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ABE Takasumi CIRCULATE

安部貴住 「CIRCULATE」 Exhibition Date: March 16 - April 21, 2013 Venue: Baikado 1-15-18 Baika, Konohana-ku, Osaka 554-0013 JAPAN Copyright © 2013 by Baikado


ステートメント

雨の音や光を感じるとき、 深緑を眺め落ち葉を踏むとき、 匂い、音、色で再現される記憶の時間は 蓄積された明るい光景。 (安部貴住/アーティスト) Photo by ABE Miho

「CIRCULATE」展によせて 安部貴住は、大学で彫刻を学んだ。穏健な 抽象彫刻を手がけ、学部より研究生時代に は団体展に出品し、一定の評価を得ていた という。 安部の作風が一変したのは、2000年12 月に福岡に設立された、「共同アトリエ・3号 倉 庫」の 公 募 に 応 募 し、そ の 第 一 期 メ ン バーに選ばれたことによる。初代総合ディ レクターは、「ネオ・ダダイズム・オルガナイ ザーズ」の一員でもあった、風倉匠である。 風倉は、1979年に郷里大分に拠点を戻し、 九州のアート・シーンに少なからぬ影響を 与え続けていた。 余談だが、安部は小学生のころ、偶然、 大分の山中で風倉の風船作品を見たこと があるという。後に風倉の作品を知り、それ と知ったらしい。 いわば風倉に見いだされた安部は、3号 倉庫を中心として活発な制作を始める。こ のころより、現在まで安部の展覧会名・作 品 名 で あ り、一 貫 し た コ ン セ プ ト と な る 「CIRCULATE(循環)」というテーマが採用 される。安部は、大気や温度、光といった非 ─物質的な自然の変化─循環を、可視化、 可聴化する行為が作品の制作と同義であ

るという。 2001年の3号倉庫におけるグループ展 で、安部はサウンド・インスタレーションを初 めて発表する。続いて同年の初個展におい て、巨大な半球状のフレームにティッシュ・ ペーパーを貼った、スピーカー状の作品を 展示している。これは屋外の環境音をマイ クで拾い、安部によって会場内にライヴ再 生するものであったらしい(fig.1)。 また、2006年にアメリカにおいて滞在制 作された作品は、風船にマイクを取り付け 空に浮かべ、雲の音を録音し、その音を大 型のインスタレーション内部で再生、体験さ せるものであった(fig.2)。 さらに2009年の3号倉庫における個展で は、水を入れたポリ袋を会場にぶらさげ、そ こから床のボウルなどに落ちる水滴の音を マイクで拾い、会場内に再生した。安部は 会場に常駐し、それぞれを随時調整して、 さまざまに音を変化させたらしい。 これらは、もとより安部が音楽に強い関心 を持っていたこと、さらに3号倉庫における 風倉や小杉武久らによる影響によって、ラ イヴ(一回)性、パフォーマンス性の強い作 品となったものと思われる。安部は、しばし ば公開制作的なパフォーマンスも行ってい る。


こうしたいわばサウンド・インスタレーション 的作品とは別に、安部は2007年より、絵画 にも向かいはじめる。福岡県立美術館にお けるグループ展において、パネルを連結した 高さ5mにもおよぶ大作を発表する。これは 草木など自然を描いた風景画であった (fig.3)。 当初は具体的なイメージを残すものであっ たが、その絵画は徐々に抽象度を高め、半 透 明 の ガ ー ゼ の 膜 に、木 洩 れ 日 の 光 を ト レースして描くものとなる。 さらに2010年の實松亮との二人展では、自 作の巨大な木製の額に寒冷紗を張り、黒い ドットを張ることによって、絵画という形式の 問題にまで踏み込んだものとなった(fig.4)。 一見するとその作品は、いわゆるモダニズ ムの絵画が、イリュージョンを排することに よって、絵画の自律性を獲得しようとした歴 史に従うもののように見える。しかし、安部の 絵画は、その支持体の物理的な半透明性に よって、伝統的な絵画を成立させる反射光 と、絵画の外部であるライヴな環境─透過光 を同時に取り込むものであり、中性的なスク リーン─膜として存在しているのだ。 この一種の両義性が、安部の作品にまさに 映像的な、マチエールをもたない非─物質性 を与えている。いわばそれは影絵の原点の よ う で も あ る。わ れ わ れ は 影 絵 に お い て、 いったい何を見ているのであろうか。影なの か、透過する光なのか。安部の作品は、絵画 と映像のはざまを静かに循環し、安部のいう 木洩れ日のイメージを、われわれの網膜に 焼き付けるのである。 本展では、こうした半透明の絵画のほか、 不透明な紙やアクリル板を支持体とした作品 も展示される。それらの安部の近年の試み が、絵画という形式について、すなわちイメー ジと物質の循環という弁証法的な問題に、よ り踏み込んだものであることを期待したい (後々田寿徳/梅香堂)。

