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特集

TALK REPORT

蓮沼執太をスタディする[後編] 蓮沼執太 大谷能生[音楽家/批評家]  野村政之 [こまばアゴラ劇場/青年団制作 アサヒ・アートスクエア運営委員] 3 月 5 日に開催した「蓮沼執太フィル」の公開リハーサル終了後、蓮沼さんを良く知る大谷能生さん、司会に野村政之を迎えトークイベントを開催しました。 アサヒ・アートスクエアを拠点に、これから一年間続く「蓮沼執太のスタディーズ」のキックオフの意味も込めて、蓮沼さんのこれまでと、現段階でのプロジェクトの構想に ついてざっくばらんに語り合っていただきました。今回は「スタディーズ」を中心に語り合った後編をお届けします。蓮沼さんのこれまでの活動に触れた前編は HP でご覧頂けます。 ―いい音楽

[  抜き書きトーク クリッピング  ]

『TIME』というプロジェクトにとってはスタートに過ぎな

作家が上でしょ。

蓮沼:付け加えると、そこで純粋に音楽がよくないとダメ

い。まだまだ通過点だって意識だったので、とりあえずカ

大谷:対等じゃないよワークショップは。教える人がい

じゃんってのがありますよね。音楽を「使って」終わりで

タチにしようという認識でした。

て、教えられる人がいるのがワークショップじゃない。金

はなく。

大谷:公開リハ的な。

を払った人がいて、金を払ってもらう人がいる。蓮沼くん

野村:バランスの話だよね。音楽を使う場合にその音楽

野村:そう。まずは生地を作ったって感じかな。

は一年間続けるわけじゃん。まずおそらく来る人の予想は

サンブルを組むことってある意味社会の縮

自体の良さも必要だと。

蓮沼:まだまだできる感覚はあります。

出来ないよね。

図だし、関係性のモデルを提供しているん

蓮沼:ぼくは人が集まった方がいい音楽だって思うんで

大谷:音楽の作り方とは違ったかな。例えばフィルとか。

蓮沼:来る人の予想をつけようとは思っている。

す。3 年後どう思うか知らないですよ。でも、今は聴い

蓮沼:発想は一緒ですね。フィルであればメンバーのこ

大谷:どうやって。

て、知ってもらわないと意味が無いと思っています。そし

れまでの歴史を理解する。今回はたまたま音楽家じゃな

蓮沼:何やるよってのは、毎回告知していこうと思ってる。

てそういう音楽というのは、どこかしら人を動かす要素が

い人がいると。例えばダンサーで「ほうほう堂」の福留

大谷:録音しますとか。

入っているはずなんです。例えば聴いてみようと思わせる

さんがいて、彼女がやってきたことを理解する。理解とい

蓮沼:そう。まずは自分の手元にある素材や、自分が普

沼執太フィル」のメンバーはそれぞれ音楽

とか、ライブに行ってみようと思ってもらうとか。そこには

うか、ぼくが分かろうとする。

段接している人と、実際にちょっとやっている段階。2 月

に対するに思い、考え方が違う。音楽理論

意識的でありたいし、それによって周りも動いてくれたり

野村:理解できる部分と理解できない部分がある。

だと『TIME』の皆に詩の朗読をしてもらい、それを撮

するじゃないですか。よしやってやろうとか。いい音楽に

蓮沼:分からない部分ももちろんあるし、その分からない

影しました。お客さんが参加できるようにするには、土台

ついて、そういったことが大切だと思っています。

部分も分からないなりに受け取るっていうか。そういうこ

が必要で。その土台づくりを今やっている段階。

関係性のモデル

大谷:オーケストラを見れば分かるけどアン

だよね。ミュージシャンって皆が思ってる以 上にマメ。連絡とかちゃんと取ってる[笑] 。 この人が必要だからと連絡をし、関係性を 保つ努力をしているんだよね。 蓮沼:その中で人間としても成長できる。 「蓮

