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Kogakuin University

建築プロセス特論 2010


Kogakuin University

建築プロセス特論 2010

01


はじめに

04

01 地形から導かれる風のコントロールに関する研究

06

近藤巨房/木下研究室 神保隆文/木下研究室 平賀卓也/木下研究室 02 Tjibaou Culture Center

66

加藤 学/谷口研究室 重田和也/谷口研究室 03 リノベーションの有効性についての研究

88

勝亦優祐/木下研究室 上田宗平/西森研究室 西野 淳/西森研究室 04 The primitive architecture - 生命としての建築 -

142

山内 響子/木下研究室 おわりに

02

175

03


授業のねらい 建築はそのできあがる過程において多くの側面からの検討が要求される。設計でとかく重視されがちな意匠性の追求は当然 重要なプロセスのひとつであるが、それだけでは建築の完成形は達成されない。構造、設備、法規、材料、工法などの建築 本体に直接関わる要素との整合性をいかに整理するかということも重要なプロセスである。また都市、街並み、社会、環境 などの要求にいかに答え、調整するかも、広い範囲での建築のプロセスといえよう。 本コースでは具体的な建築作品を通して建築ができあがるまでのプロセスを紹介するなかで、各自が重要と思う建築の側面 をテーマとして見出し、考察する。 (木下庸子 教授)

04

はじめに

05


01 地形から導かれる風のコントロールに関する研究 木下研究室 DM10033 近藤巨房 木下研究室 DM10043 神保隆文 木下研究室 DM10065 平賀卓也

1 _ 序論 2 _ 風の発生原理 3 _ 風と日本の現代建築 4 _ 歴史からたどる風の利用方法 5 _ 風と海外の建築 6 _ プロジェクト 06

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

07


風の発生原理

ボイル・シャルルの法則 P V  = n R  T 圧力 冷気

冷気

温まった空気

定数

体積

温度

序論  建築における風というのはなぜ重要なのか。古くから人は目に見え

 空気が温められると圧力も上がる。

ないものや表現できないものを神としてあがめつつも、それを利用し

 2つの同じ大きさの容器を用意し、片方の容器を温めた後、2つの容器を合わせたとき圧力が高

てきたという歴史があります。歴史を重ねることで利用方法や目的を

い方から低い方へ分子が動く現象が、気流が発生する原理です。

変化させ、現代では人工的に温度の違う風を自由に流れさせることが 可能になった一方で、副作用として公害がもたらされています。人工、

紫外線による熱の発生

酸素+紫外線   O3   O2

または自然の風がもたらす効果が、何に対してどう影響するのかとい うことを調査することでその重要性を確かめるとともに、発生原理や 事例などを知り、設計をしていく上で自分たちが風を利用した建築や

この過程で熱エネルギーを発生します

インスタレーションなど、今回の調査をもとに還元できたらなと思っ ています。

□3種のスケール 高さ (m)

対流

吹出

日射

日射

地街風 人工排熱

300

ヒートアイランド現象

人工排熱 200 海風 100 吸込 部屋スケール

08

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

通風

潜熱 建物スケール

0 都市スケール

09


□川風の活用

□風の利用 → ヒートアイランドの緩和 街に「風の道」をつくり熱を都市空間に澱ませない

#目黒川を「風の道」 とした大崎駅周辺地域の再開発

#シュツットガルト市シェルメネッカー地区 建物は南斜面に計画されており,建物の北側は森で冷気流の供給源でもあった。 当初案(下図の左側)の小さな緑地帯(灰色)が冷気の効果的な流れを確保する ため,下図の右側のように幅 50 ∼ 60m の緑地に広げられた。

#名古屋都心部 中川運河の風の道

冷気流の分布図例

10

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

計画への提言図

11


□公園風の活用

□水と緑のネットウークの形成

#皇居を冷熱源、行幸通りを風の道とした大丸有地区の再開発

#東京都江戸川区一之江境川親水公園

12

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

13


□ビル風の抑制 □ヒートアイランド

#代表的なビル風の現象

 ヒートアイランドとは都市の中心部から熱がドーナツ状 に広がるように熱が高まることである。

#ヒートアイランドの原因 都市形態の変化 ・・・  緑地、水面、農地、裸地の減少によ る蒸散効果の減少、塗装面、建物の 増大による熱の吸収蓄熱の増大、反 射率の減少

大気輻射熱

排煙 ビルからの廃熱

ビルの屋上の高温化

人口排熱の増加 ・・・

建物の排熱工場等事業活動によ る排熱自動車からの排熱

地表面被覆の人工化 ・・・

都市の形態変化による弱風化都 市を冷やすスポットの減少

アスファルト 車の排煙ガス

人口土地的な低層階を設ける

14

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

建物下層部に大きなキャノピーを設ける

からの輻射

歩行者通路に屋根を設ける

15


□ヒートアイランドによる影響

・光化学オキシダントの増加 ・大気循環の変化、集中豪雨などの局地現象の変化 ・生物への影響 ・水資源の需要増加、蒸発量増加による資源量減少などの影響 ・人体への影響。熱中症の危険性増大、不快感の増大など ・健康被害による経済損失、電力需要増加によるエネルギー負担の増加

16

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

17


歴史からたどる風の利用方法 □堀立柱建築(鷹床建築)

□竪穴式住居

概要 ・厚い草葺き屋根と土間床を特徴としている ・冬期、住居中央の炉で裸火を絶やさずに燃やした場合、その放射熱によって温められた気密性の高い基 礎周りと床地盤の熱容量は、終日室温の保持に有効に働いたと思われる ・梅雨や高温高湿な夏期の季節には湿った土間床が不衛生になる

上方解放換

概要 ・日本では弥生時代に穀物を蓄える為の倉として用いられた事が始まりと考えられて  いる ・住居としては東南アジアでとりわけ、雨期に出水する地域や山岳の傾斜に用いられ  ている

遮日射

放任換気

温気

厚い屋根断 通風 冷気

冷気

風について ・厚い屋根断熱によって住居内に外部風が直接的に吹き込まない条件下にあれば、炉から立ち上がった煙 は屋根頂部から排気され、それに見合った量の外気が屋根裾から流入するようになる ・厚い屋根断熱層経由で外気が流入する際、屋根から流失する熱が流入冷外気を昇熱 させる効用もある。 この熱回収換気のメカニズムは、最近話題にあがるダイナミッ ク・インシュレーションと同じ原理であ

遮湿

風について ・竪穴式の住居の湿った土間床は不衛生になるので、湿気と縁を切る為に高床を  採用  した所、梅雨や高温高湿な夏期に過ごしやすくなった ・壁や屋根の至る所から風が通る(非拡散型)

18

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

19


開放系住居︵伝統住居︶

□開放系住宅(伝統住宅)

□町屋の上方開放熱対流型換気 概要 ・日本の伝統的な住居は内と外との融和を大切にし た開放系であり、茅葺屋根に見ら れる厚い断熱、 透湿性のある土壁、下見板、障子、畳を巧みに用い てきた ・木架構全体を湿気に対して解放させた ( 地面と架 構に間を空けた )  ・夏期の多湿な地域において育まれた構 ・必要とする場所で暖をとる徹底した間欠・部分暖 房の生活習慣が根底にあった

風について ・床下、外壁、小屋裏の連続的な空気移動が可能 ・湿気の速やかな屋外排出を可能にする通気や透湿 の性能確保 ・隙間風の流入や寒さに対しては全く無防備な構造

民家 ・散居して田園にある

温気

・民家の涼しさは、屋敷裏の広大で緑濃い植生から滲み出てくる冷気や 床下・土 間地盤の熱容量にある(水平方向の置換型換気)

町屋 ・低層―密集して住宅地にある  ・町屋の涼しさは、温気を上方に排出し、最下層域に積層させた夜間の冷 気滞留、 床下・土間地盤の熱容量にある(垂直方向の熱対流型換気)

冷気

・昼間の居室温は外気よりも低く、下層域ほど 低温で、座を基調として いる生活に合致した 涼しさが保たれている ・町屋は二階建ての家屋がぎっしり詰まった状 況で、上方への開放は、  裏庭・中庭・坪庭・ 水平方向の置換換気 ( 民家の夏の空気流動 )

20

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

垂直方向の置換換気

通り庭によって確保されている

( 町家の夏の空気流動 )

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□強風を防ぐ住居

□閉鎖系住居(現代住居)

外泊の集落 ・外泊は四国の小さな沿海集落。海からの強風を防ぐた めに住宅は周囲を石の壁で囲 み、中央に中庭を抱えた コートハウス形式をとっている。強風の中でも中庭では、  十分作業ができるくらいに風は弱まる

概要 ・開口部材や講法の改良によって隙間が減少  (束基礎→布基礎、下見板→モルタル、ガラス窓、ア ルミサッシ、コンクリートブロッ ク、サイディング、 石膏ボード etc) ・内外を明確にする閉鎖系住宅は寒冷地が発想の起源 ・更なる高気密高断熱化へ (防寒+隙間風の防止 → 結露の防止 → 省エネルギー)

鷲浦 ・鷲浦はかつて銅の積出港、北前船の寄港地として栄え た。各家屋の海に面するファ サードは板壁か木柵で あり、冬期の風雪に備えている

風について ・高気密化された居住室にあっては、ガラス窓面におけ る結露防止を可能にする基礎 室温が居住空間全体にい きわたるように、屋内全域を対象とした暖房空間を実現

簸川平野 ・散乱集落は川の氾濫源の場合が多く、僅かに高い土地 を選んで屋敷が建てられてい る。平野の為風も強く防 風林が発達する。簸川平野もその典型で、築地松と呼ば れ ている屋敷林に囲まれた家々が点在する散居村であ

さ せた上で、減湿や調湿を可能にする空気・熱環境の 計画に努めなければならない ・気密性が向上し、内外温度差を換気の駆動力とするパッ シブ換気の計画が可能になっ た(全室暖房、内部結露 の危険無) ・エネルギー浪費型の住居に変質する傾向を見せている

22

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

23


風と日本の現代建築 □穴をあける

□高低差を利用する

「東雲キャナルコート」 設計:山本理顕 他

「犬島アートプロジェクト」 設計:三分一博志建築設計事務所

24

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

25


□すきま風

□地形を読む

「ストーンハウス」 設計:三分一博志建築設計

「Base Valley」設計:三分一博志建築設計事務所

26

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

27


□呼吸する壁

ANNEX 設計:五十嵐淳建築設計

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地形から導かれる風のコントロールに関する研究

板橋のハウス 設計:西沢大良建築設計事務所

29


□太陽エネルギー

□畳で開閉

太陽の家 設計:三分一博志建築設計事務所

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地形から導かれる風のコントロールに関する研究

Energy Penthouse 設計:三分一博志建築設計事務所

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□微風

空気の揺れ:中村拓志

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地形から導かれる風のコントロールに関する研究

「風鈴」 設計:伊東豊男建築設計事務所

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風と海外の建築

□距離で冷ます

□段階を踏むスキン

Spaceport America 設計:Norman Foster

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地形から導かれる風のコントロールに関する研究

JMチバウ文化センター 設計:Renzo Piano

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□呼吸する壁

Philological Library  設計:Norman Foster

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地形から導かれる風のコントロールに関する研究

California Academy of Sciences 設計:Renzo Piano

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風と集落

□砂漠地方の風すくい(バッドギア)

□集風装置のある家(バードギール)

パキスタンのハイデラバード・シンドでは四月から六月まで気温が50℃を超える。 しかし午後の風が吹くと35℃まで気温が下がる。  各住戸では屋根に 風すくい を設けて、その風を部屋に取り入れる。午後風の風 向はいつも一定なので 風すくい の位置は固定されている。

38

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

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□オンドル

□ペーチカ

ペーチカとはロシア語で暖炉やオーブンを意味する。壁パネルヒ ーティングの原型。 煙道がめぐらしてあるレンガなどで造った壁面の放射熱で部屋を 暖める暖房設備。 焚き口の炉は50センチほどの立方体、 コンロとして料理にも利用 できる。内部に温水管を通し貯湯タンクと組み合わせることにより 給湯設備としても利用された。

朝鮮および北方中国で古くから行われている暖房設備で、ユカパネルヒーティングの原型といえる。 台所の竈で煮炊きしたときに発生する煙を居住空間の床下に通し、床を暖めることによって部屋全体を暖め る。

40

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

41


♯風を利用した事例 diagram

□都市風利用 ♯配置による南北風の扱い。

□風の生成

□丘屋根によるベンチュリー効果

♯より先へ風を流す工夫

North wind of winter

□冷やす壁 heat

V1

V2

cool

地下熱と太陽熱による温度差によって風を発生させる。

□粒子によるすきま風

面積が絞られる事によって風速が変化しその勢いで風 を室内に入れる。

□大衆気化熱

暑い風を取り入れ蛇行させながら地中熱で冷やす。

□畳ルーフ winter

green roof

summer

close

open

South wind of summer

♯環境別快適風速

粒子と粒子の隙間を縫うようにして風を流す。風が弱 まる。

□煙突効果

気圧小

劇場のような大衆が集まる場所は、人間からの代謝熱 が発生する。

□呼吸する壁

換気

天井が畳であることによって、空気を溜めたり流した りする。

□空気を纏う

Beaufort scale

蓄熱

(m/s)

inside comfort

outside comfort

growth enviroment

0 inside buffer air outside 気圧大

1 2 3 4

温度差を生み出す事によって上昇気流を生み出す。

壁と壁の間に風を流し室内環境を調整する。

部屋の周りに空気を纏���事で断熱効果がある。

mean wind speed of Tokyo

5 6 7

42

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

43


□風の流れを考えたスタディモデル

整流

衝突風 2

寄り道型

衝突風

衝突風 3

粒子型

まとめ 蛇行

逆止弁型

距離の差異

 エアコンなどの空調機によって人工的に風を起こすことと、自然に対して従順に機械を利用 する事無く風を生む事での環境に対する影響の差異などはヒートアイランド現象の図などから も明らかである。排熱や輻射熱など温度上昇に対する公害が増える一方でビル風などの強風と 呼ばれるよな、利用されにくい風というものはどのようにすれば利用できるようになり、私た

高さの変化

パイプオルガン型

ちの生活に不可欠というようなものになるかという無益ではなく利益というようなカタチにす る理論というのを構成できたらと思う。そうすることで独立していた住宅は流れという関係性 を生み都市単位での新しい町づくりが出来るのではいかと思う。

逆パイプオルガン型

ジグザグ

膨張室型

S1 = S2

収束型

44

枝分かれ

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

チムニー

45


前文より都市で生み出されている気流を探索する。その気流を住宅に取り込み1つの流れを構成

プロジェクト

する。歴史的な水脈を構成していたとされる広尾の敷地は谷地のような場所で地表では自然の気流 が生まれているのと同時に、地下に張り巡らされた地下鉄や水路というのはまた新しい流れを構成 しています。その流れを温度差や距離、圧力など様々な観点から模索し、利用する事で新しい住宅 の在り方ができるのではという考察から今のプロジェクトに至っています。

46

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

47


hiroo. Hiroo st.

西麻布

六本木ヒルズ

渋谷川

actual site topography 1/1500

48

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

idealized site topography 1/1500

49


SPR

SUM

AUT

WIN

・各調査地点の地質

80% fireproof

TOPO

深さ 0

5m

60% fireproof 10m

60% semi-fireproof

15m

GL 20m

zoning regulations

ボーリング調査 map 25m

*深さは地表面からの値

N

)

wind dire cti on

d

30m

% n( tio bu i r ist

Minato

礫層は地盤下において最も水が流れる層である。 Hotta hill

□日比谷線広尾駅情報 Kogai river

日比谷線「広尾駅」の時間帯頻度 平日

Shibuya Shibuya river

district boundary

property values dominant wind direction

*かつて江戸時代には青山霊園から渋谷川に 注ぐ笄川が流れていた。 戦後にこの川は埋められ、現在は下水が通っ ている

時間帯

頻度

5:05 6:30

8 分/本

6:30 7:30

6 分/本

7:30 10:30

3 分/本

10:30 16:30

5 分/本

16:30 19:30

3 分/本

19:30 21:30

4 分/本

21:30 23:58

6 分/本

休日

38

47

53

58

56

47

56

56

46

35

36

38

47

wind probability

10

12

12

13

12

11

13

12

11

10

10

10

11

average wind speed (knots)

8

8

11

16

20

24

28

29

25

20

15

14

17

average air temperature

january

february

march

april

may

june

july

august

september october

november december

month

5:05 6:30

10 分/本

6:30 7:30

6 分/本

7:30 10:30

5 分/本

10:30 16:30

5 分/本

16:30 19:30

5 分/本

19:30 21:30

6 分/本

21:30 23:58

8 分/本

地上からホームまでの階段数=57 段 蹴上げ 18cm 深さ 10.26m

50

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

51


□広尾地図時代系譜

A A

edo

1955

Section type D

C

B

A

D

A

A

Hibiya Line

Characteristic

water vein

1909

trees

sewer

subway and traffic

water vein

Wind blow

2010 bounding a wind

soften a wind

slow wind

fast wind

bounding a wind

Grade 15 °

30 °

15 °

Building size and twist

size twist

smaller

bigger

smaller

bigger

smaller

bigger

1937

52

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

53


A

B Natural topography

Natural topography

+3,770

+1,400

+1,130

+1,130

±0

Building and topography

Building and topography

Proposal

Proposal Gaien west street

warm air Traffic

warm air altitude 11 m Room

Room

cool air

Hibiya line Filter

Filter

cool air

conduction

54

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

conduction

55


C

D Natural topography

Natural topography

+6,460

+1,400 +9,010 +6,460

Building and topography

Building and topography

Proposal

Proposal

pumping

pumping

pumping

pumping

water vein many root !

