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地域医療活性化のモデルを目指して 行政・医師会・大学連携による「信頼の医療と安心のケア」の提供 中津川市の医療について考えるシンポジウム ■日時/平成 23 年 9 月 11 日(日)  10:00 ~ 12:30 ■場所/東美濃ふれあいセンター 歌舞伎ホール ■主催/名古屋大学医学部総合診療科・中津川市 ■後援/恵那医師会

〔page〕

あいさつ

  中津川市長 大山耕二

……………………………… 1

  名古屋大学医学部総合診療科教授 伴信太郎

……………………………… 2

講演

  1 これからの地域医療のあり方

……………………………… 3

     名古屋大学医学部総合診療科講師 佐藤寿一   2 地域中核病院が担う役割

……………………………… 8

     中津川市民病院院長・中津川市地域総合医療センター長 浅野良夫   3 高齢社会における地域包括ケア

……………………………… 13

     国保坂下病院院長 高山哲夫   4 認知症になっても安心して暮らせるまちづくり ……………………………… 23      国保上矢作病院名誉院長・恵那医師会認知症サポート医 大島紀玖夫   5 地域で医師を育てる

……………………………… 32

     揖斐郡北西部地域医療センター山びこの郷センター長 吉村学

総合討論

               

……………………………… 39

  司会 名古屋大学医学部総合診療科講師 佐藤寿一      中津川市地域総合医療センター事務局長 田立三博 







あいさつ 中津川市長  大山 耕二

 皆さんお早うございます。今日は「中津川市の医療を考えるシンポジウム」を、健康福祉 まつりの一環で開催させていただいたところ、多くの皆さんにご出席いただきありがとうご ざいます。  今年 4 月に「中津川市地域総合医療センター」というものを開設させていただきました。 名古屋大学医学部総合診療科の伴先生……後ほどごあいさついただきますが……のお力添え によりこのセンターを開設することができました。この地域で保健・医療・介護・福祉の一 体的なサービスができるように、その基礎には医療知識をしっかりと置いて包括的に、連携 して充実したサービスができるようにということで、その中核の組織として中津川市地域総 合医療センターを開設させていただいたわけです。今後の中津川市の医療、あるいは保健、 介護のあり方にもつながる先進的な取り組みだと自負しております。  そういうセンターの開設を、市民の皆さんにも広く知っていただくためにこのシンポジウ ムが計画されました。開催は伴先生のご提案で今日実現することになりました。  このような形で取り組むのも、片方で、地方における医療が大変厳しい状況に置かれてい ることが大きな課題としてあることが背景です。地域医療の確保という意味では、地方にお ける医師不足の問題も大変大きなテーマで、今日もそういった点からもご議論いただけるの ではないかと思います。  この地域総合医療センターは、地域医療を担うお医者さんの確保という面でもまた役割を 果たしていただけるということですし、今必要とされている専門医だけではなくて、総合医 の皆さんの養成にも役割を担っていただけるのではないかと期待しているところです。保健・ 医療・介護・福祉がこの地域でどのように展開されて、市民の皆さんの幸せにつなげていく ことができるかという観点から今日はシンポジウムを開いていただけますので、今日ご参加 いただいた皆様におかれましても、今日のこの機会を、将来の中津川市における保健・医療・ 介護・福祉の総合的な展開にお役立てをいただきたいと思います。  開催に当たりましては、名古屋大学医学部総合診療科の皆様方のお力添えに重ねて感謝申 し上げますとともに、恵那医師会様のご協力に感謝いたします。今日シンポジウムに出演し ていただきますのは、名古屋大学医学部総合診療科の佐藤先生、中津川市民病院の浅野院長 先生、国保坂下病院の高山院長先生、国保上矢作病院の名誉院長であります大島先生、揖斐 さと

郡北西部地域医療センター山びこの郷センター長の吉村先生という、この分野の一線を担っ ていらっしゃる多彩な先生方です。ぜひ熱心にご聴講いただきまして、将来の中津川市の健 康福祉の向上にお役立てをいただきたいと思います。  それではどうぞよろしくお願いいたします。




あいさつ 名古屋大学医学部総合診療科教授  伴 信太郎

 皆様、お早うございます。本日は健康福祉まつりの盛大な開催、おめでとうございます。 このたび、この健康福祉まつりに併設してこのようなシンポジウムを開催していただきまし た大山市長初め中津川市の皆様に感謝したいと思います。  これまで大学で医療が非常に最先端で専門化して進められてまいりましたが、一方で日本 の国全体を見渡しますと、65 歳以上の高齢者が 1990 年には 12%だったのが、昨年 2010 年度には 23%と倍増して、世界でももっとも高齢化が進んでいる国になっています。この ような状況の中で、国民が安心して信頼を持てる医療というのはどういうようなものかとい うことを考えますと、一方で最先端の専門医療であることは間違いありませんが、もう一方 では、地域で安心して、予防活動から、何か病気になったときに早めに発見していただく、 もしある程度の病を得ながら地域を生活していこうという場合には、福祉、介護の人たちと 連携して日々の生活を安心して送っていける環境が必要なことは避けて通れない。むしろこ れを第一に考えないといけない時代になってきているといえると思います。そういう、最先 端ではなくて最前線で医療を担って、保健、福祉、介護の皆さんとともに健康づくりをして いくということが大切です。我々名古屋大学の総合診療科と申しますのは、医学生を含め、 若い医師たちとともに、そういう役割を担う医療者を育てていこうというのが役割です。  今回、地域総合医療センターをこの 4 月に開設して、そのような活動の一歩を踏み出し たこの都市で、本日このようなシンポジウムを開催していただいたことを本当に嬉しく思い ます。  浅野先生とともに中津川市民病院の総合診療外来をこの 4 月から開設しましたが、私た かわうえ

ちのスタートは診療所から始まっています、川上、阿木の診療所の診療を充実させながら、 中津川市民病院、坂下病院の総合的な診療も連携して、中津川市の皆さんが安心のケアと信 頼の医療を共有していただけるお手伝いを少しでもできればと思います。そして、地域で若 い医師が診療に従事しながらそういう医療者として育っていくことを私たちは夢見て、この ような中津川市での展開に参加させていただくようになりました。一番最初は川上村の診療 所の診療から始まりました。かれこれ 8 年ぐらいになります。これからますます中津川市 の地域総合医療センターを核にして、皆様と一緒に、どのような健康のあり方がもっとも幸 せで、自然の豊かな美しい地元で安心して生活するのに必要なのか考えて、生かしていただ きたいと思います。  本日は、このシンポジウムの中でいろいろなご意見、ご提案、ご要望があるかと思います。 ぜひいろいろな立場からのご意見をお聞かせいただきまして、我々もできるだけ皆さんと一 緒に、これからの日本の健康のあり方、地域の保健、医療、福祉、介護との連携のあり方の



モデルになると考えています。皆さんと本日ディスカッションできるのを楽しみにしていま す。本日は健康福祉まつり本当におめでとうございました。


講演

これからの地域医療の在り方

1 佐藤 寿一

名古屋大学医学部総合診療科講師

 皆さん、おはようございます。今日はこのシン

する需要と供給のバランスが崩れている、これに

ポジウムにご参加いただきましてありがとうござ

尽きると思います。需要というのは、住民の皆様

います。そしてまた、このようなシンポジウムの

が医療に対して望むことです。供給は、住民の皆

場を提供していただきました中津川市の大山市長

様方に提供できる医療内容、このバランスが崩れ

初め皆様方に感謝を申し上げます。

ているということです。

医療崩壊の波が押し寄せています

医療に対する需要の増大

 現在、医療崩壊の波が押し寄せている、という

 医療に対する需要の増大の例をお話しします。

話をいろいろなところでお聞きになられると思い

わが国は未曽有の高齢化社会に入っています。当

ます。医療崩壊の現状を表すニュースはいろいろ

然、高齢化社会になるということは、医療を必要

あります。地域のみならず、都会でも救急患者さ

とする人が増えてくるという背景があります。

んの受け入れ先が見つからずに患者さんが大変な

 また、昨今メディアをにぎわしておりますよう

ことになってしまったというようなニュースもし

に、医療に対する不信感が住民の皆様の中に大き

ばしば見かけることがあります。特に、地域にお

くなってきているのではないかと思います。中に

きましては、地方の自治体の病院の医師不足のた

は、一部の心無い医師や医療機関の不祥事、犯罪

めに、特定の診療科が休診になったり、閉院に追

的な行為もニュースになることがあります。医療

い込まれたりといった暗い話もよく耳にするよう

事故には、過失によるものもあれば、過失のない

になっています。

ものもあります、過失というのは予測される不慮

 医療崩壊にはいろいろな定義があります。基本

の事態、「そういうことが起こり得るだろう」と

的には、住民の皆様が時と場合に応じた適切な医

いうことを回避する義務を怠ることを言います

療を受けられない状況が生じることです。すなわ

が、こういったものがあって起こる事故、あるい

ち、安定的な、そして継続的な医療提供体制が成

はそういうものがなくても起こってしまう事故が

立しなくなっている事態、それが医療崩壊です。

あり、このあたりは裁判になるところですが、こ

 では、なぜこのような医療崩壊がわが国で起き

ういった問題がよく世間をにぎわしております。

始めている、あるいは起きているのか。医療に対

 また、医療に対する過度の要求も、需要が増大




している原因の一つです。健康不安の増大をあお

やっているから、仕事終わってからでも行けるか

るようなメディアが多いです。 「何とかの知って

ら、ちょっと心配になったので立ち寄ってみた」

おかないと怖い」というお話など、よくメディア

と、名古屋大学もそうですが、このように救急外

で聞くと思います。こういう症状があったらこれ

来に訪れる患者さんもたくさんみえます。こう

は放っておけない、という話です。誰しもあるよ

いった医療に対する需要が非常に増えてきていま

うな病態であっても、自分がそれを感じると「こ

す。

のままじゃいけない」 「今まで自分は健康だと思っ ていたけど危ないんじゃないか」という話になっ

医療を供給する側にある問題

てくるわけです。放っておいてもいいような健康

 それに対して、医療を供給する側にある問題を

な人が多いんですが、そういったもので取り上げ

考えてみますと、まずは絶対的な医師不足、これ

られて健康不安が増大する、それをあおるような

は確実にあります。

番組も非常に増えています。  また、これもわが国の特徴でもありますが、専 門医療への志向が非常に高い。例えば、風邪でお なかを下して下痢になった。風邪ですから放って おけば数日で治っていくと思うんですが、自分は 消化器内科に行って診てもらわないといけない、 と消化器内科に行きます。あるいは血圧が少し高 いと言われた。近所のお医者さんにかかっている んだけど、病院の循環器の専門医に診てもらわな いといけないと思う、ということで病院に患者さ

 一つの資料を示します。人口千人当たりの医師

んが押し寄せる、という状況。その結果、必要な

数。経済協力開発機構の加盟 30 カ国中で、日本

ときに専門医療を受けられなくなっている状態を

の医師数は 27 番目です。平均が、人口千人に対

作っている要因になっていると思います。

して約 3 人の医師。それが日本は 2.0 です。非

 某コンビニの写真です。よく言われている救急

常に少ない。どうしてこのような事態が起きてき

医療の問題。これも、救急の現場で本当に救急医

たかを考えてみますと、今から 25 年前、1980

療が必要とされる患者さんが、救急医療を受けら

年代の半ばから、医療費抑制政策が検討されるよ

れなくなる背景の一つです。 「あそこは 24 時間

うになりました。このままいくと医療費は国の財 政全体を圧迫していって日本の財政が破綻するか ら、医療費を抑えていこうということです。ただ、 医療費が増えている背景には、増えざるを得ない 状況があったわけですが、それはともかくとして、 医療費を抑えることの中の一つに、このままだと



医師が増えすぎて困る、医師を減らすことが医療 費を減らすことに近づくんじゃないかという意見


が、国会でもかなり取り上げられています。この 辺は国の施策の問題だとよく言われますが、実は このときに医師の過剰論を訴えた議員さんたち は、ほとんど医師出身、あるいは医師の国会議員 だったということも聞きます。それで医学部の定 員を減らしていこうということが起きた。それで 結果として今のような状態を招いています。この ままだと医者が足りなくなるのではないかと言わ れたのが 2000 年に入るころからですから、この 間 15 年ぐらいは医師を減らしていこうという施

 医療を供給する側にある問題として、次には、

策が中心だった。実際に医師がこのままだと不足

医師数の地域格差というのもよく言われている

していくということで、医学部の定員をまた増や

ことです。都道府県別にみた人口 10 万人対の医

していこうとしたのが昨今です。ところが、その

師数。非常に地域偏在があるのが分かっていま

結果が出るのはまだ当分先のことになると思いま

す。必ずしも都会が多いというだけではないんで

す。

すが、全体を見てみると、西側がわりと多くて東 側が少ない。その真ん中にある東海地方はどうか というと、実はかなり医師が少ないのです。岐阜 県は 177.8 人で 41 番目、愛知も全国で 36 番目。 東海地方は特に人口に対する医師の数が少ないと いう現状があります。

