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札幌ビエンナーレプレ企画 2011 表現するファノンーサブカルチャーの表象たち

会場:札幌芸術の森美術館 会期:2011.10.29 ~ 11.23

Contents ファノンの聖域 サブカルチャーの表象たち 序文 shield of Hatsune Miku ドール+フィギュア カスタムオーナーの表現 現代の擬人観̶「さとほろ」 現代の擬人観̶「ルンバ 530」 Madeon twitter 顔文字 変化する怪談 魔法少女 コスプレ 名簿 謝辞 おまけ−制作風景


ファノンの聖域

Sanctuary of Fanon –Representations for Subculture

サブカルチャーの表象たち

ファノンの聖域 サブカルチャーの表象たち

界各地)へと拡散する。

Sanctuary of Fanon–Representations for Subculture

 子供時代、世界中で日本製アニメと接し

武邑 光裕(札幌市立大学デザイン学部教授)  現代日本における若者文化の世界的な 波紋と支持の拡大は、近年「クールジャ 1

パン1」と呼ぶ我が国の対外コンテンツ産業 政策にまで影響を与えてきた。日本のアニ メ、マンガ、ゲームなどが世界中の若者を 魅了してやまない情景に、大人たちは戸惑 い、その現実をなかなか認識できないでい た。これは、かつて海外でのジャポニズム や浮世絵礼賛に戸惑いを隠せなかった近代 日本の状況とダブって見える皮肉な現象で ある。  現代日本を源流とするポップカルチャー の世界的波及は、日本アニメやゲーム、マ ンガを尖兵とする 1980 年代以降の海外向 けメディア販路(とりわけ海外向けの低価 格なえレビ番組販売)を端緒として、広く 世界に波及した。日本政府や民間水産企業 の支援による南半球への鮭の養殖(南半球 には鮭はいなかった)や、鮭の帰還本能に も似て、日本の現代文化に端を発する幼魚 の記憶は、その源流一帯(日本)を自らの 養分で満たし、その遺伝子はまた大海(世 1 1990 年代、 イギリスのブレア政権が推し進めた国家

た若者たちが、次々に日本文化の源流を求 め、そこから自在な編集・社交力を駆使し、 それぞれの国で日本が生み出した異形の文 化的憧憬と自らの土地での定着に通じてい く。  毎年夏、フランスのパリ郊外で開催され る「ジャパンエキスポ」では、17 万人の 欧州の若者たちが日本のアニメやマンガを 軸とするサブカルチャーの再生産に関与し ている。フランスのみならず、世界各地で 聖地日本への憧憬を自らの土地と文化に変 換するイベントが繰り広げられているの だ。我が国の主流な文化輸出品(日本製ア ニメやマンガ、ゲーム)が、様々な国の内 部で、サブカルチャー(コスプレや二次創 作、ファンダムの世界)を生み出す循環は 今や世界的な潮流である。  サブカルチャーを牽引する非公式コンテ 2

ント ( ファノン )2 が、公式な文化コンテン 3

ト(カノン3)の権威を難なく乗り越え、主 流な文化それ自体に大きな影響を与えてい く。  単なる文化の消費者ではなく、新たな文 4

化の生産者となった元聴衆4の自律的な生産 活動は、今、世界中で展開されている創造

ブランド戦略 「クール・ブリタニア」 が語源とされ、ゲーム・ 漫画 ・ アニメなどのポップカルチャーを指す場合が多い。 広く日本製品、 食文化 ・ 武道などの伝統文化など、 日 本に関するあらゆる事物が対象となる。 アニメ、 ゲーム などを中心に人材育成や知的財産の保護、 輸出の拡大 などを図る官民一体の事業が展開されており、 税制面

4

2 ファンによる非公式なコンテントやサブカルチャーの 文脈を指す言葉。 Fan と Canon の合成語とも言われて いる。 3 真正の作品やオリジナルコンテントを言う。

