各国のポジション(IGES資料)

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参考資料2

リオ+20 に向けた主要国・機関のポジションの整理1 -リオ+20 事務局(UNDESA)に対する主要国・機関のサブミッション (2011 年 11 月 1 日付)の整理- 2012 年 1 月 11 日 (財)地球環境戦略研究機関

目次 Part I. 総論 .................................................................................................................................. 2 1-1. 期待される会議成果 ................................................................................................................................... 2 1-2. 新たな課題・優先課題 ................................................................................................................................ 3

Part II. 各論:リオ+20 における2つのテーマ ............................................................................ 5 2-1. 持続可能な開発及び貧困根絶の文脈におけるグリーン経済 ....................................................................... 5 2-2. 持続可能な開発のための制度的枠組み(IFSD)..................................................................................... 28

Part III. その他 .......................................................................................................................... 38 3-1. ポスト・ミレニアム開発目標(ポスト MDGs)/持続可能な開発目標(SDGs) .................................... 38

別添:リオ+20 に向けた主要国・機関のポジションの整理表

本レポートは、各項目それぞれ下記の主要国・機関を対象とした。 1.

2.

総論 1-1.期待される 会議成果 1-2. 新たな課 題・優先課題

CARICOM、 EU、 G77+中国、 SIDS

アメリカ、アルジェリア、アルゼンチ ン、イギリス、インド、インドネシア、 オーストラリア、カナダ、韓国、ケニ ア、スイス、中国、日本、ニュージー ランド、ノルウェー、ブラジル、南ア フリカ、ロシア

各論:リオ+20 における2つのテーマ EU、 オーストラリア、ブラジル、カナダ、 2-1. 持続可能な G77+中国 中国、インド、インドネシア、ノルウ 開発及び貧困根 ェー、韓国、スイス、南アフリカ、イ 絶の文脈におけ ギリス、アメリカ合衆国 るグリーン経済 CARICOM、 アメリカ、アルジェリア、アルゼンチ 2-2. 持続可能な EU、 ン、イギリス、インド、インドネシア、 開発のための制 G77+中国、 オーストラリア、カナダ、韓国、ケニ 度的枠組み SIDS ア、スイス、中国、ドイツ、日本、ニ (IFSD) ュージーランド、ノルウェー、ブラジ ル、フランス、南アフリカ、ロシア

3.

その他 3-1. ポスト・ミ レニアム開発目 標(ポスト MDGs)/持続可 能な開発目標 (SDGs)

CARICOM、 EU、 G77+中国、 SIDS

アメリカ、アルジェリア、アルゼンチ ン、イギリス、インド、インドネシア、 オーストラリア、カナダ、韓国、ケニ ア、コロンビア、スイス、中国、日本、 ニュージーランド、ノルウェー、ブラ ジル、南アフリカ、ロシア

アジア太平洋地域、 アフリカ地域、 アラブ地域、 ヨーロッパ地域、 ラテン・アメリカ地域

ADB、GEF、 IMF、OECD、 UNDP、UNEP、 世銀

OECD、世銀

アジア太平洋地域、 アフリカ地域、 アラブ地域、 ヨーロッパ地域、 ラテン・アメリカ地域

ADB、CEB、 ECLAC, GEF、IMF、 NEASPEC、 OECD、UNDP、 UNEP、世銀

アジア太平洋地域、 アフリカ地域、 アラブ地域、 ヨーロッパ地域、 ラテン・アメリカ地域

ADB、GEF、 IMF、OECD、 UNDP、UNEP、 世銀

本レポートは、環境省請負業務「平成 23 年度リオ+20 国内準備委員会設置運営業務」の一部として実施された研究成果の一 部である。/This paper is a part of IGES research outcomes funded by the Ministry of the Environment, Japan.

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主観的分類を避けるため、国、地域連合、機関等の順序は、アルファベット順とした。 To avoid any substantive categorization of countries and organizations, this paper utilizes alphabetical order according to political groups, countries, regional meetings, and organizations.

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Part I. 総論 ※各国・機関のステートメントの原文・詳細は、別添表 1-1(p.2~16)を参照。

1-1. 

期待される会議成果 全体的に、各国、各地域、および、各機関は、持続可能な開発の社会、経済、環境の3つ の柱に統合的に取組むための原則(principles)や行動枠組み(framework of action)の 策定を主張している。

米国・カナダは持続可能な開発のための取組みの透明性と説明責任の確保が重要であると 主張している。

EU をはじめとする欧州諸国は、グリーン経済ロードマップの策定および UNEP の専門 機関化を強く主張するとともに、様々なステークホルダーの意思決定プロセスへの参加を 促進するための「新たなアライアンス」(a new alliance with stakeholders)の構築を求 めている。

G77+中国をはじめとする途上国諸国は、 「共通だか差異ある責任」の原則に従い、安定し た、かつ、予見できる財政資源の確保、および、技術移転と能力開発への効果的アクセス を担保するための行動枠組みの策定を主張している。

中国は、様々なステークホルダーの参加とともに政府主導のコンセンサス合意を主張する 一方、ブラジルは、非回帰(non-regression)原則を主張しこれまでの合意の反復にとど まることは避けたい意向である。

小島嶼国、オーストラリア、ニュージーランド等は、ブルー経済の促進とともに、同地域 の持続可能性および気候変動対策実施の強化を強調している。

アラブ地域は、持続可能な開発のための情報・データに係るネットワーク構築を主張して いる。

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1-2. 

新たな課題・優先課題 各国・各地域・各機関により優先課題は異なるが、全体的に以下の課題が主要課題として 挙げられている。*が示す課題は言及が多い課題である。 主要国・機関・各地域

- *食糧危機・エネルギー 危機・経済危機 - *資源の非持続可能な 利用 - *雇用(グリーン雇用) - *気候変動と適応・レジ リエンス - *生物多様性 - *水と衛生 - *震災対策

-

*都市化・都市化 *海洋酸性化 干ばつ・砂漠化 土地荒廃 異 常気象 現象 の社 会的影響 保健 氷河の融解 洪水・山域の荒廃 技術移転

-

-

リオ+20 事務局2 (Sha Zukang) グリーン雇用と社 会的包摂による貧 困根絶 食糧安全保障と持 続可能な農業 エネルギー 持続可能な都市 海洋管理 レジリエンスの改 善と震災対策

日本 -

防災 エネルギー 食糧安全保障 水 都市 持続可能な開発の ための教育 - 全球地球観測シス テムのシステム (GEOSS) - 技術革新とグリー ン革新 - 生物多様性

<主要課題> 

エネルギーについては、EU、オーストラリア、韓国、ノルウェー、UNDP、世銀等が 「Sustainable Energy for All(すべての人に持続可能なエネルギーを) 」を支持し、その 他の多くの国・機関は、持続可能なエネルギーの担保の重要性を言及している。

食糧安全保障については、アメリカ、インド、オーストラリア、韓国、日本ア等が適切で 安全、かつ、衛生な食品へのアクセス確保のための農業分野への投資拡大が食糧安全保障 の実現に重要であり、グリーン経済への移行に不可欠であると主張している。

水管理については、EU、アメリカ、オーストラリア、韓国、スイスをはじめ、水・エネ ルギー・食糧に統合的に取組む(water/energy/food nexus)ことが重要であり、MDGs の達成に向けて更なる努力が必要であるとの認識が多い。

生物多様性については、EU、アメリカ、オーストラリア、スイス、ノルウェー、世銀等 をはじめ、グローバル、地域、国家レベルにおいて生物多様性保全と生態系サービスの持 続可能な利用を促進することが、グリーン経済への移行において、雇用やビジネス機会を 促進し、持続可能な生計手段の確保を通じて貧困根絶に繋がるとの見解が多い。

海洋については、EU、アメリカ、世銀等が持続可能かつ生物多様な海洋が、食糧供給や 雇用などを通して人間生活および社会の成長に不可欠であり、包括的かつ統合的な取組み が温暖化・酸性化・汚染等の解決に重要であると強調している。小島嶼国、オーストラリ ア、ニュージーランド等は、ブルー経済の促進を主張している。

都市については、EU、アメリカ、日本などが、グリーン経済への移行には、優良事例に 基づいた持続可能な都市の推進が重要であり、この実現にはパートナーシップや多様なス テークホルダーの参加が必要であるとの見解である。

ECE地域準備会合における国連持続可能な開発会議(リオ+20) 事務局長・国連事務次長シャ・ズカン氏のステ ートメントより抜粋。

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3


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Part II. 各論:リオ+20 における2つのテーマ 2-1. 持続可能な開発及び貧困根絶の文脈におけるグリーン経済 (1)まとめ (2)課題別概要 (3)各国別概要

2-2.

持続可能な開発のための制度的枠組み(IFSD)

(1)まとめ/Summary (2)国際環境ガバナンス(IEG) (3)持続可能な開発のための制度的枠組み(IFSD)

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(1)

まとめ

※各国・機関のステートメントの原文・詳細は、後述(3)各国別概要(p.9~24)および別添表 2-2-1(p.17~34)を参照。

1.1

期待される会議成果

成果文書 リオ+20 における成果文書においては、EU や韓国を中心として、グローバルなレベルでのグリ ーン経済に対する政治的コミットメントが明記されることが期待されている。グリーン経済の実 施については各国の状況に基づく政策余地が必要であるとの主張は多いが、グリーン経済そのも のについて明確に反対する国や機関は見られないため、このような文言が記載される可能性は高 いと考えられる。 しかし一方で、新興国や開発途上国を中心としてリオ第 7 原則である共通だが差異ある責任を主 張する国が多く、先進国による率先的な取組や開発途上国に対する資金協力・技術移転を促進す るような文言の導入が、これらの国々より求められるであろう。同様に、貧困根絶が極めて重要 な課題であることを再認識する、またグリーン経済はいかなる形式の保護主義や新たな援助の条 件などを認めるべきではない、などの文言の反映が主張されると考えられる。 また、独自の主張を展開する国々も見られ、ブラジルや南アフリカ共和国は社会的側面を強調し た包括的グリーン経済を、オーストラリアや島嶼国は海洋の重要性を強調したブルー経済を成果 文書に記載することを求めることが予期される。 グリーン経済に向けた政策ツール・メカニズムの開発 グリーン経済への移行を強く推す国々からは、その内容や時間軸はそれぞれに異なるが、国際的 なグリーン経済ロードマップの作成が提案されている。その一方で、インドは定量的な目標の設 定を支持しないことを明示しており、リオ+20 においてこれは大きな議題となると考えられる。 インドは持続可能な開発目標(SDGs)に対しても同様に、それは先進国が目指すべきものであ るという考えを示しており、SDGs の普遍性を支持する国々との見解の相違が見られる。 グローバルなグリーン経済に向けてベストプラクティスの共有が必要であることは多くの国々 が認めるところであり、そのためにツールボックスの作成を提案している国もある。また韓国や スイスは、グリーン経済国家戦略や国家グリーン経済行動計画など国家レベルでの作業を提案し ており、インドもこれに一定の理解を示している。これらについて特段明確な反対を示している 国は見られないこともあり、また各国の主権も尊重されるものであることから、これらは比較的 合意が得られやすい事項であると考えられる。 また主として先進諸国から、グリーン経済や持続可能な開発の進捗を測定する指標について言及 6


