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東墨田の町工場を再生するための モノづくりとアートづくりによるエリアの再編 -モノづくり×アートづくりの相乗効果によって墨田の技術と芸術を外部の人間に知ってもらう-

千葉大学融合理工学府創成工学科 建築学コース専攻上野研究室 修士二年

伊藤匡平


目次 1.計画背景と方針

2.対象区域の基本情報 3.対象エリアの選定 4.対象エリア周辺の分析

5.墨田区中小企業センターの分析 6.墨田区の町工場の分析 7.町工場に必要な面積 8.全体の考察

9.修士設計 10.今後の展望


1.計画背景と方針

町工場の衰退

photoAC 写真AC>人物>働く人物>No.36

わが国では「ものづくり」が衰退しつつあり、町工場には高い技術を持つ職人 が多く存在するにも拘わらずこの30年間で町工場の半数以上が廃業し、 現在でも75%は赤字経営である。


1.計画背景と方針

新しい働き方の必要性

少子高齢化社会において労働力不足 を解消するため、多くの企業で新し い働き方をする必要に迫られている。

https://www.intage.co.jp/gallery/hatarakikatakaikaku/


1.計画背景と方針

計画方針

新しい住民の移住

空き工場改修

公共施設の建設 町工場で働く人々が新しい働き方ができるよう町工場の多いエリアを再編し、 エリアに多くのにぎわいが生まれ町工場を復興することのできる提案をするこ とを方針とする。


2.対象区域の基本情報

1.墨田区の工業の概要

墨田区

墨田区の工業は9人以下の町工場が8割。印刷、金属、繊維、革の産業に特徴。 産業集積のメリットを生かした小規模企業の多彩なネットワークとスピード、 技術対応力によって顧客のニーズにこたえている。


2.対象区域の基本情報

2.墨田区の歴史

上野研究室CUSDA_企画書2017より

1654年以降の歴史をみると、墨田区は多くの災害を「ものづくり」の力で 復興してきた。加えて自然や環境にも注力した区である。


3.対象エリアの選定

東墨田荒川沿い

(図1)

(図2)

図1

図2

墨田区都市計画マスタープランより

墨田全体を俯瞰したしてみると荒川沿いの東墨田のエリアが最も町工場の多い エリアとなっている。東墨田の中でも特に北部が町工場の多いエリアとなって いる。


3.対象エリアの選定

東墨田荒川沿い

そこで荒川沿いにある緑豊かな公園を活用するため公園を中心とした、 半径200mのエリアを対象とする。


4.対象エリア周辺の分析

1.エリア中心部の敷地

公園

河川敷

大岩工業

中央の駐車場

南東には飛田製革所があり、工場の経営者の住宅が隣接している。飛田製革所のすぐ北西には 廃棄物リサイクル業のゴミ収集車の駐車場となっており、その北西には水道管のパイプを制作 している大岩工業がある。大岩工業より北西の土地は公園となっており、春には花見を楽しむ ことができる住民の憩いの場所となっている。


4.対象エリア周辺の分析

2.建物種別

住商一体集合住宅

集合住宅

住宅街

路地裏の戸建て住宅

エリアの北西から南東にかけて、二分すると上半分は荒川とその河川敷となっている。下半分 は主に工場と住宅地で構成されている。100m以内のエリアでは、エリア中心部の敷地の南 側と西側に住宅が多く存在しており、100m~200m以内のエリアでは、エリアの北西か ら南東にかけて住宅が多く分布しており、その多くが集合住宅となっている。また、住商一体 のたてものは非常に少ないものとなっていた。


4.対象エリア周辺の分析

3.工場種別

リサイクル施設

工場(機械)

工場(化学)