の優遇を検討する、 「コンテンツ特区」 を設け海外から

4 元サンノゼ ・ マーキュリーニュースのコラムニストで有

も人材を集めなど、 政府はこの計画で 2009 年の海外収

名なブロガーであるダン ・ ギルモアが 『ブログ 世界を

入 1 兆 2 千億円を倍増させる予定。 国がサブカルチャー

変える個人メディア』 の中で指摘した能動的で発信する

までを振興することの課題も多い。  

人々。

表現するファノン—サブカルチャーの表象たち—

表象としてのサブカルチャー


経済でもある。世界が今、日本の文化に大

よる意味の跳躍も可能になる。

きな関心を寄せるのは、主流文化の単なる

 さらに、表象として認識されたモノやコ

偶像崇拝ではなく、自在にサブカルチャー

トには記号論などの方法を援用することが

を生み出すための多様なコンテントの編集

可能であり、これによってモノは先鋭的な

環境や、より日本のアンダーグラウンドに

概念に変換され、さらに一定の普遍性を獲

位置する文化的地層への関心である。

得した概念は、異質なメディアとの間に互

 それは、いわば日本の文化レイヤーとし

換性を持つことができる。先端テクノロ

ての古層(伝承)や深層(伝統性)の探索

ジーやメディア技術を用いた芸術表現がメ

だけでなく、偏在する地層に累積する数多

ディアアートの本義なのではなく、メディ

の表象たちの概念流動や、それらの表象が

アの互換から反転、転移する表象の運動を

互いに引き起こす化学反応こそが、日本の

捉えた表現こそ、メディアアートと呼ぶべ

サブカルチャーの生成土壌ともいえるから

きものの醍醐味なのである。

だ。未だに形式として残存する能や歌舞伎

日本の現代文化にある表象としてのモノや

をポイエティーク(創造的な原質の探求)

カタチを、わたしたちはオタク文化やサブ

に照らせば、自ずとその源流に演者と観客

カルチャーの参照として知っている。エッ

との間で繰り広げられた「あらし」や「ま

ジやキワモノ5といった先鋭的で限界更新に

つり」の荒事もみえてくる。日本の伝統芸

関わる際(きわ)の地層を、日本の伝統的

能の多くは、演者と観客双方によって活性

な文化地層からほど遠い、ここ北方の札幌

する演目であり、歌舞伎の荒事とは、観客

から見透かすことが、この展覧会の企ての

との真剣な掛け合いで成立する演目の事態

ひとつである。

である。観客は決して受動的な存在ではな

 とりわけ、札幌の学生たちが企てたサブ

く、創造する観客、活性する観客を前提と

カルチャーの体現的な研究展示は、現代美

する創造性の源流は、日本の伝統芸能の本

術やメディア芸術の柔軟なカテゴリーから

質でもある。

も離反する、表象的文化の生(なま)な提

 ところで、文化芸術のカタチには、いろ

示空間である。現代美術がオタク文化に擦

いろの概念がある。その中の主要なものが

り寄り、その商業化の嫌儲と向かい合うな

形象と表象である。とりわけ形象は物理的

ら、あるいは現代美術という上流が、下流

に見える(聞こえる)形(型)としての認

に流れる表象の散乱までを全方位(フルフ

識をいい、それに対して、表象は心に生起

ラット)に取り囲む覚悟があるなら、この

する概念としての認識である。表象として

展覧会は、そこに集合するモノたちと来場

認識されるカタチには、概念の創造的飛躍 (ポイエティーク)が起り、記号的な処理 が可能となり、また隠喩(メタファー)に

5 キワモノは、 きわどいものやすれすれの状態、 限界 ギリギリといった意味であるが、 本来の際物 (きわもの) は、 一時的な流行をあてこんで作った商品のことを意味 している。

5


者との価値観や偏見をも、優しく包摂する 表象交換の場となるだろう。  デジタルの地層やネット世界との親和性 から、あるいは冬の積雪による濃密な創造 性の集中が、ここ札幌を CGM(消費者生 成メディア)や UGC(ユーザー生成コン テント)のひとつの拠点に変容させている のかもしれない。 「初音ミク」という今や 主流なファノンを生んだ活性土壌には、次 代のアートを呼び起こすキワどいモノ、コ トたちが雑然と生息している。  サブカルチャーにおける表象の連鎖は、 特定の隠語や俗語によって、絞りこまれた 世代のコミュニティを強度に生成させ、放 置されてきた表象を日々再構成する。世代 を超えたフラットな社交の場などないよう に、この企てを衛生的に調整する意図も権 威も存在しない。あるのはただひとつ、美 術館という名の、古典的な芸術の展示空間 との間に生じる、奇妙なコミュニケーショ ンの回路である。  現代芸術のショーケースに戸惑いながら 搬入された、これらのキワモノたち、生も のには、当然ながら、値札もコンビニ仕様 の賞味期限も明示されていない。表象の雑 然を現代アートの源泉と見ることも、意味 不明の不要な文化の散乱と見做そうが、そ れは来館者の特権的な自由に委ねられてい る。ファノンとサブカルチャーの表象群と の自在なコミュニケーションを通して賦活 されるのは、芸術それ自体の原初的で、根 源的な発生の瞬間なのかもしれない。

