The HR Agenda Magazine - April-June 2014 Issue (日本語版)

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Volume 3 Issue 4 ISSN 2186-277X

April-June 2014年4−6月号 2014 定価1620円 (税・送料込み) Print: ¥1,575 無料!デジタル版のみ Digital: Free!

THE

AGENDA ®

Japan’s first bilingual

HR magazine published by The Japan HR Society (JHRS)

奨と 酬

1

日本の人事部がグローバル化の中で生き残るために 3 成果に対する金銭的な報酬は今日の成果に役立つか。 また、現金は勤労意欲を高めるか 11 CEOは力のあるHR担当重役を採用しながら、 ときにはその重役らを無視する 28 報奨と報酬 30


HR Japan Summit 2014年7月9-10日|ホテル椿山荘|東京|日本 世 界 経 済 の 潮 流とともに、日本 企 業 の 経 営 は 人 事そのもの から独自に変 化 することが 求 められている。また、 同 時 に 国 際 競 争 が 標 準となる現 代で は 、日本 企 業 が 生 き残るた め に は 、世 界 基 準 に 合 わ せ た 優 れ た 人 材 を 確 保し育 成していく人 事 部 門 の 今 後 の 戦 略 が 経 営 戦 略 に 大きな 影 響を与えるといっても過 言で は な い。厳し い ビジ ネス 環 境 下で、企 業 が 競 争 優 位 に 立 つ た め に は 、人 事 部 門 が 経 営 者と現 場 の 良 きパ ートナーとして、 現 場 に お ける戦 略 実 践をサ ポ ートし、経 営 の 意 思 決 定をサ ポ ートする役 割を担ってい か な けれ ば ならな い。

ビジネスリーダー・インサイト 業界エキスパート達との情報交換 HR Japan Summitイベントプログラムは、 日本企業の人事部門責任者達からのご意見や、事前調査を基に構成しており、現在のビジネス環境 下における人事部門の緊急課題について討議いたします。

HR ジャパンサミット2014講演者 テルモ株式会社 元・名誉会長 和地 孝 8bitnews 代表; NHK(日本放送協会) 元・アナウンサー 堀 潤 法政大学大学院 准教授 政策創造研究科 石山 恒貴 DHLジャパン株式会社 オーガニゼーションディベロップメントマネージャー 人事本部 牛島 仁 その他多数登壇予定。

サミットに関する詳細・お問い合わせはこちらへどうぞ

2Summits-apac@marcusevansuk.com


目次 2014年4−6月号

発行人からのメッセージ

日本の人事部がグローバル化の中で生き残るために

W IN

3

bal Leaders Glo hip 14 C 20

山本 紳也 JHRSコミュニティー・ニュース

JHRSアカデミーがSHRMの認定を得る

6

「The HR Agenda」

e enc fer on

可能性を拡げる-女性のリーダーシップ・イベント

8

エリザベス・ハンドーヴァー 渡辺 美玲 クリスティン・エンヴィック 特集記事

成果に対する金銭的な報酬は今日の成果に役立つか また、現金は勤労意欲を高めるか

11

ヒルダ・ロスカ・ナルテア ウォートンの知恵

なぜ重役報酬は企業負債とリンクさせるべきなのか

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HRに聞け

欧米流の業績管理システムは日本で機能するか

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アンドリュー・マンターフィールド 松井義治(ヨシ) HR法律相談

代表取締役は雇用保険の対象になりうるか 大山滋郎 弁護士

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HR希望の星

経営者のパートナーを目指す 長瀬智紀

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「The HR Agenda」 カントリーフォーカス

中国でビジネスをいかに成功させるか

25

廣田 廣達 HRの道具箱

CEOは力のあるHR担当重役を採用しながら、 ときにはその重役らを無視する

28

ロイ・K・マッコール 論説

報奨と報酬

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アネット・カセラス ch

ar

M

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日本のHRプロフェッショナルに影響を与える最新 の知識や情報のやり取りを促進し、世界における HR最優良事例や標準を引き上げることで日本と 世界のHR管理システムを橋渡しする。 1

「The HR Agenda」革新的なプラットフォーム 日本における最初で唯一の二ヶ国語による人事担当者向け雑誌として、 「The HR Agenda」 は非 常にユニークな舞台 (プラットフォーム) を提供しています。 英語と日本語で書かれた資料を提供 し、 寄稿者から提出された文章もバイリンガル翻訳することで、 純粋の2方向性を持った意見交 換の場を提供します。 過去150年ほどの間、 日本はもっぱら西洋の知見を日本語に翻訳してきまし た。 私どもは日本の声を国際的な舞台にも紹介できるような場を創造したのです。 私どもの目的 は物事の裏表や問題のすべての相を理解することにあります。私どもは日本と海外における読 者の方々や、世界中のHRプロフェショナルや研究者、 オピニオン・リーダーたちの間でオープン かつ誠実な対話を実現させ、 それによってお互いの切磋琢磨を促すことを願っています。


「The HR Agenda」はThe Japan HR Societyが出版する日本初かつ唯一 の2ヶ国語人材(HR)専門季刊誌。制作はエイチアールセントラル株式会 社(The Japan HR Society事務局)のエイチアール学習・出版部門。 発行人 統括編集人

The Japan HR Society (JHRS) HRAgenda@jhrs.org www.jhrs.org www.jhrs.org/hr_agenda

編集長

アネット・カセラス editor-in-chief@jhrs.org

編集チーム

岡本 浩志 ヒルダ・ロスカ・ナルテア 澤田 公伸 ステファニー・オーバーマン

翻訳者 デザイン・制作 デザイン監修

澤田 公伸 大川 紀男 岡本 浩志 サイラ・モリイ

広告セールス・ マーケティング および配布

エイチアールセントラル株式会社 advertising@jhrs.org

編集補佐 および調査担当者

マーク・スィリオ 末広恵美子

編集局 電話/ファクス

エイチアールセントラル株式会社 (The Japan HR Society事務局) 〒108-0075 東京都港区港南2-14-14 品川インターシティフロントビル3階 デスカット MB28号

カビッティン・順 MBA/MS/HRMP managing_editor@jhrs.org

ブーン・プリンツ アネット・カセラス

+81 (0)50-3394-0198 +81 (0)3-6745-9292

お断り 掲載した記事にある見解や意見は執筆した寄稿者、筆者個人のものであり、必ずしも「The Japan HR Society」の一般会員、 事務局、 アドバイザー、会友、後援者の立場や見解を反映したも のではありません。本協会は、掲載された記事や広告に含まれるデータ、統計、情報の正確 性、真実性につき、 その全体もしくは一部に関し、責任を負いません。更に、掲載した助言、意 見、見解は情報提供だけを目的としたものであり、資格を有する法律専門家、財務専門家のよ り専門的な法的、財務的助言にとってかわることを目指したものではありません。

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表紙イメージ

アネット・カセラスの構想と 、 アールディー・コロマとイベス・リラが報奨と報酬を創作しブーン・プリンツ が編集・デザイン、 Washi paper by Carlanichiata, Church Bell by Albund, Technical/Statistical input by Jun Edo Orlanes

画像の出典:

Earth by Alexstar, Quick snack by Dragonimages, Plastic window by Ives Lira, Stormy clouds by Mladen Bozickovic, Businessman throwing the dice to make a decision by Pertusinas, Insurance solution by Helder Almeida, Success in China by Ardie Coloma,Washi paper by Carlanichiata, Church Bell by Albund

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発 行 人 からの メッセ ー ジ 2014年4−6月号

日本の人事部がグローバル化 の中で生き残るために 山本 紳也 プライスウォーターハウスクーパース株式会社パートナー 筑波大学教授 日本語原文による寄稿

世界に打って出よう とする会社はそうする理由をまず明確にし た上で、 自社固有の状況に合うように計画しなければならない。

人事コンサルタントをしていると、 日本企業のグロ ーバル化、 グローバル人材不足の悩みを聞かな

を議論すると、専門性や国という市場を無視して高い安いという意 味のない議論になる。 「アメリカの営業トップと日本の経理部長が同

い日はない昨今だが、英語ができるようにな

じ等級なのに給与が違って良いのか」 という議論は、 「タイで売って

る前に、身につけておかなければいけな

いる自動車の価格が、 日本で売っている自転車の価格より高いのは

い知識や行動様式が多いことに驚か される。

おかしい」 と言っているようなものなのだ。 日本企業からのグローバル化対応に関する相談は多岐にわた

例えば、労働市場がない(或いは

と 限定的だ) と、“人(人の持つ能力や 当部長 担 え 計 と 会 た の 経験)には市場価格がある”とい 長が 日本 販売部 ても プ っ ッ あ ト う意識がない(或いは薄い)。 日 で 米国の 与等級 給 か の る 社 本企業のグローバル化の検討 てい 同じ会 額を得 、 与 は 給 の中で、例えばグローバル等 違う ること 車が を尋ね 用 か 乗 う 級(global grading)の是非 ど いる より されて 車 売 転 販 の話になったときに、人 いる自 タイで ない、 られて く 売 し で 事担当者が等級と給与 は正 日本 かるの だ か と が こ を同義語のように話す じ コスト のと同 という ことがよくある。 日本

る。 グローバル人材が育っていない、 グローバル統一人事制度を作 るべきか、 グローバル環境で戦える組織風土に変えたい、ローカル 社員が育っていない、 グローバルタレントマネジメントの仕組みを 構築したい、公用語を英語にすべきか、等々、 列挙すればきりがない。 しかし、最近クライアントと話していていつも行きつくのが“なぜ、 何のために”という目的意識の欠如だ。 もちろん、 グローバル化が必 要なのは誰も否定しないだろう。 しかし、評論家のように一般論とし て“グローバル化が待ったなしだ”と言っていても、その解決策も曖 昧な一般的なものにしかならない。 「グローバル人材の定義は」 とか「グローバル人事制度はやはり 職務等級か」 とか、そんなものは実はどうでもよい。 グローバル人材

では経理であろうと

開発も、 グローバル人事制度も、社内公用語を英語にするかどうか

営業であろうと、等級(職

も、全て手段でしかない。人事部の目的や存在意義は、単にグロー

能でも職務でも)が同じなら給与が 同じという管理がされている。 これが正に労働 市場のない国の特殊性、世界的には非常識だという認識 がない。 転職が常態化し労働市場が形成されると、当然、その価格(個々

バル化を進めることでもなければ、 ましてグローバル人事制度を作 ることでもない。ビジネスで勝ち、成功し、発展することに寄与するこ とであるはずだ。余りに、その目的を見失っているというか、見てい ないことが多いように思う。 社員が英語をできるようになるとグローバルでのコミュニケーシ

人の報酬)は市場の需給バランスで決定される。社内では同じ等級

ョン力が高まるだろうし、 よりダイレクトな物言いができるようにな

でも、経理と営業は異なる市場に属するので、市場価格は異なる。 こ

り社内議論が活性化するかもしれない。その結果、ビジネスにもプ

れを理解できずに、 グローバル化や海外現地法人でのマネジメント

ラス作用があるだろうことを否定するつもりはない。 グローバルで

3


ういう人材を育てる人材マネジメントの仕組みが必要なことは間違 っていない。 ただ、ビジネスで何をいつまでに達成するために、 どのような人 材がいつまでに必要だという議論が十分にされているだろうか。今 後10年はドメスティックな事業計画しか立っていない事業部でグロ ーバル人材がどの程度必要なのだろうか。10ある事業のうち3事業 しか海外進出していないなかで、なぜグローバル人事制度を全社 で検討する必要があるのだろうか。 さらにいうと、 グローバル化とい っても、R&Dからセールスまで全てのバリューチェーンでグローバ ル化が必要な事業もあればセールスだけがグローバルで行われる 事業もある。 日本が先進国である事業業界もあれば、 日本は後進国で日本に いては立ち遅れる業界もある。 まだまだ日本に大きな市場がある事 業もあれば、今後新しいプロジェクトは全て海外でしか発生せず、 多国籍プロジェクトマネジメントが必須の事業もある。一言でグロ ーバル化といっても、その背景や歴史、市場競争環境、 リソース環境 などにより、求められているグローバル化のあり方は事業ごとに異 なる。 極論を言えば、今すぐにマネジメントを多国籍にして多様な考え 方のなかでの意思決定機関を設定しないと手遅れになりかねない 事業もあれば、 グローバル化に関わる時間やお金の投資は無駄で しかなく、強い日本組織を再構築することを優先すべき事業もある。 確かに、3か年計画を毎年書き換えるほど先の見えない環境では ある。そんななかで、施設や仕組みの変革とは違い、人の変革には 時間を要する。 しかし、それでも、会社の理念や夢を含めた長期で向 かう方向性が示され、難しい競争環境のなかで書かれた事業の計 画を皆でどうにか達成するように頑張っていくしかない。 その長期の方向性を見据えつつ、短期的に事業が成功するため に、人事がどうあるべきか、人事に何ができるかを考え続け、やり続 けるのが人事の使命なのではないか。昨今、大手日本企業でも組織 のグローバル対応の一環としてデビッド・ウルリッチの提唱するHR トランスフォーメーションの検討が始まっている。 しかし、本社専門 サポート機関としてセンター・オブ・エクセレンス(COE)や各事業部 人事参謀であるべくビジネス・パートナーを検討する以前に、人事 部や人事部長がまずは経営の人事戦略参謀であり、経営のビジネ ス・パートナーたらんことを今一度認識する時期に来ているように 思われる。