を学んだ人、クラシック、ジャズ、即興の 人…。自分は、そうした人たちと関わってい くなかで、色々な考え方を受け入れないと

うやって集まって練習するわけじゃん。そこ でまた違うプロジェクトが動いたりとか。そ の中で、音楽自体も固定化しない。音楽だ けに留まらずに色々進めて行くと、どんどん 横に流れるっていうか。人の出入りが良く なって、風通しがよくなる。サウンドクラウ ドでもいいんだけど、アップロードしただけ では意味がなくて、それをどうつなぐかって ことが大事。現実にこう顔を合わせて、面 と向かって話してると、一番伝わるっていう か。最近はこう会って話す機会がどんどん 減って来ている気がする。 お客さん

蓮沼:ぼくは自分のことをお客さんって思っ ているんです。音楽は自分でやるよりも、 観に行ったり、聴いたりするのが好きなんで す。例えば家で夜中に、無音ばっかりの現

野村:いい音楽の話を始めたら、メディアっていうか、

とをしていって、作品、舞台をつくっていく。フィルより

野村:最終的にその蓄積を展示するっていうことかな ?

れをさらに一歩前へ押し進めたい。新しい

音楽を使って人を動かす話に自然となる、ってことか。

ちょっとだけ大変って感じ。共通言語があまりにないから。

蓮沼:展覧会はしますね。

楽しい。今日のフィルですら、ぼくはお客さ

ことをしたい。それがフィルなんです。

蓮沼:つながりますよね。

大谷:そのときに相手を理解しようと努力するだけでなく、

大谷:そのやりかた自体に興味がある。さっき『TIME』

んだと思ってる。逆にメンバーの能生とか、

大谷:そう。蓮沼くんは音楽さえやれればいいという方

どういう手綱の締め方をしたのかな。リーダーである蓮沼

での作品の「薄い」「濃い」とか。どこかで誰かが何か

向には行かない。むしろそれは希薄だよね。

くんが皆の向かう先を、こちらに向かって走れと言わなけ

を判断していくわけですよね。その判断を一年間かけて、

ればならないときもあると思うのだが。

蓮沼くんが色んなかたちでやっていくのかなと思うと、そ

曲が最初からあり、全員が譜面をみて、コ

―『TIME』

蓮沼:そこを言わなかったのが『TIME』ですね。ぼく

れは興味深いなと思ったわけ。何についてここが薄いと

ンサートマスターと指揮者がいて。社会の

大谷:ちょっとずつ音楽以外の活動にも話を進めたいん

は走れとは一言も言ってない。

思ったりするのか。途中で何かここ足りないなって思った

んどんミュージシャンじゃないなって。そん

ある種の縮図だし、ある社会にとっての理

ですけども。『TIME』について聞いてもいいかな。

野村:例えばダンサーである福留さんが体の動きについ

ときに。思うじゃん確実に。やりながら、何かが足りない

なお客さん目線の自分がドキドキするのは、

野村:ぼくが蓮沼くんに声をかけて、蓮沼くんと詩人の

て指示したり。他の俳優もそれぞれのパートについて責

と思うじゃないですか。

いけないし。そして、受け入れた後に、そ

大谷:例えば、オーケストラだと指揮者が いて、バイオリンが 5 人も 6 人もいるシス テム。フィルハーモニーとか交響楽団なん て、ものすごくはっきりしたシステムでしょう。

