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ISEP News Letter 2013. No.4


■ 巻頭言 明日への「微かなもの」 「電気を生み出す一手段にすぎない原発は、憲法上は人格権の中核部分より も劣位に置かれるべきもの」 「原発停止に伴う貿易赤字ではなく、豊かな国土と国民の生活こそが国 富」。

所長 飯田 哲也

5月21日の関西電力大飯原発差止訴訟に対する福井地裁の判決は、分厚い雲 でどんよりと曇った中に、突然一点の青空が突き抜けたような感覚がありま した。原発復権に向けて、自民党、政府、電事連、経団連、御用メディアな どから有形無形の言論・圧力・根回しなどがどんどん広がってきて、社会全体 をどす黒く覆いはじめている時でしたから、憲法の定める人格権を高らかに謳 いあげた判決文を貫いている倫理と哲学がひときわ鮮やかに輝きを放っていま した。 そして5月23日、会津電力の佐藤彌右衛門氏を代表幹事に担いで、一般社団 法人全国ご当地エネルギー協会、いわゆる「市民の電事連」が正式に発足しま した。北は北海道から南は九州まで、全国からおよそ30のご当地エネルギーに 取り組む団体・個人が集い、自らのエネルギー自治とお互いの協力・連携を 誓ったのです。 いずれもまだ、ほんの「微かなもの」にすぎませんが、すべてのものはこう した「微かなもの」から始まります。それが人々が希求し道理にかなっている ものであれば、必ず「明日」のいしずえになることでしょう。

■ 四半期活動レビュー

研究員 浦井 彰

  2013年度ISEPは「コミュニティパワー」をキーワードに活動を進めてきまし た。具体的には「コミュニティパワーラボ」「ISEPエネルギーアカデミー」「環 境省・地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」等の活動を通して、「人 と場作り」「地域事業育成」の継続的な仕組み作りとネットワーク構築を行って います。この第4四半期には、こうした活動成果を共有し発展させる国際会議 「コミュニティパワー国際会議2014in福島」を開催いたしました。また、FIT制 度・コミュニティパワー・自然エネルギー100%地域を重点テーマとして「自然 エネルギー白書2014」を発行し、自然エネルギー100%の実現に向けた提言を行 いました。   FIT制度が施行されて約1年半が経過するなかで、各地で地域主導型事業が立 ち上がってきており、自立した活動が始まっています。ISEPはこうしたコミュニ ティパワー事業の広がりと発展を支援する活動を来年度に向けて継続して進めて 行きます。特に「コミュニティパワー国際会議2014in福島」において出された 「福島コミュニティパワー宣言」のアクションとして、コミュニティパワーの ネットワーク「一般社団法人全国ご当地エネルギー協会」の設立と、福島からの 変革を支援するための「福島コミュニティパワー基金」立ち上げを目指して準備 を進めております。   みなさまの継続したご支援はISEPの活動を支える大きな力となります。引き続 きよろしくお願いいたします


■ 2013年度 第4四半期 活動概要

1月 1月22日

【政策提言】 固定価格買取制度および自然エネルギー政策への提言

1月24日

【イベント】コミュニティパワー・イニシアチブ活動報告会 @パタゴニア目白ストア 開催

1月28日

【記者会見・説明会】全国ご当地エネルギー市民ファンド (山口・小田原)募集開始

1月31

【イベント】コミュニティパワー国際会議2014 in 福島 開催

∼2月2日 1月31日

【プレスリリース】「自然エネルギー白書2014サマリー版」を発行

1月31日

【プレスリリース】日本の地域からの100%自然エネルギーへの移行

2月3日

【イベント】自然エネルギー100%コミュニティ・フォーラム 開催

2月6日

【イベント】国会エネルギー調査会(準備会)第34回 開催

2月20日

【イベント】 BIN/ISEP木質バイオマスシンポジウム2014 開催

2月20日

【イベント】国会エネルギー調査会(準備会)第35回 開催

3月6日

【イベント】国会エネルギー調査会(準備会)第36回 開催

3月11日

【イベント】3月11日「全国ご当地エネルギー協会(仮称)」 発起人総会開催

3月19日

【イベント】国会エネルギー調査会(準備会)第37回 開催

3月19日

【政策提言】 固定価格買取制度(FIT)への提言

2月

3月

∼平成26年度調達価格および制度運用の課題∼ 3月28日

【記者会見】『日本全国ご当地エネルギー市民ファンド』(北海道・福島)の 募集開始


■ 特集 全国ご当地エネルギー協会設立 山下 紀明(ISEP主任研究員) 日本中で立ち上がっているコミュニティパワー事業(ご当地エネルギー事業)をさらに加速させ

るために、ISEPが事務局となって「全国ご当地エネルギー協会」が正式に発足しました。

● 発足の経緯

 2014年1月31日∼2月2日に開催した「コミュニティパワー国際会議 2014 in 福島」の参加者に よって「福島コミュニティパワー宣言」が採択されました。その中では、この会議に集まった 人々とつながりを活かした新しいネットワークを立ち上げることを約束しました。

  3.11以降に、日本全国で多くの自然エネルギー事業が立ち上がっています。しかし、その大半 が地域外資本による「植民地型開発」であるほか、数少ない地域主体の事業の多くは、資金調達

や人材不足、事業モデルの選択など、多くの課題を抱えています。こうした事業者や協議会、個

人がつながり、情報共有や共通の課題の解決をとおして、地域主導型の自然エネルギー普及を加 速させ、それを基盤とする持続可能な地域社会づくりを目指すべく「全国ご当地エネルギー協 会」を立ち上げることになりました。

  こうした思いから、東日本大震災からちょうど3年目である2014年3月11日に、「全国ご当地

エネルギー協会」(仮称)発起人総会を開催し、発起人一同で設立を宣言しました。発起人幹事 には、全国の各地域からご当地エネルギー事業を進めるパイオニアが名を連ねました。さらに、 生活協同組合による消費者幹事、経営者ネットワークとも連携し、ISEP所長の飯田を事務局幹事

として設立に向けた議論を進めてきました。2014年5月23日に設立総会を行い、「全国ご当地エ ネルギー協会」が正式に発足しました。

(全国ご当地エネルギー協会ウェブサイト:http://communitypower.jp/

● 総会当日の様子

  設立総会当日は、マスメディアを含め約80名が参加し、地域を活性化させる新たな組織の誕生 を見守りました。NPO法人北海道グリーンファンド 理事長の鈴木亨を議長として、(1)定款と 規約、(2)幹事、代表幹事・事務局・監査役、(3)活動内容・予算についての審議を行い、

了承されました。全国ご当地エネルギー協会の幹事は下表の通りとなり、代表幹事は佐藤彌右衛 門氏、副代表を小田切奈々子氏、服部乃利子氏、井上保子氏、豊岡和美氏、大津愛梨氏とするこ とも決まりました。


(北海道地区幹事) 鈴木亨 NPO法人 北海道グリーンファンド 理事長 (東北地区幹事)  佐藤彌右衛門 会津電力株式会社 代表取締役社長

(関東地区幹事)  蓑宮武夫 ほうとくエネルギー株式会社 代表取締役社長

(北信地区幹事)  小田切奈々子 自然エネルギー信州ネット コーディネーター

(東海地区幹事)  服部乃利子 しずおか未来エネルギー株式会社 代表取締役社長 (近畿地区幹事)  井上保子 株式会社宝塚すみれ発電 代表取締役

(中国地区幹事)  坂井之泰 市民エネルギーやまぐち株式会社 代表取締役 (四国地区幹事)

豊岡和美 一般社団法人 徳島地域エネルギー 理事

(消費者幹事) 

藤田和芳 大地を守る会 会長

(消費者幹事) 