山本 紳也 プライスウォーターハウスクーパ ース・ジャパンのパートナーであり、筑波大学 大学院客員教授。人事コンサルタントとして20 年以上のキャリアを持つ。彼の専門領域は、人 事戦略や人事政策およびプログラム、人材開 発、人的資源管理(HRM) と人事マネジメント 精査(HRDD)、企業合併における人事担当者 統合などの分野におよぶ。人事関係セミナー での講演も多い。JHRS相談役の一人。

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Chad Stewart • Daniela Ploberger • Shinya Yamamoto • Warren Arbuckle • Norio Suzuki, Ph.D. • Yutaka Sugimoto • Noboru Minamoto • Rochelle Kopp • Shabeer Ahmad • Elizabeth Handover • Susumu Shinbori • Celeste Blackman • Dan Harrison, Ph.D. • Atty. Mie Fujimoto Shigeki Egami • Hiroyuki Akaso • Dana Gallagher • Mikki Tomoeda • Peter Capelli • Ozlem Battal • Atty. Jiro Oyama • Prof. Ikujiro Nonaka, Ph.D. • Pranvera Zhaka • Nimalan Nadesalingam • Yumiko Shito • Atty. Grant Stillman • Atty. Vicki Beyer • Radoslava Angelova • Mio Araki • Kiyo Ogushi • Hideki Ikeda

ビジネスをリードできる人材が必要なのは誰の目にも明らかで、そ

寄稿者募集

何人の名前が言えますか? 毎号、 「The HR Agenda」は寄稿者を JHRSイベントへの特別ゲストとして招待しています。

ご寄稿ください。記事を載せさせてください。 対話を継続するために本誌は定期的にネットワークづくりのた めの集まりに寄稿者を招き、特別ゲストとして意見交換を行ってい ます。 もし寄稿について考えをお持ちでしたらぜひお知らせください。 「The HR Agenda」のメールアドレスであるHRAgenda@jhrs.org まで電子メールをください。 また当雑誌に関するご意見などフィー ドバックを歓迎します。私どもは受理したメールについてすべて掲 載できるとはお約束できませんが、少なくとも返事を出すことはポ リシーとしています。本誌で取り上げて欲しいトピックもお寄せく ださい。


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COMMUNITY NEWS 2014年4−6月号

Get to know the latest news and updates within the JHRS Community.

JHRSアカデミーがSHRMの認定を得る 「The HR Agenda」 英語原文から翻訳

JHRSアカデミー は今回、世界最大のHR組織である、 ソサイエティー・フォー・ヒューマン・リソース・マネージ メント (SHRM、 シャームと発音)から認定を受けました。 日本でSHRMの研修パートナーとして、JHRSは、 この 地域におけるHRプロやHR組織に対し、世界レベルのSHRMラーニングシステムを利用したHR検定対策プロ グラムやセミナーを提供することができるようになったのです。

専門領域の卓越性を得て、ビジネスに価値をもたらすために重要

赦ない変化にさらされている日本のHRコミュニティーに対して、ユ

であるスキルや知識を参加者たちに身に付けさせ、JHRSのもうひと

ニークで時機に適った、変化のチャンスをもたらすことが可能だ」 と

つの提携パートナーである エイチアール・サーティフィケーション・

も述べています。

インスティテュート (HRCI)によって認定されるHRMPやHRBP,および GPHRといった世界で認知されているHR検定認定を得るようデザイ ンされた当アカデミーのラーニングセッションの主な参加者となる

JHRSについて JHRSは世界で活躍する日本に焦点を当てたHRプロフェッショナ

のは、 日本に特化したHR実践者や教育者、そして専門家たちです。

ルや日本で事業を行う企業リーダーたちの集まりです。私たちの使

これらSHRMのセミナーの特徴は、SHRMラーニングシステムを構

命は、HR教育およびHR最適実践の使用などに関する知識の共

成する2つの要素から選択されたツールを特徴とします。 • 要素の1つは教育です。戦略的HR、 ダイバーシティーとインク

有化を継続することを通じ、 日本でHR管理実践を発展させるのに 役立つことにあります。 さらに情報を得たり、 メンバーになることを

ルージョンといったトピックをカバーする幅広い領域を持つプ

希望される方は、私たちのホームページ(http://www.jhrs.org) を参

ロダクトやモジュールを提供します。

照してください。

• もう1つの要素は検定です。上記検定のために専門家が開発 した試験対策モジュールが含まれます。

SHRMについて SHRMは人材管理に特化した世界最大の団体。140か国以上の

これらのコースの講師たちは、SHRMとJHRSとの間で合意された

25万人を超えるメンバーを代表して、SHRMはHRプロのニーズに応

厳格な基準を満たすように選ばれます。 これら講師の資格としては、

え、 また、その利益を推進させることを目指す。1948年に設立された

最低5年間のHR実践経験を持ち、教室や職場での指導経験があるこ

SHRMは米国内に575の支部を持ち、中国、インド、 アラブ首長国連

とが求められます。 また、講師が教えるSHRM教育コースに関する適

邦に出張事務所を持つ。

切なHRCIの検定に合格していることも必要です。 140か国以上に25万人を超えるメンバーを持つSHRMは世界の HR界で発言力を持っています。そのイニシアチブとプログラムは、

JHRSアカデミーについて JHRSアカデミーはJHRSの教育機関であると同時に検定機関とし

人材管理問題についての解決策と専門性を学ぶプラットフォームを

ての役割を担う。その主なミッションは、 日本に特化したHRプロへ

創造するというSHRMのミッションに根差しています。 また、 それはグ

の基礎的、継続的、先進的な教育を通して、 日本におけるHR実践の

ローバルなHR基準と同じ程度の知識とスキル、競争力をHRが獲得

スタンダードを定義し、確立し、進化させることである。2009年に創

するのを促進するという当アカデミーのミッションにも通じます。

立された当アカデミーは、HRのジェネラリストとスペシャリスト両方

JHRSのチーフ・コミュニティー・オフィサーであるカビッティン・順

のための教育プログラムとコースを継続して提供してきた。 また、

氏(MBA/MS/HRMP)は、当アカデミーとSHRMのパートナーシップ

エイチアール・サーティフィケーション・インスティテュート (HRCI)

は、 日本でHR実践の基準を引き上げるために重要な推進力にな

のパートナーとして、当アカデミーは、HRCIが開発したHRビジネス・

るだろうと述べています。 また、彼は、 「SHRMの専門家たちが開発し

プロフェッショナル(HRBP) とHRマネージメント・プロフェッショナル

た国際的に評価の高いHRコースとJHRSの持つ日本国内での研修 実施技能とを組み合わせれば、今日のグローバル化した職場で容

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(HRMP)およびGPHRの資格認定の取得に向けた対策コースを設 けている。


Brought to you by:

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可能性を拡げる 女性のリーダーシップ・イベント 第4回WINジャパン・コンファレンス 2014年4月17・18・19日、シャングリ・ラ ホテル 東京

W IN

エリザベス・ハンドーヴァー JHRS「Women in HR」提唱リーダー

bal Leaders Glo h i p 14 C 20

渡辺 美玲 JHRS「Women in HR」 アドバイザー クリスティン・エンヴィック WINコンファレンス創立者 英語原文から翻訳

WINジャパン・コンファレンス2014が、 日本の文化とビジネ ス環境というユニークな文脈のなかで、世界有数の講演者、 ワ ークショップ、ネットワーク作りを通して、新しい可能性を開く。 エリザベスの展望

17年前の食卓で夢見たことが今や世界的な現象となった感 がある。WIN(女性国際ネットワーキング)はヨーロッパ、インド、 そして日本でコンファレンスを開催し、4,000人の会員と80団体 以上の組織会員を集め、主要な企業スポンサー、ビジネススク ールやメディアの支援など、驚くほど多くの関係者の関心を集め ている。

WINジャパン・コンファレンスは、 クリスティン・エンヴィック氏 の独創的な考えから生まれた。彼女は女性というのは「影響力と意 思決定の力を持ち、組織を率いて変革の原動力となる。優雅に率 い、 自身に忠実で、組織を環境に配慮したものに再構築し、長期的 な結果を求めるために意識的に決断し、共感を持って人とコミュニ

e enc fer on

ケートし、すべての局面で命とキャリアが世界中で花咲くよう心砕く 存在である」 と信じている。

私たちはまず2010年にパリで開かれたグローバルWINコンファ レンスに参加した。そのイベントの規模や世界の隅々から来た参加 者たちの多彩さ、講演者の熱意、理念、 そして会場に集まった1,000 人もの意気込んだ人々の積極的なエネルギーが充満する空間に触 れ、私たち二人は圧倒されたのである。 2011年にローマで開催されたWINコンファレンスにワークショッ プのリーダーとして参加した際、私は最終日にクリスティンに直接会 うチャンスに恵まれた。私たちはお互い日本と関わりを持つという 共通点を見つけ出し、親近感に導かれて、2012年に日本でWINコン ファレンスを開催することになった。 東京で私たちがWINの理念に真摯に向き合うことができたのは、 情熱と並外れた体験を語る講演者たちを招請できたからだった。企 業リーダーだけでなく、パフォーマー、 ジャーナリスト、起業家ら独自 の視点を持つ人たちをも集めることができた。私たちは即興で生ま 10ページへ続く u 8


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u

8ページから

れるエネルギーがあふれる様子にうっとりとし、議題にとらわれない で交流の波に飲まれることを優先した。 クリスティン自身も原稿を使ったりせず、聴衆に直接話しかけ、決

WINはこのエキサイティングなイベントを通じ、女性リーダーたち を奮い立たせてエンパワーし、 この変容のプロセスに男性も巻き込 みながら、女性の成功を積極的に支援している。今回のWINは日本

して形式ばらず、 「その瞬間の」交流に身を任せた。彼女はまたWIN

では4回目の開催となるが、今回はこれまで以上に期待がもたれて

の目的に真剣に向き合っているが、実際、 クリスティンが作り出す雰

いる。今日、ビジネスと政治の世界では、女性を意思決定に参画さ

囲気はユニークなほどオープンで、そこにいると女性たちは貴重な

せ、職場の形成に組み込まなければ繁栄した将来が期待できない

“つながり”をお互いに獲得すると同時に、キャリアに関することや願

ことが理解されている。私たちは東京に集まり、 これら女性たちの可

望、ビジネス情報や新しいアイデアについてもたやすく意見交換で

能性を拡げ、将来を積極的に作ってゆくために自分たちがいかにベ

きるのである。

ストをつくせるかを考えてゆきたい。

講演者の一人として私は、 自由にかつ誠実に話すために、 自分 自身の成長の軌跡をシェアし、 ステージでもっとリスクを取るようあ 美玲の展望 2010年にパリで開かれたWINコンファレンス(これは私が初めて

The Japan HR Society(JHRS)は、私たちの「ウィーメン・イン・HR」

bal Leaders Glo h i p 14 C 20

えて自分から冒険するように心がけている。

JHRSの展望

W IN

提言プログラムを通して、 日本における女性HR専門家の貢献に対す る認知度を高め、革新をもたらす彼女たちのユニークな機会作りの 最高の機会として、2014年WINジャパン・コンファレンスを支援し推

