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『片割れの復讐』


【片山タカユキ。36歳。課長の証言】


 ある朝、愛人だった部下は突然私の頬を強くビンタし、涙ながらにこ う言い放ったんです。
 
 「いくら別れたいからって、本当にそんなことやるぅ!?
 絶対復讐して やるから!!」
 
 
 話を聞くと、彼女の性行為が顔出しのまま無修正動画配信で流れたと いうことに対して彼女は怒っていたのです。それを私のせいだと彼女は 言う。
 
 私が彼女に娘もそろそろ高校受験を控えているので関係を終わりに したいと話を切り出したところ、彼女は嫌がった。そこで私は別れない というのならば今まで撮っていた性行為の動画を無修正動画サイトに 流すぞと脅した。彼女はまさかそんなことを本気でするわけないと思い、 それでも頑なに別れたくないと言った。
 
 すると、本当に無修正動画が配信された、という。
 
 ただ、そのやりとりすべてが、私にはまったく覚えのないことでして 。
 
 
 翌日、彼女は私に辞表を提出すると共に、全社員に対してメールを送 信しました。
 
 そこにあるアドレスにアクセスするとYOUTUBEにアップされた画 像が流れ出しました。
 
 会社の名前、部署、役職名、そして私の本名が記されたタイトルのそ の動画で私は性行為をしていました。顔出しで。
 
 その顔は間違いなく私であり、相手は顔こそ映っていないものの、後 ろ姿を見れば社員全員、彼女だと認識できました。つまりは不倫現場が 公開されたというわけです。
 
 ただ、それもまた、私にはまったく覚えのないことでして 。
 


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当然のことながら私は地方の支社に飛ばされることになり、妻とは別 れることになり、14歳の娘は妻が引き取ることになり 。
 
 
 引っ越し当日。荷物も積み終わり、妻や娘と別れて出発しようとした 最中、業者の一人が戻ってきて言ったのです。
 
 「どうだ?
 独りになった気分は?
 これでリセットだな」
 
 
 そういうと男は帽子を取りました。
 
 「えっ!?
 パパ?
 パパが!
 パパがもうひとり!!」
 
 
 そこにはもうひとりの私がいました。
 
 いや、私と瓜二つの男がいました。
 
 「タカ マサか?」
 「そうだよ。タカユキ。久しぶりだな」
 「アナタ、誰なの?
 この人は、誰なの?」
 「俺の弟だ いや、兄かもしれない。いずれにせよ、双子の兄弟だ」
 
 
 私たち兄弟は産まれて間もなく、大学病院の裏口前に捨てられていた そうです。
 
 それから児童養護施設で育てられ、小学校に上がる時。養子を求める 夫妻が施設を訪れました。
 
 夫妻は私たち双子の容姿顔立ちを気に入りました。でも、経済的にそ れほど豊かではなかった夫妻は2人とも育てるのは難しいと。どちらか 一人だけ連れて行きたいと言いました。それで私が選ばれたのです。た またまそのとき、後に父親となる人の右手側に私が立っていたという、 ただ、それだけの理由、ただ、それだけのことで、私たち2人の運命は 大きく変わったのです。
 


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「俺は施設で独りになってしまったけど、俺の分身であるタカユキ、お 前がどこかにいるということ、俺にはお前という家族がいるということ だけを生き甲斐に生きてきた。
 
 中学卒業と同時に施設を出るとすぐに働き、定時制の高校へ行き、大 学の2部に働きながら通った。そこで初めて彼女が出来た。2年つきあ い、大学を卒業し、俺も正社員となったから、そろそろ結婚しようと、 彼女の親に会った。そこで俺の出生の話をした。それで結婚の話はなく なった。
 
 施設の子とは娘を結婚させられない、と親は言った。ここまで育てて くれた親を裏切れない、と彼女は言った。俺は親を恨むしかなかった。 俺を捨てた親を恨むしか そして、俺は一生、家族を作らないことを 誓った。その矢先だった。タカユキ、久しぶりにお前を見たのは 」
 
 
 タカマサは六本木のバーで私を目撃したと言いました。そのとき、私 は結婚式の二次会をしていたのです。
 
 「俺の片割れだったはずのアイツは、俺があきらめた家族を今まさにこ れから作ろうとしている。俺があそこに立ってシャンパンを掲げていて もおかしくないはずなのに、俺はただ独り、呆然とそれを見つめている だけ。この違いは何なんだ!
 許せない!
 絶対にリセットしてやる!!」
 
 
 タカマサは会社を辞めて引っ越しのバイトをしながら、私たち家族を ストーキングし続けたそうです。
 
 しばらくして私に愛人ができたことを知ったタカマサはこれこそ私 たち家族を引き裂く原因にできるとなり、私になりすまして愛人に近づ き、愛人と性行為に至り、それを映像に収め、それをわざと映像に収め させ、そしてそれらをつかって復讐劇は成されたのです。
 
 「そうか お前の復讐劇の結果、俺は独りになる。お前も独り、俺も 独り。しかし俺たちは捨てられた双子。たった2人の家族だったあの頃

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に、戻したということか。リセットしたということか 。でもな、俺 にはすでに家族が出来てしまっているんだよ。妻は元々他人だから別れ たら他人になってしまうかもしれないけれども、娘はどこにいこうと俺 の子だ!
 俺の家族だ!!」
 「なるほど。しかし、本当にそうかな。今から15年前の冬、お前たち 夫婦は二泊三日で温泉旅行に行ったよな?」
 「 お、お前、なんでそのことを!?」
 「今年の2月で14歳になったお前の娘、アヤカはその温泉旅行で授か ったことになっている。違うか?」
 「 そうだ」
 「その二日目の晩にしたことで、できたと。タカユキ、お前はそう思っ ているはずだ。タカユキ、お前は二日目の晩しか、してないよな?」
 「 そうだが、なんでお前がそんなことまで」
 「えっ!?
 ど、どういうこと 」
 「なんだ?
 どうしたんだアヤコ」
 「そう。奥さんは二晩ともしている」
 「 え、まさか、そんな」
 「最初の晩、タカユキは先に風呂に行ってくると言って出て行ったけど、 すぐに帰ってきた。そしておもむろに抱きつき、耳元で囁いた。『アヤ コ 』。そうして2人は愛し合った。そうですよね、奥さん。いや、 アヤコ 」
 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 
 
 泣き叫ぶ妻を、横で話を聞いてしまった娘が震えながら抱きかかえて いました。
 
 「タカマサ、お前はなんてことを でも、アヤカは俺の子だ!
 調べ てもいい!
 
 たとえDNA鑑定の結果、俺の子じゃなかったとしてもだな、アヤカは」
 「タカユキ、お前DNA鑑定って。俺たち双子だぜ。しかも一卵性。DNA はまったく同じなんだよ」
 


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「片割れの復讐」  

This novel is written by uenomitsuaki.

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