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表現するファノン—サブカルチャーの表象たち—

表象としてのサブカルチャー


the introduction

序文

 本展示は、札幌市立大学デザイン学部、

起原を思い起こさせる文字の変化系ともい

札幌市立大学大学院デザイン研究科、北

える「顔文字」、命の無い物に命を感じる

海道大学大学院国際広報メディア・観光

感覚とそれをキャラクター化してゆく「擬

学院に在籍する学生有志により「ファノ

人化」、読者が創造してゆく物語としての

ン」に共通する「変容」に焦点を当て、 「怪談」、どこにもない自分だけの人形と出 会うためのカスタマイズ球体関節人形の世

研究展示を行うものである。

界、「今、何してる?」という個人の状況  YouTube やニコニコ動画など消費者生

発信の場からコンテントを創造するメディ

成メディア(CGM)という自己表現の手

アへと変化しつつある「Twitter」の現在、

段とツールを手に入れた若者は、単に消

多様化する音楽の中で、音楽や映像など次

費するばかりでなく創造活動を始めた。

の創造へと大きな影響を与えている若者の

今まで享受していた「物語」を活用して。 「リミックス」。 この消費者による創造活動は「CGM 文化」 1

 これら全てに共通するのは何かを「変容」

や「二次創作文化1」そして、「ファノン2」

したこと、させたことである。変容すれば

と呼ばれている。

する程、変容させればさせる程、一見創造 する若者たちが受動的に受け取っていた作

このファノンに共通することは「変容」

品や情報から離れていくように見えるが、

することである。

それこそが自己表現のための共有化と再編

なぜ、人は「変容」したがるのだろうか?

集、書き換えるという創造行為なのである。

人はなぜ何かを「変容」させたがるのだ

創作という行為がソーシャルネットワーク

ろうか?

を通じた人のつながりを生むだけでなく、

 

次の創造へと繋がり互いに影響し合ってい

 消費者が楽器を変容させていった「初

るのがわかる。

音ミク」、身体改造を伴わない扮装である

 細分化し見えにくくなっている現代サブ

「コスプレ」、魔法により少女が変身し問

カルチャーの創作活動の今を本研究展示に

題を解決する「魔法少女」の表現は、社

より明らかにしたい。

会状況に呼応して変化している。漢字の 1 原作を題材にして読者が自由な表現を加え創作する こと。 サブカルチャー分野での二次創作はマンガやアニ メ、 ゲームなどを題材にするものである。 2 ファノン」 とは受動的な消費者が今まで享受していた 「物語」 を活用して自己表現のために創作活動を行うこ と。 対義語に 「カノン」 がある。 「カノン」 とは 「ファノン」 を生み出す源になるコンテントである。 つまり、「ファノン」 は 「カノン」 が無くては存在できない。

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shield of Hatsune Miku

シールド オブ 初音ミク

shield of Hatsune Miku

作者コメント - Artist's comment 初音ミクとは卒業研究の時から向きあってきました。 初音 ミクという存在、 ブームの背景などについて、 初音ミクの 誕生からロサンゼルスでの海外ライブまでの流れを論文 や書籍という形でまとめてきました。 今回は初めて立体 物という手法で初音ミクと向き合うということで、 少し勝手 が違ったのですが、 周りの方々のアドバイスもあり、 なん とか形にすることができました。 この作品は、 大きな存在 となってしまった初音ミクに対する不安や、 初音ミクは誰 のものか?というテーマにしています。 札幌市立大学デザイン学部 研究生