されており、OECD の成果や自国の経験が紹介されている。新興国や開発途上国からの意見が少 ないため、議論の動向を予測することは困難であるが、ブラジルからの極端に複雑であまりにも 多くの要素を含む指標は避けるべきであるとの指摘は特筆に値するであろう。 一方で主として新興国・開発途上国からは、先進国は資金提供や技術移転、能力向上や市場アク セスの拡大などを通じて、開発途上国がグリーン経済を発展させるための支援を行うべきである との主張がなされ、インドからはより具体的に持続可能な開発基金の創設が提案されている。こ れに対し EU や韓国からは、各国における能力向上の重要性が指摘され、各国に助言を提供する ための能力向上計画の策定や、開発途上国におけるグリーン経済戦略の確立を目的としたグロー バル・グリーン成長パートナーシップの確立が提案されている。

1.2

日本政府提案との関係

ここでは、日本政府によるグリーン経済に係る提案を抜粋・集約し、それに対する各国意見との 関係について考察する。 日本政府提案 1

共通だが差異ある責任

共通だが差異ある責任は、すべての国が地球環境の悪化に対してその能力に応じた責任を果たす ことにより持続可能な開発への取組を行うことを意味するものであり、国際社会を先進国と途上 国に二分化し、このグループを固定化することを意味するものでない。リオ+20 では、国際社会 の主体の多様化を踏まえ各ステークホルダー、特に新興国、民間セクターの役割により焦点をあ てる必要があり、先進国による途上国への支援という従来型の支援の枠組みを越えて、様々なス テークホルダー間のパートナーシップを築くべきである 

様々なステークホルダー間のパートナーシップについては韓国を初め、多くの国からの支持 を得られるであろうが、共通だが差異ある責任に基づく新興国の役割強化については、中国 やインドからの反発が予想される。ただし、ブラジルについては多少の不透明感があり、交 渉の余地ありとも考えられる。

日本政府提案 2

ポスト MDGs および人間の安全保障

ポスト MDGs 策定を念頭に、人間の安全保障を指導理念と位置づけながら、新しい国際開発戦 略(又はその柱)を策定するとともに、ポスト MDGs 策定に向け、様々なステークホルダーの関 与を得つつ、プロセスを本格化することを提案する 

MDGs と SDGs の関係を明確に示している国は少ないが、ブラジルやノルウェーは相補完的 なもの、インドは性格を異にするものとの見解を示している。ポスト MDGs について言及し た国は少なく、この分野の議論の未成熟性が伺われるため、日本は主導的な役割を担うこと ができるかもしれない。なお、人間の安全保障の重要性については韓国からも示されている。

日本政府提案 3

政策ツールボックスおよびグリーン経済戦略 7


グリーン・イノベーションをはじめとし、防災、エネルギー、食料安全保障、水資源の保全と活 用、持続可能なまちづくり、持続可能な開発のための教育、地球観測システム(GEOSS)の構 築、生物多様性などに関する様々な手法や経験を含む政策ツールボックスを各国が共有し、以て これを活用しながら、各国が各々の発展段階に応じたグリーン経済戦略を作成するための仕組み を構築することに合意することを提案する 

政策ツールボックスやグリーン経済国家戦略は他の国々も提案しているところであり、上述 のように、これらは比較的合意が得られやすい事項であると考えられる。

日本政府提案 4

幸福度

経済社会の進歩の計測には、GDP という単一指標に依存して測定するという従来の方法とは異な る視点が必要であり、このような指標ポスト MDGs の具体的目標を策定する上での基礎ともなる ものであることから、GDP 以外の豊かさの基準として、たとえば、経済社会状況、心身の健康、 (人や人との)関係性という 3 つの柱を軸とする「幸福度」指標の策定作業を促進することを提 案する 

幸福度を GDP を補完する指標として提案している国はなく、日本の独自性が伺われるとこ ろであるが、この提案を本格化させるためには、他の様々に提案されている指標との関係を 明確にし、優位性を主張する必要があるであろう。

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(2)課題別概要 2.1 2-1-1.

グリーン経済に対する認識 EU や韓国などのグリーン経済を強く主張する国々からは、 「グリーン経済はもはや選択 肢ではなく、必須の時代的潮流である」との意見や、 「グリーン経済は経済構造や発展段 階に関係なく、すべての国に対し正の機会を提供するものである」などの意見が示され ている。

2-1-2.

新興国・開発途上国を中心として(G77+中国、インド、インドネシア、南アフリカ共 和国)、グリーン経済は共通だが差異ある責任に基づき推進されるべきであるとの意見が 強く示され、とりわけインドからは開発途上国には特別かつ異なる扱いが必要であると の主張がなされている。

2-1-3.

同様に新興国・開発途上国を中心として(G77+中国、中国、インド)、グリーン経済に おける優先課題は貧困根絶であるとの認識が示されている。

2-1-4.

グリーン経済においてはフリーサイズ(one-size-fits-all)のアプローチは存在せず、各 国の状況や優先順位に基づき、政策余地が設けられるべきだとの意見が先進国から開発 途上国まで広く聞かれる(G77+中国、オーストラリア、インド、インドネシア、韓国、 南アフリカ共和国、スイス、OECD)。

2-1-5.

抽象的な意味でのグリーン経済の概念について注視する必要はあまりなく、むしろ現実 の政策としてより実行的な具現化を強調すべきであると韓国が主張する一方、国際的な レベルでグリーン経済の概念を運用するためには、その主要な要素や特徴を特定し、以 て第一の目的を明確にし、誤用を避けるべきであるとの意見が南アフリカ共和国から示 されている。

2-1-6.

グリーン経済の社会的側面に着目し、包括的グリーン経済(inclusive green economy) という概念がブラジルや南アフリカ共和国から提示されている。

2-1-7.

オーストラリアは、リオ+20 の成果にはブルー経済(blue economy)に向けた取組を推 進するための行動枠組などが含まれるべきと主張している。

2.2

グリーン経済に向けた目標・行動・指標

各国からのインプットでは、大別して、「グリーン経済ロードマップ」、「持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals: SDGs)」、 「ツールボックス」、 「グリーン経済国家戦略・行動 計画」、「グリーン経済/持続可能な開発指標」の 5 つについて意見が示されている。 グリーン経済ロードマップ 2-2-1.

グリーン経済ロードマップについて具体的に言及している国・機関は、EU、韓国、スイ ス、世界銀行であり、すべての国・機関がロードマップは国際的なものであることを明 示的に強調している。 9


2-2-2.

ロードマップの時間軸について、上記のいずれの国・機関も言及しているが、その具体 性や期間は様々であり、EU は一定の時間枠という文言に留める一方、韓国は 10 年(2022 年)、世界銀行は 2030 年、スイスは 20 年(2032 年)を提示している。

2-2-3.

グリーン経済ロードマップの内容も多種多様であり、EU、スイス、世界銀行、韓国の順 に具体性が強まる。

2-2-4.

EU の主張では、グリーン経済ロードマップ(green economy roadmap)には、国・地 域別、分野別の自発的行動のための能力向上計画や、グリーン経済に貢献する分野横断 的かつ国際的な行動が含まれるべきであるとされる。

2-2-5.

スイスは、国際的グリーン経済ロードマップ(international green economy roadmap) には、グリーン経済の概念の共通認識を反映し、持続可能な社会への変革に向けた方向 性を示すビジョンや、ビジョンを行動へと具体化し、それを運用・測定可能とする目的 (objective)、そしてビジョンに向けた段階的なステップや、時間軸に沿う目的の達成を 明示する具体的な目標(target)が必要であるとしている。

2-2-6.

またスイスは、グリーン経済ロードマップに関するガバナンス構造として、レビューや モニタリング機関が必要であると主張している。

2-2-7.

世界銀行は明示的にグリーン経済ロードマップという言葉を使用しているわけではない が、持続可能な開発のためのグローバルロードマップ(global roadmap)のデザインの 一部として、自然資本と生態系サービスを 2030 年までに国家勘定に統合するためのグ ローバルな手段とプロセスや、MDGs を補完する SDGs の 2030 年までの作成などに関 する合意への努力を提案している。

2-2-8.

韓 国 は グ リ ー ン 経 済 へ の グ ロ ー バ ル ロ ー ド マ ッ プ ( Global Roadmap for Green Economy)を提案し、SDGs の作成やグリーン指標(Green Indicators)の特定(2012 ~2014 年)、グリーン経済国家戦略(National Green Economy Strategy)の策定(2013 ~2015 年)、グリーン経済に関する情報を統合・分析するためのセンターの創設(2012 ~2014 年)3、能力向上のためのグリーンネットワーク(Green Network for Capacity Building)の確立を提示している。

2-2-9.

これらの一方でインドは、持続可能な開発に向けた定量的な目標を規定したり目指した りすることを支持しないことを明示している。

SDGs4 2-2-10. SDGs の作成を明確に支持している国々は、オーストラリア、ブラジル、ノルウェー、 韓国、スイスであり、米国は考慮に値するもの、インドは先進国が目指すべきものとい う理解を示している。 2-2-11. SDGs を支持する国々の中には、その本質は普遍的であり、先進国と開発途上国を平等 な基準で対象とすべきであると考えている国もある(ブラジル、ノルウェー、スイス) 3

クリーン生産支援のための国際的な知識の拠点の拡大の重要性については、米国も指摘してい る。 4 SDGs については、リオ+20 における各国・機関の位置づけが異なるため、後述 PartIII、3-1 でより詳細にまとめている。 10


2-2-12. また SDGs は MDGs に置き換わるものであるべきではなく、むしろ補完し拡充すべきも のであるという意見もある(ブラジル、ノルウェー)。 2-2-13. オーストラリアからは、SDGs の進捗を報告するメカニズムの検討が必要である点が指 摘されている。 ツールボックス 2-2-14. グローバルなグリーン経済の実現のための情報共有の重要性に対する認識から、EU や カナダ、ノルウェー、スイスは、ベストプラクティスを共有するためのツールボックス (toolbox) (もしくはツールキット(toolkit))について言及している(ブラジルおよび 南アフリカ共和国も同様のメカニズムの重要性について言及)。 2-2-15. このツールボックスには、応用可能なアプローチや手段、政策オプションなど、関心の ある国が様々なメニューから採り得る行動やベストプラクティスなどが含まれるべきと され、カナダは自国の経験から一例を挙げている。 グリーン経済国家戦略・行動計画 2-2-16. 韓国およびスイスはそれぞれ、グリーン経済国家戦略(National Green Economy Strategy)、国家グリーン経済行動計画(national green economy action plan)を提案 しており、インドもこれに一定の理解を示している。 2-2-17. 韓国は、経済発展や国家の特定の状況を反映し、グリーン投資や技術革新のための手段 や主要な分野を含む本戦略を作成し、提出すべきとしている。 2-2-18. スイスは、各国の優先順位やニーズに基づいて 2 年以内に本行動計画を策定し、10 年以 内に実施することが目標となるとし、また本行動計画は事前・事後評価のために提出さ れ、定期的な更新が望まれるとしている。 グリーン経済/持続可能な開発指標 2-2-19. 主として先進諸国から(EU、カナダ、韓国、スイス、英国、米国)、グリーン経済や持 続可能な開発を評価・報告するための指標について提示されている。 2-2-20. EU やカナダ、英国は、OECD のグリーン成長指標に対し一定の評価を示しており、EU はこれに沿うようにヘッドライン指標の導入を主張している。 2-2-21. スイスは、自然資源利用や自然資本などに関する指標ととともに、金銭的な指標の重要 性を指摘し、その報告制度について、2013 年までに制度面の整備と作業計画の策定、2014 年からは世界的なグリーン経済の進展について国連からの定期報告、2020 年までに世界 の半分の国からのグリーン経済の進展報告、そして 2050 年までにすべての国が比較可 能な方法でグリーン経済の進展報告を実施するという目標を提案している。 2-2-22. 英国は、持続可能な消費と生産や気候変動、エネルギーや自然資源保全などを含む持続 可能な開発指標(Sustainable Development indicators)を開発し、現在その改正を実 施していることを紹介している。 2-2-23. 米国からは、自然資源の劣化や健康への負の影響などの外部不経済の評価は、自然資源 11


を定量化し、観測し、評価するための重要な第一歩となるとの見解が示されている。 2-2-24. これらの一方でブラジルは、開発測定のための新たな手法を確立するためのプロセスの 形成を支持するが、極端に複雑であまりにも多くの要素を含む指標は避けるべきである と指摘している。

2.3 2-3-1.

