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大澤伸幸

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果たして敵か、味方か?! 脇差し替わりのサーフボードを片手に、未知なる道を、肩で風を切って突き進む。 とにかくすごいヤツがやってきた。―大澤伸幸。 風の噂がなんとやらで、名前ばかりが先行して巷に出回り、肝心の実態が掴めないこの男の実態を 少しでも浮き彫りにするべく、突如、スペシャルインタビューを決行した。 撮影協力/大澤伸幸 Nobuyuki Osawa.

撮影/吉田一目 Hazime Yoshida.

聞き手・文/吉田憲右 Kensuke Yoshida.

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朝一の1発目に乗った波で、いきなり魅せるぶっ飛びエア。連続写真にして3枚分の滞空時間で空中浮遊を楽しんだあと、弾け飛ぶパワフルなホワイトウォーターをかわし てメイクしてみせる。ノブにとってエアというテクニックは世界基準同様、朝飯前のお茶の子さいさいなのである。An big no grab air by Nobuyuki Osawa.

JPSAツアーには参戦せず、世界を目指 し、WQSツアーをフォローする大澤伸幸。 Red Bullキャンプを皮切りに2月中旬 からおよそ2ヶ月間滞在したオーストラリ アでは、思うような結果が出せなかったよ うだが、帰国後は自分なりに課題を見い出 し、次のチャンスに活かすべく試行錯誤の 日々を過ごしているという。 SW:本気で世界を目指そうと思ったきっかけは?

大澤伸幸 (以下O) :それはやっぱり、タジ・バロ ウやケリー・スレーターだったり、自分の好き なサーファーたちがみんなWCTのサーファー だったから、純粋に自分もそうなりたい、と思 ったのがきっがけですね。 SW:じゃあ、変に大人にまる前に、子供心に純 粋に思った気持ちのまま今ここまで突っ走ってき た、という感じなのかな?

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O:う∼ん、そうなるんですかね。でもまあ、そ れだけじゃなくて、自分の場合は10代の頃から プロジュニアのコンテストやオーストラリアの 試合に外人の選手たちと一緒になって出たり していたから、より早く世界のサーフィンを体 感できたことが大きく影響しているのかなとも 思いますね。やっぱり、負けると悔しいじゃな いですか。いくら自分より強いヤツだとわかっ ていてもいざ試合で負けてみると「絶対にぶっ 倒してやる!」っていう闘志が沸いてくるという か。そういうこともあって、どうしても海外の試 合に重点をおいてやってきてしまった、という んですかね。

せてくれた先輩たちの存在というか、その影響 っていうのが自分の根底には常にありますね。 例えば、もの凄くマニアックな話しになってし まいますが、ターンのときの手の振り方だった

O:その辺は自分ではわかりませんが、とにかく あの年のオーストラリアでの一年間は自分の人

り、膝の曲げ方だったり、もっと細かく言えば 手首の曲がり方や力の入り具合とか、大体は 滑りのスタイルの部分での影響が大きいです けど、やっぱり海外に行ってもその辺のタイル だけは変えないし忘れないですね。

SW:あのとき、なぜオーストラリアに行こうと

SW:3,4年前に1年間オーストラリアに単身サ

バルたちや自分より下の世代の上手いヤツら がどんどん出てきていて、自分なりに精神的に

ーフィン修行しに行ったよね。

O:はい。あれは確か16歳から17歳になる年の ことですね。

SW:ノブの場合、世界を目指すうえで海外選手 の影響が大きいんだね。

SW:16、 7歳の少年が自分で働いてお金を貯めて

O:そうですね。でもそれだけでなくて、もっと もっと深い部分の話しを言わせてもらえば、地 元でガキの頃の自分にサーフィンを無言で魅

実行したオーストラリアへのサーフィン修行ってこ とで、このご時世でそんな熱いヤツがいるのか? っていう具合で当時かなり話題になったよね。

生のなかでかなり大きな財産になっていますね。

決心したの?

O:実はあのとき、オーストラリアに行こうかど うか、迷っていたんです。当時の自分は高校に も行かず父と一緒に働く毎日を過ごしていま した。でもその一方では周りの同世代のライ

追いつめられていた部分もあったんです。 そんな毎日のなかで、じっくりと自分と向き 合ってみたときに、やっぱり自分はみんなに負 けたくない、と強く思ったんです。だから、あの ときの自分にとってはオーストラリアなんてま ったく未知の世界で何が待ち受けているかわ からなかったけど、とにかく憧れのタジ・バロ

ウを生み出した国というだけで間違いないだ ろうという確信を勝手に持ったまま、単身でオ ーストラリアにサーフィン修行しに行く決心を したんです。あのときの自分が、サーファーと して一気にいろいろな経験を積むには、そうい う道しか残されていなかったんです。

こで外人に混じってコンテストに出て優勝する ことができたことをきっかけに、勢いづいたと いうか、何となく今まで「絶対に勝てない」と思 い込んでいたものに対して「もしかしたらオレ でも勝てるかも」って思いはじめましたね。 SW:その当時にノブの周りにいた外人選手って誰?

