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第四章 過疎地域の自然豊かな環境でレスポンシブに 働くことが及ぼす知的生産性への影響

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第四章

過疎地域の自然豊かな環境で、レスポンシブに働くことが及ぼす

知的生産性への影響 4.1 企業の考える自然環境の快適性と知的生産性の関係 ここでは企業が神山での自然環境の快適性をどのように捉え、オフィスの 室内環境をコントロールしている様子、そしてそれらがどう知的生産性に 結びついていくのかをまとめる。ここでも二社を比較する形式をとるが、 これはサテライトオフィスの利用形態のみならず、オフィスの主に面する 方位が異なることが回答に関係すると思われるためである。 4.1.1 企業の考える自然環境の快適性と知的生産性

項目❶

株式会社えんがわ(循環型) (北向き)

株式会社ダンクソフト(滞在型を主と した循環型)(南向き)

自然光の快適性

自然光の快適性

自 然 環 境 の 快 適 性 1位秋2位夏3位冬 順位 自然風の快適性 1位夏2位秋3位冬 日射熱の快適性 1位秋2位夏・冬 (えんがわオフィスは7月開所であ るため、春を経験していない。)

1位夏2位春3位秋4位冬 自然風の快適性 1位春2位冬3位夏4位秋 日射熱の快適性 1位春秋2位夏3位冬

項目❷ 自然環境を自らコ ントロールする頻 度

自然光をコントロールする頻度 1位夏冬2位春秋 自然風をコントロールする頻度 1位春夏冬2位秋 日射熱をコントロールする頻度 1位夏2位冬3位春秋

自然光をコントロールする頻度 1位夏2位秋3位冬 自然風をコントロールする頻度 1位夏2位秋3位冬 日射熱をコントロールする頻度 1位夏冬2位秋

項目❸ 1位自然光 自 然 環 境 が 知 的 生 2位自然風 産性に与える影響 3位日射熱

1位自然風 2位自然光 3位日射熱

項目❹ 知的生産性を向上 させる、自然環境 への五感などの変 化

・鹿や虫の鳴き声が聴こえる(聴 覚)。 ・向かいの山の紅葉が美しく見える、 川の水の美しさ(視覚)。 ・1日の気温差(時間感覚)。

・鳥のさえずりが聴こえる(聴覚)。 ・山・朝霧が見える(視覚)。 ・1日の自然の変化・四季の移ろい を感じる(時間感覚)。

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4.1.2 二社の比較を通した自然環境の快適性と知的生産性の関係性の分析

参考資料

項目❶において、まず自然光の快適性では、E社が開所してからの季節で は秋を1番に挙げている。これは単なる光環境質の快適性のみならず、鳥

1)図説テキスト 建築環

の姿や山が見えるなどの視覚的効果が大きいとS氏は仰っていた。これは

境工学/加藤信介・土田

E社がファサードにガラスを多用していることと、オフィスが北を向いて

義郎・大岡龍三/彰国社

おり、グレア

1)

の影響がないため視環境を重要視している為と考えられる。

一方D社は夏を1番に挙げている。M氏は南側腰窓からの太陽高度の変

P45 視環境に影響する 諸現象 参照

化を繊細に感じており、夏は高度が高く強い光が入らないため光環境とし

グレアとは・・・「視野内に

て快適であり、冬は太陽高度の低い光が差し込みまぶしいため最下位と

輝度の極端に高い点が

なっている。これはM氏の固定デスクが南側・西側の腰窓に接しており、

あると、まぶしさを感じ

自然光の変化及びグレアの影響をダイレクトに感じる為であると考えられ

る。このまぶしさの為に

る。

対象の見にくさ、疲労、 不 快 感と い った 現 象 が

次に自然風の快適性に関して、E社は夏を1番に、次に秋を挙げている。

引き起こされること。」とあ

これは第三章の開口部使用状況と関係している。

る。

対してD社は春を1番に挙げ、冬を次に挙げており、E社で評価の高 かった夏・秋は低い順位となっている。M氏は冬、換気の為に開口部を開 けた瞬間の風が心地いいためと仰っていた。また、秋は虫が多いため開口 部を使用する頻度が減少することは既に第三章でも述べている。

最後に日射熱の快適性であるが、E社は秋を1位に挙げ、次に夏・冬を挙 げているが、自然光同様、E社はファサードにガラスを多用している為外 部環境の影響を大きく受けるためと考えられる。 D社は1位に春・秋を挙げ、次に夏、冬の順であるが、これはKVSO Cが工場をリノベーションしている為、断熱性能が低く、夏・冬はエアコ ン及び薪ストーブがないと働けないレベルに温熱環境が低下するためであ ると考えられる。

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1)環境リポート vol.3 徳島県建築士会 徳島


項目❷において、自然光をコントロールする頻度では、E社は夏を1位に 挙げているが、項目❶の快適性に関して夏は2位であったため、オフィス における光環境質の快適性の改善を求めてコントロールしていると思われ る。 一方D社は夏・冬に自然光をコントロールする頻度が高いと回答してい るが、項目❶の快適性に関して夏は1位、冬は最下位と大きく差がある。 これはM氏が南側腰窓に対しPCを置き、そちらに向かって仕事をしてい る為であると考えられる。夏は仕事をしている時間は南側からの光は高度 が高く入ってこず、夕方からの西側腰窓からの光を葦簀でコントロールし ている。対して冬は仕事をしている時間に南側からの光は高度が低く差し 込み、まぶしいためこちらを葦簀でコントロールしている。よって、M氏 にとって夏よりも冬にオフィスにおける光環境質の快適性の改善を求めて コントロールしていると考えられる。