56

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

57


□System of Earth retaining wall

□更新後の全体計画図

Alley

Waterway

住宅

新たに山留め壁を配置後、隣地との山

境界に山留壁を配置し、地下をつくる

留め壁は外し、川にする。

□House Wind flow PATERN1

PATERN2

AIR

AIR

煙突効果により地下からの風を一気に抜く。

スパイラル状に住居内を緩やかに旋回させる。 住居設計部分

□A series of houses

AIR

地下を連続させ、風を先へと流す。

□Roof diagram

air

air

凹凸があり逆風になったりと風の流れが うまく運ばれない。

58

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

 地形のように滑らかな流れをつくる 

 流れを構成する事で先へ先へと風を流す。

GL 配置平面図 59


□更新後の屋根面全体計画図

□計画地住居平面図 現状の敷地境界線 +750

-1125

-1125 ±0

±0

Ground floor plan S=1/200

-2700 -4500

-4500 -2700

-4050

住居設計部分

-4050

Basement first floor plan S=1/200

Roof plan S=1/200

+2700

-7000 -7000

Basement second floor plan S=1/200

+2700

Second floor plan S=1/200

屋根伏せ配置平面図 60

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

61


GL □住居部分断面図 62

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

63


プロジェクトまとめ 今回は断面全景を設計するのではなく、D 地点の断面のみを設計する事になった。C 地 点から地下の横風を取り入れながら、住宅地 D へ供給するという過程のもと、このよう な大地下の計画がなされている。 エアコンなどの空調を利用するのではなく、地形と一体となった考え方をすることで、 風と共に生きる賢い住まい方ができるのではないか。これに留まらず、プロジェクトを 展開したいと考えている。

64

地形から導かれる風のコントロールに関する研究

65


02

Tjibaou Culture Center 谷口研究室 DM10024 加藤 学 谷口研究室 DM10040 重田和也

66

Tjibaou Culture Center

67


Tjibaou Culture Center

Tjibaou Culture Center

1. はじめに  1.1 建築概要  1.2 チバウ文化センター設置まで  1.3 コンペティション  1.4 建築家の考え 2. レンゾ・ピアノの作品

fig.1 チバウ文化センター

3. 環境建築

1.1 建築概要 建築名 チバウ文化センター Tjibaou Culture Center 所在地 ニューカレドニア (fig.2)   建築家 レンゾ・ピアノ Renzo Piano    用途  複合文化施設 竣工  1997 年

4. 文化  4.1 女性  4.2 アプローチ  4.3 レイアウト 5. 素材  5.1 木材  5.2 工材

fig.2 ニューカレドニアはフランスの海外領土であり、南太平 洋オーストラリアの東側に位置している。

6. ディテールと構造  6.1 屋根の上辺とディテール  6.2 ダブルスキンリブの構造 7. 自然換気システム  7.1 ベンチュリー効果  7.2 貿易風時  7.3 微風時  7.4 強風時 8. スタディ  8.1 初期案  8.2 1992 年1月案  8.3 1992年1 0月 案  8.4 1993年1月 案  8.5 最終案

1. はじめに 小さい頃形成された記憶というものは、長い年月をかけても親 しみを持つ。それは人間の対話から生まれる要因であったり、 環境に潜む物理的な要因だったりする。その要因があるからこ そ、同じ環境に生きる者同士対立する状況に怠っても調和を図 る事が出来たりする。今回取り挙げる建築物「チバウ文化セン ター」(fig.1) は、先住民族の様式を残しながら先進国と調和 を図る� かたち �。 であり、そのデザインは気候や風土を踏まえ た文化施設である。建築プロセス特論を受講するにあたり、上 記で述べた建築物がどういうプロセスを経て最終的な形に至っ たのかを明確に示すため、資料や模型を用い調査を進めるもの である。

1.2 チバウ文化センター設置まで 「チバウ文化センター」はフランスの海外領土ニューカレドニ アの政治問題の側面(fig.3)から設立された文化施設である。 センターの名でもあるジャン=マリー・チバウという人物は、 ニューカレドニアの独立派のリーダーであり、先住民族カナカ 文化の復権を長らく訴えてきた人物である。しかし、1989 年 にカナカ急進派内の意見の対立から突然暗殺されるという事件 が起こり、この機にフランス本国と先住民族カナカ人との間で、 新たな文化環境づくりの路線が確認され、1990 年故人の名を とった「ジャン=マリー・チバウ文化センター」の設置が合意 された。 1.3 コンペティション チバウ文化センターのデザインは国際指名コンペによって決め られました。これは2 段階のコンペ方式で行われまして、第一 グランドで 170 名の候補を 10 名に絞り、その中からイタリア の建築家レンゾ・ピアノ (fig.2) の「ハイテクとニューカレド ニアの記憶の共生」というコンセプトで出された案が選出され ました。

fig.3 19 世紀半ばに端を発するフランス、ナポレオン3世 に よるニューカレドニアの植民地化が先住民族カナク人の権利を 奪い去り、彼らの政治的自立を妨げている。

9. 風洞実験 □参考文献

1.4 建築家の考え レンゾ・ピアノは伝統と現代、先住民族カナカ人の過去と未来 を結ぶ架け橋となることを胆に銘じ、ニューカレドニアの土地 を深く読み込み、土地に込められた記憶、海と陸地との関係、 植物の生態、そして何よりもカナク文化の根幹となる精霊信仰 への関わり合いを理解することから始まりました。そもそも先 住民族カナク人は文字を持たない種族であり、それゆえ時系列 に沿った歴史の思想をもちあわせていません。そのかわり、自 分たちを取り巻くあらゆるものにたいして、神話と伝承に彩ら れた精霊の世界を重ねていました。彼はその土地固有のいのち を前提にしたランドスケープの構築が必要だと認識した。

fig.4 レンゾ・ピアノ

目次

68

Tjibaou Culture Center

1. はじめに

69


Tjibaou Culture Center

Tjibaou Culture Center □ディライティング □バイエラー財団美術館    リーヘン、バーゼル、スイス 1992‑1997

2. レンゾ・ピアノ作品    ‑3つのカテゴリ ‑ □ディライティング    ‑ 屋根からそそぐ自然光 ‑ 遮光ルーバーと半透明の天井をもつレイヤ状の屋根越しに美術 ギャラリー内部に自然光をもたらす。これらの屋根は美術作品 の展示で望まれる理想的な自然光が得られるのに加え、太陽の 眩しい光と熱を同時に遮断する。この領域におけるピアノの探 求は、美術プログラムの要求と先端技術と建築の詩的表現に対 する環境的配慮の間で相乗効果を発揮させ、進化を遂げている。 (fig.1) 

▲ナッシャー彫刻センター  ▲ブロード現代美術館

▲バイエラー財団美術館

▲シカゴ美術館、近代美術棟

▲ハイ美術館新館

fig.1 

▲カリフォルニア・アカデミー   ・オブ・サイエンス

▲パウル・クレー美術館

fig.2 屋根の上端の様子

バイエラー財団美術館は、以前設計したメニル・コレクション やニューポート・ハーバーの近代美術館の発展形とみなすこと ができる。これはメニル・コレクションの部屋の配置と、近代 美術館の平行な耐力壁の配置とを組み合わせたものだ。ギャラ リーはキャノピーで覆われ、天空光を取り入れて調整するが、 形状や規模など、それ以外の点では下の空間の影響を受けてな い。キャノピーはまた、建物の外壁からも突き出ている。 これ以前の2つのギャラリーの設計においては、ガラス屋根を 支える構造そのもの、またはその一部であった。バイエラー美 術館において、屋根はある意味建物から独立している。つまり、 極めてシンプルな金属構造によって支持されており、壁によっ て仕切られた境界線の先まで大きく張り出されている。支持構 造はその下のギャラリーからは見えないが、そのことが屋根の 軽快さをより一層浮き立たせ、外壁ののごつごつした重量感と 存在感との望ましいコントラストを生み出している。

□グリーンスケープ    ‑ 形態と緑を通じて統合された               ランドスケープ ‑ 緑樹を加えることはピアノ作品の中で前提となっている。しか し、こうした特徴をさらに発展させた例があり、それらの形態 は自然のランドスケープに溶け込むように工夫がなされてい る。オーディトラム「パルコ・デッラ・ムジカ」は植物の海の 上を飛び交っているかのような3つの有機的形態のホールが林 立する。パウル・クレー美術館とカリフォルニア・アカデミー・ オブ・サイエンスは波打つような形態が周囲のコンテクストの 地勢に溶け込み、建築が物理的な建物を超越してグリーンス ケープ化している。(fig.2)   

▲オーディトラム 「パルコ・デッラ・ムジカ」

fig.2 

▲オーロラ・プレイス

▲チバウ文化センター

▲ニューヨーク・タイムズ・ビル

□気候上の反応性    ‑ 形態とファサードを通して            適切に調整された環境 ‑ ピアノの建築は敷地とコンテクストに対して上手く読み取られ てデザインされおり、また特定の気候に対して適切な対応をし ている。 例えば、関西国際空港旅客ターミナルの空気力学に基づく形態 と構造は内部の桐生循環を促進する。チバウ文化センターの印 象的な木製のダブルスキン構造は外部の気候に反応して自然通 風を促す。オーロラ・プレイスとニューヨークタイムズ・ビル は光、植樹、生命を内部に運び込むようデザインしたセンシティ ブなタワーである。(fig.3)      

fig.1 断面図

▲関西国際空港旅客ターミナル

fig.3 

fig.2 西立面の一部

fig.3 南北に走る2本の壁の端の試作模型

2. レンゾ・ピアノの作品

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2. レンゾ・ピアノの作品

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fig.1 カーズの構造土台のディテール

fig.1 全体の断面図

fig.2 屋根の上端の様子

fig.2 プラザの断面

□グリーンスケープ □バイエラー財団美術館 リーヘン、バーゼル、スイス 1992-1997

□気候上の反応性 □オーロラ・プレイス シドニー、 オーストラリア 1996-2000

カリフォルニア・アカデミー・オブ・サイエンスは自然科学博 物館の1つであり、科学調査をパブリックな空間で体験できる。 この建設の最大の目的は展示・教育・保存・研究のための安全 で近代的な施設を1枚屋根の下につくることだった。 博物館施設の設計は自然光や通風に応じた空間配置、水や屋根 雨水の効率的利用、自家発電が建物のデザインとして表れてい る。 旧アカデミーの3つの歴史的要素のアフリカン・ホール、ノー ス、アメリカン・ホール、スタインハート水族館への入口は記 憶と過去へのつながりとして継承された。これらの要素はアカ デミーがテーマとする、宇宙・大地・海を象徴する。これらの 3つのアイコンは屋根の上に“押し上げ”波打つルーフスケー プをつくりだす。この波打つような緑の屋根「リビング・ルー フ」という形態は施設全体を統合し、視覚的に環境と調和させ るだけでなく、従来の生態系に則した植物品種で構成すること により、鳥や虫と共存繁栄し、本質的に自然の一部として機能

オーロラ・プレイスを設計する上で、このシドニーの都市のシ ンボルであるシドニー・オペラハウスと完璧な調和を実現させ

fig.1 カーズの構造土台のディテール

している

なければならなかった。シドニー・オペラハウスの白いシェル 構造の屋根が、入り江の水上に膨らむ巨大なスピネーカー(ヨッ トの三角形に膨らむ帆)だとしたらオペラハウスよりも 700m 南側の内陸に建設されたオーロラ・プレイスの背が高くてカー ブしたクリームがかった白いファサードはメーンスル(メーン マストの一番下の帆)に似たものと言える。しかし、地面から 浮かんで空に向かって延びている薄いガラスカーテンウォール の半透明性は、切子面で重量感に富むオペラハウスのコンク リートの構造とは対照的であり、風をつかむというよりも風を 拡散している。したがって、この対照的な2つの複合施設、オ ペラハウスとオーロラ・プレイスとのあいだには、コンテクス ト状の対話が生み出されている。 建物の外壁外に拡張されたファサードはセイル(帆)と呼ばれ、 ファサードの拡張部分はヨットのセイルのように形成され、 ファサードと大地の雨風や太陽光の影響を和らげている。

fig.1 セイル ( 帆 ) と呼ばれる半透明ガラスカーテンウォール

fig.3 水平トラスのジャンクションのクローズアップ

fig.2 住宅のサンルーム スピネーカー

メーンスル

fig.3 タワーおよび側面と屋根を超えて 広がるファサードの多様なソリューショ ンに関する研究用模型

fig.3 リビングルーフのディテール

2. レンゾ・ピアノの作品

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fig.4 商業タワーのセイル詳細

2. レンゾ・ピアノの作品

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木製ルーバーで覆われたオフィス ウォーターサイド(リチャード・ロジャース) 2001  膜による自立環境創出 ETFE エデン・プロジェクト(ニコラス・グリムショウ) 2001 

2001 

壁面緑化のアート化 パーシングホール(パトリック・ブラン)

2000 

外装の内部化で博物館機能を再生 大英博物館グレート・コート (ノーマンフォスター) テントに覆われた活気のある半屋外広場 ソニーセンター(マーフィ/ヤーン) 2000 

1999 

ダブルスキンと自然換気 ドイツメッセ管理棟(トーマス・ヘルツォーク) 自然換気、自然採光、バイオマス、地中熱利用のエポックメイ キングな環境建築 ドイツ連邦議会新議事堂(ノーマン・フォスター) 1999 

1998 

高速道路をまたぐシティーゲートタワー シュタッター・デュッセルドルフ (ペティンカ・ピンク)

自然換気と自然採光の視覚化 ボルドー裁判所(リチャード・ロジャース)

1998 

1997 

呼吸する建築 コメルツ銀行(ノーマン・フォスター) ガラスシリンダーの超高層ダブルスキン (クリストフ・インゲンホーゲン) RWE 1997  太陽エネルギーの回転住宅 ヘリオトロープ(ロルフ・ディッシュ) 1994  地球環境に則した素材の選定 シンプソン=リー邸(グレン・マーカット) 1993  ガラス散水と太陽電池ルーバー セリビア万博イギリス館 (ニコラス・グリムジョウ) 1992 

風を巧みに利用したダブルスキン 本社ビル(サウアーブルック/ハットン) GSW 1991 

崖地利用の自然採光オフィス (レンゾ・ピアノ) RPBW 1991  ダブルスキンとスカイガーデンの提案 コメルツ銀行コンペ2等案 (クリストフ・インゲンホーゲン) 1991 

ルーバーによる自然光コントロール メニル・コレクション美術館(レンゾ・ピアノ) 1986  躯体と設備機器を切り分けた長寿命建築 ロイズ・オブ・ロンドン(リチャード・ロジャース) 1986  設備更新による長寿命建築 香港上海銀行(ノーマン・フォスター) 1985 

内部設備のラディカルな更新をデザインした建築 ポンピドゥ・センター (リチャード・ロジャース、レンゾ・ピアノ) 1977

ステップガーデンと建物を覆う屋上緑化 クライマトロフィス(ノーマン・フォスター) 1971

ステップガーデンと建物を覆う屋上緑化 オークランド美術館(ケヴィン・ローチ) 1968 軽量外皮による大スパンドーム 、 67 バイオスフェア  EXPO (バックミンスター) 1967 日除けルーバーによる日射遮蔽 ディア・カンパニー(エーロ・サーリネン) 1963 ローエネルギーの先駆的プレファブ住宅 トロピカルハウス(ジャン・プルーべ) 1951 屋上庭園の出現 サヴォア邸(ル・コルビュジェ) 1931

75 Tjibaou Culture Center 74

3. 環境建築 3. 環境建築

2000 エコテック建築 1980  ハイテク建築 1990

ハイテクの芽生

1970 

巨匠時代

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4. 文化 文字がないカナク文化(fig.1)は文字を書く事に意味を持つ 事がなく、記憶や象徴といった部分的にもはっきり判別・理解 する事の出来る方法を重要視している。彼らは伝統的な住居で 暮らし、祝祭のときには踊りを踊って古代の祭礼を執り行う文 化を持ち、神話と伝承に彩られた精霊の世界を重ねている種族 である。 4.1 女性 カナク族の小屋の中心に位置する柱は「大酋長」、その周り覆 う壁柱は「小酋長」で構成し、女性を象徴するココナツ繊維で 織られたひもが小酋長らを結びつける事で、女性が種族をまと めるという意味が備え付けられている。(fig.2)

fig.1 カナク文化

4.2 アプローチ 彼らの文化では直接的なアプローチを拒む。それが出来るのは 酋長だけであり、他の人たちは敬意を表すために遠回りすると いう習慣がある。実際、初期案の段階では駐車場からセンター までのアプローチが直接的に設けられていたが、最終案では ゲートのギリギリまで間接的に配置されている。(fig.3)

