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データで 読む 都市の姿

「 都 市 の 盛 衰 」地 域 の 産 業 格 差 が 鮮 明 に。

都市型サービス業の時代に突入か?

3

立澤 芳男

Y o s h i o Tatsuzawa

マー ケット・プレイス・オフィス代 表

地 われるのが、総務省の「事業所・企業統計調査(5年

域の産業活動の基本構造を把握する際に最もよく使

流 通 系 企 業 の 出 店リサ ー

毎) 」 である。最近発表された平成18年調査の速報データを

チ・店 舗コンセプトの 企 画 立案など、都市、消費、世代

見ると、東京都区部において事業所数及び従業者数がこの

に関するマーケティングの 仕事師。元「アクロス」の創

5年間で共に増加したのは、 「港区」 と「渋谷区」 のみ。一方、

刊編集長。著書に『 データ

共に減少したのは、下町エリアの荒川・台東・北・葛飾各区

で斬る逆転のマーケティン グ・100万人の時代』 『 東京

や住工混在エリアの大田区など14区。莫大なビル投資が行

の侵略』など。

われた港区と渋谷区で、東京における事業立地としての絶対 的優位性が発揮されていることが見てとれる。 表1 東京都区部の事業所数増減率 ベスト5 順位

平成18年 増減数 -5

1

事業所

港区

従業者

2

事業所

渋谷区

従業者

3

事業所

足立区

従業者

4

事業所

品川区

従業者

5

事業所

中央区

従業者

44,917

8.8% 11.6%

906,665 93,882 32,233

4.1%

1,257

28,607

–378

–1.3%

–375

44,095

–882

731,843 –1,622

音声・文字情報製作業」などの都市的 り港区や渋谷区に集中している。逆に

業・設備工事業などの手工業的・旧工

5.1%

業的な事業があがっており、それらの事

–2.0 –0.2%

業を産業基盤とする地域エリアの低迷 は、今後大きな課題となるに違いない。

–5.1% 1.9%

業種別事業所数増加率 ベスト5

 都市開発プロジェクトが各地で竣工 している昨今、その波及効果を、その事 平成13年∼18年 増加率

東京都区部の事業( 産 業 中 分 類 ) インターネット付随サービス業 補助的金融業・金融付帯業 社会保険・社会福祉・介護事業 その他のサービス業 廃棄物処理業

表3

業種別事業所数減少率 ワースト5

287.2% 58.8% 42.6% 24.0% 20.2%

東京都区部の事業( 産 業 中 分 類 ) 貸金業,投資業等非預金信用機関 衣服・その他の繊維製品製造業 郵便貯金取扱,政府関係金融機関 銀行業 なめし革・同製品・毛皮製造業

*除く第一次、第二次産業の事業所

融業・金融付帯業」 「医療業」 「映像・

製品製造業・なめし革・印刷・同関連事

–1.7%

321,745 15,666

分野は、 「情報サービス業」 「補助的金

減少した事業は、金融関連事業・繊維

8.0%

226,226 16,761 21,641

 そして、その増加した事業所の事業

なサービス業であり、その多くは、やは

12.4%

493,542 54,639

1 2 3 4 5

1 2 3 4 5

10 増減率

5

3,616

東京都 事業所 557,117 –29,907 区部 合計 従業者 7,269,681 134,740

表2

0%

平成13年∼18年

業立地周辺エリアの事業所の増加や従 業者増という視点で評価することが、今 後さらに重要なテーマになってくるので はないだろうか。

平成13年∼18年 減少率

–27.3% –26.3% –26.3% –24.0% –22.5%

出典:総務省「平成18年事業所統計」

情報サービス、医療事業のアップ。金融関連事業、手工業的事業所のダウンが明瞭に

カンケン NETWORK 発

4

CITY SCIENCE

Vo l . 2007年12月15日発行

Environmental Planning Laboratory Inc.