想型があれなんだろうね。 蓮沼:西洋近代の理想だよね。 大谷:そうだね。ジャズなんかも含めて、 例えば 4 人でアンサンブルを組むモデルが

山田亮太さんを中心につくった作品が『TIME』です。

任を持つ。こうした方がいいと提案してもらったりもした。

野村:おそらくスタディーズの最後の展示に向かっての

音楽、詩、演劇、ダンス、美術の分野で活動している

ぼくも最後のリハーサルでは観客目線から提案したし、

プロセスをずっと共有している人は少ない。

あるとする。ドラム、ベース、サックス、ピ

人たちを集めて、音楽と詩をきっかけにしてパフォーマン

必ずしも蓮沼くんがトップではなかったかな。

蓮沼:アサヒ・アートスクエアのスタッフの皆ぐらい。

アノとか。その場合には 4 人の独立性と機

スを作り、TPAM[国際舞台芸術ミーティング]in 横

動力を上げて行く方向で音楽が作られて行

大谷:話は良くわかるのだが、ビジョンを持ってる人と、

大谷:この場所とね。

浜で発表するというプロジェクトでした。電子音楽家とし

もってない人がいるわけじゃないですか。そこをどのくら

野村:そのなかで判断を下して行く。

てのソロ活動から、次にバンドを組んで、そして「蓮沼

い考えてコントロールしたのかってことを聞きたいかな。

大谷:この一年をかけて、遅いとか、ここを早くするとか。

執太フィル」になってという、蓮沼くんのこれまでの軌跡

蓮沼:名前の出方として「蓮沼執太[音楽] 山田亮太

これは音楽的な言い方ですけど。そういう判断を蓮沼く

からして、音楽以外のことも出来るんじゃないかと思って。

」となってたんですね。ただぼく作曲してないんで [詩]

んが、この規模で、しかも誰が来るかも分からない、一

くわけだ。「蓮沼執太チーム」とかさ。そし て人数を増やせば「蓮沼執太フィル」。蓮 沼くんは最初の電子音楽の時代から、一 つ一つ違うモデルを試しているのが面白い。 音楽的に新しいというよりは、今話していた

大谷:普通電子音楽家からバンドになり、そしてフィル

すよ。作曲したのは木下美紗都さんと石塚周太くん。ド

緒にやるかもわからないところで、どういう風に判断して

ように、人間関係であるとか、音楽の作り方、

になったら、出世みたいな感じだけど。蓮沼くんはそうい

ラムの演出だけイメージを伝えた程度。それが作曲だと

いくのかなっていうのが、とても興味があるなという話を

聞かせ方、役立たせ方とか、そういったも

う感覚が一切ないのが面白いよね。偉そうな感じが全く

言われたら作曲かもしれないけど、実際は指揮しかして

したかったんですよ。

のに蓮沼くんは意識的なんだと思う。関係

ない。楽器へのこだわりもないし。あんなどうでもいいキー

いない。やったことと言えば、ダンスの福留さんや美術

野村:最終型は分かってるの ?

ボードを持って来て弾くわけじゃん。素晴らしいよね [笑]。

作家の毛利悠子さんに声をかけたり。一番大事な作業は

蓮沼:分かってないですよ。毎月やって発見を得て、ど

どうやって作られて、供給されて、それを

。 蓮沼:ほめてんの[笑]

皆のスケジュールの調整作業でした[笑]。中身に関し

んどんとチャレンジして行ける環境がいいなと思っていま

どう皆が喜んでシェアできるかっていうよう

大谷:いいと思いますよ。そもそもフィルハーモニーとか

ては、音はこういう風に流れたらいいかな。詩と共に時

す。最初はこれまで培ってきた経験に基づいてやる。そ

なところから考えている。自分も、今の時代

やる人ってのはさ、「俺の音楽はバイオリン 10 本じゃな

間がこう流れたらいいんじゃないかな、と大まかなシーク

れだとぼくも楽だし。ぼくが突拍子のないことばかり言っ

いと弾けない」とか、そういうことを言うのよ。

エンスをつくったぐらいです。

て、スクエアの皆が「?」ばかりでは、共同制作とは言え

性のモデルケースなんだよね。単に美味し いものをつくるってだけじゃなくて、それが

に必要な関係性のモデルって何かなって考 えながらフィルに参加しているんだ。

代音楽のピアノソロとか聞いてる方が断然

イトケンさん、権藤さん、皆本当にミュージ シャンだなと。ぼくなんか自分の楽器がな い。こう言うとシンセサイザーがあるだろう とか思われそうだけど、そこまで演奏家とし ての誇りもない。彼らをみてると、ぼくはど

やっぱり知らないことが行われるときなんで すよ。今日の「公開リハ」だって、要は皆 が知らないことじゃないですか。音楽がつく られる現場って。現場を見せるって言うの は、舞台で言えばワークインプログレスとか 既に言葉がある。見せて、 意見をもらい、 ディ スカッションして、作品がどんどん違う方向 に流れるとか。音楽はそういうことが少ない。 クラシックでもビジュアル系バンドでも、指 揮者やバンドマスターがいて、完成形が見 えた中できっちりとリードしていく。そういう 文化がすごい発達している。ただ新しい発 見がないと、どんどん皆にとって知らない事 がなくなっていくんですよ。そうすると、何 を聴いても、何を観ても面白くない。そうい う八方塞がりになってくる。そんな状況にド カンとハンマーを振り下ろしたのが、今日 やった「公開リハ」なんですけどね。 大谷:それもやっぱり、リハは見せるものじゃ ないとか。お客さんにはちゃんとしたものを 提供するべきだとかいう、既存の考え方が あるわけだよね。そういうのもパッケージの

