情報と物質について | マテリアライジング展

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情報と物質とそのあいだ

・質という言葉がある。質は、何を指し示すだろうか。また質は、何によって指し示されるだろうか。質は、元を、集合を、要素を、総体を、部分を、   ・ 全体を、指し示すだろうか。また、質は、行為によって、操作によって、処理によって、手続きによって、方法によって 、手法によって、指し示さ   れるだろうか。 -・文章を書いていると、何を書きたいのか、わからなくなることがある。そういったときに、総体に一貫性した意図をもたせようと苦悩するのは、愚か・ ・ だ。そういったものは、だいたいにおいて、無駄な苦労になる。それよりも、言葉選びや口ぶりなど、文章の質感のようなものの方を尊重するほうが・ ・ 賢明である。 -• アノニマスな音声群による喧騒において、特定の音を聴き取るのは難しい。音は音によって消去される。一般に言われる静寂は、環境音によって満た ・ ・ されている。そのような意味で、最大の静寂は、最大の喧騒と同意味であるだろう。静寂は、ある種の喧騒であり、質を伴っている点において、無音・ ・ とは異なる。 -• 例えば作品について、要素を見ているだけでは、だいたいにおいてそれが何であるかはわからない。ある程度それが累積していくことで、大体のイメ ・ ・ ージが湧いてくる。ただ全体を把握するのは常にむつかしい。全体というのはいつも、どこからどこまでが全体なのかわからない。芸術は例としてわ・ ・ かりやすい。 -• スティーブ・ライヒの音楽的手法は逆説的であり、その手法はポリフォニックであると同時にモノフォニックでもある。主題は、過度に反復され、重 ・ ・ 畳される。極端に多声化されていく過程のなかで、主題の輪郭は崩れ、意味は失われていく。重層化によって去勢された主題は、脈動する音響へと変・ ・ 化していく。 -• 情報/物質は、意味され/意味し、質を持たず/質を持ち、内 - 焦点化されて/外 - 焦点化されて、具象的な概念を/抽象的な感傷を提示し、事実を構 ・ 造化/解体する。情報と物質のあいだは、意味しつつ意味され、多 - 焦点化された、全体性にもとづく感覚によって提示された、新しい質によって示・ ・ されうる。 -• 誰かが「本当にどうでもいいのに、どちらかに決めないといけない時がたまにある。そういう時はサイコロを振るようにしている。そのためのサイコ ・ ・ ロを筆箱に入れてある。」と言っていた。本当にどうでも良い要素はたまにある。もしかしたらそれはどうでもよくないのかもしれないが、本当にどう ・ でもいい。

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