 医師が不足している原因の一つには、女性医師 の割合が増えているということもあります。従来 は 1 割ぐらいだったのですが、今医学部入学者 に占める女性の割合は 30%ぐらいになっていま す。女性の方は、 生涯のキャリアパスの中で出産、 育児等で医療の臨床現場から少し離れる期間があ

 また、診療科の偏在の問題もよく言われていま

りますので、その期間欠員が生じるということで

す。診療科名別に見た医師数の変化、平成 10 年

す。したがって、女性医師のライフイベントをサ

と平成 20 年の比較を示したものがあります。合

ポートする体制を整えることが非常に重要になり

計としては、10 年間で医師の数は 14.8%増えて

ます。このあたりも、徐々にですが進んできてい

いるんですが、内科に限ってみると実際に増えて

ます。

いる割合は 6%で特に少ない。内科の中でも臓器




別の専門内科は 68%増えているのですが、それ 以外の一般内科、 臓器に特化した内科ではないと、 13%減っています。また、小児科医、産婦人科 医の問題もよく言われていますが、小児科も増え 方は少ない。産婦人科は減っています。それに比 べて、近年の疾病構造だと思いますが、精神科医、 心療内科医というのは非常に増えています。

 卒後においてはどうか。卒後 3 年目以降の医 師には、専門的診療能力、チーム医療を行うため のリーダーシップに加えて、地域医療を担うため の全人的な診療能力を高めさせること。地域社会 で特にニーズの高い総合的なケアを修め、プライ マリ・ケアを極める医師も、高度な専門性を持っ た臨床医であるとの認識に立って、専門医研修に  また、地域医療を学習する機会が今まで不足し

おける総合診療医の養成システムを構築していく

ているということが、日本の大きな問題の一つに

こと。大学や大学病院において、地域医療等にか

あります。医学教育の改善・充実に関する調査研

かわることを希望するさまざまな年代の医師が、

究協力者会議というものの中で、学部教育におい

プライマリ・ケアのための研修を行うことのでき

て、地域医療を担う医師養成のあり方について述

る体制を、地域の医療機関との連携を図りながら

べられています。6 年間の医学教育を通じて、学

整備すること。これが指示されています。

生が地域医療に貢献したいという考えを深めてい くように、地域医療の実態を学習する機会の充実 を図ること。このように言われているということ



地域医療の再生は国家プロジェクトとして行う必 要がある……が

は、今までこれが行われていなかったということ

 地域医療の再生の問題は、国家プロジェクトと

です。また、学生の地域医療に関する興味、関心

して当然行わなければいけませんが、先ほどお話

を高めるために、学部教育の早期から地域医療の

ししましたように、医学部の定員を増やして医師

現場に赴いて、地域住民の生活意識や医療ニーズ

数が増えてくるのはいつか。少なくとも 20 年後

についてアンケート調査を行うなど、学生に地域

です。待てないですよね。また、従来の大学医局

の実情を肌で感じる経験をさせること。これも今

からの医師派遣に依存する枠組みから、この地域

までやっていないということです。診療参加型臨

は脱却していかなければいけない。今、専門医が

床実習においても、学生が地域医療を実際に体験

増えているというお話をしましたが、もともと専

する機会の充実を図ること、これも必要だと言わ

門医療を行う機会は都市部に多いし、その効率も

れています。

都市部で高いので、専門医は都市部へ集中する傾


向があります。それとともに、近頃の医局の医師

当方の名大の総合診療科としては、地域において

派遣機能は非常に低下してきています。地域で医

総合的な医療を実践する場、総合医を養成する学

師が不足しているからといって大学に言っても、

習の場の構築を図るのが狙いです。

医局はそこに人を派遣してくれません。したがっ て、地域で自前で医師を育てることが大事になり

中津川市地域総合医療センターの活動目標

ます。それが今の現状です。

 実際の活動目標、テーマ。何をよりどころとし

 学生や若い医師に地域医療に対する親和性を持

てこのセンターは動いていくのか。それは、『信

たせることがまず非常に大事なことです。自分の

頼の医療と安心のケア』を皆さんに提供できるよ

一生のうち何年間か地域で医療に貢献したいとい

うなシステムを作ることです。地域の皆さんが慣

う気持ちを起こさせるためには、地域に対する親

れ親しんだ場所で安心した生活を送ることができ

和性というのを持たせなければいけない。そのた

るように、医療のみならず、保健から福祉、介護

めに、都市と地域との密接な関係というのも必要

に至るまでの総合的な医療ケアシステムを地域で

で、従来のパターンのように都市で働くのか地域

構築するのが目的です。具体的なミッションとし

で働くのかという選択をある時期にするのではな

ては、公立診療所、及び中津川市民病院、坂下病

くて、自分のキャリアパスの中で、ある時期は都

院の診療支援、中津川市健康福祉部関係課、恵那

市で働き、ある時期は地域で働き、それを行った

医師会と連携した地域包括ケアの推進、地域総合

り来たりできるようなシステムが非常に大事にな

ヘルスケアに携わる総合医を育てることです。ま

ると思います。

た、不足しているのは医師だけではありません。 医療従事者はどこでも不足しています。多職種の

中津川市地域総合医療センター

医療スタッフの学習、研修活動のサポートもミッ

 そこで今回、中津川市地域総合医療センターと

ションの一つと考えています。

いう組織を中津川市と名大総合診療科との合同事

 中津川市と名古屋大学が官学協同で地域医療を

業として立ち上げさせていただきました。これ

活性化していくためのモデルを作ろうとしていま

は、中津川市と名古屋大学総合診療科との官学連

す。このモデルを全国に向けて発信していきたい

携による地域医療活性化のモデルを目指す、新た

と思います。おそらく、全国のいろいろな地域で

な、全国でも非常に珍しい取り組みです。この写

同じような問題を抱えていますので、こういった

真は、 センターを開くときの看板を掛ける儀式で、

取り組みが今後盛んになってくるんじゃないか。

大山市長と当科の伴教授です。もとより中津川市

その第一歩を記しておきたいと考えて、これから

は、地域医療、

活動を始めていきます。

ケアを担 う 医

 ご清聴どうも

療スタッ フ を

ありがとうござ

確 保 し、 地 域

いました。

医 療、 ケ ア の 活性化を 目 指 す考えですし、




講演

地域中核病院が担う役割

2 浅野 良夫

中津川市民病院院長 中津川市地域総合医療センター長

 中津川市民病院の浅野です。私の与えられた

診療科があります。常勤がいるのはそのうち 17

テーマは、 地域中核病院が担う役割についてです。

科、常勤医が 43 名、研修医が 1 人です。

市民病院がこの地域で担う役割についてお話をさ

 東濃地域には 8 つの公立の総合病院がありま

せていただきます。

す。県立多治見病院に次いで外来・入院患者数、 医師数が多い。

市民病院の概要

 岐阜県には 5 つの医療圏があります。岐阜、

 市民病院は、一般病床が 360 床の急性期の病

中濃、東濃、西濃、飛騨というような。その東濃

院です。現在の稼動病床は 273 床で、現在 87

地域では、当院は唯一の災害拠点病院になってい

床休床しています。その理由は、病棟を担当する

ます。

医師のいない診療科ができ、休床せざるを得ない

 市民病院の特徴として、産科設備のある総合病

という状況と、やはり看護師が不足しているため

院です。岐阜県の総合病院で産科施設があるのは

です。以前は 7 病棟あったのですが、5 病棟に縮

13 で、そのうちの一つです。平成 17 年、6 年

小して、特に看護師の夜勤回数を減らし、休みを

前には 23 ありましたが、半減しています。東濃

取りやすくして運営しています。平成 21 年度、

地域では、県立多治見病院と当院がお産ができる

去年の患者数は 1 日平均 242 名、公立病院の一

病院なので、何とかそれを死守しなければいけな

般的な病院でもベッド稼働率は 70%ぐらいです

いと思っています。

が、当院では 67%で、一般的な病院とほぼ変わ

 看護職員配置は、7 人の患者さんに 1 人の看護

らないと思います。1 日の平均外来患者数は 756

師です。それ以外には、10 対 1 とか 13 対 1 と

人、これは公立病院の 360 床前後の病院の中で

いうのがありますので、現在では、看護の配置を

は少し多い傾向にあります。平均在院日数、すな

濃くしています。これも平成 20 年度 10 月から

わち入院してどれぐらいの日数で退院されるか

行っています。

は、13.5 日、ほかの同規模の公立病院は約 17 日



で、少ないほうです。そういう意味では、ある程

総務省が求めた公立病院「改革プラン」

度、治療が終われば次のリハビリや在宅の方向に

 皆さんご存じのように、自治体病院というのは、

スムーズにいっているということです。今は 23

全国多数経営の状況が厳しく、2007 年末に総務


省が各自治体に公立病院改革プランの提出を求め

めには、現状をよく把握して、いろいろな課題を

ました。自治体病院の 8 割近くは赤字病院とい

整理する。中津川市では市民病院と坂下病院、診

われています。

療所がありますので、この辺の関係を整理し課題

 その骨子。

を見直すということです。

 ①経営の効率化。これは具体的な数値目標を定 めて経営を良くすること。  ②経営形態の見直し。赤字を少しでも減らすに は、民間的な手法を導入したり、指定管理者制度、 例えばこの近くでは市立恵那病院が導入していま すし、独立行政法人化、これは県立多治見病院が 行っています。そういう経営形態の見直しをして 改善するようにということです。  ③再編ネットワーク化。基幹病院とそれに付随 するサテライト病院、診療所の機能分担を明らか

 以前は一つの病院がすべて初期治療から高度専

にしてやっていくことが求められています。それ

門医療をしていた。介護、福祉まですべてのこと

以外に、医療費も年々下がっていて、非常に厳し

を担えればいいんですが、現在はなかなかそうい

い局面に市民病院は立たされています。

うことができませんので、分業制で効率的な地域 ネットワークを形成してやっていくのが、地域医

中津川市の公立病院「改革プラン」

療提供体制ということだと思います。そのために

 中津川市も公立病院の改革プランを立てまし

は、患者さん、住民の方が中心の医療ですので、

た。改革プランの期間は平成 21 年度から 23 年

そういう方にいろいろな施設を利用していただい

度の 3 年間。今年がその最終の年となります。

て、それがうまく機能するようにする。この中津

 ①経営の効率化。具体的数値目標を定め、今年

川地域だけでは不可能な場合には、三次医療など

度中に医業損益を減価償却費以内にする。減価償

は市民病院でも不可能なものがありますので、そ

却費というのは、 病院には医療機器や建物があり、

ういうのはもっと充実した病院、例えば県立多治

その目減り分を毎年支出として計上して行うわけ

見病院に送らせていただく。それでも高度な医療

ですが、実際に動いていない支出ということなの

ができない場合には、例えば県域が違うというこ

で、それ以内に医療損益を抑えれば何とかトント

とでも、大学病院にも行っていただく。というよ

ンということなのでそれを目指しています。

うになるわけですが、できるだけ地域で完結する

 ②経営形態の見直し。これは、期間中に経営目

医療を実現する、そういうネットワークを形成し

標が達成しない場合に考えるということです。当

なければいけないということです。

院も経営改善を視野にやっていますので、将来的 には公営民営化も考えなければいけないかもしれ

地域医療ネットワーク

ません。

 地域医療ネットワークについてです。

 ③再編ネットワーク化。地域医療を良くするた

 比較的軽症な患者さんを担当する医療機関とし




て、一次医療機関、それがかかりつけ医という開

には 8 名減り 39 名となりました。そのとき、呼

業医の先生方です。それから、紹介患者さん、救

吸器内科 1 人、腎臓内科も 3 人いたのがゼロに

急患者さんが発生した場合に、より精密な検査、

なりました。この 9 月現在には、総合診療科の

手術、入院ということになると地域中核病院、市

先生が 2 人おみえになって、腎臓内科にも 2 人

民病院のような二次医療機関に来ていただく。そ

みえていますので復活しましたが、まだ呼吸器内

れでも十分な医療ができない場合には、高度先進

科、内分泌内科は欠員があり 43 名です。

医療機関として三次医療機関、例えば、多臓器不 全、多発外傷、脳卒中、心筋梗塞などの重篤な患 者さんに高度な医療を総合的に提供する救命救急 センター的な体制を維持しているところへ送らせ ていただく。市民病院の場合は、今のところは脳 卒中、心筋梗塞はある程度診られますので、それ 以外の救命救急センター的な治療が必要な場合は 県立多治見病院に送らせていただきます。それ以 外に、地域ネットワークでは、治療が終わった方 の介護、福祉などは保健行政で見ていただくとい

