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特集

INTERVIEW

豊かなコミュニケーションが作り出す新たな「装い」 西尾美也 [現代美術家]  1982 年奈良県生まれ。現在は東京とナイロビを拠点に活動する。装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、市民らとの協働プロジェクトを国内外で展開している。 主なものに、世界中の都市で通行人と衣服を交換する《Self Select》や、数十年前の家族写真を同じ場所、装い、メンバーで再現制作する《家族の制服》などがある。

て、それをただ人に着てもらうという在り方に対し

ナイロビでの生活

Form on Words 西尾美也が中心となり、衣料の生産・ 流通・消費サイクルの過程に、教育・ 学習系ワークショップと脱芸術的アート

中から選択して買うことしかできない。この状況を

て、何となく違和感を感じていたんですね。

解体したいという意味で、僕ひとりで「装い」をつ

―どのような違和感ですか。

くり直すんじゃなく、その過程に周囲を巻き込むこ

場」は、西尾さんが生活しているナイロビでの経験

西尾|例えば、知らない人でもスーツを着ていた

とが重要だと考えています。その対象は家族やっ

が強く影響していますよね。

ら「あの人は会社員だな」と了解する。そう言う

たり、通行人やったり、地域の人やったり、子ど

西尾美也[以下、西尾]|そうですね。妻が地域

意味でファッションって、コミュンケーションを円

もやったり、その都度変わっていくんですけど。そ して、それがなぜ可能なのかと言えば、やっぱり

―今回のネクスト・マーケット「ジャングルジム市

研究をしているケニアに私も5年前から通っていま

滑にしますよね。僕が子どもの頃から楽しんでい

新しい装いの文化を生み出していくファッ

す。当初は圧倒的な文化の違いを楽しんでいただ

た着飾ることもそう。ただ逆に言うと、服によって

ションブランドとして 2011 年に発足。

皆が「装い」の実践者だからなんです。アートが

けでした。ただアーティストである以上、自分の活

どんな風にも自分を見せられる。ある意味隠すこ

どうとかではなく、「もう服着てるやん」という状況

動が、全く違う場所でも実現できないと嘘になるな

とや、演技することもできる。そう考えると、服そ

が既にある。それぞれ考えや愛着もある。その時

プロジェクトの手法を組み入れることで、

ファッションやアートプロジェクト、ワー クショップ、グラフィックデザインなどの

と思い始めて、2009 年からケニアでもアート活動

れ自体は本物じゃないのかなと。コミュニケーショ

点で、僕とも対等ですね。そういう発想で人とコミュ

をスタートさせました。

ンのツールではあるけど、むしろそれが壁にもなる。

ニケーションをとりながら、新しい「装い」がつく

―最初のプロジェクトについて教えてください。

その時、逆に、もっと人の本質を開いていくことっ

れるのではないかと思ってやっていますね。

西尾| 「Self Select in Nairobi |セルフ・セレク

て何なんだろう。単にデザインするのではない、自

イナーと演出家・音楽家らが子どもたち

ト イン ナイロビ」です。通りで偶然すれ違った人

分が面白いと思えるファッションって何だろうって

とのコミュニケーションを制作過程に取り

と衣服をそっくりそのまま交換するプロジェクトで

考えていました。

す。記録写真を残して最終的に展示を行いました。

―その違和感はどのような作品になったのですか。

―このブランドが生まれた経緯を教えて下さい。

―ナイロビのマーケットについて教えて下さい。

西尾|試しに取り組んだのが「Scramble Clothes

西尾| Form on Words は東京の練馬区にある児

多様な専門領域を持ったメンバーが集ま り、共同制作している。昨年の第一弾 企画では、一般市民をモデルに起用した ファッションショーを、練馬区の児童館 で発表。公募で集められた 13 名のデザ

入れながら制作・発表したショーは大き な話題を呼んだ。

http://www.formonwords.com/

ネクスト・マーケット 「ジャングルジム市場」 巨大ジャングルジムを舞台に入り交じる、 遊び場、市場、ショー 日時| 10 月 24 日[水]― 28 日[日]