次に自然風をコントロールする頻度では、E社は夏を1位に挙げ、続いて 秋、冬の順であると回答している。これは項目❶の自然風の快適性の順位 と同じであり、より外部の風環境の快適性をオフィス内に取り入れる目的 で行われるコントロールであると察する。 D社も同じく、春・夏・冬を1位に挙げており、これらは項目❶の順位 と比例している為、より外部の風環境の快適性をオフィス内に取り入れる 目的で行われるコントロールであると察する。 よって自然風においては快適性とコントロールする頻度は比例関係にあり、 より外部との繋がりを求めたコントロールをしていると考えられ、他の要 素よりもレスポンシブであると思われる。

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最後に日射熱をコントロールする頻度であるが、E社は1位に夏・冬を挙 げている。これは項目❶とは逆の順位となっており、日射熱の快適性とコ ントロールする頻度は反比例し、オフィス内の温熱環境の改善を求めてコ ントロールしていることがわかる。 D社もほぼ項目❶❷が反比例の関係になっており、オフィス内の温熱環 境の改善を求めてコントロールしていることがわかる。

項目❸において、E社は自然光が最も働きやすさに影響すると感じており、 これは先ほども述べたように視覚的効果も影響している。また、S氏は項 目❹自然環境を複合的なものであると述べており、外部の変化が1日・季 節を通して感じられるなど、自然環境の移ろいを感じられることが働きや すさに影響すると述べている。これもガラスを多用した建築設計が関係し ているだろう。 D社は自然風が最も影響すると回答しているが、M氏はたまに東京のオ フィスに出張する際に、そこで働く社員がサーキュレーターも使用せず、 通風・換気環境の悪い状況で働いていることに驚くという。第三章におい て、M氏がKVSOC全体の開口部を使用し、換気を促していることも関 係しているだろう。

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4.2 オフィス内外の開口部使用の様子を考慮した、通風状況と快適域

参考資料

4.2.1 研究方法 ここではえんがわオフィス内外の風解析結果及び、季節・時間ごとの気候 変動を考慮した快適域の考察を行う。

図 1 徳島県の気候エリア(※2)

徳島県の気候は地形と海の影響を受け、多様なものである。その区分は諸 説あるが、徳島県建築士会の徳島環境研究会による環境リポート

2)

によれ

2)環境リポート vol.3

ば、図 1 のように瀬戸内型盆地気候、瀬戸内型沿岸気候、太平洋沿岸南東

徳島県建築士会 徳島

斜面気候、太平洋沿岸山地気候に区分される。この 4 つのエリアから考え

環境研究会 HP

れば、神山町は太平洋沿岸山地気候に属し、図 2 における観測項目の多い

2013 年 1 月 9 日現在

主な気象台

3)

のうち(降水量のみなど観測項目の少ない気象台は省く)、穴

http://toku-

吹気象台が一番近いと考えられる。よって、今回は以降扱う気象データを

sikai.sakura.ne.jp/arc/k

穴吹気象台のものとする。

en/kan/vol3_1.htm

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参考資料

3)気象庁 HP 過去の気象データ選択 —地点の選択 2014 年 1 月 9 日現在

http://www.data.jma.go .jp/obd/stats/etrn/select /prefecture.php?prec_n o=71&block_no=&yea 図 2 徳島地方気象台の位置(※2)

r=&month=&day=&vi ew=

A 風解析結果の分析について A-1 研究手法 風解析には、CRADLE 社の STREAM3)を用いて解析を行った。

4)CRADLE 社 HP 2014 年 1 月 9 日現在、 STREAM 製品紹介

http://www.cradle.co.jp /products/stream.html

5)パッシブ気候図 図3

武政孝治氏作成による。

STREAM 解析の様子(※4)

拡張アメダス標準気象 季節はここでも気象庁の分類を用い、時間に関しては出勤時刻を考慮し、 ❶朝 9-11 時、❷昼 12-14 時、❸15-17 時、❹18-21 時に別けて行った。 よってこの時点で解析パターンは 16 パターン(えんがわオフィスは 7 月開 所の為 12 パターン)あることになる。また、1 つのパターンにつき、平均 風速と主風向を設定するわけであるが、これはパッシブ気候図 形成する GMT データを用いて計算・決定をした。

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5)

とそれを

データを使用し、図化さ れたもの。等値図表現と なっており、1 年の各地 点の気象変化が大変わ かりやすいものとなって いる。


図 4 パッシブ気候図

664 穴吹気象台における風向・風速(※5)

平均風速については、図 3 のように季節・時刻ごとに線で囲われた部分に 存在する等値線の最小値と最大値の平均値を平均風速とした。

主風向に関してはパッシブ気候図を形成する年間の風向データを用い、表 計算ソフトを用いてグラフを作成した上で主風向を決定した。その際に、 穴吹では上記の 1 パターンにつき、同等の頻度で複数の風向をもつ場合が 多々見られた。詳しくは次の資料 1 より、北北東と南西である。 よって、1 パターンにつき 2 回分の解析を要するパターンも出現した為、 最終的には 1 つのオフィスにつき 20 パターン近くの解析を要する結果と なった。

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7第四章 最終