 経営的な問題もあります。どうしても、市民病

う体制を取る必要があると思います。

院ですので経営が苦しいと市の財政負担になりま す。自治体病院ということで、市も財政がいいわ

10

現状医療の問題点と課題

けではありませんので、病院の赤字が自治体の財

 地域医療ネットワークはなかなか十分に機能す

政に負担をかけますので、経営の合理化をして一

ることが難しいのですが、問題点として、医師不

体化で病院経営をしないと無駄が省けません。

足、偏在の問題があります。それと、病院の経営

 そのほか、救急医療体制も、コンビニ状態があ

問題もあります。そのほか、救急医療体制、あと

り、どんどん患者さんがみえると医師の負担にな

は慢性期の医療の問題があります。

り、夜中も起きて次の朝も働かなければいけない

 病院にとっては、勤務医が 5 人いたところが 2

とだんだん疲弊して辞めていくことになります。

人になった場合には、残った医師が 5 人分を診

現在中津川市はかかりつけ医制度を推進していま

なければいけないということで、疲弊して、診療

すが、未定着です。今年の 4 月から医師会の先

科全員がいなくなるという崩壊を起こす。 それと、

生に協力いただいて、夜間の当直を平日は 5 時

医師がいなくなれば診療科閉鎖、診療体制が縮小

から 10 時までやっていただいて、軽症の方はそ

します。市民病院でも、残った医師の負担が大き

こへなるべく行っていただき、市民病院の救急患

くなって、内分泌内科の医師が 3 人いたのがゼ

者が 3 割減りました。一次、二次、三次の医療

ロになりました。

機関の役割を分担し、病院同士、恵那市、中津川

 市民病院の診療科と医師数の推移です。診療

市で 4 つの病院の連携をうまくし、患者さんの

科が 19 科あって、今は 17 科しかありませんが、

流れを良くし負担を少なくする連携が必要です。

去年の 3 月には 47 名の常勤医がいました。4 月

が、まだ十分とはいえません。


慢性医療では、 高齢化で患者さんが多くなると、

全体で医療を考えていただき病院を支えていただ

リハビリ、介護の必要な人が増えて、その人が行

く。たくさんの病院、医療機関がありますが、必

く場所がないのが現状です。そういう受け皿が確

要なところでは医療機関の統合、集約化が必要で

保できない。ケースワーカーなどもやってくれて

す。統合、集約化するには、住民の方の反対もあ

いますが、受け皿がない。体制の整備も不十分で

るでしょうから、よく理解をしていただいて、各

す。急性期から回復期、リハビリから在宅までの

市町村、国、県の協力支援が必要になります。

医療でもまだ十分な流れができていません。 中核病院として市民病院が担う役割 地域医療改革のキーポイント

 最初のテーマに戻り、市民病院の役割です。現

 中津川市はどうか。病院は、中津川市民病院と

在健康管理センターで予防健診の機能がありま

国保坂下病院、蛭川診療所、川上診療所、阿木診

す。それと、外来、入院機能があります。健診で

療所があります。どういう状況で管理運営するか

は、生活習慣病の予防をやっていますが、中でも

はまだ十分な議論がされていません。それと、病

特に専門性の高い健診として、脳ドック、心臓ドッ

院経営の赤字が中津川市の財政に大きな負担をか

ク、子宮がん検診、乳がん検診をやっています。

けています。将来的にも高齢者が増加し、中津川

外来でも、救急、紹介患者さんはすべて診させて

市も人口が減少していますので、財源不足、施設

いただきます。できるだけ専門性の高い外来をや

不足が懸念されています。市民が安定した継続的

ります。あと、総合診療科が総合医で全体的なも

な医療を受けるためにも、地域医療ネットワーク

のをやりますので、それとタイアップしてやって

をしっかり構築する必要があります。

いきます。入院は 360 床が公称ですが、実際に は 273 床しか動いていません。できるだけ病床 数を増やし、手術機能、急性期入院、周産期、特 にお産は維持する。また、腎臓内科も常勤でみえ ましたので、ハイリスクの血液透析、入院機能が ないとできないようなものも今後もしっかりやら ないといけないと思っています。

 地域医療改革のキーポイントは、医療資源は限 られているので、お互いの病院が倒れないように 無駄を排除し、経営効率、経営のコンパクト化が 必要です。医療機関、機能を統合、集約してやっ てゆく。 中津川市単独では医療が完結できません。 医師不足もなかなか解決できないと思います。そ ういう意味では、地域全体、東濃地方や岐阜県

11  まとめてみますと、健診部門では、健康管理セ


ンターの充実と専門性の高い健診。外来では、随 時紹介患者、救急患者の受け入れと専門外来。入 院機能では、地域医療ネットワークの中核病院と して、二次、三次の救急医療の機能を維持する。 それと、地域完結型の医療がこの地域では必要な ので、最後の砦としての役割を市民病院は担うと いうことです。  ご清聴ありがとうございました。

12


講演

高齢社会における地域包括ケア

3 高山哲夫

国保坂下病院院長

 本日の課題であります地域包括ケアについてお

になりました。

話ししたいと思います。

バルーンも抜 け、 皮 膚 も 良

高齢者の疾患の特徴

くなりました。

 のっけから恐縮ですが、これは胸の写真です。

自力でインス

心臓が腫れて、胸に水が溜まっています。見ただ

リン注射を打

けで重症だということが分かります。実はこの方

つようになり

は、ある病院で「もう急性期医療は終わったので

ま し た。 お 分

施設に行きなさい」と言われたんですが、当然施

かりだと思い

設ではこういう方は受け入れてもらえません。家

ま す が、 認 知

族の方が困り

症の方が自分

まして、回りま

で注射を打つ

わって伝をた

ことはできま

どって私ども

せん。この方の認知症は作られた認知症だったの

の病院に来ら

です。胸の水はなくなり、心臓も良くなりました。

れました。

この方は現在元気で外来に通院されています。

 診断は、糖尿 病、心不全、腎 不全、認知症で じょく

褥そうもでき ていた。皮膚に いっぱい湿疹 ができていて、 膀胱のバルーンが留置されていました。  治療をしたところ意識もよくなり、会話も可能

13


高齢者は多くの病気を持っていまして、個人差 が大きい。そして、 症状が非定型的である。また、 水や電解質の異常を起こしやすい。この方々を普 通の方と同じように扱っては決してうまくいきま せん。こういう方々を従来の急性期の感覚で扱い ますと、まさに姥捨て山になってしまいます。も しこのまま施設に行っていればこの方は今頃この 世にはいない。あるいはもっと悪化して再入院し ていたと思います。 国保坂下病院の医療  私どもの病院は、国民健康保険の病院です。現 在外来が年間 12 万 6 千人、一般の入院が 3 万 7 千人、 療養病棟は 1 万 6 千人が利用されています。 病院を中心にして、旧恵北地域、長野県の南木曽 町、大桑村、上松の一部までの方が利用していま す。 入院も同じような地域の方が利用しています。  救急の患者さんも年間 3944 人、救急車は、中 津川市と木曽、両方の消防署から年間 612 人が 利用しています。 国保坂下病院の疾病予防・健康づくり  国民健康保険の病院ですが、国民健康保険の診 療施設は、医療のない地域の医療を確保するため に作られたものです。同時に、医療とともに予防、 健康づくりを行うことを義務付けられています。

14


昭和 19 年に国が全国の市町村の中で模範的な健 康保険組合、診療施設を 64 指定しています。岐 阜県では旧坂下町の健康保険組合が模範的だとし て指定されていますが、現在まで続いているのは わずか 8 施設です。ということは、いかに過疎 の地域で医療を守っていくのが難しいかというこ とを物語っています。

に脳いきいき教室ということで、旧坂下町の全自 治会を回りました。

 私どもの病院は医療のほかに健康づくりをやっ てまいりました。私が坂下病院に来たとき、隣の 南木曽町の肝炎の取り組みをして、10 年間地域 へ出向き、肝炎に対する理解をしていただき、新 しい患者さんの予防をしました。その結果、新規

 全医師による巡回健康講話も行いました。いず

の患者さんの発生を抑えることができました。

れも夜間です。

 健康づくり、予防活動は、高血圧の予防活動、

 また、今日の特定健診のモデルになったヘルス

坂下病院の全医師による健康巡回講話、生活習慣

アップモデル事業を、平成 14 年から 3 年間行い

病予防教室、ふれあい健康塾、当時まだそれほど

ました。全国で初めて自治体の枠を超え、旧川上

問題になっていませんでしたが認知症予防のため

村、山口村、南木曽町、坂下町、4 カ町村で行い

15


16

ました。これは私自身の考え方で、健康づくり

 生活習慣病外来は、ただお話を聞いて生活指導

は特定の地域だけでやってはだめだ、同じ生活を

して運動のメニューを作り、薬は一切使わない形

共有する地域でやらなければ意味がないと、厚生

での外来です。その結果を見ると、いずれも薬を

労働省にお願いしたものです。この成果が上がり

使わなくてもいろいろなデータが改善されてい

評価されて、成功する特定保健指導という本にも

て、生活習慣はきちんと対応すれば良くなるとい

なっています。

うことがこの結果からも伺えます。

 その成果を踏まえ、生活習慣病外来、運動教室

 転倒予防教室です。

というものを設けました。

 また、私どもの病院は、予防健診活動が義務付


けられており、地域のいろいろなところで予防接

 また、ほかでやっていないのですが、発達障害

種、母子保健にも参画しています。保育園、学校

児を対象に、坂下病院のスタッフが出て行き支援

への健診の指導を行っています。このような地域

をしています。

にとっては坂下病院はなくてはならない存在だろ うと思います。

 こんなことをやっていたところ、当初の高血圧 予防教室の成果だと思いますが、だんだん旧坂下  子宮がん健診、乳がん健診もそうです。

町の方の血圧が下がってきました。

 人間ドックも従来からやっており、ほぼ医療圏

 そして、医療費が県の平均をずっと下回るよう

と同じところで行っています。

になりました。平成 12 年を見てみると、旧坂下

岐阜県市町村別平均寿命 岐阜県平均 岐阜市 大垣市 高山市 多治見市 関市 中津川市 美濃市 瑞浪市 羽島市 恵那市 美濃加茂市 土岐市 各務原市 可児市 川島町 岐南町 笠松町 柳津町 海津町 平田町 南濃町 養老町 上石津町 垂井町

男性 7 8 .1 77.3 78.0 78.1 78.6 78.3 78.5 77.8 78.0 77.5 78.0 78.6 78.4 78.4 79.3 77.3 77.4 77.6 78.0 77.5 77.1 78.0 77.6 78.2 77.4

女性 8 4 .3 83.3 84.5 84.6 85.2 85.4 85.0 84.2 85.1 82.7 85.0 85.4 84.9 84.1 85.1 83.4 82.9 83.6 83.6 83.7 83.2 83.5 83.5 84.6 83.5

関ヶ原町 神戸町 輪之内町 安八町 墨俣町 揖斐川町 谷汲村 大野町 池田町 春日村 久瀬村 藤橋村 坂内村 北方町 本巣町 穂積町 巣南町 真正町 糸貫町 根尾村 高富町 伊自良村 美山町 洞戸村 板取村

男性 77.6 78.0 77.9 77.5 78.1 78.0 77.5 77.8 77.6 77.9 77.7 78.0 77.8 77.8 77.9 78.0 78.1 77.7 77.7 77.7 77.3 77.6 77.2 78.1 78.7

女性 85.0 83.9 83.7 84.5 83.8 84.6 84.1 84.4 84.5 84.2 84.3 84.5 84.4 83.9 83.7 83.5 83.9 83.3 83.8 83.4 82.8 82.9 83.0 85.2 85.2

旧坂下町の女性が岐阜県の 平均寿命の長寿で1位となる。

武芸川町 武儀町 上之保村 八幡町 大和町 白鳥町 高鷲村 美並村 明宝村 和良村 坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村 御嵩町 兼山町 笠原町 坂下町 川上村 加子母村 付知町 福岡町

男性 79.2 78.5 79.7 79.0 78.0 78.6 78.8 78.3 79.6 8 0 .6 77.5 79.2 78.8 78.9 77.9 79.3 78.5 78.7 79.1 77.3 78.4 77.4 78.6 77.6 78.2

女性 84.9 84.3 84.9 85.0 83.5 85.6 85.4 85.2 85.0 84.4 84.7 85.5 84.3 84.9 84.2 85.0 85.8 85.1 84.0 84.2 8 6 .2 84.7 85.1 84.5 85.2

蛭川村 岩村町 山岡町 明智町 串原村 上矢作町 萩原町 小坂町 下呂町 金山町 馬瀬村 丹生川村 清見村 荘川村 白川村 宮村 久々野町 朝日村 高根村 古川町 国府町 河合村 宮川村 神岡町 上宝村