阿部裕貴

yuki Abe

ブログ URL

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表現するファノン—サブカルチャーの表象たち—

表象としてのサブカルチャー

"Avengelion's Labo" http://ave072.blog42.fc2.com/


2007 年 8 月 3 日にクリプトン・フュー

 つまりユーザーの創造活動と「初音ミク」

チャー・メディア社により発売された音声

への愛情こそが「初音ミク」を形成する物

合成 DTM ソフト(デスクトップミュージッ

であったということである。そしてこの「初

クソフト)「初音ミク」は、CGM 文化1の 2

音ミク」は終わりのあるものではない。つ

中でユーザーの創造活動と動画共有サイト2

まり、完成することがない存在なのである。

といった創作を発表する環境の発達を背景

だからこそ人は愛情と情熱を捧げ続けるの

として爆発的な人気を集め、現代のネット

である。4 

サブカルチャーを代表する存在となった。

 完成する事の無い「初音ミク」に対する

そして、今では日本のみならず世界中の

ユーザーの創造活動が「初音ミク」を形成

人々と「初音ミク」を通した繋がりが生ま

してきたことはわかった。しかし、同時に

れている。

「初音ミク」は私達に次のような疑問を投

 では、初音ミクとは一体何であるのか、

げかける。それは「初音ミクは誰のものな

もう少し深く考えてみたい。

のか?」そして、初音ミクが誰のものでも

『初音ミク革命 とある大学生の一考察』

ないとするなら「「誰のものでもない初音

のなかで、阿部裕貴は「初音ミク」につい

ミク」という存在を守るのは一体、誰なの

て次のようにまとめている。

か?」、「初音ミクにとってのシールドとは 何か?」ということである。

「ミクはあたかも植物の種のような存在であ る。 どのような芽が出るか、 どのような花 が咲くかは育てる人によって異なり、 育て 方もその人の自由である。 ただし、 他の 植物との大きな違いは、 必要なのは水で も肥料でも日光でもなく、 種に対する愛情 3 と情熱が必要であるということだ。3」

1 CGM と は Consumer Generated Media ( コ ン シ ュ ー マー ・ ジェネレイテッド ・ メディア) の略であり 「消費者 生成メディア」 と訳される。 また、 CGM 上で創造される コンテンツは UGC (User Generated Content (ユーザー・ ジェネレイテッド ・ コンテント) の略) と呼ばれる。 2 ドワンゴが運営する 「ニコニコ動画」 や YouTube,

4 発売から 4 年が経過した現在でもニコニコ動画上の

LLC が運営する 「YouTube」 といった動画を投稿する

初音ミク楽曲は増え続けている。 「初音ミク」 タグのつい

サイトで視聴や視聴回数によるランキングの形成、 コメン

た動画だけでも 143336 動画がニコニコ動画上に存在す

トでの交流などが行われているサイト

る (2011.11.08 12 : 02 現在 )

3 『初音ミク革命 とある大学生の一考察』、 阿部裕貴、 千葉北図書、 2011、 p132 より引用

初音ミクにとってのシールドとは何か? 作品紹介

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ドール+フィギュア カスタムオーナーの表現

Expression of customizable doll and customizers

カスタマイズドールたち

作者コメント - Artist's comment 人形に興味があり、 展示で紹介したいと思い制作した。 今回は様々な種類のある人形の中から、「ファノン」に合っ た人形としてカスタマイズドールを選択した。 展示物を スーパードルフィーに絞ったのは、 初めて女性をターゲッ トにしたガレージキット製品であること、 本体をオーナー さんからレンタルできたことが理由である。 見てくださる方 に可愛いと思っていただくことを目標に、 メイク ・ 衣装制 作 ・ ロケ撮影に初挑戦した。 札幌市立大学デザイン学部メディアデザインコース 2 年

前川沙綾 saaya Maekawa ドール貸出協力 : 天野なつみ natsumi Amano ・猫丸 nekomaru

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表象としてのサブカルチャー


着せ替え、パーツの交換、リペイントや 削りといったユーザーによるカスタムを前 提としているカスタマイズドール。カスタ マイズドールユーザーは、自らの世界観を 表現し、他ユーザーとの交流も行える「ドー ルサイト」や「ドールイベント」という場 で活動している。今回の展示ではボークス 製のドールを用い、Web サイトコンテン ツとしての写真とドールイベントの個人ス ペースを再現する。  小さい頃に、バービーやリカちゃん人形 で着せ替えごっこをして遊んだ記憶がある 人も多いのではないだろうか。特に女性で あれば、幼い頃におままごとに並ぶ遊び だっただろう。展示のドール達は、大人版 人形遊びと言ったところだろうか。大人に なっても女の子は人形が好きらしい。た だ、撮影会となれば性別関係なくドール好 きの人々がカメラ片手に集まってくる。女 性よりも男性の方が多い、こともあるそう だ。ドールの魅力は性別問わずに伝わるら しい。個人が好きなドールに好きな服を着 せ、好きな小物を周囲に置き、好きな空間 で世界を創り出してゆく。

大人の人形遊び。 作品紹介

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現代の擬人観̶「さとほろ」

Modern anthropomorphism“satpro”

左から「東豊線」 「東西線」 「南北線」

作者コメント - Artist's comment 車内の写真にモザイクをかけることで、 地下鉄という媒 体に対して性的なニュアンスをこめた。 そして、 そこから 飛び出す三体のキャラクターは、 二次元でありながらも、 擬人化によって私たちに一段階歩み寄る様子を表現して いる。 また、 遠近法を多用することで、 惹き込みやすい 画面を狙った。