カナクの女性はまとめ役

小屋

4.3 レイアウト カナクの村では典型的なレイアウトによって小屋が配置されて いる。まず、共同で利用する細長いオープンスペースがあり、 酋長の小屋はそれに寄り添う(小屋から見ればオープンスペー スに削られている形をとる)形で配置されている。ほかのすべ ての小屋は、そのオープンスペースから下がった位置で配置さ れ、植生の中に隠れる形をとっている。そしてその植生には、 個人のスペースの境界線となる、あるいは訪問者を歓迎すると いった意味がある樹木が特別に植えられている。(fig.4)

ココナツ繊維で織られたひ 周り覆う壁柱は「小酋長」

もが小酋長を結びつける

中心に位置する柱は「大酋長」

fig.2 大酋長を軸にそ織られたひもを小酋長らに結びつける事 で、女性が種族をまとめるという意味を象徴化している。

初期案の段階では駐車場からセンターまで

fig.3 カナク文化に敬意を表すため駐車場からセ ンターまでのアプローチは間接的に設けられた。

駐車場

のアプローチが直接的に設けられていた

センターまでのアプローチ

fig.3 配置計画にもカナク文化のレ イアウトが採用されている。 初期案

C

ほかの小屋はオープンスペースから下がった位置

C

C

センターのアプローチ

最終案

C

酋長の小屋

C

駐車場

C

▲ ▲ ▲

C

共同で利用する細長いオープンスペース

C

ンターまでアプローチする事に至った

ゼロ・エネルギーの鉄道駅 シュトゥットガルト中央駅 (クリストフ・インゲンホフェン) 2013  街並みに溶け込むプライバシーフィン ワン・ハイド・パーク (ロジャース・スターク・ハーパー) 2010 

再利用レンガでの高熱容量外壁 寧波歴史博物館 (アマチュア・アーキテクチャー・スタジオ) 2009  包括的エネルギーコンセプトの複合開発 エルム・パーク(ブコルツ/マケヴォイ) 2008  鱗状のスカイライトによる全面自然採光 北京首都圏国際空港(ノーマン・フォスター) 2008  集成材の架構の連続で構成する大屋根 ボデガス・プロトス・ワイナリー (ロジャース・スターク・ハーパー) 2008  性格の異なるアトリウムによる自然換気 ヨーロッパ投資銀行 (クリストフ・インゲンホフェン) 2008 

セラミックルーバーによる日射遮蔽 ニューヨーク・タイムズ・ビル(レンゾ・ピアノ) 2007 

エコ団地の太陽電池フォーリー ヴァルカス・エコ・ブールヴァール (エコシステマ・ウルバーノ) 2006  ボタニカルアートとしての壁面緑化 ケ・ブランリ美術館(ジャン・ヌーヴェル) 2006 

伝統的なカウルで自然換気のできる議場 ウェールズ議会議事堂(リチャード・ロジャース) 2005 

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地形と同調し一体化させた美術館 パウル・クレー・センター(レンゾ・ピアノ)

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2005   空飛ぶ絨毯のような大屋根が覆う空港 バラハス空港(リチャード・ロジャース) 2005  地中熱利用とウインターガーデン ドイツ連邦環境庁(サウアーブルック/ハットン) 2005  軽量鉄骨シェルと膜によるダブルスキン ベルリン自由大学(ノーマン・フォスター) 2005

自然換気を実現させた高層オフィス 30セント・メリー・アクス (ノーマン・フォスター) 2004  緑のアトリウムを介した自然換気オフィス ルフトハンザ航空センター (クリフトフ・インゲンホーフェン) 2004 

下見張りガラスの高性能ダブルスキン ボン・ポストタワー(マーフィ/ヤーン) 2003 

ダブルスキンの日射と騒音のバッファー 本社(マイヤー・エン・ファン・スホーテン) ING 2002  自然エネルギー利用 (ビル・ダンスター) BedZED 2002 

3. 環境建築

敬意を表すため間接的に駐車場からセ

に配置される

村落をまとめる象徴的な大きな樹木

小屋 酋長の小屋は共同で利用するオープンスペースに 寄り添う形で配置されている

村落 オープンスペースでは伝統的な舞踊が行われる

木は個人スペースの境界線となると同時に、訪問 者を歓迎するという意味で植えられている

4. 文化

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Tjibaou Culture Center 6. ディテールと構造

5. 素材 カーズに生かされている素材は、先住民族の重要視している象 徴的な要素を視野に入れ、ここでは過去と未来という指向性を 保っている。採用された素材は以下。

ステンレスプレート

6.1 屋根の上端のディテール 屋根が内側のリブから吊り下げられている。 熱帯性低気圧が近づくとカーズの水平方向に巨大な負担がかか るため、鉛直方向のみ力がかかるようにしている。(fig.3)

リブ

5.1 木材 各カーズはイロコと呼ばれる熱帯性の巨木/木材によって構成 されている。この素材は堅固でシロアリにも強く、集成材と同 じような強度を誇る。また、イロコは外装材としてメンテナン スが楽な事や、現地の住宅に使用されている樹木の繊維を編ん だ素材を想起させるから選定素材として生かされている。

スチール製チューブ

イロコ

fig.1 カーズの構造土台のディテール

↑ ↓

5.2 工材 木材のリブを支える役目としてスチール製のエレメントによっ て補強されている。これらは、スチール製の水平なチューブか らなり、リブの各列をつな事によって、規則的な垂直の間隔な 弧を形成している。また、リブの最上部は斜めにカット(水が 染み込まないように)され、上にステンレススチールプレート が取り付けられている。リブの下の部分にも鋳鉄製のエレメン トに接続されている。

鉛直方向の力

fig.2 屋根の上端の様子

鋳鉄製エレメント

ステンレスプレート

カーズの構造体に生かされた素材は、「工材」と「木材」か

fig.3 水平トラスのジャンクションのクローズアップ

らなり、カナク文化を保存(木材)し、そのルーツを保護(工 材)することで、現代という時代に立ち向かう事の出来る支 援を比喩化・象徴化している。 引張力

引張力

カーズの素材

カナク文化

スチール製チューブ

圧縮力

圧縮力

工材 =

木材

圧縮力

fig.4 内側と外側のリブを支えて 湾曲した水平なトラスを形成している支柱

支える

カナク文化が現代の時代に立ち向かう事が 出来る事を比喩化・象徴化している

鋳鉄製エレメント ほかにも

またその他にも、ラミネート板、コンクリート、サンゴ、アルミ・ ダイキャスト、ガラスパネル、樹皮など部分的に用いられている。

5. 素材

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fig.5 垂直ブレースが取りつけていないジャンクションのアイ ソメ図 ��� リブを固定するブレースのジャンクション

6. ディテールと構造

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Tjibaou Culture Center 6.2 ダブルスキンリブの構造

リブ

カーズ

水平トラス ダブルスキンリブは中央ほど高くなっている。下見材でリブを 結ぶことで各材が一体化し、それが平面的にカーブしているこ とから、ちょうど紙をロールして立てたような状態になるので 矢印の方向には倒れない(シェル効果)(fig.6)

外部シェル

外部シェルは海から流れてくる風を捉える

内部エレメント 傾斜した屋根

自然換気 システムを 構築する

パティオ

チバウ文化センター

またこのダブルスキンリブの要所に水平にベルトトラスと呼ぶ トラスを設け、柱が回転変形することと、シェル全体がゆがむ のを防いでいます。(ダイヤフラム効果) 斜めの屋根面に水平トラスを設けると、ダイヤフラム効果をカ ンタンに得ることができます。 しかし、これだとブレースにより屋根ガラスの透明性が損なわ れるため、その案は採用されませんでした。(fig.8)

垂直ブレース

カーズは効率的なシステムを備え与えるため、弓なりの外層と、 垂直な内壁の間を空気が自由に循環する二重構造になっている。 fig.1 下見材

中層部の空気を上層に吸い上げる役割 下見材の間隔 上層部 → → → 広い

(ベンチュラ―効果)

リブの二つの層が煙突の役割

下見材の間隔 中層部 → → → 狭い

下見材 (細いルーバー)

風を水平に通過させる役割

▲ ▲

ダブルスキンリブの足元はピン接合のディテールとなっていま す。これだと今にも柱は倒れてしまいそうに思えます しかし実際は、各フレームをブレースでつなぐことで全体が立 体的なシェル構造として働くので、倒れることはありません。 (fig.7)

下見材の間隔 下層部 → → → 広い

カーズ

風をコントロールする役目を担う

カーズ

開閉ルーバー

開閉ルーバー

fig.2 ルーバー 開閉ルーバー

fig.6

リブ

貿易風時

7. 自然換気システム カーズのデザインは視覚的に自然と調和しているだけでなく、 ニューカレドニアの気候の特性に活かした機能的なものになっ ている。実際、カーズは効率的なシステムを備え与えるため、 弓なりの外層と、垂直な内壁の間を空気が自由に循環する二重 構造、ダブルレイヤーが用いられている。 コンピュータシミュレーション(オヴ・アラップ&パートナー ズ社、GEC Ingerie 社、及び Agibal MTI 社からが早い時期か ら提案していた CSTB- バティマン科学技術センター - によるも の)および風洞実験テストを用いて、自然換気システムの改良 が行われたカーズは、傾斜した天井および内側と外側の囲いが あり、遊歩道を横切るパティオと合わせて、その全体が多様な 風の条件に対応するように調節された大きなシステムの一部と して機能する。これにより、外部シェルの開口部は、海から吹 いてくる風を捉えるように、また最適な対流を引き起こすよう にアレンジされ、空調機器に頼らない自然換気による快適な屋 内環境を保てる空間をつくる事が出来る。 7.1 ベンチュリー効果 カーズの下見材 (fig.1) は、単なる装飾ではなく、下層部の比 較的間隔の広い場所で、風を水平に通過させている役割をして いる。中層部の下見版が密集した場所では、リブの二つの層が 煙突の役割を果たしていて、空気は上昇を余儀なくされる。そ して上層部の間隔の広いスペースでは、空気を上層に吸い上げ るのを助けるベンチュリー効果が生み出されている。

ベンチュラ―効果により

7.2 貿易風時

上層(外部に)に吸い上げる

ブレース

2 煙突効果による空気の流れがこのプロセスを助ける →カーズの外側に空気を一気に吸い上げる

open

暖かい空気が天井の下まで上昇する →ルーバーから排出

ガラス屋根 open

open

水平トラス 微風時

open close

close

fig.7

close

強風時

close

サイクロン時

open

close

open

close

逆風時

ルーバーの窓はコンピュータによって制御されており、弱い風 が吹いているときには、対流を促すように窓は開放され、風が 強まると窓は閉じる仕組みとなり、様々な外気状態に対応する 仕組みとなっている。 空気の循環システムがカーズに特有のノイズをつくり出して、 これはカナカの森の音をも表現している。

いつものように貿易風が吹いている場合(一日約 90%)は、ルー バー(fig.2)は開かれており、風は外側の下見版とルーバー を通って、カーズを通り抜けて遊歩道を横切り、パティオの穴 の開いた屋根から排出される。この絶えず吹く貿易風を利用し て、平屋根の下のオフィスと展示スペースの換気も行うように なっている。 7.3 微風時 風が非常に弱い場合は、自然の換気は対流に依存している。カー ズ内の暖かい空気が傾斜した天井の下まで上昇し、壁の一番上 のルーバーから排出される。カーズの内側と外側の層のあいだ を上昇するもう一つの暖かい空気の流れがこのプロセスを助 け、ルーバーを通してカーズの外側に空気を吸い上げている。 こうした上部のルーバーは常に開かれているが、それは熱帯性 低気圧が近づいた際に内部と外側の空気圧を等しく保つ上で重 要な役割を果たすからである。 7.4 強風時 風が強くなると、カーズの天井下のセンサーが作動して、下の 部分のルーバーがすべて閉じられて、建物の中を強風が吹き抜 けるのを防止する。熱帯性低気圧による海からの強風で屋根の 上に圧力がかかった場合は、空気は上部のルーバーからすぐ吸 い出される。熱帯性低気圧の方向が逆で傾斜した屋根に圧力が かかる場合は風はカーズの二つの層の間を下に向かい、上部の ルーバーから中に入ってくる。

fig.8

6. ディテールと構造

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7. 自然換気システム

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8. スタディ 初期案において思い浮かべるところは、伝統的な小屋のフォル ムをそのまま模範している(直接的に形態に生かしている)点 だ。初期案と最終案を比較すると分かる事だが、最終案は小屋 の形態とは無論異なり、初期案に比べ伝統的な小屋の表層から ずれた形をとっている。これにはピアノ自身の考えがあったと いう。ピアノはカーズそのものが、伝統的な小屋の形態に似す ぎていると不満を感じていた。というのも、そのような直接的 な行為は、地元の文化を茶化したり、恩着せがましくさせると 感じたからだ。また、受動的な換気システムが機能するかどう か確信を持てていなかった。

この考えがコンペ提出時にあったにも関わらず、地元民は寛容 な存在としてカーズを認めていた。彼らは初期のカーズの形態 を残すべきであると主張し、逆に大きさや数を縮小する事を嫌 がった。これによりピアノは、この計画案の非合理的エレメン トを構築し、検討と洗練を加えてよりよく機能して純粋な理論 的根拠をもたせるようにした。そして、地元の伝統や気候風土 や周囲に繋茂する植生との示唆的関係において、カーズが独自 の相当な価値をもつように試みた。

初期案

8.1 初期案 カナク人審査員は、ピアノ案の形態に強く新規感を覚え、満場 一致で選ばれる事に至った。しかし、ピアノはカーズが小屋の 形態に似すぎていると不満を感じると同時に、受動的な換気シ ステムが機能するかどうか確信を持てていなかった。事実、風 洞実験を行った際、カーズが風の取り入れ口としては機能しな い事が判明した。 カーズ

プロムナード

8.2 1992 年1月案 この試案(1992 年 1 月)は、垂直エレメントの先端がお互い ゆるやかに湾曲して延び、接触もなく高さも均一でもない。こ の段階ではフォルムの点から見た造形は美しかったという。平 面図を見るとこれらの垂直エレメントは半円形であり、それら が取り囲みそびえ立つ駆体は、漏斗のように構成され、そのま ま屋根付きのプロムナードに連結された。断面図では屋根はさ らに曲線を描いてせり上がってカーズにつながり、ガラスが扇 状に広がる曲線を描いて吊るされた。しかし、結局このような 繊細いな優雅さを実現するのは難しいと判断された。

プロムナード

8.3 1992 年 10 月案 1992 年 10 月の設計においてカーズを囲う範囲がは延ばされ、 再度平面図上で半円より円に近い形を描くようになった案が出 された。そして、カーズが取り囲む空間の外側の壁は、独立し たエレメントである事が強調され、内側の駆体はブロックで建 てられ、曲線を描くというよりむしろ階段状にせり上がって構 成した。これは、1992 年 1 月の案の解決策より、全般的に実 践的で安価な解決策だった。しかし、大きくて幅広いカーズ間 の間隔は規則的になりすぎて個別の村という印象は薄れた。

fig.1 初期案

カーズ

fig.2 1992 年 1 月案 1992 年 10 月

こうしてピアノが主張したカーズを伝統的な小屋に酷似させな いため、縦のエレメントはもはや頂点で一つに合わさらなく、 すべてが同じ長さというわけでもなくなった。いずれにしても、 カーズの最初の計画案に基づいてつくって設置しても実際うま く機能しないという事が、風洞実験においても分かり、風が卓 越風に対して真っ向から上昇するので、うまくいく可能性は低 かった。しかし、海からの卓越風に背を向けて開いた状態にす るならば、上昇気流とベンチュリー効果を組み合わせて使って、 排気煙突として機能するように開発する事が可能となった。こ の条件を達成するにはカーズをもっと開いた形にしなければな らず、伝統的な小屋との関係性は薄れたが、美しくて感情に豊 かに訴えるものとなった。

最終案

独立したエレメント

内側エレメント カーズ

プロムナード

fig.3 1992 年 10 月案

垂直エレメント

8.4 1993 年 1 月案 検討を積み重ねた結果、1993 年 1 月までカーズはかなり進化し、 同年 2 月の風洞実験にもクリアした。この段階でカーズには集 成材の垂直エレメントが加わり、これらをつないだのは、ガラ ス屋根やスロープと同じ高さに置かれたスチール製梁だった。 この二重の垂直リブは、互いに向かって内向きに曲がる事なし に、この梁のはるか上に突き出していた。これにより、自然の 換気を導き入れる点においては、カーズは効果を発揮した。

スチール製梁

カーズ

プロムナード

fig.4 1993 年 1 月案 最終案

8.5 最終案 カーズを海からの卓越風に背を向けて開いた状態にし、上昇気 流とベンチュリー効果を組み合わせて使って、排気煙突として 機能するように開発した(自然換気システムの構築)。この条 件を達成するにあたり、伝統的な小屋との関係性は薄れたが、 美しくて感情に豊かに訴えるものになった。(→実施)

