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症例 歳,女性 髄膜炎後の脳出血 12月 16日より激しい頭痛,近医で感冒とされたが改善せず,22日に外来の髄液検査にて細胞数 580/3を示し,髄膜炎を疑われ入院.12月 22日に MRI.28日に再び激しい頭痛,意識障害,左片麻 痺を認める. 診断に必要な検査は?(矢印,矢頭は何を示すか?)

日の FLAIR 画像

▲ 図

日の CT

同造影後の T 強調画像


症例

細菌性動脈瘤による脳内出血 解説 画像所見:図 1では右側頭葉から後頭葉にかけて,脳溝内に高信 号領域があり,髄膜炎に伴う蛋白上昇による高信号と えられる. 同様な画像所見をくも膜下出血も呈しうるが,発熱,白血球増加, CRP 陽性所見があり,右半球くも膜下腔に浸出物による造影効果 を造影後の T 1強調画像で認める(図 2の矢印)ので髄膜炎と

た.図 3では側頭皮質下に出血があり,くも膜下出血も伴なってい る.髄膜炎の後の皮質下出血であり,細菌性動脈瘤が えられ,28 日に血管造影が行われた.血管造影にて(図 4)右中大脳動脈に動脈 瘤(矢印)がみつかり,それによる出血と えられた.細菌性心内膜

右内頸動脈造影像

炎あるいは髄膜炎により細菌性動脈瘤が形成されたと えた.心疾 患の既往はなかった.図 3の血腫内に点状の低吸収域(矢頭)があ り,動脈瘤による. 髄膜炎の後に,若年者に起こった皮質下出血では,細菌性心内膜 炎,細菌性動脈瘤を常に

慮する必要がある.なお,初回の MRI

では,動脈瘤を認めない.

臨床 細菌性動脈瘤は全頭蓋内動脈瘤の約 3%を占める.20%は多発性である.原因としては細菌性心内膜 炎が最も多く,その他に,髄膜炎,感染性血栓性静脈炎および粘液腫がある.その部位に特徴があり, 主要血管(特に中大脳動脈)の第一 岐より末梢に多く存在し,脳表,特に穹窿部のそれに近い部位に多 く存在する.鞍上部,シルヴィウス裂の下外側部,脳梁膝部,および第三脳室底にも認められる. 感染性心内膜炎の重度の合併症である感染性塞栓症は脳梗塞,くも膜下出血,脳内出血,脳炎,髄膜 炎,脳膿瘍,細菌性動脈瘤などの様々な病態を起こす.感染性心内膜炎の感染性動脈瘤を合併する率は 1.2%∼5%と報告された.しかし,動脈瘤はしばしば無症状であることや抗生物質により消失すること があるので,実際にはこれより多いと えられる. これらの発症機序は細菌性栓子が脳血管を閉塞し,末梢側が虚血状態となれば脳梗塞となり,閉塞部 位で感染が血管外におよべば脳炎,髄膜炎,脳膿瘍を起こす.脆弱化した血管壁に hemodynamicスト レスが加われば,動脈瘤が形成され,その破裂でくも膜下出血や脳内出血を来すことになる.動脈瘤は 多発する傾向にある. 動物実験では septic embolism を来した後,3日間で動脈瘤が形成されると報告されている.人にお いても,栓子による動脈閉塞後 3日以内の早さで動脈瘤が形成されうる(文献 3).感染性塞栓症の翌日 に出血を来していた事実は細菌性栓子による血管壁の障害が予想以上に早く起こることを示唆してお り,感染性塞栓症にて虚血症状を呈したときには早期に出血を来す可能性があることを留意すべきであ る. (CD-ROM 参照)


症例 -

症例

参 資料

感染性脳塞栓症の画像診断 12例の感染性心内膜炎患者の頭部 MRI の検討(文献 4参照)では全例に塞栓症があり,10例が多発 している.皮質梗塞が最も多く,遠位中大脳動脈領域が侵される.次に多いのが天幕上皮質白質境界に 多発性の小さな塞栓症が認められることである.これらの多くは造影効果があり,微小膿瘍を示す可能 性が大きい.脳内出血は 4例に認められ,くも膜下出血が多い.2例では膿瘍あるいは cerebritis の状 態であった.眼窩蜂窩織炎を 2例に認める.多くの病変が造影剤による造影効果があった.くも膜下出 血は細菌性動脈瘤の破裂のみではなく,感染性塞栓症によっても生じると えられている.

感染性脳動脈瘤の画像診断 通常の動脈瘤より小さく,末梢にできることが多いので,現時点でも脳血管造影が必要である.しか し,CT アンギオでは 3mm 以上の,MRA では 5mm 以上の動脈瘤では高い検出率が得られており, 非侵襲性診断法によって,経過のフォローをすることができる可能性はある.瘤は流れが遅く,通常の TOF-MRA では描出困難であり注意を要する.MRA で観察する場合には造影 MRA がよい. 内腔が血栓化した際には血管造影では認められないことがある.そのようなときには MRI が有効で ある.瘤内のへモジデリン沈着を反映し,T 2強調画像で小円形性の低信号領域として描出される.こ の検出には磁化率効果の高い T 2 強調画像が有効である. 小さな海綿状血管腫や出血性のラクナでも同様な低信号領域を示すが,内腔が血栓化した感染性動脈 瘤では,脳表に非常に近い部位に発生することが最も特徴的であり,中大脳動脈領域に好発し,しばし ば多発性で,周囲に限局性の髄膜炎や脳炎などの炎症を伴う場合があることが鑑別になる(文献 5). 真菌感染によるものを真菌性動脈瘤と呼ぶ.細菌性とともに mycoticあるいは infections aneurysm と 呼ばれることもある.末梢の 布,不正な形態は同様であるが,周囲に膿瘍を伴うことが多い.

Box

FLAIR 画像での脳脊髄液の高信号

1.くも膜下出血

上槽で最も早く認められる.

2.髄膜炎(感染性および癌性)

4.腎不全下のガドリニウム造影剤投与後

3.高濃度の酸素投与後:酸素は最外角に 2

5.急性梗塞(血流脳関門の破綻? 脳実質内

つの不対遺伝子を持ち,弱い常磁性の性

の浮腫,血管のうっ血?)

質持つために,T 1緩和時間の短縮を来

6.上矢状静脈洞血栓症

す.増加した血中酸素が脳脊髄液へ拡散

7.プロポフォール(麻酔薬)の影響

することによって,T 1強調画像および

8.アーチファクト

FLAIR 画像にて脳脊髄液の信号強度上

9.slow flow(脳脊髄液ではなく,脳溝内に

昇が起こる.くも膜下腔では指摘できる が脳室内にはほとんど認められない.鞍

血管に点状の高信号を認める)


症例 -

Box

多発性動脈瘤の鑑別

1.先天性 20∼30%,感染性 22%, mnemonic:FECAL PM

5.Arteriovenous malformation 6.Lupus erythematosus

2.Fibromuscular aneurysm

7.Polycystic kidney disesae (adult)

3.Ehlers-Danlos syndrome

8.Mycotic aneurysm

4.Coarctation

症例 A

歳,男性

4月 20日頃より発熱があり,アトピー性皮膚炎のひっかき傷の感染と言われ,さらに心雑音を指摘. 5月 3日より呂律が回らない.5月 5日意識昏迷で入院.当日の CT で,右前頭葉,側頭葉,後頭葉皮 質,皮質下に梗塞.5月 6日の CT にて,梗塞は拡大.左シルヴィウス裂を中心にくも膜下出血を認め た.以後,梗塞巣は拡大(動脈瘤破裂によるスパスムによる).5月 22には広汎な出血(動脈瘤再破裂に よる出血と

えられる)があった.24日死亡.

残念ながら,初期の CT が

失し 5月 23日の CT(図 1,2)のみである.左大脳基底核外側に大きな

2つに かれた血腫を認める.動脈瘤再破裂による脳内出血と えられる.第四脳室には血腫があり, それ以前のくも膜下出血による可能性が大きい.左脳室は大きく右に偏位し,さらに水頭症を認める. こうなる前に,5月 5日の時点にて,細菌性心内膜炎,感染性塞栓症,細菌性動脈瘤を疑い,血管造影 を行い,動脈瘤をみつけ,手術その他の適切な治療に結びつける必要があった症例である.

CT 画像( 月

日)

CT 画像( 月

日)


症例 -

Box

皮質下出血の鑑別

1.アミロイド血管症

6.抗凝固療法

高齢者

血腫の拡大

前回の他の部位の出血(グラディエントエ

液面形成

コー法で,過去の出血を調べる) 大葉性 70歳以 上,非 高 血 圧 者,認 知 症 を 認 め る. 2.高血圧 薬剤中毒を除いて若年者には少ない. 通常は,大脳基底核 3.脳腫瘍 出血の時間的変化の異常 造影効果のある局所的病変 4.皮質静脈血栓症 近傍の静脈洞の閉塞 5.血管奇形

7.動脈瘤(炎症性動脈瘤もあり) 血腫内に CT 値の低い腫瘤様の構造を認 める. くも膜下出血の合併 8.出血性梗塞 血腫以外の部位に早期より低吸収域の存 在 9.もやもや病 頭頂部に slow flowを示す FLAIR の高 信号領域 10.血液疾患 病歴 液面形成

大脳基底核,視床の AVM は出血する可 能性が他の部位に比べて高い.

細菌性動脈瘤 剖検所見(画像 CD-ROM と同一症例). 剖検により急性細菌性心内膜炎による敗血症が疑われ,中枢神経系では多発性脳梗塞,亜急性髄膜炎 がみられた.また大脳左側面左後頭葉皮質,下頭頂葉にくも膜下出血を認めた(図 3の矢頭).後頭葉皮 質内小動脈,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,動脈内腔は血栓により完全に閉塞していた(図 4の 星印).後頭葉皮質,ヘマトキシリン・エオジン染色,大脳皮質内に細菌性血栓の播種によると推定さ れる膿瘍を認めた(図 5の矢印).


症例 -

大脳左側面

動脈内腔の閉塞(HE 染色)

大脳皮質内の膿瘍形成(HE 染色)

●参 文献 1 Horiuchi T, et al. Ruptured distal middle cerebral artery aneurysm. J Neurosurg. 100(3):384-8, 2004. 2 Simmons KC. CT of intracerebral haemorrhage due to mycotic aneurysms case report.Neuroradiology.19(4):2157, 1980. 3 若本寛起,他:虚血症状にて発症し,早期に出血と細菌性動脈瘤の新生を認めた septic embolism の 1例,脳神経外科 29(5):415-20,2001. 4 Bakshi R, et al. Cranial magnetic resonance imaging findings in bacterial endocarditis:the neuroimaging spectrum of septic brain embolization demonstrated in twelve patients. J Neuroimaging. 9(2):78-84, 1999. 5 吉岡邦浩:感染性動脈瘤,高橋昭喜編:脳血管障害の画像診断.中外医学社,244-9,2003. 6 症例.宮坂和男:What can weseein a singlepicture? 1枚の写真から 酸素吸入時 MRI-FLAIR 画像における脳脊髄 液の信号輝度上昇 Brain Med.15(1):89-91,2003.


症例 歳,男性 マクログロブリン血症(免疫不全がある)を有する, ヶ月前から頭痛 があり, 日前より増悪した

T 強調画像

拡散強調画像

(東京大学医学部附属病院放射線部,森墾先生の厚意による) (三輪書店

脳神経外科の常識非常識

より許可を得て転載)

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

膜外蓄膿(膿瘍) 解説 画像所見:T 2強調画像で両側前頭葉白質に高信号が広がっている.側脳室前角に軽度の mass effect がある.前頭部の

膜が両側とも中央で後方に伸び, 膜外に高信号を示す病変がある.その直下,脳

内あるいは 膜内にも T 2強調画像では皮質に近い信号強度を示す領域がある.前頭洞に炎症と

えら

れる高信号領域がある.T 1強調画像で病変は低信号を示す.脳と脳外の病変の間には白質と同様の信 号強度を示す境界がある.拡散強調画像で前頭骨直下,両側にまたがる,高信号領域を認める. 膜外 から 膜下に病変が疑われる.左前頭葉脳内には高信号領域を認める(図 3の矢印).造影後の T 1強調 画像で, 膜外および 膜下の病変の外縁に って造影効果があり,脳実質内の病変には造影効果を認 めない.前頭洞内の炎症にもその周囲に造影効果を認める. 以上の画像所見と病歴から えられるのは,前頭洞の炎症から直接波及あるいは静脈を介して血栓性 静脈炎により 膜外および 膜下に蓄膿を来したと

えられる.左前頭葉の脳内の拡散強調画像の高信

号領域は静脈洞血栓症による梗塞あるいは cerebritis と える(造影効果がないので,梗塞の可能性がよ り高い).前頭葉白質には広汎な浮腫を認める. 少量の脳実質外液貯留にもかかわらず,全身状態の悪化,CT あるいは MRI にて脳内に浮腫など示 す低吸収域あるいは T 2 長所見を認める際には, 膜外あるいは 膜下蓄膿を 慮する必要がある. 急いで診断をつける必要がある疾患である.拡散強調画像および造影後の T 1強調画像が重要である.

臨床 膜下あるいは

膜外蓄膿は稀だが,死亡する可能性もある脳外科的緊急対応の必要な疾患である.

死亡率は 10∼15%と言われている.

膜下では穹窿部(50%以下)あるいは半球間裂(20%)が多いが,

後頭蓋窩にも発生する(乳突蜂巣炎に関係がある).

膜外に比べて 膜下の方が多い. 膜下蓄膿は脳

膿瘍あるいは静脈性血栓症を 10%以上に合併する. 膜外では前頭洞に近接することが多い.

原因 1.乳幼児では髄膜炎に伴う 膜下水腫に感染が起こることが多い. 2.小児および成人では副鼻腔炎が多い.中でも前頭洞の炎症からの波及が多い. 3.乳突蜂巣炎 4.血行感染(敗血症) 5.頭蓋骨骨髄炎 6.開頭術後 7.外傷後 8.細菌性髄膜炎 (CD-ROM 参照)


症例 -

症例

参 資料

画像診断 脳実質外の液貯留があり,その周囲に造影効果を認める所見が特徴である.拡散強調画像では蓄膿は 高信号を示し,その範囲および合併する梗塞の判定に有用である. T 1強調画像では脳実質外の液貯留であり,髄液に比べて高信号を示す.蓄膿は T 2強調画像では 様々な信号強度を示す.FLAIR 画像では髄液より高信号を示す. は凸レンズ状である.

膜下蓄膿では三日月状,

膜外で

膜外蓄膿では液貯留と脳の間に低信号を示す 膜を同定できることがある.脳

と蓄膿との間の 膜が内側に偏位している.CT では等吸収あるいは低吸収域の脳実質外の腫瘤として みられる. 膜下蓄膿は, 膜下水腫とは異なり,拡散強調画像にて高信号を示し,ADC 値の低下を認める. 水腫は CSF と同様な信号強度を示す.

膜外蓄膿では種々の信号強度.合併する静脈性梗塞を高信号

として認めることがある. 膜下蓄膿では内縁に った造影効果を認める.脳回様の造影効果が,ときに脳内に認められること がある.冠状断像が有用である.

鑑別診断 1.慢性の 膜下血腫: 膜下蓄膿では周囲の脳に炎症性変化を起こすが,血腫ではそのようなことは ない.血腫に比べ蓄膿ではその量の割に強い mass effect を脳実質に示す点が異なり,臨床症状もよ り重篤である.血腫では小房形成を認める.その辺縁に造影効果を認めるが,薄いことが多い. 2. 膜下水腫:髄膜炎に伴う

膜下の液貯留.髄液と同様な信号強度.

3. 膜下への転移:びまん性あるいは結節性の造影効果,骨への転移を認めることがある.

症例 A

歳,男性 に低吸収域 ?

膜下蓄膿,強い頭痛, けいれん, 左片麻痺を示し, 脳実質外

7月 25日より右前頭・側頭部に強い頭痛.片頭痛と言われた.8月 8日,頭痛がひどくなり,救急入 院.入院時の CT では著変を認めない.頭痛以外の所見がなく cluster headacheと診断された.8月 27 日けいれん発作があり,その後,高熱,左片麻痺.

T 強調画像( 月

日)

T 強調画像( 月

日)


症例 -

CT 画像( 月

日)

CT 画像( 月

日)

造影後 CT 画像( 月

日)

解説 画像所見:8月 18日の T 2強調画像(図 1)では異常を指摘できない.脳溝の見え方の左右差は頭部の 不正な位置による.22日の T 1強調画像(図 2)にて薄い 膜下の腫瘤が等信号を示す(矢頭).薄い

下の血腫などが疑われたが,正しい診断には至らなかった.現代の MRI(本文参照)ではあれば,拡散 強調画像,FLAIR 画像,造影後の検査によって容易に

膜下蓄膿の診断ができた可能性があるが,当

時はできなかった.けいれん発作と左片麻痺の出現後,CT(8月 27日および同 29日)にて右半球に脳 室の変異,脳溝の圧排所見を認める(図 3,4).薄くて,髄液よりは高いが,低吸収域を示す領域が内 板に って脳外に三日月状に存在する(図 4の矢頭). 膜下水腫とは異なり,その内側部の大脳にその 大きさの割に強い影響がみられる.しかも約 10日の間に急速に進展する.頭痛,高熱の存在より,感 染特に 膜下蓄膿を疑い,造影後の CT(図 5)で右前頭部の低吸収域の内縁に

い,比較的厚い造影効

果を認め(矢印), 膜下蓄膿と診断し,緊急手術で確認した. 古い CT を読影しなければならないこともあり得る.臨床症状と,得られる画像所見から診断を下す ことも必要である. ●参 文献 1 Tsai YD, et al. Intracranial suppuration: a clinical comparison of subdural empyemas and epidural abscesses. Surg Neurol. 59(3):191-6;discussion 196, 2003. 2 Ramsay DW, et al. Diffusion-weighted imaging of cerebral abscess and subdural empyema. AJNR Am J Neuroradiol. 21(6):1172, 2000. 3 Tsuchiya K, et al. Diffusion-weighted MRI of subdural and epidural empyemas. Neuroradiology. 45(4):220-3, 2003. Epub. Mar 08, 2003.


症例 歳,男性 側頭葉てんかん(てんかん源は左か右か ?) 17歳より運動停止,自動症などの発作が出現.近時の記憶障害がある.現在の発作は複雑部

CT

T 強調冠状断像

同 T 強調画像

この画像をみて,主治医にどのようなレポートを書いたらよいか. (Springer 社

Neuroradiologyより許可を得て転載)

T 強調冠状断像

発作.


症例

右側頭葉てんかん,左下側頭回を中心とする神経節膠腫 解説 画像所見:CT で左下側頭回に石灰化があり(図 1の矢印),同部位は T 2強調画像では低信号を示 し,その周囲に不

一な高信号領域を認め,軽い mass effect がある(図 3の矢印).右側頭葉の周囲の

白質の信号強度は正常で,皮質白質境界は鮮明である.T 1強調画像では石灰化は高信号と低信号の混 在となり,その周囲はほぼ皮質と等信号である.造影効果はなく,長い経過,側頭葉てんかんの臨床症 状を合わせると,神経節膠腫と

えられる.しかし右側頭葉前部の皮質白質境界は不鮮明である(図 2

の矢印).この所見はいくつかのスライスにて認められ(非掲載),有意である.何らかの原因(画像には 出にくい microdysgenesis など)による右側頭葉てんかんが えられる像である.

手術と病理所見 頭皮脳波では右優位ではあるが,両側性の側頭葉に異常脳波を認める.深部電極を挿入した脳波では 確認された複雑部

発作は 8回のすべては,右内側であった.故に,側頭葉てんかんは右側が原因と

えられた.しかし左側からの異常脳波もみられた(手術中の皮質脳波でも同様の所見).以上より,左腫 瘍の摘出と右側頭葉切除術を施行した.左腫瘍は神経節膠腫であった.右側頭葉には白質内に異所性神 経細胞を認め微小形成不全(microdysgenesis),海馬には軽度のグリオーシスがあった. この症例は,腫瘍がある側に必ずしもてんかん源があるとは限らないことを示している.画像を読む 際に,側頭葉てんかんでは常に側頭葉先端部に注意し,皮質白質境界の不鮮明がどちら側にあるかを注 目する必要がある.

画像診断(側頭葉てんかんでみられる側頭葉尖端部白質病変) 側頭葉てんかん症例では,側頭葉尖端部には T 2強調画像にて皮質・白質境界の不鮮明,白質の volumeの減少,側頭葉尖端部の萎縮を認めることがある(文献 1).この所見は fast STIR 法が最も明瞭な ことが多いが,FLAIR 画像が役立つこともある(CD-ROM 参照).皮質自体には異常を認めず,focal cortical dysplasia とは異なる所見である.この画像所見の原因に関して定説は出ていない. 多くの側頭葉てんかんに関する自験手術例からは,この所見のある側は側頭葉てんかんのてんかん源 のある側と一致していた.この所見は海馬

化症に伴うことが多いが,血管奇形あるいは腫瘍にも伴

い,すべて患側に認められる.MRI では,てんかん源が不明な例は

膜電極を入れて,活動性の脳波

を調べている.自験の手術例(文献 1)に関して,患側とこの所見のある側とは一致する.つまり側頭葉 てんかんの患側を指摘できる所見である.正常例には認めない. この所見は側頭葉白質における異所性の神経細胞を示すという報告もあるが,自験例からは否定的で ある.異所性の神経細胞のある例では,必ずしもこの所見を示さないからである.Mitchell LA らは, けいれんの結果,側頭極の成熟過程に異常が起こり,未成熟の大脳白質(髄鞘化と髄鞘の異常を含む)を 現すとしている(文献 2). この症例に限れば,側頭極白質には多数の異所性神経細胞を認める.同部位の病理所見は微小形成不 全であった.この微小形成不全は肉眼的には正常であるが顕微鏡的な異常所見を示す皮質形成障害であ り,神経細胞自体に形態の異常を認めないことが focal cortical dysplasia とは異なる.画像では描出さ れない. (CD-ROM 参照)


症例 -

症例

参 資料

側頭葉尖端部における皮質白質境界が不鮮明なときの鑑別診断 限局性皮質形成異常(focal cortical dysplasia:FCD)では皮質の異常を認めるが,白質の volumeの減 少あるいは側頭葉の萎縮はない.しかし画像からは鑑別できないことが多い.側頭葉てんかんのある患 者では,側頭極に全体の萎縮,皮質白質境界の不鮮明,白質の萎縮を認めたときには側頭葉てんかんに よる現象であると える.自験例では FCD であったことはきわめて稀である.

症例 A

歳,女性 右側頭葉てんかん,右脈絡裂のくも膜囊胞 ?

10歳から気 不快,口腔内に唾液が込み上げるような発作を認めた.現在の発作は気

不快(口腔内

の違和感に続き,唾液が貯留)が出現,その後口をぺちゃぺちゃさせる.発作後は頭痛.全身けいれん はない.既視感はある.

FLAIR 冠状断像

fast STIR 法

FLAIR 冠状断像

fast STIR 法


症例 -

解説 画像所見(手術所見と病理所見の対比):右側頭葉尖端部の皮質白質境界は不鮮明であり(図 2,4の矢 印),白質の volumeも減少している.右側頭葉てんかんを示す所見である.摘出標本の病理所見から 側頭極白質に多数の異所性神経細胞を認めた.MRI では描出されていないが,手術時の脳波では側頭 葉尖端部の上側頭回に異常波が観測され,てんかん源と えられた.同部位の病理所見は微小形成不全 (microdysgenesis:皮質

子層がやや厚く脳回の融合が散見され,白質では多数の異所性神経細胞と

perivascular glial satellitosis を認める)であった. 右脈絡裂に髄液と等信号を示す腫瘤があり,脈絡裂のくも膜囊胞と えられる.海馬に変形が無く, 海馬自体に異常はないので,通常はてんかん発作には関係がないと

える.しかし,この症例は術中脳

波にて海馬からきわめて活動的な異常波が出ており,海馬がてんかん源であった.海馬には神経細胞の 脱落はないが,グリオーシスが認められる.くも膜囊胞が海馬に影響を与えたかは判明していない. てんかん源か,違うのか? 1.存在すればほぼ 100%てんかん源:海馬 化症,focal cortical dysplasia,片側巨脳症,神経膠腫(例 外もある.通常,腫瘍があれば,てんかん源でなくても摘出する) 2.てんかん源か不明:小多脳回,異所性灰白質,瘢痕回,海綿状血管腫,他の血管奇形 3.てんかん源でない可能性が高い:くも膜囊胞 自験の側頭葉てんかん症例において,MRI では右側頭葉に広範な小多脳回と異所性灰白質があり, 左側は正常であった.しかし頭皮脳波および

膜下電極による脳波では左側頭葉にてんかん波を認め,

手術中の脳波でも左側から活動性のてんかん波が出ていることが判明した.てんかんの画像診断で重要 なことは病変をすべて記載する.局所性の病変および萎縮など,全体的な病変を見逃さない.1つの病 変をみつけて,安心して,より小さいが,重要な病変を見逃してはならない.dual pathology(海馬 化症と他の局所的病変の合併)に常に注意することが必要である.

症例 B(外科切除例) 側頭葉てんかん(本文と同一症例) 外科病理所見(右側頭葉皮質) クリューバー・バレラ(KB)染色,皮質,白質とも弱拡大では明らかな異常はみられなかった(図 5). 側頭葉白質,クリューバー・バレラ染色(図 6の矢印)/GFAP 染色(図 7の矢印)の強拡大,白質内に異 所性の神経細胞を認めた(Single cell heterotopia).


症例 -

大脳弱拡大(KB 染色)

大脳白質内の神経細胞(KB 染色)

大脳白質内の神経細胞(GFAP 染色)

●参 文献 1 Adachi Y,et al.White matter abnormalities in the anterior temporal lobe suggest thesideoftheseizurefoci in temporal lobe epilepsy. Neuroradiology. 48(7):460-4, 2006. 2 Mitchell LA,et al.Anterior temporal changes on MR images ofchildren with hippocampal sclerosis:an effect ofseizures on the immature brain? AJNR Am J Neuroradiol. 24(8):1670-7, 2003. 3 Honavar M,Meldrum B.Epilepsy.In:Graham DI,Lantos PL eds.Greenfield s Neuropathology.7th ed.vol.1 London: Arnold, 904-8, 2002. 4 Coste S,et al.Temporopolar changes in temporal lobe epilepsy:a quantitativeMRI-based study.Neurology.59(6):85561, 2002.


症例 歳,女性 左手のぴくぴく感から意識消失および全身けいれん発作 外来で左軽度の筋力低下,CT で異常を指摘され入院した.

T 強調画像

造影後の T 強調画像

T 強調画像

同冠状断像


症例

★ 行 送 り 変

多発性 化症 解説 画像所見:T 2強調画像では高信号,T 1強調像では低信号を示 す病変が右中心前回皮質から白質にかけて認める.造影後点状の造

影効果を示す病変がある.冠状断像では病変が大きい割に,側脳室 前角,帯状溝,前頭葉の脳溝への腫瘤効果は小さい.浮腫と えら れる部位はほとんどない.他の部位には異常を指摘できない.症状 も徐々に軽快し,1ヶ月後には T 2強調像での高信号領域,造影効 果があきらかに減少したので,腫瘍ではなく,他の疾患と えられ た.多発性 化症は鑑別疾患の 1つであった. 翌年の 1月には右帯状 回,左小脳に小さな高信号領域が出現した. 図 5は 6年後の再燃時である.左側脳室周囲に腫瘤状の病変が出

年後の FLAIR 画像

現するが,その大きさの割に,側脳室への腫瘤効果が弱い.造影効 果は点状に,初回と同様な形態を取った.その後再発,寛解を繰り 返し,いつも腫瘤様の画像所見を示す多発性 化症である.

臨床 腫瘤様の形態を取る脱髄性病変は tumefactive demyelinating lesions と言われる.一般的には 2cm 以 上の孤発性の病変で,脱髄性疾患である.急性散在性脳脊髄炎と進行性多巣性白質脳症も同様に腫瘤様 になる.女性に多く平 年齢は 37歳であり,稀な例外を除き,感染後あるいはワクチン接種後には発 生しない.ステロイド治療によく反応し,その後に,多発性 化症に進展する例は稀と言われており, 本症はその稀な例である.臨床症状では,限局した腫瘤性病変の症状が出現する.局所的神経所見,け いれん,失語症などが多い症状である.

腫瘤性脱髄性病変(tumefactive demyelinating lesions)の画像診断 1.腫瘍とは異なり浮腫は少なく,比較的腫瘤効果が少ない.天幕上を侵す.腫瘤の中心は白質にある が皮質におよぶ. 2.リング状あるいは不完全なリング状の造影効果を認める.造影効果のない側は皮質側になる. 3.病変の中心部に点状の構造があり,拡大した静脈を認める.拡大した上衣下静脈へと流出すると えられている. 4.灌流画像にて灌流低下を示す. 5.ステロイドによる急激な退縮. その他に非特異的所見として,脳梁への浸潤,拡散強調画像での高信号領域,MRS では腫瘍様の変 化がある. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Given CA 2nd, et al. The MRI appearance of tumefactive demyelinating lesions.AJR Am J Roentgenol.182(1):195-9, 2004. 2 Cha S, et al. Dynamic contrast-enhanced T2 -weighted MR imaging of tumefactive demyelinating lesion. AJNR Am J Neuroradiol. 22(6):1109 -1, 2001. 3 Pierce S, et al. Tumefactive demyelinating lesions. Neuroradiology. 38(6):560-5, 1996.


症例 -

症例 症例 A

参 資料

歳,男性 脳腫瘍のようにみえる脱髄性疾患

1月 18日にめまい,ふらつきがある.19日は嘔吐,四肢と体幹の失調が認められ,小脳炎の疑いに て入院.CSF は 17/3(L 16N 1). T 2強調画像にて右中小脳脚から小脳にかけ不 一な高信号を示す病変があり(図 1の矢印),第四脳 室には軽い mass effect がある(図 1の矢頭).造影後の T 1強調画像では 2カ所に造影効果を認める(図 2矢印).腫瘍も

えられる所見ではあるが,右内包後脚内に点状の高信号を認める(図 3矢印).この

部位には造影効果を認めない(非掲載). 若年者であり,多発性 化症も 慮に入れるべき所見である.病歴を尋ねると半年前にも意識消失発作 があり,他院で MRI を撮り,多発性の高信号領域を指摘された.右内包後脚内の高信号領域はおそらく

その古い病変と えられた.故に多発性 化症と診断した.ステロイドを うことなく自然治癒した.

T 強調画像

造影後 T 強調画像

造影後 T 強調画像


症例 -

症例 B

歳,女性 急性散在性脳脊髄炎

4月 10日,発熱,頭痛,嘔吐が続き,13日他院入院.15日,項部強直を認め,髄液細胞数 85リン パ球優位を認めた.左共同偏視,眼振があり,当院に 16日入院.その他の所見として,軽度の意識障 害,右の軽い小脳症状.髄液細胞数 221,蛋白 72,髄

塩基性蛋白陽性,オリゴクローナルバンド陰

性. 4月 16日撮像された FLAIR 画像(図 4,5)で,右小脳のほぼ全体および大脳白質に高信号を示し, 小脳には明らかな mass effect を有する病変がある.造影効果を認めた.急性散在性脳脊髄炎と診断し た.小脳を中心に,さらに大脳白質を侵す形態を取った.小児の急性小脳炎に近い形態を取っている. ステロイド治療によって順調に回復した.腫瘍にしては経過が早い.大脳にも病変があるなどの鑑別点 を挙げることができる.

FLAIR 画像

FLAIR 画像


症例 歳,男性 歩行障害,排尿障害 8年前より左足を引きずり,パーキンソン症状があるために抗パーキンソン剤の投与を受け,効果が あった.その後不随意運動,突進歩行が出現後に尿閉があり,転倒しやすくなる.抗パーキンソン剤の 効きが悪くなった.若年性パーキンソン病の疑いで入院.神経学的所見では明かなパーキンソン症状が あり,軽度の小脳失調がある.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調矢状断像


症例

多系統萎縮症(MSA-P 型) 解説 画像所見:被 には かな萎縮があるようにみえるが,左右差がなく,明らかな異常として捉えられ ない.線状の高信号領域を被 に認めない(図 1).矢状断像で小脳の軽い萎縮と,橋底部下部の萎縮を 認める(図 2).T 2強調画像では明らかな橋横走線維の変性を認める(図 3).本例のようにパーキンソ ン症状が初発症状である例に,橋横走線維の変性を認めたときは MSA-P 型を

える.T 2強調画像に

て被 の変性を認めないのは MSA-P 型としては非典型的ではある.しかし被 の変性を認めず,橋横 走線維の変性がより早く描出される MSA-P 型も依存する.

本例の解剖所見 本例は MRI 撮像 6ヶ月後に死亡した.剖検にて黒質で色素神経細胞が高度に脱落し,被

で外側部

のアストログリアの軽度の増加がある程度で,神経細胞の脱落はなかった.しかし萎縮があった.下オ リーブ核の神経細胞の脱落が高度であり,橋横走線維の変性と脱落が中等度にある.橋核神経細胞の脱 落を認める.小脳皮質下白質の線維性グリオーシスを認める.Glial cytoplasmic inclusion は中枢神経 系のほぼ全体に出現し,白質に特に顕著である.以上の所見から多系統萎縮症と病理学的にも確認でき る.臨床経過が 10年におよぶが,病変が特に被

病変が非常に軽いことが特徴である(文献 1).以上

の病理学的変化は MRI 所見をよく反映していた. MSA-P 型の最も特異的な所見は被

の萎縮と,T 2強調像の被

外背側の線状の高信号領域の存在

である(MSA-C 型の図 4参照).この高信号領域はパーキンソン症状があれば,初期より大多数の例に 認められる.MSA における被 の神経細胞の消失は被 の外側で背側に強い.その変化を反映し,T 2 強調像の異常高信号領域は被 の尾側,外側および背側に始まり,症状の進行とともに被 の前方およ び頭側に伸び,被

の萎縮も強くなる(文献 2,3).

臨床 臨床症状と病理 MSA は成人発症の非遺伝性の変性疾患である.わが国の脊髄小脳変性症の中で最も多く,しかも予 後が不良である.MRI で最も病変が描出されやすい変性疾患であり,脊髄小脳変性症の画像診断の中 心になる疾患である.脊髄小脳変性症の画像診断の第一の目的は MSA をできるだけ早期に正しく診断 することにある. 進行性にパーキンソン症状,小脳症状,自律神経障害,排尿障害や錐体路徴候を,種々の程度の組み 合わせを呈する.疾患特異性を持った細胞封入体がグリア内にみつかり,一疾患単位として確立した. 病理では線条体(おもに被 ),黒質と自律神経系に関係する諸核(脊髄の中間外側核,迷走神経背側 核など),橋核,小脳皮質,小脳白質と下オリーブ核が侵される. MSA の確定診断は剖検のみなされる.最近になり,臨床の診断基準が作定されている.大きく臨床 症状と病理学的所見によって MSA を けると,パーキンソン症状に始まり,被

の変化が最も強い線

条体黒質型(MSA-P 型)と,小脳症状にて始まり橋横走線維と橋核,中小脳脚,小脳に変性が強い橋小 脳型(MSA-C 型)に

けられる.抗パーキンソン剤が無効なことが多いが,初期には有効な例もあり,

パーキンソン病との区別が前者では必ずしも容易ではない.また皮質性小脳萎縮症や他の脊髄小脳変性 症との区別が後者では必要である. (CD-ROM 参照)


症例 -

症例

参 資料

画像診断 正常例の T 2強調軸位像では,被 に強く,被

の外側縁は外側に凸になる.しかし,本症では被 の変性が外側

が萎縮することにより,被 の外側縁を示す異常高信号領域は直線状になる.患側の被

では,高信号ではなく,正常あるいは正常に近い信号強度を示す被

の前内側部の大きさが,正常例あ

るいは反対側と比べて小さいことも重要な所見である.線状の高信号領域の内側に低信号領域を伴うこ ともしばしばある. 片側に強いパーキンソン症状を有する症例では,反対側の被 る.この症状に対応した,MRI での被

に,前後に伸びた高信号領域を認め

の左右差は MSA に特徴的な所見である.

MSA では初期には L-dopa が有効で,パーキンソン病との区別がつきにくい例もある.しかしその ようなときにも被 の変性を MRI で指摘できる例がある. パーキンソン症状を示し,T 2強調画像にて橋横走線維の変性を示す高信号領域を橋底部に認めると きには,MSA の可能性が最も高い.最近,spinocerebellar ataxia 2(SCA 2)においても,パーキンソン 症状にて発症する例の報告がある(文献 4).

多系統変性症 非特異的な意味であり,その点では多系統萎縮症とまったく異なる.多系統萎縮症も多系統変性症の 1つであるが,誤解をまねきやすいので, “Shy-Drager 型 MSA”という語も

用しない方がよい.また, “Shy-Drager 症候群”あるいは

用されなくなりつつある.自律神経症状は多系統萎縮症には非常

に多い症状であり,ほとんどすべての症例に認められる.しかし,自律神経障害は脳変性疾患の中で, MSA のみに認められるのではなく,パーキンソン病に比較的多い症状である.さらに Shyと Drager の報告した例は,現在では MSA にほかならないと よれば,これらの語も

えられている.MSA の“Consensus” (文献 5)に

用しない方がよいと報告されている.


症例 -

症例 A MSA-P 1995年より右足,1996年以前より右手の力が入らない.右の片側パーキンソン症状を認める.パー ロデルで右固縮が軽減.初回の MRI(図 1,1997年 1月,T 2強調画像)で,左被

後部に

かな線状

の高信号領域と軽度の萎縮を認め(矢印),MSA-P 型の診断となった.その後,歩行障害が徐々に進行 し,歩行器を 用するようになり,転倒傾向が出現.1998年 11月には軽い小脳失調,膀胱直腸障害が 加わった.1998年 12月の MRI(図 2∼4,T 2強調画像)で,左優位に両側被

の萎縮と,線状の高信

号領域を外側後部に認める(図 2,3の矢印).小脳および橋の萎縮があり,橋内の横走線維の変性を認 める(図 4の矢印).2000年にはさらに,声帯麻痺が加わり,気管切開を行った.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像


症例 -

症例 B(剖検例)

歳,女性

MSA-P 型

全経過 5年,終始,パーキンソン症状が前景に立つ(図 6,7).

症例 C(剖検例)

歳,女性

MSA-P 型

剖検所見 全経過 4年,パーキンソン症状で初発し自律神経症状が加わる(図 8). 乳頭体部大脳冠状断,対照(図 5の※印)に比べ,両側の被

が狭小化し褐色調を呈していた(図 6の

矢印).正中隆起部,ホルツアー(HZ)染色,両側の被 が線維性グリオーシスを呈した(図 7の矢印). 橋上中部,クリューバー・バレラ(KB)染色,橋横走線維と中小脳脚で有髄線維が高度に脱落し,淡明 化を示した(図 8の矢印).一方,橋縦走線維は比較的保たれていた(図 8の星印).

対照の大脳冠状断面

症例の大脳冠状断面

被 の線維性グリオーシス(HZ 染色)

橋上・中部(KB 染色)


症例 ●参 文献 1 横地房子,他:若年性パーキンソン病として治療された多系統萎縮症,脳と神経 54:267-75,2002.(本症例の CPC の記録) 2 柳下章:多系統萎縮症の MRI,神経内科 50(1):16-23,1999. 3 柳下章:脊髄小脳変性症の MRI,臨床放射線 44(11):1295-1303,1999. 4 Lu CS, et al. The parkinsonian phenotype of spinocerebellar ataxia type 2. Arch Neurol. 61(1):35-8, 2004. 5 Gilman S, et al. Consensus statement on the diagnosis of multiple system atrophy, J Neurol Sci. 163(1):94-8, 1999.


症例 歳,女性

年前よりふらつき歩行,脊髄小脳変性症と言われる

ふらつきおよび物忘れが進行している.小脳失調,断綴性発語,羽ばたき振戦がある.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像


症例

慢性後天性肝脳変性(原発性胆汁性肝

変による)

解説 画像所見:T 2強調画像で両側中小脳脚(図 1の矢印),放線冠の錐体路付近に高信号(図 2の矢印)を 認める.さらに,中心前回の皮質・白質境界部(図 3の矢印)および左中心前回白質(図 3の矢頭)に異常 な高信号領域を T 2強調画像で認める.これらの変化は後述する慢性後天性肝脳変性(chronic acquired hepatocerebral degeneration)の病理所見を反映すると

えられる.

淡蒼球には T 1強調像(図 4)で高信号を認め,高マンガン血症による影響と えられる.

臨床 肝性脳症を繰返しているうちに不可逆性の永続的な神経症状を呈するようになる例を慢性後天性肝脳 変性と呼び,精神症状(認知症,無関心,意識混濁),錐体外路症状(運動失調,構語障害,不随意運動) を呈し,さらに各種肝疾患も併発している.一方,肝性脳症は興奮,せん妄,被刺激性などの精神症状 を主体とし,急性に発症し頻回に繰り返す.多くは一過性であり後遺症状を残すことはない. 本例では原発性胆汁性肝

変による高アンモニア血症(最高 236μg/dl)がある.血清銅および血清セ

ルロプラスミンは正常範囲である. 本例でも認められたが,失調性歩行は小脳異常によると言われていたが,中小脳脚による病変の可能 性がある.

病理所見 文献 5によれば,最も著明な肉眼所見は線状の軟化巣であり,褐灰色の色調を示し,大脳の皮質白質 境界に認められる.約 25%の症例に大脳冠状断で認められる.両側半球にびまん性に,不

一にある

が,頭頂・後頭葉移行部に多い.脳溝深部の皮質は脳溝頂上の皮質より侵されやすい.皮質が薄くなる ことがときにある.ときおり,1∼4mm 程度の大きさの軟化巣がレンズ核および尾状核にも認められ る.1例で,大脳基底核の萎縮を来し,淡蒼球が褐色調に変色していた. 顕微鏡学的変化はアルツハイマー 型アストログリアの数および大きさの増加,グリコーゲンを主体 とする星細胞の核内封入体,びまん性の基質変化が大脳皮質深層,皮質下白質,基底核,小脳に認めら れる.大脳皮質は神経細胞が消失し,海綿状変性を認める.大脳基底核の病変は本症に特異的であり, 空胞化が認められる.小脳萎縮も存在する.

画像診断 両側対称性に,T 2強調画像にて高信号領域を歯状核,中小脳脚,半卵円中心,大脳脚,被

,内

包,脳梁膨大部に認める.さらに今回,病理所見において記載されている,中心前回の皮質白質境界部 に高信号領域を認めた.慢性後天性肝脳変性の病理所見に合致する所見である.加えて高マンガン血症 による T 1強調画像の高信号を淡蒼球で認める. 今までの報告では両側中小脳脚に高信号を T 2強調画像で認める症例が特に多い.肝障害のある患者 にこの所見を認めたときには本症を 慮する必要がある.皮質白質境界の変化は病理では頭頂葉に多い とされているが,本例のように,著者の経験では画像では中心前回に認められている. 過去の報告例では T 2強調像での高信号領域は治療に反応せず,非可逆性変化としているが,自験例 では軽快している例もある. (CD-ROM 参照)


症例 -

症例

参 資料

鑑別診断 1.ウィルソン病 T 2強調画像の被 ,淡蒼球,尾状核,視床に T 2強調像で高信号領域 淡蒼球,被 に T 2強調像にて低信号領域を伴うことも多い. 2.非経口的栄養補給 T 1強調画像での淡蒼球,視床下核の高信号 マンガン沈着によるあるいはグリアの反応

Box

大脳基底核の T 強調画像での高信号領域

1.非経口的栄養補給(マンガン)

8.低酸素性虚血性脳症

2.肝性脳症(マンガン)

9.一酸化炭素中毒

3.出血

10.ランゲルハンス細胞組織球症

4.AIDS における微小血管症と梗塞

11.神経線維腫症 型(NF1)

5.糖尿病に伴うヒョレアやバリスム

12.コケイン症候群

6.石灰化を伴う内 泌異常(副甲状腺機能亢

13.パントテン酸キナーゼ関連神経変性症

進症,偽性副甲状腺機能亢進症など)

14. 中毒

7.Fahr 病(非特異的な石灰化)

Box

両側中小脳脚に異常信号を認める疾患

1.MSA-C 型

9.多発性 化症

2.副腎白質ジストロフィー症

10.ADEM

3.ウィルソン病

11.神経ベーチェット病

4.肝性脳症

12.悪性リンパ腫

5.低血糖症

13.神経膠腫

6.脳梗塞

14.癌性髄膜炎

7.posterior reversible encephalopathy症候

15.血管内悪性リンパ腫症

群(高血圧脳症,シクロスポリン A 脳症) 8.脳梗塞

16.失調と振戦を伴う脆弱X染色体症候群


症例 -

症例 A

歳,女性 慢性後天性肝脳変性

約 18ヶ月前に発症したパーキンソン症状と小脳失調がある.門脈圧亢進,肝障害を認める.アンモ ニア高値である. 両側の中小脳脚(図 1の矢印),大脳脚(図 2の矢印),放線冠(図 3の矢印)に左右対称性の高信号を T 2強調画像にて認める.放線冠は大脳後部優位にある.中心前回皮質白質境界部にも

かな高信号領

域を認める(図 4の矢印).T 1強調画像では淡蒼球(図 5)および橋被蓋に高信号領域を認めている.高 マンガン血症による. アミノレバン などの投与により臨床所見の改善があり,約 2年後の MRI,T 2強調画像(図 6)では 大脳白質の高信号領域が明らかに減少している. 過去の報告では本症における T 2強調画像での白質の高信号領域は非可逆性変化とする意見が大半で あったが,本例のように改善する例もある.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

約 年後の T 強調画像


症例 -

症例 B(剖検例)

歳,女性(主婦) 慢性後天性肝脳変性(剖検例)

アルコール摂取はほとんどなし,虫垂炎と胆囊炎の既往あり.1970年から全身

怠,下肢浮腫,動

作緩慢,多幸,四肢の振戦が出現.1975年頃,腹水,肝機能障害を指摘され,意識障害や振戦も増悪. 1975年 6月 23日,都立府中病院入院,脳波で三相波がみられ,肝性脳症と診断される.HBs 抗原陽性 で,B 型肝炎による肝

変の非代償期と推定される.無動症,羽ばたき振戦,ジスキネジアも認められ

た.10月 14日,肝不全で死亡. 剖検所見 正中隆起部大脳冠状断,左島回の皮質直下の白質が軟化していた(図 7の矢頭,※印は被 ).島回, ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,大脳皮質深部,皮髄境界(矢印),一部白質に,線状の粗鬆化病 巣を認めた(図 8).同様な変化は頭頂葉と後頭葉でも認められた.頭頂葉白質の粗鬆化部位,ヘマトキ シリン・エオジン染色の強拡大,器質は海綿状だが,神経細胞(矢印)は保たれグリア細胞の増加は明ら かではなかった(図 9).

▶ ▶

大脳冠状断

頭頂葉粗鬆化部位(HE 染色)

島回皮髄境界(HE 染色)


症例 ●参 文献 1 Finlayson MH, et al. Distribution of cerebral lesions in acquired hepatocerebral degeneration.Brain.104(Pt 1):79 -95, 1981. 2 Lee J, et al. Acquired hepatocerebral degeneration:MR and pathologic findings.AJNR Am J Neuroradiol.19(3):4857, 1998. 3 Kulisevsky J,et al.MR imaging of acquired hepatocerebral degeneration.AJNR Am J Neuroradiol.12(3):527-8,1991. 4 Okamoto K, et al. MR features of diseases involving bilateral middle cerebellar peduncles. AJNR Am J Neuroradiol. 24(10):1946-54, 2003. 5 Adamas RD.Acquired hepatocerebral degeneration,in Handbook of clinical neurology,volume6.Diseases ofthebasal ganglia, eds, Vinken PJ, et al. North-Holland Publishing, 279 -97, 1968. 6 Matsusue E, et al. Cerebral cortical and white matter lesions in chronic hepatic encephalopathy: MR-pathologic correlations. AJNR Am J Neuroradiol. 26:347-51, 2005.


症例 歳,女子 頭痛,発熱,意識レベルの低下,小脳病変 5月 28日より発熱,頭痛あり.5月 31日近医入院,髄液細胞数 2004/3,蛋白 102.抗生剤投与開始. 6月 1日意識レベル低下あり,2日眼球左方偏位あり入院.構音障害,企図振戦あり.

日の T 強調画像

造影後の T 強調画像

(清瀬小児病院神経内科,三山佐保子先生の厚意による)

FLAIR 画像

同矢状断像(右側)


症例

急性小脳炎 解説 画像所見:T 2強調画像(図 1)で右小脳半球は左に比べ高信号を示し,特に半球内側部により高い信 号強度を示す部位がある.FLAIR 画像(図 2)では小脳半球上部で,右半球に高信号を認める.造影後 の矢状断像では右小脳半球で(図 3,4),小脳溝に

った軟膜表面あるいはくも膜下腔に造影効果を認

める.以上の病変と臨床所見を 慮し急性小脳炎と診断した. ガンマグロブリン大量 5日間施行.11日,MRI にて病変の拡大を認める.T 2強調画像にて反対側 の左小脳半球にまで病変が広がっている(図 5,6の矢印).さらに下角の拡大があり(図 6の矢頭),前 回の MRI に比べ側脳室拡大を認める.造影効果は消失していた.また乏クローン帯陽性(髄鞘塩基性 蛋白は陰性)が判明し,12日よりプレドニゾロン内服開始,3週間で中止.神経症状は徐々に回復した

が,現在も失調性歩行,企図振戦,構音障害が残存している.

T 強調画像

T 強調画像

臨床所見 急性小脳炎はしばしばウイルスや細菌感染,予防接種などを先行とし,一定期間後に急性の小脳症状 (失調性歩行,体幹失調,振戦,眼振など)を持って発症する症候群である.6歳以下の小児に多く発生 するが成人例の報告もある.先行感染は多彩であり,ウイルス感染としては水痘帯状疱疹ウイルス, EB ウイルス,コクサッキーウイルス,エンテロウイルス,パルボウイルス B 19やインフルエンザウイ ルスなどが知られている.小児では,水痘後,成人では EB ウイルス感染症後の発症が多いとされる. 急性散在性脳脊髄炎の特殊病型として急性小脳炎をとらえる

え方もある.

画像診断 片側あるいは両側の小脳を侵し,T 2強調画像と FLAIR 画像にて高信号領域を示す.T 1強調画像 で等信号または低信号を示す.その 布は血管の支配領域に一致せず,虫部よりは半球により強いこと が多い.自験例では片側性が多いが両側性のこともある.皮質と白質の両方を侵す.初期には軟膜ある いはくも膜下腔に

った造影効果を認め,遅くなると造影効果は消失する.mass effect を有し,ときに

圧排による脳室拡大を示し,シャントを必要とする例もある. 脳梁病変を伴った成人急性小脳炎の 24歳女性例の報告がある. (CD-ROM 参照)


症例 -

症例

参 資料

鑑別診断 1.ウイルス感染(特に水

瘡)やワクチン接種後の急性小脳失調:髄液・画像で変化がないことが多

く,病歴から診断する.自然治癒する. 2.小脳梗塞:椎骨動脈解離などで発生する.血管の支配領域に一致した T 2強調像での高信号領域, 造影効果は皮質全体にわたる(小脳炎は軟膜中心). 3.小脳腫瘍:T 1強調画像にて明瞭な低信号,腫瘤を示す明らかな造影効果. 4.薬物中毒:抗てんかん薬を飲んでいれば,フェニトイン,カルバマゼピンなど.病歴,失調の他 に,嗜眠傾向がある. 5.ギラン・バレー症候群:末梢神経障害で知覚神経障害(深部知覚が主に障害される)が主体のもの. ふらつきがあって,手の巧緻運動ができなくなる. 6.フィッシャー症候群,脳幹脳炎:小脳には MRI にて通常病変がない.後者では脳幹に病巣を MRI にて認める. 7.ランゲルハンス細胞組織球症:下垂体茎の腫大. 8.急性散在性脳脊髄炎:小児では小脳失調にて発症する例がある.大脳内に病変の存在. 9.前 神経の異常の可能性 10.発作性めまい:反復発作性である.

症例 A

歳,男子 小脳炎

3月 3日より発熱,3月 4日けいれん 2回あり,3月 5日意識レベル低下あり入院.髄液所見異常な し.四肢緊張低下,筋緊張低下あり.3月 8日の FLAIR 画像にて,左小脳半球上部に異常な高信号領 域を認める(図 1の矢印).造影後の右半球には造影効果を認める(図 2,3).血管の支配領域に一致せ ず,小脳炎と診断した.2回目の MRI を 3月 15日に施行した(図 4∼7).FLAIR 画像(図 4,5)および T2 強調画像(図 6)にて右小脳半球全体を占める高信号領域を認めた.もはや造影効果を認めない(図 7).3月 16日よりプレドニゾロン内服開始.神経症状は徐々に回復し,4月 12日プレドニゾロン 止.現在,神経症状はほぼ完全に回復している.

日 FLAIR 画像

同造影後の T 強調画像

同造影後の T 強調画像


症例 -

日 FLAIR 画像

同 T 強調画像

同 FLAIR 画像

同造影後の T 強調画像


症例 -

症例 B

歳,女性 急性散在性脳脊髄炎

4月 10日,発熱,頭痛,嘔吐が続き,13日他院入院.15日,項部強直を認め,髄液細胞数 85/3リ ンパ球優位を認めた.左共同偏視,眼振があり,当院に 16日入院.その他の所見として,軽度の意識 障害,右の軽い小脳症状.髄液細胞数 221,蛋白 72,髄鞘塩基性蛋白陽性,オリゴクローナルバンド陰 性. 4月 16日撮像された FLAIR 画像(図 8,9)で右小脳のほぼ全体および大脳白質に高信号を示し,小 脳には明らかな mass effect を有する病変がある.造影効果を認めた.急性散在性脳脊髄炎と診断した. 小脳を中心に,さらに大脳白質を侵す形態を取った.小児の急性小脳炎に近い形態を取っている.ステ ロイド治療によって順調に回復した.

FLAIR 画像

FLAIR 画像

●参 文献 1 De Bruecker Y, et al. MRI findings in acute cerebellitis. Eur Radiol. 14(8):1478-83, 2004. 2 Montenegro MA, et al. Neuroimaging of acute cerebellitis. J Neuroimaging. 12(1):72-4, 2002. 3 板橋亮,他:脳梁病変を伴った成人急性小脳炎の 1例,神経内科 59(3):292-6,2003.


症例 歳,女子 突然の頭痛,嘔吐,意識障害 7月 17日,午後 9時頃,頭痛,嘔吐に続き,意識消失,失禁.

日の造影 CT

同造影 CT

(東京大学医学部附属病院放射線部,森墾先生の厚意による)

同造影 CT


症例

もやもや病による側脳室内出血 解説 画像所見:左優位の脳室内出血があり,ウィリス動脈輪の造影効 果(特に前大脳動脈)が不十 で,右大脳基底核に点状の造影効果が あり,もやもや病が

えられる.約 1ヶ月後の T 1強調画像(図 4)

では左前角に血腫が残存し,出血源がこの近くにあることが えら れる.さらに右大脳基底核を中心に異常な flow void が認められ, もやもや病が疑われる所見である.血管造影(非掲載)で,両側内頸 動脈終末部の狭窄があり,もやもや病の診断がついている.

臨床 もやもや病は原因不明の両側内頸動脈終末部の狭窄ないしは閉塞 を示す疾患である.小児期(9歳以下)では一過性脳虚血発作,けい れん,梗塞で発症する例が多く,出血で発症する例は少ない.成人

T 強調画像

(30∼39歳)では出血にて発症する例が多い.日本人の小児,若年 成人の側脳室内出血をみたときには常に,もやもや病を 慮するこ とが必要である.

画像診断 もやもや病による出血は側脳室周囲(尾状核,視床)に多い.しばしば側脳室内に穿破する.脳室内出 血のみの場合もある.その他には上衣下,皮質下に好発する.ときに 膜下血腫を伴い,合併動脈瘤破 裂によるくも膜下出血をみることもある. Aoki の報告によると,53歳と 51歳の高血圧のない男性患者に尾状核出血が起こり,CT では尾状核 から側脳室内に出血,血管造影にて中大脳動脈の閉塞,もやもや血管を認め,1例では中大脳動脈の閉 塞に加え,前大脳動脈に動脈瘤を認める(文献 4).成人の尾状核出血を見たときには中大脳動脈あるい は内頸動脈閉塞も

慮して MRI をみることも必要である.

(CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Takahashi M,et al.Intraventricular hemorrhagein childhood moyamoya disease.J Comput Assist Tomogr.4(1):117-20, 1980. 2 Maekawa M, et al.[Moyamoya disease with intraventricular hemorrhage due to rupture of lateral posterior choroidal artery aneurysm:case report].脳神経外科 27(11):1047-51, 1999. 3 Irie F, et al. Primary intraventricular hemorrhage from dural arteriovenous fistula.J Neurol Sci.215(1-2):115-8,2003. 4 Aoki N.Caudate head hemorrhage caused byasymptomatic occlusion of the middle cerebral artery.Surg Neurol.27(2): 173-6, 1987.


症例 -

症例 症例 A

参 資料

歳,男性

2002年 12月 30日スキーの最中に,意識レベルの低下あり,救急車で他院に搬入された.瞳孔等大, JCS 100,自発呼吸はあり.CT で全脳室に出血あり,挿管され当院に搬送となった.搬送中に瞳孔不 同となった.入院後緊急で両側ドレナージを施行した.その後出血源検索のための血管撮影を施行.翌 31日小開頭血腫除去術,ドレナージの追加などを行うも改善なく,1月 1日死亡. CT(脳室ドレナージ後)に左優位の脳室内出血が残り,第三脳室,第四脳室にも血腫を認める(図 1, 2).左内頸動脈撮影で,内頸動脈終末部の狭窄があり,多数のもやもや血管を出している(図 3,4). 後 通動脈を介し,椎骨脳底動脈系が描出されている.動脈瘤は認めない.

入院時の CT

左内頸動脈造影

入院時の CT

左内頸動脈造影

(秋田県立脳血管研究センター,岡根久美子先生および石亀慶一先生の厚意による)


症例 -

症例 B(剖検例)

歳,女性(主婦) 脳内出血―もやもや病

突然頭痛と嘔吐が出現し,意識障害が加わる.頭部 CT で脳室内出血と診断され都立神経病院に翌日 緊急入院.脳室ドレナージが行われたが 3病日脳死となり,7病日死亡. 剖検所見 肉眼所見では,両側の内頸動脈(矢印)や前大脳動脈(矢頭)を中心に脳底部動脈は高度に狭小化し,異 常血管網も認められたが動脈瘤は同定されなかった(図 5).中大脳動脈,エラスチカ・ワンギーソン (EV)染色,内腔は高度に狭窄,内膜は肥厚し,内弾性板も異常な屈曲を示した(図 6).割面では,大 脳は浮腫により腫大,両側の側脳室に血液が充満し,右側脳室後角に接する実質には小出血巣(矢印)を 認めた(図 7).

脳底部動脈

中大脳動脈(EV染色)

大脳水平断での脳内出血

●参 文献 1 Aoki N.Caudate head hemorrhage caused byasymptomatic occlusion of the middle cerebral artery.Surg Neurol.27(2): 173-6, 1987. 2 Sato M,et al.Moyamoya-likediseases associated with ventricular hemorrhages:report ofthreecases.Neurosurgery.17(2): 260-6, 1985. 3 Seki Y,et al.Spontaneous middle cerebral arteryocclusion leading to moyamoya phenomenon and aneurysm formation on collateral arteries. Surg Neurol. 55(1):58-62;discussion 62. 2001. 4 Hamada J, et al. Moyamoya disease with repeated intraventricular hemorrhage due to aneurysm rupture.Report of two cases. J Neurosurg. 80(2):328-31, 1994.


症例 歳,女性 急激な発熱,頭痛,嘔吐

T 強調画像

同造影後

(帝京大学医学部附属病院放射線科,大場洋先生の厚意による)

T 強調画像

造影後の冠状断像


症例

脳静脈洞血栓症 解説 画像所見:左上前頭回から中心前回にかけて皮質下白質を中心に高信号領域を T 2強調画像で認め る.mass effect はない.前大脳動脈および中大脳動脈の両方にわたり,動脈閉塞による脳梗塞としては 合いにくい.T 1強調画像では同領域は低信号を示す.上矢状洞の一部に高信号があり,静脈洞血栓の 可能性がある(図 2).血栓が疑われる病変は T 2強調画像では低信号を示す.造影後の T 1強調画像で は脳実質内の低信号領域に造影効果を認めない.左中心溝内には点状の造影効果を認めるが,静脈内に 造影効果が起こっている可能性はある.冠状断像では矢状洞の壁あるいは側副血行路が造影されている のに対して,矢状洞中央部には造影効果がなく,静脈洞血栓を示している(emptydelta sign).なお下部 のスライスでは右横静脈洞にも血栓を認める. 上矢状洞血栓症では血栓のスライス面が軸位像ではその短軸方向になるので,冠状断像がわかりやす い.本例も冠状断の T 2強調画像(図 5)および FLAIR 画像(図 6)で,血栓自体を高信号領域として, 上矢状洞内に捉えることができた(矢頭).上矢状静脈血栓症を疑ったら冠状断像が必要である.しかし 脳実質内の信号強度異常領域がどの血管の支配領域であるかは軸位像がよりわかりやすい. 本例は潰瘍性大腸炎を有する患者であり,その合併症としての脳静脈洞血栓症であった.潰瘍性大腸 炎における腸管外合併症として全身の動静脈血栓症・塞栓症はよく知られるが,その多くは深部静脈血

栓症や肺塞栓症であり,他の部位は稀である.hypercoagulabilityに関係があると言われている.

T 強調画像

FLAIR 画像

臨床 症状としては頭痛,うっ血乳頭,片麻痺,けいれんなどがある.好発部位は上矢状静脈洞,横静脈 洞,直静脈洞の 3カ所である.いずれの部位においても頭痛のみの軽症例から致死的な出血を来すもの まである.けいれんにて発症し,局所的な神経症状があり,頭蓋内圧の亢進がないときには本症を 慮 する. 通常は原因不明が多い.Box 6に示すような原因が認められることもある. (CD-ROM 参照)


症例 -

症例

参 資料

画像診断 血栓自体と,血栓症で起こる脳実質の変化に けて える. 1.静脈洞血栓自体の画像診断 造影前の CT にて皮質静脈に比べ静脈洞の吸収値の上昇を認める(cord sign,CD-ROM 参照). 造影後の CT では造影された静脈洞内に造影されない血栓を認める(empty delta sign:約 25∼30%に 認められる).CT venogram では静脈洞内に造影されない領域として血栓を描出できる. T 1強調画像では急性血栓は等信号であり,亜急性期では高信号を示す. T 2強調画像では急性期では低信号を示す.正常の静脈洞の flow void と区別がつかない.亜急性期 では高信号を示す.慢性期では線維化が進み,等信号となる. FLAIR 画像では血栓は高信号を示す.グラディエントエコー法では血栓は低信号を示し,ブルーミ ング(周囲にも低信号が広がる現象)を認める.拡散強調画像でも 40%に高信号領域を認める. 造影後の T 1強調画像では血栓周囲に造影効果があるが,中心部にはない.慢性期の血栓では線維化 が進み造影効果を認める. 2DTOF 法を

用した MRV では血栓により血流がなくなる.血栓からの高信号は抑制し flowのみ

が高信号として認められる. 血栓はけいれんあるいは局所神経症状で発症し,血管血管造影では血栓部位が造影されない. 2.静脈洞血栓症に付随する脳所見 静脈性梗塞が CT で 50%に認められる.皮質・皮質下の点状出血と浮腫である.動脈支配領域に合 わない出血・梗塞をみたら,第一に静脈血栓症を疑う.また,両側性の脳内出血や片側性の出血が両側 に移行する場合,また,片側性の出血であっても通常の高血圧性脳内出血とは形状が異なる場合には静 脈洞血栓症を疑う.直静脈洞あるいは内大脳静脈の閉塞では両側あるいは片側の視床および大脳基底核 に低吸収域を認める. 低信号および高信号の混在した像を示す. T 2強調画像では静脈性梗塞は mass effect を伴い, FLAIR 画像では静脈性梗塞は高信号領域を示す.グラディエントエコー法では微小出血が低信号を示す. 拡散強調画像では脳実質の変化は様々である.血管性浮腫と細胞毒性浮腫との混在の画像を示す.脳 実質の変化は動脈性梗塞に比べてより可逆的である.高信号領域が消失することもある.

Box

静脈洞あるいは静脈血栓症の原因疾患

比較的よくある

稀である

妊娠/産褥期

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病)

感染

神経ベーチェット病

脱水

ループス抗凝固因子の存在

経口避妊薬

発作性夜間性ヘモグロビン尿症

血液性疾患,凝固異常

薬剤乱用

腫瘍(局所的浸潤,髄膜腫など)

全身性悪性腫瘍,傍腫瘍性症候群

外傷 AVM と AVF による二次的な高血流状態


症例 -

症例 A

歳,男性

右後頭部痛,嘔吐があり,CT で異常と言われた.

5月 27日,右後頭部痛,29日に嘔吐,他院受診し,CT で異常と言われ入院する.髄液圧が高く,

54mm H2O であった.

日の CT

日の CT

造影 CT

造影 CT

解説 造影前の CT で右横静脈洞に一致し高吸収域を認める(図 1,2の矢印).左の正常の横静脈洞(図 1の 矢頭)の CT 値に比べて著しく高い.急性期の静脈洞血栓を示す.造影後の CT(図 3)では,右横静脈洞 は造影不良で,造影効果のない部位(矢頭)は血栓を示す.冠状断像(図 4)でも横静脈洞の造影には左右


症例 -

差があり,右の最外側部には造影欠損(矢印)があり,血栓を認める(emptydelta sign).さらに上矢状洞 内にも中央部には造影欠損があり(矢頭),血栓を認める(empty delta sign). 以上,横静脈洞と上矢状静脈洞血栓症の所見である.脳実質内には梗塞,出血を示す部位はない.比 較的軽症ですんだ症例である.なお脚間槽左側に脂肪腫(図 2の矢頭)を認める.偶然の合併例である.

症例 B(剖検例)

歳,男性

静脈洞血栓症

22歳でてんかん発作が出現,抗けいれん剤を内服していた.死亡 1ヶ月前,下肢に血栓性静脈炎が みられ外科で治療を受けていた.頭痛,嘔吐,上肢運動障害がみられ,突然意識消失,一旦回復するも 死亡. 剖検所見 上矢状静脈洞,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,静脈洞が器質化した血栓(※印)により閉塞し ていた(図 5).線条体頭部の大脳割面,ヘマトキシリン・エオジン+ルクソール・ファースト・ブルー (HE・LFB)染色,両側の前頭葉皮質に,動脈支配に一致しない出血を伴う軟化病巣がみられ,脳浮腫 のため,皮質は腫大,白質の染色性は低下していた(図 6の矢印).

上矢状静脈洞の血栓による閉塞(HE 染色)

大脳冠状断(HE・LFB 染色)


症例 -

症例 C(剖検例)

歳,女性

60歳で高血圧を指摘され降圧剤を服用していた.68歳になり頭痛,左片麻痺が出現,頭部 CT・ MRI 検査で右頭頂葉の出血性梗塞と上矢状静脈洞と右頭頂葉内の線状部の T 1-T 2高信号を認め,静 脈血栓症が疑われた.突然の意識消失と血圧低下により死亡. 剖検所見 上矢状静脈洞の割面,白色調の器質化した血栓が詰まった(図 7の矢印).大脳水平断,ヘマトキシリ ン・エオジン染色,右中心後溝周辺の皮質の色調が不良であった(図 8の矢印).右頭頂葉の上大脳静 脈,ヘマトキシリン・エオジン染色,周辺の動脈に比べ,写真中央部の静脈は壁が器質化し,内腔が閉 塞していた(図 9の星印).

上矢状静脈洞の血栓による閉塞

右頭頂葉の上大脳静脈(HE 染色)

右大脳水平断(HE 染色)


症例 ●参 文献 1 Ducreux D, et al. Diffusion-weighted imaging patterns of brain damage associated with cerebral venous thrombosis. AJNR Am J Neuroradiol. 22(2):261-8, 2001. 2 Lafitte F, et al. Deep cerebral venous thrombosis:imaging in eight cases. Neuroradiology. 41(6):410-8, 1999. 3 Derdeyn CP, et al. Isolated cortical venous thrombosis and ulcerative colitis. AJNR Am J Neuroradiol. 19(3):488-90, 1998. 4 江面正幸:静脈血栓症,高橋昭喜編:脳血管障害の画像診断.中外医学社,289-96,2003. 5 西村正樹,他:上大脳静脈血栓症による出血性脳梗塞の一例―継時的 MRI 及び剖検所見.臨床神経学 30(8):864-8, 1990. 6 Mathieu H. et al. Cerebral venous thrombosis and multidetector CT angiography: Tips and Tricks RadioGraphics. 26(suppl.1):S5-S18, 2006. 7 James L.et al.lmaging of cerebral venous thrombosis:Current techniques,spectrum of findings,and diagnostic pitfalls. RadioGraphics. 26(suppl.1):S19 -S41, 2006.


症例 歳,男性

時間前発症の軽い左片麻痺

脳梗塞の疑いがある.

(三輪書店

拡散強調画像

FLAIR 画像

脳神経外科の常識非常識

より許可を得て転載)

T 強調画像


症例

超早期の脳梗塞 解説 画像所見:図 1の拡散強調画像では異常を認めない.超早期の梗塞において,拡散強調画像は万能で はない.発症 3時間経過すると多くの症例が拡散強調画像で異常を認めるが,脳実質の信号強度変化を 認めない症例もある.翌日に撮像した拡散強調画像では高信号領域を右レンズ核後部に認めている(図 4). T 2強調画像で左側のシルヴィウス裂内の flow void は正常なのに対し,右のそれは同定できない. また FLAIR 画像では,右シルヴィウス裂内に点状の高信号領域を認め slow flowがあることを示す. MRA(図 5の矢印)では右中大脳動脈に狭窄を認める. 超早期(発症 3時間以内の)梗塞が疑われるときには,拡散強調画像のみではなく他の画像も注意して みる必要がある.信号強度変化よりも flow void の消失が先にみられる.

翌日の拡散強調画像

MRA画像

超早期(発症数時間以内)の脳梗塞の画像診断 MRI 1.正常の flow void の消失:T 1強調画像では椎骨動脈は閉塞がなくても flow related enhancement に よりしばしば高信号を示す.T 2強調画像あるいは T 2 強調画像では急性期の血栓が低信号として 描出されることもあるので注意する. 2.血管内の造影効果:造影後の T 1強調画像にて側副路(脳軟髄膜吻合を介した逆行性の遅い血流)の 造影効果をみる. 3.FLAIR 画像において,遅

・停滞した血流による血管の変化を低信号を示す脳脊髄液の中に,高

信号として描出される. 4.ADC 値の低下(灰白質優位) 5.灌流画像の異常 (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

CT 1.内頸動脈終末部や中大脳動脈近位部の塞栓性梗塞で,最早期所見として,レンズ核周辺の不明瞭化 が発症 1∼2時間以内に認められる. 2.梗塞域の かな低吸収域が出現し,皮質・皮質下境界の不明瞭が認められる.島回ではこの所見が 早期に認められる.この低吸収域は細胞毒性浮腫が虚血巣期には灰白質優位に生じるためと

えら

れる.このような微妙な低吸収域は CT 画像のウインドー幅を って観察するとみやすい. 3.中大脳動脈などの塞栓子自身が動脈に一致した高吸収域を示す(dense MCA sign).この所見が認め られるときには塞栓性梗塞であることが多い.この所見は擬陽性もあるので注意する.Box 7に注 意する.

Box

dense MCA sign

1.単純 CT で認められる.

3.骨条件にて高吸収域は消失

2.中大脳動脈水平部の一部が周囲脳組織や

4.一側性(臨床症状と一致)

他の血管より高吸収域

(文献 4より引用)

●参 文献 1 Osborn AG. Cerebral ischmeia and infarction, in Diagnostic Neuroradiology, Mosby, Philadelphia, PA, 341-9, 1994. 2 Grossman RI, Yousem DM. Vascular diseases of the brain, In Neuroradiology the requisites, 2nd ed.Mosby,Philadelphia, PA 183-96, 2003. 3 Beauchamp NJ Jr, Ulug AM, Passe TJ, van Zijl PC. MR diffusion imaging in stroke: review and controversies. Radiographics. 18(5):1269 -83;discussion 1283-5, 1998. 4 日向野修一:脳梗塞一般,高橋昭喜編:脳血管障害の画像診断.中外医学社,133-149,2003.