発 行 所 : 株式会社 環境計画研究所 〒153-0061 東 京 都目黒 区 中目黒1-8-8 F2ビル5階

Tel: 03. 3791. 7733

■ 編集協力: エディティング・ブレイン ■ デザイン: Yumiko Shoto

特集 カンケン 育てるWEB

h t t p : / / w w w. e p l . c o . j p /

六本木「アート・トライアングル」から都市再生を読む


カンケンNETWORKとは 街は、 日々変化しています。その変化を実

セ ン チ メ ン タ ル ジ ャ ー ニ ー

現代都市をフィー ルドにデザ

5

イン調 査・研 究を続ける。J R

際に、仲間と交歓しながら街を歩いて肌

東日本企画の「駅学ノスゝメ」 他、INAXギャラリー「自給自

で感じ、後日それぞれが得意とする専門

邸」、 リビング・デザインセンター

的視点でブレストを行い、 その結果をカ

「日本人と暮らしを考える」な

タチにしたのが弊誌です。この「仲間」 と

どのプロジェクトに参画。著書に 『アーバン・テクスチュア』住

いうのは、弊社がいつもお世話になって

まいの図書館出版局、 『街 の忘れがたみ 』ギャップ

いる専門家の方々であり、都市を新たな

出版など。

視点でマーケティングするコミュニティの ようなもの。未だ見ぬあなたも参加できる、

日本の﹁ものづく り﹂を 支えていた六本木

タウン・スタディーズのネットワークです。

C o n t e n t s センチメンタルジャーニー ❺

日本の「ものづくり」を支えていた六本木

3

大竹 誠 [ 東京造形大学デザイン学科教授 ]

特集

4

六本木「アート・トライアングル」から 都市再生を読む 対談 池村 明生 [ 東海大学教養学部芸術学科教授 ] 大竹 誠 [ 東京造形大学デザイン学科教授 ]

creator’ s eye 夜

10

六本木ニューウェーブ 渋谷・原宿からはみ出した小動物たち 薦田 真理子 ( [ 株)RIKOmania代表 ]

Shop Science エクスペクタンシー(期待度/期待感)❺

14

連想から生まれるエクスペクタンシー 高瀬 秀美 [(株)環境計画研究所 コーディネーター ]

「都市の盛衰」地域の産業格差が鮮明に。 都市型サービス業の時代に突入か?

本木界隈には幾つかの思い出があ る。学生時代、元防衛庁近くにあっ

た木造長屋の恩師の事務所の庭でコンペに 出す石膏模型をつくった。都心だというのに まだ土の露出した空き地があり、焚き火もで きたし、野菜も育っていた。また、国立新美 術館の敷地だった東京大学の生産技術研究 所でもアルバイトをした。その堅牢なコンクリート建築に足を踏み 入れるといつもひんやりとし、襟を正した。目当ての研究室は天井 が高く、鉄骨を組んだ二階床が架けられ、資料や書籍がうず高く積 まれ、実験機械や計器、模型などが散乱し、そのあり様はティンゲ リーのジャンクアート。六本木ヒルズの敷地内にもビジュアルの鬼 才といわれた人の事務所があった。その「小春荘」 という木造モルタ ルアパートの畳の一室は、世界的なフォトモンタージュ作品がつくり 出される現場であり、作品の収蔵庫であり、議論が飛び交う伝説的 な場所だったのである。 さて、このような記憶に包まれた六本木だが、再開発で建てられ た国立新美術館、東京ミッドタウン、六本木ヒルズはどんなものか と見て回った。いずれも大規模な敷地に建てられているので空地も 大きく、広場あり、芝生あり、植栽あり、噴水ありと環境は恵まれて いる。ガラス張りのエントランス空間はいずれもガレリアとなり、洒

美術やデザインを鑑賞し、ショッピングするにはもってこいのスポッ トなのだろうが、でも、その華やかな表通りのすぐ裏に、ものづくり

   

を支えてきた濃密で、どこかバナキュラーな空間が同居していたあ

カンケン NETWORK 発 写真は2点とも、かつての東京大学 生産技術研究所

4

東 京 造 形 大 学デザイン学 科 教 授

び使われるらしいから、どこか舶来といった印象があるのだろう。

立澤 芳男 [ マーケット・プレイス・オフィス代表 ]

vol.

大竹 誠

O t a k e

落たカフェやブティックなどが並んでいる。撮影のロケにもたびた

データで読む都市の姿 ❸

16

M a k o t o

の六本木の表情がなくなっていたのは、実に寂しいかぎりであった。

3


A k i o

乃木 公園

木 乃 坂ト 木 ン 坂 ネ 駅 ル

ギャラリー・間

田線 千代 21_21 DESIGN SIGHT

檜町 公園 ギャラリー・ サントリー美術館 アート デザインハブ アンリミテッド

青山霊園

東京ミッドタウン

富士フイルム スクエア

六 本

政策研究 大学院大学

六本木 西公園

ン ト ル

六本木ヒルズ 森タワー 53 階

森美術館

六本木交差点

SCAI X SCAI ギャラリー コンプレックス

テ 六本木ヒルズ テレビ レ 朝日 ビ 朝 けやき坂通り 日 通 り アート・バイ・ ゼロックス・ ギャラリー

ストライブ ハウス ギャラリー

ら ことでも知 めて集まる 求 を 激 刺 などが 新美 や芸 能 人 には 国 立 007年 春 リエーター 2 ク 、 、 き は 続 隈 術 館に 六 本 木界 る。今 回 年の 森 美 貌しつ つあ に、2003 変 こ と そ へ 。 」 街 街 トの れる「夜の ンし、アー 者・東 海 館もオープ かす』の著 術 活 を 美 ト ー ー リ ト りにア 。 術 館とサン 『空間づく いただいた るべく、 探 を 題 課 氏にご対 談 と 誠 性 竹 能 大 可 の 授 は、その 造 形 大学教 生 氏と東京 明 村 池 の 大学教 授