持続可能な消費と生産 多くの先進国が共通だが差異ある責任に基づいて、持続可能な消費と生産に関する取組 を率先してきたという認識を EU が示す一方、G77+中国や中国、インドなどは先進国 によるさらなる取組と開発途上国に対する好事例の提供を求めている。

2-3-2.

SCP に関する 10 年枠組プログラム(10-Year Framework of Programmes on SCP)の 設立を EU は強調し、インドネシアはグリーン経済への移行におけるこの有用性につい て理解を示し、同様にブラジルも持続可能な消費と生産のためのグローバルな協定の採 択を主張している。

2-3-3.

EU やオーストラリア、OECD などを中心として、炭素や資源などの外部性に対する価 格付与の重要性が説かれている。

2-3-4.

環境に著しい負の影響をもたらす補助金を段階的に撤廃すべきことが EU やノルウェー などから主張されている。

2-3-5.

スイスからは、2017 年以内に 25 カ国が、2022 年以内に 60 カ国が、2027 年以内に 120 カ国が、そして 2032 年以内にすべての国が持続可能な公的調達を実施するという目標 が提案されている。

2.4

国際協力と国際貿易

ここでは、「資金援助・技術協力・能力向上」、「パートナーシップ」、「グリーン保護主義」の 3 つについて各国・機関からの意見を集約する。 資金援助・技術協力・能力向上 2-4-1.

新興国・開発途上国からは(中国、インド、南アフリカ共和国)、先進国は資金提供や技 術移転、能力向上や市場アクセスの拡大などを通じて、開発途上国がグリーン経済を発 展させるための支援を行うべきであると主張されている。

2-4-2.

インドはまた、開発途上国に新規・追加・拡大の資金を提供する「持続可能な開発基金 (Sustainable Development Fund)」の創設などを通じて、手頃な価格でのグリーン技 術へのアクセスを可能にすべきであると主張している。

2-4-3.

オーストラリアは自国の ODA 目標を達成するための援助額倍増計画を紹介している。

2-4-4.

先進国の公約非遵守を促すようなオフセットメカニズムを、資金協力において創設すべ きではないという指摘が G77+中国からなされている。

2-4-5.

近年の OECD 研究成果より、技術移転を促す主要な要素は需要国の吸収能力であり、開 12


発途上国への技術移転を促すためにはベストプラクティスのさらなる拡大が必要である ことが示されている。 2-4-6.

EU からは、各国に助言を提供し、また各国からの基金へのアクセスを支援するため、 既存機構の協調や効率的な資金利用を通じた能力向上計画(capacity development scheme)を立ち上げるべきであると提案されている。

2-4-7.

雇用確保を支援し、グリーン経済の移行に伴う社会的費用を削減するため、国際社会は 開発途上国において教育コースや職業訓練の機会を提供すべきであるとの見解が中国よ り示されている。

パートナーシップ 2-4-8.

開発途上国におけるグリーン経済戦略の確立、およびパイロットプロジェクトの実施支 援を目的としたグローバル・グリーン成長パートナーシップ(Global Green Growth Partnership)の確立が韓国から提案されている。

2-4-9.

このパートナーシップは既存の国連機関や国際的資金制度、もしくは GGGI のような非 営利組織の機能を統合および強化することにより実現できると韓国は強調している。

グリーン保護主義 2-4-10. グリーン経済が新たな貿易障壁を導入するように用いられてはならないと、EU やブラ ジル、インドネシアから明示的に主張されている。 2-4-11. さらに G77 や中国、インド、インドネシアからは、グリーン経済はいかなる形式の保護 主義や一方的措置、その他の国境措置や、援助における新たな条件や基準の設定などを 認めるべきではないと強調されている。 2-4-12. OECD の報告によれば、環境政策に関連して非居住民や海外投資家に対して明らかな差 別を報告した国は現在のところない。 2-4-13. 一方でインドからは、公平かつ公正な貿易レジームのため、OECD 諸国における農産物 に対する生産・輸出補助金の削減や、開発途上国からの労働集約的な製品輸出に影響す る傾斜関税や非関税障壁の撤廃、WTO での特別かつ異なる待遇条項の効果的な実施が必 要である旨が主張されている。

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(3)各国別概要(邦訳) ※段落番号を基に別添表 2-2-1(p.17~34)の原文も合わせて参照のこと。

【政治グループ/Political Group】 3-1.

EU

グリーン経済に対する認識 3-1-1.

グリーン経済は、経済構造や発展段階に関係なく、すべての国に対し、ウィン-ウィン の機会を提供するものであり、単なる既存のコミットメントを集約したものを越えて、 新たな発展パラダイムやビジネスモデルへと我々を導くものである。

3-1-2.

グリーン経済への移行は既存の持続可能な開発の実施を加速し、実施ギャップを埋める 働きをする。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-1-3.

合意された政治文書は、一定の時間枠における国際レベルでの目標や行動を含むグリー ン経済ロードマップなどの実用的な成果により補完されるべきである。

3-1-4.

グリーン経済ロードマップには、国別もしくは地域別、分野別の自発的行動のための能 力向上計画や、グリーン経済に貢献する分野横断的かつ国際的な限られた数の行動が含 まれるべきである。

3-1-5.

サプライチェーンでの持続可能なビジネスモデルの発展や、投資決定における環境的・ 社会的配慮などの企業活動は、グリーン経済ロードマップに対し具体的な貢献となる。

3-1-6.

関心のある国が様々なメニューから採り得る行動や最良慣行を選択できるように、ツー ルボックスもしくはベストプラクティス・ガイドを作成することを提案する。

3-1-7.

経済・社会・環境的側面をバランスよく統合した、GDP を補完する指標のさらなる開発・ 強化が求められ、そこには持続可能な開発の複数の側面を反映したヘッドライン指標が 導入されるべきである。

3-1-8.

異なるレベルでの目標を測定するためには指標が必要であり、アジェンダ 21 や JPOI で の国際社会の合意に則るように、また現在進行中のイニシアティブと整合的となるよう に指標は策定されるべきである。

3-1-9.

比較可能性を担保するため、各国の開発優先順位に準じて差異ある基準が国際レベルで 設定されるべきである。

持続可能な消費と生産 3-1-10. SCP に関する 10 年枠組プログラムを設立すべきである。 3-1-11. 多くの先進国が共通だが差異ある責任に基づいて、持続可能な消費と生産に関する取組 を率先してきた。 3-1-12. 環境への外部性を資源やサービスの価格に反映させ、外部不経済については負のインセ 14


ンティブを与えることが重要である。 3-1-13. 貧しく脆弱なグループを保護しながらも、環境に著しい負の影響をもたらす補助金を段 階的に撤廃するというコミットメントを確立すべきである。 国際協力と国際貿易 3-1-14. 市場開放の確約は重要であり、グリーン経済が新たな貿易障壁を導入するように用いら れてはならない。 3-1-15. 国別もしくは地域別、分野別の助言を関心のあるすべての国に提供し、また申請可能な 基金へのアクセスを支援するため、既存機構の協調や効率的な資金利用を通じた能力向 上計画を立ち上げるべきである。 3-1-16. 助言を求めるための野心的かつ現実的な時間軸は実施の一助となる。 3-1-17. 革新的な資金メカニズムや民間資金の活用を促進するための国際的なプロセスを開始す べきである。

3-2.

G77+中国

グリーン経済に対する認識 3-2-1.

グリーン経済は共通だが差異ある責任に基づき推進されるべきである。

3-2-2.

自国の状況や優先順位に則り、持続可能性への道筋をそれぞれに定める政策余地が再認 識されるべきである。

3-2-3.

グリーン経済について以下のような視点から議論している。 

環境に優しい社会経済活動の実施。

社会的一体性や公平性の確保。

技術移転や持続可能な消費と生産などを通じて持続可能な開発や貧困根絶を達成 するための多国間枠組における国際協力を促すためのツールの活用。

開発のすべての段階に関わる多次元かつ多分野アプローチの適用。

市場メカニズムを設立するための生態系サービスの定量化および評価による影響 の分析。

3-2-4.

どのような成果文書も貧困根絶を引き続き優先すべきであり、貧困層をエンパワーする 開発途上国の取組を支援すべきである。

持続可能な消費と生産 3-2-5.

金融機関の適切な規制や監視の欠如や、過剰なリスク・テイク、先進国における非持続 的な消費と生産が急務の課題であることを再確認する。

3-2-6.

共通だが差異ある責任を考慮しながら、先進国の率先の下、すべての国は持続可能な消 費と生産パターンを推進すべきである。

国際協力と国際貿易 15


3-2-7.

グリーン経済は、いかなる形式の保護主義や一方的措置、その他の国境措置や、援助に おける新たな条件や基準の設定などを認めるべきではなく、開発途上国による製品市場 へのアクセス改善や、貿易を歪曲する措置の是正に貢献するべきである。

3-2-8.

先進国の公約非遵守を促すようなオフセットを資金協力において創設すべきではない。

3-2-9.

リオ+20 は開発途上国の開発優先課題に反するような制約を課すべきではない。

3-3.

オーストラリア

グリーン経済に対する認識 3-3-1.

ブルー経済を達成するため、持続可能な海洋保全管理の促進が急務の課題である。

3-3-2.

ブルー経済をもたらすフリーサイズの行動はない。

3-3-3.

リオ+20 はブルー経済への移行を促進するために、以下の 3 つの役割を果たすことがで きる。 

海洋に関する課題の優先度を高めるため、行動を促す触媒や枠組を提供する。

コーラル・トライアングル・イニシアティブなどのような既存のブルー経済イニシ アティブからの経験を共有する。

 3-3-4.

グローバルスケールでの対応が求められる行動を特定し、推進する。

リオ+20 の成果には、ブルー経済に向けた取組を推進するための行動枠組などが含まれ るべきである。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-3-5.

リオ+20 の成果では、持続可能な開発の成果を測定するための信頼できる枠組に合意す べきであり、SEEA を支援すべきである。

3-3-6.

国際的に合意された持続可能な開発目標(SDGs)の作成を、持続可能な開発に係る国際 的取り組みを促す手段として支持する。

3-3-7.

リオ+20 の成果では、SDGs の策定に合意すべきであり、またその進捗を報告するメカ ニズムの検討が必要である。

持続可能な消費と生産 3-3-8.

