Page 1


SEEDS : 8 Graduation Projects of Bachelors’, Master Course and Doctoral Program of the Product Design at University of Tsukuba

平成 12 年度 筑波大学 芸術専門学群生産デザインコース卒業生 芸術研究科生産デザイン分野修了生 論文・制作作品集 http://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/~id/ http://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/~id/seeds/

DESIGN SEEDS : 8 1


DESIGN SEEDS : 8 2


Contents 目次

Table of Contents

………

3

総評

Review

………

4

教官からのメッセージ

Messages from Academic Adviser

………

5

SEEDS に寄せて

Messages from Supporting Adviser

………

6

課外活動受賞作品

Awards at Competition in 2000-2001

………

7

生産デザイン この一年

Memorial Events 2000-2001

………

8

優秀卒業研究・修士論文

Graduate Projects Chosen for Design Excellence

………

9

てつそん

Tetsuson

………

16

卒業研究(論文・制作)

Graduation Projects in the Bachelor ’s Program

………

17

………

18

………

19

………

20

………

21

………

22

………

23

………

24

………

25

………

26

Thesis Projects in the Master ’s and Doctoral Programs

………

27

内山 俊朗

デザインプロセスにおける調査解析の融合的活用方法

………

28

榊原 瑞穂

まちづくりのための感性的調査ツールの提案

………

30

………

32

伊野 真文

「変化」と「古い」その認識の関係 時間性の集積を表わす製品

笠井 祐子

隠す行為とその所在 隠す家具

久保 寛子

小学生の学校生活における遊び構造の研究 生まれる遊具、生まれる遊び

佐藤 亜希子

感性的な認識・記憶・行動に基づく整理法の研究 ひとり暮らしを始める人のための家具”Plane”

徳永 陽子

紙媒体とデジタル情報機器 電子試写装飾雑貨

永野 将

ニオイを用いたインタフェースの可能性 生命を感じさせるリラックスツール

前田 吉広

画像の保存と検索方法におけるユーザーインタフェースについて 画像管理インタフェースシステム [qurio]

宮澤 克次

玩具の可能性 積み木

脇田 慎

携帯物の使われ方と携帯方法の関係 真の携帯を実現した携帯情報端末

修士課程、博士課程論文概要

            杉山 真理子             

- 水戸本町商店街でのタウンモビリティプロジェクトを通して ネットワークを用いたリサーチ手法 - デザイン評価のためのアクセスログ解析 -

田原迫 玄

音のグッドハプニングの出現に関わる法則性について

………

34

冨尾 圭介

ミミズの行動動態を模倣したロボット

………

36

洪 輔廷

高齢者のための入浴装置の研究

………

38

本田 宗久

ウェアラブルコンピュータのデザインに関する一考察

………

40

            

- 機械的刺激および温熱的刺激を用いたナビゲーション手法の基礎研究 -

李 岡茂

コンピュータ・グラフィックスにおけるオートノーモス・コンポジション

………

42

佐藤 弘喜

文様の認知特性に基づくデザイン支援情報の抽出

………

44

森崎 功一

鑑賞者のイメージ解析についての基礎研究

………

46

………

48

あとがき

DESIGN SEEDS : 8 3


Review

総評 卒業研究 今年の傾向を一口で言うと現実的あるいは自己的と言えるのではないか。どんな研究でも、その動機は少なからずその研究者独自の思い入 れによって成り立っているものである。しかしながら、研究を深めて行くにつれ、その研究者の思いが広がり、深まり、その動機からつなが る知識の帯は自分という枠を越えてより高度な、また先進的な知識や技術開発などの領域に広がっていくものである。またその思考は、意識 できる自分の底をさらに深めて自分も気がついていなかった自分というもの、つまり自分の思考力の新しいレベルが見えてくるものである。 そして気がついたときにはまだ実現されていない概念に結びついていることに気がつき驚くと同時に次の対象が見えてくるものである。情報 技術が発達し、ほんの10年前には考えられなかったほどの情報が居ながらにして手にはいるようになっている。確かによく調査し研究を進め ているが、かえってその情報を世界の中の自分として解釈することがこれまで以上に難しく、また重要になってきているとも考えられる。そ ういった意味で今年の研究は、やっと、あるいはおそるおそる、自分の枠から一歩を踏み出したところにあるのではないかと考える。また、 今年ほど研究のレベル差が少ない年もなかった。ここでは、最優秀卒業研究、優秀卒業研究を評価しているが、その他の研究との差はまさに 紙一重である。つまり、最優秀研究といえどもまだまだ課題は多く、たまたま優秀とはなっていなくともそれぞれオリジナリティに優れ、完 成度の高い研究としてまとまっている。 修士論文、博士課程中間評価論文 今年は持続力が特徴だったように思う。研究は継続してそれを深めていくことが重要である。もちろん単に続ければよいというものではな く、続けることによって新しい発見をし、さらに次の研究にすすむ意欲になるという連鎖が研究の深さとなっていく。その深さが研究者とし ての独自の立場になっていくのである。また、多くの論文は途中経過を学会や感性評価構造モデル研究プロジェクト研究会で発表するという かたちで社会との関係を確認している。こうした活動は研究が単に自己的な深みに浸かってしまわないためにも重要であり、そうした経験も またこれらの論文の骨組みに生きている。 一方で、研究はそれぞれの研究者としての視点で捉えた問題点の所在と深さが重要である。オリジナリティと継続。今年の論文には、両者を しっかりとつかむことのできた研究があり、一方でバランスを欠きながらもオリジナリティのある視点にたった研究もあったが、やはり継続 的に研究を進めることによって得られる新しい視点の価値を見ることができたものはこの研究によって大変に貴重な経験をし、また、次の一 歩を踏み出すときの確実な自信を勝ち得ただろう。こうした研究の醍醐味というものを、多くの人が経験することができたとすれば、それが 修士課程および博士課程における修了研究の成果として重要なことだったのだ。

ここでなされた研究は、それぞれの学生にとっては一つの大きな壁であり、課題である。一方で、それを成し遂げることで得たものはそれ ぞれの人生の中で大変大きな糧になるのである。ここで得た体験は、何年も、何十年も経って、やはりそれぞれの中で大きな意味を持つこと であろう。さらに、なされた研究は、単に研究者の枠を越えて、同じような研究を目指す人のきっかけになり糧になり、励みにもなるのであ る。その意味でも、ここに研究をまとめ、公表するということによって、それぞれの知的活動が大きく社会に広がっていく、影響を与えてい くのだということを、しっかりと自覚するべきである。(山中)

DESIGN SEEDS : 8 4


Messages from Academic Advisers

原田 昭 / Harada, Akira 今年度の卒業研究・修了研究をみて、これからの世界はこうあるべきだとチャレンジしている作品・論文と現代の世界にはこれが必要だと チャレンジしている作品・論文との二つの傾向に分かれているように思えた。確かにデザインは、今はどのように思われたとしても新たな世 界を切り開いていく力を持たねばならないし、一方で、日常的な生活の維持のための生活道具を日常的に作り出していかねばならない世界で もある。どちらにしても私は、若く輝ける世代である諸君が、その世代にしか出来ないことを卒業研究や修了研究に諸君の全てのエネルギー を投じている姿が好きだ。チャレンジするためには基礎の技術がどうしても必要となる。特に今日のように情報技術が急速に発達しネットワー クを通してモノやサービスのあり方が刻々と変貌しつつある時代には、情報化の行く末を展望せずにモノ作りを行うことは不可能である。はっ きり言ってしまえば、情報の技術的進展が豊かさをもたらすのではないということだ。情報技術がモノやサービスの扱いを難しくしている面 も私達の身の回りにはたくさんある。大切なことは、情報技術によって人間が豊かに生きるための情報を取り出すにはどうしたらよいかを考 えることである。人々のこころや感性のより豊かな働きを実現させるモノやサービスの実現に情報技術をどのように活用すべきかをデザイン するべきである。人間の身体的機能と論理的機能とを感性的機能によって融合するはたらきが我々のデザインというはたらきなのである。

蓮見 孝 / Hasumi, Takashi 今年から21世紀になった。時間が入れ代わったり社会プログラムがバージョンUPしたりしたわけではないけれど、何か大きな変化が来る 予感がする。センテニアルという人工的概念には、それなりの根拠があるのだろうか。20世紀は、多発する世界戦争をきっかけにして科学 技術が爆発的に進展した時代だった。21世紀はどうなるのだろう?少なくとも、より多くの人たちの心と生活の質(QOL)が格段に豊かに 充実したものになっていくように祈りたい。 間もなく社会に巣立ち、また研究の世界に臨むみなさんは、まさに21世紀を担う主役 の人たち である。今日の皮相的な現実認識に留まらず、大きな夢をもって、新しい仮説構築に熱情を注いで欲しい。その先駆けとして、与えられた機 会に満足せず、自分たちの足で新たな可能性の道を開いた「てつそん」のネットワークには、大きな賛辞を送りたいと思う。反面で、“夢の 在りか”がどこにあるのか、じ∼んと心に伝わってこない作品や論文が見られるのが気になっているのだが。

山中 敏正 / Yamanaka, Toshimasa 人生には何回か大きな区切りがあるが、卒業研究・修了研究に集中するこの時期もまた一つの大きな区切りである。この区切りをどう通過 したかは様々だが、それぞれの経験はこれからの生き方に大きく影響していくことだろう。しかし、これらの研究はそれだけではなく、世界 の多くの人たちにとっても大きな影響を及ぼすだろう。ここでこれだけの研究がなされ、これだけの成果が生まれたことを記録し、公開する ことはそうした点でそれぞれの人生と社会をつなげる重要な役割を果たしているのだ。今年は、さらに「てつそん」という新しいネットワー クを編み出す事にも成功しつつある。ここに論文・作品を収録したそれぞれの思いは、世界へとつながっているということを感じ、考え、そ して楽しんでもらいたい。そして、次のステップへ、新しいネットワークへとどんどん遠くまでつながっていって欲しい。それがSEEDSだ。

Dieter Hofmann We are going to live in a world together with more intelligent, complicated and technological advanced objects in the near future. These objects will gradually substitute human related contact. People who provide us in the moment with information, service and goods will more and more disappear from our life. There is a rising danger that the inter -net will become a huge vending machine. We have the chance now to connect people through networking communities but we can also separate them from their social environment. The first results we can already notice. A hospital in Germany opened recently the first department for inter -net addiction. Therefore designers have to take care how they open the window for the user into this world of new technologies. We have to consider about how much technology is necessary and bearable for human beings. The question will be wether it is really wishful that we can do almost everything from at home just communicating through a screen which remains the only window to the real world. We are "social animals" the German philosopher Friedrich Nietsche stated in "The Genealogy of Morality". That means we need communication and social contact with other human beings by all senses to develop our social competence. Even the objects we are using should reflect the human being who stands behind these objects. We are facing always the same situation since the human race is making inventions. Like a knife we can use new developments always in two ways - creative and destructive. Especially designer who should be equipped with a broad cultural education and interdisciplinary thinking have the ability and responsibility to take care that new technologies are used in a humane way .

DESIGN SEEDS : 8 5


Messages from Supporting Advisers

五十嵐 浩也 / Igarashi, Hiroya 世界はどんどん変化しつづけています。そして、工業デザインはその変化に正面から日夜立ち向かっています。今日これがデザインだと思っ ていることが、ある日気が付いてみるとデザインではなくなっているということもあるかもしれません。あるいは、逆に新しくデザインだと 考えられることが生まれてくるかもしれません。そういう状況の中で、我々はデザインを行っています。ここで大切なことは、自分の「デザ イン」を持っていることです。しかし、自分だけのデザインではありません。21世紀デザインはその姿を変化させてゆくことでしょう。そ して、その「姿」を作ってゆくのは・・・・・勿論、君たちです。

岡崎 章 / Okazaki, Akira 修了・卒業研究は、いままでのあらゆる経験をもとにした未来に対する期待の表現であったと思います。 経験とは、「<能動的に>・<身体をそなえた主体として>・<他者からの働きかけを受けとめながら>振る舞うこと」、だといわれます。 我々の振る舞いの中に能動性がなければ、どんなに多くのことを見たり聞いたりしたとしても真の経験にはならないといわれます。 これからの経験は自分をいかようにでもつくり、また新たなる経験への欲求も生むでしょう。そしてその欲求に応えて更なる経験を積み自 分をつくる・・・。 自分で自分自身をデザインするとでも言うのでしょうか。なんとも難しいけど面白い・・・。

李 昇姫 / Lee, Seunghee 「贈る言葉」というタイトルで1992年の春、生産デザインの卒業生に感謝の気持ちをこめて文章を書いたことがあります。彼らが3年次のと き、韓国から留学してきた私は日本語も覚えぬまま、彼らと一緒に原田先生の製品デザイン計画論の授業に出ていました。授業が終わると、必 ず誰かか私のところに来て、英語やボディランゲージ、絵などで授業の内容や課題について説明してくれました。言葉で伝われなかった内容が 私の課題や作品に見事に表れてくるのを見て、彼らは不思議に思いながら喜んでいました。筑波大学ののびのびとした自由な教育環境のなかで、 私達は年齢や国を忘れて良きデザインの仲間になっていました。 彼らの卒業の前に、私は寂しくなる気持ちと彼らとの思い出を精一杯の日本語で新聞のコラムに「贈る言葉」として書きました。世界に向け て伸びていくデザイナーになってほしい...と。その願いは、日本の若い友達から学んだ「心」のある思い遣りによるものでした。優しく手をさ し伸ばして助けてくれて、何とかコミュニケーションをとろうと熱心だった彼らをみて、私は新たな世界への希望と熱情を感じていました。こ んなに素晴らしく、美しい感性を持った若い人々が世界のなかで素直に心を表せるデザイナーになったら、世の中はきっとより楽しく、明るく だろうと。これからの世界は国境を感じられない、異なる感性の融合による新たな創造が求められる時代になると思います。10年前の「世界に 向けて」という願いが、「世界と共に」という願いに変わろうとしています。10年後、皆さんの感性によって変わっていく世界を楽しみにしな がら、デザインの仲間として応援したいと思います。

張 浦華 / Zhang, Puhua 時代は日々刻々と変化している。世界は刻一刻とその距離を近くしている。デザインの課題も時代とともに変化している。デザインと言う” 言語”の基本を身につけたあなた達は、世界とのデザインに関するコミュニケーション・ツールを手に入れたのです。これから、新たなデザ インの課題に直面して、自らの”言葉を”世界に向けて発信して下さい!あなた達のメッセージが世界の彼方から聞こえてくることを、心待 ちにしております。

磯貝 恵三 / Isogai, Keizou 21世紀の幕開けに学窓を飛び立つ幸せな卒業生と修了生の方がたに、まずは「おめでとう、がんばってね」の一言を。次いでお願 いのいくつか。 20世紀の後ろがわ3分の2を体験した私たちの世代と(多分)4分の1の体験者であるあなた方と、歴史の持つ意味の受け止め方 には少しギャップが有るかもしれませんし、視点も異なるでしょう。しかし、過去の出来事がもたらした現実を知ることが、未来を考 えるための土台になると思うのです。で、歴史を学び直して欲しいということがお願いのひとつ。 建設という名目の環境破壊ではないかと国際的な非難を浴びながらも進行する中国の三峡ダム。そしてギロチンといわれた諫早湾の 潮受け堤防も、共に 国民の利益を守るという国家プロジェクトのいわばプロの出した結論です。プロとはなにかということです。 このところ行政をはじめ、医療や教育に携わる人たちのとんでもないミスが相次ぎます。この人たちは選挙や国家試験をパスした社 会が認めたプロたちです。プロがプロでなくなったのかもしれません。この世相はたしかに不安ですが、ここで自由な発想を持つアマ の出番です。デザイナーは建築家みたいに一級も二級もありませんから、おおいに枠をはみ出して活躍の場をつくってください。ユニ バーサルデザインを合い言葉にしながら。

DESIGN SEEDS : 8 6


Award

Awards at Competition in 2000-2001

ワールドデザインコンテスト JAN KEN P0N「掌の中で」 2000 The First Gifu World Design Competition JAN KEN PON "IN OUR HANDS"

井田 志乃/ Ida, Shino 作品名:Fitting Bag

DESIGN SEEDS : 8 7


Memorial events 2000-2001 生産デザイン この一年

April

7

入学式

11-13

The 1st Conference on Affective Human Factors Design in Copenhagen

24-26

Excursion to Gifu Ken Showroom in Roppongi Tokyo, Ceramic Research and Technology Institute of Gifu Ken, Gifu Pottery Design Council Metalfactory in Seki Rengo Hammono Kyo Dou Kumi Ai, Research for Design Competition [Jan Ken Pon] (Tajimi Gifu Ken)

May

June

July

August

25

第 1 回 ID セミナー:卒論テーマ決定報告

27-28

新入生歓迎コンパ

13

日本デザイン学会春季大会(京都府立大学)

16

第 2 回 ID セミナー:企業実習報告会

19

平成 12 年度特プロ総会,第 10 回感性評価構造モデル構築特別プロジェクト研究会

23

第 3 回 ID セミナー:卒業論文中間報告 1

26

日本感性工学会シンポジウム

27-28

感性工学日韓合同シンポジウム

22

生産デザイン演習 I 発表会(山中):2010 年の携帯情報端末 - 情報欲求とインタフェース,ユニバーサリティ,エコロジカル -

27

第 4 回 ID セミナー:卒業論文中間報告 2

27

感性特プロフォーラム

11

感性特プロワークショップ

18 ∼ 20

原田ゼミ合宿(SeGa)

19-29

Summer Design-Workshop "Missing Link "Topic "Gesture" (Staatliche Akademie der Bildenden K¸nste Stuttgart)

26-8/25

Prof. Lee Kun-Pyo(韓国科学技術大学)招聘研究者

5

磯貝恵三先生退官記念出版祝賀会

10-12

XVI Congress of the International Association of Empirical Aesthetics in New York

7-9

学外演習(京都)

September 14-15 18

October

19

第 5 回 ID セミナー:卒業論文発表会

26

第 11 回 感性評価構造モデル構築特別プロジェクト研究会

3

第 6 回 ID セミナー:卒業制作テーマ発表

4

デザイン実習 AB 発表展覧会「130cm 以下の世界のための椅子」

7-9

学園祭

25,26

平成 13 年度芸術研究科入学試験

28,29

デザイン学会秋季大会(岡山県立大学)

28 November 7

デザイン実習 AB 発表展覧会「情報照明」

11

ふいご祭

21

第 8 回 ID セミナー:修士論文・研究科の研究紹介

22

Excursion to ひのき工芸 (生産材料技術論)