u r a I k e m

」 ル グ ン ア イ ラ ト ・ ト ー 六本木「ア を読む 生 再 市 都 ら か

特集

アートとして鑑賞されるに至っていないパブリックアート 健全な時間帯により多くの人々が集まること

東京ミッドタウンのサントリー美術館は日本

は、街の健全な発展に必要不可欠ですし、

の美術工芸、そして国立新美術館はコレク

防衛庁跡地という軍事的目的で使われてい

ションを持たずに国レベルの企画展から団

た敷地が市民に開放されたことも評価に値

体展まで行うなど、タイプの異なる美術館が

します。24時間、安心して自由

トライアングル状に出現し、そ

に街を散策できるオープンなス

れらを巡る「アート・トライア

ペースが増えた点は、国際的に

ングル」マップを持って歩く人も

も高い評 価を得られるはず。

見かけるようになりました。六

そういう街には、一流ホテル

本木に行ったことがない、あるい

やオフィスをテナントとして迎

は敬遠していた人々にも、アート

えるにふさわしいしつらえが

拠点をチェックしながら六本木と

必要ですから、パブリック

いう街を楽しんでもらい、食事や

アートはそれに一役買ってい

(株 )環 、 学会理事 環境芸術 。カ ン 役 締 取 究所 境計画研 やデ ト ー ア 、 いて は ケンにお たイベ ント 基 本 とし を ン イ ザ 。「 す みだ 等 を担 当 や展 覧 会 「さ い た ホール」 ー ニ ォ フ トリ 地区」 ビックコ ア シ 心 都 ま新 実 ロ デュース プ ト ー ア な どの りに 空 間 づく 『 書 著 。 績多数 出版社。 かす』学 芸 アートを 活

4

池村 明生

東海大学

教養学部

教授 芸術学科

大竹 誠

東京造形

大学デザ

イン

学科教授

るともいえるでしょう。

あるのでしょうか。だとすると、アートによる 街づくりはアートを集客装置として利用して

‒そもそもパブリックアートという概念は

いるだけにも思えますが。

いつ頃から?

池村■ どれだけ消費に結びつくかは判ら

池村■ 当初は、アメリカでオフィスビルのエ

ないものの、これまで六本木に縁遠かった

ントランスに巨大な彫刻を置いて、企業や建

人が日中に六本木を訪れるようになったこ

物の象徴としているケースが多く、いわば公

とは、街としては喜ばしいことだと思います。

共空間に置かれる意味で括ったジャンルで

六 本 木﹁ ア ー ト・ト ラ イ ア ン グ ル ﹂か ら 都 市 再 生 を 読 む

‒六本木ヒルズの森美術館は現代アート、

ショッピングによる消費も促そうとの狙いも ルド に デ を フィ ー 現代都市 け る。 研究を 続 ・ 査 調 ザイ ン 学ノ 画 の「 駅 企 本 日 JR 東 ン グ・デ ザイ ン ビ リ 、 スゝメ」 と暮らし を 人 本 日 「 セ ン ター ジ ェクト どのプ ロ 考 える 」な バ ン・テ ー ア 『 書 著 に 参 画。 の図書 館 い ま 住 』 ア 』 ク ス チュ れがたみ 『街 の 忘 出 版 局、 。 か ほ 版 ギャップ出

Otake

特集

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駅 木 本 六 麻布 警察署

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国立新美術館

青山 公園

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5


A k i o

u r a I k e m

×

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Otake

品「愛 だ 内田 繁 作

き ルズ内けや 」六 本 木ヒ る椅 子( え 消 に 雨 品「 吉岡徳仁作

ルズ内け 」六 本 木ヒ けを…(

) やき坂 通り

ウン内) 京ミッドタ

坂 通り)