参加した女性会議だった)に参加登録するために列に並んだ瞬間

奨する。 また、 このコンファレンスについて私たちのメンバーが、女

から、私はこれまでの会議で一度も体験したことのない親しみと温

性自身の才能や仕事上の願いを十分に表現できるよう、女性HR実

かさをすでに感じていた。そしてまもなくこの温かさがクリスティン

践家を支援する専門的な発展の機会を提供するという本コンファレ

の持つ積極性を反映していることに、彼女が登壇してすぐに気づい

ンスの価値を十分に認識している。

しかし、 クリスティンはWINの目的にとても忠実で、そのことはラ ンチの席上やネットワーキングのための休憩時間中に交わされる 会話からも読み取れた。女性たちはお互いのキャリアに関する事柄 や願望について議論したり、ビジネスのアイデアを分かち合ったり、 新しいつながりを求めたりした。笑顔と笑い声、そして朝のヨガの時 間にも、 コンファレンスに参加した女性たちはビジネスの時のよう に真剣なのである。 東京でのWINコンファレンスでも、 この親しさと真剣さを奇しくも 同時に実現できたことを私は誇りに思っている。私たちはワークショ ップで、職場におけるジェンダーの平等についての重要な議論をバ イオリン演奏と、ビジネス・スキルのワークショップをインド舞踊と 組み合わせることができるのだ。 このような垣根のなさがWINコン ファレンスを特別なものにしている。 日本でこのコンファレンス以外 にも女性のリーダーシップに関するイベントは存在するだろうが、 カルビーの会長による講演を聞いた翌日に、参加者たちがインド音 楽に合わせて腕を振って踊るようなイベントは、 このコンファレンス をおいて他にはないと確信している。 クリスティンが今年はどんな特別な趣向を用意しているか知らな いけれど、私はぜひ現場でその内容を確かめたいと思っている。 クリスティンの展望 WINは、 これまで16回にわたり、世界中の1万1,000人以上の女

WINジャパン・コンファレンスの登録

JHRSの会員には、 シャングリラホテルで4月(17)・18

・(19) 日に開催される2014年WINコンファレンスの参加費 が1万円、特別に割引される。席に限りがあるので、すぐに http://www.winconference.netから登録を。

エリザベス・ハンドーヴァー イントラペルソ ナKKの社長であり、ルミナラーニングのアジア 地域パートナー。彼女はACCJウィメン・イン・ ビジネス・コミティーの共同代表であり、 ウィメ ンズ・リーダーシップ・ディベロップメント・セ ンターの共同創始者、 またグローバルWINコ ンフェレンスの特別顧問でもある。

e enc fer on

たのだった。

渡辺 美玲 ルミナ・ラーニングのアジア地域 パートナーである。ルミナの講師メンバーとし て、彼女は、 グローバル・リーダーシップやダイ バーシティ、チームワークやプレゼン技術の分 野に関する参加者のモチベーションを高め、 実践に役立つワークショップをルミナのライセ ンスを持つ講演者が開催できるようにするた め、研修や支援を行っている。

性リーダーたちを集めて成功裏に開催されてきた世界の女性リー ダーシップ・コンファレンス、すなわちWINコンファレンスによって 知られている。私たちは、女性の本物でグローバルな理念をもって、 女性をエンパワーし、つなぐためにこれらのイベントを主催してい る。WINコンファレンスは、意識的なリーダーシップやジェンダー問 題、女性によるマネージメント、 ダイバーシティとインクルージョン に積極的に取り組む国際的に活躍する女性や企業にとって、注目さ れる存在となっている。 10

クリスティン・エンヴィック WINの創造的知性 であり他人を巻き込む精神の人。“さらに女性 的で、 グローバル、仕事・コミュニティー・生活 の持続性”という自分のアイデアを女性リーダ ーをエンパワーし開発し、つなぐ年次コンファ レンスという形で実現した先見の明のある人。


特集記事 2014年4−6月号

成果に対する金銭的な報酬は 今日の成果に役立つか。 また、現金は勤労意欲を高めるか ヒルダ・ロスカ・ナルテア 「The HR Agenda」寄稿編集者 英語原文から翻訳

成果に対する金銭的な報酬に関して“1つですべてが解決する”万能薬はない。会社は自らの企業文化、 従業員のニーズ、各従業員が会社に貢献する価値を考慮に入れなければならない。

1990年代初頭、ホンダ、富士通、藤沢薬品をはじめとする日本企

1990年代、能力給を導入しようとしたのは日本の民間企業と政府

業の多くが伝統的な年功序列型給与体系を改め成果報酬を導入し

機関だけではなかった。 シンガポール、マレーシア、パプアニューギ

た。 この方針は、工場従業員だけでなく事務・営業系社員にも適用さ

ニア、 また世界貿易への参入と外国投資の誘致を急いで進めたい

れ、大きな衝撃を労働者に与えた。それから20年以上が経ったいま

と考えるその他の新興工業諸国もまた、 この期間、生産性向上を目

も、 日本郵便や長野県の学校に見られるような保守的な組織にお

的に、成果と熟練度の評価のための様々な方法の導入と適応を開

いて、 この変化に対する人びとの反応はまったく変わらない。だが、

始した。

長い年月が経ってみると、パソコン大手のNECや富士通のように、 こ れまでの手法を改め、 また成果型報酬と年功型報酬とのバランスを うまく取ることで従業員の士気を維持しようと努める企業も出てき ている。

成果連動型報酬のタイプ 今日、企業がますます高まる経済変動に対処しようとするなか、多 くの人たちが成果型報酬こそ生き残りに必要なステップと見るよう 11


になり、それに伴って成果報酬という言葉がいままた人びとの話題

食事券、 ショッピングディスカウント、旅行券、映画招待券、 アスレチ

に上っている。成果連動型報酬の中でも最もよく見られるのは、個

ックジムの会員、 コーヒー店クーポン、 自動車の利用などである。同

人インセンティブ(営業コミッションなど)、利益配分報酬、 ストック

様に、成果のためのボーナスとしては表彰(例えば特に優秀な社員

オプション、優遇年金制度、ゲインシェアリング(特定の事業活動や

を月ごとに表彰するなど) といった形のベネフィット、あるいは従業

従業員によって取り入れられた活動から得られる利益に基づいて

員の成果を同等の、おカネ以外の価値に連動する報酬も可能であ

支払われる割増金)などである。 こうした措置が組織成果の向上に

る。 もしどこから始めたらよいかが分からないときは、AnyPerk(日本

つながったときは、 さらに余剰がスキームに関わったメンバーに配

人チームによって設立された、サンフランシスコに拠点を置く新進

分される。

企業)が開発した“ワンストップショップ”のソリューションをぜひ試し

海外赴任の数が増えるつれ、海外に居住する社員に限定した報 酬体系を導入する企業も増えている。 グローバルに活躍する従業員 にとって税の優遇措置は実際的な選択肢といってよい。 というのも、

てみることをお勧めしたい。 誰でもちょっとした手当ては嬉しいものである。胃袋も心も温めて くれる、そんな“小さな幸せ”もある。 日本では、毎日昼食のため従業

それによって従業員と経営者の両方が国際赴任のためのコストを

員交代で就業時間内に味噌汁をつくることを許可している会社もあ

管理しやすくなるからである。Tax Equalization(租税の公平化)政策

る。 また、 シアトルのある企業は、社員が仕事を抜けて会社のランニ

のいくつかの形態を実践することが、海外駐在を命じる米国企業に

ングクラブに参加することを認めているという。

おいて、 また多くの日本企業においても一般的なトレンドになりつ つあるとデロイトは指摘する。Tax Equalizationは従業員と経営者の 両方にとって利益がある。すなわち、海外に居住する従業員は支払

働きに報いることと報いられるような仕事をつくること 成果連動型報酬が効果を発揮するには過度に単純化されたアプ

う税金が自国で支払う税金と同額で済み、一方、その差額を負担す

ローチ(つまり、 「おカネが増える=成果が上がる」 と考えること)が

る会社側は税控除の恩典を受けることができる。

常に解決法ではないことを理解する必要がある。働きとおカネの結 び付きにおける複雑さは、数年前、急速に広まったダニエル・ピンク 氏のアニメ講義の中で彼が見事に解き明かしている。ピンク氏や彼 の前に登場した多くの専門家は、おカネによるインセンティブは手

行動についてフィードバックを提供す るような、 そして自分たちをコントロール するのではなく本来的な報酬と感じられる ような方法で成果を向上させるような、 十 分に洗練された戦略を確立することが重 要である。

作業によるアルゴリズム的仕事に適用されると大いに効果を発揮 するが、認知的スキルを伴う課題になると話はまったく異なる。最も 初歩的な概念的なスキルであっても、 より高度な金銭的報酬はとき に悪い成果につながることもあるという。 言葉を換えれば、動機付けとしてのおカネを使うことのパラドク ス(逆説)は、おカネがあまり重要でなくなるときに、おカネは重要 ということなのである。つまり、 「おカネのことをあまり心配しなくて いいだけのおカネを払え。そうすれば彼らは仕事のことを考えるよ うになる」 とピンク氏はいう。おカネの問題を議論から外すと多くの 人はよりよい成果のための最重要な要素―個人的な満足、 自律性、 達成、目的など―を考えるようになることは科学によって証明され ている。

実感できるインセンティブとは ところで、そうした現金によるものとは別のインセンティブを模

おカネのために成果を挙げるという考えを人はどう見るかをよく 考えることもときに必要である。働くということはもともと交換の一

索している組織もある。数年前、米国グッドイヤー・タイヤ・アンド・

形態である。だが、 プロ意識に対して取引的なスタンスを持つことに

ラバー・カンパニーは、 タイヤの新製品の売上げ強化を目指して2

何より居心地よく感じる人もいる。例えば、販売スタッフや経理係は

種類のインセンティブ計画を導入した。それによると、販売スタッフ

数字的目標こそ役に立ち明瞭なものと見なすかもしれない。一方、

の1つのグループは現金によるインセンティブを受け取り、 もう1

定量化する試み自体が侮辱しているととらえるプロもいるだろう。

つのグループは実感できるインセンティブを受け取るというものだ った。その結果、第2のグループ(天国のようなビーチでのバケーシ ョンをタダで経験できるといった提案におそらく刺激されたのだろ う)は46%も売上げを増やすことができたという。

成果に対する金銭的な報酬は今日の成果に役立つか 行動についてフィードバックを提供するような、そして自分たちを コントロールするのではなく本来的な報酬と感じられるような方法

会社の金庫を空にすることなく従業員のやる気を高めたいと願う

で成果を向上させるような、十分に洗練された戦略を確立すること

企業にとって、おカネを伴わない報酬はまだほかにもある。例えば、

が重要というのが現在のコンセンサスとなっている。国際労働機関

12


(ILO)も、成果報酬プランの作成と監視を念頭に置きながら従業員 と協議することを勧めている。 日本においてこうしたプロセスに従 業員が参加することで、組織の成長と従業員の貢献のあり方を従業 員が理解することが可能になったというのがILOの見方である。成 果報酬を策定する際の重要な課題は、その企業の文化に最もマッ

日本の年金制度

チした、 また従業員のニーズに関連した、そして従業員が自社に対 してもたらす価値に明らかに基づいた、そんなスキームを選ぶこと である。 そんなときHR部門には、企業が提供する報酬の1つひとつが企業 の目的に整合しているか、 また可算的な結果をもたらすかを常に見 ていることが期待されるはいうまでもない。だがこれは、考慮しなく てはならない情緒的・心理的変数が多いことを考えると、なかなか に手強い課題といってよい。だが、 もともと“1つですべてが解決す る”万能薬はないのだから、結局は従業員1人ひとりを個人として見 ること、彼らの個別的な貢献が組織との結び付きを創造することを 注意深く考えるしかない。おカネだけがすべてを解決するわけでは ないと聞いても、思慮深いHRのリーダーなら何も驚きはしない だろう。