山本伸司 パルシステム連合会 理事長

(九州地区幹事)  大津愛梨 NPO法人 九州バイオマスフォーラム 理事 (消費者幹事)  (消費者幹事) 

半澤彰浩 生活クラブ生協神奈川 常務理事 (人選中) 日本生活協同組合連合会

(ネットワーク幹事)鈴木悌介 一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議 代表 (事務総長・幹事) 飯田哲也 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所 所長

  また当日は多くの方が祝辞を述べました。古賀茂明氏は「再生可能エネルギーこそがエネルギー

を支えていくことができるということを、みなさんの力で示してほしい。」城南信用金庫理事長の 吉原毅氏は「少子高齢化や過疎等、現代日本の社会問題の多くはコミュニティパワーにより解決で

きると感じている。」脱原発首長会議代表の上原公子氏は「自分たちの地域の幸福のために活動す

るというコミュニティパワーの原則に基づいて、自治体の首長とも協力しながら、『自分たちの土 地は自分たちの地域の幸せに使う』条例をつくり、事業としても成功させることができる、そうし

た時代を迎えることができたと感じている。」自然エネルギー財団常務理事の大野輝之氏は「ス マートフォンが普及したように、地域分散型のエネルギーが中心なる社会は必ず訪れると思う。新 しい社会が早く実現するよう、私たちも一緒に力を合わせていきたいと思う。」と語りました。  

● 今後の活動概要

 全国ご当地エネルギー協会では、下記のような考え方のもと、各活動を進めていきます。

理念  : 地域主導型の再生可能エネルギー開発・エネルギー効率化を協働・ネットワークするこ とで促進してゆく

共通利益: 地域主導型のエネルギー開発を通して、持続可能で自立した地域社会を実現し、協働・ ネットワークで加速化する

相互支援: 情報共有や共通課題に協力して取り組み、相互に支援して上記を実現する  

  協会の活動は、地域主導型の再生可能エネルギー開発・エネルギー効率化に関するものとして、 下記の8つを中心としています。(1)情報共有(2)政策研究・提言(3)社会モデル開発(4)

人材育成(5)広報普及(6)ネットワーキング(7)ご当地エネルギーの認証(8)事業支援、

これらの中には、すでにISEPが進めてきたコミュニティパワー・ラボ研究会や地域エネルギーファ イナンス研究会、ISEPエネルギーアカデミー、コミュニティパワー国際会議などとの連携も含まれ ていて、より多くの主体とのつながりをもとに各活動を拡大していきます。

  今後は、速やかに一般社団法人の登記手続きを進め、全国各地の会員とともに、地域主体の自然

エネルギー・省エネルギー事業(コミュニティパワー事業)を広げることを通じて、持続可能な地 域社会を創ってゆくため、様々な活動を予定しています。


■ 「自然エネルギー白書2014」に見る日本の自然エネルギーの姿 松原 弘直(ISEP主席研究員)   ISEPでは、日本国内を中心とした自然エネルギー政策の状況や様々な自然エネルギーについて、最

新動向をまとめたレポート「自然エネルギー白書2014」を昨年に引き続き編纂し、発行しました。今

年は、ISEPのホームページより全文をダウンロードできます(http://www.isep.or.jp/jsr2014)グラ フ図集なども併せて公開していますので、ご活用ください。

  本レポートでは、世界で急成長する自然エネルギーについて日本の現況と本格導入への見通しを中

心に分析・記述しています。この 2014年版では前年に引き続き「固定価格 買取制度(FIT制度)」「コ ミュニティパワー」「自然エネルギー100%地域」の三つのテーマを重点的に取り上げました。太陽

光、風力、地熱、小水力、 バ イオマス、太 陽熱など、国レベルの自然エネルギー政策の具体的課題 から、地域での事業化や普及に向けた取り組み、各種のトレンド・データ、地域別ポテンシャルや導入

状 況、自然エネルギー100%を目指す長期シナリオまでを示し、自然エネルギー 100%の実現に向け た提言を しています。

  最初の第1章では、本レポートの全体像をサマリーとして示すと共に、世界の自然エネルギー政策の 動向やトレンドを紹介しています。日本では、これまでも自然エネルギーの普及拡大がことあるごとに

叫ばれながら、大規模なダム式の水力発電を含めても、いまだに自然エネルギーは日本全体の発電量

の10%程度を占めるに過ぎません(図1)。世界の状況については、「自然エネルギー世界白書 2013」の豊富なデータで2012年までの状況を紹介しています。

図1 日本の電源構成(発電量)の推移(「EDMC」「電気事業便覧」などのデータよりISEP作成)   第2章では、日本の自然エネルギー政策と市場について、詳しく記述しています。エネルギー政策全 体の見直しにおいては、3.11以降、検討が進められてきた「エネルギー基本計画」の問題点などを指

摘しています。2014年2月に公表された新しい「エネルギー基本計画」の政府案は与党での協議を経

て、閣議決定されました。この政府案では再生可能エネルギーの積極的な推進はうたわれています が、中長期的な目標は設定されていません。

  自然エネルギーの本格的な普及にも重要な役割を果たす規制・制度改革として、電力自由化や発送

電分離等を含む電力システム改革に関して、広域系統運用機関の設立や全行程の見通しを含む第一段階 の法案が2013年秋の臨時国会に再提出され、成立しました。

  現在、自然エネルギー政策の中心となっている固定価格買取制度(FIT制度)については、多くのペー

ジを割いて詳細に取り上げています。実際に、日本で2012年7月に開始された本制度の設備認定の実績


は、2014年2月末現在で4000万kWを超えていますが、この設備容量は日本国内で1990年以降20年以 上かけて導入されてきた自然エネルギーの発電設備の容量1300万kWの約3倍以上に達しています。た だし、この設備認定の約94%は太陽光発電が占めており、特にメガソーラー(1000kW以上の太陽光

発電)が全設備容量の約50%を占めるという偏った状況になっています。なお、自然エネルギー白書 2014の中では、2013年12月末までのデータが示されています。FIT制度については、自然エネルギー の普及成果を評価すると共に、様々な課題や改善すべき点を数多く指摘しています。

  本レポートのメインテーマになっている「コミュニティパワー」についても多くのページを割いて います。自然エネルギーの重要性に気がついた全国の自治体では、各地域での自然エネルギーの導入

拡大のための検討を始めており、そのための戦略や体制づくりをおこなっています。特に東北での震

災復興において、この自然エネルギー活用への期待は非常に大きく、様々な取組みが始まっていま す。その中で、地域が主体となって自然エネルギーに取組むための「コミュニティパワー」という枠組 みが注目されているのです。これまでISEPが支援を行ってきた地域を図2に示します。

図2:日本全国のコミュニティパワーへの取組み(ISEP作成)  第3章では、日本の自然エネルギー・トレンドを豊富なグラフを使って紹介しています。日本の2012

年度末の自然エネルギーによる発電設備の累積設備容量の推計は1700万kWに達しています。この中で 太陽光発電と風力発電とを合わせた設備容量が全設備容量の6割近くとなり、地熱発電、小水力発電 (最大出力1万kW以下)とバイオマス発電(廃棄物発電を含む)とを合わせた設備容量を超えていま

す。自然エネルギーによる発電量(大規模水力を除く)は、2012年度の時点で日本全体の発電量の約4% に達しています。

  第4章では、自然エネルギー100%目指す様々な長期シナリオなどを紹介しています。ISEPを始めと

して、WWFジャパンなど国内の幾つかの環境NGOは、長期的に自然エネルギー100%を目指すシナリ オを発表しています。

  第5章では、地域の自然エネルギー導入実績と導入ポテンシャルを示しています。エネルギー永続地 帯は、市町村や都道府県毎の自然エネルギー導入割合を毎年試算しており、「永続地帯2013年版報告 書」での2011年度の試算を中心に紹介しています。導入ポテンシャルについては、環境省による全国