野村:そうじゃないもんね。

大谷:なるほど。ただ、作品として成立させるときに、ど

ないから。彼らを安心させたいって部分もあるし。

大谷:たまたまフィルつくって、やってんだもんね。

うしたって善し悪しがあるわけじゃないですか。ちゃんと

野村:関係をきちんとつくるっていうかね。

野村:個人で処理できる情報量はすごく上

。 蓮沼:たまたまじゃないけどね[笑]

できたかどうか。その判断を蓮沼くんはどこでつけたの。

蓮沼:そうですね。それが 2 月と 3 月。3 月は 31 日にや

がってますよね。

大谷:たまたまその場にいた人でしょ[笑]。

蓮沼:やってみてってこと。

るんですけど。ただぼくが今日のように制作過程をお客さ

り、オープンスタジオや市民参加型のコミュ

[笑] 。そんなことないよ。 蓮沼:

大谷:やってみて、およびやりながら。

んに見てもらうっていうのは、パフォーマンスから派生し

ニティプロジェクトが増えているみたいだし、

野村:手持ちの材料っていえば、手持ちの材料じゃん。

。 蓮沼:まだこねてる途中だったから分かってなかった[笑]

た考え方なんですよ。ぼくがやろうとしている展覧会とか

大谷:自分の音楽をやるために、ヴァイオリン奏者 10

大谷:[笑]。ってことでいいんだな。

インスターレーションとか、CD の作り方は、これとは違

人雇ったりしないわけじゃん。

蓮沼:やってみなきゃ何にも分からないと思っていた。

う頭の使い方でやっている。夜中にコンピューターに向

情報のインプット/アウトプット

大谷:ところが皆持て余しているわけ。 蓮沼:利便性をってこと。 大谷:使える情報が多いだけに、どうして いいか分からないってこと。人間って食べる と太っちゃうじゃん。肉がついちゃう。情報

一つなわけですよ。そういう一回固められた ものをちょっとずつ解く作業が必要だよね。 野村:美術でも最近、プロセスを公開した

演劇でも、公開リハーサルや創作過程を観 客にみせながらつくることが増えている。た だ何て言うか、音楽は CD やレコード、デー タとか、メディアで流通できる分野で、作

も同じで、入れるだけ入れて出せないって

野村:いかに音楽を理想的な状態に近づけるかではな

大谷:やってみなきゃ分からないことをやったってことだ

かって集中して編集している感じ。両者がミックスされる

いうか。流せなくなっちゃう。

く、手持ちの材料を使って、時間っていうか作品をつく

な。そして一回やってみて分かった事があるってことね。

ような展覧会になればいいなと思っています。

野村:音楽じゃなくても、創作と流通って

るっていうスタンスが蓮沼くんにはある。その活動の余白、

野村:面白かったのは、最後のリハーサルのときに、ぼ

野村:つまりこの前の東京都現代美術館での展覧会は、

人の巻き込み方を見ていて、これは別に音楽の人だけが

くは観客席で見てたんですよ。指揮してた蓮沼くんが、

パソコンで音楽を作っているのと似たような感覚でつくっ

参加できる仕組みじゃないだろうっていう思いが直感的に

舞台からちょろっと客席に来て「ここのパートが少し足り

いて。それと今日の「 蓮沼執太フィル」とか『TIME』

あったんだよね。だから、この機会に蓮沼くんに仕掛け

てないので、何か考えてください」って。そういう指示は

みたいな、どこに行くか分からないものがミックスされて、

てみようかっていう気持ちになったわけ。

飛ぶ。ぼくはぼくで確かに足りないなと思っていて、それ

最終的な展覧会でこのスタディーズが立ち上がってくる

野村:この「蓮沼執太のスタディーズ」と いうプロジェクトと、音楽家である自分との

流れがあったときに、制作過程が個人化し ていくと、関係者が減って、流通するきっ かけがなくなってしまう。表現て人と人の間 にあるものなわけだけど、関係者が減れば、 作品としてパッケージ化するきっかけも減っ てしまう。

