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Carlo Scarpa 研究 2011 - 家具の持つ空間に見る設計意図 -

古谷研究室 再生空間研究ゼミ

家具・作り付け家具

1X08A017-4 稲葉 秀行

実際この Zentner 邸では C.Scarpa により、幾つもの家具・作り付 け家具が設計され定位置化している。なかでも本来は配置に柔軟性

目次

を求められる様な物であっても位置を定める様な設計までもが見ら れる。

序論

第2章 改修住宅 Zentner 邸

第3章 C.Scarpa と家具

結論

 第1節 既往研究考察

 第1節 Zentner 邸

 第1節 一品生産から工業製品化

 第1節 家具から建築へ

 第2節 研究背景・研究目的

    1. Zentner 邸について

 第2節 最小単位から

 第3節 研究対象選定・研究概要

    2. 図面

 第2節 工業製品化家具

角度が決められ、ソファーの一を定位置化している天井照明

    3. Zentner 邸と改修

    1. データシート

資料

第1章 Carlo Scarpa

 第2節 Zentner 邸の構成

    2. 素材

  「CARLO SCARPA MOSTRE E MUSEI 1944-1976. CASA E PAESAGGI 1972-1978」部分翻訳

 第1節 C.Scarpa

    1. 改修過程

    3. 接合部

  「CARLO SCARPA DESIGNER」文献翻訳

    1. C.Scarpa

    2. Zentner 邸の家具と詳細 データシート

    4. 寸法

  「I tavoli di Carlo Scarpa alla Fondazione Querini Stampalia a Venezia」文献翻訳

    2. C.SCarpa 作品年表・年譜

    3. 家具・作り付け家具 分析

    5. 形態

 Drawings Zentner 邸 720 枚

 第2節 C.Scarpa とデザイン

 第3節 3つの家具

    6. 特定性

    1. ガラス器

    1. オリジナル Doge テーブル

    2. 布

    2. ミニバー

第4章 新築住宅 Ottolenghi 邸

    3. 家具

    3. 複合暖炉

 第1節 Ottolenghi 邸について

参考文献・既往研究 謝辞

 第2節 新築過程

    4. 銀食器

3つの家具

 第3節 中央暖炉

Doge テーブル

序論

Doge テーブルとダイニングの関係

Doge テーブルは建物の形が決まる前 研究背景・研究目的

の段階から設計される事が決まってい た。

本来建築家はまず、柱、壁、床などから建築空間を創造し、内容物に当たる家具、建具といった造作を選択あるいは自ら設計することで 空間の充実を図る。C.Scarpa の設計は全作品のうち約 41%が改修計画であり、加えて約 40%が展示計画と既存という既に立ち上がる空

建物の形態が決まる以前から既に考案されていたテーブル。 旧バルコニーの既存を活かしダイニングと設計し置かれたテーブル

間が所与として存在していた。ゆえに、彼のデザインはその内容物に当たるものの設計が中心で、設計物全てが家具であるかの様に捉え

夫人のためにイタリアで集めた石を象眼し製作したテーブル 3m を超えるテーブル

ることができないだろうか。本研究は C.Scarpa の設計する家具の持つ可能性を示唆するものであり、家具がいかにして空間に影響を及ぼ しうるかを解明することを目的としている。 家具:家に備え付け、日常使用する道具類  大辞泉より

研究対象選定 家具という性質上、その器となるべき空間は住宅が好ましい。美術館とは異なり鑑賞だけでなく、人の行動が限定されにくく多様な行動 が考察可能である。C.Scarpa の経歴の中の工業製品化家具に着目し、この家具製作のきっかけとなったテーブルである Doge テーブルの プロトタイプを含む Zentner 邸の改修計画を主の対象とする。その他改修計画に対し晩年の新築住宅の Ottolenghi 邸を含む3つより研究 を行う。

既存のバルコニーを利用したダイニングに、テーブルを設計し食事を行う展示空間を演出した。 ミニバー スカルパのドローイングからリビング の中心としての位置づけであることが