ゆりこ

yuriko

企画:福浦友香 yuka Fukuura

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表象としてのサブカルチャー


日常の中で出会う「物」を「人」として 扱うのが「擬人化」である。擬人化とは、 生命の無い物に生命を感じる行為である。 命名やキャラクター化、性格設定、物語を 想像することにより生命を吹き込み、物と の関係性を問う創造行為でもある。  本研究展示では、札幌市営地下鉄擬人化 「さとほろ」と掃除ロボットルンバ擬人化 「ルンバたん」を展示することにより現代 の「擬人観」を表現した。  『さとほろ』とは札幌市民になじみ深い 札幌市営地下鉄を交通機関としてではな く、都市のシンボルとして擬人化、「キャ ラクターコンテンツ」化した札幌市営地下 鉄路線擬人化漫画誌の作品である。本研究 展示では、 『さとほろ』より「南北線」、 「東 西線」、「東豊線」の三人を展示している。

あなたはどの子が好き? 作品紹介

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現代の擬人観̶「ルンバ 530」

Modern anthropomorphism“Rumba-tan”

上:ルンバ 530 たん 下:後ろ姿

作者コメント - Artist's comment 展示企画者よりお掃除ロボット ・ ルンバ 530 擬人化の提 案をうけ、 制作した。 見てくださる方がさまざまな視点か ら人としての 「ルンバたん」 をリアルに想像できるよう、 後ろ姿も描いた。 本作品では、 無機質なお掃除ロボット を擬人化という形で有機的な対象として捉え、 かわいらし く表現した。 擬人化という概念によって日常生活に、 新 たな発見を見出すことができるのではないか。

崎田マクラ

makura Sakita

企画 : 福浦友香 yuka Fkukuura・重乃可奈 kana Shigeno

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表象としてのサブカルチャー


お掃除ロボットルンバ擬人化作品「ルン バ 530 たん」では、 「人はなぜこのお掃除 ロボットに人格を感じるのだろうか?では、 機械ではなく「ルンバ」という人間が自分 の家を掃除してくれるならどんな姿をした どのような子なのだろうか?」をテーマに 制作を進めた。  想像して欲しい。これは単なる掃除機で はなく、一人の真面目で実直なために失敗 ばかりを繰り返す天然の人間であると。パ ワー不足で行方不明やコードをひきちぎる など失敗もあるが、今日もルンバ 530 たん は健気に掃除を続ける「お掃除がんばルン バ!」を口癖に。そして、その本当の正体 1

は「男の娘1」なのである。  本展示では、ルンバ本来の性質をも擬人 化してしまうその「感覚」と「男の娘」と いう「感覚」を持った人々の存在を本作品 から感じ、床から離れることの出来ない掃 除機の宿命を生かし床に作品を置くという 表現方法をとった。   「ルンバ 530 たん」に多大なる影響を 与 え た 漫 画 家、 枢 や な 氏 の『 担 当 K 氏 宅のルンバ擬人化』 (http://d-6th.com/ blog/2011/09/k.php)とそのきっかけと なった担当 K 氏の「擬人化妄想つぶやき」 に対しこの場を借りて感謝の意を表したい。 1 男の娘」 とは男性でありながら単なる女装ではなく、 「女の子」 の様な容姿を持ち女の子の格好をする人のこ とである。 また、 「男の娘」 とは 「男の子」 の造語と当 て字である。

実は男の娘、ルンバたん 530。 作品紹介

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Madeon

Transformation of music industry by Social Media

作者コメント - Artist's comment 音楽産業はレコード産業から脱却し始め、 音楽の生産と 消費のあり方は劇的に変化しています。 音楽雑誌やテレ ビではなく、 ソーシャルメディアから見出される形はこれ までにもありましたが、 これから更に増えていくと思われま す。 レコード会社のスカウトの役割を聴衆が担っていると いう点が非常に興味深く、 音楽産業の1つの指針として、 ソーシャルメディアによる可能性を探りたいと思い、 この 展示に携わらせていただきました。

twitter

ツイッター

作者コメント - Artist's comment 140 字の文字制限を持つ Twitter というソーシャルツー ル。 自己表現の手法の一つである創作詩。 この二つの 領域を融合させている人々を見て、 今後さらにおもしろ い化学変化が生まれるのではないかと思い、 この展示を 提案しました。 閲覧者参加型のこの展示が、 本来誰しも が持っているであろう表現欲を解放するきっかけとなって くれればと願っております。

