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駿建

2016 Jan. vol.43 No.4

日本大学理工学部建築学科 日本大学短期大学部建築・生活デザイン学科

Special Feature

設計課題の今

「ラーニング・アーキテクチャー2015 |建築、学びの冒険 大学の建築設計課題の動向展」 を見て


Special Feature

Special Feature

設計課題の今

「ラーニング・アーキテクチャー 2015 |建築、学びの冒険 大学の建築設計課題の動向展」を見て

 広辞苑には「建築とは、建築された物体」とありますが、

 2015 年 11 月 20 日(金)から 12 月 26 日(土)まで、東

建築がこれからの未来において、影響を及ぼしたり、役に

京ミッドタウンで「ラーニング・アーキテクチャー 2015|

立つ分野は、「建築された物体」に留まらず、おそらく皆

建築、学びの冒険 大学の建築設計課題の動向展」とい

さんの想像を超えるところまで拡張していくでしょう。この

う展覧会が開催され、そこでは 11 の大学のさまざまな設

10 年にも現れている、建築を学んだ人たちによるさまざま

計課題が集められ展示されました。今回の特集は、5名の

な拡張的な試みは、その予兆を感じずにはいられません。

M1 の皆さんと共に展覧会を見て、他の大学の設計課題に

しかし、いつの時代も「建築とは○○」と、一概に言い切

触れたあとに、収録した日大理工の設計課題をとりまく状

ることはできなかったのだと思います。だからこそ、建築

況についての座談会と、2つのレポートで構成しました。

を教える大学は、それぞれに「建築とは何か?」と問いな

建築とは何か? 建築教育、設計課題は、どうあるべきか?

がら、その教育の内容を進化させ続けてきたのでしょう。

 そんなことを、今回の特集をきっかけに、友達同士で議 論してみてください。

SHUNKEN 2016 Jan. vol.43 no.4

東洋大学理工学部建築学科 学部4年「大宮東口プロジェクト 2015」 「 総 合 設 計 演 習 」の 課 題として、自治体と連 携しな がら地 域 の 課 題を解 決 するもの 。 2 0 1 1 年 の 「 鶴ヶ島プ ロジェクト」 に はじまり、 2 0 1 2 年 は 公 共 施 設 の 縮 小 や 遊 休 地 活 用 に取り組 む 提 案 型プロジェクトに発 展し、 2 0 1 3 年 には 「 鶴ヶ島 太 陽 光 発 電 所 環 境 教 育 施 設 」 建 設 へとつ な がった 。 2 0 1 3 年 からはじまった 本プロジェクトで は 、 公 共 施 設 の 再 配 置 や 公 有 不 動 産 の 利 活 用をテーマ に 、 事 業 採 算 や 経 済 波 及 効 果も含 ん だ 総 合 的 か つ 具 体 的 な 提 案 を 行う。 模 型 を 用 い た 履 歴 の 保 存 や 住 民 を交えた パブリックミーティングで の 投 票 による評 価 など、一 連 のプロジェクトで

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行わ れている手 法 は 、 集 団 設 計 の 新しいあり方としても注目されている。


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横浜国立大学大学院建築都市スクール Y-G SA 大学院1年、2年 「 建 築 家を養 成 する」た め 、横 浜 国 立 大 学 に 9 年 前 につくられ た 大 学 院 。ここで は 、 研 究 室 に所 属 するということは なく、 学 生 たちは 半 期ごとにスタジオを選 択し、 設 計 課 題 に 取り組 むことに なる。スタジオ制と呼 ば れる、このスタイル は、 世 界 的 に はスタンダードな 教 育システムであるが 、日本で は 唯 一となる。 特 に Y- G S A で は 、 建 築 が 作 品という閉じた 存 在で は 成 立で きなくなっている今 だ からこそ「 都 市 」 のコンテクストに 注 目し、 開 か れ た 社 会 的 存 在としての 建 築 の あり方 を 要 求 する課 題 を 常 に 与え続 けている。今 回 は 2 0 1 5 年 に 行 わ れ た 北 山 恒、小 嶋 一 浩 、 藤 原 徹 平 、 3 氏 によるスタジオの 作 品 が 展 示され た 。

SHUNKEN 2016 Jan.

大学院1年、2年「サイバネティック・アーバニズム」 東 京 大 学 の 3 つ の 建 築 学 研 究 室( 千 葉 学 研 究 室 、隈 研 吾 研 究 室 、小 渕 祐 介研 究 室 ) によって構 成され た 、 最 先 端 の 建 築デ ザイン教 育と建 築 ・デ ザイン文 化 の 促 進を 目 的とした T _ A D S という組 織 による設 計 課 題 。ゴミを 新しい 資 源として考え、 新

vol.43 no.4

東京大学工学系研究科・建築学専攻・Ad vanced Design Stud ies

しい ネットワークを 構 築 することで、 消 費 を 通じて生 産 する前 向 きな 消 費 を 生 み 出 すことが 求 められている。リサーチプロジェクトを通して建 築 に関わる都 市 問 題 を 浮 き彫りに するところから、 最 終 的 な 提 案 に 至るまで、 5 年 間 に わ たるプ ロセ スの すべてが 展 示され た 。

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学生 × 教員 スペシャル座談会 そうでした。一方で東京藝術大学の1年生の

課題だったのですね。けれども、その課題は

椅子の課題などを見ると、アウトプットの表

それまで経験していなかったシチュエーショ

古澤:それではまずは、それぞれから今日の

現力をとても感じました。他大も同じく、上

ンを考えるきっかけになったわけですね。

展覧会を見た感想をお願いします。

手い下手ではなくて、アウトプットして伝え ようという気持ちがすごく出ていました。

齊藤:さらに僕たちのときはプログラム設定 が与えられませんでした。それまでの課題は、

宮島:リサーチがとても多いところ、課題に 対するアプローチの仕方が違うところなど、

敦賀谷:他大のものにリサーチの割合の高さ

住宅や図書館など、決められたプログラムに

大学によって特徴が全く違いました。

を感じつつも、最後に建築になったときのク

基づいて設計していました。だから、長者ヶ

オリティは日大理工もひけをとらないと思い

崎の課題は、卒業設計への布石としても位置

齊藤:よく卒業制作展などを見て、大学の違

ました。ただ、伝える力は確かに他大の方が

づけることができました。

いを知ることがあるけれど、今回のような日

強いように思いました。

常の課題を見ると、大学の特色がより見えま

清水:僕は小学校(3年前期)の課題でした。

した。僕らは日大理工でしか課題を受けてな

やっぱり、自分自身が体験したことのあるビ ルディングタイプだから取り組みやすかった。

いけれど、建築の課題と取り組み方が、こん なにも多様なんだと感じました。

橋本:プロセスはもちろん、武蔵野美術大学

古澤:これまで皆さんは、いろんな設計課題

たとえば、今はオフィスビル(2年後期)の

を受けてきたけれど、どの課題が一番やりや

課題がありますが、オフィスビルで働いたこ

すかったですか。

とのない学生に設計させるのは、TA としても 教えづらいところがあります。

のようにエスキスの過程をも、アウトプット としてきちんと見せる形に持っていっている

齊藤:都会の敷地が取り上げられることが多

ことが印象的でした。その他にも他大は、設

いけれど、唯一そこからズレているのが長者

橋本:僕は夏休みの「デザインワークショッ

計の前段階の調査を全体として取り組んでい

ヶ崎コンプレックス(3年前期)の課題でした。

プ」でした。僕らのときは1 / 1で空間をつく

たり、敷地を読み込もうとする姿勢が日大理

自然に囲まれたところで、今までにない状況

るもので、実際の空間をひとりでつくるとい

工よりも深いなと思いました。

のもとで考えることが、刺激的な課題でした。

うのもよかった。TA で1年生を見ていても、 アイデアを最終的にどういう材料で、どうつ

清水:僕は、今年前期に1年生のTAを担当して、

佐藤:僕や山中新太郎先生が学生のころにも

くるかというイメージが沸いていません。そ

よく「教えてください」と声をかけられました。

取り組んでいた、伝統的な課題です。

ういう意味でも、1 / 1にトライできる課題は どこかであったほうがいいと思います。

ただ、教えることはあるとしても最後のアウ

SHUNKEN 2016

トプットは、それぞれが自分で考え、表現し

古澤:今年からこの敷地での課題はなくなり

なくてはいけない。そのあたりはみんな難し

ましたが、四半世紀にわたって行われてきた

宮島:私は3年後期の「設計Ⅴ」が一番印象

Jan. vol.43 no.4

武蔵 野 美 術 大 学 建 築学科

東京藝術大学美術学部建築科

大学 院 1 年 「 M pr o j e c t」

学部1年「食 - 椅子、ちょっとしたフルーツを添えて」

建 築とランドスケープ の 学 生 が チームを組 み 、建 築と公 園を一 体 的 にデ ザインす

食 べ 物 や 食 べる 行 為 から椅 子という状 況 を 想 像し、そこからデ ザ イン を はじ め 、

る課 題 。 設 計デ ザインだ けで は なく、具 体 的 にそこに 進 出 する企 業を決 定し、 公

「 食 」 を 広く捉 えて、 通 常 の ダイ ニ ング チェアとは 異 なる 「 食 - 椅 子 」 の デ ザ イ

園と共 に 新しい パブリックス ペ ースを 提 案したり、 最 終 提 出まで に 3 回 、 外 部 か

ン を 行うもの 。 前 期 は デ ザ インと技 術 的 な エス キス を 行 い 、 後 期 は 実 際 に 1 / 1

ら建 築 家、ランドスケープアー キテクト、編 集 者 などを 招 きゲストクリティックを

の 図 面 をもとに 実 制 作 を 行う。写 真 は 間 杉 杏 さん の「こしか け 膳 」という作 品 。

行っている。 今 回 の 展 示で は、そのゲストクリティックとの 中 間 講 評 の やりとりが

椅 子 の 上 の カ バ ー を 持 ち 上 げ ると座っ たとき の 太 腿 に フィットする お 膳 が 出 現

わかるように、すべてのプロセスが展示されていた 。

する 。

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座談会メンバー 輔(建築学科助教)/取材:田中元子 ( m o s ak i/ 駿 建 編 集 委員)、 大 西 正 紀 ( m o sa k i / 駿 建 編 集 委員)

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学生:齊藤佑樹(佐藤光彦研 M1)、 清 水 亮 輔 ( 今 村 研 M 1 )、 敦 賀 谷 俊 ( 佐 藤 光 彦 研 M 1)、 橋 本 和 弘 ( 古 澤 研 M 1)、 宮 島由香 ( 佐 藤 光 彦 研 M 1) / 教員: 佐 藤 慎 也 ( 建 築 学 科 准 教授)、古澤大

左 から、 古 澤 先 生、清 水くん 、橋 本くん 、宮 島さん 、齊 藤くん 、敦 賀 谷くん 、 佐 藤 慎 也 先 生 。 座 談 会 の 収 録 は 、 1 2 月 1 日に展覧会を見学したあとにミッドタウンのカフェにて行われた 。

的でした。コース分けが行われ、人数が少な

前に都市部でのオフィスビルの設計に取り組

験を意識したものです。その設計製図試験の

い中で先生とエスキスができる。そのときは

んで、その次の課題です。ラーメン構造でし

課題を3年前期に行うという位置づけです。

森の中で、自由に敷地が選べるものだったこ

か解けないとなると、みんな同じラーメン構

 一方で、青山に商業施設を建てるというこ

とで、とても勉強になりました。先生ごとに

造を描いてきます。先生が斜線制限などの法

とを、都市的な視点、商業的な視点で考えて

特色が出ていることもよかったです。

規や構造ばかりを注意するので、学生たちも

ほしい。ただ、もし都市的、商業的な視点で

そっちに引っ張られているようでした。

面白い提案ができない学生は、建築物として 製図をきちんと行うことを第一の目標にする

敦賀谷:小学校の課題は、敷地が大学から近く、 橋本:そう。しかも、最終的には、高さ制限

取り組みやすかったです。計画学的に学ぶこ

などを守っていない学生の作品が評価されて

とも、多くの事例があったことからも大きか

いました。

ということでもあります。

橋本:一級建築士の設計製図試験では、面白 さは求められないと聞きました。だったらそ

った。「設計Ⅴ」では半期を通してスポーツ施 設に取り組みましたが、それも卒業設計につ

古澤:そもそもこの課題は、一級建築士の設

こは、一級建築士に合格するために多くの人

なげることができてよかったです。

計製図試験を意識して、3年前期に設定した

が通うような専門学校に、任せればよいので

ものでした。

はないでしょうか。

たり、経験が活かせたり、次へのステップア

清水:3年前期まで必修になったから、より

清水:3年生くらいになると、いろんな規制

ップしていく実感があるものがよかったとい

一級建築士の試験に出題されるであろう課題

があっても、そこを打ち破って面白い提案を

うことですね。

を設置したということですよね。僕たちのと

しようという想いが芽生えてくるころで、あ

き、2年後期は美術館でしたが、美術館は一

る意味はじめて社会とぶつかろうとしている

級の設計製図試験では出題されない。だから、

時期だと思うのです。そんなときに、法規をは

SHUNKEN 2016

サーベイ以前に知っている場所だったので、

古澤:それぞれ自分の知識欲を満たせてくれ

はめていくのはよくないと思います。

学生も少なくないと思いますが、どうしてで

とですよね。 古澤:それはよくわかります。そこは教員側

しょうか。 古澤:そうですね。4年前期に日大理工オリ

もダブルスタンダードで教育をしているので

清水:たとえば今の3年前期の青山の商業施

ジナルの卒業達成度評価試験(建築学総合演

す。できる学生たちには、課題の枠をとっぱ

設の課題は、とてもやりづらそうです。その

習)を設けていますが、これも一級の学科試

らってもらっていい。逆にうまく取り組めな

vol.43 no.4

じめ、あらゆる条件を守りなさいという型に

されるオフィスを扱うようになったというこ

Jan.

