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ロゴスの本 木の花農園 編

四六判 174 頁グラビア 8 頁・1800 円+税

心を耕す家族の行く手 木の花ファミリーのゆたかな夢

13ha の田畑を耕作する木の花ファミリーは、自給自足の有機農家として富士宮 市内で最大。ただ土を耕すばかりではない。血縁をこえた大家族の目的は、 「心 を耕す」ことにある。自然の循環のなかで生きる人びとの貴重な記録。 第 30 回石橋湛山賞受賞 深津真澄 著

A5判 238 頁・2600 円+税

近代日本の分岐点 日露戦争から満州事変前夜まで

近代へと歩み出した日本には侵略と戦争への道のほかに進路はなかったのか。 「大日本主義」の幻想は一掃されたか。 村岡 到 著

生存権所得

ベーシックインカムで大転換

四六判 236 頁・1800 円+税

生存権に立脚して説く、ベーシックインカム論の決定版。財源論に踏込み提起! 強欲な「無縁社会」を脱し助け合う連帯社会へ。 村岡 到 編

生存権所得

ベーシックインカムの可能性

四六判 140 頁・1400 円+税

新自由主義のエコノミストと社会主義志向という一見すると対極的な立場 からの見解を収めた。BI の可能性に重点をおいて論じる。

西川伸一 著

オーウェル『動物農場』の政治学

四六判 204 頁・1800 円+税

小さな特権がいつの間にか大きな権力に。権力の横暴への歯止めはどこにある のか。G・オーウェルの慧眼をテコに政治のからくりを縦横に透視する。 ロゴスブックレットNo.3 小選挙区制廃止をめざす連絡会 編

小選挙区制NO!──二大政党制神話の罠

110 頁・1000 円+税

閉塞時代に挑む──生存権・憲法・社会主義

110 頁・1000 円+税

議員定数削減NO!──民意圧殺と政治の劣化

110 頁・1000 円+税

脱原発の思想と活動 原発文化を打破する

124 頁・1200 円+税

ロゴスブックレットNo.4 村岡 到 著

ロゴスブックレットNo.5 小選挙区制廃止をめざす連絡会 編

ロゴスブックレットNo.6 村岡 到 編 西尾 漠・相沢一正・矢崎栄司

〈脱原発移行期〉が始まった。 「原発文化」を打破する思想的核心は何か。 あなたの本を創りませんか──出版の相談をどうぞ、小社に。


木の花ファミリー     〒 419-0302 静岡県富士宮市猫沢 238-1         おひさまハウスひまわり   TEL.0544-66-0250 FAX.0544-66-0810   ホームページ http://www.konohana-family.org/   メールアドレス info@konohana-family.org 

       

血縁を超える自給自足の大家族──富士山麓からのメッセージ 2012 年 3 月 20 日 初版第 1 刷発行 こ

はな

編 者    木の花ファミリー 発行人    入村康治 装 幀    入村 環 発行所    ロゴス

        〒 113-0033 東京都文京区本郷 2-6-11                

TEL.03-5840-8525 FAX.03-5840-8544 http://www18.ocn.ne.jp/~logosnet/

印刷/製本  株式会社 Sun Fuerza         定価はカバーに表示してあります。 ISBN978-4-904350-23-2 C0030


木の花ファミリーへのご訪問について 木の花ファミリーでは、皆様のご訪問を歓迎しています。 専用の和風旅館「木の花庵」で宿泊も可能です。 ・自然菜食のお食事 ・農作業など生活体験 ・施設や田畑の見学 ・暮らしや理念についての  プレゼンテーション ・「木の花楽団」による  ウェルカムコンサート ・心身や家庭問題などの相談 ・英会話による対応も可能

木の花庵 詳細なご案内とお申し込みは、ホームページをご覧ください。 ホームページをご覧になれない方は、お電話でお問い合わせください。 〈アクセス〉 電車:JR 身延線西富士宮駅下車、バス約 30 分 高速バス:東京→富士宮線(ヤキソバエクスプレス)約 2 時間 30 分 車:東名高速富士 IC 下車約 30 分 〈自然療法プログラムを希望される方へ〉 ご相談は、面談を基本としております。まずは、お電話にて。 お気軽にお問い合わせください。

木の花ファミリーの本

第 1 弾  2007 年 4 月刊 木の花農園編

第3弾  近刊予定 古田偉佐美著

──木の花ファミリーのゆたかな夢

──木の花ファミリーがめざすもの

心を耕す家族の行く手

序 小さな木の花農園のゆたかな夢 Ⅰ 木の花農園の家族たち Ⅱ なぜ木の花農園を創ったか    ──いさどん大いに語る Ⅲ 木の花のたより Ⅳ ひろがる活動と共感 四六判並製 174 頁グラビア 8 頁 定価:1800 円 + 税

いさどんの宇宙図書館

1 木の花ファミリーの歩み 2 人間と宇宙 3 法華経に学ぶ 4 ヤマギシ会との交流と対話 5 いさどんのある1週間  4年前に 35 人だった家族が今や 77 人に。なぜ、若者が惹き付けら れるのか? 木の花ファミリーのい さどんがその秘密を語る。心みがき の根底に何があるのか? 四六判並製 160 頁 予価:1500 円 174