SW:その甲斐あってか、確か、行った先のオー ストラリアではけっこう成績がよかったよね。

O:そうですね。向こうのアマチュアのツアーで、 毎週のようにコンテストが行なわれてその総合 点で総合チャンピオンが決まる形なんですけ ど、そういった形のコンテストツアー2つで総合 ツアー・チャンピオンを獲ることができました。 自分がステイしていた近くのポイントから、 トム・キャロルの地元のニューポートって場所 で行なわれたりと、場所が変わる度にサーフボ ードを片手にバックバックを背負ってバスにひ とりで乗って会場まで行ってましたね。でもそ

O:ジュリアン・ウィルソンやジェレミー・フローレ ンス、そのほかにクリス・セインズベリーとかそ の辺のヤツらといろいろ絡むことが多かったで すね。なかでも特にクリスが自分のスイッチを よくONにしてくれてました。クリスの地元がニュ ーポートだったこともあって、よくコンテストで戦 うことも多かったので、本気で「絶対コイツには 負けたくない」と思わせてくれる相手でした。 とにかく、自分がいま世界をメインにコンテ ストをフォローしているのは、このオーストラリ アでの1年間で経験した貴重な体験があるか らこそのものだと言って過言ではないです。

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SW:話しを聞く限り順調だったオーストラリア

種でしっかりとワーキングビザを出してくれるオ

での生活、なぜ突然帰国するハメになったの?

ーストラリアの方がすごいのか?!

O:それは、ひとことで言うとビザ関係でハプニ ングがあったというか。帰国する間際に、プロ ジュニアの試合に出るためにオーストラリアか らニュージーランドに渡ったんです。ニュージ ーランドでコンテストを終えて、仲間と一緒に

O:それは日本じゃあり得ないことだし、間違い ないですね (笑) 。まあ、とにかくサーフィン大国 と呼ばれるオーストラリアという国がいかにサ ーフィンと密接な国であるかを表しているんだ と思います。そんなに素晴らしい国にいまでも

オーストラリアに戻ろうとした空港で事件は起 こったんです。突然、イミグレーションで止めら れて「もしかしたらお前はオーストラリアにオー バーステイということで、このまま日本に戻らな くてはいけないかも知れない」と言われたんで す。そのあとに大事なプロジュニアのコンテス トがオーストラリアであったからどうにかなら

自分が入国できるのは、あのとき一緒になって 頑張ってくれた親戚や周りの人たちのおかげだ と、実感しています。だからこそ、自分が行くべ き場所はここなのかな、と思ってしまうんです。

ないか頼んでみたんですけど、やっぱりどうに もならなくてそこで一気に強制送還でした。 SW:そんなパプニングがあったにも関わらず、 その後オーストラリアに入るのに問題はないの?

O:まあ、その後いろいろと手続きなど苦労は しましたが、親戚だったり周りの人たちがもの 凄く協力してくれたので、なんとかプロサーフ ァーとしてのワーキング・ビザを取得できるよ うになり、今となってはオーストラリアに入国 すること自体に問題ありません。でも、いまだ

SW:ハワイには行かないの?

O:ハワイはプロサーファーにとってとても大 切な場所だし、聖地であることには変わりない と自分でも認識しています。でも、さっきも言 った通り、見えない力と言うのか磁場という のか、どうにもこうにも自分が吸い寄せられる のは不思議とオーストラリアなんですよ。周り の常識からすれば何かズレていて間違ってい るのかも知れないけど、とにかくそこに行けば 世界に通用するサーフィンを一気に学ぶこと ができる、という認識が自分のなかに確固た るものとして存在している、というんですかね。 とにかく多くのプロサーファーがそうするよ

に観光ビザは降りないんですけどね (笑) 。

うに、ハワイで大きな波に乗って写真を残す、 ということはプロサーファーである以上とて

SW:オーストラリアに入国するのに、プロサー

も大切なことであると充分にわかっているん ですが、自分としてそこで自分をより表に露出 する道を選ぶよりも世界基準のサーフィンを

ファーとしてのワーキング・ビザってすごい話し だね。いや、それよりもプロサーファーという業

体感する道を選びたい部分があるというか。 金銭的な問題はもちろん、時期的にもたまた まベストシーズンが重なっていて、ハワイには なかなか機会がなくて行けてないというのが 現状ですね。でも、ハワイはトリプルクラウン が行なわれる場所でもあるし、攻め込むべき 場所のひとつだということはわかっているの で、いずれチャージしに行くつもりです。 SW:世界を回っているなかでのBest of苦労は?

O:世界を回っていて、特に苦労しているなって 実感はないんです。ただ、しいて言えば英語な どの言葉の壁はもちろん、右も左もわからない 文化を持つ国で右も左もわからなくなる瞬間が

SW:世界ツアーを回っていて、世界の舞台で見

ていますね。ここまで世界に認められている日

る同じ日本人選手の先輩たちの姿はどう?