リオ+20 の成果は、構造変革や持続可能な生産・投資を促すため、政府に対して持続可 能性を価値付ける価格シグナルの構築を促進するべきである。

国際協力と国際貿易 3-3-9.

GNI の 0.5%というオーストラリア政府の ODA 目標を達成するため、2010~2011 年に おける ODA 総額を 2015~2016 年には倍増させる。

3-3-10. リオ+20 の成果は、官民の資金を含む様々な資金源からの革新的かつ市場に基づく財政 的解決策を支援するべきである。 16


3-4.

ブラジル

グリーン経済に対する認識 3-4-1.

グリーン経済が開発途上国の課題解決に対する先進技術の商業化を促進するものと解釈 されないよう、グリーン経済と持続可能な開発との連携を強調することが重要であり、 グリーン経済は持続可能な開発に向けて各国を動員するための手段として捉えられるべ きである。

3-4-2.

「包括的グリーン経済」という概念は、リオ+20 において社会的側面に関する政策をよ り直接的かつ広範囲に議論する余地を与えるものである。

3-4-3.

包括的グリーン経済プログラムは、国内・国際協力手段に焦点を当てた一連の具体的な イニシアティブを確立するものであり、そのような政治公約は持続可能な開発のための 優先的な目標を特定し、アクターの政策や行動を指導する。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-4-4.

たとえば「10 の持続可能な開発目標(SDGs)」の定義づけを、準備会合での交渉を基に、 リオ+20 において達成できる。

3-4-5.

SDGs は MDGs に置き換わるものであるべきではなく、むしろ補完し拡充すべきもので あり、各国の現状や優先順位に一定の配慮を与えた上で、特定の期限と伴に定量可能で 実証可能な具体的な目的を含む必要がある。

3-4-6.

SDGs の目標は普遍的であり、先進国と開発途上国を平等な基準で対象とすべきである。

3-4-7.

SDGs は可能な限り既存の合意文書(たとえばアジェンダ 21)に基づくべきである。

3-4-8.

環境的、社会的、経済的な側面を反映した開発測定のための新たな手法を確立するため のプロセスの形成を支持するが、極端に複雑であまりにも多くの要素を含む指標は避け るべきである。

3-4-9.

アイディアや実施済みのイニシアティブの蓄積など、最良慣行を普及させることを目的 としたメカニズムの確立を、リオ+20 における成果として提案する。

3-4-10. リオ+20 のひとつの大きな課題は赤道原則のような経験をどのように拡大させるかと いうことであり、ブラジルのグリーン議定書はこの点において、より大きな視野でのイ ニシアティブ始動の基礎となるであろう。 3-4-11. リオ+20 では、持続可能性報告書の作成・公表を拡大するためのイニシアティブに合意 することができ、また株式市場における参照としての比較可能な持続可能性指標に関す る議論を促進することができる。 持続可能な消費と生産 3-4-12. リオ+20 は持続可能な消費と生産のためのグローバルな協定を採択すべきである。 3-4-13. リオ+20 は各国に自国の持続可能な調達計画を紹介する機会を与え、そのような計画を 反映する概念的枠組みの議論を活性化させることができる。 3-4-14. 各国は、持続可能な開発や包括的グリーン経済が、科学技術に関する投資の決定におい 17


て優先的に考慮されるような合意に達することができ、またその目標値についても検討 することができる。 国際協力と国際貿易 3-4-15. 貿易障壁を生じさせるような手段は避けるべきである。

3-5.

カナダ

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-5-1.

グリーン経済ツールキットはリオ+20 における重要な貢献となるであろう(「付録 I-グ リーン経済ツールキットのための政策ツールと最良慣行」参照)。

3-5-2.

政策効果の明示や意思決定のためのデータ提供のために柔軟に応用できる指標が、グリ ーン経済に向けた進捗を証明するために必要であり、自発的な設定に向けたプロセスを 支持する。

3-5-3.

最良慣行や情報の共有を促進し、進捗を測定する能力を向上し、民間企業の参画を支援 する成果文書を期待する。

3-5-4.

OECD のグリーン成長に関する取組を基盤として、指標項目を特定している(「付録 II -グリーン成長/グリーン経済指標の提案」参照)。

3-6.

中国

グリーン経済に対する認識 3-6-1.

グリーン経済を発展させる主目標は貧困根絶であり、またそれはグリーン経済に関する 政策形成・実施の基準となるべきである。

持続可能な消費と生産 3-6-2.

先進国は非持続的な生産や生活、消費を変革することを率先すべきであり、開発途上国 に対する好事例を確立すべきである。

国際協力と国際貿易 3-6-3.

国際社会は開発途上国の発展を可能にするための環境を整備すべきであり、グリーン保 護貿易主義や援助条件の設定に反対すべきである。

3-6-4.

先進国は資金提供や技術移転、能力向上や市場アクセスの拡大などを通じて、開発途上 国がグリーン経済を発展させるための支援を行うべきである。

3-6-5.

雇用確保を支援し、グリーン経済の移行に伴う社会的費用を削減するため、国際社会は 開発途上国において教育コースや職業訓練の機会を提供すべきである。

18


3-7.

インド

グリーン経済に対する認識 

グリーン経済は根本的かつ優先的な課題に対するひとつの手法であり、それ自体が目的 として捉えられるべきではない。

グリーン経済に対する共通アプローチは共通だが差異ある責任の原則に基づくべきであ り、国家の能力を考慮して開発途上国には特別かつ異なる扱いが必要である。

多くの選択肢の中からそれぞれ独自の選択をし、国家の開発レベルや優先順位に基づい て持続可能な開発のための道筋を決定するために、グリーン経済は広い柔軟性や政策の 余地を国家に認めるものである。

貧困根絶がグリーン経済の包括的な目的・基準となるべきである。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 

開発レベルや国家の状況、優先順位に基づき、各国別戦略は策定されるかもしれない。

持続可能な開発に向けた定量的な目標を規定したり目指したりすることを支持しない。

まず先進国の公約を求める共通だが差異ある責任という原則は、持続可能な開発に関す るすべての成果において促されるべきであり、この点から MDGs と持続可能な開発目標 (SDGs)の文脈は全く異なるものであると言える。

持続可能な消費と生産 

先進国は非持続的な消費パターンとそれに伴うエコロジカル・フットプリントを削減し なければならず、開発途上国が公正で持続的な成長を成し遂げるためのエコロジカルな 空間を開放すべきである。

公正性や食糧安全保障、均衡のとれた地域的開発などの目標があるとき、ある価格は補 助金により社会的費用から逸脱すべきであり、このような補助金の扱いは各国の主権に 委ねられるべきである。

国際協力と国際貿易 

先進国はグリーン経済という名の下で、開発途上国からの輸出品に対する関税や非関税 障壁、援助条件、およびいかなる形式でのグリーン保護主義を設けるべきではない。

公平かつ公正な貿易レジームのため、OECD 諸国における農産物に対する生産・輸出補 助金の削減や、開発途上国からの労働集約的な製品輸出に影響する傾斜関税や非関税障 壁の撤廃、WTO の特別かつ異なる待遇条項の効果的な実施が必要である。

多くのグリーン技術は先進国にあるため、グリーン経済はこれらの技術を譲許的な条件 で移転することを促し、開発途上国における経済のグリーン化を支援すべきである。

グリーン技術は公的分野に位置すべきものであり、開発途上国に新規・追加・拡大の資 金を提供する「持続可能な開発基金」の創設などを通じて、手頃な価格でのアクセスを 可能にすべきである。 19


ドナー間での援助協調やモントレー合意にあるような ODA の拡大、持続可能な開発基 金の創設などの手法を通じ、経済をグリーン化することについて、リオ+20 での具体的 な成果を期待する。

3-8.

インドネシア

グリーン経済に対する認識 3-8-1.

グリーン経済は持続可能な消費と生産に繋がる資源効率性を要とする開発パラダイムで あると考える。

3-8-2.

共通だが差異ある責任の原則に基づくならば、フリーサイズのアプローチは存在せず、 リオ+20 の成果に基づく実施手法は、各国制度等を考慮すべきである。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-8-3.

グリーン経済の実施に関する課題は、グリーン経済を国家開発計画において主流化する ことで解決されるべきである。

持続可能な消費と生産 3-8-4.

持続可能な消費と生産に関する 10 年枠組に関する合意は、リオ+20 においてグリーン 経済への移行を支援するために有用である。

国際協力と国際貿易 3-8-5.

グリーン経済を促進・実施するための手段は、恣意的な差別や国際貿易における偽装的 な規制、新たな援助条件となるべきではない。

3-8-6.

リオ+20 の成果は、グリーン経済促進のためのさらなる官民協働の重要性を模索すべき であり、また共通だが差異ある責任を考慮しつつ、グローバルな取組に具体的に貢献す べきである。

3-9.

ノルウェー

グリーン経済に対する認識 3-9-1.

グリーン雇用の促進がグリーン経済への移行の鍵である。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-9-2.

持続可能な開発に向けた政治的コミットメントの明示としての持続可能な開発目標 (SDGs)の開発を支援する。

3-9-3.

SDGs は持続可能な開発の三つの側面を統合する本質的に普遍的なものであるべきであ り、また MDGs を補完し、ポスト MDGs アジェンダに向けたリオから重要な貢献とな 20


るべきである。 3-9-4.

経験や最良慣行の共有に基づき、応用可能なアプローチや手段、政策オプションなどの ツールボックスがリオにおける成果となるべきである。

持続可能な消費と生産 3-9-5.

リオはグリーン税制やインセンティブの実施を促す提言を示すべきである。

3-9-6.

脆弱なグループへの補償手段を用いながら、環境に悪影響を及ぼす補助金の排除・削減 を促進すべきである。

3-10.

韓国

グリーン経済に対する認識 3-10-1.

持続可能な開発のための道筋としてのグリーン経済はもはや選択肢ではなく、必須の時 代的潮流である。

3-10-2.

抽象的な意味でのグリーン経済の概念について注視する必要はあまりなく、むしろ現実 の政策としてより実行的な具現化を強調すべきである。

3-10-3.

グリーン経済は新たな貧困根絶のためのエンジンとして、包括的成長を導入するための 手段であり、女性や子どもなど環境破壊に脆弱な人々に特別な配慮をすべきものである。

3-10-4.

グリーン経済を実施する上で、フリーサイズのアプローチは存在せず、各国が独自に具 体的な国家戦略を立案できるが、一方で、その戦略の核は成長と環境保護の統合と調和 であるべきである。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-10-5.

リオ+20 においては、グリーン経済イニシアティブや持続可能な開発の達成のための プログラムに対する強力なコミットメントを含む政治的文書の作成が望ましい。

3-10-6.

成果文書は、グリーン経済の要素を特定し、精緻化し、支持するべきであり、加盟国が グリーン経済の要素を発展できるような支援基盤を形成する特定の条項を含むべきで ある。

3-10-7.

成果文書は、国際社会と各国が共同または個別に採り得る、グリーン経済へのグローバ ルロードマップや具体的かつ行動志向のプログラムや行動計画を提示すべきである。

3-10-8.

行動志向の側面を押し出すためには、成果文書は現行の社会経済活動とグリーン経済と の間を橋渡しするための特定の移行手段を含むべきである。

3-10-9.