あとがき 

  日常のごく身近な存在として「神様」を感じながら暮らしている私たちと、五〇年

以上にわたって社会主義の運動家として活動してこられた村岡さんが、立場の違いを

超 え て 協 力 し あ い、 「大切なこと」を世に問うていく。そんな出会いに、私たちは神 様の温かなユーモアを感じています。

  本書ではファミリーの多様な活動をごく簡単に紹介していますが、そのどれもが一 冊の本になるような深く、豊かな世界を創りだしていま す。今後も私たちの暮らしの背後に流れる世界観や宇宙 観、そしてそれに根ざした具体的な活動をさまざまな側 面から掘り下げ、新たな本として世に問うていく予定で す。楽しみにお待ちいただければ幸いです。   この二〇一二年を、私たちは「結びの年」と名づけま した。その大切な年に世に送り出される本書が、新たな 生 き 方 を 模 索 す る 多 く の 方 々 の「 勇 気 の 特 効 薬 」 と な り、多くのご縁を結ぶ一助となることを心から願ってい

173

ます。   二〇一二年一月二三日       木の花ファミリー

編集スタッフ 左から、いさお、 ようこ、みかちゃん、いさどん、 ともちゃん、さのっち。


あとがき

  本書は、私たちにとって二つ目の本となります。四年前、私たちはふとしたきっか

けでファミリーを訪問されたロゴスの「いたるちゃん」こと村岡到さんの勧めにより、

初めての本『心を耕す家族の行く手』を世に送り出しました。本の反響はじわじわと

広がり、今も「本で読みました」とファミリーを訪問される方がおいでになります。

  昨年の3・ 東日本大震災という未曾有の体験を経て、多くの人びとが新たな生き

ーたちの拍手が包み込みました。

いては、本当に信じているのです」。一瞬、涙で声を詰まらせた村岡さんを、メンバ

れども、それでもあなた方のこの生活が世の中にとって大切なものだということにつ

れ ま し た。 「 私 は あ な た 方 の 言 う 神 様 だ と か、 そ う い う こ と は 良 く 分 か ら な い の だ け

  再訪の折に、村岡さんはファミリーの「大人ミーティング」の場でこんな挨拶をさ

さんがやってきて、この本を出版する運びとなったのでした。

として、新しい本を出せたらいいね、と話し合っていました。そんな矢先、再び村岡

方を模索し始めています。ファミリーでは、そうした人たちを勇気づけるメッセージ

11

172


の表現の一つなのです。   経済/概要

  木の花ファミリーでは「お金のいらない世界」が実現しています。メンバーはそれぞれの能力に応

じた価値を全体に対して提供し、生活に必要なものを対価なしに受け取ることができます。

  ファミリーにおいて、仕事は生活と一体です。労働は報酬を得るための手段ではなく、皆が安心し

て暮らすための自発的な貢献と考えられています。ファミリーは対外的にさまざまな事業を通じて利

潤を得ていますが、その利潤は「家族みんなのもの」であり、全体および個人の必要を過不足なく満 たすために使われています。

産等の個人資産や共有資産を保有しますが、自発的な意志によってそれらの資産を全体のものととら えて い ま す 。

  こうした仕組みは、制度や義務によることなく個々のメンバーの意志によって実現しています。自

然の仕組みがそうであるように、ファミリーではすべてのメンバーがそれぞれの役割を果たしてつな

がりあい、尽きることのない豊かさを産み出しています。こうした生活を実践する意志のある人であ

れば、誰でもこの暮らしに参加して、その豊かさを受け取ることができます。

171

  ファミリーではすべての資産は「家族みんなのもの」と考えられています。メンバーは現金や不動

資料 木の花ファミリー憲章(抜粋)


き、人びとは血縁という枠を超え、新たな家族を創り出して絆を深めていきます。多様な人びとが集

い、調和し、それぞれの個性を花開かせる場所。善意と愛をもって互いを活かし合い、支え合って生 きる暮らし。それを実践しているのが、木の花ファミリーの暮らしです。

  それは、自らが思い描いて実現する暮らしではありません。この世界を創った意志に寄りそい、す

べてを委ねて初めて実現する暮らしです。これからの時代、その想いは血縁を越え、人びとの作りだ

したあらゆる境界を越え、大きな「家族」を形づくってゆくでしょう。やがて世界が一つの家族にな

る日を想いながら、私たちは自らに与えられた役割を日々淡々と果たしていきたいと願っています。   生活/仕事と役割分担

  現代社会の多くの人にとって仕事は対価を得るための手段であり、生活から切り離されているもの

です。しかし、私たちにとって仕事とは共に支え合って生活するための必要を満たす手段であり、す

べてのメンバーは共同体に対してそれぞれの個性に応じた役割を担っています。

  自然界ではすべてのいのちがつながりあい、それぞれの働きによって他のいのちを存在させていま

す。私たちもまた、全体のために働くことを通してそれぞれの個性と能力を開花させ、互いに生かし 合っ て い ま す 。

  自然界をモデルにした利他の精神のもとに立って、私たちは日常の小さな仕事も地球の営みと共に

あることを認識し、心を尽くして働きます。私たちにとって仕事とは、自らが地球と共に生きること

170


復させ、人と人との信頼関係を取り戻し、人が自然の一部として生かされていることを思い出させて くれ ま す 。

幸福感です。海、山、農村、そして都市と、これからさまざまな場所でエコビレッジが生まれていく

  エコビレッジの暮らしが人びとにもたらすものは、いのちのつながりの中で生かされている安心と

でしょう。そのつながりが世界中に広がれば、善意と愛から生まれる循環が私たちの生活を真の豊か さで満たすに違いありません。   家族/概要   私たちのあり方をあらわす言葉は、「血縁を超えた大家族」です。