症例 歳,男性 髄膜炎 ? 4月 23日頭痛,嘔気,微熱がある.風邪と言われたが微熱感が続く.見当識障害などがあり,髄膜 炎の疑いで 5月 11日に入院. (造影後の T 1強調画像では異常な造影効果をくも膜下腔に認めない)

(三輪書店

日 の CT

脳神経外科の常識非常識

より許可を得て転載)

日の FLAIR 画像


症例

★ 行 送 り 変

くも膜下出血と水頭症 解説 画像所見:CT(図 1)では脳室拡大が認められる.左シルヴィウ ス裂は正常の低吸収域として認められるが,右のそれはやや高吸収

中 ★

域を示している.髄膜炎と えるよりは,発症 3週間はたっている が,くも膜下出血を 慮すべき所見である. 確認のために,5月 13日に MRI を撮り,FLAIR 画像(図 2)に て右シルヴィウス裂に線状の高信号領域を示すくも膜下出血を確認 する.造影後の T 1強調画像では異常な造影効果をくも膜下腔に認 めない点も,髄膜炎よりはくも膜下出血をより示す.MRA(図 3) にて前

MRA画像

通動脈動脈瘤(矢印)を認め,右前大脳動脈水平部に血管れん縮を認める(矢頭).

44歳では,シルヴィウス裂に低吸収域を正常 CT では認める.その低吸収域がみえないのは異常で ある.そのみえ方に左右差があるときには,髄膜炎によるびまん性の病変よりは,局所的なくも膜下出 血を頭痛のある例では積極的に える.

臨床 くも膜下出血も髄膜炎もともに頭痛がある.画像診断なしでは,究極的な鑑別は困難である.

くも膜下出血の画像診断 発症当日は CT で脳脊髄液が高吸収域を示す.その鑑別は Box 8を参照. 時間の経過とともに,くも膜出血が脳実質と等吸収域を呈し,不明瞭化ないしは消失したり,脳室内 に逆流した血液による

かな脳室内の高吸収域(ときに液面形成)がくも膜下出血を示唆する所見とな

る.また, 通性水頭症所見のみが認められることがある. CT にて等吸収域を示す時間の経ったくも膜下出血でも FLAIR 画像に脳溝内に高信号領域として認 められる(Box 1参照).造影後の T 1強調画像にて髄膜炎ではくも膜下腔の浸出物に造影効果を認める が,くも膜下出血ではそのようなことはない.

Box

CT で高吸収域を脳溝内にみたときには何を えるか

1.急性のくも膜下出血(動脈瘤破裂あるいは 外傷による) 2.ヨードを含んだ造影剤(脳脊髄液内)

4.脳浮腫(脳が低吸収域を示すので,相対的 に高吸収域を示す) 5.CT で,脳溝,くも膜下腔がよくみえな

3.蛋白含量の多い浸出物(melaonocytosis で

いときには,頭蓋内圧亢進(大きな腫瘤の

は CSF 中に多量の蛋白を含むために高吸

存在,静脈洞血栓症),低髄圧症候群(脳

収域として認められる.炎症性疾患など

の下垂)も 慮する.

も同じである.

参照

Box

FLAIR 画像での脳脊髄液の高信号(CD-ROM 症例 1)

●参 文献 1 Osborn AG, Blaser SI, Salzman KL. Brain100 top diagnosis, WB Saunders 58-9, 2002. 2 Loevner LA. Case review Brain imaging, Mosby, Philadelphia, PA, 245-6, 1999.


症例 歳,男性 腰椎部と三叉神経に腫瘍があり,神経線維腫症Ⅰ型(NF )と言われた 約 10ヶ月前に左筋力低下があり,他院受診.腰椎 MRI で多発性の腫瘤がみつかり,脳内にも両側 三叉神経に って腫瘍があり,背部のカフェオレ斑より神経線維腫症と診断され手術の適応がないと診 断された.second opinion を求め当院入院.右動眼神経麻痺,両側三叉神経障害,両側顔面神経麻痺, 両側下肢の麻痺,右振動覚の低下を認める.

ヶ月前の他院の造影後の

当院の CT

同 T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

拡散強調画像

造影後の T 強調画像


症例

胚芽腫 解説 画像所見:CT で,両側小脳橋角部から中頭蓋窩の内側半

にかけ,高吸収域を示す腫瘤を認める.

T 2強調画像で皮質と同様な信号強度,T 1強調像では低信号を示し,拡散強調画像では高信号を示す. 以上の所見は細胞密度の高い腫瘍を示唆する. 一な造影効果を認める.約 7ヶ月前の他院の画像に比 べて腫瘍の拡大が顕著である.以上の所見より神経鞘腫は否定され,胚芽腫あるいは悪性リンパ腫が えられた.若年男子であり,正中近くに左右対称性の腫瘍であること,NF1 の合併の可能性があるこ とより,胚芽腫が最も えられ,生検にて確認した.

臨床 果体部および鞍上部が好発部位であるが,その他に大脳基底核と視床に 5∼10%あり,稀な部位と して,第三脳室内,鞍内, 髄(文献 1),脊髄内,および大脳半球がある.中頭蓋窩は非常に珍しい. 合併する異常としては,クラインフェルター症候群(文献 2),ダウン症候群(文献 3),神経線維腫症 型(文献 4)がある.胎盤アルカリフォスターゼが上昇することがあり,血清および髄液のヒト絨毛性 性腺刺激ホルモン(HCG)の上昇を認めることがある.

画像診断 CT では境界明瞭な皮質より高吸収域を示す. T 2強調画像では皮質と比べて低信号や等信号を示し,細胞密度が高いあるいは核・細胞比が高い腫 瘍を示す.拡散強調画像では高信号を示し,高密度の腫瘍のため拡散係数が低下している. 一な造影 効果を認める.

鑑別診断 1.悪性リンパ腫:部位が悪性リンパ腫としては非常に稀である.両側対称性はリンパ腫としては合い にくい. 2.神経鞘腫(神経線維腫症に合併):信号強度,CT 値,成長の早さが合わない. 3.髄膜腫:成長の早さが合わない.

生検時の注意 胚芽腫は肉芽腫様の組織反応を示すことがあり,小さな生検材料ではそこの部 のみをみてしまい, 肉芽腫と診断が誤ることがあるので注意が必要である(文献 5). ●参 文献 1 Nakajima H, et al. Primary intracranial germinoma in the medulla oblongata. Surg Neurol. 53(5):448-51, 2000. 2 Nakata Y,et al.Two patients with intraspinal germinoma associated with Klinefelter syndrome:case report and review of the literature. AJNR Am J Neuroradiol. 27(6):1204-10, 2006. 3 Nakashima T,et al.Germinoma in cerebral hemisphere associated with Down syndrome.Childs Nerv Syst.13(10):5636, 1997. 4 Wong TT,et al.Familial neurofibromatosis 1 with germinoma involving the basal ganglion and thalamus.Childs Nerv Syst. 11(8):456-8, 1995. 5 Lantos LL,et al.Tumors of the nervous system.eds Lantos et al.Greenfield s Neuropathology7th ed.Arnold,London volume 2, 945-7, 2004.


症例 歳,男性 発熱後の意識障害 3月 6日悪寒,3月 7日に発熱,3月 13日には錯乱状態,項部

直がある.一度,意識状態の改善が

あったが再増悪,3月 30日入院

FLAIR 画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像


症例

ヘルペス脳炎

解説 画像所見:右側頭葉尖端部内側,両側島回前部,帯状回に高信号を FLAIR 画像で認める.帯状回の 一部には脳回に った造影効果(gyriform enhancement)を認める.髄質静脈が造影され,目立つ.

臨床 1型は主として成人と小児が侵される.新生児に発生する 2型とは異なる.小児では成人とは異な り,非典型的な侵され方を示す. 両側非対称的に,側頭葉,島回,前頭葉眼窩面および帯状回を侵す.出血と壊死を主体とした髄膜脳 炎である.被 の外側は侵されず,鮮明にその境界部が認められることも特徴である.

画像診断 T 2強調画像および FLAIR 画像では高信号を示し,グラディエントエコー法では一部に出血を認め る.側頭葉内側部および反対側の帯状回の病変は本症に特徴的と言われている.しかし,非ヘルペス性 辺縁系脳炎でも同様なパターンを示す.非ヘルペス性辺縁系脳炎では側頭葉尖端部を侵すことは稀であ る.ヘルペス脳炎では側頭葉内側を侵さず,外側のみを侵すことは稀である(CD-ROM の梗塞例との 違い,CD-ROM 参照). 拡散強調画像では高信号を早期に示すことが多い.梗塞の有無あるいは予後と関係があるとされてい る.本例では撮像時期が遅かったためか,拡散強調画像では高信号を認めていない. 図 4のように,脳回に った造影効果(gyriform enhancement)が認められる. 鑑別診断(側頭葉内側部を侵す疾患) 1.神経膠腫 2.神経膠腫症 3.脳梗塞(CD-ROM 参照) 4.脳梅毒 5.けいれん後脳症:側頭葉内側部が侵され,拡散強調画像にて高信号を示す.高信号を示す期間が短 い.さらに,けいれんの止まった後に他の症状の有無が鑑別に重要である. 6.非ヘルペス性辺縁系脳炎:側頭葉尖端部を侵すことは少ない.造影効果がないことが多い.

Box

ADC 値の低下,拡散強調画像で高信号を示す非腫瘤性病変

1.ヘルペス脳炎

キャナバン病

2.カルモフール白質脳症

異染性白質ジストロフィー

3.クロイツフェルト-ヤコブ病

非ケトン性高グリシン血症

4.びまん性軸索損傷

かえでシロップ尿症

5. 膜下蓄膿

メチオニンアデノシール転換酵素欠損症

6.低酸素性虚血性脳症

(MAT dificiency)

7.急性期脳梗塞

10.けいれん重積

8.多発性 化症

11.線条体梗塞による二次変性

9.代謝性疾患

12.静脈性梗塞

フェニールケトン脳症 (CD-ROM 参照)

13.ワーラー変性


症例

症例

-

資料

脳回様造影効果を示す疾患

Box

よくある症例

比較的稀な症例

脳梗塞

けいれん後脳症

脳炎(ヘルペス脳炎)

神経膠腫症

脳挫傷

浸潤性脳腫瘍

稀な症例 結節性

化症

軟膜下への転移

症例 A

歳,男性 左中大脳動脈領域の出血性梗塞,頭痛,日付が言えない

62歳,男性,2週間ほど前より咽頭痛がある.12月 4日朝より頭痛.日付が言えず,他院にて MRI を撮り,ヘルペス脳炎と言われた.12月 5日に入院,同日の MRI.

T 強調画像

拡散強調画像

解説 左側頭弁蓋に一致して病変を認める.シルヴィウス裂への mass effect はない.T 2強調画像では不 一な高信号を示し,拡散強調画像でも同様な所見を示す.造影後には病変の中に血管を示す構造が造影 され,arterial enhancment が えられる(図 3矢頭).病変に接する髄膜にも造影効果がある. この部位に

えられる疾患としては梗塞,グリオーマ,および脳炎が

えられる.腫瘍としては

mass effect がなく,拡散強調画像にて高信号を示しながら,実質内に造影効果のないことが合いにく い.ヘルペス脳炎では側頭葉の外側のみが侵されることは通常はなく, 内側部を侵す.arterial enhancement は認められない. 約 3週間後に施行された造影後の T 1強調画像(図 4)では梗塞内に脳回に れ,脳梗塞であったことが判明する.

った造影効果が認めら


症例

-

▼ ▼ ▼ 図

造影後の T 強調画像

週間後の造影後の T 強調画像

脳梗塞の MRI(超早期の変化)

Box 直後

12時間以内

正常の flow void の消失

T 1WI での解剖学的変化

血管内造影効果

脳溝の狭小化

enhancemnet ADC 値の低下 perfusion の変化

intravascular contrast

脳回の浮腫 皮質白質境界の不鮮明 12∼24時間 T 2WI での高信号領域の出現 梗塞に接する髄膜の造影効果 mass effect


症例

症例 B(剖検例)

歳,女性

-

ヘルペス脳炎

死亡 1ヶ月前,突然,高熱と意識障害が出現,脳脊髄液で単純ヘルペスウイルスに対する抗体が上 昇,抗ウイルス薬の治療にもかかわらず全経過 27日で死亡. 剖検所見 大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色.側頭葉と島回皮質の破壊(図 5の矢頭)と帯状回皮質 の軟化がみられた(図 6の矢頭).側頭葉皮質,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,組織の壊死と血

管周囲性の細胞浸潤を認めた(図 7).

▲ 図

左側頭葉冠状断(KB 染色)

右帯状回冠状断(KB 染色)

側頭葉皮質(HE 染色)

●参 文献 1 Sener RN.Herpes simplex encephalitis:diffusion MR imaging findings.Comput Med Imaging Graph.25(5):391-7,2001. 2 Bash S, et al. Mesiotemporal T2-weighted hyperintensity: neurosyphilis mimicking herpes encephalitis. AJNR Am J Neuroradiol. 22(2):314-6, 2001. 3 Leonard JR, et al. MR imaging of herpes simplex type 1 encephalitis in infants and young children:a separate pattern of findings. AJR Am J Roentgenol. 174(6):1651-5, 2000. 4 Osborn AG. Diagnostic Neuroradiology, Mosby, St. Louis. 347, 1994.


症例 歳,男性 年前より始まる歩行障害,構音障害があり,進行性である.小脳失 調,パーキンソン症状を認める

T 強調矢状断像

T 強調画像


症例

進行性核上性麻痺(PSP) 解説 画像所見:中脳被蓋に軽い萎縮を認める.脚間窩の最下部から, 四丘体の最下部にかけて直線を引き,脚間窩から中脳被蓋の最後部 (中脳水道)までの距離を測ると,9mm あり,有意な萎縮を中脳被 蓋に認める.橋底部の膨らみは保たれている.小脳の軽度の萎縮が あり橋は正常である.橋横走線維にも変性を認めない.被 にも異 常を認めない.臨床では多系統萎縮症を疑っていたが,否定でき る.さらに 3年後の T 1強調矢状断像(図 3)では中脳被蓋の萎縮が より著明となり(矢印),進行性核上性麻痺(PSP)の診断が明瞭とな

T 強調矢状断像

る.橋底部の膨らみは保たれているが,橋被蓋に軽度の萎縮が疑わ れる.臨床所見においても垂直性眼球運動障害が明瞭となり診断は 確定した.

臨床 本症には診断基準が設定されている.Possible PSP は 40歳以降の発症の進行性の疾患で,垂直方向 の眼球運動麻痺もしくは,垂直方向の衝動性眼球運動の遅

と不安定な姿勢を示す.Probable PSP は

垂直方向の眼球運動障害があり,著明な不安定な姿勢があり,発症 1年以内に転倒を認める.Possible PSP のその他の徴候を認める.Definite PSP は Possible PSP もしくは Probable PSP の臨床徴候に加え て,病理組織学的に典型的な病理所見を有する. 50∼60歳代に転倒しやすいなどの歩行障害で発症することが多い.動作緩慢,固縮などパーキンソ ン病に類似するが,L-dopa にあまり反応しない.また頸部が伸展位をとり,特徴的な注視麻痺(随意 的な眼球運動の麻痺があるが,他動的に頭を動かすと眼球が動く:dolls eye movement が陽性),感情 失禁,認知症を認める. 従来,小脳失調が初期からある例では PSP は否定されていたが,初発症状あるいは主症状が小脳失 調である PSP が最近認められる(文献 3 CD-ROM 参照).転倒傾向などの PSP を示唆する他所見も 認められる.MRI 読影に当たり,小脳のみではなく,中脳被蓋にも矢状断像にて注意する必要がある.

画像診断 画像では正中矢状断像における中脳被蓋(中脳水道から脚間窩までの距離)の萎縮が唯一の所見である ことが多い.橋底部の膨らみが保たれながら,中脳被蓋の萎縮を認めるときには PSP の可能性が最も 高い.中脳の横断像は評価が困難なことが多い.中脳被蓋の萎縮を伴う疾患は他にもあるが,その程度 は軽度で,しかも橋の底部の萎縮を伴うことが多い.本症では橋底部の膨らみが保たれていることが重 要である. ときに橋上部被蓋の信号強度が FLAIR 画像あるいは T 2強調画像で高いことがある(CD-ROM 参 照).正常例でも底部に比べて被蓋は高いので,その差異を注意してみる必要がある. 歩行障害があり,発症 1年以内に転倒傾向を示す症例には PSP を

え,画像診断では T 1強調画像

での矢状断像を忘れずにつけ加えることが必要である.SPECT では前頭葉の血流低下を認めることが 多い. (CD-ROM 参照)


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,男性 PSP

3年前より転倒傾向,2年前よりパーキンソン症状,1年前より計算ができない,下がみえにくい. 認知症が進行.下方視を含む垂直性眼球運動障害を認める. 中脳被蓋の萎縮が T 1強調画像で明らかであるが,FLAIR 画像では,中脳および上部被蓋に異常な 高信号領域を矢状断像および横断像にて認める(図 2,3の矢印). 中脳被蓋に萎縮を認め,FLAIR 画像で橋上部被蓋に高信号領域を認めれば,PSP に pathognomonic な所見である.中脳被蓋の萎縮に比べると信号強度異常の出現頻度は少ない. 正常例の FLAIR 矢状断像では,中脳被蓋,橋被蓋, 髄被蓋はほぼ同じ信号強度であり,橋底部に 比べると明らかな高信号領域を示す.PSP では,中脳被蓋および橋被蓋上部の信号強度が

髄被蓋の

それよりも高くなり,異常と診断できる(図 2).また,横断像でも中脳および橋上部の被蓋の信号強度 が高くなる.

T 強調矢状断像

同 FLAIR 画像

FLAIR 画像横断像


症例

-

症例 B

歳,男性 PSP の疑い

9年前より足のしびれ,7年前よりパーキンソン症状が出現し,徐々に進行.抗パーキンソン剤は効 果がない.4年前より構音障害,2年前より摂食障害.2年前から MRI で経過を追っているが,今回初 めて MRI にて PSP と診断可能になった. T 1強調画像矢状断像では中脳の前後径は 10mm と保たれているが(図 4の線 1),上下の高さが減少 し,その面積は 56mm と減少している(図 5の面積 1).FLAIR 画像の軸位像および矢状断像にて, 中脳および橋上部被蓋の信号強度の上昇を認める(図 6,7の矢印).さらに fast STIR 法で,淡蒼球の 萎縮と高信号を認める(図 8の矢印).以上の変化は PSP の病理学的変化に対応する.MRI でも PSP と 診断できる. Oba らによると PSP の中脳被蓋の面積平

は 56mm (33∼66)であり,正常対照群は 116.9(100∼

169)である(文献 4).

T 強調画像矢状断像

FLAIR 画像

fast STIR 法画像

T 強調画像矢状断像

FLAIR 画像


症例

症例 C(剖検例)

歳,女性

-

PSP

59歳頃から錐体外路症状の歩行障害,書字障害が出現.抗パーキンソン剤は無効で,漸次,錐体路 症状,核上性眼球運動障害,仮性球麻痺,認知症も加わり,頭部 MRI 検査では中脳被蓋の高度萎縮が 指摘される.肺炎のため死亡. 剖検所見 中脳(上段),橋上部(下段),クリューバー・バレラ(KB)染色,年齢相当対照に比べ(図 9),症例で は被蓋の高度の萎縮がみられた(図 10の矢印).大脳半球冠状断,ホルツアー(HZ)染色,淡蒼球に線維 性グリオーシスを認めた(図 11の矢印).中脳中心灰白質,ガリアス(Ga)染色,神経原線維変化や Glial tangleを多数認めた(図 12).

対照の中脳・橋(KB 染色)

症例の中脳・橋(KB 染色)

右大脳冠状断(HZ 染色)

中脳中心灰白質(Ga 染色)


症例

-

●参 文献 1 Litvan I,et al.Clinical research criteria for the diagnosis of progressive supranuclear palsy(Steel-Richardson-Olszewski syndrome):report of the NINDS-SPSP international workshop. Neurology 47(1):1-9, 1996. 2 Yagishita A, et al. progressive supranuclear palsy:MRI and pathologic findings. Neuroradiology 38(suppl.1):S60-6, 1996. 3 場郁子,他:小脳性運動失調の目立った進行性核上性麻痺の 1剖検例.神経内科 56(3):230-3,2002. 4 Oba H, et al. New and reliable MRI diagnosis for progressive supranuclear palsy Neurology 64(12):2050-5, 2005.


症例 生後 ヶ月,女児 けいれん発作

CT(生後 ヶ月)

CT(生後 歳 ヶ月)

(本例の画像に関しては,すべて,日本放射線学会の許可を得て文献 1より転載)


症例

スタージ・ウエーバー症候群(SWS) 解説 画像所見:本症例はけいれんに左右差がなく,顔面に血管腫もないた めに,初回の CT では診断が困難であるが,左半球には明らかな萎縮が ある.同時点で造影後の MRI をすればより早く診断ができた可能性は ある.図 2では左後頭葉に石灰化を認め,スタージ・ウェーバー症候群 の診断が CT でも可能である. 造影後の T 1強調画像(図 3)で著明な造影効果を左側頭・頭頂・後頭 葉の脳回に って認め,軟膜下の血管腫と えられる.左側頭葉には萎 縮がある. 自験例では,顔面に血管腫のない症例は 13例中 2例であった(文献 1).診断には造影後の MRI が最も有効である.

造影後 T 強調画像

臨床 スタージ・ウェーバー症候群は母斑症(神経皮膚症候群)の一種で,三叉神経領域(主に第 1枝)の顔面 血管腫と同側の脳軟膜血管腫を特徴とする.その他の症状としては,けいれん,精神発達遅滞,片麻 痺,半盲,緑内障(牛眼)などが知られている. 多くは孤発例で性差はない.稀に顔面血管腫のない症例(約 2%と言われている)や,家族性に発症す る症例の報告がある.けいれんの発症までは正常に発育するが,90%が 1歳までにけいれんを発症し, その後,精神発達遅滞を来す.顔面の血管腫は出生直後に認められる. 胎児期の皮質静脈の正常発達がなく,進行性の静脈閉塞と慢性の静脈性虚血による症状を認める.

画像診断 最も重要な所見は皮質の石灰化と,萎縮,同側の脈絡叢の拡大である. 1.軟膜血管腫(脳表 いの増強効果):半球全体におよぶ場合や両側性の場合は予後不良.ときに,く も膜下腔内に線状の造影効果として認められることがある. 2.軟膜血管腫直下の石灰化:後頭部に好発するが,どこにでも起こる(20%は両側性).2歳以下でみ られることは稀.単純写真では tram-track (tram-line) calcification(軌道状石灰化)と呼ばれる. 3.脈絡叢の腫大(CD-ROM 参照):高頻度にみられる.小児の場合は,腫大した脈絡叢の大きさと軟 膜血管腫の広がりには有意な相関がある. 4.患側大脳半球の萎縮 5.頭蓋骨の肥厚,副鼻腔の拡大 6.脳表静脈の形成障害,深部静脈の拡張(CD-ROM 参照):拡張した深部静脈は増強効果や flow void として認められる他,MR 静脈造影でも明瞭に描出される. 7.軟膜血管腫の直下の白質変化:虚血後の gliosis を反映するとされている(CD-ROM 参照). 8.眼球脈絡膜の血管腫,牛眼 (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.他の血管性神経皮膚症候群 1) Blue rubber bleb nevus 症候群:多数の小さな皮膚の静脈性血管奇形+頭蓋内静脈性血管奇形 2) Wyburn-Mason 症候群:顔面の血管腫,視神経から後頭葉にかけて,脳動静脈奇形 3) クリッペル・トレノーネイ・ウエーバー症候群:骨軟部組織の片側肥大,下肢の血管奇形,SWS の徴候を持つことがある. 4) PHACES 症候群:後頭蓋窩の奇形,顔面の血管腫,動脈の変異,大動脈縮窄症,心臓と眼の奇 形,先天性胸骨裂,あるいは 上の縫線 5) 髄膜血管腫症:石灰化,軟膜の造影効果,血管周囲腔を介しての脳内進展,萎縮はない. 2.セリアック病:両側後頭葉に石灰化,てんかん発作,顔面と脳内に血管腫を認めない. 3.軟膜の造影効果:髄膜炎,転移,白血病

Box

脳回様(軌道状)の石灰化

1.皮質結節

4.放射線治療あるいは化学療法後

2.層状壊死を伴う脳梗塞

5.スタージ・ウエーバー症候群

3.脳髄膜炎


症例

-

症例 A

歳,女児 スタージ・ウエーバー症候群

右側の顔面血管腫とけいれん,知恵遅れがみられる.右大脳基底核に拡大した血管様の無信号領域が あり(図 1の矢印),右半球の白質は信号強度が高く,皮質白質境界の不鮮明がある(図 1の*印).進行 する静脈閉塞による虚血と

えられる.一部に造影効果を認め,無信号は静脈が示唆される(図 2の矢

印).右半球には軟膜の造影効果を認める(図 2の矢頭).MR 静脈造影(MRV)では脳表の静脈が右側で は欠損し(図 3,4の矢印),深部静脈の拡大を認める(図 3,4の矢頭).

▼ ▼ *

▼ 図

T 強調画像

T 強調画像

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 図

MR 静脈造影

MR 静脈造影


症例

症例 B

-

歳,男児 スタージ・ウエーバー症候群,左顔面に血管腫,けいれん, 知恵遅れがある

頭部単純写真で頭頂部に tram-track lineの石灰化を認める(図 5の矢印).造影後の T 1強調画像(図 6)で左患側の脈絡叢の拡大があり(矢印),左後頭葉から側頭葉にかけて軟膜血管腫による造影効果を認 める(矢頭).

▼ ▼ 図

頭部単純写真

T 強調画像

(以上の図に関しては,日本医学放射線科学会の許可を得て文献 1より転載)

症例 C(外科手術例)

歳代,男性 スタージ・ウエーバー症候群

難治性てんかんの外科切除を受ける. 外科病理所見 脳実質内の多数の石灰化(図 7の矢印が一部)と軟膜血管腫(図 8の矢頭),ヘマトキシリン・エオジン (HE)染色.

▼ ▼

▼ 脳実質内の石灰化(HE 染色)

軟膜血管腫(HE 染色)


症例

-

●参 文献 1 中田安浩,他:Sturge-Weber 症候群の画像所見―CT,MRI 所見を中心に 日本医学放射線学会誌 64(4):210-215, 2004. 2 Portilla P, et al. Sturge-Weber Disease with Repercussion on the Prenatal Development of the Cerebral Hemisphere, AJNR Am J Neuroradiol. 23(3):490-2, 2002. 3 Osborne A. Diagnostic Imaging Brain, Amirsys, Salt Lake City, 1:1/94-7, 2004.


★★注意★ 2頁目行送り変えてます・字取りも入ってます★

症例 歳,男性 激しい頭痛と発熱 5月初旬より頭痛と発熱,同 7月中旬より右聴力低下,胸部単純写真で右上肺野に異常影.8月 6日 に MRI を撮像. (左被 の T 2強調画像でのスリット状の低信号は 7年前の古い出血)

T 強調画像

FLAIR 冠状断像

T 強調画像

造影後の T 強調画像

(群馬大学医学部附属病院放射線科,八木明子先生・高橋綾子先生の厚意による)


症例

クリプトコッカス髄膜脳炎 解説 画像所見:右被

から淡蒼球,視床にかけて多房性の病変を認め,T 1強調画像では低信号を示し中

心が髄液より高信号となる.T 2強調画像では高信号であり,中心が髄液よりやや低信号を示す. FLAIR 冠状断像では高信号を示す.周囲に mass effect や浮腫はない.造影効果はない.血管周囲腔の 拡大と

えられ,ゼラチン様偽囊胞の所見である.脳脊髄液の墨汁染色でクリプトコッカス症と診断.

肺病変も気管支鏡で同症と診断される.本例は免疫状態は正常であり,HIV 感染者ではない.

臨床 クリプトコッカスは鳥の糞の吸引など呼吸器を介して感染し,胸膜直下の肺内に定着し,初感染巣 (肉芽腫)を形成する.一般的に不顕性感染で終わるが,細胞性免疫不全者は炎症反応が起きずに,血管 内に侵入し血行性撒布により全身性に発症する.脳へは血行性に達する.髄膜の血管の壁を貫いて髄液 腔に達する.髄液腔から穿通枝の血管周囲腔に広がる.肉芽腫性髄膜炎を発症する.亜急性に発症し, 頭痛が唯一の症状であることが多い.AIDS 患者ではもっと多い真菌感染症である. その後,血管周囲腔で粘液様物質を産生し血管周囲腔を拡大し,ゼラチン様偽囊胞(gelatinous psuedocyst:肉眼的には石鹼泡状病巣)を形成する.好発部位は大脳基底核,視床,黒質,脳室周囲白 質,脈絡叢である.脳浮腫の頻度は低い. 感染が進行すると,血管脳関門が破壊され,菌が血管周囲腔から実質に進展し,菌体・炎症性細胞・ ゼラチン様粘液物質の集合体が形成される(クリプトコッコーマ).偽囊胞に比べて大きく,好発部位は 血管周囲腔である. AIDS 以外のリスクファクターに血液疾患(悪性リンパ腫,白血病,成人 T 細胞白血病:ATL など), 免疫抑制剤 用,膠原病患者(SLE など),ステロイド剤投与,腎不全などがある. 常者にも発症する. 一般に AIDS でない患者の予後は良好であるが,AIDS などの細胞免疫不全の患者では再発率が 50%以上と極めて高い.診断は脳脊髄液の墨汁染色で診断は容易である.

画像診断 中枢神経系の真菌症は肉芽腫を形成し,頭蓋内の血管,髄膜,脳実質を侵す. クリプトコッカス症の画像所見はときに正常なこともある.異常所見としては, 1.血管周囲腔の拡大:CT では脳脊髄液と同様な低吸収域,T 2強調画像では高信号,T 1強調画像で は低信号から軽度高信号を示す.浮腫は軽い. 2.実質内の結節性病変(クリプトコッコーマ,大脳皮質より大脳基底核,視床に多い):偽囊胞に似て いるが,周囲に浮腫の存在,様々な造影効果,造影剤の倍量投与にて造影効果を認めたとする報告 もある. 3.粟粒状の結節が,脳実質,髄膜,脳室内にときに認められる. 血管周囲腔の拡大が大脳基底核および皮質白質境界に,免疫不全のある若年者に認められるときには クリプトコッカス症をまず える. 結核や細菌性髄膜炎とは異なり,髄膜のべったりとした造影効果は認められない. 両側性の大脳基底核における多数の T 2強調画像と FLAIR 高信号領域はクリプトコッカス症に特異 的ではなく,コクシジオイド症,カンジダ症にも認められ,トキソプラズマ症と悪性リンパ腫も鑑別に 挙がる. (CD-ROM 参照)


症例

症例

資料

鑑別診断 1.コクシジオイド症 2.カンジダ症 3.トキソプラズマ症:造影効果を認める.クリプトコッカス症との合併もある. 4.悪性リンパ腫:造影効果がある.脳室上衣に うことが多い. 5.結核性髄膜炎:脳底槽の造影効果を認める.これはクリプトコッカス症では少ない.

AIDS 患者の感染症(頻度順) 1.HIV 感染症 2.トキソプラズマ症 3.クリプトコッカス症(約 5∼7%)

免疫不全の真菌感染 1.カンジダ症 2.アスペルギルス症 3.ムコール菌症

免疫不全と免疫性の両方で起こる真菌感染 1.クリプトコッカス症 2.コクシジオイド症 3.ヒストプラズマ症

-


症例

-

症例 A

歳,男性 歩けなくなる

2001年 4月上旬右に傾くようになり,歩行が遅くなる.4月 16日に急に歩けなくなり,車いすを 用.手が震える.尿失禁が多くなる.5月 2日に入院. 好中球 85%で白血球増加(14,300),CRP 5.7mg/dl,髄液細胞数 40/3,蛋白 44g/dl,グルコース 47 mg/dl(BS 94),IgG 19.9,βD グルカゴン 23.9を示した. さらに,MRI で T2 強調画像と FLAIR 画像で,比較的大きな球状の高信号領域を被

に認め,T 1

強調画像では低信号,拡散強調画像で軽度高信号を示した.クリプトコッカス症による gelatinous pseudocyst が疑われた.右側頭葉皮質にも病変を認めた.クリプトコッカス症による変化と えられる (クリプトコッコーマ).右鼻腔内に副鼻腔炎を認め,同部位からの生検にてクリプトコッカス症がみつ かった.以後,アンフォテリシン B による治療が行われ,臨床症状の改善,検査値の改善をみた.12 月 13日 T 2強調画像では被

および右側頭葉の所見が改善された.経過中に右眼の光覚弁までの低下

があり,左眼にも視野狭窄があり,クリプトコッカス球後視神経炎も疑われたが回復した.

日撮像の MRI

同 MRI

同 MRI

同 MRI

同 MRI

日撮像の T 強調画像


症例

症例 B(剖検例)

歳,男性

-

クリプトコッカス症

慢性リンパ性白血病の経過中クリプトコッカス症に罹患する. 剖検所見 正中隆起部大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,被 体に不整形の空胞病変を多数認めた(図 7の矢頭).被

(P),尾状核(C),淡蒼球(G),扁桃

,グロコット(GC)染色,円形の空胞内にはグ

ロコット染色で黒染する球状の菌体が多数認められた(図 8の矢印).被 の空胞,ヘマトキシリン・エ オジン(HE)染色の強拡大,円形の菌体を多数認めた(図 9の矢印).

C

◀ ◀

▼ 図

◀ ◀

P

G

左レンズ核冠状断(KB 染色)

被 内の菌体(GC 染色)

被 空胞内の菌体(HE 染色)

●参 文献 1 田中宏子,他:真菌症の画像診断.中枢神経系・頭頸部,臨床放射線 49(5):601-9,2004. 2 Kovoor JM. et al. Cryptococcal choroid plexitis as a mass lesion:MR imaging and histopathologic correlation. AJNR Am J Neuroradiol. 23(2):273-6, 2002. 3 Caldemeyer KS,et al.Central nervous system cryptococcosis:parenchymal calcification and largegelatinous pseudocysts. AJNR Am J Neuroradiol. 18(1):107-9, 1997. 4 設楽幸治,他:クリプトコッカス球後視神経炎の 1例.あたらしい眼科:16(12):1745-8,1999.


症例 歳,女性

ヶ月前より嚥下障害,嗄声が出現

10歳より側彎を,34歳で特発性右反回神経麻痺を指摘された.本年 4月 3日より感冒様症状が出現 し,その 1週間後より水が鼻に抜けるようになった.4月 10日より嚥下障害,嗄声が出現.右優位の 両側性の第 9,10,11脳神経麻痺を認める.5月 14日に頭部 MRI を撮像. (造影後には,異常な造影効果を認めない)

T 強調画像

T 強調画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像


症例

髄空洞症 解説 画像所見:下部

髄被蓋を中心に,T 1強調画像

でスリット様の,髄液と同様な低信号領域を認め る.右 優 位 だ が,左 に も 存 在 す る.さ ら に, FLAIR 画像の

髄・橋移行部では,第四脳室から

右前方に伸びる髄液と同様な低信号領域を認める (図 4).移行部被蓋左側には高信号領域がある.造 影後の T 1強調画像で異常な造影効果を病巣に認め な い.T 1強 調 画 像 お よ び FLAIR で 低 信 号 を 示 し,髄液と同様な信号強度であることより 髄空洞 症が えられる.被蓋左の FLAIR 画像での高信号

矢状断スカウト画像

は空洞にはなっていないが,変性あるいはグリオー シスを示す可能性がある.同時に撮像された位置決 めの矢状断スカウト画像で,脊髄空洞症が描出され ており, 髄空洞症の合併であることが確認されて いる(図 5の矢印).後日,撮像された頸髄の MRI で脊髄空洞症および,脊髄空洞から連続する 髄空 洞症が認められる.

臨床 髄空洞症は通常,脊髄空洞症が先にみつかり,それに合併する病変としてみつかることが多い.画 像診断でも脊髄空洞症が既に判明し,その後に頭部を精査し発見される.本症では左手に軽度のしびれ 感があったが,主症状が下位脳神経症状であったために頭部 MRI の検査が先になった. 初診の医師は上肢の解離性知覚障害を捉えることができず,頭部 MRI のみの検査であった.そのた めに診断が困難であった.しかし後の主治医は上肢の解離性知覚障害を認めている.神経学的検査にて 正しい情報が得られていれば,頸椎の MRI が最初あるいは続いてすぐに行われ,診断はより容易で あったと

えられる.MRI が進歩しても神経学的検査の重要性に変わりはなく,病巣部位の判断には

神経学的診断が最も重要である.

画像診断 軸位像における

髄のスリット状の病変(信号強度は髄液のそれと同様)は, 髄空洞症に特徴的な所

見であるが,腫大もなく見慣れていないので診断は難しい.本症例では同時に撮像した矢状断スカウト 像で脊髄上部に脊髄空洞症も連続して描出され, 髄空洞症の診断に有用であった.撮られた画像をす べてみる習慣が重要である. ●参 文献 1 Sherman JL, et al. MR imaging of syringobulbia. J Comput Assist Tomogr. 11(3):407-11, 1987.


症例 歳,男性 強い頭痛の既往,くも膜下出血か,否か ? 2週間前に突然の頭痛,後頭部痛がある.放置したが痛み,嘔気が続く.昨日,頭痛が増悪.他院 CT でくも膜下出血の疑いとされた.

CT 画像

(東京大学医学部附属病院放射線科,森墾先生の厚意による) (三輪書店

脳神経外科の常識非常識

より許可を得て転載)

CT 画像


症例

低髄圧症候群 解説 画像所見:CT でくも膜下腔がよくみえない.43歳という年齢を 慮すれば異常である.頭痛のある 患者でくも膜下腔がみえないときには,最初にくも膜下出血を

慮する.しかし,くも膜下出血を示す

明らかな高吸収域はない.さらに,側脳室の輪郭が不明である(図 2).くも膜下出血以外に,くも膜下 腔がみえないときには,頭蓋内圧亢進,低髄圧症候群(脳脊髄液減少症),脳脊髄液の組成の変化も 慮 する必要がある(Box 13参照). 病歴および現症をもう一度確認してみれば,患者の頭痛は立位で強く,臥位では程度が軽減すること が判明した.MRI を施行し FLAIR 画像にて

膜下水腫を認め(図 3の矢印),さらに造影後には肥厚

した 膜に造影効果を認める(図 4の矢印).その内側に薄い 膜下水腫がある(矢頭),さらに他のスラ イスでは小脳扁桃の下垂があり,低髄圧症候群であることが判明した.頭痛のある患者では本症も常に 慮して,座位での頭痛の軽減がないか確認する必要がある.

造影後の T 強調画像

造影後の T 強調画像

臨床 原因は髄液圧の低下にある.その引き金としては,外傷,激しい運動,激しい咳き,腰椎穿刺,くも 膜憩室の破裂や 膜の損傷,強い脱水などが えられている. 女性に多く,20∼30歳代がピークである.なお,最近の議論では低髄圧症候群の患者の中に正常圧 を示す患者がいること,脳脊髄液の弾力性の減少で,脳の下垂が起こり,症状を呈するので,低髄圧で はなく,脳脊髄液の減少が原因であるとされている.モンロー・ケリーの法則(髄液圧と頭蓋内の血流 量とは一定の関係がある)に基づく,脳脊髄液の漏出と,静脈のうっ滞所見( 膜外静脈の拡大所見, 膜の造影効果)が診断に重要である. 1,2). (CD-ROM 参照)

膜外静脈叢の拡大は脳脊髄液減少症を示唆する所見である(文献


症例

症例

-

資料

画像診断 脳の MRI 所見としては 膜のびまん性の造影効果と

膜下水腫(血腫)の存在が最も特徴的な所見で

ある.肥厚した 膜は T 1強調画像では等信号であり,T 2強調画像では高信号を示すが髄液との鑑別 が難しい.強いびまん性の造影効果を認める.造影後の検査が必要である. CT では上記のようにくも膜下腔がみえにくいことがあるが一般的に所見が捉えにくい. 70%の症例では 膜下水腫を認め,10%に

膜下血腫を認める.FLAIR 画像が有効である.

脳の下方への偏位は重要な所見である.しかし,ときに認められない症例もある(文献 2). ・矢状断像では中脳が鞍背より下に位置する. ・大脳脚と橋との角度の減少がある. ・小脳扁桃の下垂が 25∼75%に認められる. ・視 叉,視床下部がトルコ鞍に近づく. ・横断像では,鞍上槽が混み合っている.中脳の腫大を認める. ・側頭葉が天幕切痕からはみ出す.側脳室が小さく,変形を認める. その他,頸部の 膜外静脈叢の拡大.髄液の漏出による T 2強調像での高信号領域が脊椎背側に認め られることがある. CT ミエロでは漏出部位を示すことがある.RI 脳槽造影では髄液からの RI の排出が早く,膀胱内に RI の集積を認める.

鑑別診断 1 肥厚性 膜炎(肥厚した 膜は T 2強調画像にて低信号を示す.中脳の変形,小脳扁桃の下垂を認め ない) 2 小脳天幕切痕部下行性ヘルニア(大きな浮腫あるいは腫瘤がない. 膜は正常)

Box

CT で脳溝,くも膜下腔がよくみえないときに 慮する疾患

1.くも膜下出血

3.低髄圧症候群(脳の下垂)

2.頭蓋内圧亢進(大きな腫瘤の存在,静脈洞

4.脳脊髄液の組成の変化(蛋白含量の増加

血栓症)

など:炎症性疾患)


症例

-

症例 A

歳,女性 低髄圧症候群, 週間前から始まる強い頭痛

1月 6日より頭重感がし,翌日からひどい頭痛.1月 25日に MRI. 小脳天幕

いに両側に

膜下血腫を認める(図 1の矢印).さらに大脳鎌に

って血腫を認める(図 2

の矢印).T 1強調画像では小脳扁桃の下垂があり(図 3の矢頭),下垂体が正常に比べてやや目立つ. 頭頂部の 膜および小脳天幕に肥厚を認める(図 3の矢印).以上の所見と頭痛があれば低髄圧症候群を 十 疑わせる所見である.造影後の T 1強調画像(図 4)にて著明な造影効果を持つ

膜が認められ,画

像からは低髄圧症候群と診断できる. 本症例は,横になると頭痛が軽減し,立位になると悪化する典型的な症状を示した.髄液圧は 10mmH O と低下していた.さらに脊髄の画像検査にて造影剤が

膜外に漏出している像を認め,何

らかの原因による脳脊髄液の脊柱管内での 膜外への漏出が低髄圧の原因と えられる.既往にスノー ボードにて腰を何回も打った経歴があり,その原因ではと えられた.

FLAIR 画像

T 強調画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像


症例

症例 B

歳,女性 低髄圧症候群, 月

-

日頃から強い頭痛

嘔気を認め,次第に後頸部痛も加わった.臥位にていくらか軽減した.7月 23日の頸椎 MRI によ り,脳底静脈叢の拡大(図 5の矢頭),頸椎上部を中心に 膜外静脈叢の拡張を認め(図 5の矢印), 膜 囊に圧排所見を認めた.T 2強調画像では拡大した静脈叢(図 6の矢印)は

膜囊(図 6の矢頭)の外側に

高信号領域として認められる.造影後の T 1強調画像では強い造影効果を示す 膜外構造としてみえる (図 7の矢印).その後,静脈叢の拡大は軽減し頭痛も軽減した.頸椎 CT ミエログラフィーでも

膜の

著明な圧排所見を認めた.第 5頸椎から第 5胸椎付近まで髄液の漏出を認めた.頭部 MRI では

膜下

出血と, 膜のびまん性の造影効果がみられ特発性低髄圧症候群と診断した.

T 強調画像矢状断脈

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

-

●参 文献 1 Miyazawa K, et al.CSF hypovolemia vs intracranial hypotension in spontaneous intracranial hypotension syndrome Neurology, 60(6):941-7, 2003. 2 柳下章:神経放射線科の立場からとらえる“脳脊髄液減少症”.脊椎脊髄ジャーナル,19(9):341-6,2006. 3 森墾:脳脊髄液漏/低髄圧症候群,柳下章編:エキスパートのための脊椎脊髄疾患の MRI.三輪書店,321-3,2004. 4 Dillon WP, et al. Some lessons learned about the diagnosis and treatment of spontaneous intracranial hypotension. AJNR Am J Neuroradiol. 19(6):1001-2, 1998. 5 Christoforidis GA, et al. Spontaneous intracranial hypotension: report of four cases and review of the literature. Neuroradiology. 40(10):636-43, 1998. 6 森墾,他:低髄圧症候群の脊髄画像.特に,T 2強調像での高信号領域の病態生理の 察.画像診断,22(4):414-9, 2002.(脊髄の MRI について詳しい) 7 植木美乃,他:特発性低髄圧症候群の CT 脊髄造影の経時的変化.神経内科 56:194-6,2002.(症例 1の症例報告, RI 脳槽造影,ミエロ後 CT 所見が記載されている) 8 小野寺直樹,他:眼で見る神経内科.特発性低髄圧症候群にみられた著明な頸椎 膜外静脈の拡張,神経内科 Vol.56, No.3,292-4,2002.(症例 2に関する症例報告)


症例 歳,女性 全身けいれん.小学生の時から運動が苦手 8月 9日の起床時に右側がみえにくく,ふらついて歩行困難,頭痛,嘔吐が認められた.全身性けい れんを起こし他院に入院,その当日に MRI 撮像.小学生の時から走るのが遅く,運動は不得意であ り,低身長を指摘されている.中学生のときには心電図異常を指摘されている.

T 強調画像

拡散強調画像

FLAIR 画像

週間後の FLAIR 画像


症例

ミトコンドリア脳筋症(MELAS) 解説 明らかな小脳萎縮がある(図 1).FLAIR 画像で,左後頭側頭葉移行部に高信号領域を認め(図 2), 拡散強調画像ではより広い左後頭葉,側頭葉の一部に異常高信号領域を認める(図 3).その高信号領域 の程度は軽い.けいれんで発症している.さらに運動が不得意,低身長がある.ミトコンドリア脳筋症 (MELAS)を十

に疑わせる所見である.3週間後に撮った FLAIR 画像(図 4)では高信号が消失して

いる.拡散強調画像の高信号領域も,今回の FLAIR 画像では異常を認めず,高信号領域の原因は血管 性浮腫が病態に深くかかわっていると えた.髄液中の乳酸,ピルビン酸値の上昇があり,遺伝子検査 にて 3243A の点変異を認め,MELAS であった. 11月 16日に再度のけいれん発作を起こし,翌日の MRI で,左後頭葉の他に,左側頭葉および前頭 葉(CD-ROM 図 1の矢印)に皮質を中心に高信号を FLAIR 画像で認める.高信号領域は後大脳動脈領 域のみではなく,前および中大脳動脈の領域におよんでいる.T 2強調画像にて左後大脳動脈が右に比 べて拡大している(CD-ROM 図 2の矢印).MRA では左後大脳動脈の拡張が確認できる(CD-ROM 図 3の矢印).MRS では NAA の低下(CD-ROM 図 4矢頭),乳酸の上昇(CD-ROM 図 4の矢印)を認め た(CD-ROM 図 4)4日後の SPECT では左後頭葉から側頭・頭頂葉にかけて局所的な hyperperfusion を認めた(CD-ROM 図 5∼6).

臨床 ミトコンドリアの代謝障害を原因とするミトコンドリア病の 1型で,ミトコンドリア DNA の tRNA コード領域内にある 3243番の A → G 変異または 3271番の T → C 変異が大部

を占める.ミトコン

ドリア DNA の変異であるため,母系遺伝を取るが,母親の多くは無症状である.多くは若年で発症す る(70%が 15歳未満)が,稀に 50歳以降で発症するものもある.初発症状は頭痛,嘔吐に始まる卒中様 症状であり,けいれん,意識障害,アシドーシスを伴い,片麻痺,失語,半盲,皮質盲などを呈する. 低身長,知能低下,糖尿病,拡大型心筋症,感音性難聴の合併が多い.骨格筋に ragged red fiber (RRF:赤ぼろ線維)等のミトコンドリ形態異常を認める. 若年性の脳梗塞の原因は様々であるが,常に本症を念頭に置き,鑑別診断をすることが重要である. 臨床症状と CT,MRI 所見,ミトコンドリア代謝障害を示唆する血清,髄液での乳酸値,ピルビン酸 値の高値が本症の診断を強く疑わせる.本症の確定診断をするためには筋生検と遺伝子検査が重要であ る. 梗塞に類似した所見は神経細胞自体のミトコンドリア異常と,脳内の小動脈平滑筋細胞の異常による 血流障害の関与が報告されている. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 CT と MRI で後頭葉および頭頂葉に梗塞様の所見が皮質を中心に認められる. 脳梗塞と異なる点は 1) 画像上の病巣部位が血管支配と一致しない. 2) MRI と MRA では病巣部位の動脈が拡張し,血流 SPECT では,高血流を示す. 3) 比較的早期に画像所見が正常化することが多い(非可逆的変化もある). 4) ADC 値の低下を認めない. CT では淡蒼球の石灰化を約 20%に認める.発症早期より晩期に多く,剖検所見では 100%近い数字 になる.本例では石灰化はみられない. MRS では乳酸ピークを 60∼65%に認める.拡散強調画像の変化より先行することがある. 注意点:低酸素血症,虚血,腫瘍,感染症でも乳酸ピークは上昇することがある. フェノバルビタールを利用して,鎮静したときには 1.3ppm にピークを認める. 亜急性期には T 1強調像で皮質内に線状の高信号領域を認め,皮質層状壊死に合致する. 慢性期には進行性の萎縮を認める.特に,大脳基底核,側頭・頭頂・後頭葉に強い.海馬および内嗅 領域は保たれる. 血管の支配領域を越えた皮質を中心とする病変が MRI であり,急性の脳卒中発作にて発症した例に は MELAS を 慮する.なお,MELAS の初発年齢は 10∼20歳代が多いが,61歳にてけいれん,意識 障害,歩行障害にて発症した女性例の報告(文献 5)もある.

鑑別診断 1.MERRF(myoclonus epilepsy associated with ragged red fibers:赤色ぼろ線維・ミオクローヌス てんかん症候群):基底核,尾状核に病変が多い. 水嶺付近の虚血,梗塞が多い. 2.リー脳症:両側対称性の被

あるいは脳幹の病変,またはより少ないが淡蒼球の病変,その他に左

右対称性に,尾状核,視床下核,中脳水道周辺灰白質,脳幹を侵す. 3.カーンズ・セイヤー症候群:失調,眼球運動障害,色素性網膜炎,びまん性の対称性の石灰化を基 底核,皮質下白質に認める.基底核は T 2強調画像および T 1強調画像にて高信号領域を示す.小 脳白質および 髄後索にもおよぶ. 4.けいれん重積:一過性の脳回様の腫脹と造影効果,梗塞を伴っていなければ,MRS にて乳酸ピーク を認めない. 5.ヘルペス脳炎:側頭葉内側,島回,帯状回の病変の有無 6.もやもや病:脳溝内の FLAIR 画像での点状の高信号領域の存在,基底核の Flow void の有無


症例

-

症例 A(本文と同一症例)

FLAIR 画像

T 強調画像

MRA

SPECT

MRS

SPECT


症例

症例 B(剖検例) 家族歴なし,小学

-

歳,男子 MELAS 入学までの発達は正常.8歳で易疲労感を訴え小児科受診,心筋症と診断され

た.けいれん発作,視力低下,筋力低下,知能障害も出現,脳脊髄液中の乳酸・ピルビン酸高値と筋生 検所見から MELAS と診断される.心不全のため死亡.死後,凍結筋組織からのミトコンドリア DNA 解析により 3243の A-G 変異が判明した. 剖検所見 正中隆起部大脳冠状断,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,両側側頭葉の陳旧性病巣(図 7の矢 印)は粗鬆化していたが,左前頭葉の比較的新しい病巣は軟化を示した(図 7の矢頭).病巣の 行支配には一致していなかった.加えて右被

布は血

・淡蒼球外節に石灰化を認めた(図 7の*印).左前頭葉

の軟化巣の隣接部,HE 染色,皮質深部∼皮髄境界に海綿状病巣を認めたが,神経細胞は比較的保たれ ていた(図 8).側頭葉皮質,HE 染色,組織は海綿状であっても神経細胞が保たれていることが多かっ た(Neuronal sparing:図 9の矢印).右被

・淡蒼球外節,コッサ染色,石灰化が黒く染まっていた

(図 10).

大脳冠状断(HE 染色)

神経細胞の保存(HE 染色)

右被

海綿状病巣(HE 染色)

内の石灰化(コッサ 染色)


症例

-

●参 文献 1 Yonemura K, et al. Diffusion-weighted MR imaging in a case of mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and strokelike episodes. AJNR Am J Neuroradiol. 22(2):269 -72, 2001. 2 Abe K, et al, Comparison of conventional and diffusion-weighted MRI and proton MR spectroscopy in patients with mitochondrial encephalomyopathy, lactic acidosis, and stroke-like events. Neuroradiology. 46(2):113-7, 2004. 3 Iizuka T, et al. Slowly progressive spread of the stroke-like lesions in MELAS. Neurology. 61(9):1238-44. 2003. 4 Terauchi A, et al. An autopsy case of mitochondrial encephalopathy lactic acidosis and stroke-like episode (MELAS) with a point mutation of mitochondrial DNA. Brain Dev. 18(3):224-9, 1996. 5 Dickerson BC, et al. Case records of the Massachusetts General Hospital. Case 36-2005. A 61-year-old woman with seizure, disturbed gait, and altered mental status. N Engl J Med. 353(21):2271-80, 2005.


症例 歳,男子

歳頃より走ることが鈍い

5歳,男子,生後 6ヶ月で目が合わないことに気づく.2歳頃から走ることが鈍い.

(三輪書店

T 強調横断像

T 強調矢状断像

脳神経外科の常識非常識

より許可を得て転載)

T 強調横断像


症例

鞍上部くも膜囊胞 解説 画像所見:水頭症があり,側脳室,第三脳室が拡大している.中 脳水道は開存しており,第 4脳室には拡大はない.図 1では視

が後方から圧排され,橋上部では前方からの圧排がある.鞍上槽が ◀

広い.これが第三脳室の拡大により,拡大した視 叉陥凹および漏 斗陥凹をみているのか,それとも異なるのかを鑑別する必要があ る. 矢状断像(図 4)にて第三脳室底は上方に挙上し(矢印),矢頭で示 すように,視

T 強調矢状断像

叉も上前方に偏位している(矢頭).中脳最前部(白

矢印)は上方に圧排されている. 以上の所見で理解できるように,鞍上部には第三脳室とは異なる 腫瘤があり,髄液と同様な信号強度を示す.トルコ鞍も拡大し,下 垂体は底部に圧排されている(尾付き矢印).鞍上部くも膜囊胞であ る.

臨床 鞍上部くも膜囊胞は頭蓋内くも膜囊胞の約 10%を占める. Liliequist 膜に

の空いていないことによるくも膜囊胞と,脚間槽の囊胞性拡大による状態との 2つ

に かれる(文献 1). 拡大した第三脳室とは第三脳室底の挙上の有無で鑑別できる.頭蓋咽頭腫との鑑別は充実性部 の有 無による. 鞍上部囊胞に合併する病態にはカルマン症候群,思春期早発症,視神経・視 叉障害がある.

画像診断 くも膜内の脳脊髄液に満たされた,脳室と 通のない囊胞である.腫瘤効果があり,その信号強度は 脳脊髄液と同様である.拡散強調画像にて低信号を示す.

鑑別診断 鞍内および鞍上部の囊胞性腫瘤 1.頭蓋咽頭腫:石灰化,造影される充実成 2.囊胞性の下垂体腺腫:不 一な信号強度,周囲あるいは結節状の造影効果 3.非腫瘍性囊胞 ・ラトケ囊胞:様々な信号強度 ・くも膜囊胞:脳脊髄液と同様な信号強度 ・類上皮腫:25%は造影効果,石灰化,拡散強調画像で高信号 ・鞍内囊胞(下垂体中間部囊胞,コロイド囊胞,上皮腫,類上皮腫が発生する) ・鞍内および鞍上部の神経囊虫症 (CD-ROM 参照)


症例

症例 Box

資料

第三脳室内囊胞

1.上衣囊胞

4.囊虫症および他の寄生虫による囊胞

2.くも膜囊胞

5.類上皮腫

3.コロイド囊胞

6.頭蓋咽頭腫などの囊胞性腫瘤

Box

-

拡大した第三脳室に類似した鞍上部病変

1.鞍上部くも膜囊胞

3.ときに,透明中隔囊胞

2.囊胞を伴う頭蓋咽頭腫

●参 文献 1 Miyajima M, et al.Possible origin of suprasellar arachnoid cysts:neuroimaging and neurosurgical observations in nine cases. J Neurosurg. 93(1):62-7, 2000. 2 Nomura M, et al. Contrast-enhanced MRI of intrasellar arachnoid cysts:relationship between the pituitary gland and cyst. Neuroradiology. 38(6):566-8, 1996. 3 Fushimi Y, et al. Liliequist membrane:three-dimensional constructive interference in steady state MR imaging.Radiology. 229(2):360-5;discussion 365, 2003.


症例 歳,男性 肝膿瘍後の小脳症状 8月 27日昼より全身 怠感,嘔気,発熱,腹痛を認め,入院.Clostridium perfringes(嫌気性グラム 陽性桿菌)による肝膿瘍であった.その後眼振,小脳失調,上下注視麻痺が出現.9月 29日 MRI 撮像.

T 強調画像

FLAIR 画像

T 強調画像

T 強調画像

(帝京大学医学部附属病院放射線科,大場洋先生の厚意による)

FLAIR 画像

拡散強調画像


症例

メトロニダゾール(フラジール )による脳症 解説 画像所見:T 2強調画像および FLAIR 画像で,両側対称性に歯状核および中脳視蓋に高信号領域を 認める.T 1強調画像では等信号であり,拡散強調画像では高信号を示すが,おそらく T 2 shine through 効果と と

えられる.肝膿瘍の治療の際に

われたメトロニダゾール(フラジール )による脳症

えられる.メタロニゾール中止後 10月 6日に MRI を再検し,歯状核と中脳視蓋の病変が縮小し

ている(CD-ROM 症例 A の図 1∼3参照).

臨床 本症の肝膿瘍の起炎菌である Clostridium perfringes は嫌気性グラム桿菌であり,どこの土にも,さ らに,人の腸管にも認められる.メトロニダゾールは嫌気性菌に対して最も有効な抗菌薬で殺菌性を持 つとの評価がある.腟トリコモナス症,アメーバ赤痢,偽膜性腸炎にて 用されている.治療が数ヶ月 持続する場合には末梢性神経症状,しびれ,全身けいれんの報告がある.

画像診断 本剤による脳症では歯状核の病変が最も多く,T 2強調画像および FLAIR 画像により高信号を示 す.拡散強調画像でも高信号を示し,ADC 値の上昇がある.浮腫を示す可能性がある.所見は可逆性 であり,治療中止後 MRI 所見が改善した.歯状核の他には,赤核,淡蒼球,脳梁膨大部,前

連,被

外側,下オリーブ核,大脳皮質下,小脳白質の病変の記載がある.軽い造影効果を淡蒼球に認めた報 告があり,下オリーブ核の仮性肥大を認めた例もある. 本例の脳梁膨大部は遅れて他の病変が縮小してから出現しており,異なる機序の可能性がある. 両側の歯状核に上記のような病変を認めることは大変少ない.本症に特徴的な所見である.可能性と しては悪性リンパ腫や多発性 化症があるが,造影効果,臨床経過より鑑別は容易に思える. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Heaney CJ, et al. MR imaging and diffusion-weighted imaging changes in metronidazole (Flagyl)-induced cerebellar toxicity. AJNR Am J Neuroradiol. 24(8):1615-7, 2003. 2 Ito H, et al. Reversible cerebellar lesions induced by metronidazole therapy for helicobacter pylori. J Neuroimaging. 14(4):369 -71, 2004. 3 Seok JI, et al. Metronidazole-induced encephalopathy and inferior olivary hypertrophy:lesion analysis with diffusionweighted imaging and apparent diffusion coefficient maps. Arch Neurol. 60(12):1796-800, 2003. 4 Woodruff BK,et al.Reversiblemetronidazole-induced lesions ofthecerebellar dentatenuclei.N Engl J Med.346(1):689, 2002. 5 安江正治,他:5FU 誘導体に起因すると思われる Toxic encephalopathyの 1例.脳神経外科 13:1229-34,1982.


症例

症例

資料

症例 A(本文と同一症例)

月 日撮像の FLAIR 画像 (本文参照)

同 FLAIR 画像 (本文参照)

同 FLAIR 画像 (本文参照)

-


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,女性 カルモフール白質脳症

43歳で左乳癌に対し乳房切除手術を受け,術後胸部への放射線照射と 5FU 誘導体(テガフール→カ ルモフール)による化学療法が行われた.化学療法開始 1ヶ月後,ふらつきと上肢の振戦が出現,記憶 障害,歩行障害も加わり寝たきり状態となる.頭部 CT 検査で側脳室周囲白質の低吸収域を指摘され る.DIC のため死亡. 剖検所見 前頭極の両側大脳の冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,両側の半卵円中心に大きな髄鞘淡明 化病巣を認めた(図 4).正中隆起部の右大脳冠状断,クリューバー・バレラ染色(左)/ホルツアー(HZ) 染色(右),半卵円中心・放線冠に髄鞘脱落病巣を認めたが(左),同部位に線維性グリオーシスはみられ ず(右),線条体・視床に軽度のグリオーシスが認められた(図 5の矢印).半卵円中心,ボデイアン (BD)染色,病巣部では高度に脱落した髄鞘に比べ軸索は比較的保たれていた(図 6).半卵円中心,脂 肪染色,病巣部には黒色に染まる脂肪顆粒細胞が浸潤していた(図 7の矢印).

前頭極の大脳冠状断(KB 染色)

半卵円中心(BD 染色)

右大脳冠状断(左 KB・右 HZ 染色)

半卵円中心(脂肪染色)


症例 歳,女性 約

年前から頭痛, ヶ月前より右外転神経麻痺

T 強調冠状断像

T 強調冠状断像

造影後脂肪抑制 T 強調冠状断像


症例

特発性肥厚性

膜炎

解説 画像所見:T 2強調画像で右中頭蓋窩底の 膜が肥厚し,低信号領域を示す.右側頭葉底部には高信 号を脳内に認める.T 1強調画像では同様に肥厚した

膜は低信号領域を示し,右海綿静脈洞への進展

が著明である.脂肪抑制の造影後の T 1強調画像では中頭蓋窩底の病変に著明な造影効果を認める.右 海綿静脈洞内の内頸動脈の flow void は狭小化が著しい.頭蓋外には病変の進展はない.限局性の

炎と診断した.海綿静脈洞内にも進展があり,外転神経麻痺を示し,内頸動脈の狭窄ないしは閉塞を来 した.脳内の病変は静脈循環の障害による浮腫あるいは静脈性梗塞と える. 3月 2日のタリウム SPECT では病巣部位に強いタリウムの集積を認めるが(CD-ROM 症例 A 図 1 参照),約 10日後ではステロイドの効果により,著しく取り込みが減少している(CD-ROM 症例 A 図 2参照).患者の症状の改善も認められた.MRI ではその間に変化がない.治療効果の判定にはタリウ ム SPECT が有効である.

臨床 本例は原因不明であるが,感染症,自己免疫疾患を伴うことがある(下記参照).

画像診断 肥厚した 膜があり,T 2強調画像では低信号を示し造影効果を認める.ときに本症によって脳内に T 2強調像で高信号領域を認めることがあり,くも膜からさらに脳内に炎症性細胞浸潤を認めた報告が ある.本症による内頸動脈閉塞も報告がある.

Box

膜の異常な肥厚と造影効果を伴う疾患

1.術後の変化 2.特発性肥厚性

5.自己免疫疾患,血管炎 膜炎

・ウェジェナー肉芽腫症

3.低髄圧症候群(特発性,髄液排出後)

・慢性関節リウマチ

4.感染症

・サルコイドーシス

・ライム病

・神経ベーチェット病

・梅毒

・シェーグレン症候群

・結核

・側頭動脈炎

・真菌症 ・囊虫症

・Rosai-Dorfman 病 6.悪性疾患

・HLTV-1

・ 膜癌腫症

・壊死性外耳道炎

・骨への転移 ・悪性リンパ腫 7.髄膜腫

(CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

症例 A 肥厚性 膜炎(本文と同一症例の SPECT) 3月 2日のタリウム SPECT では病巣部位に強いタリウムの集積を認めるが(図 1の矢印),約 10日 後ではステロイドの効果により著しく取り込みが減少している(図 2の矢印).患者の症状の改善も認め られた.MRI ではその間に変化がない.治療効果の判定にはタリウム SPECT が有効である.

タリウムによる SPECT( 月 日)

日後のタリウムによる SPECT

●参 文献 1 Nishizaki T, et al. Idiopathic cranial pachymeningoencephalitis focally affecting the parietal dura mater and adjacent brain parenchyma:case report. Neurosurgery. 40(4):840-3, 1997. 2 Willing SJ, Broghamer W. Internal carotid artery occlusion due to idiopathic cranial pachymeningitis. AJNR Am J Neuroradiol. 13(6):1594-6, 1992. 3 Nishioka H,et al.Idiopathic hypertrophic cranial pachymeningitis with accumulation of thallium-201 on single-photon emission CT. AJNR Am J Neuroradiol. 19(3):450-3, 1998. 4 柳下章:肥厚性 膜炎,肥厚性脳 膜炎の画像診断.神経内科 55(3):225-30,2001. 5 鈴木雅博,他: 201 Tl-SPECT が疾患活動性の評価に有用であった肥厚性 膜炎の 1例.脳と神経 56(1):77-81, 2004. 6 長嶋淑子:肥厚性 膜炎,肥厚性脳・脊髄 膜炎の神経病理.神経内科 55(3):207-15,2001.(詳細な病理所見の記 載)


症例 歳,男性 半年前より始まる階段昇降時のよろけ 体幹に強い小脳失調と排尿障害を認める.

T 強調画像矢状断像

T 強調画像


症例

多系統萎縮症(MSA-C 型) 解説 画像所見:矢状断像では軽度の小脳萎縮がある.脳幹には明らかな異常を認めない.T 2強調画像で 橋底部中央に前後に伸びる高信号領域があり,橋横走線維の軽度の変性を示す.中小脳脚の信号強度も やや高い.明らかな小脳症状があり,自律神経障害を認める.発症して半年で早くも橋横走線維の変性 を T 2強調画像で認める.以上の所見は MSA-C 型と診断するのに十 な所見である.発症して半年後 の T 2強調画像で橋横走線維に変性を認める疾患は本症以外には大変稀である.パーキンソン症状はこ の時点ではなく,MRI でも被 の異常を指摘できない. 1年半後の T 2強調画像(図 3)では橋横走線維の変性は非常に強くなり,中小脳脚にも高信号を認め る.さらに被 は萎縮し,線状の高信号領域を両側に認める(図 4).臨床症状でもパーキンソン症状が 明らかとなる.MSA-C 型である.

T 強調画像( 年半後)

T 強調画像

臨床 MSA はもともと Shy-Drager 症候群(SDS),線条体黒質変性症(striato-nigral degeneration:SND), オリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy:OPCA)の 3疾患の最終病理像には共通点が多 く,いずれでも乏突起細胞内に特徴的な嗜銀性封入体(glial cytoplasmic inclusion)がみられる.このこ とから,これら 3疾患は多系統萎縮症という単一疾患の表現型の異なるものという見方から出発し,単 一の疾患概念として成立した.小脳症状を中心とする MSA-C 型と,パーキンソン症状が中心となる MSA-P 型とに けられる.MSA に関しては MSA-P 型の項を参照のこと. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

橋小脳線維の解剖 主として連合野を中心とする大脳皮質から出た投射線維は皮質橋路を通り,橋底部の橋核に終止す る.その橋核からは橋小脳線維,すなわち橋横走線維を介して反対側の中小脳脚を通り,対側の小脳半 球全般と虫部の一部の皮質に線維連絡がある.それによって橋核を介して大脳皮質と小脳皮質との連絡 が取られている.MSA の橋小脳病変はこの系に

ってあることに大きな特徴がある.この系が侵され

たときには協調運動障害が同側に現れる.

画像診断 橋横走線維の変性は T 2強調像にて異常高信号領域として認められる.橋底部の傍正中部に始まり, 内側毛帯の前部,中小脳脚におよぶ.逆 T 字状に高信号領域が認められる.この所見は横走線維が多 数集まり,変性が MRI では捉えやすい部位を示していると

えられる.それに対し,皮質脊髄路の信

号強度は保たれる.また歯状核および上小脳脚も萎縮や信号強度の変化はない.橋被蓋も保たれる.正 常の T 2強調像にて橋被蓋傍正中部は線状に前後に信号強度が高いことが多いので,その所見を異常と とってはならない. MSA-C 型の初期の画像所見は,橋横走線維の軽度の変性である.橋中央部に線状の高信号領域を T 2強調画像にて連続する橋の 2枚以上のスライスにて認めれば,変性があると言える.すべての症例 に小脳萎縮が認められる.小脳症状で発症し,半年後の T 2強調画像で橋横走線維に変性を認める疾患 は本症以外には大変稀である(筆者には経験がない).その後,橋内の内側毛帯付近の横走線維に高信号 が認められ,さらに中小脳脚にも高信号が出現する. SCA 6の遺伝子変異を有しながら,小脳失調を示し,橋横走線維の変性を認めた症例があり,発症 した病態は SCA 6ではなく,MSA-C 型であるとする報告がある(文献 4).筆者も同意見である. 橋横走線維の変性の見方については,症例 27CD-ROM 内の説明を参照のこと. MSA における橋横走線維の変性と橋の萎縮はほぼ 衡がとれている.橋横走線維の変性が軽く,T 2 強調画像にて縦に線状の高信号領域のみを示す症例では,橋の萎縮も軽く, かか,あるいは萎縮を認 めないこともある.橋横走線維の変性が強く,十字型の高信号領域を認める例では橋の萎縮が明らかに ある. 一方,橋横走線維の変性を認める他疾患(例えば,SCA3)などでは,橋横走線維の変性が軽く,縦の 高信号領域のみのことが多いが,橋の萎縮は明らかなことが多い.さらに,中小脳脚に高信号領域を認 める例は少ない.


症例

-

症例 A(剖検例)

歳,女性 MSA-C

51歳より歩行時のふらつきが出現,小脳症状,自律神経症状,錐体路徴候が漸次加わった.TRH 療 法を行うも無効で,53歳から寝たきり状態となる.頭部 MRI 検査で小脳・脳幹の萎縮性病変が確認さ れ,被 外側にも病変が認められた.声帯麻痺のため死亡. 剖検所見 橋中・下部,クリューバー・バレラ(KB)染色,対照(図 1)に比べ橋縦走線維(星印)は保たれていた が,橋横走線維は高度に脱落していた(図 2).小脳水平断,クリューバー・バレラ染色,小脳白質の有 髄線維は高度に脱落し(矢頭),歯状核も萎縮している(図 3).大脳白質ガリアス(Ga)染色,オリゴデ ンドロサイトの胞体に濃染する Glial tangleを認めた(図 4の矢印).

対照の橋中部(KB 染色)

症例の橋中部(KB 染色)

▲ 図

▲ 小脳水平断(KB 染色)

大脳白質 Ga 染色

●参 文献 1 2 3 4

Gilman S, et al:Consensus statement on the diagnosis of multiple system atrophy, J Neurol Sci. 163(1):94-98. 柳下章:多系統萎縮症の MRI,神経内科 50(1):16-23,1999. 柳下章:脊髄小脳変性症の MRI,臨床放射線 44(11):1295-303,1999. 細山香織,他:Spinocerebellar ataxia type 6(SCA6)遺伝子変異を合併したオリーブ橋小脳萎縮症の 1例.神経内科 56(1):63-6,2002.