合わせ用のランドマークにもなっている。あ るいは小作品は、点在させれば建物のアク

品「ブル ・ホーン作 ー &ピップ ハウシャリ ・ ー ゼ ラ シ ) ドタウン内 (東 京ミッ

ーム」

会に向き合う姿勢が必要だと思うんです。こ こにもベンチや遊具など、アーティストがデ

した。その後、日本でも再開発ビルや行政

セサリー的役割を果たすこともあるでしょ

の建物に置かれるようになり、それが設置

う。民間のオフィスビルの場合は、部外者が

方がニュースになるし、新しい動きも生まれ

全体とか植栽計画とか、あるいは地下鉄の入

者のステイタスにもなったり…。彫刻作品単

立ち入らないように緊張感あるしつらえとし

て六本木らしくなるんじゃないでしょうか。

り口や道路標識など、アーティストの眼で街

体を設置するアートをよくブロックアートと

ても適していますから、ブロックアートとい

池村■ アートの位置づけは、再開発事業の

全体を見直すこともできたのではないかと。

いいますが、美術館から芸術作品を持って

えども、街のサイン機能としての役割も担っ

目的や主体によって異なります。例えば六本

池村■ その通りなんですが、アーティストの

きただけで、存在する意味は希薄。つまり、

ているのかもしれません。

木のような民間による再開発の場合は、地

中にはネガティブなものをテーマにしたり、

周囲との関係をブロックしているというよう

大竹■ 公共空間に置かれているアートは、

権者や誘致するテナント、そしてテナントが

新しい街に似合わないアートを目指してしま

「アートそのものを楽しむ」 という意味でのパ

集客したいと考える消費者に対する明確な

う危険性があることも事実です。依頼者に

 しかし、例えば大きなアート作品はその存

ブリックアートになっておらず、もはや死語

戦略が求められます。そういう意味では、パ

しても竣工後にトラブルを起こすことは避け

在力によってシンボルにもなりますし、待ち

同然といいますか…。その点が残念ですね。

ブリックアートは「街のプロモーションとし

たいでしょうし、管理やコストを超えてまで

て必要」といえるのではないでしょうか。新

アートの面白さを追求しようと思わないの

しい街づくりに有名なアートディレクターが

が現実です。設置者は竣工を目指すのみ、

起用されるのはそのためです。例えば、東京

完成までの契約ですから、竣工後の運営は

な意味もあります。

ザインしたものがありますが、ほかにも道路

明確な違いを見つけることは難しいでしょう

ミッドタウンはアートディレクターの清水敏

別。結局、責任あるディレクションをするに

トを設置して、ショッピングモールの活性化

ね。作品の説明を聞けばなるほどと思って

男氏に全てを任せた訳ですが、おそらく作

はメンテナンスフリーのアート作品しか設置

を図った時期がありましたが、アートに対する

も、ブロックアートの域を超えていないよう

家の選定から作品設置までのプロセスにお

できないことになってしまう。せっかく著名

市民の関心は低く、むしろ邪魔な存在、 「彫刻

にも思えますし。パブリックアートという以

いては、理想と現実との様々な葛藤があった

なアートディレクターを起用しても、実際は

公害」 という声もありました。都市におけるパ

上は、地域や人々や歴史的事実などとの関

と思いますね。

皆同じような結果になってしまうケースが多

ブリックアートは、ブロックアートの域を超え

係性が必要です。いつの時代も、六本木は

大竹■ アートが街づくりの手段だとしても、

いようです。

られるでしょうか?