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表象としてのサブカルチャー

札幌市立大学デザイン学部 4 年

小又勇人

yuto Komata /羽賀尚也 naoya Haga

音楽産業はレコード産業から脱却し始めた。現 在、音楽の生産と消費のあり方は劇的に変化し ている。この瞬間世界で最も注目を集めている ア ー テ ィ ス ト の 1 人、17 歳 の フ ラ ン ス 人 DJ 「Madeon」。この若者を見出したのは、音楽雑 誌やテレビではなくソーシャルメディアである。 彼の代表作“popculture”は、公開から僅か 1 週間で 150 万回の再生回数を記録した。音楽産 業の 1 つの指針として、Madeon を例にとって ソーシャルメディアの可能性を探る。 現在の音楽産業は、「レコードを売る」パッ ケージ産業ではなく、その存在や才能自体が評 価される時代に入っている。インターネットの 発達により、今や音楽データや動画データはほ ぼ無料で手に入る様になり、アーティストの中 には、「音楽」というデータを「存在」を感じ るためのコンサートに人を集めるためのプロ モーションの道具として利用している者もある。 DJ.Madeon のように創造する消費者は、既存の 音楽から新たな音楽を創造する。この様にソー シャルメディアにおける「創造する消費者」の 動向から、今後も目が離せない。 札幌市立大学デザイン学部 2 年

橋本志保

shiho Hashimoto

 「Twitter」とは 2006 年 7 月に開始された「い ま何してる?(What’s happening ?)」に対 して 140 字以内で投稿できる簡易ブログサービ スである。「Twitter」では自分の状況、創作詩や 小説、自身の創作の宣伝やイベントの告知など を「つぶやき」、リアクションを直接受けること が可能である。世界中で利用される Twitter だが この「つぶやき」を言語別に見てみると、50% を占める英語の次に日本語が多いことや日本企 業は「Twitter」を他のソーシャルサービスと比 べ圧倒的に多く使っていることも明らかになっ た。「Twitter」が大好きな日本人、Twitter やそ れを利用するユーザーの今後の行末が気になる ところである。  本展示では、つぶやきでの「創作詩」をテー マに、日々感じていることを詩として表現する Twitter 上の創作世界を表している。 参考サイト Twitter 上で日本語は 2 番目に多い言語 -ITmedia ニュース http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/24/news069.html  (2011.11.08 12 : 52 閲覧) インタビュー 「“日本は特殊な国” か、 通信を可視化してみたら意 外な事実が分かった」 -ITpro http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20110808/363981/?S T=network&P=1 (2011.11.08 12:50 閲覧 )


札幌市立大学デザイン学部 2 年/ 3 年

河原美由紀 miyuki Kawahara 三浦淳子 junko Miura /後藤優太 yuta Goto

作者コメント - Artist's comment

横山咲希

Changing Japanese ghost stories “Kaidan”

saki Yokoyama

作者コメント - Artist's comment 怪談。 何百年前からも途切れることなく民衆に楽しまれ てきた娯楽である。 怖い話と言っても様々なオチがある。 色々なタイプの話を読んでみたいと思ったので、 読み方 によっては話の終わりが変わる怪談を作ってみました。

顔文字

 「顔文字」とは文字や記号を組み合わせ、表情 を表したアスキーアートの 1 つである。コミュ ニケーションする中で文字情報のみの場合、書 き手が意図しない冷たい印象を読み手に与えて しまうことはよくあることである。そういった 誤解を防ぐため、または都合の悪い感情を誤魔 化すために「顔文字」は使われる。  例えば「今日はいい天気ですね。」と「今日は いい天気ですね^^」では後者の方がより好意 的に感じられるだろう。音にすれば同じ言葉で も、見せ方の少しの工夫で印象が大きく違う。 「顔 文字」はインターネット上やメール、携帯電話 など画面を通しての円滑なコミュニケーション における有効な手段の一つと言えよう。  本展示では、文字の枠を越え、テキストでは表 せない微妙なニュアンスを表現できる顔文字は、 新しい言語であるとして捉え、冷たく事務的な テキストを感情豊かに変える顔文字のコミュニ ケーションマジックに迫ったものである。

近年、 他人とのコミュニケーション不全が問題視され、 ま たテキストでのやり取りも非常に増えてきた。 しかし、 そ んな時代でありながらも私達は顔文字を創作 ・ 使用する 事で自分の感情を相手に伝えようと工夫している。 実際 の表情と顔文字の比較から、 顔文字はこんなにも表情豊 かに私達の感情を代弁してくれているという事に気付い てほしい。 普通の人が小さいながらも自分自身を発信し ている———とても素晴らしい風潮であると思う。

