧客の

を、 顧客から直 ンスで

た、

価、フィード

、しかも

時点のみならず、

やその

いレス

になる。

価の

の発売 に

することが

や、

いて

とな

る。 顧客参加によるブランド育成のタ イントが、これ ど

がるのだ。

でとは

にならない

をつくる必要がある

オムニチャネル時代には、顧客はブランド 情報の

かす

ある。その を

であると

は、時には

どのイン

時に発信 くの

クトを

共感を

成し、 顧客の

ブランド

価を

でも

を通じて

によってより

成していく必要がある。

3 リ ルとネ トの

で、顧客との インタラクションが重要になる

顧客は で

を訪れた

の価

イントやクー チ を

からは

ルとネ たり

のものとして

トが

ートフ

ン情報などを

イントが

に顧客の

に、ス

をその

とができる。 企業の ができる。 リ

2 企業からの発信ではなく、 顧客の で

である。だからこそ、 顧

客やそのコミュニティとの

存してきた売

け取ることが

も、 顧客と直

ルすることは

べるこ

すすめの

けること するタ

のものになる。

えるのではなく、

と繋がっているインタラク

ティブなブランド す必要がある。

として

え直

や企業

つ。し

Interbrand 30th Year Initiative 06 3


ブランド

の視点が わる 「ブランディング 3.0」 の時代

オムニチャネル化の進

は、ブランド

の概念も進化させはじめている。

ブランド

は、 「ブランディング 1.0」、 「ブランディング 2.0」と、進化してきた。

現在グロー

ルブランドの

4 Interbrand 30th Year Initiative 06

は 2.0 であるが、 もなく 3.0 へ

するであ

う。


Interbrand 30th Year Initiative 06 5


1.0 6 Interbrand 30th Year Initiative 06


「ブランディング 1.0」の時代 ブランドは ブランドの

ーケティング資産であった。 は、ブランドシンボルなどの

グであり、ブランディングの成功要 一

したブランド表現を

には、 要

りつづけていく社

ジュ

などを

の強い意

イデンティ

発する

いクリ

やネーミン

イティブ

められた。

と、

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A brand is defined

2.0

as a living

business asset,

brought to life across

all touchpoints which, if properly managed,

creates identification, differentiation

and value. 8 Interbrand 30th Year Initiative 06


「ブランディング 2.0」時代 ブランドは企業の 企業と顧客を結 は事業活 を

な事業活

を通じて顧客に

ンドの成功の

ジネス資産と考えられるようになった。

は、 社が一

がブランド価値

してもらうことに

となってブランディングを

り出せるかどうかにかかっている。

上に結びつくため、 ブランド を置くようになった。 ブラ

えるか、 顧客に感

える

Interbrand 30th Year Initiative 06 9


3.0 10 Interbrand 30th Year Initiative 06


そして「ブランディング 3.0」時代

ブランドは、顧客の資産に進化する。 ブランドの価値は、企業の活

は、 顧客と社

との

や共感の

ことが、 す

す重要になるであ

いだけではなく顧客との協働によってつくられる。ブランド み上げによって

はなく顧客の資産ということになる。顧客との

成される。 つ

その

現化の

さらに、 顧客の

味を

う。

ドのコン

トや活

として、コラボレーションや

が、顧客が共感し思わず

こうした顧客やそのコミュニティとの協働を に