男性 77.5 78.2 78.0 76.8 78.5 78.5 79.5 78.8 77.4 79.0 78.8 79.2 78.7 78.9 79.1 78.5 78.9 78.3 78.6 79.0 80.4 79.2 78.7 79.4 78.5

女性 85.1 84.6 84.7 85.7 85.7 85.0 85.1 85.3 85.1 84.7 84.4 84.4 83.8 84.5 84.9 85.0 86.0 85.2 85.2 84.0 85.9 85.1 84.8 85.8 84.8

平成12年度 国勢調査より

17


町の女性は岐阜県で平均寿命がトップです。医療

ます。そうなりますと、病気との闘いから共存に

費が下がって寿命は延びる。今、国は高齢者の医

なります。キュア、単なる医療からケアも含めた

療費の問題で頭を悩ませ、いろいろな施策を出し

形での態勢を作らなければいけないことが言われ

ていますが、そうではない、きちんとした対応を

ています。

していけば医療費は下がり、なおかつ長寿が全う

 聖路加病院の福井先生からお借りしたデータで

できるということの証明だろうと思います。

は、対象者千人のうち、何らかの体調の異常があ る方が 862 人、このうち受診される方が 307 人、 病院の外来を受診される方が 88 人、大学病院に 入院される方は 0.3 人。ですから、私どもは中津 川市の中でどこにポイントを絞ればいいのかとい うことで医療体制を考えなければならないだろう と思います。 地域包括医療(ケア)とは

 坂下病院を利用される方のシャトルバスがあり ます。今は大桑村からクワちゃんバスというのが 出ています。 日本における問題点・医療の質的変化

 そこで、地域包括医療(ケア)、これは、地域 に包括医療を、社会的要因を配慮しつつ継続して 実践し、住民のQOLの向上を目指すということ で、キュアのみならず保健サービス(健康づくり)、 在宅ケア、リハビリテーション、福祉、介護サー ビスのすべてを包含するもので、施設ケアと在宅

18

 日本における問題点は、急速な高齢化、老人医

ケアとの連携及び住民参加のもとに生活・ノーマ

療費の増加、少子化及び社会構造の変化、また家

ライゼーションを視野に入れた全人的医療(ケア)

庭内の介護力の低下があります。特に寝たきりが

と定義しています。

多いことが問題になりました。これが介護保険の

 これを実践すると、寝たきりが減る、いろいろ

きっかけです。

なサービスが総合的に提供できる、24 時間のケ

 また、医療が急性期疾患から慢性期に移ってい

アができる、医療費の伸びが鈍化する、町の活性


のか。地域に密着した病院が必要だと思います。 また、在宅生活を支える態勢の確立も必要です。 広域的地域包括ケアの展開

化ができる、老後安心して住めるまちづくりがで きる、ということが、全国のいろいろなところで 展開されています。  そういうことで、私どもは、出て行く医療をやっ ています。当時の南木曽町の肝がん、肝硬変の死 亡率が、南木曽町のある地域だけ特別多かったの です。先ほど申し上げたような取り組みの結果、

 実は坂下病院の裏に総合福祉施設ができていま す。これは、地域包括ケアを実践するための施設 で、当時の坂下町の福祉課、健康づくり課が入っ ており、病院のスタッフとともに動ける形を作り ました。行政というのは縦割りが多くてなかなか 連携が取りにくいんですが、こうした施設を利用 して顔の見える関係作りができました。今度中津 川市にできた地域総合医療センターに私は非常に 期待していますが、こういった行政の壁を打破す る、地域を包括する医療、ケアを実践できるもの であると考えています。  高齢になると通院が困難で、通院バスが必要で す。買い物に行けない、食事が確保できない。こ ういった方々に対してどういった医療を提供する

19


ここの肝炎はなくなりました。

内科医わずか 5 名で 24 時間 365 日サポートす

 訪問診療を 46 名に行い、年間延べ 343 回行っ

る医師の存在も忘れてはなりません。年間 6400

ています。

件出て行っています。

 訪問している地域では、往復 2 時間ぐらいか

 訪問看護、リハビリは今の医療圏をほぼカバー

かるところもあります。

しています。また、介護予防教室に当院のリハビ リのスタッフ、保健師等が出かけています。

 訪問看護ステーションは、365 日 24 時間、休 みなしです。大変ご苦労をかけていると思います

 地域の活性化の意味で、坂下高校、訪問看護の

が、彼女らのご苦労と同時に、常勤医師 14 名、

養成の研修もやっていますし、最近では福祉ライ フ科という科が設置されましたが、私どもの病院 から医療の面で講義に出かけて支援をしていま す。  また、介護保険をきっかけにして、いきいきネッ トワークを設けました。これは介護施設の方々と ごえん

一緒になって考えようというものです。誤嚥性肺 炎を予防するとか、身体拘束をどうするとか、い

20

ろいろな問題を一緒になって考えてきました。  腰痛予防の体操もしています。


こんな形で、保健、医療、福祉の広域的な展開

いきいきネットワーク研修会 講演内容 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回 第21回 第22回 第23回 第24回 第25回

第26回 第27回 第28回 第29回 第30回 第31回

年 月

誤嚥性肺炎の予防 今すぐ使える腰痛を防ぐ楽々介護とリハビリテーション 褥瘡ケア 身体拘束ゼロに向けて 講演とグループワーク 身体拘束ゼロに向けて 講演 身体拘束ゼロに向けて 事例発表とグループワーク 腰痛予防と対策 ー 講演と腰痛体操実技 ー 癒しとヨガとほぐし 介護における口腔ケアの役割~これでよいのか?間違いだらけの口腔ケア~ 口腔ケアとリハビリ アクアビクスでリフレッシュ 東海地震を考える 楽しくやる健康体操 胃ろうて何だ? 口腔リハビリをやって口から食べよう! 高齢者のリスクマネージメントセミナー 介護保険研究会 AED講習会 安全な栄養管理 認知症とは 認知症個別ケアの重要性: ニューカルチャーに気づくグループ討議 NSTについて 認知症利用者の安全な生活を目指して 認知症の理解と対応 のみ込みの仕組み メンタルヘルス 災害が起きたら ( 映画鑑賞・ 体験発表・ グループ討議)

自分でできるからだの手入れ あなたのマナー大丈夫? あきらめないで、おいしくゴックン -むせないで食べたり飲んだりするには- 参加者の楽しさを引き出すレクリエーション援助 人が成長するということ より良い人間関係を求めて 今から楽しく介護予防 頭も身体もすっきり元気

参加人数

平成12年 7月 平成12年11月 平成13年3月 平成13年7月 平成13年11月 平成14年4月 平成14年7月 平成14年11月 平成15年4月 平成15年7月 平成15年11月 平成16年4月 平成16年7月 平成16年12月 平成17年9月 平成18年1月 平成18年4月 平成18年10月 平成19年1月 平成19年4月 平成19年8月 平成19年8月 平成20年2月 平成20年8月 平成20年11月

122名 92名 110名 117名 85名 124名 111名 57名 93名 61名 15名 62名 106名 168名 240名 63名 83名 58名 66名 38名 98名 103名 78名 49名 69名

平成21年 3月 平成21年7月 平成21年10月 平成22年3月 平成22年7月 平成22年10月

年月日 平成12年10月21日 平成13年10月21日 平成14年12月8日 平成15年12月7日 平成16年12月5日 平成18年3月12日 平成19年2月23日 平成19年12月12日 平成20年12月9日 平成21年12月15日 平成22年12月7日

開催場所 坂下町健康福祉会館 2階 坂下町健康福祉会館 2階 坂下町農村環境改善センター 坂下町農村環境改善センター 坂下町健康福祉会館 2階 坂下町健康福祉会館 2階 坂下町健康福祉会館 2階 坂下病院大会議室 坂下町健康福祉会館 2階 坂下町健康福祉会館 2階 坂下町健康福祉会館 2階

演題数 9演題 5演題 8演題 11演題 8演題 5演題 5演題 6演題 6演題 6演題

参加人数 80名 52名 78名 44名 41名 35名 63名 38名 96名 75名 55名

ば中津川市全体に広めたいと思っています。

46名 67名 80名 74名 41名 71名

いきいきネットワーク研究発表会 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回

をしています。今までやってきたことを、できれ

その他

特別講演

 Bさんは 84 歳で、脳梗塞の疑いで入院されま したが、致命率 50%以上の破傷風でした。2 カ 月間ずっと高熱が出て大変だったのですが、よう やく熱を下げることができ、その後食べられない えんげ

状態が続き、口腔ケア、摂食、嚥下のリハビリを

21


続けました。食べられるようになってから歩行が できないので歩行訓練をしました。176 日入院 した結果、良くなりました。現在歩いて通ってい ます。  Aさん、Bさんはもしかしたら今日ご参加の皆 さん自身かもしれません。そういった方々の助け るべき命、改善するべき機能を守るためにも地域 包括ケアは必要だと思います。高齢化が進行する 社会の中で、市民が住んでよかったと思える地域 づくりのために、地域包括ケア、医療は必要なシ ステムだと思います。

 地域の方々に健康についてご理解をいただくよ うに、単なる講義ではなく人形劇でご理解いただ ければと思いまして、現在、 「あなどるな糖尿病」、 認知症予防の「孤独になるな」 、 禁煙のための「あ あタバコ」 、認知症予防のための「もしかしたら 認知症」という 4 つの話を、でこぼこ市という 山間地域の住民の中で起こる問題を取り上げて 作っています。ご希望の方がございましたらCD でお分けします。ご連絡ください。  ご清聴ありがとうございました。

22


講演

4

認知症になっても安心して暮ら せるまちづくり 大島 紀玖夫

国保上矢作病院名誉院長 恵那医師会認知症サポート医

 上矢作から参りました大島と申します。このよ うな発表の機会を与えていただき誠にありがとう ございます。恵那医師会から参りました。  認知症というのは、今日地域の最大の問題と なっています。21 世紀前半の健康問題の最大の ものは認知症だと言われていますし、この地域で もいろいろな取り組みが行われています。特に中 津川市では非常に力を入れています。恵那市でも 取り組んでいます。それが意外と地域で知られて おらず、ほかのところの人は本当によく知ってい

の最南端の上矢作町で、矢作川を隔ててすぐ愛知

ます。私は今日そのことを、医師の立場から意見

県です。そういう山の中の育ちです。この地域は

を交えながら報告します。そしてそれに対する医

昔は恵那と言っていました。例えば「ほっちょせ」

師会の取り組みを報告します。

でもそうです。「恵那は山家じゃお医者はいぬで、

 今までの演者は若く現役で張り切っています

可愛い殿御を見殺しに」とあります。よそへ行っ

ので力が入りましたが、私は現役を引退して 10

てもいつも恵那から来たと言っています。恵那雑

年になり、あと 2 カ月で後期高齢者になります。

巾なんという言葉があるぐらい、真面目で勤勉で

そういう点で私の話は少し差し引いて聞いていた

誠実で、お人良しで少しだまされやすいですが、

だくのが結構だと思います。特に私は、余談です

そういった恵那人ということを誇りに思っていま

が、20 代から 30 代までブラスバンドでトラン

す。それが皆さんが育ったところだと思います。

ペットを吹いていました。最近は歯が悪くなって

そこでは高齢化率は 28%をもう超しています。

吹けなくなりましたが、どうもトランペットを吹

明日はさらに進みます。認知症率も大体 10%を

かなくなったらほらを吹く癖がつきました。気楽

超している。もう少しいっているんじゃないかと

に聞いていただくと嬉しく思います。

いわれます。65 歳以上の 10 人に 1 人は認知症、

 これは恵那山です。私たちの地域は、中津川市

あすは我が身です。私などはすでにそうですが、

と恵那市になります。私は生まれも育ちも恵那市

それぐらい大きな問題になっています。

23


中津川市の取り組み 認知症みまもりのわ事業

います。その後の中津川市の報告は非常にすぐれ ています。それから、認知症サポーター養成研修 の前の年にやっていますが、これで私はサポー ターになっています。かかりつけ医認知症対応力 向上研修は、厚生労働省の事業で、医師会で年 1 回やっています。その後に組まれた補助事業です。

 最初に、中津川市が取り組んでいる認知症の対 策について申し上げます。認知症みまもりのわ事 業というのが 4 年ほど前、2007 年から始まって います。2 年の補助事業です。県でも非常に力を 入れています。認知症になっても安心して暮らせ るまち中津川。私の今日の演題はここから取りま

 認知症への対応、予防から早期発見、早期対応、

した。サラサドウダンで認知症の方をやわらかく

ケア等を行うマンパワーや拠点などの地域資源を

包むマークが、非常にすぐれていると思います。

ネットワーク化して、相互に連携しながら有効

サラサドウダンと同じように輪を作ってこの人た

な支援を行う体制を構築する。この事業を進める

ちを支えていくという図です。これを見ただけで

根拠は、認知症の人は住み慣れた地域でなじみの

非常によく分かります。

人々と暮らすことが最適なケアであるというとこ ろにあります。これはまさに認知症の人の、ノー マライゼーションという、福祉の理念、障害を持っ ていても地域で生活を営むことが人間らしい暮ら し方だという北欧のほうから始まった考えとも一 致しています。みんなで支えるみまもりのわとい うことでこれを書いたわけです。この長い名前が みまもりのわ事業です。