12:00 ― 21:00 * 24 日は 16:00 ―/ 28 日は 19:00 まで

会場|アサヒ・アートスクエア *詳細は表面「PROJECT」参照。

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西尾|並べ方、重ねられ方、束ねられ方がむちゃ

|スクランブル・クローズ」という作品ですね。ワー

童館でのアートプロジェクト、「ことばのかたち工

クショップ形式で、パーツ分解できる服を大量に用

房」での 3 年間の活動を経て 2011 年に生まれま

いい。これまで自分が見てきたアーティスト、クリ

意しそこに人が集まる。初めて会う人同士が会話を

した。児童館の依頼に対して、子どもたちがまち

ストや川俣正さんらの作品と重なってくることもあり

しながら、服のパーツを交換し、新しい見た目の服

に関わる仕組みをつくろうと思い、子どもたちと商

ます。日本だと、危険やなとか、キレイじゃないと

を生み出して行く。「装い」と「コミュニケーション」

店街のお店の人たちのユニフォームをつくる工房

かで制限されるけど、それで均質で特徴がなかっ

を通して、新たな衣服の形や新たな関係性のかた

を立ち上げました。まず、お店に行って、働く人

たり、お客さんを選ぶような店になったり、人間味

ちをつくっていく作品です。友達を頼って人を集め

たちにインタビューをします。なぜその作業着なの

を感じないこともある。こっちは人の手が入ってい

て、そんな風に自分の活動が始まって行きました。

ることがよく見えます。エネルギー、生命力に満ち

か、気に入っている所やお客さんとのエピソードな 材に皆で自由に服を作っていきました。

「装い」と「コミュニケーション」 ―世界には様々な「装い」の文化がありますよね。

西尾|服は良く買いますね。色々な国から回って

ために、ブランドにしたということですね。

きた古着が主な商品なんですけど、それぞれの方

西尾|ある人類学者の研究成果によれば、生ま

西尾|そうですね。自分の活動をアートで終わら

法で展示している。服で有名なマーケットでは、

れたばかりの姿で一生を過ごす種族はいないんで

せるのではなく、流通可能な服にすることでもっと

バーっと服の壁があったり、服の山があったり、

すね。服だけでなく、髪を切ったり、結んだり、

たくさんの人に広がるんじゃないか、とずっと思っ

これまで自分の作品でつくったような光景が普通

爪を装飾したり、度合いは違っても必ず何かしら

てきました。翌年も児童館から依頼があり、そこ

にあります (笑)。また 「そういう方法があったのか !」

「装う」のが人間だと。じゃあ自分の「装い」 が

でこの工房を発展させてブランド化し、流通させ

と、 作品の見せ方のヒントをもらうこともありますね。

なぜ洋服なのか。親が洋服を着ていて、周囲も

る服にすることを考えました。子どもたち、まちの

彼らは工夫することが本当にうまい。選びやすく、

それが当り前の文化に生まれたからですね。違う

人たちに加えて、ファッションデザイナーを募集

屋栞、水島宏美ほか

そして目立つような工夫。そんな彼らの方法を写

文化に生まれていたら、そこでの当り前の「装い」

し、参加してくれたのが、メンバーである竹内さん、

グラフィックデザイン|濱祐斗

真に撮るプロジェクトも始めたところです。

をしていたと思います。好きとか嫌いとかさえも、

Form on Words

ディレクション|西尾美也 ファッションデザイン| 竹内大悟、古田由佳利、久保田朱、土

マーチャンダイジング|粟野龍亮 プロジェクトマネジメント|臼井隆志、菊 地みぎわ、高野萌[NPO 法人アーティ

生まれた場所や階級などに決められている。

トスクエア

古田さん、久保田さんたち。このときは作った服を 童館で発表しました。ブランドのお披露目ですね。

―なぜ服を使って作品を作り始めたのですか。

てきたか。それを痛感していて。その当り前を解

西尾|小学生の頃からずっと服が好きで、小中高

体して、本当に自分が着てみたい服、「装い」に

ネクスト・マーケット「ジャングルジム市場」

―「ジャングルジム市場」はどうなりそうでしょうか。

とファッションに興味を持っていました。その延長

辿り着きたいなと思って作品を作っているところが

協力| LwP asakusa、 NPO 法人アーティ

で高校のときファッションデザイナーという職業が

あります。これは「言葉」と同じですね。日本語

西尾|面白いスケールの巨大なジャングルジムが

頭に浮かんだのですが、新しい服の見た目を作っ

をしゃべれてしまう自分が、ケニアに来たらスワヒ

真ん中にドカンとあって、そこに Form on Words

リ語に出会う。日本語とは違う言葉で

が隅田川をテーマに作った新作の服や、ワーク

アサヒ・アートスクエア パートナーシッププロジェクト

す。言葉なら学ぶことで、その壁を越

ショップで小中学生デザイナーたちが作ったアク

えようとしますが、僕が「装い」を通

セサリー、地域のファッション関係の工場の商品、

してしたいことは、日本語もスワヒリ語

そして屋台が並びます。最後の 2 日間はショーを

もない状態に立ち戻り、そこから何が

開催します。服の展覧会でもあり、 空間全体がマー

アサヒ・アートスクエアがより地域に根

生み出せるのか。そういうコミュニケー

ケットでもあって、そこに並んだ作品や商品を買う

ざしたアートスペースとなっていくため

ションが「装い」を通して実現できる

事もできる。アートとして、またファッションとして、

のではと思っています。

そして遊び場として、子どもから大人、おじいちゃ

プなど)と共に、新たなプロジェクトを展

―プロジェクトで常に周囲の人を巻き

ん、おばあちゃんも一堂に集まって一緒に楽しめ

開します。2012 年のパートナーはファッ

込んだり、「コミュニケーション」を意識

てくつろげる。そんな休日みたいな光景をアサヒ・

されているのはなぜですか。

アートスクアでつくりだせたらいいなと思っています。

西尾| 昔と違い、僕らは服を商品の

―ありがとうございました。[構成・文 | 坂田太郎]

