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森林・芸術・デザイン -ツリーハウスからハンティングまで- 伊藤洋志(ナリワイ・非電化工房) はじめに  森林文化を考察すると言うことは、森林というフィールドにおいていなかる文化的な営みが可能かという ことであると考える。一般的に森林文化というと古来からつづく風俗、習慣がイメージされる。しかし、文 化的な営みを知的興奮を伴う遊びである、と考えると、当然ながら遊びの意味、志向性は時代とともに変わ ると言える。それにもかかわらず森林文化体験というと、炭焼き、収穫体験、間伐などの古来からの活動が そのままメニューとしてあげられることが多い。たしかに、例えば茅葺屋根の茅を運ぶ過程での坂道を茅の 束を転がす遊びなどは娯楽の自給活動として評価すべき事例として見出すことができるが、そこに学ぶべき はその具体的な様式ではなく、生活環境の中で娯楽を自ら編み出す生活態度である。一時期グリーンツーリ ズムが、山村振興の手段の一つと言われたことがあったが、研究、活動ともに現在では停滞気味の感が強い。 その原因は、単に伝統的な生活体験を提供しただけで、常に変化し続ける「知的遊びの総体としての文化」 という視点が欠けていたために、広がりが見られなかったからではないだろうか。  一方で、第一次、第二次産業から文化産業、創造産業への移行が進んでいる現代社会において森林文化へ の考察を深めることは、新しい経済活動を森林周辺にもたらす可能性を持っている。本研究では、現在の文 化に不可欠になってきているデザイン、芸術という視点をもとに森林文化を考察する。 考察 -ツリーハウスとハンティングの違い 主に認識されている創造産業の定義は英国の文化・メディア・スポーツ省 による「個人の創造性や技能、 才能に由来し、また知的財産権の開発を通して富と雇用を創出しうる産業」であるとされている。文化を創 る産業と言い換えることもできると考えられるが、森林関係の産業では、創造産業と言える文化を創造する ようなビジネスモデルを構築しているものは多くはない。  ところで、日本最大のソーシャルネットワーキングmixiでコミニティを検索してみると、組織によらない ものでは「森林文化」で0件、「炭焼き」1件(参加者65人)であるが、「ツリーハウス」での検索では6件、 そのうち最大のコミニティ「ツリーハウス」では3558人が参加している(※2008年1月19日現在)。これを 見ると、ツリーハウスは、創造産業として成立しうるコンセプトであると考えることができ、森林と言う場 での文化的な営みと言えよう。  このツリーハウスに見られる特長というのは、決してグリーンツーリズムや林業、山村振興の文脈から知 られるようになったものではなく、建築、デザインなど創造産業に特長的な文脈から知られるようになった ことである。代表的なツリーハウスの例としては、建築史研究者である藤森照信氏による「高過庵」「矩庵」 「一夜亭」「徹」(写真1)がある。 樹上の茶室として建築されたこの建築物は、しばしば一般の雑誌にも 取り上げられている。現在、ツリーハウスはTVCMにも取り上げられるようになり、多くの人の知るところと なった。ツリーハウスに関する著作、イベントも増えており、現存するツリーハウスもそれぞれ個性的であ り、先に述べた創造産業の条件を満たしうるものということが言えるだろう。ここで、狩猟について見てみ ると、ヨーロッパ圏ではハンターは森の番人として扱われ、伝統ある文化であり、日本でも創造産業として の可能性がある。しかし、現状では、狩猟人口は減少傾向で、特に若年者の 減少が著しい。デザインという視点からの活動はなく業界の内と外をつなぐ メディア露出も乏しい。文化の創造者といえばどんな分野でも主に若年層が 多いことを考えると、その現状は対照的である。この二例の違いは、創造産 業を生み出す土台となる森林文化を考察するに有用なものであると言える。 まとめ  森林文化を創造産業の土台として捉えた場合に、その文化に深く広がりが 大きいほど可能性がある。そのためにはツリーハウス以外にも様々な遊びが 創造されることが必要である。その際に重要なのは、デザインと言う視点を 持つこと、芸術性、つまり個人の創造性、才能が発揮されること、それらが 分野を越えて知られること、以上の3点であると言えるのではないだろうか。 キーワード:ツリーハウス,手仕事,森林文化,デザイン (問合せ先:伊藤洋志,ito@nariwai.org) 写真1:引用元「建築マップ」http://www.archi-map.net/ 

写真 1:「茶室 徹」 設計:藤森照信,大島信道


F/A/D  

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