大谷:野村さんはディレクターとしてどこまで内容には関

について考える。あとで、実際にその箇所じゃなくても、

と、いいなっていうことかな。

わっていたの。

その箇所が成立するように指示を出す。

蓮沼:そうだね。それをぼくがやったことがないから。じゃ、

野村:まず蓮沼くんとコンセプトについて話をしました。

大谷:やっぱりさ、そういうことはするわけじゃない。こ

やってみようかなと。

ぼくが一番最初に言ったのは、演劇で言葉ってのは必ず

こは足りないなとか。ここは多いなとか思うわけで。そこ

大谷:一年だもんね。長いのか。短いのか。

解除する、もう一回溶かして、別の人間が

声として実現されるってこと。書き言葉の戯曲があったと

が面白いというか。

野村:チラシみたら、12 月 22 日とか、そんな先の予定

流す、 流し直すというのが上手くいってない。

しても、観客が触れるのは声。そしてその声だけでなく、

蓮沼:けど、おれはノータッチだったよ。

まで書いてある。そして最終的には展示をやるんですよ

大谷:そうそう。だから情報はあるんだけど、 それを使って関係をつくることが上手くいっ てない。既にパッケージされたものだけが 情報として流通してて、そのパッケージを

野村:個人でパッケージするところはすごく 楽になった。ただそれを使って、共有する ことが難しくなって来た。 大谷:そうだね。そこが可視化されたって いうかな。これだけ皆が情報を発信してい るのに、あんまり上手く使えてない。それを

物音や歌、音楽も舞台にのってしまえば、いずれも耳か

大谷:それを判断して指摘するのが大事なんだよ。ここ

ね。今のところは。

ら入ってくるものになる。言葉だから言葉として聞かせな

が薄いとか、足りないとか、多いとか。具体的に何を入

蓮沼:そうです。年内は毎月スタディを続けて、2013

いといけないとかではなくて、全てを、舞台上に出現す

れて下さいとは言わなくても。

年 2 月に、アサヒ・アートスクエアで展覧会をします。

る「音」として考えて、何か時間が作れないかってこと を提案しました。声と音楽、あるいは言葉っていうのは、

具体的な部分はプレーヤーにまかせたのが、 蓮沼:そうね。 『 TIME』ですね。

野村:蓮沼くんの応募書類に展覧会のラフスケッチがあっ

野村: 「蓮沼執太フィル」でもそういう部分はあるのかな。

蓮沼:音楽ってあまり大きさを表現できないんですよ、

蓮沼:フィルはぼくが作曲しているのでそこは違いますね。

とかあるじゃ 見えないから。でも、 見えないけど 「デカイな」

向に進んでる。

蓮沼:声を現象として扱うということです。そして現象と

ないですか。アサヒ・アートスクエアは空間が大きいから、 ―「蓮沼執太のスタディーズ」

デカい作品をつくってみたい、というのが最初のアイデア

して扱うのは慣れてるんですよ。環境音だったり。ただぼ

大谷:でね次の話とつながるんだけど。これから一年間

ですね。それはいきなり作れないから、一年間かけてゆっ

蓮沼:だけどぼくも持て余すお肉大好きで

くにはどうしても言葉が必要だったんですよ。

ここで「蓮沼執太のスタディーズ」をやるわけだよね。こ

くりつくろうと。ただ、スタディーズを続ける中で、変わっ

すよ。音源のダウンロードもたくさんするし、

大谷:作品を作るために ?