グリーン経済を実現するため、グリーン経済へのロードマップを提案する。 

グローバルな環境問題を反映し、成長のための特定の目標を含む持続可能な開発目 標(SDGs)を作成すべきである。

グリーン経済の進捗度を測定するためのグリーン指標を特定し、比較や評価、フィ ードバックのための基盤を整備すべきである。

経済発展や国家の特定の状況を反映し、グリーン投資や技術革新のための手段や主 21


要な分野を含むグリーン経済国家戦略を作成し、提出すべきである。 

国際的・地域的な知識共有のプラットフォームとして、グリーン経済に関する情報 を統合・分析するためのセンターを創設すべきである。このセンターはまた、国家 間比較等の基盤となるデータベースの維持の役割をも担うことができる。

能力向上のためのグリーンネットワークを確立すべきである。

2022 年のリオ+30 に向け、リオ+20 後 10 年間の時間軸を提示する。 

2012-2014:グリーン経済の実施を評価するため、中心センターやデータプラ ットフォーム、情報発信手続き、革新や技術共有のための基盤を含むグリーン 指標や基準の確立

2013-2015:国家グリーン経済戦略の策定

2016-2020:ポスト京都枠組と炭素削減手段と関連する実行戦略の実施と評価

2021-2022:グリーン経済の目標に向けた進捗の包括的評価

2022-:リオ+30 に向けた新たな戦略

持続可能な消費と生産 3-10-10. グリーン経済の重要な要素は 4 つのカテゴリーに分類される(4G アプローチ)。 

グリーン市場:グリーン経済は安定した経済発展なくして達成できないため、新た な市場システムを基盤として環境に優しい成長エンジンを創出すべきである。

グリーン安全保障:グリーン経済はレジリエンスを高め、脆弱性を減らすために人 間の安全保障に注目すべきである。

グリーン公平性:グリーン経済は公平性にも相応の配慮をすべきであり、とりわけ 資源アクセスの格差や貧困削減に言及すべきである。

グリーンライフスタイル:グリーン経済では、個々人のライフスタイルをより環境 に優しく資源効率的なものに変革することが求められる。

国際協力と国際貿易 3-10-11. 先進国、開発途上国、民間企業、市民社会がグリーン経済ロードマップに参画するため のグローバルグリーン成長パートナーシップの確立を提案する。 

開発途上国におけるグリーン経済戦略の確立、およびパイロットプロジェクトの実 施支援を目的としており、このためには ODA のグリーン化や民間投資を促進する ためのインセンティブが求められる。

既存の国連機関や国際的資金制度、もしくは GGGI のような非営利組織の機能を 統合および強化することにより実現できる。

3-11.

南アフリカ共和国

グリーン経済に対する認識 3-11-1.

国際的なレベルでグリーン経済の概念を運用するためには、その主要な要素や特徴を特 22


定し、以て第一の目的を明確にし、誤用を避けるべきである。 3-11-2.

定義の提案:長期に亘り人類の福利を向上させる一方で、将来世代に重大な環境リスク や生態学的欠乏をもたらさないような、財やサービスの生産・分配・消費に関する経済 活動のシステム。

3-11-3.

全体的な目的の提案:グリーン経済は、貧困層に特別の注意を払いながら、経済成長率 と環境劣化を切り離し、その一方ですべての人の生活の質を向上させることで、持続可 能な開発を促進するべきである。

3-11-4.

リオ第 7 原則に照らし、グリーン経済の実施においては共通だが差異ある責任が基礎と なるべきである。

3-11-5.

すべての国々に対し、それぞれの優先順位や発展段階に応じ、グリーン経済への移行の ための独自の戦略を策定する政策余地が与えられるべきである。

国際協力と国際貿易 3-11-6.

グリーン経済への移行を管理するためには、開発途上国には特別な能力向上ニーズがあ ることを認識する必要がある。

3-11-7.

手頃な価格でのグリーン技術へのアクセスや、開発途上国のための新たな市場機会の創 出の促進が求められる。

3-11-8.

包括的グリーン経済の実現に貢献する政策やプログラムなどの最良慣行に関する情報 共有を進めるべきである。

3-12.

スイス

グリーン経済に対する認識 3-12-1.

グリーン経済は持続可能な開発の代替として捉えられるべきではなく、実施のための実 行的な道具として理解すべきである。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-12-2.

普遍的な持続可能な開発目標(SDGs)という考えを歓迎する。

3-12-3.

リオ+20 におけるグリーン経済の主要成果は国際的グリーン経済ロードマップと、国 家グリーン経済行動計画に対する各国のコミットメントである。

3-12-4.

グリーン経済ロードマップはリオ原則に基づくべきであり、その計画対象機関として 20 年を提案する。

3-12-5.

国際社会全体としてのグリーン経済達成のための目的や目標について国際的に合意さ れたロードマップは、各国による国家グリーン経済行動計画の策定や実施を支援するも のである。

3-12-6.

国際的なロードマップは、協力や能力向上、革新的技術の取得可能性の拡大などを促し、 官民協働や南南協力などの新たなパートナーシップへの道を開拓するものである。

3-12-7.

グリーン経済ロードマップは、政策レベルにおいては共通のビジョンや目的、具体的な 23


目標や時間軸が必要である。 

グリーン経済ロードマップのビジョンは、グリーン経済の概念の共通認識を反映す べきであり、またより持続可能な社会への変革に向けた方向性を示すべきである。

グリーン経済ロードマップの目的は、ビジョンを異なる分野の行動へと具体化し、 それを運用・測定可能とするものであり、2032 年までにグリーン経済への移行を 完遂するという視点の下で国際社会において合意されるべきものである。

グリーン経済ロードマップの目標は、ビジョンに向けた段階的なステップや、時間 軸に沿う目的の達成を明示するものである。

3-12-8.

運用レベルにおいては目標達成や実施のための最良慣行やツールが必要である。 

国家グリーン経済活動の策定や実施を支援するため、ロードマップには、各国の状 況に応じて応用可能な手段を示したツールボックスが含まれる。

グリーン経済への移行手段の実施においては、各国での異なる開始点や状況が考慮 されなければならない。

3-12-9.

国家グリーン経済行動計画については、フリーサイズはなく、グリーン経済活動は国家 の持続可能な開発戦略などの包括的な枠組に基づいて発展させるべきである。 

国家グリーン経済行動計画は、各国の優先順位やニーズに基づいて 2 年以内に策定 され、10 年以内に実施されることが目標となる。

持続可能な開発という観点からは、これは開発途上国においては MDGs や貧困根 絶戦略と整合的なものである。

行動計画は事前・事後評価のために提出され、定期的な更新が望まれる。

3-12-10. グリーン経済ロードマップに関するガバナンス構造として、レビューやモニタリング機 関が必要となる。 

グリーン経済のモニタリングにおいては、総自然資源利用や資源効率性、自然資本 などに関する指標ととともに、金銭的な指標が含まれる必要がある。

3-12-11. グリーン経済の進展を報告するため、ライフサイクルの視点を反映した消費と生産によ る環境影響や、資源資源利用や生態系サービス、環境税等の関連課題について、すべて の国が情報を発信すべきである。 

2013 年までに制度面の整備と作業計画の策定、2014 年からは世界的なグリーン経 済の進展について国連からの定期報告、2020 年までに世界の半分の国からのグリ ーン経済の進展報告、そして 2050 年までにすべての国が比較可能な方法でグリー ン経済の進展報告を実施するという目標を提案する。

持続可能な消費と生産 3-12-12. 持続可能な消費と生産はグリーン経済の中心であり、製品の環境影響の情報提供に基づ き、市場アクターがエコな製品を判別できるという目的を提案する。 

製品に関するエコ市場透明性の向上に向けた戦略の各国における策定や実施、国際 的な環境性能に関する基準の開発などの目標を提案する。

3-12-13. 各国の公的調達が持続可能性基準を考慮することを目的とし、2017 年以内に 25 カ国が、 24


2022 年以内に 60 カ国が、2027 年以内に 120 カ国が、そして 2032 年以内にすべての 国が持続可能な公的調達を実施するという目標を提案する。

3-13. 3-13-1.

英国 本インプットは EU 加盟国による提言を補足するものであり、英国は EU 提言を全面的 に支持するものである。

グリーン経済に対する認識 3-13-2.

グリーン経済は大枠での経済のサブセットではなく、経済全体がグリーンとなる必要が ある。

3-13-3.

我々が目指すグリーン経済は、長期的かつ持続的に成長し、効率的な自然資源利用を行 い、復元力があり、比較優位を最大限に利用するものである。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-13-4.

英国は持続可能な消費と生産や気候変動、エネルギーや自然資源保全などを含む持続可 能な開発指標を開発し、現在その改正を実施している。

3-13-5.

OECD が近年取組を進めているグリーン経済指標はこの分野において有用な情報源と なる。

3-13-6.

「国家的福利」という言葉は、現行の国家経済勘定より広い視点からの発展や生活の質 を測定する必要があることを示唆する。

持続可能な消費と生産 3-13-7.

産業界の費用や負の影響を最小限に抑えながらグリーン経済への移行を推進するため には、まず政治的枠組を正しくする必要があり、明確な長期目標の設定や正しい政策メ カニズムの選択、できるだけ効果的な政策のデザイン、そして費用を正当化する便益の 強調が求められる。

国際協力と国際貿易 3-13-8.

英国の低炭素技術の国際市場での評価を高め、英国企業の活動を支援するためのグリー ン輸出キャンペーンを主導している。

3-14.

アメリカ合衆国

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-14-1.

ライフサイクルでのデータシステムやツールなどに基づくグリーン生産・市場の促進や、 クリーン生産支援のための国際的な知識の拠点の拡大が重要である。 25


3-14-2.

「GDP を超える」指標は現在ないが、自然資源の劣化や健康への負の影響などの外部 不経済の評価は、政府が自然資源を定量化し、観測し、評価するための重要な第一歩と なる。

3-14-3.

持続可能な開発目標(SDGs)は、正しく構成されるならば、進捗を評価し、行動を触 発し、持続可能な開発に関する 3 本の柱の統合を向上するための有用な手段となるため、 リオ+20 において考慮に値するものである。

3-15.

OECD

グリーン経済に対する認識 3-15-1.

グリーン成長を実施するためのフリーサイズの処方箋はない。

3-15-2.

グリーン成長戦略は統合文書への貢献である。

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 3-15-3.

「グリーン成長に向けて:進捗状況の監視-グリーン成長指標報告書」は国際機関・各 国の既存の取組に基づき、25 の指標群を提案している。

持続可能な消費と生産 3-15-4.

近年の OECD 研究成果より、下記のような主要成果が挙げられている。 

エネルギーや環境関連の R&D に投資しているだけでは不十分であり、化学や物質 科学、工学などへの投資もグリーン技術のためには重要である。

炭素や資源に対する価格付けは、グリーン・イノベーションを促進するために必要 不可欠である。

国際協力と国際貿易 3-15-5.

近年の OECD 研究成果より、下記のような主要成果が挙げられている。 

技術移転を促す主要な要素は、需要国の吸収能力である。

開発途上国への技術移転を促す新たなメカニズムが現在模索されており、最良慣行 をさらに拡大することが求められる。

3-15-6.

投資の自由ラウンドテーブルに対し、投資措置について定期的に報告している 42 の国 のうち、環境政策に関連して非居住民や海外投資家に対して明らかな差別を報告した国 は現在のところなく、今後も偽装された保護主義として利用されないように投資措置を 監視する。

3-16.