症例 歳,女性 進行性の歩行障害があり,側脳室周囲から視放線にかけて病変 35歳時,感冒症状のあと下肢の違和感に引き続き歩行障害出現.ギラン・バレー症候群と言われた. 37歳時,歩行障害増悪.脊髄小脳変性症を疑われたが頭部と脊髄 MRI で異常を認めなかった. 39歳時,MRI で異常を指摘され,精査目的で入院.入院時,腱反射の亢進.両側下肢内反尖足,は さみ歩行がある.

T 強調画像

T 強調画像

図 造影後の T 強調画像 FLAIR 画像 (滋賀医科大学附属病院放射線科,井藤隆太先生の厚意による)


症例

成人型クラッベ病 解説 画像診断:T 2強調画像で側脳室三角部周囲,視放線,脳梁膨大部にかけて,高信号領域を認める. 同領域は T 1強調像では低信号を示し,造影効果を認めない.より上部のスライスでは同様な所見が中 心前回白質にも FLAIR 画像(図 3の矢印)である.明らかな萎縮はない.以上の所見は白質ジストロ フィーあるいは白質脳症をを 慮すべき所見である.後者としては,所見が局所的であり,しかも視放 線,脳梁という大きな白質線維を侵し,白質ジストロフィーを

慮すべき所見である.その中で,造影

効果がなく,脳梁,大脳後部白質と中心前回白質を侵すのは成人型クラベ病(globoid cell leukodystrophy)である.その他,皮質脊髄路もしばしば侵される.

臨床 成人型クラッベ病は 20歳以上にて発症する常染色体劣性遺伝を示す白質ジストロフィーであり,中 枢神経系と末梢神経の両方を侵す.片麻痺,痙性対麻痺,小脳失調,知的退行,視力障害,末梢神経障 害,凹足を呈す.知能障害は後期の症状である.確定診断はリンパ球と,皮膚線維芽細胞の galactocerebrosidase活性の測定により決定される.本例ではリンパ球 0.26nmol/h/mg,(基準値:1∼2nmol/ h/mg) および皮膚線維芽細胞 0.094nmol/h/mg(基準値:2nmol/h/mg 以上) と低下しており確定 診断がついた. globoid cell とは PAS 陽性の galactocerebrosides を含むマクロファージである. 成人型の他に,早期乳児型,晩期乳児型,思春期型があり,成人型とは画像所見が異なる.CT では 視床に高吸収域を認める.小脳白質の障害が早期に来るなどの特徴がある.

画像所見 脳梁をしばしば侵し,大脳後部白質に高信号を T 2強調画像にて認め,中心前回白質および皮質脊髄 路に った高信号領域を認める.造影効果を認めない.皮質下 U 線維は初期には保たれることが多い. 腰仙椎の末梢神経に造影効果を認めることがある.末梢神経障害による.頭蓋内の所見に先行するこ とがある. 小児では視神経の腫大を認める.小児期では視神経腫大の鑑別疾患の 1つである.

鑑別診断 1.成人型副腎白質ジストロフィー:大脳白質の所見はびまん性であり,中心前回のみが侵されること は少ない. 2.異染性白質ジストロフィー:16歳以上で発症する成人型が鑑別に挙がる.16∼62歳(平

24歳)に

て,統合失調症あるいは認知症と診断される精神症状にて発症する.大脳白質病変はより融合した 形態を取る.脳梁,皮質脊髄路は比較的遅れて侵される.造影効果はない.前頭葉優位が多い (CD-ROM 参照). 3.多発性

化症:散在性の白質病変

4.馬尾の肥厚を来す疾患:脳症状の有無 (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

末梢神経障害を伴う白質ジストロフィー

Box

1.クラッベ病 2.異染性白質ジストロフィー 3.副腎白質ジストロフィー いずれも,末梢神経障害は脱髄のパターンを取る.

症例 A

歳,女性 成人型異染性白質ジストロフィー(MLD)

いとこ婚,弟も 17∼22歳頃より認知症になり,35歳で死亡.おそらく同症であったと えられる. 28歳頃から知能低下が起こり,30歳頃から徘徊をする.32歳頃より親の区別がつかない.34歳で他 院入院.周囲に無関心,自発言語はほとんどない.明らかな麻痺はなく不随意運動もない.腱反射は低 下,強制把握陽性.運動神経伝達速度の遅れ. T 2強調画像(図 1∼3)では著明な大脳萎縮があり,被 は年齢に比し低信号を示す.前頭葉深部白質 を中心に高信号領域を認める.大脳皮質下線維は保たれている.この時点では小脳に明らかな病変はな く,錐体路にも顕著な変化は認めない.成人型異染性白質ジストロフィーに合致する所見である. 4年後の MRI(非掲載)では小脳髄体と大脳脚後部に高信号領域を T 2強調画像で認める.

MLD の臨床 MLD は先天型,遅発幼児型(1∼2歳),若年型(4∼12歳),成人型(16歳以降)に けられる.認知症 あるいは精神症状の後に,錐体路あるいは錐体外路症状が出現する.

T 強調画像

T 強調画像

(都立 沢病院神経内科,安野みどり先生の厚意による)

T 強調画像


症例

-

●参 文献 1 Farina L, et al. MR imaging and proton MR spectroscopy in adult Krabbes disease. AJNR Am J Neuroradiol. 21(8): 1478-82, 2000. 2 Given CA 2nd,et al.Intracranial and spinal MR imaging findings associated with Krabbes disease:case report.AJNR Am J Neuroradiol. 22(9):1782-5, 2001. 3 Jones BV, et al. Optic nerve enlargement in Krabbes disease. MR findings in globoid cell leucodystrophy, AJNR Am J Neuroradiol. 20(7):1228-31, 1999. 4 Demaerel P, et al. MR findings in leukodystrophy. Neuroradiology. 1991;33(4):368-71. 5 服部達哉,他:進行性の痴呆・行動異常を呈した 40歳女性.脳神経.51(2):185-94,1996.(成人型異染性白質ジス トロフィーの剖検例(症例 A の CPC 所見についての論文)


症例 歳,女性 側頭葉てんかん 13歳頃より全身けいれん,現在の発作は側頭葉てんかん.

fast STIR 法 冠状断像

fast STIR 法 冠状断像


症例

右海馬 化症 解説 画像所見:正常側である左側(図 3:図 2の左拡大図)では海馬傍 回(ph)と海馬台(S)との間の白質(*印)は正常に認められるが,右 側は不鮮明となっている(CD-ROM 内の図 9,10も参照).左海馬 台(S)と歯状回(d)の間の白質(浅髄板:矢頭)も同様に右側は不鮮

d

明となっている.以上より右海馬 化症と診断された.手術にて確 ph

認されている.海馬内あるいは海馬傍回との境の白質・皮質境界領

▲ s

域をみるには fast STIR 法が鮮明である.海馬自体も右側にやや信 号強度が高い部

があるが,他のパルス系列では指摘できなかっ

た.

fast STIR 冠状断像

側頭葉てんかんの臨床と病理 難治性の複雑部 海馬

発作を示す代表的な疾患で,外科的治療の約 70%を占めると言われている.

化症は側頭葉てんかんの原因として最も多い.その他には皮質形成障害,良性の腫瘍,血管奇

形,孔脳症,出生早期の脳障害の後遺症がある. 海馬

化症では海馬の神経細胞の減少とグリオーシスを認める.CA 2は比較的免れることがある.

アンモン角および歯状核の両方を侵すこともある.その原因は確定されていない.後天性の病変とする 説と発達上の問題とする説がある. 海馬

化症の 15%にその他の局所的な病変の合併(dual pathology)がある(CD-ROM 参照).

海馬 化症の画像診断 撮像方法:薄いスライス(3mm)での海馬の長軸に垂直な冠状断での T 2強調画像,T 1強調画像およ び fast STIR 法,より広い範囲を含む 5mm での冠状断 FLAIR 画像,脳全体を撮像するための横断像 の T 2強調画像,側頭葉てんかんと言われても必ず脳全体を撮ることが必要である.後頭葉に病変を認 めることがある.海馬 化症による信号強度変化は FLAIR 画像が最もわかりやすい.海馬の大きさは T 1強調画像もしくは T 2強調画像がよい.海馬内の白質・皮質境界領域をみるには fast STIR 法が鮮 明である. 冠状断像で海馬が小さく,反対側に比べて明らかな高信号を T 2強調画像あるいは FLAIR 画像で示 すときには海馬 化症と確定診断できる.明らかに大きさが小さいが,信号強度異常が明確でないとき にも側頭葉てんかん患者では,小さい側に海馬

化症がある可能性が大きい.さらに本例のように,

fast STIR 法で海馬内部の白質(浅髄板)および海馬傍回と海馬台との間の白質が鮮明にみえないなどが 参 所見になる.大きさに左右差はないが明らかに高信号領域を一側の海馬が示すときにも側頭葉てん かん患者では患側と える.側頭葉尖端部白質内の皮髄境界の不鮮明,白質の volumeの減少,白質の 信号強度の T 2強調画像での上昇がある側に側頭葉てんかんの焦点側があり,海馬 化症の所見が曖昧 なときには参 になる(文献 1および症例 3参照). 海馬

化症の付随所見として,脳弓あるいは乳頭体の患側の萎縮,同側視床前核の T 2強調像での高

信号領域,同側視床の萎縮,下角の拡大,同側側頭葉の萎縮がある(文献 2). (CD-ROM 参照)


症例

症例 症例 A

歳,男子 海馬 かん

-

資料 化症と神経節膠腫(dual pathology)による側頭葉てん

3ヶ月にて最初の発作.3歳より左眼瞼より始まる顔面のぴくつきがあり,口を横に広げて シー シー と言う症状がみられた.ときに全身けいれんに移行. 現在の発作は突然にらみつけるような表情をし,嘔吐するかのように オエーオエー と言い,左顔 面がぴくつく.上下肢をばたばたと動かす.

解説 画像所見:CT にて右鉤に石灰化を認める(図 1矢印).石灰化の後方に低吸収域を認める(矢頭).右 下角がやや大きい.FLAIR 画像で右鉤に囊胞(図 2矢頭)を認める.その周囲には高信号領域があり (矢印),さらに右下角は拡大し,海馬にも高信号領域を認める.FLAIR の冠状断像にて右海馬は小さ く,高信号を示す(図 3矢印).海馬 化症の所見である.T 2強調冠状断像では,海馬より前のスライ スですが,右鉤に小さな高信号を示す囊胞があり(図 4矢印),その周囲には高信号領域を認める.な お,MRI と CT では造影効果を認めない.石灰化と囊胞を合併する高信号領域であり,神経節膠腫を 示唆する所見である.造影効果および mass effect はない.側頭葉てんかんの小児および若年成人にお いて(鉤にこのような病変を)認めたときには神経節膠腫を える. さらに両側側頭葉の白質を比べると患側の右側の白質の volume(図 4矢頭),特に側頭葉幹と呼ばれ る白質の量が減少しているのがわかる.側頭葉てんかんに伴う所見であり,この所見が必ずしも皮質形 成異常を伴うことを意味しない.本例の場合には散在する神経細胞(heterotopic neurons)を大脳白質に 認めたが,それが MRI での皮質白質境界の不鮮明を表現しているのではない.海馬

化症における神

経節膠腫との dual pathologyの症例である.

▲ ▲

CT 画像

FLAIR 画像


症例

-

▲ 図

FLAIR 画像

T 強調画像

dual pathology 海馬

化症の 15%にその他の局所的な病変の合併(dual pathology)があり,皮質形成障害が最も多

い.脳腫瘍も,血管奇形,孔脳症,出生直後の障害の後遺症(グリオーシス)などがある.側頭葉に多い が,側頭葉外でも認められる.皮質形成障害では海馬との距離は無関係であるが,血管障害では海馬に 近い部位にあるときに dual pathologyを認める.海馬

化症も局所的な病変も両方ともてんかんの原

因となっていることが多く,両者ともに見落としてはいけない所見である.

鑑別診断 1.海馬に接する腫瘍があり,海馬に高信号領域を T 2強調画像あるいは FLAIR 画像に認めたときの鑑 別: 1) 海馬が腫大している:腫瘍による浸潤の可能性が高い. 2) 海馬が萎縮:海馬 化症の合併 3) 海馬の大きさが正常範囲:1および 2の両方の可能性がある.いずれにしても,海馬に高信号 領域を認めれば,腫瘍と一緒に,海馬を切除することになる. 2.けいれん重積:海馬は急性期には腫大することが多い.両側性のことがある.患側の海馬以外の部 位に高信号領域を T 2強調画像で認める.脳回様の造影効果を認める.慢性期には海馬の萎縮と高 信号を認め,海馬 化症と同様な所見を示すことがある.文献 2によれば 23ヶ月の男児に左側の部 てんかん発作が継続し,3日後の T 2強調画像にて右海馬の腫大と高信号を認め,2ヶ月後には右 海馬の

化症の所見を認めた報告がある.4人の他の患者に同様な報告があり,すべて右海馬

症となっている.


症例

症例 B

歳,女性

-

年前に脳炎に罹患.その後けいれんの頻度は減少したが残存

T 2強調画像(図 5の矢印)および FLAIR 画像(図 6の矢印)にて,両側海馬の信号強度は高く,正常 に比べて明らかに小さい.FLAIR 画像では正常帯状回の信号強度と比べると海馬の信号強度が高いこ とが明瞭である.正常例の FLAIR 画像でも海馬や帯状回などの辺縁系の信号強度は高いので,両側海 馬 化症の診断では T 2強調画像での海馬の信号強度,大きさなどを参 にする.

症例 C

T 強調画像

歳,男性

FLAIR 画像

歳で発症の側頭葉てんかん

T 2強調画像にて右海馬に かな高信号領域を左に比べて認める(図 7の矢印).大きさには左右差が ない.FLAIR 画像では左右差を認めない.右海馬

化症を疑わせる所見であるが,この所見のみでは

確信が持てない.少し前方の他のスライスをみると右側頭葉内側部の髄枝に皮髄境界の不鮮明および軽 度の信号強度の上昇を認める(図 8の矢頭).右側頭葉てんかんであることが明らかであり,図 7の所見 を海馬 化症と確定できる.

▼ ▲ 図

T 強調画像

T 強調画像


症例

-

症例 D(剖検例)

歳,女性

海馬 化

胎盤早期剥離のため,重度仮死で出生.新生児けいれんもみられ,以後,痙直性四肢麻痺で寝たきり 状態となる.重症心身障害児施設に入所中に突然死. 剖検所見 正常対照での左側頭葉底面(図 9)と海馬の拡大写真(図 10),クリューバー・バレラ(KB)染色.左側 頭葉冠状断,クリューバー・バレラ染色(図 11)とホルツアー(HZ)染色(図 12)(ともに星印が側脳室下 角を示す),海馬と海馬台(図 11・12の矢印)は萎縮し線維性グリオーシスを認めた.さらに海馬傍回に も有髄線維脱落と線維性グリオーシスが認められ(図 11・12の矢頭),前記の所見と合わせて本文症例 の MRI 異常所見と合致していた.同例の海馬,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の強拡大,CA1 では神経細胞が高度に脱落していた(図 12の矢頭).

内 側 図

外 側

対照の側頭葉底面(KB 染色)

対照の海馬(KB 染色)

内 側 図

外 側 歳症例の側頭葉底面(KB 染色)

歳症例の側頭葉底面(HZ 染色)


症例

-

(症例 D のつづき)

歳症例の海馬(HE 染色)

症例 E(手術例)

歳,女性 海馬 化症

6歳で高所より転落し脳挫傷になり 1ヶ月半入院.15歳,凝視から口部自動症に至るてんかん発作が 出現,知的機能も低下,頭部 CT・MRI 検査により海馬 化症と診断され左側頭葉切除術を受ける. 外科病理所見 右海馬,クリューバー・バレラ染色(図 14)と抗 GFAP(glial fibrillary acid protein)免疫染色(図 15), 海馬の形態は比較的保たれていたが,歯状回に隣接した CA 4と写真左の CA 1優位,神経細胞脱落 (図 14の矢頭)とグリオーシス(図 15)が認められた.クリューバー・バレラ染 色 の 強 拡,右 半 CA 2に比べて,左半 の CA 1では神経細胞が高度に脱落していた(図 16).

▼▼

歳症例の右海馬(KB 染色)

歳症例の右海馬(GFAP 染色)


症例

-

(症例 E のつづき)

歳症例の CA (左)・CA (右)(KB 染色)

●参 文献 1 Adachi Y,et al.White matter abnormalities in the anterior temporal lobe suggest thesideoftheseizurefoci in temporal lobe epilepsy. Neuroradiology. 48(7):460-4, 2006. 2 Bronen R :MR of mesial temporal sclerosis:How much is enough. AJNR Am J Neuroradiol 19(1):15-18, 1998. 3 Mitchell L, Jackson R, Kalnins R, et al. Anterior temporal abnormality in temporal lobe epilepsy-a quantitative MRI and histopathologic study-. Neurology 52(2):327-36, 1999. 4 Kim J, Tien R, Felsberg G, et al. Clinical significance of asymmetry of the fornix and mamillary body on MR in hippocampal sclerosis. AJNR Am J Neuroradiol 16 (3):509 -15, 1995. 5 Sokol DK,et al.From swelling to sclerosis:acutechangein mesial hippocampus after prolonged febrileseizure.Seizure. 12(4):237-40, 2003. 6 Bocti C, et al. The pathological basis of temporal lobe epilepsy in childhood. Neurology. 28;60(2):191-5, 2003. 7 Cendes F, et al. Frequency and characteristics of dual pathology in patients with lesional epilepsy. Neurology. 45(11): 2058-64, 1995.


症例 歳,女性 中頭蓋窩の巨大な腫瘤 10年ほど前に視野欠損と視力低下で他院で CT を撮り,腫瘤の存在を指摘される.今回半年間で視 力の低下,視野欠損が進み来院. (CT と MRI との造影効果の差はなぜか,診断は?)

CT

T 強調冠状断像

造影後の CT

同 T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

中頭蓋窩の海綿状血管腫 解説 画像所見:CT で右中頭蓋窩から鞍上部にかけて,境界明瞭な,脳実質よりやや吸収値の高い巨大な 腫瘤がある.CT で一部に点状の不

一な造影効果を認める.T 2強調画像では中頭蓋窩の内側から鞍

上部にかけて腫瘤があり,ほぼ 一な高信号を示し,T 1強調画像で

一な低信号を示す.腫瘤の外側

下方には側頭葉を認める.脳実質外と えられる.脂肪抑制後の T 1強調画像では腫瘤は 一に染まっ ている.CT と MRI での造影効果の違いは,CT が造影剤投与後短時間に撮像がなされたのに比べ MRI では T 1強調像を撮る時間だけ時間が

びたことによる.血管造影後に行った CT では腫瘤は

一に造影されていた(図 6).血管造影でも造影剤を多くし時間をかけて注入を行った後の動脈相後期に は点状の腫瘍濃染像を認める(図 7の矢印).以上の所見は中頭蓋窩(あるいは 膜の)海綿状血管腫と える.

血管造影後の CT

右内頸動脈造影

臨床 脳実質外の海綿状血管腫は稀な腫瘍であり,手術の際に出血が多いことはよく知られている.中年の 女性に多く,過去の報告によれば 47例中 37例が中頭蓋窩にあり,25例が日本人の報告である.中頭 蓋窩の本腫瘤による症状はゆっくりと経過をたどることが多く,複視,視力障害,視野欠損である.稀 に,くも膜下出血にて発症した例もある.妊娠による症状の悪化例もある.中頭蓋窩海綿状血管腫は術 前に他の腫瘍特に髄膜腫との鑑別が重要である. 本例でも証明されたが,放射線治療は有効なことが多い. 脳内の海綿状血管腫に比べて,脳実質外の血管腫では,血管腔を取り囲む間質結合組織に乏しく,血 管腔は広く,ヘモジデリンや石灰化が少ない.そのような病理学的違いが画像所見に反映していると えられる. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像所見 CT については 21例の報告がある.境界明瞭な高吸収域を示す腫瘤であり,強い造影効果を認める. 沼口らの報告以来,血管造影にて造影剤を多くし,時間をかけて注入を行った後の動脈相後期には腫瘍 濃染像を認めることが多い. T 2強調画像で高信号領域の存在,腫瘤内の血管の流れがゆっくりなため,造影効果が遅

する.そ

のために,ダイナミック MRI では腫瘤がゆっくりと造影されるのが描出できる.本例における CT と MRI との造影効果の差もそれによる.髄膜腫はそれに比べて,早期より造影効果を認め,段々と造影 効果が弱くなる. 中頭蓋窩以外にも,小脳天幕などの付着した本症があるが,基本的な画像所見は同じである.

鑑別診断 1.髄膜腫:上記参照 2. 膜外三叉神経鞘腫:腫瘍の中心がより後方にあり,後頭蓋窩におよぶこともある.顔面の知覚障 害が多く眼症状は稀である.ときに造影されない囊胞成 を伴う. 3.類上皮腫: 一な造影効果はない. ●参 文献 1 Biondi A,et al.Intracranial extra-axial cavernous (HEM) angiomas:tumors or vascular malformations?J Neuroradiol. 29(2):91-104, 2002. 2 Lewis AI, et al. Dural cavernous angiomas outside the middle cranial fossa:a report of two cases.Neurosurgery.35(3): 498-504, 1994. discussion 504. Review. 3 木下良正,他:脳・脊髄の MRI 画像アトラス.中頭蓋窩海綿状血管腫の proton magnetic resonance spectroscopy,脳 と神経.55(11):992-3,2003. 4 Numaguchi Y, et al. Prolonged Injection angiography for diagnosing intracranial cavernous heangiomas, Radiology 131(1):137-8, 1979.


症例 歳,女性 ふらつき歩行と呂律の不良が

年の経過で徐々に進行

眼振および小脳失調を認める.低緊張で,自力歩行不可能,自律神経系には著変を認めない. (図 2と 3の矢頭は何を示すのか?)

T 強調矢状断像

T 強調画像

T 強調画像


症例

マシャド・ジョセフ病(MJD:SCA ) 解説 画像所見:T 1強調画像で軽い小脳の萎縮がある.脳幹もやや小さめである.2枚の連続するスライ ス面で橋底部正中部に前後に伸びる高信号領域が T 2強調画像にて認められる(図 2,3の矢頭).この 高信号領域は軽度の橋横走線維の変性を示す(症例 23図 2も参照).発症してから 6年の経過にて,軽 度の橋横走線維の変性を T 2強調画像で認めるときに,最も可能性の高い疾患はマシャド・ジョセフ病 (MJD)である.中小脳脚に高信号を認めないのも横走線維の変性が軽度であることを示している.

臨床 常染色体優性遺伝を示し,若年から中年,ときに老年に小脳性運動失調で初発する.眼振,錐体路徴 候(痙性を示すことが多い)がほぼ共通に認められ,その他,アテトーシス,ジストニア,びっくり眼 (特徴的),顔面ミオキミア,眼球運動障害,筋萎縮などもある.晩期には感覚障害,自律神経症状(特 に排尿障害)も認められることがある.第 14染色体長腕に座を持つ遺伝子の CAG リピートに異常伸長 があることを証明すれば,診断は確定する.病理では歯状核,上小脳脚,脊髄小脳路,クラーク柱,黒 質,脊髄前角細胞に強い変性があり,また視床下核と淡蒼球内節系の変性が高頻度である.さらに脳幹 では眼球運動諸核,内側縦束の変性を認める.

画像診断 小脳と橋の萎縮を示す.MJD でも,橋横走線維の変性が橋底部正中部に前後に伸びる高信号領域と して T 2強調画像で認められる.橋底部正中部に比較的限局した軽度の橋横走線維の変性を示す.多系 統萎縮症と異なり,橋底部に逆 T 字状に T 2強調画像で高信号領域を認めるのは少数で,かつ中小脳 脚に高信号領域を認めることは大変少ない.中脳および上小脳脚に萎縮を認めることがある.病理所見 において小脳歯状核からの出力系が侵され,上小脳脚萎縮はそれを反映している. 淡蒼球内節に T 2強調画像で,ときに線状の高信号を左右対称性に認めることがある.この所見は MJD の淡蒼球内節病変を示している可能性があるが,ある年齢以上では加齢性変化でも認められ,鑑 別が困難である. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

橋横走線維の変性の見方(鑑別診断) 橋の横走線維の脳変性疾患による変性は,T 2強調画像では橋底部に線状の高信号領域として認めら れる.中心部から始まり,縦に線状の高信号領域として初期に認められ,その後,底部と被蓋の境界部 に横の高信号として認められる.さらに橋底部の周囲,中小脳脚の高信号として認められる.日本では MSA-C 型の患者に最も多い所見であり,かつ,MSA-C 型では発症早期から認められる.MSA-C 型 で発症してから約 6年の経過すると,横走線維の変性は進み,縦のみの変性であることはなく,横の高 信号も認められ,中小脳脚にも高信号があることが少なくない.MSA-P 型ではより遅いが,小脳症状 にて発症することはない. MJD および spinocerebellar ataxia (SCA)type 1 と type 2 で橋横走線維の変性を認めるが,その程度 は軽く,MSA-C 型に比べてよりゆるやかに進行する.これらでは橋横走線維の変性は縦方向の高信号 のみでとどまることが多く,中小脳脚には高信号を認めないことが多い. その中で,日本では MJD が圧倒的に数は多い.縦方向のみの橋横走線維の変性を,T 2強調画像で 発症して数年経過した症例に認めたときは MSA-C 型ではなく,MJD の可能性が高い(後述する剖検例 の図 3参照).高齢者では家族に類症を認めないときもある.家族に類症はないが,本例は MRI で MJD を疑い,遺伝性解析で確認された 1例である.眼振は MJD では初期から認められるが,SCA 1 と 2では初期には認められないこともある. 眼振がはっきりしない小脳症状にて発症し,数年以上経過してなお,縦型の高信号のみを T 2強調画 像にて認めるときには SCA 1および SCA 2を

える.宮城県,山形県の一部では特に SCA 1が多い.

小脳失調にて発症して 1年以内の症例に,橋底部に縦型の高信号を T 2強調画像で認めるときには MSA-C 型の可能性が最も高い.


症例

-

症例 A(剖検例)

歳,女性

MJD

兄 2人,長男,長女,甥が MJD で,患者も CAG リピートが 74と異常伸長.37歳,歩行障害で発 症,47歳に構音障害も加わり,49歳から伝い歩きとなる.55歳嚥下障害が出現,58歳から車椅子生活 となる.眼球運動制限,小脳症状,錐体路症状,錐体外路症状,末梢神経障害もみられた.自宅で急 死. 剖検所見 大脳冠状断の大脳基底核,視床部,クリューバー・バレラ(KB)染色(左)/ホルツアー(HZ)染色(右), 吻側切片では淡蒼球(図 1の矢印),尾側切片ではルイ体(図 2の矢印)に線維性グリオーシスを認める. 橋中下部,クリューバー・バレラ染色(上)/ホルツアー染色(下),橋底部の正中部優位に橋横走線維の 脱落と線維性グリオーシスが認められた(図 3の矢印).

右淡蒼球(左 KB・右 HZ 染色)

右ルイ体(左 KB・右 HZ 染色)

橋中部(上 KB・下 HZ 染色)

●参 文献 1 柳下章:脊髄小脳変性症の MRI.臨床放射線 44(11):1295-303,1999. 2 柳下章:多系統萎縮症の MRI.神経内科 50(1):16-23,1999.


症例 歳,男性

年前より左下肢の脱力が進行

1年前より左下肢の脱力が進行,12月には右下肢の脱力,歩行障害が進行.左優位の両下肢の脱力, 筋萎縮,腱反射亢進.

T 強調画像(SE 法:

/

)

プロトン強調画像(

/ )


症例

筋萎縮性側索

化症(ALS)

解説 画像診断:内包後脚内の皮質脊髄路は内包後脚を 4等 した前から 3番目の位置にあり,正常 T 2強 調画像では他の白質とは異なり,皮質と等信号で周囲の白質よりは高信号を示す.本例では,その皮質 脊髄路の信号強度が皮質より高く,異常である.プロトン強調画像では正常の皮質脊髄路は周囲の白質 と等信号を示し同定できない.本例では周囲の白質と比べてあきらかに高信号を示し,皮質脊髄路に異 常を認める.ALS を示唆する所見である.

臨床 ALS は主として大脳の上位運動ニューロンと脳幹・脊髄の下位運動ニューロンが選択的に障害され る神経変性疾患である.

画像診断 ALS の内,内包後脚に異常を来す症例は上位ニューロンの障害の強い例に多い.下位運動ニューロ ン障害が主となる例ではほとんどの症例で内包後脚の異常を来さない. 内包後脚内の皮質脊髄路に異常を示す疾患は以下のように多数あるが,皮質脊髄路のみに限局して異 常があるときには ALS が最も えられる.ときに異常な信号強度を示す皮質脊髄路が放線冠あるいは 橋, 髄におよぶことがある. SE 法(2,300/100)による T 2強調画像にて,60歳以下の症例に認められる運動皮質の低信号も有意 な異常と えられる(CD-ROM 参照). fast SE 法ではなく,SE 法(2,300/100)を T 2強調画像として

用する理由は運動皮質の低信号がよ

り明瞭に出ること,内包後脚内の皮質脊髄路の変性もより明瞭であることによる.プロトン強調画像 (2,000/22)も髄液を黒く描出するパルス系列を 用している.それによって正常例では,内包後脚内の 皮質脊髄路は他の白質と比べて等信号となり,正常では同定できない.

Box

両側皮質脊髄路に異常高信号を呈する疾患

1.筋萎縮性側索

化症 (原発性側索

化症

と乳児発症の遺伝性痙性対麻痺を含む) 2.ワーラー変性 3.代謝性疾患 副腎白質ジストロフィー クラベ病 異染性白質ジストロフィー 脳腱黄色腫症

4.脱髄性疾患 多発性

化症,急性散在性脳脊髄炎,

神経ベーチェット病,AIDS 5.脳腫瘍 神経膠腫,悪性リンパ腫 6.中毒 トルエン(シンナー)中毒 7.感染症

レフサム病

HAM (ヒト T リンパ球向性ウイルス

シェーグレン・ラーソン症候群

脊髄症)

亜急性脊髄連合変性症 低血糖 (CD-ROM 参照)

は脊髄内の皮質脊髄路にも病変を認める.


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,女性 ALS,両側の錐体路徴候(深部腱反射の亢進,痙縮)を認め, ALS と診断される

SE 法(2,300/100)による T 2強調画像で,運動皮質に低信号領域を認める(図 1の矢頭).異常であ り,ALS を示唆する所見である.中心前回の白質に高信号を認める(図 1の矢印), 高齢者(60歳以上)では,加齢による変化のためか,運動皮質を初め,多くの皮質に T 2強調像にて 低信号を認めるので,同所見を異常とはとらない.

T 強調画像(SE 法)


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,男性 ALS

全経過 2年 7ヶ月,典型的な経過,人工呼吸器は装着せず(図 2,4).

症例 C(剖検例)

歳,女性 ALS

全経過 12年,典型的な経過,人工呼吸器は装着せず(図 3). 剖検所見 大脳水平断,クリューバー・バレラ(KB)染色,内包後脚の錐体路に一致し,髄鞘淡明化が認められ た(図 2の矢印).大脳水平断,ホルツアー(HZ)染色,中心前回の白質に線維性グリオーシスを認めた (図 3の矢印).胸髄前角,クリューバー・バレラ染色,運動ニューロンは高度に脱落しグリオーシスを 認めた(図 4).

左内包水平断(KB 染色)

胸髄前角(KB 染色)

左中心前回水平断(HZ 染色)


症例

-

●参 文献 1 Yagishita A,et al.Location of the corticospinal tract in the internal capsule at MR imaging.Radiology.191(2):455-60, 1994. 2 柳下章:ALS の画像 MRI 内包後脚.神経内科 516-24,1999. 3 柳下章:筋萎縮性側索 化症の脳の MRI.臨床神経学 50(6):35(12):1554-6,1995. 4 Hirai T,et al.T2 shortening in themotor cortex:effect ofaging and cerebrovascular diseases.Radiology.199(3):799 -803, 1996.


症例 歳,男性 不眠と夜間の不随意運動 5月より不眠,7月より夜間に不随意運動(ミオクローヌス).

日の FLAIR 画像

同 T 強調画像

同 FLAIR 画像


症例

クロイツフェルト-ヤコブ病(遺伝性) 解説 画像所見:FLAIR 画像で右尾状核と前部被

に高信号領域を認め,T 2強調画像では右優位に両側

尾状核,被 前部に高信号領域を認める.大脳基底核の萎縮はなく,皮質に大きな萎縮はなく,異常信 号強度を認めない.クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)である.拡散強調画像を施行すればより明瞭に 高信号を指摘できたと える.拡散強調画像は施行されていなかった.ほぼルーチンに拡散強調画像を 施行する必要がある.症状は急速に進行し入院.9月 14日に MRI の再検.拡散強調画像でより明瞭に 左右の尾状核と被

に高信号を認め(図 4,5),さらに左右の帯状回にも高信号を認める.翌年 2月に

死亡し,CJD の確認がとれた.兄が 77歳で CJD で死亡し,本人には Codon 200 Glu/Lys の遺伝子変 異があった.

拡散強調画像

拡散強調画像

臨床 プリオン蛋白(PrP)の異常で発症する神経疾患群をプリオン病という.何らかの原因で PrP の高次構 造が変化して難溶性の異常プリオン蛋白が生成され,脳に蓄積してプリオン病を起す.プリオン病は発 症機序により,①特発性,または孤発性(原因不明),②遺伝性,③感染性(異常 PrP に感染)の 3つに けられる.①がクロイツフェルト-ヤコブ病と呼ばれる. 臨床症状は急速に進行する認知症であり,ミオクローヌスおよび無動無言である. 遺伝性プリオン病には遺伝性クロイツフェルト-ヤコブ病,Gerstmann-Straussler-Scheinker 症候群, 及び致死性家族性不眠症が含まれ,遺伝子変異を示す. ヒト

膜移植後の CJD(医原性 CJD)が各国に比べ極めて多数例の発症が日本にはある.

変異型クロイツフェルト-ヤコブ病(vCJD)はウシ海綿状脳症がヒトに経口感染したものとされてい る.ヨーロッパ,特に英国に多い. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 変異型を除き,他のクロイツフェルト-ヤコブ症(CJD)の画像所見は同一である. 進行性の尾状核,被

前部,視床,大脳皮質の高信号領域を拡散強調画像,FLAIR 画像,T 2強調

画像で認める.拡散強調画像が最も明瞭である. 両側視床枕に T 2強調画像で被

に比べてより高信号を認める.特に変異型により明瞭に認められ

る. 拡散強調画像では皮質は脳回様に高信号を示すが,進行すると高信号が消失する.大脳基底核も同様 である. T 1強調画像で孤発性の CJD,淡蒼球に一次的に高信号を認めることがある. 進行するにつれて大脳萎縮が著明になる.全脳型 CJD では大脳白質に高信号を認める.CJD による 一次的な白質変性によると えられる. 小脳症状で発症する CJD では,拡散強調画像で小脳に高信号を認めることは少ない.原因は不明で ある. 病理所見では淡蒼球,アンモン角,海馬の歯状核,脳幹と脊髄は免れると言われている(文献 6).拡 散強調画像でも海馬が侵されることはなく,無酸素性脳症などとの鑑別に有用な所見である.

鑑別診断 線条体に高信号領域を FLAIR 画像で認める疾患

Box

1.クロイツフェルト-ヤコブ病:前部に強 い.

6.クリプトコッカス症:円型あるいは楕円

2.ウイルソン病:前部に強い例もある.視 床,赤核周囲,橋被蓋にも高信号を認め る.大脳基底核の信号強度は T 2強調画 像では様々である. 3.HIV 脳症:被

に同様な病変を認めるこ

とがある.病歴 4.トキソプラズマ症:造影効果

症例 A

5.神経梅毒 形 7.浸透圧性脱髄症候群:被

は全体が侵さ

れる. 8.低血糖 9.ハンチントン舞踏病:被

と尾状核に萎

縮を認める.被 前部に強い所見はなく, 後部も侵される.

歳,男性 クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD),認知症がある

2000年 2月頃より疲れやすく仕事がうまくいかない.3月より気力低下.6月降格人事.8月に精神 科受診.認知症と言われた.9月 28日に最初の MRI.ミオクローヌス,脳波上,周期性同期性放電は なく,症状の進行が早くないので,臨床診断はアルツハイマー病の疑いである. 画像所見:両側の側頭葉,特に左前部に萎縮を認める.拡散強調画像にて明瞭に,左優位に側頭葉外 側の皮質に異常な高信号領域を認める(図 1の矢印).FLAIR 画像でも程度が軽いが,皮質に高信号領 域を認める(図 2の矢印).一方,基底核には拡散強調画像,FLAIR 画像ともに,異常を認めない(図 3∼4).大脳基底核前部に所見がない,非典型的な所見であったが CJD と 年半後に死亡し,剖検にて CJD が確認された.

えられる所見であり,約 1


症例

-

病理でも大脳皮質,視床には CJD に合致する所見があったが,大脳基底核の所見が軽い例であった. この症例は,画像上からは,初期から軽い萎縮ある点,基底核に所見がない点が非典型的であり,臨 床も CJD としては進行が遅い印象である.しかし,拡散強調画像と FLAIR 画像での側頭葉皮質の高 信号領域は他の疾患では認められず,本症以外には えにくい典型像である. CJD でも,発症から剖検まで 7年経過した例もあり,初期には画像のみが CJD を示す例もある.逆 に,臨床症状および脳波所見から CJD が

えられる例でも,MRI では CJD を示す所見(大脳皮質,被

前部,尾状核の拡散強調画像および FLAIR 画像での高信号領域の存在)が認められない時期もある.

拡散強調画像

拡散強調画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像


症例

症例 B(剖検例)

歳,男性

-

クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)

70歳で突然,めまい,歩行障害が出現,見当識障害,運動無視,ミオクローヌスが急激に進行した. 発病 5ヶ月で経口摂取不可となり寝たきり状態となる.頭部 MRI 検査では,線条体,視床枕,淡蒼球 に相次いで信号異常が出現,大脳萎縮も進行した.ミオクローヌスは消失し中枢性の呼吸不全で死亡. なお剖検脳の Western blotting

析により異常プリオン蛋白が検出された.

剖検所見 大脳左側面,前頭葉優位に萎縮がみられた(図 5).両側前頭極割面,背外側優位に前頭葉に高度の脳 萎縮がみられ,脳回は狭小化していた(図 6).尾状核・被

は容量を減じ色調がやや不良(図 7),視床

も両側とも白色調を呈していた(図 8の矢印).

大脳左側面

線条体頭部冠状断

前頭極冠状断

視床冠状断

●参 文献 1 Collie DA, et al. Diagnosing variant Creutzfeldt-Jakob disease with the pulvinar sign: MR imaging findings in 86 neuropathologically confirmed cases. AJNR Am J Neuroradiol. 24(8):1560-9, 2003. 2 Murata T,et al.Conspicuityand evolution of lesions in Creutzfeldt-Jakob disease at diffusion-weighted imaging.AJNR Am J Neuroradiol. 23(7):1164-72, 2002. 3 柳下章:痴呆の画像診断.Creutzfeldt-Jakob 病の CT 特に白質病変について,臨床放射線 34(11):1317-25,1989. 4 Matsusue E, et al. White matter lesions in panencephalopathic type of Creutzfeldt-Jakob disease: MR imaging and pathologic correlations. AJNR Am J Neuroradiol. 25(6):910-8, 2004. 5 奥田智子,他:神経感染症の画像診断.プリオン病,日独医報 Vol.47,No.3,342-51,2002.(CJD の画像所見につ いて詳しく記載されている) 6 Dermond SJ,et al.Prion disease.In Greenfield s Neuropathology,eds Graham DI,et al.7th ed.vol 2,Arnold, 273-324, 2002.


症例 歳,男性 全身けいれんで発症し,右前頭葉に腫瘤 ? 3月 21日に全身けいれんにて近医受診,頭部 CT より脳占拠性病変が疑われ入院.

CT

T 強調画像

FLAIR 画像

▲ ▲

T 強調画像

造影後の T 強調画像

(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院放射線科,小山眞道先生の厚意による)

同拡大像


症例

有鉤囊虫症 解説 CT(図 1)で左前頭骨直下の皮質白質境界部に かな低吸収域を認め,その周囲には高吸収域がある. T 1強調画像(図 2)では低吸収域を示す部位には髄液と同様な低信号領域があり,その周囲には皮質と 同様な信号強度を示す.軽い mass effect があり,囊胞性病変を示す.FLAIR 画像(図 3)では囊胞を示 す低信号内部に線状の高信号領域を認める(矢頭).拡大後の T 2強調画像では腫瘤は高信号を示し,そ の外側に かな低信号がある(図 4の矢頭).造影後の T 1強調画像(図 5)では囊胞周囲に造影効果を認 め(矢印),さらに拡大像(図 6)では囊胞内に突出した部位にも造影効果を認める(矢頭). この症例は単発と比較的珍しい形ではあるが,皮質白質境界部に囊胞があり,その内部に突出した形 (頭節を示す)の病変があり, かの造影効果を認め,囊胞の周囲にも造影効果を認めることより,囊虫 症を最も える. 患者は中国河南省出身で 5年前に来日,ブタ,ニワトリ,キジなどの生食の習慣はないと本人は否定 している.

臨床 豚やイノシシを中間宿主とし,人を終宿主とする有鉤条虫の幼虫寄生により生じる疾患である.被囊 化された幼虫を含んだ調理不十 な豚肉などを接種すると感染する.幼虫は人の腸内で成虫の有鉤条虫 (taenia solium)となる.その卵より萌出された幼虫が腸管壁から血管内に入り,全身諸臓器に寄生して 囊胞を形成し,成長して有鉤囊虫(cysticercus cellorosae)になる.好発部位は皮下組織,筋肉,中枢神 経,肺,肝臓などである.感染経路として人糞中の虫卵を偶発的に接種することによっても起こる. 中枢神経が侵された場合,様々な神経症状が出現するが,けいれんが最も多い.感染から発症するま で数年から数十年かかる(平

4.8年).病変部位としては脳実質が 50∼70%と最も多く,脳室内が

15∼50%,くも膜下腔が 3∼10%となる.通常は多数の囊胞を認める. (CD-ROM 参照)


症例

症例

資料

画像診断 1.囊胞期 活動性のある幼虫と貯留液体を囲む薄い被膜からなる. 脳脊髄液(CSF)と等信号,等吸収の囊胞と頭節に相当する壁在結節を有する. 浮腫による変化や造影効果はまれである. 2.コロイド囊胞期 幼虫が死んで変性し,囊胞液は混濁してくる. 被膜が厚くなるに従い囊胞は小さくなる. 変性した幼虫は血脳液関門を越える代謝産物を放出(宿主の炎症反応が進行). 浮腫,神経膠症,造影増強効果を示す. T 2WI で囊胞液は脳脊髄液よりも高信号,被膜・頭節は低信号である. 2/3でリング状増強効果を示す. 3.顆粒結節期 囊胞消滞より,被膜の菲薄化を来たす. 石灰化は囊胞壁,囊胞内容に認める. 頭節も 8ヶ月∼10年後には石灰化を呈する. 単純 CT にて石灰化像を皮髄境界,皮質に認める. 残存囊胞は T 1WI で脳実質と等信号,T 2WI にて等信号∼低信号を示す. 肉芽腫を示す結節は増強効果を認めることが多い. 4.石灰化結節期 造影効果の持たない石灰化結節を認める.

-


症例

-

拡散強調画像では低信号領域を示すと報告されている.

Box

皮質白質境界部の造影される腫瘤の鑑別

1.感染症および炎症性病変(感染性塞栓症,

2.転移巣

脳膿瘍,囊虫症,結核腫)

Box

免疫が正常な患者で多発性のリング状の造影効果を有する脳実質内病変

1.転移

4.寄生虫(有鉤囊虫症)

2.多発性細菌性脳膿瘍

5.真菌性膿瘍(稀)

3.結核腫

6.感染性塞栓症

Box

免疫不全患者のリング状造影効果を有する脳実質内病変

1.真菌性膿瘍(多い)

3.トキソプラズマ症

2.結核腫

Box

頭蓋内囊胞性病変

1.くも膜囊胞

4.囊胞性腫瘍

2.類上皮腫

5.上皮腫

3.有鉤囊虫症

Box

石灰化と囊胞を有する病変

1.髄膜腫

5.髄膜血管腫症

2.乏突起膠腫

6.肉芽腫性髄膜炎(神経サルコイドーシス,

3.有鉤囊虫症 4.神経節膠腫

結核) 7.頭蓋咽頭腫


症例

症例 A

-

歳,韓国人男性 有鉤囊虫症

徐々に進行する意識障害を主訴に入院する. 様々な時期の囊虫を脳実質内に認める.T 2強調画像(図 1,2)では低信号を示す被膜に覆われた囊胞 があり,内部には低信号を示す頭節がある(図 1,2の矢頭:コロイド囊胞期).囊胞自体は髄液よりも 高信号(図 1の矢印)あるいは等信号を有する.被膜が不明瞭な物もある.石灰化を示した例は小さく低 信号を示している(石灰化結節期:図 2の矢印).囊胞近くの大脳白質内には浮腫を認める(図 1の* 印).T 1強調像(図 3)では皮質よりも低信号から等信号を示す囊胞が認められる(矢印).被膜は淡い高 信号を示す.造影後では被膜がよく造影されている(図 4,5の矢印).

▲ *

T 強調画像

造影後の T 強調画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像

(群馬大学放射線科,佐藤典子先生の厚意による)

T 強調画像


症例

-

症例 B ぶどうの房状有鉤囊虫症(racemose cysticercus) 3年ほど前に,原因不明の髄膜炎があり,認知症,歩行障害を呈し,水頭症を認め,シャント術を施 行し,症状の改善があった.2ヶ月前より,再度認知症を呈する. CT(図 6,7)で鞍上部に石灰化を認める(図 6の矢印).前頭蓋窩中央部に低吸収域を示す腫瘤があ り,四丘体槽左(図 6の矢頭)にも同様の病変がある.図 7では前大脳縦裂を中心にぶどうの房状の低吸 収域を認める.中脳周囲左側の脳槽の輪郭が不正であり,同部位にも低吸収域を示す病変が疑われる (矢頭).造影効果を認めない(非掲載).MRI では T 1強調像では髄液と同様な低信号領域,T 2強調画 像では高信号を示した(古い MRI のため,非掲載,CT がより明瞭にぶどうの房状を示した.造影はし ていない).手術でくも膜下腔を中心に存在する有鉤囊虫症を認めた. ぶどうの房状有鉤囊虫症:くも膜下腔に存在する有鉤囊虫症はぶどうの房状を呈し,脳底部髄膜炎, 水頭症,腫瘤による症状,血管炎を起こす.好発部位は鞍上槽,小脳橋角部槽とシルヴィウス裂であ る.この形態の有鉤囊虫は頭節を欠き,石灰化を認めない.図 6の鞍上部にあった石灰化は石灰化結節 期で実質内にあった.CT では低吸収域を示す腫瘤で,鞍上部および小脳橋角部に認められる.脳槽の 拡大像を認めたときには本症を

える必要がある.MRI では髄液と同様の多房性の腫瘤がみられる.

囊胞壁が中隔状に T 1強調像で認められる.この病変自体には造影効果を認めない.しかし,軟膜の線 維化を伴う髄膜炎,肉芽腫性髄膜炎を引き起こし,その部位に造影効果を認める.くも膜下腔に囊胞が あり,周囲の軟膜に造影効果を認める際には,本症を 慮する.

CT 画像

CT


症例

症例 C

-

歳,男性 古い膿瘍,けいれん発作による発症

T 2強調画像で中心前回皮質に周囲が低信号を示し,中央が高信号を示す腫瘤があり,皮質下白質に は浮腫あるいはグリオーシスを示唆する高信号を認める(図 8).右中前頭回にもより小さいが,周囲が 低信号,中央に高信号を示す腫瘤がある(図 9).造影後には低信号領域に比較的厚い造影効果を認める (図 10).有鉤囊虫症も疑ったが,図 8で示す病変は古い膿瘍であった.有鉤囊虫症の囊胞としては造 影効果の部

が厚すぎるようである.

有鉤囊虫症による神経症状

Box 1.

通性水頭症

6.知覚障害,片麻痺

2.錯乱

7.精神障害

3.認知症

8.けいれん

4.頭痛

9.めまい

5.非 通性水頭症

T 強調画像

10.視力障害

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

-

症例 D 囊虫症(本文と同一症例) 病理所見 肉眼所見(図 11)では

葉状で辺縁平滑な囊胞性病変を認め,内部の囊胞成

にグリオーシスを認めた.また囊胞成

はゲル状を呈し,周囲

とは別に白い構造物があり,有鉤囊虫の頭節と

印).顕微鏡所見,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色(図 12)では被膜と

えられる部

えられた(矢 は 3層構造

を呈しており,外側より,角皮層(Cu),細胞層(Ce),網状層(Re)と呼ばれ,虫体の囊胞化を示してい た.周囲には炎症性変化も認められた.

症例 E(部検例)

囊胞

組織所見(HE 染色)

歳,女性

前頭極冠状断,ヘマトキシリン・エオジン/ルクソール・ファースト・ブルー(HE・LFB)染色,直 回皮質内に感染囊胞を認めた(図 13の矢印).ヘマトキシリン・エオジン/ルクソール・ファースト・ブ ルー染色の強拡大,囊胞の中央部には壊死,辺縁部には器質化がそれぞれみられ,周辺組織との境界は 比較的明瞭であった(図 14).

囊胞

(浴風会病院器官病理科,高橋敦先生の厚意による)

組織所見(HE・LFB 染色)


症例

-

●参 文献 1 佐藤典子,他:囊虫症.土屋一洋,他編:手術と病理の理解のための頭部画像診断.秀潤社.東京,234-5,2003. 2 Chawla S,et al.CorrelativeMR imaging and histopathologyin porcineneurocysticercosis.J Magn Reson Imaging.20(2): 208-15, 2004. 3 Braga F,et al.Noninvasive MR cisternographywith fluid-attenuated inversion recoveryand 100%supplemental O(2) in the evaluation of neurocysticercosis. AJNR Am J Neuroradiol. 25(2):295-7, 2004. 4 Grossman RI, et al. Neuroradiology, 2nd ed. Mosby, 316-9, 2003. 5 Loevner LA. Case Review Brain Imaging. Mosby, 77-8, 1999.


症例 歳,女性 意識障害,けいれんを起こし,倒れている状態で発見される 9月 15日午前 2時に意識障害,下方偏視,腱反射の亢進.

当日夕方

時撮像の T 強調画像

同 FLAIR 画像

同 FLAIR 画像

同拡散強調画像


症例

高血圧性脳症 解説 画像所見:FLAIR 画像と T 2強調画像で,後大脳動脈領域の皮 質下及び皮質に点状の高信号を認める.小脳に同様な所見を認め る.頭頂葉から前頭葉に高信号はおよんでいる.拡散強調画像では 等信号を示す.(血圧低下後,10月 2日に撮像の図 5FLAIR 画像 では異常所見が消失している)来院時の血圧が 180/89あり高血圧性 脳症(PRES:posterior reversible encephalopathy syndrome)と診断 した.翌日に施行した SPECT では MRI での異常部位は主として 低血流であった.

臨床 頭痛,けいれん,意識障害が主症状である. 種々の原因があるが(Box 26参照),高血圧が最も多い原因であ る.急性高血圧と下記の疾患では血管の内皮細胞の障害を起こし, 脳血管の自己調節機能の破綻により血液脳関門の破壊が起こる.そ

日の FLAIR 画像

の結果,血管内の水 が細胞間 に移り,血管性浮腫が発生する. 梗塞ではない.ときに特に小児においては正常血圧あるいは若干の 血圧上昇でも発生することがある. 大脳後部に強い所見を示すのは,内頸動脈領域には 感神経の 布が多く,血圧が上昇し自己調節範囲を越えても神経組織を守るた めと えられた.

高血圧性脳症の画像所見 急性あるいは亜急性の高血圧性患者に認められる大脳の後部に強い点状の皮質および皮質下病変であ る. 95%の患者に頭頂・後頭葉に高信号領域を T 2強調画像と FLAIR 画像で認める. 拡散強調画像は通常,正常のことが多い(血管性浮腫のため).ADC 値は上昇することがある. 造影後には種々の造影効果を認める. 拡散強調画像(高血圧性脳症)で高信号領域を示す部位には不可逆性の変化(梗塞)が起こったと えら 得られる部位もある. 溶血性尿毒症症候群では,本症により脳梁膨大部に異常高信号領域を認めた例がある. 尿毒症による本症では大脳後部よりも大脳基底核に浮腫を認めやすいとする報告もある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.急性脳梗塞血:拡散強調画像で高信号領域を示す. 2.急性の脳の Hyperemia(充血) ・けいれん発作後:一過性の脳回の形状に合わせたような浮腫,造影効果を認める.PRES,梗塞 あるいは浸潤性の腫瘍に似ている.病歴と経過を追うことで鑑別は可能. ・慢性 膜下血腫の除去後:SDH 直下の皮質のみに異常 ・hyperperfusion syndrome(内膜剥離術,あるいはステント後):perfusion MR と CT での血流増加 3.代謝性疾患:病歴が重要,部位がやや異なる.浸透圧性脱髄性症候群では橋,大脳基底核,大脳白 質,PRES では大脳後部 4.進行性多巣性白質脳症:皮質,大脳基底核は通常は侵されない. 5.急性脱髄性疾患:蹄鉄様>点状の造影効果の存在,大脳後部に特異性はない. 6.神経膠腫症:大葉全体が侵される.PRES の橋の病変に似ている.

Box

PRES の原因

1.高血圧

6.FK 506(タクロリムス)

2.シスプラチン

7.ARA-A/ARA-C

3.シクロスポリン

8.SLE,発作性寒冷ヘモグロビン血症,溶

4.dimethyl sulfoxide (DMSO) 5.子癇/子癇前症

血性尿毒症症候群,ネフローゼ症候群 9.ポルフィリア

●参 文献 1 Nagata M,et al.Brain stem hypertensive encephalopathy evaluated by line scan diffusion-weighted imaging.AJNR Am J Neuroradiol. 25(5):803-6, 2004. 2 Port JD, et al. Reversible intracerebral pathologic entities mediated by vascular autoregulatory dysfunction. Radiographics. 18(2):353-67, 1998. 3 Ogura H, et al. Reversible MR findings of hemolytic uremic syndrome with mild encephalopathy. AJNR Am J Neuroradiol. 19(6):1144-5, 1998.


症例 歳,女性

ヶ月前より続く頭痛,CT でトルコ鞍内に腫瘤を指摘される

両耳側半盲があり,軽度の前葉機能低下がある. 図 1,2の矢印と矢頭は何を示すか? 同様に図 3,4のそれらは何を示すか? なお,T 1強調矢状 断像で後葉の高信号は同定されていない.

T 強調画像冠状断像

T 強調画像冠状断像

造影後矢状断像

造影後冠状断像

T 強調冠状断像


症例

リンパ球性下垂体炎 解説 画像所見:T 2強調画像では腫大した下垂体は高信号を示すが,その外側と底部には低信号を認める (図 1の矢印).左の内頸動脈に病変と狭窄を認める(図 1の矢頭).トルコ鞍近傍の 膜には造影効果を 認める(図 4の矢印).左内頸動脈周囲に造影効果がみられ,病変がおよんでいることを示す(図 5の矢 頭).以上の所見はリンパ球性下垂体炎に合致する.下垂体腺腫では認められない所見である.本例は 生検を施行しリンパ球性下垂体炎と診断された.術後プレドニゾロンを投与し頭痛は消失した.

臨床 リンパ球性下垂体炎は非特異的なリンパ球浸潤を示す前葉の炎症である.以前には妊婦や産褥期の女 性に発生し,下垂体前葉機能を侵すと言われていたが,現在では妊娠や性別に関係なく,小児から大人 まで幅広い年齢層に

布することが判明している.前葉の下 垂 体 を 主 体 と す る も の(adenohypo-

phisitis),下垂体柄や後葉の神経下垂体のみを侵すもの(infundibuloneurohypophisitis),両者を侵すも のがある.海綿状静脈洞に波及する例もある.妊婦に加え,自己免疫疾患を発症している例では罹患率 がより高い.

画像診断 上記の所見:下垂体の腫大,造影効果,腫大した下垂体の下部と外側に T 2強調像で低信号の存在, 内頸動脈の狭窄ないしは周囲への病変の進展(T 2強調画像で高信号)に加えて,下垂体柄の腫大(先細 りのない腫大)を認めることがある.海綿状静脈洞よりも強い造影効果を認めるときもある.

鑑別診断 1.神経サルコイドーシス:肉芽腫性下垂体炎は鑑別が困難なことがある.全身検索が必要である. 2.悪性リンパ腫:海綿静脈洞内の進展により脳神経症状が出る.腫大した下垂体へ低信号が多い. 3.下垂体腺腫:最も重要な鑑別疾患,上述事項を参 に. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Leung GK, et al. Primary hypophysitis:a single-center experience in 16 cases. J Neurosurg. 101(2):262-71, 2004. 2 Bellastella A,et al.Lymphocytic hypophysitis:a rare or underestimated disease?Eur J Endocrinol.149(5):363-76,2003. 3 Imura H, et al. Lymphocytic infundibuloneurohypophysitis as a cause of central diabetes insipidus. N Engl J Med. 329(10):683-9, 1993. 4 Sato N, et al. Hypophysitis:endocrinologic and dynamic MR findings. AJNR Am J Neuroradiol. 19(3):439 -44, 1998.


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,女性 下垂体膿瘍(ラトケ囊胞に二次感染),視床機能不全があり, 腫瘤がみられた

6月頃より,全身

怠,間欠的発熱が約 1ヶ月半ほど続く.その後発熱は消失.1ヶ月前に他院で視

床下部機能不全が疑われ,腫瘤が疑われた.コルチゾールと T 4低値があり,右同名半盲がある.尿崩 症はなかった.

FLAIR 画像

T 強調冠状断像

T 強調冠状断像

T 強調冠状断像

同横断像

同矢状断像

T 強調矢状断像

造影後 T 強調冠状断像


症例

-

解説 画像所見:鞍内から鞍上部にかけて腫瘤があり,視床下部,視索にかけて病変が広がっている.トル コ鞍は拡大している.鞍内の病変は T 2強調画像で高信号と白質と等信号が混在し,T 1強調画像でほ ぼ灰白質と等信号を示す.造影後には周囲には厚い造影効果があるが,中心部は造影されない.視床下 部から視索周囲に広がる病変も同様に周囲に造影効果があるが,中心部は造影効果が認められない. T 1強調画像では視床下部の病変も白質に近い信号強度で,一部は高信号を示す.T 2強調画像および FLAIR では高信号を示す.正常の下垂体後葉の高信号を認めない. 鑑別診断として,神経サルコイドーシス,悪性リンパ腫などが疑われたが,不 一な造影効果より合 いにくいと

えられた.視索原発腫瘍および転移性腫瘍は明らかな鞍内病変から,これも合いにくい.

下垂体への転移性腫瘍も否定できない.retrospectiveにみれば,不

一な周辺の造影効果があり,腫瘍

では説明しくい進展があることより,下垂体膿瘍を えるべき画像であった. 手術と病理所見では,腫瘤の壁に切開を加えると,膿汁が噴出.病理では好中球を主体とする化膿性 炎症と鼻粘膜様の線毛円柱上皮が認められた.ラトケ囊胞に二次性の感染を来したと判断した.

臨床 下垂体膿瘍ではグラム陽性球菌が最も多くみつけられる原因菌である.下垂体腺腫,ラトケ囊胞,頭 蓋咽頭腫などの疾患があり,それに感染を起こす二次性の膿瘍と,基礎疾患のない一次性の膿瘍があ る.本例でも術後に膿瘍が消失するにつれ,ラトケ囊胞が画像上明らかになってきた. 下垂体膿瘍は腺腫と同様な臨床症状,すなわち頭痛と視力障害で発症することが多い.敗血症の全身 所見は稀である.自験例の他の 1例では急速に発症した動眼神経麻痺があり,発熱の既往があった.

画像診断 二次性の膿瘍では基礎疾患の画像所見に関係するが,一次性の下垂体膿瘍において,MR は非特異的 な腫瘤の画像所見を示すことが多い.T 2強調画像では高信号を示すことが多く,T 1強調画像では脳 と同様な信号強度を示す.ときに高信号があり,高濃度の蛋白成 や出血の存在を示す.造影後に周辺 のみに造影効果を示し,中心部に造影効果を認めないのが特徴である.同様な画像は壊死を伴う下垂体 腺腫でも認められる.ときに髄膜の造影効果を認めることがある.また,本症のように合併する cerebritis や脳膿瘍の所見を認めることがある.後葉の高信号がないのは膿瘍に特徴的と言われている.鞍 内あるいは鞍上部の腫瘍では説明しにくい進展を示す腫瘤があるときは本症も

慮する.臨床では尿崩

症の存在は腺腫と膿瘍の鑑別に重要とされている.本例では尿崩症はなかったが,後葉の高信号を認め ていない.

Box

下垂体の腫大を示す疾患

1.下垂体腫瘍(腺腫など)

3.リンパ球性下垂体炎

2.下垂体肥大(一次性性早熟,一次性甲状腺

4.感染(下垂体膿瘍)

機能低下症)

5.重症の AVF( 膜動静脈瘻)


症例

-

症例 B リンパ球性下垂体炎(本文と同一症例) 外科病理所見 ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,下垂体前葉(写真左)と後葉(写真右)に,前葉優位にリンパ球 の浸潤がみられた(図 9).抗 Leukocyte common antigen (LCA)免疫染色,浸潤リンパ球の胞体は茶色 に 染 ま り LCA 陽 性 で あった が,前 葉 の 腺 細 胞 は 陰 性 だった(図 10).抗 ACTH 免 疫 染 色,前 葉 の ACTH

泌細胞(写真左下)は保たれていた(図 11).

下垂体弱拡大(HE 染色)

下垂体(LCA染色)

下垂体(ACTH染色)

●参 文献 1 WolanskyLJ,et al.MRI ofpituitaryabscess:two cases and reviewoftheliterature.Neuroradiology.39(7):499 -503,1997. 2 Thomas N,et al.Infection ofa Rathkes cleft cyst:a rarecauseofpituitaryabscess Caseillustration.J Neurosurg 89:682, 1998. 3 Kashiwagi N, et al. MR findings in three pituitary abscesses. Case reports. Acta Radiol. 39(5):490-3, 1998.


症例 歳,男性 痙性歩行,歯状核,淡蒼球,大脳脚に病変 幼小時より運動および勉学は苦手,40歳より痙性対麻痺により転ぶようになった.著明な痙性があ り,腱反射の亢進を認め,振動覚の低下がある.

CT

T 強調画像

T 強調画像

頸髄 T 強調横断像

(岐阜県立多治見病院神経内科,亀山隆先生の厚意による)

T 強調画像


症例

脳腱黄色腫症 解説 画像所見:CT で小脳萎縮があり第四脳室の拡大を認める.両側歯状核付近に石灰化を認める(図 1 の矢印).T 2強調画像で歯状核付近に右優位に高信号を認め,その内部に低信号があり(図 2の矢印), 石灰化あるいはヘモジデリン沈着の可能性がある.両側大脳脚にも対称性に高信号を認める.淡蒼球, 内包後脚にも同様な高信号があり,側脳室三角部から後角に って視放線を中心に高信号を認める.頸 髄では両側側索に異常高信号領域を T 2強調画像にて認め,後索にも疑いがある.以上の所見,特に歯 状核の石灰化と T 2強調像の高信号領域の存在,大脳脚,淡蒼球,側索の異常は脳腱黄色腫症に合致す る所見である.両側アキレス腱に黄色腫,血清コレスタノールの著増があり,遺伝子診断にてステロー ル 27位水酸化酵素遺伝子に点突然変異が存在しており診断が確定された.

臨床 常染色体劣性遺伝の胆汁酸代謝異常症で,175例の報告によれば知能低下(81%),若年性白内障 (92%),アキレス腱黄色腫(71%),錐体路徴候(79%)および小脳症状(50%)を主症状とする.この症例 では白内障はなく,小脳症状は痙性のため明確にはわからなかった. 水酸化酵素の著しい活動性の低下により,血清コレスタノールの増加を来し,脳,レンズ,腱その他 の組織に沈着し発症する.ケノデオキシコーリック酸の 用により血清コレスタノールを低下させるこ とができる. 病理所見:小脳萎縮がある.歯状核とその周囲の小脳白質には神経細胞の消失と脱髄を認める.さら に,脂肪結晶による組織の欠損があり,その周囲には線維化が起こり,反応性の星細胞の増加を認め る.さらに,ヘモジデリン沈着があり,石灰化を認める.多くのマクロファージが血管周囲にある. MRI で異常を示す他の部位にも同様な脱髄,グリオーシス,脂肪結晶の増加を認める. 画像所見:上記に示す.ときに血管周囲腔の拡大を示す.大脳白質(側脳室周囲)にも病変がおよぶこ とがある.脊髄では側索および後索に T 2強調像で高信号領域を認めることがある. 経過の短い症例では,歯状核付近に高信号のみを示すこともある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

資料

鑑別診断 Box

両側対称性に小脳歯状核と小脳白質に病変を認める症例

1.脳腱黄色腫症(CTX):小脳歯状核に石灰 化,同部位にヘモジデリン沈着あるいは

変は稀.天幕上も線維路あるいは大脳白 質に病変.

石灰化を認める.大脳基底核は淡蒼球優

5.Refsum 病:両側対称性に,歯状核付近

位.大脳脚にも病変を認める.錐体路徴

と側脳室周囲に高信号領域を T 2強調画

候,白内障の合併.

像にて認める.石灰化の記載はない.淡

2.ランゲルハンス細胞組織球症:小脳歯状

蒼球が含まれることがある.強度の感音

核に石灰化,グリオーシス,脱髄,神経

性難聴,網膜色素変性症,精神運動発達

細胞の消失と CTX に似ているが,大脳

基底核に高信号領域を T 1強調画像にて

害を認める.

認める.脳幹および小脳病変があるとき には視床下部・下垂体病変を伴うことが 多い.

,顔面異形症,肝肥大,末梢神経障

6.トルエン中毒:中小脳脚,内包後脚にも 病変を認める. 7.フラジール 脳症(症例 21参照)

3.Erdheim-Chester 病:脳幹で脳内と脳実 質外の病変を認める. 4.副腎脊髄ニューロパチー:小脳および脳 幹の錐体路には病変がある.淡蒼球の病

8.常染色体劣性ミトコンドリア失調症症候 群(autosomal recessive mitochondrial ataxic syndrome due to mitochondrial polymerase γmutations)

参照

Box

両側皮質脊髄路に異常信号を呈する疾患(症例 28)

参照

Box

若年成人で,認知症と精神症状で発症する疾患(CD-ROM 症例 61)

-


症例

-

症例 A

歳,女性 脳腱黄色腫症

1年前に右下肢のもつれがあり,その後,階段昇降時に転びそうになる.半年ほど前にはドアのノブ が回せなくなり,アキレス腱の腫脹に気がつく.パーキンソン徴候,下肢優位の四肢腱反射の亢進,筋 力低下,アキレス腱の腫脹を認め本症の診断がついた.MRI では両側歯状核に高信号領域を認める (CD-ROM 図 1の矢印).他のスライスでは小脳萎縮(非掲載)もある.

T 強調画像

(東京大学医学部附属病院放射線科,森墾先生の厚意による) ●参 文献 1 Barkhof F,et al.Cerebrotendinous xanthomatosis:thespectrum ofimaging findings and thecorrelation with neuropathologic findings. Radiology. 217(3):869 -76, 2000. 2 De Stefano N, Magnetic resonance imaging and spectroscopic changes in brains of patients with cerebrotendinous xanthomatosis. Brain. 124(1):121-31, 2001. 3 Federico A,et al.Cerebrotendinous xanthomatosis:clinical manifestations,diagnosticcriteria,pathogenesis,and therapy. J Child Neurol. 18(9):633-8, 2003. 4 Winterthun S, et al. Autosomal recessive mitochondrial ataxic syndrome due to mitochondrial polymerase mutations Neurology. 64:1204-8, 2005.


症例 歳,男性

月 日より頭痛, 月 日,他院でけいれんを起こす

10日頃より発熱.12日からめまい,複視が出現.16日に当院に転院し,同日 MRI 撮像. (造影後の T 1強調画像では明らか造影効果を認めない.)

FLAIR 画像

T 強調画像

FLAIR 画像

ADCmap


症例

急性散在性脳脊髄炎 解説 右優位に両側前頭葉皮質下白質と一部皮質に高信号領域を FLAIR および T 2強調画像で認める.FLAIR 画像が最も病変を 指摘しやすい.病変の ADC 値は上昇している.急性散在性脳脊髄 炎(ADEM )と診断し,ステロイド投与により症状は比較的速やか に改善し,神 経 学 的 異 常 所 見 は 消 失 し,8月 4日 の MRI(図 5, FLAIR 画像)ではほとんど高信号は消失し,左前頭葉に一部が 残ったのみであった. 髄液細胞数 324/3(L 281.M 43),蛋白 106mg/dl,糖 104mg/dl, 髄鞘塩基性蛋白 1,130と上昇し,ADEM と臨床診断がなされた. 1年間のフォローであるが,再発はない.

臨床 免疫の関与する脱髄性疾患であり,先行するウイルス感染あるい はワクチン投与と関連する.髄鞘塩基性蛋白に対するアレルギ―性

月 日の FLAIR 画像

あるいは自己免疫性の反応で起こる.麻疹との関連が最も多いが,その他に先行する水痘,耳下腺炎, 風疹などが関与する. 臨床像は急性期は多発性

化症に似ているが,急性で重篤なことが多い.先行感染から 2∼3週間後

に多く,MS と異なり,けいれん発作もしばしば認められる.成人に比べ 5∼10歳前後の小児に多い. 診断は臨床所見と髄液所見(リンパ球優位の細胞数増加,髄鞘塩基性蛋白の上昇)で起こる. 84例の小児の ADEM の研究によれば(文献 1),患児の平

年齢は 5.3±3.9歳で,男子優位である.

74%に先行感染あるいはワクチン投与がみられた.急性の片麻痺,片側あるいは両側の錐体路徴候,精 神状態の変化などが多い症状である.54例で,オリゴクローナルバンドの検索をしたが,全員陰性で あった.平

6.6±3.8年の経過観察では,90%は単相性であり,10%は二相性である.

画像所見 病変は広く両側性に認められ,皮質下白質に最も多い.その他に深部白質,脳幹,小脳,視神経,脊 髄にも

布する.大脳基底核や視床などの灰白質も侵される.造影効果は様々であり,ないこともあ

る.単相性の病変であり,6週間以後に新しい病巣は出てこない. 画像所見では FLAIR 画像が最もわかりやすい.MS と異なり,脳梁・透明中隔境界は侵されない. ADC 値は上昇することが多い.ときに MS と同様 mass としての性格を持つ病変がある. 病変が比較的遅く出てくることがある.4人の ADEM 例の MRI では,3症例において,発症後,数 週間後に初めて,特異的な ADEM の所見が出てきたとする報告がある(文献 2,5). 文献 1によれば,小児 ADEM の MRI 所見は大きく 4つに

かれる.小さな病変のみが 69%,大き

な病変を伴うのが 24,両側視床を含むのが 12%,出血性の変化を認めるのが 2%となる.27例の造影 剤投与後の画像では 8例(30%)に不完全なリング状の造影効果を認めている.2例では,すべての病変 ではなく,一部の病変に造影効果があった.文献 3にも同様な記載があり,造影される病変とそうでは ない病変があるとしている. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.多発性 化症:側脳室周囲や脳梁透明中隔境界部に好発する.後頭蓋窩にも病変がある.古い病巣 が混在していることがある.画像からは鑑別が困難なこともある. 2.自己免疫性の血管炎:多巣性の灰白質と白質両方を含む病変.ときに,リング状の造影効果を認め る. 3.高血圧性変化を含む加齢による変化:散在性の非対称性の白質病変,後頭蓋窩は通常少なく,脳梁 中隔境界部,皮質 U 線維には病変はない. 4.ファブリ病:腎不全や心不全の合併,大脳白質に多発性の病変,脳幹,後頭蓋窩にも病変がある. 脳梁透明中隔境界部,U 線維は保たれる. 5.神経ベーチェット病:散在性の,非対称性の皮質下白質病変.皮質にはおよばない.結節状の造影 効果が急性期にはある.中脳および基底核に病変が多い.ADC 値の上昇を認める.全身所見(口内 および陰部の潰瘍,ブドウ膜炎).