 これまでの認知症対策の一部です。  2007 年、認知症地域支援体制構築等推進事業 という長い名前ですが、これがこの事業の補助事

24

業として 2 年間行われました。モデル事業です。 岐阜県では中津川市と岐阜市の 2 つが選ばれて


ると難しい話になります。健康、福祉の問題は難 しくするとだめです。  難しく言うと、地域包括支援センターを中核と して、13 ある在宅介護支援センターの中に一つ の拠点を作っていこうと。地域介護センターが一 つになって地域を作っていこうという動きです。 行政の単位とは違う単位です。そこにある共属意 識というのが、共通の目的がないとなかなかでき ないわけで、それを、認知症をケアする、支える  これも中津川のすぐれたところです。認知症の

という中から作っていこうということです。これ

人、家族の方を住民の人たちが支えていこうとい

はみまもりのわ作りの核で、認知症地域支援ネッ

うことです。それには、在宅介護支援センターを

トワーク会議を持ちそれぞれの代表が出て会議を

一つの核、拠点として、いろいろな職種の人たち

して、そして皆さん方でこれを支えていこうとい

がこれを支えていく、地域全体で支えていこうと

う組織です。さらに上には認知症みまもりのわ

いうことです。認知症地域ネットワーク会議とい

推進会議と全体の中津川市があり、コーディネー

うのをこの中でもち、地域で支えるということで

ター会議とプロジェクトチーム会議がこれを支え

す。地域というのが地域コミュニティー、昔から

ています。私はコーディネーター会議のコーディ

の共同体で、地域の中で人々が絆を結び、お互い

ネーターに選ばれてかかわってきています。

に助け合ってその地域を良くしていく力を生み出 していましたが、最近は地域が疲弊してバラバラ になっています。もう一度こういう形で地域を再 生していこうという新しい動きだと私は思ってい ます。

 取り組んできた事業はたくさんあります。一つ とっても大変なことです。講座、研修、相談など たくさんのことを重層的にやっています。このあ たりがほかのところではないことだと思います。 「みまもりのわガイド」というのが皆さんの家庭  これは人の顔が丸くて上手な絵だと思います。

に行っていると思います。その中で特に注目され

中津川は和菓子の里で、この顔が栗きんとんに見

ているのは、地域支えあいマップです。徘徊高齢

えるところが親しみが持てます。これを詳しくす

者SOSネットワークなどいろいろあります。

25


ますが、中津川市は認知症みまもりのわを新しい 地域に結び付けていくということが大きなことで す。とにかく取り組んでいることがすごいと思い ます。 恵那市の取り組み 回想法  次に恵那市についてです。恵那市は、思い出を 語ることから始まる健康づくりということをやっ ています。これは地域回想法を取り入れた介護予  支え合いマップは 50 戸ぐらいの単位でやって

防推進事業です。

います。在宅介護支援センターを単位とするより もっとぐっと小さくなります。その中で認知症の 人がどのようにかかわり、そのかかわりの中から どのように支えていったらいいかというマップ で、線で結ばれています。

 この絵は東野の長谷川さんという方が描かれた ものです。昔の、ちょうどお正月前、餅をついて いる風景です。こういう絵を元にしながら回想し ていく、そのためにこれを使ったりしています。  これもある地域です。人間が社会の中で生きて いくとき、これぐらいの関係を本来持っているの です。ところが現在ではこの線が切れています。 認知症というのはもともと大脳の神経のネット ワークが切れてしまうのですが、これで見ると、 地域が認知症になっている。それをもう一度戻し ていく。そのことによって認知症の人を支えてよ くしていくことができるというふうに考えられ

26

る。今 3 カ所ですが、全市に広げていこうとし

 この回想法というのは、精神医学者のロバート・

ています。他地域から非常に注目されています。

バトラーが提唱したものです。昔のことを思い出

 ということで、中津川市は非常に力を入れてい

して言うということは、否定されることが多い。


特に若い人には。昔のことじゃだめだ、これから

うか、それを回想法でやっていこうとしているの

どうするかが問題であって、そんなことを言って

が恵那市です。この両方があります。

いてはだめだというのです。が、昔のことを思い 出すこと自体が高齢になればなるほど自然であっ て、自然に昔のことを思い出すことが、脳をもう 一度活性化するということを見出したわけです。 悩みからも脱することができる。回想法には 2 種類あります。治療で使う個人個人でやるものも ありますが、地域回想法というのは、グループ、 8 人や 10 人ぐらいの単位で、地域の中で手軽に やる、8 回とか 10 回とかやります。地域回想法 をやって昔のことを思い出すということは、心を

 回想法ではリーダーを養成します。そして地域

開く。それが人と人を結びつけて、結びつけるこ

回想法をしていきます。非常に熱心な方が多いで

とが地域を結んでいくものになるということを野

す。明智町の大正村の一角に、回想法センターと

村豊子さんという方が言われました。 「時をつな

いうのを持っています。大正村の一つの建物に

ぐ、人をつなぐ、地域をつなぐ」 。ですから回想

なっています。この中で、古い建物、大塩医院を

することは地域をつなぐことにもなるということ

改造したものですが、ここでいろいろなスクール

です。脳の活性法というのはいろいろやられてい

をやっています。ここには昔の生活道具、農業の

ますが、そういう点において回想法というのは非

道具がいっぱい飾ってあり、タイムスリップした

常にすぐれていると思います。

感じがします。それを利用しながらやっています。 ここを 8 回、2 カ月ぐらいで卒業します。卒業の とき修了生演劇をやります。「寛一お宮」とか、 昔の生活をやったりしています。とても楽しそう です。もう一つ重要なことは、ここで修了した人 たちが、これを社会的に貢献していこうと、社会 貢献グループ、元気会というのに入ります。する

 高齢者自身による介護予防推進のための地域 ネットワークに関する調査研究事業。地域ネット ワークを作るんですが、中津川市の場合には、認 知症になった人たちをどう支えていくかという ネットワークを作ろうとしている。これは、介護 予防をしていくときに地域ネットワークをどう使

27


と、子どもたちに今までの生活や歴史を伝えてい

と同時に、ほとんど後を追うようにこの方が亡く

く。そのほか、いろいろな社会的な奉仕活動もす

なったのです。ですから、私はこの人を良く知っ

る。社会にかかわる、地域づくりにかかわってい

ていますが、この恋心は私たちが考えるようなも

くというのがここから生まれてきます。本当に非

のではなくて、だんなさんに対する恋心を昔を思

常に元気がいいです。

い出しながら書いてあった。亡くなってからこれ が出たんです。  やはり川柳で笑ったり感動したりすることが認 知症予防には非常に大事だと思います。

 そのほか、恵那市では認知症予防を考えるシン ポジウムなど、いろいろなことをしています。シ ンポジウムをやって講演するのはよくあります

28

が、川柳を募集しています。これが大変人気があ

 回想法についてもう少しだけ話します。地域回

ります。もう 2 回ほどやりましたが、健やかに

想法を支持する理由。これは私の考えです。井上

いつまでも元気で暮らす秘訣ということで、川柳

ひさしが言った言葉です。「昔の農村への帰郷は

を募集して、300 も来ました。その中から、こ

忘れ物を探しに行くことであり、幼い日の自分と

れが優秀とか、賞を決め、講演とパネルディス

向かい合うことである」。心の帰郷というのがど

カッションの間にやりました。最優秀賞は、「笑

んなに大事なものかということを井上ひさしは

いの和 昔話で気も若く」 。回想法を意識してい

はっきりと言っています。私の恩師、佐久総合病

ます。審査委員長賞というのを特別に後から作り

院の若月俊一先生は「高齢者を大事にしてくださ

ました。朝日新聞の論説委員が委員長です。「ほ

い。それには高齢者が歩んできた人生を評価して

のぼのといくつになっても恋心」 。85 歳の女の方

あげてください」と言っています。人生に共感す

です。これには私もみんなもびっくりしました。

ることが高齢者ケアの基本であるということを説

恋心、ほのぼのと、というのはなかなか今の人に

かれたときの言葉です。高齢者にとってそんなに

は分からないんじゃないかというのが委員長の発

嬉しいことはないと。評価してもらうことです。

言でした。上矢作町の人のものです。それで私は

私は物忘れ外来をやっていますが、心の疎通とい

すぐに分かりました。恋心は何かというと、85

うのは、ほとんど回想法から入っています。昔の

歳ですよ、それは、自分のだんなさんに対する恋

生活の話から入ります。私は幸いにして山の中で

心です。だんなさんはもう 20 年もずっと寝たき

生まれ育ったということもありますし、農業も

りだったのです。そして、だんなさんが亡くなる

やってきていますので、そういう話から入ると通


じるようになる。そうすると認知症外来が進むよ

認知症への対応をするということを恵那医師会は

うになります。2 回目、3 回目ごろになると、そ

始めました。認知症相談医の役割の中で、地域の

の話を楽しみだけで来てくれる人もある。先生に

ケアシステムを支え、認知症になっても安心して

診てもらいに来たとは言わない。先生の顔を見に

暮らせる地域づくりへの積極的な参画、ここが医

来たという。あるいは先生と話をしに来たと言っ

師会として欠けていました。ですから、みまもり

てくれる。その言葉は私にとって非常に嬉しいこ

のわでも回想法でも、もっと積極的に参加して地

とですし、診察が終わったときに、 「先生もこれ

域づくりにかかわっていく。それが地域医療とい

から体を大事にしておくれんさい」 と言われると、

うものだと思います。地域づくりの役に立つとい

どっちが医者だかよく分からなくなります。

うのが地域医療の根幹だと思います。

 そのほか、回想法というのは、2 人以上集まれ ばできますし、師勝町、現北名古屋市でまちを上 げて取り組んでいます。その有効性、まちづくり はそこで証明されています。実にいきいきとした 町ができています。そのほか、認知症の予防、ケ アの最も適した場として、農山村は一番だろうと 思いますし、そこでのケアは最適だろうと思いま す。地域回想法は地域に根付くと考えています。 恵那医師会の取り組み

 非常に有名な方々を招いて 4 回研修会をしま した。認知症について、診断について、連携をど うするか、学びました。今後は年に 2 回ずつ研 修を続けていきます。

 恵那医師会認定認知症相談医、これにどうかか わっているか。恵那医師会では、対応力向上研修 という国の進めるものを毎年やってきましたが、 これではだめだと、認知症がどんどん増えていく

 ほかには、この地域では介護保険シンポジウム

中では、かかりつけ医が積極的に認知症にかかわ

をやり、今度第 12 回になります。最初は介護保

るという意味で、 認知症相談医という制度を設け、

険のことでしたが、次第に介護になり、現在では

認定することにしました。そして、本当に地域の

認知症や地域力のことになって、熱心にやってい

29


ます。全国的に注目されています。継続は力なり ということです。本間昭先生は、 「継続は力なり」 は確かだけど、このように継続してどのように地 域が変わったかということでないとだめだと非常 に厳しいことを言われました。私もその通りだと 思います。継続だけではだめで、これがどう地域 を変えていくかということが一番大事です。

 これがシンポジウムのときのテーマです。最初 は介護保険、介護についてです。それが地域で支 えるということになり、最近は介護の地域力とい うことを言われるようになっています。それから、 病気は認知症に移っています。連続で来ています。 今度 10 月 2 日に中津川文化会館でやりますので  最後に、今日は特別にこれを出しました。中津

ぜひ皆さん参加してください。

川市みまもりのわ演劇。中津川市の職員が中心に なって、認知症サポーターの劇をやったんです。 恵那文化センターでやりました。私が午前中に行 くとリハーサルをやっていました。ところがみん な台本を持っていて台詞が全然覚わっていない。 これはだめだと思い、少なくとも台本ぐらいは外 さなきゃと注文を付けた。それから練習をして午 後やったんです。一番ハラハラしていたのは、今 日出席している大山市長です。 席で見ておられて、