い。顧客にいつでもどこでも

がつくりやすい。顧客の なるであ

う。

度感を上げていく

ローチを重視する必

ュレーションがより活発に

きつけるためには、ブランドストーリーが重要になる。 な

データを

われる

なら、 ブラン

にしたくなる、 参加したくなるものでな

くてならないからである。

し、繋がりの

、 企業からのワンウェイの情報でなく、顧客のコミュニティへの

要がある。その だ

と参加を

う。

りブランドは企業のもので

うために、 オムニチャネルという

スできる上に、

できれば、それこそ

型のコミュニケーション が見える

Interbrand 30th Year Initiative 06 11


12 Interbrand 30th Year Initiative 06


Interbrand 30th Year Initiative 06 13


顧客との協働によるブランド

を み重 る

のケーススタディ

インターネ

トやス

ートフ

などコミュニティの発

ンの

によりブラン

は、企業がつくるものから顧客が

するものへと

化した。ブランド

は、顧客が共感する

りたくなる

参加し

たくなるものでなくてはならない。 た、 い つでもどこでも繋がることが の

をあら

になり、こ

点でいかにシームレス

できるかが

イントになる。

の「くらしの

年に

」 は、2000

された「モノづくりコミュニティ」

ースとするオンライン上の

わば、顧客との や、

発や

である。 「くらしの 来、顧客の

により、くらしや の改

され

み出してきた。 た自社の

るモノを世界中から

いモノ

ている。

うした取

事業

みは、 「

いかしたいという

し、

をモノ

ルチャーが

発だ

価値あ

こして

くの顧客の共感を

化の

」は 200 年の

を活かし、

けではなく、顧客にとって

で、い

は、こ りに

にあり、

できるデジタルコミュニケー

ションが進化してきたことで、自 てきた」という。

14 Interbrand 30th Year Initiative 06

には、

トフ

ドの

というス

リがある。一見

イルが

りを

用」のあら す。 「この

す」 と

できたり、 チェ

ったりと、 「

中にあり、 客 い

イント

のようであるが、新しい情報や

すすめを見たり、 しい に

」「

したり、 クイン 」「

との

スで顧客の参加を は、

はいう。

な時

って


は時

や訪問を

を り

ブランドと 通る

って

す。そのすべてが

する顧客時

や、

いいなと思う

重要」 味

れる。その

などのシステム

いた

りれば「情報を

にそっとシン

一つ

とは、 ネ

トや

っている。顧客時

ことだけではなく、 った たり、 する日

よって

たら

いて

られた

価され、 いとこ

によって改 客

てたり、 の

をも

をする

用し

ができ

してくれる。

イタ

化を図

では

度を上げていくため

チな

強化の発

で一

わり、 顧客と

ルなメ

の言

出して

感を

めて

ージを一つ

していくと、 思いがけないインフ

メーションルー て

ができたり、

いうス

く情報を ルを

い情報がより

リによっ

げてもらえる。

ってよい

年、

ディ

、よい

であるチラシをついに

、 よ

す」

では、 来型ワンウェイメ

資を「顧客時 に

現できるようになってきた、

これがオムニチャネルなのだと思い と。

が顧客に

があれば

される。そして

がその情報を共

いかに

みが

であるという点である。

いく時代は

自の表現を

点と

してもらえるかが

いのは、これらの取

なく、顧客との

」という

、 やっ

なのである。

度を表すのに「顧客時

であり、 レジを

用する

にブランドを

では、この

き、 度も

」 を増やすための

けているとのことだ。

し、 その リ

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顧客コニュニティとのコラボレーションでブランド メル デス