初期案

外部シェル 内部エレメント 傾斜した屋根

カーズ

プロムナード

fig.5 最終案 最終案

8. スタディ

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8. スタディ

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9. 風洞実験 制作したチバウ文化センターの模型を基に、実際に風洞実験を 行う。実験には乱れた空気の流れを生まさせないためにエッ フェル型風洞装置を採用し、下図のような型を制作する。

■エッフェル型風洞(通心送風機)

メッシュ ハニカム

40mm

送風機

拡散胴

整流胴

縮流胴

60mm

対象物 平面図

50mm 300mm 送風機で発生した気流を減速させます。

整流された気流を圧縮し乱れは更に小さくさせます。

数枚のメッシュで乱れを整えます。

9. 風洞実験

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9. 風洞実験

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Tjibaou Culture Center □おわりに チバウ文化センターが作られたことによって先住民族カナカ人 の文化を未来に残すことができた。そして、先住民族カナカ人 文化の復権を長らく訴え、1989 年に劇的な死を遂げたニュー カレドニアのリーダー、ジャン=マリー・チバウに捧げること が出来たほか、チバウ文化センターが竣工した 1997 年翌年の ヌーメア協定で、2014 年以降に行われる国民投票によって ニューカレドニアはフランスにとどまるか、または、長年待ち 望んでいた独立国になるかを決定することになるというニュー カレドニアに新たな希望の光を未来に託すことが出来た。

□参考文献 ピーター・ブキャナン:レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワー クショップ 全作品集 Volume 2:ファイドン・プレス社: 2005 ピーター・ブキャナン:レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワー クショップ 全作品集 Volume 4:ファイドン・プレス社: 2005 レンゾ・ピアノ:航海日誌:TOTO 出版:1998

参考文献

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03 リノベーションの有効性についての研究 木下研究室 DM10022 勝亦優祐 西森研究室 DM10010 上田宗平 西森研究室 DM10059 西野 淳

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リノベーションの有効性についての研究

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法律的側面からみたリノベーション

law ここでは、リノベーションを行う際に関わって くる法律や規制を調査・分析する。 その上で、リノベーションを抑制している問題 点を抽出し、今後どのような展開が法律に必要 であるかを考察する。

90

リノベーションの有効性についての研究

91


Law リノベーションを行うに際して、もうひとつの法的要素は都市計画に関してである。以下はリノベーションと都市計画に関する条件である。

前出した都市計画関係以外のリノベーションと都市計画の関係において、用途地域制限との関わりにも着目することができる。中でも、

・都市計画的視点による建築コンバージョンの外生的条件整理

る。

  2006年5

中心市街地活性化法改正      ↓ 暮らし・賑わい再生事業 によるリノベーション支援

2006年5

2004年6月

都市計画法改正

景観法制定

   ↓

  ↓

郊外部での大規模商業施設の

景観重要建造物に対する

建設を原則禁止

建築基準法等の緩和措置

マクロにコス���ダウンする リノベーション市場原理に乗り得る複合商業 施設・集合住宅・大学・SOHO 等への都市建 築ストックの賦活・更新

出典:用途地域内のッ建築物の用途制限の概要

2006年6月 2002年7月

住生活基本法制定

工場等制限法廃止

   ↓

   ↓

街なか居住再生ファンドなどの

大学等教育・研究機関の

中心市街地居住支援措置の拡充

都心回帰

http://www.city.akashi.hyogo.jp/tosei/tokei_ka/g1_machi/tokei/pdf/youto_chiiki.pdf ※非住宅部分の用途制限 事務所(法令で指定する汚物運搬用・危険物運搬用等の自動車のための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。 ) 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋等 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店等(原動機設備は出力総計が 0.75kW 以下) 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等(原動機設備は出力総計が 0.75kW 以下) 学習塾、華道教室、囲碁教室等 美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機設備は出力総計が 0.75kW 以下) 店舗等 - ×

都市計画の重要な観点として、都市防災機能の強化がある。これに対しても、リノベーションの概念が有効であると考えられる。

小さな政府=民間活力活用主義の浸透 指定管理者制度 市場化テストの導入 政府・与党「200 年もつ住宅構想」

renovation

PlanA: 現状として、隣と接近し災害時に避難経路が確保できない地域

PlanB:

隣と接近する一階部分にリノベー ションを行い、災害時に通り抜け

面積又は容積を転化する

できるようにする

住宅密集地域における避難経路の確保や防災機能強化は最も重要な課題である。そのような状況化で用地取得や行政代執行など、 非合理的な手段を用いて計画を進めること無く、リノベーションを手法として用いることでそれぞれの解決策が提案できるのでは ないだろうか。

上の図の中で、とりわけ活用されているのが景観法の制定に際して、景観重要建 造物に対する建築基準法等の緩和措置である。用途変更を伴うリノベーションプ ロジェクトに際し、この規制緩和を活用する事例が多く見受けられる。これは、 建物の時間的変化を保存する手法としてリノベーションが有効であるといえ、建 物の重要性に係らず、空き家活用や地域再生プロジェクトとしての新たな手法と して注目されていることが分かる。 横浜の倉庫街

92

リノベーションの有効性についての研究

倉敷の蔵

都市計画と耐震の面以外の法的側面として、各自治体における条例があげられる。これは、法のおおまかな規定に対して、さらに 詳細にその地域の規制を取り決めたものである。今後は条例等を調べた上で、敷地選定の素材とする。

93


Law ・リノベーション と耐震

(A=既存部分の延床面積)

がある。そこで、昨今改正された建築基準法の事例をもとに、リノベーションに対する法律の対応と問題点を分析する。

増改築部分の床面積が 50 ┃以下かつ A/20 以下 (既存部分の危険性が増大しない場合)

・建築基準法の増築に関する改正の推移 施行年次

no

規定

建築物全体で現行基準に適合

no

主な事件 エキスパンションジョイントで分離

遡及適用を受けない 新耐震設計法

yes

現行基準が適用される

yes

法令

1981

増築部分の床面積が A/20 以下

れているのが耐震に関する法規制である。そこにはストック社会を目指す現在の流れにおいて、法律が追いついていない状況

新耐震基準(6 月)

現時点での耐震性が維持できる

・耐震構造の見直しで構造耐力の

no

yes

 仕様規定(6 月) 既存部分が以下のいずれか

 一次設計・二次設計の導入 1995 2000

建築物全体で保有水平耐力計算、 許容応力度等計算等に適合

阪神大震災 品質確保推進法

・指定建築材料

(赤い部分が改正により緩和された部分)

・住宅の紛争の処理体制 2005

既存遡及の緩和(7 月)  告示 566 号 建築確認・検査の厳格化(6 月)

2007

・構造計算適合性判定制度導入

耐震偽装問題(11 月)

図に見て取れるように規制がある一定の許容量を作り出しているのが分かる。とりわけ、50 ┃か つ A/20 以下の増改築に関してはかなり 規制が緩やかになったといえる。

官製住宅不況 改正前

・構造関係規定の見直し

改正後

・大臣認定プログラム ・構造設計一級建築士と  設備設計一級建築士の関与を義務化 2009

建築基準法改正

・既存不適格建築物の増築に係る

住宅着工軒数 80 万個割れ

 基準(告示 566 号)の緩和(9 月)

構造上一体

長期優良住宅制度(6 月) 既存部分

瑕疵担保履行法(10 月) 耐震偽装問題以降の法律の厳格化が進み、それに対応するように住宅着工の数が減っているのが分かる。それに対する 解決策として。2009 年に規制緩和が行われた。以下に示すのがその概要である。

4 号木造建築物

左記以外の建築物

構造計算が必要

ほぼ通常の構造計算

4 号木造建築物 釣り合いよく耐力壁を 配置すること等の基準

増築部分

新耐震基準に適合している部分に対しても

釣り合いよく耐力壁を配置する等の基準、

耐震診断を行わなければならない

耐震診断基準、新耐震基準に適合すれば 構造計算は不要

左記以外の建築物 ほぼ通常の構造計算

構造上分離

に適合すれば、構造計

A≦1/2

算は不要

既存部分

4 号木造建築物

左記以外の建築物

4 号木造建築物

左記以外の建築物

構造計算が必要

ほぼ通常の構造計算

構造計算不要

ほぼ通常の構造計算

構造上分離 耐震診断基準に 適合

耐震診断基準に適合

配置すること等の基準、

耐震診断基準、新耐震診

耐震診断基準又は新耐

断基準に適合

ば、構造計算は不要

これにより、増改築時の手続きの円滑化とリノベーション事業の促進を望むことができる。これは、ストック社会に対応した建築界を 目指す上で前進した規制緩和といえる。

リノベーションの有効性についての研究

増築部分

既存部分

増築部分

新耐震基準に適合している部分に対しても

釣り合いよく耐力壁を配置するなどの

耐震診断を行わなければならない

基準に適合すれば構造計算不要 (既存部分の危険性が増大しない場合)

構造計算必要 条件付きで構造計算不要 構造計算不要

釣り合いよく耐力壁を

震診断基準に適合すれ

94

既存部分

改正後

現行規定

構造上一体

増築部分

この法改正により、新耐震基準適合の既存建築物は耐震診断が不要となり、4 号木造建築物の構造計算も不要となった。 これにより、リノベーションを行う上で問題とされた法規制に対し、若干ながらの円滑化が進むと考えられる。 とりわけ、木造4号建築物に対する基準の緩和は大胆ではないものの、住宅密集地域における解決策に有効であると思われる。 ここで、さらなる法律の緩和並びに、新たな法律として、増改築と一色端にしている法の分化を図る必要があると考える。 とりわけ、改築に関しては減築という新たな手法が着目されている点においても法整備の必要性を感じる。減築に際して規制緩和や 構造的にメリットのあることに対しての法的制約の軟化は耐震に関してさらなる躍進につながると思う。

95


経済的側面からみたリノベーション

Economy ここでは住宅ストックの現状、不動産ビジネス、 工事費、税金などといった経済面の切り口から リノベーションについて見ていく。 これによってリノベーションがいかにこれから のストック社会において有効であるかを確認し ていこうと思う。

96

リノベーションの有効性についての研究

97


Economy

日本の住宅ストックの現状

(千戸)

日本ではすでに、住宅ストックの数が世帯数を大幅に上回り、空き家の増加が大きな問題となっている。この問題の原因は 20 世紀、成長時代

2000

の産物からきていることは疑いようがないだろう。バブル期の土地神話のもと大量に生産されたアパートや、バブル崩壊後ゆとりローン政策に よって増えたマイホームなどにより、膨大な住宅ストックが現在日本には存在している。しかも、より悪いことに、これらストックの1/3以

1800

上を占めているのが旧耐震の住宅であり、質的側面でも問題を抱えているといえる。

1600

またこのような状況の中でも、知っての通り、いまだに住宅は年間 80 万戸も新しくつくられている。もちろん日本の住宅の更新周期が短く、

1400

欧米諸国と純粋に比較するのが必ずしも正しいとは言わないが、日本の3 倍以上もの人口を誇るアメリカよりも日本が住宅をつくる必要はさす

1200

がにないと思える。 ではストックに対する考えはどうかというと、これにも問題があるといえるだろう。住宅投資総額に占める維持補修費の比率は、欧米諸国の

1000

30%程度と極めて低く、また中古住宅の流通量が異常に低い。

新築着工戸数の推移

800 600

新設住宅戸数の推移

400 1,000,000 200 バブル期の膨大なストック

900,000

0 1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

800,000 アメリカ新築着工戸数

バブル崩壊後

700,000

イギリス新築着工戸数

日本新築着工戸数

持家のピーク 600,000 ■

住宅売買戸数の推移 (千戸)

500,000

7000 400,000 6000 300,000 5000 200,000 4000 100,000 3000 0 1987

1989

1991

賃貸の新設戸数

1993

1995

1997

1999

持ち家の新設戸数

2001

2003

2005

2007

2009

分譲住宅の新設戸数

2000 1000 0 1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

住宅ストックの年代別内訳 (2003年) アメリカ売買個数

旧耐震

イギリス売買個数

日本売買個数

ストック社会のモデルとして このように日本の住宅市場は新築市場に過度に依存した、国際的にみても特殊な体質を持っている。今後、健全なストック型社会を目指すため -1960

1961-70

1971-80

1981-90

1991-2000

2001-

にも、新築の 70 倍あるマーケットを確立するためにも、地球環境問題に対応するためにも、このような特質を改める事が必要となってくる。 これからの時代の都市再生・建築再生のモデルは大規模なスクラップ&ビルド型の開発だけでなく、既存の社会ストックを活用した、より修復

約 4,500 万戸

98

リノベーションの有効性についての研究

的であり、かつ、時代とともに変化する都市活動に対応可能な柔軟さを持つことが求められる。つまりリノベーションは、ある意味で、時代の 必然と言えるだろう。

99


Economy

不動産ビジネスとしての側面

■ 間接金融

■ 直接金融

リノベーションに対して産業的に多様なマーケットの誕生が期待できる現在、それらの事業パターン、関連分野も様々存在する。しかし不動産

個人が銀行に預金をし、それを銀行は運営して企業に融資する。

個人直接、企業に対して投資を行い、企業からの株式や債券、

としての視点が必要になってくることは間違いないだろう。そこでリノベーションを不動産ビジネスとして捉える上での知識を補っていこう。

企業からの返済に含まれる利子によって銀行は収益を得て、そ

また元利の返済等によって収益を得る。

れを個人に返還していく。

仲介がないため、各企業の実績及び可能性によって判断が市

不動産ビジネスには、さまざまなプレイヤーがさまざまな目的をもって参加している。

銀行は実際に個人からの預金を運営しているため、リスクを伴

場にゆだねられる。

そこで不動産ビジネスを成功に導いていくためには、さまざまなプレイヤーのベクトルを整え、プロジェクトをマネジメントしていくプロジェ

う。

クトマネージャーが必要不可欠となってくる。 土地所有者や事業主体、または不動産知識を備えた建築家やディベロッパーがプロジェクトマネジメントを行うことになるだろう。

預金

個人

個人 引出

プレイヤー

目的

土地所有者

土地の有効活用、収益獲得、資産保有・継承、節税、ビジネスの拠点

金融機関

資金融資、出資等

建設会社

工事取得、良質な工事

建設事務所等

設計業務取得、優良な設計

テナント・入居者

不動産の利用、居住等

行政

都市計画、まちづくり、産業育成

資材メーカー・商社等

資材等の販売

投資

融資 銀行

市場 株式・債券

企業

返済

企業

プロジェクトファイナンスの可能性 リノベーションを不動産ビジネスとして行う際、信用力の高い事業主体が運営するのであれば、株式の発行や債券の発行という手法で資金調 達が行えるが、多くの場合はそうではないだろう。つまりプロジェクトの収益力によって資金を調達するノンリコースローンか証券化が有力 になってくる。 そこで次にその2 つの有力な手法の内容と、そこから浮かび上がってくる問題点について考えていこうと思う。

■ リコースローン

不動産ビジネスの資金調達手法

■ ノンリコースローン

借り入れの際に差し入れた担保価値が目減りした場合、担保

万一返済できなくなった場合でも、資金回収は担保となった

物件以外からも返済義務が生じるローン形態。

物件までしか及ばないため、そのリスクが債務者やその他の

個人の信用力が融資の判断基準になり、また融資対象物件を

資産などに及ぶことはない。

売却して満たなかった債権額の返済義務があることから、年

金融機関側から見るとリコースローンよりリスクが高いた

齢や資産・保証人など、必然的に確実な担保を取れる融資が

め、金利を通常の金利よりも高めに設 定したり、利益の一

中心となる。

部を成功報酬として受け取る。

では、これら各プレイヤーのさまざまな目的を踏まえた上で、もっとも重要である資金の調達方法について考えていきたいと思う。 かつてバブル経済以前、土地の価値が上がり続けることを前提とした社会の中では、土地を担保として融資を受けることが一般的だった。しか

融資

融資

し知ってのとおりバブルは崩壊し、土地の価値は下がることが前提になってしまった。そうすると今まで通りの土地担保融資は成り立たなくなっ てしまう。 そこで従来の手法からベクトルを変える必要が問われ、その根拠と距離感から3 つの手法へと転換が行われてきている。

担保物件

銀行

返済不能

担保物件

返済不能

銀行

■ ファイナンス・スキームの変化 返済の義務が担保物件以外にも及ぶ

間接金融

返済の義務が担保物件にしかない

売却して返済

土地担保融資

売却

ノンリコースローン

(従来のファイナンス)

売却して返済 銀行

売却

銀行

¥ コーポレートファイナンス

プロジェクトファイナンス

(事業主体の信用力)

担保物件を売却しても足りなかった場合、

(プロジェクトの信用力)