その課題の枠で、一級建築士試験でよく出題 古澤:でも、中には課題にうまく馴染めない

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学生 × 教員 スペシャル座談会 い学生たちには、ボトムアップのために最低

くり出す課題です。日大理工のように規制の

最後の講評会の日に、この課題が終わればも

限の製図能力を担保しましょうと。そのあた

枠にはめられた商業施設に取り組むのと、早

う設計の授業を取らなくていいと喜んでいる

りのことが学生にはきちんと伝わっていない

稲田大学のこれを経験するのとでは、影響が

学生を見かけました。そういう学生たちに、

のかもしれませんし、教員側でもそこを共有

全く変わると思いました。僕は断然、早稲田

もっと建築や設計を好きになってほしい想い

する必要があると思いました。

大学のような課題をやってみたい。

はたくさんある。だけど、いつも課題の設定 はなかなか難しいものです。

田中:アトリエ系の建築家を目指す学生から、 ゼネコンや工務店、ハウスメーカーを目指す

清水:特に1年生は、自由につくってと言わ

佐藤:設計課題は通常、半期でふたつの課題

学生まで、いろんな学生が社会へ出て一級建

れても、自由というものがそもそもわからな

に取り組みますが、商業ビルの課題は、より

築士を目指すことになると思います。日大理

い時期だと思います。それまで義務教育を受

複雑な課題になった分、半期のすべてを使っ

工として、より多くの建築士の数を出すとい

け、高校に通い、大学で建築学科に入ってい

て行いました。そのあたりの効果は TA として

うことが大事かもしれないけど、より大事な

きなり自由な発想が求められるわけですから。

は、どのように見ましたか。

のは、大学としてどんな建築士を世の中に輩

それが3年生くらいになると、なんとなく自

出していきたいのかということだと思います。

由がわかりはじめる。だからこそ、そこで型

齊藤:ひとつの課題に対する時間が倍になっ

 専門学校のように図面をきちんと描けると

にはめられていくのは、個人的には違うよう

ても、リアリティや密度は何も変わっていな

いうだけのアノニマスな建築士を輩出したい

に思います。

いと思います。結局は提出まで時間があると

のであれば、最初からそう公言すべきでしょ

思うと、進めなくなるし、時間を延ばした効

う。でも、そうじゃない建築の面白さや可能

佐藤:2年間やって、ある程度わかってくる

果はないと思いました。

性を問う課題も多いわけです。その両端のさ

中で、自由っていうものもわかってくる。い

じ加減を間違えてしまって、面白さを感じは

ろんなことが交錯するのが3年生という時期

清水:たとえば、今日の展覧会の中の早稲田

じめた学生たちに「待て」をかけるようなこ

なのかなぁ。

大学の課題「ハイパースクール」は、ちょう

とは、とても残酷なことだと思います。 大西:きっとそれは、設計製図だけではない

ど同じ3年生の時期に行っています。この課 題は、既存のプログラムに取り組むのではな

古澤:その指摘は、とても考えさせられます。

と思います。みんな建築学科に入学して、建

く、自分である種の新しいスタンダードをつ

僕は、今年は「設計Ⅳ」を教えていたのですが、

築をゼロから学びはじめて、建築にまつわる いろんなことがつながりはじめるのが、3年 生くらいの時期なんだと思います。

SHUNKEN 2016

宮島:この課題では、高さ制限をはじめ、す べての条件を満たした模型をつくってきなさ いと頭から言われるのだから、それは学生た ちは萎縮すると思います。TA も高さのチェッ クをするように言われるので、私も自然とそ

Jan.

う声をかけるようになっていました。

橋本:もし3年前期の課題が、一級建築士試 験につながるものというのであれば、法規は きちんと守らせた方がよいと思います。けれ ども、法規を守ったら面白い作品にはならな vol.43 no.4

早稲 田 大 学 創 造 理 工 学部建築学科 学 部 3 年 「 ハイパースクール/教室を住まいに、学校を都市に」 今 から 3 0 年 後 の 小 学 校 はどのようになっているだろうか。自身が か つて学んだ 小

くて、面白い作品をつくるなら、法規を遵守 しなくてもよいというのであれば、よくわか らなくなります。

学 校 の 場 所を選 び、その 学 校 敷 地を含 む、より広 範 囲 の 地 区を対 象 地として、学 校 の 都 市 へ の 拡 張 が 求 められる課 題。教 室 を 学 校 施 設として捉えるので は なく、 生 徒 にとっては 住まいとして、学 校 全 体を街として、そしてそれらが 都 市 の 一 部で

敦賀谷:確かに法規をクリアしながら面白い

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あるといった観点を持ち、「学校を越える学校」が提案されている。また 、プログ

ものが提案できたものと、法規なんかを越え

ラムだけで はなく、 規模も構造も自由であることも特徴的。

たところで面白いものが提案できる作品があ


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ります。

古澤:法規も、満たしているようで満たして

自分が推す作品のいいところを振り返ること

は早すぎるのではないかということがありま

をルールとして、そのあとに投票するように

した。3年前期まで延ばすことで、設計をや

しました。その効果はありそうですね。

るかやらないか、判断するタイミングを慎重

いないギリギリをつけばよいと思うんです。

にしたいと考えたわけです。

 たとえば、斜線制限をオーバーしている学 生がいると、ただ納めることがめんどうくさ

清水:僕自身、2年前期までは設計課題では

くてオーバーしている学生がいる。その学生

佐藤:今年から設計製図の授業を3年前期ま

うまく表現できなくて、2年後期に面白さに

には、斜線内に納めて設計する建物がまち並

で必修としました。皆さんのときはそのよう

気付いて設計に進もうと思いました。ただ、

みに参加することの大事さを伝えます。

なカリキュラムではなかったのですが、この

3年前期まで必修を延ばしたところで、そう

 一方で、いろんなことをリファレンスして、

ことについてはどう思いますか?

いう判断が変わることは少ないと思います。

理念的にこのまちをよりよくするために斜線

きっかけは、いろんな課題にトライして、そ

制限をオーバーした建築が必要であるという

橋本:人数が多いままで課題の難易度が上が

学生もいます。そういう学生には、講評会で

る分、できる人、できない人の差がすごく出

叩かれるかもしれないけど、好きなようにや

てしまったように思いました。

りなさいと伝えます。

れがどこで評価されるかによりますから。

大西:結局、個々によいところをきちんと評 価してあげることが少ないんじゃないでしょ

宮島:そうすると、できる人もできない人も

うか。それに多くの学生たちが、設計を面白

必要ですし、非常勤講師の皆さんとも、その

救うような、今のような課題にならざるを得

いと思うかどうかの分岐点は、3年前期より

辺りのマインド共有がより必要だということ

ないこともわかります。それならばスタジオ

ももっと手前の1年生のころだと思います。

ですね。

制にして、先生ごとに課題を変えて選べるよ

うにした方がよいかもしれません。

橋本:そういうことは講評会でも伝わるもの

SHUNKEN 2016

 そのあたりをもう少し丁寧に伝える時間が

清水:1年生の課題では、知識とか考えてい ることとかアイデアではなく、形などのある 種のセンスによって評価されます。それを見

最後の 20 分を先生同士の議論の場としていま

設計を学んでほしいという想いはわかります。

ている周りの学生たちは、あぁ、自分は無理

した。どうしてそれぞれの先生が、その作品

ただ、同時期に設計課題をやり、構造や法規

だなと思ってしまっていると思います。

を推したのかということがきちんと議論され

の授業を受けていても、リンクしているよう

ていました。そういう場をはじめて見たので

に感じない。それは問題だと思います。あと、

大西:そうすると、入学して半年建築学科で

す が、と て も よ か っ た で す。学 生 も 先 生 も、

3年前期の設計課題では、構造に進みたい学

学んで、一度も褒められず、つくる楽しみも

みんなで納得できる時間があって、その後も

生は構造的な提案を、不動産へ進みたい学生

体感できない学生もいるわけですよね。それ

学生たちが先生に、次はどうすればよいのか

は企画的な提案を、と先生方はおっしゃいま

は、相当ブルーじゃないでしょうか。たとえば、

質問に行っていました。ああいうことが、自

すが、それでは全体での評価がしづらいです

今日の展覧会に東京理科大学のピクニックを

分たちのときもあればよかったと感じました。

し、どうかと思いました。

キャンパス内で提案、実施する1年生の課題

古澤:今年は、すべての学年の講評会で、ひ

佐藤:3年前期まで必修にした理由としては、

使って楽しめるし、すべてのグループが講評

と段落したら、講師全員が学生の方を向いて、

2年生をもって、その後のルートを決めるに

されるので、充実感も得られる幸せな課題だ

vol.43 no.4

齊藤:設計以外の道に進む学生にももう少し

Jan.

だと思います。今年の2年生の講評会では、

がありました。基本はどのグループも身体を

007


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学生 × 教員 スペシャル座談会

Make a World Travel

と思いました。そういう課題を最初の1年間

とですよね。

 けれども、今の日大理工はどうでしょうか。

で体験できるか、できないかは大きく影響し

 日大理工は、学生数が多い分、教育そのも

具体的なアイデアではありませんが、1学年

ていると思います。

のも大変なことが多いと思いますが、学生み

約 240 人もいるということをもっとポジティ

んなの建築に対する「学びがい」みたいなも

ブに捉えて、そうだからできる楽しく学べる

古 澤:褒 め ら れ る と い う か、講 評 会 に 出 て、

のを、もっとサポートしてあげたいですよね。

試みをもっと考えて実施していくべきだとも

評価されるという体験が、一番大きいわけで

設計課題がうまくいかないときだって、表現

思いました。

すね。その場に出られるか、そうでないかと

の技術が追いついていないだけで、内側にす

いうことも含めて。今の学生数と講評会のシ

ぐれた提案がある学生も多いだろうし。そん

古 澤:今 日 の 話 を ま と め る と、自 由 す ぎ ず、

ステムだと、1班あたり講評会に出られるの

な学生が心折れてしまうことだけは避けたい。

型にはめすぎず、さらに日大理工の特色を出

は2人程度になっています。

していくことを考えていかなくてはいけませ 古澤:スタジオ制ではなく、大人数を一斉に

田中:講評会に出られる学生は、班ごとにそ

教育する方法には、どんなアイデアがあるで

の班の先生が選ぶのですか。その班の中で学

しょうか。

生同士で選ぶのもいいと思うのですが。

んね。

清水:自由な課題が、どのように評価されて いるのかを見て、改めて自由ってどういうこ

田中:今日の展覧会を見ていると、1年生と

とかを知れるんです。課題に自由さがあるこ

古澤:学生にも投票権が与えられて、その作

大学院、はじまりと終わりの両端に、その大

とも、メリットはそこにあるのだと思います。

品が総意で選ばれて、評価されることはいい

学の設計課題の特徴が現れているものが多か

ですよね。

ったように感じました。どの大学も学部の2、

田中:真っ白いキャンパスを与えられて考え

3年生あたりはいわゆるトレーニングの時間

られる学生もいれば、そうではなくて、うっ

田中:でも、何よりも大事なのは、そのプロ

として捉えているので、ある程度似たような

すら下絵が描いていることで、はじめて力を

セス。誰が選ばれるかどうか以上に、いろん

テーマにトライしていると思います。だから

発揮できる学生もいます。その下絵づくりが

な先生や学生たちの評価軸が交錯して、評価

逆に、はじまりと終わりに、その大学が何を

巧いのが、たとえば東京理科大のピクニック

軸はどこなんだ?となることが大切だと思い

したいかということが出ているとも考えられ

や光の箱の課題が指針になりそうですよね。

ます。そしてそれを全員で共有体験にするこ

ます。

SHUNKEN 2016 Jan. vol.43 no.4

東京 理 科 大 学 理 工 学部建築学科 学 部 1 年 「ピクニック」 1 年 後 期 に 行 わ れている課 題。屋 外で 人と過ご す 社 交 空 間としての ピクニックを デ ザインし、実 際 に1 / 1で つくり上 げ、その 空 間を体 験 する。地 面 や 光 の 状 態 、 見える風 景といった 場 所 の 選 定 から、ゲストの 迎え入 れ 方、簡 易 に 持ち運 べる道 具 類、人と共 に過ご すた め の 料 理 や 容 器、招 待 状 のデ ザインや 服 装、 音 楽までト ータルで 考える。最 終 講 評 会で は 、 実 際 に ピクニックを 実 施し、 講 師 たちが ゲス トとしてピクニックに参加しながら、講評を行う。

