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緘 黙 する景色


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緘黙のその後


後日対談

K 今回の展示、何が印象に残りました? M 空間全体がひとつの世界としてきちんと表現されてた、ってことかな。 K というと? M それぞれ個性的な作家さんばかりで、今回の展示でもその方ならではの作   品が並んでいた。にもかかわらず、どの作品もそれぞれの個展で見るのと   違い、グループ展ならではの統一感をもたらすのに貢献していた、という   こと。 K たしかに、企画そのものが主役で、それが見事に可視化されてました。他   の会場とは(よい意味で)まったく異質な空間が出現していたと思います。 M 空気感と言った方がいいかもね。会場に足を踏み入れたとき、からだに感   じる空気感が際立っていた。 K そのせいか、すぐには動けなかったですね。「あっ」と言葉を失う感じで。 M わたしも。でも今回は、まずじっくり「空間全体」を楽しみ、そこに「時   間の流れ」を感じられるようになってから個々の作品に向かう―それが大

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事だったんじゃないかな。そういう世界観に入りきれないうちに個々の作   品を追いかけていたら、 『よくわかんない』、あるいは、 『なんだかいつもの   (個々の)作家さんらしくない』、で終わってたかも。 K 個々の作品が自分を声高に主張している展示ではなかったですからね。 M そう。でもそれぞれが繊細に計算され、配置されてる。その意味ではすご   く主張している。 K そうですね。ある日の3分間の呼気を封入したビン、その傍らで自分も呼   吸することで、ここにある途方もない時間を実感する。あるいはベンチに   腰掛けることで周りを見る余裕を与えられる・・・ M そしてすべてが腑に落ちてくる。だからここだけ別フロアだったのはすご   くよかった。通路が導入と余韻という二つの役割を果たしてたから。他の   展示と並んでたら、そうはいかなかった。 K 中で感じたことを窓外の実景を見ながらラジオの音とともに(時々刻々変   化する天候や光のなかで)じんわり考える。これも企画そのものの可視化   でしょうね。 M うん。それが成功したのは理由がある。個々の作品には様々な面がある (例   えば伊藤作品は文字として時間の流れのなかで見ることもできるし、景色   として空間のなかで見ることもできる) 。そのいずれを引き出せばここでひ   とつのまとまりある空間を可視化できるか―おそらく企画者の伊藤さんは、   77


それぞれの作家さんにきわめて的確なリクエストを出した。つまり、その   方にしかできないこと、かつここでひとつの空間を構成するためには不可   欠な「ある面」をリクエストした。作家さんも、企画への深い共感に基づ   いてそれに応じた(想像だけど)。 K そう思うと、朗読に立ち会えなかったのはほんとうに残念です。 M 自然光の入るこの場所に集まった四人の作家が、ここでしか成立しない展   示を行った。そこに居合せられただけでもいいんじゃない? 残念なのは、   この空気感、どこにも持っていけないことなのよねー。だからこそ足を運   ぶ価値があるんだけど。 K 別の場所でこの四人が集まれば、まったく違う空気感が生まれるでしょう   ね。 M またそこに居合わせる日を楽しみにしましょう。 K はい。今日はありがとうございました。

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(追記) 或る来場者が緘黙の後に発した第一声は、 「・・・ここでお茶飲んでもいいですか?」だった。 彼も幸せなときを過ごしたに違いない。

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河田 政樹


河田政樹|masaki kawada

1973年  東京都生まれ 1999年  多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻修了

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【主な展覧会】

2007年  個展「観光」GALLERY CAPTION(岐阜)        「ニュー・ビジョン・サイタマⅢ」埼玉県立近代美術館(埼玉) 2008年  個展「つきかげ」GALLERY CAPTION(岐阜) 2009年  「Landscape」GALLERY CAPTION(岐阜)        「よりみち・プロジェクト ‒ いつものドアをあける」             GALLERY CAPTION、pand、他(岐阜) 2010年  個展「background」藍画廊(東京) 2011年  個展「Kontrapunct」GALLERY CAPTION(岐阜)        「誰かの鳴らす音」ゲルオルタナ(東京)

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丹羽 康博


丹羽康博|yasuhiro niwa

1983年  愛知県生まれ 2007年  名古屋芸術大学美術学部造形科卒業 2009年  愛知県立芸術大学大学院美術研究科彫刻領域修了 2012年  愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程単位取得退学