ン のケーススタディ

オンラインやス て、

強める

ートフ

ンの活用によっ

を越えた に

との結びつきを

し、 「リ

ル」を

て、 顧客とのシームレスで を

なブランド

化させるブランドもある。その代表が

メル フ

デス

である。

ションウィーク コーン ショ

モや

リオ

のシェフ。

ティスト、 て、 い デス いる

る。 メル

。 ャレ

ス。グラン

ートといった

ートのチャン

デオ

ーリス

ーム。ラ

オンや、ミシュラン 2

なス

、 ー

ミュージシャン、そし

。自

ブランド、メル

が現在コラボレーションして

は、自 デス

を 化させる

はこうした

協働によって、 い顧客の共感を 成功している。

との

ることに

16 Interbrand 30th Year Initiative 06

メル

デス

の 「メル

た、 リ

デス

ルなブラン

コネクショ

ン」や、オンラインのブランド

」を

し、オムニチャネルブランディ

ングの

た「メル

デス

と大 今

り出している。 ン

デスに

と繋がる

れてこなかった

置されて

り、 ト

レーションした

ートのように クラスの

のコラボレーションやイ ラ

している。

トフ

なり、 に

とコラボ

フェやレストランが

されている。 た、 この

としても

ンし

コネクション」 は、

である。 ショールームと

ここではクル

グランフロントにオー

メル

の「

ーム」

ブランドと

ントの


」 では、

ションやデ

ートや

インなど、

ボレーションコンテン スタイルに ン

、フ

とのコラ

を顧客のライフ

しつつ、そこにメル

の考え方やストーリーを

いる。 この メル

には

デス

デス

んで

があったのか

は、

これは、企業

が決める 「

という、 方

のブランドを

客と

し、 顧客にとっての最

を意味する。 この

とっての最

」 を

フスタイルの

」 を

するという

って、 「顧客に

ーワードに、 顧客のライ

りにある

ーティストを選

の代

」ではなく、 「顧

なブランドや

しコラボレーションを

うことで、 オムニチャネルでの新しいブラ

ともいえるブランドだが、そのブランドイ

ンド

企業が発信するワンウェイの情報発信が

メージの

れ、

やレク

た。 顧客の デス

ある

に新しい顧客の スの

りを図る必要に

は 2010 年、 業

してい

られたメル の言

か、

か をブランドステー

トメントとして再

した。

を一

して

できたのだという。

しい時代とは、 ュレーション、 コーディ

ネーション、 インテグレーションの時代とも 言えるかもしれない。 しかしそれでも重要な のは、自 ション つ、

のブランドの価値と、 コラボレー にとってのメリ

トを共

しつ

できることなのである。

Interbrand 30th Year Initiative 06 17


顧客の共感を

ブランドストーリーを ぎ出す

ー リーのケーススタディ オムニチャネル時代には、デジタルメディ

ネジメントで顧客を

その

を活用することでさ チ

イントを、 や時

シームレスに結 ただ繋

だけでは

意味を

きない。そこには顧

したくなる

か」こそ、顧客が感

つ「ストーリー」に

にしたくなる

コミュニティと共 だ。 その 「

を飛び越えて

することができる。しかし

客が共感し、

1

なブランドの

業の

して

ンの

せ、その

リーは

れたトレンチコートと

リーブランドとして

きた。しかし

なブラン

とロイ

に成功している。

ジション

ログとデジタルとシー

の通り、 ー

用された

する、顧客に

し、強

ムレスに繋ぎ、新しいフ リティの

かが必要

ションブラン

リーは、ブランド

ドストーリーで

ならない。

となる概念 を再

か、自

売やライ

していたがために、一

のラグジュ

ンスを

用されて

に事業を

したブランド

18 Interbrand 30th Year Initiative 06

ンドに

している

していた。

するために、 200 年

した

ンジェラ

イリー 現チーフ

クリ

ブラ

ーレン

と、 時の

イティブディレクター、 クリスト

オフィ

ンド

により、 新たなブラ

リー」 が再

ブランドの ティ

された。

であり

との

化 」 を図る

だけではなく、新しい

であ

は、

や、 1

れのデジタル世代をター された。

来のラグジュ を、 れや

える

のブランドが自らを 「デモクラティ

が、 ー

ること自

リーはその

0年

トとし

リーブランドは、 一

スモデルと言える。 そうした中で、 と言い

」 という価値を活かし、 「デモクラ

イティ

ジション 「デモクラティ

グジュ

る「

クリ

ジネ 用

ク」

んでいる

現化のために、 ター


トが日

用しているあら

ーシャルメディ

た、 方

や、デジタルを活用し

型のコミュニケーションを

った。

来型のル

クブ

ション、 ーシャル ブ