株式の発行

不動産の証券化

社債の発行

J-REIT

担保物件以外に債務の返済義務は生じない

不足分の返済が義務

しかし実際に個人向けにノンリコースローンを取り扱っている金融機関が少なく、敷居が高いという問題がある。 ノンリコースローンを受けるためには事前に時間や資金をかけ、さまざまな調査を本格的に行い、売主にもそれに協力してもらわなくてはいけ ない。また、定期的な鑑定評価を行うことを条件に付けられることが多く、その評価次第では強制的に売却しなければならなくなってしまうこ

直接金融

100

リノベーションの有効性についての研究

ともある。

101


Economy

不動産活用から不動産投資へ

不動産証券化の背景

従来の土地活用は土地を持ち続けることを前提として経済行為であり、かつ投資期間がなく、売却・換金化などの出口もないものであった。

■ 個人・投資家等にとっての新たな投資対象

このため、これら土地または不動産の活用は不動産投資とは言えず、90 年代以降に不動産市場の主要なプレイヤーとして登場した外資やファ ンド、 REITなどの考える不動産投資の減速からは漏れてしまっていた。

従来の不動産

従来の金融資産(預貯金等)

今後、彼らをターゲットとして狙っていくためには彼らのルールを十分に理解し、行動をとっていく必要があるだろう。 ・利回りは比較的高い

・利回りが低い

・個別性、地域性が高い

・個別性、地域性はない

・一定の投資期間を定めていること

・流動性が低い

・流動性が高い

・その投資期間の満了時までには必ず売却等によって換金化すること

・投資期間が長い

・投資期間、投資単位が選択できる

・土地と建物とを一体で、投資期間中に得られる賃料収入(インカムゲイン)と、売却時に得られる値上がり益(キャピタルゲイン)

・最小投資単位が大きくリスクが高い

・市場は透明で情報公開も十分

■ 不動産投資の定義

 とを期待していること

・情報公開が不十分で市場が不透明

・ほかの投資対象(株等の金融資産など)との比較が可能な投資指標で評価して判断できること

不動産の証券化

不動産証券化商品

では話を元に戻して、もう一つの不動産ビジネスの資金調達手法である不動産の証券化について、内容と問題点を考えていきたい。 ・根周りは比較的高い まずA社ビルという不動産があったとし、それをあるファンドがほしがっていたとする。ファンドはまず銀行から融資を受ける。それでも足

・個別性、地域性は薄く、流動性は高い

りないため金融機関に対して社債を発行し、その代りに代金を受け取る。それでもまだ足りないため、投資家からも出資を受ける。

・投資期間は選択することができ、最小投資単位も小さいためリスクの分散化が可能

これらの資金でA社ビルを購入し、自らの資産に加えることができる。

・情報公開が十分で、市場は透明

その後、 A社ビルの賃料収入がファンドには入ってくる。ファンドは自らのなかに資金をためてはいけないため、この収入を以下の優先順位 で流していく。まず第一に銀行への返済金に充てる。第二に金融機関への元利返済を行い、残った収入を第三に投資家への配当という形に充 てていく。 このファンドは自ら資金をためてはいけないという体質から、本来かかるべき税金がかからずにすむというメリットが生まれる。

不動産証券化の背景にはさまざまな理由が存在する。 繰り返しになるが、不動産担保融資が伸び悩んだことからくる新たな資金調達手段としての理由や、企業のスリム化といった理由。また大手 不動産企業にとっては従来の自らが不動産を所有して運営する形態から、自らは不動産を所有せずにマネジメントし、管理運営等に回ること により、リスクを限定できるといった理由もある。

■ 不動産証券化のスキーム

しかし不動産の証券化には、そこに至るまでにかかるコストがあるために、小規模な不動産ビジネスには向いていないといった問題点もある。 ファンド (B/S)

資産

またこのことから市場規模が比較的小さいのも問題点といえるだろう。 融資  銀行

負債

■ 不動産証券化市場の規模

返済 日本の土地・建物 (2,000~

売却

2,500 兆円)

社債の代金

代金

A社ビル

A社ビル

純資産

元利の返済

金融機関

非商業用不動産 (600~ 700 兆円)

* ファンドは自らのなかに  資金をためてはいけない

投資家 配当

(60~7 0 兆円)

投資適格不動産

出資 賃料収入

商業用不動産

・法人所有(400~

450 兆円)

・個人所有(200~

250 兆円)

証券化

     ↓  税金がかからずにすむ

102

リノベーションの有効性についての研究

103


Economy

税金の抜け道 ■

不動産取得税

不動産の購入や住宅の新築など、不動産を取得したときに課税されるのが、不動産取得税。 不動産取得税の額は、不動産の価格(通常、固定資産税の評価額)に、所得した不動産の種類 により一定の税率を掛けて算出する。

これら税金のうち、登録免許税と不動産取得税の割合が大きく、工事費全体の3%ほどもかかってしまう。これら税金を以下に抑えられるかが 事業を計画していく上で重要となってくるのは言うまでもない。そこで次に、その方法の一つとして投資信託という手法を紹介しようと思う。

土地取得時(住宅用地)

投資信託

評価額 × 3% < G w レ E w M c T ャ h b T w ヤ �x ヘ G レ ケ

登録免許税や不動産取得税というのは、簡単にいえば土地・建物を売買したときに発生する。そこで土地・建物ではなく権利のみを売買す

ヘw

ることにして税金を逃れようというのが、投資信託の考え方だ。 A:取得してから3

年以内(やむをえない自事情がある場合は4

B:住宅を新築してから1

年以内)にその土地に新築したとき

年以内に、その土地を取得したとき

まず、土地・建物を持っている委託者が信託銀行などの受託者にそれを委託する。受託者は、その土地・建物を運営させて収益を上げる。 そして受託者自身がかかった運営費等を引いた分が、利益として、それを受取る権利を持つ受益者へと流れることとなる。これが投資信託

C:未入居の土地付き住宅を取得したとき

の手法だ。この利益を受け取る権利を信託受益権と呼び、委託者自身がそれを持つのが一般的だ。

0円 ャKh T ー ■

価額 × 1/2 × 建物床面積の2

倍(200 ャ U v S ) × 3%

住宅新築時(床面積と共用部分の按分面積を加えた面積が 50 ャ以上2

40 ャ < w ヤ

土地・建物 )

運営を依頼

土地・建物を信託

(建物評価額-控除額 1,200 万円(※) ) × 3% 委託者

※ 認定長期優良住宅の場合は 13,000万 円

同一可

登録免許税

信託受益権

運営会社

信託銀行など

受益者

不動産の売買契約などが成立すると、所有者移転登記や建物を新築した場合の保存登記を行う。

受託者

また、銀行などのローンを利用するとき、抵当権の設定登記が必要になる。 このような登記の際に課税されるのが、登録免許税。

土地取得時の土地所有権移転登記:評価額 ×1%

住宅新築時の建物表示登記:無税

登録免許税の額は、不動産の価格などに、登記の目的により一定の税率を掛けて計算する。

(収 益)ー(

運営費 )

(収 益)

しかし、先に述べたように、この新薬受益権という権利は売買することができる。つまりこれを誰かに売った時点で、実際の土地・建物

所有県保存登記:評価額 × 0.4% (下記の条件をすべて満たす特例適用住宅の場合:評価額 × 0.15%) ※ 認定長期優良住宅の場合は 0.1%

は自分の手元にあるが、権利はその誰かが持っている。事実上その誰かが土地・建物を持っていることと何ら変わりがないのだ。にもか かわらず、土地・建物が売買されていないことから、登録免許税や不動産取得税がかからないので、夢のような方法と言えるだろう。 もちろんデメリットもある。信託銀行などに委託を申し込む場合に手数料がかかってしまう。だがこれにも解決策が用意されている。民

A:床面積 50 ャ ヘ 「 J G = リ u B:2011年3月3

事信託という方法だ。これは、何も費用の高い信託銀行に委託せずに、自分たちの中の誰かを委託者にしてしまえばいいじゃないかとい

1 日までに新築または取得した自分で住むための住宅

う考え方だ。そうすることで余計な手数料をかけずに投資信託という手法を行うことができる。

C:住宅専用または住宅部分の床面積が9割以上の兼用住宅 D:新築または取得してから1

年以内に登録すること

新築信仰を転換

ローンを借りたとき

従来の住宅市場につては、新築マーケットが完全に主役の地位を占めていた。先にも述べたが、新築供給戸数が中古成約戸数の3

倍余りであっ

抵当権設定登記:債権額(借入額)× 0.4%

たり、中古マンションの平均成約単価が新築分譲単価の 60%ほどの水準であったり、新築着工数がアメリカの 70%ほどに対して中古住宅の流 通量が 30%程度であったりなどだ。

(上記の特例適用住宅購入のためのローンの場合:債権額 × 0.1%)

このような格差には、新築信仰ともいえる日本独特の価値観が、供給側にもユーザー側にも根強く存在していることが大きな要因とも言えるだ ろう。 これまで見てきたように、リノベーションが経済的にも有益であることを証明することで、こうした新築信仰という価値観を転換する一つのきっ かけになるだろう。 ( 参考: 「家づくり究極ガイド 2010-2011」沢井聖一著、株式会社エクスナレッジ刊 )

104

リノベーションの有効性についての研究

105


家づくりにかかわる税金の概要

そもそも家を建てるのに、いくら必要か?

建築工事費以外にかかる諸費用として、印紙税や固定資産税、都市計画税や不動産取得税、登録免許税などの税金がある。家づくりのためには、

家を建てるのに必要な費用を見てみようと思う。これは、大きく

建築工事費以外にもこうした諸費用を見込んでの資金調達が必要となってくる。

諸費用

分けて建築工事費と諸費用とに分けられる。 建築工事費というのは、工務店などの工事会社や設計事務所に払 う費用のことで、直接建物を建てるために必要な本体工事費と、 別途工事費といわれる費用、それに設計料の3

Economy

別途工事費 建築工事費

印紙税

設計料

住宅を新築する場合には建築業者と請負契約書を、住宅資金として銀行などの融資を受ける場 合には金銭消費貸借契約書を作成する。

つの費用から成っ

このような契約書を作成する場合に課税されるのが、印紙税。

ている。

印紙税の額は、請負金額や売買金額などによって定められており、収入印紙を契約書に貼って 消印することよって納付する。

本体工事費というのは、広告やカタログなどにのっている坪いく らといった価格のことで、つまりは広告に書かれている価格だけ

では建物は建たないということになる。一般的に本体工事費は全

坪5 0万 円

費用の 75%ほどといわれている。 これに対して別途工事費とは、会社などによって多少内容は変わ るが、既存建築の解体費や地盤改良工事費、建物の外まわりの塀

契約書の記載金額に応じて下記のように課税される。

約 75%

記載金額

広告・カタログ

本体工事費

売買契約

100 万円超 200 万円以下

ローン契約

400 円

200 万円超 300 万円以下

や門、屋外駐車場、植栽などの外構工事、照明器具工事費やカー

請負契約

2,000 円

1,000 円

2,000 円

テン工事費、空調工事費、屋外電気工事費や、給排水の引き込み 300 万円超 500 万円以下

工事費などのことを指すことが多い。

2,000 円

たとえば洗面所や浴室など水回りの照明は本体工事費に含まれる のが通常だが、リビングやベッドルームの照明などは住み手の好 みで選択されることが多いため、通常本体工事費には含まれてい ない。 ○千万円

500 万円超 1000 万円以下

10,000円

10,000円

10,000円

1000 万円超 5000 万円以下

15,000円

15,000円

20,000円

5000 万円超1 億円以下

45,000円

45,000円

60,000円

別途工事費 項目

内容

既存建築の解体費

P o 8 Q w ヤ �s r A {

日現在で、各市町村の固定資産課税台帳に記載されている土地・建物にかかる税金で、

たり1

通常の木造住宅では必要ないケースがほとんど。しかし埋立 地などの軟弱地盤では必要。

外講工事費

毎年1月1

住宅用地や一定の新築住宅については軽減措置がある。 E P r . w ヤ �z ャ K

万円前後ほど。

地盤改良工事費

固定資産税

隣地境界のフェンスや門扉、屋外駐車場、造園費用など。

一般の土地:評価額 × 1.4%(標準税率)

小規模住宅用地(1 戸あたり 200 ャ < w

(評価額 × 1/6)× 1.4%(標準税率) : )

一般住宅用地(1 戸あたり 200 ャ ��� Q

(評価額 × 1/3)× 1.4%(標準税率) : )

建物:評価額 × 1.4%(標準税率)

住宅新築時3

年間(マンションでは5

年間)

(床面積の 50%以上居住用かつ、床面積と共有部分の按分面積を加えた面積が 5 照明器具工事費

以上

280 ャ < w © E

宅の

120 ャ < w

(評価額 × 1.4%)× 1/2 : )

リビング、ダイニング、寝室等の照明器具は本体工事費に含 まれないことが多い。

空調工事/特殊設備工事費

冷暖房機器の配管・取り付け工事、床暖房、家庭内 LAN シ

都市計画税

引き込み工事費

建物外部の配線・配管、電気工事や給排水衛生工事など。

上下水道や電話、TV、通信回線など。自治体により、上下水

都市計画上の市街化区域内のある土地・建物について、固定資産税と同様にかかる税金で、住 宅用地については一定の軽減措置がある。

ステムなど。コスト的に大きくなる傾向もある。

屋外電気工事費/給排水衛生工事費

一般の土地:評価額 × 0.3%(最高税率)

小規模住宅用地(1 戸あたり 200 ャ < w

(評価額 × 1/3)× 0.3%(最高税率) : )

一般住宅用地(1 戸あたり 200 ャ メ Q

(評価額 × 2/3)× 0.3%(最高税率) : )

建物:評価額 × 0.3%(最高税率)

道等の引き込みについての負担金が決まっていることが多 い。

106

リノベーションの有効性についての研究

107


Economy

税金の抜け道 ■

不動産取得税

不動産の購入や住宅の新築など、不動産を取得したときに課税されるのが、不動産取得税。 不動産取得税の額は、不動産の価格(通常、固定資産税の評価額)に、所得した不動産の種類 により一定の税率を掛けて算出する。

これら税金のうち、登録免許税と不動産取得税の割合が大きく、工事費全体の3%ほどもかかってしまう。これら税金を以下に抑えられるかが 事業を計画していく上で重要となってくるのは言うまでもない。そこで次に、その方法の一つとして投資信託という手法を紹介しようと思う。

土地取得時(住宅用地)

投資信託

評価額 × 3% < G w レ E w M c T ャ h b T w ヤ �x ヘ G レ ケ

登録免許税や不動産取得税というのは、簡単にいえば土地・建物を売買したときに発生する。そこで土地・建物ではなく権利のみを売買す

ヘw

ることにして税金を逃れようというのが、投資信託の考え方だ。 A:取得してから3

年以内(やむをえない自事情がある場合は4

B:住宅を新築してから1

年以内)にその土地に新築したとき

年以内に、その土地を取得したとき

まず、土地・建物を持っている委託者が信託銀行などの受託者にそれを委託する。受託者は、その土地・建物を運営させて収益を上げる。 そして受託者自身がかかった運営費等を引いた分が、利益として、それを受取る権利を持つ受益者へと流れることとなる。これが投資信託

C:未入居の土地付き住宅を取得したとき

の手法だ。この利益を受け取る権利を信託受益権と呼び、委託者自身がそれを持つのが一般的だ。

0円 ャKh T ー ■

価額 × 1/2 × 建物床面積の2

倍(200 ャ U v S ) × 3%

住宅新築時(床面積と共用部分の按分面積を加えた面積が 50 ャ以上2

40 ャ < w ヤ

土地・建物 )

運営を依頼

土地・建物を信託

(建物評価額-控除額 1,200 万円(※) ) × 3% 委託者

※ 認定長期優良住宅の場合は 13,000万 円

同一可

登録免許税

信託受益権

運営会社

信託銀行など

受益者

不動産の売買契約などが成立すると、所有者移転登記や建物を新築した場合の保存登記を行う。

受託者

また、銀行などのローンを利用するとき、抵当権の設定登記が必要になる。 このような登記の際に課税されるのが、登録免許税。

土地取得時の土地所有権移転登記:評価額 ×1%

住宅新築時の建物表示登記:無税

登録免許税の額は、不動産の価格などに、登記の目的により一定の税率を掛けて計算する。

(収 益)ー(

運営費 )

(収 益)

しかし、先に述べたように、この新薬受益権という権利は売買することができる。つまりこれを誰かに売った時点で、実際の土地・建物

所有県保存登記:評価額 × 0.4% (下記の条件をすべて満たす特例適用住宅の場合:評価額 × 0.15%) ※ 認定長期優良住宅の場合は 0.1%

は自分の手元にあるが、権利はその誰かが持っている。事実上その誰かが土地・建物を持っていることと何ら変わりがないのだ。にもか かわらず、土地・建物が売買されていないことから、登録免許税や不動産取得税がかからないので、夢のような方法と言えるだろう。 もちろんデメリットもある。信託銀行などに委託を申し込む場合に手数料がかかってしまう。だがこれにも解決策が用意されている。民