的な調査と共に、風力などの業界毎の調査も紹介しています。最後の第6章は、自然エネルギー政策に 対する政策提言で、毎年、少しずつですが進展が見られます。


■ 2013年度の自治体自然エネルギー政策 山下 紀明(ISEP主任研究員) ■ 国内自治体の概況

  国のエネルギー政策の方針が定まらないなかで、自治体独自のエネルギー政策および自然エネル ギー政策策定の動きが進められてます。2013年度に進展が確認できた都道府県および政令指定都市の 自治体の動向の主なものをまとめます。   都道府県では、地球温暖化実行計画の改訂や新エネルギービジョンの改訂に加え、エネルギーに関 する戦略を独自に定めるところも増えています。たとえば、滋賀県は2013年3月に「滋賀県再生可能 エネルギー振興戦略プラン」を策定し、2030年時点で自然エネルギーの設備容量を19.3倍とし、自然 エネルギーによる電力供給を10%とする目標量を定めています。京都府は「京都エコ・エネルギー戦 略」を2013年5月に公表し、「エネルギー自給・京都」の実現に向けてICTの活用による省エネや自然 エネルギーの最大限の導入などを含めた基本方針を示しました。   政令指定都市でも、独自のエネルギーに関する計画の策定が見られます。たとえば、さいたま市 は、2013年3月に「さいたま市エネルギー・スマート活用ビジョン  ∼新エネルギー政策∼」を公表 し、2020年に省エネルギーと自然エネルギーや未利用エネルギーなどにより20%のエネルギー転換を 目指すことを定めました。また堺市は2013年11月に「堺市地域エネルギー施策方針」を公表し、目標 年の2020年には太陽光発電を2010年比5倍にするなどの見込みを示しました。   その他にも自治体独自のプログラムは進んでいます。東京都は自宅の太陽エネルギーポテンシャル をインターネットの地図ソフト上で見ることのできるソーラー屋根台帳を開発し、2014年3月に公開 しました。

■ 自然エネルギー関連条例の制定

  長野県飯田市をはじめ、基礎自治体による自然エネルギー関連の条例が次々と策定されています。 とくに3.11以降はコミュニティパワーの三原則の考え方を取り入れた理念条例が増えています。   自然エネルギーに関連した条例の制定は3.11以前にもわずかながら見られましたが、基礎自治体に おいて自然エネルギーを政策上の重要項目として位置づけていた自治体は稀でした。都道府県では北 海道省エネルギー・新エネルギー促進条例(2001年施行)、宮城県自然エネルギー等・省エネルギー 促進条例(2002年施行)などがあり、他にも岩手県、大分県、佐賀県なども同様の条例を定めていま した。   3.11以降に自然エネルギーに関わる条例のうち、自然エネルギーを中心とした基本条例や促進のた めの条例を当研究所で把握しているものを表にまとめました。   これらの条例のうち、もっとも先進的な条例は「飯田市再生可能エネルギー導入による持続的な地 域づくりに関する条例」と言えます。地域の主体による自然エネルギー事業立上げを行いやすくする ための様々な工夫が組み込まれています。具体的には、地域環境権の制定、自然エネルギー事業の利 益の一部を地域の課題解決に役立てる仕組みの導入、公共施設の屋根貸しの本来目的化(目的外使用 でなく公益に貢献する本来目的とする)、公益的な地域自然エネルギー事業に対する無料の助言や初 期の調査費用の無利子貸し付け、事業の認定による資金調達を容易とする仕組みなどが盛り込まれて います。こうした制度が成立した背景には、当研究所も支援を行ってきたおひさま進歩エネルギー株 式会社の市民出資型太陽光発電事業の10年近くの取組みがあります。市との協働の中で、主体の信頼 性や資金調達に関する具体的な解決すべき課題が明確になっており、その解決のための条例検討がな されています。飯田市の条例は、実践と制度の好循環の好例と言えます。   こうした先進事例を受け、現在条例の検討を進めている地域は多くあります。ISEPが支援をしてい る兵庫県宝塚市では再生可能エネルギー推進審議会において、自然エネルギー推進の取組みを継続的 に推進するために条例を策定するための議論を行っています。


■ 自治体自然エネルギー関連施策の現状

  基礎自治体の自然エネルギーへの取組みは先進的なものもありますが、多くの地域ではいまだ発展 途上です。2013年2月から3月にかけて行われた千葉大学大学院人文社会科学研究科倉阪研究室による 「市町村における再生可能エネルギー政策調査結果について(概要)」は東京23区を含む1741市区町 村を対象として自然エネルギー政策の現状を尋ねたアンケート結果をまとめています。回答数は1055 であり、回答率は60.6%です。以下では、同調査の結果を参考に、自治体の現状について述べます。   自然エネルギー導入目標値を設定している市区町村は216(回答数の20.5%)です。人口規模の小さ い市区町村ほど目標値を設定しておらず、人口5千人未満の自治体では目標値を設定しているのは6.3% にとどまっています。   自然エネルギーに関する各種支援制度については補助金が73.5%と最も多く、その大半が住宅用太 陽光に助成を行っています。太陽熱やバイオマス熱利用に補助をしている自治体もありますが、全市区 町村の1割にも達していません。一方で、条例やゾーニングといった制度を持つ自治体は30程度で、自 然エネルギーを総合的に進めるための仕組みづくりはいまだ多くはない状況です。また固定価格買取 制度をきっかけとして、民有地のあっせんや公有地貸出し、屋根貸しのあっせんが増えています。   自然エネルギー担当部署の職員体制は弱いままです。兼任職員2名以下(専任職員も兼任職員もいな い、兼任職員1名、兼任職員2名)の自治体が回答市町村の61.6%を占めていて、大半の自治体におい ては少数の担当者しか配置していないことがわかります。   調査全体からは、日本の多くの自治体における自然エネルギー政策や推進体制は発展の余地を大き く残していることが伺えます。総合的かつ積極的な取組みを進める自治体がいまだ少数ではあるもの の増えており、そうした自治体の事例を共有していくことに大きな意義がります。

条例の名称 都道府県名 日南町再生可能エネルギー利用促進条例 鳥取県 榛東村自然エネルギーの推進等に関する条例 群馬県 大阪市再生可能エネルギーの導入等による低炭素社会 大阪府 の構築に関する条例 鎌倉市省エネルギー推進及び再生可能エネルギー導入 神奈川県 促進に関する条例 唐津市再生可能エネルギーの導入等による炭素社会づ 佐賀県 くりの推進に関する条例 湖南市地域自然エネルギー基本条例 滋賀県 新城市省エネルギー及び再生可能エネルギー推進条例 愛知県 土佐清水市再生可能エネルギー基本条例 高知県 東神楽町再生可能エネルギー推進条例 北海道 飯田市再生可能エネルギー導入による持続的な地域づ 長野県 くりに関する条例 洲本市地域再生可能エネルギー活用推進条例 兵庫県 中之条町再生可能エネルギー推進条例 群馬県 多治見市再生可能エネルギー普及を促進する条例 岐阜県 設楽町省エネルギー及び再生可能エネルギー基本条例 愛知県

表 自然エネルギーの促進に関連する主な条例(施行順)

施行時期 年 月施行 年 月施行 年 月施行 年 月施行 年 月施行 年 月施行 年 月施行 年 月 年 月施行 年 月施行 年 年 年 年

月施行 月施行 月施行 月施行


■ 閣議決定!?「エネルギー基本計画」は白紙撤回し、ゼロから出直すべき 松原弘直 (ISEP主席研究員)  2014年4月11日に閣議決定された「エネルギー基本計画」は、「5つの大罪」とも言うべき根源的