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自分のところの職員がやることだからハラハラし

 その他の取り組みでは、認知症連絡会が恵那市

ていました。確かにハラハラしましたが、まあま

でも始まり、病院や事業所、地域包括支援センター

あでした。ところが、まあまあいったから良かっ

など多職種からなる学習会を中心にして、地域で

たと胸をなでおろしてみえましたが、後からこれ

どう支えていくかという具体的な例についての勉

ほどいい評判になることは今までの演劇にはない

強会も始まってきています。歯科医師会の皆さん

ぐらいでした。それは、下手なら下手なりに良く

も口腔ケアと認知症とのかかわりに取り組む。薬

分かったということです。 言い直したりして。もっ

剤師会もです。薬が増えてきており、どのように

と良かったのは、これで認知症サポーターになる

薬を飲ませるかということも、認知症の方を持つ

自信がついたと。こんな人がサポーターなら、私

家族には一番大変なところです。こういう取り組

でもなれると。

みが出ています。


まとめです。これから認知症のケアはどうなっ

くてみえませんが、雑誌で、先生は、「2、3回

ていくか。今までは認知症の人のために、してあ

お茶を飲み肩の凝らない話をして人間の信頼関係

げるケア。サラサドウダンで包んでいこうという

を作ることから始めましょう」という話、ゆっく

ものでした。これも非常に、最も大事なことだ

り急げ、という言葉だと思いますが、そうして取

と思いますが、もう一つ目標があるとすると、認

り組んでいこうと言われたんです。認知症になっ

知症の人とともに歩むケアが本当だろうと思いま

ても安心して暮らせるまちづくりはまだ始まった

す。そしてまちづくりをする。ですから、まちづ

ばかりです。島崎藤村生誕の地中津川の認知症ケ

くりのためにする、ともに歩むケア、まちづくり

アの、まさに夜明け前です。それを結びとしたい

をしていくことがこれから非常に大事なことで

と思います。

す。今度のシンポジウムも、やはり、認知症の人 とともに歩むまちづくりというのがサブテーマに なりました。ともに、というのは非常に難しいと ころですが、 これが本当のケアになると思います。 私は長野県の佐久総合病院におりましたが、あそ こは 60 年以上、 「農民とともに」というのがテー マです。今では「住民とともに」という言葉を使 いますが、そのことを若月俊一先生は……佐久病 院は酒病院といわれるぐらいよく酒を飲むので ……酒を飲んだときに言われました。 「農民とと

 こういう本が岩波書店から出ました。今話した

もにというのは、一言で言うと農民の心になるこ

ことがほとんど出ています。5 月に出版しました。

とだ」と喝破されました。

1600 円です。ぜひ読んでいただきたい。介護の

 中津川市や恵那市の取り組みは非常に進んだ形

シンポジウムでも売っています。現在全国で絶賛

で行われています。そして、恵那医師会がそれに

発売中、ベストセラー候補になっているとかいな

かかわって、さらに医療が入ってやっていこうと

いとか。ぜひ買って読んでください。

している段階です。これは雑誌から取ったもので

 長い間ご清聴ありがとうございました。

す。今日は恵那医師会長の古橋先生はご都合が悪

31


講演

地域で医師を育てる

5 吉村 学

さと

揖斐郡北西部地域医療センター山びこの郷センター長

 皆さんこんにちは。大分お疲れのようです。大

はあんまり知らないんじゃない?」「確かにね。

島先生の名調子の後でやりにくいんですががん

でも最近制度が変わったんだよ、田舎に行かない

ばってやりたいと思います。写真が多いのでくだ

といけないんだよ。大学生も大学によって違うん

けて聞いていただけるといいと思います。

だよ」っていう話をしました。  今日の発表の内容は、何で私が揖斐の地域で 13 年前から医学生、研修医を教えるようになっ たかとか、どんなことが起きていたか、いいこと も悪いこともつらいことも、あと、何かいいこと があったのか、今はどうなのかについて、ざっく ばらんにお話しします。

 私は岐阜県の中津川の反対にある西の端、揖斐 川の上流の揖斐川町というところから来ました。 そこに診療所と老人保健施設があり、そこに赴任 して 13 年になります。もともと鹿児島県生まれ で岐阜とは縁もゆかりもなかったのですが、地域 医療でここに赴任しています。  今週こういうお題をいただいてカミサンと話を

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したんです。カミサンは、 「お医者さんって大学

 平成 10 年に赴任したとき、上司から、「先生、

病院で教育を受けるんじゃないの?」と。「そう

来週から医学生来るからよろしく」と。「えー?

だね、講義も実習も大学が多いね」 「今日の話で、

 聞いてないです。どっからですか?」と。いわ

なんで地域で医者を育てるっていう題なの? し

ゆるむちゃぶり。準備なしに始まりました。実際

かも田舎で、なんでそんなことになったの。住民

は、手探りでやっていました。もちろんほかの先


いただきました。テーラー先生は、アメリカの家 庭医療学会を立ち上げた先生で、ニューヨークの 田舎で 13 年間一人で診療されていて、その後大 学の先生になったのです。

生方と同じように診療や往診をしながらプラスア ルファで学生を教えるので、見学中心に組み立て ました。立ち地蔵です。ずっと立っているんです。 ずっと診療を見られていると、学生は大体そのう ち意識を失って、 立ったまま寝る。お互い辛いし、

 いろいろな先生たちに一緒に来ていただいて、

中には患者さんが「おい大丈夫か」と。これはま

アメリカの僻地でやっている先生たちと往診をし

ずいと作戦を変更することにしました。なんかや

ました。これは、息子さんにこれを食えといわれ

らせるといいのかなと思いました。あるいは、僕

て一緒に食っている姿です。一緒に往診すると、

の視野から消えて、訪問看護師さんについていっ

日本もアメリカの田舎の患者さんも変わらんね、

てと。

医者の言うことをきかんな、と意気投合しました。  そういう先生たちから言われたアドバイスは、 「彼らをお客さん扱いにしないでやれ、チームの 一員として何か役割と責任を持たせるといい、い ろいろ教えすぎない、まず彼らがどんなことを やりたいのかをよく質問してその答えを待ちな さい、答えを言うまで 17 秒ぐらい待て」と。17 秒というと結構な時間です。それは訓練しないと いけません。そのころは、非常に教育や研修で仕 事中毒みたいになっていて、バランス考えろと。

 よく考えてみると、医者としての訓練は受けた

「嫁さん機嫌いいか」「ちょっとやばいです」と、

んですが、教えるということの役割を勉強したこ

バランスを取れというアドバイスをいただきまし

とはなかったので、2000 年ぐらいに、うちのボ

た。

スの山田のつてで、アメリカの有名な先生をお呼

 よく考えると診療所、センターのスタッフには、

びして、揖斐で、田舎でどうやって医学生、研

あまり教育をするということを説明していなかっ

修医を教えるかというワークショップをやりまし

たし、何より患者さんたちが、「今日は山田先生

た。僕からすると目からうろこで、資料も経験も

に診てもらいたかったけど、学生さんが出てきた

33


34

んだよね、どうなっとんの?」とか、議員さんか

 あとは、いろいろな怪我や、いろんな患者さん

ら、 「点滴をしてほしかったんだけど若い先生に

が来ますので、患者さんにお願いして、ぜひ縫わ

要らんと言われた、どうなっとんじゃ」とか、結

せてくれんかとか、診てもらってよろしいか、と、

構怒られました。説明をしてなかったと反省しま

OKが出そうな患者さんからお願いをして、でき

した。夜な夜な地域に行っていろんな会で説明を

るだけやらせるようにしています。有り難いこと

することにしました。自衛消防団の練習の日に抱

に、今では、どんどん俺の腹を診てくれ、胸を診

き合わせでもやりました。

てくれ、どんどん縫っていいよ、みたいな感じで

 実際にどんな研修をするか。とにかく患者さん

やってくださいます。あとは、耳の遠い高齢者の

の家に連れていきます。往診に行って、認知症の

方も、ぜひチャレンジしてとか。学生、研修医で

おばあさんがいて、介護者がいます。学生をここ

すが、とにかく実際の患者さんを診てもらうとい

に置き去りにします。 「じゃあ、ちょっと介護者、

うことをできるだけ根回しをしています。

おばあちゃんとお話ししておいて。2 時間ぐらい

 これは訪問診療で行っているときです。今年の

後に迎えに来るからよろしく」 と。 「え~? しゃ

4 月です。末期の肝不全で、おなかに水がたまり

べったことがないんですけど」 。 高齢者としゃべっ

ます。往診に行くたびにお水を抜いてということ

たことがない医学生って結構いるんです。核家族

をやります。左から、卒後 4 年目の後期研修医、

で。そういうのも置き去り実習と称してやってい

真ん中が卒後 1 年目、右が 6 年生、ちょっとず

ます。

つ学年が違う人たちを一緒に預かってやっていま


く 1 分で 70 人ぐらい寝るというのですが、これ はずっとみんな起きていたそうです。揖斐川チャ ンネルというので放映されましたが、結構受けて ました。認知症に対する理解が増えて、翌日外来 に、 「アクセプトくれ」とかいろんな人が出てきて、 ちょっと困ったんですけど。とにかく学生も戦力 にするということです。これは保健師さんや教育 委員会の人に非常に喜んでいただきました。 す。こういうのを「屋根瓦で教える」と言います。 ちょっと上の先輩に教えてもらう。僕は 20 年選 手なので、学生はやっぱりなかなか聞きにくいの で、ちょっと上の人がいると、教えることで勉強 になります。

 あとは、センターのミッションにもあるよう に、いろいろな連携が取れる医者を育ててくれと いう、ケアマネや保健師さんからの声もすごく多 いんです。実際、医師会の偉い先生方は怖くて連 携が取れないとう裏話があります。これからの新 しい医者はもっと連携が取れる人を育ててくれと  あとは、認知症の講演会、町から依頼を受けた

いうことなので、たまたま私たちのところは、看

ら、行くぞ行くぞと。これは、講演じゃ面白くな

護、リハビリ、介護、医者の学校から来ているの

いから寸劇でやろうと、そのとき来ていた学生、

で、それぞれ別々のカリキュラムがあってそれが

10 人ぐらい、名古屋大学、岐阜大学、三重大学、

5 時ぐらいに終わった後に、ごちゃまぜの研修会

岐阜県立看護大学の連中を集めて、 行ったんです。

をやります。これは 12 回、200 人ぐらいもうや

「認知症の患者さん、お嫁さん、地区の住民が困っ

りました。これは受けています。やっぱり連携が

ている様子、財布を探すシナリオで」 「先生シナ

大事だよねということ、IPE、インター・プロ

リオどこにあるんですか」 「いや、アドリブで」

フェッショナル・エデュケーションをどんどんや

「えーっ?」と。やったら、高齢者が 200 人ぐら

る必要があると思います。

いフロアにいたんです、寿大学といいますが、い

 この写真も患者さんの許可をいただいています

つもの大学の講義だと、開始 5 分ぐらいで 8 割

が、真ん中にいる 42 歳の若年性アルツハイマー

寝るというデータがあって、町長の話が一番早

のお医者さんのおうちに往診に行っているんです

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が、月に 1 回大学病院に専門医の診療を受けに 行くんです。それが結構大変で、車椅子を車に乗 せて行くので、ぜひ一緒に行けと。家族の許可を 得て大学病院に行って受け付けして診察をして、 かっぱ寿司に寄って家に帰るという、一日がかり なんです。彼らは普段大学病院で、向こう側で研 修しているのが、 サッカーで言うとアウェイ状態、 自分のホームなのにアウェイの扱いで、大変だっ たなあとか。このお父さん、お母さんは非常に理