A:床面積 50 ャ ヘ 「 J G = リ u B:2011年3月3

事信託という方法だ。これは、何も費用の高い信託銀行に委託せずに、自分たちの中の誰かを委託者にしてしまえばいいじゃないかとい

1 日までに新築または取得した自分で住むための住宅

う考え方だ。そうすることで余計な手数料をかけずに投資信託という手法を行うことができる。

C:住宅専用または住宅部分の床面積が9割以上の兼用住宅 D:新築または取得してから1

年以内に登録すること

新築信仰を転換

ローンを借りたとき

従来の住宅市場につては、新築マーケットが完全に主役の地位を占めていた。先にも述べたが、新築供給戸数が中古成約戸数の3

倍余りであっ

抵当権設定登記:債権額(借入額)× 0.4%

たり、中古マンションの平均成約単価が新築分譲単価の 60%ほどの水準であったり、新築着工数がアメリカの 70%ほどに対して中古住宅の流 通量が 30%程度であったりなどだ。

(上記の特例適用住宅購入のためのローンの場合:債権額 × 0.1%)

このような格差には、新築信仰ともいえる日本独特の価値観が、供給側にもユーザー側にも根強く存在していることが大きな要因とも言えるだ ろう。 これまで見てきたように、リノベーションが経済的にも有益であることを証明することで、こうした新築信仰という価値観を転換する一つのきっ かけになるだろう。 ( 参考: 「家づくり究極ガイド 2010-2011」沢井聖一著、株式会社エクスナレッジ刊 )

108

リノベーションの有効性についての研究

109


手法的側面からみたリノベーション

Method ここでは住宅ストックの現状、不動産ビジネス、 工事費、税金などといった経済面の切り口から リノベーションについて見ていく。 これによってリノベーションがいかにこれから のストック社会において有効であるかを確認し ていこうと思う。

110

リノベーションの有効性についての研究

111


Method

事例年代別

1900

YA-CHI-YO (1889)

実験装置 /masia 2008(18 世紀末 ) 貝塚の住宅 (1909)

高木邸 (1909)

カヤバ珈琲 (1916)

NOWHERE BUT HAYAMA(1929)

1945

1950

1955

1960

塩谷町の住居 (1964)

1965

house r (1968) するところ (1969)

1970

sakura flat (1974)

1975 sayama flat(1978) 1980

南洋堂書店 (1980) 西加茂の家 (1982) 奥沢の住宅 (1984)

1985

NOWHERE BUT HAYAMA(1989)

1990

1995

2000

2005

sayama flat(2007) 西加茂の家 (2007)

実験装置 /masia 2008(2008) 2010

112

塩谷町の住居 (2006)

南洋堂書店 (2007)

リノベーションの有効性についての研究

NOWHERE BUT HAYAMA(2009)

奥沢の住宅 (2009)

高木邸 (2009)

house r (2009)

貝塚の住宅 (2009) sakura flat (2009)

YA-CHI-YO (2009)

カヤバ珈琲 (2009)

するところ (2009)

113


Method NOWHERE BUT HAYAMA

吉村靖孝建築設計事務所

奥沢の家 長坂常 / スキーマ建築計画

コンセプトダイアグラム

外装は既存のタイル面の上か ら白色塗料を塗ることで、情 報を劣化させる。

新旧対比 ダイアグラムに沿った配 置で耐震壁を挿入し、囲 われたスペースを新しい 場所とした。

stock after renovation

既存に家型というう特徴 的な形態を挿入する手法 での新旧対比

小屋組を顕にする。

家型の部分は耐震コア。 新しい構造コアを通して 外部が見える。

PLAN 2F

天井裏と新しい壁体の 対象性を表現。

異物と既存

上部に家型コア のヴォリューム が見える。

114

リノベーションの有効性についての研究

PLAN 1F 1/

115


Method 貝塚の住宅 荒木 洋+長澤浩二 /AN Architectures

塩谷町の住居 島田陽 / タトアーキテクツ

Type 2

コンセプトダイアグラム

地震力は強靭な 耐力箱に任せ る。

耐力箱内部は快 適な温熱架橋に するため、コア の壁には断熱材 を導入。

構造コア部 既存の壁を取 り払い、木柱 のみを残す。

挿入したコア

そこに、耐力

内部

箱を挿入。

2f

2F

構造補強を兼 plan

ねた棚の向こ うは構造コア stock plan

116

リノベーションの有効性についての研究

1F plan

117


Method remove type

joint type

既存の構造体をそのまま利用して

隣の空き家との間にボックスを挿

構造壁以外の壁を変更する

change!

入する

change!

既存の壁や床などに新たにボイド 帯のように壁を配置して隣と空き

や開口を開ける

change!

change!

家と繋ぎ合わせる

insert type

両方の空き家の構造体のみを残し、 一つの建物にまとめる 四隅に構造補強を兼ねたボックス

change!

change!

を挿入する

両方の空き家の一部を繋ぎ合わせ、

既存の構造体を利用して上下を繋

change!

118

リノベーションの有効性についての研究

ぐコアを設ける

スラブをスッテプにして繋ぐ

change!

119


Project ここまで分析してきた、3つの側面からの内容 を踏まえ、具体的な計画として提案を行う。 静岡県の子浦という集落を対象にし、多数存在 する空き家をリノベーションしたホテルの計画 をシミュレーションする。

120

リノベーションの有効性についての研究

121


Project 2010 年度 子浦空き家ホテルプロジェクト

空き家を使ったホテル

2010 年度において、子浦の問題点である空き家の調査を重点的に調べました。今回は実測を通してプロジェクトのシュミ

空き家や観光の減少といった問題に対し、空き家や観光資源を観光や住民の生活を手助けするものにする必要があると感じて

レーションを行い、子浦における空き家をつかったホテルの在り方を検討しています。

います。

ここ子浦では漁村の生活と山や海といった環境が美しい風景を生み出している反面、美術館や社寺といった観光スポットがあ

現状

りません。しかし子浦では新しく観光施設を建設するのではなく、漁村の風景を活かし、訪れる人が漁村の住民となったよう な体験ができる、空き家を活用した「空き家ホテル」を提案します。

現在西子浦には世帯数 92 人口男 99 人女 90 人総数 189 人 平成 ( 22 年 4 月 1 日 となっています。その中で今回の調査で ) 確認できた空き家もしくは年に数回しか使ってないような建物は 51 件あり、これは西子浦の街と大きく関わっている問題 と見ています。それと同時に観光業の力が弱くなってきていることから観光客や若者の姿が減少していっているのが現状と 言えます。 環境

生活景

海と山に囲まれた高低差のある町

海の生活で使われている道具

並み 子浦地区 空き家カタログ indexより

ヒューマンスケールの保たれた道 奥へと誘導される道

N

建物

井戸や水場のある風景 道と敷地が曖昧で道が庭のように なっている

車の進入してこない道 塀が少なく道と敷地の境界が曖昧

堤防 scale = 1/1,500 39

空き家

40

エントランス

38

12

31

49 50

世帯数 92 空き家 51 件

32

33

29

3 5 35 6 36 4 45

空き家の利用状況 ・年に数回訪れる ・倉庫として 使用 ・所有者不明

15

8 48

14

11

16

44

26

1 19

24

43

3 1

18

25

4 10

17

27 7 28 2

30

34

9

51

眺望や庭といった環境利用

街を歩いた時、漁村の生活を体感

空き家の有効活用

5

23

20

47

46 22 2 21

6

7

8

・売り出し中 ・住めない状況になっている 空き家ホテル

街全体に点在するように空き家もしくは、利用状況が少ない建物が存在しており、街には活気がなく、寂しい風景がひろがっ ている。

122

リノベーションの有効性についての研究

歩いて楽しい歩行者だけの町 並み。道と建物の境界がより 曖昧になり、町全体がホテル のような雰囲気になる。

特色ある子浦の生活景を継承 しながら創るアイデンティ ティのある景観。

空き家を受付や宿泊部屋などホ テルの機能として利用する。空 き家を利用し、客室にし、まる ごと一軒が客室となる。

123


Project ■  「空き家ホテル」の目的

■  「空き家ホテル」 の提案 西森研究室では「、まちの空き家を観光資源として活用する」ことをテーマに、西子浦地区を対象とした観光支援サー

観光とまつづくりとの融合による観光支援サービスの新たなモデルの創出

ビス「空き家ホテル」 を提案していきたいと考えています。 企業・経済団体などが、子浦地区の空き家を有効に活用し、観光客に対して長期滞在も可能な宿泊サービスを提案 していけたらと思います。それにともない、地元商店や観光協会とも連携して観光サポートを行うことで、既存事

地域資源の有効活用

業を含めた観光支援サービスを提案していこうというものです。

「空き家ホテル」

この滞在型観光支援サービスを創出し復興していくことによって、子浦の抱える空き家という問題を、地域および 観光の活性化への資源へと変革していきたいと考えています。

■  「空き家ホテル」のネットワーク概要 観光事業

不動産売却 または貸付

家主 (不動産所有者)

金融機関

まちづくり

「観光客」

返済 融資

不動産代金

融合化

「地域住民」

・地域の生活や文化に触れたい

・地域資源を有効活用したい

・長期的に地域滞在したい

・地元商店を活性化したい

・海洋性レクリエーションを体験したい

・雇用を促進したい

空きやホテル

長期滞在しやすい宿泊サービス 空き家

観光客

空き家という「資源」を活かした、宿泊に専念したサービスを提���する。ホテルではあるが、宿泊形態は法律 上、賃貸契約となるため長期滞在プランが組みやすい。

運営 地元商店の活性化 行政

企業・経済団体 バックアップ支援

「空き家ホテル」は宿泊のみのサービスとなる。食事等については地域機能で補うことになるため、必然的に

(事業主体)

地元商店及びレストランなどを利用する事となり、活性化が図れる。 宿泊利用

(補助金・優遇措置)

文化・レクリエーションへの参加 観光協会との協力で、観光支援サービスを提案。宿泊に付帯して、観光客向けのガイドや地元料理の紹介など まちづくり

子浦と観光客とを繋ぐ橋渡しを行う。

連携・協力 地元商店

観光協会

雇用の促進 観光利用

「空きやホテル」の運営に伴い必要になってくる需要を補うため、地元商店や観光ビジネスなどが活性化して そこに雇用の受け入れ口が広がる。

食事等利用

124

リノベーションの有効性についての研究

125


Project No.03  (食堂&住居 → 食堂&レセプション)

「空き家ホテルプロジェクト」 :選定空き家 MAP

階数   :2 階 建築面積 :約 56.5┃ 延床面積 :約 113 ┃  建物状態 :良好 構造   :木造 ロケーション: なし 用途   :住居 駐車場  :なし 利用状況 :管理者あり

本年度の提案では、 「空き家カタログ」の中より右記に挙げる5軒の空き家を選定し、 それらを活用したシミュレーション計画を行う。

No.04  (住居 → 銭湯)

39

階数   :1 階 建築面積 :約 53.7┃ 延床面積 :約 107.4 ┃  建物状態 :半壊 構造   :木造 ロケーション: なし 用途   :住居 駐車場  :なし 利用状況 :所有者不明

40

38

No.14  (住居 → 客室) 31

49

階数   :2 階 建築面積 :約 36.8┃ 延床面積 :約 73.6 ┃  建物状態 :可 構造   :木造 ロケーション: 前庭あり 用途   :住宅 駐車場  :なし 利用状況 :ほとんど来ない

12

5 50 29

30 15

35 3 36 45 5

48

14

11

16

4

44

10

17

27

26

1

18

25

3

19 1

9

51

24 4 43 43

28

No.21  (住居 → 客室) 階数   :2 階 建築面積 :約 39.2 ┃ 延床面積 :約 78.4 ┃ 建物状態 :良好 構造   :木造 ロケーション: なし 用途   :民宿 駐車場  :なし 利用状況 :売出し中

5

23 20

47 6

46 6 22

7

21

8

No.28  (住居 → 客室)

子浦地区[空き家カタログ index] - 凡例 N

0 20

100

200m

scale = 1/1,500

空き家 エントランス

126

リノベーションの有効性についての研究

階数   :1 階 建築面積 :約 35.3 ┃ 延床面積 :約 35.3 ┃ 建物状態 :可 構造   :木造 ロケーション: なし 用途   :住居 駐車場  :なし 利用状況 :ほとんど来ない 127


Project No.3  ( 住居兼食堂 →

階数   :2 階 建築面積 :約 56.5㎡ 延床面積 :約 113 ㎡  建物状態 :良好

N

Before

S=1:100

選定理由: 外観に目立った損傷も無く、立地も海にほど近いという利点を持っている。主要道路 沿いでありとても目立つ場所にあるため「空き家ホテル」のレセプションとしての活用 が考えられる。

構造   :木造

さらに、この建物に食堂としての機能(キッチンなど)がまだ残っているのであれば、

ロケーション :なし

人が集まりやすいという立地条件も生かし、飲食店としての機能も提案することができ

用途   :住居

る。

駐車場  :なし 利用状況 :管理者あり

また、このプロジェクトを管理する人の住まいも兼ね備えている。

1F

2F

After

トイレ 外部テラス

寝室

リビング

構造と一体化した棚 カウンター   &

キッチン

トイレ

 受付

シャワー

吹き抜け

エントランス

室内を明るく照らす吹き抜け

シアタールーム カフェ&レストラン 吹き抜け

レストランの内観

128

リノベーションの有効性についての研究

1F

2F

129


Project N

Before

No.4  (住居 → 銭湯)

S=1:100

トイレ

階数   :1 階 建築面積 :約 53.7㎡

浴室

選定理由:

延床面積 :約 107.4 ㎡ 

住宅地の奥にひっそりと佇むこの建物は旗竿敷地という事もあり、隠れ家のような落ち着

建物状態 :半壊

いた雰囲気を感じる。また、海から程近い立地でもある。

構造   :木造

そういった立地条件や敷地の雰囲気を最大限に生かしながら宿泊者が利用できる公共浴場

ロケーション :なし

を提案する。 「No.3」との関係性も考えながら、この場所を中心に人の賑わう空間を生む

用途   :住居

事ができると考える。

居間

土間

駐車場  :なし 利用状況 :所有者不明

1F

After

トイレ

銭湯の内観

脱衣場 脱 衣場 風呂場

隣のレセプションとつながりを作る

エントランス エ ントランス ン トラ ト ランス

1F

吹き抜けを作り室内に光を取り込む

130

リノベーションの有効性についての研究

セレプションから通り抜ける ことができるようにする

131


Project N

Before

No.4  (住居 → 銭湯)

S=1:100

トイレ

階数   :1 階

浴室

選定理由:

建築面積 :約 53.7㎡ 延床面積 :約 107.4 ㎡ 

住宅地の奥にひっそりと佇むこの建物は旗竿敷地という事もあり、隠れ家のような落ち着

建物状態 :半壊

いた雰囲気を感じる。また、海から程近い立地でもある。

構造   :木造

そういった立地条件や敷地の雰囲気を最大限に生かしながら宿泊者が利用できる公共浴場

ロケーション :なし

を提案する。 「No.3」との関係性も考えながら、この場所を中心に人の賑わう空間を生む

用途   :住居

事ができると考える。

居間

土間

駐車場  :なし 利用状況 :所有者不明 銭湯

レセプション

1F

新たに付け足したスラブと階段

After

既存床スラブ(一部減築) 銭湯 1 を見る

温泉 2 温泉 1

洗い場 2 洗い場1 耐震補強構造帯を挿入 脱衣室

脱衣室

1F 銭湯 2 を見る

132

リノベーションの有効性についての研究

既存構造

レセプションから通り抜ける ことができるようにする

133


Project No.14  (住居 → 客室 01)

N

Before

S=1:100

トイレ

風呂 和室

和室

洗面所

和室

和室

階数   :2 階

選定理由:

建築面積 :約 36.8 ┃

西子浦地区のほぼ中央に位置するこの建物は前庭や池などがあり、南側には静かな細い路地、

延床面積 :約 73.6 ┃ 

北側には畑がありとても環境が良い場所であると言える。

建物状態 :可

キッチン

そのような環境の中、 「空き家ホテル」の客室としての活用を考える。

構造   :木造 特徴   : 前庭あり

具体的には、水廻りを新しいものに取り替え、広い庭をバーベキューなどで利用することを

用途   :住宅

想定し室内と庭の行き来を容易にするため、外と連続した土間空間を設ける。

駐車場  :なし

2階は6畳のベッドルームと大広間を備えている。また、バルコニーも新設し、室内の開放

利用状況 :ほとんど来ない

感を演出するとともに庭との関係性の強い建物になっている。

和室

玄関

トイレ

2F

1F

After

イ トイレ

シャワ ワールーム ム シャワールーム ベッドルーム

和室

庭と土間の連続

開放感を生むバルコニー 所 洗面所

バル ルコニー コニ ニー バルコニー

間 土間 和室

キッチ キッチン チン/ダイニング / キッチン/ダイニング トイレ トイレ

2F 庭と連続する広い土間

134

リノベーションの有効性についての研究

せり出たバルコニーは室内を広く感じさせる

1F

135


Project No.21  (住居 → 客室 02)

N

S=1:100

Before

キッチン 風呂 和室

選定理由:

階数   :2 階 建築面積 :約 39.2 ┃

和室

リノベーション内容

延床面積 :約 78.4 ┃

子浦地区の象徴的な細い路地に面しており、西側に広くプライベート性の高い裏庭を持つ。

建物状態 :良好

裏庭の整備なども必要だが、そういった敷地の特徴を生かした提案をする。

構造   :木造

建物の状態も良く、規模的にも程よい広さのため、客室としての提案を考える。

特徴   : 海近・ 庭付き 用途   :民宿 駐車場  :なし 利用状況 :売出し中

1F

2F

具体的には既存 1 階部分の水回りを広めの浴室に変更。キッチンを新たに設置する。 込み合いすぎる柱割りはシンプルに整理し直し、広めのワンルームに変更。 2 階部分は1室を洋室とし、落ち着いたベッドルームを新たにつくる。

After

風呂

キッチン

マスター ベッドルーム

入口は格子で目隠し 和室 リビング

1F

既存の柱割りを整理して広いワンルームに

136

リノベーションの有効性についての研究

2F

2階の和室は、落ち着いた寝室に変更

137


Project No.28  (住居 → 客室)

Before

N

S=1:100 和室

和室

キッチン

1F

階数   :1 階 建築面積 :約 35.3 ┃ 延床面積 :約 35.3 ┃

リノベーション内容 幅が狭く子浦の象徴的な路地に面し、海から少し離れた場所にひっそりと建っている。

建物状態 :可

規模はとても小さいが、建物状態が良く、広い前庭があるといった環境の良い敷地のため、

構造   :木造

客室としての活用を考えている。

After +500

+3200

特徴   : 階段沿い 用途   :住居

具体的には入り口から向かって左側の床を取り払い、土間空間として利用する。

駐車場  :なし

水回りや柱割りなどはあまり大きくは替えていない。

リビング

利用状況 :ほとんど来ない

和室

キッチン

土間

1F

▲ ±0

和室部分は既存のものをそのまま利用 +1700

-400

-2200 -400

入り口から水回りまでは床を抜き、一体の土間空間とする

138

リノベーションの有効性についての研究

139


Project 空き家ホテルにかかる諸経費の概算

宿泊売上

空き家ホテルにかかるであろう諸経費を計算すると、以下の表のようになる。

■ 年間利用率       1 月   2 月   3 月   4 月   5 月   6 月   7 月   8 月   9 月  10 月  11 月  12月

買い上げ費用

 リノベーション費用

No.03  (食堂&住居→食堂&レセプション)

利用日数   7.5   12   6    6    7.5   6    15   30   15   6    6    7.5 

1 階:69. 2 階:64. 間取り:4K

利用率   25%  40%  20%  20%  25%  20%  50&  100%  50%  20%   20%  25%

323 万円

2000 万円

延べ床:134.0 ャ

■ 宿泊売上         No.14     No.21    No28

     (40.20坪 )

定員      8~1 0 人   6~8

No.04  (住居→銭湯) 1 階:65. 間取り:2K 延べ床:65.

人   2~ 4人

1泊料金    9万円    6万円    3万円

280 万円

年間売上  18 万円 × 124.5 =   2,241万 円 経費率          70% 年間利益         30%   672.3万 円 返済期間

           11.9年 間

1600万 円

     (19.68 坪)

補助金等概要

No.14  (住居→客室) 1 階:51. 2 階:51. 間取り:5K

行政からの補助金や交付金を得ることができれば、事業を行う上での初期投資のうち自己資金の割合を下げることができ 298 万円

1535万 円

る。ここに「空き家ホテル」を行う上で、可能性のある補助金等について参考までに記しておく。 ただしこれらについては事業立ち上げ時の社会や事業内容によって大きく左右されることを了承してもらいたい。

延べ床:102.2 ャ      (36.69坪 )

名称

No.21  (住居→客室)

項目

交付官庁

補助金

農林水産省

交付金

農林水産省

補助金

農林水産省

1 階:36. 2 階:36. 間取り:4K

156 万円

1092 万円

農地等整備・保全事業費補助金等 ■ 賑わいある美しい農山漁村づくり推進事業

延べ床:72.      (21.84坪 )

広域連携共生・対流等推進交付金

No.28  (住居→客室) ■ 敏農村交流技術的支援事業

1 階:33. 間取り:2K 延べ床:33.

196 万円

502万 円

     (10.05坪 )

■ 情報発信機能強化支援事業 ■ 全国的腐朽推進活動等 ■ 広域連携支援事業

合計

1253 万円

6729万 円 7982 万円

140

リノベーションの有効性についての研究

山村再生総合対策事業費補助金

141


04 THE PRIMITIVE ARCHITECTURE ー生命としての建築ー

木下研究室 DM10082 山内響子

142

The primitive architecture - 生命としての建築 -

143


Introduction - 背景 What 's "primitve" ?

※ - Primitive -

建築とはなにか。建築をデザインする意味とは。

1. belonging to a very simple society with no industry.

私たち人間がつくる建築は、他の動物がつくる「巣」のように環境の

2. belonging to an early stage in the development of humans or animal.

一部に属するような存在ではなく、もはや一種の「環境」をつくり出

3. very simple and old-fashioned, especially when Sth is also not convenient

していると言える。しかし、現代に生きる私たちは、ほとんど無自覚

and comfortable.

にこの「環境」をつくりだしている。その結果が、環境問題という大 きな欠陥であろう。私たちは、今、この新しい「環境」をなにかしら の秩序をもってつくってゆく必要がある。 この「秩序」をめぐって、私たちは大昔から議論をし続けてきた。プ リミティブ・アーキテクチャ。「建築の根源とは何か」というこの問 いは、私たちに建築の本質を思い起こさせ、建築をつくることの喜び

4. (of a feeling or desire) very strong and not based on reason, as if from the earliest period of human life. /エキサイト英英辞典 - 原始 1. 根源をたずね極めること。 2. 物事のはじめ。おこり。元始。 3. 自然のままで、進化または変化しないこと。

を各々の時代に様々な形で与え続けている。しかし、現代の建築はど うであろう。現代建築は、19世紀にロジエが提唱した「原始の小屋」 理論を未だに継承し続けているように思える。そして、簡素な材料の 組み合わせで構成される空間をその本質と認識し、私たちは「原始」 という概念をあまりに形式的に捉えてしまっている。 建築はシェルターではない。建築とは環境をつくることである。そこ にどのような「秩序」を与えれるべきか。プリミティブ・アーキテク チャを再考することは、その秩序を見つけだす第一歩である。

シンプルな仕組み

生命の真理

PRIMITIVE は二つの意味をもっている。そして、それはイコールで結ばれ ない。非常に曖昧で、その時代の価値観などによって変化していくような 言葉の定義。

PRIMITIVE

=「秩序」 = <生命>の真理

144

The primitive architecture - 生命としての建築 -

145


Introduction - 目的 -

<生命>としての建築 20世紀の美学は<機械>であった。物事を部分に分けて理解し、そ の組み合わせで物事は成立可能であると考えられてきた。建築も同様 である。空間を部分にわけてゾーニングをおこない、そこに機能を与 え計画していく設計手法は20世紀の建築の基本である。また、クリ ストファー・アレクサンダーは、著書『パターン・ランゲージ』の中 で、設計図を描かかなくとも様々なパターンを組み合わせることで成 立可能な建築や都市のシステムを提唱した。 しかし、世界は分けてはつくられない。生物を切り刻めば大切な<何

×

か>が失われてしまうように、物事を分けた途端に大事なものが失わ れてしまうのだ。私たちの世界は、部分と部分の組み合わせで構成さ れているのではなく、生命のように複雑な構成をもっている。 生命において、「全体とは部分の総和以上の何ものかである。」*1 これが生命の真理であり、そしてこれが建築の新しい「秩序」になり 得る考えであると私は思う。 <生命>としての建築を構成するこの「秩序」とは何か。つまり、 「部 分の総和以上の何もの」とは何か。建築を根本的にを再考し、さらに 生物学上の<生命>理論と比較することで、この問いに解を見出すこ とが本研究の目的である。 * 1)『世界は分けてもわからない』福岡伸一著

※ - 生命 1. 生物が生物でありつづける根源。いのち。 2. ある方面で活躍しつづけることができる根源。 3. 人や物事がよりどころとするもの、また、それなしには価値がなくなる もの。いのち。

- 秩序 1. 物事を行う場合の正しい順序 • 筋道。 2. その社会 • 集団などが、望ましい状態を保つための順序やきまり。 /エキサイト国語辞典

146

The primitive architecture - 生命としての建築 -

147


- 研究の対象 -

- 研究の流れ -

y

プリミティブ・アーキテクチャの再考

建築 = 環境

建築とは何か。 根本的な問い

<生命>の真理 私たちは

地球上に

なぜ建築をつくり、どのようにデザインするべきか。

新しい「秩序」をつくること。

1.

x

原始的な小屋の概念

3. 2. ル・コルビュジェの「根源」

<生命>としての建築

ルイス・カーンの「元初」

※ y : 時間軸、primitive 概念   x : 分野軸、秩序の概念 

148

The primitive architecture - 生命としての建築 -

149


1. 原始的な小屋の概念 - ロジエ「原始の小屋」の理論とその批判 -

生命の真理

B.C. 25 ウィトルウィウス

宇宙の真理

プロンデル(N.-F.) 、ビュレ、デゴデ、フレジエ等 非常に簡素、平板な理論 歴史の必然的連続の中に小屋を捉えた(小屋から神殿へ)

[ 深層的理論 ]

[ 表層的理論 ]

秩序的(原理的)自然

18.C

M. A. ロジエ

自然との関わりの2面の意味

デュラン

人為(art) 物質的建物

自然とはなにか?

自然 『建築試論』原始の小屋

構造的有用性

『要録』 ロジエの批判

原理として原始的な小屋の観念

構造的有用性

人間的な観念

神的な観念

効率性・経済性の利点に焦点をあてる 小屋をあらゆる建築の規範的原型とみなす 「建築の諸原理は単純な自然に基づいており、自然の諸々の方式の中に、建

  ↓

建築の起源

築の諸規則がはっきりと印づけられているのである。 」 モダン建築に繋がる考えがある(?)

D. バイヨ 『哲学と建築家』 自然ー小屋ー建物 (階層的変化)

※1

テーマ:原始の小屋が形式的に解釈されている理由

ロジエ=未だ中間的な段階 小屋という原理を導く核心として自然を指摘しつつも、この自然 の奥深さ、あるいは奥深き自然そのものには到達し得なかった。

主に宮廷建築で用いられた後期バロック建築の傾向を指すもので、独

答え:ロジエの原始の小屋論は「自然」というキーワード そのため、原始の小屋の効率性や有効性の利点に注目が

疑問:自然とはなんだろうか?

古典主義建築思潮を統合し、ロマン主義的建築思潮への道を拓き始めた。

150

The primitive architecture - 生命としての建築 -

立した建築様式ではない。室内装飾に特徴がある。

に触れながらも、その本質的なものには到達できなかった。 いってしまった。

カトルメール・ド・カンシー

ロココ様式

※2 新古典主義 ロココ芸術の過剰な装飾性や軽薄さに対する反動として荘厳さや崇高 美を備えた建築が模索されたが、やがて 19 世紀の歴史主義、様式濫 用の中に埋没した。

アインシュタインの相対性理論

※1

ロマン主義

宇宙の真理ー生命の真理 深く結びついている

ロマン主義の底流に流れているものは、古典主義や教条主義がしばし

↓↓

ば無視した個人の根本的独自性の重視、自我の欲求による実存的不安

彼に影響をうけたであろう建築家

といった特性である。ロマン主義においては、それまで古典主義にお

コルビュジェとルイスカーン(次章)

いて軽視されてきたエキゾチスム・オリエンタリズム・神秘主義・夢 などといった題材が好まれた。

151


2. Le Corbusier と Lois. I. Kahn

Le Corbusier

Louis Isadore Kahn

「彼が若いときから追求していた建築の根源、魂に触れる 経験、自然との調和という倫理的なパースペクティブ・・・」

「私は元初を愛する」 「デザインは<オーダー>が理解されることを求めます」

ルイス・カーンもル・コルビュジェもどちらも “ 元初 ” や “ 根源 ” といった各自のプリミティブ概念をもっている。彼らの思想は非常に近い。近くて、

a. ソーク生物学研究所/カーン

遠い。使っている言葉も理論も似ているのにも関わらず、なぜそのように感じるのだろうか。本章では、彼らのプリミティブ概念を理解し、それ

b. キンベル美術館/カーン

らが作品にどう表れているのかを探る。研究対象は、「ロンシャン礼拝堂」と「ソーク生物学研究所」である。

c. バングラデシュ・ダッカ首都大学・

コルビュジェは、建築家であるのと同時に画家でもあった。彼の絵画には非常にプリミティブを感じるのだが、初期の建築作品にはそれを感じる

国会議事堂/カーン

ものは少ない。むしろ、幾何学的な未来的な思想を感じる。しかし、後期の作品では「ロンシャン礼拝堂」を筆頭に、彼の絵画にみられるような 自由な精神を感じることができる。彼が求めた “ 根源 ” とは一体なんだったのだろうか。

d. サヴォア邸/コルビュジェ

一方、カーンの作品は常に首尾一貫した精神が貫いている。また、彼は多くの有名な講義を残しており、そのなかでも、元初を中心とした通底概

e. ロンシャン礼拝堂/コルビュジェ

念を展開している。彼の思想を読み解くのと同時に、思想的概念を建築的に捉え直すことも重要であろう。

f.『赤いヴァイオリンのある静物』/

彼らのプリミティブ概念を読み解くことで、ロジエが原始の小屋で到達できなかった “ 自然 ” の本質を見つけ出すことが、本章の目的である。

コルビュジェ

152

The primitive architecture - 生命としての建築 -

a

d

b

e

c

f

153


- ル・コルビュジェとルイスカーンの年表比較 -1900

1910

1920

1930

1950

1940

1970

1960

Le C orbusier 1887 年 誕生

1916 年 ジャンヌレ = ペレ邸

1924 年 エスプリ・ヌーヴォー館

1930 年 スイス学生会館

1951 年 ジャウル邸

1960 年 ラ・トゥーレット修道院

1916 年 シュウォブ邸

1925 年 小さな家(母の家)

1930 年 ソヴィエトパレス(計画案)

1952 年 マルセイユのユニテ・ダビ

1961 年 カーペンター視覚芸術セン

1925 年 ヴォワザン計画(計画案)

1933 年 パリ救世軍本部

タシオン

ター

1925 年 ラ・ロッシュ = ジャンヌレ邸

1934 年 ナンジェセール・エ・コリ

1952 年 カップマルタンの休暇小屋

1963 年 ル・コルビュジエ・センター

1926 年 クック邸

通りの集合住宅

1952 年 チャンディーガル都市計画

1905 年 ファレ邸

1947 年 国際連合本部ビル(計画案)

1927 年 ヴァイセンホーフ・ジード

1952 年 高等裁判所、美術館

ルンクの住宅

1953 年 総合庁舎、ボートクラブ

1929 年 サヴォア邸

1955 年 議事堂

1929 年 ムンダネウム

1955 年 ロンシャンの礼拝堂 1958 年 ブリュッセル万博フィリッ プス館 1959 年 美術学校と建築学校 1959 年 東京国立西洋美術館(基本 設計)

Lois. I. K ahn 1901 誕生

1953 年 イエール大学アートギャラ

1961 年 トリビューン・レヴュー・

1970 年  オ リ ヴ ェ ッ テ ィ = ア ン

リー

ビル

ダーウッド工場

1955 年 アダス・イエシュラン・シ

1961 年 マーガレット・エシェリッ

1972 年  フ ィ ラ デ ル フ ィ ア ミ ク

ナゴーグ計画

ク邸

ヴェイスラエル・シナゴーグ計画

1957 年 アメリカ労働医療連合サー

1961 年 レヴィー記念公園計画

1972 年 フィリップ・エクスター・

ビス・ビルディング

1962 年 ミル・クリーク団地

アカデミー図書館

1959 年 ユダヤ・コミュニティーセ

1965 年 ブリンモア大学エルドマン・

1972 年 キンベル美術館

ンター

ホール

1973 年 スティーヴン・コーマン

1965 年  ペ ン シ ル ベ ニ ア 大 学 リ

チャーズ医学研究棟

1974 年 バングラデシュ・ダッカ

1965 年 ソーク生物学研究所

首都大学・国会議事堂

1967 年 ファースト・ユニタリアン

1974 年 インド経営大学

教会

1974 年 イスラエル・フーバー・

1967 年 ノーマン・フィッシャー邸

シナゴーグ計画 1974 年 イエール大学英国美術研 究センター 1974 年 ボルチモア・インナーハー バー計画 1974 年 ルーズベルト記念公園計画

※ 1905「特殊相対性理論」発表

1916「一般相対性理論」発表

※参考:wikipedia『ル・コルビュジェ』 『ルイス・カーン』 154

The primitive architecture - 生命としての建築 -

155


2-1. Le Corbusier「根源」の概念 : ロンシャン礼拝堂

- ロンシャン礼拝堂 -

感動

標準

ピュリズム Purisme キュリズム以後の芸術論(コルビュジェら主導) 雑誌『新精神 LE-sprit Nauveau』 「造形的感情の機械的 * 起源」の探求 ;形態とそれが喚起する感情に恒常性があるとするピュリ ズムの理論  ↓ 「標準 standard」「型 type」の概念へ・・・