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東 京 理 科 大 学 理 工 学 部 建 築学科 学 部 1 年 「 光の箱 」 建 築 の 初 等 教 育で 光を扱う大 学 は 多 い が、理 科 大 が 面白い の は、その つくり方 の ル ー ル 。まず 大きめ の 段 ボ ー ル 箱を用 意し、真っ暗 な 空 間 からスタート。そこか ら開 口 を自 由 に 開 けて いく。 箱 の 外 形 も内 側 もどんどん デ ザ インしても大 丈 夫。 さらに 床・壁・天 井 にどのような 色、どん な 素 材 を 使 用してもい い。そ の 時々に 空 間 に 起こる変 化 を 注 意 深く読 み 取ることが 求 められる。途 中で 一 眼レフカメラ の 使 い 方も教わり、撮影したスライドと 1/20 の模型を提出する。

ト4しか参加できないイベントをやっている

もっと参加者も増えて盛り上がると思います。

となると、それは単に学生たちの射幸心を煽 古澤:建築に明確な答えがないように、その

実は今のスーパージュリーのシステムがよく

かもしれません。もう少し、それぞれを肯定

教 育 も 奥 深 く て。だ か ら、正 直 教 員 側 に は、

ないと思っています。スーパージュリーでは、

してあげる時間が必要な気がします。

いつももどかしい気持ちがどこかにあります。

改めて講評してもらうのですが、これは本当

古澤:母数に対してのバランスが大事だと思

佐藤:今日の展覧会を見ても、ある大学から

は 10 作くらいを選ぶべきだろうと。もっと多

う一方で、スーパージュリーでは、順位では

見れば、その課題はどうなんだ!?というも

様な作品が選ばれていて、そこに順位をつけ

なくて、多様な外部のゲストの生の批評、ク

のも並んでいるけれど、どれも間違いではな

るのでなく講評が行われた方が、いろんな角

リティックが聞けるということが、一番大事

い。どの大学のどの課題も、建築が多様化し

度から、いろんな評価を聞くことができるし、

な目的なんです。そして、クリティックが一

ている現代においては、建築の教育であるこ

よいと思います。もちろん、ベスト4の方が

番盛り上がるのは、1位を決めるからなんで

とには間違いありません。ただ、展覧会にあ

競争意識は生まれるけど、その分、多様性が

すね。それだけに辛いところです。ただ近年は、

った課題をひとつの大学で担うことはできま

見せられなくなっています。

スーパージュリーの会場に最後まで残ってい

せん。それだけに設計課題をどうつくるかは

る学生たちが発表者だけになってきているの

難しいと改めて思いました。

各課題からベスト4を選んで、外部ゲストに

で、そういう目的も達成できなくなっている

唯一の答えなんてないんですよね。本当に多

のかもしれません。

古澤:どのような設計課題にも可能性はあり ますよね。もっと建築の面白さに気付いてもら

様。だから、そこでつくったものが誰かに褒 められたり、評価されるのも、ある意味では、

清水:僕はスーパージュリーはやり続けてほ

えるように頑張っていこうと思います。こうし

たまたまなんです。そういうことは大人にな

しい。けれども、CST ホールがよくないと思

て先生と学生で座談をするのは楽しいですね。

ってからわかることが多いかもしれないけれ

います。学生たちになじみのない場所ではな

また機会をつくれればと思います。今日は皆さ

ど、大学で、しかも母数が多い日大で、ベス

く、いつも学生たちがいる製図室でやれば、

ん、ありがとうございました。

vol.43 no.4

田中:本当は、自由にも建築にも模範がない、

Jan.

るだけになってしまうことになりかねないの

SHUNKEN 2016

佐藤:評価の方法につながる話なのですが、

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特集連動レポート1

Make a World Travel

日大理工建築

設計課題の今 text= 佐藤慎也准教授、古澤大輔 助 教

時代によるカリキュラムの変化

計科目の時間数を増加させるなど、より専門性

設計科目をめぐる環境の変化

の高い学習を実現することが想定されていた。

SHUNKEN 2016 Jan.

 大学のカリキュラムは時代に応じて変化する

一方で、3年前期でコースを選択することは、

 先に述べたとおり、以前は卒業するためには

が、その中でも変わらない基礎的な科目がある

例えば環境・構造コース所属学生が設計・計画

全員が「卒業設計」を行わなければならなかっ

一方で、時代によって変わっていく科目もある。

コースの専門科目を限定的にしか履修できない

た。そのため、構造や環境にわたる広いテーマ・

学生の立場からすれば、自分が属するカリキュ

など、融通が利かないという弊害を生み出して

提案を認め、卒業研究と連動した建築学の多岐

ラムはひとつだけなので、異なるカリキュラム

もいた。そして、その後に建設業界の状況が推

にわたる領域を網羅する作品の提出ができるよ

を相対的に比較することにはあまり意味がない

移する中で、早期の専門性への分化よりも、よ

かもしれない。しかし、今回の座談会にあるよ

り総合的に建築学を学習することが意図され、

うに、カリキュラムが変化する前後に在籍した

また国際資格自体の状況が変化したこともあっ

また、「スタジオワークス」(設計作品集)に目

学生にとっては、当然のことのようにその変化

て、2コース制に改められることになった。

を向けると、そもそもは卒業設計の優秀作品を

が気になるのだろう。

 とはいえ、この3コース制のカリキュラムが

掲載していた「卒業設計優秀作品集」の発行が

 2013 年に入学した学生たちからカリキュラ

スタートしたのは 2003 年度から。実は、それ

1977 年度に開始され、続いて学部設計課題の

ムが大幅に変更され、それ以前のカリキュラム

以前も建築学コースと企画経営コースの2コー

優秀作品を掲載する「設計作品集」の発行が

で採られていた3コース制が、2コース制に改

ス制だった(1985 年入学生から)。ちなみに、

1996 年度に開始された。それが、2004 年度か

められた。これまでは3年前期から環境・構造

そのときのカリキュラムでも3年前期の設計が

ら「スタジオワークス」という名称に改められ、

コース、設計・計画コース、企画経営コースの

全員必修であるなど、現在のカリキュラムに似

卒業設計が必修から選択に変更された 2005 年

3つに分かれていたものが、2015 年度の3年

た構成であったが、その頃は卒業研究(つまり

度に、学部設計課題から卒業設計、さらに修士

生からは、建築コースと企画経営コースの2つ

論文)と卒業設計の双方を全員必修という、今

設計までを一貫して収録した作品集として統合

から選択することとなった。座談会で話題にな

の4年生には厳しく感じるであろうカリキュラ

された。その頃からスーパージュリーも開始さ

った3年前期「建築設計Ⅳ」が、選択科目(環境・

ムでもあった。

れている。

構造コースのみ選択だった)から必修科目に変

 ついでに建築学科のコース制に関する歴史を

 このようにカリキュラムの変更と連動して、

更されたのも、このカリキュラムの変更に伴う

書いておくと、企画経営コースが誕生したのが

設計科目の役割も変化してきている。その意味

ものである。2003 年入学生から対象となった

1985 年。さらに遡って、1972 年に海洋コース

では、今回のカリキュラムの変更と連動して、

3 コ ー ス 制 へ の 変 更 は、当 時、国 際 資 格

が創設され、それが 1978 年に海洋建築工学科

今回の座談会で話題となった内容や、その他の

を生み出すこととなった。

要素も見直していかなければならない。そんな

(JABEE、UNESCO-UIA な ど)の た め に 将 来 必 要とされた対応を意図したものであり、特に設

各学年の優秀作品

う に、卒 業 制 作 と 呼 ん で い た 時 期 も あ っ た (1997∼2002 年)。

こともあって、今回の特集は組まれている。

「建築設計Ⅰ」第1課題 「マイスペース」

「建築設計Ⅰ」第2 課 題 「レストスペース 」

vol.43 no.4

右 に 今 現 在 行 わ れ て い る「建 築 設 計Ⅰ」∼「建 築 設 計 Ⅳ 」ま で の、優 秀 作 品 を 並 べ て み ま し た。建 築 設 計 で 取 り上げられるテーマ や課題内容は、その時代に合わ せ て常に更新され続け ています。

010

藤 嶋 裕 太( 1 年 )

青 島 幹・ア デ ィ ア ス タ ア リ エ ー・池 田 宙 輝・伊 藤 颯 太・ 宇 佐 見 拓 朗( 1 年 )


1977 年度 左 : 最 初 の 卒 業 設 計 優 秀 作 品 集 。1 97 7 年 度 の 作 品 集 だ が 、1 97 8 年 3 月 に 発 行 さ れ た め に タ イ ト ル に「 1 97 8 」と あ る 。A 3 横 サ イ ズ と い う 大 型 の 判 型 だ っ た 。

Special Feature

優秀作品集の変遷

1996 年度 中 : 最 初 の 設 計 作 品 集 で あ る「 1 996 年 度   建 築 設 計 製 図   課 題 ・ 優 秀 作 品 集 」。発 行 は 1 997 年 。

2004 年度 右 : 最 初 の ス タ ジ オ ワ ー ク ス で あ る 「 S T UD I O WORK S 2 0 0 4 」。当 時 は 非 常 勤 講 師 で あ っ た 山 中 新 太 郎 准 教 授 が 編 集 長 を 担 当( 2 0 0 4 ∼ 0 6 年 )。そ の 後 、山 誠 子 短 大 准 教 授( 2 0 0 7 ∼ 1 2 年 、当 時 は 建 築 学 科 教 員 )、古 澤 大 輔 助 教( 2 0 1 3 年 ∼ )へ と 編 集 長が 引 き継がれている。

たものである。後期「建築設計Ⅰ」においては、

うに意図されたものである。

 2013 年度開始の新カリキュラムにおいては、

身の回りの環境から心地のよい居場所を発見す

 建築コースでは、それ以降は選択科目として、

これまで3年前期「建築設計Ⅳ」がコースによ

る課題を導入するなど、建築を構想する際に何

夏季集中講義として行われる「デザインワーク

って必修 / 選択が異なっていたものが全員必修

がキッカケとなるのか、気付きを与える機会を

ショップ」、ユニット制によりさまざまなバリ

となったことと、「建築設計Ⅰ∼Ⅵ」に並行し

増やすことが意図されている。

エーションの課題に取り組む「建築設計Ⅴ」、

て行われていた「設計演習Ⅰ∼Ⅲ」が廃止とな

 2年生においては、本格的な建築設計がはじ

建築を単体で捉えるだけでなく環境デザイン的

ったことが、設計科目の大きな変更点である。

まる前期「建築設計Ⅱ」では、カフェや住宅と

な視点から課題に取り組む「建築設計Ⅵ」へと

それに伴い、各科目内の課題も見直すこととな

いった、よく見慣れた用途を題材にすることで、

続く。また、企画経営コースでも、「住まい方

った。

1年生で経験した基礎的トレーニングの成果を

の提案」を追求する「住環境デザイン」、都心

 設計科目の必修期間が、すべての建築学科学

実際の建築へ応用しやすい課題となっている。

部における複合再開発に取り組む「不動産開発

生に対して2年間であることと、2年半である

後期「建築設計Ⅲ」では、オフィスビルや地域

プログラム」へと続いている。

ことは大きく異なる。また過去の話となるが、

センターという一級建築士の製図試験でも出題

そして、その集大成として「卒業研究・設計」

3年前期が選択科目となったときに、設計の必

されるビルディングタイプに変更するととも

があり、卒業設計として設計作品を具体化する

修期間が半年短くなったことを受けて、1年生

に、基準階が積層する都市型の建築と、低層で

か、設計の前提にある理論的なアプローチの成

の設計科目名が、前期「デザイン基礎Ⅰ」後期「デ

平面的な広がりを持つ郊外型の建築という対照

果として卒業論文をまとめるか、何れかを選択

ザイン基礎Ⅱ」から、前期「デザイン基礎」後

的な課題に取り組むことで、建築への理解をよ

することになる。

期「建築設計Ⅰ」に変更され、いわゆる設計課

り深めることが意図されている。

 このように程度の差はあれ、まんべんなく必

題が前倒しとなった。今回の変更でも、それが

 そして、3年前期「建築設計Ⅳ」では、2年

修科目の課題設定に変更がなされたわけだが、

再び元に戻るかのように、名称こそ変更しなか

半の必修期間の集大成という意味から、通常は

履修した学生達の今後の動向と建築設計を取り

ったが、1年生には1年間にわたって基礎的な

半期で2課題であるのに対し、半期1課題(+

巻く社会的な状況変化を睨みつつ、引き続き設

課題を実施するように変更することとなった。

小課題)として、複合施設(集合住宅+商業施設)