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解があって、先生、どんどん医学生や看護学生を

 これは私の師匠の言葉です。地域医療をやると

連れてきてください、こういう現場を見て学んで

きに大事なものが身に付くには、いくら講義を聴

くださいと。一番勉強になるのは、妹さんの子ど

いてもだめで、とにかく現地に放り投げる、地域

もさんが 4 人みえて、彼らの態度が一番勉強に

医療の地も知らなくていいから、まずそこでやっ

なるんです。障害を持ってらっしゃるおじさんに

て、何が本質的に大事なのかを勉強しながら、最

対して「マコ兄」と言って、リスペクトのまなざ

初は態度を学ぶことが大事なんじゃないか、その

しで、介助も手伝ったり、DSをやったり、障害

次に技術、知識を学ぶことが大事なんじゃない

を障害と思ってなくて接している姿に、医学生が

かと。学校では、知識、技能、態度という感じで

非常に学びました。大事な先生でした。

行きますが、実際現場に出てみると、ケアマネさ

 そういったいろんな経験をして、毎日夕方 6

んとしっかり連絡を取ったり、教育委員会からオ

時か 6 時半ぐらいから一日を振り返ることをやっ

ファーがあったらすぐはせ参じるとか、あるいは、

ています。これは東京の病院と、名古屋医療セン

後方病院にお世話になるときにはちゃんと頭を下

ターと、岐阜大学、あと地域学の 3 年生の人た

げて紹介状を持っていけとか、そういったことを

ちをごちゃまぜにして振り返りをやっています。

学ぶには、いろんな先生たちがいらっしゃるそう

今日うまくいったこと、辛かったこと、今の患者

いう後姿を見て学ばないといけないんじゃないか

の明日の作戦というのを 1 人ずつ書かせてディ

ということを言っていました。

スカッションをやります。


13 年を振り返ってみて、教育研修生を教える

 この 13 年間やってみて、一番良かったのは、

ということを分析すると、最初は、スタッフも患

自分が勉強するようになったコトです。最初は私

者さんも住民も、みんな不安感が強かった。聞い

と親分と 2 人だけでマンネリ化していたんです

てないとか、どんなんやとか。だけど、だんだん、

けど、学生たちがいると、やっぱりしゃきっとし

「よくがんばっている」とか。学生たちにも、往

ないといけない、うんちくをちょっと言わないと

診が終わった患者さんにはお礼の手紙を書きなさ

いけない、と勉強するようになった。あとはスタッ

いとか、亡くなった後にはちゃんと墓参りに行き

フがいきいきするようになりました。あとは、患

なさいといことを言うと、だんだん、 「立派な先

者さん、家族が、送迎やお手紙、やりとりを非常

生になりや」とか、 「もし良かったら揖斐に戻っ

に喜んでくださいました。保健師さんも喜びまし

て来い」 という話をしてくださるんです。 そういっ

た。ケアマネさんが実は一番喜びました。なんで

たことが非常に心に響くみたいで、今では、どん

かというと、詳細なレポートを作ってくれるんで

どんやってくれ、この地域を盛り上げてくれ、ぜ

す。年金がいくらかとか、嫁姑関係こんなに悪い

ひ帰って来いよ、この地域に、と、結構皆さん言っ

とか、昔は駅員をしていたとか、満州に行ってい

てくださるんです。僕は頼んでないんですけど。

たとか、そういう情報を根掘り葉掘り聞いて、そ

勝手にそういう指導をしてらっしゃるのがすばら

れがレポートになるので、モニタリングに使える

しいと思います。

とか。あと、人材確保が実はできました。大体 13 年間で 500 人以上受け入れて、医学生研修で 5 人揖斐川町に帰ってきました。100 人教えて 1 人。このパーセントがいいか悪いかは分かりませ んが、受け入れないことには始まりません。今一 緒に働いている子は前に来た子達です。あと、理 学療法士は 20 人受け入れると 1 人就職する。看 護師さんは 50 人に 1 人ぐらいです。  そういったことで、地域医療に携わる人材は、 自前でやらないといけない。そのためには、まず は種を植えないことには始まりません。

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これは私が書いた絵です。地域の勉強の場所の

見返りを求めずに、その子たちが行ったところで

中心は、患者さんの家が真ん中にある。センター

がんばってくれればそれでいいんじゃないか。そ

を中心においていたらうまくいかなかった。地域

ういう広い心で接しないといけないんじゃないか

全体を学校に捉えて、先生方も先ほどの小学生み

な。とにかく種を蒔いて耕して水をかける作業を、

たいな、彼らもすばらしい先生をしてくださるの

医者だけじゃなくて、みんなでやるといいことが

で、全員野球のように全員で教える、みんなで育

あるかもね」と。

てるということをやるといいと思います。

 ご清聴ありがとうございました。

 家内との会話です。 「地域で研修した医学生や 研修医はどう変わるの?」 「なんかすごく変わる んだよね。多分いろいろやらせてもらえることと か、スタッフとして扱われることとか、いろんな 学年の人がいることとか、患者さん、家族さんか ら声をかけてもらえるのがいいんじゃないかな」

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「それで揖斐に来てくれるといいけどね」「まあ なかなかそうはいかんな。ペイ・フォワード……


総合討論

司会 佐藤 寿一 名古屋大学医学部総合診療科講師 田立 三博 中津川市地域総合医療センター事務局長

■田立(司会)  皆さんこんにちは。おなかがす

恵那医師会認知症サポート医・大島先生、揖斐郡

いてきたところですが、あと 30 分ほど耳を傾け

北西部地域医療センター長・吉村先生です。先生

てください。

方、よろしくお願いいたします。

 シンポジストの皆様、大変熱のこもったお話を

 それでは全体討論に入りたいと思います。まず

いただきましてありがとうございました。これよ

は、シンポジストの先生の間で、ご質問やご意見

り、総合討論に入りたいと思います。私は司会を

などがございましたらお願いします。

務めます中津川市地域総合医療センターの田立

■高山 吉村先生にお伺いします。先生のご発表

と申します。よろしくお願いいたします。私のお

に大変感銘を受けました。非常にいい研修をやっ

隣が、先ほどご講演をいただきました名古屋大学

てみえると思いました。私は実は先生のところに

医学部総合診療科の佐藤先生です。先生にはコー

昔行ったことがあるんです。で、見てきましたが、

ディネーター的役割も兼ねて、総合討論の司会も

決して、中津川ほど都会じゃないです。はっきり

お願いいたします。先生、よろしくお願いいたし

申し上げて本当に過疎なところです。でも、そこ

ます。

に全国から来てくれる。なぜ来てくれるのか。も

 それでは改めて、シンポジストの先生方をご紹

ちろん来て研修を受ければ、これはいいんだなと

介いたします。客席から見て、ステージの左から

思うと思いますが、そこまで来ていただけるには、

ご紹介させていただきます。中津川市民病院長で

どうすればいいのでしょうか。

あり、中津川市地域総合医療センター長の浅野先

■吉村 ありがとうございます。最初はうちのボ

生、坂下病院長・高山先生、上矢作病院名誉院長・

スと多分伴先生や津田先生とのつながりで、そこ

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から少しずつ学生さんのつながりが始まって、最

■田立(司会)  ほかに、よろしいでしょうか。

初はチョロチョロとした流れだったと思います。

では佐藤先生、お願いします。

もう一つは学生さんたちの評価、たぶん、口コミ

■佐藤(司会)  高山先生のお話を聞いて、地域

というか、こんな面白いことがあったよというこ

の包括ケアということが日本の医療には本当に求

とが少しずつつながっていって、学生や研修医を

められていると思うんですが、実際に展開するに

出す側の先生たちで、あそこならいいんじゃない

はいろいろな問題があったり、特に都会では難し

かな、という。本当に、地域に投げるといっても

かったりします。その中で、坂下では非常にいい

どこに投げていいかよく分かんないというのが病

取り組みが行われていて、今後はそれを中津川に

院の先生方の本音だと思うので、そういったこと

広げていきたいと言っておられます。中津川市全

で、いろいろやらせたらこういう展開になったと

体に広げようとしたとき、どういったことが問題

いうことだと思います。受ける側と投げる側のコ

になったりしそうでしょうか。あるいは、どういっ

ミュニケーション、学生のフィードバックを大事

たところをケアするとうまくいくでしょうか。

にするといいのかなと思いました。

■高山 まず、行政の縦割りが問題です。皆さん お忙しいので、なかなか自分の仕事の範疇以外の ことには手を出しません。ですが、地域包括ケア を一番最初に唱えたのは私の師匠である広島県の みつぎ病院の山口先生です。山口先生は、せっか く治療して在宅に戻してもいくらも経たないうち に前より悪くなって戻ってくる、なぜだろう、と いうところから始めたんです。調べてみると、う

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■佐藤(司会) 学生の教育をお願いする側なん

ちへ帰ると寝たきりにさせてしまう。それがいけ

ですけど、 学生に、 大学の講義で何が一番面白かっ

ないということで、山口先生たちは地域へ出て行

た?と聞いてもみんな答えに困るんです。それと

くことを始めました。そこにはいろんな枠があり

違って、こういう地域医療の実習や研修に行った

ました。行政、福祉、介護の問題で。それがうま

学生にどうだったと聞くと、いくらでも良かった

くいかないので、それをなくすために考えた結果、

ことや感動したことが上がってきます。学生はそ

顔の見える関係作りをしないといけないというこ

ういった現場での医療、ケアに触れる機会を欲し

とで、当時の山口先生は、御調町の健康課の課長

ていることは間違いありません。それが分かって

に自分自身がなって、病院長と課長を兼ねて、そ

いますので、できるだけ学生にもそういう機会を

こで保健も医療も福祉も統一した形で指示できる

提供していきたいと思っている中で、どういった

ようになりました。そこから始まったと伺ってい

ところでそれがやっていけるかというのは、個々

ます。

のつながりや口コミですので、大学側としては、

 とにかく顔が見える関係を作ると、日ごろの会

こういうのができるよと言ってくれるところがた

話の中でいろいろな情報が共有できるんです。そ

くさん出てくるともっと進められるんじゃないか

ういった形を作っていくことが大事です。旧坂下

と思っています。

病院の時代は狭い自治体でしたから、すぐそう


いった関係作りができたんです。ただ、中津川市

月に立ち上げ、これから活動を広げていくという

は 8 万 5 千人ありますし、地域も広いです。こ

中で、行政とのかかわり、地域の医師会の先生方

れを作っていくとなるとなかなか大変なことで

とのかかわり、もちろん地域住民とのかかわりが

す。それには、中津川市を 4 つか 5 つのブロッ

非常に大事になってくるということです。

クに分けて、そこに地域包括ケアを展開するシス

 一つ私から浅野先生に質問させていただきま

テムを作ればもっとうまくいくと思います。その

す。先ほどの私の話の中で、医療に対する需要が

役割は中津川市の地域総合医療センターが担うべ

高まっている、住民に非常に自分の健康に対する

きです。そこで検討しながら、各ブロックに下ろ

不安が広がっている、メディアにあおられたりし

していくという形が望ましいと考えています。

て、健康なのに健康じゃないんじゃないかとか、

■田立(司会)  ありがとうございました。口コ

自分はどれぐらい安心な状態なのか、あるいは診

ミ、情報共有、あるいは地域総合医療センターの

てもらわなきゃいけないのかどうか、そういった

役割ということでお話しいただきました。佐藤先

不安を抱えておられるということがありました。

生、このあたりについて、お願いします。

それが、もし、自分の状態をよく理解していただ

■佐藤(司会) 中津川市地域総合医療センター

けるかかりつけの先生があると、非常に自分自身

のことを今お話しいただきました。実際にそこで

のことが分かって、うまく医療やケアということ

どのように行政とタイアップしてやってきている

につながりを作っていけるのではないかと思いま

かということについて、今日はそこの副センター

す。イギリスではそういったかかりつけ医制度が

長をやっておられる高橋先生が会場にみえている

あり、そこからの紹介で病院にかかるというシス

ので、具体的にそういったつながりや取り組みを

テムがあるのですが、そのあたりで、今、中津川

お話ししていただけますか。

市の取り組みはいかがですか。

■高橋 ご紹介いただきました、現在地域総合医

■浅野 中津川市はかかりつけ医制度を推進する

療センターで副センター長をしています高橋と申

という立場で話をさせていただいていますし、恵

します。現在は市民病院の総合診療科の外来と、

那医師会の先生方も、かかりつけ医でやっていく

国保川上診療所、阿木診療所の支援をさせていた

ということには、病院との関係もあって、非常に

だいています。

協力的だと思います。病院の医師が疲弊して少な

 今回の包括的なところでは、最近では、10 月

くなってきた中で、軽症の方は近くのお医者さん

に中津川市の健康医療課、それから浅野先生から

に行っていただいて、そこから紹介だったり、救

もお声をかけていただき、各地区での糖尿病の講

急の場合は責任をもって市民病院が診させていた

演会を、こちらのセンターでもかかわってさせて

だく。役割分担の意味でも、まずかかりつけ医に

いただく予定です。そちらの糖尿病の講演会は、 ドクターの講演だけではなく、栄養士さんだった り保健師さんだったり、そういったコメディカル な方にもお時間をいただいてお話をしていただき ます。 ■佐藤(司会)  ありがとうございます。今年 4