28

Excursion to Mechanical Engineering Laboratory Tsukuba [Research about ERF (Electro Rheological Liquids) and Microfactory]

29,30

February

March

Prof. Maarten Gribnau (TU Delft) 招聘研究者 ( -Dec. 29) 第 7 回 ID セミナー:卒業制作中間発表 -1-

10

December 1

January

第 2 回日本感性工学会研究発表大会 卒業論文提出

平成 13 年度 推薦入学試験 生産デザイン演習 II 発表会(蓮見):タウンモビリティ

12

第 9 回 ID セミナー:卒業制作中間発表 -2-

14

Excursion to Electrotechnical Laboratory Tsukuba, [Testing new virtual tools for designprozess]

18

第 12 回 感性評価構造モデル構築特別プロジェクト研究会

28

年末大掃除、御用納め

4

御用始め

12-22

Prof. Lee Kun-Pyo (韓国科学技術大学) 招聘研究者

16

博士論文公開発表会

16

樹徳科技大学訪問

18

生産デザイン演習 III 発表会(原田):仮想月開発プロジェクト 2000(NASDA 協同研究)

19

卒業研究提出

20,21

大学入試センター試験

22

修士論文提出

29

修士研究 口述試験

1

修士論文・卒業研究発表会、平成 13 年度卒業研究指導教官発表

7,8

平成 13 年度 人間総合科学研究科芸術学専攻(大学院博士課程)入学試験

9-11

生産デザイン演習 IV および発表会(蓮見 + 山中)

19-25

アルス展(卒業制作展 @ つくば美術館)

25

筑波大学芸術賞表彰式

25,26

平成 12 年度 入学試験(個別学力試験前期)

26-3/4

アルス展(修了研究・制作展 @ つくば美術館)

1- 4

てつそん企画「筑波大学生産デザイン卒業制作展 @AXIS」

6-7

Open Workshop about Smell and Design [...on the Scent of Design] with Fabienne Huebner (Smellresearcher in Biochemical Institute Tsukuba)

12

平成 12 年度 入学試験(個別学力試験後期)

23

芸術専門学群卒業式・芸術研究科修了式・学位記授与式

31

大学間交流協定発効(TU Delft)

DESIGN SEEDS : 8 8


Graduate Projects Chosen for Design Excellence

優秀卒業研究・修士論文 Graduate Projects Chosen for Design Excellence 前田 吉広 / Maeda, Yoshihiro

論文:画像の保存と検索方法におけるユーザーインタフェースについて A New and More Efficient User-interface for Searching the Internet    and Changes in Photo Medium 作品:画像管理インタフェースシステム [ qurio] The System of Interface in Photo Medium

脇田 慎 / Wakita, Makoto

論文:携帯物の使われ方と携帯方法の関係 The Relation Between Belongings and the Way of Use 作品:真の携帯を実現した携帯情報端末 Cross Hands Virtual Reality

永野 将 / Nagano, Masaru

論文:ニオイを用いたインタフェースの可能性 A Study for the Possibility of the "Smell" Interface 作品:生命を感じさせるリラックスツール The Relaxation Furniture Which has us Feel Lives

宮澤 克次 / Miyazawa, Katsuji

論文:玩具の可能性 Potentiality of Toy 作品:積み木 Building Blocks

本田 宗久 / Honda, Munehisa

論文:ウェアラブルコンピュータのデザインに関する一考察 ∼機械的刺激及び温熱的刺激を用いたナビゲーション手法の基礎研究∼ Research on Design for Wearable Computer - Foundation Research on Navigation Technique Using Mechanical and Temperature Stimulus -

冨尾 圭介 / Tomio, Keisuke

論文:ミミズの行動動態を模倣したロボット Robot that Mimics Dynamical Behavior of Earthworm

DESIGN SEEDS : 8 9


Graduate Work Chosen for Design Excellence

平成 13 年度 最優秀卒業研究 [芸術専門学群長賞]

前田 吉広 / Maeda, Yoshihiro 論文:画像の保存と検索方法におけるユーザーインタフェ - スについて A new and More Efficient User-interface for Searching the Internet and Changes in Photo Medium

作品:画像管理インタフェ - スシステム [qurio] The System of Interface in Photo Medium

DESIGN SEEDS : 8 10


Graduate Work Chosen for Design Excellence

平成 13 年度 優秀卒業研究

脇田 慎 / Wakita, Makoto 論文:携帯物の使われ方と携帯方法の関係 The Relation between Belongings and the Way of Use

作品:真の携帯を実現した携帯情報端末 Cross Hands Virtual Reality

DESIGN SEEDS : 8 11


Graduate Work Chosen for Design Excellence

平成 13 年度 優秀卒業研究

永野 将 / Nagano, Masaru 論文:ニオイを用いたインタフェ - スの可能性 A Study for the Possibility of the "Smell" Interface

作品:生命を感じさせるリラックスツール The Relaxation Furniture Which has Us Feel Lives

DESIGN SEEDS : 8 12


Graduate Work Chosen for Design Excellence

平成 13 年度 優秀卒業研究

宮澤 克次 / Miyazawa, Katsuji 論文: 玩具の可能性 Potentiality of Toy

作品: 積み木 Building Blocks

DESIGN SEEDS : 8 13


Graduate Work Chosen for Design Excellence

平成 13 年度 最優秀修士論文

本田 宗久 / Honda, Munehisa 論文:ウェアラブルコンピュータのデザインに関する一考察 ∼機械的刺激及び温熱的刺激を用いたナビゲーション手法の基礎研究∼ Research on Design for Wearable Computer - Foundation Research on Navigation Technique Using Mechanical and Temperature Stimulus -

DESIGN SEEDS : 8 14


Graduate Work Chosen for Design Excellence

平成 13 年度 最優秀修士論文

冨尾 圭介 / Tomio, Keisuke 論文:ミミズの行動動態を模倣したロボット Robot that Mimics Dynamical Behavior of Earthworm

DESIGN SEEDS : 8 15


Tetsuson てつそん

JOINT EXHIBITION OF GRADUATION WORKS 2001

"てつそん"とは、東京で行なわれる卒業制作学外展を一つのイベントとしてPRし、より多くの人々に自分達の作品 を見てもらう事を目的とした合同卒業制作展プロジェクトです。

てつそん企画活動 2000. 1   : 日本全国のデザイン系大学宛に卒業制作の合同展示企画を呼び掛ける。 2000. 2∼3  : 企業実習、就職活動等で企画の呼び掛けを行なう。 2000. 4   : 有志となる大学が集まりはじめる。

( 筑波大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、日本大学 等、、、)

         月1回ペースの会議が行なわれるようになる。 2000. 5∼6  : 合同展示の企画運営体制が形作られ、参加希望大学の追加や脱退により11大学となる。 筑波大学、東北芸術工科大学、長岡造形大学、多摩美術大学、東京学芸大学、東京造形大学 日本大学、京都工芸繊維大学、神戸芸術工科大学、岡山県立大学、九州芸術工科大学

         デザイン系法人団体への後援依頼活動          展示会場の確保、合同卒業制作展CI選考・決定(てつそん:多摩美術大学案) 2000. 7   : 企画書の作成、担当制による責任分担、渉外活動準備(担当大学:東京造形大学)          てつそん公開用HPの作成 2000. 8∼9  :  てつそんポスター・DM・ガイドブックデザイン完成          渉外活動開始 2000. 10∼12 :  てつそんシールの制作、DM・ポスターのデータ入稿          前期会計締切日、広報活動準備・開始(担当大学:日本大学) 2001. 1   :  ガイドブックデータ入稿、DM・ポスターの郵送          合同WEB 展用データの提出 2001. 2   :  ガイドブック完成、合同WEB展開催、てつそん開催、てつそんパーティー  2001. 3   :  てつそん終了、合同WEB展終了、反省会 2001. 4   :  後期会計締切日                   

てつそん 立体系デザイン合同卒展プロジェクト

2001年 2 月   22 日(木)∼ 3 月  日 11 (日) 新宿・原宿・渋谷・五反田・六本木

参加大学:東北芸術工科大学、長岡造形大学、多摩美術大学      筑波大学、東京学芸大学、東京造形大学、日本大学      京都工芸繊維大学、神戸芸術工科大学、岡山県立大学      九州芸術工科大学 後援  : (財)日本産業デザイン振興会      (社)日本インダストリアルデザイナー協会      (社)日本インテリアデザイナー協会      (社)日本クラフトデザイン協会 協賛  :富士写真フイルム株式会社、ソニー株式会社、株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ      松下電器産業株式会社、株式会社本田技術研究所、三洋電機株式会社、株式会社パイロット      安達紙器工業株式会社、株式会社ニコン、モニターハウス株式会社、株式会社NECデザイン      日本精機株式会社、Cinema Cafe、日産自動車株式会社、岩塚製菓株式会社、CG-ARTS協会      ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、Yellow Magic、株式会社エンヴァイロテック      日本通運株式会社 (順不同)

DESIGN SEEDS : 8 16


Graduation Projects of Bachelors’ Program

卒業研究(論文・制作) Graduation Projects in the Bachelors’ Program

伊野 真文 / Ino, Masafumi 笠井 祐子 / Kasai, Yuko 久保 寛子 / Kubo, Hiroko 佐藤 亜希子 / Sato, Akiko 徳永 陽子 / Tokunaga, Yoko 永野 将 / Nagano, Masaru 前田 吉広 / Maeda, Yoshihiro 宮澤 克次 / Miyazawa, Katsuji 脇田 慎 / Wakita, Makoto DESIGN SEEDS : 8 17


Bachelor ’s Research

伊野 真文 / Ino, Masafumi 筑波大学 芸術専門学群 研究指導:蓮見 孝 / Hasumi, Takashi

論文:「変化」と「古い」その認識の関係 The Relation Between “Alternation” and “oldness”

作品: 時間性の集積を表わす製品 The Product of Organized Time

graduation thesis

■目次  ・はじめに ∼パターンとしての経年変化∼  ・諸行無常と「変化」  ・錆の語源  ・「さび」の美的意味  ・「さび」による「変化」の定義 ∼劣化と味わいの違い∼  ・「古い」の分類  ・実際の製品の「変化」と「古い」 ∼アンティークを例に∼  ・終わりに

graduation work

時間性の集積を表わす製品 -The Product of Organized Time-

少しくらい錆びてもいいと思う。

DESIGN SEEDS : 8 18

卒業論文


Bachelor’s Research

笠井 祐子 / Kasai, Yuko

卒業論文

筑波大学 芸術専門学群[タカノ株式会社] 研究指導:山中 敏正 / Yamanaka, Toshimasa

論文:隠す行為とその所在 Hidden Place and the Technique

作品:隠す機能を隠し持つ家具 A Furniture Which Hides a Function to Hide

graduation thesis ■研究の目的 古来から人は、自分にとって大切なモノ を第三者の目から隠してきた。なぜ人は隠 すという行為を行うのか、そしてどうやっ たら第三者に分からないように出来るのか を疑問に持ち、これを研究テーマとした。

■隠すとは 出来るだけ自分の身の回り=領域内に隠 すことで防犯性が高いと感じられる隠す方 法は、今も昔も変わらず実践されている。 隠すには、物理的に目から見えなくする方 法と、他のモノに見せかけて認識させなく する方法、同型のモノの中に紛れ込ます方 法がある。つまり隠すは、ただ第三者の目 から物理的に見えなくするだけではなく、 「そこにある」という情報が漏えいしない ように守ることである。 人間の世界には、それに「信頼」と「忘

却」という言葉が重要となってくる。見ら れたくないものでも、見る可能性のある人 物が自分にとって信頼に値する者であった 場合、その信頼が錠前の役割を果たし、隠 すという行動を起こさなくなる。また、隠 した本人がその場所を忘れてしまった場合 は、それは「隠す」とは言わず、紛失する と言えることが分かった。

■研究結果 人によって隠し方は様々であったが、第 三者にとってそこに存在すること自体を気 付かれない上に忘れる心配がない方法がこ れからのテーマとなってくるだろう。

■ Abstract Until now, people try to hide secret things from other people. However it is difficult to remember several hidden places. On the other hand, we feel anxiety to be discovered by others. I researched the reason and the way of hiding. There are two important things, “trustworthiness” and “oblivion”. If people are trustworthiness for one who has a secret thing, we will not hide it. Because, “trust” reacts as the lock to hiding place, we believe our man never disclose or steal our things. Another thing, if one who hides thing and forgot the fact, it will not be called “hidden thing” anymore. It will be called “a lost”. We used those two things unconsciously. Therefore, in order to retain, we have to lessen own hidden places and things. Other important thing is to try to show own secret things unobtrusively.

graduation work

隠す機能を隠し持つ家具 -The Product of Organized Time-

人によって隠す場所はさまざまである。彼等は自分で隠す場所を つくり出していく。そこで、今回は販売されている収納家具にもと もと隠す場所を製作し、提供してはどうだろうかと考えた。 飾り棚として販売し、購入者がふとした拍子に飾り部分の裏に隠 された収納スペースがあることに気付き、そこに各人の隠したいも のを収納する。気付いた人には、『収納場所=隠す場所』として機 能するが、購入しても気付かなかった人には、飾り棚としてのみ機 能する。

This is a cabinet which has a hidden blank space but not to tell that it has. Sells it as a cabinet. Some of users may find out a hidden place by chance. Those users can hide their secret things there, but others who could not find, use it as a cabinet only.

DESIGN SEEDS : 8 19


Bachelor’s Research

卒業論文

久保 寛子 / Kubo, Hiroko 筑波大学 芸術専門学群[株式会社インテリアセンター] 研究指導:蓮見 孝 /Hasumi, Takashi

論文:小学生の学校生活における遊び構造の研究 Research on Play Structure in School Life

作品:生まれる遊具、生まれる遊び The Growing Toy and the Growing Play

graduation thesis ■研究にあたり

■研究結果

■ Abstract

塾通いなどによる遊び時間の減少、また 環境の変化による遊び場所の減少というよ うに、遊びに関してマイナスなイメージが 強い今、いったい現在の子供達はどう遊び の時間を過ごし、どう遊んでいるのかとい う疑問から、小学生の学校生活における遊 びについての研究を行った。

これらの発見から、結論として導きださ れるものは、子供達のもつ遊びに対する本 質的精神の普遍性、また社会の動きが非常 に大きく子供達の遊びに影響を与えている こと、さらに現在の子供達が遊びに対して 意外に意欲的だという現象もまた、社会の 動きの影響を強く受けているためではない かということである。

The reduction of play-time by going to juku (Japanese supplementary private cram school) and by the recent changes of children’s environment. These negative images related to children's playing made me think how they spend their free time and what they do during their free time especially during lunch break. So I collected a number of data of playing during lunch break. With regard to present data. And I interviewed every generation about how they spent lunch break when they were pupils. Then I categorized these data by Roger Caillois's theory and compared these data from every aspects.

■研究内容 現在のデータについて実際に小学校で 「昼休みウオッチング」を行い、また過去 のものについては各年代の方々にインタ ビューを行い「昼休み史」を作成した。 これらのデータを競争、運、模擬、眩暈 の4つを基本的カテゴリーとするカイヨワの 遊びの分類をもとに分類し、あらゆる角度 からそれらを比較することで、様々な傾向 を発見することができた。

graduation work

生まれる遊具、生まれる遊び -The Growing Toy and the Growing Play-

卒業論文より、現在の子供達が意外に遊びに対して意欲的である ことを強く感じ、子供達が自ら作り出す独創的な遊びや、日々変化 している遊びに着目し、遊具も子供達の遊びとともにそのカタチを 変化させることができたり、遊具の生み出す様々な動き、形状か ら、子供達の手による遊びが作り出されたら面白いのではという思 いでこの遊具制作にとりかかりました。単純なカタチの組み合わせ により、いかにたくさんの形状を生み出せるか、またいかにたくさ んの動きを生み出せるかと考え基本のパーツを作り、またこれらの 接合方法に頭を悩ませました。接合部が頑丈でなければならないこ と、できるだけ簡単な作業で接合できることに重点をおき、特殊マ ジックテープを用いました。子供達の手により、予想もつかないよ うなカタチに作り上げられたり、予想もつかないような遊びが生ま れたらいいなと思っています。 I found that children are highly motivated to play by the result of my bachelor's theses. So I started to make the toy with the thought that it is interesting if a toy can help children to create new ways of playing by changing its shape and movement freely. I hope that children create new unexpected shapes and ways of playing by using this toy.

DESIGN SEEDS : 8 20


Bachelor ’s Research

佐藤 亜希子 / Sato, Akiko

卒業論文

筑波大学 芸術専門学群[株式会社トゥール社] 研究指導:蓮見 孝 / Hasumi, Takashi

論文:感性的な認識・記憶・行動に基づく整理法の研究 A Study on the Method for Arranging Based on Instinctive Cognizance, Remembrance, and Action

作品:ひとり暮らしを始める人のための家具 "Plane" “Plane” The Furniture for a Young Person who Lives Alone, “Plane”

graduation thesis ■研究にあたり 現在、私達の周囲には大量の情報ともの が溢れている。しかし、それらをうまく整 理できている人は少ないのではないだろう か。

■研究内容 情報量の増加にともない、情報の整理法 が必要となり、様々な方法が実践されてき た。現在では、パソコンなどの発達、普及 によって、コンピュータが情報を整理、管 理する。私達がやるべきことは、次々と流 れ込んでくる大量の情報の整理、すなわち 必要な情報のみを選択していくことであ る。 ものの整理は、情報と異なり一律にはで きない。実験により感覚的、直感的に探せ るように整理すると使いやすいという傾向 が見られたが、実際には人それぞれ、もの

の種類に合った整理をすることが大切なの である。

■研究結果 絶対的な整理法は現在のところないが、 情報、もののどちらもその性質から適した 整理法を見つけることは可能である。整理 は使いやすさを得るだけでなく、情報とも のの大量消費の見直しや環境配慮を進めら れる可能性を含んでいるのである。

■ Abstract Today, our lives are flooded with information and things. However, it is difficult to organize so much information and things. There is no perfect way of arranging everything, but we can find the proper way. The arranging enables us not only to easily retrieve and use information and things, but also to save and reuse resource of everything for conserving the environment.

graduation work

"Plane" - 箱型収納家具を越える平面の家具 -

学生など、若い人がひとり暮らしを始めるときには、限られたス ペースの部屋に必要最小限の家具、家電などを置く。そのような環 境で、簡単、便利に、安価で楽しく使える収納家具を提案する。 引 越し、模様替えのために、ひとりでも設置、分解、移動が簡単にで きる。上の空間を利用できる収納で、限られたスペースの部屋でも 床を広く使える。ものが増えたら、袋1つから手軽に収納を増やす ことができる。多様なものを収納するには、箱型収納より袋収納の 方が自由度が高い。他の家具や家電、部屋の雰囲気などに合わせ て、簡単に自分で装飾できる。 収納のための家具であるだけではなく、ひとり暮らしの生活を豊 かに自分らしくするためのツールである。

The “Plain” is a kind of case goods made of cloth pockets and board. It is especially beneficial for young people living alone. It is simple in design, useful, economical, and it can be used pleasantly. It doesn’t take up much space. For example, the “Plane” is easy for one person to assemble, disassemble and move without assistance. The bag type of the “Plane” is more freely used than box-style cabinets. Whenever it’s needed, it can be added another parts easily. Everyone can make it easy to colorcoordinate within his or her rooms. The “Plane” will make our lives full and enjoyable.