ヒルダ・ロスカ・ナルテア シドニーに本拠を置 くPRエージェンシーのライティングチーム責 任者。そのかたわら、複数のNPO法人のコンテ ンツプロデューサーを務める。またかつて、フ ィリピン・エネルギー省のもとで、国連開発計 画のいくつかのプロジェクトを担当したことも ある。

日本の労働法に ついて問題を抱 えていますか? 私がお答えしましょう

日本の年金制度には2つのタイプがある。確定 型企業年金(DB) と確定拠出年金(DC) である

DB

確定型企業年金には企業が掛け金な どの一部を肩代わりする次のようなタ イプがある。 • 厚生年金基金 会社が従業員の年金 の一部を支払い、従業員の年金の上 乗せ給付(1万円程度)を行う。2014年 4月からの厚生年金基金の解散に関 する法律の結果、多くが自らの年金資 産を厚生年金基金から政府か他の年 金スキームに移すことが予想される。 • 確定給付企業年金 2002年4月に成 立した法律に基づく独自の企業年金 で、 給付金は各社まちまち (月額5万 ~6万) で、 終身年金、 有期年金、 また はその組み合わせがある。

注:積立から運用・管理、給付まで会社が責任を持 つ(年金原資は外部積立する)のが基本で安心だ が、JALのケースのように給付が減ることもあり得 る。

DC •

私どもにご連絡を

横浜パートナー法律事務所 tel 045-680-0572 fax 045-680-0573 email oyama@ypartner.com

• •

確定拠出年金は経営者や自営業者が 積み立てるタイプの年金制度で日本 401Kとして知られる。 国民年金や厚生年金などに上乗せし て年金を増やすことができる。会社が 掛け金を拠出する場合にも、従業員が 金融商品(投資信託、預貯金、保険商 品など)を自分で選び運用する。 損失を出す場合があることも自己責 任として受け入れる。 掛け金は、所得控除の対象となる。 確定拠出年金受け取り時は他の年金 と同様にみなされ税金が課される。

お断り:筆者がここで述べているアドバイスや意見は一般的な 情報を提供するのが目的で、専門的な法律アドバイスではあり ません。

http://www.ykomon.com 13


質問 日本で所得税はどのように計算されますか

計算例 ステップ1 給与から税額を計算する方法

前提 ・税引き前の給与額または年間収入(A)= 1,200万円で、賞与は対象外 ・扶養家族=なし ・社会保険料の掛け金(Aの約15%) = 180万円

・住居手当=なし ・通勤手当=月最高10万円まで払い戻し ・給与以外他に収入源はない

給与所得控除後の収入(給与所得) (B) は、年間収入から下の表1にある給与所得控除を引いたものと等しい。 給与所得控除額(表1) (B) 年間収入 (A) (円) 以上

以下 1,800,000

加算

給与所得控除額

40%

0

年間収入 × 0.4 (65万円に満たない場合は 65万円)

1,800,001

3,600,000

30%

180,000

年間収入 × 0.3 + 18万円

3,600,001

6,600,000

20%

540,000

年間収入 × 0.2 + 54万円

6,600,001

10,000,000

10%

1,200,000

年間収入 × 0.1 + 120万 円

10,000,001

15,000,000

5%

1,700,000

年間収入 × 0.05 + 170万円

15,000,001

245万円

2014年4月1日現在

(A)年間収入 1,200万円

給与所得控除額 1,200万円×0.05+170万円

得られる給与 所得控除 230万円

=

従って、 この従業員の給与所得控除(B)後の収入は、 (A)年間収入 (給与収入)

得られる給与控除 (給与所得控除額)

1,200万円

230万円

(B)給与所得控除後の収入 =

(給与所得) 970万円

ステップ2 課税所得の計算方法 課税所得は、給与所得からステップ1の控除額を引き、 さらに社会保険料と扶養家族に関する控除を引いたものである。 ・誰にも所得税に関し38万円の基礎控除がある。 ・扶養家族があるか要件に当てはまる特定の状況にある個人は、控除を受けることができる。 上記前提からこの従業員は、社会保険料に関して180万円の控除。加えて基礎控除の38万円、合計218万円の控除を受けることができる。

(B)給与所得控除後の収入 –

970万円

引くことのさらなる控除 (所得控除) 218万円

課税所得(C) =

752万円

ステップ3 税額の計算 (ここでの課税所得は千円未満を切り捨てた金額) 課税所得(円)(a)

税率 (b)

控除額 (円) (c)

1,950,000以下

5%

0

1,950,000以上 3,299,000以下 3,300,000以上6,949,000以下 6,950,000以上 8,999,000以下 9,000,000以上 17,999,000以下 1,800万超

10% 20% 23% 33% 40%

97,500 427,500 636,000 1,536,000 2,796,000

2014年4月1日現在

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この人の所得税額= a × b – c 国税=752万円×23%‐63万6,000=109万3,600円 これに加えて復興特別所得税(国税の2.1%) =22,965円 さらに加えて住民税=課税所得×10%=752万×10%=75万2,000円(概算) これらを加えた総所得税額は=186万8,566円 (年間収入の15.57%)

出典: 国税局; エ イチアールセントラルの人事コンサルティング


2014年4−6月号

なぜ重役報酬は企業負債と リンクさせるべきなのか Knowledge@Wharton(ペンシルバニア大学ウォートン校) 英語原文から翻訳

重役たちの報酬に内部負債を組み込むことが、 リスクの高い経営判断を投資家の利益への配慮に向かわせ、 経済のぜい弱さに対する緩衝材として働き、倒産に直面する企業の価値を保護することにつながる。

これまでの数十年間、企業は重役報酬を株式またはオプションの

企業が経営難に陥ったとき、負債よりも株主資本に大きく偏った

ような株主資本と結びつけてきたが、企業から重役に支払われる年

報酬パッケージを受けている重役たちは、たとえ企業やその社債の

金または税制優遇付退職貯金制度のような企業負債( 「内部負債」 と

価値をさらに危険にさらす可能性がある中でも、企業とその有価証

して知られる)に類似した手段を選択肢に加えるという考え方に近

券資産の価値を維持しようと大掛かりなリスクを負うような決定を

年、注目が集まりつつある。 「(これは) できることなら将来の財務危

下すかもしれないとエドマンス教授は説明する。 というのも、そのよ

機を防ぎ、マネジャーたちを株主・社債保有者たち両方の投資家と

うな状況では彼らの所有する株式の価値はゼロに近づいているた

より近い目線に立たせるのに有効な手立てである」 とWharton校の

め、彼らは“再生のための賭け”に打って出る可能性があるというの

アレックス・エドマンス教授(財政学)は述べている。

だ。たとえ彼らのギャンブルが失敗したとしても、株式に偏重した報

「内部負債」 と題する論文で、エドマンス教授と博士課程で学ぶ

酬を受けている重役たちにおいてさらに失うものはないからであ

チ・リウ氏は、 「このようなインセンティブを実施することは、企業倒

る。 さらなる企業価値の損失は、その企業が倒産したときに投資分

産が迫ったときに社債保有者の利益と企業の価値を守ることにつ

の価値を大幅に失うことになる社債保有者や他の債権者が背負う

ながる」 と主張する。

ことになるのである。

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倒産を目の前にした企業のマネジャーたちにとり、株主資本で支 えられた報酬は“ダメもとの賭けだ”とエドマンス教授は指摘する。 「もしリスクを克服できれば、株価は一気に上昇する。仮にリスク を克服できなくても、最悪、彼らの株式がゼロになるだけだ」 という。

ンは同社の事業再編成に際し、株式に基づく報酬制度が持つ脆弱 性を減らすことに役立っている。米国政府は同社の事業再編を監視 し、その救済のために1,020億ドルを注入、 この新しい債務連動型の ボーナス・プランを承認したのである。 より多くの社債を重役の賞与に組み込むというAIGの決定は年

負債を報酬スキームに加えることは、 経営がうまくいっている時、 経営がうまくい っていない時にも株主と債権者の利益の バランスを取るよう役員たちに仕向ける簡 単な方法である。

金のような他の内部負債の活用を進めるのとは違って、報酬を社債 保有者や企業の返済能力に結びつける明快な方法であるとエドマ ンス教授は指摘する。年金は企業の抱える担保付き負債とは少し違 った方法で支払われる可能性があり、経営への影響力が減るので ある。 負債を報酬方式に加えることは、経営がうまくいっているとき、経 営がうまくいっていないとき、経済的サイクルの乱高下を緩和して、 株主と債権者の利益のバランスを取るよう役員たちを仕向ける簡

教授の提唱するモデルによれば、 トップマネージメントの報酬パ ッケージに内部負債を組み込むことは経営破たんのリスクが高い 企業においてはより良いアプローチであり、そこでは投資判断やマ ネジャーたちの努力が企業の債務返済の価値に大きな影響を与え るという。論文ではこのようなシナリオの例としてレバレッジドバイ アウト (LBO)を挙げている。 レバレッジドバイアウトは通常、過剰な 投資によって苦境に陥った成熟企業をターゲットにして行われるも のだが、それは債務と株式の状態を保ったままマネジャーたちが― しばしば民間証券会社で働くマネジャーたちだが―経営に踏み込 んでコントロールする。 「負債は企業の支払い能力が危機に瀕した ときに最も強い影響力を持つ」 とエドマンス教授は述べている。そ のモデルはまた負債を多く抱える企業ほど重役たちへの報酬パッケ ージにもっと負債を組み込むべきだということを示唆している。

単な方法であることをこの研究は示している。 もし、ある重役が株式 と社債との均一のとれた報酬を受けている場合、経営状況の良い 時には株価が上昇し、マネジャーたちが所有する社債の価値よりず っと良い利益をもたらすことになる。企業の倒産の心配がない時に は社債はそれほど必要ではないので、 これは効果的だと著者は主 張する。 これとは対照的に企業が経営難にあるとき、その株価は下 落し社債の価値がマネジャーたちのインセンティブの大半を占める ようになる。 まさにこのような場合、彼または彼女は社債保有者の 利益を最優先に考え、過剰なリスクを取らないようにするなど、工場 を閉鎖するような苦渋の判断を避けるのだ。 「社債と株式で報酬を 払うことの利点は、 自らバランスを取るようになることなのだ」 とエ ドマンス教授はいう。 「会社は自動操縦装置で運航する航空機のよ うに経営される」 と。

米保険大手のAIGは2010年、ボーナスを「長期業績ユニット」 と呼 ぶ方式で支払う報酬体系を採用した。 これはボーナスの80%は自社 の短期社債で払い、残りは同じく普通株で払う。 この新しい報酬プラ

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編集者注 Knowledge@Whartonから許可を得て、“Why It Pays to Link Executive Compensation with Corporate Debt”の原文を要約した。


HRに聞け 2014年4−6月号

Andrew

& Y o s h i ’s

AskHR Helping you solve your people issues.