fig.1 CIRCULATE 2001.11

fig.2 CIRCULATE 2006.10

fig.3 CIRCULATE 2007.10

fig.4 CIRCULATE 2010.10


1


2

1. CIRCULATE (mirror). 2013, Acrylic Paint on Acrylic Plates, Paper, Wood, 1740 x 900 x 60 mm (x 6) 2. CIRCULATE (dot). 2013, Paper Tapes on Cheesecloth, Wood, 1700 x 2300 x 30 mm

3

3. CIRCULATE (system 4). 2013, Acrylic Paint on Gauzes, Acrylic Plate, Wood, 450 x 470 x 35 mm


略歴 2006 8-10 デイヴィッドソン大学(ノースカロラ イナ)レジデンス 2004 4 art space tetra(福岡)を共同で設 立 2001 3 九州産業大学芸術学部美術学科 彫刻コース研究生修了 2000-2002 共同アトリエ・3号倉庫(福岡)にて 制作 1999 3 九州産業大学芸術学部美術学科 彫刻コース卒業 1976 8 大分県生まれ

2005 1

「one against 2:安部貴住個展」 art space tetra 福岡 2004 4 「project for actual art 001:安部貴住 個展」 art space tetra 福岡 2003 8 「安部貴住個展」 IAF SHOP*/共同 アトリエ・3号倉庫 福岡 2002 11 「SOLO EXHIBITIONS 2002: circulate」 共 同 ア ト リ エ・3 号 倉 庫 福岡 2001 11 「SOLO EXHIBITIONS 2001: circulate」 共 同 ア ト リ エ・3 号 倉 庫 福岡 Solo Shows

2006 8-10 Participated in Artists in Residence Program “Force of Nature: Site Installations by Ten Japanese Artists” at Davidson College, NC 2004 4 Co-founded the art space tetra, Fukuoka 2001 3 Completion of Research Student, Sculpture Course, Department of Fine Arts, Faculty of Fine Art, Kyushu Sangyo University 2000-2002 Worked at Co-operative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 1999 3 BA, Sculpture Course, Department of Fine Arts, Faculty of Fine Art, Kyushu Sangyo University 1976 8 Born in Oita, Japan 個展 2013 1 「circulate」 ギャラリー58 東京 2010 12 「circulate」 八万湯 福岡 2009 4 「art space tetra 5周年記念企画 circulate」 art space tetra 福岡 2009 1 「circulate」 共 同 ア ト リ エ・3 号 倉 庫 福岡 2008 4 「circulate」 gallery月夜と少年 大阪 2006 6 「circulate」 九州日仏学館 福岡 2006 4 「Takasumi Abe Exhibition」 LOVE GALLERY 福岡 2005 11 「第5回八幡現代美術展 STORE + AGES 安部貴住個展」 北九州市立 旧百三十銀行ギャラリー 福岡 2005 9 「circulate」 art space tetra 福岡

2013 1 “circulate,” Gallery 58, Tokyo 2010 12 “circulate,” Hachiman-yu, Fukuoka 2009 4 “art space tetra 5 Years Anniversary Exhibition: circulate,” art space tetra, Fukuoka 2009 1 “circulate,” Co-operative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2008 4 “circulate,” gallery Tsukiyo to Shonen, Osaka 2006 6 “circulate,” l’Institut français du Japon - Kyushu, Fukuoka 2006 4 “Takasumi Abe Exhibition,” LOVE GALLERY, Fukuoka 2005 11 “The 5th Contemporary Art in Yahata: STORE + AGES - Abe Takasumi,” Gallery 130, Fukuoka 2005 9 “circulate,” art space tetra, Fukuoka 2005 1 “one against 2: Abe Takasumi,” art space tetra, Fukuoka 2004 4 “project for actual art 001: Abe Takasumi,” art space tetra, Fukuoka 2003 8 “Takasumi Abe Exhibition,” IAF SHOP*/Co-operative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2002 11 “SOLO EXHIBITIONS 2002: circulate,” Co-operative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2001 11 “SOLO EXHIBITIONS 2001: circulate,” Co-operative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka グループ展 2012 3

