OECD Observer Japan 50th Anniversary Special Edition (in Japanese)

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である。日本は先進諸国に先駆けて不 安な未来像を示しているが、これらの 課題にどう対処すべきか方向性を示す こともできる。

安倍首相の「三本の矢」政 策で、財政の持続可能性が 確保できれば、50年後の日 本経済は力強さを取り戻し ているだろう 2012年12月に政権に就いた安倍晋三首 相は、デフレからの脱却と日本の再生 を掲げて、「三本の矢」政策――大胆 な金融政策、機動的な財政政策、民間 投資を喚起する成長戦略――を打ち出 し、これらの課題に取り組み始めた。 最初の二本の矢は、財政による景気刺 激策と新たな2%のインフレ目標を実現 するための「量的.質的金融緩和」の 実施という形で、2013年初頭に実行さ れた。その効果はすぐに現れた。企業 景況感は大幅に改善し、日経株価指数 は2013年に57%上昇した。2013年上半 期のGDP成長率は4%に達し、G7で最高 を記録した。こうした傾向に自信を得 て、政府は、財政再建に向けた重要な 第一歩として、2014年4月に消費税率 を5%から8%へと引き上げる決断を下し た。 先頃、2020年の東京オリンピック開催 が決まり、楽観的な見方はさらに強ま っているが、この決定は、日本の戦後 復興を世界に示した1964年のオリンピ ックと同じように、日本への国際的な 信任投票であると広く受け止められて いる。安倍首相が「Japan is back」 というスローガンを採用していること は驚くに値しない。 しかし、日本が力強さを取り戻せるか 否かは、首相の経済戦略の第三の矢で ある構造改革にかかっている。アベノ ミクスのこれまでのプラス効果の大半 は財政と金融による景気刺激策による ものであり、特に労働市場、製品市場 と農業部門における日本の構造的な障 害に対処する改革を実施しなければ、 すぐに萎んでしまうだろう。安倍首相 は、2013年7月の参院選圧勝の波に乗

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急速な人口高齢化 2012年および2050年の生産年齢人口に対する高齢者の割合 1. 15~64歳の人口に対する65歳以上の人口の割合 At 21 March 2013

% 90 80

2012 2050

2012年平均 2050年平均

70 60 50 40 30 20 10 0

ア 日本 リア ドイツ ーデン トガル ランス トニ ペイン フ エス ェ ポル ス イタ スウ

ア コ ド ル コ ダ 米国ラン ラエ キシ 英国 ラン チェ ラリ オ メ スト イル イス ー ア オ 日本の人口はすでにOECD諸国で最も高齢化しているが、高齢化は急速に進展しており、2050年までに15~64歳人 口に対する65歳以上人口はほぼ2倍になる。 (出所)OECD Demography and Population Database

って、これらの喫緊の改革を大胆に推 し進めるべきである。 三本の矢には、巨額の公的債務を安定 させ、そしていずれは削減するための 財政再建という第四の矢が伴うべきで ある。重要なのは、さらなる増税と支 出の伸びを抑える措置を含む、詳細で 信頼に足る中期的な財政計画を策定す ることである。 日本は、創造力と活力に溢れた社会で ある。その長い歴史を通じて、何度も 困難な問題を克服できることを証明し てきた。安倍首相の「三本の矢」政策 が実施され、財政の安定を確保できれ ば、50年後の日本経済は力強さを取り 戻しているだろう。その時、安倍首相 だけでなく誰もが「Japan is back」 と言うだろう。

References OECD (Various years), Japan: Economic Surveys, OECD Publishing. Maddison, A. (2005), The World Economy: A Millennial Perspective, OECD Development Centre. Visit www.oecd.org/japan and search Japan at www.oecdobserver.org


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