症例 A

歳,男性 急性散在性脳脊髄炎(MRI 所見の悪化が認められた例)

5月 27日に頭痛,30日より発熱,6月 1日症状悪化で他院に入院.ウイルス性髄膜炎を疑われる. 発熱が続き,6月 6日より不穏と多弁となり,意識レベルの低下を認め当院に入院.縮瞳し対光反射な し.snout お よ び palmomental 反 射 陽 性,左 下 肢 に 脱 力 の 疑 い.6月 7日 の 髄 液 検 査;細 胞 341/ 3(L 340,N 1),蛋白 200,糖 50,髄

塩基性蛋白 19.9(陽性),同 6月 28日;細胞 63/3,蛋白 71,髄

塩基性蛋白 5.6(陽性)であるが大幅に低下した. 6月 7日の MRI では,異常を指摘するのが困難である.ウイルス性髄膜炎と

えられた.6月 12日

の T 2強調画像では橋内に病変がありそうであるが明瞭ではない.内包から放線冠にかけ主として右側 に高信号を認めた.ADEM の可能性を指摘した.ステロイドを

用することになり,効果を認め,臨

床症状,検査結果も改善した.患者の臨床症状は一相性で改善があったが,6月 27日の T 2強調画像 では病変が最も明瞭に広範囲に認められた.橋底部被蓋から底部に病変が初めて明らかになっている. 以後,MRI 所見は改善した. ADEM においては,臨床経過は通常一相性で改善傾向にあるが,MR 所見は必ずしも一相性の経過 をとらず,数週間後により明瞭な病変が出てくることがある.自験 18例の ADEM の内,6例に 2回目 以降の MRI にて所見の悪化を認める.その内,3例では発症 3日以内の施行された MRI では異常を認 めない(文献 5). 臨床所見において,急性の脳炎と ADEM との鑑別は難しい例がある.特に,初回の MRI にて異常 がないときには困難なことが多い.道具らは頭痛,発熱,意識障害は両者に共通する臨床症状である が,ADEM では意識障害の前に,複視,麻痺などの神経学的異常所見を示すことが多いと指摘してい る(文献 6). このような神経学的所見を認め,ADEM の可能性があるときには初回の MRI にて異常がなくても, 1週間後などに MRI の再検をすることが重要である.


症例

-

月 日の T 強調画像

日の T 強調画像

日の T 強調画像

同 T 強調画像

同 T 強調画像


症例

症例 B(剖検例)

歳,男性

-

急性散在性脳脊髄炎

感冒罹患 2日後,見当識障害,意識障害,片麻痺が出現,頭部 MRI 検査で大脳白質に広範な異常が みられ,急性散在性脳脊髄炎が疑われた.発病 13日後,心不全のため死亡. 剖検所見 大脳半球冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,多数の脱髄病巣が大脳白質に認められ,深部の ものは癒合傾向を示した(図 6).小脳水平断,クリューバー・バレラ染色,歯状核外側の小脳白質に脱 髄巣を認めた(図 7の矢印).大脳皮質(右)・白質(左),過ヨウ素酸シッフ(PAS)/ルクソール・ファー スト・ブルー(LFB)染色,小血管周囲性の細胞浸潤に加えて脱髄部に PAS 染色陽性の胞体を有する貪 食細胞が多数出現していた(図 8).

右大脳半球冠状断(KB 染色)

大脳白質(PAS・LFB 染色)

小脳白質(KB 染色)


症例

-

●参 文献 1 Tenembaum S, et al. Acute disseminated encephalomyelitis: A long-term follow-up study of 84 pediatric patients. Neurology, 59:1224-31, 2002. 2 Honkaniemi J, et al. Delayed MR imaging changes in acute disseminated encephalomyelitis.AJNR Am J Neuroradiol. Jun-Jul;22(6):1117-24, 2001. 3 田中康敬,他:MRI による急性散在性脳脊髄炎の経過観察.Gd-DTPA による病巣の増強効果に対する検討を含め て.日医放 56(1):25-31,1996. 4 Baum PA, et al. Deep gray matter involvement in children with acute disseminated encephalomyelitis. AJNR Am J Neuroradiol. 15(7):1275-83, 1994. 5 中田安浩,他:急性散在性脳脊髄炎の MRI―臨床症状との乖離のある例の検討.第 36回日本神経放射線学会 高 Feb. 2007 6 道具伸浩,他:神経内科地域基幹教育病院における成人発症急性脳炎と臨床的に診断した症例の臨床・画像・予後に 関する検討.臨床神経学 46(8):533-9,2006.


症例 歳,女性

年ほど前から左手の巧緻運動障害,転倒傾向が出現する

1年前には左手で茶碗が持てない.抗パーキンソン剤を他院で投与されたが無効.肢節運動失行,皮 質性知覚障害(左優位),着衣失行,構成障害,半側空間無視などがある.

T 強調画像

矢状断像

T 強調画像


症例

大脳皮質基底核変性症(CBD) 解説 画像所見:右半球優位の両側中心溝付近の大脳皮質症状を反映し,右優位に両側前頭・側頭葉に萎縮 を認める.特に,上部の右中心後溝(図 1)の拡大が目立ち,中心後回の萎縮を認める.右中心前回にも 萎縮がある.矢状断像では中脳被蓋の萎縮を認める(図 3の矢印).脳梁体部の萎縮も認められる.surface anatomy scan(SAS)画像(図 4)では,右中心後回(*印)および中心前回(C)の萎縮を認める(矢頭: 上前頭溝). 2年後の T 1強調画像(図 5)では,両側の萎縮が進み,シルヴィウス裂後部(中心溝と中心後溝)の拡 大を認める.

C

SAS 画像

T 強調画像

臨床 非遺伝性で,60∼75歳頃に手指の拙劣症状で発症することが多い.しばしば左右差のある運動失行 (麻痺を伴わない)があり,途中から認知症,L-dopa に反応しないパーキンソニズムが加わり,進行性 である.構成失行,注視麻痺,他人の手徴候(単純で無目的であるが,まとまりのある不随意的な動き) もみられる.原因不明で平

6,7年で死に至る予後不良疾患である

病理所見は前頭頭頂葉(特に中心溝周囲)の大脳皮質,黒質緻密質,視床,淡蒼球などの変性であり, 神経細胞脱落,グリオーシス,残存神経細胞の膨化と核の偏在(neuronal achromasia)を認める.CBD では運動失行は傍中心小葉や補足運動野に,他人の手徴候は補足運動野の異常に起因すると推測されて いる.臨床・病理とも,進行性核上性麻痺との区別が難しい症例もあると言われている.

画像診断 左右差のある大脳萎縮を前頭・頭頂葉中心に認める.画像上,左右差のない症例もあり,中心前回お よび中心後回付近の萎縮が重要とする意見もある(文献 1).SPECT では MRI より明瞭に集積の左右差 を指摘できる.SPECT では大脳基底核には左右差を認めることがある.中脳被蓋に萎縮をしばしば認 める.前頭葉および頭頂葉に FLAIR 画像にて高信号を認める例がある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

CBD 自験例の画像所見(文献 3) Boeveらの診断基準(文献 4)に合致する 16例の MRI および SPECT 所見をまとめると,全例に大脳 萎縮を認める.13例に,左右非対称性の萎縮があり,全例,臨床症状の強い側により著明な萎縮を認 めている.全例,前頭葉後部および頭頂葉に萎縮が最も強い. 大脳脚の萎縮が 7例にあり,6例は大脳萎縮のより強い側に萎縮を認めた.7例全例に萎縮に対応し た側に錐体路徴候を認めている.大脳脚に信号強度異常を認めない.1例において,大脳脚の片側萎縮 が最も目立った所見であった. 5例に 髄錐体路の片側萎縮を認めている. 矢状断像で中脳被蓋の萎縮は 8例に認められる.その内の 3例には垂直性眼球運動障害を認めた. FLAIR 画像において,中心前回および中心後回に 13例において,主として白質に淡い高信号領域 を認める.この高信号領域は上前頭溝の認められる上部のスライスにて明瞭である. 全例,SPECT において,前頭頭頂葉の非対称性の低血流を認めた.11例では,基底核においても非 対称性の血流低下を認める.SPECT は MRI に比べて,非対称性に関してはより鋭敏である.

MRIを入れた CBD の新しい診断基準 緩徐に進行し,原因不明の大脳皮質と錐体外路系の機能不全を示す病態であり,以下の 3徴候の内, 2徴候を満たした症例を臨床的に CBD とする. 1.大脳皮質症状:局所的で非対称性の観念運動性失行,他人の手徴候,皮質性感覚消失,視覚性ある いは感覚性半側無視,構成失行,局所的あるいは非対称性のミオクローヌス,発語失行/非流暢性失語 2.錐体外路徴候:L-dopa に反応しない局所的あるいは非対称性の四肢の固縮およびジストニア 3.MRI所見:FLAIR 画像での一側の中心前回および後回白質における高信号領域

鑑別診断 進行性核上性麻痺:MRI にて CBD では中脳被蓋の萎縮を認めるが,大脳皮質(特に,中心溝周囲) の萎縮に左右差のあった例を進行性核上性麻痺(PSP)では経験していない.臨床症状にて明瞭な左右差 があり,大脳皮質障害が前景にたった PSP も経験はない.


症例

-

症例 A

歳,男性 大脳皮質基底核変性症(CBD)の疑い

60歳頃より歩行時に左に曲がる.その後,ネクタイの結び方がわからない,衣服を後ろ前に着るな どが出る.61歳頃より尿失禁,4年前より話さなくなる.四肢強剛,ミオクローヌス,認知症を認め る. T 1強調画像にて右前頭・頭頂葉に強い脳萎縮を認める(図 1).左側も中心後溝,頭頂葉間溝に拡大 を認める.SPECT では前頭・頭頂葉の血流低下はあるが左右差を認めなかった.

T 強調画像


症例

症例 B

-

歳,男性 大脳基底核変性症の疑い

3年前より書字困難を来し,車の運転が下手になる.2年前より箸,書字で右手が

いづらくなり,

増悪している.軽度の認知症があり,右優位に四肢の運動失行,右に歯車様強剛を認める. FLAIR 画像(図 2)にて左優位に両側前頭・頭頂葉の萎縮を認める.左頭頂間溝の拡大が目立つ(矢 頭).左上前頭回,上頭頂小葉に高信号を認める(矢印).SPECT では両側前頭葉,左頭頂葉の血流低 下を認める(図 3).

FLAIR 画像

SPECT


症例

-

症例 C

歳,男性 大脳皮質基底核変性症の疑い

4年前より,重いものを持つときに右手が震えるようになる.パーキンソン病と言われ,抗パーキン ソン剤を服用するが症状改善を認めない.右上肢の強剛,動作障害,口顔面失行を認めている. FLAIR 画像(図 4)で左優位の前頭・頭頂葉の萎縮があり,中心前回白質に高信号を認める(矢頭). SPECT でも左前頭・頭頂葉の血流低下を認める(図は不掲載).

FLAIR 画像


症例

症例 D(剖検例)

歳,女性

-

大脳皮質基底核変性症

69歳,失行,強剛,アテトーゼ様不随意運動で発病,最初は右側のみの罹患であったが進行ととも に左側に波及した.左右差は臨床的にも頭部 MRI 検査でも死亡時まで持続した.抗パーキンソン剤は 無効で,大腸癌からの下血に伴う出血性ショックのため死亡. 剖検所見 大脳正中隆起部冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,左側前頭葉∼上側頭回にかけて,右側に 比べ脳溝が拡大し左優位の脳萎縮がみられた(図 5).中心前回のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色 では,Balooned neuron が認められた(図 6).側頭葉皮質,ガリアス(Ga)染色,Glial tangleが多量に 出現していた(図 7).

大脳冠状断(KB 染色)

Balooned neuron(HE 染色)

側頭葉皮質(Ga 染色)

●参 文献 1 Kitagaki H, et al. Corticobasal degeneration:evaluation of cortical atrophy by means of hemishperic surface displasy generated with MR images. Radiology 216:31-8, 2000. 2 橋本衛,他:ビジュアル・レクチャーシリーズ 8.痴呆の画像診断・症例を中心に.12 Corticobasal Degeneration, Dementia Japan,11(1):114-20,1997. 3 Koyama M, et al. Imaging of corticobasal degeneration syndrome. Neuroradilogy in press. 2007. 4 Boeve BF, et al. Corticobasal degeneration and its relationship to progressive supranuclear palsy and frontotemporal dementia. Ann Neurol. 54 (Suppl. 5):S15-9, 2003.


症例 歳,男性 診断される

ヶ月前より歩行が不安定で,他院で ヶ月前に MRIで脳幹梗塞と

その後,症状が進行し,脳腫瘍が疑われた.歩行障害,構音障害,悪心,嘔吐がある.

T 強調画像

造影後の T 強調画像

(東京大学医学部附属病院放射線科,森墾先生の厚意による)

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

膜動静脈瘻による橋内の梗塞 解説 画像所見:橋底部と被蓋にかけて大きな病変があり,小脳にも一部およんでいる.右小脳半球には異 常な flow void 認められるが,T 2強調画像では低信号領域を脳溝に

った形態で認める.この低信号

は静脈血中の deoxyhemoglobin の常磁性体効果による(CD-ROM 参照).造影後の T 1強調画像で右小 脳半球に拡大した静脈が造影効果を示す.橋底部の右側の梗塞に造影効果を認める.静脈性高血圧症が あり,それによる静脈性梗塞の可能性が高いので 膜動静脈瘻を疑い,血管造影を施行した. 右頸動脈と外頸動脈造影(図 5,6)にて小脳天幕,海綿静脈洞部に多発性の

膜動静脈奇形を認める.

小脳および橋の静脈圧の上昇が起こり,梗塞が発生し,小脳静脈の拡大,うっ滞が起こり,図 1∼4に て認められる画像を示したと えられる.

右頸動脈造影

外頸動脈造影

臨床 頭蓋内血管奇形の 10∼15%を占め,ほとんどが単発で多発例は 7%にすぎない.好発部位は横静脈洞 から S 静脈洞(約 60%),次は海綿静脈洞(20∼30%)である.約 7割は 40∼60歳頃に発症し女性にやや 多い.

Box

膜動静脈瘻の部位別臨床症状

1.横 静 脈 洞 か ら S 静 脈 洞:血 管 雑 音・耳 鳴,めまい,視野障害 2.海綿静脈洞:眼球突出,結膜充血・浮腫, 血管雑音,眼痛,外眼筋麻痺,乳頭浮腫, 視力低下,緑内障 3.小脳天幕:出血,巣症状,顔面痛

4.前頭蓋底:出血 5.円蓋部,上矢状洞部:頭痛,乳頭浮腫, 出血 6.斜台,錐体部:出血,巣症状,後部海綿 静脈洞症候群 7.大孔部:脳幹症状,脊髄障害,出血

症状の多くは流出静脈に由来するため動静脈瘻に近い部位が影響を受けやすい.しかし流出静脈経路 や発達の程度によって,病変部から離れた部位に静脈うっ血や梗塞,出血などが生じ,症状を呈するこ ともある.横∼S 状静脈洞の動静脈瘻で乳頭浮腫や眼球突出がみられることもある. 稀に静脈性高血圧あるいは虚血により認知症や意識障害などの脳症を呈することがある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 MR 所見 1.拡大した脳表静脈 2.静脈洞血栓症 3.拡大した大脳髄質静脈 4.浮腫 5.静脈性梗塞 6.皮質下出血:直接皮質静脈に流出する

膜動静脈瘻は脳内出血の危険率が高い.

7.deoxyhemoglobin の常磁性体効果:毛細血管拡張症あるいは静脈性血管奇形はグラディエントエ コー法にて強い低信号を示す.これは出血を示すのではなく,deoxyhemoglobin の常磁性体効果に よると えられる.脊髄

膜動静脈瘻でも,その脊髄病変をみると,中心には高信号があるが,周

囲には T 2強調像で低信号を認めている.これは拡大した静脈内の deoxyhemoglobin の常磁性体効 果によると えられる.脳内においても

膜動静脈瘻によるうっ滞が認められる部位には同様なこ

とが起こりうる.本例の小脳の低信号の一部はそれを示すと えられる.

症例 A

歳,男性 膜動静脈瘻による静脈性梗塞, 月 ころを発見された

強直性けいれん,意識障害を認める.

日の CT

同 CT

日に倒れていると


症例

-

T 強調画像

造影後の T 強調画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像

(山梨県立中央病院,石亀慶一先生の厚意による) 画像所見:右小脳半球および右側頭・後頭葉皮質から皮質下に,一部出血を含む低吸収域があり,不 一な吸収値を示す.出血性梗塞の可能性が高い.T 2強調画像では右小脳半球に正常に比べ,多くの 線状の flow void があり,異常な血管の存在が疑われる.側頭・後頭葉には皮質から皮質下にかけて, 梗塞を疑う.以上より,右横静脈洞付近の

膜動静脈瘻による出血性梗塞と

えた.出血としては,

CT での吸収値が発症当日にもかかわらず,低く不 一で,出血性梗塞を える. 血管造影にて右後頭蓋窩に 膜動静脈瘻があり,右後頭動脈,右上行咽頭動脈が栄養血管となり,横 静脈洞へとシャントが形成され,横静脈洞が閉塞している. 膜動静脈瘻の所見である.経静脈的に塞 栓術が施行され,その後自覚症状なく退院した.


症例

Box

-

小脳出血の原因

1.高血圧性:歯状核など深部が多い.その

4.アミロイド血管 症:大 脳 皮 質 下 に グ ラ

他の部位にグラディエントエコー法で点

ディエントエコー法にて点状の低信号の

状の低信号の存在

存在

2.出血性腫瘍:転移,神経膠腫,浮腫,結 節状の造影効果 3.血管奇形:海綿状血管腫,AVM , 膜動 静脈瘻

5.凝固系の異常:医原性あるいは DIC 6.開頭術後の遠隔小脳出血:小脳表面,上 部 小 脳 に 多 い.血 管 造 影 は negative. CSF の低容量に関係しているとの説があ る.

その他の 膜動静脈瘻における画像所見 膜動静脈瘻において脳内,皮質白質境界部に石灰を認めた症例が報告されている(文献 8). ●参 文献 1 Hurst RW, et al. Peripheral spinal cord hypointensity on T2-weighted MR images:a reliable imaging sign of venous hypertensive myelopathy. AJNR Am J Neuroradiol. 21(4):781-6, 2000. 2 Rucker JC, et al. Diffuse dural enhancement in cavernous sinus dural arteriovenous fistula.Neuroradiology.45(2):889, 2003. 3 Kai Y, et al. Pre-and post-treatment MR imaging and single photon emission CT in patients with dural arteriovenous fistulas and retrograde leptomeningeal venous drainage. AJNR Am J Neuroradiol. 24(4):619 -25, 2003. 4 日向野修一: 膜動静脈瘻( 膜動静脈奇形),高橋昭喜編:脳血管障害の画像診断.中外医学社,261-5,2003. 5 Cloft HJ,et al.Posterior fossa hemorrhage after supratentorial surgery.AJNR Am J Neuroradiol.18(8):1573-80,1997. 6 Rucker JC,et al. Diffuse dural enhancement in cavernous sinus dural arteriovenous fistula. Neuroradiology. 45(2):889, 2003. 7 Greenough GP, et al. Venous hypertension associated with a posterior fossa dural arteriovenous fistula:another cause of bithalamic lesions on MR images. AJNR Am J Neuroradiol. 20(1):145-7, 1999. 8 Metoki T, et al Subcortical calcification on CT in dural arteriovenous fistula with cortical venous reflux..AJNR Am J Neuroradiol. 27(5):1076-8, 2006.


症例 歳,男性

年前より進行する歩行障害, 意・尿意がわからない

1999年 11月,風呂の温度を足で感じなくなる.足にしびれ,段々と立てなくなる.しびれが膝まで 達する.2000年 8月には頭部 MRI で異常を指摘される.その後,胸髄にも髄内に異常を指摘されてい る.

年 月の T 強調画像

同造影後の T 強調画像

同T 強調画像

同造影後の T 強調画像

同T 強調画像


症例

血管内悪性リンパ腫症(IML) 解説 画像所見:左小脳皮質から白質,放線冠にかけて広い範囲に T 2強調像での高信号 領域があり,mass effect はほとんどない.造影後には小脳の表面(軟膜の疑い),さら に深部にかけて造影効果を認める.皮質および白質の両方に限局した,血管の支配領 域とは無縁な病変がある.必ずしも造影効果のない部位もある.胸髄にも 2ヶ所に かれて T 2強調画像では高信号を示す髄内の病変があり(図 6:同 10月の胸椎 T 2強 調矢状断像矢印),さらに馬尾に造影効果を認める(図 7:同造影後の T 1強調横断 像).進行する神経症状を認めることより,血管内悪性リンパ腫症(IML)を十

させる所見である.死亡し,剖検にて本症が確認された(CD-ROM 参照).

臨床 IML は小血管内腔にリンパ腫が増殖する特殊な悪性リンパ腫である.血管外への 浸潤は少なく,リンパ節の腫大も伴わない.全身の臓器に腫瘍塞栓による梗塞を起こ しうるが,特に,脳,脊髄,神経根に血管障害を起こす.急性発症の神経症候で初発 する. 臨床的には①麻痺・脱力,②精神機能低下・認知症,③発熱,④脊髄障害・排尿障 害,などの症候が高頻度に認められる.原因不明の脊髄障害の鑑別診断の 1つで,進 行する認知症の鑑別診断の 1つである. 確定診断にはいずれかの部位からの生検が必要である.IML は中枢神経に好発す る疾患ではあるが,皮膚,腎,副腎,肝,肺などに病変が併発していればそこからの 生検して臨床診断が可能なこともある. 中枢神経以外に病変がないときには脳生検も必要である.但し,脳生検を行っても

T 強調 矢状断像

診断できない症例もあることを知っておくことは必要である.

画像診断 左右非対称の多発性の大脳白質内の小梗塞様の所見.その他に皮 質および基底核にも T 2強調画像で高信号を認める.局所的な脳実 質内の造影効果を認め,ときに髄膜( 膜もしくはくも膜)の造影効 果も認めることがある. 脊髄の病変は多発性が多く,胸髄から脊髄円錐にかけて髄内中心 部に,皮質および白質を区別しない病変があり,腫大はないことが 多く,髄内および馬尾の一部に造影効果を認めることが多い. 中高年において,数ヶ月以上の経過にて進行する脳内病変あるい は脊髄病変を認め,上記の画像所見を呈する症例は IML を

慮す

る.CHOP 療法などの治療法が有効とされており,皮膚など,い ずれかの部位にて生検が必要である. 両側副腎に腫瘤を呈することがあり,その鑑別の 1つに IML を 慮することも重要である. (CD-ROM 参照)

造影後の T 強調横断像


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.血管炎:多発性の小梗塞,血管造影で異常を認めることがある. 2.血管性認知症:大脳白質に大小の大脳梗塞. 3.一次性の脳内悪性リンパ腫:大脳基底核と側脳室周囲の造影効果のある病変,脳室上衣を好んで侵 す. 4.神経サルコイドーシス: 膜および軟膜病変の存在,脳実質内より多い.全身所見.

症例 A(剖検例) 血管内悪性リンパ腫症(本文と同一症例) 剖検所見 副腎皮質,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,リンパ腫細胞多数浸潤していた(図 1).正中隆起 部大脳半球冠状断,皮質下白質,前頭葉深部白質,脳梁に多発融合性の黄色,斑状病巣(矢印)を認め, 上前頭回には出血もみられた(図 2).前頭葉白質,クリューバー・バレラ(KB)染色,血管腔周囲を中 心に小軟化による有髄線維の脱落がみられ(矢印),深部白質全体に髄鞘淡明化を示していた(図 3).前 頭葉白質,ヘマトキシリン・エオジン染色,血管腔内にリンパ腫細胞が充塡され,その周囲に貪食細胞 が浸潤した軟化巣がみられた(図 4).前頭葉白質,抗 CD 20(pan B 細胞マーカー)染色,血管腔に胞体 が CD 20陽性(褐色に染まった)の B 細胞性のリンパ腫細胞を多数認めた(図 5).

副腎皮質(HE 染色)

前頭葉白質(KB 染色)

右大脳冠状断


症例

-

前頭葉白質(HE 染色)

前頭葉白質(CD

染色)

●参 文献 1 安藤哲朗,他;血管内悪性リンパ腫症の画像.神経内科 57(4):299-305,2002. 2 Song DK, et al. Angiotropic large cell lymphoma with imaging characteristics of CNS vasculitis. AJNR Am J Neuroradiol. 23(2):239 -42, 2002. 3 Williams RL,et al.Cerebral MR imaging in intravascular lymphomatosis.AJNR Am J Neuroradiol.19(3):427-31,1998. 4 Martin-Duverneuil N, et al. Intravascular malignant lymphomatosis. Neuroradiology. 44(9):749 -54, 2002. 5 水谷俊雄:血管内リンパ腫.NHA632,東京都立神経病院 CPC 記録集 2001年度,都立神経病院編集・発行,80-5, 2002.(本例の CPC 記録集)


症例 歳,男性 頭痛,物が二重にみえる 2月 10日,抜歯をする.その後,強い頭痛が出現.物が二重にみえる.ペインクリニックを介して 神経内科で左三叉神経第一枝領域の感覚障害,疼痛,左外転神経麻痺を指摘される.2月 26日に MRI を撮像(図 3と 4の矢印,図 4の矢頭は何を示すか,診断は? IC:内頸動脈).

T 強調冠状断像

T 強調冠状断像

IC

造影後 T 強調冠状断像

造影後の T 強調画像


症例

海綿静脈洞部の膿瘍と髄膜炎 解説 画像所見:海綿静脈洞左側後部を中心に病変があり,T 2強調像では低信号領域,T 1強調画像でも 低信号領域を示す.造影後には不 一な造影効果が同部位にあり,静脈洞部左後部には造影効果のない 部位がある(図 3,4の矢印).内頸動脈より(図 4の IC)は後方に位置し,より信号強度が高い.膿を示 すと える.小脳上面には脳溝に い造影効果があり,小脳天幕にも強い造影効果を認める.髄膜炎を 示している. MRI 撮像の翌日に髄液検査が行われ,細胞数 28,400,多核球優位であった.抗生剤に反応し,臨床 所見,髄液所見の改善を認めた.画像所見では髄膜の造影効果が消失し,膿と えられる造影効果のな い部位が消失し,全体に造影効果を認め,しかも腫瘤は縮小から消失した. 以上の経過より,抜歯後,左上顎の感染,翼突筋静脈叢,後部海綿静脈洞部へと感染が広がり,同部 位に膿瘍を形成したと えられる.さらに,その一部に破裂が起こり,後部海綿静脈洞から外転神経周 囲,脳底槽へと広がったと えられる. 画像からは悪性腫瘍とその播種が鑑別にあがる.しかし腫瘍にしては急速な進展であり,臨床経過と あわない.膿と えられる造影効果のない部位の説明がしにくいなどがある.

臨床 海綿静脈洞炎で炎症が海綿静脈洞内に限局してるときは髄液所見が正常であるが,炎症が 膜を越え て,髄液内におよんで初めて髄液細胞数が著明に上昇する.

画像診断 Box

海綿静脈洞の腫瘤

1.軟骨肉腫

7.転移

2.脊索腫

8.下垂体腺腫

3.感染(膿瘍)

9.神経鞘腫

4.炎症性病変(トローサ・ハント症候群) 5.悪性リンパ腫

10.血管性病変(拡大した内頸動脈,動脈瘤, 血栓,動静脈瘻,血管奇形)

6.髄膜腫

Box

有痛性外眼筋麻痺(海綿静脈洞症候群)

1.トローサ・ハント症候群(非特異的肉芽 腫)

4.原発性脳腫瘍 5.転移性腫瘍

2.細菌感染

6.動脈瘤

3.真菌感染

7.内頸動脈海綿静脈洞瘻

●参 文献 1 Drevelengas A. Tolosa-Hunt syndrome with sellar erosion:case report. Neuroradiology. 35(6):451-3, 1993 2 谷口洋,他:有痛性外眼筋麻痺の 2例 Tolosa-Hunt 症候群の診断根拠としてのステロイド有効性についての一 察.神経内科 60(5):535-8,2004.


症例 歳,男性

年前から歩行障害,転倒傾向,不随意運動

7年前から転倒しやすくなり,不随意運動が出現,4年前から構音障害出現.1年前から知能レベル も低下した.

プロトン強調画像

T 強調画像

T 強調画像


症例

ハンチントン舞踏病 解説 画像所見:プロトン強調画像で被

および尾状核の著明な萎縮があり,高信号領域を同部位に認め

る.T 1強調画像にて大脳の萎縮を認める.ハンチントン舞踏病(Huntington s disease)である.家族歴 では母親に類症がある.

臨床と病理 ハンチントン舞踏病は常染色体優性遺伝の慢性進行性舞踏病であり,遺伝子座は第 4染色体短腕にあ る.男性に多く,35∼50歳頃に舞踏病様不随意運動で発病する.一旦発症すると知能障害や人格障害 を来し,皮質下で認知症を呈する. 病理学的には線条体とくに尾状核の神経細胞の著しい変性脱落を認め,進行例では大脳皮質にも萎縮 が著明となる.

画像診断 画像では尾状核,被 の萎縮が著明である.このため両側脳室の特に前角が拡大し,成人例では前頭 葉に顕著な大脳皮質の萎縮が加わる.T 2強調像とプロトン強調像では尾状核と被

の萎縮が著明であ

る.ときに線条体は高信号を示すこともある.被 の大きさはプロトン強調像がわかりやすく,信号強 度異常もプロトン強調画像がより明瞭である.前頭葉を中心とする大脳皮質に萎縮を認める.若年発症 のハンチントン舞踏病のみに線条体の異常信号強度が認められるとする報告もあるが,成人発症の症例 にもプロトン強調画像では異常信号強度を認める.

鑑別診断 Box

尾状核および被

の萎縮と T 強調画像での高信号領域を示す疾患

1.有棘赤血球舞踏病別名:尾状核,被

被蓋に両側対称性の高信号を T 2強調画

萎縮とプロトン強調像では高信号を示す.

像にて認める.被

大脳皮質の萎縮はないか,あっても比較

はない.

的軽度である. 2.多系統萎縮症(MSA-P 型):被

5.ウイルソン病:尾状核,被 の萎縮

は強いが,尾状核の萎縮は目立たない. 被

および尾状核の萎縮

の外側に線状の高信号を T 2強調画

像にて認める.

に高信号,尾状核,被

に不

,中脳,橋 一な低信

号の混在.尾状核と脳幹の萎縮がある. 6.パントテン酸キナーゼ関連神経変性症: 淡蒼球,赤核,視床下核への鉄沈着,淡

3.クロイツフェルト-ヤコブ病:拡散強調画

蒼球,大脳皮質,尾状核の萎縮.淡蒼球

像にて線条体に高信号を認めるが,その

の T 2強調画像での低信号内に,点状の

時点では線条体の萎縮はないか, あっても

高信号の存在(eye of the tiger sign).

軽い. 初期には線条体の前部が高信号を示

7.基底核および運動皮質に鉄沈着による低

し,後部は正常が多い. 4.リー脳症:発症は通常は 2歳以下,若年 型,成人型もある.被 ,尾状核,脳幹

信号を T 2 強調画像にて認める.被

T 2強調像にて高信号を認め,その周囲 には低信号を伴う.


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,男性 有棘赤血球舞踏病 Critchley症候群)

Chorea acanthocytosis(別名:Levine-

兄に同症.4年ほど前より書字がしにくくなる.不随意運動が出現した.有棘赤血球増多,咬舌があ る.血清 CPK の上昇がみられた.前頭葉機能に軽度の年齢に比し軽度の低下がある. 有棘赤血球舞踏病は常染色体劣性遺伝である.20歳代の発症が多く不随意運動,咬舌,末梢神経症 状(深部反射の低下,筋萎縮)などを呈し有棘赤血球増多を認める.ハンチントン舞踏病と異なり認知症 は来さない. 図 1のプロトン強調像(SE 2000/20)で尾状核と被 の萎縮と高信号域を認める(矢印).側脳室の特に 前角に強い拡張を認める.ハンチントン舞踏病と異なり大脳皮質に顕著な萎縮像は認めない.前頭部と 後頭部に頭部外傷による薄い 膜下血腫がある.

プロトン強調画像


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,男性 ハンチントン舞踏病

52歳にて構音障害で発症,54歳からヒョレオアテトーゼ様の不随意運動と認知症が出現し,漸次進 行した.62歳から寝たきり状態となる.間質性肺炎で死亡(図 2,3).

症例 C(剖検例)

歳,女性(詳細不明) ハンチントン舞踏病(図 4)

剖検所見 大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,線条体の高度に萎縮していた(図 2の矢頭).尾状核, ホルツアー(HZ)染色,線維性グ リ オーシ ス を 認 め た(図 3).外 側 膝 状 体 部 大 脳 冠 状 断,ク リュー バー・バレラ染色,大脳皮質の脳溝は軽度に拡大し,脳萎縮が示唆された(図 4).

歳症例の左大脳冠状断 (KB 染色)

歳症例の尾状核(HZ 染色)

歳症例の右大脳冠状断 (KB 染色)


症例

-

有棘赤血球舞踏病/両側淡蒼球切断術後の剖検所見(症例 A と同一症例) 線条体頭部の割面では,両側の尾状核が高度に萎縮していたが(矢印),大脳に萎縮はみられなかった (図 5).大脳冠状断,クリューバー・バレラ染色/ホルツアー染色,線条体の尾状核優位の萎縮・線維 性グリオーシス(矢頭)と,定位脳手術に伴う淡蒼球の変性(星印)がみられた(図 6).

有棘赤血球舞踏病症例の大脳冠状断

有棘赤血球舞踏病症例の右大脳冠状断 (左 KB・右 HZ 染色)

●参 文献 1 Simmons JT,Pastakia B,Chase TN,et al.Magnetic resonance imaging in Huntington disease.AJNR 7(1):25-28,1986. 2 Ho VB, et al. Juvenile Huntington disease:CT and MR features. AJNR 16(7):1405-12, 1995. 3 Hardie RJ,et al.Neuroacanthocytosis.A clinical,hematological and pathological studyof19 cases.Brain 114(1):13-49, 1991.


症例 歳,男性 意欲低下を認める CT,MRI ともに造影効果はほとんどなく,腫瘤の外縁の薄皮一枚だけかろうじて造影される. (図 4の矢印は何を示すか?)

CT

拡散強調画像

T 強調画像

造影後の矢状断 T 強調画像 (正中より左側)

(群馬大学医学部附属病院画像診療部,佐藤典子先生の厚意による)

T 強調画像


症例

血腫を伴った類上皮腫 解説 画像所見:CT で左前頭部には低吸収域を示す病変があり,周囲には石灰化を示す高吸収域がある. 右前頭部には大きな 一な高吸収域を示す腫瘤を認める.T 2強調画像では右側の腫瘤は低信号領域を 示し,T 1強調画像ではやや高信号領域を示し,血腫の可能性が高い.左前頭部の病変は T 2強調画像 で中心が高信号領域,周囲は低信号を認める.さらに拡散強調画像にて高信号領域を示す(図 4の矢 印).右側の病変は低信号を拡散強調画像にて示し,血腫に合致する. 手術所見:嗅神経が腫瘤の下面,外側にあり,腫瘤はおそらく脳内と えられた.くも膜は同定でき なかった.腫瘤は

おから 状で付随した血腫は黒蜜状だった.

拡散強調画像で高信号領域を示す腫瘤(Box 34参照)は多くはない.さらに,CT では低吸収域を示 し,T 1強調画像,T 2強調画像で高信号を示す腫瘤は類上皮腫である.右半球の病変は類上皮腫に出 血が起こり,角化物質を混じた血腫が形成され,上皮の崩壊に伴い異物肉芽の形成および線維化が起 こったものと えられる.稀であるが出血を伴った類上皮腫症例が報告されている(文献 2).

臨床 類上皮腫の 90%は

膜内,脳底部脳槽にある.小脳橋角部,第四脳室,傍鞍部,中頭蓋窩が多く,

大脳半球には稀(約 1.5%).残りの 10%は頭蓋骨由来. 葉状のカリフラワー様の外見を示す. 脳内の類上皮腫は神経冠の中外胚葉(胚葉が中胚葉と外胚葉に かれる前)起始の細胞が移動し,原始 大脳半球内に取り込まれ,残存することにより発生する.他の囊胞性疾患との鑑別は難しいが,拡散強 調画像が高信号を示す点が重要である.

画像診断 1.CSF に似た信号強度を有する脳槽内に迷入する形で発育し,血管と神経を巻き込む形を取る. 2.FLAIR 画像では完全に信号がなくなることは稀で,不 一な信号強度を示す. 3.水 子の拡散の抑制により,拡散強調画像にて高信号領域を示す.ADC 値は脳実質と同じ程度. 4.通常は造影効果がないが,周囲にわずかな造影効果を認めることがある. 5.稀に CT で高吸収域を示し,T 1強調画像および T 2強調画像にて高信号を示すことがある.蛋白 含量が高いことによる(文献 3).

Box

拡散強調画像で高信号領域を示すことが多い腫瘤

1.悪性リンパ腫

4.肉芽腫

2.類上皮腫

5.血腫(超急性期,比較的遅い亜急性期)

3.脳膿瘍 (CD-ROM 参照)


症例

症例

症例 A(剖検例)

-

資料

歳,女性

類上皮腫

41歳にて右中耳炎の根治手術を受け,58歳から左中耳炎の治療を受けていた.64歳頃から複視が間 欠的に出現するようになる.65歳から徐々にふらつき,めまい,嚥下障害,ミオクローヌスがみられ るようになった.69歳,呼吸不全から低酸素性虚血性脳症になる.肺炎のため死亡.剖検時,右側頭 骨錐体,トルコ鞍,小脳橋角部に類上皮腫が見出された. 剖検所見 解剖時の脳底面拡大,右の小脳橋角部に黄白色・不整形の腫瘍を認めた(図 1の矢頭).橋中部水平 断,クリューバー・バレラ(KB)染色,右の小脳橋角部の腫瘍断端が残存(図 2の矢印).腫瘍,ヘマト キシリン・エオジン(HE)染色の強拡大,囊胞のケラチンに由来するコレステリンの結晶(矢頭)と,多 核巨細胞と炎症性細胞浸潤からなる異物性肉芽腫(写真左)が認められた(図 3).

▼ ◀

小脳橋角部(KB 染色)

解剖時の脳底面

▲ ▲ ▲

腫瘍(HE 染色)

●参 文献 1 Iaconetta G,et al.Intracerebral epidermoid tumor:a case report and review oftheliterature.Surg Neurol.55(4):218-22, 2001. 2 Tsurushima H, et al. Intracranial epidermoid cyst including elements of old hematoma, Neurol Med-Chir (Tokyo), 37(11):861-4, 1997. 3 Ochi M, et al. Unusual CT and MR appearance of an epidermoid tumor of the cerebellopontine angle. AJNR Am J Neuroradiol. 19(6):1113-5, 1998.


症例 歳,男性 発熱,物が二重にみえる 11月 24日より発熱.27日,物が二重にみえる.28日に当院入院.顕著な項部強直があり,細菌性 髄膜炎の臨床診断.

T 強調画像

造影後の T 強調画像

FLAIR 画像

拡散強調画像


症例

脳室炎と脳膿瘍 解説 画像所見:側脳室左体部外側の腫瘤は T 2強調画像で高信号を示 し,リング状の造影効果を認める(リング状の造影効果に関しては 症例 68の Box 50を参照).拡散強調画像で高信号を示し,ADC map(図 5)で ADC 値の低下を認めることより(矢印),膿瘍と

られる(Box 35参照).左側脳室周囲には浮腫があり,上衣下には 造影効果を認める.脳室炎を示す.FLAIR 画像では側脳室左側体 部の後部に液面形成を示す構造があり,拡散強調画像では高信号 ◀

(ADC 値は低下,図 5矢頭)を示す構造があり,側脳室内の膿を表 す.脳膿瘍と脳室炎の画像である.

臨床 脳室炎は,髄膜炎,破裂した脳膿瘍,脳室内カテーテルに関連し た脳室上衣の感染である.以前は非常に重篤な疾患であり,死亡率

ADC map

が非常に高かった.今でも重篤な疾患(死亡率 40∼80%)であるこ とに変わりがないが,この症例のように抗生物質により治癒する例もある.併存する髄膜炎の程度によ りその予後が決まる.この症例では FLAIR 画像が示す様に,脳溝が比較的よくみえ,髄膜の炎症が比 較的軽いことを示している.死亡するような症例では,脳溝内にも炎症が充満し,FLAIR 画像にて脳 溝がみえないことがある(CD-ROM 参照).

画像診断 脳室拡大があり,脳室内に液面形成を有する膿が存在し,上衣の造影効果と上衣下に T 2強調画像に て高信号を認める. 脳室炎に伴う膿は拡散強調画像が最もコントラストがよい. 脳膿瘍の MRS では他の腫瘤とは異なり,乳酸,アミノ酸の他にアセテートおよびサクシネートの ピークが MRS で認められ,特徴的な所見である(症例 68:脳膿瘍参照).

鑑別診断 1.悪性リンパ腫:上衣の造影効果,結節状 2.腫瘍の上衣下進展:結節状が多い. 3.脳室内出血:外傷のその他の原因や瘢痕がある.脳室拡大はない. 4.著明な上衣下静脈:血管奇形の存在,異常な静脈への循環(例えばスタージ・ウエーバー症候群)

Box

ADC 値の低下を来す非虚血性変化

1.脳膿瘍,脳室炎(側脳室内の膿)

5.代謝性疾患(カナヴァン病)

2.cortical spreading depression

6.けいれん

3.悪性リンパ腫,その他の脳腫瘍(類上皮

7.高度の低血糖

腫,PNET:症例 40の Box 34参照) 4.多発性 化症 (CD-ROM 参照)

8.外傷


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,女性 脳室炎,髄膜炎

10月下旬より大 部痛,腰痛を認める.11月 29日に腰痛が増悪,さらに右殿部痛増悪,整形外科 にて痛みに対して局所注射を施行.12月 1日より意識障害,弛緩性四肢麻.12月 6日,血液培養でグ ラム陽性球菌を検出.12月 7日に MRI.当日夜死亡(剖検例,以下の病理所見と同一例). 画像所見:FLAIR 画像(図 1∼3)で脳室内に液面形成を示す高信号領域があり(図 1,2),脳室内の 膿を示す.側脳室上衣には高信号を認め,脳室炎がある.大脳基底核には高信号があり,梗塞の疑いが ある.脳溝内の正常の髄液の信号強度は失われ,高信号を示す(図 1∼3).重度の髄膜炎の所見である. 一方,T 2強調画像(図 4)では脳溝内髄液の信号は左半球では軽度に低下しているが,FLAIR 画像に 比べると不明瞭である.造影後の T 1強調画像(図 5)でも脳溝内の炎症所見が指摘しにくい.拡散強調 画像(図 6)では脳室内の膿が最も明瞭に認められる.基底核,島回を中心に高信号領域を認め,梗塞と えられる.

FLAIR 画像

T 強調画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像

FLAIR 画像

拡散強調画像


症例

-

脳室炎(症例 A と同一症例) 剖検所見 大脳冠状断,正中隆起部(図 7)と側脳室後角部(図 8),外側溝などの脳溝や脳底部に炎症性組織(星 印)を認め,側脳室壁も不整で上衣下に出血がみられた.加えて右尾状核に軟化も認められた(図 7の矢 印).側脳室前角,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,上衣下に炎症性細胞浸潤を認め,一部の上衣 細胞の脳室側に膿が付着していた(図 9).外側溝,ヘマトキシリン・エオジン染色,髄液腔には高度の 炎症細胞浸潤を認めた(図 10,写真下方は隣接する大脳皮質).

★ ★ ★

大脳冠状断(正中隆起部)

大脳冠状断(側脳室後角部)

側脳室上衣層(HE 染色)

大脳皮質髄液腔(HE 染色)

●参 文献 1 Pezzullo JA,et al.Diffusion-weighted MR imaging of pyogenic ventriculitis.AJR Am J Roentgenol.180(1):71-5,2003. 2 Guzman R,et al.Use of diffusion-weighted magnetic resonance imaging in differentiating purulent brain processes from cystic brain tumors. J Neurosurg. 97(5):1101-7, 2002. 3 Garg M, et al. Brain Abscesses:Etiologic Categorization with in Vivo Proton MR Spectroscopy. Radiology. 230:519 27, 2004. 4 水谷俊雄:化膿性髄膜炎.NHA-601,東京都立神経病院 CPC 記録集 2000年度,都立神経病院編集・発行,9-11, 2001.(本例の CPC 記録集)


症例 歳,男性 今までに 回,無菌性髄膜炎の既往があり,自然治癒している. 月 日頃より,右の口角から食事がこぼれるようになった 右口輪筋の筋力低下.前頭筋は正常,発語の口唇音が聞き取りにくい.髄液細胞数の増加(細胞 39/3, リンパ球 37)を認める.

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像

FLAIR 画像

同 T 強調画像

同 T 強調画像


症例

神経ベーチェット病 解説 画像所見:大脳基底核,視床,前頭葉底部,側頭葉内側部に FLAIR 画像で高信号を認め,点状,一 部線状の造影効果が脳実質内に認められる.神経サルコイドーシスとは異なり軟膜,くも膜の造影効果 は目立たない.この症例では大脳皮質下にも同様な病変が認められた.ぶどう膜炎,口内アフタもあ り,神経ベーチェット病に合致する所見である.

臨床 原因不明の炎症性病変であり,再発性の口内や陰部の潰瘍,ぶどう膜炎,皮膚病変(結節性紅斑,ニ キビ様皮疹),過敏性異常(パテルギー)を主徴とする.大関節の痛み,消化器症状,血管炎,副睾丸炎 などを伴う.中枢神経系は 10∼30%の罹患率がある. 無菌性髄膜炎はほとんど必発であり(CD-ROM 内 Box 36参照),けいれん,混乱状態,錐体路徴候, 小脳徴候,眼球運動障害,卒中発作などで発症する.地中海地方と日本に多く,HLA-B51 と強い関係 があり,小血管に対する自己免疫と えられる.

画像所見 脳幹症状,髄膜炎症状,昏迷状態に大きく かれる. 1.中脳間脳の両方を侵し,特に下行線維路に

って病変を認める.本症に最も特徴的な画像所見であ

る(CD-ROM 参照).病変が上下の方向に,下行線維路に 多発性

化症である.多発性

い長く伸びている特徴がある.鑑別は

化症で橋の病変は第四脳室周囲に多い.神経ベーチェット病では橋

髄に病変を認めることもある.

髄錐体を侵す病変の 1つである.

2.尾状核,レンズ核を含む大脳基底核,その周囲の白質や視床を侵す.鑑別診断は神経サルコイドー シスである.神経サルコイドーシスでは軟膜くも膜あるいは

膜の造影効果がより強い.多巣性の

病変を示す.強い造影効果をみたときには神経ベーチェット病あるいは神経サルコイドーシスを 慮する. 3.大脳白質に病変を認めることがある.非対称性に皮質下白質に病巣があり,皮質を含まない.急性 期には結節性の造影効果があり,ADC 値は上昇している.ADEM に似た所見である. 神経ベーチェット病では皮質脊髄路に病変を認めることがある.他の脱髄性疾患,皮質脊髄路を 侵す疾患が鑑別にあがる. 4.脳萎縮(大脳萎縮,脳幹萎縮)を認めることがある(CD-ROM 参照). その他に,小脳と視神経に異常を認めることがある. わが国の記載の明らかな 90症例の神経ベーチェット病の調査結果では,頸部を含めた頭蓋内圧血管 病変は 8例(8.9%)あった.神経症状を有する本症患者では 10∼20%が頭蓋内血管病変を合併してい る.その中で,動脈閉塞性病変は少なく,静脈閉塞が多い.静脈洞血栓症の報告もある(文献 4). 神経スイート(Sweet)病は特徴的な皮疹を伴う皮膚科疾患であり神経ベーチェット病と類似した浸出 性炎症性疾患であり,その中枢合併症が神経スイート病である.神経スイート病では HLA-B 54の陽 性率が高くステロイドが著効を示す. それ以前に神経症状のなかった神経ベーチェット病患者に免疫抑制剤(シクロスポリン)を投与した結 果,中枢神経症状が出現し,MRI にて異常を認めた例の報告が多数ある(文献 5). (CD-ROM 参照)


症例

症例 Box

-

資料

原因不明の無菌性髄膜炎

1.神経ベーチェット病

3.Vogt-Koyanagi-Harada 病

2.神経サルコイドーシス

4.Mollaret 髄膜炎

症例 A 3月に下

歳,男性 神経ベーチェット病 に水胞様発疹が出る.6月より左目,次に右眼がぼやける.ぶどう膜炎と言われる.6月

中旬より右上下肢の筋力低下.その後,自然回復.7月 25日より発熱.27日起床時に右眼が見えず, 上下肢が動かないので入院.8月 6日に MRI を撮像する. 急性の非肉芽腫性ぶどう膜炎があり,髄液細胞数のリンパ球有意の増加があり,MRI 所見より,神 経ベーチェット病と えられた.中脳から橋にかけて縦に長い病変があり,橋底部左側に点状の造影効 果を認める.拡散強調画像では高信号を示さない.神経ベーチェット病に比較的特徴的な画像所見を認 める.

FLAIR 画像

拡散強調画像


症例

-

症例 B

T 強調冠状断像

造影後の T 強調画像

歳,女性 神経ベーチェット病

原因不明の難治性髄膜炎を繰り返した既往がある.虹彩炎の再発を繰り返し,さらに皮膚には結節性 紅斑があり,認知症の進行を認める.神経ベーチェット病と診断された. 年齢に比べ大脳の萎縮が強い.左内包後脚,大脳白質に異常な高信号領域を T 2強調画像(図 5∼7) にて認め,T 1強調画像(図 8)では一部に低信号領域がある.神経ベーチェット病では時に,このよう な大脳白質に異常高信号領域が目立つ例があり,さらに大脳萎縮のみの症例もある.繰り返す髄膜炎な どの病歴がないと診断は困難である.

T 強調画像

T 強調画像


症例

T 強調画像

T 強調画像

-


症例

-

症例 C(剖検例)

歳,男性

神経ベーチェット病

35歳で後頭部電撃痛で発症する.歩行障害が加わり,頭部 MRI 検査では側脳室周囲に病変がみら れ,多発性

化症が疑われた.その後,口腔内アフタ,陰囊潰瘍,脳幹症状が出現,MRI 検査でも橋

に病変がみられ神経ベーチェット病と診断される.肺炎のため死亡. 剖検所見 側脳室後角周囲,クリューバー・バレラ(KB)染色,壊死巣により髄鞘が淡明化(図 9).同部位のヘ マトキシリン(HE)染色の強拡大では,炎症細胞が血管周囲と実質内に浸潤(図 10).橋中部,クリュー バー・バレラ染色(上段)/ホルツアー(HZ)染色(下段),橋底部に陳旧性の軟化巣がみられ,髄鞘淡明化 と線維性グリオーシスを示していた(図 11).

側脳室後角(KB 染色)

後頭葉白質(HE 染色)

橋中部(上 KB・下 HZ 染色)


症例

-

●参 文献 1 Sener RN.Neuro-Behcets disease:diffusion MR imaging and proton MR spectroscopy.AJNR Am J Neuroradiol.24(8): 1612-4, 2003. 2 Kocer N, et al. CNS involvement in neuro-Behcet syndrome:an MR study. AJNR Am J Neuroradiol. 20(6):1015-24, 1999. 3 Hisanaga K,et al. Neuro-sweet disease :benign recurrent encephalitis with neutrophilicdermatosis.Arch Neurol.56(8): 1010-3, 1999. 4 伊藤香世子:神経 Behcet 病.神経 Behcet 病の頭蓋内血管病変,神経内科 52(5):485-91,2000. 5 嶋田伸宏,他:免疫抑制剤内服中にみられたベーチェット病の中枢神経症状.眼科臨床医報:92(11):1530-5,1998.


症例 歳,男性 統合失調症の既往がある.入院後,急激に進行した四肢麻痺と発語不 良

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院放射線科,小山眞道先生の厚意による)


症例

浸透圧性脱髄性症候群(橋中心性・橋外髄鞘崩壊症) 解説 画像所見:橋底部中心部に比較的境界明瞭な高信号領域が左右対称性に認められる.高信号の中に, 正常の信号強度を示すのは橋縦走線維である.橋周囲の線維は残存している.橋中心性髄鞘崩壊症 (CPM )の画像所見である.T 1強調像では低信号,拡散強調画像では高信号を示す(非掲載).中小脳 脚には病変はおよばず,病変に mass effect はない.造影効果を認めていない(非掲載).尾状核,被

淡蒼球の外節の一部,視床外側部にも同様な病変があり,橋外髄鞘崩壊症の所見である.現在では浸透 圧性脱髄性症候群と呼ばれる症候群である.

臨床 この患者はセレネース

を服用していたが,不眠のため増量された.昨年 12月に歩行困難となり,

他院に入院.1月 7日の NA は 130mg/dl と低下を示した.おそらくセレネース ン

による抗利尿ホルモ

泌異常症候群によるナトリウムの低下が起こり,それを急激に補正したために(1月 15日には Na

は 145mg/dl),浸透圧性脱髄性症候群が発生し,四肢麻痺及び発語不良となったと解釈される. 以前は橋中心性髄鞘崩壊症,あるいは橋外髄鞘崩壊症と呼ばれたが,osmotic demyelination syndromeに統一される傾向にある.浸透圧性のストレスによる炎症を伴わない脱髄性疾患である.血清浸 透圧の急激な変化によって発生すると えられている.代表的な状態は低ナトリウム血症の急激な補正 によって発生する.しかし,正常ナトリウム患者にも起こりうる.アルコール依存症の患者に多いが, その他の疾患において死亡直前の出来事として発生する例もある.

画像所見 橋(約 50%):中心部の線維のみが侵され,周囲は保たれる.造影効果は軽度に認められることがあ る.円型あるいは三角形を示し,左右対称性である. 橋以外(約 50%):大脳基底核,大脳白質,少ないが大脳皮質,海馬,稀に外側膝状体,大脳皮質で は脳回様の病変になり,造影効果を認めることがある.橋病変がなくて橋外の病変のみのこともありう る. 拡散強調画像では,その他のパルス系列より早く異常を認めることがある.

鑑別診断 1.橋の梗塞,虚血(左右非対称,末梢を侵す,脳底動脈の穿通枝の梗塞は橋中心部を侵し,CPM に似 ている) 2.脱髄性疾患(他の部位にも病巣を認める.不完全なリング状の造影効果) 3.橋の腫瘍(mass effect の有無,不 一な信号強度) 4.代謝性疾患 ウイルソン病:橋より大脳基底核により大きな病変 リー(Leigh)脳症:大脳基底核,中脳, 髄に病変 高血圧性脳症:頭頂・後頭葉に病変 橋の高血圧性脳症:末梢の線維も侵す,他の部位の病変 (CD-ROM 参照)


症例

症例 症例 A

歳,女性 熱を認める

-

資料

橋中心性髄

崩壊症, ヶ月前より歩行障害,構音障害,発

小脳性失調,腱反射の亢進, 血と感染性心内膜炎を指摘されている. 画像所見:橋底部中心部に比較的境界明瞭な高信号が左右対称性に存在する.一部は被蓋におよぶ. 橋周囲の線維は残存している.T 1強調像では低信号および拡散強調画像では高信号を示す.中小脳脚 にはおよばず,病変に mass effect はない.造影効果を認めていない(非掲載).橋中心性髄鞘崩壊症, 現在では浸透圧性脱髄性症候群と呼ばれる症候群である.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

拡散強調画像


症例

-

症例 B

歳,女性 神経ベーチェット病(類似した画像所見を示す例)

頭痛があり呂律が回らないために来院した.来院 1週間後に MRI を撮像する. 髄前部,橋,中脳右側にかけて,T 2強調画像にて高信号を認める(図 5∼7).橋では T 1強調像に て軽度の低信号を認める(非掲載).橋中心性髄 崩壊症と異なり,

髄を侵しており,中脳の病変に左

右差がある. 脳脊髄液検査で細胞数が 524(lym 296)と上昇,髄

塩基性蛋白,オリゴクローナルバンドは陰性で

あった.さらに以前より紅斑,口腔内アフタ,関節炎があったことがわかり,今回の神経症状で大症状 2+小症状 2となり,神経ベーチェット病の診断基準を満たした.その後ステロイド治療で症状がよく なり退院した.

T 強調画像

T 強調画像

(富士吉田市立病院放射線科,安達木綿子先生の厚意による)

T 強調画像


症例

症例 C(剖検例)

歳,女性

-

浸透圧性髄鞘崩壊症

72歳で重症筋無力症が発症,薬物療法や血漿

換治療を受けていた.腎不全を合併.多臓器不全の

ため死亡.生前,血清ナトリウム値に大きな変動はみられなかった. 剖検所見 橋中部水平断,クリューバー・バレラ(KB)染色,橋底部に不整形かつ広範な髄鞘脱落が認められた (図 8,橋中心性髄鞘崩壊症).橋底部,ボデイアン(BD)染色の強拡大,髄鞘脱落部では胞体が空胞状 の貪食細胞が浸潤していたが,軸索は比較的保たれていた(図 9).大脳冠状断,クリューバー・バレラ 染色,外側膝状体にも同様な髄鞘脱落が認められたが,神経細胞はよく保たれていた(図 10,橋外髄鞘 崩壊症).

橋中部(KB 染色)

橋底部(BD 染色)

外側膝状体(KB 染色)

●参 文献 1 Ruzek KA, et al. Early diagnosis of central pontine myelinolysis with diffusion-weighted imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 25(2):210-3, 2004. 2 Calakos N, et al. Cortical MRI findings associated with rapid correction of hyponatremia. Neurology, 55(7):1048-51, 2000. 3 藤田信也,他:大脳皮質に特異的な病変を認めた central pontine and extrapontine myelinolysis の 1例.神経内科. 57(2):149-54,2002. 4 武田貴裕,他:Central pontine and extra-pontine myelinolysis の MRI.神経内科.66(3):293-6,2007.


症例 歳,男性 意識不鮮明,眼球運動障害がある 脳性麻痺のため,自宅療養中,7月半ばより日付がわからなくなる,8月 22日ヘルパーさんの区別が つかない.同 26日近医で記銘力障害,眼球運動障害を指摘された.

FLAIR 画像

T 強調冠状断像

FLAIR 画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調冠状断像


症例

ウェルニッケ脳症 解説 画像所見:FLAIR 画像で

髄被蓋,中脳被蓋,第三脳室外側(視床内側部)に高信号を認め(図 1∼

3),T 2強調画像では乳頭体に高信号があり(図 4の矢印),

かな造影効果を認める(図 5の矢印).

ウェルニッケ脳症が えられる所見である.患者はきちんとした食事を取らず,夕方には食事の替わり に酒を飲む生活をしたために,サイアミン(ビタミン B )不足になり,グルタミン酸の蓄積による神経 細胞への損傷が生じたと えられる.

臨床 ウェルニッケ脳症はアルコール性脳症の 1つとして位置づけられる.サイアミン不足により起こり, アルコール多飲者に多い.慢性消耗性疾患あるいは非経口的栄養摂取者でも起こりうる.眼球運動障害 (眼振,注視麻痺),小脳失調と意識の不鮮明が主たる徴候である.それに対して,コルサコフ症候群は 逆行性

忘,新しい情報を獲得するのが困難な状態にある.ときに両者が合併して現れる.

アルコール多飲者の他には,妊娠悪阻,長期間の感染発熱性疾患,悪性腫瘍,神経性食思不振症,長 期間の意図的な拒食症,中心静脈栄養などが本症の原因となりうる. 日常臨床で最も留意すべき点は,妊娠悪阻,中心静脈栄養や腸管切除後などの潜在的サイアミン欠乏 状態と

えられる場合には,ブドウ糖のみの静脈注射では解糖系を動かすための補酵素としてのサイア

ミンの需要が高まり,一気に欠乏状態となり,短期間でウェルニッケ脳症を起こす.必ずサイアミンを 同時に投与しなければならない.

画像所見 T 2強調画像あるいは FLAIR 画像で高信号を,乳頭体,中脳水道周囲灰白質,視床下部,第四脳室 底と視床内側部に認める.乳頭体のみに異常を認めることもある. 急性期には軽い腫大と造影効果を認める.慢性期には萎縮(特に乳頭体に)を示す.治療により信号強 度変化が元に戻る.稀に,小脳に病変を認める.

鑑別診断 1.無酸素性脳症:大脳基底核に左右対称性の病変.海馬及び大脳皮質にも病変 2.一酸化炭素中毒:淡蒼球>被 ,大脳白質にも異常がありうる. 3.代謝性疾患:浸透圧性脱髄性症候群.橋>被 >大脳皮質 ウィルソン病およびリー(Leigh)脳症.大脳基底核病変

Box

両側視床内側部に病巣を有する疾患

1.ウェルニッケ脳症 :最も内側部

6.両側性視床の神経膠腫

2.静脈性梗塞 :深部静脈血栓症

7.胚芽腫

3.両 側 傍 正 中 視 床 梗 塞:Artery of Per-

8.リー脳症

chron,両側傍正中部視床を支配する動脈

9.両側下行性テント切痕ヘルニア

4.急性壊死性脳症 5.日本脳炎 (CD-ROM 参照)

は小児に多い,あるいはありうる


症例

症例

症例 A(剖検例)

-

資料

歳,男性

ウェルニッケ脳症

若い頃から大量飲酒,肺結核にも罹患,治療を受けていた.53歳から

忘が出現,55歳より食事を

ほとんどせず飲酒のみとなり全身衰弱し低栄養状態に陥る.認知症も進行,作話もみられコルサコフ症 候群と診断される.肺炎で死亡. 剖検所見 大脳皮質に軽い萎縮がみられ,中脳黒質の色調が不良(図 1対照,図 2症例).大脳冠状断,ホルツ アー(HZ)染色,両側の視床下部(図 3の矢頭)と乳頭体(図 3の矢印)に線維性グリオーシスを認めた. 乳頭体,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,好酸性のグリア線維が増加していた(図 4).

▶ ▶

対照の中脳

症例の中脳

◀ ◀

視床下部(HZ 染色)

乳頭体(HE 染色)

(国立精神・神経センター武蔵病院臨床検査,有馬邦正先生の厚意による) ●参 文献 1 Bae SJ,et al.Wernickes encephalopathy:atypical manifestation at MR imaging.AJNR Am J Neuroradiol.22(8):14802, 2001. 2 木下良正,他:皮質病変を伴った Wernicke脳症の MRI 所見.脳と神経 53(1):65-8,2001. 3 山崎峰雄:Wernicke-Korsakoff症候群.神経内科 45(4):288-95,1996. 4 Lapergue B,et al.Diffusion weighted imaging of cerebellar lesions in Wernickes encephalopathy.J Neuroradiol.33(2): 126-8, 2006.


症例 歳,アメリカ人 東南アジア旅行後の意識障害 2月中旬より 3月 3日まで東南アジア旅行し,3月 4日に日本に訪れ,3月 5日より,発熱,頭痛, 意識障害出現.3月 8日に都立の他の病院に入院.意識障害の他に,不随意運動,強剛が目立った.発 病約 40日目に MRI 撮像.0.5T の古い MRI で撮像する.

プロトン強調画像

T 強調冠状断像

プロトン強調画像


症例

日本脳炎 解説 画像所見:プロトン強調画像で,両側ほぼ対称性に視床,線条体,淡蒼球に異常な高信号領域を認め る(図 1).図 2では黒質,扁桃核に異常高信号領域を認める.冠状断像(図 3)では視床,黒質,海馬お よび扁桃核に同様な所見がある.臨床所見では脳炎を思わせる所見であり,特に,不随意運動,強剛な どは基底核を侵している所見と

えられる.MRI より,黒質と視床が侵されているので日本脳炎と診

断し,その後,血清および髄液より日本脳炎の診断が確定した.

臨床 脳炎とは非局所的な,びまん性の脳の炎症である.日本脳炎は,現在の日本ではほぼ西日本に 6月か ら 9月までの間に限局して発生している.この症例のように東南アジアでは日本脳炎の感染はほぼ常に あるが,雨期に特に多い.中国南部を含めて,東南アジアから旅行者が脳炎症状を示し,黒質と視床が 侵されているときには日本脳炎を 慮すべきである. 黒質が主として侵される脳炎にはセントルイス脳炎がある. 急性壊死性脳症も両側視床に病変がおよぶ(症例 44の Box 37参照)が,発生する期間が冬季にもあ る.また,北日本でもあり得ることが異なる.視床以外に,日本脳炎では黒質が侵されるが,壊死性脳 症では橋被蓋が主である.発症早期から急性脳症では病変が MRI で認められるが,日本脳炎では必ず しもそうではないなどの違いがある(文献 2).両側側頭葉内側部が侵された例もある(文献 3).

Box

脳炎による典型的な感染部位

1.単純ヘルペス脳炎 1型:辺縁系

6.セントルイス脳炎:黒質

2.HIV:大脳白質,脳幹,視床,大脳 基 底

7.水痘帯状疱疹ウイルス:血管症(虚血,

出血性梗塞),脱髄,耳性帯状疱疹性

3.日本脳炎:両側視床,黒質

(脳神経 , ,蝸牛の造影効果)眼神

4.エンテロウイルスによる脳脊髄炎:

経帯状疱疹,内頸動脈に壊死性の血管

・エンテロウイルス 71

髄後部,橋,

脊髄 ・ポリオ,コクサッキー,中脳,脊髄前角 5.ニパ・ウイルス脳炎:多巣性の大脳白質 の微小梗塞

炎 8.EB ウイルス:対称性に基底核 9.東部馬脳炎:基底核,視床 10.ハンターウイルス:下垂体(出血性) 11.西ナイルウイルス:両側視床,基底核

●参 文献 1 Kumar S, et al. MRI in Japanese encephalitis. Neuroradiology. 39(3):180-4, 1997. 2 Yagishita A, et al. Encephalopathy with bilateral thalamotegmental lesions?Japanese encephalitis.Reply.AJNR Am J Neuroradiol. 17(1):192-4, 1996. 3 Jung KY,et al.NEUROIMAGES:Bilateral medial temporal lesions in Japaneseencephalitis.Neurology.68:1319,2007.


症例

症例

-

資料

症例 A(剖検例) 小児(詳細不明) 日本脳炎 剖検所見 大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,視床外側の髄鞘淡明化していた(図 1の矢頭).中脳, ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,黒質網様部(写真左上)から大脳脚(写真右下)にかけて海綿状の 円形壊死巣を認めた(図 2の矢印).ヘマトキシリン・エオジン染色の強拡大,黒質網様帯の海綿状病巣 にはグリオーシスは明らかではなかった(図 3).大脳皮質,ヘマトキシリン・エオシン染色,炎症細胞 浸潤がくも膜下腔や脳実質静脈周囲にみられた(図 4).

▶ ◀

▲ 図

左視床(KB 染色)

黒質網様部(HE 染色)

黒質・大脳脚(HE 染色)

大脳皮質(HE 染色)


症例 歳,男性 約

年前と, ヶ月前に頭痛と TIAの発作

10年前も 2ヶ月前にも呂律不良が出現し,数時間で改善.2ヶ月前には頭痛もあった.MRI を撮り, 異常と言われている.

FLAIR 画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像


症例

CADASIL 解説 画像所見:側頭葉前部,島回,外包,大脳基底核前部,半卵円中心,右前頭葉前部に FLAIR 画像で 高信号を示す小梗塞が多発している.大脳の後部,特に後頭葉には梗塞を認めない.また,前頭葉眼窩 面には少ない.T 1強調像では低信号を示す(非掲載).若年成人(最初の TIA は 35歳時)であり,頭痛 を伴い,側頭葉前部および外包を含む小梗塞を認めたならば本症を

える.

親は 50歳代にて脳梗塞

に罹患. 親の同胞 2人も脳梗塞がある.遺伝子解析により確認された.

臨床 遺伝性の小血管を侵す病態であり,若年成人に皮質下ラクナ梗塞と白質脳症を起こす.第 19染色体 の Notch 3遺伝子の変異が同定された.40∼50歳代の比較的若年者で脳卒中のリスクファクターを有 さず,家族に同様の症状をみる.男女比は 2:1で男性に多い. 30歳代で発症し,59歳にて平

値では死亡する.再発性の TIA,梗塞,認知症,鬱状態,偽性球麻

痺,片麻痺,四肢麻痺を示す. 英国からの報告では 70例の CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性遺伝性脳動脈病) の内,6例に急性脳症の形態を取った例がある. 7∼14日間続く, 発熱, 急性の昏迷, 昏睡,けいれん発作が 症状であった. 2例を除き回復した.すべての患者に前兆を伴う片頭痛の既往がある.ウイルス性の脳炎 と誤診されている.家族歴に卒中,認知症,片頭痛がある人がいることも診断に重要である(文献 3).

画像診断 前頭葉白質に最も病変が強い.次に側頭葉および島回の白質である. 比較的多い部位は側脳室三角部周囲白質,半卵円中心,内包と外包,大脳基底核および脳幹である. 前頭葉眼窩面および後頭葉白質は保たれる.大脳皮質も一般的には保たれる. 最近では灰白質と白質境界のラクナは拡大した perivascular spaceと

えられており,その周囲には

空胞変性を島回下に認めている. T 2強調画像と FLAIR では高信号を示し,この高信号領域は 21歳以降の症例に出現する.T 1強調 像では低信号を示す.拡散強調画像では急性期は高信号を示す. 約 30%の症例において微小出血が多発する.出血巣はあらゆる部位に認められるが視床に最も多発 する.これらの病変は加齢とともに増大する.脳出血の危険性が高くなる.微小出血の診断には T 2 強調画像が有用である.

鑑別診断 1.非遺伝性の皮質下動脈 化症(sporadic subcortical arteriosclerotic encephalopathy):高血圧の 合併,橋,視床,大脳基底核に多発性梗塞.CADASIL では前部側頭葉と外包,上部前頭葉白質が 侵されるのが特徴である.さらに両側性に歯状核,深部小脳白質,大脳脚,視床の低信号が減弱する. 2.MELAS:多発性の皮質から皮質下の病変,ADC 値の上昇を認める.血管性浮腫を示すことが多 い.特に,発症 48時間以内に ADC 値が正常あるいは上昇しており,梗塞様の所見があるときには 本症を

える.

3.中枢性血管炎:DSA による遠位血管の狭窄像 4.凝固系の異常(抗リン脂質抗体,S 蛋白欠損):種々の大きさ(皮質あるいはラクナ)の動脈性の梗塞 及び静脈性血栓症.若い女性では早期流産.(CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

遺伝性の脳小血管病の鑑別

Box

病名

CADASIL HERNS

白質脳症 ラクナ梗塞 その他

網脈動脈 皮膚動脈 全身性所見 の変化 の変化

片頭痛

++

++

前部側頭葉および外 包に多発

++

++

造影される病変++

++

++

++

造影される病変++

++

CARASIL

++

++

早期禿頭,腰椎症

++

ファブリ病

++

++

皮質梗塞があり得る 出血もありうる

++

++

HIRL

++

拡大した血管周囲腔 一側性の脳室拡大

++

++

CRV

CADASIL=cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy;HERNS=hereditaryendotheliopathywith retinopathy,nephropathy,and stroke;CRV= cerebroretinal vasculopathy; CARASIL=cerebral autosominal recessive arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy; HIRL=hereditary infantile hemiparesis, retinal arteriolar tortuosity, and leukoencephalopathy


症例

-

症例 A

家族歴:

男性 CADASIL

親が 37歳で脳梗塞.弟も脳梗塞と診断された.

主訴:めまい,右上下肢麻痺 めまいで,右上下肢の麻痺,MRI を撮影,急性期梗塞を認めた.MRI 所見,家族歴より CADASIL と えられた. CT(図 1)では,外包および前頭葉白質に低吸収域を認め,年齢に比べて強い.拡散強調画像(図 2)で は新鮮な梗塞を左側脳室前角周囲白質に認める.側頭葉尖端部白質(図 3の矢印),橋底部,歯状核付近 に FLAIR 画像にて高信号を認める.FLAIR 画像(図 4)にて外包に強い高信号を認め(矢印),その他 前頭葉白質,脳室周囲に小梗塞巣と

えられる高信号領域が散在している.T 1強調画像(図 5)ではそ

の一部に低信号を示す.T 2強調画像(図 6)では外包,大脳基底核,側脳室周囲に梗塞巣を認める.