DESIGN SEEDS : 8 21


Bachelor’s Research

徳永 陽子 / Tokunaga, Yoko

卒業論文

筑波大学 芸術専門学群[ソニーシステムデザイン株式会社] 研究指導:山中 敏正 / Yamanaka, Toshimasa

論文:紙媒体とデジタル情報機器 Paper Media vs. Digital Information Tool

作品:電子試写装飾雑貨 Breeding Hexagonal Preview Units

graduation thesis ■研究にあたり パソコン、ケータイ、デジタルTV‥と今 日ではデジタルで情報を送受信する機会が 増え、必然的にそれを扱うための機器が 次々と増えている。しかし、サービス自体 は非常に便利である反面、それら機器の操 作感、形状、接し方はどれも一様であり、 何か物足りなく感じはしないだろうか。

が心地良く使えるデジタル情報機器の開発 のヒントを得ようと試みた。 新聞から手紙、飲料の紙パックにいたる まで、あらゆる紙媒体に人がどのように接 してきたか、極力自由な視点で紙の特質を 列挙し、それら270語句を〈動き〉〈シチュ エーション〉〈形〉〈ビジュアル的効果〉 〈社会的効果〉〈感情や感覚〉〈情報の機 能性〉の観点から比較分析した。

■研究内容 このことを追求すべく、比較対象とし て、“元祖情報機器”である「紙」を取り 上げた。紙は、素材に何らかの文字/画像が 記載されるだけで情報媒体として成立し、 読み方、書込み方、持ち方、保存の仕方、 消去の仕方、使う場所柄といった点で 非常 に多様な“作法”を持つ、個性的かつフレ キシブルなものであった。 紙が媒体として持つ特質がそもそも何で あるのかを考察することにより、より人間

■研究結果 1)(手間やプロセスを経て)情報を得る喜 び、 2)(手ざわりのある)実物としての存 在感、 3)感情の“自然な流れ”を妨げない 閲覧手順、 が紙の持つ重要な特質である という結論を得た。これらこそまさに現代 のデジタル情報機器に欠けていることがら である。それらを補うことが、これからの デジタル情報機器を一層 扱い良く面白いも のとさせるに違いない。

■ Abstract In an attempt to develop more userfriendly digital information equipment, it would be beneficial to review what paper can give you as an information medium. You may satisfy and enjoy with having information (after a certain process), in finger-touchable reality, and retrieval or reading process without any interruption to your natural action flow. I could identify three important characteristics of paper through analysis of 270 attributes and phrases that are considered to better describe the nature of paper. If some of these could be added to today’s digital information equipment, it would become more familiar equipment for people.

graduation work

電子試写装飾雑貨 -Breeding Hexagonal Preview Units-

お気に入りのカードや手紙を壁に貼り、好きに並べかえる楽しい 一時。また、地図をバッと目の前一面に、大きく広げて見る感覚。 そして切り取って持ち出したり、人に見せびらかしたり、交換した り――。そうした紙で行っていた感覚を、デジタル情報でも実現さ せたいという意図がこの制作である。 記録メディア(e.g. FDやメモリーカード)を読みとり、瞬時に中 身が、組み上げられたディスプレイ群に展開される。メディアのプ レビュー装置でありながら、その読み込まれた画像・テキストなど はメディアを抜きとり電源を切った後も、温存される。後はそのま まインテリアとして飾るも良し、デジタル積み木としてブロック遊 びのように組替えたり、1個だけ切り離して切手を貼り友人に送る も自由である。また逆に(ドライブ用の音楽テープを作るような感 覚で)、このユニット群を設置する各場所の雰囲気に合わせて、中 身を編集したメディアを作るのも、面白い時間になるかもしれな い。 Good-bye, multi windows! ---A Multi-display System ● As many display units as you want can be connected to form a multi-display system. ●A display unit is composed of a hexagonal display (electronic paperbased), and connectors for signal and power transmission. ●A driving unit contains in addition to a display unit, a computer, battery pack and interface for a Memory Stick or FD.

DESIGN SEEDS : 8 22


Bachelor’s Research

永野 将 / Nagano, Masaru

卒業論文

筑波大学 芸術専門学群[筑波大学 芸術研究科 修士課程] 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:ニオイを用いたインタフェイスの可能性 A Study for the Possibility of the "Smell" Interface

作品: 生命を感じさせるリラックスツール The Relaxation Furniture Which has us Feel Lives

graduation thesis ■研究にあたり

■研究結果

■ Abstract

「あ、このニオイ懐かしいなあ。。。」 こんな経験から、ニオイ刺激は他の感覚か ら得る刺激より、人の情動を動かす効果が 強いのではないかと感じ、「ニオイによる 懐かしさの喚起」の仕組みを調査し、ニオ イがインタフェースとして利用できるかを 検証した。

この結果から、ニオイを添加すること で、懐かしさを表現するインタフェースが できる可能性があることが分かった。 ニオイによるデザインは、現在ではシャ ンプーや香料等の分野で行なわれている。 しかし、これからは「ニオイを添加する= 良いニオイをつける」に止まらずに、「ニ オイを添加する=情動を動かす」というよ うに、人の感情に働きかける新しいインタ フェースの分野にも広がりを見せる可能性 があるといえるだろう。

This study is on the possibility of smell driven interface through researching about "how smells make us nostalgic". In conclusion, we used smell to toiletry, foods and so on by now. However, we will be able to use it to one of the interface that moves our emotion in the future.

■研究内容  結果は、人は自分だけの懐かしいニオイ の記憶を持っていて、その多くは、両親や 恋人など、自分にとって身近で特に親しい 人間に関するものであった。この結果か ら、一般的になつかしいニオイは日常的に くり返し嗅いでいたものの中で、情動を伴 う経験をしたときに嗅いでいたものではな いかと推察した。

graduation work

生命を感じさせるリラックスツール -The Relaxation Furniture Which has us Feel Lives-

まるで生命を吹き込まれたかのように、人が近付くことで呼吸を 始め、香りを放ち、人と触れあうことで、カタチを変えていく。眼 で、肌で、鼻で動きや香りを楽しみ、リラックスを感じる、新しい インテリア的立場の存在である。この作品では、生命を感じること によって、リラックスすることをコンセプトとしているた、め人が 意図して制御するスイッチはなく、すべてのスイッチはセンサー等 で自動的に動作するようになっている。 本体の構造は、外部に見えているバルーンと内部のバルーンとの 二重構造になっており、外部のバルーンに香りのついた空気を送り 込むことによってカタチを変形させると同時に、徐々に香りを放出 し、内部のバルーンには、人が座ったりした時に体重がかかること になる。 インテリアとして、リラックスツールとして、またはオブジェと して、自由に楽しんでもらえる存在になるとうれしい。

This furniture starts to expand like a breath when you come closer to it. At the same time, it will vaporize special smell, and changes the shape by sitting down on it. Two sensors control the motion so that you may not feel anxious for controlling it. It is the pleasure for me that you enjoy it as you like.

DESIGN SEEDS : 8 23


Bachelor ’s Research

前田 吉広 / Maeda, Yoshihiro

卒業論文

筑波大学 芸術専門学群[富士写真フイルム株式会社] 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:画像の保存と検索方法におけるユーザーインタフェ - スについて A New and More Efficient User-interface for Searching the Internet and Changes in Photo Medium

作品: 画像管理インタフェ - スシステム [qurio] The System of Interface in Photo Medium

graduation thesis ■研究にあたり  私達が存在する現代は、大量の情報に よって埋めつくされた「情報社会」という 事ができる。様々な情報のやりとりが個人 単位で行なわれ、新しい情報が次から次へ と生み出される社会である。しかし、それ らの情報をわたしたちはどのようにして導 き出せばよいのだろうか? 情報の価値は その存在にあるのではなく、必要な時に導 き出せるという検索行為にあるのではない だろうか?

■研究内容  今回この論文においては、そんな情報 の一つである「画像」情報について限定 し、管理・検索方法の在り方について研究 を行なう事とした。まず現在の画像管理状 況を調べるため、実験としてある画像情報 をユーザーに与え、その画像と同じものを インターネットを用いて検索してもらい、

ユーザーの思考過程を記録した。記録結果 から、彼等の与える情報が「時間」「場 所」「色」という3つの概念に分類される のではという結論にいたった。そこで、そ れらの3軸を用いた画像管理システムの シュミレーションモデルを作成し、現在の 画像管理システムとの比較を行ないなが ら、今後の画像検索行為のあり方について の考察を行なった。

■ Abstract The value of information exists only when the system leads informations we need has established. I tried to set up it from three point of view, "time" "color" "place". I found a new problem, that is the necessity of communication with photo medium, then to solve it, I did my work.

■研究結果  結果、人間とコンピューターを繋ぐ共 通検索軸を持った画像管理方法を提案する に至った。しかし、シュミレーションモデ ルを通して新しく「検索過程における画像 コミュニケーション」の必要性を認識させ られ、卒業制作においてその解となるコ ミュニケーション手法の提案を試みた。

graduation work

画像管理インターフェイスシステム - [qurio] -

卒業論文において導き出された「検索過程における画像コミュニ ケーション」の解として、仮想空間上を飛び回る検索方法を提案し た。それは、誰もが持つリアルな空間上での概念を、そのまま仮想 空間に持ち込む事ができるという利点があるからである。そのた め、仮想空間と人とを繋ぐインターフェイスに「空を飛ぶ」という イメージを備えたデザインを試み、その検索方法を形・事として表 現した。 空を飛べたら、、、と、誰もが一度は思った事があるだろう。山 や川、海や野原などいろんな景色を見ながら自由に空を飛ぶ感 覚、、、そんな感覚を仮想空間上で楽しみながら、目的の画像を導 きだしていってほしい。  

I suggested the system of interface in photo medium. In this system you can experience the sky-world with searching the photo medium you need. I hope you have fun with qurio, as if you were back to your childhood.

DESIGN SEEDS : 8 24


Bachelors’ Research

宮澤 克次 / Miyazawa, Katsuji

卒業論文

筑波大学 芸術専門学群[筑波大学 芸術研究科 修士課程] 研究指導:山中 敏正 / Yamanaka, Toshimasa

論文:玩具の可能性 Potentiality of Toy

作品: 積み木 Building Blocks

graduation thesis ■研究の目的

■研究の結果

■ Abstract

子ども達は6 才児に成長するまでに約 15000時間を遊びに費やす。それは一日に 平均すると約7∼9時間にもなり、子ども達 は遊びを通じて、肉体的にも精神的にも発 達していく。子ども達が遊ぶのを見てみる と、遊びの中には必ずと言ってよいほど 『玩具』の存在があることに気付く。それ はさまざまな物であったり、材料であった り、自分自身の身体やあるいは他の子ども や大人であったりする。 今日、どのような遊びに対してもあふれ るほど多数の良い玩具がある一方で、それ 以上に無意味で無駄な玩具も多数存在す る。子どもも親も次から次へと出てくる玩 具の大量な供給や宣伝に踊らされている様 すら見受けられる。その原因は子どもの欲 しいものと教育的な配慮の衝突であり、そ の問題を上手く解決する糸口を見つけるこ とが今後は必要ではないだろうか。

子どもの創造表現において、まず第一に 必要な要素は「想像力」であり、次に、発 見(ひらめき)とそれを納得できるものに するだけの論理性であった。これらのこと を子どもたちが自ら自発的に行うために は、玩具の中にそうさせるだけの可能性、 機能を備わってなければならない。発見が おきるためにはそこに発見されるだけの事 柄がなくてはならないし、それを納得する ためには玩具のなかに納得できるだけの論 理性や規則性がなければならない。表現に おいても、納得した発見が容易に表現でき なければならない。

By the age of 6 years, children spend about 15000 hours on play. If will become no less than about 7 - 9 hours in a day. That means children grows physically and mentally by playing. In their play, “toy” works as an special roll. While there are tremendous number of toys today. Although the value of toy is not determined, there are a number of useless or disturbing toys for their development. We could find that child and parents are confused by the supply and advertisement of the toy which comes out one after another. The cause is a collision of a child's thing needed for a educational consideration. Isn't it required to find solutions of the problem?

graduation work

積み木 -Building Blocks-

卒業研究で得られた結果をもとに、子どものための玩具(積み 木)を卒業制作で行った。創造活動で最も重要な想像力(イメー ジ)を妨げないということから、具象形態を使わない玩具をデザイ ンした。また、素材もブナ、カエデといった広葉樹を使い、塗装も 漆や柿渋といった自然系塗料を使用した。人工物が氾濫している今 日、自然の持つ風合いや匂い、色といったものが人の能力だけでな く、精神的なところまで作用してくれるのではないだろうか。

On the basis of the result obtained by graduation research, I made the toy (Building blocks) for children. Since it said that the most important imaginative power was not barred in creation activities, the toy which used concreteness form. Moreover, the material also used the beech and the maple, and paint also used a natural paint which called Japanese lacquer and persimmon juice.

DESIGN SEEDS : 8 25


Bachelor ’s Research

脇田 慎 / Wakita, Makoto

卒業論文

筑波大学 芸術専門学群[株式会社富士通ターミナルシステムズ] 研究指導:山中 敏正 / Yamanaka, Toshimasa 

論文:携帯物の使われ方と携帯方法の関係 The Relation Between Belongings and the Way of Use

作品: 真の携帯を実現した携帯情報端末 Cross Hands Virtual Reality

graduation thesis ■研究にあたり 携帯電話の普及率が固定電話の普及率を 超え、様々な情報に関する機能が携帯電話 に集約されつつある。その様な現代、未来 の情報機器にとって「携帯」と言う要素が 重要である。本研究は人が物を携帯してい るということは、どういうものなのか知る べく進めた。

そこから人は携帯物に対して「よく使う」 「大切」と言った意識を持っていることが 解った。

■研究結果 携帯とは人が身につけている物の中でそ の物が意識されており、その意識の種類が 「よく使う」「大切」の様な能動的な人中 心の状態にあることを言うのである。

■研究内容 「持ち運び」と「携帯」の違いを比較す る。どちらも物理的に人と物が結びついて いる状態にあるが、異なる点は「携帯」は 人がその所持しているものを意識してい る、または意識できる状態にあるのに対し 「持ち運び」は人に意識されることがない 状態にあるのである。 では携帯物に向けられる意識はいったい どのようなものなのだろうか、人の持ち物 に対する意識アンケートを行い分析した。

■ Abstract These days, a cellular phone, called “Keitai” in Japan, became more popular than home telephone. And so many function for information are equipped in it. The portability assumed to be a biggest reason of its popularity. Then I researched on the portability to define “Keitai” as “Truly portable”. “Keitai” is not equal to carry at all. “Keitai” thing should have been aware of a man. However a carried thing is not. To carry is just to moving. The awareness is a factor of things that narrows the distance of carried thing and using the function. “Keitai” is the active thing.

graduation work

真の携帯を実現した携帯情報端末 -Cross Hands Virtual Reality-

研究を進めていくなかで、世の中に出回っている情報機器には機 能が優れている、小さい、軽い物は多く存在する。しかし本当の意 味で情報を携帯することができている機器が実に少ないと感じた。 いつでも迅速に使えて、使う時は使いやすく、使わない時には邪魔 にならない、携帯することから考えた情報機器を提案しました。携 帯方法としては両腕に装着する。使用しない時に気にならない程度 の大きさ、なおかつ手で使用しやすい大きさと目や耳でも使用しや すいことを考慮に入れた結果この様な形態をとった。手を組んだ様 な姿勢で入力する様は今までの形態情報端末にはみられなかった、 スマートで自然な入力方法といえるだろう。またユーザーと情報世 界との掛け橋をエージェントが果たすことで、現実世界と情報世界 の間の感覚的なズレをなくすことができると考え、エージェントを 用いたインタフェースを提案した。 In process of my research, I was aware of that we can see few products for “Keitai”. These products which are composed with two peaces, are worn both hands. Right one is display unit, and left one is key unit. You can access with left hand keys, watch right hand display. Two peaces unit which worn both hands, can apply wide input space and display without preventing your behavior. And a agent who is in display, mediate between you and Information world well.