体制に反発する若者が、音楽やファッション

アートが先にあるのではなくて、本来は社会

 逆にいえば、今は竣工後に街をプロモー

大竹■ そもそも、ヒルズやミッドタウンに点

などで新しいコトを生み出す街だったことを

的課題に対する場にアーティストがいる。何

ションするソーシャルなアートのようなもの

在するアートが「ブロックアートか?」と問わ

考えれば、丸の内ならともかく、もっとソー

かをみんなでつくり上げる場に。そういう

が必要で、六本木の場合はアート・トライ

れれば、何らかの説明を受けない限り、その

シャルなアートとして実験的な試みがあった

アートがソーシャルアートですから、もっと社

アングルでできたネットワークを繋げること

六 本 木﹁ ア ー ト・ト ラ イ ア ン グ ル ﹂か ら 都 市 再 生 を 読 む

‒バブル以前にも繁華街にパブリックアー

特集

今求められているのは、街のプロモーションとしてのアート

6

(東 o.5」 グメントN 作品「フラ ・クラール フロリアン

7


で、一体的に上手く運営できる可能性があ

アートプロジェクトを行えば面白くなりそう

事実、森美術館では「今までにない層を狙

広場では、アートを含めて全てをポジティブ

るかもしれません。六本木には「開放された

ですね。そういう意味では、アートによる街

う」という考え方にたち、これまでの美術館

にせざるを得ません。

広場」ができたのですから、それを活用して

づくりはこれからと考えるべきでしょう。

とは違う視点から展覧会企画を立ち上げて

 従来の六本木らしさが残るネガティブな

います。それは、美術館といえども収益性が

ゾーンにはジャンク的なものがあって、その

問われるからで、民間美術館はこれからます

コンプレックスが六本木らしさを保っている

ます面白くなるのではないかと思います。

ように思いますが、そのネガティブなゾーン

アートのDNAを街の要素として育てるキーワードは 「ライブ」 「ポジティブ」 「ジャンク」

もトライアングルを結ぶ回遊路として開放さ

‒六本木はもともとアートの街、デザイン

アーティストと一体になれるような「時間型

‒しかし、最も重要な課題である、アートは

れつつある今、ジャンクなアートがただあれ

の街、広告やファッション、映画、演劇、音楽

アート」 。それを雑誌やネットでも伝えれば、

何を変え、何が得られるのか。つまり社会にど

ばいいという訳にはいきません。その意味

といったクリエーターの街であり、今後も文

六本木ビギナーも動かせるでしょう。ライブ

う還元されるのかという、 「プロジェクトの目

で、新しい街のテイストにあったジャンクな

化を発信し続けていく街だと思うのですが、

という空間は、決してメディアでは伝えきれ

的」はどうなるのでしょう。今、アート・トライ

アートとは何かを、アーティストが考え掘り起

都市政策の先を行くような六本木だからこそ

ないリアルなエモーショナル空間です。雑誌

アングル内ではミニ再開発が数件進行中で、

こすべきで、それがまた六本木というエリア

できることは何だと思われますか?

はそういう新しい切り口に飛びつきますか

迷路のような細い路地や秘密の隠れ家のよう

の活性化に繋がるのではないでしょうか。

大竹■ アート鑑賞にやってくる六本木ビギ

ら、雑誌やネットで感化されたフォロワーズ

な入りにくい店の多い「裏」 の部分まできれい

大竹■ ソーシャルアートという目的からする

ナーとヘビーユーザーであるクリエーターた

もやってくるはず。今も昔も六本木のアクシ

になりつつあります。そこに昼間のランチ客

と、ディープなアートは似合わないのかもし

ちが、昼と夜で街をシェアすることになった

スやWAVE、ABC(青山ブックセンター)が

が並ぶ一廓ができたり、アート散策の観光客

れない。とにかく人が集まって、新しいコト

ことで、アートの楽しみ方が広がったといえ

クリエイティブというものを若者に教育して

も訪れたり。再開発とともに、街の健全化の

が何でもできる場所、実験あるいはチャレン

るかもしれませんね。ジャンルは問わない

きた訳ですし、芋洗坂のギャラリーを出発点

道具としてソーシャルアートが位置づけられる

ジできる場所としての存在価値で良しとす

し、六本木に繰り出せば何でもある。クリ

として有名になったアーティストもいる。都

というのは、優等生すぎる気もしますが。

る。アートビジネスの活動拠点としても条件

エーターには鑑賞というより、むしろ積極的

内でこれほどそのステージとしてふさわしい

池村■ 現実的な話として、地権者にとって

が揃ってますしね。例えば、三つの美術館

に参加してほしい。集まった人たち全員が

場所はないかもしれません。

は地価が下がることなく高い家賃が得られ

がある期間同じテーマで展覧会を企画した

発信者になるような街になれば面白い。街

池村■ 間口を広げるという意味では、民間

ること、テナントにとっては客単価の高いリ

り、ギャラリーも地元のショップやライブハ

をメディア的に使えるのも、六本木の特権の

的発想はデザインとアート、企業とアート、

ピート客が訪れることが最大の目的です。

ウスもそれに参加する。つまり、アートの深

ように思います。

ファッションとアート等々、どんなものでも

それにはまず、犯罪の匂いや不潔な環境は

度よりも、横にネットワークを繋げて新しい

 そう考えると、一番可能性のあるアートプ

アートと言ってしまうしたたかさがあります。

排除したい。再開発街区のような守られた

価値を創造していくような時代の志向性を

の ドタウン 内 る東 京ミッ ーを 務 め ディレクタ が 人 。 直 T」 、深 澤 N SIGH 、佐 藤 卓 1 DESIG 三宅 一 生 ム「21_2 ミュージア デザイン・

 戦後のカウンターカルチャーの意志を継 ) ドタウン内 」東 京ミッ 妙夢( 安田侃 品「

ぐ六本木だからこそ、このアート・トライア ングルを活かして、ライブなメディアを道具 に、もっとクリエイティブに、もっと新しいコ トを生み出すアーティストやクリエーターの 登場に期待したいですね。

A k i o

u r a I k e m

×

to Mako

Otake

六 本 木﹁ ア ー ト・ト ラ イ ア ン グ ル ﹂か ら 都 市 再 生 を 読 む

音楽や映像など、そこに居合わせた人々も

特集

感じます。

ロジェクトはライブアートでしょうか。特に

9


ea t cr

o r’ s e y e

IK

薦田 真理子 (株)RIKOmania代表 日 本 大 学 芸 術 学 部 卒。CM に 関 す る コ ラム「CMス パ イ RIKOmania」を執 筆するかた わら企画 会 社を経営。媒体に 関わらずハジケタ企画を提供 するのが 得意。 「とにかく、ど う に かしてくだ さ い」と 訪 れ る、煮詰まったクライアントが あとを絶たない。