家族はもっとも近いいのちのつながりを表していると言えます。一方で、人間はいのちのつながりを

血縁の遠近で分けて、家族という枠組みを作っていると言うこともできます。

  いのちはその本質として、互いにつながり、活かし合って、ただ一つの宇宙を創りあげています。

すべての存在は光の子であり、ひとつらなりの大きないのちです。家族の本質をいのちのつながりと

するならば、すべてのいのちは一つの大きな家族です。それが、この世界を創造し、一つに束ねてい る意志のあらわれです。

  その意志が純粋に表されているのが、自然界です。自然界の仕組みにもとづいた生活を実践したと

169

  一般に、家族は「血縁で構成され、日常生活を共に営む集団」と定義されています。社会の中で、

資料 木の花ファミリー憲章(抜粋)


木の花ファミリー憲章 (抜粋)

  ファミリーでは、生活のあり方やその精神性が目指すものを「憲章」という形で明文化して

いく作業を続けています。その中から基本的な理念を表す部分を抜粋してご紹介します。

仕組みを大切にします。自然に学び、その利他の精神に倣った暮らしは、人と自然とのつながりを回

  こうした現状に対する取り組みがエコビレッジの暮らしです。エコビレッジは自然に沿った生活の

飢餓や貧困を作り出しています。

等であるはずの循環の仕組みに大きな歪みを生み出しました。この歪みは世界に自然破壊をもたらし、

していきます。孤独や不安から必要以上のものを求めるようになった人間の心は、すべての生命に平

然の一部としての認識を失い、つながりから切り離された人間は、いつしか自然を支配の対象と見な

  一方、自我を与えられた人間は「個」としての意識を持ち、自他を区別するようになりました。自

そこに貫かれているのは互いに生かし合う利他の精神であり、善意と愛からなる調和です。

然界では必要なところに必要なものが過不足なく行き渡る完璧な循環の仕組みが成り立っています。

  すべての生きものと同じように、私たちは自然の一部であり、自然に生かされている存在です。自

  世界観/循環の中の暮らし

  