CT 画像

拡散強調画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像

T 強調画像

T 強調画像

(帝京大学医学部附属病院放射線科,大場洋先生の厚意による)


症例

症例 B(剖検例)

歳,男性

-

CADASIL

10∼55歳まで前兆の伴う頭痛発作がみられた.63歳より性格変化,歩行障害が出現・増悪,73歳か ら尿失禁が加わる.神経放射線検査で大脳深部白質に広範な病変が認められた.肺炎で死亡. 剖検所見 半卵円中心の割面,脳梁に比べ半卵円中心の色調が不良であった(図 7).右大脳の線条体頭部での冠 状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,外包(矢頭)と側頭極白質(矢印)には高度の,また半卵円中心 には中等度のそれぞれ髄鞘脱落がみられた(図 8).大脳白質深部の細動脈のヘマトキシリン・エオジン (HE)染色(左)/くも膜下腔の小動脈の過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色(右),動脈中膜平滑筋層に好酸性 (左図の矢頭),PAS 陽性(右図の矢頭)の顆粒物質の沈着(granular osmiophilic material:GOM )が認め られ,平滑筋細胞の減少・Ballooning(左図の矢印)もみられた(図 9).

▶ ▶

半卵円中心

図 右大脳冠状断(KB 染色) (Blackwell 社,Neuropathology よ り許可を得て転載)

▼ ▶

▲ ▶

大脳白質細動脈(左 HE・右 PAS 染色)

(国立精神・神経センター武蔵病院臨床検査,有馬邦正先生の厚意による)


症例

-

●参 文献 1 Auer DP, et al. Differential lesion patterns in CADASIL and sporadic subcortical arteriosclerotic encephalopathy:MR imaging study with statistical parametric group comparison. Radiology. 218(2):443-51, 2001. 2 Oberstein SAJL et al, Cerebral microbleeds in CADASIL Neurology, 57(6):1066-70, 2001. 3 Schon F,et al. CADASIL coma :an underdiagnosed acuteencephalopathy.J Neurol Neurosurg Psychiatry.74(2):249 52, 2003. 4 西尾 資,他:Cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy.臨床神 経学 37:910-6,1997. 5 van den Boom, R et al. Cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy: MR imaging findings at different ages-3rd-6th decades. Radiology. 229(3):683-90, 2003.


症例 歳,女子 ヶ月前から頭痛があり,今回,投薬を必要とするような強い頭痛と 嘔気,嘔吐を訴え緊急入院 明らかな外傷歴はない.

CT 画像

CT 画像

CT 画像


症例

中頭蓋窩くも膜囊胞と慢性

膜下血腫

解説 画像所見:左側頭前部,前頭部から頭頂部にかけて,ほとんど脳と等吸収域を示す 膜下血腫を認め る(図 1∼3).側頭前部では脳実質との間に線構造があり(図 1), 膜下血腫と脳の間に拡大したくも膜 下腔様構造を示唆している.以前にくも膜囊胞があったことを示す.中頭蓋窩くも膜囊胞に慢性 膜下 血腫が加わったと

えられる.約 1ヶ月前の CT(図 4)で,同部に低吸収域を示すくも膜囊胞を確認で

きる.さらに 16日前の T 2強調画像(図 5)では,左中頭蓋窩の高信号領域の中に膜様構造があり(図 5 の矢印),くも膜囊胞と,その前部に

膜下水腫がある.頭頂部には

膜下水腫の中に,信号強度の高

い血腫を認める(図 6の矢印).前頭・頭頂葉では脳溝内の髄液の信号強度が同定できず,右半球に比べ て高信号を示している(図 6の矢頭).血腫あるいは水腫による脳への圧迫を示す.頭蓋内圧が高いこと を示唆している.臨床所見に合致する.MRI 撮像後,出血がさらに増加し 膜下血腫となった.

(三輪書店

CT 画像 脳神経外科の常識非常識

T 強調画像

FLAIR 画像

より許可を得て転載)

臨床 高齢者に多い慢性 膜下血腫(あるいは水腫)では,歩行障害と片麻痺が最も多い症状である.それに 対して,15歳以下の小児では,頭痛,嘔吐である.小児期の慢性 膜血腫はくも膜囊胞の合併が多い. くも膜囊胞にわずかな外傷が加わることによって,その膜に裂け目ができ, 膜下水腫が発生する.さ らに,その存在により,橋静脈,囊胞の表面にある支持基盤のない静脈や囊胞底部の軟膜静脈が破れ, 膜下あるいは囊胞内の出血が起こると えられており,両者の合併は偶然ではない. 12例の共存した症例の報告では囊胞は中頭蓋窩に 8例,穹窿部に 2例,後頭蓋窩に 2例となってい る. 膜下血腫と囊胞は同一側が多いが,反対側でも起こる. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像所見 天幕上に関する 8例のくも膜囊胞と 膜下血腫の合併例では中頭蓋窩の 6例全例に側頭下の膨隆と, 側頭骨鱗部の菲薄化が起こっている(文献 2).穹窿部の囊胞 1例では頭蓋冠の菲薄化が認められた.く も膜囊胞を合併しない,非外傷性の 膜下血腫ではそのような所見を 8例中 1例も認めていない.側頭 部の膨隆と鱗部の菲薄化は 膜下血腫あるいは囊胞内出血を合併したくも膜囊胞では重要な画像所見と 述べている.しかし本例には骨の変化を認めていない. 中大脳動脈動脈瘤が中頭蓋窩のくも膜囊胞内に破裂し,急性の 膜下血腫を形成した珍しい症例報告 がある(文献 3). くも膜囊胞内に出血し,動眼神経麻痺を呈した症例がある(文献 4).

症例 A

歳 ヶ月の男児

主訴は頭囲拡大と運動発達遅滞,寝返りが 9ヶ月と運動発達が遅

,7ヶ月

診にて頭囲は既に 2

SD を超えていた.1歳 3ヶ月で他院にて受診する.下肢優位の右不全麻痺を認める. T 2強調画像(図 1)および T 1強調画像(図 2)に左側

膜下に大きな髄液と同様な信号強度を示す腔

があり,左頭蓋冠が大きく拡大し,穹窿部の骨に菲薄化を認める.慢性 膜下水腫である.さらに,そ の内部には膜様構造があり(図 1の矢印),2つの腔に けられる.内側部がくも膜囊胞,外側が 水腫の合併例と えられる.脳に強い圧排があり,神経症状がみられる.

T 強調画像

T 強調画像

膜下


症例

-

●参 文献 1 Mori K,et al.Arachnoid cyst is a risk factor for chronicsubdural hematoma in juveniles:twelvecases ofchronicsubdural hematoma associated with arachnoid cyst. J Neurotrauma. 19(9):1017-27, 2002. 2 Ochi M, et al. Supratentorial arachnoid cyst and associated subdural hematoma:neuroradiologic studies. Eur Radiol. 6(5):640-4, 1996. 3 Huang D, et al. Intracystic hemorrhage of the middle fossa arachnoid cyst and subdural hematoma caused by ruptured middle cerebral artery aneurysm. AJNR Am J Neuroradiol. 20(7):1284-6, 1999. 4 IdeC,et al.Hemorrhagicarachnoid cyst with third nerveparesis:CT and MR findings.AJNR Am J Neuroradiol.18(8): 1407-10, 1997. 5 Aoki N,et al.Intraoperativesubdural hematoma in a patient with arachnoid cyst in themiddlecranial fossa.Childs Nerv Syst. 6(1):44-6, 1990.


症例 歳,男子 週間前に,左下肢のけいれんで発症,他院での CT( 日前)で高吸収 域を示す腫瘤がある 初回のけいれんの後,1週間前には左片麻痺が出現.

日前の他院の CT

当院での T 強調画像

同造影後

同 T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

出血した海綿状血管腫(家族性) 解説 画像所見:CT で左前頭葉に高吸収域を示す腫瘤 があり,周囲には低吸収域を伴い,浮腫と えられ る.T 2強調画像では腫瘤は 2つの腫瘤様にみえ る.両方とも中心部は T 2強調画像では高信号を示 し,周囲にはリング状の低信号を有する.さらにそ の外側には高信号領域を示す浮腫がある.T 1強調 画像では 2つの腫瘤の内,外側は強い高信号を示 し,外側の腫瘤は中心が低信号で周囲が高信号領域 となる.発症後 2週間経過したの で,T 1強 調 と T 2画像の高信号領域は赤血球外のメトヘモグロビ ンによると

える.T 2強調画像での低信号はへモ

ジデリンによると

T 強調画像

える.造影後には内側の腫瘤の

外周に造影効果を認める.出血した海綿状血管腫に 合致する所見である.1ヶ月後の T 2強調画像(図 6)で低信号領域が増加し(矢印),一部に高信号領域 を示す腫瘤となっている.浮腫は消失した.T 1強 調画像では高信号を示す.母親に多発性の海綿状血 管腫があることが判明し,家族性の海綿状血管腫と えられる.

臨床 海綿状血管腫は異常に拡張した血管が洞様構造を示し,病変内に脳実質が存在しないことが特徴であ る.腫瘤内には広範囲な硝子化,肉芽形成,石灰沈着,ヘモジデリン沈着を認める.くも膜下腔に接す る軟膜下や脳室に接する部位に多いが,あらゆる部位で発生する.約 1/4は天幕下にあり,脳幹と小脳 に半 ずつある.脊髄にも発生する.20∼30%は多発性であり,10∼15%は家族性である.家族性では 多発性が多い. 家族性の多発性の海綿状血管腫症候群は常染色体優性遺伝であり,種々の浸透率がある. 合併する異常としては,静脈性血管奇形,表面ジデローシス,カフェオレ斑,角質増殖性毛細血管静 脈性奇形がある. 放射線治療の後遺症には小児の海綿状血管腫が新たに発生することがある(CD-ROM 症例 B 参照). (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 急性期の出血がなければ,浮腫も腫瘍効果もない腫瘤であり,周囲には完全なリングを示す低信号領 域を T 2強調画像とグラディエントエコー法で認める.内部の信号強度は様々であるが,Zambraski ら が 4型に 類した.いずれも血腫,石灰化あるいはヘモジデリンなどで説明が可能な信号強度である. 1型は亜急性期の血腫の状態であり,T 1強調像で中心が高信号,T 2強調像で中心が高信号または 低信号で,周囲に低信号であり,亜急性期の血腫に周囲にヘモジデリン沈着とグリオーシスを伴う. 2型はポップコーン様と呼ばれ,中心は T 1強調像および T 2強調像ともに混在した信号強度で,周 囲に T 2強調像で低信号を伴う. 3型は慢性出血の形態であり,T 1強調像で等信号もしくは低信号で,T 2強調像では低信号で,周 囲にさらに低信号を伴う. 4型は点状の微小出血の形態であり,T 1強調像と T 2強調像共に明瞭には描出されないが,グラ ディエントエコー法で低信号領域として認められる. 血管造影では異常血管を通常は認めない.異常血管が認められるときには静脈性血管腫の合併を 慮 する必要がある.この合併のときに,出血の原因は,多くの場合は静脈性血管腫ではなく,海綿状血管 腫であると

えられる.

静脈性血栓を起こすので,出血することがある.その際には出血性病変の性格を示す.腫瘤効果,周 囲の浮腫があり,典型的な例に比べ中心部が

一な様相を示す.しかし浮腫は 4∼6週間にて消失する.

腫瘤の信号強度が血腫,石灰化,ヘモジデリンでは合わないとき,中心部の信号強度が比較的 一な とき,あるいは浮腫が存在するときに海綿状血管腫よりは腫瘍を える必要がある.長い病歴や症状の 進展がないことは腫瘍を否定する根拠にはならない(症例 59参照). 撮像方法としてはグラディエントエコー法を加える必要がある.180度の正相化パルスを ために,グラディエントエコー法は磁場の不

用しない

一性に関してより鋭敏である.T 2 強調画像を得るた

めに小さなフリップ角,長いエコー時間を 用する. 海綿状血管腫の自然歴は発生部により異なる.Porter らの報告では放射線学的に確認された年間出血 率は 1.6%で,テント下病変はで 3.8%と高く,テント上病変では

かに 0.4%にすぎず,深部である

視床の病変であった.臨床的に重要な意味を持つ,出血によって神経脱落症状を来す頻度は,脳幹,小 脳核,視床と大脳基底核など深部の病変が 10.6%に対し,表面の病変は 0%であった.一方,脳幹部の 海綿状血管腫の年間出血率は 3%,特に出血の既往を持つ例は 30%と高率である(文献 4参照).

鑑別診断 1.悪性黒色腫:強い造影効果を認める.周囲のヘモジデリンの rim が不完全なリングである点が鑑別 になりうる. 2.通常の血腫:通常の脳内出血では消退し,最終的にはスリット状になるが,血管腫は丸く,マト リックスを有し,スリット状にはならない. 3.転移性腫瘍:出血を示し,T 2強調画像では低信号を示すような腫瘍が鑑別にあがる.強い造影効 果を認める. 4.良性の神経膠腫:石灰化を有する毛様細胞性星細胞腫などとが鑑別する.石灰化以外の部位に血腫 では説明できない信号強度を認めること,浮腫の存在など鑑別する(症例 59参照).


症例

-

Box

小さなフリップ角と長いエコー時間を

用したグラディエントエコー法による低信号

を示す状態 1.出血 ・デオキシヘモグロビン

3.空気を有する副鼻腔および骨内の pneumatization

・メトヘモグロビン

4.正常の脳内の鉄

・フェリチン/ヘモジデリン

5.腫瘍内のメラニン

・他の鉄の状態

6.常磁性造影剤(常磁性効果による緩和時間

2.石灰化

短縮を利用した通常の MR 造影剤)

・反磁性のカルシウム塩

7.強磁性装置,異物

・併存する常磁性イオン

8.血管内のデオキヘモグロビンを含んだ血 液

Box

脳内に T 強調像で多発性の低信号領域

1.海綿状血管腫

6.出血性の転移

2.亜急性から慢性の血腫

7.黒色腫(melanotic melanoma)の転移

3.アミロイド血管症

8.感染症(治療後の toxoplasmosis)

4.高血圧による微小点状出血

9.毛細血管拡張症

5.放射線治療に伴う出血(放射線治療後の海 綿状血管腫)

10.びまん性軸索損傷


症例

症例 A

-

歳,女子 巨大な海綿状血管腫, 歳時より四肢の脱力発作,最近全身 けいれん発作が頻発

図 1∼5:CT で右前頭葉から側頭葉にかけて萎縮があり,石灰化を含む高吸収域を前頭・側頭葉さら に,大脳基底核前部,透明中隔に認める.小さな高吸収域が右側脳室三角部に

って認められる(図 1

矢印).T 2強調画像では側頭葉尖端部白質を中心に高信号と低信号の混在した病変を認める(図 2).側 脳室下角は開大し mass effect はない.CT とほぼ同一面での T 2強調画像では高信号が主体であるが, 低信号も混在し拡張した血管様の構造を認める(図 3).透明中隔にも同様な病変がある.T 1強調画像 では病変の一部に高信号領域を認めるが,等信号を示す部位が多い(図 4).T 2 強調のグラディエント エコー法では病変部は強い低信号を示す(図 5).右側脳室に って病変が多数あることを示す.巨大な 海綿状血管腫に合致する所見である.血管造影では拡張した流出静脈があり,図 3で認められた血管様 構造に合致する.

CT

T 強調画像

T 強調画像

グラディエントエコー画像

T 強調画像


症例

-

症例 B

歳,女児 放射線治療後に発生した海綿状血管腫と えられる症例

3歳の時に髄芽腫がみつかり,手術後,全脳に 30Gyの放射線照射を受ける.7歳で左中心後回に新 たに発生した海綿状血管腫を認める(病理学的確認は得られていない).T 2強調画像では中心が小さな 高信号領域を示し(図 6),周囲は低信号であり,T 1強調画像では高信号を示し(図 7),グラディエン トエコー法(図 8)ではより大きな低信号領域を示す(ブルーミング). 10歳以下の小児で,脳に 30Gy以上の放射線照射を受けた例に発生する.Baumgartner らの 3例の 報告では,病変は照射後 7∼19年経過後発生し,1∼5年後に症状を呈する.病理所見は通常の海綿状 血管腫と変わりがない(文献 2).

症例 C

T 強調画像

T 強調画像

グラディエントエコー画像

歳,男性 海綿状血管腫と えられる症例,delayed scan の意味

約 14ヶ月前に橋内に出血を起こす.手術をし血腫のみ摘出.病理では出血源は不明であった.その 出血が円型の低信号領域として,T 1強調画像にて橋内左に認められる(図 9の矢印).その周囲には高 信号を示す不 一な病変があり,出血源の海綿状血管腫と えられる(図 9の矢頭).同部位は T 2強調 画像では低信号を示す(非掲載).通常の造影後には小さな造影効果が血腫の左,血管腫と えられる部 位に認められる(図 10の矢頭).さらに 1時間後の遅発相ではより広い範囲に造影効果を認める(図 11 の矢頭).造影剤投与 1時間後の MRI 撮像により,強い造影効果が本症では認められるので,他の腫 瘍との鑑別に有効である(文献 2参照). 出血を繰り返し,囊胞形成を示す例もある(文献 3).

T 強調画像

造影後の T 強調画像

さらに 時間後の T 強調画像


症例

症例 D(剖検例)

歳,男性

-

海綿状血管腫

11歳まで正常発達,12歳に水頭症を指摘され,以後失明,寝たきり状態.58歳の時に右大脳基底核 に脳出血がみられ,一過性の意識障害と左片麻痺が出現.63歳にて軟口蓋ミオクローヌスが出現, MRI で小脳虫部に石灰化と出血を伴う腫瘍が指摘され海綿状血管腫が疑われた.手術はされず 66歳に て中枢性呼吸不全のため死亡した. 剖検所見 小脳・橋部水平断,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,第四脳室から小脳虫部にかけて,内部に 出血と壊死を伴った腫瘍が,周囲を圧排するように進展していた(図 12).腫瘍の強拡大,ヘマトキシ リン・エオジン染色,多数の不規則な血管腔で構成され,一部の血管壁は硝子化していた(図 13).

小脳虫部の腫瘍(HE 染色)

腫瘍の強拡大(HE 染色)

●参 文献 1 Rivera PP, et al. Intracranial cavernous malformations. Neuroimaging Clin N Am. 13(1):27-40, 2003. Review. 2 Baumgartner JE,et al.Pathologically proven cavernous angiomas of the brain following radiation therapyfor pediatric brain tumors. Pediatr Neurosurg. 39(4):201-7, 2003. Review. 3 Musunuru K,et al.Widespread central nervous system cavernous malformations associated with cafe-au-lait skin lesions. Case report. J Neurosurg. 99(2):412-5, 2003. 4 Porter PJ. Cerebral cavernous malformations:natural history and prognosis after clinical deterioration with or without hemorrhage. J Neurosurg. 87(2):190-7, 1997. 5 Thiex R, et al. Giant cavernoma of the brain stem:value of delayed MR imaging after contrast injection. Eur Radiol. Suppl 4:L219 -25, 2003. 6 Steiger HJ, et al. Clinicopathological relations of cerebral cavernous angiomas:observations in eleven cases. Neurosurgery. 21(6):879 -84, 1987.


症例 歳,女性 言われた

歳頃より始まる難治性てんかんがあり,他院での MRIで脳腫瘍と

2歳にて点頭てんかん,10歳にて脱力発作,強直発作,複雑部

T 強調冠状断像

T 強調矢状断像

発作.25歳頃より転倒発作が主体.

同 T 強調画像

T 強調画像


症例

限局性皮質異形成(FCD) 解説 画像所見:左前頭葉底部に接し異常な脳回を認める.白質髄枝の入り込みがなく,正常な脳溝を認め ない.その脳回の信号強度は正常な皮質と T 2強調画像と T 1強調画像と同じである.T 1強調画像で は正常な皮質よりも厚い皮質があるようにみえる.しかし肉眼的に大きな形成障害があるようではな い.矢状断像では前頭葉底部,側頭葉尖端部から大脳基底核にかけて,ほほ正常皮質と同程度の信号強 度を示す病変が広がっている.その中に点状の高信号領域を前頭葉底部に認める(図 3の矢印).冠状断 像で島回に病変があり,島回の白質が同定できず,外包も認められない.しかし,その信号強度は 一 で正常皮質と同程度である.被 の外側にも病変が及んでいる可能性はある.シルヴィウス裂と側脳室 に対する mass effect はない.以上の所見は FCD(focal cortical dysplasia)と

えられる.本例は FCD

の中でも,病理所見にて balloon cell を比較的多く含む例であった.

臨床と病理 FCD は奇形性の病変で出生比較的早期より難治性てんかんを来し,てんかん外科の対象となること が多い疾患である. 皮質異形成(cortical dysplasia)とは主として大脳皮質を侵し,まとまりのない脳の細胞構築あるいは 細胞配列を来す状態である.皮質の正常な層構造は消失し,神経細胞は異常な部位にあり,近接する大 脳白質にも異常を認める.その中で FCD は大きく奇怪な神経細胞を伴う皮質異形成を指す.その他に グリア細胞由来と

えられる異型細胞が大脳皮質と近接する白質に出現する.

限局性皮質異形成(FCD)は単に,局所的な皮質形成障害を意味するものでは決してなく,独立した 疾患概念である.ときに脳回が広く,皮質白質境界が不鮮明であるが,大きな脳回の異常はなく限局し た単一の病変である. 奇怪な異型細胞のうち balloon cell は星細胞由来と

えられるが,神経細胞とグリア細胞の両方の

マーカーに染まり,両者の性質を有する.皮質下白質にも異型細胞が出現するが,そのような部位では 一般に髄鞘に乏しく,皮質白質境界が不明瞭になることが多い.

画像所見 T 2強調像での皮質白質境界の消失と,大脳白質内の異常高信号領域の存在が最も特徴的な画像所見 である(文献 1).T 1強調像では,ときに脳回が局所的に広く,皮質が厚く,脳溝が浅く少なく,異常 な方向の脳溝や,くも膜下腔および脳室の局所的拡大を示す.しかし,T 2強調像に比べ症状が軽いこ とが多い.近年では fast STIR 法が皮質白質境界の描出には優れており,採用している.その他に,結 節性

化症の皮質結節の際に認められる“white matter band”が本症でも認められるとの報告がある

(文献 2).石灰化および mass effect を認めない. 従来,皮質形成障害の多くが,T 1強調像で明瞭に認められたのに対し,FCD では解像力のよい T 2 強調像が必須である.この点に,ほかの皮質形成障害とは異なる点がある. T 2強調像で, 側では白質髄枝が認められ,皮質白質境界が鮮明に認められるのに対し,患側では 白質髄枝が認められず,皮質白質境界が不鮮明になっている部位がある.それが FCD の MRI での唯 一の異常所見であることがある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.良性腫瘍(神経節膠腫):本例もてんかん病理に慣れていない病理医は神経節膠腫と診断した.しか し,その後,てんかん病理に詳しい病理医によって FCD と訂正された症例.両者はよく似た所見 を病理にて呈する. 画像所見では神経節膠腫に比べ FCD は mass effect がない.神経節膠腫も mass effect が小さな腫 瘍ではあるが,囊胞および石灰化を高頻度に伴う.T 1強調画像および T 2強調画像にて,FCD で は正常皮質と比べ信号強度の異常が少ない.それに比べ神経節膠腫で T 2強調画像にて明らかな高 信号領域を示す.神経節膠腫で造影効果を認めることがある. 2.孤発性皮質結節(結節性

化症不全型):明らかな mass effect の存在と石灰化が FCD とは異なる.

皮質結節に接する脳回の皮質白質境界が不鮮明となる. 3.側頭葉てんかんによる側頭葉尖端部白質病変:側頭葉てんかんにおいて,側頭葉尖端部に皮質・白 質境界が不鮮明になることが多い(文献 3,4).FCD と異なり,皮質自体に異常を認めない.皮質 の厚さが増加するような変化はない.この病変は海馬 化症を伴う例に多い.FCD を病理所見では 認めない.現在まで画像所見を説明しうる明らかな病理所見はみつかっていない.病理では描出し にくい白質の低形成を示すとする報告がある.

症例 A

歳,女性 FCD(限局性皮質異形成)

図 1∼3:右中心前回と中心後回に,異常な大脳皮質を認める.mass effect はなく,腫瘍ではなく, 大きな粗大な形成異常はなく,FCD である.その信号強度は T 1強調画像(図 1の矢印)で大脳皮質と 等信号ないしは白質に近い信号強度を示し,T 2強調画像(図 2の矢印)では正常皮質と等信号あるいは やや高信号である.FLAIR では皮質に比べ高信号領域を示す(図 3の矢印).異所性灰白質とは T 2強 調画像および FLAIR 画像での信号強度が異なる.T 1強調画像の皮質と同程度の信号強度が腫瘍では 合いにくい.

T 強調画像

T 強調画像

FLAIR 画像


症例

-

症例 B(手術例)

歳,男性 FCD(限局性皮質異形成)

生後 1ヶ月で頭部を回旋するてんかん発作が出現,以後重積状態を繰り返す.発達は高度に遅 ,頭 部 MRI 検査で右側頭葉,後頭葉外側,頭頂葉に皮髄境界の不鮮明を認め,FCD と診断される.右大 脳半球(辺縁系を除く)の機能的切除を受ける. 外科切除標本(右外側後頭側頭回皮質) クリューバー・バレラ(KB)染色,病変部では大脳皮質と白質の境界が不明瞭であった(図 4の矢印). クリューバー・バレラ染色の強拡大では,大脳皮質の神経細胞の配列が乱れ,大型の神経細胞も認めら れた(図 5).同部位の GFAP 染色では胞体が褐色に染まるアストロサイトが増加していた(図 6).

大脳切除標本(KB 染色)

大脳皮質の強拡大(KB 染色)

大脳皮質の強拡大(GFAP 染色)

●参 文献 1 Yagishita A, et al. Focal cortical dysplasia:appearance on MR images. Radiology. 203(2):553-9, 1997. 2 Colombo N,et al.Focal cortical dysplasias:MR imaging,histopathologic,and clinical correlations in surgicallytreated patients with epilepsy. AJNR Am J Neuroradiol. 24(4):724-33, 2003. 3 Mitchell LA,et al.Anterior temporal changes on MR images ofchildren with hippocampal sclerosis:an effect ofseizures on the immature brain? AJNR Am J Neuroradiol. 24(8):1670-7, 2003. 4 Adachi Y,et al.White matter abnormalities in the anterior temporal lobe suggest thesideoftheseizurefoci in temporal lobe epilepsy. Neuroradiology. 48(7):460-4, 2006.


症例 歳,男性

歳時の歩行開始直後より,歩行のふらつきを認め,転びやすい

その後,体幹歩行失調が進行し,眼球運動障害,上肢の不随意運動が出現し,23歳にて車椅子生活. なお天幕上には異常を認めない.

歳時の CT

同 T 強調画像

歳時の T 強調矢状断像


症例

眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型脊髄小脳失調症 解説 画像所見:8歳時の CT では小脳虫部と半球の萎縮があり,第四脳室の拡大を認める.脳幹は保たれ ている.23歳時の矢状断像では小脳虫部の萎縮があり,上部と下部ともに萎縮を認め,脳幹は保たれ ている.萎縮は機種が異なるが,進行しているようである.T 2強調画像で小脳および橋内に信号強度 異常を認めず,橋横走線維に著しい変化を認めない.低アルブミン血症および高コレステロール血症を 認めるので,眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型脊髄小脳失調症(EAOH/アプラタキシン 欠損症)であり,原因遺伝子はアプラタキシンである.

臨床 原因遺伝子アプラタキシンによる眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う,常染色体劣性遺伝性の脊 髄小脳失調症である.発症年齢が 1歳から小学生低学年までである. 初発症状は主に易転倒性,処女歩行遅 などの歩行障害が多い.歩行障害と構音障害が主要な症状で ある.10歳代後半から 20歳代前半まで遅くとも 30歳までにはおおむね車椅子の生活となる. 眼球運動異常は眼球運動失行と注視方向性眼振である. 末梢神経障害があり,10歳代からみられ,20歳代には深部腱反射の消失,末梢の筋力低下,筋萎縮 を来す. 低アルブミン血症があり,20歳代後半から 30歳代以降,すべての症例に認められる.高脂血症があ り, コレステロールが 280∼300mg/dl になる.不随意運動を合併することがある.

画像所見 著明な小脳萎縮が早期よりあり,虫部,半球ともに強い.信号強度異常はない.脊髄,脳幹部の萎縮 を認める報告もあるが,小脳萎縮が主体である.

鑑別診断 1.ビタミン E 欠乏性の運動失調症(Vitamin E deficient ataxia):劣性遺伝であり,臨床症状は運動失 調,構音障害,腱反射の消失などであり,6∼18歳に発症する. 2.毛細血管拡張性運動失調症:小脳変性,毛細血管拡張,免疫不全,著明な加齢変化,癌にかかりや すい.発症は歩行開始時期で 1∼2歳. 3.Hypomyelination with atrophyof the basal ganglia and cerebellum(H-ABC):患児は 2ヶ月から 3歳.初期の発育不全.錐体外路症状,運動失調,痙性を認める.髄鞘化が内包後脚の一部までに とどまり,基底核と小脳の萎縮がある. 4.マリネスコ・シェーグレン症候群:小脳は低形成.白内障,精神発達遅

,性腺機能低下症.萎縮

の進行はない. 5.SCA 7:網膜変性を認める. 6.SCA 14および 17:知能低下を伴う. 7.ミトコンドリア脳筋症(NARP:neurogenic muscle weakness,ataxia,retinitis pigmentosa,mitochondria DNA 8993T → G 変異):発症時期は思春期 8.メバロン酸尿症:軽症例 9.コエンザイム Q 10不足症:けいれん,運動発達遅 ,精神退行を認めることがある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

●参 文献 1 Date H,et al.Early-onset ataxia with ocular motor apraxia and hypoalbuminemia is caused bymutations in a new HIT superfamily gene. Nat Genet. 29(2):184-8, 2001. 2 横関明男,他:常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症.眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型脊髄小脳失調症 の臨床,神経内科 57(2):108-12,2002. 3 巻淵隆夫,他:常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症.眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型脊髄小脳失調症 の病理,神経内科 57(2):119-24,2002.


症例 歳,男子 年前よりてんかん発作がみられ,抗けいれん剤によるコントロール は不良であった 今回,全身けいれん起こし入院.以前は複雑部 発作が主体であったが,当院搬入後は全身性強直性 けいれんが続き麻酔管理となる.

CT 画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像 (横断像)

CT 画像

T 強調画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像 (矢状断像)

(札幌麻生脳神経外科病院脳神経外科,村田純一先生と北海道大学病院放射線部,吉田大介先生との厚 意による)


症例

髄膜血管腫症(Meningioangiomatosis) 解説 画像所見:左前頭葉内側面の皮質から皮質下白質の単発病変があり,CT では点状および線状の高吸 収域があり(図 1,2の矢頭),石灰化の疑いがある.内側面の皮質は厚く吸収値がやや高い(図 1,2の 矢印).やや厚い内側面の皮質は T 2強調画像と FLAIR 画像では淡い低信号を示す(図 4,5の矢頭). 皮質から皮質下白質には囊胞を認める(図 4,5の矢印).内側部には T 2強調画像および FLAIR 画像 にて高信号を示す部位がある.造影後には軸位断像ではごく淡い増強しか示さないが(図 6),矢状断像 では明瞭な複数の結節状の増強が皮質に一致してみられる(図 7の矢印).血管造影にて異常を認めず, 手術と組織診で髄膜血管腫症が確認された. 手術所見:白色の極めて い皮質病変で,exophytic growth を認め, 膜に癒着していた.白質との 境界面も含め,出血傾向はほとんどみられなかった.肉眼上は glioma(ganglioglioma)の印象. 病理所見:髄膜血管腫症,皮質への髄膜皮細胞や微小血管の浸潤を主徴とする良性病変であり,大脳 皮質の局所的な肥厚と腫瘍性変化を伴わない,しかし多数の微細な異常血管および髄膜皮細胞による浸 潤.皮質の石灰化∼骨化,皮質下白質のグリオーシスを伴う.

臨床 稀な過誤腫様の皮質から髄膜にかけて奇形がみられる.軟膜および髄膜血管の増殖を認める.石灰化 を示す皮質の腫瘤をみたときには 慮する.若年時にてんかんで発見されることが多く,神経線維腫症 (NF)を合併するケースの存在が知られている.8割が 25±4歳にてけいれんを契機に発見される. 男:女=3:1.治療抵抗性のけいれん(NF を伴わない例の 80%)が多い.とくに側頭葉∼弁蓋部病変の 場合は必発.単純部 発作(65%)が多く全般化することは稀.その他には頭痛(10∼20%)がある.部位 により麻痺等の巣症状,神経痛,SAH,乳頭浮腫なども認められる. 部位としては皮質病変を主座とするものがほとんど(90%)であり,前 頭 側 頭 葉(70%)>側 頭 葉 (40%)>頭頂葉≒後頭葉である.皮質外病変は稀で,第三脳室,視床枕-大脳脚,脳梁,

髄など.単

発病変が多発病変より多い. 神経線維腫症との関連:元々は NF 1関連病変して報告されたが,最近では NF 2に関連した病変と えられている.しかし画像診断の発達にともない孤発例の報告が増加した.かつては半数が NF 関連 とされたが,最近の文献では 7割以上が NF とは無関係とされている.NF 2に関連した本症では,け いれん発作を伴わず偶然にみつかることが多い.多巣性の病変が多いと報告されている.

画像診断 CT では皮質を中心とした単発あるいは多発の腫瘤で石灰化を伴う.石灰化は結節状,線状あるいは 脳回様と多様である.吸収値は様々で,大きさは 1∼3cm である.mass effect はないが軽度.出血ある いは皮質から,ややくも膜下腔寄りにみられる囊胞を認めることがある. 一な造影効果を認めること がある. MRI では皮質の軽度肥厚があり,石灰化の程度に伴い様々な信号変化を認める.皮質+髄膜の増強 効果があり,点状・小結節状の複数の増強像が多い.しばしば delayed enhancement を認める.皮質下 白質の T 2 長や囊胞の形成を認める.血管造影では 70%で無所見,25%で hypovascular area として 描出される. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断(皮質を中心とする石灰化と囊胞を有する病変) 1.神経節膠腫:明らかな腫瘤性病変(石灰化以外は T 2強調画像では高信号),明確な造影効果 2.乏突起膠腫:より浸潤性,白質の浮腫 3.囊虫症:多発性が多い.囊胞内の頭節の存在 4.髄膜腫:脳実質外の病変の造影効果 5.皮質結節:囊胞は伴わない.周囲の皮質白質境界の不鮮明 ●参 文献 1 吉田大介,他:神経放射線ワークショップ 2004.症例集 29.(本例の報告例) 2 Wiebe S,et al.Meningioangiomatosis.A comprehensive analysis of clinical and laboratoryfeatures.Brain.122(4):709 26, 1999.(多数の症例についての報告,参 になる) 3 Park MS, et al.Multifocal meningioangiomatosis:a report of two cases.AJNR Am J Neuroradiol.20(4):677-80,1999.


症例 歳,女性 約半月ほど前から始まる左眼窩先端部症候群 5月 1日より物が二重にみえる.左眼瞼の下垂.7日より左眼窩部痛,左視力の低下,左全方向性眼 球運動障害,眼瞼下垂を認め,肉芽腫性疾患を疑われステロイドパルス療法を受けた.既往には関節リ ウマチがあるが,ステロイドの内服はない.赤沈は高度亢進,CRP 0.3,白血球 7,200,髄液は正常で ある. (6月 6日の T 1強調画像で海綿静脈洞内の低信号領域は何を示すか? T 2強調画像でも同様に低信号 領域を示す.その病因は何か?)

日の CT

造影後の T 強調画像

日の T 強調画像

造影後の T 強調画像

同 FLAIR 画像

月 日の T 強調画像


症例

アスペルギルス症とそれによる真菌性動脈瘤 解説 画像所見:CT で左眼窩先端部から海綿静脈洞前部にかけて病変 を認める(図 1∼5).骨破壊,石灰化は認められない.T 1強調画像 では白質に近い信号強度を示し(図 2),FLAIR 画像では病変が蝶 形骨洞にもあることを示している(図 3).T 2強調画像で病変は高 信号から等信号で,病変の輪郭がわかりにくい(非掲載).信号強度 は非特異的である.造影後の T 1強調画像では病変には造影効果が あり,左視神経に

って造影効果を認める(図 4の矢印).左眼窩先

端部から海綿静脈洞の前部にかけ造影効果のある病巣が広がってい る.蝶形骨洞の一部にも病変が びている(図 5). 眼窩先端部の病変としては,炎症,腫瘍,外傷がある.その中で 視神経に った造影効果,骨破壊がなく,腫瘤様ではない等の画像

CT 画像

所見と短い経過,血沈の高値より感染症を疑い,抗生物質の投与を 行った. 5月 25日に左蝶形骨洞から経鼻的生検を行い,真菌は証明でき なかったが血清中の β-D-グルカンが上昇し真菌感染が疑われた. さらに 6月 6日の MRI(図 6)で,左海綿静脈洞内に動脈瘤が出 現し,真菌性動脈瘤の形成を認めた.6月 12日より意識障害を認 め,CT(図 7)にて左内頸動脈領域に広範な梗塞を認めた.

剖検所見(CD-ROM 参照) 左海綿静脈洞内と蝶形骨洞内にアスペルギルスの菌糸が確認された.海綿静脈洞内の内頸動脈には真 菌性動脈瘤が認められた.血栓形成や動脈解離はなかったが,脳内には左内頸動脈領域に広範な梗塞が 起こっていた.本例の動脈瘤はアスペルギルスが外膜より浸潤し,動脈瘤を形成したと えられた.脳 虚血の原因となる血栓や解離はなく,その原因は不明である.

臨床 眼窩先端部症候群は視神経管と上眼窩裂を通る神経が障害される.炎症,腫瘍,外傷があるが,外傷 は病歴から除外できる.炎症には,神経サルコイドーシス,細菌感染,肥厚性 膜炎,リウマチ性多発 性関節炎,結核,梅毒,真菌がある.腫瘍では副鼻腔原発の扁平上皮癌,腺様囊胞癌,粘液囊腫,ある いは蝶形骨の髄膜腫,転移,悪性リンパ腫が えられる.上記のように,腫瘍よりは炎症を疑う所見で あった.さらに細菌性動脈瘤の出現から細菌感染もしくは真菌感染を疑ったが,その両者共に短期間に 動脈瘤の形成があり得るので鑑別は難しい. 頭蓋内真菌症は髄液検査が正常なことが多く,診断が非常に難しい.アスペルギルスがいったん頭蓋 内に浸潤すると予後は非常に悪く,致死率が 80%と報告された.免疫不全患者にも,そうでない患者 にも報告がある.

画像診断 上記. (CD-ROM 参照)


症例

症例 Box

-

資料

T 強調画像で低信号領域を示す球後の腫瘤

1.炎症性偽腫瘍

5.真菌症(膿瘍あるいは蜂窩織炎)

2.悪性リンパ腫

6.球後の血腫(急性期)

3.神経サルコイドーシス

7.髄膜腫

4.転移巣(小細胞癌あるいは粘液産生腫瘍)

症例 A(剖検例) アスペルギルス症(本文と同一症例) 剖検所見 海綿静脈洞前額断,左の海綿静脈洞(黄矢頭)は大きな動脈瘤に占拠されている(図 1,黄★印は下垂 体).左側海綿静脈洞,ボディアン(BD)染色,写真左に内頸動脈瘤が,また右下には炎症性組織に覆わ れた脳神経が認められた(図 2,矢頭).ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の強拡大,三叉神経の周 囲に炎症細胞の浸潤がみられた(図 3).左側海綿静脈洞,グルコット(GC)染色,黒色に染まるアスペ ルギルスの棍棒状の菌糸が同定された(図 4).内頸動脈,頸動脈管(下端)∼側頭骨岩様部∼海綿静脈洞 部∼ 膜穿刺部(上端),左側(写真左)の海綿静脈洞部に動脈瘤を認めた(図 5).エラスチカ・ワンギー ソン(EV)染色(左側)で弾性板がみられる動脈壁において,ヘマトキシリン・エオジン染色(右側)で好 塩基性に染まる棍棒状のアスペルギルスの菌糸が認められた(図 6の矢印).

▼ ▶

◀ ▶

▶ ▶

海綿静脈洞前額断

三叉神経(HE 染色)

海綿静脈洞前額断(BD 染色)

膜(GC 染色)


症例

-

内頸動脈

内頸動脈(左 EV・右 HE 染色)

●参 文献 1 Hurst RW, et al. Mycotic aneurysm and cerebral infarction resulting from fungal sinusitis: imaging and pathologic correlation. AJNR Am J Neuroradiol. 22(5):858-63, 2001. 2 Chandra S, et al. Invasive aspergillosis presenting as a cavernous sinus mass in immuno competent individuals;report of 3 cases. Neuroradiology. 42(2):108-11, 2000. 3 植木美乃,他:眼窩先端部症候群にて発症し,内頸動脈海綿静脈洞部の真菌性動脈瘤と脳梗塞を合併した中枢神経系 アスペルギルス症の 1例.臨床神経 42:761-5,2002.(本例の症例報告,臨床所見その他がよくまとまっている)


症例 歳,女性 正常

歳時に左片麻痺,

歳代より複雑部 発作

,3歳時に発熱,けいれん重積となり 4日間の意識障害,その後左不完全麻痺を残す.3ヶ

月後より左片側けいれんを繰り返す.20歳代になり複雑部 発作が目立つようになる.42歳にて MRI 施行.

T 強調画像

T 強調画像


症例

右片側萎縮と右海馬 化症 解説 画像所見:T 2強調画像で右半球に片側萎縮がある.前頭・側頭葉の白質の減少が目立つ.右側頭葉 の皮質白質境界は左に比べ不鮮明.右海馬が小さく左に比べて高信号を示す.右海馬 化症の所見であ る.右乳頭体に萎縮を認める.右視床全体の萎縮に加え,右視床前核に高信号領域を認める.患側乳頭 体および視床前核の高信号領域は海馬 化症による二次変性を示す.他の疾患と間違えないようにする ことが重要である.手術を施行し病理にて海馬 化症を確認してある.

画像診断 片側萎縮のある患者にてんかん発作があるときは,海馬 化症の合併に常に注意する必要がある.文 献 1によれば,23例の片側萎縮のある患者では,11例に海馬

化症を認めた.その内,9例は小児期

に熱性けいれんの既往がある.その 11例全例に,中大脳動脈領域に脳実質内の局所的異常所見がある. 海馬 化症のない 12例中,熱性けいれんの既往のあるのは 1例のみである.結論として,片側萎縮に は 2つのパターンがあり,海馬 化症を伴う例はけいれん後の多発性の神経細胞消失による片側萎縮で あり,海馬 化症を伴わない例は血管障害による限局的な大脳半球の異常である. ●参 文献 1 Dix JE,Cail WS.Cerebral hemiatrophy:classification on the basis of MR imaging findings of mesial temporal sclerosis and childhood febrile seizures. Radiology. 203(1):269 -74, 1997.


症例

症例 症例 A(剖検例)

-

資料

歳,男性 半側萎縮と海馬 化症,疫痢後遺症

5歳で疫痢に罹患,意識障害が続き知的障害と痙直性麻痺となる.50歳頃からてんかん発作が頻発す るようになり肺炎に反復罹患,呼吸不全で死亡. 剖検所見 大脳赤核部全球切片,クリューバー・バレラ(KB)染色,側頭葉優位に左大脳半球が萎縮し,海馬(矢 印)は萎縮に加え立位を示していた(図 1).左海馬,ホルツアー(HZ)染色,神経細胞は脱落しグリオー シスを認めた(図 2の矢頭).

▶ ▶

▶ ◀ ▶

大脳冠状断(KB 染色)

左海馬(HZ 染色)


症例 歳,男性 CT で異常所見 膀胱癌,前立腺癌の既往のある患者さんが,うつ状態となり,神経内科受診.CT(図 1,2)にて異常 を指摘され入院.神経学的異常所見を認めない.CT の 9日後に MRI(図 3,4)を撮像.

造影前の CT

造影後の CT

(三輪書店 脳神経外科の常識非常識 より許可 を得て転載)

T 強調画像

グラディエントエコー法


症例

慢性脳内血腫:吸収過程にある血腫( 週間前後) 解説 画像所見:右側頭葉に低吸収域を認め,その周囲にリング状の造影効果を認める.周囲に浮腫はある が,側脳室への mass effect が弱く,偏位がほとんどない.T 1強調画像で病変は高信号領域を示し,血 腫に矛盾しない.その他の病変(例えば転移など)を示す信号強度変化はない.グラディエントエコー法 では周囲はヘモジデリン沈着を示す低信号領域があり,中心はメトヘモグロビンによる高信号領域を示 す.リングはほぼ完全で,血腫以外の信号強度変化を認めない.以上より皮質下出血の吸収過程にある と えた.経過観察をしたが,その後消失して吸収過程の血腫と診断した.出血の原因はおそらく高血 圧性と

える.

臨床 脳内出血の中に進行性に徐々に神経症状が進行することがあり,慢性脳内血腫とよんでいる.血腫被 膜内に多数の壁の薄い異常血管が新生し,その新生血管の破綻により,繰り返し出血が起こると えら れている.発症から診断までの期間は 2週∼5ヶ月程度である.頭痛,局所神経症状,けいれん,うっ 血乳頭などを認め,血腫の部位は大脳皮質下が多い.本例のように保存的治療による血腫の消退も報告 されている.血腫除去,被膜切除の手術的治療が原則とする意見もある. 血腫の原因には不明なことが多い.その他には海綿状血管腫などの血管奇形や脳腫瘍が報告がある. 左被

出血による右上下肢麻痺で発症し,約 2週間の経過で著明な脳浮腫を伴った慢性脳内血腫の 1

例(60歳男性)報告がある.組織学的所見からリンパ球,ヘモシデリンを貪食したマクロファージが認 められ,発症の機転に何らかの炎症が関与すると

えられる.ステロイドの投与が著明に奏効した(文

献 4).

画像所見 被膜化された血腫ではリング状の造影効果を示す.血腫が液化したときには造影されない.周囲に浮 腫を認めることが多い.血腫自体の吸収値および信号強度は様々である.ときに多房性を示す.

Box

リング状の造影効果を示す疾患

1.真菌および寄生虫感染症

5.転移性腫瘍

2.肉芽腫

6.多発性

3.脳梗塞

7.原発性腫瘍

11.血栓を伴う動脈瘤

4.悪性リンパ腫

8.脳膿瘍

12.結核腫

化症

9.放射線壊死 10.亜急性期の血腫

●参 文献 1 Del Bigio MR, et al.Experimental intracerebral hemorrhage in rats.Magnetic resonance imaging and histopathological correlates. Stroke. 27(12):2312-9;discussion 2319 -20, 1996. 2 Senaati S, et al. Resolving cerebral hematoma mimicking cerebral abscess. AJR Am J Roentgenol. 159(4):903, 1992. 3 本圭吾,他:神経症候群.その他の神経疾患を含めて(I) I.血管障害 その他 Chronic intracerebral hematoma, 日本臨床別冊 神経症候群 1,383-6,1999. 4 南都昌孝,他:ステロイドが著効したと えられる chronic intracerebral hematoma の 1例.Neurol Surg J.31(1): 49-54,2000.


症例

症例

-

資料

歳,男性 転移性脳腫瘍,

日頃より呂律が回らない

22日夕食後,食べこぼしがひどい.救急車にて来院し,CT(図 1)で脳出血を認めた.液面形成を認 める.1月 8日に MRI を撮像した. 左中心後回に亜急性期の出血を皮質下に認める.T 2強調画像および T 1強調画像で出血と浮腫の所 見に一致し(図 2,3),グラディエントエコー法にて中心には高信号領域,周辺にはヘモジデリン沈着 を示す低信号があり,血腫として矛盾しない(図 4).大脳基底核に多数の微小出血を示す所見がある (図 5).転移巣を疑わせる所見がなく,浮腫も亜急性期の出血に矛盾しない.高血圧症もあるので,そ れによる脳出血と えた. しかし,1月 24日頃より構音障害,歩行障害が増悪したために再入院.2月 6日の MRI にて腫瘤の 増大,血腫の外側に別の造影される腫瘤がみつかり(図 6∼9の矢印),転移性腫瘍と診断した.手術に より転移性未 化癌が確認されたが原発巣は不明である. 後から

えれば,高血圧性脳内出血としては非定型的な部位であり,造影後の MRI が必要であっ

た.但し吸収過程にある血腫でもリング状の造影効果を認め,1月 8日時点の MRI にて血腫以外の腫 瘤がみつかるかは不明である.慎重な経過観察が必要であった.多数の微小出血を伴うことより,この 腫瘤を高血圧性と えるのは誤りである.微小出血は随伴所見に過ぎないことがある.

日の CT 画像

日の T 強調画像

T 強調画像


症例

-

強調画像

T

日の T 強調画像

T

強調画像

T

強調画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例 歳,女子 学 7月 24日,学

からの帰宅途中に意識低下

からの帰宅途中に意識低下を認め,他院に入院.右不全麻痺,両腱反射の亢進を認

めた.7月 29日の MRI および MRA.

FLAIR 画像

拡散強調画像

FLAIR 画像


症例

抗リン脂質抗体症候群:カルジオリピン抗体,ループス抗凝固 因子ともに陽性による脳血栓症 解説 画像所見:FLAIR 画像で,左視床,大脳脚から 赤核にかけて梗塞を認める.左後頭葉には脳溝内に 線状と点状の高信号領域があり(図 1,2の矢印), 後大脳動脈流域に slow flowがあることを示す.拡 散強調画像では視床の梗塞のみが高信号を示し(図 3),新鮮な梗塞であることがわかる.他の梗塞はよ り古く再発性である.MRA(図 4)では左後大脳動 脈を同定できない.血栓あるいは塞栓による閉塞な いしは狭窄と えられる.本症では全身性エリテマ トーデス(SLE)を伴い,しかも抗リン脂質抗体陽性

であった.小児の梗塞の原因は多数あるが,血栓症

MRA

では以下を 慮する(Box 44参照).

臨床 原因の不明な若年から中年の虚血性脳疾患, 膜静脈洞,脳静脈の閉塞,全身性の再発性の血栓症を みたときには抗リン脂質抗体陽性による脳血栓症を

慮する.特に繰り返す流産を伴う女性に多い.血

小板減少症を伴う. 抗リン脂質抗体陽性率の高い疾患は SLE,Sneddon 症候群などの結合織疾患である.

画像診断 抗リン脂質抗体症候群では動脈も静脈にも血栓症が起こるが,動脈がより多い.若年で再発性のとき には本症を

慮する.横断性脊髄炎や再発した脊髄梗塞の報告もある(文献 6).SLE の有無と SLE の

活動性による画像所見の差異はない.

Box

小児の血栓症

1.血管性疾患(もやもや病,神経線維腫症, 鎌状赤血球) 2.感染(特に,インフルエンザ菌)

3.凝固障害(抗リン脂質抗体症候群など) 4.母親の薬物乱用(特に,コカイン) 5.片頭痛


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,女性 SLE

小脳歯状核,大脳基底核,視床,大脳深部白質(境界領域)に多数の石灰化を認める(図 1∼3).T 1強 調画像と T 2強調画像でこれらの石灰化は高信号領域または等信号領域と認められる(図は省略).

CT 画像

CT 画像

CT 画像

(都立多摩老人医療センター核医学放射線科,中田桂先生の厚意による) 27例の SLE 患者の CT で 8人(30%)の患者に石灰化を認めた.3人は石灰化のみ,同じく 3人が大 脳萎縮と石灰化,大脳萎縮,石灰化,脳梗塞を 2人に認めている.石灰化は淡蒼球に最も多く,次に被 ,さらに尾状核頭部,視床へと続く.石灰化の存在と,臨床経過,年齢には関係がない.石灰化の原 因は不明であると報告がある(文献 1).別な報告によると静脈周囲に壊死性病変があり,軸索および髄 鞘の消失と dystrophic calcifications を伴っていると述べている(文献 2). おそらく SLE では脳内石灰化は珍しい現象ではなく,年齢,症状ともに無関係と 強調画像で大脳基底核や小脳歯状核に高信号領域があるときには石灰化も 撮ることも必要なときがある.

えられる.T 1

慮する必要があり,CT を


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,女性 SLE-舞踏病

42歳から SLE の診断で副腎皮質ステロイド剤の内服を続けていた.47歳,視力低下に腎不全,胸膜 炎が出現,人工透析が開始された.同じ頃,上下肢に舞踏病が出現した.窒息で死亡. 剖検所見 線条体頭部,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,中前頭回皮質(矢頭)と尾状核腹側(矢印)に陳旧 性の軟化巣を認めた(図 4).上前頭回皮質,ヘマトキシリン・エオジン染色,軟膜直下の軟化巣を認め た(図 5).中前頭回皮質,ヘマトキシリン・エオジン染色の強拡大,軟膜下動脈の内腔は硝子様物質が 充満していた(図 6の矢印).

左大脳冠状断(HE 染色)

上前頭回皮質(HE 染色)

中前頭回皮質(HE 染色)


症例

-

●参 文献 1 Provenzale JM, et al. Antiphospholipid antibodies in patients without systemic lupus erythematosus:neuroradiologic findings. Radiology. 192(2):531-7, 1994. 2 Provenzale JM, et al. Dural sinus thrombosis and venous infarction associated with antiphospholipid antibodies:MR findings. J Comput Assist Tomogr. 18(5):719 -23, 1994. 3 Raymond AA, et al. Brain calcification in patients with cerebral lupus. Lupus. 5(2):123-8, 1996. 4 Matsumoto R, et al. Cerebral perivenous calcification in neuropsychiatric lupus erythematosus:a case report. Neuroradiology. 40(9):583-6, 1998. 5 Yamamoto K, et al. Systemic lupus erythematosus associated with marked intracranial calcification. AJNR Am J Neuroradiol. 13(5):1340-2, 1992. 6 高 瀬 敬 一 郎,他:再 発 性 前 脊 髄 動 脈 症 候 群 を 呈 し た 原 発 性 抗 リ ン 脂 質 抗 体 症 候 群 の 1成 人 例.臨 床 神 経 学. 41(2∼3):136-9,2001.


症例 歳,女性 約 週間の経過で,それまで日常生活に支障のない“普通の”人が無 言症,無反応になった 臨床経過からは撮像前はクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)が疑われた.

FLAIR 画像

FLAIR 画像

(東京大学医学部附属病院放射線科,森墾先生の厚意による)

FLAIR 画像


症例

一酸化炭素中毒 解説 画像所見:FLAIR 画像で側脳室周囲,大脳深部白質にほぼ対称性に高信号領域が広がっている.前 頭頭頂部の半卵円中心に異常所見を認める.島回の一部にもおよぶが皮質下白質は保たれている.後頭 葉優位ではない.3週間の経過でそれまで普通であった人が,無言状態にまで進んだ認知症を示す.ク ロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)を疑わせる経過であった.白質主体の変化であり,CJD を MRI では 否定できる.その臨床経過を踏まえて白質脳症の原因を えれば,中毒が最も えやすい.しかも若者 ではなく高齢者である.一酸化炭素中毒を 慮すべき状態である.3週間前の練炭中毒による(遅発性) 白質脳症であった.淡蒼球には異常を認めず,この画像のみでは一酸化炭素中毒とは言えないが,臨床 経過,年齢を 慮すれば当然 えるべき疾患である.

臨床と病理 一酸化炭素ガス吸引による急性中毒に,嘔吐,頭痛,昏迷,意識消失,昏睡が認められる.さらに急 性期に意識障害が改善されるにつれて,精神神経症状が出現する非間欠型と意識清明期を経て,その 2∼3週間後に急性に神経症状の悪化と昏睡を呈する遅発性の変化(間欠型)がみられる.間欠型は高齢 者に多く,約 10%程度と言われている.確定診断は一酸化炭素ヘモグロビンを血中内に認めることに ある. 病理所見では脱髄,浮腫,出血性壊死を認める.壊死は淡蒼球,他の大脳基底核,海馬,大脳皮質と 小脳に認める.大脳白質は壊死あるいは脱髄である. 淡蒼球に壊死を起こす中毒で,最も多いのは一酸化炭素中毒である.その他にはシアン化物とマンガ ンがある. 両側淡蒼球の選択的壊死は無酸素と低酸素障害に特異的な所見である. 淡蒼球が関与する運動障害には,初動作開始の遅

,無動症,ジストニア,強剛がある.

意識障害を伴う熱傷患者においては,低酸素血症はもちろん,煙の吸引による一酸化炭素中毒の可能 性も 慮する必要がある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像所見 急性期:淡蒼球に T 2強調像で高信号領域を認める.無酸素性障害による.T 1強調画像では出血性 壊死を反映し,低信号のときも,高信号が混在することもある.造影効果を認めることもある.両側海 馬の信号強度異常,大脳全体の浮腫を認める.大脳皮質の壊死を認めた症例もある.その他に小脳の異 常が指摘されている. 間欠型:急性の脱髄を示す高信号領域を大脳深部白質に認める.半卵円中心に多い.U 線維は保た れる. 数ヶ月および数年後:大脳基底核,特に被

に低信号を認める.鉄の沈着によると言われている.

文献 1によれば,13人の患者の内,8例に大脳白質に高信号が認められ,5人は間欠型の脳症を呈し た.これらの高信号は徐々に改善をしている.可逆性の脱髄を示していると

えられる.1例は非可逆

性で,強い高信号を T 2強調画像では示し,T 1強調画像で強い低信号であったと報告している.被 の病変は 5例にあった.T 2強調画像で高信号領域,T 1強調画像では等信号を示す.患者の予後には 無関係である. 間欠型の白質病変の ADC 値は低下しているとの報告がある(文献 2). 1例の症例報告で(文献 3),発症約 12時間後の拡散強調画像で大脳白質に高信号があり,ADC 値の 低下を認める.大脳基底核に著変を認めない.16日後の再検では大脳白質の病変は消え,線条体,淡 蒼球に高信号を認めた.本症の急性期では,白質が灰白質より虚血に対してより鋭敏であると推測して いる.淡蒼球の他に,黒質に高信号領域を拡散強調画像にて指摘した報告がある(文献 5).

鑑別診断 小血管病による虚血:病変は非対称性で多巣性である. 淡蒼球に高信号を認める疾患では,遅発性低酸素後脳症がある.一酸化炭素中毒が代表であるが,そ の他の低酸素状態でも起こる.淡蒼球が選択的に障害されることがある.大脳,特に前頭葉の白質にび まん性の高信号領域を T 2強調画像で認める.

Box

進行性のびまん性白質脳症の鑑別診断

1.MS,ADEM などの脱髄性疾患:非対称 である. 2.薬剤性白質脳症(カルモフール,コカイン など):対称的な病変,病歴 3.一酸化炭素中毒:対称的な病変,病歴, 淡蒼球の病変(ないこともある.文献 4) 4.進行性多巣性白質脳症:皮質下中心

5.全身性エリテマトーデス:良性頭蓋内圧 亢進を伴う. 6.ウイルス性脳炎 7.HIV 脳症 8.HAM 9.脳腫瘍(悪性リンパ腫) 10.高血圧性脳症


症例

-

症例 A(剖検例)

歳,男性 一酸化炭素中毒

飲酒後,練炭暖房下で就寝,意識障害で発見され病院に運ばれる.意識は一旦回復するが,1∼2週 間後から見当識障害が出現,高圧酸素療法を受けるが,2ヶ月後には失外套状態となり,肺炎時,けい れんが重積,死亡. 剖検所見 乳頭体部大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色(左)/ホルツアー(HZ)染色(右),前頭葉白質 (矢印)に高度の,さらに側頭葉白質(矢頭)と淡蒼球外節背側(星印)に軽度のそれぞれ髄鞘脱落がみら れ,同部位に線維性グリオーシスも認められた(図 1).淡蒼球外節背側,ヘマトキシリン・エオジン (HE)染色,組織が粗鬆化し偽石灰沈着や軸索腫大(矢印)が認められた(図 2).

図 図

淡蒼球外節(HE 染色)

右大脳冠状断(左 KB・右 HZ 染色)

●参 文献 1 2 3 4 5

下晴雄,他:一酸化炭素中毒 13例の MR imaging 臨床経過と白質病変の関係を中心とした検討 .日医放 56(13):948-54,1996. Kim JH, et al. Delayed encephalopathy of acute carbon monoxide intoxication: diffusivity of cerebral white matter lesions. AJNR Am J Neuroradiol. 24(8):1592-7, 2003. Sener RN. Acute carbon monoxide poisoning:diffusion MR imaging findings. AJNR Am J Neuroradiol. 24(7):14757, 2003. 赤岩靖久,他:進行性のびまん性白質病変と脳浮腫を呈し,主に一酸化炭素を含んだガス中毒が疑われた 1例.脳神 経 54(6):493-7,2002. Kinoshita T, et al. Pallidoreticular damage in acute carbon monoxide poisoning: diffusion-weighted MR imaging findings. AJNR Am J Neuroradiol. 26(7):1845-8, 2005.


症例 歳,男性 を認める

ヶ月前より発作性に両側

代性に不随意運動(舞踏アテトーゼ運動)

3ヶ月前より口部ジスキネジーを認める.

FLAIR 画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像

T 強調画像


症例

両側頸部内頸動脈と右椎骨動脈の狭窄 解説 画像所見:FLAIR 画像で中脳周囲脳槽に点状の高信号を認める.同様な所見を大脳の頭頂部により 強く,線状あるいは点状の高信号を多数脳溝内に認める.前大脳動脈と中大脳動脈領域に認められる. 同所見は T 2強調画像と T 1強調画像で認められない(非掲載).動脈内の slow flowにより FLAIR 画 像でこのような所見を示す.FLAIR 画像のくも膜下腔の異常な高信号領域は下記の Box 46のように 多数認められたが,頭頂部により強い点状の高信号を FLAIR 画像で認めたときには内頸動脈閉塞ない しは強い狭窄症を

える.海綿静脈洞内の両側内頸動脈は T 2強調画像で正常に認められるので,頸部

の両側内頸動脈に強い狭窄像があると えた.血管造影で確認された(図 5の矢印).中脳周囲脳槽にも 点状の高信号があるので,椎骨脳底動脈系にも slow flowがあると えた.血管造影で右椎骨動脈に狭 窄があり同定された(図 6の矢印).両側の頸部内頸動脈起始部付近の内膜剥離術後,発作の完全な消失 を認めた.

右内頸動脈造影側面像

右椎骨動脈造影側面像

臨床 72歳の男性に発作性,両側

代性の一過性の不随意運動(片側性の四肢の反復性の震え)が認められ

た.この発作は脳波上は明かな epileptiform activityを認めず,立位や歩行時,頸部の過伸展したとき に誘発され,起座位や臥位をとると軽快する特徴がある.この現象は limb shaking あるいは repetitive involuntary movement(RIM )とも呼ばれる.本症例では発作は

代性に突然,一側に発生し,他側に移

り突然停止する.EMG では片側バリスム・片側アテトーゼに合致する所見であった.周期的に血行力 学的脳虚血発作が生じることで起こる(文献 1,4).頸部エコーあるいは MRA によって頸動脈疾患の 有無を検査すべきであり,診断が確定すれば速やかに血行再検を行うことにより症状は消失する. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 血行力学的虚血を示す画像所見.脳溝内の多数の点状あるいは線状の高信号を FLAIR 画像で認め る.梗塞に陥る領域もあり,放線冠の境界領域に起こる.

Box

FLAIR 画像によるくも膜下腔の異常な高信号領域(slow flow)の鑑別診断

1.くも膜下出血 2.髄膜炎 3.転移による播種

5.動脈閉塞性疾患(もやもや病,動脈 化性 内頸動脈閉塞ないしは狭窄症) 6.酸素投与下

4.急性梗塞

●参 文献 1 Shimizu T,et al.Alternating paroxysmal hemiballism-hemichorea in bilateral internal carotid arterystenosis.Intern Med. 40(8):808-12, 2001.(本例の症例報告,但し,slow flowについての記載は乏しい) 2 Maeda M,et al.Abnormal hyperintensitywithin thesubarachnoid spaceevaluated byfluid-attenuated inversion-recovery MR imaging:a spectrum of central nervous system diseases. Eur Radiol. 13 Suppl 4:L192-201, 2003. 3 Anzai Y,et al.Paramagneticeffect ofsupplemental oxygen on CSF hyperintensityon fluid-attenuated inversion recovery MR images. AJNR Am J Neuroradiol. 25(2):274-9, 2004. 4 飯原弘二,他:脳血管障害.谷 諭編 脳外科の常識非常識.三輪書店 7-8,2004.


症例 歳,女性

歳頃にてんかん発作あり,最近,手のしびれ,めまいを認める

T 強調画像

fast STIR 法による冠状断像

(帝京大学医学部附属病院放射線科,大場洋先生の厚意による)

T 強調画像


症例

帯状異所性灰白質 解説 T 2強調画像で前頭葉白質内に板状の薄い灰白質が認められる.ほぼ前頭葉に限局した形の異常であ り,板状異所性灰白質の画像である.T 1強調画像で皮質白質境界がより不鮮明であり,病変は認めら れない.一方,冠状断像の fast STIR 法ではより詳細な皮質白質境界の異常が判明し,帯状の薄い灰白 質が白質(U 線維)内に認められる.皮質それ自体には異常はない.なお FLAIR 画像では異常を指摘で きない.

臨床 種々の程度の発達障害と,けいれんを症状とし,本症は女性に多い(>90%). 症例の多くは X 染色体にリンクしている.原因遺伝子は doublecortin(DCX)あるいは XLIS とよば れる.XLIS は女性患者には帯状異所性灰白質を,男性患者には滑脳症を起こす.男性患者では正常な DCX 遺伝子を有する神経細胞がまったくないために,重症の表現型(滑脳症)を呈する.これに対して 女性患者の大脳では個々の神経細胞でいずれの X 染色体が不活性化されたかにより,遊走能が異なり, 正常遺伝子を発現した細胞は皮質まで遊走し,疾患的遺伝子を発現した神経細胞は皮質下にとどまるこ とにより帯状異所性灰白質を形成すると推測された. 帯状異所性灰白質では,大脳皮質は正常の厚さを保っていることが多い.異所性灰白質が厚いと脳溝 は浅くなり,神経学異常所見はより強くなる.

画像所見 一な皮質と同じ信号強度を示す帯状の構造は,側脳室と大脳皮質間に存在する.両者は正常にみえ る白質によって境界されている.上部にある皮質は正常な厚さで脳溝がやや浅い.中心部白質全体を占 める帯状異所性灰白質として存在することあり,前頭葉のみに存在する形もある.本例は後者である. 帯状異所性灰白質の厚さによって症状の重症度が決まり,本例ではそれが薄いので症状も軽い. fast STIR 法は本例で示したように皮質白質境界が非常に鮮明に認められるので,同部位に異常を来 す皮質形成異常の検査には大変有用である.てんかん患者の MRI 検査に関しルーチンに行った方がよ いパルス系列である.特に方向を変える意味において,冠状断像が有用なことが多い.この方法は信号 強度異常を示すのには向いていない.そのような目的では FLAIR 画像が最も適している.てんかん患 者の MRI の際には両者を併用している. XLIS により男子に発生する滑脳症では大脳の前部により強い障害を認める. (CD-ROM 参照)


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,男子 異所性灰白質,psychosomatic disease の疑い.念のため の MRI

側脳室右体部の外側に皮質と等信号を示す結節状の像を認める(図 1∼3).体部に

って存在する正

常の尾状核の体部とは異なり,側脳室に結節状を示す(側脳室外側壁に凹凸がある図 3の矢印).上衣下 の異所性灰白質の所見である.正常の尾状核はこのレベルの横断像にてみえることはない.冠状断像 (図 4の矢印)で明瞭なように,正常では尾状核のない側脳室前角の外側に位置している.この冠状断像 でも異所性灰白質は正常皮質と等信号を示す.造影剤の投与は必要はないが,造影効果を認めない. MRI のすべての撮像法で正常皮質と等信号であるが,T 1強調画像で高信号領域を示す例があり, dystrophic microcalcifications によると えられている.CT でも高吸収域を示すことがある.

T 強調画像 図

T 強調画像

T 強調画像

fast STIR 冠状断像


症例

-

上衣下の腫瘤の鑑別診断

Box

1.異所性灰白質(正常皮質と等信号)

3.転移(信号強度が異なる,mass effect)

2.結節性 化症による上衣下結節(98%に石

4.上衣下の巨細胞性星細胞腫(モンロー孔に

灰化を認める)

症例 B(剖検例)

存在する.造影効果)

歳,女子 異所性灰白質

出生後早期からてんかん発作がみられ,四肢麻痺で寝たきり状態,肺炎で死亡. 剖検所見 右大脳後頭極冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,側脳室後角の外側,頭頂葉皮質下に異所性 灰白質(ヘテロトピア)を多数認めた(図 5).頭頂葉皮質のヘテロトピア,クリューバー・バレラ染色の 弱拡大,大脳皮質(写真上部)の直下に塊状の異所性灰白質を多数認めた(図 6の矢頭).クリューバー・ バレラ染色の強拡大,異所性灰白質内には大型と小型の神経細胞が不規則に配列し集団を形成していた (図 7).

右大脳冠状断(KB 染色)

▼ ▼

▼ ▼

▲ 図

ヘテロトピア(KB 染色)

ヘテロトピアの強拡大(KB 染色)


症例

-

●参 文献 1 Barkovich AJ,et al.Band heterotopias:a newlyrecognized neuronal migration anomaly.Radiology.171(2):455-8,1989. 2 Gallucci M, et al. MR imaging of incomplete band heterotopia. AJNR Am J Neuroradiol. 12(4):701-2, 1991. 3 D Agostino MD,et al.Subcortical band heterotopia(SBH)in males:clinical,imaging and geneticfindings in comparison with females. Brain. 125(11):2507-22, 2002. 4 Grossman RI, Yousem DM. Neuroaradiology The requisites. Mosby, 2nd ed. 427-8, 2003.


症例 歳,女性

年前,右上肢のぴくつきで発症,CT にて石灰化を認める

15年前より CT にて石灰化あり,海綿状血管腫として経過観察された.CT では石灰化以外の異常を 認めず低吸収域を認めていない.その後,けいれんの頻度が上昇し,手術をすることになり,CT およ び MRI を施行した.

(三輪書店

CT

T 強調画像

脳神経外科の常識非常識

より許可を得て転載)

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

毛様細胞性星細胞腫 解説 画像所見:CT(図 1)で石灰化を左前頭葉に認める.その他の異常を認めない.T 2強調画像(図 2)で 腫瘤は中心前回の前部に位置する.腫瘤の内側に石灰化による低信号領域がある.その外側には高信号 領域があり,さらに浮腫を疑わせる高信号領域を最外側に認める.T 1強調画像では腫瘤は低信号領域 を示し,血腫の信号強度を疑わせる部位はない.海綿状血管腫を疑わせるヘモジデリン沈着はない.造 影後の T 1強調画像では石灰化の外側の高信号領域に一致する部位に造影効果を認めている.以上よ り,海綿状血管腫ではなく良性の神経膠腫を えた.明瞭な造影効果と長い経過より毛様性星細胞腫が 最も えられ,手術により確認された.長い経過は必ずしも神経膠腫を否定する条件ではない.CT に て石灰化のみが認められる腫瘍もある.

臨床 境界明瞭な腫瘍で,しばしば囊胞を伴う.ゆっくりとした発育をする. 小脳,視神経・視 叉,第三脳室近傍,脳幹の順に多い. 5∼15歳に多い子供の腫瘍である.成人には少ない.

画像診断 囊胞を伴う脳実質内腫瘍であり,5∼15歳の子供のときには最も可能性が高い. 石灰化は 20%,出血は稀である. 強い不 一な造影効果を充実部 に認める.囊胞壁にも,ときに造影効果.髄膜播種は稀である.

鑑別診断 Pilomyxoid astrocytoma:乳児(平

年齢 18ヶ月,pilocytic astrocytoma は 58ヶ月)の視

叉・視神

経の腫瘍,造影効果があり,充実性,播種をより起こしやすく水頭症を伴うことが多い.深部白質およ び灰白質への進展を認める. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 LeeYY,et al.Juvenilepilocyticastrocytomas:CT and MR characteristics.AJR Am J Roentgenol.152(6):1263-70,1989. 2 Strong JA,et al.Pilocytic astrocytoma:correlation between the initial imaging features and clinical aggressiveness.AJR Am J Roentgenol. 161(2):369 -72, 1993. 3 Komotar RJ, et al. Pilocytic and pilomyxoid hypothalamic/chiasmatic astrocytomas.Neurosurgery.54(1):72-9;discussion 79 -80, 2004. 4 Arslanoglu A, et al. MR imaging characteristics of pilomyxoid astrocytomas. AJNR Am J Neuroradiol. 24(9):1906-8, 2003.