O KOM

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’ s r e o y t e a e r

六本木ヒルズが2003年4月

から飯倉片町のあたりでギラギラしていた若者を「六本木野獣会」 と呼んだそうだ

に「街開き」をして早5年。それは、

が、西麻布側のこの若者たちは「小動物会」 というところ。いや、仲間意識もないか

社会人5年目を迎えた28歳の私の六本

ら、単なる「小動物」か。彼らは、深夜だというのにお酒を飲むこともなく、スター

木遊び歴とも重なる。私にとっての六本木

バックスでコーヒー片手に語り合ったり、TSUTAYAで海外の雑誌を立ち読みし

は、Roy’ s 周辺の外国人&ネオンがひしめく街 ではなく、 ヒルズ周辺の児童公園のような街である。

たり、買うにはちょっと高い写真集を所在なげにめくってみたりしているのだ。ア

六本木は、アマンド交差点側と西麻布交差点側では、生息

マンド側の人々が「思い切り遊びたい!「 」サービスを受け倒したい!」 という野獣だ

している人種が全く違う。アマンド側は赤坂・銀座方面

とすれば、こちら側は「ただ心地よくそこに存在したいだけ」 の小動物である。

から流れて来る人が多く、西麻布側は渋谷・原宿方面から 来る若者が多い。「ちょっと悪くて大人な街」という

両者の違いは、移動手段にも表れている。六本木といえば、とにかく交通の便

六本木の歴史から見れば、後者の若者たちの方が

が悪い。銀座や赤坂から遊びに来るのであれば、やはりタクシーだろう。しかし、

明らかに新参者である。彼らは六本木に何を

西麻布側に集う若者たちの交通手段はさまざまだ。渋谷駅からヒルズ行きのバス

求めてやってくるのか、その違いを

で来る者もあれば、中には表参道から歩いてくる者もいたりする。渋谷・原宿あた

c

A

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六本木ニューウェーブ

考えてみたい。

りで買物しながら時間をつぶす若者たちは、これといった目的がなくても、とにか く歩きまくることには慣れているので、外苑西通りをテクテク移動してくるくらい

ただそこに、心地よく存在していたい アマンド側と西麻布側の両者は、明らかに求めている「遊び」が違う。アマンド

平気なのだ。そして多いのが自転車。この一年で、すっかり東京的エコな生活のア イコンとなった自転車が、地方都市の駅前のごとくTSUTAYAの横にズラーッと 並んでいる。これはアマンド側では決して見られない光景だ。小動物にとっては、

側の人々は、 「おもてなし」されることを求めて訪れるのであり、用意された娯楽を

お金を払ってタクシーを使っているのにジム通いで筋肉を鍛える野獣系ライフス

満喫したいのである。キャバクラやモノマネSHOWの店、ちゃんとソファがあっ

タイルよりも、健康的に自転車をこいで効率よく移動することの方がカッコイイと

て水なんかが流れちゃってるCLUB、混んだフロアをガラス越しに眺められるVIP

思っているのだ。

ルーム、狭いながらも個室を設けている飲食店等々。 「よし、今夜は遊ぶゾーッ! !」 と、サービスを受ける気マンマンな人々が集う、エネルギッシュな街なのだ。 一方、西麻布側に集う若者たちは、ヒルズを目指す。といっても、ヒルズ内の店