札幌市立大学デザイン学部 2 年

Emoticon-new communication language

変化する怪談

 何百年も前から途切れることなく民衆に楽し まれてきた娯楽である「怪談」。人々は通常であ れば不愉快な感情である「恐怖」を「娯楽」へ と変換する作業を行ってきたのである。「怪談」 は語り継がれる過程で変化を繰り返し・パター ン化して現代に受け継がれており、「サブカル チャー」の一つと言える。  今や「怪談」は文字や語り継ぐものだけでな くインターネット上の小説やゲームのジャンル の一つであるサウンドノベルなど流動的なもの にも広がりつつある。読者はそこで結末を「選択」 してゆき、それぞれ変化した物語の結末を迎え るのである。この「選択」する行為は受動的な 読みではなく創造的な読みと言えよう。  本研究展示での怪談は古典から現代までの恐 怖だけでなく笑いや悲しさ等の要素を取り入れ た物語を創作し、読者自身がそれを選択してゆ くことで「変化する怪談」を体験するものである。  どのような結末になるのかは読者次第である。 これこそが「変化する怪談」と創造する読者の 本質である。

作品紹介

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魔法少女

Costume for Mahou Shoujo

上:魔法少女コスチューム考察パネル 下:新しい魔法少女コスチューム7案

作者コメント - Artist's comment 「魔法少女のコスチューム」 をテーマにしたきっかけは 「カードキャプターさくら」です。 私達は「カードキャプター さくら」 の大ファンで、 さくらちゃんに魅了された最大の ポイントがコスチュームの種類の豊富さとかわいらしさで す。 このことから魔法少女全体に視野を広げ、 「どのよ うな魔法少女がいてどのようなコスチュームを着ていたの か」 また 「こんな魔法少女の衣装があったらいいな」 を テーマとした展示を考えました。 札幌市立大学デザイン学部 2 年

上田瑞穂

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表現するファノン—サブカルチャーの表象たち—

表象としてのサブカルチャー

mizuho Ueda ・工藤あすか asuka Kudou


魔法少女とは女の子の憧れの存在であ り、理想的な女の子像である。普段は普通 の女の子でたまにドジなのだが、変身する と魔法やアイテムを使いこなし華麗に敵 を倒す。おまけにかっこいい男の子との恋 愛模様も描かれる。「可愛くて強い」彼女 達のような存在は、まさに「強い女性」の 象徴なのかもしれない。  そして魔法少女が我々を魅了する要素 の一つである「コスチューム」は、初期 段階では日常的に女の子が着ている洋服 であった。しかし最近では普段着から「変 身」という行為を経て、まるでアイドルが 着るようなものや敵と戦うことを前提と した動きやすいものなど多種多様なコス チュームが登場してきている。変身という 行為やコスチュームが日常から非日常へ の移り変わりを明確に表現し、我々は魔法 少女の「気持ちの良い勧善懲悪」の世界や 「敵は本当に悪なのか?」という複雑な世 界に引き込まれてしまう。幼い頃より憧れ る「コスチューム」は女の子のココロを強 く掴んで離さない。小さい時に憧れたコス チュームを纏った彼女達を振り返り、大人 になった「あなた」はあの時憧れた「強い 女性」に近づけただろうか。  本展示では魔法少女の「コスチューム」 を分析し、新たな魔法少女のコスチューム を考えたものである。

魔法少女の力の源、コスチューム。 作品紹介

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コスプレ

COSPLAY

左:門谷咲子「ジュエルちゃん」 右:Juunana「Ciel-Kuroshitsuji Musical」

作者コメント - Artist's comment 作品は Tumblr や Cure などのコスプレ SNS よりピックアッ プしソーシャルメディアを用いて展示許可を頂いたもので ある。 つまり、 作品選定から展示依頼までソーシャルメ ディアを使った形になる。 どの作品も素晴らしく、 決めが たいものであった。 この展示がコスプレの全てではない が本展示によりコスプレの世界が少しでも理解され、 コス プレがアートとしての道や、 ファッションの1つとしてより社 会に浸透してゆくことを望む。 北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 観光創造専攻