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,女子 他院で海綿状血管腫と言われている

15歳頃より右手から顔面の感覚脱失発作.今年になり他院にて MRI を撮り,海綿状血管腫と言われ た.

CT 画像

CT 画像

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像


症例

-

T

強調画像

造影後の T 強調画像

T

強調画像

造影後の T 強調画像

星細胞腫 Ⅱ度 CT で左中心後回に石灰化(図 1)と不

一な低吸収域(図 2の矢印)を示す病変がある.中心後溝に軽

い mass effect が疑われる.T 2強調画像では石灰化と思われる部位が低信号(図 3の矢印)を示し,それ 以外の CT で低吸収域を示す部位を中心に高信号を認め(図 4),その内側には浮腫と

えられる高信号

(図 3の矢頭)を認める.T 1強調画像で外周部には高信号を認め(図 5の矢印),石灰化による可能性が あり,その他は低信号を示す(図 6).T 2 強調画像で低信号を示す部位(図 7)があるが,その上部は高 信号を示す(図 8の矢印).造影後には腫瘤の上部に明かな造影効果がある(図 9の矢印および図 10). 以上の所見は血腫の信号強度のみでは説明できない.T 2 強調画像で低信号領域の外側に高信号領域 があることも血管腫では説明できない.また T 2強調画像では高信号,T 1強調像で低信号を示す部位 が血管腫のみでは説明できない.血腫と思われた部位(T 2と T 2 強調画像で低信号)は石灰化のみで も説明が可能である.それ故に神経膠腫,おそらく良性の星細胞腫と診断した. 病理所見は星細胞腫

度であったが,下部の側脳室に向かっている部 はより悪性度が高い可能性が

あるとされた.術後 5年再発はない.


症例 歳,女性

日前発症の髄膜炎

7月 22日,発熱で発症した髄膜炎により 28日に入院する.29日より目のかすみ,30日より複視, 瞳孔不同,8月 1日より意識の変容を認める.7月 30日の髄液検査で無色,透明,細胞数 1,006/3/μl (L 824,N 198),蛋 白 136mg/dl,糖 32mg/dl(血 糖 値 110),ク ロール 98mEq/l(基 準 値 120∼130)で あった. (7月 30日と 8月 6日の MRI で違っている点は,診断は?)

日の FLAIR 画像

同日の造影後の T 強調画像

日の FLAIR 画像

同日の造影後の T 強調画像


症例

結核性髄膜炎 画像所見 7月 30日の MRI では明らかな異常を指摘できない.8月 6日の FLAIR 画像では脳室拡大があり, 水頭症の合併がみられる.造影後の T 1強調画像では,大脳脚の内側,脚間槽に面し,脳表に造影効果 を認め,異常である.前頭葉底部の脳溝(嗅溝など)に った造影効果も強い(図 4の矢頭). 髄膜炎のある患者で,水頭症と脳底槽の異常な髄膜の造影効果をみたときに結核性髄膜炎と癌性髄膜 炎を 慮する必要がある(その他に

慮すべき鑑別は Box 48参照).髄液の所見も結核性髄膜炎に合致

する.この患者では特に,複視,瞳孔不同など動眼神経に関係した病変が疑われ,脳底槽の病変を示し ている可能性がある.22歳という年齢,急速な水頭症の出現を

えると,癌性髄膜炎よりは結核性髄

膜炎の方が可能性は高く,結核性髄膜炎を 慮して抗結核剤を開始する必要がある.後に結核菌を髄液 から認めた.

臨床 結核髄膜炎の早期診断は現在でも困難である.本症による死と重大な神経系の後遺症を避けるには早 期の治療開始が最も重要であり,結核菌が同定される前に,疑診の段階で治療を開始する必要がある. 数日の治療開始の遅れが致命的となることがある.髄液では単核球優位の細胞数増多をみる.蛋白は増 加し,糖は 40mg/dl 以下に低下し,クロールも低下する.

画像診断 脳底槽を中心とする髄膜に造影効果を認める.強い厚い造影効果を認めることがあるが,初期には認 められない.MRI では約 70∼85%,CT では 62%と高率であり診断に役に立つ. 血管炎を伴い,細菌性髄膜炎に比べ脳梗塞の合併がより高く CT では約 30%,MRI では 60%に認め られる.大脳基底核・内包後脚領域が好発部位で,ときに大脳皮質,脳幹でも起こり,結核性髄膜炎の 重要な臨床特徴とされる. 脳底槽およびくも膜顆粒の障害により 通性水頭症を認めることがある(70%). 通性水頭症は結核 性髄膜炎の最も多い合併症である. FLAIR 画像で脳溝内に高信号領域を認めることがあり髄膜の炎症を示す.その他に結核腫を伴うこ ともある.

Box

脳底槽の髄膜を侵す病変

1.感染 ・結核性髄膜炎,梅毒 ・細菌感染,クリプトコッカス 2.神経サルコイドーシス

3.腫瘍による髄膜播種(癌性髄膜炎,原発性 脳内腫瘍の播種) 4.悪性リンパ腫 5.化学性髄膜炎(薬剤,パントパーク ,破 裂した上皮腫の脂肪)

(CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Jinkins JR, et al. MR imaging of central nervous system tuberculosis. Radiol Clin North Am. 33(4):771-86, 1995. 2 堀内泉,他:結核性髄膜炎.神経内科 53 [supple2] :396-7,2000.


症例

症例 症例 A

歳,女性

-

資料

歳時より SLE と診断される

4月より SLE 症状の悪化によりプレドニン

の服用を増加した.8月に発熱があり,9月の胸部 CT

にて粟粒結核がみつかり,抗結核療法が開始された.11月 23日に発熱,けいれん,意識障害を認め た.CT で後大脳動脈領域に梗塞を認める(図 1).SLE による梗塞と

えられた.その後,徐々に改善

した.1月 17に CT 施行(図 2).左後大脳動脈領域,左視床に古い梗塞がある.より重要なことは,前 回の CT と比べ脳室拡大が出現していることである(図 2の矢印).肺に粟粒結核を有する患者において 脳室拡大は常に結核性髄膜炎の合併を

慮する必要がある.本症はその後,結核性髄膜炎が判明し,

シャントが必要になった.脳梗塞に関しては結核性髄膜炎に拠るのか,SLE に拠るのかは不明である. しかし本例の脳室拡大は結核性髄膜炎の初期のサインを示すと える.

CT( 月

(国立病院機構東京病院,堀部

日)

子先生の厚意による)

CT( 月

日)


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,女性 結核性髄膜炎

死亡 10ヶ月前頃から全身

怠感,微熱が出現,2ヶ月後から嘔吐,複視,歩行障害も加わったため

入院となる.軽度の意識障害,髄膜刺激症状がみられた.脳脊髄液検査で細胞数の増多,蛋白の増加, 糖の低下がみられたため拮結核療法を開始した.解熱はみられたが意識障害は増悪,尿崩症,中枢性の 呼吸障害が加わった.呼吸不全のため死亡. 剖検所見 脳底部肉眼写真,脳底部軟膜は灰白色に肥厚し,視索,脳神経,脳底部血管を巻き込んでいた(図 3 の矢印).正中隆起部冠状断,脳底部に血管を巻き込んだ灰白色の肉芽腫性病変が認められた(図 4の白 矢頭).中脳・橋移行部と橋上部の水平断,軟膜は肥厚し,大脳脚,右橋底部に軟化がみられた(図 5の 矢印).前有孔質腹側,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,中心部に壊死を伴う炎症細胞浸潤からな る肉芽腫が認められた(図 6).

脳底部

中脳・橋移行部(右)と橋上部(左)

正中隆起部冠状断

前有孔質腹側の肉芽腫(HE 染色)


症例 歳,男性 びまん性の白質病変がある. 年ほど前より躁病,アルコール認知症 と言われていた 5人兄弟末子.同胞,叔 に神経疾患らしき人物がいるが詳細は不明である.18歳から多量の飲酒, 6年前に躁病の診断を受ける.5年前に躁病,アルコール依存症にて入院加療.1年前にはコルサコフ 症候群,アルコール性認知症の診断を受けるが 4年前より飲酒はしていない.3ヶ月前には認知症症状 が主でしばしば失禁,多少の会話は可能であったが,発語がなくなり急に悪化し MRI を撮像する.

T 強調画像

T 強調画像

プロトン強調画像

(榛原 合病院放射線科,尾崎正時先生の厚意による.造影剤投与はしていない)


症例

副腎白質ジストロフィー(成人大脳型) 解説 画像所見:橋上部,小脳と大脳の萎縮があり,大脳脚の錐体路および頭頂・後頭橋路には高信号を T 2強調画像で認める.くも膜囊胞が左側頭葉前部にある.頭頂・後頭葉優位に左右対称性に,深部大 脳白質に T 2強調画像で高信号を認める.U 線維は保たれている部位もある.前頭葉前部の白質は保た れ,病変部との境界の白質には病変部に比べて高信号の程度が弱くなっている(図 2の矢印).本例にお ける炎症性脱髄巣の最も新しい病変を示唆している可能性が高い.本例では施行していないが,造影効 果が期待される部位である.内包後脚から視放線にまで高信号をプロトン強調画像にて認める.以上の 所見と精神症状を主とする臨床症状から副腎白質ジストロフィー(成人大脳型)が最も えられ,後の検 査で極長鎖脂肪酸の上昇があり確定診断された.

臨床 成人で発症する副腎白質ジストロフィー(ALD)は大きく 2つに

かれ,1つは副腎脊髄ニューロパ

チーであり(ALD 全体の約 25%),もう 1つは成人大脳型の ALD である.ALD の 1∼3%を占める. 30歳代で性格変化,記憶力の障害あるいは他の精神症状で発症し,数年の経過で死亡することが多い. その他に脊髄小脳変性症様,小脳症状を主体とする少数の群がある.

画像所見 大脳白質に強い病変があり萎縮を伴う.脳梁は強く侵される.小児と異なり後頭葉優位に侵されるこ とは少ない.他の論文によれば前頭葉優位,後頭葉優位と両方がある.小児型 ALD と異なり大脳皮 質,皮質下,脳幹に萎縮を認める.大脳深部白質のみではなく,内包後脚および視放線などの線維路の 脱髄を認める.活動性部 には造影効果を認めることが多い.

鑑別診断 1.他の成人型白質ジストロフィー 成人型クラッベ病:錐体路症状が主である.脳梁がしばしば侵される.大脳白質後部,中心前回,錐 体路に

った高信号を認めることが多い.視神経の腫大を認めることがある.

成人型異染性白質ジストロフィー:多発性

化症様(痙性,小脳失調,不

衡),統合失調症様症状

(異常行動,性格変化,集中力不足,不適切な笑い,進行すると失禁)を示す.大脳白質に高信号を T 2 強調画像にて認める.T 2強調画像での信号強度変化は一様である.但し活動性部

の ADC 値は低下

していると報告がある. 2.脳腱黄色腫症 小脳歯状核に石灰化とヘモジデリン沈着を伴う(低信号)を伴う高信号を T 2強調画像にて認める. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Kumar AJ, et al. MR findings in adult-onset adrenoleukodystrophy. AJNR Am J Neuroradiol. 16(6):1227-37, 1995. 2 Uyama E,et al.Presenile-onset cerebral adrenoleukodystrophypresenting as Balints syndromeand dementia.Neurology. 43(6):1249 -51, 1993. 3 Szpak GM, et al. Adult schizophrenic-like variant of adrenoleukodystrophy. Folia Neuropathol. 34(4):184-92, 1996.


症例

症例

-

資料

若年成人で,認知症と精神症状で発症する疾患

Box

1.成人型の白質ジストロフィー

6.ウィルソン病

(異染性白質ジストロ フィー,ク ラッベ

7.ホモシスチン尿症

病,副腎白質ジストロフィー)

8.CADASIL

2.ファブリ病

9.ミトコンドリア脳症

3.Kufs 病 B 型

10.ポルフィリア症

(神経セロイドリポフスチン症)

11.全身性エリテマトーデス

4.脳腱黄色腫症

12.那須ハコーラ病

5.ニーマン・ピック病 C 型

症例 A(剖検例)

歳,男性

小児型の副腎白質ジストロフィー(小 児 型 ALD の 典 型

的病理像) 9歳,痙直性対麻痺で発症,視力障害,知的障害も加わり,発病 1年で寝たきり状態となる.消化管 出血のため死亡. 剖検所見 脳梁膝部(左)/線条体頭部(右)大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,放線冠を含む前頭葉の 白質に髄鞘脱落がみられるが脳梁膝部先端は保たれ,白質病変の尾側から吻側への進展が明らかである (図 1の矢頭).前頭極白質,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,髄鞘脱落部位では,静脈周囲性の 炎症細胞浸潤と肥大アストロサイトの増加がみられた(図 2).橋中部,ホルツアー(HZ)染色,橋底部 の錐体路に線維性グリオーシスを認めた(図 3の矢印).

▶ ▶ ▶

◀ ▶

大脳冠状断(KB 染色)


症例

-

前頭極白質(HE 染色)

橋中部(HZ 染色)


症例 歳,女子 複雑部 発作と全身発作

CT

T 強調画像

T 強調画像

fast STIR 画像


症例

孤発性皮質結節 解説 画像所見:CT で右頭頂部に粗大な石灰化を認める.T 2強調画像で右頭頂葉後部に異常な脳回があ り,その外側をふちどるように異常に拡大した脳溝を認める.その脳回の中心部には石灰化による低信 号領域を認め,その内側の病変は皮質と等信号領域を示す.周囲の右頭頂葉の皮質白質境界は不鮮明で ある.T 1強調画像では異常な脳回は皮質と等信号で,皮質がやや厚くみえる.腫瘤様でもある.fast STIR 法では右側頭葉,後頭葉に広汎な皮質白質境界の不鮮明を認める.他の部位に結節性

化症を示

す所見はない.石灰化を有する腫瘤の要素を持ちながら,脳溝拡大や皮質白質境界の不鮮明など,皮質 形成障害の性質も持っていることから孤発性皮質結節と診断した.手術と病理組織により確認された.

臨床 孤発性皮質結節は単独の皮質結節のみを有し,結節性 化症(TS)の他の所見を伴わない病変である. すべての症例はてんかん発作により発症する.その病変がてんかん発作を起こすことが判明すれば,手 術の適応になる.自験例では 1歳から 23歳までの症例があり,前頭葉および側頭葉に多い.男女差は ない. 病理学的に確認された皮質結節が 1つあれば,以前の診断基準では TS と診断できたが,限局性皮質 異形成(focal cortical dysplasia:FCD)と区別するために新しい診断基準では他の徴候を必要とするよ うになった. Greenfield s Neuropathology第 7版(文献 1,2)に明解に述べられているように,FCD と本症とは別 の疾患である.皮質結節には軟膜下に強いグリオーシスを認める.細胞の形態異常が FCD と比べてよ り強い.異常な神経細胞の数は FCD と比べ少ない.大脳皮質の神経細胞数もより少ない.石灰化は皮 質結節にしばしばみられるが FCD には認めない.米国の神経病理医とその影響を受けた神経放射線科 医の間で,本症と FCD とは同一疾患と える傾向が強いが,遺伝子検査でも 2つは異なった疾患と えられている(文献 4).

画像診断 腫瘤あるいは結節状を示し,通常の皮質下結節と同様に皮質下に強い信号強度異常を認める.T 2強 調画像で高信号,T 1強調像で低信号を示す.石灰化を多くの症例で認める.石灰化の強いときには, 皮質下の信号強度は高信号ではなく,本例のように低信号を示す.周囲の皮質白質境界の不鮮明,白質 の信号強度の異常を認める.周囲に異常な走行,拡大した脳溝を認めることがある.以上の所見は腫瘤 状ではあるが,皮質形成障害の性質を有し腫瘍とは異なる.FCD とは石灰化を認めること,腫瘤ある いは結節状を示す点が異なる. 結節性

化症による皮質結節で造影効果のある例があり,孤発性皮質結節でもその可能性があるの

で,造影効果のみでは腫瘍との鑑別にはならない. 皮質結節から側脳室に向かって線状の構造を認め,白質内に神経細胞の集団が認められる.radially oriented white matter band と呼ばれ,皮質結節に特徴的な所見とみなされていたが,FCD でも同様な 所見が報告されている. (CD-ROM 参照)


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,男子 孤発性皮質結節,前頭葉てんかん

CT(図 1)で右前頭葉に微小な石灰化を認める(矢印).その他の吸収値の変化はない.FLAIR 画像 (図 2)で右前頭葉に異常な脳回があり,結節状を示し,その皮質下に強い高信号領域を 2カ所に認める (矢印).右前頭葉のより外側に存在する脳回は皮質白質境界が不鮮明である(矢頭).fast STIR 冠状断 像(図 3)では皮質結節(矢印)が右前頭葉にあるが,その他の皮質白質境界は左に比べ不鮮明である(矢 頭).小さな石灰化,結節状の脳回,皮質下の T 2強調像で高信号領域,皮質白質境界の不鮮明が周囲 にあることより,孤発性皮質結節と診断し,手術,病理所見にて確認された.なお結節性 化症の他の 所見を認めない.

CT 画像

fast STIR 冠状断像

FLAIR 画像


症例

-

孤発性皮質結節(CD-ROM 症例 A と同一症例) 外科切除標本(前頭葉) クリューバー・バレラ(KB)染色,結節部では大脳皮質と白質が不明瞭であった(図 4の矢印,図 5の 矢頭).結節部,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の強拡大,神経細胞の配列は乱れ,グリア線維が 増生(図 6の好酸性の線維),ニッスル小体を失い核が細胞辺縁に押しやられた Baloon cell も多数出現 した(図 6・7の矢印).

◀ ◀

外科切除標本(KB 染色)

結節部(HE 染色)

結節部(KB 染色)

Baloon cell(HE 染色)

●参 文献 1 Harding B, Copp AJ. Malformations. In: Graham DI, Lantos PLeds. Greenfield s neuropathology. 7th ed. London: Arnold, 357-483, 2002. 2 Honavar M,Meldrum B.Epilepsy.In:Graham DI,Lantos PLeds.Greenfield s neuropathology.7th ed.London:Arnold, 899 -941, 2002. 3 Lahr R, et al. Neuropathology of focal epilepsies:An atlas. John Libbey, United Kingdom, 107-18, 2003. 4 Becker AJ,Urbach H,Scheffler B,et al.Focal cortical dysplasia of Taylor s balloon cell type:mutational analysis ofthe TSC1 gene indicates a pathogenic relationship to tuberous sclerosis. Ann Neurol. 52:29 -37, 2002.


症例 歳,男性

日前より食欲低下と意識障害

日の CT

同 T 強調画像

(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院,小山眞道先生の厚意による)

日の FLAIR 画像

同 T 強調画像


症例

マルキアファーヴァ・ビニャミ病(急性型・原発性脳梁変性症) 解説 画像所見:CT で淡い低吸収域が脳梁膝部と膨大部に広がっている.同部位に高信号領域を FLAIR 画像で認める.T 2強調画像でも髄液よりは低いが高信号領域を同部位に認める.他の部位には異常高 信号を認めない.T 1強調画像では脳梁の信号強度変化は弱く,ごく淡い低信号領域が一部に認められ る.患者はウイスキー1本を 1日で飲むような大酒家であった.

臨床 脱髄性の病変であり,初めはイタリアにて大量の安いぶどう酒を摂取する男性(同時に低栄養状態)に みつかったが,今は世界中でみられ,他の酒類や酒を飲まない低栄養者でも発症する. 急性に発症し,けいれんをしばしば伴い,重篤な意識障害で発症する急性型と慢性の経過をとり,数 年の経過で進行する認知症と半球間離断症状でみつかる慢性型がある. 病理所見は脳梁を中心とする脱髄であるが,深部と側脳室周囲白質,他の 連線維にも脱髄がおよぶ ことがある.中心部には壊死を認め,出血とへモジデリン沈着も報告がある.剖検例ではペラグラ様の 状態,ウェルニッケ脳症,橋中心性髄鞘崩壊症,アルコール性小脳萎縮症と合併してみつかることも多 い.現在では浸透圧性橋外髄鞘崩壊症の 1現象として えられている. アルコール多飲患者にて急性の脳症が認められたら本症を える.

画像診断 脳梁膝部は急性型,体部は慢性型で侵されることが多い.T 1強調画像で低信号を示し(浮腫および 囊胞変化),T 2強調画像では高信号を示す.急性型では拡散強調画像にて高信号を示し,腫脹と造影 効果も示す.慢性型では脳梁の萎縮を示す.

鑑別診断 1.脳梁膨大部に高信号を示すけいれん後脳症:膨大部のみに認められる,比較的早期に消失する. 2.脳梁離断術後:病歴 3.新生児低酸素性虚血性脳症:病歴,囊胞化 (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Arbelaez A, et al. Acute Marchiafava-Bignami disease:MR findings in two patients. AJNR Am J Neuroradiol. 24(10): 1955-7, 2003. 2 築山裕見子,他:Marchiafava-Bignami 病における MR 画像所見.病理所見との対比,臨床放射線:43(13):1845-8, 1998.


症例

症例

-

資料

症例 A

歳,男 性 マ ル キ ア ファーヴァ・ビ ニャミ 病(Marchiafava-Bignami disease),主訴は奇異な言動,行動 20歳頃より多量の飲酒(平

3∼5合/日),昨年 11月昏睡状態にて他院に入院.徐々に回復.11月

20日,MRI により原発性脳梁変性症と診断される.12月より独歩可能になる.本年 6月より一般病棟 では管理ができないとの理由で精神病院に入院.7月 7日の CT にて脳梁膝部(図 1の矢印)および膨大 部(図 2の矢印)に低吸収域を認める.T 1強調矢状断像(図 3)では脳梁全体の萎縮を認め(矢頭),さら に膝部および膨大部には囊胞背変化を認める(矢印).慢性期によると えられる.

CT 画像

T 強調矢状断像

CT 画像


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,男性 マルキアファーヴァ・ビニャミ病

元来大酒飲み,発病 1年前頃からは 1日中飲酒,尿失禁もみられた.歩行障害,構音障害で発症,意 識障害もみられたが一時改善,肺炎のため死亡. 剖検所見 側脳室前角部大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,脳梁膝部の中央部に線状の裂 れた(図 4の矢印).脳梁膝病変部,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,裂

(写真左下)と残存した

脳梁(写真右上)の間には,泡沫状の胞体を持つ貪食細胞が多数浸潤していた(図 5).

大脳冠状断(KB 染色)

がみら

脳梁膝(HE 染色)


症例 歳,女子 側頭葉てんかん 10歳頃より人の声に似た音声を聞くことがあった.9ヶ月前より発作が頻繁になった.現在の発作は 40秒程度の音声を自覚し,その後,意識減損,眼瞼をパチパチさせたり,唇が左の方に引っ張られる ような感じとなり四肢や体幹を小刻みにふるわせる.記憶障害はない. (図 3の矢頭は他院での生検部位)

T 強調画像

FLAIR 画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

胚芽異形成神経上皮腫瘍(DNT) 解説 画像所見:右側頭葉皮質から白質にかけて病変があり,皮質を頂点とする三角形の形態を取ってい る.病変は囊胞状にみえ,T 1強調像で低信号,T 2強調画像で強い高信号を示すが,FLAIR 画像では 明らかな高信号領域を示し囊胞性ではない.さらに,その内部に明らかな中隔構造を認め,T 1強調画 像(図 1の矢印)および T 2強調画像(図 2の矢印)ともに,皮質に近い信号強度を示す.FLAIR 画像で は腫瘤内部の信号強度は一様ではなく,およそ 2つの成 がある.造影効果を認めない.この症例には 石灰化を認めない.なお拡散強調画像では低信号領域を示した(非掲載).

臨床 側頭葉に発生することが多く,比較的長い経過の複雑部 発作を小児と若年成人に起こす.大きくな ることはほとんどない,あるいはあっても かであると えられ,再発は稀である.悪性化は現在まで 1例のみが報告された. 新皮質の病変であり厚い脳回様にみえる.周囲には皮質形成障害を伴うことが多い.最も重要な顕微 鏡所見は“specific glioneuronal element:SGNE”と呼ばれ,以下の所見を示す. 1.皮質に直角に,不 一な細胞の柵状の集合 2.毛細血管周囲の乏突起細胞に似た細胞の存在 3.他の細胞は,星細胞と神経細胞への 化 神経細胞が,淡い好酸性の粘液状の構造に浮かんでいるようにみえ,それが囊胞状にみえるので決し て囊胞があるのではない.病理では石灰化あるいは軟膜浸潤がある.

画像診断 最も好発する部位は側頭葉であり,以下,頭頂葉,尾状核,透明中隔にも認められる. 皮質から白質に向かって進む腫瘍であり囊胞性である.境界明瞭で,周囲への mass effect はないか, あっても軽度である.浮腫はない.成長がゆっくりであり周囲の骨を変形させる. CT で低吸収域を示し,梗塞に似た所見を示す.石灰化は 20∼36%と言われている. T 2強調画像では高信号,T 1強調像では低信号を示し,いずれも多房性の囊胞状であり中隔を有す ることが多い.中隔は T 2強調画像および T 1強調画像で正常皮質に近い信号強度であり腫瘍内で同定 できる.FLAIR 画像では高信号を示し,囊胞ではないことが明瞭であり,しかも FLAIR 画像では信 号強度が 一ではなく,2つの成

を有するようにみえる.皮質が白質に比べてより多く侵され,皮質

を頂点とする三角形の形を取ることが多い.冠状断像が有用である.造影効果はないことが多い.なお 周囲に皮質形成障害が病理でしばしば認められるが,画像にて同定できた症例はない. Fernandez らは,小児の DNT(dysembryoplastic neuroepithelial tumor)14例の検討で,①中隔の存 在,②三角形の 布,③造影効果がない,の 3徴候を特徴的な所見としている.自験例とよく合致して いる.全例がこの 3徴候を示すのではない. 文献 2によれば,DNT ではメチオニン PET の取り込みが不良であると報告がある.MRS による研 究(文献 3)によれば focal cortical developmental malformation と良性の神経膠腫の鑑別に有効であり, 後者では高度のコリンの上昇があり,NAA の低下を認める.一方,前者では軽度のコリンの上昇と, 軽度の NAA の低下に留まるとしている. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.FCD:mass effect を有さない.囊胞状ではない.T 1強調画像の信号強度が少ない. 2.孤発性皮質結節:周囲の脳回に皮質白質境界の不鮮明を伴うことが多い.white matter band の存在 3.神経上皮性囊胞:FLAIR 画像で髄液と同様な信号強度 4.神経節膠腫:石灰化,囊胞の存在,造影効果の存在 5.多形黄色星細胞腫:軟膜に接した造影効果のある結節の存在,ときに“dural tail sign”の存在

症例 A

歳,男性 胚芽異形成神経上皮腫瘍(DNT),高 生頃から複雑部 発作

FLAIR 画像の矢状断像で左の扁桃核に小さな 2つに

かれた病変があり,明瞭な高信号領域を示す

(図 1の矢印).mass effect はほとんどない.T 2強調画像では同様に 2つに

かれた病変があり,明瞭

な高信号領域を示す(図 2の矢印).T 1強調像では低信号であった.周囲の皮質白質境界に不鮮明を認 めない.このような小さな病変であるが,複雑部 発を有する若年成人や小児では DNT を

慮するこ

とが必要である.なお造影効果を認めない.2つの組織の間には正常の組織を認める.小さな腫瘍の結 節が病理では認められ DNT であった.よく似た所見を呈する症例に孤発性の皮質結節があるが,周囲 の皮質白質境界の不鮮明を伴う点が本症とは異なる.図 1の矢頭は側脳室下角.

FLAIR 画像矢状断像

T 強調画像


症例

-

症例 B

歳,男児 神経節膠腫

複雑部 発作を示す症例である.右扁桃核に神経節膠腫がある.T 2強調画像で DNT に比べて高信 号の程度が弱い(図 3の矢印).中隔を認めない.CT では石灰化を認める(図 4の矢印).

T 強調冠状断像

CT


症例

症例 C(外科手術例)

-

歳,男性 胚芽異形成神経上皮腫瘍(DNT)

既往歴に異常なし.12歳より発作性の気

不良が出現,14歳から意識消失発作に進展した.脳波検

査では左前頭・側頭部に発作波がみられ,頭部 MRI 検査で左側頭部に腫瘍が認められたため摘出手術 を受ける. 外科切除標本(腫瘍部) ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色(上段)/クリューバー・バレラ(KB)染色(下段),脳表に近い大 脳皮質に染色性が不良な大小の結節性病変を認めた(図 5の矢頭).ヘマトキシリン・エオジン染色の強 拡大,細胞周囲腔が拡大した小円形細胞の集簇(写真左半 )と粘液腫状の基質(写真右半 )がみられ, 神経細胞が基質内に浮遊するように認められ,specific glioneuronal element を構成していた(図 6の矢 印).ヘマトキシリン・エオジン染色の強拡大,細胞周囲腔が拡大したオリゴデンドロサイト様の小円 形細胞の集簇内にも神経細胞が混入していた(図 7の矢印).

▼ ▼ ▲

外科切除標本(上 HE・下 KB 染色)

腫瘍(HE染色)

小円形細胞(HE 染色)

●参 文献 1 Fernandez C,et al.Theusefulness ofMR imaging in thediagnosis ofdysembryoplasticneuroepithelial tumor in children: a study of 14 cases. AJNR Am J Neuroradiol. 24(5):829 -34, 2003. 2 Maehara T,et al.Usefulness of[11C]methionine PET in the diagnosis of dysembryoplastic neuroepithelial tumor with temporal lobe epilepsy. Epilepsia. 45(1):41-5, 2004. 3 Vuori K, et al. Low-grade gliomas and focal cortical developmental malformations: differentiation with proton MR spectroscopy. Radiology. 230(3):703-8, 2004.


症例 歳,男性

歳初発の振戦があり,進行性である

小脳症状が 47歳で認められた.54歳で認知障害を認め,55歳で異常運動,強剛を認める.錐体路徴 候を 58歳で認めた.56歳の時に MRI を撮像する.

T 強調画像

T 強調画像

(慶應義塾大学病院神経内科,高尾昌樹先生の厚意による) (Lippincott Williams& Wilkins 社 J Neuropathol Exp Neurol.2004;63(4):363-80 より許可を得て転載)


症例

神経フェリチン症 解説 画像所見:T 2強調画像で被

に低信号を認め,その中心部に高信号が存在する.被

自体の萎縮は

ほとんど認められない.T 1強調画像では被 の中心に低信号を認める.大脳の軽度の萎縮があり,小 脳虫部に萎縮を認める(画像非掲載).

臨床 最近みつけられた常染色体優性遺伝を示す成人発症の神経変性疾患であり,鉄の沈着を大脳基底核に 示す疾患である.フェリチン L 鎖遺伝子のエクソン 4の変異を認める.血清のフェリチン値は低下で ある.血清鉄,ヘモグロビンとトランフェリンには異常がない.臨床症状は錐体外路系の症状が主であ り,舞踏病様運動,ジストニア,強剛であり,その後に認知障害などを認める. 血清フェリチンは主として L 鎖により構成され,体内鉄貯蔵量を表し,細胞内のフェリチン製造組 織により 泌される.フェリチンの体内での役割は 2つあり鉄の細胞内貯蔵と非毒素化である. 病理所見(CD-ROM 参照)では被 が灰白調に変色し,微小な空洞を認める.前頭葉を中心とする軽 度から中等度の萎縮がある.尾状核と小脳に軽度の萎縮がある.黒質の色調が低下している.顕微鏡所 見では被 と淡蒼球にパール染色にて鉄を含む球体が認められている.主としてグリアに核内および細 胞体に封入体を認める.

画像診断 大脳基底核と運動皮質に T 2 強調画像に,鉄の沈着による低信号領域を認める.低信号領域はその 年齢に比べてより強い.被 あるいは淡蒼球に T 2強調画像にて高信号領域を認める.組織の粗鬆化あ るいは空洞化によると えられる.無症状のキャリアーにも,基底核に低信号領域を認める.

鑑別診断 1.MSA-P:被

の萎縮を示し高信号領域の範囲がスリット状で幅が狭い.

2.ウィルソン病:被

のみではなく,淡蒼球,視床,橋,中脳被蓋にも病変がおよぶ.低信号と同時

に高信号を被 ,淡蒼球は示し,その他の部位は高信号が主体. 3.パントテン酸キナーゼ関連神経変性症:低信号は淡蒼球と黒質に認められる.淡蒼球ではその一部 に円型の高信号を認める.eye of the tiger sign. 4.無セルロプラスミン血症:画像はよく似ているが低信号領域は大脳基底核のみでなく,視床,歯状 核にも認められる.低信号領域の中の高信号がより少ない,あるいはない. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Vidal R, et al. Intracellular ferritin accumulation in neural and extraneural tissue characterizes a neurodegenerative disease associated with a mutation in the ferritin light polypeptidegene.J Neuropathol Exp Neurol.63(4):363-80,2004. (本例を含む,大家系の詳細な本症に関する報告) 2 Chinnery PF, et al. Clinical features and natural history of neuroferritinopathy caused by the FTL1 460lnsA mutation. Brain. 130(1):110-9, 2007. 3 Maciel P, et al. Neuroferritinopathy: missense mutation in FTL causing early-onset bilateral pallidal involvement. Neurology. 65(4):603-5, 2005.


症例

症例

-

資料

剖検所見 神経フェリチン症(本文と同一症例) 乳頭体部の右大脳冠状断,被 が灰白色調を呈し一部空胞化も認められた(図 1の矢印).被 ,パー ル鉄染色,組織は粗鬆化し一部空胞を形成していた.さらに濃青色に染まる鉄を含有した神経・グリア 細胞が多数出現していた(図 2の矢頭).

右大脳冠状断

被 (パール鉄染色)

(Lippincott Williams& Wilkins 社 J Neuropathol Exp Neurol.2004;63(4):363-80 より許可を得て転載)


症例 歳,男性

年ほど前より記憶障害があり,現在,認知症を認める

2年前,全身けいれんを起こす.今回発熱,手足の関節の痛みを訴え入院.認知症,情動反応異常, 両側バビンスキー反射陽性,関節拘縮を認める.

CT

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

(東京慈恵会医科大学放射線科,豊田圭子先生の厚意による)

T 強調画像


症例

那須ハコーラ病 解説 画像所見:CT で被 を中心とする石灰化を認める.全般的な大 脳萎縮がある.T 2強調画像で被

および淡蒼球に年齢に比べ強い

低信号領域を認める(図 2の矢印).視床にも低信号領域がある(図 2の矢頭).大脳白質には淡い高信号領域を認める(図 3,4の矢 印).T 1強調画像では大脳萎縮がある.頸骨,腓骨の遠位端に透 瞭像があり(図 6矢印),囊胞性病変が疑われる.距骨からの生検に て脂肪組織の周囲に膜状で乳頭状(唐草様)の脂質沈着を認め,本症 と診断された.

臨床 那須ハコーラ病(membranous lipodystrophy:膜性脂肪ジストロ フィー)は脂肪組織と脳を侵す疾患であり,常染色体劣性遺伝と えられている.20歳頃より下肢の痛みを訴え,ゆっくりと進行し, 病的骨折を起こす.30歳頃には精神・神経症状が出現し,急速に 認知症に至る.脳症状が主体の例と骨症状が主となる例がある. 病理では骨囊胞性病変内にゼラチン様の構造を認める. 脳の神経病理所見は 化性白質ジストロフィーあるいはズダン親 和性白質ジストロフィーと呼ばれる(CD-ROM 参照).白質を中心 とする大脳萎縮があり,脱髄,白質の線維性グリオーシス,軸索の 脱落があるが炎症性細胞を認めない.皮質下線維は保たれる傾向に ある.大脳基底核と視床には石灰化を認める.

画像診断 CT では全例に脳室拡大・脳溝開大があり,大脳萎縮がある.大脳基底核には多くの症例に石灰化を 認める.石灰化は淡蒼球に最も多いと言われているが,本例では被 であった.大脳白質には T 2強調 画像では高信号を認めることが多い.病理にて白質ジストロフィーがあると言われているほど,所見は 強くない.大脳白質に信号強度異常を認めない例もある(CD-ROM 参照).大脳皮質,視床,被

,尾

状核に低信号領域を T 2強調画像で認める. 骨所見は特徴的であり,骨端および骨端幹の骨梁の消失に始まり囊胞形性に進行する.囊胞は境界不 明瞭で周囲に 化像を認めない.手根骨と足根骨に著明であり対称性である.病的骨折をよく起こす. チュニジアからの 2症例の報告では視力障害で発症し,大脳白質に石灰化が多数認められている.大 脳白質に T 2強調画像にて高信号があるが,側脳室周囲に限局し,錐体路に高信号領域を認めた例が報 告されている(文献 3,CD-ROM 参照).

参照

Box

若年成人で,認知症と精神症状で発症する疾患(CD-ROM 症例 61)


症例

症例 症例 A

資料

歳,女性 那須ハコーラ病,主訴:左膝痛,歩行困難,軽度の認知障害

現病歴:自宅で転倒し左下肢を強打した.左膝周囲の疼痛のため歩行不能となった.10年前に 事故で右大

-

骨,骨盤の骨折の既往がある.最近,徐々に認知症が出現してきた.

T 2強調画像(図 1∼3)で大脳萎縮が著明である.前頭・側頭・頭頂葉に強い.視床,被 は年齢に比 して低信号が目立つ.白質には異常信号領域はない.脳梁の萎縮を認める(図 4).左大

骨遠位部,頸

骨近位部に透瞭像を認める(図 5).

T 強調画像

T 強調矢状断像

T 強調画像

大 骨

(帝京大学医学部附属病院放射線科,大場洋先生の厚意による)

T 強調画像


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,男性

那須ハコーラ病

34歳頃から認知症が出現,進行する.中手骨等に異常がみられ,頭部 CT 検査で大脳基底核に石灰 化も指摘され,検査所見から偽性副甲状腺機能低下症と診断された.46歳頃から自発性が低下して寝 たきり状態となる.肺炎のため死亡. 剖検所見 線条体頭部大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色(左)/ボデイアン(BD)染色(右),放線冠, 外包,側頭葉白質(黄・黒矢頭)で髄鞘淡明化がみられ,同部位では軸索の染色性も低下した(図 6).放 線冠,ボデイアン染色,軸索が減少し,一部でスフェロイド(軸索腫大)もみられた(図 7の矢印).腎臓 周囲脂肪組織,ズダン・ブラック B 染色,脂肪染色で濃染する膜囊胞性変化を認めた(図 8).

大脳冠状断(左 KB・右 BD 染色)

放線冠(BD 染色)

膜囊胞性変化(脂肪染色)

●参 文献 1 Araki T, Ohba H, et al. Membranous lipodystrophy:MR imaging appearance of the brain. Radiology. 180(3):793-7, 1991. 2 高橋洋一,他:精神・神経症状で発生した membranous lipodystrophy(Nasu-Hakola 病).神経内科 Vol.53,特別増刊 号,222-3,2000. 3 ChaabaneM,et al.Nasu-Hakola diseasein two Tunisian siblings:newradiological findings.Neuroradiology.42(5):3758, 2000. 4 山本由佳,他:Membranous Lipodystrophy(Nasu)の 1例.画像所見を中心として,画像診断 16(1):83-8,1996.


症例 歳,女性 肺と脳内の多発性病変 1ヶ月前より発熱,2週間前よりおかしなことを言う.他院の胸部 CT で多発性結節性病変を指摘さ れた.10日前より意識障害および左不全麻痺を認め当院に入院.肺内には多数の結節があり,脳内の 病変は T 2強調画像では高信号,T 1強調画像では淡い低信号を示す.

胸部の CT

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像

同冠状断像


症例

リンパ腫様肉芽腫症 画像所見 左肺野に結節があり(図 1),同様な小結節を多数肺内に認める.右側頭葉,視床には大きな結節状の 高信号領域を FLAIR 画像にて認める(図 2∼3).T 2強調画像でも同様である.その他に点状の高信号 領域が多数,大脳白質と大脳基底核,視床に認める.大きな mass effect はない.造影後には点状,線 状の造影効果が多数脳内に認められる(図 4∼6).軟膜表面に

ったような造影効果もあり(図 6矢印),

膜にも造影効果を認める(図 4,6矢頭).側脳室上衣下静脈に

う形の造影効果も認められる(図 5,

6の大きな矢印). 多発性の肺野病変と脳内病変がある.脳内病変は T 2強調画像では高信号を示し,点状,線状の造影 効果を持つ.小さな結節状の造影効果も示す例もある. 膜にも造影効果がある.右前頭葉の生検を行 いリンパ腫性肉芽腫症(lymphomatoid granulomatosis)と診断された.ステロイドおよび放射線治療に て治癒した.

臨床 リンパ腫様肉芽腫症は稀なエプスタイン・バール・ウイルスに関係した B 細胞リンパ球の増加を来 す疾患である.病理学的には血管中心性あるいは血管破壊性の多形性のリンパ球様の浸出物を特徴とす る.リンパ球,プラズマ細胞,免疫芽細胞,組織球によって構成される.明らかな肉芽腫は形成されな い.男女比は 2:1であり全年齢におよぶが 30歳代から 50歳代に多い.ごく軽度の免疫不全を伴うこ とが多い.最終的に悪性リンパ腫を引き起こす率は 10∼60%と言われている. 肺はほとんどの例で病変を伴い,90%以上において初期症状である.多発性の結節を示し,その大き さは数 mm から数 cm におよび,ときに空洞を認める.皮膚症状はその次に多い. 中枢神経系は 1/3の症例に侵される.

画像診断 Patsalides らによれば(文献 1),25例中 13例に異常があり,多発性の局所的脳内病変が最も多く, T 2 長所見,点状あるいは線状の造影効果を認める.7例に認められている.2番目に多いのは軟膜 と脳神経の障害であり,同部位に造影効果を 6例に認める. 膜の造影効果を 1例に認める.腫瘤を認 めたのが 4例ある.2例に脈絡叢の腫大と強い造影効果を認めている.多くの病変は治療によって消失 したが,ラクナ梗塞に陥った例もある.5例において髄液から異常な B 細胞がみつかっている. Tateishi らによると(文献 2),多発性あるいは線状の血管腔に

うような多発性の造影効果を有する

病変が本症に特徴的としている. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Patsalides AD, et al. Lymphomatoid Granulomatosis:Abnormalities of the Brain at MR Imaging. Radiology. 237(1): 256-73, 2005. 2 Tateishi U,et al.MR imaging of the brain in lymphomatoid granulomatosis.AJNR Am J Neuroradiol.22(7):1283-90, 2001.


症例

症例

症例 A(外科切除例)

-

資料

歳,女性 リンパ腫様肉芽腫症(本文と同一症例)

外科病理所見 ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色(図 1,3)/クリューバー・バレラ(KB)染色(図 2),大脳白質優 位に静脈・毛細血管の周囲腔にリンパ球様細胞の浸潤を認めた(図 1).同様なリンパ球様細胞の浸潤 は,大脳皮質深部(図 2)や軟膜下(図 3,写真上部が肥厚したくも膜)でも認められた.同一白質内血管 での抗 CD 3免疫染色(図 4,T 細胞が茶色に染まる)/抗 CD 20免疫染色(図 5,B 細胞が茶色に染ま る),血管周囲腔のリンパ球様細胞は T 細胞優位の傾向を示した.MIB 1染色,増殖能を有するリンパ 球様細胞の核が茶色に染まっていた(図 6).

大脳白質(HE 染色)

髄液腔(HE 染色)

大脳白質(KB 染色)


症例

-

白質内血管(CD 染色)

白質内血管(MIB 染色)

白質内血管(CD

染色)


症例 歳,男性 突然のけいれん,翌日,不審な行動があり,当院入院 抗生物質を投与するが発熱はなく,7日には中止,10日の髄液細胞数は 60/3,同 12日 MRI 施行.

T 強調画像

拡散強調画像

T 強調画像

MRS(同

日施行)

造影後の T 強調画像


症例

脳膿瘍 解説 画像所見:左前頭葉に浮腫を伴う腫瘤がある.

A

T 1強調画像で中心部は低信号,T 2強調画像で高 信号を示し,周辺には T 1強調画像ではやや高信 号,T 2強調画像で低信号を示し(図 1,2の矢頭), *

その部位に比較的厚い造影効果がある.拡散強調画 像では内部に高信号を認める(ADC 値は低下).リン グ状の造影効果を示す腫瘤の中で,内部に拡散強調

画像で高信号を示すのは膿瘍が最も可能性が高い. さらに 13日施行された MRS(図 6)では通常では

L

認められないアミノ酸(矢頭:0.9ppm),アラニン (矢 印:1.5ppm),ア セ テート(A:1.9ppm),サ

MRS

ク シ ネート(* 印:2.4ppm)お よ び 乳 酸(L:1.3 ppm)を認めた.膿瘍に特異的な所見であった.手術にて確認されている.

画像診断(MR 所見) T 1強調画像:早期 cerebritis の時期には限局しない低および等信号の混在,晩期 cerebritis の時期に は中心部が低信号,周囲は等信号からやや高信号.早期の被膜は白質に比べ等信号から高信号,中心は 髄液に比べ高信号,晩期の被膜は空洞は縮み,被膜は厚くなる. T 2強調画像:早期 cerebritis の時期には限局しない高信号を示す腫瘤.晩期 cerbritis の時期には中 心部が高信号,周囲は低信号があり,その周りに高信号を示す浮腫.早期の被膜は低信号を示し,膠原 線維,出血,常磁性遊離基による.晩期の被膜は浮腫,mass effect ともに小さくなる. 拡散強調画像:cerebritis と膿瘍で高信号を示し,ADCmap は低信号を膿瘍は示す. MRS では中心部の壊死部はアセテート,乳酸,アラニン,サクシネート,アミノ酸のスペクトラを 認める.

Box

リング状の造影効果を示す主な腫瘤の鑑別

1.原発性,転移性腫瘍:厚い,結節性の被 膜,拡散強調画像で低信号が多い(時に高 信号を示す例がある).MRS でアミノ酸, アラニンなどが認められない. 2.吸収過程にある血腫:外傷あるいは血管 障害の病歴,血液産物の信号強度の存在. 3.脱髄性疾患:不完全なリング状の造影効 果,脳の他の部位に病変の存在,病変の 大きさの割に小さな mass effect. (CD-ROM 参照)

4.亜急性期の梗塞:脳卒中の病歴,血管の 支配領域,脳回様の造影効果. 5.結核腫:アミノ酸,アラニンを MRS に て認めない.乾酪化 肉 芽 腫 は 中 心 部 が T 2強調画像で低信号を示す. 6.その他:真菌および寄生虫感染症,肉芽 腫,脳梗塞,悪性リンパ腫,脳膿瘍,放 射線壊死,血栓を伴う動脈瘤.


症例

症例

症例 A(剖検例)

-

資料

歳 脳膿瘍

死亡 2ヶ月前から頭痛が出現,右同名半盲,意識障害も加わる頭部 CT で左側頭葉に低吸収域を指摘 される.膿瘍吸引手術時,不整脈が頻発,その後心不全のため死亡. 剖検所見 大脳水平断,左側脳室後角に隣接した側頭葉白質に,中央部が空洞化した円形壊死巣を認めた(図 1 の矢印).左側頭葉・後頭葉水平断,クリューバー・バレラ(KB)染色(左)/ホルツアー(HZ)染色(右), 膿瘍周囲の白質は淡明化し線維性グリオーシスを示した(図 2の矢印).ヘマトキシリン・エオジン (HE)染色の強拡大膿瘍周囲(上半

)には炎症細胞浸潤が,また中央部(下半

)は軟化壊死をそれぞれ

示した(図 3).

大脳水平断

大脳水平断(左 KB・右 HZ 染色)

膿瘍周囲(HE 染色)

●参 文献 1 Garg M, et al. Brain abscesses:etiologic categorization with in vivo proton MR spectroscopy. Radiology. 230(2):519 27, 2004. 2 Lai PH, et al. Brain abscess and necrotic brain tumor: discrimination with proton MR spectroscopy and diffusionweighted imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 23(8):1369 -77, 2002. 3 Hartmann M, et al. Restricted diffusion within ring enhancement is not pathognomonic for brain abscess.AJNR Am J Neuroradiol. 22(9):1738-42, 2001.


症例 歳,男性 歳頃より無気力,無 認知症を認める

着になる.その後緩徐進行性の歩行障害,

顔貌異常(ガーゴイル様)があり,皮疹があり,左室肥大,尿蛋白陽性で慢性糸球体腎炎の疑いがあ る.神経学的異常所見は認知症,前頭様症状,尿 失禁,肥満,発汗低下がある.

FLAIR 画像

T 強調矢状断像

(東京大学医学部附属病院放射線科,森墾先生の厚意による)

FLAIR 画像


症例

ファブリ病 解説 画像所見:前頭・側頭葉に萎縮.側脳室周囲,深部白質,橋,脳梁に FLAIR 画像と T 2強調画像で 高信号を認め,T 1強調像では低信号を示す.小血管病変による虚血性変化と

えられる.本例に特異

的なことは拡大した perivascular spaceと えられる空胞が多数大脳白質に認められる.GLA 遺伝子の 点突然変異による α-ガラクトシダーゼ A 欠損症で,非典型的であるが,ファブリ病(Anderson-Fabry disease)と診断した.

臨床 ファブリ病は別名を“angiokeratoma corporis diffusum”とも呼ばれる性染色体劣性遺伝性疾患であ る.その発症頻度は 40,000人に 1人とされ,男性では hemizygoteの完全型,女性の保因者は heterozygoteの不全型が認められる.α-ガラクトシダーゼ A 欠損により,globotrianosylceramideが血管壁 の内皮,ペリサイト,平滑筋細胞や種々の臓器および神経系に沈着する. 典型例は,幼年・青春期に皮下の angiokeratoma で発症し,同時に四肢の間欠的な 熱痛,電撃痛を 認めるようになる.温度変化や運動によって疼痛は増悪する.広汎な血管障害に高血圧,腎障害,心肥 大,心筋虚血を生じ,若年発症の血栓性脳梗塞を生じる.加齢とともに心・腎不全症状が生じ,死に至 る.一般的に虚血性脳血管障害は男性は 34歳,女性は 40歳で発症し,26歳以下では MRI 上異常を認 めない.54歳以上ではすべての患者に血管障害を認める.認知症も,ときに認められる.

画像診断 50人の経時的な MRI 検査によれば,32%は脳内に所見はない.16%が灰白質病変のみ,26%が白質 病変のみ,26%に白質および皮質病変を有するとしている.MRI 上の病変は小血管病に合致する所見 であり,T 2強調画像および FLAIR 画像で点状の高信号領域として認められる.37.5%の患者が神経 学的所見を有する. Mitsias らは椎骨脳底動脈系の障害が高度であり,脳血管造影の特徴として,

長・拡張した椎骨脳

底動脈を挙げている. 最近になり,両側視床枕に T 1強調画像で高信号を認めた報告がある.10例中 7例にこの所見を Takanashi らは認め,7例に大脳白質の小さな高信号領域を認める.一方,Mooreらは 94回の MRI に よって,22人(23%)に視床枕に T 1強調画像で高信号を認める.加齢とともに増加し,50歳以上では 30%に増加する.石灰化の存在を反映すると彼らは

えている.本例にはこの所見は認めていない.

本例に認められた拡大した perivascular spaceは遺伝性の小血管病である hereditaryinfantile hemiparesis, retinal arteriolar tortuosity, and luekoencephalopathyとして報告された症例にも認められる. (CD-ROM 参照)


症例

症例 参照

Box

-

資料

遺伝性の脳小血管病の鑑別(CD-ROM 症例 46)

●参 文献 1 Crutchfield KE, et al. Quantitative analysis of cerebral vasculopathy in patients with Fabry disease. Neurology. 50(6): 1746-9, 1998. 2 Mitsias P, et al. Cerebrovascular complications of Fabrys disease. Ann Neurol. 40(1):8-17, 1996. 3 Takanashi J, et al. T1 hyperintensity in the pulvinar:key imaging feature for diagnosis of Fabry disease. AJNR Am J Neuroradiol. 24(5):916-21, 2003. 4 Moore DF, et al. Increased signal intensity in the pulvinar on T1-weighted images:a pathognomonic MR imaging sign of Fabry disease. AJNR Am J Neuroradiol. 24(6):1096-101, 2003. 5 Vahedi K,et al.Hereditary infantile hemiparesis,retinal arteriolar tortuosity,and leukoencephalopathy.Neurology.14; 60(1):57-63, 2003. 6 Dichgans M. A new cause of hereditary small vessel disease:angiopathy of retina and brain.Neurology.14;60(1):8-9, 2003.


症例 歳,男性

年前より歩行障害

歩行障害,手の震えで発症.その他に構音障害,小脳失調,著明な認知症がある.

FLAIR 画像

FLAIR 画像

T 強調画像


症例

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA):遅発性成人型 解説 画像所見:小脳の萎縮と小脳白質の高信号領域を FLAIR 強調画像で認める.橋被蓋および上小脳脚 (図 2の矢頭)に強い萎縮を認める.橋底部にも萎縮がある.橋底部と左後頭葉白質に異常高信号領域を T 2強調画像で認める.側脳室の拡大があり,FLAIR 画像で側脳室周囲白質にも高信号領域を認める. 軽度の大脳萎縮がある.以上をまとめると 40歳以降に小脳失調で発症し,不随意運動があり,MRI で 小脳,脳幹の萎縮,大脳萎縮があり,高信号を T 2強調画像あるいは FLAIR にて脳幹,小脳,大脳白 質に認めるときには DRPLA(dentatorubral-pallidoluysian atrophy)の遅発性成人型が最も

えられる.

脳幹の高信号は神経線維には無関係である.それぞれの症例による異なるが,左右対称性の高信号を認 める.橋では底部および被蓋,中脳にも萎縮を認めることが特徴である.

臨床 DRPLA の発病年齢は小児から中年まで幅広く,発病年齢によって臨床症状が異なる.20歳以下の 発病の若年型では進行性ミオクローヌスてんかん(てんかん発作,ミオクローヌス,認知症)を認める. 40歳以上の発病の遅発成人型では脊髄小脳変性症を示す.進行性ミオクローヌスてんかんを認めず, 小脳失調と舞踏病アテトーゼが主症状である.認知症を認めることが多い.20∼40歳発症の早期成人 型は上記の移行型を示す.てんかん発作を示す脊髄小脳変性症の場合は,この病型をまず疑う.第 12 染色体短腕に座を持つ遺伝子の CAG リピートに異常伸長があることを証明すれば診断は確定する.こ の症例では長男が 10歳でてんかん発作を発症している.

画像診断 遅発成人型では小脳,橋底部・被蓋,上小脳脚,中脳被蓋および大脳の萎縮があり,T 2強調画像お よび FLAIR 画像で,左右対称性に小脳白質,橋底部・被蓋,淡蒼球,視床,大脳白質,ルイ体に高信 号領域を認める.症例により高信号領域を認める領域が少し異なるが,橋底部および大脳深部白質に全 例認められる. 若年型では脳幹,特に橋と中脳被蓋,上小脳脚,小脳および大脳に萎縮がある.成人型における特徴 的な T 2強調画像での高信号領域を認める例は少ない. かに橋底部,下オリーブ核,淡蒼球に認める 例が時にある.成人型に比べて程度は軽いが,側脳室周囲白質の高信号領域は比較的多い例に認められ る. 早期成人型では MRI の所見は軽く若年型に近い.小脳,橋の軽い萎縮を認める例が多い.進行する に従い側脳室周囲や脳幹高信号領域を T 2強調画像にて認める. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 柳下章:脊髄小脳変性症の MRI.臨床放射線 44:1295-1303,1999. 2 内藤明彦:DRPLA の臨床像と病型 類.辻省次,内藤明彦,小柳新策編:DRPLA で ,13-31,医学書院・東京,1997.

臨床神経学から

子医学ま


症例

症例

症例 A(剖検例) 人型

-

資料

歳,男性 DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症):早期成

,姉,弟 2人が DRPLA,患者も CAG リピートが 70と異常伸張.19歳で進行性ミオクローヌス てんかんを発症,漸次,運動失調,認知症,全身性けいれんが増悪,肺炎を繰り返すうちに死亡. 剖検所見 橋上部水平断,対照(図 1)に比べ,症例では橋が全体に小さかった(図 2).大脳冠状断,ホルツアー (HZ)染色,淡蒼球外節(星印)と視床下核(矢印)に線維性グリオーシスが認められた(図 3).小脳歯状 核傍矢状断,クリューバー・バレラ(KB)染色(上)/ホルツアー染色(下),小脳全体の容量が減少,歯状 核は高度に萎縮し線維性グリオーシスを認めた(図 4の矢印).

対照の橋上部

症例の橋上部

大脳冠状断(HZ 染色)

小脳歯状核(上 KB・下 HZ 染色)


症例 歳,男性

歳頃より始まる全身けいれん

右前頭葉,側頭葉,後頭葉に脳波の異常を認める.精神発達遅滞がある.

T 強調画像

fast STIR 法冠状断像

T 強調画像


症例

厚脳回症 解説 画像所見:T 2強調画像で前頭葉の皮質が厚く,白質髄枝の入り込みが少なく,白質の外側のライン が直線化し,白質の volumeが減少している.信号強度異常はない.T 1強調画像でも皮質がやや厚い のがわかる.信号強度異常はない.fast STIR 法では皮質が厚く,白質が薄く,脳溝が少なめである. 前頭葉を中心とする厚脳回症の所見である.

臨床 無脳回症,滑脳症,厚脳回症は同じスペクトラムの上に載っている疾患群である.無脳回症は脳溝を ほとんど認めず,厚い皮質,薄い白質がある.滑脳症は無脳回症とほとんど同じ意味に用いられている が,agyria-pachygria complex とも呼ばれ,無脳回の部位と脳溝が形成される部位とがある.それに比 べ厚脳回症では脳溝が認められるが,正常に比べ皮質が明らかに厚いときに用いられる. 滑脳症 1型は通常の agyria-pachygria complex であるが,滑脳症 2型は福山型先天性筋ジストロ フィー症に伴う特殊な小多脳回症である.通常, “滑脳症”とは 1型を示す. 滑脳症は古典的滑脳症(頭頂・後頭葉に無脳回を認める)と,X 性染色体に連鎖した滑脳症(前頭葉に より変化が強い)とに

けられる.

画像診断(滑脳症を含む) CT では灰白質と等吸収域の厚い皮質を認める.ときに小さな石灰化を透明中隔部に認める. MRI では正常灰白質と等信号の厚い皮質がある.白質は薄い.大脳皮質の薄い浅層と厚い深層の間 に,T 2強調像で高信号,T 1強調像で低信号を示す帯状構造があり,皮質第三層と えられる. 同部位は神経細胞が少なく,部

的に有髄化した神経線維があり,それらを現していると

えられ

る.この構造は脳回形成のより不良な大脳後半部に存在することが多い.シルヴィウス裂の形成が不良 で砂時計様の形態を取る. 胎生 26週までは無脳回は正常の発達である. 厚脳回様に認められる部位に板状ヘテロトピアが隠れていることがあるので,要注意である. 滑脳症に加え,前額突出,小鼻,頰・側頭部の陥凹などの顔貌異常が認められる症候群は MillerDieker syndrome(MDS)と呼ぶ.17p 13.3に存在する LIS1 遺伝子の微小欠失による.無脳回は頭頂・ 後頭葉に存在し,前頭・側頭葉は厚脳回となる.脳梁吻部の形成が不良である.MDS 以外の脳奇形の みの古典的滑脳症を isolated lissencephaly sequenceと称する. X 連鎖性滑脳症と帯状異所性灰白質:Xq 22.3の doublecortin(DCX)遺伝子の短縮や単一アミノ酸置 換により,同一家系内で,男性患者では X 連鎖性滑脳症,女性患者では帯状異所性灰白質が認められ る.この滑脳症では,無脳回は前頭葉優位に認められ,小脳虫部の低形成を伴うことが多い.男性患者 では正常な,DCX 遺伝子を有する神経細胞がまったくないため重度の表現型(滑脳症)を呈する.これ に対して女性患者の大脳では,個々の神経細胞でいずれの X 染色体が不活性化されたかにより,遊走 能が異なり,正常遺伝子を発現した細胞は皮質まで遊走し,病的遺伝子を発現した神経細胞は皮質下に とどまることにより,帯状異所性灰白質を形成すると推測される. (CD-ROM 参照)


症例

症例

症例 A(剖検例)

-

資料

歳,男性

厚脳回症

生下時より低緊張性四肢麻痺で寝たきり状態.点頭てんかんもみられ,てんかん発作は死亡時まで持 続.肺炎により死亡. 剖検所見 赤核部大脳冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,二次・三次脳溝の形成は不良で大脳表面は平 滑で大脳皮質が厚く白質の容量は減少,白質からの髄枝の穿通も明らかではなかった(図 1).頭頂葉, 側頭葉の一部で第 3層に相当する有髄線維の束が認められた(図 1の矢頭).大脳皮質表層の弱拡大,ク リューバー・バレラ染色,第 1層の 上半

子層に加え,小型の錐体細胞が不規則に配列した第 2層(写真の

),有髄線維が目立つ第 3層(写真の下半

)がみられた(図 2).大脳皮質皮髄境界の弱拡大,ク

リューバー・バレラ染色,神経細胞が不規則に配列した第 4層では大脳白質からの細かい髄枝の穿通が 認められた(図 3). 髄中部水平断,クリューバー・バレラ染色,下オリーブ核のヘテロトピアが 被蓋に認められた(図 4の矢印).

▶ ▶ ▶ ▶

▶ ▶

◀ ▶

大脳冠状断(KB 染色)

皮質・白質境界部(KB 染色)

皮質第 層(KB 染色)

下オリーブ核のヘテロトピア(KB 染色)


症例

-

●参 文献 1 Dobyns WB, et al. Differences in the gyral pattern distinguish chromosome 17-linked and X-linked lissencephaly. Neurology. 22;53(2):270-7, 1999. 2 Landrieu P, et al. MRI-neuropathological correlations in type 1 lissencephaly. Neuroradiology. 40(3):173-6, 1998.


症例 歳,女性 主訴:意識障害 2000年 1月 26日,朝,母親が訪ねてきて意識を失って寝ているところを発見され,救急車で入院と なった.右片麻痺を認める.なお数日前より頭痛があった.

年 月 日午前 の FLAIR 画像

同拡散強調画像

同 MRA

(帝京大学医学部附属病院放射線科,大場洋先生の厚意による)

年 月

同 T 強調画像

日の MRA


症例

片頭痛による脳梗塞 解説 画像所見:左半卵円中心に,境界領域に FLAIR 画像で高信号を認め,拡散強調画像でも同部位には 高信号があり,脳梗塞と えられる.FLAIR 画像ではその他にも多数の点状の高信号が前頭・頭頂葉 の MCA 領域内の脳溝内に認められる.slow flowを示し,境界領域の梗塞と合わせると,内頸動脈の 狭窄と閉塞が えられる.程度は少ないが,小さな点状の高信号を右半球にも認める.海綿静脈洞部の 内頸動脈の flow void は狭小化し,内頸動脈に狭窄があることを示す(図 3).MRA では椎骨脳底動脈 系に著変を認めないが,内頸動脈の頭蓋内部はほとんど描出されていない.頸部 MRA では内頸動脈が 起始部より狭小化している(非掲載).約 1週間後の再検した MRA では内頸動脈が認められる. かに 鞍上部に狭小化が残存する.以上,短期間の経過により回復した内頸動脈の狭小化であり,血管攣縮に よると

えられる.患者は以前より前兆を有する片頭痛の持ち主であった.また,家族に片頭痛患者が

いる.片頭痛による脳梗塞と えられる.

臨床 片頭痛は暗い静かなところで横になりたくなるような頭痛である. 片頭痛と虚血性脳血管障害の合併状況には 3つのカテゴリーがある. 1.片頭痛による脳梗塞(migrainous infarct):A∼C を満たすもの. A:過去の頭痛発作が 前兆を伴う片頭痛 の診断基準を満たしている. B:今回の発作は前兆後 7日以内に完全回復がみられない,あるいは画像診断上,症状に対応す る責任病巣に虚血性梗塞が認められる. C :適切な検査により脳梗塞の他の原因が除外される.45歳以下の虚血性脳血管障害の 1.2∼ 14%を占めるとされている. 2.片頭痛の既往の上に時間的経過を経て,脳血管障害が発生するもの 3.脳梗塞が症候として片頭痛と 別不能な頭痛を呈するもの (それらの中で本例では片頭痛による脳梗塞と えられる) Schwaag らによると前兆を伴う片頭痛は若年者の脳卒中の有力な原因である.35歳以下では特に高 く女性に多い.症状は比較的ゆっくりと発症する.吐き気と嘔吐を伴うことが多いとする報告もある. 経過が良好な例が多い.

画像診断 片頭痛による脳梗塞では,血管造影にて血管攣縮を確認し得た症例は非常に少ない. 川らは 20歳男性の basilar migraineの 1例を報告している.10歳頃より片頭痛があり,片頭痛の あった翌日,構音障害,右不全麻痺を呈し,血管造影にて左椎骨動脈末梢に狭窄像を示し,MRI では 橋に梗塞を認める.翌日の血管造影にて狭窄像が消失する.その他の症例としては,Mas らの 1例が ある. 脳梗塞の部位としては後大脳動脈領域と視床に多い.その次が中大脳動脈領域であり前大脳動脈領域 は少ない. 片頭痛のある症例では血管周囲腔の拡大が目立つ.特に小児において顕著であるとの報告がある. (CD-ROM 参照)


症例

症例 Box

-

資料

若年者の脳梗塞の原因

1.心原性塞栓症

7. 血

2.動脈炎

8.抗リン脂質抗体症候群

3.動脈 化症

9.動脈解離

4.線維筋性異形成

10.毒物

5.妊娠に関係した血管症

11.頭部外傷

6.片頭痛による脳梗塞

Box

若年者の小脳梗塞

1.後下小脳動脈領域:非動脈 化性血管症,心原性塞栓症,血液疾患,原因不明 2.上小脳動脈領域:心原性塞栓症,原因不明,片頭痛,非動脈 化性血管症,血液疾患 3.混合領域:非動脈 化性血管症,原因不明,心原性塞栓症,血液疾患

症例 A

歳,女性 片頭痛に伴う脳梗塞

過去にも数回の発作を認める.2003年 1月 12日に右前頭部痛,めまい,複視,視野障害が出現.1 月 19日より左上肢の震え,嘔吐あり.1月 21日けいれん重積発作のため近医入院し症状改善.11月 21日よりめまい,右前頭部痛,悪心,視野障害(歪み)が出現.デパケン 増量で症状消失. 2004年 2月 14日左後頭部痛,めまい(虹色の光が回転),悪心,右上肢に軽度麻痺が出現.この時, けいれん・発熱はなし.症状軽快せず 2月 17日入院.同日撮像の MRI では異常を認めない.カルシ ウム拮抗剤の投与により症状改善.2月 25日の MRI にて左側頭葉から頭頂葉にかけて梗塞を認める (図 1,2).FLAIR 画像と拡散強調画像で高信号領域を同部位に認める.3月 15日の SPECT では患側 の左後頭葉から頭頂葉にかけて血流の増加を認める(図 3).3月 19日には症状は軽快し FLAIR 画像で も病変は軽快する(図 4). この症例では MRS で乳酸の上昇があり,解糖系の異常があるが,FLAIR 画像での高信号領域が可 逆性であることが興味深い. 片頭痛に伴う脳虚血発作である.前兆がある.familial hemiplegic migraineの概念に入る.この疾患 は 稀 で 常 染 色 体 優 性 遺 伝 を 示 す.P/Q タ イ プ カ ル シ ウ ム チャン ネ ル α1A サ ブ ユ ニット 遺 伝 子 CACNA 1A の変異を認める.症状としては前兆を伴う片頭痛に引き続いて脳虚血発作,けいれんを認 める.症状は寛解と増悪を繰り返す.カルシウム拮抗剤が奏効するが巣症状を残すこともある. 文献 5では 13歳の家族歴のある少年の症例報告がある.頭痛と左片麻痺を認め,発症 6日目の T 2 強調画像にて右半球の広範な皮質の腫脹を認めている.前頭・頭頂・後頭葉と血管の支配領域には無関 係である.10日目には症状が改善した.21ヶ月後,右片麻痺,失語症,頭痛で再入院.3週間後の MRI で,左半球の皮質の腫脹を認め,MCA の軽度の拡大を認める.拡散強調画像でも左半球皮質に は高信号領域を認めた.再び完全回復し,6ヶ月後の MRI では正常に戻っている. 皮質の腫脹があり,高信号領域を T 2強調画像では示すが,可逆性である所見は MELAS によく似


症例

-

ている.急性期には hypervascular で hyperperfusion でもあることも同様である.MELAS では通常 ADC 値は正常か上昇することが多く,その点が異なる可能性がある. 文献 7によれば,右片麻痺があるが,MRI では異常がなく,hyperperfusion を示した症例の記載が ある.

FLAIR 画像

SPECT

拡散強調画像

FLAIR 画像

(福井医科大学医学部附属病院放射線科,河村泰孝先生の厚意による) ●参 文献 1 川則之,他:血管造影により血管攣縮を確認し得た basilar migraine.神経内科 53(supple.2):264-5,2000. 2 Milhaud D, et al. Ischemic stroke and active migraine. Neurology, 57(10):1805-11, 2001. 3 Schick S, et al. Virchow-Robin spaces in childhood migraine. Neuroradiology. 41(4):283-7, 1999. 4 Barinagarrementeria F, et al. Causes and mechanisms of cerebellar infarction in young patients.Stroke.28(12):2400-4, 1997. 5 Butteriss DJA, et al. Serial MRI in a case of familial hemiplegic migraine. Neuroradiology 45(5):300, 2003. 6 Masuzaki M,et al.case of Hemiplegic migraine in childhood:Transient unilateral hyper perfusion revealed byperfusion MR imaging and MR angiography. Am J. Neuroradiol. AJNR 22(9):1795-7, 2001. 7 Oberndorfer S,et al.Familial hemiplegicmigraine:follow-up findings ofdiffusion-weighted magneticresonanceimaging (MRI),perfusion-MRI and[99mTc]HMPAO-SPECT in a patient with prolonged hemiplegic aura.Cephalalgia.24(7): 533-9, 2004.


症例 歳,男性

ヶ月前より歩行時ふらつき,認知症

本年 8月頃より認知症に家人が気がつく.9月になって歩行時のふらつき.9月下旬より頻回の転倒, 11月になり入院.

T 強調画像

造影後の T 強調画像

FLAIR 画像


症例

大脳膠腫症(gliomatosis cerebri) 解説 画像所見:両側大脳半球の白質を中心に病変が広がっている.脳梁と大脳皮質も侵されている.橋, 中小脳脚にも病変がおよぶ(未掲載).病変の広がりに比べて側脳室,脳溝への mass effect はほとんど ない.側脳室体部には後方からの軽い圧排・変形を認める.脳梁膨大部から大脳白質にかけて円形状の 造影効果を認めるが,ほとんどの領域で造影効果を認めない.右側頭葉からの生検にて星細胞腫 度の 結果であった.

臨床 大脳膠腫症は浸潤性が強く,既存脳構造を保ちながら腫瘍が大きくなる疾患である.2つ以上の脳葉 を侵し,びまん性に白質を中心に進展する.さらに大脳基底核,視床には 75%,脳梁には 50%,脳幹, 脊髄には 10∼15%,小脳には 10%に進展する.神経線維腫症 型を伴うことがある. 新生児から 83歳まで報告があるが,ピークは 40∼50歳である.大脳半球が侵されるときには半卵円 中心には必ず病変がある.大脳皮質は 19%,脳軟膜への浸潤は 17%である. 病理組織学的には 2つの種類がある. 型は腫瘍性の肥大,既存脳構造の膨張を示し,境界明瞭な腫 瘤を形成していない. 型はびまん性の病変に加えて局所的な腫瘤を形成する. 予後は不良であり WHO

類では grade

に入る.

画像診断 脳溝,側脳室への圧排所見が軽いが存在し,びまん性に 2つ以上の脳葉を侵しているときには gliomatosis cerebri を

慮する必要がある.