資 料

168


して悪い時代ではありません。多くの問題があるということは、それだけ多くの学びのきっかけ に出会うことができるからです。     地球生命を構成するもの

  「私」という存在は、たった一つで存在しているのではありません。手や足、髪、皮膚などさま

ざまな機能に分けることができます。さらにそれは細胞や原子、素粒子といったもので構成され

ています。そのすべてが、一つひとつ独立しています。そして他のものと連携しながら、さらに

大きなものを構成しています。その構造が、生命の連鎖です。地球も一つの生命ですが、あらゆ

る役割のものが合わさって構成されています。私たち人間も、地球の中の一つの微生物のような ものとして存在しています。

  このように地球を一つの生命系としてとらえる考え方は「ガイア理論」として語られてきまし

ご だい

たが、人びとがその意識を実際の生活に活かしてきたかといえば、残念ながら、そういう事例は 少ないと思います。  

  ところで、地球生命を構成する要素を、仏教では「五大」、すなわち「地水火風空」として表し ています。   「地」──大地は生命の元になるものを育んでくれます。

146


でたいこと、死を不幸なこととしてとらえがちですが、それはこの循環を途中で区切って見るか

らです。この世界は常に誕生と維持、破壊、そして空の循環を繰り返して進化していきます。持

っているものを手放して他者にバトンタッチし、物事に対する執着を手放すことで新たな世界が

生まれるのです。それが、いつしか獲得したものにとらわれるようになると、 「成住壊空」の流れ の悪い世界ができてしまうのです。

ことです。すべての命に無駄なものはなく、つながって「ひとつらなりの命」として存在してい

るのです。しかし、人間はこの持続可能に変化し続ける宇宙に存在しながら、持続不可能な世界

を作り上げています。これ以上、人間が自分たちだけの都合でこの世界にあり続けていけば、生 態系の成り立ちそのものが壊れてしまうでしょう。

  この世界は、私たちだけが創っているのではありません。地球の歴史は四六億年と言われてい

ますが、その中で人類の歴史は、類人猿の時代を含めてもせいぜい七〇〇万年ほどです。この世

界は私たちの誕生よりも先にあって、私たちはこの世界が誕生した目的の元に生まれてきた存在

です。それを考えることは、人間が未来に向かって自らの目的を見出していくきっかけになりま す。

  今、人間がこの世界の本当の成り立ちを学ぶときが来ています。そう考えれば、今の時代は決

145

  持続可能とは、変わらない状態が続くことではなく、むしろすべてのものが常に変化し続ける

Ⅳ 持続可能な社会を創り出す心とは  いさどん 


っています。 しょう

え ほう

え しょう ふ に

しょうほう

  仏教の教典の一つである法華経に「依 正 不二」という言葉があります。「依」とは頼ること、

「正」は正しいということです。 「依報」と「正報」という言葉もあり、「依報」とはこの世界の中

で他者に頼って存在しているものを指し、人間以外のすべてのもの、つまり自然のことを指しま

す。 「正報」とは自らの意志を持って生きている存在であり、その行動が自分の生き方に忠実に報

いられる存在ということで、これは人間のことです。「依正不二」とは、それが「不二」、つまり 一体であるということを表しています。

  しかし、今の時代は人間が宇宙や自然の法則を無視して、人間だけに都合の良い世界をつくっ じょうじゅう え くう

ています。 「依正不二」ではない、つまり人間とそれ以外のものが一体でなくなっているのです。 じょう

じゅう

くう

  もう一つ、法華経に「 成 住 壊空」という言葉があります。これは、宇宙が永遠に循環する世界

であることを表した言葉です。 「成」は誕生、 「住」は維持、 「壊」は破壊、そして「空」は無くな

るということです。ヒンドゥー教でいえば「成」はブラフマン、 「住」はビシュヌ、そして「壊」

はインドで最も人びとにもてはやされるシヴァで、多くの人が知っている存在です。誕生、維持、

破壊、そして空になり、また誕生が始まります。宇宙はそれが永遠に循環する構造になっている のです。

  自然界だけでなく、人間の社会も実はそういう構造になっています。たとえば、人は誕生をめ

144


持続可能な社会を創り出す心とは

                                   いさどん

  持続可能な世界とは

  私たちは、地球という星に暮らしています。その地球で今、人類は行き詰まっています。私た

ち人類が地球と共に繁栄していくこと、そして持続可能な社会を創るということはどういうこと なのでしょうか。

  大自然は、持続可能な世界です。その大自然も、一部だけを区切ってみれば持続不可能に見え

るところはあります。たとえばシマウマはライオンに捕食されますが、そのことを単なる弱肉強

食と見ることもできます。しかし、捕食者であるライオンがいなくなると、シマウマは増えすぎ

てしまい、結果として種を維持できなくなります。つまり、シマウマは自分の命を奪われている

のではなく、命をライオンにバトンタッチしているのです。そして、そのことによって新たな生

命として生きていくことになります。この世界では、すべての生命がそのように有機的につなが

143


Ⅳ 木の花ファミリーの         目指すもの


るのは難しいことです。

  そんなまこっちゃんに、木の花ファミリーに出会うまでの経緯について語ってもらいました。

  僕が生き辛さを感じ始めたのは、中学一年生の時。学校の試験の結果に対して母親が口うるさ

くなり、緊張が抜けない状態が続いた。高校に入ったら何かが変わるのではないかと思ったけど

何も変わらなくて、大学に入ったら、就職したら、と先に希望をつなぐことで何とか生きてきた。

ところが、就職しても結局何も変わらなくて、将来に対する希望が見出せなくなってしまった。

そして、就職して三カ月後、二四歳の時に突然、会社に行けなくなった。 「抑うつ状態」と診断

されて、服薬しながら半年間通院したんだけど、それから三五歳までは仕事をしたりしなかっ

たり、引きこもったり、心療内科に通ったりという期間を過ごすことになった。三二歳から三五

歳の三年間は完全に家に引きこもって、一番精神状態が悪化した時には薬物の過剰摂取や首つり

で自殺を試みたこともある。その期間に両親と口をきいた時間は、合わせても三〇分くらいかな。

プに参加した。また、生き辛さの原因は自分の性格のせいだと感じていたので、通っていた心療

内科の先生に「性格を変えたい」と手紙を書いたけれど、 「うちではそういったことはできない」

と言われる始末。引きこもりからなんとか一歩を踏み出そうという気はあっても、どうしたらい

107

  三五歳のときに「このままではまずい」と、ACAというアダルトチルドレンの自助グルー

Ⅲ 木の花自然療法  ようこちゃん


のです。   3   生命力豊かで健全な食生活

  ファミリーではほぼすべての食材を自らの手で、自然に即した方法で作っています。生命力あ

ふれる旬の食材で作った食事は、まさに薬となって心身に働きます。ファミリーでは玄米菜食を

基本に、ローフード(生食)や酵素食(西式甲田療法)による食養健康法も取り入れています。

生命力豊かで健全な食生活はアトピーなどの病的体質の改善のみならず、情緒の安定を促し、心 の病にもたいへん有効なものだと考えています。

  《ケース1・引きこもりや自殺未遂の経験も勲章として》

三八歳男性・まこっちゃん   抑うつ状態(一一年) ・引きこもり(三年)・自殺未遂

二〇〇八年七月   木の花ファミリー生活体験ツアーに参加。その数日後から長期滞在を始 め、一カ月後にはメンバーとなる

  ファミリーで稲作を担当する「田んぼ隊」の若きリーダーとして活躍中のまこっちゃん。真っ

黒に日焼けし、精力的に働く彼の現在の姿から、かつて三年間も引きこもっていた経歴を想像す

106


一万人を超える人生相談に応じてきた「いさどん」こと古田偉佐美です。ケア滞在者にはファミ

リーのメンバーからサポート役が選任されるほか、メンバー全員が一丸となって滞在者を暖かく

見守り、支えていきます。 「自然療法プログラム」には、以下の三つの柱があります。   1   心の免疫力を高める

のです。心の調和を大切にするファミリーでは、メンバー全員が日常の出来事から自らの心を見

つめ、より健全な心の持ち方を学び続けています。ケア滞在者はこの基本姿勢を学ぶことで、心

身の健全さを取り戻すだけでなく、職場や家庭に復帰しても再び同じ問題を発生させない、いわ ば根本的な再発防止策を身につけることができます。   2   自然に沿った規則正しい生活リズム