10

来街目的は希薄でも、ジブンのペースで過ごす

舗で食事や買物を楽しむことは滅多にない。彼らはヒルズの表面=映画館や美術

冒頭で、私にとっての六本木はヒルズ周辺の児童公園のような街であるとした

館にしか基本的に行かない。そして、その麓ともいえるTSUTAYAに集まるのだ。

が、これについてもう少し言及したい。アマンド側と西麻布側の最 大の違いは、

集まるといっても、そこにコミュニティーがある訳ではなく、また志を同じくする

「間」である。アマンド側には目的を満たすための娯楽スポットがひしめいている

仲間や共通の趣味を持った友人を探そうなどとも思っていない。かつてアマンド

が、目的を持たない人間にとっては居場所のナイ、厳しいエリアだ。それに比べて

11


西麻布側は、とりあえず時間をつぶせる場所の何と多いこ

た。普通に考えれば2000円のカレーもアホらしいし、赤字で振る舞うのはさら

とか! バージンシネマズへ行けば、夜でも何かしら上映さ

にアホらしい。しかし、彼らは豪華な空間でいかにアホらしいイベントをやるか

れている。時間が合わなければ、そのへんに座っておしゃ

に賭けている。歌 舞いていたいとでもいおうか。用意された場の恩恵は享受して

べりしていればいい。小腹が空いているなら、TSUTAYA

も、遊ばされるのではなく、自発的に遊びたいのだ。

隣で24時間営業しているフードマガジンのデリを買って

そんな小動物たちのキモチを象徴しているのが、スーパーデラックスという店

観にいけばいい。フード マガジンには外国のお菓子もた

なのかもしれない。5年前、ヒルズと同時期に誕生した店である。ヒルズよりワン

くさんあって、見ているだけでも飽きない。のんびりお菓

ブロック西麻���側の六本木通り沿いにあるその店は、地下に広がる倉庫のような

子を選んでいたら、上映開始時間が過ぎちゃったから次の回まで待とう。その間

空間で、用意されているイスやパネルを勝手に自由にレイアウトできる。ライブハ

にTSUTAYAでレンタルDVDを見ていたら、借りたい映画が見つかっちゃった。

ウス、バー、劇場、教室、寝室等々、変幻自在に遊ぶことができる空間だ。

じゃあお菓子も買ったし、今日は家に帰ってDVDを観ることにしよう等々。 小動物たちは、万事がこの調子である。とにかく居心地よく、ジブンのペースで

先日、私はそこでパジャマパーティを開いた。10畳ほどの巨大ベッドをつくっ て、大 勢でゴロゴロしながらカードゲームに興じたり、5面ある壁面プロジェク

’ s r e o y t e a e r

過ごすことを何よりも優先する。お膳立てされた遊びが苦手なのだ。例えば住居

ターを 利 用して、任 天 堂Wiiで 遊 んだり生 演 奏しているシーンを 映し出したり。

にしてもそう。一昔前に流行ったトレンディドラマに出てくるような、デザイナー

ホームパーティの現在形ともいうべき異常な規模になったこのイベントには、さ

ズマンションなどという「気恥ずかしい部屋」に住もうとは思わず、古い一軒家を

まざまな国の人々が300人以上集まった。

友人とシェアしたり、築年数の古いマンションを自由に改装することを好む。リス

ゴージャスなレストランでカレーを振る舞うことも、巨大なベッドで飲み会をす

が木の葉や実を集めてせっせと快適な巣づくりをするがごとく、彼らはお気に入

ることも、 「お金をかけた冗談」のようなイベントかもしれない。それをアホだと

りの雑貨や、時にはビックリするような高価なイスなんかをコツコツと買い集め、

笑う人もいれば、アートだ!と持ち上げる人もいるだろう。西麻布側に集う小動物

ジブンらしい部屋をつくり上げていく。児童公園のように遊具はあっても、遊び

たちからすれば、そんなことはどっちでもいい。お膳立てされるのではなく、ジブ

方は自分たちで自在に考える余裕のある、 「スキ間」が豊富な場所が好きなのだ。

ンが世界中からかき集めてきた好きなモノや面白いコトを自由に広げて、心地よ く楽しめればそれで十分なのだ。

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お膳立てはいらない、歌舞きつつ遊ぶ小動物たち

最 後に、それを象 徴 するような洗 面 台を 紹 介しよう。これは、

スーパーデラックスのトイレにある洗面台だ。小学生の頃に見かけ

六 本 木ヒルズの表面で遊 んでいながら、ヒルズの内面=用意されたサービス

たようなフツーの蛇口なのだが、まるで昔の金持ちが居間に飾っ

(ブランドショップ、レストラン、高級住宅など)を否定している西麻布側の小動物

ていた鹿の角の置物のごとく、何故か4つ付いている。冗談だろう

たちは、そこに用意された遊びに全く手を出さないという訳ではない。例えば六

がアートであろうがどっちでもいい。全部の蛇口から水がちゃんと

本木ヒルズの52階・東京シティビュー内にある、森田恭通率いる有限会社グラマ

出て、なおかつ見ているだけで何だか楽しい。そんな価値観の小

ラスが手掛けたゴージャスでデコラティブなレストラン「マドラウンジ」。アマンド

動物たちが今、西麻布側のヒルズ界隈にたむろしている。

側の野獣たちは、この店で行われる有名ブランドのレセプションパーティなどに

今後、原宿から繋がっている千代田線乃木坂駅に近い東京ミッ

集うだろうが、西麻布側の若者は違う。その例として、友人であるカリー番長のイ

ドタウンができたことで、野獣と小動物がどのように入り混じるのか。今のとこ

ベントを紹介しよう。彼らは音楽をかけながら手づくりカレーを売るというイベ

ろ、両者共に惹きつけるような要素は見当たらないが、 その変化に期待しつつ、遠 t o r’ s

ントを続けている集団で、 「カレーライスに合う音楽」を集めたコンピアルバムも

巻きながら静観していたいと思う

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出している筋金入りのネタ集団である。昨年は、原価3000円以上かけてつくっ たカレーを、限定10食2000円で振る舞うというイベントをマドラウンジで行っ