かな正常構造の偏位と小さな造影効果を見逃さないこと

がこの症例の診断には重要である.鑑別診断は aging brain と小血管病であるが,ともに mass effect を まったく認めない.膠芽腫は造影効果がより多い.感染症とはより急性の発症,髄膜の造影効果などで 鑑別できる.悪性リンパ腫では造影効果のある部位がより著明である. 生検が必要なこともある. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Lantos PL, et al. Tumors of the nervous system. eds. Lantos, PL et al. Greemfield s Neuropathology. 7th ed., 2:841-2, 2002. 2 Saraf-Lavi E, et al. Proton MR spectroscopy of gliomatosis cerebri:case report of elevated myoinositol with normal choline levels. AJNR Am J Neuroradiol. 24(5):946-51, 2003. 3 Rust P, et al. Gliomatosis cerebri:pitfalls in diagnosis. J Clin Neurosci. 8(4):361-3, 2001.


症例

症例

-

資料

大脳膠腫症(本文と同一症例) 外科切除標本(側頭葉白質) ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,異型性の強い核を有するグリア細胞が多数浸潤している(図 1 の矢頭).MIB1 染色,増殖能を有する腫瘍細胞の核が茶色に染まっていた(図 2).GFAP 染色,一部 の腫瘍細胞の胞体がアストロサイトのマーカーである GFAP が陽性であった(図 3の矢印).

◀ ◀

◀ ◀

◀ ◀

異型性グリア細胞(HE 染色)

腫瘍細胞(MIB 染色)

腫瘍細胞(GFAP 染色)


症例 歳,女性 年前より再発性,難治性のぶどう膜炎, 月 日に複視(右外転神経 麻痺),めまいを訴える 7月 16日右顔面神経麻痺,同 19日に MRI を撮像する.

T 強調画像

造影後の T 強調画像

FLAIR 画像

拡散強調画像

造影後の T 強調画像


症例

悪性リンパ腫:みせかけ症候群 解説 画像所見:T 2強調画像では橋被蓋に高信号領域を認める.髄液よりはやや低信号であり,第四脳室 は変形している.左視床前部にも病変を FLAIR 画像で認める.造影後の T 1強調画像では橋被蓋から 第四脳室内に強く造影される病変がある.さらに第三脳室上部,右側脳室前角内,右上衣下に造影効果 のある病巣を認める.拡散強調画像ではやや高信号領域を示す.以上の脳室に接した多発性の病変,難 治性ぶどう膜炎(みせかけ症候群)の既往があり,悪性リンパ腫と診断した.髄液細胞診から悪性リンパ 球を同定し,確定診断ができた.放射線治療により軽快したが,1年後に再発した.脳室内に浸潤した ことにより,髄液細胞診が陽性となったと えられる.

臨床 眼内に悪性リンパ腫が発生すると,難治性のぶどう膜炎症状を主徴とし,みせかけ症候群(仮面症候 群)と呼ばれる.その他には白血病が本症を示す.眼内に続き脳内にも悪性リンパ腫が出現するので, 眼内病変の診断が重要である.本例の難治性ぶどう膜炎は悪性リンパ腫によると えられた. 脳 内 の 悪 性 リ ン パ 腫 は 免 疫 不 全 患 者 に 多 発 し,AIDS 患 者,移 植 後,Wiskott-Aldrich 症 候 群, シェーグレン症候群,免疫抑制療法を受けている患者に多い.免疫不全のない患者にも発生する.

画像診断(脳内の悪性リンパ腫) 免疫不全を伴わない症例について述べる. 1.CT で高吸収域を示し,T 2強調画像で白質に比べると高信号であり,周囲の浮腫に比べると低信号 を示す. 2. 一な強い造影効果. 3.上衣下あるいはくも膜軟膜に広い範囲に接するもしくは浸潤している. 4.拡散強調画像にて灰白質より高信号領域を示すことが多い. 5.脈絡叢への浸潤が比較的多く認められる(Box 53参照). 6.腫瘍からの出血は少なく,石灰化は認められない. 免疫不全患者では悪性リンパ腫はしばしば不 一な造影効果あるいはリング状の造影効果を認める.

鑑別診断 1.神経サルコイドーシス: 衣下に

膜,くも膜軟膜に

った造影効果,実質内の病変は少ない.脈絡叢と上

った病変も少ない.

2.トキソプラズマ:側胞室上衣下への進展は少ない. 3.白質病変:時に鑑別不能.造影効果は少ない. 4.胚芽腫:上衣下に

Box

って播種が認められることがある.原発巣の存在.年齢が若い.

脈絡叢の腫瘍

1.脈絡叢乳頭腫

4.血管腫

7.転移巣

2.脈絡叢乳頭癌

5.悪性リンパ腫

8.リンパ腫様肉芽腫症

3.上衣腫

6.髄膜腫

(CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

脳と眼の悪性リンパ腫 脳悪性リンパ腫と眼悪性リンパ腫とは互いに高頻度で合併することが知られている.脳と眼に併発す る機序としては,主に多巣性発生,視神経経由で浸潤,脳軟膜経由で浸潤の 3つの可能性が えられて いる. 眼症状が中枢神経症状の出現や脳病変の発見よりも数週から数年間先行して出現しやすい特徴があ り,眼所見は多くの場合,ぶどう膜炎症状を呈し,虹彩毛様体炎,前房蓄膿など多彩であり,ステロイ ド抵抗性で病初期は原因不明とされることが多い. 本来炎症ではない疾患が眼内に炎症を引き起こし,あたかも原発性ぶどう膜炎のようにみえるこの所 見は〝みせかけ(仮面)症候群" と呼ばれ,悪性・非悪性の様々な疾患が原因となり得るが,眼悪性リン パ腫はみせかけ症候群を来す代表的疾患である(文献 4).

症例 A(剖検例)

歳,女性

悪性リンパ腫

62歳で意識障害で発症,頭部 MRI で前角から側脳室に

って病変が進展,放射線照射を受けるが認

知障害等が進行,肺炎で死亡. 剖検所見 赤核部大脳冠状断,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,側脳室を介して帯状回,脳梁,脳弓,海 馬に悪性リンパ腫が浸潤していた(図 1の矢印).後頭極大脳冠状断,ヘマトキシリン・エオジン染色, 両側の側脳室後角周囲にもリンパ腫浸潤病変を認めた(図 2の矢印).

歳症例の大脳冠状断(HE 染色)

歳症例の後頭極(HE 染色)


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,男性 悪性リンパ腫

57歳で顔面神経麻痺で発症,視力低下,眼球運動障害,四肢麻痺も加わり,頭部 MRI 検査でも橋か ら小脳に病変が認められ脳幹脳炎が疑われた.中枢性呼吸不全のため死亡. 剖検所見 橋・ 髄,ヘマトキシリン・エオジン染色,橋の被蓋背側正中・橋底部, 髄の内側毛帯・錐体にリ ンパ腫浸潤病変を認めた(図 3の矢印).リンパ腫細胞は CD 45RO が陽性で T 細胞性であった(図 4).

歳症例の脳幹(HE 染色)

歳症例のリンパ腫細胞(CD

RO 染色)

●参 文献 1 Stadnik TW,et al.Imaging tutorial:differential diagnosis of bright lesions on diffusion-weighted MR images.Radiographics. 23(1):7e, 2003. 2 Rothova A, et al. Uveitis masquerade syndromes. Ophthalmology. 108(2):386-99, 2001. 3 Schober R,et al.Primaryintracerebral malignant lymphoma presenting with ophthalmological symptoms:bioptical and autoptical case study. Neurosurg Rev. 12(1):63-6, 1989. 4 村上泰生,他:Behcet 病との鑑別を要し,硝子体生検により診断し得た眼・脳悪性リンパ腫の 1例.神経内科 62(1): 168-72,2005.


症例 歳,男性

歳頃より始まる歩行障害

中学生頃から成績の低下.18歳頃より歩行障害,24歳より車いすを

用.深部腱反射の亢進,遠位

筋優位の筋萎縮と対麻痺,嚥下障害,構音障害,小脳失調.

T 強調画像

造影後の T 強調画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

副腎脊髄ニューロパチー(AMN):大脳変性を伴う 解説 画像所見:橋,小脳,前頭葉の萎縮があり,橋,内包後脚の錐体路に T 2強調画像で高信号領域を認 める.また左視放線に って高信号領域がある.造影後には内包後脚,放線冠の錐体路に って造影効 果を認める.以上から,痙性対麻痺,小脳失調のある本例では副腎脊髄ニューロパチーと えられる. 大脳では錐体路以外にも視放線に変性所見を認めるので,大脳変性を伴う型で,以後さらに進行する 予後不良な病態である.副腎機能の低下,極長鎖脂肪酸の上昇を認め診断が確定した.

臨床 副腎白質ジストロフィー(ALD)は極長鎖脂肪酸の先天性代謝障害を伴う伴性劣性遺伝性疾患である. その中で成人発症の感覚障害を伴う痙性対麻痺にて発症するタイプがあり,副腎脊髄ニューロパチー (AMN)とよばれる. Moser らは成人の ALD/AMN の新しい 類を提唱した. 1.純粋型 AMN:脊髄 MRI で萎縮を認めるが頭部 MRI 上は異常がない(約 40%). 2.脊髄路変性を伴う AMN(ALMN 1):頭部 MRI で皮質脊髄路,脊髄視床路を初めとした脊髄路変性 を認める(約 9%). 3.大脳変性を伴う AMN(ALMN 2):頭部 MRI では脊髄路に限らず両側後頭・頭頂葉白質にも異常を 認める.神経症候は純粋型 AMN と同様に痙性対麻痺で発症するが疾患の進行とともに高頻度に皮 質機能障害を伴う(約 19%). 4.成人大脳型:AMN の症候を伴わず 21歳以上で広範な大脳半球症状が重篤かつ急速に出現する(約 5%).病変は小児 ALD と異なり,典型的な後頭葉型や前頭葉型

布パターンを呈さず白質病変は

びまん性でかつ高度である.脳萎縮も皮質,皮質下,脳幹に認められ脳梁も侵される.ときに脊髄 小脳変性症様の萎縮を示す. 5.女性ヘテロ接合体型:非常にゆっくり進行する痙性対麻痺を呈する.慢性型の脱髄性脊髄症である. MRI では胸髄の萎縮を認めるが脳内に異常があるのは大変稀である(約 27%). 本例は 3.に相当する.

画像診断 1.純粋型 AMN の MRI では脊髄の萎縮が認められる.髄内の異常高信号領域の存在は大変稀である. 2.脊髄路変性を伴う AMN では上記 類 1.の所見に加えて,脳内の皮質脊髄路(脳幹,内包後脚,放 線冠)に高信号領域を T 2強調画像にて認め,それらに造影効果を認め,脳幹,小脳に萎縮がある. 小脳内に異常高信号領域を認めることがある. 3.大脳変性を伴う AMN では上記

類 2.に加えて,皮質脊髄路以外の大脳白質に異常高信号領域を

T 2強調画像で認め,それらに異常な造影効果を認め,前頭葉に萎縮を認める. 両側皮質脊髄路に異常高信号領域を T 2強調画像で示す疾患は症例 28中の Box 18を参照. それらの中で,脳幹,小脳の萎縮を伴うこと,内包後脚内の高信号領域が皮質脊髄路に限局せず,よ り広い範囲に病巣を認めることが AMN では多い.それらに多くは造影効果を認めることも重要であ る.小脳白質内に高信号領域を認めることもある.大脳変性を伴う AMN では,大脳白質にも高信号 領域を認める.以上より多くの症例は鑑別が可能である. (CD-ROM 参照)


症例

症例 参照

-

資料

両側皮質脊髄路に異常高信号を呈する疾患(症例 28)

Box

症例 A(剖検例)

歳,男性

副腎脊髄ニューロパチー

詳細病歴不明 剖検所見 橋中部・小脳吻側水平断,クリューバー・バレラ(KB)染色,橋底部と小脳白質の有髄線維が高度に 脱落と橋底部の萎縮もみられた(図 1の矢頭).小脳皮質,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,プル キンエ細胞は高度に脱落,同細胞の近位軸索腫大であるトルペード(矢印)も認められた(図 2).放線冠 を含む前頭葉の白質に髄鞘脱落がみられるが(矢頭),脳梁膝部先端は保たれており,白質病変の尾側か ら吻側への進展が明らかである(図 3).前頭極白質,ヘマトキシリン・エオジン染色,髄鞘脱落部位で は,症例 61の CD-ROM 症例 A と同じように静脈周囲性の炎症細胞浸潤と肥大したアストロサイトの 増加がみられた(図 4).

橋・小脳(KB 染色)

小脳皮質(HE 染色)

▼ ▲

大脳冠状断

前頭極白質(HE 染色)


症例

-

●参 文献 1 Kumar AJ, et al. MR findings in adult-onset adrenoleukodystrophy. AJNR Am J Neuroradiol. 16(6):1227-37, 1995. 2 Mo YH,et al.Adrenomyeloneuropathy,a dynamic progressivedisorder:brain magneticresonanceimaging oftwo cases. Neuroradiology. 46(4):296-300, 2004. 3 Loes DJ, et al. Analysis of MRI patterns aids prediction of progression in X-linked adrenoleukodystrophy.Neurology. 61(3):369 -74, 2003.


症例 歳,男性 右上下肢の不随意運動 右下肢にバリスムやヒョレア様の不随意運動を認める.

日の CT

日の T 強調画像

同 T 強調画像


症例

高血糖に伴うバリスムやヒョレア 解説 画像所見:CT で左の被

の吸収値が反対側に比べやや高い.T 1強調画像では被

に高信号を認め

mass effect がない.T 2強調画像では明らかな信号強度異常がない.血糖値 163mg/dl,HbA1c10.4の 糖尿病があり,高血糖に伴うバリスムやヒョレアと

えた.

臨床 高血糖を伴う患者にときに認められる急性発症の舞踏運動やバリスムである.その病態機序は依然不 明である.60歳以上の高齢者に多い.糖尿病のコントロール不良例に不随意運動で発症する例が多い が高血糖への治療開始後早期に発症する例もある. 大半の例が高血圧を合併する.剖検や生検では出血を示す所見が認められない. 病変は血管支配には無関係であり,出血ではなく動脈 化を背景として,血糖の急激な上昇をおよび 正常化によって起こる代謝異常と えられるとする報告がある(文献 4).

画像診断 病変部位は片側不随意運動の場合は反対側の,両側性のときに両側の被 ,尾状核に認められる.間 にある内包前脚は病変を認めないことが多い. CT では発症早期に 7割の例で高吸収域を示す. T 1強調画像で被

もしくは尾状核(あるいは両方)にほぼ全例に高信号領域を認めた.T 2強調画像

では明らかな信号強度異常は通常はなく mass effect もなく造影効果もない.ときに T 2強調画像で被 が低信号を示す例もあるが,その後の追跡 MRI ではへモジデリン沈着を示さない.拡散強調画像で は高信号を示す例がある.多くの症例は急性発症で何らかの血管障害の関与が疑われる. 病理は急性障害に伴って出現する,膨張した反応性の星状細胞である肥胖細胞(gemistocyte)が多数認 められる.

鑑別診断 大脳基底核の T 1強調画像での高信号領域参照(CD-ROM 症例 6の Box 4). ●参 文献 1 Shan DE,et al.Hemichorea-hemiballism:an explanation for MR signal changes.AJNR Am J Neuroradiol.19(5):86370, 1998. 2 Wintermark M,et al.Unilateral putaminal CT,MR,and diffusion abnormalities secondaryto nonketotichyperglycemia in the setting of acute neurologic symptoms mimicking stroke. AJNR Am J Neuroradiol. 25(6):975-6, 2004. 3 Lai PH,et al.Chorea-ballismus with nonketotic hyperglycemia in primary diabetes mellitusl AJNR Am J Neuroradiol. 17(6):1057-64, 1996. 4 福武敏夫:高血糖ないしその補正によって片側の舞踏運動がみられることがある.谷諭編:脳神経外科の常識非常識. 三輪書店,305-6,2004.


症例 歳,男性

年前よりラ行の発音ができない

呂律不良が進行し,発語不良,振戦,歩行時のふらつきが進行する.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像


症例

ウィルソン病 解説 画像所見:脳幹,小脳,大脳の軽度の萎縮がみられ,被 ,淡蒼球,視床にかけて両側対称性に高信 号および低信号を被 外側と視床外側に認める.高信号と低信号の混在した画像が特徴的である.被 には軽度の萎縮の疑いがある.中脳では赤核周囲,中脳水道周囲に高信号領域を T 2強調画像にて認め る.この画像はジャイアントパンダの顔として知られている.橋被蓋にも高信号を認める.

臨床 運び屋蛋白である血清セルロプラスミンの低下により銅代謝の異常が起こり,肝および脳に銅が過剰 な沈着を起こし発症する.尿中の銅の上昇と血清のセルロプラスミンの低下を認めれば診断は確定す る.神経症状は銅の脳実質への沈着により起こるが,その他に肝障害による脳症も加わる.

画像診断 最もよく認める所見は大脳萎縮である.大脳基底核,視床,大脳白質に両側対称性に信号強度異常が 認められる.この病理は壊死,浮腫,海綿状変性である. 被 と尾状核に変化が最も強い.尾状核の萎縮を伴う. 神経症状が出現したすぐ後に施行された拡散強調画像で被

と尾状核に高信号と腫大を認める.

ADC 値の低下がある.銅沈着により細胞の死と炎症が起こると解釈されている.一方,1年半後に実 施された拡散強調画像で同領域は低信号を示し,ADC 値の上昇がある.壊死,脱髄,海綿状変化が起 こったと えられる. 低信号を T 2強調画像で大脳基底核,視床に認めることがあり,銅の沈着あるいは付随する鉄の沈着 による. 淡蒼球に T 1強調像で高信号を伴うことがあり,肝障害による脳症による. 橋被蓋と底部,小脳にも高信号を T 2強調画像にて認めることがある. ときに T 2強調画像で大脳と小脳白質に高信号を認める.皮質脊髄路,歯状核赤核路などにも高信号 を認めることがある.

鑑別診断 1.リー脳症:発症が乳児期から早期小児期 2.一酸化炭素中毒:淡蒼球の対称性の病巣 3.CJD:大脳基底核前部に萎縮を初期には伴わない.大脳皮質にも拡散強調画像にて高信号 4.日本脳炎:視床,黒質の病変 5.MSA-P 型:被 の萎縮を伴い,外側に線状の高信号領域,必ずしも左右対称ではない. 6.グルタール酸血症:淡蒼球と大脳白質に高信号,側頭葉に囊胞,シルヴィウス裂の拡大 (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Sener RN.Diffusion MR imaging changes associated with Wilson s disease.AJNR Am J Neuroradiol.24(5):965-7,2003. 2 King AD, et al. Cranial MR imaging in Wilson s disease. AJR Am J Roentgenol. 167(6):1579 -84, 1996. 3 van Wassenaer-van Hall HN, et al. Cranial MR in Wilson s disease: abnormal white matter in extrapyramidal and pyramidal tracts. AJNR Am J Neuroradiol. 16(10):2021-7, 1995.


症例

症例

症例 A(剖検例)

-

資料

歳,男性 ウィルソン病

17歳でマラソン後に発熱,歩行障害,構音障害,振戦も加わる.錐体外路症状の増悪のため入退院 を繰り返した.眼科的に Kayser-Fleischer 角膜輪を認め,血清銅・セルロプラスミン低値であり,錐体 外路症状と肝障害と合わせてウィルソン病と診断される.褥瘡からの敗血症により死亡. 剖検所見 正中隆起部大脳冠状断,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,大脳の軽度の萎縮と側脳室の拡大が みられ被 ・尾状核にも萎縮がみられた.加えて両側の被

,前頭葉白質が粗鬆化していた(図 1の矢

頭).被 ,ヘマトキシリン・エオジン染色の強拡大,海綿状態と小型グリア細胞の増加がみられた(図 2).

大脳冠状断(HE 染色)

(HE 染色)


症例 歳,男性 他院で MRIを撮り,脳転移があると言われた 昨年よりなんとはなく仕事ができない.車の運転が左による.

T 強調画像

拡散強調画像強調画像

T 強調画像

T 強調画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像


症例

多巣性の神経膠腫 解説 画像所見:右前頭葉に腫瘤がある.比較的境界明瞭である.その後部は囊胞状変化を認める.造影効 果は周囲に起こりリング状である.リング状の造影効果を示す腫瘤が鑑別に挙がる.もう 1つ重要な所 見が本例にはあり,右側頭葉白質の信号強度が上昇し,島回を介して前頭葉の病変とつながりがある可 能性がある.多巣性で同じ病変と えると,多発性

化症,脳梗塞は えにくい.また,前頭葉の病変

には明らかな造影効果があるのに,側頭葉のそれにはない点は転移あるいは悪性リンパ腫では合いにく い.これらの疾患では同じような造影効果のある病変が期待されるからである.膠芽腫では多巣性のと きに,場所により造影効果がない部位とある部位とが混在することがよくある.そのような鑑別から膠 芽腫が最も えられる画像である.前頭部の手術所見は囊胞を伴った正常組織と境界が不明な病変であ り,その病理所見は星細胞腫 度であった.側頭葉の手術はしていない.約 2年後,右大脳半球から脳 梁にかけて広範な浸潤をきたし死亡した.膠芽腫であったと推測している.

臨床 多巣性の神経膠腫は真に多巣性の独立した病変のこともあるが,より多くは画像では不明であるが, 連続した病変であることが剖検例では判明する.通常,病理所見は膠芽腫が多い.多巣性の独立した膠 芽腫は膠芽腫全体の 2.3%に認められる.NF-1は多巣性の星細胞腫を合併することがある.

鑑別診断 リング状の造影効果を示す主な腫瘤の鑑別(症例 68の Box 50参照)で示すように,腫瘤としては脳膿 瘍,転移,多発性

化症,原発性腫瘍(悪性度の高い星細胞腫,悪性リンパ腫),放射線壊死,および血

腫が えられる.腫瘤ではないが脳梗塞でも稀にリング状の造影効果を示す.病歴および拡散強調画像 で高信号を示さない点より脳膿瘍,悪性リンパ腫,放射線壊死は否定的である.T 1強調像の所見より 特に血腫を疑わせる所見ではない. ●参 文献 1 Lafitte F, et al. Multiple glioblastomas:CT and MR features. Eur Radiol. 11(1):131-6, 2001. 2 Ozawa Y, et al. MRI findings of multiple malignant gliomas: differentiation from multiple metastatic brain tumors. Radiat Med. 16(2):69 -74, 1998.


症例 歳,男性

月 日夜,失禁し,意識がもうろう状態で家族に発見される

糖尿病とアルコール依存症の患者である.当日の MRI で 12日と同様な異常所見を認めている.血 管造影を他院で施行されるが異常を認めない.当院入院時,軽度の意識障害がある.明らかな麻痺は認 めない.記銘力の低下を認める.

日の T 強調画像

日の右後頭葉内側の MRS

同拡散強調画像

日の SPECT


症例

低血糖による大脳の壊死 解説 画像所見:T 2強調画像で右前頭葉内側,右島回から側頭葉外側,海馬を含む側頭葉内側から後頭葉 内側,視床内側にかけて高信号を示し,拡散強調画像でも高信号を示した(但し,ADC 値は上昇し, T 2shine through 効果の可能性が高い).造影効果は認めない(非掲載).右後頭葉内側での MRS では 乳酸が上昇し,NAA は低下し,コリンの上昇を認める.大脳皮質に壊死が起こっている所見に合致す る.SPECT では MRI での異常部位に血流増加を認める.T 2強調像の高信号領域は血管の支配には一 致せず,ACA,PCA,MCA 領域におよぶ.さらに正常と

えられる部位が間に存在する.他院来院

時の血糖値は 12mg/dl であり,グルコース投与により意識状態の改善をみたので低血糖による脳損傷 (大脳皮質壊死)と

えた.海馬を含む大脳皮質に壊死を認め,血管の支配領域に無関係で,決して潅流

境界領域ではない.低血糖による脳損傷が最も えられる像である.

臨床 低血糖による脳損傷の内,局所的な所見として片麻痺が最も多い.その他には進行性の脳幹症状, ヒョレア・アテトーゼの報告がある. 低血糖による片麻痺は小児から成人まで起こり,82%の患者が糖尿病を持ち,多くはインスリンを 用している.その他にはインスリノーマの例がある.80%は再発をしている.片麻痺を起こした際の血 糖値は平

で 29mg/dl である.診断は片麻痺を示し,低血糖があり,グルコースの投与で改善してい

ることによる.片麻痺の持続時間は低血糖の時間に依存するが,1時間以内が多い.局所的な脳損傷の 原因は不明である.血管攣縮,低血糖に対する神経細胞の選択的脆弱性,既存に存在する血管障害によ るとする説がある. 病理:低血糖による脳損傷は海馬および大脳皮質に選択的神経細胞壊死を起こす.選択壊死の部位は 大脳皮質,海馬と尾状核に限られ,脊髄には稀で,小脳には認めない.大脳皮質の中でも表層が侵され るのが低血糖による脳損傷の特徴であり,虚血のように動脈の境界領域に強いのではなく一様である. 急性発症の片麻痺をみると脳卒中をまず えるが低血糖もよくある原因である.糖の補給のみで改善 することが多いので血糖値をチェックする必要がある. 代謝性脳症の特長: 1.全般的な脳機能の低下(意識障害など) 2.部 的興奮(けいれんなど) 3.障害のされやすい部位による違い vulnerability(片麻痺など) 4.症状の変動性 (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 低血糖による片麻痺の報告は多いが片麻痺を呈した病巣を画像で描出できた症例は少ない.最近では 橋内に拡散強調画像で高信号を認めた 1例の報告がある.発作の 1週間後に中側頭回,大脳基底核,海 馬に異常所見を認めた例がある.内包後脚に一過性の低吸収域を CT で認めた例がある. 片麻痺とは無関係に低血糖症において両側中小脳脚,皮質脊髄路に異常信号を認めた例がある.臨床 所見は不明であるが,側頭葉から後頭葉にかけて本症と同様な所見を示し,線条体にも病変を有する例 が成書に認められた. 本例の特徴として血管の支配領域を無視し前頭葉内側,側頭葉,後頭葉皮質におよんでいる点であ る.既存の血管障害というよりは選択的脆弱性をより 血糖に合致する所見と

えたい.SPECT にて高血流であったことも低

えた.なお,後に右半球の血流は低下した.片麻痺があり血管造影にて異常を

認めないときには鑑別の 1つとして常に えておくべき疾患である.

鑑別診断 1.多発性塞栓症:同側の 3本の血管が同時に閉塞し,かつ再開通するのは稀である.SPECT にて高 血流であり,そのようなときには通常 MRI にて造影効果を認める. 2.MELAS:発作初期には血管造影で患側の支配血管が拡大するが本例では認められない.SPECT で の高血流は同様である.拡散強調画像では MELAS では高信号を示さない.通常,年齢はもう少し 若い. ●参 文献 1 Fuller GN,et al.Hypogycemia and theCNS.ed.Vinken PJ,in Handbook ofClinical Neurology,vol.70 179 -80,Elsevier, Amsterdam. 1998. 2 Shirayama H, et al. Acute brain injury in hypoglycaemia-induced hemiplegia. Diabet Med. 21(6):623-4, 2004. 3 Koppel BS, et al. Transient hypodensity on CT scan during hypoglycemia. Eur Neurol. 33(1):80-2, 1993.


症例 歳,男性

年前より難聴,他院で脊髄小脳変性症と診断される

現在ではほとんど耳は聞こえない.自転車での転倒が多くなり,話しにくい.座位から起きあがるの が困難.小脳失調,構音障害を認める.

T 強調画像

T 強調画像

T

T 強調画像

強調画像(グラディエントエコー法)


症例

脳表ヘモジデローシス 解説 画像所見:T 2強調画像で脳幹,小脳,側頭葉底部,シルヴィウス裂に

った軟膜,くも膜に

って

低信号領域を認める.この低信号はグラディエントエコー法にてより明瞭になり,脳表へのヘモジデリ ン沈着を示す.脳底槽内の下部脳神経も低信号を示す.小脳特に虫部に萎縮を認める.T 1強調画像で は橋被蓋には淡い高信号領域を認め,フェリチンの沈着による.以上の所見は脳表ヘモジデローシスを 現す.本例では原因病巣はみつからなかった.脊髄も仙髄まで脳表にはヘモジデローシスが認められ た.

臨床 慢性的なあるいは再発性のくも膜下出血で起こり,ヘモジデリンを貪食したマクロファージが髄膜と 軟膜下に認められる.その病因としては原発性脳腫瘍(側脳室内の上衣腫,海綿状血管腫,血管芽腫な ど), 膜動静脈瘻,脊髄円錐の上衣腫が有名である.しかし原因のわかるのは 55%であり,その他は 不明である.ヘモジデリン沈着は神経細胞消失,脱髄およびグリオーシスを起こす.数ヶ月あるいは数 年は無症状であるが次第に症状を現す.小脳失調(約 80%),脳神経症状(約 90%,最も多いのは難聴), 錐体路徴候,嗅覚脱失,進行性の高次機能障害,膀胱障害などである.男性が多く 3:1である.

画像診断 T 2強調画像およびグラディエントエコー法で脳,脳神経,脊髄の表面に低信号を認める.小脳が最 も好発部位であり萎縮を伴う. 新生児の脳室内出血の後遺症として,側脳室上衣にヘモジデリン沈着をみることがある.

参照

Box

小さなフリップ角と長いエコー時間を

用したグラディエントエコー法による

低信号を示す状態(CD-ROM 症例 48) (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Gomori JM,et al.High-field MR imaging ofsuperficial siderosis ofthecentral nervous system.J Comput Assist Tomogr. 9(5):972-5, 1985. 2 Gomori JM, et al. High-field spin-echo MR imaging of superficial and subependymal siderosis secondary to neonatal intraventricular hemorrhage. Neuroradiology. 29(4):339 -42, 1987. 3 Fearnley JM, et al. Superficial siderosis of the central nervous system. Brain. 118 (4):1051-66, 1995.


症例

症例

症例 A(剖検例)

-

資料

歳,男性 脳表ヘモジデローシス/海綿状血管腫

(症例 48の CD-ROM 病理症例 D と同一症例,小脳虫部に海綿状血管腫) 剖検所見 第 5頸髄,ベルリン青染色,頸髄の全周で軟膜下の最表層が青に濃染し組織鉄の沈着が示唆された (図 1).ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の強拡大では,褐色のヘモジデリンを貪食したマクロ ファージ/ミクログリアが集簇していた(図 2の矢印).

頸髄(ベルリン青染色)

軟膜下強拡大(HE 染色)


症例 歳,女性 両側眼球突出,左動眼神経麻痺,両側外転神経麻痺,眼振,右顔面神 経麻痺,下垂体機能不全 3ヶ月前より左顔面のピリピリ感,二重視,左眼瞼下垂に気がつく.2ヶ月前より他院でプレドニン 服用で軽度の改善,1ヶ月前より右顔面神経麻痺が出現する.3月 7日に左目の痛みにより緊急入院す る.神経学的異常所見として両側眼球突出,左動眼神経麻痺,両側外転神経麻痺,眼振,右顔面神経麻 痺,下垂体機能不全を認める.3月 11日に CT,MRI を撮像する.

▼ ◀

CT

T 強調矢状断像

同 T 強調画像

▼ ◀

FLAIR 画像

T 強調冠状断像

造影後の矢状断像


症例

下垂体悪性リンパ腫 解説 画像所見:トルコ鞍の大きな拡大はなく,骨破壊を認めない.CT では鞍内に高吸収域を示す腫瘤が ある.鞍上部の腫瘤も同様に高吸収域であった(非掲載).T 2強調画像では鞍内から鞍上部にかけて, ダンベル状に腫瘤があり,灰白質に近い信号強度を示し(図 2矢頭),高信号にはなっていない.T 1強 調画像でも白質に近い信号強度を示し

一である.FLAIR 画像では視

叉,視索,視床下部に高信号

を認める.冠状断像の T 1強調画像では内頸動脈の外側には腫瘤はない.しかし臨床的には外転神経麻 痺と動眼神経麻痺があり,海綿静脈洞への浸潤があると えられる.画像からは明らかではないが浸潤 性の腫瘍を疑わせる臨床所見である.造影後には強い造影効果が腫瘤に起こっている.さらに斜台およ び前頭蓋底に って 膜に長い距離にわたり造影効果が認められる(図 6の矢頭).小脳天幕にも同様の 造影効果を認めた(非掲載). CT での高吸収域の存在,病変全体の造影効果,T 2強調画像での比較的低信号,

膜に長い範囲に

わたる造影効果,トルコ鞍の拡大がない.画像からは不明であるが臨床症状にて明らかな海綿静脈洞へ の浸潤により悪性リンパ腫と えた. 本例は頸部リンパ節の腫大があり,そこからの生検にて悪性リンパ腫(diffuse large cell lymphoma)が みつかっている.

類似症例 文献上,最もよく似ているのは Leeらの報告した mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma ofthe pituitary gland(文献 1)である.下垂体や海綿静脈洞からの悪性リンパ腫は粘膜関連リンパ組織からで る悪性リンパ腫と同様の組織と えられる.脳神経に った進展,長い dural tail sign が特徴的で本症 によく似ている.中年の婦人に発生する点も同じである.

鑑別診断 転移巣:長い距離の 膜の造影効果が合いにくい.拡大のないトルコ鞍は一致する. リンパ球性下垂体炎(CD-ROM 参照):T 2強調像での高信号領域を示すことがあり,その場合には リンパ腫とは異なる.しかし等信号から低信号を示す例もあり

膜に造影効果もあり困難なこともあ

る. 鞍内の腫瘤で最も多い下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫,髄膜腫:

膜への進展,T 2強調画像での低信号,

海綿静脈洞への浸潤などが合いにくい. 脊索腫,下垂体膿瘍,ラトケ囊胞:上記と同様な理由で合わない. (CD-ROM 参照)


症例

症例 Box

-

資料

鞍内腫瘤

1.下垂体腺腫(最も多い) 2.頭蓋咽頭腫(2番目に多い)

9.ラトケ囊胞(前葉と後葉の間が多い) 10.granular cell tumor(下垂体後葉の良性腫

3.髄膜腫(鞍結節か鞍隔膜表面) 4.脊索腫

瘍) 11.肉芽腫(神経サルコイドーシス,TB,梅

5.転移

毒,好酸性肉芽腫,巨大細胞肉芽腫)

6.悪性リンパ腫

12.リンパ球性下垂体炎

7.海綿静脈洞動脈瘤

13.下垂体の肥大

8.empty sella

Box

CT で石灰化ではない高吸収域を示す疾患

1.血管内の血液(血栓,ヘマトクリットの上 昇)

7.パントパーク 8.髄芽腫

2.コロイド囊胞

9.胚芽腫

3.メラノーマ(黒色腫)

10.髄膜腫

4.出血/凝固した血液

11.悪性リンパ腫

5.ヨード造影剤

12.ラトケ囊胞

6.鉄を含んだ病変(古い出血,海綿状血管

13.下垂体腺腫

腫,弾丸)

参照

症例

リンパ球性下垂体炎

●参 文献 1 Lee JH, et al. Mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma of the pituitary gland:MR imaging features. AJNR Am J Neuroradiol. 23(5):838-40, 2002. 2 Kumar S, et al. Primary low-grade B-cell lymphoma of the dura:a mucosa associated lymphoid tissue-type lymphoma. Am J Surg Pathol. 21(1):81-7, 1997. 3 Kambham N,et al.Primarylow-grade B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue(MALT) arising in dura. Clin Neuropathol. 17(6):311-7, 1998.


症例 歳,男性

∼ 年の経過により認知症が次第に進行

数十年前に頭部外傷の既往がある.造影後の軸位像及び冠状断像の異常所見は何か,診断は,次にす べき検査は?

▼ ▼ ◀

T 強調画像

同冠状断像

(熊本大学医学部附属病院放射線科,興梠征典先生の厚意による)

造影後の T 強調画像軸位像


症例

膜動静脈瘻による静脈うっ滞性脳症 解説 画像所見:T 2強調画像で左側頭葉白質を中心に高信号領域を認 める.内包後脚にまでおよんでいる.皮質下白質も侵されている. 左側頭葉前部皮質には低信号領域がある(静脈性うっ滞の可能性が ある)(図 1の矢頭).造影後の T 1強調画像では左シルヴィウス裂 を中心に脳溝内の血管に造影効果を認め(図 2の矢頭),拡張した静 脈の存在を示す.静脈うっ滞の所見であり,静脈洞の閉塞ないしは

膜動静脈瘻の存在が疑われる.造影後の冠状断像で T 2強調像の 高信号領域の末梢に当たる左の側頭葉底部と外側の皮質に造影効果 を認める(図 3の矢印).塞栓術術後には,この造影効果は消失した

左外頸動脈造影

ことから脳梗塞ではなく,静脈性うっ滞による造影効果の可能性が 高い. 左外頸動脈造影(図 4)にて中頭蓋窩前部(矢印)と横静脈洞(矢頭) を中心とする 膜動静脈瘻が認められる.

臨床 臨床症状その他については症例 71を参照. ここでは比較的少ない症状ではあるが,静脈性高血圧による虚血あるいは塞栓症で起こる静脈うっ滞 性脳症について述べる. 膜動静脈瘻により静脈うっ滞性脳症が起こり,進行する認知症とパーキンソン症状を呈することが ある.Hurst らの報告によれば全例 55歳以上であり,頭痛は必発である.病歴は 9ヶ月以上にわたる ことが多い(文献 1).乳突突起付近で多くの症例で bruit を聞くことができる.認知症を有する患者に bruit を聞いたときには常に本症を 慮する. 病理所見:左外頸動脈が栄養血管となり,横静脈洞および S 静脈洞へのシャントがあった Hurst らの 54歳の症例では点状の高信号が T 2強調画像で放線冠にあり,造影効果を認めている.その病理所見 は脳表と脳実質内の静脈が肥大し壁が厚くなっている.半卵円中心には軽度のグリオーシスを認める. 上矢状洞は新旧の血栓を認める.急性変化として浮腫を認め,鉤ヘルニアがあり白質および皮質に点状 出血があった.脊髄 膜動静脈瘻の所見に近似する.

画像診断 深部白質と小脳白質に T 2強調画像で高信号を認め,その末梢に造影効果がある.脳表の軟膜血管が 豊富になり点状の造影効果が認められる.静脈洞からの皮質静脈への逆流による脳表静脈の拡大を示し ている.血管造影にて脳循環の明らかな遅 があり,30秒以上の例もあった.

自験例 認知症およびパーキンソン症状を呈する 膜動静脈瘻を 1例経験した.頭痛は認めていない.T 2強 調画像にて脳内に多数の点状,曲線を示す flow void を認め,MRA にて両側の横静脈洞に

膜動静脈

瘻を認めている. ごく稀ではあるが,認知症およびパーキンソン症状を呈する疾患に,治療可能な 膜動静脈瘻がある ことを知っておくことは重要である. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

●参 文献 1 Hurst RW, et al. Dementia resulting from dural arteriovenous fistulas:the pathologic findings of venous hypertensive encephalopathy. AJNR Am J Neuroradiol. 19(7):1267-73, 1998. 2 van Dijk JM,et al.Venous congestiveencephalopathyrelated to cranial dural arteriovenous fistulas.Neuroimaging Clin N Am. 13(1):55-72. 2003. 3 Willinsky R, et al. Venous congestion: an MR finding in dural arteriovenous malformations with cortical venous drainage. AJNR Am J Neuroradiol. 15(8):1501-7. 1994.


症例 歳,女性

週間前からの頭痛,発熱

10月初旬より頭痛,同 20日発熱,他院で髄膜炎と診断され 24日に入院.髄液細胞数 452/3/μl,蛋 白 78mg/dl,糖 35mg/dl,クロール 123mEq/l.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像

造影後の T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

結核腫 解説 画像所見:大脳,小脳,脳幹に多発性の小さな腫瘤性病変を認める.その多くは中心部が T 2強調画 像ではやや低信号を示すが高信号のみの部位もある.造影後の T 1強調画像では腫瘤の中心が低信号を 示す例ではリング状の造影効果を示し,T 2強調画像で高信号のみの病変は小さな結節状の造影効果を 認める.くも膜軟膜に造影効果を認める(図 6の矢頭).脳全体に比較的小さな腫瘤があり,リング状お よび結節状の造影効果がみられる際には肉芽腫を最も える.日本人ならば結核腫である.

臨床 脳実質内の結核性病変は結核腫であり,髄膜炎を伴うときと,そうでないときがある.その内の 1/3 が多発性,2/3は単発性である.TB による cerebritis の領域に小さな肉芽の集まりとして始まり,成長 した非乾酪性結核腫になる.さらに,その多くは中心部が乾酪壊死に陥る.しかし,その中心部が充実 性のままであったり,液化したりすることもある.結核腫は①中心部が充実している,②乾酪化し中心 部が壊死している,③非乾酪化,の 3種に かれる.

画像診断 非乾酪化の肉芽腫は周囲に浮腫を伴い,T 1強調像で低信号,T 2強調画像で高信号を示し,

一な

造影効果を認める. 中心部に乾酪化を伴い,充実している肉芽腫は周囲に浮腫を伴い,T 1強調画像で低信号から等信 号,T 2強調画像で等信号から低信号を示す.低信号の程度は充実した乾酪物質の存在,線維化あるい はグリオーシス,貪食細胞の浸潤,貪食細胞の産生物(遊離基など)と細胞浸潤の程度によって決まる. 乾酪化した肉芽腫の壁はときに T 2強調画像で強い低信号を示す.造影後にはリング状の造影効果を認 める.リング状に濃染される被膜を有する腫瘤として描出される. 中心部に液化を伴う肉芽腫は T 1強調画像では中心は低信号,T 2強調画像では高信号,周囲は T 2 強調画像で低信号を示す.周辺部にリング状の造影効果を認める. 脳膿瘍との鑑別には MRS が有効と報告されている.膿瘍では 1.3ppm に脂肪と乳酸のスペクトラが あり,0.9ppm にはアミノ酸のスペクトラがある.それに対して結核腫では脂肪と乳酸のスペクトラし か認めない.拡散強調画像にて膿瘍は高信号を示す. 膜に広く接する結核腫があり,ときに髄膜腫と間違える症例がある. CT にて中心部に石灰化があり,その周囲にリング状の造影効果があるときには target sign と呼ばれ る.しかし結核腫に特異的ではない. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Poonnoose SI, et al. Giant cerebellar tuberculoma mimicking a malignant tumor. Neuroradiology. 46(2):136-9, 2004. 2 Gupta RK, Differentiation of tuberculous from pyogenic brain abscesses with in vivo proton MR spectroscopy and magnetization transfer MR imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 22(8):1503-9, 2001. 3 Jinkins JR, et al. MR imaging of central nervous system tuberculosis. Radiol Clin North Am. 33(4):771-86, 1995.


症例

症例

-

資料

歳,女性 結核腫 7月 10日より発熱があり,29日に胸部 CT にて粟粒結核がみつかり,治療により胸部所見の改善が あった.9月末から異常行動が出現し,認知症を認める.他院の頭部 MRI で異常が認められ,進行性 多巣性脳症と診断された(造影後の検査は未施行).10月 25日に当院入院,大脳白質に散在性の多数の 病変を認める(図 1∼5).T 2強調画像では高信号,T 1強調像で低信号を示す.よくみると中心部位に は比較的低信号を T 2強調画像では認める.進行性多巣性白質脳症(PML)としては融合傾向がなく, 中心部位に低信号があるのが合わない.造影後には中心に円型の造影効果を認める.結核腫(多発性)で あることが判明する.造影効果の状態からは中心部に乾酪壊死を伴っていないタイプのようにみえる. 粟粒結核のある患者では常に脳内の病変があるときには結核腫と結核性髄膜炎を 慮に入れる必要があ る.PML であることは非常に稀である. 典型例は大脳,特に頭頂葉で血行性転移により皮質白質境界に多い.本例のように大脳全般に,しか もかなり深部に認められることもある.結核性髄膜炎の所見が画像では認められず,結核腫のみのこと も多い.

T 強調画像

拡散強調画像

T 強調画像

造影後の T 強調画像

FLAIR 画像


症例 歳,男性 発熱後の筋力低下,頭痛,意識障害 3月 2日に発熱,5日は強い頭痛,10日に筋肉痛,11日朝,意識障害で家人に発見され入院.四肢の 筋力低下,意識障害を認める.白血球(末梢血)の増加(18,900)を認める.髄液の細胞数は 12/3/μl であ る.超音波検査で心臓,頸部血管系に異常を認めない.

日の FLAIR 画像

同 FLAIR 画像

同 FLAIR 画像

造影後の T 強調画像

造影後の T 強調画像

造影後の T 強調画像


症例

特発性好酸球増多症 解説 画像所見:大脳深部白質,中大脳動脈,前大脳動脈,後大脳動脈の

水嶺領域に点状,楕円形の

FLAIR 画像で高信号領域を認める.腫瘤効果はない.T 2強調画像でも病変は高信号領域を示し,T 1 強調画像では目立たない低信号領域を示した(非掲載).造影後には一部の領域に造影効果を認める.左 後頭葉,右前頭葉にも同様の病変がある(図 1の矢頭).前者には

かな造影効果を認める(図 4と 5の

矢頭).約 2週間後の再検像では T 2強調画像および FLAIR での高信号領域はやや減少し T 1強調画 像で一部が高信号領域を示し,出血性の可能性がある.また造影効果はより明瞭になり,多くの病変が 造影された.多発性のシャワー塞栓症に似た画像所見である.病初期の発熱,筋肉痛,その後の意識障 害を

えると特発性好酸球増多症が鑑別の 1つとなる.本例では白血球内(18,900)の好酸球が増加し

38%にもなっており,それが原因と えられる.拡散強調画像は本例は未施行であるが高信号と等信号 の混在を示した症例もある.

臨床 末梢好酸球が長期にわたり著増を示すと,その原因の如何にかかわらず,心血管型,神経系,肺など 全身臓器に障害を生じることがある.その中で原因不明の長期間持続する好酸球増多と好酸球浸潤によ る症候や徴候を有するものは特発性好酸球増多症と呼ばれる.神経系の障害としては末梢神経障害およ び脳血管障害などの中枢神経系障害が知られている. 本例はアレルギー,気管支喘息,トリプトファン製剤の既往歴はなく,寄生虫,膠原病,悪性腫瘍, 感染症もみつかっていない.それ故に特発性好酸球増多症と えられる. ときに心臓に endomyocardial fibrosis がみつかる例もあり,CT が必要である.また日本住血吸虫症 であった 1例が報告されている. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 好酸球顆粒蛋白の 1つである major basic protein はマイクロアンギオパチーを起こして微小血栓を形 成する.また好酸球による粘稠度亢進し,脳梗塞が起こり,大脳の主要血管の境界領域に多発性の脳梗 塞を起こす. 鑑別診断は下記の Box 56,57に示す.

Box

多発性脳内塞栓症

1.炎症性心内膜炎

3.脂肪塞栓症

2.心臓腫瘍(粘液腫)

4.好酸球増多症

Box

大脳白質の多発性梗塞

1.CADASIL(側頭葉前部と外包に梗塞が認 められる) 2.慢性的な高血圧:大脳基底核,視床,橋 にもラクナを認める.

4.SLE:脳萎縮,大脳基底核,白質の石灰 化 5.血管炎:血管造影で,ときに血管の狭小 化を認めることがある.比較的短期間に

3.凝固能の亢進状態(抗リン脂質抗体陽性,

変化する所見

S 蛋白の欠損):若年あるいは中年に発

6.好酸球増多症

症,大梗塞,症白質病変,小皮質梗塞, ラクナ梗塞,静脈洞血栓症など多彩な所 見

●参 文献 1 形岡博 ,他:精神症状を示し興味ある画像所見を示した特発性好酸球増多症の 1例.臨床神経 37(11):996-1000, 1997. 2 Sarazin M, et al. Multiple microembolic borderzone brain infarctions and endomyocardial fibrosis in idiopathic hypereosinophilicsyndromeand in Schistosoma mansoni infestation.J Neurol Neurosurg Psychiatry.75(2):305-7,2004. 3 Kwon SU. Sequential magnetic resonance imaging findings in hypereosinophilia-induced encephalopathy. J Neurol. 248(4):279 -84, 2001.


症例 歳,男性

年前から徐々に話がしにくくなった

1年前から小脳症状があり MRI で異常を指摘された. 糖尿病とそれによる腎症,網膜色素変性症および

CT

T 強調画像

血を認める.

CT

T 強調画像

T 強調画像

FLAIR 画像

(自治医科大学神経内科,瀧山嘉久先生・永田美保子先生の厚意による) (科学評論社 神経内科 より許可を得て転載)


症例

無セルロプラスミン血症 解説 画像所見:CT で,歯状核,尾状核,被

,視床後部に高吸収域を認める.T 1強調画像では異常を

指摘できない.T 2強調画像で歯状核,被

,淡蒼球,視床後部に年齢に比べて強い低信号領域を認め

鉄の沈着が疑われる.FLAIR 画像でも同様に被

から尾状核,淡蒼球,視床後部にかけて低信号を認

める.その内部に異常な高信号領域を認めない.以上より無セルロプラスミン血症と えられる.

臨床 無セルロプラスミン血症はフェロオキシダーゼ活性を持つセルロプラスミンの遺伝子変異により, 脳・肝臓・膵臓等に鉄の過剰蓄積を来す常染色体劣性遺伝性疾患である.成人になり発症する.血液検 査所見は,血清セルロプラスミンの欠損,血清銅の著減,血清鉄の減少,血清フェリチンの著増,鉄不 応性の小球性低色素性 血,インスリン依存性糖尿病にまとめられる.本症は稀な疾患ではあるが,中 年以降に小脳失調や不随意運動などを呈する糖尿病患者では本症を疑う必要がある. 神経学症状としては進行性の不随意運動,小脳失調,および認知症があり,鉄の沈着による.基底核 には神経細胞の消失が起こる.前頭葉皮質のそれは少ない.小脳皮質ではプルキンエ細胞の消失を認め る.セルロプラスミンの欠損は星細胞に主として損傷を与える.

画像診断 画像所見は早期診断の手がかりになる.CT では歯状核,被 認める.進行すると空洞化のために尾状核および被

,視床に高吸収域(CT 値は 94HU)を

に低吸収域を認めている.さらに進行した症例で

は脳幹と大脳の萎縮が加わる.MRI では T 2強調画像で歯状核,赤核,被

,視床に低信号領域を認

める.淡蒼球に関しては症例により低信号の有無は様々である.大脳基底核には通常は萎縮はない.進 行すると被 と尾状核の一部に高信号領域を認める.FLAIR 画像も同様に低信号を示し,進行例では 一部に高信号領域を示すと えられる.T 1強調画像では病巣部位は軽度の低信号を示す. セルロプラスミンの血清中の量が半 程度の低セルロプラスミン血症では報告により,上記の病巣部 位の低信号の程度は様々である.無セルロプラスミン血症に比べて明らかに軽度である.

CT(腹部)

肝臓は CT で高吸収域を示し(図 7),T 2強調画像では低信号を示す.鉄沈着による. PET での報告では,大脳,視床,大脳基底核,小脳皮質に酸素およびブドウ糖代謝の低下を認めて いるが,他の報告では尾状核のみにブドウ糖代謝の低下を認め,鉄沈着の起こっている他の部位には低 下を認めていない.症例により異なる. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 鉄の沈着による“脳変性疾患”が鑑別にあがる. 1.パントテン酸キナーゼ関連神経変性症:鉄沈着は淡蒼球と黒質,eye ofthe tiger sign,発症がより若 い. 2.神経フェリチン症:鉄沈着は被

が中心,中央に幅の広い高信号領域を周囲に低信号領域を T 2強

調画像では認める.糖尿病を伴わない. 3.ウィルソン病:低信号領域のみのことは少なく高信号領域が混在する.中脳および橋にも病巣を認 める. 4.多系統萎縮症(MSA-P 型):被 の萎縮を認める.T 2強調像での高信号領域はスリット状である. ●参 文献 1 滝山嘉久,他:無セルロプラスミン血症 無セルロプラスミン血症の血液検査と画像 神経内科 61(2):140-5,2004. (本例に関する症例報告であり,良くまとまっている) 2 Morita H,et al.Hereditaryceruloplasmin deficiencywith hemosiderosis:a clinicopathological studyofa Japanesefamily. Ann Neurol. 37(5):646-56, 1995. 3 Haemers I, et al. Clinical, molecular, and PET study of a case of aceruloplasminaemia presenting with focal cranial dyskinesia. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 75(2):334-7, 2004.


症例 歳,女性

年前に発症した認知症

3年前より筋力低下,呂律が不良となる.仮性球麻痺,痙性四肢麻痺,尿失禁を認めた.階段状に症 状が悪化し腰痛がある.3ヶ月前より歩行不能となり 失禁があり入院する.頭髪が薄く,認知症を認 める.仮性球麻痺,痙性四肢麻痺,膀胱直腸障害がある.血圧は正常.同胞に類症はない.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

頸椎 T 強調矢状断像


症例

CARASIL 解説 画像所見:前頭葉を中心とする脳萎縮があり,大脳深部白質に前 頭葉優位に高信号領域を T 2強調画像で認め,T 1強調像では低信 号を示す.外包,内包後脚の一部にも同様な異常を認め,大脳基底 核には小梗塞が疑われる.脳幹,小脳にも軽度の萎縮がある(非掲 載).頸椎には椎体の変性があり頸椎症を認める.腰椎にも椎体に 加齢性変化がある(図 5).以上の所見に加えて血圧は正常,禿頭が あることより,CARASIL(cerebral autosomal recessivearteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)と診断すること ができる.

臨床 1960年代に本邦からその存在が指摘された疾患である.若年成 人発症で,高血圧などの脳血管障害の危険因子を欠くビンスワン ガー病類似の白質脳症に加え,禿頭や反復する急性腰痛発作,変形 性脊椎症などの特徴的な中枢神経外症状を伴う.兄弟発症例が多 く,患者の両親にいとこ婚を高頻度に認めることから,常染色体劣 性遺伝性と推定される.CADASIL 類似の若年性多発性脳梗塞を 中核症状とするが特徴的な中枢神経外症状と併せて,CADASIL とは明らかに異なる疾患である.最初にその臨床病理学的特徴を詳 細に報告し,英文で記載したのは Maeda であり(文献 1),Maeda syndromeと呼称することを大出らは提唱している(文献 2). 福武らによる禿頭と腰痛を伴う遺伝性血管性白質脳症(CARASIL)の診断基準(文献 3): 1.40歳未満の脳症発症で臨床的には進行性(時に一時停止性)の知 的能力の低下,錐体路・錐体外路症状,偽性球麻痺などからな り,画像的に(ないし病理学的に)びまん性の皮質下白質病変を

椎体に加齢性変化

主体とする. 2.禿頭を呈する. 3.(急性反復性)腰痛ないしは変形性脊椎症/椎間板ヘルニアを有す る. 4.血圧は正常である. 5.adrenoleukodystrophyを始めとする,白質を侵す既存の他の疾 患が否定される. 以上の 5項目すべて満たす例を確定例とする(Box 39を参照).

Box

若年発症の多発性脳梗塞(遺伝性脳血管障害) CADASIL,CARASIL,MELAS,ホモシスチン尿症,家族性脂質代謝異常,プロテイン

C 欠損症,プロテイン S 欠損症,アンチトロンビン 欠損症,ファブリ病


症例

症例

症例 A(剖検例)

-

資料

歳,男性

CARASIL

血族結婚あり,26歳で認知症が発症,仮性球麻痺,錐体路・錐体外路症状も加わる.血圧は正常で 腰痛・禿頭もみられた. 剖検所見 側頭葉冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色(図 1)/ホルツアー(HZ)染色(図 2),大脳白質に髄鞘 淡明化(図 1の星印)と軟化巣(図 1の矢頭)を認め,ホルツアー染色(図 2)では広範な線維性グリオーシ スがみられた.大脳白質内の小動脈,ヘマトキシリン/エオジン(HE)染色,動脈壁の硝子様変性がみら れた(図 3).大脳白質深部,ヘマトキシリン/エオジン染色,軟化巣(星印)の周囲の小動脈に内膜肥厚 が認められた(図 4の矢印).

★ ◀

側頭葉冠状断(KB 染色)

側頭葉冠状断(HZ 染色)

(文光堂

大脳白質の小動脈(HE 染色)

病理と臨床 より許可を得て転載)

大脳白質深部の小動脈(HE 染色)


症例

-

●参 文献 1 Maeda S,et al.Familial unusual encephalopathyofBinswanger s typewithout hypertension.Folia Psychiatr Neurol Jpn. 30(2):165-77, 1976. 2 大出貴 ,他:CADASIL と CARASIL(Maeda syndrome)の神経病理 神経進歩 48(3):476-87,2004. 3 福武敏夫:若年成人発症の遺伝性皮質下血管性痴呆:禿頭と腰痛をともなう常染色体劣性遺伝性脳動脈 化性皮質下 梗塞・白質脳症(CARASIL).臨床神経 39(1):50-2,1999. 4 柳下章,他:若年に発症し,高血圧を欠き,禿頭と腰痛をともなう白質脳症.病理と臨床 13(3):393-8,1995.(本例 に関する症例報告)


症例 歳,男性 年前から発語障害,その後ゆっくり進行する失語症がある.初期 には認知症はなかった

FLAIR 画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像


症例

ピック病 解説 画像所見:左優位に両側側頭葉に萎縮がある.側頭葉の萎縮は前部が強く,後部は比較的保たれてい る.側頭皮質下白質の高信号領域は認めなかった.前頭葉にも軽度の萎縮がある.ピック症であること が剖検で確認されている(なお,CD-ROM 内の症例 B とは同一症例である).

臨床 稀な進行性の認知症で記憶障害よりも早期から人格変化を呈し,Kluver-Bucy症候群(食・性行動の 亢進,精神盲ないし視覚失認,極度の不関無為など)を呈する場合もある.前頭葉や側頭葉の葉性萎縮 (lobar atrophy)を来し,脳回は菲薄化するため knife blade atrophyと呼ばれる.特に左半球を侵す傾向 がある.組織学的に神経細胞内にピック嗜銀球(Pick body)を認める.

画像診断 前頭葉,側頭葉の萎縮が強く,脳溝の拡大とともに側脳室前角と下角の拡大を示す.初期には左右差 を持ち,左に強い萎縮を示すことが多い.側頭葉は前部が侵される. ピック病を含む後述する前頭側頭型認知症の正中矢状断像での検討では脳梁前部の断面積がアルツハ イマー型認知症より有意に減少している.さらに T 2強調像やプロトン密度強調画像で,病変部皮質と 隣接する皮質下白質に軽度高信号を呈する傾向があるといわれる.SPECT では前頭葉や側頭葉前部に 加えて,帯状回前部,海馬,大脳基底核,視床でも血流の低下を来す.本症の SPECT 所見の特徴とし て集積低下の左右差が指摘されている.

鑑別診断 1.アルツハイマー病: 海馬を含む側頭葉および頭頂葉の萎縮,海馬周囲脳溝の拡大 (図 4参照). IF

2.ピック病を含む前頭側頭型認知症: 前頭葉内側面,穹窿面および前部側頭葉の萎縮が強い. 大脳半球萎縮の左右差が大きい. 脳梁前部の矢状断の断面積が減少している. T 2強調画像およびプロトン強調画像で,前頭葉の白質の信 号強度が高い. MRS で NAA,glutamate/glutamineの減少とミオイノシトー ルの増加を認める. 3.正常圧水頭症: 海馬の容積の減少を認めない. 側脳室の拡大に比べ海馬周囲脳溝の拡大は軽度. シルヴィウス裂とそれ以下の脳溝拡大をときに認めるが,高 位円蓋部の脳溝とくも膜下腔の狭小化を認める.冠状断像が 有用である(文献 5). (CD-ROM 参照)

海 馬 周 囲 脳 溝(perihippocampalfissure-PHF)の解剖の説明 PHFは大脳横裂( ),脈絡裂(矢頭) と海馬裂(矢印)をあわせた髄液腔を 指す.大脳横裂の内側には中脳周囲 脳槽がある. :アンモン角, :歯状回, :海 馬支脚, :歯状縁, :大脳横裂, :海馬采, :外側膝状体, :脈 絡叢, :尾状核,IF:側脳室下角, (Duvernoy HM 著 The human 頁,図 hippocampus Bよ り改変)


症例

症例

-

資料

症例 A 歳,女性 前頭側頭型認知症(front-temporal dementia:FTD) 特に ピック型の疑い 1年前からおつりを間違えるなどの認知症症状が出現し,失語症を伴う. 画像所見:T 2冠状断像(図 1)に左側頭葉前部に強い萎縮を認める.左前頭葉にも萎縮がある.左側 頭葉白質の信号強度が右に比べ高い(図 1の矢印). T 2強調軸位像(図 2)では左側頭葉前部に強い萎縮があり,側頭葉後部は比較的保たれている. 前頭葉や側頭葉の限局性萎縮を持ち,特徴的な大脳皮質症状を呈する変性性認知症疾患を前頭側頭認 知症(FTD)と

称する.FTD はピック病(ピック型),運動ニューロン疾患を伴う認知症(運動ニュー

ロン疾患型),前頭葉変性認知症(前頭葉型認知症)に

けられる.本症はアルツハイマー型認知症とは

異なり,人格,行動,感情面での障害が主体であり,記憶や見当識はそれほど高度に障害されず,末期 まで比較的よく保たれている.また,他の認知機能も障害されにくく,幻覚・妄想は稀である. ピック病の診断をする際には病理学的診断が必要であるが,FTD は臨床的な診断のみで可能である. ピック病の疑いがあり,病理診断がないときには FTD(ピック型)の診断が臨床的には可能である. ピック型の画像の特徴はピック病と同じである.

T 冠状断像

T 強調軸位像


症例

-

Box

認知症を起こす主要疾患

1.皮質性認知症

5.感染症

アルツハイマー病,ピック病

クロイツフェルト-ヤコブ病,Gerstmann-

2.皮質下認知症

Straussler-Scheinker 症 候 群,亜 急 性

ハンチントン舞踏病,進行性核上性麻痺,

性全脳炎,進行性多巣性白質脳症,ヘルペ

パーキンソン病,びまん性レビー小体病,

ス脳炎,HIV 脳炎

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症

6.その他の代謝性疾患

(DRPLA),大脳皮質基底核変性症,認知

パントテン酸キナーゼ関連神経変性症,

症を伴う筋萎縮性側索

ウィルソン病,成人型神経セロイドリポフ

化症(湯浅・三山

病)

スチン症(Kufs 病),成人型異染性ジスト

3.その他の変性疾患

ロフィー,副腎白質ジストロフィー

視床変性症

7.その他

4.脳血管障害 脳梗塞・脳出血,ビンスワンガー病, 動静脈瘻

正常圧水頭症,脱髄性疾患,内 膜

泌疾患

(甲状腺機能低下症など),中毒性疾患・無 酸素性脳症,膠原病,外傷,脳腫瘍

症例 B(剖検例) ピック病 剖検所見(本文と同一症例) 大脳半球冠状断,線条体頭部(左)/正中隆起部(右)ホルツアー(HZ)染色,側頭葉底面,前頭葉の一部 が限局性に萎縮し,白質に高度の線維性グリオーシスを伴っていた(図 3).側頭葉皮質,ヘマトキシリ ン・エオジン(HE)染色,大脳皮質表層が海綿状態を示した(図 4).海馬,ボディアン(BD)染色,多く の神経細胞の胞体内に球形の嗜銀球を認めた(図 5の矢頭).左大脳冠状断側頭葉尾部,クリューバー・ バレラ(KB)染色,吻側部に比べ尾部は比較的保たれていた(図 6).

右大脳冠状断(HZ 染色)

側頭葉皮質(HE 染色)


症例

-

◀ ◀

海馬(BD 染色)

左側頭葉(KB 染色)

●参 文献 1 生嶋一郎,他:アルツハイマー型痴呆の画像診断 CT,MRI 診断 西村恒彦,武田雅俊編集 アルツハイマー型痴呆 の画像診断.メジカルビュー・東京,46-59,2001. 2 Kitagaki H, et al. Alteration of white matter MR signal intensity in front-temporal dementia AJNR Am J Neuroradiol 18(2):367-78, 1997. 3 Kitagaki H, et al. Front-temporal dementia and Alzheimer s disease; evaluation of cortical atrophy with automated hemispheric surface display generated with MR images. Radiology 208(2):431-9, 1998. 4 大川慎吾:非アルツハイマー型変性性痴呆との鑑別診断―臨床的特徴からの鑑別―西村恒彦,武田雅俊編集 アルツ ハイマー型痴呆の画像診断.メジカルビュー・東京,128,2001. 5 Kitagaki H, et al. CSF spaces in idiopathic normal pressure hydrocephalus:morphology and volumetry. AJNR Am J Neuroradiol. 19(7):1277-84, 1998.


症例 歳,男性 右眼視野障害(曇りガラスのかかった感じ),起床時の頭重感 5月頃より右眼のみえづらさを自覚する.6月に左眼にも拡大したためステロイド治療を開始するも 全身の関節痛で中断する.その後,左眼の症状は改善.8月に頭痛のため同院内科受診.8月 17日 MRI 撮像.8月 30日他院入院.入院時の神経学的所見は右眼耳側視野障害のみである.

日の T 強調画像

T 強調画像

FLAIR 画像

ADC map

(山梨大学医学部附属病院放射線科,中田安浩先生の厚意による)


症例

橋を中心とする高血圧性脳症 解説 画像所見:橋のほぼ全体から右上小脳脚,中小脳脚を含めた領域 に T 2強 調 画 像 と FLAIR 画 像 で 高 信 号 を 認 め る.大 き な mass effect はない.T 1強調画像で信号強度異常はほとんど認めない. ADC 値は上昇し,血管性浮腫を示唆する.画像所見の強い割に臨 床症状が軽い.血圧が 200以上あり高血圧性脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome:PRES)と診断した. 8月 30日の血圧は 200/124/mmHg,入院後の眼科受診で視野障 害は高血圧性網膜症による可能性が高いと診断された.降圧治療に よ り 9月 13日 の 血 圧 は 140/72/mmHg で あった.同 日 の FLAIR 画像では橋内の高信号は消失している(図 5).症状の改善もあり 9 月 15日に退院.

FLAIR 画像

臨床(症例 31参照) 高血圧脳症の橋と小脳を侵す率は 70%程度である.通常は後頭葉の病変を伴う.脳幹および小脳の みの浮腫を示す高血圧脳症は稀である.通常は 40∼50歳代を侵すが,脳幹の高血圧脳症では 30歳代が 多いとする報告もある.約 1/3は高血圧のみであるが,その他では腎不全を伴うことが多い. 頭痛が最も多い症状である.脳幹,小脳症状は少ないことが多い.画像所見の強い割に臨床症状が少 なく,症状と画像所見との間に不一致がある. 病理:強い血管の変化があり,小動脈のフィブリノイド壊死,小動脈および毛細血管の血栓と,脳実 質病変として微小梗塞,微小出血を認めている.脳内に限局していない.脳内では脳幹に変化が最も強 い.脳浮腫は認めない.剖検例とは異なり多くの臨床例では可逆的変化なので,梗塞には至らず,浮腫 でとどまっているのが多いと えられる.但し,梗塞に至ってしまう部位および症例もある.

画像診断 高血圧性脳症は通常,後頭葉,頭頂葉後部を中心とした皮質および皮質下の病変になるが,ときに著 明な脳幹の高信号領域を T 2強調画像にて示したり,びまん性の大脳白質の浮腫を示したりする.本症 はその比較的稀な形態である.T 2強調画像および FLAIR では高信号を示し,拡散強調画像では高信 号を示さない(ADC 値は上昇する).脳血管の自己調節機能の不全による血管性浮腫を示す.造影効果 を認めることがある.

鑑別診断 1.急性脳梗塞:拡散強調画像にて高信号領域を示す. 2.急性の脳充血:けいれん,けいれん後/一過性の脳回に った浮腫,あるいは造影効果 急速な SDH の除去後/SDH 下の皮質に限局した変化 内頸動脈血栓剥離術後/hyperperfusion 症候群 3.透析平衡障害:浸透圧性脱髄性症候群/橋,基底核,大脳白質を侵す. 4.大脳膠腫症:脳葉全体を侵す.皮質あるいは皮質下のみではない.mass effect を有する. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

脳幹を侵す(可逆性の)浮腫・鑑別診断

Box

1.浸透圧性脱髄性症候群(橋中心性髄鞘崩壊 症):橋の周囲は保たれることが多い. 2.

5.放射線照射後の浮腫:既往歴 6.エンテロウイルス 71による脳脊髄炎(手

膜動静脈瘻:異常静脈による点状の造 影効果,静脈洞血栓症の所見

足口病あるいはへルパンギーナ,

髄後

部,橋,脊髄を侵す): 髄後部および脊

3.高血圧性脳症:PRES を起こす疾患の存 在

髄の病変の存在 7.ベーチェット病:左右完全に対称性は少

4.HELLP 症候群(hemolysis, elevated liver enzyme levels, and low platelet counts):

ない(CD-ROM 症例 B 参照). 8.SLE などの血管炎

特徴的な臨床症状,妊娠

症例 A

歳,女性 高血圧性脳症,血液透析中にけいれん,意識障害を起こす

発症当日(5月 29日)の CT(図 1)で橋を中心に脳幹に低吸収域を認める.6月 4日撮像の MRI では, T 2強調画像と FLAIR 画像にて高信号領域を橋を中心とする脳幹に認める(図 2∼3).橋の腫大はな い.さらに拡散強調画像では高信号領域を橋に認めない(図 4).しかし左後頭葉には拡散強調画像にて 高信号領域を認め(図 5),この領域は梗塞に陥ったことを示している.降圧療法を施行し血圧が安定し た.6月 11日の CT(図 6)では橋内の低吸収域は消失している.高血圧性脳症による変化と

えられ

る.脳幹の病変は可逆性の変化であり浮腫が中心となっている.一方,左後頭葉は非可逆的であり,梗 塞に陥った組織と える.

CT 画像

T 強調画像

FLAIR 画像


症例

-

拡散強調画像

拡散強調画像

日の CT 画像

( 合太田病院放射線科,徳永真理先生の厚意による)

症例 B

歳,女性 神経ベーチェット病

頭痛と呂律が回らないことを主訴に来院した.来院 1週間後に MRI を撮像する. 髄前部,橋,中脳右側にかけて,T 2強調画像で高信号を認める(図 7∼10).橋では T 1強調画像 にて軽度の低信号を認める(図 11).橋では高血圧性脳症とは異なり,橋周囲には高信号を認めず,中 脳では左右差がある. 脳脊髄液検査で細胞数が 524/3/μl(lym 296)と上昇,髄

塩基性蛋白,オリゴクローナルバンドは陰

性であった.さらに以前より紅斑,口腔内アフタ,関節炎があったことがわかり,今回の神経症状で大 症状 2+小症状 2となり,ベーチェット病の診断基準を満たした.その後ステロイド治療で症状がよく なり退院した.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像


症例

T 強調画像

-

T 強調画像

(富士吉田市立病院放射線科,安達木綿子先生の厚意による)

●参 文献 1 Cruz-Flores S, et al. Brainstem involvement in hypertensive encephalopathy:clinical and radiological findings.Neurology. 62(8):1417-9, 2004. 2 Verrees M, et al. Primary hypertension-induced cerebellar encephalopathy causing obstructive hydrocephalus. Case report. J Neurosurg. 98(6):1307-11, 2003. 3 de Seze J, et al. Unusual MR findings of the brain stem in arterial hypertension.AJNR Am J Neuroradiol.21(2):3914, 2000. 4 Feske SK,et al.Extensive reversible brain magnetic resonancelesions in a patient with HELLP syndrome.J Neuroimaging. 7(4):247-50, 1997. 5 Shen WC,et al.MR imaging findings ofenteroviral encephalomyelitis:an outbreak in Taiwan.AJNR Am J Neuroradiol. 20(10):1889 -95, 1999.


症例 歳,男性 約 年前,橋出血(右片麻痺と球症状)があり,約 ヶ月前より右上肢 に不随意運動出現,口蓋ミオクローヌスも認められた (図 2と 3の矢印は何を示すか?)

グラディエントエコー法,橋レベル

T 強調冠状断像

T 強調画像, 髄レベル


症例

陳旧性の橋出血とオリーブの仮性肥大 解説 画像所見:グラディエントエコー法で橋被蓋から底部にかけ両側性で,やや左優位に陳旧性の血腫を 認める.T 2強調画像では左下オリーブ核に腫大と高信号領域を認め(図 2の矢頭),オリーブの仮性肥 大と えられる.右小脳半球,特に下部に小脳萎縮を認める(図 2,3の矢印).