DESIGN SEEDS : 8 26


Master’s Thesis

修士課程、博士課程論文概要 Thesis Projects in the Master’s and Doctoral Program

内山 俊朗 / Uchiyama, Toshiaki 榊原 瑞穂 / Sakakibara, Mizuho 杉山 真理子 / Sugiyama, Mariko 田原迫 玄 / Taharasako, Gen 冨尾 圭介 / Tomio, Keisuke 洪 輔廷 / Hong, Bo-Jung 本田 宗久 / Honda, Munehisa 李 岡茂 / Lee, Kang Moo 佐藤 弘喜 / Sato, Hiroki 森崎 巧一 / Morisaki, Norikazu DESIGN SEEDS : 8 27


Master’s Thesis

内山 俊朗 / Uchiyama, Toshiaki

修士論文

筑波大学 芸術研究科(修士課程)[筑波大大学芸術学系] 研究指導:山中 敏正 / Yamanaka, Toshimasa

論文:デザインプロセスにおける調査解析の融合的活用方法 Harmonizing Method for Design Process with Investigation and Analysis

Master’s Thesis ■研究の背景と目的 本研究の目的はスムーズなデザインプロセ スを実現する新しい調査解析方法の開発であ る。情報が複雑化する現代、デザインプロセ スにおける調査解析は、ますます重要な地位 を占めつつある。しかし、現状で行われてい る調査解析を見てみると、デザインプロセス の中に効率よく溶け込んでいるとは言い難 い。 現状のデザイン調査解析では、市販されて いるMicrosoft Excelのマクロ集や、非常に高 価な専用の解析ソフトを使用するという図式 が確立しているが、これ以外に選択肢がない のも事実である。現在のこれら方法では、 データ入力の手間や最終的なアウトプットま でに複数のアプリケーションを使用し、ほと んどの行程が手作業であるため、多くの労力 や時間を要する。それにより、本来はスムー ズであるべきデザインプロセスの進行が妨げ られている。 Macromedia Directorは、デザイナーの多 くに支持されているアプリケーションであ り、グラ フィカ ルユー ザイン タフェ ース (GUI)の開発に使用されることが多い。 Directorのビヘイビアは、画面上のオブ ジェクトにインタラクティブ性や効果を与え るときに用いる、あらかじめ用意されたスク リプトのことである。 このビヘイビアで解析機能を提供できれ ば、プログラミングや、解析に関する特別な 知識がなくても、オブジェクトに解析機能を 持たせることができる。特別な知識が不要な 点ではExcelのマクロを使用した調査解析方法 と共通しているが、先のインタフェース開発 に代表されるDirectorの特徴を活用すること により、いままでにない入力から出力までが 一貫した調査解析システムが構築可能である と考える。  

■解析ビヘイビア作成と動作検証 デザイン解析には様々な解析手法が使用さ れているが、その中でも使用頻度が高い、数 量化理論Ⅲ類、クラスター分析、I SM 法、 DEMATEL法について解析ビヘイビアを作成 した。 一般にDirectorで作られたプログラムは実 行速度が遅いと言われている。そのため今回 作成したビヘイビアでは実用に支障が出るの ではないかという懸念があった。そこで実際 に計算や描画にかかる時間を計測し検証を

DESIGN SEEDS : 8 28

行った。 検証の結果、ビヘイビアによる計算は、 同じ計算過程を持ったExcelの市販マクロと 比較して、クラスター分析では約4分の1、 ISM方では約9分の1、DEMATEL法では約 10分の7、の短時間で完了した。 数量化理論Ⅲ類はビヘイビアの方がマク ロより9倍時間がかかるという結果が出た が、数量化理論Ⅲ類だけは、マクロと異な る計算過程のプログラミングを用い、その ソースコードの行数だけでもマクロの2.5倍 あった。そのことから、マクロと同じ計算 過程を持たせるなど、プログラミングの見 直しにより、同様またはそれより短時間の 計算が可能になると予測する。

■現状調査と調査解析補助ビヘイビア  の作成 前章にて解析ビヘイビアが実用に耐えら れる実行速度であることがわかった。しか し、ただ実行速度が速いだけではビヘイビ アの真価を表しているとは言えない。解析 ビヘイビアの真価は、Directorムービー や、Shockwaveムービーの中で、入力した データが即座に解析され、出力されること にある。それを実現するためには、解析ビ ヘイビアに対しての入力、出力などを補助 するビヘイビアが欠かせない存在となる。 今回は開発期間や開発能力的制約もあ り、DEMATEL法ビヘイビアに対象を絞り 調査解析補助ビヘイビアを作成することに した。DEMATEL法はアンケートの回答方 法、面倒なグラフ作成ワークフロー、閾値 変更にともなう作業のやり直しが、調査解 析のスムーズな進行を妨げる傾向にある。 そして、それが他の解析手法より顕著なこ とから、DEMATEL法を選んだ。 ソフトウエア開発においては、ユーザー 調査に基づく仮説検証型開発プロセスが望 ましいと 言われ ている 。そこで 、まず DEMATEL法の調査解析プロセスにおけ る、回答者側の立場、調査側の立場それぞ れに対しどのようなビヘイビアが必要であ るか調査を行った。 その結果、DEMATEL法の調査を行う際 に、行列方式のアンケートは回答者に負担 をかけているため、行列記入方式とは別の 方法で、入力が行えるビヘイビアが必要で あると仮説を立てた。また解析時には、閾 値を変更した際の作業の繰り返しとグラフ

作成の負担を軽くすることが鍵であり、そ れを行うビヘイビアの作成が必要であると 仮説を立てた。これらの仮説をもとに要求 を満たす33個のビヘイビアを作成した。

■実装検証 解析ビヘイビアと解析補助ビヘイビアを 作成してきたが、果たしてそれが実際の使 用に耐えることができ、有効活用できるの だろうか。 DEMATEL法からデジタルカメラの機能 同士の関係を把握し、それをインタフェー スデザインに活用するというプロセスにビ ヘイビアを応用し検証を行った(図1)。ビ ヘイビアが作者以外でも扱えることを確認 するため、Directorの基本操作は習得して いるが、プログラミングに関する知識はあ まり持っていないモニターに使用しても らった。 Directorの基本操作を習得していれば、 使い方に関してはすぐに理解できたようだ が、ビヘイビアの名前やアイコン、説明文 の言い回しなど、こまかい配慮を問われる ことが多かった。ここは、ビヘイビアの完 成度を高めていく上で重要な点である。ま た、テンプレートなどを見て学習できるよ うにしておかないと完成形が想像しにくい ということがあった。これもやはり実用を 前提とすると欠かせないものになるだろ う。 この検証においてモニターから特に高い 評価を得たのは、その解析プロセスであ

図 1 - 実 際 の デ ザ イン プ ロ セ ス への 応 用


Master’s Thesis

る。現状では手作業で30分近くかかってい た解析、作図プロセスを、ビヘイビアによ り自動化し数秒で完了させたところであ る。これにより、デザイナーは非効率な繰 り返し作業から解放され、より多くの時間 をクリエイティブな時間に使うことができ るようになると考える。

■結論と展望 数量化理論III類、クラスター分析、ISM 法、DEMATEL法とこれに伴う調査解析補 助ビヘイビアを作成し、実行時間の計測や 応用例を用いビヘイビアの有効性を示して きた。 特にデジタルカメラの例において、現状 では30分近くかかって当然と思われていた プロセスを、数秒で完了してしまう場面 は、ビヘイビアの有効性を示すよい材料に なるだろう(図2)。そして時間的な短縮や 手間の削減により、調査解析プロセスの質 が今までと変わったということがデザイ ナーの声を聞くことによってうかがえる (図3)。そして、この量的な変化と質的な 変化によりデザインプロセスがスムーズな ものになる(図4)。 今回作成したビヘイビアはまだまだ完成 度が低く、改善を必要とするところがたく さんある。また、現在のビヘイビアだけで はバリエーションが少なく、より多くのデ ザイナーの要求に応えるためには不足して いる。そのため今後もビヘイビアのバリ エーションを増やし、既存のビヘイビアは 質を高め発表を続けていきたいと思う。 ビヘイビアはいままでの解析方法にはな いフレキシブルさと、いままでの常識を覆 す可能性を秘めている。そのことを、図5,6 のような有効的な使用例を多く提示するこ とでアピールし、ビヘイビアを利用した調 査解析方法をデザイナーや学生の間に広め ていくことを目標としている。

図 2 - 新 し い 調 査 解析 に よ る 量 的な 変 化

図6 - D E M A T E L/ I S M ビヘイビアによるリアル タイム解析

■ Abstract

図 3 - 新 し い 調 査 解析 に よ る 質 的な 変 化

At present, designers adopt many statistical analysis techniques, such as a Hayashi's third method of quantification, to analysis, evaluate or structure data in the design process. Whereas, it became a tough work for designers with data collection, data input and visualize the result using the different software. Since the analysis methods should be used by the designers for design process, the methods should be easy to be handled by designers in creative way. In this study, we started from preparing the analytical programs usable for designers in their friendly design tool. With the system, designers will be able to create incorporated analytical application by their familiar and creative tool-box.

図 4 - デ ザ イ ン プロ セ ス の変 化

図 5 - 数 量 化 理 論I I I 類 ビ ヘ イ ビ アを 利 用 し たお 墓 の 形 状 嗜 好 調査

DESIGN SEEDS : 8 29


Master’s Thesis

榊原 瑞穂 / Sakakibara, Mizuho

修士論文

筑波大学 芸術研究科(修士課程)[松下電器産業株式会社] 研究指導:蓮見 孝 / Hasumi, Takashi

論文:まちづくりのための感性的調査ツールの提案 ~ 水戸本町 商店街 でのタウ ンモビ リティ ・プロジェ クトを 通して ~

A Proposal of Kansei Research Tool for Town Planning -Adapting to Townmobility Project in Mito-Honcho Shopping Street-

Master’s Thesis この研究は、茨城県水戸市の本町3丁目商 店街を中心にした下市地区の魅力化を、 「タウンモビリティ」と呼ばれる交通シス テムの導入を軸として推進しようとするプ ロジェクトの一環である。

■商店街の現状と取り組み 近年、地域における商店街は衰退の一途 をたどっている。これに対する振興活動は 今までにも色々なかたちで行われてきた が、行政主導のトップダウン方式による、 単年度予算によるリニューアル型の開発は 必ずしも活性化に貢献していない。なぜな らば、地域商店街の衰退は現代社会の構造 的な問題に端を発しており、表面的なモノ やかたちによって解決される問題ではない からである。 このような現状に対して「コラボレー ション型まちづくり」が注目を集めてい る。従来の行政主導のトップダウン方式の まちづくりとは異なり、住民、商店主、さ らに近年活動が活発化しているNPO(特 定非営利活動法人)等を含む、複数のセク ターの「協創」によってまちづくりを進め ていこうとするボトムアップ方式の考え方 である(図1)。本町3丁目商店街における 活動もコラボレーション型を基本とし、長 いスパンによる総合的なまちの個性と魅力 の醸成を試みている。しかし、様々な立場 の人々が参加していることの短所として、 プロジェクトの進行速度が遅い、情報の共 有がうまく図られない、行政との連携の接 点が見いだしにくい、などの問題点も存在 する。

■タウンモビリティ また一方で、このようなプロジェクトを 推進するための具体的な方策として、商店 街へタウンモビリティを導入する動きが始 まっている。タウンモビリティは、英国の ショップモビリティに端を発する社会支援 サービスで、「歩くことに不自由を感じる 人などに、まちを自由に歩き回われる足と して電動スクータを貸し出す事業」と定義 されている(図2)。

図 - 2 . タ ウ ン モ ビ リテ ィ の 様 子( 英 国 )

タウンモビリティは、人や住環境とやさ しく共生できる交通システムであるが、英 国と比較して日本におけるその社会的認知 度は未だに低いといわざるを得ない。この 研究は、本町3丁目商店街において、様々な コラボレーションの手法を活用しながら、 住民主導でのタウンモビリティの導入、日 本における普及の推進を図ろうとするもの である。

■感性的調査ツール コラボレーションにおいて情報の共有は 重要な要素である。本研究ではこれを支援 するための、以下のような特徴を持った新 しい概念の「感性的調査ツール」を開発し た(図3)。

図-1. トップダウン方式とボトムアップ方式 の概念

DESIGN SEEDS : 8 30

●フレンドリーな情報の表現 現在、様々な地域がWebサイト等から発 信しているまちづくり活動の情報は、主に テキストが中心であるため、閲覧者がイ メージを喚起しづらい、関心を示しづらい といえる。また、本町3丁目商店街において は、3年目を迎えた活動を通して、これまで 認知されていなかった多くの資産が顕在化 し、新たな提案もなされているが、やはり 具体的なイメージとしては表現されていな い実情がある。 「感性的調査ツール」では、閲覧者が

「分かりやすく、楽しく、参加しやすい」か たちで情報を表現することで、まちづくり活 動の内部と外部の人々に対する、広く深い共 有と認知を実現する。こうしたフレンドリー な情報の表現手法として、ヴァーチャルな空 間に設定された将来のまちなみ内に、「静止 イメージ+アニメーション+テキスト」で表 現する方法を用いて、まちの様々な資産・提 案を配置し、閲覧者はその空間内をコン ピュータの画面上を「ゲーム感覚」で見て回 ることができる方法を提案する(図4)。こ の資産・提案は実際のまちづくり活動と連動 し、新たに追加が行われていく。 但し、Webによる公開が前提のため、幅 広い環境でツールが作動するように、データ 容量の節減、特別なプラグインを使用しない 等の配慮を行っている。 ●多方面への情報発信 こうした各提案を総合したものを、まち の将来像「ビジョン」と呼ぶ。この「ビジョ ン」情報は、広く深い共有と認知のために、 多方面に向けて発信する必要がある。 「感性的調査ツール」では、Webサイト からインターネットを通じて情報を発信し、 さらに他のまちづくり関連のWebサイトと 相互リンクすることで、閲覧の機会を増や し、また、他の団体と連携した活動をするた めのネットワークを構築する。 ●多方面からの情報の収集 従来行われてきたアンケート調査は、ほ とんどが設問記入・選択形式であり、回答者 がアンケートに対して身構えてしまう傾向が ある。さらにWebを介した調査では、基本 的に任意による回答なので、回答意欲のある 人のみに偏った意見しか収集できないといっ た問題もある。 「感性的調査ツール」は、閲覧者が閲覧 行為から回答行為へシームレスに移行でき る、「分かりやすく、楽しく、参加しやす い」調査手法を工夫している。閲覧者は、ま ちの資産・提案をある程度の階層まで閲覧し た場合に、それに投票することができる(図 5)。さらに、閲覧者がヴァーチャル空間を 見て回った軌跡である「アクセスログ」の検 証も合わせ、回答者がどの資産・提案に注目 したのかを導き出すことができる。 資産・提案は、回答者の評価が低い場 合、消滅するようになっている。新規追加と 消滅を繰り返すことにより、まちづくりの参 加者によって提案された仮想まちなみは、外 部の目によって徐々に変化する。こうした経


Master’s Thesis

過をまちづくりの参考にし、行政との連携 に使用するなど、まちづくりへのフィード バックを図ることができる。

■ツールの検証とまちづくりへの活用 本研究では、このような特徴を持つ「感 性的調査ツール」を、「水戸・下市本町1・ 2 ・3 丁目/備前堀ヴァーチャルツアー 2015」として設計・制作し、2001年3月5日 に開設予定である「下市かえるタウン・モ ビリティホームページ」のコンテンツの一 つとして公開し、効果の検証を行いながら まちづくりへの活用を試みる。

■ Abstract This study is a part of collaborating project for introducing a town-mobility system to down town in Mito Shimoichi in Ibaraki prefecture as a method to add a strong personality. ■The present condition of shopping streets and measures In recent years, shopping streets in the region become empty. Generally, there are many kind of town planning projects to encourage the shopping street. But the developing projects lead by administration as top-down system was not always contribute to revive the shopping streets . Because the decline of shopping streets is the fundamental problem of present society. Recently, "Collaborational project for town planning" become the center of interest to change such present condition. It is a methodlogy of town planning that developed by various sectors including inhabitants, shop-owners, NPO and so on (fig1). But there are some problems to progress collaborational project.

realize the infomation sharing deeply and extensively. Also it is able to be acknowledging with friendly expression of information. The way of friendly expression of infomation, there are fortunes of town and proposals for town that visualized by still images, animation images and text in virtual space of future shopping street (fig4). These fortunes and proposals are added in comparing town planning project. Publishing infomation in various directions Unitied fortunes and proposals become a future image of town, and it must be published in various directions. "Kansei Research Tool" is able to publish infomation of town plannning in various directions using WWW, and make the mutually linking network with the other Web site that kinds of town planning. Researching infomation from various directions

Usual kinds of questionnaire research are taken as a forms of entry or choose the questions. There is common problem for respondents tend to hesitate for answering. "Kansei Research Tool" adopt the friendly research method that respondents can move from browsing infomation to answering questions seamlessly. Respondents are able to estimate fortunes and porposals when browsing it deeply (fig5). Fortunes and proposals are wiped out in case of bad estimation. The virtual space of future shopping street are changing by repetition of Adding and erasing fortunes and proposals. Using these processes and results of changing can be refered to town planning. ■ Verification and practical use of "Kansei Research Tool" "Kansei Research Tool" has functions explained in previous sentences,and I desined the one kind of the tool as "Virtual Tour 2015 in Mito shimoichi". It intend to publish generally in spring 2001, and I try to use this tool for town planning while Verifying effect of it.

水 戸 ・ 下 市 本 町 1 ・ 2 ・ 3 丁 目 / 備 前 堀 ヴ ァー チ ャ ル ツ ア ー2 0 1 5

図 - 3 . ヴ ァ ー チ ャ ルツ ア ー エ ント リ ー 画 面

■ Town-mobility The other side, by the way of progressing these collaborational projects, townmobility systems are introduced to shopping streets. Town-mobility system was originally introduced in United Kingdom and now has been spread all over the country (fig2). This study project is not only for seeking the way of introducing a system, but also for trying to develop a methodology of collaborating for town planning. ■ Kansei Research Tool It is very important to share infomation amoung sectors for collaboration. In this study, I proposed a tool for supporting collaboration project named " Kansei Research Tool" (fig3). Friendly expression of infomation "Kansei Research Tool" supports to

図 - 5 . 閲 覧 画 面 か ら投 票 画 面

図 - 4 . ヴ ァ ー チ ャ ルツ ア ー の 構造

DESIGN SEEDS : 8 31


Master’s Thesis

杉山 真理子 / Sugiyama, Mariko

修士論文

筑波大学 芸術研究科(修士課程) 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:ネットワークを用いたリサーチ手法 ∼デザイン評価のためのアクセスログ解析∼

Research Method Using Network -Access Log Analysis for Design Evalunation-

Master’s Thesis ■背景 インターネットの普及により市場は変化し た。ネットワークによって、求めているものが 迅速に手に入りやすくなった今日、生産者は マーケット全体をネットワーク上で把握する必 要性が出てきた。したがって、ネットワークを 用いたリサーチ手法が注目を集めるようになっ たのである。 従来の市場をターゲットとしたリサーチ は、個人の集団としての量に重点を置いたもの であった。例えば、通常のアンケート調査で は、一見、被験者個人の評価が反映されている かのようだが、実際は、個人の評価は集計され て全体としての評価となっている。先にも述べ たように、これからのデザインリサーチに必要 な事は、より個人の反応を細かく知る事であ る。例えば、「選択肢A」と「選択肢B」を選 ぶという評価があったとする。この一つの評価 をくだすにも、アンケート用紙によって解答さ れたものでは、「選択肢B」なら、それ以外の 要素は存在しない。しかし、実際被験者が選択 をする際には、迷いがある。その迷いの時間が 長ければ被験者がたとえ「選択肢B」を選んだ としても、その被験者の中では両者は近いもの であるということが想像できる。また、迷う時 間が短ければ「選択肢B」がその被験者の好み に近いものであると言える。つまり、その迷い という要素によって結果を深く捉えることがで きるのだ。 このように、個人が評価に費やした時間 や、注目度といったものがこれからのデザイン リサーチに必要であるという事実が、本論文を 書くきっかけとなった。