クの、 を

クへのシフトもその

やインタラク

したデジタル

とつだ。 社の

イコンであるトレンチをテー

型のオンライン

にした

トブ

や、ショーのライブストリーミ

ングに加えて発表されたばかりの ルタイムにワンクリ

トでオー

とも言える

ター

トに

ロジェクトを された「新しい

を取り出してフ

レンドを した

ンな

ら、 世界中を飛び回り、どこでも ら

できる

など、それ自

えたフラ

った。

クで

を、自

をリ

し、

くの

」な

トか

ションのト

で取り置き して

うと

いった

をとっているからだ。

ショーイ

ントなども 「

オンライン上だけではなく、 リ ら

して新しく

がら、大 客

めて今日

インでありな

イネージの

なものに

ションショーの

がさりげなく

イブ

んだものだ。

ドなデ

なデジタル

」 でありなが

めてクラフテ

ルな

で顧

えている。

には発売

われ、その

がラ

信される。 トレンチコートのモデ

ルが

ランウェイの

上で

となり、

の テ

クな

がった。 ー

に世界で

っているその レル

への

めて

だけでなく

ローチにもつな

リーは、 オムニチャネルの

でシームレスな顧客

をつくってきただ

けではない。 オムニチャネルで 「ラグジュ リーブランドの

化」 というストーリーを

することで、 新しい顧客の共感を見事に

つかみ、

んできたのだ。

Interbrand 30th Year Initiative 06 19


オムニチャネル時代のブランディングに必要なこと 今回取り上げた 3 つのケーススタディは、

2014 年時点でのオムニチャネル化の成功ケースとされている。 しかし、いずれも、 決してテクノロジーありきで、

オムニチャネル化を図っているわけではないことに留意されたい。 3 つのブランドに共通するのは、型通りに言えば「企業からのワンウェイではない情報発信」 「顧客の参加と共感」 「協働やコラボレーション」 「ストーリー重視」 となる。

しかしそうした概念を越えた共通の感覚が存在している。

それは、自社のブランドが大事にしている考え方を伝え、顧客資産を育てるために、

最適なコミュニケーションや販売のチャネルを、俊敏に嗅ぎ取って選んでいっているという感覚だ。 その結果として、オンラインとオフラインをシームレスに繋ぎ、

顧客との繋がりを強めるオムニチャネル化に至っているのである。

20 Interbrand 30th Year Initiative 06


企業が大事にすべきことは、その時代毎にあった。

それが、 「モノづくりへのこだわり」とされた時代もある。

「ブランディング 1.0」時代には「イメージや完璧な世界観へのこだわり」 が重視され、

そのこだわりは「ブランディング 2.0」時代に「企業価値を増大させることへのこだわり」 へと進化した。

そして今、 オムニチャネル時代の到来と共に訪れようとしている「ブランディング 3.0」 時代には、 「顧客との繋がりを強めることへのこだわり」が問われはじめている。

テクノロジーはそのために活用されてこそ意味のあるものになる。 ブランドの表現もしかり。 だからこそ、もう一度、 自社のブランドの価値を問い直し、顧客のことを改めて思い直そう。 顧客をブランドの真ん中に置いてみて、この時代に、

どうしたらもっと顧客と繋がることができるのかを真摯に見つめよう。 この問いこそ「日本ブランド」が再び飛躍するための新たな出発点だ。

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インターブランドジャパン 松尾任人 Creative Director 五十嵐理香 Design Director 安達浩之 Senior Consultant 勝呂和央 Senior Consultant 天野洋介 Senior Consultant 中村容子 Senior Designer

インターブランドについて インターブランドは、1974 年、ロンドンで設立された 世界最大のブランドコンサルティング会社である。世界 27 カ国、約 40 のオフィスを拠点に、グローバルでブラ ンドの価値を創り、高め続ける支援を行う。インターブ ランドの「ブランド価値評価」は、ISO により世界で最初 にブランドの金銭的価値測定における世界標準として認 められ、グローバルのブランドランキングである“Best Global Brands”などのレポートを広く公表している。 インターブランドジャパンは、ロンドン、ニューヨークに 次ぐ、インターブランド第 3 の拠点として、1983 年、東京 に設立された。ブランド戦略構築をリードするコンサル タント、 ブランドのネーミング、スローガン、メッセージン グ、ロゴ・パッケージ・空間・デジタルのデザインを開発す るクリエイターが在籍し、 さまざまな企業・団体に対して、 トータルにブランディングサービスを提供している。著書 「ブランディング7つの原則」 (日本経済新聞出版社刊) http://interbrand.com/ja/


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