計課題の最適化を図っていく予定である。そし

例えば 1 年前期の「デザイン基礎」では、線を

を設計する課題へと変更された。また、設計の

て、新しいカリキュラムを経た学生たちが、来

引く練習を行う前に、基礎的な立体造形のトレ

前段階として、敷地やプログラムに関するリサ

年度に手がける卒業設計(または卒業論文)が

ーニング課題が導入されている。これは、建築

ーチを数週にわたって行うことが課せられてい

どのようなものになるのか、その成果に期待し

の図面が三次元の立体物を二次元情報で表現す

る。これは、一級建築士の製図試験への対応を

たい。

るための手段であり、まずは建築を構想するこ

視野に入れながらも、1年後に取り組むことに

「 建 築 設 計 Ⅱ 」第1課題 「 淡 路 町 コ ミ ュ ニ テ ィ・カフェ」

「建築設計Ⅲ」第1課題 「オフィスビル」

Jan.

なる卒業研究や卒業設計への足がかりとなるよ

SHUNKEN 2016

とが重要であることを理解するように意図され

現在の設計課題について

「建築設計Ⅳ」第2課題 「南青山コンプレックス」 vol.43 no.4

山 田 香 奈 恵( 2 年 )

新 堀 美 海( 3 年 )

011

力武瑞穂(2年)


Special Feature

特集連動レポート2

6つの賞を選出した スーパージュリー 2015 text= 二瓶士門 助 手

最優秀賞 / 住宅 伊勢萌乃(2年)

優秀賞 / 都市のリ・デベロップメント 尾崎健(佐藤光彦研4年)

 上原雄史(建築家/富山大学教授)さん、南後由和(社会学者/明治大学専任講師)さん、

上原雄史賞 / 淡路町コミュニティ・カフェ

浅子佳英(建築家/インテリアデザイナー)さんを招き、学部生の前期課題の優秀作品に

森達也(2年)

対する公開講評会「SUPER JURY 2015」が 10 月3日(土)に、駿河台キャンパス1号館

浅子佳英賞 / 南青山コンプレックス

CST ホールにて行われ、153 名が参加した。  スーパージュリー(総合講評会)とは、特別ゲストを招き、学部2年生から4年生まで の 27 作品のプレゼンテーション及び講評を行うイベント。クリティックを行う3名のゲス トには建築家のみならず、さまざまな分野の方や非常勤の先生方に参加いただき、モデレ ーターを佐藤光彦教授が務めた。学年・クラスに分かれている普段の授業における全体講 評会と違った視点からレビューを行い、学年を超えた 2015 年度建築学科優秀作品を決定す る。講評会後には授賞式を兼ねた懇親会が行われ、今年は最優秀賞と優秀賞が各1作品、

杉山弘樹(3年)

南後由和賞 / 淡路町コミュニティ・カフェ、住宅 松田麻未(2年)

佐藤光彦賞 / 淡路町コミュニティ・カフェ 本田陽子(2年)

他にゲストクリティック3名とモデレーターの名前がつけられた4つの賞が選出された。

SHUNKEN 2016

CST ギャラリーにて行われた展示風景。

CST ホールにて行われた講評会風景。

各学年の課題ごとにレビューが行われていく。

Jan. 佐藤光彦先生、ゲストの上原雅史さん、南後由和さん。

vol.43 no.4 佐藤光彦先生から賞状を受け取る本田陽子さん。

懇親会でゲストの南後由和さんと話をする最優秀賞を受賞

012

した伊勢萌乃さん。


Special Feature

ゲストの浅子佳英さんによるレクチャー風景。

ゲストの南後由和さんによるレクチャー風景。

印象深かった上原雄史さんのレクチャー  スーパージュリーでは、公開講評会前にゲ

いのか? あるいは、普通のものを普通に設

つくった「みんなの家」がそのひとつと考え

ストから作品などを通じて自己紹介を兼ねた

計していけばいいのでは? と考えるように

られる。他に、(自身の設計で)オランダのテ

ミニレクチャーが行われている。ここでは、

な っ た。最 近、ミ ー ス・フ ァ ン・デ ル・ロ ー

クムに小学校建築をつくった。地方の普通の

強烈なインパクトを放っていった上原雄史さ

エの本を読み、彼もまた(特殊な建築ではなく)

建築を目指し、普通にある農家のような形を

んのレクチャーを振り返りたいと思う。

真実のある建築を目指していたのではないか

している六角形や八角形の形の中に、近代的

 「当初は、(東京工業大学の)坂本一成研究

と気ついた。とは言え、やりつくされたもの

な技術を封入することでどのような空間がで

室出身ということもあり、抽象的な概念をい

に興味があるわけでなく、コンセプトがある

きるかを試した。

かに構築し、そこから具体的な空間をどのよ

ものが面白い。

 それらの取り組みを通して、最終的に衣服

うに引き出すかに興味があった。ところが、

 今、コンセプトとして面白いと感じている

にたどり着いた。服をつくるには技術が必要

オランダで地区計画の策定や、制約の大きい

のは、ものが続いている状況、円環状の空間

である。あるいは、立体的な人間の身体をど

(OMA 的なノリで設計はできない)ドイツの

に興味がある。モダニズムの時代は線形で直

のように包むかという具体的な問題があって、

連邦政府の建物を設計していく中で、建物を

線だったけれども、スパイラルや円環に興味

つまり三次元の身体を、二次元の布でどう包

建てる際に、特殊なことをしなければいけな

がある。具体的には、伊東豊雄が呼びかけて

むのか、どう布と布をつなぎあわせるのか、

の技術がある。  例えば、MVRDV や OMA が表現しているよ うな鉄骨によるキャンチレバーを用いた形は、

SHUNKEN 2016

どう裏地をつけるか、という作業の中に普通

人 間 の 身 体、日 常 で は あ り え な い。し か し、 普通の生活、普通の形の中に、歴史や技術の 更新があり、そのような建築をつくりたいと Jan.

考えるようになった。先ほどの円環状の空間 に引き寄せて言い直すならば、Revisit するよ うな体験、空間。つまりは、昔出会い感動し たものに飽きて、忘れた頃に再会すると何か が変わっていて、(自身なのか周辺に対してな

 建築家が意図したものと変わり、50 年後に 社会状況や周辺環境が変わっても耐えうる建 築。そのような建築を一体どのようにすれば

vol.43 no.4

のか)成長していることに気づく。

よいのか探しているところなので、ここに並 んでいる作品を見るのが楽しみである。」 ゲストの上原雄史さんによるレクチャー風景。

013


Report

建築学科|2015年度海外研修旅行|レポート

Architectural Study 22日間、 ヨーロッパ4カ国の近現代建築を巡る旅 Tour

A

イギリス∼フランス∼スペイン∼イタリア

〈素晴らしい!〉ヨーロッパ4カ国巡礼の旅    T e x t = 飯 嶋 貫 太(3年)       15 年 8 月 4 日 午 前、ロ ン ド ン へ 向

20

学部棟」(写真2)との対比も極めて興味深

シオン」に宿泊した。

    かう飛行機の離陸をもって海外研

いものであった。自由時間に見に行った「ク

 「エッフェル塔」(写真4)は、「アイアン

修旅行は幕を切った。これが僕にとっては

ロー・ギャラリー」は、歴史学部棟と違い、

ブリッジ」を見たときとはまた違った感動

はじめてのヨーロッパ、というよりはじめ

お茶目でいながら煉瓦建築の真髄で、スター

を与えてくれた。時代が進み、部材は華奢に、

ての渡航経験だ。そして今この文章を書き

リングの中にあった変化をも感じ取れた。

施工は複雑になったのが見て取れる。より

ながら思い返せば、刺激的で楽しい思い出

知的で情熱的な工業の姿を感じながら登っ

に埋め尽くされた最高の研修だったと断言

た「エッフェル塔」。クロワッサンが美味し

で き る。そ の 感 想 を ま と め て 言 う な ら ば、

く、キチンと朝ごはんを食べていたのが功

石畳は歩きづらくてホテルの朝飯が合わな

を奏したが、今後行く機会があったなら階

い。

段を選ばずエレベーターに乗るだろう。

 全行程 22 日間の中で石畳に足をとられた のは 13 回、完全に転んだのは4回だったと

2

思う。そしてホテルの朝食、基本的にパン

 本研修のテーマに「鉄の起源を辿る」と

とハムとチーズである。種類は豊富で、37

ある。まさしくそのスタートが、「アイアン

通りはサンドイッチが出来上がる。聞こえ

ブリッジ」(写真3)だ。正直そのテーマ自

はいいかもしれないが、しかしこれがどう

体にあまり興味はなかったのだが、それは

も合わなかった。

アイアンブリッジを目の前にするまでの話。

 そんな〈素晴 ら し い!〉研 修 を 各 国 ご と

川を 渡 る、巨 大 な 鉄 の 塊。テ ム ズ 川 の「ミ

 フランク・ゲーリーの新作にして代表作

に振り返ってみる。

レニアムブリッジ」とは比べものにならな

になることが約束された(と思われる)「ル

い、繊細さの欠片も感じさせない橋。しかし、

イ・ヴィトン財団美術館」(写真5)は、今

そこに明らかな人の汗と血を感じた。見た

回の研修で最も感銘を受けた建築だ。ゲー

瞬間ゾワっとしたのだ。物静かな石鍋先生

リーという天才に、時代が、技術が追いつ

のボルテージが上がるのも頷ける、物凄い

いた瞬間に自分は生きているのだと実感さ

〈wonderful!〉

SHUNKEN 2016

 最初に訪れたのはイギリス、巡ったのは 主にロンドン。ロンドンは今回訪れた中で

工業の遺産 であった。石畳で転んだのは、

4

せてくれる。それくらいに施工精度という

一番好きな都市だった。イギリスが日本と

目の前の素晴らしい構築物に目をとられて

意 味 で も、意 匠 的 な 意 味 で も 美 し か っ た。

同じ島国だからなのか、それともまだ決ま

いたときが最初だった。

フロアマップが役に立たないくらい複雑な

Jan.