Pajama Party


Shop Science

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エ ク ス ペ クタン シ ー( 期 待 度 / 期 待 感 )

[ e xp e c t a n c y ]

連 想 から生 ま れるエクス ペク タンシ ー 高瀬 秀美

(株)環境計画研究所 コーディネーター

期待度と浅瀬効果の関係 期待度

(エクスペクタンシー)

分離度

浅瀬効果

効 果

量 ファストフード 情報 視覚 ブティック・美容院

クラブ

パブ・バー

カフェ 日本食レストラン

恵比寿駅にほど近い場所に、一本の坂道と寄り添うよう

ボート。そんなディスプレイが、春には夏への

に立っている一軒の居酒屋がある。「この角曲がれば海の

期待感を、秋には夏が終わった寂しさを、そし

入口」という、坂をのぼりきった先にまるで海水浴場がある

て冬には逆に温かな日差しを思い出させるな

かのような看板を付けた、その名も「えびす海岸」という

ど、誰もが抱く 「海」への憧憬から、来店客も

店だ。恵比寿に海岸などあろうはずもないが(その果てに

道行く人をも和ませているのかもしれない。

は確かにあるだろうが…)、店に入れば、子供の頃に出かけ

二階に上がって窓から外を眺めたら、目の前

た海水浴場の記憶を呼び覚ますような、どこか懐かしい風

は坂道と交差点だった。確かに、海から少し

情のある店である。

離れた民宿にいるような錯覚に陥る。信号が

その成り立ちを店長に伺ってみたところ、以前は民家

赤になり、車が一斉に止まったわずかな瞬間

として使用されていた建物らしい。当時は裏手にサーフ

に、海岸近くの独特な静けさと同時に、街の雑踏があたか

ショップがあったため、判りやすいように家の屋根に看板を

も波が引く音のように感じられた。

立て、 「サーフショップはこちら」と案内していたそうだ。そ

恵比寿という街は、特に飲食業にとっては生存競争の激

の頃から、サーフショップという看板と坂道との組み合わせ

しいエリアである。しかし、「えびす海岸」は、あえてその

が、「その先は海」との連想を醸し出した

競争から脱することで、街の緊張感を和らげているように

という。その後、民家は居酒屋となり、し

思うのだ。初めて来た人でも、海に対する憧憬や懐旧から

ばらくするとサーフショップは閉店した。

安らぎに酔いしれてしまう店。 「借景」という技法を取り入

現 在の店 名「えび す海 岸 」も看 板のコ

れた庭園や寺は数多く残されているが、この「えびす海

ピー 「この角曲がれば海の入口」も、そ

岸」の演出は、エクスペクタンシー(期待感)を感じさせる

のなごりだという。

現代の「借景」と言えるのではないだろうか。

エクスペクタンシーを検証するための3因子 どこでどのように 買いたいか、 購買方法・外出目的など

意味性

手法

表現

その店でどんな気分を 味わいたいか、 何をしたいか

看板や入り口、 建物のデザインに 対する期待

H I D E M I

T A K A S E

このスタイルの居酒屋にして十数年、 今でも夏になると、小中学生が「この先 に海はありますか?」と尋ねてくるらしい。 「あるかも知れないから行ってみたら?」 なんて 答える、遊 び 心 のある店 長 であ

「えびす海岸」に見るエクスペクタンシー  

意味性

手法

クに、いかにも海の男といった真っ黒に日 焼けした男性のイラストに洒落っ気たっぷ えびす海岸本店 〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南3丁目4番1 TEL: 03-3710-0778

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りのコピー、そして玄関先には真っ赤な

見立てて遊び心をくすぐる。

デザイン学 科(スペ ース デザインコース)卒・同年 4 月入 社 。大 学では文 房 具 から建 築まで 、空 間に

る。店の演出もしかり。窓には夏を思わ せる提灯を飾り、看板には海の青をバッ

懐かしい気持ちになる、

2007年名古屋芸術大学

表現

関する多種多様な分野を

借景、その場所のなごりを

学んできました。東京の暮らしは浅いので、

素直にモチーフとする。

溢れんばかりの情報や素晴らしい方々との

看板、メッセージ、ボートなどの演出で、

出会いから、日々刺激を受け続けている感 があります。今後も出会いの一瞬一瞬を大 切にしていきたいです。

海岸がありそうな景色をつくる。

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City Science 04