  不規則な食事や夜更かしといった慢性的な生活リズムの乱れは、現代

病と言っていいほど多くの人が抱えている問題です。農作業をしながら

自然の中で生活することで、体は自然の気を取り入れて「元の気」を取

り戻し、体の奥にある自然治癒力が呼び覚まされて「元気」になってい

きます。農業を中心としたファミリーの生活の中で、規則正しい生活リ

ズムを刻むことで、誰でも無理なく心身のリズムを整えることができる

105

  「 気 が 病 む 」 と 書 い て「 病 気 」 と 読 む よ う に、 病 に は そ れ を 引 き 起 こ し た 心 的 な 要 因 が あ る も

Ⅲ 木の花自然療法  ようこちゃん


木の花自然療法──心身のケア

サポートチーム、いさど

る人びとの絆は、心身を癒す大きな力を持っています。ファミリーでは、心の病気(鬱病、統合

失調症)や依存症(アルコール、ニコチン、薬物)、引きこもりや不登校、生活習慣病といった

問題を抱えた方々を生活の中に受け入れ、改善に向けたサポートをしていく滞在型の「自然療法

プログラム」を提供しています。ファミリーは医療機関ではありませんし、専門の医師やカウン

セラーがいるわけではありませんが、数多くのケースで症状の改善や社会復帰といった実績を上

げています。一〇年、二〇年に渡って改善しなかった鬱病がわずか一カ月で完治するような、一 般的に見れば奇跡としか言いようのないケースも経験しています。

  ケ ア の 相 談 と「 主 治 医 」 役 を 担 当 す る の は、 フ ァ ミ リ ー の 創 立 者 で あ り 、 三 〇 年 に わ た っ て

104

   