り切った朝食に嫌気がさしていなかったか

平面計画は、現代アートをこれでもかと活

らなのか、とても居心地がよい。建築とし

かし、「自分はこの作品と対峙するための場

ては、数多くのノーマン・フォスターの建築、

所にいるのだ」と思わせてくれる。深層と

いくつかのザハ・ハディッドの建築やジェー

表層の狭間にある屋上テラスは、この建築

ムズ・スターリングの建築、テート・モダン、

でしか実現しえない場所であるだろう。

アイアンブリッジなどを見て回った。

3 〈magnifique!〉 vol.43 no.4

 次の国フランスまでは、ロンドンからユー ロスターに揺られ移動した。パリで「オル

5

014

セー 美 術 館」や「エ ッ フ ェ ル 塔」と い う 観

 マルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」 (写

 スターリング設計の「ケンブリッジ大学

光名所から、「サヴォア邸」に「ルイ・カレ

真 6)で は、な ん と 幸 運 に もル・コル ビュ

歴史学部棟」(写真1)は圧倒的である。そ

邸」、「ル イ・ヴィ ト ン 財 団 美 術 館」と い う

ジエのオリジナルであるメゾネット・ユニッ

そり立つ煉瓦壁、赤いモダニズムという新

新旧最高峰の建築を見て回り、マルセイユ

トに泊まることができた。オーナーが現在

鮮味。隣に並ぶフォスター設計の同大学「法

では集合住宅といえばの「ユニテ・ダビタ

住んでいる部屋に宿泊したので(私はオー

1


今年度も夏季休暇中に海外研修旅行が2コースに分かれて行われました。総勢 60 名の学生が参加しました。

Report

今回は、A コース、B コースそれぞれの参加学生によるレポートをお届けします。

引率教員:山中新太郎 准教授、石鍋雄一郎 助教 2年/原碧、横堀泰拓 3年/足達一斗、阿部広弥、飯嶋貫太、伊東亮祐、稲庭香歩、井上真 由美、江口美樹、大場麻莉子、鴛海昂、小野瀬綾香、笠原彩菜、川崎有咲、木村隆一、日下部 貴大、黒瀬梨加、櫻井翔太、澤田圭佑、菅野匡晴、成潜魏、髙橋雄仁、竹野水月、戸部舜太、 原口莉於、寳迫嘉乃、松田朱寧、松丸里菜、村松奈菜子、山

由美子、遊佐大智、吉田実環、

吉野寛紀 M2/加藤美樹

ナーの息子が日々使っているベッドで寝た

ルによって性格づけられ、主張しながらも

きと同じ感情である。気が遠くなるほど昔

が、まったくもって心が休まらなかった)、

完璧な調和を保っている。コルビュジエ建

のものがこうして形を風化させながら残っ

教科書で見た図面と生々しい生活像が重な

築で感じた がらんどう な感覚(そこも魅

ているというのは日本ではあまりない。 こ

り合う面白い体験ができた。ユニット内の

力なのだが)はなく、何もなくとも濃い空

れ は 西 洋 の 残 り 方 だ と ハ ッ キ リ 感 じ た。

廊下は何とも狭く、明らかに使いきれてい

間 が そ こ に は あ っ た。「ま さ し く Less is

違和感とノスタルジー、ヨーロッパまで足

ない空間もあったように感じたが、ユニテ

more !」と 盛 り 上 が り、皆 で お そ ろ い の T

を運ばないと体験できない感情だ。

全体を歩き回ったときの都市的体験やそれ

シャツを買い、ミースを称えたのも良い思

らに潜む細やかなデザインにル・コルビュ

い出である。

ジエの偉大さを感じる。その日、マルセイ

 「グッゲンハイム・ビルバオ」は何より同

ユ名物のブイヤベースを食べに出掛け、バ

建 築 家 の「ル イ・ヴィ ト ン 財 団 美 術 館」と

スを追いかけ走ったときに転んだのが石畳

連 続 し て 見 る こ と が で き た の が よ か っ た。

で転ぶ 2 度目の体験であった。

比較して見ると、ビルバオには明らかに施 工に手の痕跡が残っていて、それは汚さに

6

 イタリアではあまり現代建築は見なかった

リアルと格闘をしたのがわかる。もちろん、

が、少ないうちのひとつがザハの「MAXXI」

それでもゲーリーが勝ったことはエントラ

(写真8)で あ る。大 掛 か り な ザ ハ 建 築 を、

ンス・アトリウムに足を踏み入れればすぐ

そしてデコンストラクティビズム建築を体

わかる のだが。そ し て、リ チ ャ ー ド・セ ラ

験したのはこれがはじめてだ。あまりピン

など現代アートの巨匠達の作品を堪能でき

ときていなかったデコンという概念に、ぼ

たのも素晴らしい経験であった。時間ギリ 〈maravillosow!〉

8

も見えてしまう。そして、ゲーリーがマテ

やっと「なるほどな」と思うことができた。

ギリの中で、ジェフ・クーンズの作品を見

「MAXXI」に は 美 術 館 と し て 明 ら か に 何 か が欠如していて、代わりに何かが入れられ

畳で転んだ。3度目。

ている。まるでペースメーカーを入れた人

の思い出はほとんど汗だくである。たくさ

間のような建築。それ以上のことは、よく

んのガウディ建築とサラゴサ万博跡地、「ミ

〈meraviglioso!〉

わからなかった。これは、流動性とかそう いった言葉で片づけていいのだろうか……

ロ美術館」やゲーリーの代表作である「グッ

作「バ ル セ ロ ナ・パヴィ リ オ ン」な ど を 4

いっても、朝ごはんに出るチーズの味より

転んだのが4回目。これで石畳ともおさら

都市に渡り巡った。このときは朝ごはんに

濃い顔のイタリア人男性が「女性に優しく、

ばだ。

食べたいと思えるのがスペイン風オムレツ

男は知ったことか」という姿勢を一貫して

 22 日間の研修は長いようで短く、刺激的

くらいだったけれど、そんな不満をかき消

いたのはアッパレ。建築は、パラーディオ、

で、楽しくて、どこにいてもずっと何か考

すほど濃い建築たちに出会えた。

ブルネレスキ、テラーニ、スカルパの作品

えていた。日本に帰ってきて、英語が通じ

をはじめとし、教科書で見た建築がそこら

ない苛立ちとか、友達がスられたときの顔

中にあった。

とか、添乗員さんの笑い声とか、共に研修

 テ ラ ー ニ の「サ ン テ リ ア 幼 稚 園」は、約

中ずっと感じていたボヤっとした違和感が

80 年前の建築とは思えない作品である。明

残っている。僕は日本人で、行ったのは外

らかに現代建築のエッセンスがそこにあっ

国だ。自らを、自らの国を理解するために。

た。このテラーニの先見の明は、これがファ

そして、この先、一生付き合っていく建築

シズム時代の産物であることをより深い意

を理解するために。この残っている違和感

 「バ ル セ ロ ナ・パヴィ リ オ ン」(写 真 7)

味にしているように思う。

がなんなのかよく考えなければならないと

を直接体験できたことは、建築を学ぶ者と

 「コロッセオ」とフォロロマーノの遺跡群

心に決めたところで、僕は成田空港の綺麗

して大いなる喜びであった。ひしめき合う

は、建築というよりモノとして美しい。フ

な道ですっ転んだ。

建築エレメントたちは、それらのマテリア

ランス で「ル・ト ロ ネ 修 道 院」に 入 っ た と

7

015

と考えながらホテルに向かっているときに

vol.43 no.4

 イタリアは7都市も回った。どの都市に

Jan.

ゲンハイム・ビルバオ」、近代建築の最高傑

SHUNKEN 2016

たくて建物の周りを走ったときにもまた石  情熱の国スペインだけあって、3カ国目


Report

建築学科|2015年度海外研修旅行|レポート

Architectural Study 22日間、 世界遺産の都市と建築を中心に巡る旅 Tour

B

クロアチア∼イタリア∼スイス∼ドイツ∼フランス

ヨーロッパ5カ国巡礼、本物を見る大切さ     T e x t = 中 村 歩 香(3年)

   ーストリア、クロアチア、イタリア、

スに入っているのか疑問に思っていました。

ミラノでは、超高層の集合住宅やオフィス

   ドイツ、フランスの5カ国を訪れた

し か し 旧 市 街 の 統 一 さ れ た 街 並 み を 見 て、

ビルなども見て回りました。数多くの都市

私 た ちBコ ー ス は、世 界 遺 産 の 街 や 遺 跡、

このような景色は他にないと思いました。

を巡ったイタリアでは、それぞれの都市で

大聖堂や宮殿などを中心に見て学びました。

 イタリアでは、この研修の半分を過ごし

大聖堂や教会を多く見ましたが、それぞれ

どの国もそれぞれの都市が異なった特徴を

ました。イタリア最初の日はアルベロベッ

外観のデザインや内部のステンドグラスに

持っており、景色や雰囲気が変わっていく

ロ と マ テ ー ラ の 街 並 み を 見 て 回 り ま し た。

特徴を持っていました。

のも感じられました。

どちらも世界遺産になっており、地域によっ

 ド イ ツ で は、教 会 や 城、現 代 建 築、街 並

 最初に訪れたオーストリアのウィーンで

て住居の材料や形が変わるのだと思いまし

みなどが都市によって大きく異なりました。

は、シ ェ ー ン ブ ル ン 宮 殿 を 見 学 し ま し た。

た。ま た、カ プ リ 島 に 渡 り「青 の 洞 窟」を

中でもローテンブルクは以前から気になっ

建物の裏手には広大な庭園が広がっており、

見学する予定だったのが、波が高く中止に

ていた街だったので、今回訪れることがで

その時代の貴族の暮らしがうかがえました。

なってしまい、カプリ島内を散策しました。

きてよかったです。ネルトリンゲンやロー

その後、ウィーンの街を歩いて建築を巡り

その日の午後には、ポンペイの遺跡の見学

テンブルクは街が全体的に統一されていま

ました。カールスプラッツ駅舎やロースハ

をしました。ヴェスヴィオ山の大噴火で発生

した。

ウスなど、建築史で学んだ建築を実際に見

した火砕流により、ポンペイの住人は一瞬

 最 後 の 国 フ ラ ン ス で は、ヴェ ル サ イ ユ 宮

ることができました。団体研修中は大聖堂

で 生 き 埋 め に さ れ た と い い ま す。そ の 後、

殿、サヴォ ア 邸 な ど を 訪 れ ま し た。写真で

や宮殿を見ることが多かったので、自由研

発掘された建造物や壁画などから当時の暮

は何回も見たことのあるサヴォア邸を実際

修ではオーストリア近代美術館など現代建

らしを学ぶことができました。

に 見 る こ と が で き、と て も よ か っ た で す。

築を中心に見て回りました。

 ローマでは、バチカン博物館やサン・ピ

実際に見ると配色などに驚きました。改め

 次に訪れたクロアチアのドブロヴニクで

エトロ大聖堂、コロッセオなどに行きまし

て建築を勉強する上で、本物を見に行くこ

は、旧市街の街並みを見て回りました。私は、

た。ローマの街には広場が多く点在してお

との大切さを実感しました。

実際に到着するまでなぜクロアチアがコー

り、人々が憩う場として使われていました。

SHUNKEN 2016 02 ドブロヴニク旧市街 8/8

03 マラ・ブラーチャ薬局(ドブロヴニク)8/8

04 トゥルーリ(アルベロベッロ)8/10

0

09 サン・ピエトロ大聖堂(バチカン市国)8/13

10 ドゥオーモ広場と斜塔(ピサ)8/16

11 ピサの斜塔頂上にて 8/16

12 フィレンツェの街並み 8/16

1

17ヴァーチカル・フォレスト(ミラノ)8/18

18 ミュンヘン市庁舎 8/20

19ヴィース教会(フュッセン近郊)8/20

20ヴェルサイユ宮殿での集合写真 8/22

Jan.

01 シェーンブルン宮殿の庭園 8/6

vol.43 no.4 016


Report

引率教員:宇於

勝也 准教授、山田雅一 准教授

3年/井上涼太、尾辻孝典、加藤舜也、小疇美波、五味晃大、佐々木麗、菅野義久、田井孝 典、鷹巣飛鳥、高橋広、坪井恒太郎、中嶋一仁、仲辻真理、中村歩香、中村直、長塚咲乃、長 谷川優花、平方李果、増田俊、三上貴史、村岡祐美、山本美咲、横山大貴、吉田明佑微、吉野 航平、渡邊和哉、渡辺紗也加

海外とのギャップから得られた多くの学び   Tex t = 清 水 亮 輔 ( 3 年 )

   回の約3週間の海外研修は、私にとっ

ハディッド設計の国立 21 世紀美術館(ロー

 お金と時間はかかりましたが、良き友も

   て海外の建築物、都市の魅力を感じ

マ・2010)、ピ ア ノ+ロ ジ ャ ー ス 設 計 の ポ

で き、そ の 価 値 以 上 の 経 験 が で き た の で、

るとともに、日本の素晴らしさも再確認で

ンピドゥー・センター(パリ・1977)など、

今回、この海外研修旅行に参加できてよかっ

きたものとなりました。

多くの近現代建築も見てきました。これら

たです。

 遺跡、教会、大聖堂など世界遺産を巡る

は目から受けた刺激が強く、衝撃的なデザ

コンセプトの旅行であったため、その都市

インで、それぞれがその都市において異彩

で起こったことの歴史を感じられる建物を

を放っていました。本などで見るだけでは

多く見てきました。人々が何を思ってどの

できない空間体験として貴重な時間を過ご

ような経緯でこの建物を建てたのか。その

すことができ、感動しました。

時代、その場所には、資源の豊富な材料や

 海外(ヨーロッパ)で生活して思った日

天候の違いにおける特色など数多くの要因

本とのギャップは多くあり、海外では水を

があって、必要に応じて建物のかたちが変

購入して飲むのがあたり前、コンビニなど

化していきました。数多くの歴史を現地の

の 24 時間営業はなく、店も早く閉まってし

ガイドさんからうかがい、ただ人が住むた

まうため、夜の買い出しが困難、食事はお

め、利用するためだけではない、あらゆる

いしいがレパートリーが少ない、トイレの

象徴で あった「建 造物」という存在 を、こ

設備が不十分など、日本と比べて不便に感

の目、この肌で確認し、感じ取れたことは

じたことは他にももっとありますが、特に

日本にいるだけではできない大きな財産と

トイレについては日本の設備の進み具合は

なりました。

素晴らしいものであると思いました。衛生

 また一方、ジャン・ヌーベル設計のカル

設 備 は 建 築 学 科 だ っ て 携 わ っ て い る の で、

ティエ現代美術財団(パリ・1994)、ザハ・

他人事ではないように思います。

SHUNKEN 2016

06 洞窟住居(マテーラ)8/10

07 ポンペイでの集合写真 8/11

08 フォロ・ロマーノ(ローマ)8/12

13 サンマルコ大聖堂(ヴェネチア)8/16

14 ゴンドラに乗船(ヴェネチア)8/16

15 大聖堂(ミラノ)8/18

16 大聖堂の前でAコース学生と対面 8/18

21 ルイ・ヴィトン財団美術館(パリ)8/23

22 フィルハーモニー・ド・パリ(パリ)8/23

23 ルーヴル美術館 8/23

24 パリの街並み 8/23

Jan.