な過ちを犯しており、けっして認められるものではありません。「エネルギー基本計画」は白紙撤回 し、ゼロから出直すことを求める提言をISEPとして同日に発表しています。この政府が閣議決定した 「エネルギー基本計画」の「五つの大罪」と言うべき5つの根本的な問題点を以下に示します。

【問題点1】 「脱原発」の公約違反 自民党も公明党も、2012年暮れの衆議院選挙では「原発依存度の低下」(自民党)や「脱原発」(公 明党)といずれも脱原発ないしは原発依存度の低下を訴えて政権復帰を果たしている。しかしながら、 閣議決定された「エネルギー基本計画」は、全く逆に原発維持・推進を前面に出しており、明白な公 約違反である。 【問題点2】 福島第一原発事故からの反省・教訓がゼロ 閣議決定された「エネルギー基本計画」での与党内協議の過程で、序文に掲載されていた「福島原発 事故への反省」がいったん削除されたのちに、部分的に記述が戻された。そうした「言葉遊び」がど うあったとしても、現実として、福島原発事故調査は早々に打ち切られた。また、基本計画全体をとお して、汚染水の漏えいや原発避難者など今なお続く福島原発事故への真摯な反省やそこから教訓は実質 的に認められない。 【問題点3】 国民の意思を無視し踏みにじる 脱原発を支持する国民の意思を無視している。2030年における原発比率の選択肢(ゼロ、15%、20∼ 25%)とその背景・データなどの情報を示した上で、全国11ヶ所で意見聴取会を開催し、パブリック コメント、討論型世論調査を行うなど、前政権下における従来にはない開かれた国民参加型のプロセ スを通して民意が示されている。前政権下で閣議決定された「革新的エネルギー・環境戦略」は棄却 するとしても、その前提となった民意を無視し踏みにじることはできない。 【問題点4】 「基本計画」に値しないデタラメな内容  そもそも内容が福島第一原発事故後に明らかになったさまざまな事実や知見をまったく反映してい ないばかりか、まるで福島第一原発事故が無かったかのような書きぶりである。311前に横行して いた原発の安全神話、安価神話、安定供給神話に舞い戻ったばかりか、核不拡散の観点から国際的に も疑問視されており、実態として完全に破たんしている高速増殖原型炉もんじゅや六カ所再処理工場な ど核燃料サイクルの維持を打ち出し、全般にデタラメな内容が多く、「基本計画」の名に値しない。 【問題点5】 未来への無責任 今、世界全体は、大規模・中央集中・独占型の体制から、小規模・地域分権・ネットワーク型への大 きな体制変化が起きつつある。そうした中で、その原動力になっている再生可能エネルギーの目標値 を見送るなど、再び「過去に逆走」するかのようなエネルギー基本計画は、日本の未来にとってあま りに無責任である。 ISEPでは、政府が閣議決定した「エネルギー基本計画」の根本的な問題点を指摘すると共に、その構 造的欠陥を踏まえて、現実的で本来あるべきエネルギー政策の方向性を提言しています。その提言の要 旨は次のとおりです(図1参照)。


図1:「エネルギー基本計画」の構造的欠陥 (1) 安倍内閣が閣議決定した新しい「エネルギー基本計画」の問題点を提起し、その構造的欠陥を踏ま え、現実的で本来あるべきエネルギー政策の方向性を提言する。 (2) エネルギー政策決定のガバナンス再構築を∼福島原発事故から何を学んだのか? • 3.11までのエネルギー政策を主導し、福島第一原発事故の政治的・社会的・道義的責任を問わ れるべき省庁・官僚人事を改めた上で、新たなエネルギー政策検討の議題設定や、横断的な検 討の場の設定が必要。 • 国民参加型の議論を可能にするプロセスの再構築が必要 (3) 「リアリティと危機感」の欠落を見直す∼今なお続く福島原発事故の危機を見据えて • 福島第一原発事故の原因を究明した上で、規制基準を再検討すること。事故原因の多くは置き 去りにされたままであり、国と地方自治体の原子力防災体制も、何ら改善されていない。 • 福島原発事故を踏まえた、原子力損害賠償基準の見直しが必須。想定されうる損害額に対し て、原子力事業者が無限責任を負うための保険や積立によって有意の費用措置が必要(最低限、 福島第一原発事故の損害額を踏まえて十兆円以上) • 持続可能で公正な「ポスト東電体制」として、国民負担を最小化し、原発事故収束を成し遂 げ、損害賠償や電力供給を安定的に行うために、東京電力を法的整理して、それらの役割ごと に「三分割」する。併せて、高速増殖原型炉もんじゅと六カ所再処理工場の廃止措置 (4) 混乱・混沌の「今」から「原発ゼロ」の未来へ∼「移行管理」の不在 • 再稼動を議論できる段階ではなく、「移行管理」(トランジション・マネジメント)の方針を示 し、「原発ゼロ」の未来を示す。 • 「原発稼働ゼロ」の状況における電力需給対策として、この2年半以上の経験やノウハウを踏 まえ、いっそうの節電・省エネルギーの深掘りを前提に、エネルギー需要のスマートな管理、 再生可能エネルギー導入の加速化を進める。 • 化石燃料のコスト負担低減策として、省エネルギー、再生可能エネルギー普及を本格的にエネ ルギー政策の中心とする。原発の再稼働を前提とした場合の社会全体へのリスクとコスト負担 は膨大である(原発は、安定供給性や効率性を有しておらず、運転コストは低廉ではなく、エネ ルギー需給構造の安定性や温室効果ガスの削減に寄与しない)。 (5) 持続可能なエネルギー社会像(ビジョン)を描く ● 詳しくは、「ブリーフィングペーパー『新しいエネルギー基本計画の問題点』(PDF)」を参照


■ 気候変動問題: 「低炭素エネルギー」から「持続可能エネルギー」への転換を 松原弘直 (ISEP主席研究員) 日本国内でも異常高温やゲリラ豪雨などが頻発し、海外においても干ばつや洪水など様々な異常気

象が数多く報じられています。これらの異常気象の頻度の増加は、長期的には地球規模の気候変動につ ながることが科学的にも予測され、その原因についても人類の活動等により排出される大気中の温室効 果ガスの増加がもたらす大気や海水の温度上昇であることが明白になって来ています。一方、この温室

効果ガス、中でも大きな割合を占めるエネルギー供給を起源とする二酸化炭素(CO2)の排出量は、新興

国を中心に世界的に増え続けています。これまでの気候変動に関する国際条約に基づく「京都議定書」 の第1約束期間が2012年に終わり、新たな枠組みの策定が毎年年末に開催される国際会議(COP)でも検

討されていますが、2020年の中期目標やその先の2030年、2050年の排出量の削減目標を国別に定める ことは各国の思惑もあり容易ではありません。日本は原発の停止を理由に、それまでの2020年25%削

減(1990年比)の目標を3.8%削減(2005年比)にまで後退させました。地球全体の大気の平均気温の上昇 を2℃未満に抑えるには、2050年までに世界全体の排出量を現在の半分以下にする必要があると言われ ていますが、先進国では7割以上の削減が必要といわれています。

この様な気候変動に関する科学的な根拠や影響、緩和策などを科学的に評価するIPCC(気候変動に

関する政府間パネル)が7年ぶりに発表した第5次評価報告書のうち、昨年9月の第1作業部会報告書「自 然科学的根拠」[1]、今年3月の第2作業部会報告書「影響・適応・脆弱性」[2]に続き、第3作業部会報

告書「気候変動の緩和」が4月13日に発表されました。すでに気候変動の自然科学的根拠は明白であ り、人為的な温室効果ガスが原因となり人類は気候変動の影響を受け始めており、明らかになってきた