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【主な展覧会】

2008年  「常滑フィールド・トリップ 2008」愛知県常滑市、とこなめ中央商店街 2009年  「常滑フィールド・トリップ 2009」愛知県常滑市、とこなめ中央商店街        「LEXHIBITION 世界の二乗」L Gallery,F-1(名古屋) 2010年  個展「Life」川端の家(常滑)        「常滑フィールド・トリップ 2010」愛知県常滑市、とこなめ中央商店街        個展「私は波打際で“迷宮の壁”のかけらをみつけた」常滑屋(愛知) 2011年  「AICHI GENE -some floating affairs-」 愛知県立芸術大学芸術資料館、                    清洲市はるひ美術館、豊田市美術館(愛知)        個展「詩としての彫刻」L Gallery,F-1(名古屋)

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村田 仁


村田仁|jin murata

1979年  三重県生まれ 2002年  名古屋芸術大学美術学部絵画科洋画コース卒業 2004年  名古屋芸術大学大学院美術研究科造形専攻同時代表現研究修了

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【主な展覧会】

2007年  個展「言葉は窓」名古屋市民ギャラリー矢田 第一展示室 2009年  開館五周年記念展「愛についての100の物語」金沢21世紀美術館(石川) 2010年  「心音“こころね”」タテタカコさんとのライヴ。千種文化小劇場(愛知)        「きろくのきおく∼フォーラムプレスの一万年∼」                      春日井文化フォーラムギャラリー(愛知) 2011年  「子どもアート in みえ」三重県立美術館(三重)        「Berliner Naruheso Weltzeitung(ベルリンなるへそ世界新聞)」          「DMY」ベルリン国際デザインフェスティバルにてワークショップ。          写真作家 山田 亘氏と共同企画制作 テンペロフ空港、ベルリン(ドイツ)

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伊藤 正人


伊藤正人|masato ito

1983年  愛知県生まれ 2004−05年  バウハウス大学(ドイツ、ワイマール)短期留学 2005年  名古屋造形芸術大学造形芸術学部美術学科総合造形コース卒業

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【主な展覧会】

2008年  個展「Royal Blue Mountain -sight hearing-」gallery アートフェチ        「常滑フィールド・トリップ 2008」愛知県常滑市、とこなめ中央商店街 2009年  「Landscape」GALLERY CAPTION(岐阜)        「常滑フィールド・トリップ 2009」愛知県常滑市、とこなめ中央商店街 2010年  「ボクラノミカタ」galleria Finarte(名古屋)        「浮森 -floating forest-」 STANDING PINE -cube (名古屋)        個展「phytoncide」AIN SOPH DISPATCH(名古屋) 2011年  「通奏低音」GALLERY CAPTION(岐阜)        個展「corridor」AIN SOPH DISPATCH(名古屋)

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緘黙する景色   2012 年 5 月発行

写真|藤井 昌美 (pp.3, 5, 9, 13, 19∼23, 27, 31∼37, 41, 45∼51, 57∼67, 71, 73, 85, 89, 93)    伊藤 正人 (pp.7, 11, 15, 17, 25, 29, 39, 43, 53, 55, 69)    河田 政樹 (p.81) 文章|秋庭 史典 (名古屋大学大学院情報科学研究科准教授) 協力|天野 智恵子 (AIN SOPH DI SPATCH) デザイン・印刷・製本・発行|note house

ファン・デ・ナゴヤ美術展 2012「緘黙する景色」 河田政樹 丹羽康博 村田仁 伊藤正人 会期 2012 年 1 月12日(木)− 22 日(日) 会場 名古屋市民ギャラリー矢田第1展示室 主催 ファン・デ・ナゴヤ美術展 2012 実行委員会、    公益財団法人名古屋市文化振興事業団、名古屋市 協賛 AIN SOPH DISPATCH、L Gallery, F-1、ギャラリー芽楽、    colonbooks、JAM JAM、STANDING PINE - cube、Pub Arco 後援 愛知県公立大学法人 愛知県立芸術大学、名古屋芸術大学、名古屋造形大学 企画 伊藤正人 展覧会ホームページ http://beyondwords2012.blogspot.com


本書の一部あるいは全部を無断で複写(コピー) ・複製・転載することを固く禁じます。 本書についてのお問い合わせは下記のメールアドレスにご連絡下さい。 発行者|note house(伊藤正人) konigsblauberg@yahoo.co.jp Copyright © 2012 note house All Rights Reserved.


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