世界銀行

グリーン経済に向けた目標・行動・指標 26


3-16-1.

持続可能な開発のためのグローバルロードマップのデザインの一部として、リオ+20 では以下の合意に向けて努力することを提案する。 

貧困削減への焦点を当てつつ、グリーンかつ包括的な成長という概念と整合的な開 発戦略の各国における策定。

自然資本と生態系サービスを 2030 年までに国家勘定に統合するためのグローバル な手段とプロセス。

MDGs を補完する持続可能な開発目標(SDGs)の 2030 年までの作成。

27


2-2.

持続可能な開発のための制度的枠組み(IFSD)

※各国・機関のステートメントの原文・詳細は、別添表 2-3-1(p.35~58)を参照。

(1)まとめ/Summary 

国際環境ガバナンス(IEG)に関しては、EU、アフリカ地域、中央アジア 5 カ国の 3 つの 国グループの共同表明を含む多くの国や機関が、UNEP の専門機関化を支持、または、前向 きに検討している。アメリカ、カナダ、インドのみが、否定的な見解である。

少数の国・機関は、代わりに UNEP 管理理事会における普遍加盟方式の導入を提案し、ア メリカを含む多くの国・機関がこの検討に前向きである。

多くの国・機関が、多国間環境協定(MEAs)間のシナジーを推進することを支持している が、その具体的な改革案はあまり示されていない。UNEP を格上げすることで、シナジー化 を実現できると提案している国や機関もある。

IEG に関する他の改革案として、UNEP 加盟国からの資金提供の増加、分担金制度、途上国 の資金メカニズム管理機関への参加促進などが挙げられる。また、GEF は自らの役割強化を 強調している。

IFSD に関しては、多くの国や機関の間で、持続可能な開発理事会の創設案への関心が高ま っているが、そのような組織を創設する最良の方法(ECOSOC の変革、または CSD の格上 げなど)や、その機能や管理体制について明確な考えがまとまっていない。この改革案は、 比較的まだ新しい案である。

多くの国・機関は、ECOSOC および CSD を改革する方法を検討することに前向きである。 しかし、その改革方法についての具体案は少ない。CSD を完全に廃止することを提案する国 や機関は少数である。

多くの途上国が、持続可能な開発の 3 本柱間のシナジーの促進とこれらに統合的に取組むこ との重要性を強調している。

IFSD に関する他の改革案は、以下の通り。持続可能な開発のための特使または特別代表の 任命、持続可能な開発目標(SDGs)の設定、ピア・レビュー、環境に関する、情報へのア クセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する国際または地域条約、地域 レベル機関の強化、持続可能な開発のための国家委員会の強化、 「Delivering as One/One UN Initiative」の拡大、国際金融機関(IFIs)や国際開発金融機関(MDBs)との調整強化、国 際金融機関(IFIs)の管理主体への途上国の参加強化、環境と開発に係る国連システム全体 の戦略の策定、CEB や UNDAF 等の強化、SIDS への支援強化、金融取引の国際税など。

28


* これらの国々は、仕様書における調査対象国ではなく、重要課題にのみ追加的に 表記した。また、表 2 には反映していない。

表 2-2-1:特定課題に関する指定の国・機関ポジションの比較表(要約) 課題

支持

国際環境ガバナンス(IEG) UNEP の専門機 EU、韓国5、ケニア、ネパール*、アフリカ 関化 地域、チリ*、ドミニカ共和国*、マレーシ ア*、カザフスタン*、キルギスタン*、トル クメニスタン*、ウズベキスタン*、ウクラ イナ* スイス、オーストラリア、ノルウェー8、ブ UNEP 管理理事 会における普遍 ラジル、インド、ケニア、UNEP 加盟方式の導入 MEAs のシナジ ー

言及のみ;立場 不透明

検討の余地あり

言及なし

日本6、トルコ*、ウルグ アイ*

インドネシア7、 スイス、ノルウェー、ニュージーランド、中国、 IMF ブラジル、南アフリカ、CARICOM、ECLAC、 NEASPEC、G77、CEB、UNDP、UNEP、GEF、 WB、ジャマイカ*、フィリピン*

EU、アメリカ、コロン ビア*

日本、カナダ、ニュージーランド、韓国、中国、 インドネシア、南アフリカ、アフリカ地域、アラ ブ地域、CARICOM、ECLAC、NEASPEC、G77、 CEB、GEF、IMF、ADB、WB カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、中 国、ブラジル、インドネシア、南アフリカ、アラ ブ地域、CARICOM、ECLAC、NEASPEC、CEB、 GEF、IMF、WB

日本、EU、スイス、ノルウェー、韓国、イ アメリカ ンド、ケニア、アフリカ地域、G77、UNEP、 ADB

インドネシア

持続可能な開発のための制度的枠組み(IFSD) スイス9、韓国、ブラジル、インドネシア、 EU、オーストラリア、 「持続可能な開 発のための理事 ドミニカ共和国* ノルウェー、UNDP、ト 会」の創立 ルコ*

インド

EU、アメリカ、カナダ、 CARICOM、 オーストラリア、ノルウ G77、CEB ェー、インド、 NEASPEC、UNDP

ECOSOC およ び CSD の改革

日本、スイス、韓国、ブラジル、中国、南 アフリカ、アフリカ地域、ECLAC

ピア・レビュー 持続可能な開発 目標(SDGs)10

日本、スイス、EU、ノルウェー、UNDP スイス、ノルウェー、ニュージーランド、 アメリカ、CARICOM ブラジル、ケニア、アフリカ地域、ECLAC、 UNEP、UNDP、IMF、WB

5

日本

29

アメリカ、 カナダ、イ ンド、ベネ ズエラ*

日本、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、中 IMF 国、南アフリカ、アフリカ地域、アラブ地域、G77、 CARICOM、ECLAC、NEASPEC、CEB、UNEP、 GEF、ADB、IMF、WB ニュージーランド、インドネシア、アラブ地域、 UNEP、GEF、ADB、IMF、WB

その他全て EU、オーストラリア、インドネシア、カナダ、韓 国、中国、南アフリカ、アラブ地域、G77、 NEASPEC、GEF、ADB

韓国は、専門機関化には MEAs の統合が条件。 日本は、第 1 段階として、MEAs 間の連携強化、第 2 段階として、MEAs の事務局の統合、第 3 段階として、専門機関の設立を検討すると記述。 7 インドネシアは、 「持続可能な開発のための制度的枠組みに関するハイレベル対話」(ソロ)のサマリーに、各国の検討意欲の増加を記述。 8 ノルウェーは、併せて執行理事会の設立を提案。 9 スイスは、Global Sustainability Council (GSC)を提案。 10 各国・機関のステートメント原文および詳細は、Part III、3-1 を参照。 6

不支持

インド


(2)国際環境ガバナンス(IEG) 2.1 UNEP の専門機関化/Create a specialized agency 

全体的に、多数の国・機関が UNEP の専門機関化11を支持、または、検討に前向きであり、 支持しないことを示唆している国・機関は少数である。

支持国・機関は、EU やケニアをはじめとするアフリカ地域および中央アジア 5 カ国。アジ アでは、韓国、マレーシア、カンボジアが支持を強調している。 

UNEP を専門機関に格上げ(EU) 、変革(ケニア、アフリカ地域)、強化(韓国)すべ きである。

この国際機関は WEO または UNEO と名称し、ケニアのナイロビに本部を設置。 (EU、 ケニア)

他の支持国として、ネパール(国や地域での存在感の強化を含む)、ナイジェリア(ア フリカ地域の立場を支持)、ウクライナ(強く支持)がある。

2011 年 10 月に開催されたアジア・太平洋地域準備会合で、マレーシアは、諮問・促進 機関として WEO をリオ+20で創立することを支持した。その機関は WTO のような 取締機関ではなく、国連とはつながりがあるが独立した専門機関の役割を果たすべきで、 また、普通選挙で一国一票に基づく意思決定を促進すべきであると要求した。カンボジ アもまた WEO を支持した。(IISD・Environment Negotiation Bulletin より引用)

2011 年 11 月にアスタナで開催された持続可能な開発のための国家間委員会(ICSD) の会合で、中央アジアの 5 カ国(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルク メニスタン、ウズベキスタン)が普遍加盟方式の導入がより簡単なことから、UNEP を WEO ではなく UNEO に格上げすることを支持することを決定した。

検討に前向きな国は、トルコ(UNEP を専門機関に格上げ) 。

言及に留まり、立場を明確にしていない国・機関は、インドネシアと IMF。 

インドネシアは、2011 年 7 月にソロで開催された IFSD に関するハイレベル対話にて、 国グループの全てがこの選択肢の検討により前向きであることを表明したことを言及 しており、検討に前向きである可能性も考えられる。

IMF は、明確な権限を持つ専門機関は、社会・経済・環境の各柱を統合する障害になり うると言及している。よって、IMF は UNEP の専門機関化を支持していないことを示 唆していると見受けられる。

特に言及していない(11 月 1 日の提出文書中で)国・機関は、スイス、ノルウェー、中国、 ブラジル、南アフリカ、ジャマイカ、フィリピン、CARICOM、ECLAC、G77+中国であり、 機関は、CEB、GEF、IMF、UNDP、UNEP、WB。

直接言及していないが、消極的な姿勢を示している(ただし、明白に反対はしていない)国・

WEO と UNEO については、WEO は条約によって創設されるが、UNEO は国連総会決議によって創設され ると理解されている。 11

30


機関は、ニュージーランドとアラブ地域。 

大規模な組織改革よりも(ニュージーランド)、あるいは、新機関の創設を検討する以 前に(アラブ地域)、既存機関を改革することを主張している。

明白に反対している国は、アメリカ、カナダ、インド、ベネズエラ。 

それぞれ、専門機関は有効でない(アメリカ)、世界経済の現状からはとても創設を構 想できない(カナダ)、持続可能な開発のための 3 本柱のうち環境が優先的になる(イ ンド)、更なる検証を待ちたい(ベネズエラ)と主張している。

2.2 UNEP 管理理事会における普遍加盟方式の導入 / Universal membership 

全体的に、普遍加盟方式の導入を支持、または、言及しているのは少数の国・機関だが、こ の改革案に対して反対姿勢である国・機関はないように見受けられる。

支持している国・機関は、オーストラリア、スイス、ノルウェー、ブラジル、ケニア、エジ プト、アフリカ地域、UNEP。 

普遍加盟方式は、UNEP の活動における加盟国の当事者意識(ownership)を高め、管 理理事会での決定により重要性と正当性を与える。(ノルウェー)

この方策はこれまでも長期的に議論されており、実行する上で何の不利益もない。(ブ ラジル)

 

普遍加盟方式は、専門機関化とともに実現されるべきである。 (ケニア、アフリカ地域)

検討に前向きな国・機関は、EU、アメリカ、インド。 

インドはこの課題に関して、EU はすべての IFSD 改革案に関して、検討の余地がある と述べている。

アメリカはこの課題に関して立場を変更し、今回新たに一つの改革案として普遍加盟方 式の導入を視野に入れている。

特に言及していない(11 月 1 日の提出文書中で)国・機関は、G77+中国、カナダ、韓国、 中国、インドネシア、南アフリカ、CARICOM、ECLAC、NEASPEC、CEB、GEF、IMF、 ADB、WB。