脆弱性に対しては適応策が必要な状況となってきています。今回発表されたこの「気候変動の緩和」[3] を受け、環境エネルギー政策研究所(ISEP)として以下の声明を発表しました。 (1)

【危機感への同意】IPCCのこれらの報告書は、気候変動への脅威への危機感を示し、その対

応が急務であることを明確に示している。日本政府や地方自治体は、これらの報告書の趣旨に基づき、 地球温暖化対策の目標を明確にした上で、その政策を根本的に見直す必要がある。 (2)

【低炭素エネルギーから持続可能エネルギーへ】気候変動の原因となっている温室効果ガスの

排出削減には、エネルギー供給システムへの根本的な対応が必要であることは論を待たない。しかし、

民主的で地域自立を促す唯一の持続可能なエネルギー源であり、しかも近年爆発的に普及している自然

エネルギーと、持続可能ではなく非民主的な原子力発電や事実上は石炭火力免罪符となっているCCSを 「低炭素エネルギー」として同列に並べることは認められない。 (3)

【シナリオの現実性を損なう】排出削減対策として挙げられている原子力発電には、重大なリ

スク(過酷事故、核廃棄物、核拡散など)があることが福島原発事故で明確になっており、二酸化炭素回

収・貯留(CCS)は実現がいまだ困難な巨大技術である。その投資リスクと非民主性から現実的には進ま ず、また進めるべきではないエネルギーであり、報告書の「シナリオ」どおりには、けっして進まない であろう。 (4)

【自然エネルギー100%シナリオへ】環境エネルギー政策研究所では、唯一持続可能なエネル

ギー源である自然エネルギーについて様々な地域で100%を目指す取組みを支援し、拡大する国際キャ ンペーン「自然エネルギー100%世界キャンペーン」[4]の創設パートナーとなり、様々な活動に取り組


んでいる。すでに県レベルで自然エネルギー100%を目指している福島県や長野県をはじめ、全国各地 で地域が主体となった自然エネルギーへの取組み「コミュニティパワー」が広がりを見せている。

今回発表されたIPCCの第5次評価報告書「気候変動の緩和」では、気候変動の原因となっている温

室効果ガス排出の抑制・削減のための政策が評価され、基礎となる排出シナリオの分析や経済的評価が

行われています。これまでの40年間で排出された温室効果ガスのうち78%が化石燃料を起源とする二酸

化炭素(CO2)が占めており、石炭の使用量の増加と共に、経済成長と人口増加が最も重要な推進力と なってきています。このまま追加的な緩和策のないベースラインシナリオでは、今世紀末(2100年)にお ける世界平均地上気温が、産業革命前と比べ最大8度まで上昇する可能性があると指摘されています。

  評価されたシナリオの中で、今世紀末の2100年において大気中の温室効果ガス濃度がCO2換算で

約450ppmになる緩和シナリオであれば気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えられる可能性が 高いと言われています。この緩和シナリオを実現するには、エネルギーシステムと潜在的な土地利用を 大規模に変化させることを通して、2010年と比べて世界の温室効果ガス排出量を2050年には40∼70% にする必要があり、2100年にはほぼゼロ又はマイナスに至る必要があると指摘されています。

そのための根本的な対策として自然エネルギーなどのゼロカーボン及び低炭素エネルギーの供給比

率を2050年までに2010年の3倍から4倍近くにする必要があると指摘されています。しかし、原子力エ

ネルギーについては、発電シェアが1993年以降低下しており、福島原発事故や使用済核燃料などによ り各種の障壁やリスクが存在することがすでに指摘されています。化石燃料による火力発電について

は、掘削と供給に伴う温室効果ガス漏出が小さいことを前提に天然ガスを「つなぎ」として利用する必 要がありますが、二酸化炭素回収・貯留(CCS)についてはその安全性や経済性に多くの懸念がありま す。

【参考資料】

[1] IPCC第5次評価報告書「自然科学的根拠」

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17176 [2] IPCC第5次評価報告書「影響・適応・脆弱性」

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17966

[3] IPCC第5次評価報告書「気候変動の緩和」

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18040 [4] 自然エネルギー100%世界キャンペーン  http://www.isep.or.jp/news/5933


■ 研究会等の報告 道満治彦(ISEPリサーチアシスタント)

● 国会エネルギー調査会(準備会)

 「国会エネルギー調査会(準備会)」は、国会にエネルギー政策見直しを議論する場がないことを 問題視し、「国会エネルギー調査会準備会有識者チーム」(第20回から基本問題委員会自主的分科会 より改称)と、超党派議員連盟の「原発ゼロの会」の協働により自主的に継続開催しています。  国会エネルギー調査会準備会有識者チームは、環境・エネルギー政策や原子力政策に知見や専門性 を有する有識者で構成されており、座長を植田和弘京都大学教授、事務局長を飯田哲也ISEP所長、事 務局を環境エネルギー政策研究所が務めています。  一方で、「原発ゼロの会」には、現在10党・無所属の国会議員64名が参加しており、共同代表に河 野太郎衆議院議員(自民党)と近藤昭一衆議院議員(民主党)、事務局長に阿部知子衆議院議員(無 所属)が就任しています。昨年発表した政策提言骨子や原発危険度ランキングに基づき、原発ゼロ/ 廃炉促進や廃炉に伴う立地自治体支援のための法案も準備中です。  「国会エネルギー調査会(準備会)」でこれまで扱ってきたテーマはタイムリーかつ、非常に重要 なものが大半で、さらに多岐にわたります。具体的には、エネルギー基本計画と国民的議論の問題 (第4、9、31、33∼35回など)、電力需給問題(第1、2、16回など)、原子炉の安全性と対策(第 5、11、13、19、21、36回など)、電気料金値上げ問題(第16、20回など)、電力会社の経営問題 (第20、24、32回など)、汚染水問題(第28∼30回)、原発と避難計画(第17、18、39回)電力シ ステム改革(第6、22回)、再生可能エネルギー促進政策の課題(第38、39回)などです。  第36回(2014年3月6日)では、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から3年を迎えるにあた り、福島第一原発事故の原因究明をテーマに開催しました。事故の直接的原因究明は、エネルギー基 本計画や原発再稼働方針、規制基準のあり方など多くの課題にも関連するテーマです。「事故の主因 を津波のみに限定すべきでない」、「安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言え ない」と結論付けた国会事故調委員の田中三彦氏や、当事者でもある東京電力(株)、規制当局であ る原子力規制庁も参加し、国会議員・有識者で議論を深めました。  このように、政治と有識者が「ユニークな形」で協働し、さらに役所などに答弁を求めて議論を深 めることができると言う公論形成の場が国会エネルギー調査会(準備会)の一つの利点だと言えま す。今原子力推進派で固められてしまっている政府の審議会や議会に対して、現在国会の中で唯一、一 石を投じる役目も担っています。 資料・映像の公開:http://www.isep.or.jp/library/5024 


● 福島から問い直すエネルギー戦略のための連続学習討論会

 福島から問い直すエネルギー戦略のための連続学習討論会(福島エネ戦)は、311直後から福島県 民の立場からさまざまな活動や提言をしてきた「ふくしま会議」と、国策や電力会社の政策を問い直し てきた「大阪府市エネルギー戦略会議の元委員有志」が協力して開催している研究会です。

 国のエネルギー基本計画が福島の反省も教訓もないかたちで強引に進められていく今、福島の視点か ら原子力・エネルギー政策を問い直すことが、あらためて必要とされています。福島で復興やコミュニ

ティパワーを議論する過程で、もっとも重要な要素となる、損害賠償や除染、被ばく、健康影響といっ た問題群に関する、集中的な連続学習討論会を公開で開催しています。この学習討論会を通じて、福島