■目的 本論文では、単なるウェブサーバへの入出 力記録であるアクセスログを、ウェブユーザの 反応として捉えようとする。そこで、そのアク セスログを利用したリサーチ手法の基礎研究と して、次の2つを目的とする。①アクセスログ からウェブユーザの反応を捉えるための集計プ ログラムを設計する。②その集計結果がウェブ を介さない評価得点とどのように関係している のかを検証する。

■第1章 ネットワークの理解 インターネットに代表されるコンピュータ ネットワークは、コンピューティング技術の発 達と通信技術の融合によって、遠隔の情報共有 を可能とし、様々な利便性を生み出してきた。 その利便性はまた、現存のブラウザのように世 界的に通用するユーザインタフェースや、通信

DESIGN SEEDS : 8 32

プロトコルの標準化によって、万人のもの となった。本章では、そういったネット ワークの技術的背景を把握しながら、本論 文で扱うアクセスログの生成過程を捉え た。 アクセスログとはウェブユーザがWWW の情報にアクセスした操作行為をウェブ サーバがすべて記録したものである。その 記録には、ウェブユーザのIPアドレス、ア クセスした日付、アクセスしたファイル 名、といった情報などが含まれている。そ れらの情報に着目することによって、ウェ ブユーザの反応を捉えることができると考 えられる。

■第2章ネットワークがもたらした  変化 ネットワークの整備を背景に、変化して きた市場、さらにそれ伴うビジネスの変化 を通じて、ネットワークを用いた新たなリ サーチ手法を調査した。近年における市場 の変化を捉えるために、生活者志向がどの ように変わってきているのかを文献をもと に考察した。キーワードとしてまとめる と、従来の市場は「量」から「質」への変 換期であり、今日の市場は「個」の実現を 求めていることが明確になった。またそう いった市場に対応するべく、ビジネスも 「個」を重視した方向へと変わり始めてい る。 リサーチ手法の変化の調査では、従来の リサーチ手法とネットワークを用いたリ サーチ手法との比較を、アンケート調査を 取上げて行った。従来の手法の短所であ る、時間・場所の概念による不便さや、調 査者が介在することで本音の回答が期待で きないといった点に対し、ネットワークを 用いたリサーチでは、そういった問題はな く、回答のほかにウェブ上での入出力情報 (ログ)が残ることから、対象者個人の具 体的な反応が残るという利点が示された。

■第3章 事例研究1  アクセスログの有効性 実際にアクセスログからウェブユーザの 反応を捉えるための事例研究を行った。研 究対象として、芸術学系原田昭教授のデザ イン演習をウェブ上に公開した「仮想月開 発プロジェクト98,99」のホームページを 用いた。「仮想月開発プロジェクト」はイ ンデックス画面に、それぞれの学生作品の タイトルとタイトルイメージを載せ、そこ

からリンクする学生作品のディレクトリに JPEGやGIFイメージを作品として格納し た。学生作品のページは約8ページで構成さ れている。また、ウェブユーザ、アドバイ ザー、学生のコミュニケーションの場とし て、メーリングリストや、掲示板が用意さ れていた。まず第1段階として、アクセスロ グを集計するためのプログラムを設計し、 CGIを用いて簡易にブラウザ上で集計が行 えるようにした。 その集計プログラムを使用して得られた アクセスログと、「仮想月開発プロジェク ト」における学生作品の評価得点との相関 を検証した。作品の評価得点は、ウェブを 介さずに行われた学生のプレゼンテーショ ンによって、教官などから得られたもので ある。また、アクセスログは、学生作品ご とのウェブユーザの「アクセス数」「滞在 時間」「インデックス上で最初に選ばれた 回数」「閲覧されたページ数」として集計 した。さらに、メーリングリストなどから 「コメント数」を集計した。それら5つの 項目を説明変数とし、評価得点を基準変数 として数量化理論1類で解析した。その結果 「滞在時間」と評価得点との相関が最も強 く、「滞在時間」が長いほど評価はよくな るという結果が得られた。

図-1 . 仮想月開発 プロジェ クト9 8のアクセス ルート


Master’s Thesis 表 - 1 .作 品 評 価 得 点と ア ク セ ス ログ と の 関 係

しかしながら、この時点ではアクセスログ そのものでは、一人のウェブユーザの一貫し た閲覧行為として捉えるだけの情報がないと いう問題点が解決できなかったために、解析 結果には信頼性がなかった。その問題点と は、WWW通信がブラウザに1ページを表示す るという1回の記録ごとに完結するという性質 があることから、アクセスログに記録される 情報は、1回のアクセスの事実のみで、ウェブ ユーザがサイトに入ってから出るまでは把握 することができないということである。さら に、固定されていないIPアドレスでは、日時に 記されたアクセス時刻を前後のアクセス記録 と比較しても、一人のウェブユーザの記録と して捉えることはできないという問題点もあ る。

■第4章 事例研究2  デザイン評価のためのアクセスログ解析 3章の問題点を解決するために、アクセスロ グ集計プログラムの再設計とともに、HTML ファイルの配信方法も変更した。それらを検 証するためのウェブサイトは「仮想月開発プ ロジェクト2000」を対象としている。具体的 なHTMLファイルの配信方法は、配信の際に CGIスクリプトを介することで、ウェブサイト に入ってきたウェブユーザのログに識別番号 を追加し、ウェブサイトから出るまでの一貫 した流れを把握できるようにした。その集計 プログラムによって得られたアクセスログを 用いて、ネットワークを介していない評価と の相関を検証した。4章の事例研究では、さら に具体的な解析を試みるために、アクセスロ グに混在する要素を集計アイテムごとに具体 的に抽出し、アイテム自体も単純な集計結果 以外に、「1アクセス当り」「1ページ当 り」というように細分化して解析した。その 結果、「1アクセス当りの滞在時間」が長い ほど、作品の評価がよくなるという結果が得 られた。また、「最初に選ばれた回数」の重 要度も高かったことから、作品評価には、作 品の内容でなく、タイトルのインパクトと いった、キャッチコピーの要因も影響するこ とがわかった。

■まとめ 3章の事例研究を通じて、ウェブユーザと いう不明確な対象者をターゲットとするログ 解析の場合、アクセスログの情報だけでは、 ウェブユーザの閲覧行為を確認することがで きないという問題点が明らかになった。その 問題点について4章の事例研究では、アクセス ログに識別番号を付加するという解決策を施 した。それによって従来のリサーチでは把握 できなかった、人間の本質的な意思の現れで ある評価に費やした時間や閲覧の順序という 無言の反応を、WWWという媒体を通じてリ サーチデータとして扱うことが可能となる。 その集計プログラムによって得られたログ データと、デザイン評価との相関を細かく検

図 - 2 .ア ク セ ス ロ グの 書 式 変 更

証した結果、「滞在時間」を1アクセス当 りとすることで、より作品に対するウェブ ユーザの評価と捉えることができた。本研 究の結論を以下の2点にまとめる。 ①ウェブユーザの一貫した閲覧行為とし て捉えられる情報に識別番号を付加するこ とにより、アクセスログからの閲覧行為の 集計が可能となる。 ②ネットワークを介していない作品評価 はウェブページへの1アクセス当りの滞在 時間と相関が強い。

■ Abstract As for the diffusion of the Inter-net, a market changed. Consumers came to obtain the thing being looked for rapidly. Then, producers came to get a direct request from the consumer through the network. In other words, when anyone feels future design to be User-Centered-Design, it can't cope with it by the design research which makes a usual market the target. That usual research ignored individual personality completely. For example, usual questionnaire investigation can see that the evaluation of the testee individual is seemingly reflected. How is it actually? Individual evaluation is evaluation on the whole by the total. Therefore, it is to know an individual response more delicately to be necessary for the future design research. It thinks that for example there is evaluation of choosing "the choices A" and "the choices B". An element except for it doesn't exist there even if a testee writes the answer of "the choices B" in the questionnaire form. But, a testee is at a loss when a choice is actually done. If the time when he chooses "the choices B" is long, "the choices A" and "the choices B" may be near in him. And, if the time when he is at a loss is short, it can be said that "the choices B" are close to his taste. After all, a result can be caught deeply by the element of that delusion. Like this, the fact that the weight of the individual evaluation, a degree of attention, and so on were necessary for the future design research became the background of this thesis. The purpose of this thesis is written in the following. The behavior of the visitor who sees a Web site casually is caught as an unconscious evaluation in this thesis. Then, that way of paying attention to Access Log which records visitor's behavior faithfully and researching is verified.

First, it was understood about the structure of the network, and the formation process of Access Log which is the main subject of this thesis was grasped. Next, a network research technique was compared with a usual research technique to explain the strong point of the network research technique which is here with becoming one of the modern industry. Those main characteristics are as the next. 1. The general idea of the time, place is unnecessary. 2. Because interviewer doesn't lie, the answer of its real intention can be expected. As a case research, relations between the design evaluation and Access Log were verified. Information which can get it from the Access Log is the answer which can get it from the person's natural act. It can be thought that a purer answer than the answer that it shows a tendency to ingratiate itself it with the questionnaire form can get it. The homepage of "the Virtual Lunar Development Project" which introduced the class of the product design course of Tsukuba university to the public on Web was used for the research object. The operation history of the visitor is recorded in the Access Log recorded by the server that homepage was installed. They can be caught as an information concerned with the user's admiration. That information was divided into the item such as stay time, the number of access, and totaled for each plan of the " the Virtual Lunar Development Project" inside. Then, it was analyzed how it influenced the evaluation score of getting it in the presentation given without minding Web. It was verified how user's admiration was shown in the information on the Access Log by analyzing relations between the Access Log and the

DESIGN SEEDS : 8 33


Master’s Thesis

田原迫 玄 / Taharasako, Gen 筑波大学 芸術研究科(修士課程)[カシオ計算機株式会社] 研究指導:山中 敏正 / Yamanaka, Toshimasa

論文: 音のグッドハプニングの出現に関わる法則性について Experience of Good Happening and its Rule of Emergence

doctoral paper ■はじめに 音を聞いて感じる、または音が聞こえて 感じられる。それは非常に単純なことであ り健常者であれば常に体験していることで ある。しかしながらここで起きる情感はそ の時、周りの状況、状態、人間など様々な 要因が絡み合いさらにそれぞれの要因の影 響度合いも常に変化し単純に推し量ること ができない。本修了研究では卒業論文「音 の伝達システムにおける情感調節機器の研 究」に引き続き、ごくふつうに起こりうる 音のグッドハプニングのメカニズムを解明 しオーディオのデザインに生かされるべき 法則性を見つけだしたい。

■研究の目的と意義 人間を取り巻く音楽環境、特にオーディ オなど音の伝達システムに関して人間の音 に関する欲求はとどまるところを知らな い。音質追求はもちろんMP3などの新しい 規格などによりその楽しみ方も様々に変化 しつつある。なにより、インターネット、 ITの進化によるネット上での音楽コンテ ンツの普及はその楽しみ方を無限に広げつ つある。音のグッドハプニングという事象 とそういった背景は非常に密接であるわけ で、この事象を探ることはすなわち、そう いった音楽コンテンツサービスの無限の広 がりに対しなにがしかの方向性を示唆する ことにもなる。また、それはプロダクトデ ザインの方向性にも大きく影響するとも言 える。つまり、世の中に音が溢れていると いうことは、すなわち、「いかに気づかせ るか」「いかに気づいてもらうか」という ことに音楽コンテンツの提供のされ方がシ フトしていくに違いないからである。本研 究では音のグッドハプニングの法則性を 探っていくことでより感情価の高い音の楽 しみ方を見つけることを目的とする。

■第1章 音楽理論は音楽の認知についての研究に 対して非常に重要な役割を果たすものであ る。しかしその反面、既存の音楽理論への 依存に対して批判的な意見もある。音楽理 論は確かに音楽の構造を記述するのに重要 な役割を果たしているけれども、それ自体 は必ずしも心理学的な説明を目的としてい るわけではない。音楽の認知についての研 究が,音楽理論にあまりに強く依存するこ とによって生じると思われる問題などとと もに音のグッドハプニングに関わる様々な

DESIGN DESIGNSEEDS SEEDS: 8: 8 34

研究について述べる。

のデータをもとにグッドハプニングの因果関 係を共分散構造分析を用いて分析を行った。

■第2章 本章では、音の伝達装置によって人間 の感性的な聴感覚が引き起こされるのか 検討した。ここでは、聴覚による「良 い」という体験を「グッドハプニング」 とし、これを一つの感性的な評価の現れ と考えた。まず、200例のグッドハプニ ングサンプルについて、その状況、きっ かけなどについて検討を加え、2分法と数 量化3類によって6つの因子が考えられる ことを見いだした。 これに基づき、音の加工性と操作性に 注目した音源サンプルを作成し、感性に よるヒアリングテストを行った。その結 果から、グッドハプニング性に関連する 音の加工及び操作の要因の一つとして、 「オリジナル音源をアナログ的に劣化加 工させること」が効果があることがわ かった。

■第3章 「昔聞いた曲を後で聴くとその当時の 思い出がよみがえる」こうした音楽に付 帯した記憶がグッドハプニングを引き起 こすことはよくあることであるが、これ こそ音の経験が情感発生に影響した例と いえよう。つまり、人間が音を聞くとい うことを始まった時からすでにその経験 は音のグッドハプニングの引き出しの一 つとして蓄えられていくのである。そし て問題なのはこの音経験は十人十色であ るということである。音のグッドハプニ ングはそのたくさんの引き出しからの情 報、情動が時に複雑に組み合わさって起 こるのである。つまり音のグッドハプニ ングは様々な要因が組合わさって起こっ ており、それぞれの要因がどの程度影響 しあっているのか、要因それぞれのハプ ニングへの重みを計測する必要がある。 共分散構造分析は、現象の因果関係を統 計的に明らかにすることに効果的であ り、直接計測のできない概念、いわゆる 構成概念を多く扱うことが可能である。 また自由にモデルを設定し,これを検証 し,数値的に明確に関係の程度を表すこ とができるので,音のグッドハプニング のような複数の要因の因果関係の分析に は大変有効である。本章では音のグッド ハプニングの構造を調査するためにグッ ドハプニングテストを行った。さらにそ

■第4章 ●4-1仮説モデル分析結果 図に仮説モデルの分析結果を示す。左隅 矢印上の0.53という値は(聴く)と(弾く) の相関を示している。また(聴く)から(記 憶)のパス上の値0.12は標準化回帰係数であ る。データから測定された分散共分散とモデ ルから求められるそれとの間の差が最小とな るように、因果関係を表す指標の推定値が求 められる。 ●4-2仮説モデルの検証 図中の(聴く)と(BGM)の相関が 0.53とあるがこれは音楽を聴くという行為自 体BGMとして音楽を聞くことと関わり合い が大きいと解釈できる。 (自然音)が(記憶)にかかる4つの経 験値を表す観測変数のなかで0,28と高いこと から自然の音に対して敏感な人ほど音にたい する記憶の思い出しが多いという解釈が出来 る。(弾く)は楽器の経験からの観測変数であ るが、(記憶)の観測変数に対し一番影響が 低いというのは意外であった。 (記憶)から一番有意なパス係数として (テンポ)への0.25があるがこれは思い出し とテンポが関連性が高いということと解釈で きる。また(メロディ)へのパス係数も同様 に0,22という数値となったが、思い出しの多 かった人ほどメロディに対する評価が高いと 言える。逆に(歌詞)が-0,27と影響が低い ということは思い出しという音情報の書き出 しが多い人ほど歌詞の評価を低くすることに 関係したということになり、これはすなわち 多くの音にたいする記憶を書き出すことは歌 詞よりもテンポやメロディ、ダンス的な部分 に関連性があるとも解釈できる。確かにアン ケート用紙を見ると歌詞などが表記されてる ものは少なかった。 (空腹感)は(ダンス)に対してもっと も影響している。空腹感の強かった人はダン ス的な要素に対し評価が高いということにな る。 (ハプニング)に対し優位性を示すパス 係数は(メロディ)0.37(ダンス)0.28と なっている。これはそれぞれ「曲調やメロ ディの影響度」、「ダンス的な要素」、「頭 に浮かんだイメージ」の順でハプニングの良 いという評価に関係性、有意性があると評価 できる。(歌詞)がここでも有意に働かな かったのは音のグッドハプニングにおいて歌


Master’s Thesis

詞というもの自体即効性がないということだ ろうか。 ●4-3考察 ■経験から記憶への影響 得られた分析結果から、まず図中の音経験 条件の部分に着目すると(自然音)(BGM) (聴く)の順で(記憶)への推定値が小さくなっ ており、音自体、つまり楽器の音などにあま り意識を集中していない人ほど音から想像す るものが多いということと考えることもでき る。これ は音の グッド ハプニ ングイ ンタ ビューで「作業中はインストルメンタルの曲 を聞く」というのがあったように意識の音へ の集中度合いに応じて曲の情報量、質を変化 させることにより情感発生を促す可能性があ るととることもっできる。人間が音を良く感 じる、より情感を発生させるためのデザイン ということを考えると音への集中度合いとい う一つのパラメーターとしてこの結果は活用 出来ると考える。 ■記憶と妨害要因のハプニングへの影響(図 中の刺激音の部分) (記憶)と並列の(空腹感)はお腹が空い たという空腹感が(記憶)からのハプニング への妨害要因として働いている<記憶へのア クセスを邪魔している>のではないかという 仮定に基づいていたわけであるがこの観点か らこの検証モデルの結果数値をみると、 1)まず、どちらもハプニングに影響してい   るものが(ダンス)(メロディ)(テン   ポ)である。 2)そしてどちらも影響していないものが    (思い出し)(イメージ)である。 3)片方だけ影響しているものは(歌詞)で   (空腹感)から0.06で(記憶)から-0.27    で影響している。 実験に用いた曲はジャズに歌が入っている 割とノリがよい曲であるから、(ダンス)的 なノリが良いことやメロディ、テンポが食事 時、高く評価されやすいと言える。逆に聞い たことのある音やイメージの浮かぶ音といっ た部分は評価されにくいと言える。

■モデル全体について また、モデルは右に向かった時系列モデ ルでもあるわけだが(自然音)→(記憶) →(メロディ)、(ダンス)→(ハプニン グ)という組み合わせが一番ハプニングに 影響しやすいと考えられる。 つまり自然の音への興味の度合いが大き いことは記憶の多いということへ影響し、 また、記憶が多いということはメロディや ダンスへの評価が高くなることに影響して いるということになる。 ■マイナス要因について (記憶)から(歌詞)への推定値が-0.27と 影響度が低いことを示しているが、これは 記憶の多さは歌詞への評価へ影響しないこ とを意味している。つまり音の記憶が多い 人は歌詞を評価しないということがいえ る。 同様に(歌詞)から(ハプニング)が0.21という値をとっていることから歌詞は ハプニングへ影響していないということに なる. また(テンポ)から(ハプニング)が-0.13と いう値をとっていることからテンポはハプ ニングに影響していないということが言え る.