Ask Andrew & Yoshi: email us at AskHR@jhrs.org

欧米流の業績管理システムは 日本で機能するか 欧米流の業績管理システムは日本の労働文化の中でうまく機能するでしょうか。機能しないならば、 日本の 環境において効果的に機能するとお考えになる業績管理のあり方・形とはどのようなものでしょうか。あるい は、 どこでも効果がある業績管理の最優良事例とはどういうものかご教示ください。

アンドリューの見解 英語原文から翻訳

会話なのです。 これが共有され開かれた会話と他人に価値を置くこ とで実現する業績管理なのです。

私がまず注目するのは「業績管理」 という言葉です。過去数年間に

私の個人的な経験では成功する企業やリーダーは現在の実績水

次のようにその内容が変化してきたようです。つまり、 「どうやって業

準がどのようなものであれ、そこから出発し、人々から最善の結果を

績を管理しどうやって人材を最善に生かすか」から 「どうやって業績

いかに引き出すかに焦点を当てています。 これはどの文化圏におい

不振に対処するか」へ、 さらには「どうやって業績不振者を辞めさせ

ても効果がある方法です。

るか」へと。会社が業績管理の最終結果をまとめるときになると、そ

このアプローチを支持する多くの著作や研究が世に出ています。

の後にくるプロセスを予期し、 ライン管理者と従業員が恐怖と脅威

神経科学の分野から出された最近の研究では、いかに人間の脳が

を感じる、会社にとって困難な状況にしばしば至るのです。

脅威と報酬に反応するかを論じています。例えば、 「SCARF」 (立場

私の経験に照らすと、最優良事例は社員の能力とその潜在能力を

性、予見性、 自律性、関係性、公平性という5つの言葉からなる頭字

信じることから始まります。そうすることによって 「社員たちの現在の

語)は一読に値するモデルだと思います。 (編集者注:セレステ・ブラ

業績がどのようなものであれ、 どうやって彼らを最善に生かすか」 と

ックマン氏「インクルージョンの神経生物学」参照。) また、ギャラッ

いう問いに焦点を当てることができるようになるのです。他人の能

プ社の本で「StrengthsFinder」は、数十年間かけておよそ100万人

力に信頼を置くこのようなやり方が、私にはより前向きなアプロー

のリーダーと部下たちに行った面接を基に書かれたものです。 この

チだと思われます。 この方法により、 どうやったら社員が自己の最善

本によると、部下は自分のリーダーに4つのもの、つまり、頼りがい、

を発揮できるのか、違った形での彼らとの話し合いが可能になりま

思いやり、希望、安定性を期待しています。 これらの領域を満足させ

す。 このような会話により、個人が会社を去るということもあるかも

ることを心に留めながら部下の業績を管理することは、 さまざまな

しれませんが、それは関係を断つよりも、むしろ関係を築く建設的な

業績管理に役立つでしょう。

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このことはあなたの質問の最後の部分、つまり 「どこでも効果があ

ードの出る車を持つことに似ています。そのような車から最高の性

る業績管理とは何か」に関係しています。前段落に書いたことはい

能を引き出すには、最も技術のあるドライバーが必要です。そのド

くつかのヒントを与えてくれるでしょう。例えば、頼りがい、思いやり、

ライバーは肉体的・精神的に準備ができており、勇気があると同時

希望、安定性を態度で示し、恐怖の環境ではなく人を助け育てると

に注意深くもあり、他のドライバーや乗客を気遣う人でなければな

いう環境を作り出すリーダーの方が、部下の業績をより効果的に管

りません。

理するでしょう。 またそうした文化を持つ組織についても同様のこと

運転に気をつけながら、 この経験を楽しんでください。

がいえます。

私は業績管理にとって何が大切か問 い直します。大切なのはシステムまたは プロセスを持つことでしょうか、それとも 問題にアプローチする上での方法、 信念、哲学でしょうか

アンドリュー・マンターフィールド 須田マンターフィ-ルドコンサルティング エグゼクティヴ・コーチ&シニア・コンサルタント 人は「さらなる達成感を得たい」 という願いをもち、かつ、その願いを実現する能力を 持っている、 と考える彼が目指すのは、 クライアントそのひとが持つ価値・能力を見出 し、 クライアントが自信と輝きに満ちた毎日を送ることができるよう導くことだ。 「ギネ ス®」 「キルケニー®」、 「スミノフ アイス®」などのブランドを所有する英酒類大手ディア ジオ社での27年にわたる輝かしいキャリアの持ち主で、10年以上におよぶ人事部門 そしてセールス部門での管理職在任中には、 日本、オーストラリアそしてイギリスで の駐在をはじめ、 アジア、 ラテンアメリカそしてアフリカ地域を奔走し、当該地域にお ける社の発展に貢献した。そのなかで、 アジアの文化、特に日本の文化を背景とした 日本特有の雇用問題や企業における問題などを深く理解するようになった。

では、 これらリーダーはどう行動しているのでしょうか。私の経験 からいうと、彼らは自分の部下に対して誠実に話をし、 また部下に分 かりきったことや時には難しい質問をし、部下を助けようとし、 また

ヨシの見解 日本語原文による寄稿

大切にするのです。 これらリーダーが業績不振に対処するときには 人間を評価するのではなくあくまで業績を評価し、 プロセスで人を

重要な質問、ありがとうございます。業績管理(パーフォーマンス・

従わせるのではなく、その人と共に状況に対処しようとするのです。

マネジメント) システムは組織戦略と目標達成だけでなく、ハイパフ

最後に申し上げたいことは文化に関してです。数年前、私はアジ

ォーマンス文化の構築の基盤となる不可欠なものです。 日本の企業

ア地域に配属する人事部長候補者を面接しました。そのときの私の

でも欧米の企業でも、業績管理システムを課題と認識している企業

質問の1つは「あなたはどうやって文化的な違いに対処しますか」

は多いので、 どちらのしくみがよいかという議論はさておき、業績管

というものでした。そのときの日本人候補者の答えは今も強く印象

理のしくみを効果的にするための成功要因をご紹介します。

に残っています。それは「文化を通して見たとき、だれもみな異なっ たユニークな個人です」 というものでした。 この考えは今も私にとても強い影響力を持っています。 この考え

まず初めに業績管理システムでよく聞かれる問題点は「社員が評 価に納得できていない」 「やる気が上がらない」 「今後のパフォーマ ンスの向上に結び付いていない」などがあります。 これらの問題は

のおかげで、多くの人間がみな同じように振る舞うものだと自分が

社員の主体性とやる気を高めながら組織の業績を高めるためにP・

信じ始めたら、 自分の頭の中で文化が果たす役割とそれが作り出す

ドラッカー氏が1954年に説いた目標管理(MBO-Management by

バリアについて自問するようになったのです。 そこには、 それら多く

Objective)の本来の目的や原則にそぐわないものです。

の人間を、それぞれ才能やユニークさを持った個人としてではなく、

これら問題の原因の多くは、 ゴールや基準の不明確さ、納得感の

1つの大きなグループとして扱う危険性があるのです。人間を個人

なさ、制度が理解不足、意図からはずれた運用、マネジャーとの信

として見るとき、認知と尊敬の念が生じます。 このことは熟考に値す

頼関係の欠如などにあります。業績管理のしくみを効果的なものに

ると思います。

するためにはこれらの原因を取り除くことが重要です。 ということ

今まで書いたことを読み直してみて、私は業績管理にとって何が 大切か問い直します。大切なのはシステムまたはプロセスを持つこ

で、最低やるべき3つのポイントをご紹介します。 1.

明確で納得感のあるゴール、評価基準と業績管理システムの

とでしょうか、それとも問題にアプローチする上での方法、信念、哲

メカニズムの確立 まずは制度の正しい目的と運用方法を

学でしょうか。最善のシステムやアプローチを持つことは、最もスピ

明確にし、全員に理解してもらうことです。次に、 ゴールと評

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価基準を明確にし透明性を高めます。 また納得感を高める

んので、マネジャーはメンバーからの信頼を獲得しなくては

にはP・ドラッカー氏のMBOの原則にのっとり、社員主体で

なりません。 ここでの人事部門の役割は管理職のビジネス構

目標を考え、マネジャーと協働しながら設定することです。上

築力やコミュニケーション能力だけでなく、マネジメント力

から与えられた目標では、社員の“やらされている感”が高ま

とリーダーシップ力も高め、管理職の部下育成に対する責任

るだけです。 さらに評価に関して、個人の納得感を高めるた

を持たせコミットメントも高めていくことです。 これが実際、

めに、社内外のステークホールダーからの360度評価はたい

業績管理システムの問題の大きな原因となっていますので、

へん効果的です。ただし、仕組み・システムはシンプルにして

着実に行ってください。

おきましょう。 2.

組織のミッション、バリュー、 ビジネス戦略、人事・組織制度と

上記を行えば、業績管理システムは効果的に機能します。ぜひ現

の連動性の確保 成果とやる気を同時に高めるには組織の

在の問題と根本原因を見直し、最も重要なところから改善や変革を

ミッションやビジネス戦略と個人の業績目標を連動させる

行ってみてください。

ことが必要です。業務の羅列ではなく、組織ミッションやビジ ネス戦略につながる重要な仕事に焦点を当てることがポイ ントです。評価項目には行動・能力も入りますが、それらが組 織の求める人物像やコンピテンシーと一貫性を持ち、評価 の結果が次年度の能力開発プログラムに連動されているこ

3.

松井義治(ヨシ) HPOクリエーション 代表取締役社長 12年間のマーケティング経験と12年間の人事と組織開発の経験をもとに、 リーダ ーシップ開発と組織開発を専門とする。エグゼクティブコーチング、 リーダーシップ 開発、組織変革、マーケティング及び営業力強化などを通して、顧客企業のビジネ ス成果・組織の健康・社員の能力と士気の強化を支援。北九州大学外国語学部卒

とも重要です。

(異文化コミュニケーション専門)、ノースウェストミズーリ州立大学経営学修士

信頼されるマネジャーの育成 いくら制度が整っていても信

博士論文執筆中。

(MBA)。現在、ペッパーダイン大学にて教育学博士コース(組織変革専攻)を修了し

頼できないマネジャーからの評価には納得感を得られませ お断り アンドリューならびにヨシの回答、意見、見解は個人のものであり、必ずしもThe Japan HR Societyやその会員、事務局、会友、支援者の全般的見解や感情を代表するものではあり ません。更に、 アンドリューならびにヨシの回答、助言、見解は情報提供だけを目的としたものであり、資格を有する法律専門家、財務専門家のより専門的な法的、財務的助言にとってか わることを目指したものではありません。

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LEGAL CLINIC

In association with:

"Ignorance of the Law is no excuse."

2014年4−6月号

代表取締役は雇用保険の対象になりうるか 質問 私どもの日本における子会社の新しい代表取締役によれば、彼はいわゆる雇い主になったので、雇用保険の対象にはならない。それで失 業した場合“失業給付”を会社に払ってほしいというのです。彼は政府の雇用保険の対象にならないのでしょうか?

― 日本に子会社をもつ英国の会社の人事担当者

回答 日本語原文による寄稿

失業保険というのは雇用関係にある労働者が職を失ったとき に、一定期間給付(失業給付)がなされるものであり、あくまでも 労働者保護が目的です。雇用保険と呼んでいるものと同じです。 代表取締役は会社の代表であり労働者ではありませんので対象 外となります。そこで対応策ですが、以下の3案が考えられます。 1.

代表取締役は他の者になってもらい、当人は平取締役兼 従業員(兼務役員) として、失業保険に加入させる。代表取 締役は従業員との兼務ができません。ただし兼務役員は 工場長・支店長のような従業員としての身分を有している ことが必要ですし、あらかじめ職業安定所で確認を受け ることが必要なのでご注意ください。

2.

失業保険の代わりにその分給与に加えて支払う。なお、そ の分を代表取締役が小規模企業共済に使用すれば、その 掛金は所得から控除されます。従ってその分所得税も事 実上かかりません。

3.