リサイクル施設

エリア南西側に油脂が多く集中しており、油脂産業によって作られるモノには牛脂、飼育用豚油、せっけんなど様々 であるが、基本的には廃油をリサイクルし、新しい製品へと作り上げていることがわかった。また、油脂とは別に金 属くずや、革のくずをリサイクルする廃棄物リサイクル業を行っている工場が南東側に2つ、西側に1つあり、南東 側の廃棄物リサイクル施設では向かいの油脂(廃油リサイクル施設)と合わせて町工場で出たごみを再利用するための 重要な拠点となっていた。エリアの南東側と南西側には革製品製造業が、南側、南西側にゴム・スポンジ・ウレタン や化学が集中していることがわかった。


4.対象エリア周辺の分析

4.老朽化した建物と空き家のマッピング

老朽化の激しい木造の工場

空き地と構造がむき出しの木造工場

※1

住宅街

路地裏の戸建て住宅

主要となる対象敷地意外に設計可能な場所を探るため、老朽化した建物をマッピングした。エ リア全体として老朽化した建物が多く、構造がむき出しの木造の工場など老朽化の程度が甚だ しいものもあった。特に老朽化が進んでいるものはエリアの中心部から100mの地点に多 かった。また、設計可能な空き地はエリアの西側に多く、南側に点在していた。 ※1老朽化した建物(大)は構造が見え、トタンなど壁が錆びたり、著しく劣化しているもの


4.対象エリア周辺の分析

5.エリア中心部の敷地・考察

公園

河川敷

大岩工業

中央の駐車場

設計をするにあたって、川が重要であり、北東側の河川敷を親水空間として利用することが考えられる。 また、東墨田は地面が低く、荒川に近い。水害のリスクが高いにも関わらず、避難できる場所がないた め、防災拠点が必要である。


4.対象エリア周辺の分析

5.建物種別・考察

住商一体集合住宅

集合住宅

住宅街

路地裏の戸建て住宅

さらに、エリアのほとんどを町工場が占めている一方で、エリア中心部の敷地 の北西から南にかけて住宅が多くなっており、住民用の道を作ることでエリア 内のコミュニティが活発になると考える。


4.対象エリア周辺の分析

5.工場種別・考察

リサイクル施設

工場(機械)

工場(化学)

リサイクル施設

工場種別では油脂、金属、革、廃棄リサイクル業、ゴム・スポンジ・ウレタン などに特徴があり、各種別ごとの動線を考慮にいれた設計をする必要がある。 また、廃棄物リサイクル業は他のエリアにはない特徴であり、リサイクルを街 の魅力として押し出すことがエリアの魅力につながると考える。


4.対象エリア周辺の分析

5.老朽化した建物と空き家のマッピング・考察

老朽化の激しい木造の工場

空き地と構造がむき出しの木造工場

住宅街

路地裏の戸建て住宅

全体的に老朽化が進んでいる街であるため本設計において改修する建物だけでなく、町全体の 建て替えがすすむような仕組みを考える必要がある。また、老朽化が激しい建物の改修を行っ た施設同士を結ぶ道をつくることで外部の人間が訪れやすくなると考える。


8.全体(5~7)の考察 墨田の町工場の特徴

メリット

①多様なニーズ

デメリット

①下請け体質

②内輪体質

中小企業センターから見る必要な機能の分析 ①マッチング

②相談

③広報

④技術習得 ⑤機能補完(工作機械)⑥運動

墨田の町工場の弱点は①下請け体質であること、②内輪体質であることで、強みは①多様なニーズであることがいえ る。また、中小企業センターが担っていた役割として、①マッチング②相談③広報④技術習得⑤機能補完(工作機 械)⑥運動があり、①~⑤については①~③については外部の人にやっていることを知ってもらう必要があり、住民 同士だけでなく、外部の人間が訪れ活動を知りたくなるようにする必要がある。


9.修士設計

9-1.コンセプト

出典不明

アートづくり

photoAC 写真AC>人物>働く人物>No.36

×

モノづくり

墨田の技術を世界に知らしめるため、アーティストを呼び込みモノづくりと アートづくりの相乗効果で質のよい作品を作ることができ、人の交流が活発 で技術や作品が認知されやすいエリアを作る。