■結論 音のグッドハプニングの法則性を見つけ るべく研究を行った。その結果、次の法則 性が見つけられた。 まず、4つの経験を示す観測変数と記憶 の記述<思い出し>との関係から、音自体 に意識を集中していない人ほど音から想像 するものが多い。 また記憶の記述<思い出し>と6つの音 の評価の観測変数との関係から音の記憶の 多い人はテンポ、メロディ、ダンス的な要 素の順で音楽を良いと感じやすい。 音の記憶の多い人は、音楽の歌詞を良い と感じない。 さらに記憶への妨害要因としての空腹感

の6つの音の評価の観測変数との関係から、空 腹感が強いほど音楽のダンス的な要素を良いと 感じている。 空腹でない時はテンポを良いと感じている。 以上が本論によって導き出された音のグッド ハプニングの法則性である。 これらから、ある人に音のグッドハプニング を起こすために、事前に自然の音への関心度や 楽器経験を調査し音の記憶量という重要なパラ メーターを知れば、それと空腹感(食事時にお いて)とのバランスで、どういった音楽がその 人にグッドと感じられるのかが分かった。 本論の性質から言って空腹感以外の様々な条 件で同様の実験などを行っていくべきところで ある。しかしどうしたら音のグッドハプニング を起こすことができるかというその甚大なテー マを解明する上で、本研究のような条件を絞っ た研究によりその手法を提案する、おおまかな 構造を突き止めことが現時点では最も有効であ る。

■ Abstract It is happening that a human being meets good sound. And we supposed ‘good happening’ moment in the hearing experience .The purpose of this research is to study the rule of ‘good happening’ moment. Although this is not only inspired by sound, highly related to the many cause like human memory. And we took 200 ‘good happening’ moment. These are very complicated matter. So we supposed hypothesis structure model of ‘good happening’ moment. And we used covariance structure analysis for the verification of this model. Finally ,we could find some rules of ‘good happening’.

図 : 仮 説 的 モ デル

DESIGN SEEDS : 8

DESIGN SEEDS : 8 35


Master’s Thesis

冨尾 圭介 / Tomio, Keisuke

修士論文

筑波大学 芸術研究科(修士課程) 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:ミミズの行動動態を模倣したロボット Robot that Mimics Dynamical Behavior of Earthworm

Master’s Thesis ■研究目的 本研究の目的は、以下の3点である。 1) 生物の行動動態を模倣した実働模型によ る動きのデザインの実現。 2) 従来のデザインプロセスに工学設計法を 導入すること。 3) プログラムを用いた自動制御システムの 実現。

■ 第 1 章 ミ ミ ズ 型 ロ ボッ ト の 制 作  に関わる 背景 本章では、なぜ本研究がミミズの示す行 動動態を模倣したロボットを制作すること になったのかという経緯を説明した。 本研究は、月面地下資源のサンプル回収 を行う月面探査機のデザインからはじまっ た。その方法として、地中を掘り進む生物 の移動方式を機械システムに応用すること にした。生物の候補としては、地中を掘る ミミズとモグラ等があげられ、これらの生 物の行動動態を模倣した試作模型を制作 し、宇宙・生物研究者と検討した結果、実 現性の高いミミズの剛毛を用いた行動動態 を月面探査機に導入することに決め、ミミ ズ型月面探査機をデザインした。 このミミズ型月面探査機の評価を行うた めに、模型 の制作・ コンピュ ータグラ フィックスによる動作シュミレーションを 制作した。評価を行った結果、月面上の環 境が厳しいことから、月面探査機には大き な制約が関わってくること、また直感によ る駆動部分の設計のために、探査機の1部 分しか完成出来ず、デザイン面でも不十分 であった。 しかし、この研究を進めていく上でミミ ズの行動動態を機械システムに応用するこ とは、新しい移動方式の開発という大変意 義のある研究に発展することが考えられ た。 こうした背景により、ミミズの剛毛の機 能的概念を模倣したロボットを制作するこ とになったのである。

■第2章 ミミズ型ロボットの制作 ミミズ型月面探査機の設計プロセスに は、直感に頼った部分に問題があった。  そこでミミズ型ロボットの設計において は、工学分野の設計法である実験によって 仕様を決定してゆく方法を用いた。 本章では,実験を用いた仕様決定法に よって設計・制作されるミミズ型ロボット がどのような構造なのかを説明するため

DESIGN SEEDS : 8 36

に、ミミズ型ロボット制作に関するすべて のプロセス・実験データを、時系列をおっ て詳細に記した。 1)ミミズ型ロボットについて ミミズ型ロボットは、生物のミミズが地 中を移動する際に重要な機能として用いて いる剛毛と筋肉伸縮の働きを模倣した移動 方式を備えている。このロボットは、固定 部分と駆動部分という2つの異なる部分で構 成されており、固定部分は剛毛の機能、駆 動部分は筋肉の機能を模倣している。 ミミズ型ロボットは、自動制御プログラ ムを書き込んだPIC(Peripheral Interface Controller)によって、ロボット固定部分、 ロボット駆動部分を交互に動作させなが ら、アクリルパイプ内(口径7cm)を前進 することができる。

図 1   ミ ミ ズ 型 ロボ ッ ト

2)ロボット固定部分について ロボット固定部分は、3本の形状記憶合 金と6枚の板ばねによって構成されている。 固定部分の動作は、形状記憶合金に電流 を流すことによって、板ばねを外側にせり 出しながら縮む。次に、電流を止めると形 状記憶合金の縮もうとする力がなくなり、 外側にせり出していた板ばねのもとに戻ろ うとする力によって、形状記憶合金をもと の長さに戻す。この動作の繰り返しによっ て、固定部分は動作する。 ロボット固定部分に使用したパーツの設 計は、ロボット固定部分に使用するのに最 適な形状記憶合金の仕様を、実験を用いて 割り出し、この設計値をもとに板ばねの設 計を行った。 3)ロボット駆動部分について ロボット駆動部分は、3本の形状記憶合 金と1本のコイル状ばねによって構成されて

いる。 駆動部分の動作は、形状記憶合金に電流 を流すことによって、コイル状ばねと共に縮 む。 次に、電流を止めると形状記憶合金の縮 もうとする力がなくなり、コイル状ばねがも とに戻ろうとする力によって、形状記憶合金 をもとの長さに戻す。この動作の繰り返しに よって、駆動部分は動作する。(但し、駆動 部分が動作するには固定部分をトンネルに固 定させる必要がある。) ロボット駆動部分に使用したパーツの設 計は、ロボット全体の力関係図をもとに、形 状記憶合金とコイル状ばねそれぞれの荷重の 設計値範囲を抽出して行った。 4)ロボット制御部分について ロボット制御部分は、自動制御方式である。 これはロボット動作検証の際、観測者のロ ボット制御に対する負担を軽減し、動作検証 に集中することを目的に制作したものであ る。 制御部分は、ロボットと電源(5V・5A出 力)との間に配置されており、PICとリレー スイッチを接続した電子回路によって構成さ れている。ロボットの動作が書き込まれた PICが、電流の信号をリレーに送ることに よって、リレーのスイッチをON・OFFさ せ、電源からロボットに流れる電流を制御す る仕組みになっている。このような制御方法 によって、ロボットは自動的に動作すること ができる。 自動制御方式の制作は、計測したロボッ トの動作時間をもとに、機械語であるアセン ブラによって動作プログラムを作成し、PIC に書き込みを行った。次に,PICは5V・5A の電流を流すと破損してしまうことから、こ の電流を流すことができるリレースイッチを

図 2   ロ ボ ッ ト 制御 部 分


Master’s Thesis

購入し、PICとリレーのスイッチ部分とを接 続する電子回路を制作し、自動制御部分を 完成させた。

■ 第3 章 ミ ミ ズ型 ロ ボッ ト の動 作  検証実験 本章では、完成したミミズ型ロボット が、ミミズの剛毛を用いた行動動態を模倣 することに成功しているかの検証を目的に した、実験についての結果を記した。 実験結果から、ミミズの剛毛の機能に相 当するロボット固定部分は、トンネルの壁 面にロボット自身を固定する機能を果た し、ロボットがトンネル内を前進する際 に、後滑りを防止する機能として働いてい ることがわかった。つまり、ロボット固定 部分はミミズの剛毛の機能を模倣できてい ると判断した。 次に、ミミズの筋肉の機能を模倣したロ ボット駆動部分は、速度は遅いがロボット を前進させる機能を果たしていることがわ かった。つまり、ロボット駆動部分はミミ ズの筋肉の機能を模倣できていると判断し た。 この2つの実験結果から、ミミズ型ロ ボットの各部分はミミズの行動動態を模倣 していることから、ミミズ型ロボットはミ ミズの行動動態を模倣できていることがわ かった。

本研究では、実験による検証を用いた ことから、動きのデザイン、つまり人間 の視覚による情報デザインを行ってきた といえる。このミミズの動きのデザイン が、これからの情報化時代における新し いデザインの指標となり、今後のデザイ ン分野から優れた情報デザインが生まれ ることを望む。

図 4   ミ ミ ズ と ロボ ッ ト 各 部 分と の 比 較

■ Abstract

図 3   ロ ボ ッ ト シス テ ム 全 体 図

■第4章 結論 本章では,本研究の3つの目的についての 結論を順に記した。  1)生物の行動動態を模倣した実動模型によ る動きのデザインの実現については、ロ ボットがトンネル内を前進できるという 結果から、動きのデザインを実現するこ とができた。  2)従来のデザインプロセスに工学設計法を 導入することについては、実験による仕 様抽出、並びに検証を用いた結果、ミミ ズ型ロボットを完成させることができ た。またこの方法を採用した結果、機械 設計は非常に論理的であることがわかっ た。  3)プログラムを用いた自動制御システムの 実現については、動作検証から動作する ことがわかった。よって、実現できたと 考えられる。またこの制作から、電子回 路は機械設計同様、非常に論理的である ことがわかった。

The goal of this project is to explore how to make the function of an object shown by its shape. The relationship between form and function must be very clear. We will use the dynamical behavior of the earthworm with the purpose of applying it to the movement mechanism of the robot. Therefore, in this research we will examine the relationship between form and function. Short spikes grow on the body of the earthworm. The spikes are important of the movement because they can be retracted and extended and so, the earthworm is moves through the ground. Three spring type shape memory alloys (=SMA) are attached to the inside of the part of the fixation. A SMA gives off heat by charging it with electricity in this SMA, and contracts. At this time, the board spring attached to all six pages protrudes in the outside, and touches the wall side of the tunnel. This part which touched each other becomes the part of the fixation of opportunity in the tunnel. When time passes, heat gets cold, and the SMA which contracted is returned to the length of the cause by the power that the board spring which lost the power and which protruded is regained. The propulsion part consists of three SMA’s and one spring. Again, The SMA’s produce heat when electrically charged and

contract. Then, the back fixation part cool touching the tunnel will move forward as the front fixation part is fixed in the tunnel. After removing the electrical charge, the SMA’s cool down and the spring will contract. Now the front fixation part will be pushed forward as the back fixation part is fixed in the tunnel.

Control states; M0 : The neutral states ; none of the parts are activated. M1 : The front fixation part is activated. The front of the robot is fixed. M2 : The front fixation and propulsion parts are both active. The back fixation part is pulled forwards. M3 : The electrical charge is removed from the front fixation part. Both fixation parts will be free from the wall of the tunnel. M4 : The back fixation part is a activated. This fixes the back side of the robot. M5 : The drive part is deactivated. With the back fixed the robot extends and moves for ward. The robot controlled by automatic pattern system . Three switched power from three power supplies (5V, 5A). We found that the robot did indeed move through the tunnel.

DESIGN SEEDS : 8 37


Master’s Thesis

洪 輔廷 / Hong, Bo-Jung 筑波大学 芸術研究科(修士課程) 研究指導:蓮見 孝 / Hasumi, Takashi

論文:高齢者のための入浴装置の研究 Study on Bath Units for Aged

Master’s Thesis ■はじめに 本研究は、高齢者のためのケア・デザイン として、高齢者の生活環境の中で重要な比重を しめている入浴環境をより快適な空間として見 直すために高齢者の入浴行為や動作を実際に観 察し、その入浴状況の分析を行った研究の報告 である。

に、低下した心身機能を補う様々な福祉用 具の研究開発を進め、保健福祉サービスと 連動させながら、その積極的な普及促進に つとめることが重要である。ことが判っ た。

■入浴に対する意識と実態 ■研究の背景と目的 高齢社会の到来は、少数の弱者として捉え られていた高齢者や身体障害者という多様な身 体特性を持つ人々が、現実に社会生活を営んで いるという事実を顕在化した。また、高齢者個 人の生活環境に対する要求は、多様であり、 個々の人々の要求に対応できる生活環境デザイ ンの構築が必要である。 特に、今後の高齢者用機器のデザインは、 高齢社会にむけてモノの機能や用途に偏重した レベルからだけではなく、さらに人間的感性や 柔軟な発想を生かして進めていかなければなら ない。このように、高齢者に対する細かな配慮 や工夫を生かしたデザインコンセプトの提案 は、高齢社会のよりゆたかな生活環境づくりに 繋がるであろう。 こうした背景により、本研究は健康で自立 した健常者はもちろん身体の不自由な高齢者が 使いやすく、さらにも安全かつ快適に使用でき るユニバーサル・デザインの概念にもとづいた 入浴装置の提案を行った。

■高齢社会と福祉機器の対応 高齢社会においては、労働力の減少や医 療・介護施設の不足、介護保健の問題、生活環 境のインフラ整備、国の経済的な負担など大き な社会問題が連鎖いしている。その中でも個々 の高齢者が日常生活を行う上で必要な生活環境 の改善は急速に推進しなければならない問題で ある。 高齢者の実態を見ていくと、身体的には老 化に伴い血管の収縮や減少が起こり、精神的に は老化に伴う様々な障害が生じ、社会的には退 職などにより社会との繋がりが薄くなるなど、 複雑さに充ちている。高齢者ができるだけなが く健康に幸せな毎日を送るためには、様々な問 題点を取り除いていく努力が必要であり、高齢 者に側に立って生活の質の向上を模索していく 福祉機器の対応も求められる。そこで、より積 極的に福祉機器を活用し、自立支援や介護支援 の面において、日常生活上の便宜を図るととも

DESIGN SEEDS : 8 38

入浴に対する意識実態調査では、「豊か なバスライフ、快適で楽しい入浴生活」へ の提案をめざし、入浴に対しどのような意 識がもたされており、それが、どのように して実際の入浴行為と関連しているかにつ いて「浴槽入浴とシャワー入浴」に大別し て調査を行った。特にシャワー入浴の広ま りの実態や浴槽入浴におけるシャワーの使 われ方を詳しく調べ、そして、高齢者や一 般の人々を対象にして詳しく調べた。浴槽 入浴とシャワー入浴に関する様々な事柄に 対する意識を整理した結果、全体的には、 浴槽入浴の方がいろいろな面で効能がある と思われている傾向が見られた。 シャワー入浴に関しは、浴槽入浴より評 価が高かった点は「時間が掛からず便利で ある」「目がさめる、気分が引き締まる」 であった。「シャワーは快適になれる」は 23%と予想より低い評価であった。スポー ツの後にシャワーを浴びている人が多いと 予想していたが、「スポーツ後は浴槽入浴 が良い」と思っている人の方が多い結果と なった。また、シャワーでマッサージして いる人が多いのではないがと予想していた が、マッサージ効果はシャワー入浴より浴 槽入浴の方が、「ある」と思っている人が 多かった。この結果からみて、入浴に対す る意識は浴槽入浴が圧倒的に主流で、シャ ワー入浴はあまり好まれておらず、意識上 は充分に習慣として根付いていないことが 判った。  

■既存の入浴装置の動向 これまでの入浴装置における既存の福祉 用具は高額のため、在宅で福祉用具を利用 して入浴生活をおくることは、実際にむず かしい状況である。 高齢者にとって入浴行為は、身体の清潔 を保ち心身をリフレッシュさせるなど多く の効果があるが、その反面、生理的な負担 も大きく、特に高齢者が受ける影響は、こ れまでの高齢者の浴室内での事故死の実態

からも推察できるように事故に繋がりやす い場所でもある。 高齢者の入浴環境の向上のためには、入 浴者の負担を軽減し、マッサージ効果やリ フレッシュ効果が楽しめる、使いやすくて 満足度の高い優れた入浴装置を開発し、在 宅あるいは施設での入浴行為がより楽しく 快適になるようなデザイン工夫が望まれ る。 そこで、高齢者の施設における入浴方法 を中心に、既存の入浴装置を一般入浴装 置・特殊(介護用)入浴装置・座シャワー 入浴装置に分類した上で観察を行い、それ らの特徴やメリットを活かした新しい入浴 装置の研究を行った。

■老人ホームにおける入浴の実態 研究の一環として特別養護老人ホームで の入浴介護を6ヶ月間にわたり体験した。 高齢者福祉施設では、心身機能の低下や 居住環境との不適応などから、自立生活の 遂行が困難な高齢者に対して、ソフト面、 ハード面からさまざまな支援が行われてお り、介護機器による支援もその一翼を担っ ている。しかし、多くの介護機器が開発開 発され、実用化に移されてはいるものの、 介護者側の負担軽減や要介護者側の自立促 進などへの効果について研究し、介護機器 の改善に反映させるデザイン開発について は、いまだに不十分な状況にあることが観 察を通じて理解できた。施設に導入されて いる大型福祉機器は高額であることや、利 用空間・条件が限定されるなどの理由か ら、使用目的に応じた適切な機器の選択と 評価が望まれる。 高齢者福祉施設(特別老人ホーム「新つ くば老人ホーム」)で入浴プロセスに沿っ て入浴装置を三つに大別して調査観察した 結果施設では、介護現場における建築上の 制限や時間的制約などを踏まえた上で、要 介護者と両方にとって身体的負担の少ない 入浴装置の提案がもっとも重要であること を認識した(図1)。

■結論 高齢者のためのケア・デザインにおいて は、入浴装置のデザインはもっとも重要な 比重を占めている生活空間であるといえ る。


Master’s Thesis

特に入浴行為は、介護を必要とする高齢者 の場合、高齢者側と介護者側のどちらにおい ても負担が大きく、ちょっとした部分の配慮 が行きとどかなかった場合、高齢者の身体 的・精神的負担は大きなものとなり危険であ る。 高齢者福祉施設での入浴介護の実態を調査 した結果、より使いやすく、満足度の高い入 浴装置は、座位式シャワー入浴装置であると 判断した。座位式シャワー入浴装置は、設置 費用が低額であり、大きな入浴空間を必要と しないので、施設と在宅の両方において入浴 装置として最適であると考えられる。また、 浴槽入浴にくらべ身体への負担も少なく、経 済的であることが判った。 現在、高齢者の入浴空間におけるさまざま な問題点を解決するため、大企業や福祉施設 では、入浴介護のための特殊機械浴槽や浴槽 にかわる新入浴スタイルの入浴装置が実用化 されている。しかし、これらの入浴機器は、 主に身体の不自由な高齢者のために開発され た製品であるため、健康な高齢者や一般の 人々まで幅広く使えるユニバーサル・デザイ ンの概念に基づいてデザインされたものでは ない。 そこで今回の研究結果を生かし、高齢社会 における生活環境デザインとして、年齢、身 体特性に関係なく、安全かつ快適に使用でき るユニバーサル・デザインの視野に立った、 新しい座位式シャワー式入浴装置を提案した (図2)。

図 1 施 設 で 行 わ れ てい る 入 浴 動 作 の プ ロセ ス

■ Abstract In care-design for elderly people, design of bathing instruments is very important. For bathing of elderly person who looks after is a difficult and dangerous thing. I researched bathing method of welfare-center for elderly people. The result of the research is that the most effective bathing method is sitting type shower. Instrument of sitting type shower is very inexpensive and has a little space that it is fit for especially home-care. Compared with bathing in bathtub,it is very economical and safe. Recently, special bathing instruments have been developed, but these instruments are designed for elderly person who can not control his or her own body. Therefore, I propose the universal design of instrument of sitting type shower for elderly people, free for age and condition of body.