本人サーファーは銀河系のどこを探してもマー くん以外にはいないと思います。やっぱり経験

O:大野マーくん(大野修聖)だったり、樹くん (田中樹プロ) や鉄兵くん (田嶋鉄兵プロ) だった り、最近では先輩に渡された日本サーフィンの 歴史本に載っていた関野聡プロだったり、やっ ぱり自分よりも先に世界のツアーをフォローし た人たちのやっていることは見ていてもとても 刺激的ですごい影響を受けますね。特に現場 で居合わせた先輩たちの頑張っている姿を目 の当りにしちゃうと、 「自分もやらなくちゃな」っ ていう気持ちが自然と高まりますね。自分の先 輩たちが切り開いてきた道を自分は後かも知れ ないけど、一歩一歩辿っていきたい。やっぱり

一番苦労する瞬間なのかも知れませんね。海外 って意外と適当なもので、コンテスト会場のすぐ 近くに宿泊施設がまったくなかったりするんです よ。そういうときは現地に着いてから困ることも ありますね。自分にはマネージャーがついてい るわけでないし、ひとりじゃできないことが現地 についてから突然出てきたりもしますからね。あ とは南アフリカとかの治安の悪い国では、いつ トラブルに巻きこまれるかも知れない、という心

最終的な夢はWCT入りだけど、それまでの過程 というか道のりというのも大切だと思います。

配と常に隣り合わせだし。でも実際にはそうい った経験も自分の人生にとってはかけがえのな い貴重な体験だと認識しているので、やっぱり 純粋な苦労っていうのはないのかな。ブラジル とかポルトガルとか、危険は付き物なのかも知 れないけど、これからも自分の行ったことのない 場所にどんどん行きたいと思ってます。

らね。パワフルだし、失敗を恐れない前向きな 勢いもあるし。海外選手たちも口を揃えて「マ

が人一倍違うんですよ。人間的にもすごいな、 と思いますから、あの人の場合。例えば、マー くんと自分で言ったら単純に自分からマーく んに挨拶しなくちゃいけないはずなんだけど、 立場的に憧れの人過ぎてなかなか話しかけら れない自分に、わざわざ向こうから声をかけて きてくれるその器のでかさというか、他の人た ちと話しているときもどことなくしっかりとして いるというか。やっぱりサーフィンだけでなく、 動きのひとつひとつに一流の品格を感じると いうか、いずれ自分もああいう風な存在感の ある人になりたいな、と思ってます。 SW:マーってやっぱり、すごいんだね。

SW:やっぱり世界を回る先輩たちの影響を多少 なりとも受けるものなんだね。

O:多少どころか、大野のマーくんなんかはハ ンパじゃないですよ。タスマニアのWQSで見 たときなんかは、元WCT選手のネイザン・ヘッ ジよりも際立つサーフィンを魅せていましたか

ーがやばかった」って言ってましたから。もう その数日間はそんな噂で持ち切りですよ。 特にマーくんの場合は海外選手からの評価 も別格だと思います。プロ野球でいえば、間違 いなく野茂とかイチローなんかの領域に達し

O:当たり前じゃないですか。なんせ、自分を 世界のツアーに導くきっかけのひとつである 憧れのタジ・バロウを新島でのWCTでぶっ倒 したのがマーくんなんですから。 「タジは日本 人としてオレが最初に倒す」という夢をことご とく打ち砕いた張本人ですから。ハンパなくヤ バい人じゃないと逆に困ります (笑) 。 あと同じ日本人選手で大きな感動を与えてく れたのは鉄兵くんですね。USオープンでショー ン・キャンズデルをぶっ倒したときの試合展開 は本当にヤバかったです。ギリギリまで鉄兵くん が負けていたんですけど、アメリカというアウェ イにも関わらず最後まで諦めない姿勢が功を奏

して見事逆転勝利を勝ち獲ったんです。あの試 合はオレに「最後まで絶対に諦めない」 ことの重 要さを痛感させてくれた貴重な体験でした。 SW:今後も世界のツアーをフォローしていく予 定なの?

O:そうですね。まだはっきりとした予定は出 てませんが、夢に向かって一歩一歩近づくため にまずは目の前にあるものごとに対して全力 で挑んで行くことが大切だと思ってます。もち ろん日本人のプロサーファーとしてJPSAにも 出たいけど、いまの自分にとって何を優先して いくべきかを考えたときに、やっぱりその優先 順位が世界のコンテストに集中してしまうのは 仕方がないので、そこは何を言われようと今は 開き直って我が道を進むつもりです。 最初から上手くいくなんて甘い考えでいる わけじゃないし、時間的にいつまでに夢を実現 するとかは約束できないけど、いまは貴重な経 験を積み重ねて行って、いずれ時が来たとき に、それを大きな力に変えられるように充電し て行きたいと思ってます。 SW:最後にひとこと。

O:何かをすれば、周りにはいろんなこと言う ヤツがたくさん出てくるけど、とにかくそんな 小さなこと気にせず、自分が信じた道をひた すら突き進め! SW:ノブ、ありがとう!

夕陽を背に飛翔する。Twilight air by Nobuyuki Osawa.

フルパワーで波をえぐるDeep layback by Nobuyuki Osawa.

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