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坂口 康介 sakaguchi kousuke


この時間になるとどこからか「声」が聞こえる。

最初は住んでるアパートのみでの出来事だと思って いたのだが、

いつもこの時間になるとどこにいても「声」が 聞こえるのだ。


初めて聞いたのは

年前。

シャワーで洗い流したときだった。

身体についている汚れを

着ているものをキザミ、

私は「事」を終えてアパートに戻り、

頃。

ちょうどこの辺りが有名になる失踪事件が起きた

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「…」

何か聞こえた。

普段なら気にもならない程の大きさの声だが、 何かがいるのがわかった。


「…て…い…」

かろうじて「て」と「い」だけは 聴き取れるのだけれど、 あとは解らず仕舞いだった。


程なくしてこの「声」がうっとしいと思い 近所へ引っ越したのだが、

そこでもその「声」らしきものが聞こえた。


その頃、新たな彼女が 「怖い」と ワガママを言うものだからやもなく 別れることにした。


最後に彼女の好きな花をプレゼントした。


そして「事」を終えてアパートに戻り、 着ているものをキザミ、

身体についている汚れをシャワーで洗い流したとき だった。


「…」 「…」

何かがきこえた。 「ど……て…い…の」 「…」 どういうことだ二人の声が聞こえる。


一人は前と同じ「声」で少し聴き取りやすくなった。 もう一人はまだ聴き取りにくい。


「…な…い」

「な」と「い」が聴き取れた。

不思議なことだが恐怖感より面白さのほうが勝って いた。


そして今聴き取れる言葉は 一人は 「どうしているの」 一人は 「花なんていらない」 一人は 「そばにこないで」

人まで増えた。

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一人は 「きらないで」 一人は 「こわいよこわいよ」 一人は 「ママたすけて」 一人は 「ころさないで」 一人は 「たべないで」


今日も「事」を終えてアパートに戻り、 着ているものをキザミ、

身体についている汚れをシャワーで洗い流す。


まだ聞こえない「声」が

人もいる。

【完】                      

はやくみんなの声が聞きたい。

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The voice is heard.