9.修士設計

9-2.プログラム

➊ものづくりとアートの拠点 ➋リサイクルの拠点

➌リサイクルの拠点 ➍➎➏アーティストのための居住部

老朽化した建物 ➐~⓬アートやモノの展示の場

⓭~⓮街で働く職人やアーティストの姿を見るこ とができる作業場所 ➊はものづくりとアートづくりの拠点とし、その運用は新たに設立した 「株式会社モノ×アートin墨田」が行う。この株式会社は中小企業センターが担っていた役 割、①マッチング②相談③展示④技術習得⑤機能補完を担う。ただし、職人だけでなく、 アーティストの利用にも対応したものとする。


9.修士設計

9-2.プログラム ➊ものづくりとアートの拠点

➋リサイクルの拠点 ➌リサイクルの拠点 ➍➎➏アーティストのための居住部 老朽化した建物 ➐~⓬アートやモノの展示の場

⓭~⓮街で働く職人やアーティストの姿を見るこ とができる作業場所

➋➌はリサイクル施設の拠点とする。ここに回収される廃材はアーティストが作品の材料と して利用できる。➍➎➏には新しく入居するアーティストのための居住部を作る。


9.修士設計

9-2.プログラム ➊ものづくりとアートの拠点 ➋リサイクルの拠点

➌リサイクルの拠点 ➍➎➏アーティストのための居住部

老朽化した建物

➐~⓬アートやモノの展示の場 ⓭~⓮街で働く職人やアーティストの姿 を見ることができる作業場所 ➐~⓮は特に建物の老朽化が進んでいる建物で、改修しアート作品や職人の作った製品の展 示の場(➐~⓬)とする。また、各施設をまわるスタンプラリーとすることで観光客は青色 の動線を通り、展示品をみるだけでなく、街で働く職人の姿やアトリエで働くアーティスト (⓭⓮)の姿を見ることができる。


9.修士設計

9-3.事業計画

株式会社モノ×アートin墨田が商業・宿泊施設、墨田モノ・アート展示、居住部、工作機械、 技術講習、取引先マッチング・経営相談を運用する。観光客はこのエリアのモノ・アート作 品の展示を目的に訪れ、商業施設や宿泊施設でお金を落とし、モノ・アートのスタンプラ リーを通してファンになった観光客は再びこのエリアを訪れる。


9.修士設計

9-4.どのような活動が行われるか

町全体が老朽化しているため空き家改修の仕組みを提案する。オーナーは空き家改修の依頼 を「株式会社モノ×アートin墨田」に依頼し、「株式会社モノ×アートin墨田」はマッチン グや紹介で得た個人の能力の情報をもとに適切なアーティストにDIYの依頼をする。できた 建物は事業者が運用し、オーナーは利益の一部を享受することができる。


9.修士設計

9-4.どのような活動が行われるか

https://daily-lives-niigata.com/2018/01/10/012/

通り土間

廊下の一部を屋外化

居住部では玄関を通り土間として共有することや、廊下の一部を屋外化することで生活がモ ノ・アート作りのきっかけとなるように設計する。アトリエではコワーキングオフィスなら ぬコワーキングアトリエで技術者とアーティストのコラボ作品を作ることやお互いの作品の スキルアップに役立つ。


9.修士設計

10.今後の展望

1.具体的にどのような部屋がどの数必要か 2.具体的な部屋の関係

3.生活の表現として「ある職人、アーティストの一日」をパースを用いて表現する 4.環境に配慮したシステム 5.防災計画

6.老朽化した建物を建て替え、各施設を設計するまでの手順 7.各施設の空間計画(光、風)

8.10年後、100年後はどう使うか(時間軸)


予備スライド


5.墨田区中小企業センターの分析

1.墨田区中小企業センターの概要

中小企業センターは墨田区の文花地域に位置する2017年3月31日に閉店が決まった中小企業支援 施設である。事業内容としては、経営・技術・パソコンなどの相談や、工作機械などの利用研修、講習 の開催、展示、交流、勤労福祉、ホール、体育館、会議室の貸し出しなどが行われていた。中小企業セ ンターについて調べることで町工場の多い地域において公共施設にどのような役割が求められているか 調査する。