の皆さんをはじめとする多くの方々の関心を高めると同時に、より幅広い研究者、有識者を巻き込んで チーム形成をしてゆくことを狙いとしています。

 第1回学習討論会は「原発賠償と福島の復興」をテーマにして、4月27日(日)、福島市で開催され

ました。除本理史氏(大阪市立大学教授)と藤本典嗣氏(福島大学准教授)からそれぞれご講演いただ

き、議論を行いました。除本氏からは、福島第一原発事故の被害補償は「加害者主導」の賠償が行われ ている、福島第一原発事故には「被害者の分断」や「賠償支援機構による加害企業救済」のように水俣 病などの公害問題の構図と類似点が見られるなどの指摘がされました。藤本氏からは地域経済学の観点 から、福島第一原発事故の復興・復旧について定量的な言及がなされました。

 第2回学習討論会は「被ばく健康影響とモニタリング」と「汚染・被ばく関係」をテーマにして、5月 20日(日)、郡山市で開催されました。西尾正道氏(北海道がんセンター名誉院長)、吉田孝司氏

(医師・医療評論家(福島県民の健康長寿を本気で考える会代表))、野口邦和氏(日本大学准教授) にそれぞれご講演いただきました。西尾氏からは、鼻血問題に関しては、ホットパーティクル(放射能

を持つ微粒子)が鼻の中のキーゼルバッハ部分にあたることで容易に鼻血が起き得ることが指摘されま した。また、国際放射能防護委員会(ICRP)に対する批判や内部被曝の問題にも言及が及びました。

吉田氏からは、福島県県民健康調査に関する国や福島県、福島県立医大の姿勢や体制に対して批判がな

されました。野口氏からは放射線被爆と汚染問題について言及があり、同時に本宮市と二本松市での除 染活動による線量の変化についても指摘がなされました。西尾氏と野口氏では、美味しんぼの「鼻血問 題」に対して、大きく議論が分かれましたが、3氏ともに共通した指摘としては、十分な調査がなされ ておらず、また情報公開も不十分だと言うことでした。

 次回は6月末に郡山市で、避難と除染と帰還に関する政策のあり方と復興計画をテーマに第3回連続

学習討論会を開催する予定です。10月末に福島県知事選挙をむかえる中で、その政策のベースとなるべ き、福島県民主体の復興と生活再建、およびエネルギーのあり方について提言を準備する予定です。


■ ひろがる地域エネルギー事業 市民活動をサポートする行政の新スタイル ‒ 宝塚市新エネルギー推進課 ■ 活動のきっかけと事業概要

福島第一原発事故を受けて、中川智子宝塚市長は国や電力事業者にこれまでの原発推進を見直すよう

に要請するなど、積極的に行動を起こしてきました。一連の動きの中で、市としても原発に頼らないエ ネルギー自給をめざす部署として新たに設置されたのが、新エネルギー推進課(2012年4月設立)で す。中川市長は、地方自治体が自然エネルギーを推進するために取り組むべきことなどを環境エネル

ギー政策研究所(ISEP)所長・飯田哲也さんにアドバイスを求めました。そのことをきっかけとし て、新エネルギー推進課の設置やISEPと自然エネルギー導入推進のための包括委託契約を結ぶことに なります。

行政が単独でプロジェクトを進めるのではなく、市民参加を重視するISEPの助言のもと、まずは人

が集まり、取り組みをはじめる「場」を作ることから取り掛かりました。2012年度上半期には飯田さ

んと市長の公開対談、3週に渡る連続セミナー、また、下半期には、懇談会を3回実施し、のべ625人

の参加者が、自然エネルギーを学び、地域にとってどのように自然エネルギーを増やしていくべきかに ついて語り合いました。その集まりが、市民や事業者、NPOなどをつなぐ場として発展し、市民発電 所稼働への後押しになりました。また、懇談会の最終回には、参加者から1年間の場づくりに対して、 賛辞や感謝の意を伝える発言が相次ぎました。

また、新エネルギー推進課はネットワークの輪を広めるために自治体の課単独としては全国でも珍

しいFacebookページを開設、また、勉強会の開催や先進地視察なども積極的に実施しています。

2013年7月には、議会の承認を得て2,520万円からなる「再生可能エネルギー基金」を創設。公共施

設への太陽光発電の導入や、市民と連携した発電所づくりに向けた調査、検討を進めています。

■ 特徴

宝塚市としては、小学校の屋根に設置した出力19kWの太陽光パネルが2013年3月から学校発電所と

して売電を開始していますが、新エネルギー推進課が主体となってできた発電設備は2013年10月現在 ありません。

 しかし、宝塚市では、そもそものコンセプトとして、地方自治体が事業主体になるのではなく、市民 や事業者、NPOの活動を支えるという姿勢が徹底されています。


全国では、地方自治体が主体となって自然エネルギーのプロジェクトを手がけるケースは数多くあり ますが、その大半は国や県からの補助金頼りの事業になっています。宝塚市新エネルギー推進課は「補

助金に頼らない自然エネルギー推進」を選択したという点で、自治体の新しいモデルケースになる可能 性があります。

  そして、新エネルギー推進課設置と時を同じくして誕生したのが、「NPO法人新エネルギーをすす

める宝塚の会(REPT)」です。「すすめる」は「進める」「薦める」「勧める」などの想いが入って

いて、REPTの前身となる団体が提出した「自然エネルギーによるまちづくり」の請願は、市議会で採 択されています。

  REPTは、2012年12月に手作りで太陽光パネルを設置し、2013年1月に市民発電所「宝塚すみれ発

電所第1号」(出力11,16kw)を稼働させました。そして、2013年11月には、更に出力の大きな2号機 (47.88kW)を設置し、11月16日に多くの市民が参加して点灯式をおこないました。

■ キーパーソンからのメッセージ/政処剛史さん(宝塚市新エネルギー推進課課長)

「新エネルギー推進課を設置する際、最小限のスタッフと予算に対 する議会から受けた反対討論や、課の設置当初、市民の方へ課のビ ジョンを明確に示せなかった時の失笑などの記憶は現在でも頭から

離れることはありません。庁内の仲間からでさえ「3人で何する

ん?」「市で何ができるん?」など冷やかされたりすることさえあ りました。

しかし、私たちの仕事の基本である「市民のため」というキーワー

ドを念仏のように唱え、市民のために何ができるか模索している中 で、ISEPスタッフと事業を進める機会を得ました。彼らは、セミ

ナーなどで参加者に自然エネルギーの可能性を説き、懇談会の場が 地域における合意形成の場になることを説いていきました。それら

の場づくりが市民発電所という形に発展していったことは、実践された方々のご尽力の賜物ですが、

ISEPスタッフが、率先して地域に入り、協働で進めようとしていることを体感し、啓発により最も 『良い影響』を受けたのは新エネルギー推進課スタッフであることを1年超経過し、ようやく私自身が 気づき始めています。

地域に根ざした事業展開は、まだまだこれからですが、市民や事業者、NPO、行政が協働で進めてい くことの可能性もまだまだ秘めていると思っています。」

地域に自然エネルギーを普及するにあたって、行政と市民、事業者、NPOなどが、それぞれの特徴

を活かし、役割分担をしながら、地域全体で自然エネルギー普及に取り組んでいくことは、出力規模 以上に大きな価値があるはずです。

  今後は基金が創設されたこともあり、新エネルギー推進課がサポートする事業がさらに展開する可 能性がより広がりました。持続可能な地域をつくるためにどのような方法を取るのか、地方自治体とし て自然エネルギーを導入推進していくための取り組みは続きます。

● お問い合わせ

〒665-8665 宝塚市東洋町1番1号 3階 TEL: 0797-77-2361 FAX: 0797-71-1159

(取材・記事:高橋真樹)

✴「NPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会(REPT)は2013年12月に非営利型株式会社宝塚す みれ発電を設立しました。


■ ひろがる地域エネルギー事業 収益を新たなエネルギープロジェクトに投資!