                              ようこちゃん

  「自然療法プログラム」とは

2007 年参加。担当:ケア

  子どもからお年寄りまでが助け合いながら共に暮らしている木の花ファミリー。そこで育まれ

沖 陽 子。1977 年 生 れ、

ん秘書。元語学学校教師。


Ⅲ 木の花ファミリーの         社会的活動


うね

とです。それを踏まえた上で、 僕が木の花の農業の最大の特徴を挙げるとするならば、それは「心 の学びの場としての畑や田んぼ」ということになるかと思います。

  僕が木の花のメンバーになってから、まず驚いたのが、心の学び方です。木の花には「畝の曲

がりは心の曲がり」という言葉があるのですが、その前提として、僕たちは「心が現実の世界を

創っている」と捉えています。ですから、作業を通して目の前に現れてくる現象から自分の心の 状態を知り、そこから学んでいく、ということを大切にしています。

ら植えていきます。少しでもずれていると、 他のメンバーから「ずれてるよ」と声がかかります。

他の場所で農業の研修を受けてから木の花に参加した僕は、当初「少しくらい曲がったりずれた

ところで、作物の生育には関係ないよ」と思っていました。しかし、そ

の少しのずれが発生したということは、その元にある心がずれている証

拠ですから、それを見過ごすと後々、大きな現象となって目の前に現れ

てくるということを現場で何度も経験しました。そして、出来事がまだ

小さなうちに、意識してそれを修正していくことが大切であることもわ

かってきました。これがもう少し進んでくると、今度は、現象が発生す

る前に自らの心の状態に気づけるようになってきます。

51

  たとえば、苗を植えるときにはラインをまっすぐに引いて、メジャーで正確な間隔を測りなが Ⅱ 畑を耕す前に心を耕せ  たっちゃん


畑を耕す前に心を耕せ ──「炭素循環農法」を取り入れる  

                                   たっちゃん  

  農業には、本当に様々な役割があります。僕たちがここで自然農法を行っているだけで、環境

への貢献ができます。たとえば、生物の多様性を保全したり、水田によって水の浄化や地下水の

保水をしたりすることができます。また、田畑には大気を浄化したり、気候を穏やかにしたりす

る機能もあります。地域や家庭から出る生ごみなどを堆肥化して循環させることにより、土を肥

やすと同時にゴミの削減にもつながります。もちろん、安全な食を確保できますから、自分たち のみならず、消費者の健康にも寄与できます。

  また、日本は農の営みを通して、美しい里山の風景や独特の農的文化を形成してきました。伝

統文化の保存や農業による社会振興が可能なだけでなく、最近では農業の現場が都会で暮らす人

びとの癒しの場になっており、自然に触れることによって人間性の回復を促すなど、教育や医療 にも活用されています。

  こうしたことは木の花ファミリーの農業の現場でも実現されていますし、大切にされているこ

50


Ⅱ 木の花ファミリーの         暮らし方


僕はさまざまな団体のリーダーに、この現状をどう考えるかを問うて回りました。彼らは「そ

れはその通り」と認めながらも、実際に目の前で人が死んでいくのだから援助は必要だ、と答え

るのでした。それがまた難民を生むのだと言っても、堂々巡りになってしまう。自国からお金を

もらい、身の安全を確保しながら援助していること自体が偽善に思えて、僕は、エチ���ピア人に

なりたい、そして農業をしながらエチオピアの発展に寄与したい、と思いました。

キロ先まで迫り、隊員にも緊急避難勧告が出され、急遽、飛行機で国外に避難することになりま

した。その時に、一緒に仕事をして来たエチオピア人の同僚が、僕にこう言ったのです。「コウイ チはいいよな。行くところがあって」 。

  僕は避難できる。でも彼らは、僕が逃げた後、戦線に飲み込まれてい

くのです。その時、強烈に、自分は外国人なのだと感じました。もっと

本当の意味で、世の中を変える生き方がしたい。そう考えた時、日本に

帰ったら有機農業をやろうと思い立ちました。エチオピアでは一部の富

裕層が弱い者から搾取している。さらに国家間でも一部の先進国が弱い

国から搾取している。そういった世界の構造が、エチオピアの現状を生

んでいるのです。この問題を解決するには、そうした構造自体を変える

15

  協力隊としての任期終了が二カ月後に迫った頃、内戦が激化してきました。ゲリラ戦線が六〇

Ⅰ 青年海外協力隊員の体験の後で  こうちゃん


青年海外協力隊員の体験の後で

                              こうちゃん

  一九八八年、二四歳の時に青年海外協力隊員としてエチオピアに行きました。

1999 年参加。担当:畑隊、

プレゼンテーション。元

有機農家。

る、という現実を目の当たりにしたのです。

うになり、国土を破壊して、また飢餓が起きる。海外からの援助そのものが飢餓難民を生んでい

すべきお金なのです。ところが海外から支援が来ることで、その分政府は戦争にお金を使えるよ

こへ海外のお金が飢餓の救済のために入ってくる。しかし、それは本来、エチオピア政府が負担

軍事費が国家予算の八〇%を占めていました。つまり、国のお金で国民を殺していたのです。そ

  実際にエチオピアに住んでみて、わかったことがありました。当時のエチオピアは内戦中で、

は講師として派遣されることになりました。

ました。ちょうどエチオピアの農業短期大学から要請があり、大学で農業機械を勉強していた僕

受けたのです。それで、実際に自分で行って何が出来るのか見てみたいと思い、協力隊に応募し

  大学在学中にエチオピア人の女性が祖国の飢餓の状況を訴えるのを聞いて、大きなショックを

北尾晃一。1964 年生れ、

14


経済面においてはすべての収入を大人全員で均等に分配し、全体の生活費を平等に負担しあっ

ています。血縁を超えた家族が「ひとつの財布」で生活するこのスタイルは、すべてのものを分 かちあい、共有しあうメンバーの善意によって支えられています。

  子育てもまた、血縁の枠を超えた大家族の絆の中で行われます。ファミリーの大人たちは皆、

親としての自覚を持って子どもたちに平等に接し、子どもたちは互いを兄弟として成長していき

ます。年老いた人も、体の健康を損ねた人も、すべての人が平等に家族の絆の中で支えられ、老

後の不安のない生活を送っています。さらに、心身の病などの問題を抱えた人びとを受け入れ、

生活を共にすることで心身の調和を取り戻す「自然療法プログラム」を提供し、「血縁を超えた 大家族」の絆を広く社会に向けて開いています。

  こうしたファミリーの営みは、近年、テレビや新聞、雑誌などのメディアを通じて広く世の中

に知られるようになってきました。農業や田舎暮らしに関心の高い人びとをはじめ、エコビレッ

ジやパーマカルチャーといった国際的な広がりを持つ分野からも注目され、高い食糧自給率や持

続可能なライフスタイル、共同体としての精神性などが評価されています。 ミリーの暮らしは、ますますその存在感を増しつつあります。

  そんなファミリーの個性豊かなメンバーたちを、これから何人かご紹介します。

13

  新たな価値観を模索し始めた社会の中で、宇宙の成り立ちや自然の仕組みをモデルにしたファ

Ⅰ はじめに


はじめに

  木の花ファミリーは富士山の麓で七七人(二〇一二年一月現在)が「血縁を超えた大家族」と

して暮らすエコビレッジです。エコビレッジとは、人びとが地球と共に幸せに生きる生活を目指

して、持続可能な暮らしを追求するコミュニティです。特に九〇年代以降、環境破壊や人間疎外

などの課題を包括的に解決するライフスタイルとして注目され、世界中に実践例があります。

  一九九四年、世代や血縁の枠を超えて互いに助け合う暮らしを志した二〇名の仲間たちが富士 このはなのさくやひめのみこと

山の西麓(静岡県富士宮市)に移住、 ファミリーの前身である「木の花農園」を創立しました。「木

の花」の名前は富士山の主神である木花之佐久夜毘売命からいただいています。

  創立以来、ファミリーは調和の精神を基本とした独自のライフスタイルを追求してきました。

生 活 の 基 盤 と し て 化 学 肥 料 や 農 薬 を 一 切 使 わ な い 有 機 農 業 を 営 み、 約 一 六 ヘ ク タ ー ル の 田 畑 に こうじ

一一〇品目、二五〇品種を超えるお米や野菜、穀物などを育てています。その他に平飼い養鶏に

よる自然卵、はちみつ、山羊のミルク、伝統製法で糀から作る味噌やしょうゆ、添加物を一切使

用しないさまざまな加工品に至るまで、日々の食卓にならぶほとんどの食材を自給し、近隣への 配送や宅配便を通じた全国への直売を行っています。

12


Ⅰ 個性ゆたかなメンバーたち


44

10

   持続可能な世界とは/地球生命を構成するもの    生態系の頂点に立つ者として/人間の意識と社会    持続可能な発展とは/地球という生命の家    宇宙の成り立ち/集い語り合う暮らしの中で

資   料   木の花ファミリー憲章 (抜粋)

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172

   あとがき     コラム

震災の地に光を   立正佼成会チャリティ・コンサート   いさおちゃん   みんなで富士登山    ようこちゃん  

ダル・ド・ヴェールの光    いさおちゃん  

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130

70

いさどんの生前葬─新たなステージへ    みかちゃん   木の花ファミリーへのご案内  

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目 次

  宇宙図書館とは?