図 2   座 位 式 シ ャ ワ ー 入浴 装 置 の 提 案

DESIGN SEEDS : 8 39


Master’s Thesis

本田 宗久 / Honda, Munehisa

修士論文

筑波大学 芸術研究科(修士課程)[株式会社GKダイナミックス] 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:ウェアラブルコンピュータのデザインに関する一考察 ∼機械的刺激及び温熱的刺激を用いたナビゲーション手法の基礎研究∼

Research on Design for Wearable Computer - Foundation Research on Navigation Technique Using Mechanical and Temperature Stimulus -

Master’s Thesis ■研究の背景 情報機器の開発における軽薄短小化の流 れの中で、そのインタフェースと情報コン テンツの両者に、着用型インタフェース (Wearable Computer、以下WPC)と、 GPSセンサ等を用いたユーザの位置情報に 関するコンテンツが誕生し、注目を浴びつ つある。 WPCは、小型化するにつれて使い勝手の 低下するインタフェースの解決策として、 位置情報に関しては、現状では主にカーナ ビゲーションシステム(カーナビ)として の使用が一般的ではあるが、将来的には歩 行者を対象としたサービスの更なる発展が 予想されており、例えば各種店鋪情報や商 品在庫情報の提供によって、我々の行動様 式に劇的な変化をもたらすことが期待され ている。

■第2章 Augmented Sensibility    (AS)概念の提案 人間の持つ様々な感覚を用いた出力イ ンタフェースとは、どのようなものであ ろうか。第2章では、その答を視覚と他 の感覚との共存に求めた。つまり、視覚 へ出力するまでもない簡単なデジタル情 報を、皮膚感覚や嗅覚に相応しい形に変 換し、出力することで、視覚への負荷を 軽減し、スムースなコンピューティング を実現する複合型インタフェースの可能 性について論じた訳である。また本論で は、デジタル情報を皮膚感覚や嗅覚に相 応しい形に変換するインタフェースの概 念を、Augmented Sensibility(強化、増 幅された感覚)と呼称することとした。  

■第3章 皮膚感覚を用いたナビゲー  ション手法 ■研究の目的 本論は以上2つの背景の下に、現在では 未だその定義が明確でないWPCについて論 じ、様々な情報機器のなかでWPCが占める べき位置とその用途について明確にする。 さらにその具体例として歩行者向けナビ ゲーションシステムを取りあげ、着用型イ ンタフェースを用いた空間認識の可能性に ついて考察する。具体的には、従来の視覚 依存型のインタフェースに代わるものとし て皮膚感覚を取りあげ、人間の皮膚感覚特 性を把握するための実験を行い、皮膚刺激 を用いた情報伝達の可能性について検証す るものである。

■第1章 出力インタフェース開発の重  要性 情報機器の小型化が進むにつれて、その インタフェースは直接の操作を行うものか ら、各種センサを用いた自動入力に移り変 わつつある。人の手による操作から離れた コンピュータは、将来的にはウェアラブ ル、そして体内埋め込み型へと発展し、人 間の行動に欠かせない物となっていくこと が予想される。ところが、このような入力 インタフェースの様々な発展にも関わら ず、出力インタフェースに関しては、従来 と大差のないディスプレイタイプの物がほ とんどである。視覚以外の様々な感覚に訴 える新しい出力インタフェースの開発が必 要と言える。                

DESIGN SEEDS : 8 40

ASインタフェースの具体例として、ス ムースで直感的な理解が可能なナビゲー ション手法について考察した。そのため に、まず人間の空間認知プロセスについ て触れ、さらにそのプロセスと現状のナ ビゲーションシステムとの間にある“ず れ”について考察した。 人間の空間認知には、目標の位置を漠 然と伝えることによって生まれる探索行 動が重要であると言える。にもかかわら ず、従来のナビゲーションシステムは目 的地までの道程を指示するだけに止まっ ており、その解決には、より立体的な情 報を伝達できる感覚を用いる必要がある と言える。つまり、空間認知には刺激の 発生部位や方向の特定、刺激の大きさの 把握、以上の2点が重要であることか ら、他の感覚に比べて定量的な実験が容 易な皮膚感覚を用いたインタフェースが 有効であるとの結論に至った。

の速さ)、振動刺激強度(振動周波数の高 さ)、温熱的刺激強度(温度の高さ)に よって表現することとした。

■第5章 ナビゲーション手法の明確化  と実験の指針 触圧・振動・温熱的の3つの刺激によ る、具体的なナビゲーション手法について 検討し、さらに、そのナビゲーション手法 に基づいて、実験計画及び実験装置に必要 な機能の抽出を行った。また、3つの刺激 を再現するアクチュエータについては、触 圧刺激はステッピングモータによって、振 動刺激は振動モータによって、温熱的刺激 はペルチェ素子によって再現することとし た。

■第6章 実験装置の制作 皮膚刺激によるナビゲーションの実現性 について検証するためには、被験者に対し て任意の強度と頻度を持つ刺激を呈示する 必要があった。そこで第6章では、このよ

■第4章 皮膚感覚特性の把握と適用 実際には、どのような皮膚刺激を用い てナビゲーションを行うのか。第4章で は、空間を距離・方向・高さの3つに分 解し、それぞれの情報を出力するに相応 しい皮膚感覚について検討を重ねた。文 献から得た皮膚感覚特性の基礎的な知識 や実現性、感覚代行の先行研究例を加味 し、適用する皮膚刺激と刺激部位を選 出、距離・方向・高さの3つの要素を、 それぞれ触圧刺激頻度(皮膚を叩く刺激

ナ ビ ゲ ー シ ョ ン 手 法 の概 念 図


Master’s Thesis

うな機能を満たす実験装置の制作を行っ た。装置の構築には、マイクロコントロー ラと呼ばれるIC、3つのアクチュエータ (ステッピングモータ、振動モータ、ペル チェ素子)、そして各種ドライバ回路を用 いたが、任意にアクチュエータの制御を行 うためには、いくつかの予備実験を経るこ とで、その基本的な特性を把握する必要が あった。結果的には、キーボード操作に よって、出力の制御が可能な実験装置を完 成させることができた。 (以下は実験装置の概略図)

■第7章 皮膚感覚特性把握のための実験 第5章において抽出された実験計画に基 づき、触圧・振動・温熱的刺激それぞれに ついて、閾値と弁別値把握のための実験を 行った。この実験は、人間が、皮膚に加え られる刺激の強度や頻度の差を、どの程度 まで細かく識別できるのかを把握すること を目的としたものである。この実験によっ て、人間の皮膚感覚は、与えられる刺激の 種類に因らず、一様の感受性を示すことが 判明した。つまり、何らかの皮膚刺激に敏 感だった被験者は、他の2つの刺激に対し ても敏感な反応を示し、逆にある刺激に鈍 感だった者は、他の2つの刺激に対して も、やはり鈍感な反応を示すことが分かっ た。また、触圧刺激間隔と振動周波数の識 別については、高い精度の弁別能を示した が、温熱的刺激については、細かい温度差

左手

の弁別は難しいことが明らかとなった。2 つの機械的刺激と温熱的刺激の間に、この ような能力の差が生じたのは、1つにはペ ルチェ素子そのものの性能が関係してお り、温度変化が完了するまでの間に順応が 起こったため、温度変化をはっきりと知覚 できなかったことが原因と考えられる。さ らに、実験中の温度環境を一様に保つ必要 があるなど、温熱的刺激を情報伝達に用い るには、解決すべき問題が多いことがはっ きりした。 以上の点から、迅速な変化をもたらすこ とのできる機械的刺激は、ある程度個人の 主観(ノイズ)を防ぐことが可能なため、 ナビゲーションに有効と言えるが、温熱的 刺激については、細かい内容の情報伝達に は向かないということが言える。

右手

振動モータ 振動モータ

ステッピング モータ

■ Abstract Because it depends on sight too much, the interface of the usual mobile computer has a problem such as overflow of the information. Therefore, it gets rid of the interface which was dependent on such sight, and it is important to develop an interface to complain about to a new sense. The place of such a background, this research do verification about the possibility of the interface which a skin stimulus was used for. It was presumed that the ideal type of the interface which miniaturizes it concretely was wearable computer (an interface to acquire), and examined about the possibility of the navigation technique for the walker which the skin stimulus interface of the wear type was used for. Furthermore, the experiment to grasp a human skin sense character was done to verify the realization of the presumed technique. It is important to make the most of the sense of direction which originally a human being has to the recognition of the space where it is smooth and intuitive to the full. Therefore, it is not the technique that a distance is indicated like usual car navigation directly, but the search behavior which is born by teaching distance, direction, height to the goal vaguely becomes important. So, space information was resolved into three elements of the distance, direction, height. Then, each information was decided to be transducing by the height of the height of the quickness of the stimulus of striking skin, the vibration frequency, temperature. An experiment device was made of stepping motor, a vibration motor, the temperature heat element to verify the realization of the above concept. And, it did the experiment of the benefit about each three kinds of stimulus to grasp the character of a skin sense. As for a human skin sense, it was proved that the same response was shown regardless of the kind of the stimulus in this experiment. And, as for the distinction of the height of the vibration frequency, a human being found out that it had the ability by the valve of the high precision with the quickness of the stimulus of striking skin. But, as for the distinction of the difference in temperature, it became clear with the one by the valve of the difference in detailed temperature that it was difficult.

ペルチェ素子

DESIGN SEEDS : 8 41


Intermediate Doctoral Thesis

李岡茂 / Lee, Kangmoo 筑波大学 芸術学研究科(博士課程) 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:コンピュータ・グラフィックスにおける オートノーモス・コンポジション Autonomous Composition in Computer Graphics

Doctoral Thesis ■研究目的 本論の目的は、自律的な作画アルゴリス ムと使用者が相互作用を行う方法を探るこ とである。これまでの作画アルゴリズムに 関する研究と応用は、主にプログラム言語 を通じて行われ、アルゴリズムの自律性を 強化する方向だけが求められた。しかし、 実際の造形作業で使われるためには、アル ゴリスムだけではなく、使用者の美的な介 入が反映されることが望ましいと考えられ る。 このような使用者と自律的アルゴリズム の間のインタラクションは、これからのコ ンピュータ・グラフィックスが担うべきの もう一つの課題になると予想されるが、ま だそれを示す適切な用語さえ存在しないの が現状である。本論では、「コンピュータ の自律的な作画アルゴリズムと作家の相互 作用を通じて前には思い付かなかった結果 を得る造形方法」を「オートノーモス・コ ンポジション」と名づけ、その分類と定 義、史的発展過程、応用方法に関して考察 を行う。

■第 I 部 用語と概念 第1部では、本論の基礎的段階として「コ ンピュータ・グラフィックス」とう用語の 中に存在する概念的な錯綜とその問題点を 指摘し、新しい用語を作った背景やその概 念に関して論じる。 第1章 では 、「 コン ピュー タ・ グラ フィックス」という用語を分析の対象にし て、語源と概念、用語としての問題点を考 察する。問題点は、指示内容の広さにに よって生じる概念的な錯綜であり、特に 「支援」と「生成」の問題、つまり製作の プロセスの方式が明確ではないことが「コ ンピュータ・グラフィックス」が抱えてい る何よりの問題点であると指摘する。 続く第2章では、コンピュータの「生 成」の部分を示すために「オートノーモ ス・コンポジション」という用語を提案 し、その概念と意義、分類方法に関して述 べる。なお、自律性という概念が現代芸 術、コンピュータ工学、コンピュータ・ アートの中でどのように適用されてきたか に関して簡略な考察を行う。

■第 II 部 オートノーモス・コンポジ ションの形成と発展 第 II 部は、1960年代から70年代の間で 行われた「サイバネティック・アート」に 関する考察(第3章)と80年代の以降から

DESIGN SEEDS : 8 42

コンピュータ・アートの方法論として活発 に応用されている「モルフォージェネシ ス」(形態形成)に関する考察(第4章) で構成されている。 第3章では、まず「サイバネティック ス」という学問分野の用語や概念を簡略に 説明し、続いてサイバネティックスとコン ピュータ・アートの結合を美学的理論と実 際的製作に分けて考察する。最後に、「サ イバネティック・アート」に関する批判と 今日的な意義に関して述べる。 第4章は、「モルフォージェネシス」と いう用語や概念を述べ、発展過程に関して 考察する。「モルフォージェネシス」がコ ンピュータ・アートの一つの方法論として 脚光を浴びたのは、1980年代以降のことで あるが、生物の形態形成に関する数学的考 察は長い歴史を持っている。第4章では、 T.A.クックと D.トムソンの古典的な研究か らH.マインハートの最新の研究成果に至る 形態形成の数学的モデルの展開過程を「成 長モデル」、「遺伝的変異モデル」、「セ ルオートマトン・モデル」、「モルフォ ジェン・モデル」、「フラクタル幾何学の モデル」の五つのモデルに分けて解説し た。 「オートノーモス・コンポジション」の 観点で重要なことは、そのような形態形成 のアルゴリズムだけではなく、それをいか にして造形作業に応用するのかの問題であ る。従って、第4章の最後の部分では、 「遺伝的変異モデル」を使う作家としてW. レイサムを、「成長モデル」を応用する作 家として河口洋一郎を取り上げ、アルゴリ ズムと作品の関係を具体的に考察する。二 人は、コンピュータの自律性を活用して作 品を作り、その芸術性が 認められている。 しかし、彼らの方法論をデザインと造形分 野に一般化するためには、アルゴリズムだ けではなく、もう一つの要素、つまり作家 の審美的判断を製作過程に反映する方法を まず探る必要があると考える。

■第 III 部 応用のための事例研究  第 III 部の第5章では、現代美術の作品の 中で数学的構造と作家の美的直観が調和を 成している事例としてマレーヴィチの立体 造形作品「アルヒテクトン」の構造分析と フラクタル幾何学によるシミュレーション を行う(図1)。その結果、「アルヒテク トン」の中ではフラクタル幾何学の自己相 似性と類似する構成原理が存在するが、同 時に構成要素の削除、移動、スケールの変

化等によって作家の主観的な美的判断が反 映されていることが分かった。 第6章では、「パターン・ジェネレー タ」と名づけたプログラムの試作とその問 題点の改良方法を扱う。「パターン・ジェ ネレータ」は、C.ピックオーバのパターン 生成のアルゴリズムに、グラフによる形態 情報の選別・始点設定によるグラデーショ ン・パターンの生成機能等を加えることに よって、自律的作画アルゴリズムと使用者 の相互作用を可能にしたプログラムである (図2)。

■終章 終章では、研究の成果をまとめ、総合的 な結論を下す。総合的な結論は以下のよう である。 1)形態生成のアルゴリズムは、これまで 主に自然物をシミュレートするために使 われてきたが、造形芸術とデザイン分野 の構成原理として使われる可能性を持っ ている 2)このような可能性を実現するために は、コンピュータ言語や数値制御だけで はなく、現在の一般のユーザに親しむ GUI等の方式を導入し、ユーザが参与す る部分を拡大することが望ましい 3)自律的な作画アルゴリズムとユーザの 間のインタラクションは、少なくとも造 形とデザイン分野における発想支援段階 で有意義な結果をもたらすと考える

■ Abstract The purpose of this thesis is to search a way between autonomous graphic algorithm of computer and creativity of human designer. Autonomous (self-governed) operation had been main theme in developing computer technology and adopted by many artist who use a computer as a artistic medium. But, this trend is not a mainstream of computer graphics in nowadays. The common process of computer graphic is consist of command of user and performing of computer. This process often called ‘interactive’, but true meaning of ‘ interactivity’ will be accomplished when computer could suggest various form and pattern instead of mere


Intermediate Doctoral Thesis

reflection of input of user. In this thesis, I coine the term ‘autonomous composition’ to indicate the creative feedback between user and computer, and research its concepts, historical aspects, and application. This thesis is composed of three parts. Main themes of each parts are given below. part 1 : concept of autonomous composition part 2 : historical development of autonomous composition part 3 : application of autonomous composition Part 1 is consist of chapter 1 and chapter 2. The main theme of chapter 1 is confusion of concepts in term ‘computer graphics’. In chapter 2, I suggest the new term ‘autonomous composition’, and defined it as ‘form synthesis process through feedback loop between autonomous graphic algorithm and user’ . Part 2, I divide historical development of autonomous composition into cybernetic art era (chapter 3) and morphogenesis era (chapter 4). Through the historical research of part 2, I realize that the algorithm of morphogenesis will be very useful method of design and fine art, but to accomplish the aesthetic goals, creativity of user plays very important role. Part 3 is consist of two case study. Chapter 5 is not a direct application of autonomous composition. It is a case study of relationship between geometrical system and artist’s intuition. In chapter 5, I analyze the Architectons of Kazimir Malevich. The method of analysis is that comparing the models generated by fractal simulation and original work. As a results, the vertical Architectons basically have a self-similar structure, but the size and the number of elements are decided by the aesthetic selection of author. Chapter 6 is a case study that apply autonomous composition to pattern design. Using Pickober’s basic algorithm, I make the prototype of ‘pattern generator’ program, and investigate the way to improve user’s participation in process of generating pattern. The conclusion of this thesis is that fusion of designer’s creativity and autonomous graphic algorithm is not a difficult thing , and this fusion will play a important role in computer graphics from now on.