05 アルベロベッロでの集合写真 8/10

vol.43 no.4 017


Report

Report1 アーキニアリング・デザイン凱旋展

模型で楽しむ世界の建築

(2012)に続いて企画された中国巡回展が、2014 年秋から5都市で開 催された。すなわち上海(同済大学、2014.10 ∼)を皮切りに、広州(華

- AND 凱旋展 in 日本大学 CST

南理工大学、2014.12 ∼)、武漢(華中科技大学、2015.3 ∼)、南京(東

te x t= 斎藤公男 名誉教授

南 大 学&南 京 大 学、2015.4 ∼)、北 京(中 国 建 築 設 計 院、2015.6 ∼) である。いずれの会場も大盛況であり、両国のパネリストが出席した

   本建築学会(AIJ)主催のアーキニアリング・デザイン(AND)

終日のフォーラムには満員の学生達が詰めかけた。図らずも日中共催

   展が企画されたのは今から8年程前の 2007 年。約1年の準備を

の国際的 AND 展となり、政治とは別の文化交流が建築を通じて実現し

経て、建築会館での展覧会がスタートした。120 余点の模型は全国の

たといえよう。

大学が制作したが、その内7割近い作品は本学の建築学科の学生たち

 そして今年 8 月、広い中国をかけめぐった展示作品群は、無事、日

によるものであり、いよいよ学会の総力を結集した一大イベントが動

本に帰還した。AND 展を支えてくれた少数精鋭の実施メンバーや大勢

き出した。

の学生たち。その苦労もさることながら、紙や木で制作された約 100

 全国巡回展(AIJ 9 支部)を終えた 2011 年秋、UIA(世界建築家会議)

点の「模型達」の疲れ(痛み)もさぞかしと推察される。ということで、

東京大会に請われた AND 展 in 丸ビル・マルキューブ。会場の素晴らし

当初から念願であった日本大学理工学部との共催の形で「お疲れ・凱

さもあり、子供たちや市民で会場は溢れた。そして、UIA に参加した建

旋展 in CST」 (2015 年 11 月 16 日(月)∼2016 年 1 月 27 日(水))が、 「お

築 家 な ど か ら は 海 外 展 を 是 非 に、と の 声 が あ が っ た。台 湾 巡 回 展

茶の水校舎」のエントランスホールで開催されることになった。

SHUNKEN 2016

AND 巡回展の開催会場 MAP。思えばずい分長い道のりだ。全行程を何とか

コンパクトに箱詰めされた模型を取り出し、会場設営を手伝う上海・同済

無事遂行できたのは、ワーキンググループの中心となった広田生産工教授、

大学の学生達。次々現れる模型に歓声があがる。日本からも、理工建築の

佐藤慎也准教授、宮里准教授、各先生方のおかげである。

大学院生・学生がサポート隊として現地へ飛んでくれた。

Report2 オープンラボ2015

研究室を開放! Jan.

オープンラボ3年振りの実施 te x t= 山崎誠子 短大准教授

20

所属学生が説明するタイプ(佐藤光彦研など)、先生と所属学生が一 緒に説明するタイプ(矢代・高安・山

研)の3つがあった。研究室

内は、普段のそのままを見せる方法(田所研など)、実験装置を並べ て説明する方法(羽入・星・吉野研など)、研究論文をパネルで見せ

vol.43 no.4

    15 年 10 月 3 日(土)の午前 10 時から午後3時まで、駿河台

る方法(古澤研)、ビデオ上映をする方法(井上・冨田研)があった。

    5号館の各研究室において、3年ぶりにオープンラボを行っ

 学生が入りやすいように、扉部分に先生の等身大の写真を設置(佐

た。オープンラボは、日頃は閉めている研究室の扉を開放し、研究室

藤光彦研)したのが学生にとても好評だった。今年の特徴は、普段は

内の様子と研究室の活動を建築学科に在籍する1∼3年生や、理工学

船橋キャンパスにいる建築学科の1年生や建築学科に編入が決まった

部建築学科に進学したい高校生などにむけて紹介するイベントであ

短大の2年生が多く訪れたことと、船橋キャンパスに研究室がある短

る。

大の研究室も参加したことで、駿河台キャンパスや先輩達の雰囲気、

 紹介の仕方にフォーマットはなく、研究室独自の方法で行ってよい。

建築学科の学生にあまりなじみのない研究室の活動を知るよい機会に

今年は、先生が研究室の活動を直接説明するタイプ(佐藤慎也研など)、

なったようである。

018


Report

 そもそもAND展構想のきっかけは、2005年秋に起きた「姉歯事件(耐

やりたいこと(イメージ)をどのように具現化するかというベクトルと、

震強度偽装事件)」である。その2年後、私が日本建築学会会長(50 代)

できること・つくれるものあるいは潜在的テクノロジーの合理性・可

になったとき、失われた建築界の社会的信頼を取り戻すひとつのアク

能性をどう魅力あるカタチに統合し得るかというベクトルである。想

ションとして、建築の魅力と役割を建築界で共有し、市民へ伝えるべ

像力と実現力とは、個人(建築家・技術者)あるいは両者の協同の中

く発案された企画であった。世界遺産から最新作などの建築や橋梁、

で激しく交差する。プロジェクトの大小や形態にかかわらず、そこに

住まいから都市、超高層や大空間、構造だけでなく環境などのテーマ

生まれるさまざまな「物語」。AND 展はその舞台といえる。

を持つ傑作・名作・話題作など、自分で実際に見て確かめたものを主

 今回の凱旋展は、中国巡回展に加えいくつかの新しい話題作を加え

に選ぶことにした。模型制作の主役は学生諸君。隠された仕組みや仕

てみた。そのひとつが(旧) 「新国立競技場」。今年の夏、突然 白紙撤回

掛けをどう見せ、どうつくるか。中々の難題であり、試行錯誤の結果、

となった壮大な国家プロジェクトは幻となったが、ザハ・ハディッド

やっとひとつの作品が完成する。ときには実際の設計者と議論しなが

氏の未来的姿形は印象深い。本来建築界が応えるべき多くの課題を残

ら、「学習しながらつくること」それ自体が体験型イベントとなった。

したまま次なるステップへと移行しつつあるのが現状である。神宮外

 ところで、アーキニアリング・デザインとは何か、である。エンジ

苑ではなく東京湾に置かれたここでの「模型」は伝えようとしている。

ニアリング・デザインとアーキテクチャーとの融合・触発・統合の様

「新国立問題」を風化させてはならない、と。 「建築のデザイン」とは何か。

相を強く意識しようとする Archi-Neering Design(AND)には「二つ

「設計と生産」はどう関わったらよいのか。そういった AND 展からのメ

のベクトル」というコンセプトが底流している。つまり、求めるもの・

ッセージを君はどう受けとめ、考えるだろうか。

広いエントランスホールを埋めつくした

突然、白紙撤回になった ( 旧 )「新国立競技場」の模型。近くには世界遺産となった「シド

校舎」。街頭看板が市民に「模型で楽しむ世界の

古今東西の建築模型群。普段は暗い空間

ニー・オペラハウス」や、50 年前の東京オリンピックで脚光を浴びた「国立代々木競技

建築」展を PRしている。

からは想像もできない活気が溢れている。

場」の模型が並んでいる。

SHUNKEN 2016

凱旋展 inCST の会場となった日本大学「お茶の水

Jan. vol.43 no.4

田所研究室。

佐藤光彦研究室。

019


Report

Report3 第12回お茶の水アートピクニック

千代田区の子どもたちと

域の方々ならびに後援・協力をしていただいた本学部建築学

まちなかでワークショップを実施 te x t= 川崎容楊(M 1/ 佐藤光彦研)

科の先生方にはたいへん感謝しています。  2日目の 11 日は、早朝の降雨のため中止となってしまい 実施できなかったのですが、初日の 10 日は延べ 200 人以上

    12 回 お 茶 の 水 ア ー ト ピ ク ニ ッ ク(主 催:お 茶 の 水

の親子が参加し大変賑わい、素敵な木にしてもらいました。

    茗溪通り会)が、2015 年 10 月 10 日(土)、11 日(日)

実際に行い、私たちが予測していた高学年の児童から幼児、

に JR 御茶ノ水駅前の茗溪通り、仲通り、紅梅通りを中心に

発達障害の児童、誰もが参加できるワークショップであるこ

開催され、そこに建築学専攻大学院1年生の川田実可子さん

とが確認できたことは大きな収穫でした。また、当日に手伝

(古澤研)、中辻千尋さん(今村研)、石川卓実さん(山

研)、

ってもらった建築学科の 1 年生に、「楽しかった、こうした

建築学科3年生の赤城侑真さんと私の5名のグループで子供

機会がまたあれば教えてほしい」と積極的な声をかけてもら

向け建築ワークショップ「まちの中から実ぃ∼つけた !!」を

えたことで、当日の運営スタッフにも学びの場が提供できた

実施しました(ワークショップの企画・運営協力には、建築

のではないかと思います。地域活動は 1 人ではできることで

学 科 卒 業 生 の 中 田 弾 さ ん(一 般 社 団 法 人 D&A Networks 代

はないので、ぜひ、多くの後輩に一緒に地域の場に出てほし

表理事)が参加)。子供たちにまちなかにある身の回りの模

いです。

様を探してもらい、フロッタージュという手法で模様を写し

 まだ来年度の予定は決まってはいませんが、来年度も今年

取って「実」をつくり、段ボールで作成した木に取り付け、

度と同様、こうした機会があれば積極的に参加したいと思い

それを発表するという子供たちの主体性を育むワークショッ

ます。

プです。  私たちは以前より授業外で地域に出て、千代田区内の小学 生対象でワークショップを行ってきました。この企画自体は 第5回子どものまち・いえワークショップ提案コンペ(主催: 日本建築学会)にて提案したものです。提案コンペには落選 してしまったのですが、以前よりお世話になっている地域の SHUNKEN 2016

方に声をかけていただき、実施する機会を得ることができま した。機会をくださったアートピクニック関係者の方々、地

New s & T opic s

Jan. vol.43 no.4

1|第 31 回 2015 釜山国際建築大展において建築学専攻1年生の中辻千

2|建築新人戦 2015 において建築学科3年の成潜魏さんが8選に選出

尋さんが金賞を受賞

 「建 築 新 人 戦 2015」(主 催:建 築 新 人 戦 2015 実 行 委 員 会)に お い て、

 「第 31 回 2015 釜山国際建築大展(国際アイデアコンペティション)」 (主

建築学科3年生の成潜魏さんによる作品「浮遊する森」(3年前期「建築

催:韓国建築家協会釜山建築家会+日本建築家協会近畿支部)において、

設 計Ⅳ」の 課 題「南 青 山 コ ン プ レ ッ ク ス」)(下 写 真)が 8 選(第 5 位)