「Spring─日常」 梅香堂 大阪


2011 7 2011 4

2010 10 2008 12 2008 7

2007 10

2007 6

2007 1 2006 10

2004 6

2003 1 2002 9 2002 7 2001 6

「リバース祇園・八万湯」 八万湯 福岡 「10th Anniversary Exhibition “first decade”」 共 同 ア ト リ エ・3 号 倉 庫 福岡 實 松 亮・安 部 貴 住 「循 環 と 置 換」 梅香堂 大阪 「overture」 gallery月夜と少年 大阪 C. Gavin M. Weber・安部貴住 「Circulate」 九州産業大学芸術学部 アートギャラリー 福岡 「アートの現場・福岡 Vol. 21 福岡 アートフェア・シミュレーションα」 福岡 県立美術館 福岡 「Force of Nature:自然の力─アメリ カからの里帰り展」 京都造形芸術大 学ギャラリーRAKU 京都 「パーティ 6年間と7年目の3号倉庫」 共同アトリエ・3号倉庫 福岡 「Force of Nature: Site Installations by Ten Japanese Artists」 ヴァン・エ ヴリ/スミス・ギャラリー デイヴィッド ソン大学 ノースカロライナ 「レリーフ・コンストラクション(ミュージ アム・シティ・プロジェクト)」 ギャラ リーアートリエ 福岡 「福・北 美術往来展」 北九州市立美 術館・福岡市美術館 福岡 「NORMAL@Fukuoka」 共 同 ア ト リ エ・3号倉庫 福岡 「BOOTH EXHIBITION」 共同アトリ エ・3号倉庫 福岡 「BOOTH EXHIBITION」 共同アトリ エ・3号倉庫 福岡

Group Exhibitions 2012 3

“Spring ─ Daily Life,” Baikado, Osaka 2011 7 “Rebirth GION Hachimanyu,” Hachiman-yu, Fukuoka 2011 4 “10th Anniversary Exhibition - first decade,” Co-operative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2010 10 Sanematsu Akira and Abe Takasumi’s “Circulation and Substitution,” Baikado, Osaka 2008 12 “overture,” gallery Tsukiyo to

Shonen, Osaka C. Gavin M. Weber and Abe Takasumi’s “Circulate,” Kyushu Sangyo University Art Gallery, Fukuoka 2007 10 “fafa2007: Fukuoka Art Fair Simulation Alpha,” Fukuoka Prefectural Museum of Art, Fukuoka 2007 6 “Force of Nature: Returning Exhibition,” Gallery RAKU at Kyoto University of Art and Design, Kyoto 2007 1 “Party: Six Years and the Seventh Year of Warehouse No.3,” Cooperative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2006 10 “Force of Nature: Site Installations by Ten Japanese Artists,” The Van Every/Smith Galleries at Davidson Collage, NC 2004 6 “Relief Construction - Museum City Project,” Gallery Artlier, Fukuoka 2003 1 “Traffic: Art Exchange between Kitakyushu and Fukuoka,” Kitakyushu Municipal Museum of Art/Fukuoka Art Museum, Fukuoka 2002 9 “NORMAL@fukuoka,” Co-operative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2002 7 “BOOTH EXHIBITION,” Cooperative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2001 6 “BOOTH EXHIBITION,” Cooperative Atelier Warehouse No.3, Fukuoka 2008 7

主要参考文献 「movement 今 月 のア ー テ ィ ス ト / 安部貴 住」 『Web Designing』 2011 年 7 月 号 p.27 図版2・年譜 「雨音に耳澄ます装置 美術家 安部貴住さ ん(32)」 西日本新聞 2009年2月8日号 Mark Sloan and Brad Thomas, Force of Nature: Site Installations by Ten Artists, Halsey Institute of Contemporary Art and Van Every/Smith Galleries, 2007, p.18, pp.24 – 33. 『SOLO EXHIBITIONS 2001』 株式会社資 生堂企業文化部 2001年 pp.1 - 2, pp.9 – 10, p.14 小林清人によるテクスト・図版3・年譜


安部貴住「CIRCULATE」展カタログ