に、公募で選ばれたパートナー(アート

NPO、任意団体、アーティストグルー

ションブランド Form on Words。

《オーバーオール:蒸気機関車》2010[撮影:千葉康由]

イベント情報

INFORMATION [その他のイベント|9 月 ­ 10 月]

アサヒ・アートスクエア協力事業

「 めざせウポポ 100 万人大合唱 vol.4 ∼マレウレウ祭り∼」 日時| 9 月 1 日[土]17:30 開演 出演|マレウレウ &OKI /木津茂理 [ゲスト : 細野晴臣]

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西尾|僕自身、これまでいかに服を無自覚に装っ

協賛|アサヒビール株式会社 スト・イン・児童館 *申請中

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「Form on Words ファッションショー」として児

―なるほど。属する文化に規定されていますね。

ファッションデザインに対する違和感

スト・イン・児童館 *申請中]

主催| Form on Words、アサヒ・アー

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―その方法論でつくられた「装い」を流通させる

―実際にマーケットで買物もされるんですか。

企画| Form on Words

音楽|蓮沼執太

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ど。そしてそこで集まった言葉をもとに、古着を素

入場無料 空間構成| BUGHAUS

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ファッションブランド「Form on Words」

くちゃすごいですね。そのダイナミックさがかっこ

溢れていて活気があるんですね。

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アサヒ・アートスクエア協力事業

アサヒ・アートスクエア協力事業

/アブダッラー/ SUGAI KEN /田辺

「ニッポンのアジアの祭りプロジェクト」

浩子/小谷野哲郎/蜜月稀葵/渡辺ま

Concentration Vol.13「HOME」

10/10 ウロツテノヤ子 Presents 『ミ

り子/渡辺キヌヨ/ MIHO KAYO /

日時| 9 月 14 日[金]―16 日[日]

ライのキヲク』

出演|公門美佳/安木ようこ ほか 主催・予約・問合せ| Company

Resonance Tel.080-5437-4409

日時| 10 月 10 日[水] ―11 日[木]

nippon.asia.pjt@gmail.com

Company Resonance Dance

身体表現|サエグサユキオ/荒井笑子 [振付:稲葉枝美]

協力|アサヒ・アートスクエア

10/11 Camale hoju Presents『千

GTS 観光アートプロジェクト 2012

*詳細は http://gts-sap.jp/

ノ川 [せんのかわ]』

クト事務局 

「記憶の森 映像祭」 日程| 10 月 17 日[水]̶21 日[日]

主催|ウロツテノヤ子/ Camale

*関連イベントなどの詳細は HP に掲載

noon dance performance

2 日通し券 6,000 円 アサヒ・アートスクエア協力事業

制作メンバー・参加作家|小瀬村真美/

3,500 円/当日 4,000 円/

出演| 10/10《樂殿》 :ウロツテノヤ子

hoju

*アサヒ・アートスクエア会場 料金|無料

「藪の中」 日時| 10 月 12 日[金]̶13 日[土]

小林耕平/柴田悠基/西原尚/松本祐

太ほか 

料金|前売 2,000 円/当日 2,500 円

文男/小室萌佳/川村喜一/八木澤桂

主催・予約・問合せ|バレエ団ピッコロ

10/11《舞殿》:ヨシダダイキチ/及川

演出|杉野信之 音楽|落合敏行 

介/佐藤浩一/大木戸美緒/二家本帆

erinl@yahoo.co.jp

景子/後藤幸浩/水島結子/立岩潤三

出演|竹内幹子/稲川実加/田宮大輔

菜/長田雛子

mail@tonkori.com

由布子/増田真也/松崎えり

*詳細は http://marewrewfes.jimdo.com/

主催| GTS[藝大・台東・墨田]観光アー

トプロジェクト実行委員会

予約|ニッポンのアジアの祭りプロジェ

*詳細は http://urotsute.com/

Andy wong /森本

6《セルフ・セレクト・イン・ナイロビ》2009  7《Kangaeru》2012[撮影:James Muriuk]  8+9《Daily Composition》2012

AYUMI

料金|前売

出演|松本大樹/

基行]写真提供:国際芸術センター青森 

協賛|アサヒビール株式会社

アサヒ・アートスクエア協力事業

主催・予約・問合せ|チカルスタジオ 

9 1 + 2《スクランブル・クローズ》2002[撮影:上田光永] 3《オーバーオール:上野大仏》2010[撮影:柴田昌和] 4《ポジション》2005[撮影:滝沢律子]  5《1000 Coordinates 袖/滝》2011[撮影:下道

主催・制作| PRAX-GARDEN

18:00 開場/ 19:00 開演

「[結]」 日時| 9 月 29 日[土]―30 日[日]

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/ WB スダマニ/朝崎郁恵[奄美島唄] /ヨシダダイキチ/ GOMA /田鹿健

一/土屋貴哉/中島健/宇都縁/大橋


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