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竜を見たことがあるかい 僕はあるよ 竜は僕らの心の中にいる そして、僕らの経験を食べて少しずつ大きくなっていく だから僕らは強くなれる きみたちの心の中に住む竜を大切に育ててほしい

1 月 15 日発行 登場人物:テツさん 44/ エイジ君 44/ やま 39/ ホクト 38/ 忠平くん 35( 年齢順 )

第7号

Text:やま / Illustration:柳生忠平 / Photo:りつこ&ユッコ Special Thanks:いしかわまなみ ( 張り子) ハリコマチ http://harikomachi.jugem.jp

小豆島 竜伝説 !?

二〇十 一 年 十 一 月 十 八 日 東 日 本 大 震 災 被 災 地 の 福 島 県 相 馬 市 の 子 ど も た ち に ブータン ワンチュク国王が贈った言葉

2012 年(平成 24 年) 3

①小豆島︵あずきじま︶ 土庄町双子浦沖にある小 島。﹃古 事 記﹄の 国 産 み 伝 説 に よ る と、イ ザ ナ ギ と イ ザナミの二神が本州や四国 などの八つの大きな島を産 み 出 し た の ち に、さ ら に 産 み出した六つの島の中にあ ず き 島 が 登 場 す る。か つ て カワウ︵海鳥︶の糞害によっ て島上部の木々が枯れてハ ゲ 島 と な っ て し ま っ た が、 植林効果によって最近再び 緑 が 復 活 し て き た。う ら らー部員未踏の地・・・。

②御来迎の滝︵ ごらいこうのたき︶ 小 豆 島 霊 場 第 八 十 番 札 所﹁子 安観音寺﹂奥の院の﹁山の観音﹂ から歩いて二十分程度の山の中 にある滝。ごつごつした岩肌か らほとばしる水。なかなか神秘 的な雰囲気に包まれている。ま た、﹁山 の 観 音﹂本 堂 へ の 真 っ 暗な参道もスリル満点!

UraRah: 小豆島弁で私たち ③洞雲山 ど( ううんざん︶ 小豆島霊場第一番札所。小豆島 に点在する山岳霊場の一つ。か つ て、山 伏 た ち の 修 行 の 場 で あった。ごつごつした岩場に開 く大きな洞窟のなかに本堂があ る。夏至の頃、太陽の光がほん の数分間だけ岩肌に浮き出させ る観音様の像は非常に神秘的。

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プロローグ ﹁やまちゃん。おはようございます﹂ もー誰なん ? こんな朝早く。って、わっ、もう十二 時やん。うわー、頭いてー。またやってしもた。 ﹁おはよぉ∼。忠平くん ?﹂ ﹁やまちゃん。行きますよ。起きてください﹂ ﹁行くってどこに ?﹂ ﹁もちろん、あずき島です﹂ ﹁はぁ ? あずき島 ?﹂ ﹁もう、みんな八幡で待ってますから﹂ ガ チ ャ。っ て、な ん の こ っ ち ゃ。あ っ、そ ー い や、 昨夜の飲み会で﹁あずき島まで寒中水泳やろうや !﹂ と か、バ カ 騒 ぎ し と っ た よ う な。と り あ え ず、ぐ び ぐびとコップ一杯水を飲み、車に乗り込む。

あずき島を目指す ﹁ジャジャーン !﹂ 忠 平 く ん が う れ し そ う に 頭 を、い や、眼 を 輝 か せ て 白い布を広げている。 ﹁なにこれ ?﹂笑いながらホクトが言う。 ﹁見て分かんないんですか?褌ですよ﹂ ﹁分かってるよ!だから、なんで褌なんだ ! って言っ てんの﹂テツさんが鋭くつっこむ。 ﹁冬の海プラス男といえば褌でしょ﹂ ﹁なるほど。その通り﹂エイジ君はいつでも柔軟に物 事を受け入れる。 かくして、純白のひらひらがみんなに配られた。 ﹁えー、まじかよ。どーやってつけるんだよ﹂ テ ツ さ ん が ま だ ブ ツ ク サ 言 っ て い る。エ イ ジ 君 な ん て ノ リ ノ リ で 即 装 着。両 手 を 前 に 突 き 出 し、足 を ス リスリ、って、それは﹁まわし﹂ですから …… 。 ﹁よし。行くぞ !﹂ 褌 を き ゅ っ と し め、僕 た ち は 意 気 揚 々 と 海 へ と 歩 き だす。 ﹁遠っ﹂ 思 わ ず つ ぶ や い て し ま っ た。浜 に 立 つ と、あ ず き 島 は思いのほか遠い。が、ここまできたら行くしかない。