直接言及はしていないが、否定的な立場が示唆できるのは(既存機関の改革を強く主張して いることから)、ニュージーランド、アラブ地域。

明白に反対している国・機関はないということは、重要な留意点である。

2.3 多国間環境協定(MEAs)のシナジー / MEAs synergy 

支持している国・機関は、EU、G77+中国、スイス、ノルウェー、韓国、インド、ケニア、 アフリカ地域、ADB、UNEP。 

国連システム内での有効性・効率性・一貫性は、互換性のある MEAs 間の調整と協力に よって改善することができる。

以下のような課題別に関連条約を集約することを提案している国・機関もある。 31


-

リオ3条約の UNFCCC・UNCBD・UNCCD(EU、スイス、ノルウェー、ADB)

-

化学物質と廃棄物に関する条約(EU、スイス)

-

生物多様性に関する条約(EU、スイス)

韓国は、多くの MEAs を統合して簡素化するという条件の下で専門機関化を支持すると している。

MEAs 間のシナジーを促進する一方で、各条約とその締約国の法的分権は尊重される必 要がある。(インド、アフリカ地域)

検討に前向きな国は、アメリカ。 

主要な MEAs の管理形態を簡素化することによって UNEP の運営効率が改善される。 (アメリカ)

特に言及していない(11 月 1 日の提出文書中で)国・機関は、カナダ、オーストラリア、ニ ュージーランド、中国、ブラジル、インドネシア、南アフリカ、アラブ地域、CARICOM、 ECLAC、NEASPEC、CEB、GEF、IMF、WB。

明白に反対している国・機関はない。

2.4 他の IEG 改革案 / Other IEG reform proposals 

UNEP(又は専門機関)への資金提供の強化について言及しているのは、EU、スイス、ブ ラジル、ケニア、南アフリカ。 

義務的(ブラジル)または分担(スイス)拠出金制度を導入する提案がある。

UNEP または専門機関は、十分で安定した、かつ、予測可能な資金を確保すべきである。 (EU、ケニア、アフリカ地域)

専門機関は、環境資金供給に関して指導することのできる、独立した機関であるべきで ある。(アフリカ地域)

 

UNEP は、強力な資金メカニズムと資金を持つべきである。(南アフリカ)

一方、GEF への資金提供の強化について言及しているのは、インド、GEF。 

GEF 信託基金への資金提供を現状のレベルから相当増加させ、GEF を強化すべきであ る。(インド)

GEF は、自らの役割についてのみで、UNEP については言及していない。 -

GEF は資金メカニズムとして、途上国における環境事業への重要な国際的資金提供 者であり続けるべきである。GEF は、国連システムとブレトンウッズ機関両方の強 みを活用しながらも、被援助国のオーナーシップの強化に努めていく。

-

新たな追加的資金は、既存の強化されたメカニズムを通して調達・供給されるべき である。

途上国の多くは、MEAs の資金メカニズムの管理主体へ参加の強化を主張している。(G77 +中国、インド)

32


(3)持続可能な開発のための制度的枠組み (IFSD) 3.1 「持続可能な開発のための理事会」の創立 / Create a SD Council 

支持している国・機関は、スイス、韓国、ブラジル、インドネシア。 

持続可能な開発のための理事会は、持続可能な開発の 3 本柱を統合するために、より有 効で権威ある機関になるべきである。

インドネシアは、本改革案を新たな組織の創立ではなく、むしろ既存機関を統合するた めの方策として捉えるべきであると主張している。

検討に前向きな国・機関は、EU、オーストラリア、ノルウェー、トルコ、UNDP。

様々な改革方法に関する提案がされていることに留意する必要がある。 

CSDSDC: CSD を SDC に置換(スイス(Global Sustainability Council (GSC)と名 称)、UNDP)、変革(オーストラリア)、または、代用(ノルウェー)するなど。

ECOSOCSDC: ECOSOC を SDC に変革する。 (ブラジル)

SDC は国連総会の補助機関となることが考えられる。

方法については言及なし。(韓国、EU)

言及に留まり、立場を明確にしていない国は、インド。 

この改革案については更なる検証が必要である。(インド)

特に言及していない(11 月 1 日の提出文書中で)国・機関は、G77+中国、アメリカ、カナ ダ、中国、南アフリカ、アフリカ地域、UNEP、ECLAC、NEASPEC、CEB、GEF、ADB、 WB。

直接言及していないが、消極的な姿勢を示している(ただし、明白に反対はしていない)国・ 機関は、CARICOM、ニュージーランド、アラブ地域。 

大規模な制度改革よりも(ニュージーランド) 、或いは、新機関の創立の検討以前に(ア ラブ地域)、既存機関を改革することを主張している。

 

また、本改革案が ECOSOC などの既存機関を弱体化させてはならない。(CARICOM)

明白に反対している機関は、IMF のみ。 

この改革案には大幅な時間と資源のコストが伴う可能性があるため、改革が新たな制度 の創設を暗示する必要はない。(IMF)

3.2 ECOSOC および CSD の改革 / Reform ECOSOC and CSD12 

全体的に、ほとんどの国や機関の立場が未熟であり、ECOSOC および CSD の改革案は一般 的にあまり具体的ではない。

注:SDC の創設に関するステートメントは、本項に含まれていないため、前項を参照。

支持している国・機関は、スイス、韓国、ブラジル、中国、南アフリカ、アフリカ地域、ECLAC。

12

注:SDC の創設に関するステートメントは、本項に含まれていないため、前項を参照。

33


短期的に、CSD は本来の機能を、検討から政策決定へと移行するべきである。(韓国)

ECOSOC および CSD の役割強化により、アジェンダ 21 と JPOI の実施が促進される べきである。 (中国)

持続可能性を意思決定の指針として確立するために、ECOSOC の役割と機能を見直す 必要がある。ECOSOC は、開発分野の国連安全保障理事会に相当する機関となり、経 済・財政・食糧・気候の危機に関する課題に関する決定をすることが考えられる。 (ECLAC)

南アフリカは以下のように述べている。 -

リオ+20 後の CSD は、いかなる形であれ、SD 課題の実施を促進する権限を持ち、 必要な資金と技術資源を伴うべきである。

-

政治的意思を集結するために、環境大臣以外の大臣を代表者とする、ハイレベル閣 僚委員会を設立すべきである。

国の自主的参加を見直し、CSD の決定の拘束力を確保すべきである。

検討に前向きな国・機関は、EU、アメリカ、カナダ、オーストラリア、インド、UNDP。 

EU は、CSD の役割を見直す必要性に関して幅広く合意を得ていることを認識するとと もに、以下の選択肢は相互排他的ではなく、組み合わせることもできると述べている。 -

より限定的な課題への取組みに集中する。

-

交渉機能を取り除き、検討機能を向上するよう、機能を再設定する。

-

CSD を廃止し、必要な機能を他の国連機関に移転する。

ECOSOC は、追加的な資金と技術移転を促進することができる。(インド)

ECOSOC の傘下に、政府、市民社会、民間セクターから構成される持続可能な開発の ための補助機関(a tripartite SD subsidiary body)を設立できる。(UNDP)

言及に留まり、立場を明確にしていない国は、G77+中国、CARICOM、インドネシア、ニ ュージーランド、CARICOM、アラブ地域、NEASPEC、CEB。 

2011 年 7 月にソロで開催された IFSD に関するハイレベル対話で、様々な改革案が議論 され、その中には ECOSOC の権限強化や CSD の機能見直しから、SDC の創設まで含 まれていた。 (インドネシア)

特に言及していない(11 月 1 日の提出文書中で)国・機関は、UNEP、GEF、SDB、WB。

明白に反対している国・機関はない。

3.3 ピア・レビュー / Peer review 

支持している国・機関は、EU、スイス、ノルウェー、UNDP。 

CSD が自主的ピア・レビュー・メカニズムを促進すべきである。(EU)

国家主導のピア・レビューを導入し、普遍的かつ定期的に国連加盟国が調査されるべき である。(スイス)

持続可能な開発のための主体機関が、持続可能な開発のための普遍的定期レビュー (UPR-SD)のメカニズムを備えることができる。 (UNDP) 34


持続可能な開発理事会(SDC)が、ピア・レビューを実施する任務を負うことができる。 (ノルウェー)

特に言及していない(11 月 1 日の提出文書中で)国・機関は、G77+中国、アメリカ、カナ ダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、ブラジル、中国、インド、南アフリカ、イ ンドネシア、ケニア、アラブ地域、アフリカ地域、CARICOM、ECLAC、NEASPEC、CEB、 UNEP、GEF、IMF、ADB、WB。

明白に反対している国・機関はない。

3.4 国際金融機関 / IFIs 

以下の通り、複数の国々が国際金融機関(IFIs)について言及している。

EU:国連金融機関(IFIs)、特に世界銀行グループ(WBG)、国際通貨基金(IMF)、地域 開発銀行、金融世界経済に関する首脳会合(G20)、世界貿易機関(WTO)の活動の更なる 関与、および、これらの活動における一貫性の確保が重要である。

G77+中国:国際金融機関(IFIs)の管理主体(例えば、理事会等)などの、経済分野の国 際的な意思決定に途上国の十分な参加を確保することが重要である。

アメリカ:新たな制度・組織改革には、国際金融機関(IFIs)や国際開発金融機関(MDBs) 等の関与し、調整を強化する必要がある。

インド:ブレトンウッズ機構(BWI)における民主性の弱点は、途上国の発言力を強化する ことで是正されるべきである。また、地域開発銀行の役割と準地域での取り組みを強化する 必要がある。

オーストラリア:国連、国際金融機関(IFIs)、民間セクター、有識者、非政府組織およびそ の他のステークホルダー間の連携を強化するための改革が必要である。

ケニア:リオ+20 は、ブレトンウッズ機構(BWI)に対し、これらの機関の世界経済およ び財政管理の支援という抜本的なマンデートの実施が十分でないこと、また、規制モニタリ ングおよび安定化メカニズムが必要である、ということを主張するべきである。

中国:国際金融基金(IFIs)、世界貿易機関(WTO)、および、国際開発金融機関(MDBs) の計画や活動に持続可能な開発を主流化し、環境と開発のより良いバランスおよびこの二分 野におけるシナジーを創出させるために、関連する国連機関と調整が必要である。

ECLAC:国連の規範的発展とブレトンウッズ機構(BWI)を含む国際経済機関間の調整の 改善が必要である。

GEF:GEF は資金メカニズムとして、途上国における環境事業への重要な国際的資金提供 者であり続けるべきである。

3.5 他の IFSD 改革案 / Other IFSD reform proposals 

以下の通り、複数の国々が他の IFSD 改革案を提案している。

EU:持続可能な開発のための特使または特別代表は、国家レベルの政策決定者と共に、持 35


続可能な開発に関するハイレベルな発言者となり、国連システムと国レベルでの統合的取組 を促進することができる。 

カナダ:各国が国家開発計画、または、貧困削減戦略に、持続可能な開発を国の優先課題と して取り込む必要がある。その後、常駐調整官が国レベルでの国連プログラム活動を通して、 持続可能な開発に関する意見と実施の主流化を調整する。

韓国:情報共有、技術移転、および、能力構築のための地域調整窓口(フォーカル・ポイン ト)が必要である。また、法律および政策を包括的にレビューするための新たな国際組織を 設立すべきである。

スイス:優良事例を共有するためのマルチ・ステークホルダー・フォーラムが必要である。 また、国連主要執行理事会(Chief Executive Board)内に、持続可能な開発について重点的 に取り組む、ハイレベル委員会を設立するべきである。加えて、震災対応を調整する枠組み 制度が必要である。