臨床 口蓋ミオクローヌス:通常は原発巣の発生から 10∼11ヶ月後に 発症する.頸部の筋肉と横隔膜にもミオクローヌスを認める.原発 巣に関係した小脳と脳幹症状. オリーブの仮性肥大はオリーブの外見は大きくなり,グリオーシ スが著明であるが,神経細胞に腫大がない状態である. ギラン・モラレ三角(図 4):左赤核で説明すると,左赤核―左中 心被蓋路―左下オリーブ核―下小脳脚―右小脳皮質―右小脳歯状核 ―上小脳脚―上小脳脚 叉―左赤核の回路を形成している. 橋出血 8例の病理学的変化を追った報告では発症してから 9ヶ月

ギラン・モラレ三角

半以上経過すると,オリーブの仮性肥大が認められ,さらに数年後 にはオリーブには萎縮を認める. 軟口蓋ミオクローヌスと骨格筋ミオクローヌスの病巣部位はミオ クローヌスと同側の小脳歯状核,または反対側中心被蓋路と下オ リーブ核となる.

画像診断 オリーブ(下オリーブ核)の拡大と T 2強調画像での高信号域,ときに反対側小脳皮質の萎縮を認め る.造影効果はない. オリーブの仮性肥大は T 2強調画像における所見が 3段階に かれる. 1.肥大のない高信号領域は発作から最初の 6ヶ月以内である. 2.肥大と高信号領域の存在は 6ヶ月から 3∼4年である. 3.高信号領域のみはその後に認められる(期日は不定).

Box

髄前部に高信号域を T 強調画像で示す疾患

1.MS などの脱髄性疾患 2.腫瘍(転移,悪性リンパ腫,星細胞腫) 3. 髄錐体を侵す疾患

4.椎骨動脈もしくは後下小脳動脈の穿通枝 による傍中央部梗塞 5.感染,炎症性疾患

・ワーラー変性

・結核,神経サルコイドーシス

・副腎白質ジストロフィー

・AIDS

・筋萎縮性側索 化症

・菱脳炎(rhombencephalitis)

(CD-ROM 参照)


症例

症例 症例 A(剖検例)

-

資料

歳,男性

オリーブの仮性肥大/海綿状血管腫

(症例 48の CD-ROM 症例 D と同一症例,小脳虫部に海綿状血管腫) 剖検所見 髄中部,クリューバー・バレラ(KB)染色/ホルツアー(HZ)染色,右側中心被蓋路の障害により右 側下オリーブ核が仮性肥大を示す.左側下オリーブ核にも線維性グリオーシスがみられる(図 1).ヘマ トキシリン・エオジン(HE)染色の強拡大ではグリア細胞の増加と残存神経細胞の中心性虎斑融解(矢 印)や空胞変性(矢頭)が認められる(図 2).

◀ ▶

髄(上 KB・下 HZ 染色)

下オリーブ核(HE 染色)

●参 文献 1 Goto N, et al. Olivary enlargement:chronological and morphometric analyses.Acta Neuropathol (Berl).54(4):275-82, 1981. 2 Kitajima M,et al.Hypertrophic olivary degeneration:MR imaging and pathologic findings.Radiology.192(2):539 -43, 1994. 3 Kim SJ, et al. Cerebellar MR changes in patients with olivary hypertrophic degeneration. AJNR 15(9):1715-9, 1994.


症例 歳,男性 前日,意識障害の状態で同僚にみつかる 8月 6日にめまい.8月 8日,意識障害の状態にて自宅で同僚に発見される.神経学的検査では意識 障害と両側バビンスキー陽性のみ.8月 9日の MRI.白血球 14,800,CRP 9.96,髄液検査:細胞数 90/3/μl(単 13,多 77),蛋白 39mg/dl,糖 108mg/dl(なお,造影効果を認めない).

FLAIR 画像

拡散強調画像

FLAIR 画像冠状断像


症例

非腫瘍性非ヘルペス性辺縁系脳炎 画像所見 両側海馬の軽い腫大と FLAIR 画像と拡散強調画 像で高信号領域を認める.脳炎を示す臨床症状と検 査所見であり,MRI 所見とを合わせると非腫瘍性 非ヘルペス性辺縁系脳炎と診断した. 鑑別にはヘルペス脳炎が挙がる.海馬のみでなく 側頭葉内側部および側頭葉先端部を侵し,通常は造 影効果を認める.ときに出血を伴う.病変が左右対 称なことはない.それに対して本症では海馬に限局 している.造影効果を認めない.出血はない. けいれん重積後の変化としては,明瞭なけいれん

週間後の MRI画像

重積がなく,臨床で炎症所見が明瞭である. 異常なウイルス抗体価の上昇はなく,約 2週間後 の MRI(図 4)で両側海馬の大きさおよび信号強度 は 正 常 に 戻って い る.約 3週 間 後 の CRP は 0.39 でほとんど正常である.腫瘍の合併を示唆する所見 もなく臨床症状の著明な改善を認めた.非腫瘍性非 ヘルペス性辺縁系脳炎と診断した.

臨床 楠原らは MRI で海馬,扁桃体を中心とする大脳辺縁系(両側性が特徴的)に限局した病変を認める急 性発症脳炎の 4例を報告した.いずれも発熱,意識障害で発症し,生命予後は良好,後遺症として 忘 症候群を認め,単純ヘルペス抗体価・PCR 法でヘルペス脳炎を否定され,悪性腫瘍の合併を認めない (anti-Hu 抗体陰性)一群の存在を認め,非ヘルペス性急性辺縁系脳炎と診断した. 感染症以外に,辺縁系脳炎を示す疾患には自己免疫疾患があり,橋本脳症,全身性エリテマトーデ ス,シェーグレン症候群がある.

画像診断 MRI では両側の海馬,扁桃核,前障に異常を認め,その他の側頭葉には異常を認めず,造影効果が ほとんどなく,出血を認めない.予後が良好な点がヘルペス脳炎との鑑別に有用である.


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,女性 非腫瘍性非ヘルペス性辺縁系脳炎の疑い,主訴は意識障害

7月 9日に嘔吐,下痢,翌日は返事が遅くなり,歩行に支えが必要になる.他院に入院.昏睡状態と なる.髄液細胞数 3/3/μl,蛋白 27mg/dl.有意なウイルス抗体価の上昇はない.7月 13日に MRI を 撮像する. FLAIR 画像で左扁桃核から海馬にかけて高信号領域を認める(図 1).両側の帯状溝(図 2の矢印)お よびシルヴィウス裂は明瞭に認められない(図 2の矢印).病変がおよんでいると えられる.臨床症状 の改善を認めた 7月 29日の FLAIR 画像(図 3)では帯状溝(矢印)とシルヴィウス裂(矢頭)が明瞭に認 められ,病変が改善したことを示している.

FLAIR 画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,女性 非腫瘍性非ヘルペス性辺縁系脳炎

11月 24日より発熱,感冒症状があった.12月 1日より意識が混濁し,救急車にて病院に向かう途中 より下肢から始まるけいれんがあり,右への共同偏視,けいれん重積となり,頭部 MRI を撮像する. T 2強調画像と FLAIR 画像にて,両側海馬,扁桃核,被 印).島回には明らかな変化はなく,被

外側に高信号領域を認める(図 4∼6の矢

外側の病変はスリット状であった.その外側に外包(図 6矢

頭)を同定できるのでスリット状の病変は被

外側と推測した.非ヘルペス性辺縁系脳炎と診断した.

その後,急性腎不全で死亡し,剖検となった. 12月 10日の髄液検査では無色であり,細胞数は 7/3/μl,蛋白は 26mg/dl,糖は 120mg/dl であっ た.ウイルス抗体価は正常範囲,12月 8日以後 CRP は 2.4から 27.09と増加した.なお,単純ヘルペ スウイルスは脳脊髄液と剖検脳から 離されず,悪性腫瘍の合併も認められなかった.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

剖検所見 肉眼的には脳浮腫がみられたが海馬(矢印),扁桃体(矢頭),外包,前障(C)に著変を認めず(図 7). 海馬吻側,クリューバー・バレラ(KB)染色(図 8)/ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色(図 9),周辺に 海綿状態を伴ったリンパ球浸潤病巣がみられ(図 8の矢印),強拡大では細胞浸潤と神経細胞壊死が認め られた(図 9).扁桃体,クリューバー・バレラ染色(図 10)/ヘマトキシリン・エオジン染色(図 11),血 管周囲に軽度のリンパ球浸潤を認めた(図 10の矢印・図 11).


症例

C ◀

C

右大脳冠状断

海馬吻側(KB 染色)

扁桃体(KB 染色)

海馬(HE 染色)

扁桃体(HE 染色)

●参 文献 1 2 3 4

楠原智彦,他:非ヘルペス性急性辺縁系脳炎の存在について.臨床神経学 34(11):1083-8,1994. 吉川秀人,他:非ヘルペス性急性辺縁系脳炎の小児例.脳と発達 35(5):429-31,2003. 亀井 ,他:若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎の臨床像の検討.神経内科 59(2):173-8,2004. Mochizuki A. et al. Acute limbic encephalitis:a new entity? Neurosci Lett. 394(1):5-8, 2006.

-


症例 歳,男性 けいれん重積後の MRI異常 脳挫傷,脳梗塞の既往がある.右片麻痺があった患者に 1月 8日午後に右半身のけいれんが起こり, けいれん重積状態になる.抗けいれん剤でけいれんは止まる.翌日の MRI.頭痛,発熱を認めない.

拡散強調画像

拡散強調画像

拡散強調画像

T 強調画像


症例

てんかん後脳症(けいれん重積後の脳変化) 解説 画像所見:拡散強調画像(図 1∼3)で左海馬と扁桃体,側頭葉尖 端部に,左視床内側部に高信号領域を認める.T 2強調画像(図 4) では海馬に淡い高信号領域がある.18日後の拡散強調画像ではこ れらの高信号領域はより淡くなっていた(図 5).発熱,意識障害な どをけいれんが収まった後には認めない.所見が可逆的である点よ り,てんかん後脳症と えた.

臨床 けいれん重積(30 以上の持続的なけいれん発作)の後に起こる 可逆性の脳浮腫である.全年齢に起こるが,若年成人に多い.けい

拡散強調画像

れんの治療によって典型的には完治する.

画像診断 皮質から皮質下にかけて,血管の支配領域に一致しない高信号領域を T 2強調画像,FLAIR 画像に て認める.ADC 値は低下することもあるが,多くは正常範囲.同側の視床枕,海馬,反対側の小脳半 球を侵すことが多い.高信号領域の支配動脈の拡張を起こし,SPECT では同部位に hyperperfusion を 起こす.早期に高信号領域が消失する. ときに,脳梁膨大部に一過性の高信号領域を拡散強調画像にて認めることがある(文献 2). 出血はなく造影効果を認めることがある. 海馬に病変があるときには海馬 化症へと進展した例がある. 小児例では大脳白質を中心に来る例もある.

鑑別診断 ヘルペス脳炎:比較的早期より拡散強調画像と T 2強調画像の高信号領域の減少を本症では認める が,通常,ヘルペス脳炎では認めない.また視床内側の高信号領域の存在はヘルペス脳炎では合いにく い. 非腫瘍性非ヘルペス性辺縁系脳炎:海馬と視床が侵される辺縁系脳炎の症例もあり,本症との鑑別は 難しい.但し辺縁系脳炎では海馬以外の側頭葉先端部,外側部が侵されることは少ない. 海馬

化症:海馬の萎縮を認める.

虚血:血管の支配領域に一致,灰白質および白質は楔状になる.亜急性期に造影効果. MELAS:後頭葉優位,血管の支配領域に一致せず.皮質中心,皮質下白質にもおよぶ. (CD-ROM 参照) ●参 文献 1 Horowitz SW, et al.Complex partial seizure-induced transient MR enhancement.J Comput Assist Tomogr.16(5):8146. 1992. 2 Cohen-Gadol AA,et al.Transient postictal magneticresonanceimaging abnormalityofthecorpus callosum in a patient with epilepsy:Case report and review of the literature. J Neurosurg. 97(3):714-7, 2002.


症例

症例 症例 A

-

資料

歳,女性 けいれん重積後の脳変化

以前よりけいれん発作があり,今回の発作の 1年前の FLAIR 画像にて左海馬

化症を認めた(図 1

の矢印). 9月 30日,けいれんが 4時間半ほど続き意識障害が発生.10月 1日,昏睡状態,熱発. 10月 2日,意識がやや回復,左片麻痺の疑いがある.当院入院.当日 MRI 撮像する.FLAIR 画像 (図 2)で両側の海馬に高信号領域を認める.左側はやや萎縮があるが右の海馬には萎縮はない.左小脳 半球には高信号領域を FLAIR 画像で認める(図 3の矢印).この時点では描出されていないが,右大脳 半球に起こった変化による二次変性を示していると えられる.拡散強調画像で右海馬のみに高信号領 域があり新しい変化(けいれん重積による浮腫あるいは壊死)を示すと えられる(図 4の矢印).左の海 馬の変化は古い海馬

化症による.10月 9日の SPECT では右半球に血流低下を認める(図 5).10月

10日の拡散強調画像(図 6)で左半球大脳皮質を中心に高信号領域を認める.大脳皮質に広範な浮腫ある いは壊死が起こっていると えられる.11月 2日の拡散強調画像(図 7)では左被 と尾状核に,12月 1 日には視床に高信号領域を拡散強調画像で認めた(図 8). 連続的に,海馬,大脳皮質,大脳基底核,視床と順番に拡散強調画像の高信号領域が変化した.浮 腫,壊死などの他に二次変性を 慮しなければならない. 大脳皮質による小脳の diaschisis による変化を MRI にて反対側小脳の高信号領域として,FLAIR 画 像で捉えることができた(図 3の矢印).

年前の FLAIR 画像

入院当日の FLAIR 画像

同 FLAIR 画像

拡散強調画像


症例

-

日の拡散強調画像

日の SPECT

日の拡散強調画像

日の拡散強調画像


症例 歳,男子 側頭葉実質内か,それとも脳実質外か,それが問題だ 18ヶ月前より複雑部 発作があり,側頭葉てんかんと診断された(なお,異常な造影効果を認めてい ない).

(三輪書店

FLAIR 画像

T 強調画像

脳神経外科の常識非常識

より許可を得て転載)

T 強調画像

T 強調画像


症例

神経節膠腫 解説 画像所見:FLAIR 画像(図 1)で左側頭葉に囊胞を伴う腫瘤を認める.側頭骨との間には 1枚薄い膜 様構造がある.さらに囊胞後部の脳実質内には高信号領域を認める.T 1強調画像(図 2∼3)にて囊胞周 囲の膜様構造がより明瞭である.FLAIR 画像で高信号領域を認めた部位には T 1強調像では等信号と なっている.T 2強調画像(図 4)では同部位は淡い高信号領域を示すが,囊胞の高信号との区別が困難 で FLAIR 画像ほど明瞭ではない.膜様構造はいずれのパルス系列においても皮質と同様な信号強度を 示す.故に囊胞周囲の膜様構造は薄くなった脳皮質であり,以上の所見は病変が脳実質外ではなく脳実 質内にあることを示している.腫瘍実質と えられる部位が T 1強調画像にて等信号を示している.側 頭葉てんかんにて発症した小児であり,囊胞を伴っており神経節膠腫を第一に え手術および病理にて 確認された. 一見,脳実質外にみえても注意してみれば脳実質内であることがみえてくる.先入観を持ってみない ことである.中頭蓋窩のくも膜囊胞がてんかん源になることは少ない.さらに,すぐ目に入りやすい FLAIR 画像あるいは T 2強調像での高信号領域のみでなく,T 1強調画像で病変部の信号強度がどの ようになっているのかをみる習慣をつけること,写っている画像をすべてみてから画像診断をすること が重要である.

臨床 小児と若年成人に多い腫瘍で mixed glioneuronal tumor で最も多い腫瘍である.側頭葉てんかんを起 こす最も多い腫瘍でもある.自験例では海馬 化症に次いで多い側頭葉てんかんの原因である. 好発部位は脳表面,特に側頭葉であり,ついで頭頂葉および前頭葉になる.稀な部位として脳幹,小 脳, 果体,視神経・視 叉および脊髄,脳神経がある. 側頭てんかんを示す割合は本腫瘍の約 40%である.若年者で側頭葉てんかんを示した腫瘍をみたら 本症を

える.

皮質形成異常を周囲に伴うことがあるが MRI では認められない.悪性変化は 5∼10%であり,腫瘍 の内,グリア成 に起こる.

画像診断 皮質を中心とした囊胞と充実成 を有する腫瘍である.充実成 は T 1強調画像では等信号を示すこ とが多くときに低信号を示し,造影効果は様々である.ほとんどないものからリング状,あるいは 一 な例まである.石灰化は 35∼50%程度と言われている.T 2強調画像では高信号を示す.浮腫はなく, 囊胞を有しない例では mass effect はない. 自験例 21例の内,囊胞を有したのは 10例で,ないのが 11例,囊胞ありの平 年齢は 11歳,囊胞が ない例は 22歳である.囊胞のある例で 20歳以上は 1例のみである.20歳以上では 7人が囊胞がない. 10歳代では囊胞を伴う例とそうではない例がある. 悪性例では,201T 1-SPECT にて高い取り込みがあり,画像では浮腫を認めることがある. 囊胞と造影効果を伴い,皮質を中心とした,ほとんど mass effect を有せず,T 1強調画像で等信号を 示し,側頭葉てんかんを有する小児あるいは若年成人に発生した腫瘍が最も典型的なパターンである. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.多形黄色星細胞腫(PXA):髄膜への付着があり,造影効果(dural tail sign)を認める.石灰化は稀で ある.側頭葉に多い. 2.胚芽異形成神経上皮腫瘍(DNT):多房性,中隔の存在,皮質を底辺とした三角形の広がり,造影効 果がほとんどない. 3.毛様細胞性星細胞腫:石灰化を認めず,造影効果がある.視床下部・視

叉以外は稀である.囊胞

および充実性 がある. 4.良性の星細胞腫:浸潤性であり,白質を中心とする.造影効果を認めない. 5.乏突起膠腫: 化の良好なゆっくり成長する浸潤性の腫瘍であり,皮質に発し皮質下白質に進展す る.石灰化を有する,不

一な腫瘍,神経膠腫よりはよりびまん性に侵す.半

に造影効果.20∼

50%はより悪性のタイプ(anaplastic oligodendroglioma). 6.神経囊虫症:多数の囊胞が認められ,内部には液体と幼虫の頭節(scolex)を示す壁在結節が T 1強 調画像ではやや高信号,T 2強調画像で低信号として認められる.幼虫が生きている間は内部の液 体は透明で,壁は薄く,周囲の浮腫も軽度であるが,幼虫が死ぬと壁が肥厚し周囲には強い炎症反 応が生じる.後に縮小し石灰化の結節となる. 7.線維形成性乳児神経節膠腫:1歳未満に発生する大変大きな不

一な腫瘍.充実成

は CT で高吸

収域を示し,MRI では皮質と等信号,皮質縁に っており,軟膜に った造影効果を認める.囊胞 性 を伴う.

小児と若年成人に発症する天幕上の囊胞と充実成

Box

1.神経節膠腫 2.星細胞腫:浮腫を有し皮質への浸潤は少 ない.毛様細胞性星細胞腫では石灰化は

を有する腫瘍

3.多形黄色星細胞腫:髄膜への付着があり dural tail sign を認める.石灰化は稀であ る.

稀である.

症例 A

歳,男子 多形黄色星細胞腫(PXA), 歳時発症の側頭葉てんかん

左上側頭回と中側頭回に腫瘍を認める.皮質から皮質下にのびている.腫瘤には強い造影効果を認め (図 3,4),脳表(髄膜)に接している.その内側には小さな囊胞があり(図 1と 2の矢印),さらに腫瘤 の前後にも比較的大きな囊胞を伴う(図 1の矢頭).接する髄膜に造影効果を認める(図 3の矢印).シル ヴィウス裂は直線化し,mass effect を認めるが腫瘤の割に偏位は少ない.周囲には浮腫を認める(図 1 の*印).石灰化を認めない. 以上の所見より,皮質を中心とする腫瘍で囊胞と明らか造影効果を有する腫瘍であり,石灰化はな い.壁在結節を有する囊胞を伴う腫瘍としては神経膠腫(神経節細胞腫),PXA,毛様細胞性星細胞腫 が鑑別に挙がる. 神経膠腫では壁在結節が必ずしも髄膜に接していない.髄膜の造影効果を認めない.本例では造影効 果が囊胞の外側にあり,髄膜と接し,髄膜に造影効果を認める点より PXA が最も

えられる.手術,


症例

-

組織診断にて確認されている.毛細胞性星細胞腫は視

叉,視床下部以外の天幕上は稀である.dural

tail sign を認めない.その他,DNT では明瞭な囊胞は稀である.乏突起膠腫は石灰化を認め,びまん 性に進展. 結論:若年成人あるいは小児例で,長い病歴のてんかん発作を有し,皮質を中心とする腫瘤で,髄膜 に肥厚と造影効果があるときには PXA を える.神経膠腫との鑑別は難しい. 若年者で髄膜腫に似た画像をみたら PXA も える.

T 強調画像

造影後の T 強調画像

T 強調画像

造影後の T 強調冠状断像


症例

症例 B(外科切除例)

-

歳,男性 神経節膠腫

17歳にて動作を停止する発作が出現,手術前まで継続してみられる.CT 検査で左側頭葉に石灰化を 伴う腫瘍が確認される. 外科切除標本(腫瘍部) クリューバー・バレラ(KB)染色,皮質深部に石灰化と伴う病変を認める(図 5の矢頭).ヘマトキシ リン・エオジン(HE)染色の強拡大では核小体が目立つグリア系細胞が多数集簇していたが(図 6の矢印 は石灰化),神経細胞に異型性はみられなかった(図 7の矢頭).

◀ ◀ ◀

◀ ◀ ◀ ◀ ◀

腫瘍(KB 染色)

◀ ◀

腫瘍の強拡大(HE 染色)

腫瘍の強拡大(HE 染色)

●参 文献 1 Shin JH,et al.Neuronal tumors of the central nervous system:radiologicfindings and pathologiccorrelation.Radiographics. 22(5):1177-89, 2002. 2 柳下章:神経節膠腫,土屋一洋,他編:手術と病理の理解のための頭部画像診断.秀潤社,102-5,2003. 3 Crespo-Rodriguez AM, et al. MR and CT imaging of 24 pleomorphic xanthoastrocytomas (PXA) and a review of the literature. Neuroradiology. 49(4):307-15, 2007.


症例 歳,女子 右顔面の萎縮とけいれん発作 3歳 6ヶ月より右顔面の萎縮が進行する.4歳で斜視に気づく.6歳時より全身性けいれん発作.知 的退行がある.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

FLAIR 画像


症例

進行性顔面片側萎縮症(Parry-Romberg 症候群) 解説 画像所見:右前頭部,皮下脂肪,骨の萎縮を認める(図 1∼4).右側頭葉では皮質がやや厚く皮質白 質境界の不鮮明がある.右大脳基底核には血管様の無信号領域を認める(図 1).右外包には高信号を認 める.右外包から島回にかけ皮質白質境界の不鮮明を認め,シルヴィウス裂内の脳脊髄液が明瞭にみえ ない(図 2).拡大した血管様の構造を右シルヴィウス裂付近に認める(図 2).右頭頂葉内側部では皮質 と深部白質内に高信号を T 2強調画像で認める(図 3).この画像所見は皮質形成異常としては信号強度 変化が強すぎる.FLAIR 画像ではより明瞭に右頭頂葉で,皮質と白質に高信号を認める(図 4).CT では石灰化は認めない(非掲載). 以上の所見は Parry-Romberg 症候群の脳の画像所見として報告されていることに矛盾しない. 本例は手術の際に,頭頂葉の一部の組織が取られており,それによると神経細胞の脱落と基質の海綿 状態があり,毛細血管の増加を伴うと記載された. 前医では CT で多発性の石灰化を認めているが当院では認められなかった.経過とともに消えていく ような高吸収域であった可能性がある.

臨床 本症は通常 10歳代で発症し,萎縮が頰部から始まる.顔面半側の皮膚,皮下脂肪,筋肉,骨,軟骨 の全部または一部の萎縮変性と色素沈着過度が認められ,ゆっくりとした進行を示す.進行は 3∼10年 に停止し,女性,左側に多い. 神経学的合併症は約 15%に認められ,けいれん,頭痛,片麻痺,知覚障害,三叉神経痛などがある. 眼科的合併症は約 16%に認められる.眼球運動麻痺,瞳孔異常などである.

病理所見 一定の見解はない.文献 1によれば,多巣性のマイクロアンギオパチーが軟膜および脳内の血管(主 として,毛細血管と小動脈)にあり,壁の肥厚,線維化,狭窄,極小動脈瘤(高血圧症のそれに似る), 血栓を伴っている.血管壁内および傍血管腔にはジデローシスを認める.グリオーシスと瘢痕化が認め られる.海馬には神経細胞脱落とグリオーシスを認めた(海馬 化症の合併). 文献 2によれば,大脳白質に拡大した 化症を示す血管があり炎症性細胞は認められない.線維素様 壊死を伴う.異常血管周囲の脳組織にはグリオーシスを認める.結論としてスタージ・ウエーバー症候 群に似た血管の形成障害あるいは神経皮膚症候群に含まれる可能性がある.自験例でも拡大した血管様 の構造を患側のシルヴィウス裂内および大脳基底核に認める.

画像所見 CT:顔面萎縮と同窓の大脳萎縮と石灰化の報告が多い.稀に反対側に認められる報告がある. MRI:大脳深部と皮質下白質の T 2強調像のびまん性の高信号領域,皮質の異常(皮質の肥厚,皮質 白質境界の不鮮明,脳回の異常など)の報告がある.その他,軟膜の造影効果が認められる. 限局的な大脳白質の造影効果が脳軟化へと変化,ゆっくりと進行する皮質の肥厚を認め,炎症の関与 を示唆する説と先天的な大脳半球の異常を支持する説とがある. 筆者自身では,大脳皮質形成障害の関与があるとしても,それのみでは強い信号強度の変化は説明で きず,マイクロアンギオパチーや後天的な炎症所見の関与があると えられる. (CD-ROM 参照)


症例

症例 症例 A めた

-

資料

歳,男性 Parry-Romberg 症候群,左顔面の萎縮とてんかん発作を認

てんかん発作は抗けいれん剤でコントロールされている. T 1強調画像にて左顔面の軟部組織と骨の萎縮がある(図 1の矢印).FLAIR 画像にて左半球に萎縮 を認める.左海馬は右に比べて小さく信号強度が高い.海馬 化症の所見と えられる(図 2の矢印). Parry-Romberg 症候群ではあるが,通常の 10歳代発症の症例に比べてけいれんがよくコントロールさ れていた.

T 強調画像

海馬 化症の所見

●参 文献 1 Lahr R, et al. Neuropathology of facal eipilepsies:An atlas. John Libbey, London, 194-6, 2003. 2 Chung MH, et al. Intracerebral involvement in scleroderma en coup de sabre:report of a case with neuropathologic findings. Ann Neurol. 37(5):679 -81, 1995. 3 白川清吾,他:幼時期に発症し,両側大脳白質病変,難治性てんかんを合併した Parry-Romberg 症候群の 1例,東京 女子医科大学雑誌 70:143-9,2000.(本症例の症例報告) 4 Cory RC, et al. Clinical and radiologic findings in progressive facial hemiatrophy(Parry-Romberg syndrome). AJNR Am J Neuroradiol. 18(4):751-7, 1997. 5 Terstegge K, et al. MR of brain involvement in progressive facial hemiatrophy(Romberg disease):reconsideration of a syndrome. AJNR Am J Neuroradiol. 15(1):145-50, 1994. 6 Dupont S, et al. Progressive facial hemiatrophy and epilepsy:a common underlying dysgenetic mechanism. Neurology. 48(4):1013-8, 1997.


症例 歳,女子

歳時より不随意運動と知的障害あり

1歳までの運動発達は正常範囲.その後,言葉の遅れ,知的障害が 4歳時にあり,不随意運動が出 現.発語不良,オピストトーヌスが出現する.

CT

T 強調画像

グラディエントエコー法

T 強調画像


症例

パントテン酸キナーゼ関連神経変性症(PKAN) 解説 画像所見:CT では淡蒼球に石灰化(鉄沈着による高吸収域)を認 める.大脳の萎縮がある.T 2強調画像では 6歳という年齢に比べ て淡蒼球の低信号が目立ち,異常な鉄沈着が疑われる.淡蒼球の前 部にやや信号強度の高い点状の構造があり eye ofthe tiger sign に合 致する所見である.グラディエントエコー法では,鉄沈着による淡 蒼球の低信号がより明瞭になる.本例では黒質には異常を認めな い.T 1強調画像で淡い高信号領域を淡蒼球に認める.SPECT(図 5)では淡蒼球の血流増加を認める.本例の不随意運動に淡蒼球が関 与すると えられる.淡蒼球に電球を埋め込み,刺激を行い,淡蒼 球の機能を抑制した結果,不随意運動の改善と SPECT 所見の淡蒼 球の血流増加が消失した(文献 8).

SPECT 画像

臨床 Hallervorden-Spatz 症候群と呼ばれたが,Hallervorden の第二次大戦中でのナチスへの協力により, その名前を改める方向にあり,PKAN が用いられている.進行性に錐体路および錐体外路が侵され, 知的障害を認める.鉄沈着を淡蒼球(内節>外節),黒質網様部に認める.

画像診断 最も特徴的な所見は T 2強調画像の eye of the tiger sign である.低信号を淡蒼球に認め,点状の高信 号領域を淡蒼球内側部に認める所見である.低信号は鉄の沈着により点状の高信号領域はその内部にお ける空胞化を伴う組織の粗鬆化によると えられている.古典的所見であるが,必ずしも全例にはなく 低信号のみの症例もある. CT:正常あるいは低吸収域もしくは高吸収域を淡蒼球に認める.高吸収域は鉄の沈着による. T 1強調画像で高信号領域はフェリチンによる T 1強調画像の短縮効果を示す.グラディエントエ コー法では鉄の常磁性体効果により低信号がより目立つ. 基底核に石灰化を示す疾患は多数ある.代謝性疾患,感染性疾患,無酸性脳症,中毒性疾患,先天性 疾患がある. (CD-ROM 参照)


症例

症例 Box

資料

淡蒼球に低信号領域を認める代謝性疾患

1.ウィルソン病:淡蒼球よりも被

と視床

4.無セルロプラスミン血症:セルロプラス

の低信号がより目立つ.比較的晩期の成

ミン(Cp)遺伝子の異常により Cp の fer-

人の所見である.小児例では被

oxidase活性が低下し,大脳基底核や肝に

の外側

に低信号領域を認めることがある. 2.ライソゾーム蓄積疾患:神経セロイトリ

鉄が沈着.成人期には錐体外路症状,認 知症,網膜変性を示す.常染色体劣性遺

ポフスチン症は視床と淡蒼球が低信号を

伝性.鉄の沈着は線条体,視床にも顕著.

示す.

血清セルロプラスミン,血清銅低値.

Fucosidosis:淡蒼球に低信号領域,内側

5.front-temporal dementia and parkin-

髄板および大脳白質に高信号を認める.

sonism linked to chromosome 17

特異な顔貌

pallido-nigrao-luysian degeneration

HARP(hypoprebeta-lipoproteinemia,

6.18q-症候群:18q に存在する髄鞘塩基蛋

acanthocytosis, retinitis pigmentosa,

白に関する遺伝子の関与が推定されてい

and pallidal degeneration):eye of the

る髄鞘形成不全症である.淡蒼球,被 ,

tiger sign を示す.遅い発症である.パー

視床,黒質に T 2強調画像にて低信号の

キンソン病様の所見を示す.

存在が報告されている.

3.神経フェリチン症:ferritin light chain geneの異常による成人発症錐体外路性疾 患.常染色体優性遺伝.淡蒼球,黒質の みならず,線条体,視床にも鉄の沈着.

参照

Box

大脳基底核の T 強調画像での高信号領域(CD-ROM 症例 6)

-


症例

-

症例 A(剖検例)

歳,男性 パントテン酸キナーゼ関連神経変性症

乳児期から発達が遅れ,15歳から寝たきり状態,てんかん発作,ジストニアもみられた. 剖検所見 中脳では黒質に異常な色素沈着がみられた(図 1の矢印).大脳冠状断,被

(p)と内包(ik),上段ベ

ルリン青染色では淡蒼球と黒質が青く染まり組織鉄の異常な沈着が示唆され,冠状断下段ホルツアー (HZ)染色では内節優位の淡蒼球(矢頭)と黒質(矢印)に線維性グリオーシスが認められた(図 2).黒質 のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色ではスフェロイド(軸索腫大)が出現していた(図 3の矢印).

中脳

ik

黒質(HE 染色)

ik

▼ ▼

p

p

右大脳冠状断(左ベルリン青・右 HZ 染色)


症例

-

●参 文献 1 Hayflick SJ,et al.Genetic,clinical,and radiographicdelineation ofHallervorden-Spatz syndrome.N Engl J Med.348(1): 33-40. 2003. 2 Swaiman KF. Hallervorden-Spatz syndrome. Pediatr Neurol. 25(2):102-8, 2001. 3 Guillerman RP. The eye-of-the-tiger sign. Radiology. 217(3):895-6, 2000. 4 Umemura A, et al. Pallidal deep brain stimulation for longstanding severe generalized dystonia in Hallervorden-Spatz syndrome. Case report. J Neurosurg. 100(4):706-9, 2004. 5 滝山嘉久,他:無セルロプラスミン血症の血液検査と画像.神経内科 61(2):140-5,2004. 6 VIDAL R, et al. Intracellular ferritin accumulation in neural and extraneural tissue characterizes a neurodegenerative disease associated with a mutation in the ferritin light polypeptidegene.J Neuropathol Exp Neurol.63(4):363-80,2004. 7 Wills AJ,et al.Palatal tremor and cognitive decline in neuroferritinopathy.J Neurol Neurosurg Psychiatry.73(1):91-2, 2004. 8 Koyama,M.Yagishita,A.Pantothenatekinase-associated neurodegeneration with increased regional cerebral blood flow in bilateral lentiform nuclei on single-photon emission computed tomography. Am J Neuroradiol. AJNR 27(1):212-3, 2006.


症例 歳,男性 球後視神経炎と尿崩症 1年半前より頭痛,口渇感,水

摂取量の増加を認め,半年前より左視力障害と視野狭窄が出現し増

悪している.

T 強調矢状断像

造影後の T 強調矢状断像

T 強調矢状断像

同冠状断像

FLAIR 画像


症例

神経サルコイドーシス 解説 画像所見:尿崩症を反映し,下垂体後葉の高信号を T 1強調画像では同定できない(図 1).視 輪郭が不明瞭であり,T 2強調画像で視 叉から視床下部にかけて異常な高信号領域を認める.視

叉の 叉

の前後,および上下,その周囲のくも膜に った線状の造影効果を認める.異常な高信号領域は視 叉 および視床下部で軽く腫大している可能性がある.大きな腫瘤を形成しているのではない.basal meningitis の所見であるが,造影効果は薄く結節状を呈してはいない. 半年後の造影後の T 1強調画像(図 6)では,視 叉周囲の造影効果の他に血管周囲腔を介し,実質内 の造影効果(図 6の矢頭)が明瞭になっている.その後の全身検索にて神経サルコイドーシスと診断し た.

T 強調画像

以上の画像所見からは細菌性(結核性を含めて),ウイルス性,真菌性髄膜炎,白血病の髄膜浸潤,癌 性髄膜炎なども 慮すべきである.視 叉に明らかな異常な高信号領域があり,その周囲に線状の淡い (レース状の)造影効果を認め,basal meningitis を伴っている.神経サルコイドーシスを疑う所見であ る.さらに経過が 1年半と長いことも,神経サルコイドーシスをより強く示唆している.

臨床 約 1.5%の患者が中枢神経系症状を示す.軟膜炎の形態を取ることが多く,片側性あるいは両側性の 脳神経症状(顔面神経麻痺が最多),内 泌症状,電解質異常を示す.くも膜軟膜から血管周囲腔へと進 展し,血管を閉塞し,肉芽腫性の血管炎を起こす.髄液ではリンパ球,蛋白の増加と髄液中の血糖値の 低下を来す.脳実質内の結節が認められるときには頭蓋内腫瘤の症状を示す.

画像診断 慢性の脳底槽を主体とする軟膜炎の形態を取ることが多い.視床下部,下垂体茎,視神経,視 叉を 侵す.穹窿部に病変がおよぶことがある. 通性水頭症を起こすこともある.軟膜に結節状や板状,と きに腫瘤を形成し増強効果を認める. もう 1つの画像所見は造影される結節性病変として脳実質内に認められる.強いくも膜炎を伴い小さ な肉芽が脳実質内に認められる.中脳水道付近にて閉塞性水頭症を来すことがある.石灰化を伴うこと があり,血管造影では腫瘍濃染像はない.白質に高信号領域として認められることもあり MS との鑑別 が困難なこともある. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

鑑別診断 1.軟膜の線状・板状造影効果を示す場合 1) ランゲルハンス細胞組織球症:発症年齢が 6∼14歳.腫瘤としての所見を示し,basal meningitis の所見を示さない.神経サルコイドーシスの初発は 20∼30歳代で,小児例は 3∼5%と報告され ている. 2) 細菌性,ウイルス性,真菌性髄膜炎:画像のみでは困難.経過が急性.結核との鑑別は画像のみ では困難であるが経過がより短い. 3) 白血病の髄膜浸潤,癌性髄膜炎:画像のみでは困難.経過がより早い. 2.軟膜に造影される腫瘤を形成する場合 1) 髄膜腫:MRS でアラニンの増加 2) 悪性リンパ腫 3) 形質細胞腫 3.脳室周囲に多発性の T 2強調像での高信号領域 1) 多発性 化症:神経サルコイドーシスでは髄膜に増強効果 4.脳実質内に造影効果のある結節性病変を認める場合 1) 多発性(神経サルコイドーシスの約 33%,CD-ROM 内の画像参照):転移性腫瘍,結核,真菌感 染 2) 単発性(神経サルコイドーシスの約 10%,CD-ROM 内の画像参照):神経膠腫,悪性リンパ腫

Box

漏斗部の病変

⑴ 肉芽腫

⑵ 腫瘍

1.神経サルコイドーシス

1.悪性リンパ腫

2.ランゲルハンス細胞組織球症

2.転移

3.TB

3.星細胞腫

4.Erdheim-Chester 病

4.胚芽腫 5.プロラクチノーマ 6.ラトケ囊胞 7.頭蓋咽頭腫

⑶ 下垂体柄切断


症例

-

症例 A

歳,男性 球後視神経炎と尿崩症(神経サルコイドーシス)(図 1,2)

経過中に

通性水頭症を呈し,シャントを受ける.

症例 B

造影後の T 強調画像

造影後の T 強調画像

歳,女性 パーキンソン病の経過観察中にみつかった(図 3,4)

右扁桃核に単発性の腫瘤があり,組織の検索,その後の全身検索により神経サルコイドーシスと え られた.

FLAIR 画像冠状断像

造影後の T 強調画像冠状断像


症例

症例 C

-

歳,女性 右眼のかすみと頭痛(図 5∼9)

以前より神経サルコイドーシスを指摘されていた.脳内に多発性の腫瘤を認める.T 2強調画像では 皮質と同様な信号強度,T 1強調画像で皮質よりは高信号,拡散強調画像で低信号領域を示す.強い 一な造影効果を認める.神経サルコイドーシスでは拡散強調画像でときに著明な低信号を示す場合があ る.

T 強調画像

拡散強調画像

T 強調画像


症例

-

症例 D

造影後の T 強調画像

造影後の T 強調画像

歳,女性 第三脳室後部,中脳水道入口部の手術で肉芽腫が発見され, 閉塞性水頭症,ついで検索で神経サルコイドーシスと診断された

画像(図 10,11)では中脳水道入口部が閉塞しているようにみえる.しかし,腫瘤自体は描出されな かった.

T 強調矢状断像

FLAIR 画像


症例

-

●参 文献 1 Lexa FJ,et al.MR of sarcoidosis in thehead and spine:spectrum ofmanifestations and radiographicresponseto steroid therapy. AJNR Am J Neuroradiol. 15(5):973-82, 1994. 2 Smith JK, et al. Imaging manifestations of neurosarcoidosis. AJR Am J Roentgenol. 182(2):289 -95, 2004. 3 Koyama T, et al. Radiologic manifestations of sarcoidosis in various organs. Radiographics. 24(1):87-104, 2004. 4 Okamoto K,et al.Diffusion-weighted echo-planar MR imaging in differential diagnosis of brain tumors and tumor-like conditions. Eur Radiol. 10(8):1342-50, 2000.


症例 歳,男性 月 日夕食後より発語困難となり,全身が脱力しけいれんが出現, 救急搬送され受診.発熱(−), 月 日に MRI検査

単純 CT

造影後の T 強調画像

T 強調画像

同矢状断像

T 強調画像

日後の造影後の

T 強調画像 (奈良県立医科大学附属病院放射線科,田岡俊昭先生の厚意による)


症例

マンソン孤虫症 解説 画像所見:CT で左後頭葉皮質下に小さな石灰化と

えられる高吸収域を認める.周囲白質に低吸収

域が広がる.側脳室の拡大はない.造影後の CT では石灰化を中心に造影効果を認める(非掲載).T 1 強調画像で左後頭葉皮質下に低信号領域を認める.T 2強調画像では石灰化の部位は周囲に低信号領域 を認め,中心は高信号を示し周囲には高信号領域を認める.石灰化の部位を中心に造影効果を認める. 逆コンマ状の造影効果を示し通常の腫瘍あるいは肉芽腫では

えにくい像である.さらに 20日後の画

像では造影される構造の像が変化し棒状になる.腫瘍あるいは肉芽腫では変化が激しく,形態も合わな い.生きた寄生虫が最も えやすい像である. 手術所見:脳表は浮腫状.病変は脳表から 1.5cm 深部に存在.穿刺によりはじけるような感触があ り,液体の流出あり,周囲脳組織はグリオーシス様である.吸引管の先端に白色の索状物が付着する. 摘出時に脳表で自発運動を行い,寄生虫と判断し全摘出した. 経過:摘出虫体は体幅約 1mm.体長は収縮時 2.5cm,伸展時 12.5cm.多数の横雛を有する条虫 (CD-ROM 参照). 微温生理食塩水内で活溌に運動する.血清,髄液抗マンソン孤虫-IgG 抗体陽性,術後経過良好,後 遺症なし.患者は年に 2∼3度の鶏肉(ささみの刺身)の生食歴があり,それが原因ではないかと言われ ている.

臨床 へビ,カエル,ニワトリなどの肉を生または加熱不十 で経口摂取し,筋肉内に寄生するマンソン裂 頭条虫の幼虫の感染が起こる.幼虫移行症として幼虫(プレロセルコイド)のまま体内を移動するのが特 徴である.主に皮下,ときに心外膜や脳内寄生例もあり,重篤な症状を呈することもある. ヒトへの感染:①プレロセルコイドを宿した第 1中間宿主であるケンミジンコを井戸水,河川水など とともに飲用した場合,②プレロセルコイドが寄生したニワトリ,淡水魚の生食,ヘビやスッポンの生 血の飲用,ウマ,イノシシの生肉の摂取など,マンソン裂頭条虫の幼虫であるプレロセルコイドの寄生 により起こる. 臨床症状:最も多い皮膚寄生では身体各部の移動性の皮下腫瘤.多くは無痛性,ときに自発痛,圧痛 を伴う.呼吸器,尿路,眼部,脳への寄生が認められることがある.中枢神経系への感染は稀.症状は 頭痛,嘔吐,発熱,けいれん,感覚異常,脱力. (CD-ROM 参照)


症例

症例

-

資料

画像診断 CT: 1.隣接する側脳室への mass effect がない白質の低吸収域(隣接する側脳室の拡大を伴うことがある) 2.小さな点状の石灰化を認める. 3.造影で不規則なあるいは結節状の増強を示す. 4.複数回の検査で位置が移動することがある.画像所見の悪化を認めるときには虫が生存している可 能性が高い. MRI: 1.白質の変性部位は MRI が明瞭である. 2.寄生虫性の肉芽腫はすべてのパルス系列で皮質と等信号とする報告と,中心が T 2強調画像で低信 号で周囲は高信号を示す説とがある. 3.造影効果のある構造の位置が変わったり,形態が変化したときには虫の移動が えられる. 4.皮質下に T 1強調画像では高信号,T 2強調画像で低信号を示す領域があり,微小出血を示すと えられる.11人中 8人に認められる. 5.微小な石灰化は CT の方が明瞭である.

症例 A マンソン孤虫症(本文と同一症例) 摘出虫体の形状は体幅約 1mm(1∼3mm ぐらいで変化),体長は収縮時 2.5cm,用手伸展時 12.5cm で,多数の横皺を有する条虫.

虫体尾側半身の伸展時

(奈良県立医大寄生虫学教室,吉川正英先生の厚意による)

頭部


症例

-

●参 文献(英文はいずれも韓国からの報告である) 1 Moon WK, et al. Cerebral sparganosis:MR imaging versus CT features. Radiology. 188(3):751-7, 1993. 2 Kim DG,et al.Cerebral sparganosis:clinical manifestations,treatment,and outcome.J Neurosurg.85(6):1066-71,1996. 3 Chang KH, et al. Cerebral sparganosis:analysis of 34 cases with emphasis on CT features.Neuroradiology.34(1):1-8, 1992. 4 吉川正英,他:全身けいれんで発症し脳腫瘍疑診下の術中に 出する虫体を摘出した脳マンソン孤虫.Clin Parasitol J 13(1):129-31,2003.(本例の症例報告)


症例 歳,女性

年ほど前から物忘れ,計算力の低下が出現した

1年ほど前からは被害妄想,異常行動がみられるようになった.認知症を精査するため神経内科に入 院となった.神経学的所見で認知症と構音障害を認める.血液検査では WBC 4,000/μl,CRP 1.0mg/ dl,髄 液 検 査 で は 糖 47mg/dl,蛋 白 62.1mg/dl,細 胞 数 39/3/μl(Lymph 83%,Neut 2%,Mono 15%).

FLAIR 画像

T 強調画像

FLAIR 画像

造影後の T 強調画像

(京都大学医学部附属病院放射線科,三木幸雄先生の厚意による)

FLAIR 画像


症例

進行麻痺(神経梅毒) 解説 画像所見:FLAIR 画像で前頭葉,側頭葉,島回の皮質下白質に高信号を認める.T 2強調画像でも 同部位に高信号を認める.T 1強調画像では信号強度変化はほとんど認めない(非掲載).造影後の T 1 強調画像では橋底部表面に淡い造影効果を認めた.SPECT(I 123-IMP)では両前頭葉から側頭葉・頭頂 葉に広範な血流低下がある(非掲載).MRA では著変を認めない(非掲載).血液検査で VDRL 定量 64 倍,TPHA 定量 327,680倍,髄液検査で TPHA 定量 40,960倍を示し,進行麻痺と診断された. 本症は第 22回神経放射線ワークショップで京都大学医学部附属病院・放射線科より出題された.た またま同会にて FLAIR 画像を含めて同様な画像所見の進行麻痺(general paresis)の症例が別な施設か ら出題され,ある種の進行麻痺に特徴的な画像所見と えられた.

臨床 進行麻痺は Treponema pallidum に感染した患者の約 5%に 10数年以上経過して発症する神経梅毒 (neurosyphilis)の 1つである.男女比は 3∼4:1と男性に多く,30歳代から 40歳代で発症することが 多い.主として前頭葉,側頭葉の皮質と皮質下白質が侵されることにより精神知能障害が前景に立つ. 精神機能の低下とともに,けいれんも認められ,四肢の麻痺をきたし最終的には臥床状態となる. 病理所見は髄膜血管型神経梅毒と実質型神経梅毒の合併した所見を示し,前頭葉が最も強く,後頭葉 に向かって弱くなる大脳萎縮を認める.神経細胞の消失と強いグリオーシスがある.マイクログリアが 増生し,鉄を貪食している.

画像診断 神経梅毒における画像報告例の多くは髄膜血管型神経梅毒である.一般に髄膜血管炎による虚血性梗 塞巣や髄膜の異常造影効果として描出される.進行麻痺における MRI 像の報告例は少ないが,前頭葉 や側頭葉を主体とした皮質の萎縮,グリオーシスによる皮質下の T 2強調像での高信号域,フェリチン 沈着によると えられる大脳基底核や視床の T 2強調像での低信号域などが報告されている(文献 3). 両側側頭葉内側部に高信号領域として FLAIR 画像にて認められ,ヘルペス脳炎類似の症例が報告され ている. ●参 文献 1 Zifko U, et al. MRI in patients with general paresis. Neuroradiology. 38(2):120-3, 1996. 2 Bash S, et al. Mesiotemporal T2-weighted hyperintensity: neurosyphilis mimicking herpes encephalitis. AJNR Am J Neuroradiol. 22(2):314-6, 2001. 3 Holland BA, et al. Meningovascular syphilis:CT and MR findings. Radiology. 158(2):439 -4, 1986.


症例

症例

-

資料

歳,男性 進行麻痺(神経梅毒) 程度は軽いが皮質下に多数の点状の高信号を FLAIR 画像で前頭葉と側頭葉,島回に認める(図 1∼3 の矢印).

FLAIR 画像

FLAIR 画像

FLAIR 画像


症例 歳,女性

月 日にけいれん重積あり,精査入院した

数年前から頭蓋内石灰化のため,他院で経過観察されていた.けいれん発作は今回が初めてである。 初回の CT(図 1∼2)を撮像.妊娠中であったため,アレビアチン 内服のみで外来で経過観察.以後特 に症状はなかったが,2002年 1月 15日より頭痛,吐き気,食欲低下が強くなり入院.入院時意識レベ ルは 1度.強い頭痛があり血液,生化学検査に異常を認めない(難問なのでヒント:図 1,2にて示され る病変に何かが加わり,図 3∼7になる).

年の CT

同 T 強調画像

同造影後の T 強調画像 (軸位像と矢状断像)

年の CT

同 T 強調画像

年の CT

同造影後の T 強調画像 (軸位像と矢状断像)

(国立病院機構仙台病院放射線科,栗原紀子先生の厚意による)


症例

前頭洞の骨腫の頭蓋内進展と脳膿瘍 解説 画像所見:CT で右前頭部に大きな石灰化あるいは骨化した病変を認める.周囲には異常な低吸収域 はなく前角への mass effect もほとんどない.3年後の CT では石灰化の周囲には低吸収域が出現し右前 角に対して大きな mass effect を認める.T 1強調画像で石灰化あるいは骨化はほとんど無信号を示し, その後方に新しく出た病変がある.T 1強調像で低信号,T 2強調画像で強い高信号を示し周囲に比較 的 一なリング状の造影効果を認める.さらに石灰化あるいは骨化の周囲にも多発性のリング状の造影 効果を認める.周囲に浮腫を認める.矢状断像では石灰化した病変は前頭骨に接しリング状の造影効果 のある新しい病変は脳実質外,さらに 膜外へとのびている.多発性のリング状の造影効果を有する病 変が新しく加わったと えられる.膿瘍である.石灰化あるいは骨化した病変は骨腫であり,前頭洞由 来である. 手術所見:開頭時,前頭洞が一部あいたが内部は正常である. 膜は緊満していた.脳表は浮腫状だ が明らかな異常なし.前頭葉底部の脳組織診で多数の炎症細胞浸潤があった.前頭葉底部を起こしたと ころ,前頭蓋底から連続する骨の膨隆が(あたかも骨腫瘍のように)あった.このすぐ背部には膿瘍の部 があり,これは前頭洞と連続していた. 結論:前頭洞の骨腫瘍が巨大化し 膜をつきぬけ脳内に食い込み,これにより前頭洞から炎症が波及 し膿瘍を形成したと えられた.骨腫瘍の組織は骨腫で副鼻腔粘膜と連続性があり,前頭洞の骨腫が頭 蓋内進展したと えられる.

臨床(骨腫) 骨腫は成熟した骨質の増殖を特徴とする良性腫瘍であり,その 80%は前頭洞にある.男性に多く, 飛行機に乗った際に強い頭痛を起こすことが多い.副鼻腔の出口をふさぎ,副鼻腔炎の合併にて発症す る.粘液囊胞を合併することもある.骨腫は非常にゆっくり成長する.稀に頭蓋内に穿破し,気脳症が 発生する.頭痛による発症が多く,mass effect や副鼻腔炎の合併による.

画像診断(骨腫) CT:通常は無茎の前頭洞や篩骨洞の壁から副鼻腔内に突出する骨状の高吸収域, 一で密な骨成

最も適当な CT は冠状断像の骨条件.この症例も冠状断像の CT があればよりわかりやすかった可能 性がある. 大きな骨腫は以下の疾患を合併する. 1.副鼻腔出口閉鎖による副鼻腔の陰影欠損 2.粘液囊胞(12.5∼50%),頭蓋内への進展は大変稀ではあるが,1例報告がある(文献 4). 3.気脳症 4.脳膿瘍(1%以下) MRI:すべてのパルス系列において低信号,しばしばみえないこともある. (CD-ROM 参照)


症例

症例 Box

資料

副鼻腔内の高吸収域の鑑別

1.外骨腫:成熟した骨の過成長であり,骨 皮質を認め,親の骨から骨髄へとのびる. 2.線維性異形成:膨張性のすりガラス状の 病変

Box

-

3.骨化性線維腫:厚い,成熟した骨による 壁と内部の未熟な骨への移行が認めれ, 中心は CT にて低吸収域を示す 4.骨肉腫:悪性の骨腫瘍,浸潤性の骨変化

頭蓋内の brain stone(密な石灰化を来す腫瘤)

1.血管造影では認められない metaplasia を 伴った脳動静脈奇形 2.海綿状血管腫

3.上衣腫の術後の放射線治療後に発生した 髄膜腫 4.原因不明の brain stone 5.骨腫

●参 文献 1 Earwaker J. Paranasal sinus osteomas:a review of 46 cases. Skeletal Radiol. 22(6):417-23, 1993. 2 Summers LE,et al.Frontal sinus osteoma associated with cerebral abscess formation:A case report.Surg Neurol.55(4): 235-9, 2001. 3 Shady JA, et al:Osteomas of the frontoethmoidal sinus with secondary brain abscess and intracranial mucocele:Case report. Neurosurgery 34(5):920-3, 1994. 4 Nabeshima K,et al.Osteoma of the frontal sinus complicated by intracranial mucocele.Pathol Int.53(4):227-30,2003.


症例 歳,男性

ヶ月前より左側同名半盲があり,視力低下が進行する

T 強調画像

T 強調画像

FLAIR 画像

拡散強調画像

ADC 像

(浜 医科大学附属病院放射線科,磯田治夫先生の厚意による) (メジカルビュー社 臨床画像 より許可を得て転載)

造影後の T 強調画像


症例

進行性多巣性白質脳症(PML) 解説 画像所見:T 2強調画像で右後頭葉皮質下白質を中心に,左後頭葉,右前頭葉と白質に多巣性の病変 を認める.両側後頭葉の病変の最前部は高信号の程度がそれより後方の部位より低い(図 1の矢頭).同 部位は T 1強調画像では等信号から低信号への移行部に当たる(図 2の矢頭).右後頭葉皮質は信号強度 の軽度の上昇を認める.FLAIR 画像で高信号の程度がやや弱い.拡散強調画像で高信号を示し(図 4 の矢頭),ADC 値の低下を認める.造影後にはほとんど造影効果を認めない.以上の所見は多巣性, 皮質下白質中心,造影効果のない点より,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy:PML)が最も えられる所見である 患者は免疫不全症の 1つである高 IgM 症候群に罹患し過去に無顆粒球症,慢性中耳炎,副鼻腔炎な どの既往がある. 上記の T 2強調画像でやや程度の低い高信号領域は,病変の最前部で最も新しい病変を示し,最も新 しい脱髄あるいは炎症性細胞浸潤の部位を示すと えられる. 以後の変化は CD-ROM に示す(CD-ROM 内症例 A を参照).

臨床 免疫不全患者に発症する進行性,致死性の JC ウイルスによる脱髄性疾患である.JC ウイルスは生 下時にはほとんどみられないが,成人では約 3/4に脳・腎・B リンパ球内の潜伏感染があり,宿主の免 疫低下により再活性化され,乏突起膠細胞を障害し,白質に脱髄を主とする病変が形成され,PML を 引き起こすとされている.日和見感染症の 1つである.最多の基礎疾患は AIDS であり,白血病その 他の血液疾患,リンパ腫,SLE,結核患者や臓器移植での免疫抑制剤やステロイド投与を受けている患 者にもみられる.AIDS 患者の 2∼5%にみられる. 頭痛,視覚障害,認知症,半麻痺,失見当識,けいれんなどで発症し進行性に経過.治療法の発達に より予後は向上しつつある.AIDS 症例の PML には HAART(highly active antiretroviral therapy:抗 HIV 多剤併用療法)が行われる.

Box

PMLを合併しやすい状態

1.AIDS

5.悪性リンパ腫

2.自己免疫疾患

6.骨髄増殖性疾患

10.結核

3.癌

7.非熱帯性スプリュー

11.ホウィップル病

4.免疫抑制療法

8.神経サルコイドーシス

(CD-ROM 参照)

9.移植


症例

症例

-

資料

画像診断 T 1強調像では低信号,T 2強調画像では高信号を示す斑状から融合状の病変で,造影効果のない限 局性の病変として認められる.大脳皮質及び基底核を除く,mass effect を伴わない,皮質下 U 線維を 侵す多巣性の脱髄性病変と認められる.病変は皮質下(U 線維が障害されることが多い)に始まり,次 第に深部へ進行することが多い.HIV 陽性者での皮質下の異常は PML が最も えられる.脳萎縮は少 ないことが多く,T 1強調画像では低信号を呈し病期が進むにつれ低信号に描出されることが多い.2 つ以上の病変があると左右非対称のことが多い. PML の病変の内,比較的新しい病変に拡散強調画像にて高信号を示す領域があり,通常は造影効果 を認めない.小児型副腎白質ジストロフィー症(ALD)の病変によく似ているが ALD では新しい病変 には造影効果を認めることが多い. 病理学的に証明された PML の症例,48例について画像所見と予後を検討すると, ・経過観察では mass effect がみられたものは有意に予後不良である. ・大脳基底核病変があると予後が悪い傾向がある. ・皮質の萎縮や脳室拡大は予後と相関しない. ・病変の数や広がりは予後に相関しない. 後頭蓋窩に限局したのは 3例/48(6%)であり,mass effect がみられたもの 5例/48(10%),造影効果 がみられたもの 1例/45(2%)であり,ごく淡い点状の増強効果を認めた報告がある.中小脳脚に初発す る例もある(CD-ROM 内,症例 B 参照). ときに例外的に腫瘤性病変として認められ,造影効果,基底核を含む灰白質への浸潤,広範な斑状の 病変を示すことがある.血管造影でも時に腫瘍濃染像を認め,AV シャントがあることもある.血管新 生を伴う微小血管性炎症性疾患の要素を持つ.

AIDS に関連の鑑別 1.HIV 脳症 ・萎縮+両側対称性の側脳室周囲白質優位のびまん性白質病変+T 1強調画像で等信号のことが多 い. ・造影剤での増強効果はみられないことが多い.mass effect はない. ・小脳・脳幹部・大脳基底核に病変がみられることもある. 2.トキソプラズマ症 ・75%は大脳基底核,視床,大脳半球に病変がある. ・浮腫やリング状の増強効果がみられることが多い. ・CT,MRI では悪性リンパ腫の鑑別は困難である. 3.悪性リンパ腫 ・造影で強く 一に染まることが多い.ただし AIDS など免疫低下状態では中心部壊死のためリン グ状に染まることも多い.浸潤性の強いものでは稀に染まらないこともある. ・左右非対称なものが多い.側脳室周囲に病変を認めることがある.


症例

-

症例 A

歳,男性 PML(本文の同一症例の続き)

12月 19日に他院入院.視力・視野障害,左顔面・舌下神経麻痺,左片麻痺,嚥下・構音障害を認め た.MRI を同 22日に撮像する. 右優位に両側後頭・側頭・頭頂葉,右前頭葉にかけ皮質下白質から深部白質にかけて T 2強調画像で は高信号を認める(図 1∼3).脳梁膨大部,赤核,右橋底部,右大脳基底核,右外包にも進展を認める. T 1強調画像では両側後頭・側頭葉,頭頂葉の大脳皮質の信号強度の上昇を認める(図 4).高信号領域 は 2つの領域に かれ,前方群はより信号強度が低く,後方の領域は強い高信号を示す.以上の病変に は mass effect はなく病変は融合している.拡散強調画像(図 5)では病変の最も前部に高信号領域を認め (T 2強調画像ではより低い高信号領域),病変の最も新しい部位である. 1月 29日の MRI では病変はさらに前方に広がっている(図 6∼8).拡散強調画像の高信号領域も前 方へとずれている.T 1強調画像では右被 外側と視床枕付近に高信号を認める.病理所見では同領域 に壊死を認め,その変化を現している可能性がある. PML の病変の内,比較的新しい病変に拡散強調画像で高信号を示す領域があり,通常は造影効果を 認めない.小児型副腎白質ジストロフィー症(ALD)の病変によく似ているが ALD では新しい病変に は造影効果を認めることが多い.

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

拡散強調画像

T 強調画像


症例

MRIによる病変

MRIによる病変

-

MRIによる病変

(静岡てんかん・神経センター神経内科,黒田龍先生の厚意による)

症例 B

歳,男性 PML

3ヶ月前より呂律が回りにくくなり徐々に増悪.呂律困難,左不全麻痺を認める. 画像所見:右側優位に両側性に中小脳脚に病巣を認め,T 1強調像(図 9)では低信号,T 2強調画像 (図 10)では高信号を示す.両側の中小脳脚に左右差を持って病変があり mass effect はない.橋および 小脳の萎縮はなく橋内の横走線維にも異常を認めない.一次的に白質に病変を持つ.白質脳症が疑われ る.HIV 陽性患者であれば PML を疑う所見である. さらに 5ヶ月後の MRI の T 2強調画像(図 11∼13)では所見の著しい進展があり,橋,上部小脳,左 前頭葉皮質下にも病変がおよんでいる.左前頭葉皮質下の病変は U 線維を含み皮質は保たれている. 進行の早さから えて PML と える.患者は HIV 陽性であり,CD 4は 5/μl であった.

T 強調画像

T 強調画像


症例

-

T 強調画像

T 強調画像

T 強調画像

(国立病院機構・大阪医療センター放射線科,酒井美緒先生の厚意による)

大脳白質の浸潤性と融合性の病変

Box

1.動脈

化:加齢性変化,萎縮を伴うこと

が多い.

7.悪性リンパ腫:側脳室周囲,灰白質を侵 す.脳梁は典型的な部位,T 2強調画像

2.血管炎:多巣性の虚血性病変,点状の造 影効果を認めることがある.

では等信号 8.遺伝性あるいは後天性代謝性疾患:異染

3.退形成性星細胞腫:造影効果は種々

性白質ジストロフィーは融合した側脳室

4.ウイルス性脳炎:より急性の発症

周囲の病変

5.脱髄性疾患:特徴的な部位にあ り mass effect がない.

9.大脳膠腫症:T 2強調画像にて高信号を 示す浸潤性の病変.病変の腫大を認める.

6.PML:皮質下あるいは側脳室周囲の非対 称性病変,頭頂後頭部の病変は脳梁を越 えることがある.

参照

Box

両側中小脳脚に異常信号を認める疾患(CR-ROM 症例 6)

症例 C(剖検例)

歳,女性

進行性多巣性白質脳症/SLE

18歳で SLE を発症,パルス療法を含め副腎皮質ステロイド剤による治療を受けていた.21歳で突然 右片麻痺が出現,漸次進行し寝たきり状態となる.頭部 MRI 検査では左右の大脳白質ならびに小脳白 質に病変がみられたため進行性多巣性白質脳症を疑いインターフェロン髄注を行うが,副作用のため中 止. 血,肺炎治療中に突然死. 剖検所見 前頭極冠状断,クリューバー・バレラ(KB)染色,深部から皮質直下までの白質に広範に脱髄病巣が 認められた(図 14).前頭葉白質の脱髄巣,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色(図 15∼18).脱髄巣の 辺縁に当たる大脳皮質直下ではグリア細胞の密度が増加,ヘマトキシリンに濃染する核内封入体を有す る異型オリゴデンドロサイト(図 15の矢印)や異型アストロサイトがみられた(図 16の矢印).脱髄巣の


症例

-

中央部では組織が粗になり,前記の異型アストロサイトや泡沫状の胞体を有する貪食細胞が認められた (図 17).脱髄巣の辺縁部と中央部の中間には軽度の血管周囲性の細胞浸潤もみられた(図 18).

右前頭極(KB 染色)

前頭葉白質(HE 染色)

異型アストロサイト(HE 染色)


症例

-

貪食細胞(HE 染色)

血管周囲性の細胞浸潤(HE 染色)

●参 文献 1 Ernst T, et al. Progressive multifocal leukoencephalopathy and human immunodeficiency virus-associated white matter lesions in AIDS:magnetization transfer MR imaging. Radiology. 210(2):539 -43, 1999. 2 Post JD, et al. Progressive Multifocal Leukoencephalopathy in AIDS: Are there any MR findings useful to patient management and predictive of patient survival? AJNR Am. J. Neuroradiol. 20(10):1896-906, 1999. 3 Anne G Osborn, et al. Diagnostic Imaging:Brain Amirsys Inc. 1-6, 26-7, 2004. 4 Bergui M, et al Progressive multifocal leukoencephalopathy:diffusion-weighted imaging and pathological correlations. Neuroradiology. 46(1):22-5, 2004. 5 内堀歩,他:後天性免疫不全症候群にともなう進行性多巣性白質脳症病巣の拡散強調画像を主とした MRI による神経 放射線学的検討 臨床神経学 44(8):531-6,2004. 6 Mader I,et al.Progressivemultifocal leukoencephalopathy:analysis oflesion development with diffusion-weighted MRI. Neuroradiology. 45(10):717-21, 2003.


症例 歳,女性 前頭葉の皮質下出血 7月 27日,兄が患者の言動のおかしいことに気づく.8月 8日受診.CT で脳内出血を認め入院.強 制把握反射陽性,口尖らし反射陽性,尿失禁. 8月 8日の CT(図 1∼2)と 9月 2日のグラディエントエコー法 T 2 強調画像(図 3∼4)を参照のこと (高血圧症および異常な造影効果を認めない).

CT 画像

T 強調画像

CT 画像

T 強調画像


症例

アミロイド血管症 画像所見 右側頭後頭移行部皮質から皮質下に線状の低吸収 域を CT で認める.CT より上部であるが,連続性 に T 2 強調画像で低信号を示し,古い皮質下出血 であることがわかる.さらに右前頭葉内側には 7月 27日頃発症と

えられるより新しい皮質下出血が

ある.左頭頂葉にも古い皮質下出血が疑われる.66 歳にて皮質下出血が 3ヶ所以上にあり,古い出血お よび比較的新しい出血があることよりアミロイド血 管症(amyloid angiopathy)を

慮する.

9月 16日,右中心溝近くに新たな皮質下出血を 認め(図 5),臨床的にアミロイド血管症と診断し た. 図

臨床

皮質下出血

抗酸性の水に溶けない細胞外の蛋白であるアミロイドが,中程度から小さな皮質および髄膜にある血 管の中膜と外膜に付着することによって発生する.この沈着は年齢とともに増加し血管の弾性を侵す. しかし高血圧とは無関係である.微小動脈瘤が剖検例ではしばしば認められる. アミロイド血管症は全身のアミロイドーシスとは無関係である.30∼40%に認知症の合併があり, 85%にアルツハイマー病の合併がある.その他にダウン症などを伴うこともある.

画像診断 1.CT,MRI では大葉性出血がしばしば認められる.経過時間の異なる多発性の出血,多発性の同時 出血がしばしば起こる.くも膜下出血, 膜下血腫も認められる.非外傷性出血の 10%を占める. 大脳基底核,脳幹,小脳には出血が認められないことは鑑別診断に重要である. 2.円形状の T 2 強調画像で無信号領域を多数認め,広範なヘモジデリンの沈着巣を示す. 3.大脳白質に非特異的な多発性の高信号を認めることがある.白質の血管のアミロイド沈着による低 潅流(ischemic leukoencephalopathy)によると

えられる.稀に出血を伴わない腫瘤(amyloidoma)

として認められることがあり,神経膠腫との鑑別が困難な例もある. 4.グラディエントエコー法(T 2 強調画像)は通常の 180度スピンエコーパルスを 場の不

用しないので,磁

一性を敏感に捉えられる.T 2 強調にするにはフリップ角を小さくし(5∼10度),エコー

時間を長く(40msec.以上に)する.

Box

比較的多い非外傷性脳内出血

1.高血圧

5.血液成 の異常

2.血管奇形

6.コカイン

3.出血性梗塞

7.妊娠(子癇)

4.凝固異常

8.血管炎

(CD-ROM 参照)

9.アミロイド血管症 10.感染(アスペルギルス症)


症例

症例 参照

Box

症例 A

-

参 資料 脳内に T 強調像で多発性の低信号領域(CD-ROM 症例 48参照)

歳,女性 アミロイド血管症の疑い

約 2ヶ月前より着衣失行,味覚失認が出現する.1週間前に左片麻痺,ゲルストマン症候群を示す. CT にて吸収値の異なる 2つの出血を右頭頂葉皮質から皮質下に認める(図 1).2つの出血は互いに 接し,内側部は 一で吸収値が外側の病変に比して低い.境界は明瞭である.外側部はより高吸収域を 示し,やや不 一な吸収値を示す.同一時期の出血では,内側部は主に血漿成

,外側部がその他の成

を示し,同一時期に起こった可能性と,2回の出血が同一部位に起こった可能性がある.明らかな造 影効果を認めない(図 2).MRI でも 2つの成

かれる.内側部は T 2強調画像(図 3),T 1強調画

像(図 4)ともに高信号を示す.メトヘモグロビンによる高信号で矛盾しない.内側部はともに低信号を 示し,これもデオキシヘモグロビンによる低信号とも解釈できる.MRI でも造影効果を認めない(図 5).最初の CT 撮像後,約 1ヶ月後の CT(図 6)にて左前頭葉皮質下に出血を認める.周囲に低吸収域 を認める.以上の繰り返す皮質下出血の既往よりアミロイド・アンギオパチーの疑いとした.

CT 画像

T 強調画像

CT 画像

造影後の T 強調画像

T 強調画像

ヶ月後の CT 画像


症例

-

症例 B(剖検例)

歳,女性 脳アミロイド・アンギオパチー

死亡 20日前に左後頭葉に出血する. 剖検所見 左大脳後頭極冠状断,後頭葉,頭頂葉を占拠する大きな血腫が認められ血腫の辺縁の一部に圧排され た大脳皮質が同定できた(図 7の矢頭).同部位,シナプトフィジン(SP)染色,大脳皮質のシナプスを 褐色に染める染色ではくも膜下腔の出血が大脳皮質の谷の部

で脳実質内に穿破していた(図 8の矢

印).大脳皮質,コンゴー赤染色・蛍光法,血管壁に沈着したアミロイドが黄色の蛍光を発していた(図 9の矢印).くも膜下腔血管,ベータ・アミロイド(β)染色,褐色に染まるアミロイドが血管壁の中膜優 位に全周性に沈着していた(図 10).

左大脳後頭極冠状断

(新潟脳外科病院病理部,武田茂樹先生の厚意による)

血腫とその周囲(SP 染色)


症例

大脳皮質(コンゴー赤染色)

-

くも膜下腔血管(β染色)

●参 文献 1 Caulo M,et al.Cerebral amyloid angiopathypresenting as nonhemorrhagicdiffuseencephalopathy:neuropathologicand neuroradiologic manifestations in one case. AJNR Am J Neuroradiol. 22(6):1072-6, 2001. 2 Fazekas F. Histopathologic analysis of foci of signal loss on gradient-echo T2 -weighted MR images in patients with spontaneous intracerebral hemorrhage: evidence of microangiopathy-related microbleeds. AJNR Am J Neuroradiol. 20(4):637-42, 1999. 3 Osumi AK, et al. Cerebral amyloid angiopathy presenting as a brain mass. AJNR Am J Neuroradiol. 16:911-5, 1995. 4 Takeda S, et al. Subcortical hematoma caused by cerebral amyloid angiopathy:does the first evidence of hemorrhage occur in the subarachnoid space? Neuropathology 23(4):254-61, 2003.

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