﹁ところで、滝ってどこにあんの ?﹂ ﹁たしか、島の北側にあったはずです﹂ く ね く ね し た 山 道 を 車 で ひ た す ら 登 り、僕 ら は よ う やく﹁山の観音﹂という山寺にたどり着いた。﹃滝ま で 四 五〇米﹄古 ぼ け た 小 さ な 看 板 が 山 門 の 脇 に 立 っ て い た。そ こ か ら 山 の 奥 に 向 か っ て 細 い 道 が 延 び て いる。 ﹁なんだか不気味な感じだな﹂ ﹁そら、竜人がおるくらいやからな﹂ ﹁おもしろそう!行ってみよう﹂ ﹁でも、なんで僕ら褌のままなん ?﹂ 褌一丁の怪しい男たちは滝を目指して歩きはじめる。 ﹁はぁはぁ。かなりキツイな﹂ ﹁そらそうですよ。ここは行場ですからね﹂ ザーッ。 ﹁おっ、水の音が聞こえてきたんちゃうん﹂ 光 も 差 し こ ま な い 鬱 蒼 と し た 森 の 先 に、突 然、滝 が 出 現 し た。ご つ ご つ と 垂 直 に そ び え た つ 岩 の 上 か ら 落ちる水しぶきだけが神々しく輝いている。 ﹁おー !﹂ 自 然 と 感 動 の 声 が 漏 れ る。ま ず は 手 を 合 わ せ、心 を 静め、竜人さまに挨拶を …… 。 ﹁ヒャッホー !﹂ 静 寂 を 破 る 突 然 の 奇 声 に 目 を 開 け る と、ホ ク ト が す で に 滝 つ ぼ へ 突 入 し て い た。お い お い …… 。僕 も あ わてて滝へ向かう。 ﹁ひー !﹂ 冷 た い!い や、冷 た す ぎ て、痛 い!そ し て、頭 上 か ら も 容 赦 な く 水 が 降 り か か る。と に か く 必 死 の 思 い で滝の下に並ぶ僕たち。 ﹁ほっ、ほっ、ほっ、ほっ …… ﹂気がつけば、みんな で雄たけびを上げていた。 ﹁あぁ∼。痛い痛い ! やっぱ無理∼﹂ あまりの冷たさに悲鳴を上げて僕は滝つぼから飛び 出した。 ボンッ。 そ ん な 僕 の 目 の 前 に 煙 と と も に、ま た し て も 不 思 議 な物体が現れた。 ﹁ウホッ。騒がしいな。なにごとじゃ﹂ ﹁出たー。竜人 !﹂ ﹁ホッホー。わしゃ猿神じゃ﹂ ﹁なんだよ。俺たちは竜に会いに来たんだぜ。竜はど こだよ ?﹂ ﹁残念ながらここに竜はおらん。東の岩場におったか な﹂ ﹁なんだよ∼、竜いないのかよ。滝行が全くの無駄じゃ ん﹂