*) 形態に対する感情は無意識の真相から自動的に生成 =「機械的」と形容

標準 standard 「標準」の概念は、その言葉から連想される「工業化」や「大 量生産」を第一の主題とするのではなく、形態認識の恒常 性を問題にしている。 「第一感情」を喚起する幾何学的形態こそた「標準」の形 態である。 型 type

原型

「感動」は人間存在に内なる「軸」があるからであり、 我々にそうした生得の「軸」があるために、 「普遍的秩序 ordre general」が成立するのである。 (人間の内なる軸と一致する瞬間、それは宇宙の法則と一 致することであり、普遍的な秩序に還元されることである) 原型 prototype 単に大量生産の技術的解決法を意味するのではなく、様々 な敷地に、端的に言えば「どこにでも」捉えることへの配

普遍的な秩序

156

The primitive architecture - 生命としての建築 -

慮が含まれている。 例)ユニテ・ダビタシオン

157


2-2. Lois. I. Kahn「元初」の概念 : ソーク生物学研究所

ルイスカーン

元初における3つの考え 沈黙と光 沈黙と光

「元初とは永遠なるものの確証」

「沈黙は表現せんとする願望」 「光は全プレゼンスの贈与者」

元初

沈黙は光へ

元初とは永遠なるものの確証

ルーム

オーダー

光は沈黙へ

     普遍なるもの=自然法則に関わる  

それらが交叉する閾

     永遠なるもの=人間の本性に関わる

は かけがえのないもの

 ↓

は インスピレーション

元初は人間にとって何が本来的なことかを露呈する啓示

(そこで表現せんとする願望が可能性に出会う)

 =元初は人間の<本性>を露呈します

は 芸術の聖域

例)最初の学校

は 影の宝庫

 われわれの内なる願望のなかにあるものを承認すること

(物質は影を投げかけ 影は光に属する) *「沈黙と光の素描」より

建築 ・私は建築をセンスとして、永遠性の表現として考えます。

沈黙

・建築はプレゼンスを持たず、それはまさにスピリットで

ライトレス

S←L

全プレゼンスの贈与者

す。

ダークレス

S→

意志によるもの

 I

法則によるもの

建築の明示あるいは建築のプレゼンスに応答する人間から 生じます。 ・プレゼンスは存在を明示するために自然の法則を用いな ければなりません。

表現することとして

インスピレーション

在らんとする願望

芸術の聖域

測り得ない

影の宝庫

測り得る

*沈黙と光 スイス連邦工科大学講演、1968 年 2 月。  上)ピラミッド 4 つの素描、下)沈黙と光の素描

元初における3つの考え

沈黙

カーンは「元初とは永遠なるものの確証」であると述べている。普遍なるものが自然法則に関わるものであるとすると、永遠なるものは人間の本

「ピラミッドが建設されているときへ立ち帰ってみましょう。・・・そしていまわれわれはピラミッドを完全なプレゼンスの中で見ます。そこには

性に関わるものである。そして、さらに建築は永遠性の表現であると提言している。この「永遠性」を説明する重要なキーワードが「沈黙と光」

沈黙の感情がゆきわたり、���の沈黙の感情のなかに人間の表現せんとする願望が感じ取れます最初の石が置かれる以前に、この願望は存在したの

であり、元初の考えを表すもっとも重要なキーワードである。そして、それを建築に落し込むときに重要なキーワードがさらに2つあり、それは 「ルーム」と「オーダー」の考えである。 理論から実証へ ルイス・カーンは、本を書くことを好まず彼自身の著書は少ない。しかし、有名な講義記録がいくつも残っており、彼の思想を読み解く重要な資

です」 (p91)。このように沈黙とは、たんに静かであるということではなく、人間の表現せんとする「願望」の力、 測り得ない驚異の力のことである。 光 「光は全プレゼンスの贈与者であり、物質は燃え尽きた光であると私は感覚します。光によってつくられたものは影を投げかけ、そしてその影は 光に属します」(p91)。つまり、建築は光の形成者である。建築はプレゼンスをもたないが、光にプレゼンスを与えることは可能である。 光は沈黙へ、沈黙は光へ

料となっている。本章では、彼の講義がまとめられた『SD 選書・ルイス・カーン建築論集』を参考文献とし、彼の元初における3つの考え「沈

「物質のなかの美しいものは、まず最初に驚異のなかで、つぎに知においてわれわれによって了解され、/そして了解されることによって、表現

黙と光」「ルーム」「オーダー」を読み解いたうえで、それらが彼の作品にいかに反映されているか、彼の代表作である「ソーク生物学研究所」を

せんとする願望にやどる美の表現へと変換されます。光は沈黙へ、沈黙は光へ。二つの移行は芸術の聖域において交叉します。 」前者が光の沈黙

研究することで見つけ出すことが目的である。

への移行、後者が沈黙の光への移行。二つの移行が交叉する場所が閾と呼ばれる元初の場所であり、そこに永遠なるものの確証が存在している。

158

The primitive architecture - 生命としての建築 -

159


ルーム

「建築の元初はルームである」

オーダー

「プレゼンスを与えよう と す る と き、 自 然 の 助 け を 求 め ね ば な ら な い 」 ※ バングラデシュ国会議場大統領のプラザ構造 自然のオーダーが人の心と共鳴し合うときプレゼンスが与えられる。

※『最初の学校』 ” 最初の学校は、われわれの内なる願望のなかにあるものを承認する ことでした。” ” 一本の木の下の一人の男 ―― その男は自分が教師であることを知 りません ―― は、自分たちが生徒であることを知らないわずかの子 供たちと話をしていました。かれらは互いに認め合い、そして最初の クラスルームが建てられました。それが「学校」の最初でした。” これについて本書の訳者である前田忠直は次のように述べている。 「一本の木の下は、光の事象としての自然を、ひとりの男は、沈黙の 事象としての根源的人を、その本質であるかけがえのなさとして示し ている。」つまり、ルームという元初の場所は、自然の法則と人の心 が呼応した瞬間に現れるということである。

ルームはひとの心のなかにある 「ルームは建築の元初です。それは心の場所です。自らの広がりと構造と光をもつルームのなかで、人はルームの性格と精神的な霊気に応答し、 そして人間が企て、つくるものはみなひとつの生命になることを認識します。」(p77)カーンは建築にプログラムを与えるのではなく、本性から 導き出されたルームを建築の元初とみなした。その例として、用いられる例が「最初の学校」である。(※左上参照) ルームの窓 ひとの心に存在しているルームを、いかに建築に落し込むか。ルームにとってもっとも重要なものは「ルームの窓」であるとカーンは述べている。

すべてのものにはオーダーがある 「・・・すなわち構造にはオーダーがある。素材にはオーダーがある。空間にはサーヴァント・スペースとサーヴド・スペースという仕方のオー ダーがある。光には、それが構造によって与えられるという意味でオーダーがある。そしてこれらのオーダーの意識が感じ取られるべきであると」 (p129)すべてのものにはオーダーがある。すべてのものには、自然の法則、自然の意志が働きかけている。 フォーム/デザイン/シェイプ 「フォームにはプレゼンスはありません。その存在は心のなかにあります。」「フォームはデザインに先駆します。フォームはデザインの方向を導

光(自然光)を与えられることなしにルームは生まれない。これは次頁で説明するオーダーの概念と対をなすものであり、つまり、ルームはフォー

きます。 ・・・デザインは諸エレメントにシェイプを与え、それらのエレメントを心のなかの存在から触れ得るプレゼンスへともたらします。 」 (p191)

ムとして捉えることができる。

カーンは「存在」を心の中にあるもの、「プレゼンス」を触れられるものととして捉えている。心のなかに存在があるフォームの力によって、デ

平面図はルームの共同体

ザインは方向づけられ、そしてデザインによって触れることのできるシェイプが生み出される。これは、オーダーという自然の助けを求めながら、

ルームは建築の元初であり、それだけでは「直ちに建築」にはなり得ない。ルームが共同体となることで、はじめて建築が生まれる。

いかに建築(芸術)を生み出すかという概念であり、人の心なくしてプレゼンスは生まれないというカーンの信念が感じられる。

160

The primitive architecture - 生命としての建築 -

161


-「沈黙と光」 「ルーム」 「オーダー」についての考察 -

沈黙と光

元初の誕生の場所

元初の概念をろ過すること

様でわずかな言葉からひとつの世界をつくることができる。つまり、

先の節では、カーンの元初の概念を「沈黙と光」「ルーム」「オーダー」

オーダーとはわずかなものから全体を構成できる力、つまりそのよう

という3つのキーワードにわけて、彼が述べていることからなるべく

な秩序の力のことであろう。あえて建築に置き換えて言うとすれば、

忠実に説明してきた。本頁では、誤解を恐れずに、カーンの元初を学

オーダーとは「基本単位から全体を構成することのできる秩序」であ

んだ上での私なりの解釈を述べたいと思う。カーンの概念は非常に思

り、基本単位とは先に述べたようにルームのことである。

想的で入り組んでいるため、建築に落し込んで考える際には、彼の思 想を一度ろ過する必要があるだろうと考えた。左の図は、その早見版

オーダーの限界、普遍なるものと永遠なるもの

である。

宇宙と永遠なるもの カーンはさらに、知識と宇宙について次のように述べている。

沈黙と光:“ 元初の誕生の場所 ”

沈黙

プレゼンスを

「沈黙と光」とは、元初の通底概念である。それは、元初とは光から

  ば知識は宇宙に属しますが、しかしそれは永遠なるものには属さ

沈黙への移行と、沈黙から光への移行が交叉するところに生まれるも

  ないのではないでしょうか。宇宙と永遠なるもの、そこには大き

与える秩序

のだからであり、むしろ、その移行を表している「沈黙と光」という

  な相違があります。

この概念は元初そのものと言えるだろう。

宇宙と永遠なるものには大きな相違がある。それは、宇宙が自然の法

沈黙とは「表現せんとする願望」という人間の本性であり、光とは「全

則である普遍なるものに属しているからである。アインシュタインが

プレゼンスの贈与者」である自然の法則・意志である。これらが行き

普遍なるものについて多くの感覚を引き出すことができたのは、単に

交うところに元初が誕生するのである。

数学の知識や科学に知識からのものではなく、彼自身の永遠なるもの

以下は、この「沈黙と光」の思想にプレゼンスを与えるものである。

の感覚からやってきたのだ *2、 とカーンは説明している。つまり、 オー

思想的である「ルーム」「オーダー」の概念をより建築的に解釈する。

ダーという秩序は人の永遠なるものの感覚に触れることではじめてプ

沈黙←光 沈黙→ 

フォーム

閾 元初の場所

―ー知識は自然に関わるものだけに属するということです。だとすれ

オーダー

レゼンスが与えられるということなのである。 ルーム:“ 建築の基本単位 ”

人間の本性

自然の法則

( 沈黙 ) 存在

建築の基本単位

ルーム

ルームが建築の元初とするならば、ルームは建築の基本単位と解釈す

元初の必要性

全体を構成

ることもできるだろう。カーンの作品を見ると、いくつものルームが

しかし、それはオーダーというものが人の感覚に触れなければ存在し

連なって全体が構成されている。ひとつのルームだけでは、“ 直ちに

ないということではない。オーダーは私たち人間に関わらず、そこに

させる秩序

建築になり得ない ”。必ず2つ以上のルームから建築が形成されてい

存在している。私たちは、ものを生み出すとき自然の助けを借りなけ

る。

ればいけないけれど、自然は私たちを必要とはしてはいない。これが、

建築をつくるうえでのカーンの通底概念なのである。 オーダー:“ 基本単位から全体を構成することのできる秩序 ”

自然という「普遍なるもの」の偉大さを表現することは、わたしたち

科学者と詩人

に心があるから可能である。しかし、 一方で、 自然と私たち人間は切っ

( 沈黙 ) ←光

カーンは科学者アインシュタインについて次のように述べている。

ても切れない関係にありながらも、私たちは「普遍なるもの」をつく

( 沈黙 ) → 

――かれが必要とするのはごくわずかな知識だけであって、そのわ 

ることは決してできない。だからこそ、 自然と人の心が交叉する場所、

オーダー

  ずかな知識から宇宙を再構成することができるからです。つま    りかれは知ることではなく、オーダーに関わっているからです * 「わずかな知識から宇宙を再構成することができる」。これは詩人も同

プレゼンス 建築の元初

「永遠なるものの確証」である元初を発見することが建築をつくる際 に非常に重要なのである。 * )『SD 選書ルイスカーン建築論集』 ,p20 / *2 ) 同著 , p108

自然の法則

( 沈黙 )

建築 このように生み出された建築には元初、 永遠なるものの確証がやどっている。

162

The primitive architecture - 生命としての建築 -

163


B E G I N N I N G S

初:

O

R

D

E

R

I

ー:

L

E

N

C

E

A

N

D

L

I

G

H

ル ー ム: 建 築 の 基 本 単 位; 建 築 の 元 初

S

T

R

沈 黙 と 光: 元 初 の 誕 生 の 場 所; 表 現 遷 都 す る 願 望、 全 プ レ ゼ ン ス の 贈 与 者

SALK INSTITUTE for Biological Studies

164

The primitive architecture - 生命としての建築 -

O

O

M

165


- 図面から読み解く -

1 s

F c

a

P l

e

=

L 1

A :

5

N 0

RIGHT WELL

0

RIGHT WELL

LABORATORY

PIPE ROOM

RIGHT WELL

RIGHT WELL

LABO's PORTICO

LABO

LABO

PIPE ROOM

S s

E c

a

C l

T e

=

I 1

O :

5

LABORATORY

N 0

0

PIPE ROOM RIGHT WELL

RIGHT WELL LABORATORY

PIPE ROOM

LABORATORY

166

The primitive architecture - 生命としての建築 -

167


3. まとめ 生命としての建築 - ソーク生物学研究所 - 

右)フォームからルーム、

生命とは「流れ」である 「生命とは部分の総和以上の何ものかである。」生物学者である福岡伸

ルームから建築へのスケッチ

平面はルームの集合体であることは、さきの章でも述べたことだが、

一はこのように述べ、さらに、総和以上のプラスαの存在を「流れ」

各々のルームは必ず「光」という流れでむずばれている。さらに、断

だと提言している。生命は、単に細胞が集まって存在しているのでは

面をみるとパイプスペースとラボラトリーは必ず対をなしており、こ

く、細胞同士が情報やエネルギーを交換し合って形を形成していく。

こにもサーヴドスペース・サーバントスペースといった「関係性」と

人間の顔を見るとき、目・鼻・口と分けて認識することは可能だろう

いう流れで互いが結ばれている。

が、よく考えてみると、どこまでが鼻でどこからが口なのか、正確に

このように、流れの存在を意識して再び「ルーム」を見てみると、実

分類することは難しい。生命には分断という分かれ目はないのだ。

はどこまでがひとつのルームであるか分からない。そこには、流れで

「生命とは流れである」と捉えて、ルイス・カーンのソーク生物学研

結ばれた大きなルームの存在が表れる。元初であるルームの集まりが、

究所をみると、それは実に流れのある建築であることが分かった。各

流れによって生命としての建築を形成するのだ。 左)ライトウェル:光を各ルームに与える場所、右)ラボラトリー:ライトウェルにより光が差し込む

模型断面:パイプスペースとラボラトリーはサーヴァンドスペース・サーヴドスペースのオーダーがある。また、各ルームは必ず外部空間とつながるように断面的に配置されている。

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The primitive architecture - 生命としての建築 -

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REFERENCE ウイリアム・カーティス(中村研一 訳)『ル・コルビュジエ―理念と形態』鹿島出版 ,1992 年 千代章一郎 『ル・コルピュジエの宗教建築と「建築的景観」の生成』, 中央公論美術出版 , 平成 16 年 ルイス・カーン ( 前田忠直訳 ) 『SD ライブラリー 14 ルイス・カーン建築論集』鹿島出版 ,1992 年 , p28-45 前田忠直 『ルイス・カーン研究』鹿島出版 ,1994 年 , p140-145 ロマルド・ジオゴラ、ジャミーニ・メーター(横山正 訳)『ルイス・カーン』A.D.A EDITA Tokyo, 1975 年 小嶋一浩『建築の言語 ( ヴィジュアル版建築入門 )』彰国 ,2002, p22-27 福岡伸一『世界は分けてもからない』講談社現代新書 , 2009

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The primitive architecture - 生命としての建築 -

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おわりに

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Kogakuin University

建築プロセス特論 2010

教授:木下 庸子 担当: 近藤巨房/木下研究室 神保隆文/木下研究室 平賀卓也/木下研究室 加藤 学/谷口研究室 重田和也/谷口研究室 勝亦優祐/木下研究室 上田宗平/西森研究室 西野 淳/西森研究室 山内響子/木下研究室 デザイン:山内 響子 2011 年 2 月 12 日 発行

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おわりに


建築プロセス特論