建築学専攻1年生の中辻千尋さん(今村研)による作品「Yanaka's way

に選出された。これは大学などの教育機関で取り組まれた設計課題作品

and string of home」が 金 賞 を 受 賞 し た。韓 国・釜 山 市 で 1 次 審 査、2

を対象にするコンテストで、本年が7年目。応募総数は 577 作品で、最

次審査が行われ、1次提出作品 202 点から3次審査8名に進んだ日本人

優秀新人賞1名、優秀新人賞3名に次ぐ選出となった。なお、BEST100

2名、中国人2名、韓国人4名の中で大賞1名(中国人)に次ぐ金賞2

には、3年生の赤城侑真さん、2年生の松田麻未さんも選ばれている。

名に選ばれた。

020


3|第 50 回地盤工学研究発表会において建築学専攻2年生の宮澤翔さん

8|第1回修士課程学生プロポーザル・デザイン・コンペティションに

が優秀論文発表者賞を受賞

おいて今村研究室チームが優秀賞を受賞

 「第 50 回地盤工学研究発表会」(主催:公益社団法人地盤工学会)にお

 「第1回修士課程学生プロポーザル・デザイン・コンペティション」 (主

いて、建築学専攻2年生の宮澤翔さん(地盤基礎研)が、研究論文「累

催:修士課程学生プロポーザル・デザイン・コンペティション実行委員

積塑性ひずみエネルギーを用いた液状化による沈下量の検討」の発表に

会+株 式 会 社 総 合 資 格)に お い て、今 村 研 究 室 チ ー ム(土 屋 伸 吾 さ ん、

よって、「地盤防災地震液状化」セッションの「優秀論文発表者賞」を受

清水亮輔さん、小関真子さん、中辻千尋さん、佐藤累さん、奈良橋佳洋さん、

賞した。各セッションの座長から推薦された 35 歳以下の発表者が対象と

波多腰渉さん(建築学専攻1年生))による作品「呼吸するメトロポリス

なり、今回は 149 名が受賞した。

 減 算 的 手 法 に よ る 広 場 と ネ ッ ト ワ ー ク の 創 出」が 優 秀 賞 を 受 賞 し た。

News & Topics

N ew s & T opic s

優秀賞は最優秀賞に次ぐ第2位で、今回の応募総数は 10 点であった。 4|2015 年度日本建築学会大会学術講演会において建築学専攻1年生の 笹田寛さんが基礎構造部門若手優秀発表者に選出  「2015 年度日本建築学会大会学術講演会」(主催:一般社団法人日本建 築 学 会)に お い て、建 築 学 専 攻 1 年 生 の 笹 田 寛 さ ん(地 盤 基 礎 研)が、 研究論文「グルコン酸系分散剤による地盤改良体の品質改善に関する研 究室内配合試験に基づく強度のばらつき検討」の発表によって、「基礎構 造部門若手優秀発表者」に選出された。これは日本建築学会年次大会の 基礎構造に関するセッションで優れた発表を行った 30 歳未満の学生・社

9|二瓶士門助手がディレクターを務める「マンションのランニングコ

機能と余白の家

概要

敷  地:東京近郊

会人・研究者を対象とするもので、今年度は5名が選出された。

住宅

敷地面積:198 ㎡

8m

用途地域:第一種低層住居

ストの見える化 」がグッドデザイン・未来づくりデザイン賞を受賞

生活必要最低限のコアに生活を豊かにする余白と多数の用途を持つ庇が巻き付くことで無数の繋がり

     専用地域 建ぺい率 :141.4 ㎡

コミュニティセンター

が生まれる住宅を設計した。機能同士や植物・動物などあらゆるものの繋がりが生まれる住宅である。

容 積 率:84.94 ㎡

  13m

綺麗な花が咲く植物

 二瓶士門助手がディレクターを務める「マンションのランニングコス 住宅

道路

機能と余白の家

7m

  8.5m

歩道

5|住宅課題賞 2015 において建築学科2年の伊勢萌乃さんが審査員賞を受

トの見える化(業界初のマンションにおける環境性能を住戸ごとのラン 乾燥に強い植物

日陰に強い植物

道路 㹌

ニングコストで表す『新しい評価軸による見える化』と社内ものづくり

屋根伏せ配置図と植物分布 1/200

集合住宅

2階 キッチンからダイニング、リビングへと拡張することで家族の繋がりが深まる。

1 階 イベントスペースに地域の人が集まる。シンボルツリーはヤマボウシ。

 15m

 「住宅課題賞 2015」(主催:東京建築士会)において、建築学科2年生

改革システム)」が、2015 年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人 テラス

勉強スペース

母の部屋 姉の部屋

コミュニティセンター

トイレ 洗面所

キッチン

ダイニング

住宅

お花屋さん 玄関

の伊勢萌乃さんによる作品「機能と余白の家」 (「建築設計Ⅱ」第2課題「住

日本デザイン振興会)の「グッドデザイン・未来づくりデザイン賞(経 断面図 1/200

ダイアグラム

社会

家具・収納

まち 拡張

宅」優秀作品) ( 下写真)が「審査員賞:木島賞」を受賞した。 「 住宅課題賞」は、

趣味のスペース

引き込む

済産業省商務情報政策局長賞)」を受賞した。二瓶助手は、環境性能の評価、 ベッドルーム

引き込む

機能

拡張

キッチン

花屋

   商売

イベントスペース

機能 拡張

余白

ダイニング

テラス

引き込む

テラス 下は主に父の趣味スペース。上は多目的に使えるテラス。

余白があることで機能が拡張されより豊かな空間が生まれる。

    吹き抜けになっていることで間接的に繋がる。

さらに庇があることで周りを引き込むことができ、無数の繋がりが生まれる。

建築系大学 37 大学 48 学科より、設計製図科目の住宅課題の優秀作品を各 3階 本→パソコン→勉強スペースと隣同士の関係も考えることでモノ同士も繋がる。

新たな軸の提案などシステムを主体的につくりあげた。

仕事スペースに販売やイベントスペースを足すことで

水回りに家族団欒できるスペースを足すことで

個々のベッドルームから

地域の人と繋がれる空間。

家族の繋がりが深められる空間。

お互いの趣味やモノ同士が繋がる空間。

校から1作品ずつ推薦し、公開審査により賞を決定するもの。植田実審

自然・植物

サルスベリ

イベントスペース

GL +1400

傘立て

タンス テラス

GL +3400

リビング

靴箱

洗面所

GL +200

母の部屋

リラックススペース 畳

GL +1600

花屋さん

10|根上彰生教授、宇於

トイレ

テラス

玄関

舞台

情報

GL +4800

キッチン

タンス

ナツミカン

1階平面図 1/100

幅のダイアグラム

2階平面図 1/100

3階平面図 1/100

 根上彰生教授、宇於崎勝也准教授がアドバイザーを務める、千葉県船

階段側にある窓。

朝早く夜遅いため一番2階に近い位置。

階段にいい匂いを漂わせる。 靴を履くとき椅子に座った視線から

みんなのことを見ながら降りれる。

主に父の晩酌、盆栽ブースとして使用。

バス キッチン

空と木が見えて気持ちのいい空間。 傘立て

GL +5600

ティ自治会」がグッドデザイン賞を受賞

GL +3200

花屋さん

勝也准教授がアドバイザーを務める「森のシ

弟の部屋 GL +5800

ダイニング 植物に囲まれた空間

GL ±0

ソヨゴ

姉の部屋

父の部屋

バス

歩道

秀賞」3点と「審査員賞」5点が選ばれた。

GL +5800

デスク

GL +3200

査員長、建築家の木島千嘉さんほか4名の審査員による審査の結果、「優 ヤマボウシ

父 洗面所 所

靴箱

本が収納できる。

トイレ トイ イレ イ

リラックススペース

玄関 ダイニング

植物を観賞できる を観賞できる。 植物を観賞できる。

サルスベリ:ピンクの可愛い花が咲く。

植物を買える。

ソヨゴ:常用樹

パソコン

勉強

ガラス

リビング 本

趣味のテラス

タンス ス

花のショーウィンドウ

イベントスペース

趣味の場所として使える。

橋市の「ふなばし森のシティ」における住民と企業の協働組織「森のシティ 弟

自治会」が、2015 年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザ 母・姉共通の収納スペース。

ヤマボウシ:赤い木の実がなる。       2階から観賞するのに最適な木。

服の貸し借りができる。

ナツミカン:香りがいい

道路

姉と弟の部屋の近くに勉強スペースを

住宅

住宅

集合住宅

イン振興会)を受賞した。住民によるサスティナブルなコミュニティ育 設けることで使いやすくなる。

コミュニティセンター

父・弟の収納スペース。

鳥もやってくる。

道路を歩いている人も香りを楽しめる。

地域の人が集まれる空間。

母の動線

弟の動線

姉の動線

父の動線

成のためのプラットフォームとして、自治会が受賞対象となった。根上

座れる高さに設定。 寝っ転がりながらでも本が読める。

机にできる高さ。

教授と宇於

420

700

机や収納棚の庇

1100

趣味のテラス

高さのある階段

鳥もやってくる。 よく使うコートやバッグ、帽子が飾ってある壁。

准教授は、街づくり協議会設立以前の 2012 年から、本地域

リラックススペース

観賞としての植物

のコミュニティ形成活動のアドバイザーを務めている。

敷地全体が花屋さん

ショーウィンドウ階段 テラスの庇

売り物としての植物

収納棚の庇 座れる階段

コケ栽培 イベントスペース

誰でも入ってこれる。

子供も安心して遊ばせられる。

11|古澤大輔助教が「2015 年度 JIA 優秀建築選」に選出

 10 月 24 日(土)、25 日(日)に西久保コミュニティセンターで開催さ

井/モビリティステーション東小金井」が、 「2015年度JIA優秀建築選」 (主

れた「西久保コミセンふれあいまつり」(主催:西久保コミュニティ協議

催:公益社団法人日本建築家協会)に選出された。なお、横河健特任教

会(武蔵野市))において、建築学科3年生の井上真由美さんと横山大貴

授 の「3x3CUBE(サ ザ ン キ ュ ー ブ)・椎 名 町」お よ び「早 坂 邸・多 面 体

さんの設計作品が展示された。昨年度から2年生「建築設計Ⅲ」では、 「西

那須塩原」、山梨知彦非常勤講師と羽鳥達也非常勤講師などの「桐朋学園

久保コミュニティセンターの建て替え」をテーマとして設計に取り組ん

大学調布キャンパス」、羽鳥達也非常勤講師などの「東京藝術大学音楽部

でいる。

第6ホール改修」も選ばれている。

7|千代田区を舞台にした学生設計展 2015 において4年生の3作品が展示

12|中島肇教授が「世界構造技術者会議 2015」にて原著論文を発表

発表

 中 島 肇 教 授 は、元 勤 務 先 の 研 究 者 と 連 名 で 原 著 論 文 Design and

 「千代田区を舞台にした学生設計展 2015」(主催:公益社団法人日本建

Construction of Large Glass Box Façade Supported by Tension Struc-

築 家 協 会、後 援:千 代 田 区)が、11 月 19 日(木)か ら 21 日(土)に、

tures with Stainless Steel Special-Shaped Frame Profiles(ス テ ン レ ス

千代田区役所区民ホールにて開催された。そこに、4年生の野下啓太さ

鋼のテンション構造に支持されたガラス・ボックス・ファサードの設計

ん(今村研)による作品「知の縦列」、太田みづきさん(今村研)による

と 施 工 に 関 す る 研 究) を SEWC 2015(5th STRUCTURAL ENGINEERS

作品「にぎわい坂」、稲葉来美さん(佐藤光彦研)による作品「400 年の

WORLD CONGRESS 2015(第 5 回 世 界 構 造 技 術 者 会 議 2015)に て 発 表

時を繋ぐ道」が展示された。

した。

021

同)の「中央線高架下プロジェクト コミュニティステーション東小金

vol.43 no.4

 古澤大輔助教(籾山真人氏/株式会社リライトデベロップメントと共

の井上真由美さんと横山大貴さんの作品を展示

Jan.