改修住宅 Zentner 邸

伺える。

改修過程 C.Scarpa は Zentner 邸改修において既存をどのように利用しまたは、取り除くかという決断が迫られた。 その中彼は既存に対して作り付け家具を付加し、または作り付け家具に置換することで建築の空間の再 構成を図ったといえる。スタディ過程でも Doge テーブルの様に建築の形が決まる前からデザインがイ メージされ後の設計に影響を与えていることからも、C.Scarpa にとって家具を配置することが住宅改 修での内部空間を構成し直す一つの手段であったと言える。彼は家具と建築空間を常に連動してみてい たと考えられる。 既存の壁を利用しリビングに、ミニバーを設計し多面的な機能で分節し、光で連続した空間を演出した。 暖炉 新築部分

改修部分 新築部分

改修部分 新築部分

改修部分

EV

EV

EV EV

トイレ

トイレ

トイレ トイレ

階段室に、暖炉を設計し2Fから1F へ誘導する空間を演出した。

ソファーをおくこと前提に設けられた、高さの決められた収納棚


以上の様に C.Scarpa が設計する家具は、その場に配置される家具以上に空間の持つ性質へ寄与する役割を与えた。これらの家具設計は中

結論

心的存在で周辺の計画と同調し効果を生んだ。改修・仮設展示計画を多く扱い既存の建物の内部計画を原点とした C.Scarpa の改修計画に Zentner 邸内の家具の中でも、C.Scarpa は改修に於いて設計される家具は、場に与える機能以上の、空間の持つ性質へ寄与する役割を与え、

おける、家具を中心として空間を演出する手法であると考えられる。

家具を中心とし演出する手法として提案した。製品化家具という活動に於いても C.Scarpa は、家具の置かれる場所や人という架空の文脈を つくり、それらの条件を満たすときに最大限の効果を引き出すことのできる家具を設計し、人の行動、場所という空間を具体的に家具から提 案しようと試みたと言える。以上を踏まえると既存のある改修計画、新築に於ける設計、さらには建物自体が存在しない計画すべてで

工業製品化家具

C.Scarpa は家具を中心として空間を演出する手法が見られた。改修計画で既存の建物に家具を入れるということを超えて家具は設計の中心と なり、家具がその概念を超える事に着目した C.Scarpa の一貫した手法であったと言える。 つまり本研究では、C.Scarpa の建築は家具から見ることができるということを示し、家具の持つ空間による設計手法であると結論づける。

C.Scarpa は工業製品化という形で家具を製作に至も、ガラス器製作時代から続く職人技術を尊重する一面を決して失わずデザインしてい こうとしていたことがわかる。新しい素材の積極的な利用の一面、接合部という変化が起きる部位をデザインされるべき場所としデザイ

展望

ンを行い、繰り返し研究される形態や11寸法という面では建築、家具という境界を越えてみることができる部分であり、それら細部の アイデア、研究に置いては C.Scarpa にとって家具と建築に差はなかったと言える。

C.Scarpa は家具から空間を生み出す操作を行い、そしてその家具という物の中にもさらに小さなデザインの着目が存在した。それは接合部へ

C.Scarpa は工業製品という万人に対して行う設計に於いても、自身がより好んだ一品生産性という特徴を与えた。彼はその家具の置かれ

の着目であり、製品化家具に於いて職人的技術を発揮し、作品の唯一性を高め、そして生まれるものがそれらを繋ぐデザインで、ジョイント

る場所や人という架空の文脈をつくり、それらの条件を満たすときに最大限の効果を引き出すことのできる家具を設計した。つまりただ

である。こういった家具という単位を超える小さなデザインが C.Scarpa の建築の設計の中でも見られさらに小さなオブジェクトの単位の存

普遍的な内容物としてではなく C.Scarpa には常に人の行動、場所という空間を具体的に家具から提案していた。

在を意味している。本研究対象であった Zentner 邸をみても例えば蝶番のデザインではその場に対して 180 度開く扉を与えより小さなオブ ジェクトの単位から空間をデザインした。本研究は家具という単位での空間への着目であったが、これらは C.Scarpa の設計を見て行く上で

素材

寸法

接合部 Bernini 社

Gavina(Simon) 社

Valmarana

形態

家具より小さなオブジェクトから空間を創造し演出するような C.Scarpa の設計手法の存在を示唆する一面なのではないだろうか。

Zibaldone 1934 シリーズ

1968

1969

1970

1971

1972

1973

1974

1975

1976

1977

1978

1979

154

77

Ongania 骨董品店のテーブル (1950)