S1:作品の図面をデジタル化する S2:デジタル化した図面に基づいて3次元モデルを作る。作品の写真との比較 S3:3次元モデルの中でイニシエイターとジェネレーターの構造を見出す S4: フラクタル・アルゴリズムによる増殖 S5: フラクタル・モデルの図面の作成 S6: 作品の図面との比較 * I: イニシエイータ * G1,G2,G3 :ジェネレータ  図 1   フ ラ クタ ル ・ シ ミ ュレ ー シ ョ ン の流 れ 図

a

b

c

図 2   パ タ ーン ・ ジ ェ ネ レー タ

a:パターン・ジェネレータのメイン画面 b:グラフを参照にしたパターン変形の実例 c:グラデーション・パターンの例

DESIGN SEEDS : 8 43


Intermediate Doctoral Thesis

佐藤 弘喜 / Sato, Hiroki

修士論文

筑波大学 芸術学研究科(博士課程) 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:文様の認知特性に基づくデザイン支援情報の抽出 Information from Observer’s Cognitive Characteristics for Pattern Design

Doctorial thesis ■はじめに 文様のデザインでは、その視覚的な解釈 に多義性のあるものが多く見られる(図 1)。文様の持つ造形的な特徴のどの点に注 目するかによって複数の見方が可能であ る。これらの文様の視覚認知においては、 文様の持つ造形的な特徴によって特定の解 釈が喚起される視覚のボトムアップ的な性 質が複数存在しているものと考えられる。 また同時に、各鑑賞者の個人的特性によっ ても異なる解釈が生じることが推測され る。 本研究は伝統的文様を研究対象として、 文様デザインにおける鑑賞者の視覚認知特 性の一端を明らかにすることを通して、認 知特性を考慮に入れたデザインの手がかり となる情報を抽出しようとするものであ る。

■研究の目的 本研究の段階的な目的の第1は、文様に 対する視覚認知の構造を明らかにし、文様 に対する見方(視覚認知パターン)が同時 に複数存在するのではないかという仮説を 検証することである。 第2に、文様に対する視覚認知パターン の違いと文様を構成している造形的表現の 関係を調べ、文様に対する視覚認知パター ンがどのような造形的特徴と結びついてい るのかを明らかにすることである。 そして第3として、文様に対する感性評 価が視覚認知パターンとどのように関係し ているのかを調べ、文様に対する感性評価 が文様に対する見方の影響を受けているこ とを明らかにすることである。 さらに最終的な目的としてこれら3段階 の目的の達成によって得られた視覚認知に 関する知識をまとめ、文様デザインの手が

図 1   多 義 性 の ある 文 様

DESIGN SEEDS : 8 44

かりとなる情報として集約することであ る。

る。

■事例研究2 ■事例研究1 事例研究1では、上記の仮説に基づき造形 物に対する視覚認知において複数の見方が 存在することを仮定し、それを複数の視覚 的体制化の選択肢の中から特定の特徴を選 択する行為としてとらえ、視覚認知パター ンを表現した画像を具体的に表現すること を試みた。 実験1では、文様画像に対する印象評価実 験を行い、その因子分析による解析結果か ら、各文様に対する視覚認知パターンを表 現する画像を作成した。18種類の画像に対 して実験を行い、そのうち13種類の文様に ついて3から5の画像が作成された。実験2で はその画像表現の妥当性を検証するため、 作成した画像に対する印象評価および元の 画像との類似性の評価実験を行い、一部を 除いて妥当性が確認された。 事例研究1の結果の考察によって、文様の 視覚認知において鑑賞者が選択している視 覚認知のパターンを分類した。これらの鑑 賞者の複数の見方を、全体を漠然と眺めた 粗密感や部分をクローズアップした細部形 状といった、対象に対する視点のレベルの 違いとして表現する意味でレイヤーと呼ぶ こととした。レイヤーの種類として、 1)明暗レイヤー 2)テクスチャレイヤー 3)構造レイヤー 4)運動レイヤー 5)ディテールレイヤー の5種類を定めた。 また鑑賞者の基本的な認知特性として、 全体的な特徴をとらえたレイヤーが上位に 選択されやすい傾向が認められた。ただ し、この傾向はおおまかなものであり、実 際には対象の文様に対する見方は文様の有 する特徴に左右される部分が大きいと考え られる。 今回の実験結果で同一の文様に対して常 に複数のレイヤーが存在したことから、文 様に対する見方が同時に複数存在するので はないかという仮説を検証することができ た。鑑賞者は文様を見るとき、その対象と なる文様が持ついくつかの視覚的体制化の 可能性の中から、全体的な密度を選択して いたり部分的な形状を選択していたりする ため、同一の対象を見ている場合でも、各 鑑賞者がどの見方を選択したかによって視 覚認知のパターンが異なるものとなってい

事例研究2では事例研究1で抽出された視 覚認知パターン、すなわちレイヤーがどの ような造形的特徴によって規定されている のかを調査し、特定のレイヤー選択を導く 造形表現の手法を明らかにすることを試み た。さらに特定のレイヤーの選択が文様の 選好にどのように関わっているのかを調査 した。それらの調査結果によって鑑賞者に よる感性評価、視覚認知パターンの選択、 造形的特徴という3要因の関係を明らかに し、文様デザインの際の手がかりとなる支 援的情報の抽出を行った。 実験3では各文様を構成している造形的 な特徴を造形原理用語による評価実験に よって調査し、その結果と各レイヤーの印 象度評価の関係を数量化理論Ⅰ類で解析す ることで、どのような造形原理が特定のレ イヤーと強く結びついているかを明らかに することを試みた。また、実験4では鑑賞者 の文様に対する選好を調べ、その結果と各 レイヤーの印象度の関係を解析すること で、鑑賞者の文様に対する見方が選好にど のように関わっているかを明らかにした。 実験3の結果から、鑑賞者の各レイヤー の印象度評価に対して影響度の大きい造形 原理用語が明らかになった。明暗レイヤー の場合は密度感、バランスなど、テクス チャレイヤーでは規則性、単純性など、構 造レイヤーでは対称性、調和など、運動レ イヤーでは方向性、連続性など、ディテー ルレイヤーでは単純性、バランス、安定 性、歪みなどが影響度の大きい造形原理用 語となっている。 これらのレイヤーが意味するような視覚 認知パターンを鑑賞者に訴えたい場合、各 レイヤーに対する影響度の強い造形原理用 語が表すような特徴を文様デザインにおい て表現することが重要である。 また、鑑賞者の文様に対する選好とレイ ヤーの印象度の関係を解析した実験4では、 テクスチャレイヤーが最も選好に対する影 響度が高く、次いで構造レイヤーの影響度 が高いことがわかった。この結果から、鑑 賞者が部分的な特徴よりも全体的な配置や 調子から選好を判断する傾向が強いことが 分かった。文様の選好がレイヤーの選択と 関係性がある事が確かめられたことで、文 様に対する視覚認知パターンが感性評価に 影響している事が確認された。 したがって文様デザインの際に鑑賞者の


Intermediate Doctoral Thesis

■ Abstract

元 の 文 様 画 像 (文 様 1 )

認 知 パ タ ー ン画 像 1                 

  認 知 パ タ ーン 画 像 2

認 知 パ タ ー ン画 像 3                      認 知 パ タ ー ン画 像 4 図 2   作 成 し た 視 覚 認 知 パ タ ー ン 画 像 ( 文 様1 )

選好を意識して表現を行う場合には、視覚 認知的なパターンを考慮することが必要で あり、基本的には全体的な配置や調子につ いて特に考慮することが重要である。ただ しこれは全体的な傾向であり、文様が持つ 造形的な効果によって左右される部分もあ るものと思われる。

■結論 本研究の第1の目的に関して、事例研究1 において同一の文様に対して常に複数のレ イヤーの存在が確認でき、その具体的な画 像表現ができたことから、文様の視覚認知 において複数の見方が存在するという仮説 が確認されたと言える。 第2の目的に関しては、実験3で鑑賞者の 視覚認知パターンの選択を導く造形原理が 明らかになった。したがって文様に対する 視覚認知パターンが特定の造形的特徴と結 びついていることが確認できた。 第3の目的については、本研究の結果得 られた情報として、第1に実験にともない、 文様デザインの評価に有効な造形原理用語 を抽出したこと、第2に各レイヤーに対する

影響度の大きい造形原理用語が明らかに なったことにより、それぞれのレイヤー に代表されるような視覚認知パターンを 鑑賞者に訴えたい場合に、どのような造 形的特徴を意識した表現をするべきかが 明らかになったこと、第3として鑑賞者の 選好評価が視覚認知パターンによって影 響を受けることが確かめられ、選好が全 体的な配置や調子の影響を受けやすいこ とが明らかになったことで、デザインに 際して部分的な特徴よりも全体的な特徴 を重視してデザインするべきであること などである。 以上の結論から文様に対する視覚認知 の構造を明らかにし、その成果をデザイ ンの手がかりとなる情報として抽出する ことに至る、本研究の4つの目的が達成さ れたことが確認できた。

It is important how the observers see the object in the process of Kansei evaluation by visual perception. It is considered that visual image has a layered structure. It is first purpose of this research to embody the cognitive structures in visual perception of pattern design . Words which expresses characteristics of formed object were collected by the questionnaire. Some kinds of patterns were evaluated by using those words. The result was analyzed by factor analysis and some common factors of formative characteristics were extracted. Those common factors were interpreted and some images the common factors meant were made from each patterns. As a result, the cognitive structures in visual perception of the pattern design were able to be embodied. Second purpose of this research is to investigate relation between formative expression and observer’s cognitive characteristics in visual perception. Words which expresses characteristics of formed object were collected from literature and narrowed down by a questionnaire. Some kinds of patterns were evaluated by using those words. Cognitive structures in visual perception of pattern design were classified into 5 types, and impression of each type to a pattern was evaluated. Result of the experiment was analyzed by quantitative analysis model-1. The terms with strong influence on each type of cognitive structure were clarified. Third purpose of this research is to investigate the relation between Kansei evaluation and observer’s cognitive characteristics. Observer’s preferences to the patterns were obtained by a experiment. Impression of each type of cognitive structures in visual perception of the patterns were analyzed as related between preferences to the patterns. It has been understood to related about preference and impression of each type of cognitive structures. There are strong tendencies to evaluate preference from the overall characteristics of the pattern. As a result, the information for pattern design matched to observer’s cognitive characteristics was extracted.

DESIGN SEEDS : 8 45


Intermediate Doctoral Thesis

森崎 巧一 / Morisaki, Norikazu

修士論文

筑波大学 芸術学研究科(博士課程) 研究指導:原田 昭 / Harada, Akira

論文:鑑賞者のイメージ解析についての基礎研究 A Fundamental Study on Image Data Analysis of Viewer

Doctorial thesis ■背景と目的 従来の美術館に用意される情報及び展示 のシステムは、エキスパート(学芸員や美 術史研究家など)の主観により制作され、 一般鑑賞者が美術作品から受け取っている イメージについての調査が行われていな かった。そこで、鑑賞者支援システム設計 のために、鑑賞者のイメージを把握するこ とを目標とするが、その第1段階として、鑑 賞者が作品から受ける印象のイメージ解析 方法を示すことを本研究の目的とする。そ の目的達成のために、イメージの評価デー タを抽出しやすくするWEBアンケートシス テムを制作し、そしてそのシステムから得 られた一般鑑賞者とエキスパートのデータ に対し主成分分析を行う。以上からイメー ジ解析方法を示す。 図 1   簡 易 的 な 美術 鑑 賞 支 援 イン タ フ ェ ー スシ ス テ ム

■鑑賞支援インタフェースによる実験 従来の美術館での情報の提示や公開は、 美術館から鑑賞者へ情報の流れが一方通行 のものが多い。また、美術批評家や学芸員 による作品紹介も、文面は巧みに書かれて いても、難解なものが多い。現在のとこ ろ、一般鑑賞者は、作品に対し疑問を抱い ても確かめる手段はなく、心の中に留める のみである。現在の美術館では、学芸員か ら鑑賞者へ情報が一方的な流れとして固定 されているところにその問題があると考え る。 そこで鑑賞者は、美術作品についての疑 問を作者へ訴え、作家からその解答を得る

図 2   第1 主 成 分 に お ける イ メ ー ジ 語の 属 性 分 類

DESIGN SEEDS : 8 46

ことによって理解を深めていくといったイ ンタラクティブなインタフェースにより、 情報の流れが双方向になり、以上のような 問題を解決できるものと考えた。本実験で は、鑑賞者と作家の間に関係をもたせ、鑑 賞者がより楽しく理解を深めることができ る、鑑賞者主体のインタフェースシステム を構築する。本実験では、インターネット を用いることによって、 1)鑑賞者が知りたいと思われる情報項目を 仮説的に列挙し、情報の必要性や適応性 を調査できるシステム 2)鑑賞者と作家間とのやりとりを可能にす

ることによって、鑑賞者が作家から得なが ら、鑑賞者関心を持つ項目や情報を調査で きるシステム を考案した。 本実験の中で、鑑賞者と作家、学芸員ら が、情報のやりとりを双方向に行うことがで きる環境と、鑑賞者が関心を持つ情報を得る ことができるシステムを構築できた(図 1)。 しかし、提供される情報は、エキスパー トの作成する論理的なものである。鑑賞者は 美術鑑賞時、与えられる論理的な情報を介す ることで、作品を理解しようとしているだけ

図 3   第2 主 成 分 に お ける イ メ ー ジ 語の 属 性 分 類


Intermediate Doctoral Thesis

ではない。鑑賞とは感性的なものであり、 理解の支援だけでは、鑑賞者支援として不 十分であることがインタフェース実験によ り分かった。 そこで一般鑑賞者が作品から受けるイ メージを把握できるシステムが必要と考 え、まず第1段階として、一般鑑賞者とエキ スパートとの作品鑑賞時のイメージを調査 し、その差違や共通性を見出すイメージ解 析の実験調査を行った。

■WEBネットワークを用いた美術鑑賞に  おけるイメージの解析 美術館で提示される情報は大抵の場合、 エキスパートの主観的イメージによって用 意されることが多く、一般鑑賞者に適する 情報とは言い難い。それはまた、潜在的鑑 賞者を開拓する上でも障害ともなりかねな い。エキスパートには、一般鑑賞者がどう いったイメージを持って作品を鑑賞してい るのか、把握する手段は必要だが、その手 法は未だ見いだせていないのが現状であ る。したがって、本調査では一般鑑賞者と エキスパートが作品から受け取るイメージ を、WEBによるアンケートシステムと主成 分分析を用いることによって、イメージ解 析方法の可能性を示すことを本調査の目的 とした。 準備調査によって46のイメージ語に絞 り、本調査ではオリジナル10作品を選び、

橋本関雪 「玄猿」

図 4   第1 主 成 分 の 例

その画像とインターネットアンケートを用 いて、イメージの評価データを収集した。 本アンケートシステムによって潜在的鑑賞 者の評価データも得ることができた。そし て収集データに対して主成分分析を行っ た。その結果、第1主成分の「作品への関心 軸」においては、まずイメージ語を、関心 を示す5属性(質的属性・文化的属性・物 理的属性・心的属性・論理的属性)に分類 し(図2)、鑑賞者の関心を持つ属性内容を 調べると、明解な共通性は得られず、鑑賞 者とエキスパートとのイメージ形成上での 差違が認められた(図4)。第2主成分の 「作品イメージの基準化軸」においては、 まずイメージ語を基準となる属性(+−又 は動的静的)に分類し(図3)、+−又は動 的静的な属性に当てはめると、多くの作品 において共通性が認められた(図5・6)。

■本研究の結論 1)鑑賞者支援システムの設計には、鑑賞  者が作品から生成するイメージを把握   する必要がある。 2)従来調査対象として困難であった潜在  的鑑賞者に対して、容易に美術作品に   対するイメージデータを抽出しやすく   するアンケートシステムを制作し、来   観者以外からもデータの獲得を行っ    た。

荻 須 高 徳   「 パ リ ・街 角 」

図 5   第2 主 成 分 の 例 (1 )

3)第1主成分は「作品への関心」をあら  わす軸とし、解析の結果、明解な共通   性が得られず、一般鑑賞者とエキスパー   トには差違が認められた。したがって、   これからの一般鑑賞者に対する美術作品   情報には「質的属性・文化的属性・物理   的属性・心的属性・論理的属性」などの   属性に対する配慮が必要である。 4)第2主成分は「作品イメージの基準  化」をあらわす軸とし、一般鑑賞者と   エキスパートに共通性が認められた。 今後の研究の展開としては、鑑賞に関す る研究を引き続き行い、鑑賞者支援システム の実働モデルの開発を行いたいと考えてい る。

■ Abstract The purpose of this research is to show the way of investigation of Image Data Analysis for viewer. In this research, firstly, it could be shown the possibility of the way of investigation for aided viewer, which this Questionnaire System using Web Network would be expected to apply as the system to extract image data from potential viewer. Secondly, it could be shown 2 tendencies (the differences of appreciation on "interest in art works" and the commonality of appreciation on "image criterion of art works") between general viewer and expert viewer by image data analysis using PCA (Principal Component Analysis).

田 村 孝 之 助   「 ベ ネ ツィ ア 」

図 6   第2 主 成 分 の 例 (2 )

DESIGN SEEDS : 8 47


あとがき

 SEEDS も今年で8冊目となりました。  毎年教官の方が編集してくださっていたのですが、今年は「てつそん」という他大学との共同卒業制作展示 展が行われる関係で、学生が編集を担当することになりました。手探りながらも作業をすすめ、なんとか印刷 までこぎつけることができ、ほっとしています。今回の SEEDS 編集に携わったことで、様々な苦労をしなが ら多くのことを学びました。

これから世界に飛び立っていく私たちの門出を祝して、 、 、 、

『SEEDS 万歳!』 February 2001

発行 :2001 年 2 月 15 日 発行人 :筑波大学芸術学系 生産デザイン研究室 原田昭・蓮見孝・山中敏正 デザイン・編集 :山中敏正 笠井祐子 久保寛子 前田吉広 印刷 :株式会社 クリック・トゥー 製本 :株式会社 クリック・トゥー

DESIGN SEEDS : 8 48


DESIGN SEEDS 08  

Thesis paper and project of product design at the University of Tsukuba