﹁ひょぇ∼﹂ が、褌 が 濡 れ 始 め る と、急 速 に や る 気 が 萎 え、胸 ま で水につかったところで、みんなが緊急用のゴムボー トにしがみつき始めた。 ﹁あかん。やばいって !﹂ 小さなゴムボートはほとんど海の中に沈んでいる。 ﹁無理 !﹂﹁沈む !﹂﹁帰ろっ !﹂﹁ワッー !﹂ みんな一斉にあずき島に背を向け、浜に戻り始める。 ﹁あれっ、行かんのですか ?﹂  一 人 元 気 に 先 頭 を 泳 い で い た 忠 平 く ん が、海 面 か ら ツルリと光る頭をのぞかせて振り返る。 浜 辺 に 駆 け あ が り、震 え る 手 で タ オ ル を 取 り 出 し、 冷たく濡れた体を拭く。 そ の 時 だ っ た。ポ ン ッ と い う 音 と と も に、突 然 な に かが現れた。 ﹁だらしない !﹂ 謎の物体が僕らに話しかける。 ﹁なんなん、おまえ?カエル ?﹂ ﹁失敬な!私は 竜。あずき島にいらっしゃる竜神さま の使い小竜だ﹂ ﹁はぁ ? 竜 ?﹂ ﹁君らの情けない姿に大笑い、オホン。いや、ひたむ き な 姿 に 感 動 さ れ て、竜 神 さ ま が 君 ら の 願 い を 叶 え て や ろ う と お っ し ゃ っ て い る。た だ 君 ら が、竜 神 さ まにお会いする為には小豆島にすむ竜人たちが持つ 珠が必要だ﹂ ﹁竜人ってなんだよ ?﹂ ﹁竜は滝に …… 。﹂ ポンッ。大事なところで、小竜は消えてしまった。

滝に行く ﹁みんなの願いを叶えてくれるって言ってましたよ﹂ ﹁そんなわけねーだろ﹂ ﹁俺、ギャルのパンティほしい﹂ ﹁おっ。ホクトくんマニアだね﹂ ﹁とりあえず滝に行こう !﹂

﹁ウッホッホー﹂ボンッ。猿神は消えてしまった。 ﹁東の岩場 ? たしかあそこに竜が祀られていたよう な﹂忠平くんがつぶやく。

洞雲山 ﹁この上です﹂ 忠 平 く ん が 指 さ す 方 向 を 見 上 げ る と、ご つ ご つ と し た 岩 肌 に パ ッ ク リ と 大 き な 亀 裂 が 口 を 開 け て い た。 空 は だ ん だ ん と 鉛 色 の 雲 に 覆 わ れ 始 め、冷 た い 風 の 中 に 小 雪 が 舞 っ て い た。僕 ら は 急 峻 な 岩 場 を 登 り 始 める。なぜか未だに男たちは褌。 ﹁着きました﹂ ﹃八大竜王﹄お社の正面にそう記されていた。 ﹁八大竜王と言えば雨をもたらす竜だ﹂ ﹁おっ。とうとう竜登場や !﹂ ﹁竜出でよ∼ !﹂ ﹁そんな簡単に出てくるわけないやろ﹂ ボンッ。暗い岩の裂け目から突然竜が出現した。 ﹁はやっ !﹂ ﹁わしは八大竜王の竜一じゃ。小竜から話は聞いてお る。ほれ、これを託そう﹂ 鋭い爪の生えた竜の左手には透明の珠がにぎられて いた。 ﹁おっ、話が早いな﹂ ﹁や り ま し た ! こ れ で 竜 神 に 僕 ら の 願 い を 聞 い て も らえますよ﹂ ﹁なぁなぁ、どうやったら竜神が出てくるん ?﹂ ﹁あ わ て る な、小 豆 島 の 竜 は わ し だ け じ ゃ な い の だ。 他の竜人からも珠をもらってくるがよい﹂ ﹁ドラ○ンボールかい !﹂ ﹁竜は滝に住んでいる。滝といっても水が流れている とは限らんからな﹂ ボンッ。謎の言葉を残して竜は消えた。 ﹁なんだよ。まだ竜がいるのかよ﹂ ﹁水の流れていない滝 ?﹂ ﹁竜よりも人魚に会いたいわ﹂ ﹁竜の珠きれーだな﹂ どうやら僕たちの竜伝説はまだまだ始まったばかり のようだ。 気 が つ け ば 雲 の 隙 間 か ら 真 っ 赤 な 夕 日 が 姿 を 現 し、 みんなの褌がオレンジ色に染まっていた。アホやな、 みんな。なんで褌なん ? まぁえいか。僕はなんだか 幸せな気分だった。

こ ※の物語は、ほとんどノンフィクションです。

竜を見たことがあるかい ? 僕はあるよ。 この島に来れば、君にもきっと見える。


うららー新聞 vol.07