鉄(ヘアライン仕上げ)

ガラス

Zentner 邸 (1964-68)

Doge(1968)

Florian(1973)

Sarpi(1974)

木 Valmarana(1971)

木(トネリコ材)

Biennare Itaria 館 (1962-63)

参考文献

Tiepolo(1971)

Cornaro(1973)

Querini Stanpalia 財団 (1961-63)

Toledo(1975)

Griti(1976)

8.25 Orseolo(1972)

木・ポリエステル・ラッカー仕上げ

Mexana(1973)

C.Scarpa の自邸のために設計された家具 (1935) 1964-68 年 Zentner 邸で作り付けとして研究

1935 本棚 (1979)

Rialto(1974)

C.Scarpa の自邸のために設計された家具

木・アルカンタラ(人口皮革)仕上げ

1934 シリーズ

木(イロコ材)

布/革

Brion 家の墓地 (1970-75)

Delfi

Florian

Verona 銀行 (1973-80)

1934 シリーズ (1976)

C.Scarpa の自邸のために設計された家具 (1934)

220 cm

Zibaldone(1974)

99 cm

Cornaro

1934

Scuderia

単純な木組みによる家具のデザイン (1947)

Quatour(1974)

44 cm

木(パドウク材)

Il Parazzetto(1974-75)

Delfi(1969)

44 cm

布/革

187 cm

Tiepolo 木(トネリコ材)

Scuderia

220 cm

44 cm

187 cm

細部に置ける形態、アイデアは家具、建築問わず差はなく、境界を超えていたと言える。

特定性 Tiepolo(1971) 「Gavina 見ろ。これは建築家のためのテーブルなのである。」*1

C.Scarpa は工業製品化家具を製作するにあたって、一部は過

このような言葉を残している。このテーブルは実際天板が大きく作 られており建築家が利用する多くのドローイングや資料を置くこと ができ、さらに、客との確かな距離を確保することができるという

去の作品の再研究であるなか、新しく生み出した多くの家具 では架空の文脈を作り製作するという形で万人対象の活動で あっても一品生産性を与えたといえる。

Florian(1973)

Zibaldone(1974)

Toledo(1975)

Rialto(1974)

C.Scarpa が好み心に描い

会計士の紙封筒よ法律集

革でできたヘッドボード。

イタリアの文庫本のための

た Piazze (正 方 形)の

を想定され作られた本

ベッドで本を読むためのも

サイズで設計されているた

部屋のためのテーブル。

棚。* 2

の。* 3

*1

め、通常の本棚より浅く作 ら れ て い る。22cm の 奥 行 きの本棚。

新築住宅 Ottolenghi 邸

Zentner 邸ミニバー同様、各面に異なる機能が付加され空間を特徴づけたことがわかる。既往研究からも動線、光の調 節を担い、C.Scarpa の家具配置から始まった建築空間へ寄与する一つのかたちであると言える。