               調布未来(あす)のエネルギー協議会/調布まちなか発電 ■ 活動のきっかけと概要

東京都調布市では、地域の人々が中心となって立ち上げた事業会社「調布まちなか発電」が、2013年11 月に市と協定をむすび、公共施設の屋根を利用した太陽光発電事業を着々とすすめています。東京の西に位 置する調布市は、人口約22万人のベッドタウンとして知られる都市です。多摩電力のある多摩市と都心部と の間にあり、条件的にも、多摩市と似ています。都市部で自然エネルギー事業をすすめるとしたら、土地が 限られていたり、太陽光発電しかできないという制約があったりというデメリットがあります。そのような 中で、調布ではどのような事業を実現しようとしているのでしょうか?   調布の活動は、2012年4月に中心メンバーの小峯充史さんが、調布青年会議所や一緒にまちづくり活動を おこなってきた仲間たちに声をかけ、持続可能な地域をつくるためのグループをスタートさせたことがきっ かけとなっています。小峯さんは、かつてサラリーマンをしていましたが、調布を拠点に起業しようと学ん でいく過程で、まちづくりや青年会議所と関わるようになります。そこで環境教育などに携わるうちに、化 石燃料の問題や、環境への意識が広がっていったといいます。   小峯さんは本格的に事業に取り組むため、2012年6月に会社を退職。現在の協議会活動の事務局も担う株 式会社エコロミを立ち上げました。エコロミを受け皿に環境省に事業の申請を行い、8月に平成24年度環境 省「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」に採択されています。それを受けて、実際に地域に広 げていくためのプラットフォームとして一般社団法人調布未来のエネルギー協議会が発足しました。協議会 には、事業者、NPO、自治体や地元の金融機関などが幅広く参加し、毎月の会合で、地域のための事業をど う進めていくかについて協議を重ねました。協議会では地域に利益を還元していく方針が決まり、それを実 現するため、2013年5月に「調布まちなか発電非営利型株式会社」が設立されました。調布まちなか発電 は、協議会の方針のもとで行動する企業という位置づけになっています。2013年11月には調布市と協定を 結び、調布市内の公共施設に、合わせて約1メガワット弱(一般家庭約300世帯分)の太陽光発電設備の設 置を開始。2014年4月にはすべての設備が稼働する予定になっています。

■ 特徴は、収益を地域還元するこだわり 調布まちなか発電は「非営利型株式会社」という法人形態で設立されました。非営利型株式会社とは、事 業の収益を経営者や株主ではなく、地域活動や公的なものに還元していくことを定款で定めた株式会社で す。この法人形態は、協議会に集まった人々の「発電事業をするだけでなく、その先の地域づくりにつなげ ていこう」という思いを実現させるひとつの方法として採用されました。協議会の中心メンバーは、地元の 青年会議所に参加していたまちづくりを進める青年経済人たち。彼らが、ビジネスの感覚をまちづくりに活 かしているのです。   収益の地域への還元方法は、大きく4つあります。1つ目は、設備を設置した公共施設で「電力の見える 化」を実現することです。まずは施設で使用されている電力を測定し、データを誰でも見えるようモニター に表示します。でもそれだけでは、単に画面を見て使用量がわかるということにすぎません。そこで終わり ではなく、得られたデータを基に、具体的なエネルギーの削減案を検討し、売電収益やESCO事業の手法 を使って設備の交換などを進めていくとしています。「電力の見える化」は、ただ見えるようにすれば良い のではなく、このように具体的な行動につなげていくのが大切です。最近は、電力モニターを設置する家庭 が増えていますが、実際にはしばらくすると飽きて見なくなってしまうという例も多いようです。その点、 調布の実践的な取り組みに期待したいと思います。2つ目としては、売電収益が大きくなったら、市のエネ ルギー事情の大幅な改善に向けたスマートグリッドの調査、研究費を寄付するというものです。家庭や公共 施設など、ひとつひとつの建物単独でできることは限られています。ある程度の規模でエネルギー効率を改


善しようとすれば、一軒ではなく地域全体で考える必要があります。これは、そのための投資をしていこうと いう試みです。3つ目は「緑の保全基金」への寄付です。調布市は、東京の中では緑豊かな環境が残されてい る方ですが、そうした場所がどんどん減っていっています。そのため、地域の財産である緑地を守ることをめ ざします。4つ目はエネルギーに関する相談窓口の設置です。太陽光に限らず、熱利用、省エネ、蓄電など、 エネルギーに関して市民の方々へ第三者的にアドバイスできる仕組みを作るとしています。   小峯さんは、事業計画の中で地域への還元方法が最も気を使ったと語ります。さまざまな議論を積み重 ね、本当にこの地域に必要なものは何かと考え、行きついたのがこの4つのプロジェクトでした。悩ましい のは、都市部なのでどんどん発電設備を増やしていくわけにはいかないという部分です。そこで1つ目の取り 組みように、売電収益などで施設を省エネ化していくという新しい方法を考え出したのです。これらの取り組 みは、住宅地ならどこでも実施できるため、「調布モデル」が他の地域に広がる可能性も高いでしょう。

■ 設置設備と今後の展望 2014年2月時点で、調布まちなか発電は公共施設での分散型メガソーラー(合計33カ所に、926キロワッ トの出力)の設置をすすめています。事業資金については全額を地域の金融機関からの融資で調達していま す。発電した電力は東京電力に売電されますが、停電時には施設に電源供給できるようになっています。ま た、協議会では2014年春にまちなか発電とは別の事業会社を立ち上げ、民間施設での太陽光発電事業を具体 化させていく計画を立てています。現状は、最初の事業を安定化させることに重点を置き、その実績をもと に今後も取り組みを拡大させていく方針です。また、一般市民にはまだまだ認知されていないので、設備設置 とともに、啓発活動も進めていく予定です。将来は、都市部のエネルギー事業者として、大量に出る食品残さ などを活用したバイオマス事業なども検討する予定です。

■ キーパーソンからのメッセージ/小峯充史さん(調布未来のエネルギー協議会会長) 「この仕事をはじめて、サラリーマン時代には経験なかった多彩な人 たちと数多く出会い、いつも刺激をもらっています。日頃は多摩地域の ごく普通のマンションの一室で仕事をしているのですが、こんなところ から時代の最先端の仕事をしているように思うときがあります。 普通のサラリーマンだった私が行動を起こした理由は、「後の世に、 きれいな姿で地域を残したい」ということでした。また、未来に変な 毒物を残したくないという思いもありました。ただ、環境とか自然エ ネルギーを自分が生業にするなんて、2年前まで考えもしませんでし た。そもそもこのような仕事で食べていけるとは思っていなかったの で…。でもまちづくりを通じて知り合った仲間やネットワークが、私 をサポートしてくれました。今はビジネスで得た経験と手法を、まちづ くりのために活かそうとみんなで取り組んでいるところです。調布でできる取り組みはすべて、全国の都市部 でもできることです。とはいえ、私たちが他の地域に出かけていって同じ提案をしてもうまくいきません。や はりそれぞれの地域で、本気で取り組む人が中心にならないといけない。多くの方が、興味はあるけれど自 然エネルギーを仕事にしても暮らしていけるかどうか心配されています。私もかつて同じ気持ちでした。でも 十分食べていけるので、ぜひ、みなさんにチャレンジしてほしいと思っています。」

● お問い合わせ 一般社団法人調布未来(あす)のエネルギー協議会 〒182-0024 東京都調布市布田4-19-1 ライオンズプラザ調布204 株式会社エコロミ内 TEL: 042-444-1951 FAX: 042-444-1952               (取材・記事:高橋真樹)