ブラジル:「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアク セスに関する条約(オーフス条約) 」の交渉プロセスを促進すべきである。

UNDP:地域における補助機関の役割を強化すべきである。また、税を取り扱う専門家グル ープ・主体を設立すべきである。

36


37


Part III. その他 3-1. ポスト・ミレニアム開発目標(ポスト MDGs)/持続可能な開発目標(SDGs) (1)まとめ (2) 「ポスト MDGs/持続可能な開発目標(SDGs)」の位置づけ・認識 (3) 「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けて (4)会議成果および今後のプロセス

38


3-1. ポスト・ミレニアム開発目標(ポスト MDGs)/持続可能な開発目標(SDGs) ※各国・機関のステートメントの原文・詳細は、別添表 3-3-1(p.59~66)を参照。

(1)まとめ 

全体的に、ポスト MDGs に関する関心は高く、持続可能な開発に係る目標設定に対する支持 が増えている一方、EU や中国など言及がない国・機関もある。

コロンビア13をはじめとするラテン・アメリカ諸国は、持続可能な開発に対する国際的取組 みを前進させる手段として、SDGs を支持している。

SDGs を支持する国・機関(韓国、コロンビア、スイス、UNEP 等)は、MDGs の経験と評 価を基礎とし、持続可能な開発の全ての側面に包括的かつ普遍的に対応、また、各側面の相 互補完性を確保すべきであると主張している。

インドは、持続可能な開発に向けた定量的目標の定義や設定を支持しない唯一の国であり、 持続可能な開発のための目標や取組みにおいて、そもそも先進国が先にコミットメントを示 すべきであり、CBDR の原則がしっかりと適用されなければいけないと主張している。

GDP を超える指標(日本、UNEP 等)やモニタリング・メカニズムの必要性(ケニア、IMF 等)を主張する国・機関もある一方、対象分野や実施方法については様々な見解がある。

リオ+20 では、MDGs に関する今後の継続的な協議(アメリカ)や SDGs の原則に関する 合意(インドネシア等)がされるべきと言う見解の国がある一方、SDGs 一式を発展させる ことに合意するべきであるという野心的な主張もある。(ノルウェー、ブラジル等)

コロンビアは、本調査対象外の国ではあるが、SDGs 提案国のため、Part III, 3-1 においては、調査を実施し た。(p.8~10、IV)同提案国であるグアテマラについては、原文がスペイン語であるため今回は調査対象外とす る。

13

39


(2)ポスト MDGs/持続可能な開発目標(SDGs)の位置づけ・認識 2.1 「ポスト MDGs/持続可能な開発目標(SDGs)」の位置づけ リオ+20 の議論における、主要国・機関の「ポスト MDGs/持続可能な開発目標(SDGs)」に関 する提案の位置づけは、下記の通り。

支持

検討の余 地あり 言及の み、立場 不透明 不支持 言及なし

会議目標 (新たな政治的コミットメン グリーン経済 ト、新たな課題、実施上のギ ャップ) ケニア、コロンビア、ロシア、 オーストラリア、韓国、ブ ECLAC、IMF、UNDP、世 ラジル、アフリカ地域 銀 CARICOM

制度的枠組み

インドネシア、スイス、ニ ュージーランド、ノルウェ ー、UNEP アメリカ

日本

インド EU、G77+中国、SIDS、アルゼンチン、カナダ、中国、南アフリカ、アラブ地域、ADB、 GEF

2.2 「ポスト MDGs/持続可能な開発目標(SDGs)」に対する認識 ポスト MDGs について 

持続可能な開発に係るいかなる目標は、従来型援助の測定にとどまらず、データや証拠に基 づき、グリーン経済への投資を通して得た成果をトラックすることが重要である。(アメリ カ)

持続可能な開発を促進するために、グリーン経済への移行において、測定可能な指標および 目標が必要である。(EU、UNEP)

グリーン経済への移行が持続可能な開発において果たす役割を含め、国際社会の新しい現状 を踏まえた取組がなされることが重要なため、ポスト MDGs は、こうした観点を踏まえて策 定すべきである。(日本)

持続可能な開発に関する長期目標(2030/2050 年達成に向けて)は、MDGs 達成の経験を基 礎に発展させるべきである。(ロシア)

国レベルにおいて、持続可能な開発のための明確かつ実践的な指標枠組みが必要であるため、 地球規模・地域の制度・組織が持続可能な開発のための指標枠組みの発展および適用を促進 するべきである。(アフリカ地域) 40


SDGs について 

持続可能な開発に向けた定量的目標の定義や設定を支持しない。MDGs と SDGs の文脈は異 なり、持続可能な開発のための目標や取組みにおいて、そもそも先進国が先にコミットメン トを示すべきであり、CBDR の原則がしっかりと適用されなければいけない。(インド)

SDGs は、持続可能な開発に対する国際的取組みを前進させる手段である。 (CARICOM、オ ーストラリア)

SDGs は、MDGs の経験と評価を基礎とし、持続可能な開発の全ての側面に包括的かつ普遍 的に対応、また、各側面の相互補完性を確保すべきである。(韓国、ケニア、コロンビア、 ノルウェー、スイス、ブラジル、ECLAC、UNEP、IMF、世銀)

SDGs の目標は普遍的であり、先進国と開発途上国を平等な基準で対象とすべきである。 (CARICOM、日本、ブラジル、UNDP)

持続可能性という文言は様々な意味を有することから、SDGs の範囲や対象についても様々 な意見が存在するため、いずれはポスト MDGs に収斂させていく必要があり、リオ+20 で は「SDGs」との文言は使用しない。 (日本)

(3)「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けて 3.1 「持続可能な開発目標(SDGs)」を支持する理由 

SDGs が適切に構造化されれば、持続可能な開発の3つの柱の統合を促進し、その進捗評価 をするための有効な手段であると考えられる。 (アメリカ)

SDGs は、実施手段、新たな技術に適応する制度強化と能力開発等の各国のニーズを明らか にし、MDGs のように、国際協力の機会を特定し、また、UN システムが持続可能な開発に 係る3つの柱に横断的に取組むための有効な手段である。 (コロンビア)

SDGs は、国連システム内およびその他の主体間の調整や一貫性を確保し、ガバナンスの改 善およびその制度的手段を補完する効果的な手段である。持続可能な開発アジェンダの実施 および多国間レビューやモニタリングの枠組み等の国際協力枠組みを提供できる。 (スイス)

グリーン経済のための取組みは、国や国際協力のための手段として具体的なイニシアチブを 策定できるが、政治的なコミットメントを先導するためには、持続可能な開発に係る優先目 標の設定が必要である。 (ブラジル)

3.2 「ポスト MDGs/持続可能な開発目標(SDGs)」に関する具体案 対象分野について 

SDGs は、グリーン経済への移行を実現させるためのロードマップの一つとして、気候変動、 生物多様性保全、砂漠化対応等の主要なグローバル環境課題に取組むとともに、「成長」に 関する特定の目標も含むべきである。(韓国)

21 世紀型のビジョン及び理念を明確にする国際開発戦略を定め、人間の安全保障を指導理念 41


とするべきである。資源安全保障/食糧安全保障、気候変動/環境、強靭性/防災も対象分野と する。(日本) 

GDP を超える指標は、ポスト MDGs の具体的目標を策定する上での基礎となる。 (日本、ロ シア、UNEP、UNDP)

対象分野として、最貧困層の根絶、食糧と衛生保障、働きがいのある人間らしい仕事への

アクセス(access to decent work)、適切なエネルギー資源へのアクセス、平等(世代内、 世代間、国家間、および、国内) 、ジェンダーおよび女性のエンパワメント、マイクロ起業 家精神およびマイクロクレジット、持続可能性のための革新、適切な水資源へのアクセス、 および、地球の再生能力に対するエコロジカル・フットプリントの調整、が挙げられる。 (ブ ラジル) 

SDGs は最脆弱者のニーズに対応すべきであり、例えば、予防的措置を含む気候変動に関す る目標等が挙げられる。 (CARICOM)

貧困の公正な根絶、食糧安全保障を通じた飢餓根絶、クリーン・エネルギーへの普遍的アク セス、エネルギー効率と濃度の改善、水および衛生サービスへの普遍的アクセス、水資源管 理、都市部の大気汚染、スラム化、化石燃料および取り返せない環境破壊に関連する事業に 対する直接的および間接的補助金の撤廃、持続可能な開発および技術移転のための資金、が 挙げられる。 (ECLAC)

実施手段について 

SDGs の進捗をトラックする報告メカニズム14が考えられる。(オーストラリア、ケニア)

今後 SDGs を発展させていくうえで、「グリーン経済」に対する国際協力を促進するための 知識共有プラットフォームが進捗評価等の実施に役立つ。 (韓国)

国、地域、グローバルレベルにおける、透明性かつ責任のあるモニタリングおよび評価シス テムが必要である。(ケニア、IMF)

市民社会、有識者、および、途上国の国家統計研究所等の積極的な参加による、研究枠組み が必要である。(ECLAC)

(4)会議成果および今後のプロセス 4.1 リオ+20 の会議成果について 

リオ+20 では、MDGs に関する今後の継続的な協議について議論ができる。(アメリカ)

リオ+20 は、SDGs の原則について合意する良い機会かもしれない。 (インドネシア15)

リオ+20 では、SDGs の課題、もしくは、暫定的定義、および、これらの目標を発展させて いくマンデートに関する合意がなされるべきである。(コロンビア)

リオ+20 の会議成果として、SDGs 一式を発展させることを合意すべきである。(オースト ラリア、ノルウェー、ブラジル、ECLAC、IMF、世銀)

14

15

オーストラリアは、例として、定期刊行の Global Sustainability Outlook report を提案。 持続可能な開発のための制度的枠組みに関するハイレベル対話サマリーから抜粋。

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リオ+20 では、(ア)新しい国際開発戦略を策定、(イ)ポスト MDGs 策定に向け、様々な ステークホルダーの関与を得つつプロセスを本格化し、最終的には国連の場において国連加 盟国により合意されることを目指すことに合意し、ポスト MDGs の策定に向けた強固な基礎 を築く、(ウ)幸福度指標16の策定作業を促進するべきである。(日本)

リオ+20 では、MDGs を含む持続可能な開発に関するアジェンダに対するコミットメント を全てのレベルにおいて強化することが重要である。(アフリカ地域)

リオ+20 は、例えばエネルギー等の特定分野や重要な原則の定義を含む SDGs のロードマ ップの策定に貢献できる。公正と包含性、および、環境の持続可能性は重要な原則であり、 MDGs の強み(人間の威厳と能力の強化に焦点等)は継続して反映されるべきである。 (UNDP)

4.2 今後のプロセス 

リオ+20 における SDGs の議論および今後のプロセスは、MDGs 達成のための継続的かつ 国際的取組みを妨げるのではなく、目標について更に詳細に定義していくことが必要である。 (ニュージーランド)

今後の SDGs に関するプロセスは、関連専門家や科学的実証に基づき、国連事務局によって 進行されるべきであり、政府間交渉は避けるべきである。 (スイス)

16

ブータンは、持続可能性に関するGDPを超える指標として、国民総幸福度(Bhutan Gross National Happiness) を強調している。(p.7, para.2)

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