会社として退職のときのパッケージを用意し、それを事実 LEGAL

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大山滋郎弁護士 東京大学法学部とワシント ン大学セントルイスのロースクール卒。 アル パイン株式会社の特許法務部門と米国シドリ ー・オースティン法律事務所の東京オフィスで 16年間勤務した後、横浜パートナー法律事務 所を開設し、 クライアントに対して労働法を始 めとした法的サポートを提供している。 日本と 米国ニューヨーク州の弁護士資格を持つ。

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トビー・マレン

米国でのビジネス、労使問題と雇用、不動産法律関係

大山滋郎

会社法、知財権法

グラント・スティルマン 20

国際組織および貿易に関する法律

お断り:筆者がここで述べているアドバイスや意見は一般的な情報を提供するのが目的で、専門的な法 律アドバイスではありません。 法律的なアドバイスが必要な方は資格を持った専門家に個別に相談して ください。


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21

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HR希望の星 2014年4−6月号

経営者のパートナーを目指す 長瀬智紀 「The HR Agenda」澤田公伸 によるHRの希望の星へのインタビュー 日本語による寄稿とインタビュー

長瀬智紀氏が今日の日本におけるHRの緊急の課題を指摘すると同時に将来像も提示する。 事務処理だけに集中するのをやめて、企業経営の戦略立案に寄与することを目指せ、 と彼は呼びかけている。

HRA: HRを目指すようになった経緯を教えてください。 私がHRを目指すようになったのは、単純でよこしまな理由かも

採用することは、社員数170名ほどの当社にとってはチャレンジング な取り組みだったと思います。 これまでに日本での滞在経験のある

しれませんね。実は私の父親がHRの仕事をしており親近感があった

中国人やそのほかの外国人社員を中途採用することはありました

ということもありますが、一方でHRの専門的知識や技術を身につけ

が、それらとは全く異なる経験でした。彼らを採用することは大変な

るとエンプロイアビリティ (employability)が高くなる、つまり、転職

手間がかかります。 日本での生活基盤を整えることが必要ですし、 日

する際にも有利ではないかと考えたのです。そこで大学卒業直後は

本語の教育コストもかかります。ビジネスマナーなども一から教え

すぐ就職をせず、 まず独学で社会保険労務士の資格を取得し、社会

込む必要があります。 また、常に他社から引き抜かれるリスクもあり

保険労務士事務所に就職しました。当時、 この事務所の顧客企業は

ます。ただ、それだけの投資をしても、彼らを採用する意味はとても

中小を中心に600社を超えており、 この仕事を通じて多くの会社の

大きいと考えるようになりました。

内情を知る機会に恵まれました。当初は「HR部門は社内で権力を握

中国人の新卒者たちと接してみると、彼らは日本人より 「何者かに

っている」 というイメージがあったのですが、実際に手続き相談や

なりたい」 という強い意志を持っていることを感じます。一人っ子で

就業規則のコンサルティング業務などでHR担当者の方々と接して

故郷に老いが迫る両親を残して異郷の日本にやってくる彼らは自分

みると、 まるで便利屋のような多種多様な職務を請け負い、極端な

が成長するために積極的に努力します。休日でも日本語の特訓を喜

例では営業部門から手足のように使われる 「外部業者」のような扱

んで受けますし、 自分の能力が試せる海外出張もチャンスと捉えて

いすら受けているという現実を知りました。

います。 日本の学生とは違う一種の「覚悟」を持つこれら中国人社員

その一方で、経営者の方々と話をしてみると、 「海外に工場を作っ たが、任せられる人材がいない」 とか、 「外部から調達しようにも来て

を見ていると、今後日本人学生たちの就職はますます困難になるの ではないかと感じています。

もらえない」 「育てようにもなかなか上手くいかない」などHRに求め られる課題がゴロゴロ出てくるのです。 このような経験を通じて、私

HRA: HRとしてこれまでで失敗だったと思うことはありますか。

はぜひ実際に企業の中でHRをやってみたいという欲求を持つよう

現職での経験ではありませんが、失敗したと思ったのはやはり労

になりました。それで転職し、他の一部上場企業を経てから1年半

使紛争でしょうね。法律論で問題解決を試み痛い目を見たことが何

ほど前に当社に入社したのです。

度もあります。相手は人間なのですから、法律論で割り切れるもの ではないという簡単な事実に気がつくまでずいぶん時間がかかり

HRA: HRのプロとしてこれまで遭遇した最大のチャレンジは何でしょ

ました。なまじ知識を蓄えたばかりに、 どうしても振りかざしたくなる

うか。

のですね。 もう少し人間の感情の機微に配慮した対応をすべきだっ

昨年、初めて中国で新卒採用を行ったのですが、全くビジネス経 験がない、 日本で生活したことがない、 日本語すら話せない学生を

たと思います。ただ、 もちろんこれはケースバイケースであり、企業 の秩序を守る観点から、譲れない一線は引いておくべきです。 24ページへ続く u

22


RECRUIT. DEVELOP. LEARN. エイチアールセントラルは、顧客企業様が人材獲得、 人材開発、継続的学習により競争力 を高めるお手伝いをいたします。 サービス一覧

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u

22ページから

HRA: 企業におけるHRの最も重要な役割は何でしょうか。 私は次の4つに集約できると思います。①優秀な従業員を採用・

また経営者から日常的に雇用に関する考え方を聴取し、提示され る方針に対するリスクを簡潔に分かりやすく回答することも必要で

教育し、適切なタイミングで昇進させること、②働きに見合った報

す。 ここで重要なのが、 リスクの発生確率というか危険度の“肌感覚”

酬を設計し、モチベーションを高め維持すること、③フラットで風通

のようなものをきちんと伝えることではないでしょうか。滅多に起り

しの良い組織を作ること (社員間・部門間のコミュニケーションを

えないことを声高に叫んでしまうと、経営者はもちろん営業部門の

活発にすること)、④人的資源を管理し、経営者へ情報を提供する

信頼を失うことになると思います。

こと―の4つです。 ②を実現するためには当然、人事評価制度を作る必要があるの

HRA: 日本でHRという仕事は今後どう変わっていくとお考えですか。

ですが、 この人事評価制度はその目的によって作成方法が異なると

やはりHRが経営者のパートナーと認識され、会社の成長に不可

考えています。つまり給与・賞与に直結させ、その結果で人材選抜を

欠な情報を提供できる存在になる必要があると思います。現在は、

行うためのものなのか、 もしくはフィードバックによる能力開発や会

給与計算や社会保険の事務処理など定型的な業務をアウトソーシ

社の求めていることを理解させる共通認識を醸成するためのもの

ングしている企業は多いでしょう。 しかし、依然として 「目の前に落

なのか、 そのいずれかの理由によって制度は変わってくると思います。

ちてきた付加価値の低い仕事をひたすら拾う」 という担当者の方も

このとき一番重要なのは社員に評価制度の目的が何なのかを明

多いと思います。理想を言えば、HR担当者はそのような“玉拾い業

確に示すことではないでしょうか。いわゆる 「360度評価」 とまではい

務”から離れ、経営者に寄り添う仕事に注力する必要があると思い

きませんが、以前、部署のリーダーたちに対する部下による評価を

ます。 「我々は玉拾い業務を減らすために少なくない投資を行いま

行い、その結果を本人に開示したことがあります。 これはリーダー本

す。その代わり、 これだけの付加価値を提供できます」 と説得するの

人にとってかなり大変な試練だったようですが、あくまで能力開発

です。

のためであることを説明して、理解してもらいました。 ③のフラットで風通しの良い職場を作ることに関しては、当社は、

もちろん実際に説得するのはきわめて困難でしょう。 ですから、 ま ずは玉拾いをしながら、同時に付加価値の高い仕事をしてゆくしか

部門間の垣根が低く、 コミュニケーションはとても取りやすい環境だ

ない・・・。 と、偉そうなことを言いましたが、当社でもまだまだ必死に

と思います。私たち転職組がよく言う次のような表現があります。 「社

玉拾いをしているのが現状です。

員数20名ぐらいだとコミュニケーションは良好だが、資金面でチャ レンジングな投資が難しいケースが多く、 やりたいことができない」 。 け れども、逆に「社員数が1,000名を超えると各部門で明確な目標がで きるので、チームワークが阻害されるケースが多い」 と。そして 「社員 数が100~200名程度の会社は、資金面ではいくらか余裕もでき、 コ ミュニケーションも良好に維持できるので、やりたいことができ、仕 事が楽しい」 ということです。 これに照らすと、当社は今、一番仕事が面白い時期なのかもしれ ません。 しかし、急激に社員数が増えていますので、今後もいかにし て社員間・部門間の垣根を低くしたままコミュニケーションを維持 してゆくか、HR部門の真価が問われる時期に来ているのかもしれ ません。

HRA: 日本でHRが直面している最も困難な課題は何だと思われますか。 やはり多国籍の人材の採用、教育、処遇(他社と比較して常に優位

長瀬智紀

株式会社MonotaRO・人事総務担当

性を保つこと)だと思います。それ以外にも、非正規雇用者の無期化 対策など国内の法改正へのタイムリーな対応も重要だと思います。 後

大学卒業後、社会保険労務士資格を取得し、社会保険労務士事

者については、基本的な労働関係諸法令を理解し、常に知識をアッ

務所に入所。社会保険の事務手続きや企業からの相談、就業規

プデートすることが最低条件です。

則のコンサルタント業務に携わる。東証一部上場企業の人事 労務担当を経て2012年8月、事業者向け工具通販の株式会社 MonotaRO(東証一部上場、本社・兵庫県尼崎市)に入社、人事総

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務を担当している。


カントリーフォー カス 2014年4−6月号

中国でビジネスをいかに成功させるか 廣田 廣達 王子マネジメントオフィス株式会社マネジャー 日本語原文による寄稿

ch

ar

M

14

20

中国は日本企業にとって今でも魅力的な市場だ。ただ文化的違いを理解するにはなお努力を要する。

最近の日中関係の政治的緊張により、現場で苦労している人も多 いだろう。 またビジネス展開をチャイナ+1と位置づけ東南アジア 進出を検討している企業も多い。市場規模、優秀な人材の確保、イ ンフラ整備の観点からすると、多くの企業で中国が最重点国である

国人的な考え方を実感し、中国進出で成功するためにさまざまな工 夫をしてきた。 そうしたなかで中国での「成功のための鍵となる要因(KFS)」のう ち、人事面で報酬に関して3点述べたい。

ことに変わりはない。 日本人・中国人というステレオタイプの考え方 を排除し、政治的緊張と切り離してビジネスを考えることが今こそ必 要である。 私は華僑3世として日本と中国で教育を受け、そして日本企業で

客観的に分析した方針および戦略を明示し部門別に落とし込むこと これは中国に進出している欧米企業では当たり前であるが、 日系 企業ではできていない企業が多い。

中国進出等の仕事を多く手がけてきた。 日本人的な考え方および中

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方針や戦略は必ず3C (顧客・市場、競合、 自社)分析をしっかりと行 ない、裏付けられたものであることが前提となる。そしてその分析に

食事会・社員旅行等の非金銭的な報酬 意外と思われることの1つだが、食事会や社員旅行は有効である。

基づき、部門別に戦略を業務内容に落としていくことが重要である。

欧米とは違い中国やアジア諸国においては、 これらは経営における

「日本人の総経理が立てた」 とか「日本の本社の方針」 といったあ

人材マネジメントの観点から機能する。人間を重視する文化圏での

りきたりの発想や単なる標語で終わっている方針や戦略を排除す

特徴でもある。特に中国沿岸部における人材の買い手市場の状況

ることができれば、政治的、文化的な偏見の排除につながり、 より具

やマネジャー層以上の生活のかかった年齢層が簡単には転職でき

体的になる。私が上海に赴任したときの経験では現地法人が立ちあ

ない状況を考慮すると、彼らの非金銭的なモチベーションUPは、一

がって間もない会社で、 これを定着させるのに5年以上を要した。

体感を醸成するのに役立つ。 食事会は中国人の信頼獲得のツールの1つであるのはいうまで もない。可能であれば、食事会はポケットマネーで実施すればより

日本の本部と中国のローカルと 一緒に評価の仕組みを構築していけば 双方納得がいく。

効果的である。 最後に、会社に対するロイヤルティー醸成に関して一言。 日本に 長く住む人はすぐに「会社人間」を想像する。それは「会社」 と 「家庭」 の2つのコミュニティーしか存在しない人の発想である。中国では 「家庭」 「地縁」 「大学・高校の友人」等の複数のコミュニティーが存 在するので、 「会社」はその1つに過ぎない。 したがって 「会社に対す

金銭的報酬を単純化し数値化する 中国においては、給与額を見せ合うというのが当たり前である。 客観的な基準を設け成果を数値化して公平感を持たせることが必 要である。 日本的な年功序列はまったく通用しないので、思い切って 成果を重視した報酬に切り替えることである。 中国に進出する会社では人事マターを総経理が兼任するという

るロイヤルティー」は中国においては「会社人間」 とは同義語ではな い。むしろ中国では「北京」 「上海」 「広州」等の地域差や個人差をま とめるため「会社へのロイヤルティー」が必要条件となる。 日本のように「同質化」 された社会とは違い、中国では「多様な価 値観をまとめる」 という前提に立ち、人事面での施策を考慮すれば、 より成果が出やすくなる。

パターンが多く、機能的に動けないケースが多い。その場合、外部を 活用しつつ、 日本の本部と中国のローカルと一緒に評価の仕組みを 構築していけば双方納得がいく。ただ注意すべきポイントは、あまり 細かく成果を分類しないことである。機能的に活用できなければ意 味がないからである。 ちなみに最近私が知っている、中国トップ10 に入る製薬企業の副総経理は37歳であった。英語が堪能で海外ビ ジネスにとても長けている男性であった。