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行っていただく。実際に、夜間の救急の場合も、

全部把握しています。その中でいろいろな資料が

恵那医師会で 5 時から 10 時まで平日は恵那医師

できる。これからはかかりつけ医機能が非常に重

会の先生が自宅のクリニックで患者さんを見る態

要だと思います。

勢になっています。ぜひ住民の方は、軽い場合は

■佐藤(司会)  ありがとうございます。大病院

まずそちらに行っていただきたい。かかりつけ医

で行われている医療はどうもそういった問題を多

や診療所では無理だということになれば、市民病

く含んでいる。学生もそのような環境の中でしか

院へ行くという形を進めないと、すべてを市民病

勉強していない。そういったものが医療の標準か

院で診るということは現実には不可能です。これ

と思ってしまいます。本来あるべき医療というの

からそういう役割分担をしっかりしていけば、中

をみるためにも、地域にどんどん出ていってもら

津川市の医療体制もネットワークが確立されてい

わないといけないと考えています。

くと思います。

 地域総合医療ケアに対する取り組みを中津川市

■高山 今日のテーマにもなると思いますが、医

とタイアップして行い始めた中で、今度は大島先

療が分化しすぎたために、人を診る医療がなく

生にお伺いしますが、最後に宣伝しておられたあ

なっちゃったんですね。今また回帰で、伴先生の

の本、実は私も古橋医師会長からいただいて読

お話のように、もっと全体的に診ようという動き

ませていただきました。恵那医師会の取り組みが

が出てきましたが、たとえば、ある患者さんが大

具体的に書かれていて、こんなに地域の医師会は

学から戻ってきたら、 紹介状が 8 通あったんです。

やっているんだなと感動したんですが、そういっ

各科からバラバラに紹介状が来て、バラバラに薬

た中で、中津川市の行政とのつながり、実は中津

も出している。みてみると、薬のために起きてい

川の健康福祉部の方とのお話の中で、盛んに「医

る病気がいくつもあるんです。なぜこれがもっと

師会の先生方はこうした取り組みで」とおっしゃ

トータルでみれないのかと思います。おそらく、

います。非常につながりが深いのかと推測します

かかりつけ医がいればその人全体を診てくれる。

が、そのあたりはどうでしょうか。

私も高齢者の部類に入り相談係的になってきて、

■大島 私は開業はしておりませんが、恵那の医

いろいろな薬が持ってこられます。調べると本当

師会に所属して、これまでも深く関係してまいり

にその薬によって起こる病気がいくつかありま

ました。ちょっと外れるかもしれませんが、私は、

す。それをやめると症状が取れるんです。それを

地域医療がうまくいくかどうかというのは、病院

診られる医者がこれから必要だと思いますし、そ

と医師会がうまくいくかどうかがキーポイントだ

の一番の役割はかかりつけ医です。かかりつけ医

と思います。特に、病院といっても公立病院と医

は、その方の生活習慣や地域の状況、家族関係も

師会の関係です。ややもすると、どこでも多いの ですが、どうしてもトラブったりして、救急を とっても何をとってもうまくいかないというのが あります。が、恵那医師会は病院とも非常に連携 もよくうまくいっているというのが一つじゃない

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でしょうか。その証拠には、今日隣にみえる高山 先生も浅野先生も恵那医師会の理事です。私も理


事をやらせていただきました。それから市立恵那

える連携ですし、それが今の医療のいろいろなこ

病院の病院長も理事をされています。そういう点

とを活発にさせていると思います。

がうまくいくことがまず第一の条件です。

 中津川市の取り組みも恵那市の取り組みもそう

 それから、医師会はいろいろなことをしていま

ですが、結局健康を守っていく、命を守っていく

すが、さっきの介護シンポジウムでも、行政との

のは、地域を健康にしていくということになりま

連携がないとできない。それから関連介護の職種

す。ですから、地域づくり、まちづくりが非常に

との連携をする。そして住民の積極的な参加があ

大事です。医療もそこにかかっています。医療で

る。それで 12 年も続けられてきたと思いますの

も福祉でももともと住民のものです。ですから、

で、そういう連携を非常に大事にしてきたのが成

地域づくりに住民が積極的に参画することが、こ

功の要因だと思います。介護保険の関係もそうで

この医療や福祉をもっと良くしていくだろうと思

す。産業医というのがあります。50 人以下の小

います。それを最後に申し上げようと思っていて

さな工場なんかをやるのも、非常に熱を入れて取

さっき抜けてしまいました。ぜひ住民参加が行わ

り組んでいます。そういう医師会の積極的な姿勢

れてほしいと思います。

が、あのような本も出版しましたが、そういうこ

■田立(司会)  ありがとうございます。住民参

とに結びついているという気がします。

加という言葉をいただきました。

 そのほか、医師会でやっている中では、私は

 それではここで、会場の皆様方からご質問やご

10 何年前にアンケートを取ったことがありまし

意見をいただきたいと思います。お手を挙げてい

て、大体医師というのは、いろいろな職種との連

ただけばマイクを持って伺います。どなたか、ご

携というのがなかなかうまくいかない。医療、保

ざいますか。

健、福祉の連携と枕詞のごとく最初は言うんだけ

■市民 今日は非常に貴重なシンポジウムを中津

ど、後の実践が全然ないというのが非常に多いの

川で聞けて大変嬉しく思っています。私は中津川

です。何が連携を阻害しているかというと、高山

で城山病院をやっています。今日は、地域の医療

先生が言われたように、縦割り行政というのが一

の活性化のモデルということで、新たに名大の力

つあります。もう一つは、医師の側の姿勢という

をいただきこんなことが進むということで期待を

のがある。アンケートでは、ほかの職種からこん

して参ったわけですが、もっとたくさんの方がみ

な言葉がありました。 「医師と連携が取れない。

えて、医者が少ないと騒いでいた議員さんや経済

医者はおそがい」と。 「おそがい」ようじゃ全然

界の方もどっと押し寄せてもっと大きな会になっ

だめです。それが、恵那では「おそがい」じゃな

てくれたら良かったと思っています。

くなってきています。そういったことは、顔の見

 その中で今日は、高山先生が、慢性期の病気を 通して地域のネットワークに非常にがんばってみ えることと、大島先生が認知症の観点から地域の ネットワークを目指していることを、より詳しく 知りました。その中で、高山先生から縦割りとい う言葉が出ました。私も非常にそう思っています。 たとえば、中津川市と恵那市で人口が 13 万ちょっ

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とです。その中で、 高山先生がやってみえること、

づかない面がありますが、こういった医師会は全

大島先生がやってみえることは同じ方向を向いて

国にあまりないんです。今度医師も入って行政も

います。患者さんも同じ方が重なっているかもし

入って大学も入って地域総合医療センターができ

れない。社会福祉協議会も、高齢支援課も、地域

たのは、一つの動きで、日本全国どこにもない。

包括支援センターも、みんな同じ方向を向いてい

これがうまく動き出したら、まさに日本のモデル

る。これも大きな意味では縦割りだと思います。

になって、これからのあり方を示すことができる

これが一つの大きな柱になるということが、せめ

し、中津川市を全国に発信できると感じています。

て人口 10 万のところだったらできるんじゃない

 もう一つ、私も坂下に来て 27 年になりますが、

か、そういう可能性があるんじゃないかと思いま

皆さんの健康を守るにはどうしたらいいかという

す。これが 2030 年問題、2050 年問題、強いて

ことを考え続けてきて、最終的には生活環境を守

言えば、中津川市にリニアの駅ができることにな

ること、経済を活性化すること、文化を高めるこ

ると限られたお金の中でどうしても必要かという

と、この 3 つがなければ医療なんかやっていけ

ことは、おのおのがいいことをやっていても結局

ない、健康を守れないということを感じました。

お金が無駄になってしまう。高山先生、坂下、大

この 3 つを守るには何かというと、まさに行政

島先生、社会福祉協議会がやってみえることが大

の地域づくりです。そういった意味では、私ども

きな柱となって、別々にやらなければ、もっとす

は医療だけではなくて、行政の方々と手を取り

ごいことになる。難しいとは思うんですが、そん

合って進んでいかなければいけないと感じていま

なことができるとすばらしいと思っているですけ

す。

ど、いかがでしょうか。

■田立(司会)  ありがとうございました。

■田立(司会)  ありがとうございました。ただ

 ほかに御質問ございますか。ないようでござい

いまのご質問に対して、高山先生、お願いします。

ますので、地域医療活性化モデルを目指してとい

■高山 先ほど大島先生が触れられましたが、私

うテーマでシンポジウムを進めてきましたが、シ

は国民健康保険の関係で全国のいろいろなところ

ンポジストの先生方から、将来に向けてのキー

を見る機会がありました。認知症の取り組みにし

ワード、これが大事だというところをお願いしま

ても、北海道の帯広の本別町が 10 数年前から取

す。

り組んでいます。あるいは高知県の十和村という

 浅野先生からお願いします。

田舎でも取り組んでいました。ただ、そういった

■浅野 地域医療にはネットワークでやっていく

中で感じたのは、なかなか、自治体がやってい

ということと、ほかの方も言われましたが、行政、

て医療がどこにいるのか分からないところがあ

医師会、住民、いろんな方が連携してやっていか

る。あるいは、医療だけが取り組んでいて自治体

ないとなかなか良くなっていかないと思います。

の姿が見えない。ただ、私どもは気づいていませ

住民の方もぜひ関心を持って協力していただきた

んが、中津川市、恵那市は幸せだと思います。介

いと思います。

護保険のシンポジウムもそうですし、認知症の取

■田立(司会)  高山先生。

り組みもそうですが、医療がちゃんと入ってきて

■高山 先ほどからずっと言っていますが、浅野

いるんです。恵那医師会の会員の方はなかなか気

先生と同じで、連携に尽きると思います。今、さ


らにそれを進めて統合ということを考えないとい

方からキーワードをいただき、目指す地域医療の

けないと思いますし、あくまでも主体は住民、市

あり方がさらに見えてきたような気がします。も

民です。市民の方にとってどういった医療が必要

う少しお話をお聞きしたいと思いますが、時間が

なのかをみんなで考えていくべきだろうと思いま

少し過ぎたようです。ここで佐藤先生にまとめを

す。

お願いいたします。

■田立(司会)  大島先生。

 佐藤先生、お願いします。

■大島 認知症にかかわっている関係で認知症に

■佐藤(司会)  我々名古屋大学総合診療科は、

ついて話しましたが、病気は認知症だけじゃあり

総合的な医療を実践する場、あるいはそれを学ぶ

ません。ほかのものもたくさんあります。寝たき

場を求めていたわけですが、実はいろいろな病院

りになるものから、脳卒中、心臓の病気などたく

からぜひうちに来てくれないかというオファーを

さんあります。が、認知症のケアが本当にできる

いただいていました。我々は愛知県でここは岐阜

ようになれば、ほかの疾患についてもケアができ

県ですし、もともと東濃地域は名大病院との関連

るようになるんじゃないか。それにつながってい

が非常に深いところだったとはいえ、今回なぜこ

くんじゃないかと思っていまして、そういう点で

こで一緒にやっていけることになったかという

は認知症のケアに力を入れていくことが、本当に

ことをお話しします。一つは、ほかの病院は、総

ケアを発展させていくのではないかと思っていま

合医療のできる医者を派遣してほしいというオ

す。

ファーだったんですが、中津川は違ったんです。

■田立(司会)  吉村先生。

この地域の医療を活性化していく、再生していく

■吉村 私はよそ者ですが、この地域はすばらし

にはどういう取り組みが必要なのかということで

いと傍から見て思いました。医療、福祉関係の人

お話をいただき、それをずっと一緒に考えてきた

材をどうゲットするかというのは、やはり地道に

のです。その結果、実際にここでそのような取り

種蒔きをしないといけないと思います。それは専

組みをやっていきましょうということで、今回地

門職だけに任せていてはだめで、やはり住民も耕

域総合医療センターを立ち上げさせていただくこ

したり水をやったり声をかけたりということをや

とができました。実際に活動を始めてみると、ま

らないといけないと思いました。すばらしい先生

た中津川市民病院、坂下病院、恵那医師会が非常

役がたくさんいらっしゃるので、両先生方を含め

にがんばっておられることがよくわかってきまし

て、背中から学ぶことのできる先生方は少ないと

た。つまり、そういった土壌がここにはしっかり

思いますし、そういうことを実践している先進的

あるということが分かって、「ああ、だから、ま

な地域がここにあるということは、学生や研修医

さにこういう地域でこそ地域医療はこれから先い

にも学ぶチャンスだと思います、これを生かさな

い方向に向かっていくのだ、そういう土壌はここ

い手はないと思います。私は西のほうでやってい

にあるんだ」と思いました。

ますが、西と東で、まだ小結ぐらいかもしれませ

 土壌はしっかりしているということですから、

んが、横綱になれるようにがんばっていきたいと

あとはしっかり種を蒔いて育てていくことが我々

思います。

に求められているところだと思います。大学側の

■田立(司会)  ありがとうございました。先生

立場で言うと、何か新しい取り組みをしてそれを

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全国に発信していくことが我々のミッションでも ありますので、そういう意味で地域医療活性化の モデルとなってそれを全国へ発信できるような、 全国の自治体がうらやましがるような事業を今後 進めていきたいと考えています。そのためにも、 住民の皆様方の土壌づくりへのご協力や、住民の 皆さんからこういったことをやってほしいという ことをアピールしていただくことが、行政を動か すことにもなりますし、我々の活動もよりやりや すくなっていくことになりますので、今後ともよ ろしくお願いいたします。  本日はシンポジストの皆様、どうもありがとう ございました。また、会場にみえた皆様、どうも ありがとうございました。 ■田立(司会) 非常に分かりやすくしっかりと まとめていただきました。ありがとうございまし た。そろそろ総合討論を閉じさせていただきたい と思います。  今日はシンポジストの皆様を初め、会場からの ご意見をいただきありがとうございました。おか げさまで有意義な会となりました。厚く御礼申し 上げます。

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Profile for 中津川市 岐阜県

中津川市の医療について考えるシンポジウム(報告書)  

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