Ⅲ 木の花ファミリーの社会的活動   木の花自然療法 ──心身のケア      「自然療法プログラム」とは  

ようこちゃん(沖 陽子)

   《ケース1・引きこもりや自殺未遂の経験も勲章として  》    《ケース2・真の心理士を目指して  》    《ケース3・統合失調症は克服できる  》

みちよちゃん(古橋道代)

みかちゃん

99

104 103

123

143 136 132 132 131

  エコビレッジの国際的なつながり

Ⅳ 木の花ファミリーの目指すもの   充実した人生を生きるために    癌になったことで見えてきたもの  

いさどん いさどん



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   この世界で生きているということの意味   持続可能な社会を創り出す心とは

117

106

104


たっちゃん

ちなっぴー(西尾知夏)

のんちゃん(前田典子)

ひろみちゃん(永原弘美)

わたわた(石綿 薫)

やすえどん(武馬八寿江)

みかちゃん(嵯峨美雅子)

  子どもたちに育てられながら

すさ(野田須佐乃王)

まり姉ちゃん(渡邉満里子)



  畑を耕す前に心を耕せ    ──「炭素循環農法」を取り入れる   木の花家族はミツバチ家族!   いのちの最終バトン   みんな大好き「木の花菌」

  味噌と醤油の伝統的製法を受けついで    ──命を吹き込む「神事」   心を伝える木の花楽団

  木の花ファミリーから世界へ

いさおちゃん(吉越 勲)

   宇宙の子ども/木の花楽団 (作詞・作曲   嵯峨美雅子  )

  農的共同体なのにITを駆使

なかのん(中野善文)

す さ の お う

  「財布は一つ」の経済   大人ミーティングで心のシェア

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血縁を越える自給自足の大家族   目次  

まえがき

Ⅰ 個性ゆたかなメンバーたち   はじめに   青年海外協力隊員の体験の後で   悟りを求めた末に   嵐のような人生を生きてきて     お迎えが来たら行くだけのこと   中年男がメジャーリーグに初挑戦   宗教者の家に生まれて

Ⅱ 木の花ファミリーの暮らし方   雑草も虫たちもみんな友だち

いさどん(古田偉佐美)

こうちゃん(北尾晃一)

たっちゃん(内田達也)

みさちゃん(阿部美紗子)

よしひろ

えいこばあちゃん(林 栄子)

かいちゃん(海藤禎宏)

ひろっち(田中宏之)

こまねち(前川晃一)



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に新たな時代の陽が昇ることを思えば、闇も寒さも希望の前触れとして喜びのうちに過ごすこと