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廣田廣達 (李廣達)氏は神戸市生まれだが中 国人の血を引く。その後、 日本国籍を取得。現 在、王子マネジメントオフィスで海外企業買収 や国内企業との合弁事業に関する企業企画室 の責任者として働く。 また、異文化コミュニケー ション学会(SIETAR)の委員も務めている。


UNIFIED JAPAN HR DELEGATION KIT & PRICING Special Thanks to

The Official Airline of the Unified Japan HR Delegation to the SHRM 2014 Annual Conference and Exposition

The Unified Japan HR Delegation is a collaborative effort of The Japan HR Society (JHRS), Japan Management Association (JMA), ACCJ HR Management Committee, and J-SHRM to bring Japan-based HR professionals to the world’s largest HR conference in Orlando, Florida from June 22-25, 2014 for learning and networking purposes. As a unified delegation, we were able to negotiate with SHRM to a very specially discounted registration rate (full access) of only JPY123,000/person, representing a 40% OFF from regular early-bird conference fees! WHAT’S INCLUDED • 4 days of conference programs; • 4 general sessions featuring world-renown keynote speakers; • more than 200 educational concurrent sessions divided into six (6) tracks (talent management, compensation & benefits, international HR, employment law & legislation, business management & strategy, and personal & leadership development) . Plus 3 thought provoking Master Series sessions, and Mega Sessions; • luncheons; • admission to the SHRM Exposition; • one ticket to the Tuesday night show;

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online access to the conference sessions; access to the SHRM Global Networking Lounge; invitations to: International Welcome Reception (Sunday) and Global Networking Reception (Monday); • global table topics lunch discussions (Monday and Tuesday); • personalized certificate of conference participation; • complimentary ground transportation between the conference hotels and the Convention Center; • group hotel reservations available (attendees can also request reservations where other countrymen will be staying); • and more… Delegates may also take advantage of the Pre-Conference Programs such as the SHRM Education seminars, Pre-Conference workshops and Guest program. Additional fees apply.

PACKAGES AVAILABLE* Package Name A. Self-Service (Recommended) B. Flexi A C. Flexi B D. Worry-Free

Fees JPY123,000 JPY250,000 JPY270,000 JPY450,000

Conference Fee o o o o

INCLUSIONS Airplane*** x x o o

Hotel*** x o x o

*Prices are valid through 10 April 2014, the date by which payment is due by bank transfer. **Via Delta Airlines (NRT-DTW or ATL or JFK or MSP-MCO-NRT), leaving JPN on June 21 and Orlando on June 26. Economy class. ***Best Available Hotel at the time of booking (5 nights from June 21 to 26).

WAYS TO REGISTER

Thru JHRS: • Click here and fill out online a simplified Conference Registration Form. Payments can be made by PayPal, credit card, or bank transfer. • Choose Package Type as per above table. • Registrations will be processed when payment is received. • Each delegation team member will receive a confirmation email once payments are processed. • Registrations are transferable up through May 30, 2014 only. A request to transfer registration rights to another delegate must be made in writing to events@jhrs.org, and must provide registration details for both the outgoing and the substitute delegate. Thru JMA: • As an alternative, you can also consider the JMA Delegate Package and register thru JMA by contacting them at email: globalseminar@jma.or.jp

CANCELLATION POLICY:

• A cancellation must be submitted in writing to JHRS. • Confirmed registrants may cancel and receive a fifty percent (50%) refund of the registration fee for cancellations received from January 1 through April 18, 2014. • Cancellations received after April 18, 2014, are nonrefundable. • Please Note: (Video) On-Demand Conference Sessions purchases are non-refundable.

USEFUL TIP ON ARRIVAL: We encourage international delegates attending the regular conference program to arrive on Saturday June 21 to pick up conference materials and start the conference program on the morning of Sunday, June 22. For more information or any questions, please contact: Jun Kabigting, email: jun@jhrs.org Tel: 080-3434-8665 Conference Webpage: www.shrm.org/conferences/annual

We look forward to your participation in the world’s largest HR conference.

Be Relevant. Be HR. See you in Orlando!

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HRの道具箱 2014年4−6月号

CEOは力のあるHR担当重役を採用しながら、 ときにはその重役らを無視する ロイ・K・マッコール 企業コンサルタント (北京) 英語原文から翻訳

多くのHR担当重役は、 「バランススコアカード (BSC) 」が人材管理のための最善の手法の1つであることを知っ ている。だが、多くのCEOは、 ときにそれとは違った方法が役に立つことを知っているのだ。

西暦1560年、かの織田信長は筆頭家老である林佐渡守秀貞の 助言を無視してわずか3,000の軍勢で2万5,000の敵を攻撃しようと した。林秀貞は自分が直面する悪夢を具体的にイメージするため、 いわばHR担当重役としてBSCを使おうとしたかもしれない。

力のあるHR担当重役は、共有された計画を通じて組織構成員 を調整し、人材を共通の方向に囲い込むことを好む。 それに対してCEOは、戦略、目標、 また目的を設定する。そして、 すべての部下たちはこれらの高いレベルの目標を自分たちのレ ベルにマッチした実行可能な目標に落とし込む。 組織で1人ひとりが協働することはとても魅力的で、 またBSCは

HR担当重役の悪夢 不揃いな目標

とても実用的だから、組織にとって必要な適正評価とHRの調整の ための不可欠な要素としてBSCは広く改変されてきた。 HR担当重役が自分の裁量の範囲にそうした説得力のあるツー ルを持っているのに対し、優れたCEOがBSCに問題があると感じる

ビジョンと戦略が実行可能でない

ことがあるのはなぜなだろうか。実際、CEOと力のあるHR担当重

戦略と ビジョン 戦略が部門チームと 人的なMBO (マネジメントバイアウト) 個別的な目標と と報奨 リンクしていない

予算

役との間の誤解と意見の食い違いの“種”は枚挙にいとまがない。 月次の 見直し

フィードバックが戦術的 で戦略的でない

財務計画と 資本の配分 戦略が資源配分とリンクしていない

一般にBSCは、安定した生産環境では有効だが、定義が確立し ていない、先進的な事業開発においては利用が難しい。例えば商 業銀行において、証券取引、通貨取引、負債資本市場、あるいは貸 し付け業務といった高い取引環境において有用である。 これらの 取引は、1日あたりは別としても週あたりの取引は比較的多額に上 る (利幅は小さいが) 。 それに対し、投資銀行においては、投資技術

HR担当重役の夢 目標とアクションが整合している ● 戦略が全体的な経営プロセスのための参照ポイントになっている ● 共有されたビジョンは学習の基盤である ●トップからボトム ビジョンと戦略 に至るまで目標 の明確化と移植 が整合している ● フィードバック ● 戦略に関する によって戦略的 コミュニケー 戦略的フィー コミュニケーショ 仮説をテストする ションとリンク ドバックと学習 ● チームの問題解決 ンが常にオープ ンになっている ● 継続的な戦略開発 財務計画と ● 補償が戦略と 資本の配分 リンクしている

予算

● 拡大された目標が確立し容認されている ● 戦略が投資を決定する ● 予算が長期 計画に沿っている

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と幅広い関係構築とを結び付けることが中心で、利幅は大きい半 面、取引活動は比較的小さい。 またM&Aに至っては、計画期間は 簡単に1年以上になることもあり、成功率は10%といったところ が一般的である。 したがって、年に1回ないし2回の見直しは、BSCが示す取引目 標に対する進捗割合の1つの分野を測定することになりがちであ る。だが、M&A取引においては投資された時間と努力における質 (あるいは悪い質)を完全に見落とすこともあり得る。 BSCは、過程重視の、大量取引(ローリスク・ローリターン)環境 にはとてもよく適合するが、予測が難しい、取引量が小さく利幅の 大きい(ハイリスク・ハイリターン)、 しかも取引期間の長い事業に


は不向きである。後者の事業はより品質重視・主観的であり、かつ専

ある。BSCは、例えば製品寿命が不確かなモバイルアプリケーショ

門的な判断が必要だからである。

ンなど、長い計画商品のライフサイクルにおいて、あるいは予測不 可能なライフサイクルにおいては専門家の貢献度を歪めることが

優れたCEOは、HR担当重役の最善の 統制システムも時に“不発”に陥ることを 理解した上で力のあるHR担当重役を採 用する必要がある。 システムを“ゲーム”する

ある。 革新を招き入れる 力のあるHR担当重役は、BSCによって予定を立てることができな い、予期せぬ革新を育てる必要がある。かつてヴェルナー・フォン・ブ ラウンがいったように、研究開発とは「何をすべきかが分からないま ま何かをする」 ことにほかならない。革新とは予定が立たないもの

BSCを実行する際のもう1つの問題は、 自分の利益を考えるため、

であり、 ときに破滅的でありながら、組織が市場において一定の意

ルールを解釈・操作する人びとのスキルレベルが違うことである。善

義を持つためのカギといってもよい。BSCによって予定を立て管理

意のプロは過度に野心的なBSCの目標を設定することもあり、その

することはそもそも難しいのだ。

結果、目標、 ときには仕事そのものさえ失うことにもなる。反対に、政

再び織田信長について。1560年、彼はHR担当重役である林佐渡

治的に賢明な(同時に利ざやが少ない)生産者は極端に保守的な

守秀貞の賢い助言に逆らって3,000の手兵によって2万5,000の敵兵

(同時に依然として信頼の置ける)目標を設定することで、それらを

を攻撃した。信長は幟(のぼり) と兜(かぶと)に身を固めた囮(おと

達成し応分の報酬を得ることもある。 防衛的な自己利益によって、BSCが定めるぎりぎりの期限まで目 標を遅らせる、 またこれまでにすでに達成されたものに目標を近づ けるよう調整することで、 システムを“ゲーム化”する人も出てきた。 ある国際的な企業が急速な拡大を望んだとき、1回に1歩進む以

り)の兵を盛大に仕立てる一方、嵐の夜が過ぎると桶狭間で今川義 元を急襲し勝利を収めたのだった。 優れたCEOは力のあるHR担当重役を選別し、 ときに彼らを無視す ることも必要である。そうしたことが起きれば、CEOも重役もともに 彼らの運命を成就することに満足を覚えることができるのだ。

外に達成度を測る基盤がまったくなかった。そこでその企業は、短 時間のうちにいくつもの海外支店を開設した。振り返ればこれは離 れわざであったが、その努力を導いた事業開発者は見落とされてし まった。その事業開発者はBSCの割れ目に陥り、 また自分の手柄で なくなることを恐れた上位の管理職によって排除されたのだった。 優れたCEOは、HR担当重役の最善の統制システムも時に“不発”

ロイ・K・マッコール 北京に本拠を置く企業コ ンサルタント。 日本、台湾、中国本土、中東で30 年の経験を持つ。CFA協会、AICPA、国際PR協 会の会員。ハーバード・ビジネス・スクールか らMBA取得。

に陥ることを理解した上で力のあるHR担当重役を採用する必要が

29


論説 2014年4−6月号

報奨と報酬 アネット・カセラス 「The HR Agenda」編集長 英語原文から翻訳

このところHRに対する教訓としての報酬の配分が様々なところで話題になっている。2014年ワールドカップ を目前に控えた今、サッカーという世界で最も人気のあるスポーツにおいて、 フィールドの内外における報酬 が意味するものに注目が集まっている。一方、 日本に特有の終身雇用システムが、多くの欧米諸国における深 刻な離職率の問題、 また世界的な持続可能なマクロ経済的発展に対するヒントになるのではないかといわれ ている。

あなたの“ゴールポスト”はどんな形をしているか 「権力を握るのはわずか1%であり、中間層や貧 困層は視野にも入ってこない」―これは政治リーダ ーの言葉ではなく、かつてフランスの外交官を務め FIFAの将来の会長と目されているジェローム・シャン パーニュ氏の発言である。現在55歳のシャンパーニ ュ氏は、 「グローバル化された21世紀」をある意味で

釣鐘曲線

グローバル・オペレーションのマクロ経済的持続性と ミクロ経済的尊厳とは雇用確保のための報酬と 利益配分の再調整でバランスをとることによりつながっている。

より反映させるために、 ヨーロッパのエリートクラブ の力を抑えることによって 「ゲームの再バランスを図 りたい」 との念願を持っている。FIFA会長のための彼 の選挙運動もこの念願実現の一環といってよいだろ う。端的にいえばシャンパーニュ氏が目指すのはガ バナンス力の変化、つまり、年長者に対する報酬と統