6|武蔵野市「西久保コミセンふれあいまつり」において建築学科3年

SHUNKEN 2016

高さのダイアグラム

服やおもちゃが収納されている。


Architecture & Me

[ 連 載 ] 私と建 築

白井伸明(しらい・のぶあき)

vol.82

昭和 45 年3月日本大学理工学部建築学科卒業。昭和 47 年9

「ようやく見つけた私のライフワーク」

月スタンフォード大学大学院 修士課程修了。昭和 48 年4月∼ 昭和 62 年3月 日本大学理工部建築学科助手。昭和 61 年 11 月 工学博士(日本大学)。平成 9 年 4 月∼現在 日本大学理工部建 築学科教授。

    学に奉職して43年、間もなく定年を迎える。近頃、     自身の足跡を振り返ることが多くなった。  学生時代はまず「デザイン」に興味を持ったが、課題提 出のたびに夢敗れた。幸い、故・齋藤謙次先生(第5代理 工学部長)の著書『構造力学』は興味を持って勉強するこ とができた。本書は分かりやすく、私を力学分野に導いた ソースと思っている。  3年生の6月頃から約1年強にわたり不幸な時期(学園 紛争)が続いた。振り返ると、この時期は私の将来を変え た重大な転換期であったと言える。昼はアルバイトをし、 夕方からは英会話を学んだ。これは故・小林文次先生によ る「近代建築史」の講義が英語で行われ、全く理解できず ショックを受けたことが背景であろう。ほとんど専門知識 を身につけないまま 4 年生になり、 「極限解析」というキー ワードに惹かれて、故・小野新先生による卒業研究の指導 を仰いだ。

日本万国博覧会。

 卒業間際の 1970 年3月、岡本太郎作「太陽の塔」で知 られている「日本万国博覧会」が大阪で開催された。さま ざまな工夫を凝らし、建築的に魅力的なパビリオンが建ち 並び、異なる言語の人々が集う会場は極めてダイナミック で、私にとってあまりにも刺激的であった。  ある日のお昼時、会場内のあるレストランで年配のカナ ダ人男性と知り合った。午後はカナダ館を皮切りに各国の SHUNKEN 2016

パビリオンを一緒に見て回った。英語による会話が精一杯 で、パビリオンの中身はあまり覚えていない。その日の別 れ際。彼の最後のメッセージは「若いうちに世界を見てお きなさい」であった。この一言が私に米国への留学を決意 させた。幸い、スタンフォード大学の大学院に入学するこ とができた。

Jan.

 大学院での2年弱は本当に苦労したが、なんとか修士号

スタンフォード大学。

を得た。その後、本学建築学科の助手として復帰し、教育者・ 研究者の道を歩むことになった。1980 年の「新耐震設計 法」の施行に伴い、「既存不適格建物」の耐震診断・補強 の促進が進められてきた。RC 造の耐震問題を研究してい る私が受けた最大の衝撃は、1995 年の「兵庫県南部地震」

vol.43 no.4

による災害であった。つまり、旧基準と新基準による建物 の被害状況が顕在化したのである。人間が年をとり老化す るように、建物も経年変化し、その性能(耐久性や耐震性) が低下する。建物を安心・安全に機能させるためには、時 期を選んで診断し、経済的にリハビリテーション(補修・ 補強)を行う必要がある。この概念がライフサイクルマネー

022

ジメントであり、これが私のライフワークとなった。

兵庫県南部地震における被害。


Contents

Contents 02

[SPE CI A L F E A T UR E]

設計課題の今 「ラー ニ ン グ ・ ア ー キ テ ク チ ャ ー 2 0 1 5 | 建 築 、 学 び の 冒 険 大学の 建 築 設 計 課 題 の 動 向 展 」 を 見 て 学生 × 教育 スペシャル座談会 特集レポート1 日大理工設計課題の今 特集レポート2 スーパージュリーという試みの先に

14

[ R EP OR T ] 2015 年度海外研修旅行レポート アーキニアリング・デザイン凱旋展 オープンラボ 2015 第 12 回お茶の水アートピクニック

21

[ N EWS & T OP I C S ] ・第 31 回 2015 釜山国際建築大展において建築学専攻1年生の中辻千尋さんが金賞を受賞 ・建築新人戦 2015 において建築学科3年の成潜魏さんが8選に選出 ・第 50 回地盤工学研究発表会において建築学専攻2年生の宮澤翔さんが優秀論文発表者賞を受賞 ・2015 年度日本建築学会大会学術講演会において建築学専攻1年生の笹田寛さんが基礎構造部門若手優秀発表者に 選出 ・住宅課題賞 2015 において建築学科2年の伊勢萌乃さんが審査員賞を受賞 ・二瓶 士 門 助 手 が デ ィ レ ク タ ー を 務 める「マンションのランニングコストの見える化 」がグッドデザイン・未来づ SHUNKEN 2016

くりデザイン賞を受賞 ほか

22

[ Ar ch it ec ture & Me ] v ol. 82 ようやく見つけた私のライフワーク (白井伸明)

24

Jan.

[ E VE NT R EVIEW ] m os aki の イ ベ ン ト 巡 礼 v o l .1 5 建 築 家 フ ラ ン ク ・ ゲ ー リ ー 展 I Have an Id ea

SHUNKEN

2 0 1 6 J a n . V ol . 4 3 N o . 4 発行日:2016 年 1 月 10 日 発行人:中田善久 編集委員:宇於

勝也・佐藤慎也・井口雅登・長岡篤・古澤大輔・宮田敦典・山

誠子・廣石秀造

vol.43 no.4

「駿建」

編 集 ・ ア ー ト デ ィ レ ク シ ョ ン : 大 西 正 紀 + 田 中 元 子 / m o s a ki 発行:東京都千代田区神田駿河台 1-8-14 日本大学理工学部建築学科教室 T E L : 0 3 (3 2 5 9)0 7 2 4

※ ご 意 見 、 ご 感 想 は 右 記 メ ー ル ア ド レ ス ま で < s h u n ke n @a rc h . c s t. n i h o n - u . a c . j p>

023

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Event Review / Recommend

event review

いって思えるものだけではなかったよね。そんな中

はじまって、どう試行錯誤され、どうフィニッシュ

でゲーリーも、カタチだけで我が道を突っ走ってる

するか、模型とキャプションで順を追っていって。

ように見えたんじゃないかな。カタチ以外のことを

♠ 結構単純なボリューム操作からスタートするんだ

伝えるメディアが少なかったせいじゃないかって気

な、って当然のようなことが新鮮だった。やっぱり

もするけどね。

ゲーリーの建築って、ああいうカタチであることが、

♥ それにしても、今、敢えてのゲーリー展っていう

最初から決め打ちみたいに見えるじゃない。そのく

のが、アツいよね。新国立競技場の問題を見ていて

らいの完成度なんだもの。

も、カタチに特徴のある建築は悪い建築だって風潮

♥ ゲーリーの鬼気迫るプロセスを、ちゃんと展示と

じゃない? そんなときにゲーリーを持ってきた

して楽しく見せることに成功していた、この会場構

かって。それだけでも痛快。

成には、とにかく感動した! 最初の展示室からし

♥ フランク・ゲーリー、私大好き! でもそう話す

♠ 今回の展覧会ディレクターである建築家の田根剛

て、すごい迫力の映像。ただ建物を撮ったのではな

と、なんだか趣味が悪いって思われているような感

さんが書いていた会場の冒頭挨拶は、その辺のこと

く、空間を体験させるようなものだったし、会場の

じがしていた。どの作品も、一目でゲーリーだって

をわかった上での強いメッセージだと感じたよ。そ

使いづらそうな壁面すら、上手に活かしていて。

わかるわけだけど、そういう署名されたような作

うじゃない、ゲーリーは思いつきや閃きなんかで建

♠ 田根さんたちは会場構成もやっているけど、彼ら

品って、あまり好まれない場面が多い気がするのね。

築つくるひとじゃないんだ、ってね。

の建築の作風を出すとかいうんじゃなくて、何をど

表層的でデコラティブで、ワンパターンってイメー

♥ そのメッセージは展覧会全編に行き渡っていたよ

う展示すると、どんなことがどう伝わるのか、とい

ジなのかなあ。

ね。まずゲーリーの人となりからはじまって、アイ

う目に見えない部分が緻密に設計されていて、本当

♠ 80 年代から 90 年代にかけてのポストモダンブー

スホッケー選手だった頃のユニホームまで飾って

に高度な会場に仕上がっていた。これぞ建築家が

ムって、モダニズムと違って多くの人がカッコい

あって。メインの展示室では、プロジェクトがどう

やって意味のある会場構成だよね。

m o s a k i の イ ベ ン ト 巡礼 vol. 1 5

建築家 フランク・ゲーリー展 I Have an Idea 会 場:2 1 _2 1 DESI GN SI GH T 2015 年1 0 月1 6 日( 金) 2 016年2月7日(日)

閃き一発?なワケないだろ!

展示の冒頭は壁面いっぱいにゲーリーの作品が

ゲ ー リ ー の 根 源 を 感 じ 取 れ る、生 い 立 ち か ら プ

メ イ ン 展 示 室。作 品 が つ く ら れ る 詳 細 な プ ロ セ

形 の 操 作 は、さ ま ざ ま な 条 件 を 適 切 に 解 く た め

映し出され、疑似体験ができる。

ライベート、初期作までがまとめられた展示室。

スが、作品ごとに展示されている。

のひとつの要素だということが伝わってくる。

Recommend ¦ 2016 年 1 月 -

3月

【1】 「フォスター+パートナーズ展:都市と建築のイノベーション」|六本木ヒルズ展望台 東京シティ

[ 編集後記 ] 今回の特集では、「駿建」がリニューアルしてから

SHUNKEN 2016

ビュー内スカイギャラリー|

はじめての試みとして、在学生の皆さんと先生が

会期:2016 年 1 月 1 日(金・祝)∼ 2016 年 2 月 14 日(日)

一緒になって学外へ出てみました。訪ねたのは六

半世紀にわたり、世界 45 カ国で 300 のプロジェクトを遂行してきた国際的な建築設計組織、フォスター+

本木ミッドタウン内にあるデザインハブで行われ

パートナーズの設計活動を総合的に紹介する日本初の展覧会。ロンドン市民にガーキンの愛称で親しまれ

ていた設計課題に関する展覧会。並べられた 11 も

る「スイス・リ本社ビル」やベルリンの「ドイツ連邦議会新議事堂 ライヒスターク」など、各都市のランドマー

の大学の作品をじっくりと見てからカフェに移動

クとなる現代建築史上の名作から、建設中のアップル新社屋や月面の砂を素材に制作する月面住宅など、

して、コーヒーを片手に座談会を収録したものが、

建築のイノベーションともいえるプロジェクトの数々を、豊富な資料を通じて紹介する。 【2】 「みなでつくる方法─吉阪隆正+U研究室の建築」|国立近現代建築資料館| 会期:2015 年 12 月3日(木)∼2016 年3月 13 日(日)

Jan.

建築家・吉阪隆正(1917-1980)の世界観にもとづく集団設計方法である「不連続統一体―DISCONT」を「み なでつくる方法」と捉え直し、年代ごとの主要なプロジェクトを、図面、吉阪自身のことば、模型、関係 者への聞き取り、現存する建築断片などで構成して展示。吉阪たちの方法は、ますます分業化が進みつつ ある現代建築においても有効な建築の社会的役割を示唆する。 【3】 「京都・フィレンツェ姉妹都市提携 50 周年記念 特別展覧会「吉岡徳仁 ガラスの茶室 - 光庵」|将軍塚

今回の特集のメインコンテンツです。設計だけで はなく、建築そのものの教育に唯一の答はありま せん。今回は日本の 11 大学が取り上げられていま したが、より外に目をやると、世界中では建築に まつわるさまざまな教育が行われています。教育 方法というテーマひとつで視野が広がるというこ ともまた、建築がいかに面白い分野であるかとい

vol.43 no.4

青龍殿|会期:2015 年4月9日(木)∼ 2016 年4月 ( 未定 )

うことを物語っているのだと思います。そして、

京都の将軍塚青龍殿大舞台にて、吉岡徳仁の展覧会が開催中。作品「光庵ーガラスの茶室」は、透明なガラ

つまるところ、あなたの中だけに、「建築ってのは

スで構築された茶室という小宇宙的な空間から、自然と一体化し、日本の思想・文化の原点を見ることを目

○○なんだよね!」って確信を探し続ける旅その

的としてつくられたもの。2011 年ヴェネツィア ビエンナーレ国際美術展にて、プロジェクトとして、ガラ

ものが、楽しいということかもしれません。

スの茶室「光庵」が発表されてから5年、展覧会として実現することになった。

(大西正紀 + 田中元子 /mosaki)

「駿建」では、在学生、教員、非常勤講師の皆さまからの、コンペやコンクール、学会、スポーツ大会、その他の受賞・表彰に関する情報 024

提 供を下記メールア ド レ ス に て 受 け 付 け て い ま す 。< s h u n k e n @ ar c h . c s t . n i h on -u . a c . jp >

日本大学理工学部建築学科学内誌「駿建」2016年1月号  

特集:設計課題の今

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