67 北原美桜編
てる哲朗クンなだけに、こういう時に見せる真剣な表情に、ドキッとしてしまう。 やっぱり女の子はギャップに弱いのだ。 だけれど。
﹁切ない﹂という感情も、知ってしまった。 それと同時に、 最初は遠くから眺めているだけで満たされてるのに、もっと近くに行きたい、もっと話した い、もっと私を見てほしい⋮⋮って、要求はエスカレートしていく。それが叶わないと、不安 になったり苦しくなったり。
私も、こうしてそばにいられるだけで幸せなはずなのに、他の女の子に告白されてるのを見 て嫉妬したり、チョコを渡せなくて泣いてしまったり。心の痛みがセットでやってくる。
いっそのこと、哲朗クンと出会わなければ良かったのかな、とも思う。そうしたらこんな気 持ち、知らないで済んだのに⋮⋮。
そんな事を考えながらぼんやりしていると、私の視線に気付いた哲朗クンが、優しく声をか けてきてくれる。
﹁どうした? 何か分かんないとこあるか? 数学だったら教えてやれるから、言ってこい よ﹂
﹁だ、大丈夫、だから⋮⋮ちょっとぼうっとしちゃって。⋮⋮つ、続きやるねっ﹂ 私は顔を真っ赤にして、慌てて問題集に視線を戻す。