「地域の資源を活かす再生可能エネルギー事業」 編著:認定NPO法人環境エネルギー政策研究所 協力:法政大学サステイナビリティ研究所 『地域の資源を活かす再生可能エネルギー事業』 編著:認定NPO法人環境エネルギー政策研究所 協力:法政大学サステイナビリティ研究所 単行本:244ページ 価格:2,000円+税 出版社:一般社団法人金融財政事情研究会 ISBN-10: 4322124372 ISBN-13: 978-4322124378

本書は、実践的な再生可能エネルギー事業入門書です。ここでいう実践的というのは、実際に事 業を展開していく際に入門的マニュアルとして活用すれば多いに役に立つであろう、という意味で す。従って、各種準備や資金調達、メンテナンスなど、実際に事業を行っていく際に考慮しなければ ならない事柄や情報などといった、一連の必須事項が大きな割合を占めています。もちろん、これは 読者を事業者になる覚悟のある層に限定しているのでは決してなく、この本を読んでエネルギー生産 者として地域に貢献していくモチベーションを生み出してくれる要素も多々含んでおり、関心を持つ すべての人に対して門戸は開かれています。 本書の構成は大きく7つの章に分けられています。序章での日本における再生可能エネルギーを取 り巻く現状の変化と、地域からエネルギー事業への積極的な姿勢を促す提言から始まり、続く1章で は各エネルギー源に関する項目など、再生可能エネルギーの基本的な理解を促進するための情報に 関する記述がなされています。これらの章の内容を理解することができれば、再生可能エネルギーに 関する基礎情報を大まかに網羅することになるため、事業者として歩んでいくための下地は完成した ことになると言えます。2章では、主体形成や、社会的・環境的制約条件など、主に事業を実行する 際に向き合わなければならない課題に対しての適切な対処法などが示されています。3章では収支計 画や資金計画など、事業を実施するにあたって必要となる財政面での入門的な情報が中心となってい るため、それらの基本的な理解を深めることができます。4章は事業の重要な側面であるメンテナン スに関して各エネルギーごとに説明がなされており、持続可能な事業計画を行うために必須の材料が 提供されています。さらに、再生可能エネルギー産業における人材に関して、社会全体の雇用という 観点からの記述があるため、個々の事業というミクロレベルだけでなく、マクロ的な視点の不可欠 性に気づかされます。5章、終章では再生可能エネルギー産業の今後の課題が、資金調達やFIT制 度、また各主体に要求されていること、などという内容が議論されています。これ以外にも、コラム として失敗事例などの補足的な情報も盛り込まれているので、再生可能エネルギー事業に対するモチ ベーション向上の一助として本書は大いに活躍することが期待できます。 (ISEPインターン 辺見 怜)


「地球環境学 複眼的な見方と対応力を学ぶ」 編者:京都大学地球環境学堂

『地球環境学 複眼的な見方と対応力を学ぶ』 編者:京都大学地球環境学堂 単行本:254ページ 価格:本体2,400円+税 出版社:丸善出版株式会社(2014/02/28) ISBN: 978-4-621-08807-4 C1336

本書は、京都大学地球環境学堂の若手の教員からなるグループ「京都大学地球環境学研究会」が企 画・執筆した『地球環境学のすすめ』、『地球環境学へのアプローチ』に続く第三番目の出版物で、 京都大学全学共通科目の講義「地球環境学のすすめ」の内容を中心にまとめたものです。地球環境学 堂は2002年創立の大学院で、経済・法学などの文系から工学・農学など理系分野まで地球環境に関わ る種々の研究分野からなる学際的研究・教育の場です。 この本は東日本大震災を重要な環境関連事項として挙げており、震災後三年が経った現在も明確と なっていないエネルギー政策や放射能汚染対策を問題視しています。 まず第Ⅰ部では環境変化は一つの視点から捉えられるものではないということが論じられていま す。移住問題、農林業、生態系、風土建築、インフラ対策など、幅広い視点から環境問題を捉え統合 的な問題解決が示されています。 続く第Ⅱ部では、環境変化による社会へのプラスおよびマイナスの影響にどのように対応していけ ばよいのかが論じられています。化学物質や廃棄物による環境汚染は人類、生態系に悪影響を及ぼす 可能性があり、近年ますます懸念されています。しかし汚染対策により資源・エネルギーを効率的に 活用できるということが具体例とともに示されており、ケーススタディを用いた事例や課題と解決策 も述べられています。 第Ⅲ部では地震や土砂災害などの自然災害に適応する能力を高めるための対策が、コミュニティの 視点から考えられています。震災が多発する日本では人々は被災したら生活を再建し、災害に備え、 その経験を伝えながら生きてきました。近代化、都市化により自然や災害との関わりが変化していま すが、先人たちの知恵や経験から学ぶことが多いのではないかと述べられています。 卒業生で環境エネルギー政策研究所の主任研究員である山下紀明が筆者の一人として本書の執筆に 携わっています。その中で問題解決能力や地球環境学を学ぶ意義などが卒業生へのインタビューを通 じて述べられており、地球環境学の多様な学び方や活かし方が説明されています。 環境問題は狭い視野から見られがちであり、一つの問題として捉えられることが多いです。しかし この本では様々な問題がケーススタディとして具体例とともに示されており、それに対する解決策も 考えられています。視野が広がり様々な環境問題に対する知見が深まる一冊です。 (ISEPインターン 真鍋 理人)


■ インターン・レポート

ウェンジア・ウー フランクリン&マーシャル大学 3年、ビジネス専攻

田中光平 慶應義塾大学理工学研究科 修士1年

中国から来たウェンジアと申します。米国の

古屋さんの コミュニティ発電所 に書かれて

ペンシルベニアにある大学に通っています。大

いた、「みんなが幸せになれる社会」というフ

学での2年間の日本語の学習を通じて、日本の

レーズに惹かれたのが、ISEPに入るきっかけで

ポップカルチャーに非常に興味を持つようにな

した。自分が楽しいと思う事をやった結果、そ

りました。今年は、IESの留学プログラムを通じ

れがみんなの幸せに繋がっていたら、それに越

て日本で勉強しています。ISEPでのインターン

した事は無いと感じました。自分は大学で ス

活動は日本のオフィス社会を経験する上ではと

マートグリッド に関連する研究をしており、自

ても重要で貴重な経験だと思っています。ISEP

然エネルギーの分野は他の分野に比べてより貢

では、中国における風力発電の開発状況に関す

献するチャンスがあるのでは無いかと思ってお

る研究を主に行っています。環境関連の専攻で

ります。そして、 ご当地エネルギー に関して

はないのですが、主任研究員の山下さんのご指

日本の最先端であるISEPで、知識・ノウハウな

導により、より充実した研究を行うことができ

どを身に付け、将来は日本のどこかの地域で、

ていると思います。研究を通して、中国のみな

畑を耕し、鶏を飼い、そして、 コミュニティ発

らず、その他の国々における自然エネルギー産

電所 を作る事が出来る人材になりたいと考えて

業に対する理解も深められたと思います。ISEP

おります。

での活動を通して異なる文化や学術分野に接す る機会を得られたのは非常に貴重な経験で、と ても楽しむことができました。


ISEP News Letterは、四半期毎に会員のみなさまを対象として 発行する環境エネルギー政策研究所の活動報告です。

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所   〒164-0001   東京都中野区中野4-7-3   TEL: 03-5942-8937   FAX: 03-5942-8938

ISEP News Letter 2013年度 第4四半期  

ISEP News Letterは、四半期ごとにISEP会員を対象として発行する環境エネルギー政策研究所の活動報告です。

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