他人と同じ

制と意思決定のための自律性を持つ人たちに対す る有用な報酬とのバランスである。 他人よりも いくらか少ない

平等と包括性はまた、IMF予測に呼応する持続的 な世界成長を実現する上で最善の方法と見なされる 「2014年世界経済フォーラム」

他人よりも いくらか多い

(通称 「ダボ

ス会議」)における最重要テーマでもあった。 世界的に見れば報酬システムは、取引の舞台とな る市場経済をより的確に反映したものでなければな

他人より はっきり少ない

他人より はっきり多い

らない。FIFAが抱えるジレンマと同様、その背景にあ る問題は倫理的な健全性と、 これまではガバナンス の権利も釣り合いの取れた報酬も与えられなかった 世界各地の代表者を取り入れるために、“力のバラ ンス”を積極的に変えていこうとする組織の成熟度と 30

従業員間での報奨の配分 業績に応じた手当、社員食堂特典プラン、経済的尊厳、 それ自体に内在する報奨、自律性、雇用の保証、小さな幸せ


いってよい。論理的にいえば、倫理的な成熟度とは、福利的な責任

る際に、企業特有の貴重な情報を持ち出すという問題も指摘され

を持つ人たちのために報われる仕事を創造するパートタイム的作

ている。

業を専門化すること、 またより年長の従業員のための選択肢を助言 することなどを含む。その意味で、能力を持った人材を拡充すること

経済的な尊厳と保持

は、 より多くの人が社会人―言い換えれば社会のためのアクティブ

多くの国において優れた人材を留めることはHRにおける最大の

なメンバ―として、 また自分の仕事を通じて、あるいは消費者として

課題といわれる。北米のCareerBuilder社が実施した調査によれば、

参加できることを意味する。

「フルタイム労働者の69%が定期的に新しい仕事を探している」

マイクロソフトのジェロン・ラニエが「力の法則、それはほんの一

し、 さらに30%の労働者が仕事探しを毎週行っているという。 アジア

握りの人が勝利者になれ、残りはみな予備軍」 と呼んだものを実践

太平洋、欧州、南北アメリカにまたがって行われた別の調査によれ

している組織もある。例えば米国企業の販売部門の多くは、最低賃

ば、調査対象となった418人の企業重役が、企業に固有の重要スキ

金すれすれの上にある急峻なボーナスシステムを採用している。 し

ルの保持がHRの主要課題であると答えている。

たがって、目標額のわずか20%しか達成できない敗者の報酬は鋭く

それとは対照的に、 日本の職場に精通した人はみな、 日本におい

下がり、恥ずかしいぐらい底辺に甘んじなければならない。その一

て離職が問題になっていないことを知っている。つまり欧米とはまっ

方で目標を2倍達成した者は目もくらむような報酬を手にする。近

たく逆なのだ。終身雇用を伝統的に約束することは、新しいスキル

年の企業重役の報酬もまた、 これと同様のリスクに常にさらされて

の注入を必死に急ぐ、 また健全な収入成長の利益率が労働コスト

いるといってよい。

の上昇によって低減することを防ぎたいと考える企業の多くにこれ

こうした報酬における“高低差”はサッカーの決勝戦では短期的

までにない危機をもたらす。欧米と違って日本には、 レイオフや再雇

な興奮をもたらすが、急峻なカーブを描く報酬システムは長期的な

用を通じて組織のスキルの蓄積を一新する基盤がほとんどない。

持続性のためにはほとんど役に立たないし、 ミクロ経済的な尊厳を

では、 日本の終身雇用モデルから欧米の企業はどのような忠誠の

もたらすこともない。心理的な点でいえば、 自分の報酬が成果に見

教訓を学ぶことができるのだろうか。 また日本企業は、経済環境に

合って低いと感じる人は離職する傾向が強いという。加えて離職す

おける変動に耐え、 またスキルに対する差別的な需要に応えるため に、 この賞賛に値する伝統をどのように変えてい けばよいのだろうか。

べき法則

急峻なカーブを描く報酬システムは 長期的な持続性のためには役立たず、 むしろ会社特有の貴重なスキルの損失につながる。 多数のスター志望者に とって低い経済的尊厳

「再」測定と年に2回のボーナス 日本企業においては年に2回のボーナスを支 給するのが普通である。つまり、年俸を12ではな く14ないし16に等分し、それまでの半年の業績 をにらみながら夏と冬の2回、2か月から4か月 分のボーナスを支払うのである。あるフォーチュ ン500社企業の日本駐在マネジャーであるGlynn Brasington氏もまた、 日本のボーナスシステムの 象徴的な価値を痛感した1人である。彼の企業 は世界的に見れば市場でナンバーワンである。だ が、 日本ではうまく行っていなかった。彼が赴任す る前、彼の会社の3,200万ドル規模の日本事業は 毎四半期、赤字を計上していたのである。 Brasington氏は日本事業の黒字転換のために 第三者マネジャーとして派遣された。彼の戦略

スタープレーヤーはと ても高い報酬を受けるが

は、合併、新旧社員のモチベーションを高めるた めの価値の再発見などだった。彼の部下となった HRマネジャーは欧米で教育を受けた人で、米国

従業員間での報酬の配分 現金

本社の強い激励もあって毎月の成果連動報酬を 強力に進めていた。だが、頻繁な“飲みにケーショ ン”の背後にある多大の時間を費やしてみると、

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また週末にスタッフたちとサッカーに興じてみると、 もっと重要なこ

務をかならずしも受け入れなくてもよいという事実をあまりありが

とがあることを理解し始めた。 この外資系企業に勤めることを気に

たいと思わない。

入っていた人は少なくなかったが、彼らは完全に欧米化することを

企業内部の異動について双方向の会話の実行を重視すること

望まなかった。彼らはみなある種の異国的な部分を残しながらも日

[HRA3-4Ask HR/Andrew]はまた、従業員が現実的に提供できること

本人であることを望んだのである。 このブレンド(配分) こそ重要な

と、企業が必要としていることとの間の乖離を従業員が知ることに

のだ。

もつながる。異動と再応募の両方が名誉をもたらし、名誉はまた、職

ますます増えるゲーム化された解決法と、 月に1度、 ランチをご

務外の訓練を受ける、あるいは自主的な学習を実践するための意

馳走したり、入り口に近い駐車場を用意したりするささやかな報酬

欲を多くの従業員に与える。個人的な報酬は従業員自身に、 また自

を開発する、完全にインセンティブ化された産業もある。だが、そう

分の事情に最もマッチした方法で開発すべき機会の中にある。それ

したインセンティブだけが、長期的な人材の保持につながる忠誠心

は、現在の部署にいようと、違った部署にいようと、あるいは他の会

と誇りを生むわけではない。販売チームとHRチームとの協働を強

社にいようと変わることがない。

化することで、年に2回のボーナスを維持しつつ欧米式のインセン

日本企業が社員の忠誠度を高めるために使うもう1つの伝統的

ティブプログラムを満足させる方法をBrasington氏のチームは発

な方法は、誇りを喚起することである。例えば、 コスト削減、安全の実

見した。HRは、契約条件の曖昧さを良いことに、年に2回のボーナ

現、時間効率の向上といった改善成果を公式に社内で発表したり、

スに直結する販売目標のための、明瞭な成果連動型分岐点を定め

アイデアを経営トップに提案することで社員を褒賞する社内表彰制

た。新しい基準はまた、目標を達成した成果に対するより多額なボ

度もその1つである。社内表彰制度と限定的なポジションのための

ーナス(とはいえ米国のような極端なものではないが)を取り入れ

競争を組み合わせることは、経済変動の中で強靱さを維持するため

た。成果連動型分岐点は彼の会社のその他の部門にも応用された

の日本の雇用慣行におけるもう1つの方法である。

ことはいうまでもない。その結果、年間の賃金を増やすことなく利益

こうした更新された契約に従って固定的な給与を支給すること

を増やすことができ、 また労働組合結成の動きも止めることができ

は、従業員に対するセーフティーネット、つまり各所得階層の中の最

たという。

低賃金の提供につながっている。だが、 日本企業における伝統的な

1つのカギは、ILOも唱道するようにコンサルテーションである。持

年功序列(年齢の上昇に伴って賃金が増加する) と違って、ある所得

続的な成長もまた安定に依存しており、 このことは、大多数の人びと

階層の中でのより高い賃金、あるいは次の所得階層への上昇につ

(少数のエリートではなく)にとって達成可能な利益を維持しつつ、

ながる競争に勝ち抜くことができる社員はごく一部である。社内の

その中で格闘する人びとにおいて釣鐘曲線が維持されることを意

再応募は、最善の場合でも自分が最も嫌っている仕事から抜け出せ

味している。目標と予算とをより注意深く整合させることもこの曲線

る、企業に最も役立つと感じるやり方に専念できる、 また食堂での

の維持に役立つ。米国型のアプローチはクリアすべき高い成果の達

特典としてお替りがタダになるといった個人的な待遇を得るぐらい

成には効果を発揮するかもしれないが、忠誠のための教訓とは、広

がせいぜいといってよい。

い基盤を持つ成功感覚を高め、従業員の離職を減らし、企業に固有

長期的なマクロ経済的持続性とミクロ経済的尊厳とは相互につ

の重要なスキルを保持することを念頭に置きながら利益の配分を

ながっている。企業に固有の人材をつなぎ止めるためには、再調整

再計測することが重要なのだ。

された役割を伴った保障のための報酬と利益配分のための選択肢 とを均衡させることが重要である。 また、組織が世界的に進化する

内部の「再」応募を取り入れる 近年、欧米で主流となっている従業員が企業内部の仕事に再応 募することで、保持という次の課題が明らかなる。それは人材だけ

ためには、力と自律性のバランスの中で倫理的に変化することが必 要である。その際に重要なのは、国内だけでなく広く世界各地で多 くの人びとがこれに参加することといってよいだろう。

でなく、企業の効果向上のために適材を適所に配置することにもつ ながる。 その意味で、 日本の内部再応募については興味深い2つの習慣

謝辞 B・Burqist、J・クリスプ、O・Georlette、 カビッティン・順、サカイ・D、高田・Y

が見られる。その1つ目は、終身雇用制度のせいで大多数のスタッ フが自分の職務経験を文書にしたがらないことである。履歴書の記 入法や面接の技術など、 この種の面倒が持つ意味は日本人には自 明だが、同じチームの欧米人スタッフにはしばしば見過ごされてい る。2番目は、 もう1つの日本の労働慣行であるジョブ・ローテーショ ンは別の話だが、 日本人従業員は、 もし応募の最中に新しい職務が 自分の経験にマッチしていないことが分かれば、応募した新しい職

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アネット・カセラス 組織のリーダー養成、チ ームデベロップメントのコーチ兼コンサルタ ント。 コーチ養成機関「CTI」 と 「組織学習協会 (SoL) システム・パースペクティブ部会」 で研 鑽を積む。 日本の大学でも 「グローバル・マイ ンドセット」や「コミュニケーション・インテリジ ェンス」に関するコースを受け持っている。英 国国立レスター大学修士号取得。


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JHRSとは

コミュニティ・ オフィサー

日本に焦点を絞った世界の人事のプ ロと、 日本でビジネスを行う企業のリ ーダー達のコミュニティです。

カビッティン・順 MBA, MS, HRMP

JHRSの活動

会員の皆様に以下の場をご提供し ます。 1. 有益な人事、管理のヒントと最良 実例を共有化します。

チーフ・コミュニティ・オフィサー

ディナ・M・ギャラガー MPH, PA HR教育・認定システム提言リーダー

エリザベス・ハンドーヴァー 「ウィーメン・イン・エイチアール」提言リーダー

2. ネットワーキング、学習イベント (オンライン/ライブ) 3. 人事の知識、 スキル、能力を強化 し、 グローバルスタンダードへ近づ ける。

JHRSのミッション

チャド・ステュワート 「グリーンHR」提言リーダー

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早稲田大学政治経済学術院 教授 トランスナショナルHRM研究所 所長

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