設計意図とその反映に関する研究 1-9 古谷 誠章 1983-1995 カルロ・スカルパ研究 : 空間が与える心的統一感とその構造 : 空間に張られた水面 吉田 州一郎/佐野 哲史/古谷 誠章 2002 ヴィッラ・オットーレンギー研究 -〈枠=既存物件〉を仮定する設計手法 -(1) (2) 印牧洋介/水野裕太/古谷 誠章 2005 CARLO SCALPA 研究 : 内部空間に存在する「背景」或いは外部 高橋 玲奈/古谷 誠章 2006 Carlo Scarpa 研究 : 仮設展示計画における最小限要素 ( 展示パネル ) による空間構成の分析 篠田 朝日/古谷 誠章 2006 カルロ・スカルパ研究 : ガヴィーナ・ショールームにおける設計手法 織田 ゆりか/古谷 誠章 2006 カルロ・スカルパ研究 2006 : 都市空間からの考察 吉田 秀樹/古谷 誠章 2006 Carlo Scarpa 研究 : スケッチから読む質感差異 渡邉 祥代/古谷 誠章 2007 カルロ・スカルパ研究 2007 「ブリオン家の墓」にみる所与と既存 : 荒木 聡/古谷 誠章 2007 Carlo Scarpa 研究 2008 : Banca Poporare di Verona のファサードにみる設計意図とその反映 -(1) (2) 金光宏泰/国分足人/古谷 誠章 2008 C.Scarpa のスケッチ上のあいまいな線に見る 思考過程確立の分析 小林 玲子 /古谷 誠章 2008 Carlo Scarpa 研究 2009:1969 年を経た陰影におけるドローイング分析 斎藤信吾/中村碧/古谷 誠章 2009 Carlo Scarpa 研究 2010:ガラス器デザインに見る創作の発露 田村正/古谷 誠章 2010 SD 7706 153 号 特集カルロ・スカルパ 1977.6 現代家具の歴史 History of Modern Furniture カール・マング、安藤正雄 訳 エーディーエー・エディタ・トーキョー 1979.4 DIDADALOS Berlin Architecture Journal 1-1981 Anna Teut Belrin, Beltelsmann Fachzeneitschriften Gmbh 1981.9 Carlo Scarpa The Complete Works Francesco Dal Co, Giuseppe Mazzariol Electa 1984 SCARPA IL PENSIERO DISEGNO I PROGETTI Maria Antonietta Crippa 1984 CARLO SCARPA DESIGNER EDIZIONI BIBLIOTECA DELL IMMAGINE 1984

a+u Extra Edition カルロ・スカルパ CARLO SCARPA 株式会社エー・アンド・ユー 1985.10 CARLO SCARPA ARCHITECTURE IN DETAILS The MIT Press 1988 GA DOCUMENTO 21 Carlo Scarpa エーディーエー・エディタ・トーキョー 1988.9 SD 選書 207 カルロ・スカルパ Ada Francesca Marciano 編/濱口オサミ 訳 鹿島出版会 1989 カルロ・スカルパ 宇宙を夢みた庭―ブジナーロ邸のためのプロジェクト WATARI-UM 1993 桂離宮 ブルーノ・タウトは証言する 宮元健次 鹿島出版会 1995 建築の詩人カルロ・スカルパ 斎藤裕 TOTO 出版 1997 Dino Gavina Ultrarazionale Ultramobile Compositori 1998 CARLO SCARPA MOSTRE E MUSEI 1944-1976. CASE E PAESAGGI 1972-1978 Guido Beltramini, Kurt W. Foster, Paola Marini Electa 2000 テクトニック・カルチャー ケネス・フランプトン TOTO 出版 2002 Shuffled 古谷誠章の建築ノート 古谷誠章 TOTO 出版 2002 Carlo Scarpa Das Handwerk der Architektur The Craft of Architecture Hatje Cantz Pub 2004.7 Carlo Scarpa Architecture and Design Guido Beltramini, Itaro Zannier RIZZOLI NEW YORK 2007 GA HOUSES 101 Special Issue 海外特集 100 号記念 2008 エーディーエー・エディタ・トーキョー 2008.1 GA Residential Masterpieces 08 Carlo Scarpa Casa Veritti/ Casa Ottolenghi エーディーエー・エディタ・トーキョー 2010 GA HOUSESE 118 エーディーエー・エディタ・トーキョー 2010.10 ディテール 187 章国社 2010.12 Carlo Scarpa acura di Ada Francesca Marciano Serie di Archittettura I tavoli di Carlo Scarpa alla Fondazione Querini Stampalia a Venezia ESTEl

Profile for Yuki NEMOTO

Carlo Scarpa 研究 2011 -家具の持つ空間に見る設計意図-  

本来建築家はまず、柱、壁、床などから建築空間を創造し、内容物に当たる家具、建具といった造作を選択あるいは自ら設計することで空間の充実を図る。C.Scarpa の設計は全作品のうち約41%が改修計画であり、加えて約40%が展示計画と既存という既に立ち上がる空 間が所与として存在して...

Carlo Scarpa 研究 2011 -家具の持つ空間に見る設計意図-  

本来建築家はまず、柱、壁、床などから建築空間を創造し、内容物に当たる家具、建具といった造作を選択あるいは自ら設計することで空間の充実を図る。C.Scarpa の設計は全作品のうち約41%が改修計画であり、加えて約40%が展示計画と既存という既に立ち上がる空 間が所与として存在して...

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