5.墨田区中小企業センターの分析

2.墨田区中小企業センターの概要

商工相談が一番多く、次いで工作機械の開放利用、講習会・スクール、技術・取引の窓口相談となった。 また、その他の内容としては人材や取引先の紹介、展示会への出品、広告、HPの作成などがあり、特 に人材や取引先の仲介役としての役割が強かった。また、CAD/CAM/立体造形機の開放利用はあ まりされておらず、3Dプリンターはあまり利用されていないことがわかった。


5.墨田区中小企業センターの分析

3.すみだ中小企業センターの利用効果

技術・技能の習得・向上が一番多く、次いで製品の品質管理・品質向上、販路 開拓・受発注の拡大、自社工場の機能補完となっていた。その他の利用効果の なかでは併設された体育館の利用による体力向上があげられる。


5.墨田区中小企業センターの分析

4.今後墨田中小企業センターに期待する役割機能

特に「取引マッチング、販路開拓支援」「技術・技能の習得」が期待されており、次点で 「情報収集・情報発信」「経営改善、営業力強化支援」があげられた。


5.墨田区中小企業センターの分析

マッチング 「①働く人や企業を結び付ける仲介者としての強い役割」

広報

5.墨田区中小企業センターの役割の考察

相談 「②経営における相談先」

技術習得

「③企業のPRの場」

「④企業や人材のスキルアップの場」

機材補完

運動

「⑤自社工場の機材補完の機能」

「⑥運動の場」


7.町工場に必要な面積

7-1.町工場の土地及び建物の面積

墨田区における町工場の面積は100m2以上が31.8%、100~20 0m2未満が39.4%、200~300m2未満が10.9%、300~4 00m2未満が5.8%、400m2以上が12.2%だった。


7.町工場に必要な面積

7-2.業種別の町工場の土地及び建物の面積

業種別の町工場の土地の面積の中で東墨田に関連する項目をみると、。「ゴム製品製造業」「なめし革・毛皮製造 業」「パルプ・紙」「印刷業」は100m2未満が約25%、100~200m2未満が約45%、200~300 m2が約10%、300~400m2が約5%、400m2以上が約15%ほどである(図13)。「化学工業」は 100m2未満の面積の割合が少なく、50%以上が400m2以上である。「石油製品・石炭製品製造業」はすべ ての工場において400m2以上の土地を必要としていることがわかった。


6.墨田の町工場の分析

1.取引先との関係と考察

墨田区産業活力再生基礎調査分析報告書

「①コミュニティが内輪で完結してしまっている」 「②下請け体質が強く、技術的なスキルアップが必要」 「③取引先への多様なニーズに対応できることは墨田の町工場の強み」 「④新しい取引先を獲得できていない」


6.墨田の町工場の分析

2-1.空き工場を貸し工場として活用する意向

墨田区産業活力再生基礎調査分析報告書

空き工場を活用する意向は50%の人がもっているほか、 70.6%の人が空き工場の貸し活用に関心を示している。


6.墨田の町工場の分析

2-2.自社工場を新しいものづくり拠点とする意向

墨田区産業活力再生基礎調査分析報告書

自社工場のものづくり拠点の活用に賛成する人は 「機会があれば検討したい」と回答する人を含めると56.3%おり、半数以上の 人が肯定的な意見を持っていることがわかった。


6.墨田の町工場の分析

2-3.考察

http://ma-ga-ri.com/talent/007_ishida_soko/

http://kamiya-ken.co.jp/service/estate/case/01/

空き工場を活用して新しいモノづくりの拠点として利用することに対して肯定 的な意見が多く、住民の反発は少ないと考えられる。

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修士設計の中間発表に使ったパワポ  

修士設計の中間発表に使ったパワポ