こで定期的に何かしらの作業を行っていくと。チラシを読

て行くとは思います。

蓮沼:そう。自分がこれまでやったことのないことをやろ

ませてもらって思ったのは、ここの場所と時間をつかって、

野村:毎月のスタディは、年内の全日程が決まっていて、

うというのは、どこかにあったので。

来てくれた人と何かやると捉えたんだけど。

ここに来ていただけると今日みたいな感じで、作品制作

野村:そこで詩人の山田亮太さんをぼくが紹介して、山

蓮沼:そうですね。

の現場がみれるっていうことだよね。普通にお茶出したり、

プします。やっぱり音楽のためのプロモー

田さんと三人で進めて行きました。六十行の詩を、六十

大谷:そのときにワークショップって言葉は多分良くなく

お話したり。前回 2 月 22 日も何名かの方がいらっしゃっ

ションツールとして、ネットや PC の利便性

分で朗読していくというアイデアは山田さんから出て来た。

て、何か新しい言葉が必要だろうとは思うんだが。

てくれてましたけど。

はかなり重要だから。

あとは三人で、それぞれ自分の知り合いで、この人を舞

蓮沼:スタディーズがそれなんだけどね。

大谷:蓮沼の人間関係に巻き込まれるっていうことです

台にのせたいっていう人を集めて来て。リハーサルを重

大谷:研究だよね。スタディーズって。

よね。

ねながら作って行った。

蓮沼:研究っていうよりは、勉強かな。

ぜひ、 色々な人にのぞきに来てもらいたい。 蓮沼:そうです。

大谷:やってみてどうでしたか ?

大谷:ケーススタディとか言うし。ある種のケースをつく

そして展覧会も楽しみしていていてもらいたいです。

大事だなと。そのときにフィルのメンツって

蓮沼:う∼ん、何だろうな……、面白かったです。そも

るってことだと思うんですよ。

言うのも、結構バラバラに活動しながら、こ

そも TPAM という大きなイベントの中ではありましたけど

蓮沼:何かこうワークショップっていうと、対等もしくは

大谷:そこがモデルとして興味深い。

サウンドクラウド的なものにもアップロードす る。今週末にツアーが控えているんですけ ど、大阪公演の売れ行きが良くないって言 われたので、編集したライブ音源を今晩アッ

大谷:それはその通りで、使えた方がいい。 ただ、その後に根本的な話としては、ライ ブに行って、人が見に来てくれたあと、も う一回違うものにつなげていけるかどうかが

は本当にないのかもしれないね。 音楽家としてのこの先

つながりっていうか、音楽家としての蓮沼 執太はどう関係していくのかな。 蓮沼:音楽家というより、人間としてのキャ パを広げていくってことを考えたいですね。 音楽家としてだと、いいライブをして、い いレコードをつくることっていう風に普通に なっちゃう。あ、あともっとピアノを上手くな るとか。でも、 ぼくピアニストじゃないからね。 大谷:一つ言えることは、楽器を練習する のは結構いいぞ。 蓮沼/野村: [笑] 蓮沼:でもピアノじゃないかな。指揮とか。

互いに干渉もするけど、一つにまとめて舞台の一つの軸 になる。そこがシェアできたので、じゃあやってみようとい

流れ対して、全くの逆。関係者を増やす方

ていく理由も分かるんだけど、音楽の場合

大谷:なんだろうな。上手くなるからね。

使って何か新しい事をやるって方向にあま

うのが『TIME』の始まりです。

と結局見れない。だからプロセスを公開し

たよね。映像とスピーカーを使ったインスタレーション。

り向かない。 野村:蓮沼くんのヒストリーは、今の話の

品をメディアで流通させる説得力ってものす ごくある。美術や演劇はその場に行かない

大谷:指揮でもいいんじゃない。今いち 中途半端だから。皆さんも楽器とかやると いいですよ。何でもいい。人と様々に関わ る方向で人間性を高めていくというかさ、 広めていくというのもありだけど。楽器と長 く付き合うことで、人間性も磨かれて行く からね。その二方面で行くといいんじゃな い[笑]。 蓮沼:はい。 大谷:別に上手くならなくてもいいんだよ。 蓮沼:そう。そこなんだよね。 大谷:上手くならなくてもいいんですよ。何 かに落ち着く。何かかたちになるんだ。 野村:なるほど。それすごくいい。俺もやっ てみようかな。 蓮沼:野村さんはカリンバかな。 大谷:トロンボーンだよ。西洋近代の楽器 の方がいいよ。カリンバとか変な方にいっ ちゃうから。むちゃくちゃ抵抗感のある楽器

[構成・文:アサヒ・アートスクエア 坂田太郎]

の方が、こういうのはいいんだよ。

蓮沼執太をスタディする[後編]