福浦友香 yuka Fukuura 作品協力 : Juunana・門谷咲子 sakiko Kadoya

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表現するファノン—サブカルチャーの表象たち—

表象としてのサブカルチャー


ハロウィンを起源とした「仮装」は、マ

の「Ciel-Kuroshitsuji Musical」 は シ エ

ンガやアニメ、ゲームなどのキャラクター

ル・ファントムハイブというキャラクター

に仮装する「コスプレ1」へと繋がり、日本

の雰囲気を如実に表し作品の世界観へ近づ

でそして欧米やアジアなど世界での広が

いてゆくコスプレ世界を垣間見ることが出

りをみせている。

来る。一方、門谷咲子の「ジュエルちゃ

 そして、コスプレは今や単なる仮装を超

ん」はコスプレにより二次元に近づくと

えた「化装(筆者造語)」と言える。2 次

いうよりもむしろ、コスプレを更にコス

元のアニメやマンガ、ゲームのキャラク

プレするという意味合いがある。つまり、

ターやファッションに憧れた人々は、普段

「ジュエルちゃん3」のコスプレを中川翔子4

の服装に取り入れることのできる手軽な

が「PrismTour2010」 で 行 っ た。 そ し て

ものから、2 次元でしか表現し得なかっ

それを門谷がコスプレしたものである。つ

た装飾や情景まで、その全てを 3 次元で

まり、本作品には 2 次元キャラクターのコ

実現しようという挑戦を続けている。コス

スプレをした中川翔子のコスプレという二

プレとは「キャラクター」を自己表現のた

重の意味が込められているのである。

めの「記号」とし、コスチュームだけでな

 2 つの作品から、コスプレが単なる変身

く撮影風景や設定など細部までこだわっ

のための仮装ではなく衣装制作、撮影技術

て自身を「作品化」する創造行為である。

などアートの領域と密接に関係し自身を

  本 研 究 展 示 で は、Juunana の「Ciel-

「作品化」する創造行為であることがわか

Kuroshitsuji Musical」と門谷咲子の「ジュ

る。

エ ル ち ゃ ん 」 を 展 示 し た。Juunana の 「Ciel-Kuroshitsuji Musical」 は ス ク ウ ェ ア・エニックスから出版されている漫画 2

作品『黒執事2』の登場人物シエル・ファ ントムハイブのコスプレである。Juunana 1 コスプレをする人をコスプレイヤーと呼ぶ。 コスプレイ ベントが国内外で盛んに行われそこでの交流や写真撮

3 ゲームクリエイター、 イラストレータ−であるいとうのい

影、 そしてコスプレ SNS サイトでの写真の投稿や交流が

ぢ氏によってマルチタレントである中川翔子のツアーのた

行われている。

めに描かれたオリジナルキャラクター。

2 悪、 貴族、 少年、 執事、 英国といったキーワードを

4 「しょこたん」 の愛称をもつサブカルチャーに造詣の

持つダークファンタジー。 マンガだけでなくアニメ化や

深いマルチタレントであり、 歌手、 タレント、 女優、 声優

ゲーム化、 ミュージカル化も行われ日本のみならず世界

など幅広い活動を行っている。 マンガとイラストを特技と

中で人気の高い作品である。

している。

コスプレはアートだ。 作品紹介

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名簿

the list of names

表象としてのサブカルチャー 「変容する」ファノン —メタモルフォーゼ・ファノンの複数形— < 監修 > 札幌市立大学デザイン学部

武邑光裕教授 石田勝也講師 須之内元洋助教 < 全体統括・展示レイアウト > 札幌市立大学デザイン学部 3 年

後藤優太 三浦淳子 < 研究展示企画・制作 > 札幌市立大学デザイン学部 4 年

小又勇人 羽賀尚也 重乃可奈 神馬抄苗 札幌市立大学デザイン学部 2 年

上田瑞穂 河原美由紀 工藤あすか 前川沙綾 橋本志保 横山咲希 札幌市立大学デザイン学部研究生

阿部裕貴 札幌市立大学大学院デザイン研究科 コンテンツ・メディアデザイン専攻

林佑莉子 北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 国際広報メディア専攻

岩井將悟

観光創造専攻

福浦友香 < 序文 > 福浦友香

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表現するファノン—サブカルチャーの表象たち—

表象としてのサブカルチャー


thanks!

謝辞

本研究展示にあたり多大な協力を賜りました関係者の方々に 深甚なる感謝の意を表します。

門谷咲子 Juunana Madeon 天野なつみ 猫丸

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おまけ−制作風景

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表現するファノン—サブカルチャーの表象たち—

表象としてのサブカルチャー

omake


札幌ビエンナーレプレ企画 2011 表現するファノンーサブカルチャーの表象たち 表象としてのサブカルチャー 「変容する」ファノン - メタモルフォーゼ・ファノンの複数形 2011.11.11 < 図録企画 > 福浦友香・重乃可奈・神馬抄苗 < 図録デザイン・編集 > 神馬抄苗 < 監修 > 武邑光裕 福浦友香 重乃可奈


Representations for Subculture -Metamorphose Fanon-  

This is the exhibition catalog of “Representations for Subculture -Metamorphose Fanon-”. The main theme of this exhibition is “Metamorphose...