ができます。人びとが調和して、社会全体が幸せになるような価値観を広げていくことで、この 蟻地獄のような社会状況を突破することができるのです。

  私たちが創りだしているエコビレッジの生き方は、そのことを人びとに気づかせることができ

ます。エコビレッジというモデルにおいて、 人びとは人間中心に偏った経済システムに代わって、

自然や宇宙の仕組みに立ち返ります。 世界中の宗教や哲学の原点である真理に立ち返ったときに、

人間は本来のあるべき姿に戻り、不安のない社会を創ることができます。

  しかし、そのことに気づいている人はまだほとんどいません。人びとは自らが獲得してきたと 信じるものや習慣を手放すことを怖れて右往左往している状態です。

  これから、私たちはどうしていくのか。その大きな問いに対して、自然の仕組みとともにある

私たちのような生き方は、一つの解答を示すことができると思っています。   二〇一二年一月二三日




さらにストレスを募らせることになります。そして、医療や健康食品からレジャーまで、ストレ

ス解消を目的としたさまざまな産業が生まれてくるわけです。たとえば、パチンコ産業は二〇兆

円を超える市場を持っていますが、それが依存症を生み出し、家庭崩壊や自己破産を招いていま

す。そして、その負の部分を解決する過程も、経済効果として算入されていきます。このことに

限らず、社会の歪みによってもたらされた負の部分は、GDP(国内総生産)などの社会指標で は減額されないのです。

  人びとがこうした価値観によって、いわばマインドコントロールされた状態で次の社会システ

ムを考えてみても、同じことの繰り返しになってしまうのではないでしょうか。

  では、どのような価値観のもとで新たな社会を創っていけばよいのでしょう。今の価値観の延

長線上にある経済システムを維持し続けてよいのでしょうか。3・ という未曾有の出来事から、

私たちが何かを学ぶ必要があるのだとしたら、原発は人びとの異常なまでの消費欲を満たしてき た仕組みの象徴の一つとして捉えられるのではないでしょうか。

げれば、私たちは世界の一部としてその秩序と調和の中に生かされている存在であることがわか

ります。そして、その世界は常に変化を続け、破壊と創造を繰り返すことで成り立っているので

す。こうした視点に立てば、私たちが体験しているのは夜明け前の暗闇であり、それを超えた暁



11

  私たちは今、人類史上もっとも困難な時代を生きていると言えます。しかし、視点を大きく広 まえがき


に近いものをより有利にしていきたいという価値観です。こうした価値観のもとで人びとがお金

やモノを競争で勝ち取り、さらに勝ち取ったものを不必要なものまで抱え込むことで、世界中に

格差が生まれています。一族が何代に渡っても使い切れないような富を抱えている人がいる一方 で、今日一日の食べものに事欠く人もいるのがこの世界の現実です。

  こうした社会では、他人より多くの利益を上げたい人びとが教育の現場で量産され、激しい競

争を勝ち残った人びとが多くの収入を得る仕組みが作られていきます。人よりも上手く立ちまわ

ったり、新たに開発した技術を独占したりすることで、巨額の富を得られるのです。社会の基本

原理は競争、差別、そして対立です。そこでは必然的に落伍者が生まれ、貧富の差が広がってい

きます。勝ち続けることを余儀なくされた人びとは常にストレスを抱え、それに耐え切れなくな

った者は脱落していくのです。一方で、そのストレスを解消するために引き起こされた過剰な消

費意欲によって、さらなる経済成長が支えられていきます。この歪みが、さまざまな病気や社会

問題を生んできました。そして、こうした潮流が日本を世界有数の経済大国に押し上げてきたこ とは事実なのです。

  人びとは便利さを追い求めてきましたが、それによってたくさんのものが失われました。たと

えば、インターネットによって世界中の知らない人と容易につながることができるようになった

一方で、身近な人との絆が失われてきています。交通が便利になると、人はその分忙しくなり、




しょうか。そのことを考えるために、 これまでの社会の成り立ちを振り返ってみたいと思います。

  近代の経済システムは、産業革命以降、二五〇年ほど前から受け継がれてきたものです。特に

第二次世界大戦後の世界経済は、先進国が後進国から安い原料を仕入れて製品を作り、高い利潤

を上げる製造業を主流とした復興がなされていきました。それが七〇年代以降、原油価格の高騰

などで利潤を上げられなくなった先進国は金融でその穴埋めをするようになり、特に九〇年代以

降は、実体経済とかけ離れた巨額の資金が国境を超えて駆け巡る金融資本主義が世界経済を支配 するようになりました。

した人が成功者であるとい���拝金主義的な価値観があります。しかし、このような富を獲得した

人たちが、本当の意味で豊かで幸せな生活を送っていると言える

でしょうか。彼らもまた過酷な生存競争に取り込まれ、常に勝ち

残ることを余儀なくされた人びとであり、いわば麻薬に溺れてい

るような状態と言えるのではないでしょうか。

  経済大国と言われる日本ですが、その経済がどのように成り立

っているのかと言えば、根底にあるのはやはりお金やモノがたく

さん得られることを良しとして、他者よりも自分を、そして自分



  こうした経済システムの背景には、物やお金がありさえすれば豊かで幸せであり、それを獲得

まえがき


正されていくのだとすれば、そこには痛みも生じるでしょう。しかし、大きな意味でとらえれば、

それは新たな時代に進んでいくときの向かい風のようなものであると言えます。

  こうした動きの中で、人びとは自らの利益が失われることを怖れて右往左往しています。身近

な問題としては、現在の生活やそれを支える職業の危機としても捉えられるために、人びとの利

害関係によって世論が二分され、政治家たちは来たるべき社会の方向を見出せずにいます。

  世界的には、近年の地球温暖化に端を発する自然災害が昨年も多く見られました。ヨーロッパ

ではギリシャの信用不安、イタリアの財政危機など、大きな不安定要素が広がり、世界経済に激

震をもたらしました。中国は高い経済成長を続ける一方で資本主義経済と共産党支配の歪みに苦

しみ、政府による言論統制や弾圧、情報操作が横行、民衆の怒りの矛先が政府に向かうのは時間

の問題とも言われています。資本主義世界の頂点に立つアメリカでは拡がり続ける所得格差に怒

りを爆発させた国民が「オキュパイ   ウォールストリート」 (ウォール街を占拠せよ)を合言葉に 大規模なデモを展開し、その動きが世界中に広がろうとしています。

  こうした不安定要素は、世界規模の問題から身近な社会問題に至るまで、今やどこにでも潜ん

でいます。二〇一一年は、こうしたことがいよいよ明らかになり、これからの人類の行く末に人

びとが「心の眼」を向ける時代が到来していることを指し示していたのではないかと思います。

  私たちは次の時代に向かって、この混乱から脱却してどのような秩序を築いていけばよいので




まえがき

業経営。

 

                              いさどん

ケア相談、養蜂。元内装

本国内に大きな対立が生じています。このような自由貿易に向かう流れは地球社会が一つになっ

  そんな中、TPP(環太平洋経済連携協定)を始めとする新たな貿易のあり方をめぐって、日

ます。

った多くの水害は、私たち人類が新たな生き方を模索するためのメッセージであったように思い

  三月一一日に発生した東日本大震災による津波の被害と原発事故、その余波のように日本を覆

した。

前にした二〇一一年という年を、私たち木の花ファミリーは「開花の年」と位置づけて過ごしま

一万五〇〇〇年に渡って続いてきたマヤ暦が終わりを迎えることが知られています。その年を目

二 一 世 紀 の 扉 が 開 い て 早 く も 一 一 年 の 歳 月 が 過 ぎ ま し た。 今 年( 二 〇 一 二 年 ) の 一 二 月 に は、

  人 類 が テ ク ノ ロ ジ ー の 進 化 を 背 景 に 物 質 的 な 豊 か さ を 追 い 求 め て き た 二 〇 世 紀 が 終 わ り、

古田偉佐美。1951 年生れ、

ていく動きの前触れとも言えますが、国や民族の壁が取り払われ、それまでの国家間の格差が是



ファミリー創設者。担当:


血縁を超える自給自足の大家族 - 抜粋